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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20241108BHJP
【FI】
G06Q50/10
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023151839
(22)【出願日】2023-09-20
【審査請求日】2023-12-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高山 伸也
【審査官】田上 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-189853(JP,A)
【文献】特開2019-008737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの識別情報を有する端末の位置情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記端末の位置情報に基づき、所定期間中に特定のエリア内に存在する前記端末を特定し、特定した前記端末が有する識別情報が示すユーザを前記エリアへ来場した来場者として特定する特定部と、
複数の前記来場者の端末の前記位置情報に基づき、前記複数の来場者間の距離が閾値距離以内に接近したことにより、前記複数の来場者間において交流が発生したか否かを前記複数の来場者の交流状態として推定する推定部と、
前記推定部による推定結果に基づき、前記所定期間中において前記複数の来場者間の交流の程度が変化したか否かを分析する分析部と、
前記分析部による分析結果を出力する出力部と、
を備え、
前記特定部は、前記来場者の属性を記述したデータを格納した記憶部から前記属性を取得することにより前記属性を特定し、
前記分析部は、交流が発生した前記来場者の前記属性を、前記属性の種別ごとにプロットし、
前記分析部は、前記プロットした前記属性間の相対的関係を分析することにより、交流が発生した前記来場者間の前記属性の相関度を分析する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
ユーザの識別情報を有する端末の位置情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記端末の位置情報に基づき、所定期間中に特定のエリア内に存在する前記端末を特定し、特定した前記端末が有する識別情報が示すユーザを前記エリアへ来場した来場者として特定する特定部と、
複数の前記来場者の端末の前記位置情報に基づき、前記複数の来場者間の距離が閾値距離以内に接近したことにより、前記複数の来場者間において交流が発生したか否かを前記複数の来場者の交流状態として推定する推定部と、
前記推定部による推定結果に基づき、前記所定期間中において前記複数の来場者間の交流の程度が変化したか否かを分析する分析部と、
前記分析部による分析結果を出力する出力部と、
を備え、
前記分析部は、前記複数の来場者が前記所定期間後においても交流を継続している程度を表す交流継続度を判定し、
前記特定部は、前記来場者の属性を記述したデータを格納した記憶部から前記属性を取得することにより前記属性を特定し、
前記分析部は、交流を継続している前記複数の来場者それぞれの前記属性についての統計量を計算し、
前記出力部は、前記統計量の種別ごとに、前記統計量と前記交流継続度との間の関係を出力する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
前記分析部は、前記所定期間前における前記複数の来場者の前記交流状態と、前記所定期間後における前記複数の来場者の前記交流状態とに基づき、前記複数の来場者間の交流の程度が前記所定期間中において変化したか否かを分析する
ことを特徴とする請求項1または2記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記分析部は、前記所定期間前における前記複数の来場者の前記交流状態と、前記所定期間後における前記複数の来場者の前記交流状態とに基づき、前記所定期間前は交流していなかった前記来場者間において、前記所定期間中に新たな交流が発生したか否かを分析する
ことを特徴とする請求項1または2記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記推定部は、前記複数の来場者間の距離が所定距離以内である状態が所定時間以上継続した場合は、前記交流状態として、前記複数の来場者間において交流がなされている旨を推定し、
または、
前記推定部は、前記所定期間内において交流した前記複数の来場者間について、前記所定期間後の基準期間内に改めて前記複数の来場者間の距離が閾値距離以内となる状態が閾値回数以上発生した場合は、前記交流状態として、前記複数の来場者間において交流がなされている旨を推定する
ことを特徴とする請求項1または2記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記出力部は、前記来場者間において交流が発生した件数、または、前記来場者のうち交流が発生した割合、のうち少なくともいずれかを出力する
ことを特徴とする請求項1または2記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記特定部は、前記来場者の属性を記述したデータを格納した記憶部から前記属性を取得することにより前記属性を特定し、
前記出力部は、前記属性にしたがって前記来場者を分類した上で、前記分類ごとに前記件数または前記割合を出力する
ことを特徴とする請求項6記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記所定期間は、特定のイベントの開催期間であり、
前記特定部は、前記属性として、
前記来場者の年齢、前記来場者の資産、前記来場者の居住エリア、前記来場者の前記イベントに関連する商品の購入度、
のうち少なくともいずれかを特定し、
前記分析部は、前記特定部が特定した前記属性の種別ごとに、前記相関度を分析する
ことを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記分析部は、交流がなされている旨を前記推定部が推定した前記複数の来場者間の前記交流状態が、前記所定期間の後においても継続しているか否かに基づき、前記所定期間中に交流が発生した前記複数の来場者が前記所定期間後においても交流を継続しているか否かを分析する
