(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20241108BHJP
H01L 21/20 20060101ALI20241108BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20241108BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20241108BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20241108BHJP
H10B 12/00 20230101ALI20241108BHJP
H01L 21/477 20060101ALN20241108BHJP
【FI】
H01L29/78 613Z
H01L29/78 618B
H01L21/20
H01L27/088 E
H01L27/06 102A
H01L27/088 331E
H10B12/00 801
H01L21/477
(21)【出願番号】P 2023119014
(22)【出願日】2023-07-21
(62)【分割の表示】P 2022089391の分割
【原出願日】2011-09-09
【審査請求日】2023-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2010204971
(32)【優先日】2010-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】野中 裕介
(72)【発明者】
【氏名】井上 卓之
(72)【発明者】
【氏名】津吹 将志
(72)【発明者】
【氏名】秋元 健吾
(72)【発明者】
【氏名】宮永 昭治
【審査官】西村 治郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-268184(JP,A)
【文献】特開2001-053164(JP,A)
【文献】特開2002-368226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 21/20
H01L 21/8234
H01L 27/06
H01L 27/088
H10B 12/00
H01L 21/477
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャネル形成領域にシリコンを有する第1のトランジスタと、
チャネル形成領域に酸化物半導体を有する第2のトランジスタと、
容量素子と、を有し、
前記第1のトランジスタのゲート電極と、前記第2のトランジスタのソース電極及びドレイン電極の一方と、前記容量素子の一方の電極と、が電気的に接続された半導体装置であって、
前記第1のトランジスタのチャネル形成領域の上方に位置する第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層の上方に位置し、前記第1のトランジスタのゲート電極として機能する領域を有する第1の導電層と、
前記第1の導電層の上方に位置し、前記第2のトランジスタのゲート絶縁層として機能する領域を有する第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層の下面と接する領域を有し、前記第2のトランジスタのチャネル形成領域を有する酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層の上面と接する領域と、前記第1の導電層の上面と接する領域と、を有し、且つ前記第2のトランジスタのソース電極及びドレイン電極の一方として機能する領域と、前記容量素子の一方の電極として機能する領域と、を有する第2の導電層と、
前記第2の導電層の上方に位置し、且つ前記容量素子の他方の電極として機能する領域を有する第3の導電層と、を有し、
前記第1のトランジスタのチャネル長方向と、前記第2のトランジスタのチャネル長方向とは、互いに交差する方向であり、
前記第1の導電層は、第1の領域において前記第2の導電層と接し、
前記第1のトランジスタのチャネル形成領域は、前記第1の領域との重なりを有さない、半導体装置。
【請求項2】
チャネル形成領域にシリコンを有する第1のトランジスタと、
チャネル形成領域に酸化物半導体を有する第2のトランジスタと、
容量素子と、を有し、
前記第1のトランジスタのゲート電極と、前記第2のトランジスタのソース電極及びドレイン電極の一方と、前記容量素子の一方の電極と、が電気的に接続された半導体装置であって、
前記第1のトランジスタのチャネル形成領域の上方に位置する第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層の上方に位置し、前記第1のトランジスタのゲート電極として機能する領域を有する第1の導電層と、
前記第1の導電層の上方に位置し、前記第2のトランジスタのゲート絶縁層として機能する領域を有する第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層の下面と接する領域を有し、前記第2のトランジスタのチャネル形成領域を有する酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層の上面と接する領域と、前記第1の導電層の上面と接する領域と、を有し、且つ前記第2のトランジスタのソース電極及びドレイン電極の一方として機能する領域と、前記容量素子の一方の電極として機能する領域と、を有する第2の導電層と、
前記第2の導電層の上方に位置し、且つ前記容量素子の他方の電極として機能する領域を有する第3の導電層と、
前記第2の導電層の下面と接する領域を有する第3の絶縁層と、
前記第3の絶縁層の上面と接する領域を有し、前記第1のトランジスタのソース電極及びドレイン電極の一方として機能する領域を有する第4の導電層と、を有し、
前記第1のトランジスタのチャネル長方向と、前記第2のトランジスタのチャネル長方向とは、互いに交差する方向であり、
前記第1の導電層は、第1の領域において前記第2の導電層と接し、
前記第1のトランジスタのチャネル形成領域は、前記第1の領域との重なりを有さず、
前記第2の導電層と、前記第4の導電層とは、同じ材料を有する、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
トランジスタなどの半導体素子を少なくとも一つの素子として含む回路を有する半導体装
置及びその作製方法に関する。例えば、電源回路に搭載されるパワーデバイスや、メモリ
、サイリスタ、コンバータ、イメージセンサなどを含む半導体集積回路、液晶表示装置に
代表される電気光学装置や発光素子を有する発光表示装置を部品として搭載した電子機器
に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置
全般を指し、電気光学装置、半導体回路及び電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
液晶表示装置に代表されるように、ガラス基板等に形成されるトランジスタはアモルファ
スシリコン、多結晶シリコンなどによって構成されている。アモルファスシリコンを用い
たトランジスタは、電界効果移動度が低いもののガラス基板の大面積化に対応することが
できる。また、多結晶シリコンを用いたトランジスタの電界効果移動度は高いが、ガラス
基板の大面積化には適していないという欠点を有している。
【0004】
シリコンを用いたトランジスタに対して、酸化物半導体を用いてトランジスタを作製し、
電子デバイスや光デバイスに応用する技術が注目されている。例えば酸化物半導体として
、酸化亜鉛、In-Ga-Zn-O系酸化物を用いてトランジスタを作製し、表示装置の
画素のスイッチング素子などに用いる技術が特許文献1及び特許文献2で開示されている
。
【0005】
このようなトランジスタに用いる酸化物半導体について、「酸化物半導体は不純物に対し
て鈍感であり、膜中にはかなりの金属不純物が含まれていても問題がなく、ナトリウムの
ようなアルカリ金属が多量に含まれる廉価なソーダ石灰ガラスも使える」といったことが
述べられている(非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-123861号公報
【文献】特開2007-96055号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】神谷、野村、細野、「アモルファス酸化物半導体の物性とデバイス開発の現状」、固体物理、2009年9月号、Vol.44、p.621-633
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
酸化物半導体はデバイス作製工程において、キャリアの供給源となる水素や水の混入など
が生じると、その電気伝導度が変化する恐れがある。このような現象は、酸化物半導体を
用いたトランジスタにとって電気的特性の変動の要因となる。
【0009】
また、酸化物半導体を用いた半導体装置は、可視光や紫外光を照射することで電気的特性
が変化する恐れがある。
【0010】
このような問題に鑑み、酸化物半導体膜を用いた半導体装置に安定した電気的特性を付与
し、信頼性の高い半導体装置を作製することを課題の一とする。
【0011】
また、マザーガラスのような大きな基板を用いて、信頼性の高い半導体装置の大量生産を
行うことのできる半導体装置の作製プロセスを提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、同一のスパッタリング工程において、酸化物半導体用ターゲットに含
まれる複数種の原子の原子量の違いを利用し、原子量の小さい亜鉛を優先的に酸化物絶縁
膜に堆積させ、少なくとも成膜途中の堆積膜表面に亜鉛を含む六方晶構造の結晶を有する
種結晶を形成すると共に、種結晶上に原子量の大きいスズ、インジウム等を結晶成長させ
つつ堆積させることで、複数の工程を経ずとも、結晶性酸化物半導体膜を形成することを
要旨とする。なお、亜鉛を含む種結晶は、成膜途中の堆積膜表面に限らず、酸化物絶縁膜
の界面から種結晶を形成してもよい。さらには、亜鉛を含む六方晶構造の結晶を有する種
結晶を核として、結晶成長させて結晶性酸化物半導体膜を形成することで、単結晶、また
は実質的に単結晶である結晶性酸化物半導体膜を形成することを要旨とする。
【0013】
また、本発明の一態様は、基板上に形成された酸化物絶縁膜上に、スパッタリング法によ
り、亜鉛を含む六方晶構造の結晶を有する種結晶を形成すると共に、該種結晶を核として
結晶成長させて、六方晶構造の結晶を有する結晶性酸化物半導体膜を形成し、該結晶性酸
化物半導体膜を用いてトランジスタを作製することを要旨とする。
【0014】
結晶性酸化物半導体膜は、酸素を含む雰囲気において250℃以上350℃以下の第1の
加熱処理を行いながらスパッタリング法により形成する。従って、この第1の加熱処理は
、処理室内で行われる。また、上記成膜に用いるスパッタリング装置において、ターゲッ
トと基板との間隔は、原子量の小さい元素が優先的に基板上に到着することが可能な間隔
とする。この結果、酸化物絶縁膜上に、亜鉛が優先的に堆積しつつ、堆積した亜鉛が酸化
され、亜鉛を含む六方晶構造の結晶を有する種結晶、代表的には六方晶構造の酸化亜鉛を
有する種結晶が形成される。このため、酸化物絶縁膜の表面から結晶成長した種結晶を形
成することができる。また、引き続きスパッタリングを行うことで、亜鉛を含む六方晶構
造の結晶を有する種結晶を核として、結晶成長させ、被成膜表面である基板面に平行なa
-b面において六角形の格子を有する結合を有し、a-b面に概略平行な基板平面に概略
垂直なc軸を有している六方晶構造の結晶を有する結晶性酸化物半導体膜を形成すること
ができる。
【0015】
a-b面において六角形の格子を有する結合を有し、基板平面に垂直なc軸を有している
六方晶構造の結晶を有する結晶性酸化物半導体膜は、結晶構造の規則性が高い。この結晶
性酸化物半導体膜の平面TEM写真を
図17に示し、その一部を拡大し、六角形の格子を
分かりやすくするため、原子を白線で囲んだ図を
図18に示す。このような結晶性酸化物
半導体膜を有するトランジスタは、安定した電気的特性を有し、且つ、信頼性が高い。
【0016】
結晶性酸化物半導体膜を有するトランジスタの信頼性が高い理由の一つを以下に説明する
。
【0017】
結晶性酸化物半導体は、アモルファス酸化物半導体と比較して、金属と酸素の結合(-M
-O-M-、Oは酸素原子、Mは金属原子)が規則的である。すなわち、酸化物半導体が
アモルファス構造の場合は、個々の金属原子によって配位数が異なることも有り得るが、
結晶性酸化物半導体ではほぼ一定となる。そのことにより、微視的な酸素の欠損が減少し
、後述するような「空間」における水素原子(水素イオンを含む)やアルカリ金属原子の
脱着による電荷の移動や不安定性を減少させる効果がある。
【0018】
一方、アモルファス構造の場合は、個々の金属原子によって配位数が異なるため、金属原
子や酸素原子の濃度が微視的に不均一となり、場所によっては原子の存在しない部分(「
空間」)が存在することがある。そのような「空間」には、例えば、水素原子(水素イオ
ンを含む)やアルカリ金属原子が捕獲され、場合によっては酸素と結合すると考えられる
。また、そのような「空間」をつたって、それらの原子が移動することも起こりえる。
【0019】
このような原子の移動は酸化物半導体の特性の変動をもたらすこととなるので、これらの
原子の存在は信頼性の面で大きな問題となる。特に、そのような原子の移動は高い電界や
光エネルギーを印加することにより生ずるので、酸化物半導体をそのような条件で使用す
る場合には、特性が不安定となる。すなわち、アモルファス酸化物半導体の信頼性は結晶
性酸化物半導体より劣ることとなる。
【0020】
以下に、実際に得られたトランジスタ(サンプル1、2)の異なる信頼性の結果を用いて
説明する。ただし、以下で説明し、実際に得たサンプル2は、成膜温度200℃で第1の
材料膜を成膜した後、窒素雰囲気で450℃加熱を行い、成膜温度200℃で第2の材料
膜を成膜した後、ドライエアー雰囲気下で450℃加熱を行い、結晶性酸化物半導体膜を
得たものである。サンプル2は、第1の材料膜と第2の材料膜が同じである結晶性半導体
膜についてであるが、異なる場合であっても同様のことが言えることは言うまでもない。
比較に用いたサンプル1は、単層の材料膜をRTAによって650℃加熱した後、ドライ
エアー雰囲気下で450℃加熱を行い、結晶性酸化物半導体膜を得たものである。
【0021】
信頼性を調べる検査方法として、光を照射しながらトランジスタのゲート電極とソース電
極との間の電圧(Vg)を変化させたときの、トランジスタのドレイン電極とソース電極
との間に流れる電流(Id)を測定して得られるトランジスタのId-Vg曲線を測定す
る。なお、酸化物半導体膜を用いたトランジスタにおいて、光を照射しながら-BT試験
を行う、即ちマイナスゲートバイアスを印加するとトランジスタのしきい値が変化する劣
化がある。この劣化を光負バイアス劣化とも呼ぶ。
【0022】
サンプル1、2について、光負バイアス劣化を
図19に示す。
【0023】
図19において、サンプル2は、サンプル1よりVthの変化量が小さい。
【0024】
次に、サンプル1のトランジスタ(L/W=3μm/50μm)に600秒間の光(波長
400nm、照射強度3.5mW/cm
2)を照射した前後の光応答性を測定した。その
結果から作成した光応答性のグラフ(光電流時間依存性グラフ)を
図20(A)に示す。
なお、Vdは0.1Vである。
【0025】
また、サンプル2のトランジスタ(L/W=3μm/50μm)に600秒間の光(波長
400nm、照射強度3.5mW/cm
2)を照射した前後の光応答性を測定した。その
結果から作成した光応答性のグラフ(光電流時間依存性グラフ)を
図20(B)に示す。
【0026】
また、サンプル2と作製条件が同じトランジスタのW幅を大きくした条件(L/W=30
μm/10000μm)や、サンプル2と作製条件が同じトランジスタのW幅を大きくし
た条件でさらにVdを大きくした条件(Vd=15V)でも測定を行い、フィッティング
を行って、それぞれの二種類の緩和時間(τ1とτ2)を算出した結果および最大電流値
(Imax)を表1に示す。
【0027】
【0028】
なお、二種類の緩和時間(τ1とτ2)はトラップ密度に依存している値である。τ1と
τ2を算出する方法を光応答欠陥評価法と呼ぶ。
【0029】
表1から、サンプル1に比べ、光負バイアス劣化が小さいサンプル2のいずれも光応答性
が早いことがわかる。これらのことから、光負バイアス劣化が小さいほど光応答性も早い
という関係を見いだすことができる。
【0030】
その理由の一つを説明する。もし深いドナー準位が存在し、ドナー準位に正孔がトラップ
されるならば、光負バイアス劣化においてはゲートに印加されたマイナスバイアスによっ
て固定電荷となり、その結果、光応答においては電流値の緩和時間が大きくなる可能性が
ある。結晶性酸化物半導体膜を用いたトランジスタで、光負バイアス劣化が小さく、光応
答性も早いのは、上記の正孔をトラップするドナー準位の密度が小さくなっていることに
起因していると予想される。
図21に予想されるドナー準位の模式図を示す。
【0031】
また、ドナー準位の深さや密度の変化を調査する為、低温PLによって測定を行った。酸
化物半導体膜の成膜時の基板温度が400℃における場合と酸化物半導体膜の、成膜時の
基板温度が200℃の場合を
図22に示す。
【0032】
図22より、酸化物半導体膜の成膜時の基板温度が400℃である場合では約1.8eV
付近のピーク強度が基板温度200℃のそれと比較して大幅に減少している。この測定結
果は、ドナー準位の深さは変わらず、密度が大幅に減少していることを示唆している。
【0033】
また、酸化物半導体膜の成膜時の基板温度の条件を変えて、それぞれ比較し、単膜での評
価を行った。
【0034】
サンプルAは、石英基板(厚さ0.5mm)上に50nmの膜厚の酸化物半導体膜を成膜
したものである。なお、酸化物半導体膜の成膜条件は、酸化物半導体用ターゲット(In
-Ga-Zn-O系酸化物半導体用ターゲット(In2O3:Ga2O3:ZnO=1:
1:2[mol数比])を用いて、基板とターゲットの間との距離を60mm、基板温度
200℃、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0.5kW、アルゴン(30sccm)及
び酸素(15sccm)の混合雰囲気下である。
【0035】
ESR(電子スピン共鳴)を室温(300K)で測定し、マイクロ波(周波数9.5GH
z)の吸収の起こる磁場の値(H0)から式g=hv/βH0を用いてg値というパラメ
ータが得られる。なお、hはプランク定数であり、βはボーア磁子であり、どちらも定数
である。
【0036】
サンプルAのg値を示すグラフを
図23(A)に示す。
【0037】
また、サンプルAと同じ条件で成膜を行った後、窒素雰囲気下、450℃、1時間加熱を
行い、サンプルBとする。サンプルBのg値を示すグラフを
図23(B)に示す。
【0038】
また、サンプルAと同じ条件で成膜を行った後、窒素と酸素の混合雰囲気下、450℃、
1時間加熱を行い、サンプルCとする。サンプルCのg値を示すグラフを
図23(C)に
示す。
【0039】
サンプルBのg値のグラフにおいて、g=1.93のシグナルが確認でき、スピン密度は
1.8×1018[spins/cm3]となっている。一方、サンプルCのESRの結
果では、g=1.93のシグナルが確認できないことから、g=1.93のシグナルは、
酸化物半導体膜中のメタルのダングリングボンドに起因する。
【0040】
また、サンプルD、E、F、Gは、石英基板(厚さ0.5mm)上に膜厚100nmの酸
化物半導体膜を成膜したものである。なお、酸化物半導体膜の成膜条件は、酸化物半導体
用ターゲット(In-Ga-Zn-O系酸化物半導体用ターゲット(In2O3:Ga2
O3:ZnO=1:1:2[mol数比]))を用いて、基板とターゲットの間との距離
を60mm、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0.5kW、アルゴン(30sccm)
及び酸素(15sccm)の混合雰囲気下である。また、サンプルD、E、F、Gは、そ
れぞれ成膜時の基板温度が異なっており、サンプルDは室温、サンプルEは200℃、サ
ンプルFは300℃、サンプルGは400℃である。
【0041】
サンプルD、E、F、GのESRスペクトルを
図24に示した。
【0042】
成膜時の基板温度(Tsubと示す。)が400℃であるサンプルGでは、g=1.93
のシグナルが確認でき、スピン密度は1.3×1018[spins/cm3]となって
いる。そのスピン密度は、サンプルBで得られたg=1.93のシグナルのスピン密度と
同程度である。
【0043】
サンプルBのESR測定を行った結果である
図25では、磁場を基板表面に対して垂直に
印加した場合(実線で示したスペクトル)と基板表面に対して平行に印加した場合(点線
で示したスペクトル)でのg値の違い(異方性)を表す。
【0044】
また、サンプルGと同じ条件で成膜を行った後、窒素雰囲気下、450℃、1時間の加熱
を行ったサンプルHのESR測定を行った結果を
図26に示す。
図26では、磁場を基板
表面に対して垂直に印加した場合(実線で示したスペクトル)と基板表面に対して平行に
印加した場合(点線で示したスペクトル)でのg値の違い(異方性)を表す。
【0045】
図25と
図26を比較した結果、基板温度200℃では異方性によるg値の変化Δgが0
.001以下であったのに対し、基板温度400℃ではΔg~0.003と大きくなるこ
とがわかる。一般に、結晶性が良い(軌道の向きがそろっている)ほど、異方性が大きく
なるということが知られており、基板温度400℃の膜は基板温度200℃の膜に比べて
、窒素雰囲気下、450℃、1時間の加熱で生じるメタルのダングリングボンドの向きが
そろっている、すなわち結晶性が良いということが結論される。
【0046】
また、酸化物半導体膜の膜厚を変えてESR測定を行った。得られたESRスペクトルに
おいてg=1.93シグナルの強度変化を
図27に、全スピン数を
図28に示す。
図27
及び
図28の結果から、g=1.93シグナルの強度は酸化物半導体膜の膜厚が増えるに
従って増加することが確認された。このことはg=1.93シグナルの起因となるダング
リングボンドは石英基板と酸化物半導体膜の界面や酸化物半導体膜表面ではなくバルクに
存在していることを示唆している。
【0047】
これらの結果から、メタルのダングリングボンドは異方性を持ち、その異方性は成膜温度
が高いほうが、結晶性が良いため大きくなることがわかる。また、メタルのダングリング
ボンドは界面や表面ではなくバルクに存在するということがわかる。
【0048】
これらの結果から、成膜時の基板温度が高くなると結晶性の向上が原因と考えられるg値
の異方性の増大が確認された。また、g=1.93シグナルの起因となるダングリングボ
ンドは膜厚依存性を持ち、IGZOのバルクに存在するダングリングボンドによるもので
あることが示唆される。
【0049】
なお、結晶性酸化物半導体膜に接する酸化物絶縁膜は、加熱により酸素の一部が放出する
酸化物絶縁膜を用いて形成することが好ましい。加熱により酸素の一部が放出する酸化物
絶縁膜としては、化学量論比を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を用いる
ことが好ましい。結晶性酸化物半導体膜を形成した後、第2の加熱処理することにより、
酸化物絶縁膜に含まれる酸素が、結晶性酸化物半導体膜中、または酸化物絶縁膜と結晶性
酸化物半導体膜との界面に拡散し、結晶性酸化物半導体膜の酸素欠損を低減することがで
きる。第2の加熱処理は、150℃以上基板の歪み点未満、好ましくは250℃以上45
0℃以下とする。
【0050】
また、スパッタリング装置の処理室の圧力を0.4Pa以下とすることで、被成膜面及び
被成膜物への、アルカリ金属、水素等の不純物の混入を低減することができる。なお、被
成膜物に含まれる水素は、水素原子の他、水素分子、水、水酸基、または水素化物として
含まれる場合もある。
【0051】
また、ターゲットの間の距離(T-S間距離)を40mm以上300mm以下(好ましく
は60mm以上)とする。T-S間距離が大きければ大きいほど、酸化物半導体用のスパ
ッタリングターゲットに含まれる金属元素のうちもっとも原子量の小さい亜鉛が、他の原
子量の大きい元素より優先的に基板側へ堆積して、六角形の格子を有する結合を形成する
。従って、T-S間距離は大きい方が好ましい。
【0052】
また、スパッタリング法による成膜時において、被成膜面の温度は250℃以上好ましく
は基板の熱処理上限温度以下とする。250℃は、水、水素などの不純物の被成膜物中へ
の混入を防ぎ、チャンバー内の気相へ不純物を放出する温度である。また、スパッタリン
グ法による成膜時における被成膜面の温度の上限は、基板の熱処理上限温度、或いは成膜
物の上限温度(その温度を超えると大きく成膜中の成分が変化する温度)とする。
【0053】
また、スパッタリング装置の処理室のリークレートを1×10-10Pa・m3/秒以下
とすることで、スパッタリング法による成膜途中における結晶性酸化物半導体膜への、ア
ルカリ金属、水素化物等の不純物の混入を低減することができる。また、排気系として吸
着型の真空ポンプを用いることで、排気系からアルカリ金属、水素原子、水素分子、水、
水酸基、または水素化物等の不純物の逆流を低減することができる。
【0054】
また、ターゲットの純度を、99.99%以上とすることで、結晶性酸化物半導体膜に混
入するアルカリ金属、水素原子、水素分子、水、水酸基、または水素化物等を低減するこ
とができる。また、当該ターゲットを用いることで、結晶性酸化物半導体膜において、リ
チウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の濃度を低減することができる。
【0055】
以上の成膜条件により、結晶性酸化物半導体膜を形成することで、成膜中に材料の精製が
行われ、アルカリ金属の濃度が5×1016atoms/cm3以下、水素の濃度が1×
1019atoms/cm3以下である、不純物を極めて低減した結晶性酸化物半導体膜
を形成することができる。結晶性酸化物半導体膜の不純物を低減することで、種結晶及び
結晶性酸化物半導体膜の結晶成長がより促進され、単結晶、または実質的に単結晶である
結晶性酸化物半導体膜を形成することができる。
【0056】
また、トランジスタの構造としては、トップゲート型のトランジスタ、ボトムゲート型の
トランジスタを適宜適用することができる。トップゲート型のトランジスタを作製する場
合、絶縁表面上に形成された酸化物絶縁膜上に、スパッタリング法により、亜鉛を含む六
方晶構造の結晶を有する種結晶を形成すると共に、種結晶を核として結晶成長させて、六
方晶構造の結晶を有する結晶性酸化物半導体膜を形成し、結晶性酸化物半導体膜を加熱処
理した後、加熱処理した結晶性酸化物半導体膜を選択的にエッチングし、選択的にエッチ
ングされた結晶性酸化物半導体膜上に一対の電極を形成し、選択的にエッチングされた結
晶性酸化物半導体膜及び一対の電極上にゲート絶縁膜を形成し、ゲート絶縁膜上にゲート
電極を形成することを特徴の一つとする。また、ボトムゲート型のトランジスタを作製す
る場合、絶縁表面上にゲート電極を形成し、ゲート電極上に酸化物絶縁膜を含むゲート絶
縁膜を形成し、ゲート絶縁膜上にスパッタリング法により、亜鉛を含む六方晶構造の結晶
を有する種結晶を形成すると共に、種結晶を核として結晶成長させて、六方晶構造の結晶
を有する結晶性酸化物半導体膜を形成し、結晶性酸化物半導体膜を加熱処理した後、加熱
処理した結晶性酸化物半導体膜を選択的にエッチングし、選択的にエッチングされた結晶
性酸化物半導体膜上に一対の電極を形成することを特徴の一つとする。
【発明の効果】
【0057】
a-b面において六角形の格子を有する結合を有し、a-b面に概略平行な基板平面に概
略垂直なc軸を有している六方晶構造の結晶を有する結晶性酸化物半導体膜をチャネル領
域に有するトランジスタを作製することで、トランジスタに光照射が行われ、またはバイ
アス-熱ストレス(BT)試験前後においてもトランジスタのしきい値電圧の変化量が低
減でき、安定した電気的特性を有するトランジスタを作製することができる。さらに、第
1の加熱処理及び第2の加熱処理を450℃以下とすることで、マザーガラスのような大
きな基板を用いて、信頼性の高い半導体装置の大量生産を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】本発明の一態様である半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【
図2】本発明の一態様を示す半導体装置の作製工程を説明する上面図である。
【
図3】スパッタリング装置を説明する模式図である。
【
図5】本発明の一態様を示す半導体装置の作製工程を説明する断面図である。
【
図6】本発明の一態様を示す半導体装置の作製工程を説明する上面図である。
【
図7】本発明の一態様を示す半導体装置の作製工程を説明する断面図である。
【
図8】本発明の一態様を示す半導体装置の作製工程を説明する上面図である。
【
図9】本発明の一態様を示す半導体装置の作製工程を説明する断面図である。
【
図10】本発明の一態様を示す半導体装置の作製工程を説明する上面図である。
【
図11】本発明の一態様を示す半導体装置の作製工程を説明する断面図である。
【
図12】本発明の一態様を示す半導体装置の作製工程を説明する断面図である。
【
図13】本発明の一態様を作製する製造装置の上面図の一例である。
【
図14】本発明の一態様を示す断面図、上面図及び回路図である。
【
図15】本発明の一態様を示すブロック図及び回路図である。
【
図16】本発明の一態様を示す電子機器の外観図である。
【
図18】
図17の一部を拡大し、六角形の一つを白線で示した図である。
【
図20】光電流時間依存性グラフを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明
に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々
に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施
の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構
成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共
通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0060】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、層の厚さ、または領域は、明
瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない
。
【0061】
また、本明細書にて用いる第1、第2、第3などの用語は、構成要素の混同を避けるため
に付したものであり、数的に限定するものではない。そのため、例えば、「第1の」を「
第2の」または「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。
【0062】
(実施の形態1)
本実施の形態では、結晶性酸化物半導体の作製方法、及び当該酸化物半導体を用いたトラ
ンジスタの作製方法について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、半導体装置の構
成の一形態であるトランジスタの作製工程を示す断面図であり、
図2の一点破線A-Bの
断面図は
図1(E)に相当する。本実施の形態では、トップゲート構造のトランジスタを
用いて説明する。
【0063】
図1(A)に示すように、基板51上に酸化物絶縁膜53を形成する。
【0064】
基板51は、少なくとも、後の加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要
となる。基板51としてガラス基板を用いる場合、歪み点が730℃以上のものを用いる
ことが好ましい。ガラス基板には、例えば、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケ
イ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスなどのガラス材料が用いられる。なお、B2O3
よりBaOを多く含むガラス基板を用いることが好ましい。基板51がマザーガラスの場
合、基板の大きさは、第1世代(320mm×400mm)、第2世代(400mm×5
00mm)、第3世代(550mm×650mm)、第4世代(680mm×880mm
、または730mm×920mm)、第5世代(1000mm×1200mmまたは11
00mm×1250mm)、第6世代(1500mm×1800mm)、第7世代(19
00mm×2200mm)、第8世代(2160mm×2460mm)、第9世代(24
00mm×2800mm、または2450mm×3050mm)、第10世代(2950
mm×3400mm)等を用いることができる。マザーガラスは、処理温度が高く、処理
時間が長いと大幅に収縮するため、マザーガラスを使用して大量生産を行う場合、作製工
程の加熱処理は、600℃以下、好ましくは450℃以下とすることが望ましい。
【0065】
なお、上記のガラス基板に代えて、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などの絶
縁体でなる基板を用いることができる。他にも、結晶化ガラスなどを用いることができる
。さらには、シリコンウェハ等の半導体基板の表面や金属材料よりなる導電性の基板の表
面に絶縁膜を形成したものを用いることもできる。
【0066】
酸化物絶縁膜53は、加熱により酸素の一部が放出する酸化物絶縁膜を用いて形成する。
加熱により酸素の一部が放出する酸化物絶縁膜としては、化学量論比を満たす酸素よりも
多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を用いることが好ましい。加熱により酸素の一部が放出す
る酸化物絶縁膜は、加熱により結晶性酸化物半導体膜に酸素を拡散させることができる。
酸化物絶縁膜53は、代表的には、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン
、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化イッ
トリウム等で形成することができる。
【0067】
化学量論比を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜は、加熱により酸素の一部
を放出する。このときの酸素の放出量は、TDS(Thermal Desorptio
n Spectrocopy:昇温脱離ガス分光法)分析にて、酸素原子に換算しての酸
素の放出量が1.0×1018atoms/cm3以上、好ましくは1.0×1020a
toms/cm3以上、より好ましくは3.0×1020atoms/cm3以上である
。
【0068】
ここで、TDS分析による、酸素原子に換算したときの酸素の放出量の測定方法について
、以下に説明する。
【0069】
TDS分析したときの気体の放出量は、スペクトルの積分値に比例する。このため、酸化
物絶縁膜のスペクトルの積分値と、標準試料の基準値に対する比とにより、気体の放出量
を計算することができる。標準試料の基準値とは、所定の原子を含む試料の、スペクトル
の積分値に対する原子の密度の割合である。
【0070】
例えば、標準試料である所定の密度の水素を含むシリコンウェハのTDS分析結果、およ
び酸化物絶縁膜のTDS分析結果から、酸化物絶縁膜の酸素分子の放出量(N(O2))
は、数式1で求めることができる。ここで、TDS分析で得られる質量数32で検出され
るスペクトルの全てが酸素分子由来と仮定する。質量数32のものとしてCH3OHがあ
るが、存在する可能性が低いものとしてここでは考慮しない。また、酸素原子の同位体で
ある質量数17の酸素原子および質量数18の酸素原子を含む酸素分子についても、自然
界における存在比率が極微量であるため考慮しない。
【0071】
N(O2)=N(H2)/S(H2)×S(O2)×α (数1)
【0072】
N(H2)は、標準試料から脱離した水素分子を密度で換算した値である。S(H2)は
、標準試料をTDS分析したときのスペクトルの積分値である。ここで、標準試料の基準
値を、N(H2)/S(H2)とする。S(O2)は、酸化物絶縁膜をTDS分析したと
きのスペクトルの積分値である。αは、TDS分析におけるスペクトル強度に影響する係
数である。数式1の詳細に関しては、特許第3298974号公報を参照する。なお、上
記酸化物絶縁膜の酸素の放出量は、電子科学株式会社製の昇温脱離分析装置EMD-WA
1000S/Wを用い、標準試料として1×1016atoms/cm3の水素原子を含
むシリコンウェハを用いて測定する。
【0073】
また、TDS分析において、酸素の一部は酸素原子として検出される。酸素分子と酸素原
子の比率は、酸素分子のイオン化率から算出することができる。なお、上述のαは酸素分
子のイオン化率を含むため、酸素分子の放出量を評価することで、酸素原子の放出量につ
いても見積もることができる。
【0074】
なお、N(O2)は酸素分子の放出量である。酸化物絶縁膜においては、酸素原子に換算
したときの酸素の放出量は、酸素分子の放出量の2倍となる。
【0075】
酸化物絶縁膜53は、50nm以上、好ましくは200nm以上500nm以下とする。
酸化物絶縁膜53を厚くすることで、酸化物絶縁膜53からの酸素放出量を増加させるこ
とができると共に、その増加によって酸化物絶縁膜53及び後に形成される酸化物半導体
膜との界面における欠陥を低減することが可能である。
【0076】
酸化物絶縁膜53は、スパッタリング法、CVD法等により形成する。なお、加熱により
酸素の一部が放出する酸化物絶縁膜は、スパッタリング法を用いることで形成しやすいた
め好ましい。
【0077】
加熱により酸素の一部が放出する酸化物絶縁膜をスパッタリング法により形成する場合は
、成膜ガス中の酸素量が高いことが好ましく、酸素、または酸素及び希ガスの混合ガス等
を用いることができる。代表的には、成膜ガス中の酸素濃度を6%以上100%以下にす
ることが好ましい。
【0078】
加熱により酸素の一部が放出する酸化物絶縁膜の代表例として酸化シリコン膜を形成する
場合、石英(好ましくは合成石英)をターゲットに用い、基板温度30℃以上450℃以
下(好ましくは70℃以上200℃以下)、基板とターゲットの間の距離(T-S間距離
)を20mm以上400mm以下(好ましくは40mm以上200mm以下)、圧力を0
.1Pa以上4Pa以下(好ましくは0.2Pa以上1.2Pa以下)、高周波電源を0
.5kW以上12kW以下(好ましくは1kW以上5kW以下)、成膜ガス中のO2/(
O2+Ar)割合を1%以上100%以下(好ましくは6%以上100%以下)として、
RFスパッタリング法により酸化シリコン膜を形成することが好ましい。なお、石英(好
ましくは合成石英)ターゲットに代えてシリコンターゲットを用いることもできる。なお
、成膜ガスとしては、酸素のみを用いてもよい。
【0079】
なお、アルカリ金属などの不純物を含むガラス基板を用いる場合、アルカリ金属の侵入防
止のため、基板51及び酸化物絶縁膜53の間に窒化物絶縁膜として窒化シリコン膜、窒
化アルミニウム膜などを形成してもよい。窒化物絶縁膜は、CVD法、スパッタリング法
等で形成することができる。リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属は、不純
物であるため含有量を少なくすることが好ましい。
【0080】
次に、酸化物絶縁膜53上に、スパッタリング装置を用いたスパッタリング法により、厚
さ30nm以上50μm以下の酸化物半導体膜を成膜する。
【0081】
ここで、スパッタリング装置の処理室について、
図3(A)を用いて説明する。処理室3
1には、排気手段33及びガス供給手段35が接続される。また、処理室31内には、基
板支持体40及びターゲット41が設けられる。ターゲット41は、電源装置37に接続
される。
【0082】
処理室31は、接地されている。また、処理室31のリークレートを1×10-10Pa
・m3/秒以下とすることで、スパッタリング法により成膜する膜への不純物の混入を低
減することができる。
【0083】
リークレートを低くするには、外部リークのみならず内部リークを低減する必要がある。
外部リークとは、微小な穴やシール不良などによって真空系の外から気体が流入すること
である。内部リークとは、真空系内のバルブなどの仕切りからの漏れや内部の部材からの
放出ガスに起因する。リークレートを1×10-10Pa・m3/秒以下とするためには
、外部リーク及び内部リークの両面から対策をとる必要がある。
【0084】
外部リークを減らすには、処理室の開閉部分はメタルガスケットでシールするとよい。メ
タルガスケットは、フッ化鉄、酸化アルミニウム、または酸化クロムによって被覆された
金属材料を用いると好ましい。メタルガスケットはOリングと比べ密着性が高く、外部リ
ークを低減できる。また、フッ化鉄、酸化アルミニウム、酸化クロムなどの不動態によっ
て被覆された金属材料を用いることで、メタルガスケットから生じる水素を含む放出ガス
が抑制され、内部リークも低減することができる。
【0085】
処理室31の内壁を構成する部材として、水素を含む放出ガスの少ないアルミニウム、ク
ロム、チタン、ジルコニウム、ニッケルまたはバナジウムを用いる。また、前述の材料を
鉄、クロム及びニッケルなどを含む合金材料に被覆して用いてもよい。鉄、クロム及びニ
ッケルなどを含む合金材料は、剛性があり、熱に強く、また加工に適している。ここで、
表面積を小さくするために部材の表面凹凸を研磨などによって低減しておくと、放出ガス
を低減できる。あるいは、前述の成膜装置の部材をフッ化鉄、酸化アルミニウム、酸化ク
ロムなどの不動態で被覆してもよい。
【0086】
処理室31の内部に設ける部材は、極力金属材料のみで構成することが好ましく、例えば
石英などで構成される覗き窓などを設置する場合も、放出ガスを抑制するために表面をフ
ッ化鉄、酸化アルミニウム、酸化クロムなどの不動態で薄く被覆するとよい。
【0087】
さらに、スパッタガスを処理室31に導入する直前に、スパッタガスの精製機を設けるこ
とが好ましい。このとき、精製機から処理室までの配管の長さを5m以下、好ましくは1
m以下とする。配管の長さを5m以下または1m以下とすることで、配管からの放出ガス
の影響を長さに応じて低減できる。
【0088】
シリンダーから処理室31まで、スパッタガスを流すための配管にはフッ化鉄、酸化アル
ミニウム、酸化クロムなどの不動態で内部が被覆された金属配管を用いることが好ましい
。前述の配管は、例えばSUS316L-EP配管と比べ、水素を含む放出量が少なく、
成膜ガスへの不純物の混入を低減できる。また、配管の継手には、高性能超小型メタルガ
スケット継手(UPG継手)を用いるとよい。また、配管の材料を全て金属材料で構成す
ることで、樹脂等を用いた場合と比べ、生じる放出ガス及び外部リークの影響を低減でき
るため好ましい。
【0089】
処理室31の内側に存在する吸着物は、内壁に吸着しているために処理室の圧力に影響し
ないが、処理室を排気した際のガス放出の原因となる。そのため、リークレートと排気速
度に相関はないが、排気能力の高いポンプを用いて、処理室に存在する吸着物をできる限
り脱離し、予め排気しておくことが重要である。なお、吸着物の脱離を促すために、処理
室をベーキングしてもよい。ベーキングすることで吸着物の脱離速度を10倍程度大きく
することができる。ベーキングは100℃以上450℃以下で行えばよい。このとき、不
活性ガスを導入しながら吸着物の除去を行うと、排気するだけでは脱離しにくい水などの
脱離速度をさらに大きくすることができる。
【0090】
排気手段33は、処理室31内の不純物を排気すると共に、処理室31内の圧力を制御す
ることができる。排気手段33は、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば
、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好まし
い。上記吸着型の真空ポンプを用いることで、酸化物半導体膜に含まれる水素の量を低減
することができる。
【0091】
処理室31の排気は、ドライポンプなどの粗引きポンプと、スパッタイオンポンプ、ター
ボ分子ポンプ及びクライオポンプなどの高真空ポンプとを適宜組み合わせて行うとよい。
ターボ分子ポンプは大きいサイズの分子の排気が優れる一方、水素や水の排気能力が低い
。そこで、水の排気能力の高いクライオポンプ及び水素の排気能力の高いスパッタイオン
ポンプを組み合わせることが有効となる。
【0092】
なお、酸化物半導体膜に含まれる水素は、水素原子の他、水素分子、水、水酸基、または
水素化物として含まれる場合もある。
【0093】
ガス供給手段35は、ターゲットをスパッタリングするためのガスを処理室31内に供給
する手段である。ガス供給手段35は、ガスが充填されたシリンダー、圧力調整弁、スト
ップバルブ、マスフローコントローラ等で構成されている。なお、ガス供給手段35に精
製機を設けることで、処理室31内に導入するガスに含まれる不純物を低下することがで
きる。ターゲットをスパッタリングするガスとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キ
セノン、クリプトン等の希ガスを用いる。または、上記希ガスの一と、酸素との混合ガス
を用いることができる。
【0094】
電源装置37は、RF電源装置、AC電源装置、DC電源装置等を適宜用いることができ
る。なお、図示しないがターゲットを支持するターゲット支持体の内部または外側にマグ
ネットを設けると、ターゲット周辺に高密度のプラズマを閉じこめることができ、成膜速
度の向上及び基板へのプラズマダメージを低減できる。当該方法は、マグネトロンスパッ
タリング法とよばれる。更には、マグネトロンスパッタリング法において、マグネットを
回転可能にすると、磁界の偏りを低減できるため、ターゲットの使用効率が高まり、かつ
基板の面内における膜質のばらつきを低減できる。
【0095】
基板支持体40は、接地されている。基板支持体40にはヒータが設けられている。ヒー
タとしては、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加
熱する装置があり、例えば、電気炉や、GRTA(Gas Rapid Thermal
Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Annea
l)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることが
できる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークラン
プ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発
する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温
のガスを用いて加熱処理を行う装置である。
【0096】
ターゲット41としては、亜鉛を含む金属酸化物ターゲットを用いることができる。ター
ゲット41の代表例としては、四元系金属酸化物であるIn-Sn-Ga-Zn-O系金
属酸化物や、三元系金属酸化物であるIn-Ga-Zn-O系金属酸化物、In-Sn-
Zn-O系金属酸化物、In-Al-Zn-O系金属酸化物、Sn-Ga-Zn-O系金
属酸化物、Al-Ga-Zn-O系金属酸化物、Sn-Al-Zn-O系金属酸化物や、
二元系金属酸化物であるIn-Zn-O系金属酸化物、Sn-Zn-O系金属酸化物など
のターゲットを用いることができる。
【0097】
ターゲット41の一例として、In、Ga、及びZnを含む金属酸化物ターゲットを、I
n2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:1[mol数比]の組成比とする。また、In
2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:2[mol数比]の組成比を有するターゲット、
またはIn2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:4[mol数比]の組成比を有するタ
ーゲット、In2O3:Ga2O3:ZnO=2:1:8[mol数比]の組成比を有す
るターゲットを用いることもできる。
【0098】
なお、ターゲット41と基板51との間隔(T-S間距離)は、原子量の小さい元素が優
先的に基板51上の酸化物絶縁膜53に到着することが可能な間隔とする。
【0099】
次に、酸化物絶縁膜上に結晶性酸化物半導体膜を成膜する方法について、説明する。
【0100】
図3(A)に示すように、基板支持体40上に酸化物絶縁膜53が形成された基板51を
、スパッタリング装置の処理室31内に設置する。次に、ガス供給手段35から処理室3
1にターゲット41をスパッタリングするガスを導入する。ターゲット41の純度は、9
9.9%以上、好ましくは99.99%以上のものを用いる。次に、ターゲット41に接
続される電源装置37に電力を供給する。この結果、ガス供給手段35から処理室31に
導入されたスパッタリングガスのイオン43及び電子が、ターゲット41をスパッタリン
グする。本実施の形態では、ターゲット41及び基板51の間隔が、原子量の小さい元素
が優先的に基板51上の酸化物絶縁膜53に到着し堆積することが可能な間隔である。こ
のため、
図3(B)に示すように、ターゲット41に含まれる元素において、原子量の少
ない元素45が、原子量の大きい元素47より優先的に基板側へ移動する。
【0101】
本実施の形態で示すターゲット41においては、亜鉛は、スズ及びインジウムよりも原子
量が小さい。このため、亜鉛が優先的に酸化物絶縁膜53上に堆積する。また、成膜時の
雰囲気に酸素を含み、基板支持体40には、成膜時に基板及び堆積膜を加熱するヒータが
設けられるため、酸化物絶縁膜53上に堆積した亜鉛が酸化され、亜鉛を含む六方晶構造
の結晶を有する種結晶55a、代表的には六方晶構造の酸化亜鉛を有する種結晶が形成さ
れる。
【0102】
なお、ターゲット41にアルミニウム等の亜鉛より原子量の小さい原子が含まれる場合、
亜鉛と共に、アルミニウムも優先的に酸化物絶縁膜53上に堆積する。
【0103】
種結晶55aは、a-b面において六角形の格子を有する結合を有し、a-b面に概略平
行な基板平面に概略垂直なc軸を有している亜鉛を含む六方晶構造の結晶を有する。ここ
で、a-b面において六角形の格子を有する結合を有し、a-b面に概略平行な基板平面
に概略垂直なc軸を有している亜鉛を含む六方晶構造の結晶について、
図4を用いて説明
する。ここでは、亜鉛を含む六方晶構造の結晶の代表例として、酸化亜鉛を用いて説明し
、黒丸が亜鉛、白丸が酸素を示す。
図4(A)は、a-b面における、六方晶構造の酸化
亜鉛の模式図であり、
図4(B)は、c軸方向を縦方向とした、六方晶構造の酸化亜鉛の
模式図である。
図4(A)に示すように、a-b面における上平面において、亜鉛及び酸
素が六角形をなす結合をしている。また、
図4(B)に示すように、亜鉛及び酸素がなす
六角形の格子を有する結合を有する層が積層され、c軸方向はa-b面に垂直である。
【0104】
種結晶55aは、a-b面において六角形の格子を有する結合を有する層をc軸方向に1
原子層以上有する。
【0105】
なお、スパッタリングガスは、希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素ガス、希ガス及び酸
素の混合ガスを適宜用いる。また、スパッタリングガスには、水素、水、水酸基または水
素化物などの不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0106】
引き続き、ターゲット41をスパッタリングガスでスパッタリングすることで、種結晶5
5a上にターゲットに含まれる原子が堆積するが、このとき種結晶55aを核として結晶
成長するため、種結晶55a上に六方晶構造の結晶を有する結晶性酸化物半導体膜55b
を形成することができる。なお、基板51は、基板支持体40に設けられるヒータによっ
て加熱されるため、種結晶55aを核とし、被表面に堆積する原子が酸化されつつ結晶成
長し、結晶性酸化物半導体膜を作製方法することができる。
【0107】
このときのヒータによる基板の加熱温度は200℃以上400℃以下、好ましくは250
℃以上350℃以下である。200℃以上400℃以下、好ましくは250℃以上350
℃以下に基板を加熱しながら成膜をすることによって第1の加熱処理がなされる。なお、
スパッタリング時における被成膜面の温度は、250℃以上基板の熱処理上限温度以下と
する。
【0108】
結晶性酸化物半導体膜55bは、種結晶55aを核とし、ターゲット41の表面における
原子量の重い原子、及び種結晶55aの形成の後にスパッタリングされた原子量の軽い原
子が酸化されつつ結晶成長するため、種結晶55aと同様に、a-b面において六角形の
格子を有する結合を有し、a-b面に概略平行な基板平面に概略垂直なc軸を有している
亜鉛を含む六方晶構造の結晶を有する。即ち、種結晶55a及び結晶性酸化物半導体膜5
5bで構成される結晶性酸化物半導体膜55は、酸化物絶縁膜53表面に平行なa-b面
において六角形の格子を有する結合を有し、a-b面に概略平行な基板平面に概略垂直な
c軸を有している亜鉛を含む六方晶構造の結晶を有する。本実施の形態で示す結晶性酸化
物半導体膜55は、非晶質構造ではなく、結晶性構造、理想的には単結晶構造であり、基
板平面に概略垂直なc軸を有している結晶性酸化物半導体(C Axis Aligne
d Crystal; CAAC OSともよぶ。)である。
【0109】
なお、基板支持体40及びターゲット41を有する処理室の圧力を0.4Pa以下とする
ことで、結晶性酸化物半導体膜の表面及び膜中への、アルカリ金属、水素等の不純物の混
入を低減することができる。
【0110】
また、スパッタリング装置の処理室のリークレートを1×10-10Pa・m3/秒以下
とすることで、スパッタリング法による成膜途中における結晶性酸化物半導体膜への、ア
ルカリ金属、水素、水、水酸基または水素化物等の不純物の混入を低減することができる
。また、排気系として吸着型の真空ポンプを用いることで、排気系からアルカリ金属、水
素、水、水酸基または水素化物等の不純物の逆流を低減することができる。
【0111】
また、ターゲット41の純度を、99.99%以上とすることで、結晶性酸化物半導体膜
に混入するアルカリ金属、水素、水、水酸基または水素化物等を低減することができる。
また、当該ターゲットを用いることで、結晶性酸化物半導体膜55において、リチウムの
濃度を5×1015cm-3以下、好ましくは1×1015cm-3以下、ナトリウムの
濃度を5×1016cm-3以下、好ましくは1×1016cm-3以下、さらに好まし
くは1×1015cm-3以下、カリウムの濃度を5×1015cm-3以下、好ましく
は1×1015cm-3以下とすることができる。
【0112】
アルカリ金属、及びアルカリ土類金属は結晶性酸化物半導体にとっては悪性の不純物であ
り、少ないほうがよい。特にアルカリ金属のうち、ナトリウムは結晶性酸化物半導体に接
する酸化物絶縁膜に拡散し、ナトリウムイオン(Na+)となる。また、結晶性酸化物半
導体内において、金属と酸素の結合を分断し、あるいは結合中に割り込む。その結果、ト
ランジスタ特性の劣化(例えば、ノーマリオン化(しきい値の負へのシフト)、移動度の
低下等)をもたらす。加えて、特性のばらつきの原因ともなる。このような問題は、特に
結晶性酸化物半導体中の水素の濃度が十分に低い場合において顕著となる。したがって、
結晶性酸化物半導体中の水素の濃度が5×1019cm-3以下、特に5×1018cm
-3以下である場合には、アルカリ金属の濃度を上記の値にすることが強く求められる。
【0113】
以上の条件により、結晶性酸化物半導体膜を形成することで、アルカリ金属の濃度が5×
1016atoms/cm3以下、水素の濃度が1×1019atoms/cm3以下と
した、不純物を極めて低減した結晶性酸化物半導体膜を形成することができる。結晶性酸
化物半導体膜の不純物を低減することで、種結晶及び結晶性酸化物半導体膜の結晶成長が
促進され、さらに単結晶、または実質的に単結晶である結晶性酸化物半導体膜を形成する
ことができる。
【0114】
結晶性酸化物半導体において金属元素と結合する酸素は、非晶質酸化物半導体と比較して
水素と反応性が低いため、欠陥の生成が低減される。このため、結晶性酸化物半導体膜を
チャネル領域とするトランジスタは、光照射やBT試験前後でのしきい値電圧の変化量が
少なく、安定した電気的特性を有する。
【0115】
さらに、結晶性酸化物半導体膜の成膜工程において、処理室の圧力、被成膜面の温度、処
理室のリークレート、及びターゲットの純度のうち、一以上、好ましくは全てを上記条件
とすることで、酸化物絶縁膜及び結晶性酸化物半導体膜に含まれる水素及びアルカリ金属
の混入を低減することができる。また、酸化物絶縁膜から結晶性酸化物半導体膜への水素
及びアルカリ金属の拡散を低減することができる。酸化物半導体に含まれる水素は、金属
原子と結合する酸素と反応して水になると共に、酸素が脱離した格子(あるいは酸素が脱
理した部分)には欠陥が形成されてしまう。
【0116】
このため、結晶性酸化物半導体膜の成膜工程において、不純物を極めて減らすことにより
、結晶性酸化物半導体膜の欠陥を低減することが可能である。これらのことから、結晶性
酸化物半導体膜をチャネル領域とするトランジスタは、光照射やBT試験前後でのしきい
値電圧の変化量が少なく、安定した電気的特性を有する。
【0117】
本実施の形態では、同一のスパッタリング工程において、ターゲットに含まれる原子量の
違いを利用し、原子量の小さい亜鉛を優先的に酸化物絶縁膜に堆積させ、種結晶を形成す
ると共に、種結晶上に原子量の大きいスズ、インジウム等を結晶成長させつつ堆積させる
ため、複数の工程を経ずとも、結晶性酸化物半導体膜を形成することができる。さらには
、亜鉛を含む六方晶構造の結晶を有する種結晶とし、六方晶構造の酸化物半導体を堆積す
るため、単結晶、または実質的に単結晶である結晶性の酸化物半導体膜を形成することが
できる。
【0118】
なお、結晶性酸化物半導体膜55に用いることが可能な金属酸化物は、エネルギーギャッ
プが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である。このよ
うに、バンドギャップの広い金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減
することができる。
【0119】
本実施の形態では、In-Ga-Zn-O系金属酸化物ターゲットを用い、スパッタリン
グガスとして、アルゴン及び酸素の混合ガスを用いたスパッタリング法により結晶性酸化
物半導体膜55を形成する。
【0120】
次に、基板51に加熱処理を施して、結晶性酸化物半導体膜55から水素を放出させると
共に、酸化物絶縁膜53に含まれる酸素の一部を、結晶性酸化物半導体膜55と、酸化物
絶縁膜53における結晶性酸化物半導体膜55の界面近傍とに拡散させる。
【0121】
加熱処理温度は、結晶性酸化物半導体膜55から水素を放出させると共に、酸化物絶縁膜
53に含まれる酸素の一部を放出させ、さらには結晶性酸化物半導体膜55に拡散させる
温度が好ましく、代表的には、150℃以上基板51の歪み点未満、好ましくは250℃
以上450℃以下とする。なお、加熱処理温度は、結晶性酸化物半導体膜の成膜温度より
高くすることで、酸化物絶縁膜53に含まれる酸素の一部をより多く放出させることがで
きる。
【0122】
加熱処理は、不活性ガス雰囲気で行うことが好ましく、代表的には、ヘリウム、ネオン、
アルゴン、キセノン、クリプトン等の希ガス、または窒素雰囲気で行うことが好ましい。
また、減圧雰囲気にて行っても良い。
【0123】
当該加熱処理により、結晶性酸化物半導体膜55から水素を放出させると共に、酸化物絶
縁膜53に含まれる酸素の一部を、結晶性酸化物半導体膜55と、酸化物絶縁膜53にお
ける結晶性酸化物半導体膜55の界面近傍とに拡散させることができる。当該工程により
、結晶性酸化物半導体膜55中に含まれる酸素欠損を低減することができると共に、酸化
物絶縁膜における結晶性酸化物半導体膜55の近傍に拡散させることで、酸化物半導体膜
及び酸化物絶縁膜の界面における欠陥を低減することができる。この結果、水素濃度及び
酸素欠損が低減された結晶性酸化物半導体膜を形成することができる。
【0124】
次に、加熱処理された結晶性酸化物半導体膜上にマスクを形成した後、当該マスクを用い
て加熱処理された結晶性酸化物半導体膜を選択的にエッチングして、結晶性酸化物半導体
膜59を形成する。この後、マスクを除去する(
図1(C)参照。)。
【0125】
結晶性酸化物半導体膜55をエッチングするためのマスクは、フォトリソグラフィ工程、
インクジェット法、印刷法等を適宜用いることができる。また、結晶性酸化物半導体膜5
5のエッチングはウエットエッチングまたはドライエッチングを適宜用いることができる
。
【0126】
次に、
図1(D)に示すように、結晶性酸化物半導体膜59に接する一対の電極61を形
成する。
【0127】
一対の電極61は、ソース電極及びドレイン電極として機能する。
【0128】
一対の電極61は、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タング
ステンから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金
属元素を組み合わせた合金などを用いて形成することができる。また、マンガン、ジルコ
ニウムのいずれか一または複数から選択された金属元素を用いてもよい。また、一対の電
極61は、単層構造でも、二層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むア
ルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン
膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層する二層構
造、窒化タンタル膜上にタングステン膜を積層する二層構造、チタン膜と、そのチタン膜
上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三層構造などがある。
【0129】
また、一対の電極61は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化
物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物
、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加した
インジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を適用することもできる。また、上
記透光性を有する導電性材料と、上記金属元素の積層構造とすることもできる。
【0130】
一対の電極61は、印刷法またはインクジェット法により形成する。若しくは、スパッタ
リング法、CVD法、蒸着法等で導電膜を形成した後、該導電膜上にマスクを形成して導
電膜をエッチングして形成する。導電膜上に形成するマスクは印刷法、インクジェット法
、フォトリソグラフィ法を適宜用いることができる。
【0131】
ここでは、結晶性酸化物半導体膜59及び酸化物絶縁膜53上に導電膜を形成した後、導
電膜を所定の形状にエッチングして一対の電極61を形成する。
【0132】
なお、加熱処理された結晶性酸化物半導体膜上に導電膜を形成した後、多階調フォトマス
クによって、凹凸状のマスクを形成し、当該マスクを用いて加熱処理された結晶性酸化物
半導体膜及び導電膜をエッチングした後、アッシングにより凹凸状のマスクを分離し、当
該分離されたマスクにより導電膜を選択的にエッチングすることで、結晶性酸化物半導体
膜及び一対の電極を形成することができる。当該工程により、フォトマスク数及びフォト
リソグラフィ工程数を削減することができる。
【0133】
次に、結晶性酸化物半導体膜59及び一対の電極61上にゲート絶縁膜63を形成する。
【0134】
次に、ゲート絶縁膜63上であって、結晶性酸化物半導体膜59と重畳してゲート電極6
5を形成する。
【0135】
この後、保護膜として絶縁膜69を形成してもよい(
図1(E)参照。)。また、ゲート
絶縁膜63及び絶縁膜69にコンタクトホールを形成した後、一対の電極61に接続する
配線を形成してもよい。
【0136】
ゲート絶縁膜63は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン、窒化酸化シリコ
ン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、または酸化ガリウムを単層でまたは積層
して形成することができる。なお、ゲート絶縁膜63は、結晶性酸化物半導体膜59と接
する部分が酸素を含むことが好ましく、特に好ましくは酸化物絶縁膜53と同様に加熱に
より酸素を放出する酸化物絶縁膜により形成する。酸化シリコン膜を用いることで、結晶
性酸化物半導体膜59に酸素を拡散させることができ、特性を良好にすることができる。
【0137】
また、ゲート絶縁膜63として、ハフニウムシリケート(HfSiOx)、窒素が添加さ
れたハフニウムシリケート(HfSixOyNz)、窒素が添加されたハフニウムアルミ
ネート(HfAlxOyNz)、酸化ハフニウム、酸化イットリウムなどのhigh-k
材料を用いることでゲートリークを低減できる。さらには、high-k材料と、酸化シ
リコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化
窒化アルミニウム、及び酸化ガリウムのいずれか一以上との積層構造とすることができる
。ゲート絶縁膜63の厚さは、1nm以上300nm以下、より好ましくは5nm以上5
0nm以下とするとよい。
【0138】
なお、ゲート絶縁膜63を形成する前に、結晶性酸化物半導体膜59の表面を、酸素、オ
ゾン、一酸化二窒素等の酸化性ガスのプラズマに曝し、結晶性酸化物半導体膜59の表面
を酸化し、酸素欠損を低減してもよい。
【0139】
ゲート電極65は、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タング
ステンから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金
属元素を組み合わせた合金などを用いて形成することができる。また、マンガン、ジルコ
ニウムのいずれか一または複数から選択された金属元素を用いてもよい。また、ゲート電
極65は、単層構造でも、二層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むア
ルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン
膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層する二層構
造、窒化タンタル膜上にタングステン膜を積層する二層構造、チタン膜と、そのチタン膜
上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三層構造などがある。
【0140】
また、ゲート電極65は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化
物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物
、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加した
インジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を適用することもできる。また、上
記透光性を有する導電性材料と、上記金属元素の積層構造とすることもできる。
【0141】
絶縁膜69は、ゲート絶縁膜63に列挙した絶縁膜を適宜用いて形成することができる。
また、絶縁膜69としてスパッタリング法またはCVD法で成膜される窒化シリコン膜を
形成すると、外部からの水分やアルカリ金属の侵入を防止することが可能であり、結晶性
酸化物半導体膜の不純物の含有量を低減することができる。
【0142】
なお、ゲート絶縁膜63の形成の後、または絶縁膜69の形成の後、加熱処理を行っても
よい。当該加熱処理によって、ゲート絶縁膜63から結晶性酸化物半導体積膜へ酸素が拡
散する。この結果、加熱処理の温度が高いほど、光を照射しながら-BT試験によるしき
い値の変化量は抑制される。
【0143】
以上の工程により、結晶性酸化物半導体膜をチャネル領域に有するトランジスタ120を
作製することができる。a-b面において六角形の格子を有する結合を有し、a-b面に
概略平行な基板平面に概略垂直なc軸を有する六方晶構造の結晶を有する結晶性酸化物半
導体膜をチャネル領域に有するトランジスタ120は、光照射やBT試験前後でのしきい
値電圧の変化量が少ないため、安定した電気的特性を有するトランジスタを作製すること
ができる。
【0144】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1と異なる構造のトランジスタの作製方法について、
図5
及び
図6を用いて説明する。本実施の形態では、酸化物絶縁膜及び結晶性酸化物半導体膜
の間に一対の電極が設けられる点が実施の形態1と異なる。なお、
図6の一点破線C-D
の断面図は
図5(D)に相当する。
【0145】
図5(A)に示すように、実施の形態1と同様に、基板51上に酸化物絶縁膜53を形成
する。次に、酸化物絶縁膜53上に一対の電極71を形成する。次に、一対の電極71及
び酸化物絶縁膜53上に、結晶性酸化物半導体膜73を形成する。
【0146】
一対の電極71は、実施の形態1に示す一対の電極61と同様の材料及び作製方法を適宜
用いて形成することができる。
【0147】
結晶性酸化物半導体膜73は、実施の形態1に示す結晶性酸化物半導体膜55と同様の材
料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0148】
次に、実施の形態1と同様に基板51を加熱して、水素濃度及び酸素欠損が低減された結
晶性酸化物半導体膜を形成した後、水素濃度及び酸素欠損が低減された結晶性酸化物半導
体膜上にマスクを形成し、水素濃度及び酸素欠損が低減された結晶性酸化物半導体膜を選
択的にエッチングして、結晶性酸化物半導体膜75を形成する。この後、マスクを除去す
る(
図5(B)参照。)。
【0149】
次に、
図5(C)に示すように、一対の電極71及び結晶性酸化物半導体膜75上にゲー
ト絶縁膜77を形成する。次に、ゲート絶縁膜77上であって、結晶性酸化物半導体膜7
5と重畳してゲート電極79を形成する。次に、ゲート絶縁膜77及びゲート電極79上
に保護膜として絶縁膜81を形成してもよい。
【0150】
ゲート絶縁膜77は、実施の形態1に示すゲート絶縁膜63と同様の材料及び作製方法を
適宜用いて形成することができる。
【0151】
ゲート電極79は、実施の形態1に示すゲート電極65と同様の材料及び作製方法を適宜
用いて形成することができる。
【0152】
絶縁膜81は、実施の形態1に示す絶縁膜69と同様の材料及び作製方法を適宜用いて形
成することができる。
【0153】
次に、絶縁膜81上にマスクを形成した後、ゲート絶縁膜77及び絶縁膜81の一部をエ
ッチングしてコンタクトホールを形成する。次に、コンタクトホールを介して、一対の電
極71に接続する配線83を形成する。
【0154】
配線83は、一対の電極71と同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができ
る。
【0155】
以上の工程により、結晶性酸化物半導体膜をチャネル領域に有するトランジスタを作製す
ることができる。a-b面において六角形の格子を有する結合を有し、a-b面に概略平
行な基板平面に概略垂直なc軸を有している六方晶構造の結晶を有する結晶性酸化物半導
体膜をチャネル領域に有するトランジスタは、光照射やBT試験前後でのしきい値電圧の
変化量が少ないため、安定した電気的特性を有するトランジスタを作製することができる
。
【0156】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0157】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1及び実施の形態2と異なるトランジスタについて、
図7
及び
図8を用いて説明する。本実施の形態では、ゲート電極が基板側に設けられるボトム
ゲート構造のトランジスタである点が実施の形態1及び実施の形態2と異なる。なお、図
8の一点破線E-Fの断面図は
図7(C)に相当する。
【0158】
図7(A)に示すように、基板51上に酸化物絶縁膜53を形成する。次に、酸化物絶縁
膜53上にゲート電極91を形成する。次に、酸化物絶縁膜53及びゲート電極91上に
ゲート絶縁膜93を形成する。次に、ゲート絶縁膜93上に、実施の形態1と同様に結晶
性酸化物半導体膜95を形成する。
【0159】
ゲート電極91は、実施の形態1に示すゲート電極65と同様に形成することができる。
【0160】
ゲート絶縁膜93は、実施の形態1に示すゲート絶縁膜63と同様に形成することができ
る。
【0161】
結晶性酸化物半導体膜95は、実施の形態1に示す結晶性酸化物半導体膜55と同様に形
成することができる。
【0162】
次に、実施の形態1と同様に、結晶性酸化物半導体膜95を加熱して、水素濃度及び酸素
欠損が低減された結晶性酸化物半導体膜を形成する。
【0163】
次に、水素濃度及び酸素欠損が低減された結晶性酸化物半導体膜上にマスクを形成して、
水素濃度及び酸素欠損が低減された結晶性酸化物半導体膜を選択的にエッチングして、結
晶性酸化物半導体膜99を形成する。この後マスクを除去する(
図7(B)参照。)。
【0164】
次に、
図7(C)に示すように、結晶性酸化物半導体膜99上に一対の電極101を形成
する。次に、結晶性酸化物半導体膜99及び一対の電極101上に絶縁膜103を形成す
る。
【0165】
一対の電極101は、実施の形態1に示す一対の電極61と同様の材料及び作製方法を適
宜用いて形成することができる。
【0166】
絶縁膜103は、実施の形態1に示すゲート絶縁膜63と同様に形成することができる。
【0167】
この後、加熱処理を行ってもよい。
【0168】
以上の工程により、結晶性酸化物半導体膜をチャネル領域に有するトランジスタを作製す
ることができる。a-b面において六角形の格子を有する結合を有し、a-b面に概略平
行な基板平面に概略垂直なc軸を有している六方晶構造の結晶を有する結晶性酸化物半導
体膜をチャネル領域に有するトランジスタは、光照射やBT試験前後でのしきい値電圧の
変化量が少ないため、安定した電気的特性を有するトランジスタを作製することができる
。
【0169】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0170】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態3とは異なるボトムゲート型のトランジスタについて、図
9及び
図10を用いて説明する。本実施の形態では、ゲート絶縁膜及び酸化物半導体膜の
間に一対の電極が設けられる点が実施の形態3と異なる。なお、
図10の一点破線G-H
の断面図は
図9(D)に相当する。
【0171】
図9(A)に示すように、基板51上に酸化物絶縁膜53を形成する。次に、酸化物絶縁
膜53上にゲート電極91を形成する。次に、酸化物絶縁膜53及びゲート電極91上に
ゲート絶縁膜93を形成する。次に、ゲート絶縁膜93上に、一対の電極105を形成す
る。
【0172】
一対の電極105は、実施の形態1に示す一対の電極61と同様の材料及び作製方法を適
宜用いて形成することができる。
【0173】
次に、
図9(B)に示すように、ゲート絶縁膜93上に、実施の形態1と同様に結晶性酸
化物半導体膜107を形成する。
【0174】
結晶性酸化物半導体膜107は、実施の形態1に示す結晶性酸化物半導体膜55と同様に
形成することができる。
【0175】
次に、実施の形態1と同様に、結晶性酸化物半導体膜107を加熱して、水素濃度及び酸
素欠損が低減された結晶性酸化物半導体膜を形成する。
【0176】
次に、水素濃度及び酸素欠損が低減された結晶性酸化物半導体膜上にマスクを形成して、
水素濃度及び酸素欠損が低減された結晶性酸化物半導体膜を選択的にエッチングして、結
晶性酸化物半導体膜109を形成する。この後マスクを除去する(
図9(C)参照。)。
【0177】
次に、
図9(D)に示すように、結晶性酸化物半導体膜109及び一対の電極105上に
保護膜111を形成する。
【0178】
保護膜111は、実施の形態1に示すゲート絶縁膜63と同様に形成することができる。
【0179】
この後、加熱処理を行ってもよい。
【0180】
以上の工程により、結晶性酸化物半導体膜をチャネル領域に有するトランジスタを作製す
ることができる。a-b面において六角形の格子を有する結合を有し、a-b面に概略平
行な基板平面に概略垂直なc軸を有している六方晶構造の結晶を有する結晶性酸化物半導
体膜をチャネル領域に有するトランジスタは、光照射やBT試験前後でのしきい値電圧の
変化量が少ないため、安定した電気的特性を有するトランジスタを作製することができる
。
【0181】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0182】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態1乃至実施の形態4において、複数のゲート電極を有する
トランジスタについて説明する。ここでは、実施の形態3に示すトランジスタを用いて説
明するが、実施の形態1、実施の形態2及び実施の形態4に適宜適用することができる。
【0183】
実施の形態3と同様に、
図11に示すように、基板51上に酸化物絶縁膜53を形成し、
酸化物絶縁膜53上に、ゲート電極91、ゲート絶縁膜93を形成し、ゲート絶縁膜93
上に、結晶性酸化物半導体膜99、一対の電極101、及び絶縁膜103を形成する。
【0184】
次に、絶縁膜103上であって、結晶性酸化物半導体膜99と重畳してバックゲート電極
113を形成する。次に、絶縁膜103及びバックゲート電極113上に保護膜として絶
縁膜115を形成してもよい。
【0185】
バックゲート電極113は、実施の形態1に示すゲート電極65と同様に形成することが
できる。
【0186】
絶縁膜103は、バックゲート電極113側のゲート絶縁膜として機能する。絶縁膜11
5は、実施の形態1に示す絶縁膜69と同様に形成することができる。
【0187】
ゲート電極91及びバックゲート電極113は接続されていてもよい。この場合、ゲート
電極91及びバックゲート電極113は同電位となるため、チャネル領域が結晶性酸化物
半導体膜99のゲート絶縁膜93側、及び絶縁膜103側に形成されるため、トランジス
タのオン電流及び電界効果移動度を高めることができる。
【0188】
または、ゲート電極91及びバックゲート電極113は接続されず、異なる電位が印加さ
れてもよい。この場合、トランジスタのしきい値電圧を制御することができる。
【0189】
なお、本実施の形態では、一対の電極101を結晶性酸化物半導体膜99及び絶縁膜10
3の間に形成したが、ゲート絶縁膜93及び結晶性酸化物半導体膜99の間に形成しても
よい。
【0190】
以上の工程により、ゲート電極を複数有するトランジスタを作製することができる。
【0191】
(実施の形態6)
本実施の形態では、実施の形態1乃至実施の形態5と比較して、結晶性酸化物半導体膜及
び一対の電極の接触抵抗を低減できるトランジスタの作製方法について、説明する。
【0192】
実施の形態1と同様に、
図1(A)及び
図1(B)の工程により酸化物絶縁膜53上に結
晶性酸化物半導体膜55を形成する。次に、結晶性酸化物半導体膜55を加熱して、水素
濃度及び酸素欠損が低減された結晶性酸化物半導体膜を形成する。次に、
図12(A)に
示すように、水素濃度及び酸素欠損が低減された結晶性酸化物半導体膜57上に、n型の
導電型を有するバッファ84を形成する。
【0193】
n型の導電型を有するバッファ84としては、インジウム酸化物、インジウム錫酸化物、
インジウム亜鉛酸化物、錫酸化物、亜鉛酸化物、錫亜鉛酸化物から選ばれた一つの金属酸
化物であるか、または該金属酸化物にアルミニウム、ガリウム、シリコンから選ばれた元
素が一つ以上含まれている材料を用いることができる。この構成とすることで、後に形成
されるソース電極及びドレイン電極として機能する一対の電極及び結晶性酸化物半導体膜
の接触抵抗を低減することができる。
【0194】
ここでは、結晶性酸化物半導体膜を加熱して結晶性酸化物半導体膜から水素を放出させる
と共に、酸化物絶縁膜から結晶性酸化物半導体膜に酸素を拡散させた後、当該結晶性酸化
物半導体膜上にn型の導電型を有するバッファ84を形成するため、結晶性酸化物半導体
膜からの水素の放出を十分に行うことができる。この結果、結晶性酸化物半導体膜中の水
素濃度及び酸素欠損を低減することが可能であり、トランジスタのしきい値電圧のマイナ
スシフトを低減することができる。
【0195】
次に、n型の導電型を有するバッファ84上にマスクを形成した後、水素濃度及び酸素欠
損が低減された結晶性酸化物半導体膜及びn型の導電型を有するバッファ84をエッチン
グして、結晶性酸化物半導体膜59及びn型の導電型を有するバッファ85を形成する。
この後、マスクを除去する(
図12(B)参照。)。
【0196】
次に、
図12(C)に示すように、結晶性酸化物半導体膜59及びn型の導電型を有する
バッファ85上に一対の電極61を形成する。ここでは、ゲート絶縁膜の膜質を保つため
、一対の電極61として、ゲート絶縁膜から、酸素を引き抜かない材料を用いることが好
ましい。このような一対の電極61の材料として、タングステン、モリブデン等がある。
しかしながら、タングステン及びモリブデンは結晶性酸化物半導体膜及びゲート絶縁膜と
接する領域において抵抗の高い金属酸化物が形成されてしまう。そこで、結晶性酸化物半
導体膜59及び一対の電極61の間に、n型の導電型を有するバッファを設けることで、
結晶性酸化物半導体膜59及び一対の電極61の接触抵抗を低減することができる。
【0197】
次に、一対の電極61上に形成されるマスク(図示しない)を用いて、n型の導電型を有
するバッファ85の露出部をエッチングして、一対のn型の導電型を有するバッファ87
を形成する(
図12(D)参照)。
【0198】
なお、一対の電極61上に形成されるマスクを除去した後、一対の電極61をマスクとし
て、n型の導電型を有するバッファ85の露出部をエッチングして、一対のn型の導電型
を有するバッファ87を形成してもよい。
【0199】
n型の導電型を有するバッファ85をエッチングする際には、結晶性酸化物半導体膜59
がエッチングされず、選択的にn型の導電型を有するバッファ85をエッチングする条件
(エッチング選択比の高い条件)を用いることが好ましい。なお、結晶性酸化物半導体膜
59及びn型の導電型を有するバッファ85のエッチング選択比が低い場合は、n型の導
電型を有するバッファ85のエッチングの際に結晶性酸化物半導体膜59の一部もエッチ
ングされ、溝部(凹部)を有する形状となることもある。
【0200】
本実施の形態により、結晶性酸化物半導体膜59及び一対の電極61の間にn型の導電型
を有するバッファ87を有するため、結晶性酸化物半導体膜59及び一対の電極61の接
触抵抗を低減することができる。この結果、トランジスタのオン電流の低減を抑えること
ができる。また、BT試験においてマイナスゲートバイアスストレスを印加する前後のオ
ン電流の変化量(Ion劣化)を抑えることができる。
【0201】
次に、実施の形態1と同様に、ゲート絶縁膜63、ゲート電極65、及び絶縁膜69を形
成する(
図12(E)参照)。また、ゲート絶縁膜63及び絶縁膜69にコンタクトホー
ルを形成した後、一対の電極61に接続する配線を形成してもよい。
【0202】
以上の工程により、結晶性酸化物半導体膜をチャネル形成領域に有するトランジスタを作
製することができる。
【0203】
本実施の形態により、酸化物半導体膜及び一対の配線の間に接触抵抗を低減するn型の導
電型を有するバッファを形成するため、トランジスタのオン電流の低減を抑えると共に、
BT試験においてマイナスゲートバイアスストレスを印加する前後のオン電流の変化量(
Ion劣化)を抑えることができる。
【0204】
本実施の形態は他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【0205】
(実施の形態7)
本実施の形態では、実施の形態1に示した酸化物絶縁膜53の形成から加熱処理を行い、
ソース電極またはドレイン電極となる導電膜を形成するまでの工程を大気に触れることな
く連続的に行う製造装置の一例を
図13に示す。
【0206】
図13に示す製造装置は、枚葉式マルチチャンバー装置であり、3つのスパッタ装置10
a、10b、10c、被処理基板を収容するカセットポート14を3つ有する基板供給室
11、ロードロック室12a、12b、搬送室13、基板加熱室15などを有している。
なお、基板供給室11及び搬送室13には、被処理基板を搬送するための搬送ロボットが
それぞれ配置されている。スパッタ装置10a、10b、10c、搬送室13、及び基板
加熱室15は、水素及び水分をほとんど含まない雰囲気(不活性雰囲気、減圧雰囲気、乾
燥空気雰囲気など)下に制御することが好ましく、例えば、水分については露点-40℃
以下、好ましくは露点-50℃以下の乾燥窒素雰囲気とする。
【0207】
図13の製造装置を用いた作製工程の手順の一例は、まず、基板供給室11から被処理基
板を搬送し、ロードロック室12aと搬送室13を経て基板加熱室15に移動させ、基板
加熱室15で被処理基板に付着している水分を真空雰囲気での加熱処理などで除去し、そ
の後、搬送室13を経てスパッタリング装置10cに被処理基板を移動させ、スパッタリ
ング装置10c内で酸化物絶縁膜53を成膜する。そして、大気に触れることなく、搬送
室13を経てスパッタリング装置10aに被処理基板を移動させ、スパッタリング装置1
0a内で酸化物絶縁膜53上に亜鉛を優先的に堆積させた後、酸化させて亜鉛を含む六方
晶構造の結晶を有する種結晶55aを形成し、引き続き、同一スパッタリング装置内でス
パッタリングすることで、種結晶55aを核として結晶成長した、種結晶55a上に六方
晶構造の結晶を有する結晶性酸化物半導体膜55bを形成する。そして、大気に触れるこ
となく、搬送室13を経て基板加熱室15に被処理基板を移動させ、加熱処理を行う。そ
して、大気に触れることなく、搬送室13を経てスパッタリング装置10bに被処理基板
を移動させ、スパッタリング装置10b内で金属ターゲットを用いてソース電極およびド
レイン電極を形成するための導電膜を結晶性酸化物半導体膜55b上に成膜する。
【0208】
このように、
図13の製造装置を用いることによって大気に触れることなく、トランジス
タの作製プロセスの一部を進めることができる。
【0209】
また、本実施の形態は、他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【0210】
(実施の形態8)
本実施の形態では、実施の形態1乃至7に示す酸化物半導体を用いたトランジスタを使用
し、電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限
が無い、新たな構造の半導体装置の一例を示す。
【0211】
実施の形態1乃至7に示す酸化物半導体を用いたトランジスタは、オフ電流が極めて小さ
いため、これを用いることにより極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能であ
る。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極め
て低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力
の供給がない場合であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0212】
図14は、半導体装置の構成の一例である。
図14(A)には、半導体装置の断面を、図
14(B)には、半導体装置の平面を、それぞれ示す。ここで、
図14(A)は、
図14
(B)のE1-E2およびF1-F2における断面に相当する。
図14(A)および
図1
4(B)に示す半導体装置は、下部に酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタ26
0を有し、上部に酸化物半導体を用いたトランジスタ120を有するものである。トラン
ジスタ120は、実施の形態1と同一であるため、
図14(A)、(B)、(C)におい
て
図1(E)と同じ箇所は、同じ符号を用いて説明する。
【0213】
トランジスタ260は、半導体材料(例えば、シリコンなど)を含む基板200に設けら
れたチャネル形成領域216と、チャネル形成領域216を挟むように設けられた不純物
領域214および高濃度不純物領域220(これらをあわせて単に不純物領域とも呼ぶ)
と、チャネル形成領域216上に設けられたゲート絶縁膜208と、ゲート絶縁膜208
上に設けられたゲート電極210と、不純物領域と電気的に接続するソース電極またはド
レイン電極230a、およびソース電極またはドレイン電極230bを有する。
【0214】
ここで、ゲート電極210の側面にはサイドウォール絶縁膜218が設けられている。ま
た、基板200の、表面に垂直な方向から見てサイドウォール絶縁膜218と重ならない
領域には、高濃度不純物領域220を有し、高濃度不純物領域220に接する金属化合物
領域224が存在する。また、基板200上にはトランジスタ260を囲むように素子分
離絶縁膜206が設けられており、トランジスタ260を覆うように、層間絶縁膜226
および層間絶縁膜128が設けられている。ソース電極またはドレイン電極230a、お
よびソース電極またはドレイン電極230bは、層間絶縁膜226および層間絶縁膜12
8に形成された開口を通じて、金属化合物領域224と電気的に接続されている。つまり
、ソース電極またはドレイン電極230a、およびソース電極またはドレイン電極230
bは、金属化合物領域224を介して高濃度不純物領域220および不純物領域214と
電気的に接続されている。なお、トランジスタ260の集積化などのため、サイドウォー
ル絶縁膜218が形成されない場合もある。
【0215】
図14に示すトランジスタ120は、結晶性酸化物半導体膜59、ソース電極またはドレ
イン電極として機能する一対の電極61、ゲート絶縁膜63、ゲート電極65を含む。ト
ランジスタ120は、実施の形態1に示す工程で得ることができる。
【0216】
図14において、結晶性酸化物半導体膜59の被形成面である層間絶縁膜128の平坦性
を高めることで、結晶性酸化物半導体膜59の膜厚分布を均一にすることができるため、
トランジスタ120の特性を向上させることができる。ただし、チャネル長は、短いもの
とし、例えば0.8μmや3μmとする。また、層間絶縁膜128は、酸化物絶縁膜53
に相当し、同じ材料で形成する。
【0217】
また、
図14に示す容量素子265は、一対の電極61の一方と、誘電体として機能する
ゲート絶縁膜63と、電極248とで容量を形成する。
【0218】
また、トランジスタ120および容量素子265の上には、絶縁膜69が設けられており
、絶縁膜69上には保護絶縁膜110が設けられている。
【0219】
また、一対の電極61と同じ工程で形成される配線242a、242bが設けられている
。配線242aは、ソース電極またはドレイン電極230aと電気的に接続し、配線24
2bは、ソース電極またはドレイン電極230bと電気的に接続する。
【0220】
また、
図14(C)に回路構成を示す。なお、回路図においては、酸化物半導体を用いた
トランジスタであることを示すために、OSの符号を併せて付す場合がある。
【0221】
図14(C)において、第1の配線(1st Line)とトランジスタ260のソース
電極とは、電気的に接続され、第2の配線(2nd Line)とトランジスタ260の
ドレイン電極とは、電気的に接続されている。また、第3の配線(3rd Line)と
トランジスタ120のソース電極またはドレイン電極の一方とは、電気的に接続され、第
4の配線(4th Line)と、トランジスタ120のゲート電極とは、電気的に接続
されている。そして、トランジスタ260のゲート電極と、トランジスタ120のソース
電極またはドレイン電極の他方は、容量素子265の電極の一方と電気的に接続され、第
5の配線(5th Line)と、容量素子265の電極の他方は電気的に接続されてい
る。
【0222】
図14(C)に示す半導体装置では、トランジスタ260のゲート電極の電位が保持可能
という特徴を生かすことで、次のように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能である
。
【0223】
はじめに、情報の書き込みおよび保持について説明する。まず、第4の配線の電位を、ト
ランジスタ120がオン状態となる電位にして、トランジスタ120をオン状態とする。
これにより、第3の配線の電位が、トランジスタ260のゲート電極、および容量素子2
65に与えられる。すなわち、トランジスタ260のゲート電極には、所定の電荷が与え
られる(書き込み)。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電荷(以下Lowレベ
ル電荷、Highレベル電荷という)のいずれかが与えられるものとする。その後、第4
の配線の電位を、トランジスタ120がオフ状態となる電位にして、トランジスタ120
をオフ状態とすることにより、トランジスタ260のゲート電極に与えられた電荷が保持
される(保持)。
【0224】
トランジスタ120のオフ電流は極めて小さい、具体的には、室温でのオフ電流(ここで
は、単位チャネル幅(1μm)あたりの値)は100zA/μm(1zA(ゼプトアンペ
ア)は1×10-21A)以下、望ましくは10zA/μm以下であるから、トランジス
タ260のゲート電極の電荷は長時間にわたって保持される。また、実施の形態5に示し
たようにバックゲート電極を設けてもよく、バックゲート電極に電圧を印加することによ
ってトランジスタ120のノーマリーオフ化を確実なものとすることが好ましい。
【0225】
また、基板200としてはシリコン・オン・インシュレータと呼ばれる半導体基板(SO
I基板)を用いることもできる。また、基板200として、ガラスなどの絶縁基板にSO
I層を形成した基板を用いてもよい。ガラス基板上にSOI層を形成したSOI基板の一
例として、水素イオン注入剥離法を用いて、ガラス基板上に薄い単結晶シリコン層を形成
する方法がある。具体的には、イオンドーピング装置を用いてH3
+を照射することで、
シリコン基板の表面から所定の深さに分離層を形成し、表面に絶縁膜を有するガラス基板
をシリコン基板の表面に押しつけて接着させ、分離層の層内または界面を境界として分離
する温度未満であり、且つ分離層が脆弱となる温度で熱処理を行う。その結果、分離層の
層内または界面を境界として半導体基板の一部をシリコン基板から分離させて、ガラス基
板にSOI層を形成する。
【0226】
本実施の形態は、実施の形態1乃至7のいずれか一と組み合わせることができる。
【0227】
(実施の形態9)
本実施の形態では、同一基板上に少なくとも駆動回路の一部と、画素部に配置するトラン
ジスタを作製する例について以下に説明する。
【0228】
画素部に配置するトランジスタは、実施の形態1乃至7のいずれか一に従って形成する。
また、実施の形態1乃至7に示すトランジスタはnチャネル型TFTであるため、駆動回
路のうち、nチャネル型TFTで構成することができる駆動回路の一部を画素部のトラン
ジスタと同一基板上に形成する。
【0229】
アクティブマトリクス型表示装置のブロック図の一例を
図15(A)に示す。表示装置の
基板5300上には、画素部5301、第1の走査線駆動回路5302、第2の走査線駆
動回路5303、信号線駆動回路5304を有する。画素部5301には、複数の信号線
が信号線駆動回路5304から延伸して配置され、複数の走査線が第1の走査線駆動回路
5302、及び走査線駆動回路5303から延伸して配置されている。なお走査線と信号
線との交差領域には、各々、表示素子を有する画素がマトリクス状に設けられている。ま
た、表示装置の基板5300はFPC(Flexible Printed Circu
it)等の接続部を介して、タイミング制御回路(コントローラ、制御ICともいう)に
接続されている。
【0230】
図15(A)では、第1の走査線駆動回路5302、第2の走査線駆動回路5303、信
号線駆動回路5304は、画素部5301と同じ基板5300上に形成される。そのため
、外部に設ける駆動回路等の部品の数が減るので、コストの低減を図ることができる。ま
た、基板5300外部に駆動回路を設けた場合、配線を延伸させる必要が生じ、配線間の
接続数が増える。同じ基板5300上に駆動回路を設けた場合、その配線間の接続数を減
らすことができ、信頼性の向上、又は歩留まりの向上を図ることができる。
【0231】
また、画素部の回路構成の一例を
図15(B)に示す。ここでは、VA型液晶表示パネル
の画素構造を示す。
【0232】
この画素構造は、一つの画素に複数の画素電極が有り、それぞれの画素電極にトランジス
タが接続されている。各トランジスタは、異なるゲート信号で駆動されるように構成され
ている。すなわち、マルチドメイン設計された画素において、個々の画素電極に印加する
信号を、独立して制御する構成を有している。
【0233】
トランジスタ628のゲート配線602と、トランジスタ629のゲート配線603には
、異なるゲート信号を与えることができるように分離されている。一方、データ線として
機能するソース電極又はドレイン電極616は、トランジスタ628とトランジスタ62
9で共通に用いられている。トランジスタ628とトランジスタ629は実施の形態1乃
至7のいずれか一のトランジスタを適宜用いることができる。
【0234】
トランジスタ628と電気的に接続する第1の画素電極と、トランジスタ629と電気的
に接続する第2の画素電極の形状は異なっており、スリットによって分離されている。V
字型に広がる第1の画素電極の外側を囲むように第2の画素電極が形成されている。第1
の画素電極と第2の画素電極に印加する電圧のタイミングを、トランジスタ628及びト
ランジスタ629により異ならせることで、液晶の配向を制御している。トランジスタ6
28はゲート配線602と接続し、トランジスタ629はゲート配線603と接続してい
る。ゲート配線602とゲート配線603は異なるゲート信号を与えることで、トランジ
スタ628とトランジスタ629の動作タイミングを異ならせることができる。
【0235】
また、容量配線690と、誘電体として機能するゲート絶縁膜と、第1の画素電極または
第2の画素電極と電気的に接続する容量電極とで保持容量を形成する。
【0236】
第1の画素電極と液晶層と対向電極が重なり合うことで、第1の液晶素子651が形成さ
れている。また、第2の画素電極と液晶層と対向電極が重なり合うことで、第2の液晶素
子652が形成されている。また、一画素に第1の液晶素子651と第2の液晶素子65
2が設けられたマルチドメイン構造である。
【0237】
なお、
図15(B)に示す画素構成は、これに限定されない。例えば、
図15(B)に示
す画素に新たにスイッチ、抵抗素子、容量素子、トランジスタ、センサ、又は論理回路な
どを追加してもよい。
【0238】
また、画素部の回路構成の一例を
図15(C)に示す。ここでは、有機EL素子を用いた
表示パネルの画素構造を示す。
【0239】
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子および正孔
がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、それらキャ
リア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成
し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このよう
な発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0240】
図15(C)は、半導体装置の例としてデジタル時間階調駆動を適用可能な画素構成の一
例を示す図である。
【0241】
デジタル時間階調駆動を適用可能な画素の構成及び画素の動作について説明する。ここで
は酸化物半導体層をチャネル形成領域に用いるnチャネル型のトランジスタを1つの画素
に2つ用いる例を示す。
【0242】
画素6400は、スイッチング用トランジスタ6401、駆動用トランジスタ6402、
発光素子6404及び容量素子6403を有している。スイッチング用トランジスタ64
01は、ゲート電極が走査線6406に接続され、第1電極(ソース電極及びドレイン電
極の一方)が信号線6405に接続され、第2電極(ソース電極及びドレイン電極の他方
)が駆動用トランジスタ6402のゲート電極に接続されている。駆動用トランジスタ6
402は、ゲート電極が容量素子6403を介して電源線6407に接続され、第1電極
が電源線6407に接続され、第2電極が発光素子6404の第1電極(画素電極)に接
続されている。発光素子6404の第2電極は共通電極6408に相当する。共通電極6
408は、同一基板上に形成される共通電位線と電気的に接続される。
【0243】
なお、発光素子6404の第2電極(共通電極6408)には低電源電位が設定されてい
る。なお、低電源電位とは、電源線6407に設定される高電源電位を基準にして低電源
電位<高電源電位を満たす電位であり、低電源電位としては例えばGND、0Vなどが設
定されていても良い。この高電源電位と低電源電位との電位差を発光素子6404に印加
して、発光素子6404に電流を流して発光素子6404を発光させるため、高電源電位
と低電源電位との電位差が発光素子6404の順方向しきい値電圧以上となるようにそれ
ぞれの電位を設定する。
【0244】
なお、容量素子6403は駆動用トランジスタ6402のゲート容量を代用して省略する
ことも可能である。駆動用トランジスタ6402のゲート容量については、チャネル形成
領域とゲート電極との間で容量が形成されていてもよい。
【0245】
ここで、電圧入力電圧駆動方式の場合には、駆動用トランジスタ6402のゲート電極に
は、駆動用トランジスタ6402が十分にオンするか、オフするかの二つの状態となるよ
うなビデオ信号を入力する。つまり、駆動用トランジスタ6402は線形領域で動作させ
る。駆動用トランジスタ6402は線形領域で動作させるため、電源線6407の電圧よ
りも高い電圧を駆動用トランジスタ6402のゲート電極にかける。なお、信号線640
5には、(電源線電圧+駆動用トランジスタ6402のVth)以上の電圧をかける。
【0246】
また、デジタル時間階調駆動に代えて、アナログ階調駆動を行う場合、信号の入力を異な
らせることで、
図15(C)と同じ画素構成を用いることができる。
【0247】
アナログ階調駆動を行う場合、駆動用トランジスタ6402のゲート電極に発光素子64
04の順方向電圧+駆動用トランジスタ6402のVth以上の電圧をかける。発光素子
6404の順方向電圧とは、所望の輝度とする場合の電圧を指しており、少なくとも順方
向しきい値電圧を含む。なお、駆動用トランジスタ6402が飽和領域で動作するような
ビデオ信号を入力することで、発光素子6404に電流を流すことができる。駆動用トラ
ンジスタ6402を飽和領域で動作させるため、電源線6407の電位は、駆動用トラン
ジスタ6402のゲート電位よりも高くする。ビデオ信号をアナログとすることで、発光
素子6404にビデオ信号に応じた電流を流し、アナログ階調駆動を行うことができる。
【0248】
なお、
図15(C)に示す画素構成は、これに限定されない。例えば、
図15(C)に示
す画素に新たにスイッチ、抵抗素子、容量素子、センサ、トランジスタ又は論理回路など
を追加してもよい。
【0249】
(実施の形態10)
本明細書に開示する半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用すること
ができる。電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン
受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメ
ラ等のカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう
)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機など
が挙げられる。上記実施の形態で説明した半導体装置を具備する電子機器の例について説
明する。
【0250】
図16(A)は、携帯型の情報端末であり、本体3001、筐体3002、表示部300
3a、3003bなどによって構成されている。表示部3003bはタッチパネルとなっ
ており、表示部3003bに表示されるキーボードボタン3004を触れることで画面操
作や、文字入力を行うことができる。勿論、表示部3003aをタッチパネルとして構成
してもよい。実施の形態1で示したトランジスタをスイッチング素子として液晶パネルや
有機発光パネルを作製して表示部3003a、3003bに適用することにより、信頼性
の高い携帯型の情報端末とすることができる。
【0251】
図16(A)は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレ
ンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報を操作又は編
集する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有す
ることができる。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端
子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。
【0252】
また、
図16(A)に示す携帯型の情報端末は、無線で情報を送受信できる構成としても
よい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロード
する構成とすることも可能である。
【0253】
図16(B)は、携帯音楽プレイヤーであり、本体3021には表示部3023と、耳に
装着するための固定部3022と、スピーカ、操作ボタン3024、外部メモリスロット
3025等が設けられている。実施の形態1で示したトランジスタをスイッチング素子と
して液晶パネルや有機発光パネルを作製して表示部3023に適用することにより、より
信頼性の高い携帯音楽プレイヤーとすることができる。
【0254】
さらに、
図16(B)に示す携帯音楽プレイヤーにアンテナやマイク機能や無線機能を持
たせ、携帯電話と連携させれば、乗用車などを運転しながらワイヤレスによるハンズフリ
ーでの会話も可能である。
【0255】
図16(C)は、携帯電話であり、筐体2800及び筐体2801の二つの筐体で構成さ
れている。筐体2801には、表示パネル2802、スピーカー2803、マイクロフォ
ン2804、ポインティングデバイス2806、カメラ用レンズ2807、外部接続端子
2808などを備えている。また、筐体2800には、携帯型情報端末の充電を行う太陽
電池セル2810、外部メモリスロット2811などを備えている。また、アンテナは筐
体2801内部に内蔵されている。実施の形態1で示したトランジスタを表示パネル28
02に適用することにより、信頼性の高い携帯電話とすることができる。
【0256】
また、表示パネル2802はタッチパネルを備えており、
図16(C)には映像表示され
ている複数の操作キー2805を点線で示している。なお、太陽電池セル2810で出力
される電圧を各回路に必要な電圧に昇圧するための昇圧回路も実装している。
【0257】
例えば、昇圧回路などの電源回路に用いられるパワートランジスタも実施の形態1に示し
たトランジスタ120の結晶性酸化物半導体膜59の膜厚を2μm以上50μm以下とす
ることで形成することができる。
【0258】
表示パネル2802は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。また、表示パネル
2802と同一面上にカメラ用レンズ2807を備えているため、テレビ電話が可能であ
る。スピーカー2803及びマイクロフォン2804は音声通話に限らず、テレビ電話、
録音、再生などが可能である。さらに、筐体2800と筐体2801は、スライドし、図
16(C)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適
した小型化が可能である。
【0259】
外部接続端子2808はACアダプタ及びUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能
であり、充電及びパーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能である。また、外部
メモリスロット2811に記録媒体を挿入し、より大量のデータ保存及び移動に対応でき
る。
【0260】
また、上記機能に加えて、赤外線通信機能、テレビ受信機能などを備えたものであっても
よい。
【0261】
図16(D)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置9600は、
筐体9601に表示部9603が組み込まれている。表示部9603により、映像を表示
することが可能である。また、ここでは、CPUを内蔵したスタンド9605により筐体
9601を支持した構成を示している。実施の形態1で示したトランジスタを表示部96
03に適用することにより、信頼性の高いテレビジョン装置9600とすることができる
。
【0262】
テレビジョン装置9600の操作は、筐体9601が備える操作スイッチや、別体のリモ
コン操作機により行うことができる。また、リモコン操作機に、当該リモコン操作機から
出力する情報を表示する表示部を設ける構成としてもよい。
【0263】
なお、テレビジョン装置9600は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機に
より一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線に
よる通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向
(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0264】
また、テレビジョン装置9600は、外部接続端子9604や、記憶媒体再生録画部96
02、外部メモリスロットを備えている。外部接続端子9604は、USBケーブルなど
の各種ケーブルと接続可能であり、パーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能で
ある。記憶媒体再生録画部9602では、ディスク状の記録媒体を挿入し、記録媒体に記
憶されているデータの読み出し、記録媒体への書き込みが可能である。また、外部メモリ
スロットに差し込まれた外部メモリ9606にデータ保存されている画像や映像などを表
示部9603に映し出すことも可能である。
【0265】
また、実施の形態8で示した半導体装置を外部メモリ9606やCPUに適用することに
より、消費電力が十分に低減された信頼性の高いテレビジョン装置9600とすることが
できる。
【符号の説明】
【0266】
11 基板供給室
13 搬送室
14 カセットポート
15 基板加熱室
31 処理室
33 排気手段
35 ガス供給手段
37 電源装置
40 基板支持体
41 ターゲット
43 イオン
51 基板
53 酸化物絶縁膜
55 結晶性酸化物半導体膜
57 結晶性酸化物半導体膜
59 結晶性酸化物半導体膜
61 電極
63 ゲート絶縁膜
65 ゲート電極
69 絶縁膜
71 電極
73 結晶性酸化物半導体膜
75 結晶性酸化物半導体膜
77 ゲート絶縁膜
79 ゲート電極
81 絶縁膜
83 配線
84 バッファ
85 バッファ
87 バッファ
91 ゲート電極
93 ゲート絶縁膜
95 結晶性酸化物半導体膜
99 結晶性酸化物半導体膜
101 電極
103 絶縁膜
105 電極
107 結晶性酸化物半導体膜
109 結晶性酸化物半導体膜
10a スパッタ装置
10b スパッタ装置
10c スパッタ装置
110 保護絶縁膜
111 保護膜
113 バックゲート電極
115 絶縁膜
120 トランジスタ
128 層間絶縁膜
12a ロードロック室
200 基板
206 素子分離絶縁膜
208 ゲート絶縁膜
210 ゲート電極
214 不純物領域
216 チャネル形成領域
218 サイドウォール絶縁膜
220 高濃度不純物領域
224 金属化合物領域
226 層間絶縁膜
248 電極
260 トランジスタ
265 容量素子
55a 種結晶
55b 結晶性酸化物半導体膜
602 ゲート配線
603 ゲート配線
616 ソース電極またはドレイン電極
628 トランジスタ
629 トランジスタ
651 液晶素子
652 液晶素子
690 容量配線
230a ソース電極またはドレイン電極
230b ソース電極またはドレイン電極
242a 配線
242b 配線
2800 筐体
2801 筐体
2802 表示パネル
2803 スピーカー
2804 マイクロフォン
2805 操作キー
2806 ポインティングデバイス
2807 カメラ用レンズ
2808 外部接続端子
2810 太陽電池セル
2811 外部メモリスロット
3001 本体
3002 筐体
3004 キーボードボタン
3021 本体
3022 固定部
3023 表示部
3024 操作ボタン
3025 外部メモリスロット
5300 基板
5301 画素部
5302 走査線駆動回路
5303 走査線駆動回路
5304 信号線駆動回路
6400 画素
6401 スイッチング用トランジスタ
6402 駆動用トランジスタ
6403 容量素子
6404 発光素子
6405 信号線
6406 走査線
6407 電源線
6408 共通電極
9600 テレビジョン装置
9601 筐体
9602 記憶媒体再生録画部
9603 表示部
9604 外部接続端子
9605 スタンド
9606 外部メモリ
3003a 表示部
3003b 表示部