ことを特徴とする請求項1または2記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記分析部は、前記複数の来場者が前記所定期間後においても交流を継続している時間長に基づき、前記交流継続度を判定する
ことを特徴とする請求項2記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記特定部は、前記属性として、
前記来場者の年齢、前記来場者の性別、前記来場者の経済力、前記特定のエリアで開催される特定イベントに関連する前記来場者の商品の購入度、
のうち少なくともいずれかを特定し、
前記分析部は、前記統計量として、
交流を継続している前記複数の来場者の年齢に関する統計値、
交流を継続している前記複数の来場者の性別に関する統計値、
交流を継続している前記複数の来場者の経済力に関する統計値、
交流を継続している前記複数の来場者の前記商品の購入度に関する統計値、
のうち少なくともいずれかを特定する
ことを特徴とする請求項2記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記所定期間は、特定のイベントの開催期間であり、
前記分析部は、前記イベントに関連する商品の売上、前記来場者のうち前記イベントにおいて交流が発生した者、前記来場者のうち前記イベントにおいて交流が発生しなかった者、の間の対応関係を分析する
ことを特徴とする請求項1または2記載の情報処理装置。
【請求項13】
コンピュータによって情報を処理する方法であって、前記コンピュータが、
ユーザの識別情報を有する端末の位置情報を取得するステップと、
前記取得するステップで取得した前記端末の位置情報に基づき、所定期間中に特定のエリア内に存在する前記端末を特定し、特定した前記端末が有する識別情報が示すユーザを前記エリアへ来場した来場者として特定するステップと、
複数の前記来場者の端末の前記位置情報に基づき、前記複数の来場者間の距離が閾値距離以内に接近したことにより、前記複数の来場者間において交流が発生したか否かを前記複数の来場者の交流状態として推定するステップと、
前記推定するステップにおける推定結果に基づき、前記所定期間中において前記複数の来場者間の交流の程度が変化したか否かを分析するステップと、
前記分析するステップにおける分析結果を出力するステップと、
を実行し、
前記特定するステップにおいては、前記コンピュータが、前記来場者の属性を記述したデータを格納した記憶部から前記属性を取得することにより前記属性を特定し、
前記分析するステップにおいては、前記コンピュータが、交流が発生した前記来場者の前記属性を、前記属性の種別ごとにプロットし、
前記分析するステップにおいては、前記コンピュータが、前記プロットした前記属性間の相対的関係を分析することにより、交流が発生した前記来場者間の前記属性の相関度を分析する
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項14】
コンピュータによって情報を処理する方法であって、前記コンピュータが、
ユーザの識別情報を有する端末の位置情報を取得するステップと、
前記取得するステップで取得した前記端末の位置情報に基づき、所定期間中に特定のエリア内に存在する前記端末を特定し、特定した前記端末が有する識別情報が示すユーザを前記エリアへ来場した来場者として特定するステップと、
複数の前記来場者の端末の前記位置情報に基づき、前記複数の来場者間の距離が閾値距離以内に接近したことにより、前記複数の来場者間において交流が発生したか否かを前記複数の来場者の交流状態として推定するステップと、
前記推定するステップにおける推定結果に基づき、前記所定期間中において前記複数の来場者間の交流の程度が変化したか否かを分析するステップと、
前記分析するステップにおける分析結果を出力するステップと、
を実行し、
前記分析するステップにおいては、前記コンピュータが、前記複数の来場者が前記所定期間後においても交流を継続している程度を表す交流継続度を判定し、
前記特定するステップにおいては、前記コンピュータが、前記来場者の属性を記述したデータを格納した記憶部から前記属性を取得することにより前記属性を特定し、
前記分析するステップにおいては、前記コンピュータが、交流を継続している前記複数の来場者それぞれの前記属性についての統計量を計算し、
前記出力するステップにおいては、前記コンピュータが、前記統計量の種別ごとに、前記統計量と前記交流継続度との間の関係を出力する
ことを特徴とする情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流イベントにおける来場者間の交流状態を分析する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
参加者間の交流ネットワークを形成することを目的とする交流イベントは、例えば地方行政機関などによって主催されるものなどがある。主催者は一般に、交流会場における雰囲気などを会場において実感することにより、交流イベントの効果(例:参加者間の交流が活発であるか否か)を推測する。
【0003】
他方で、参加者の位置を追跡することにより、参加者が交流しているか否かを推測することが考えられる。下記特許文献1は、交流イベントに関するものではないが、地域コミュニティにおける移動体の位置情報に基づき、交流地域を推定する技術を記載している。交流イベントにおいても、同様の技術を用いることが考えられる。
【0004】
具体的には、下記特許文献1は、『異なるコミュニティに属する不特定多数の移動体同士における滞在傾向ネットワークを生成する滞在傾向分析装置等を提供する。』ことを課題として、『地域範囲毎に、地域属性を設定する地域属性設定手段と、所定期間について、移動体毎に、当該所属位置の地域範囲以外の他の地域範囲それぞれに移動して滞在した移動体滞在度を算出する移動体滞在度算出手段と、地域範囲毎に、当該地域範囲を所属位置とする複数の移動体が、他の地域範囲それぞれに移動して滞在した地域滞在度を算出する地域滞在度算出手段と、地域範囲をノードとし、当該地域範囲と他の地域範囲との間における地域滞在度をリンクとして接続した滞在傾向ネットワークを生成する滞在傾向ネットワーク生成手段と、異なる地域属性の地域範囲同士をリンクで結ぶ当該地域範囲同士を、交流地域範囲として決定する交流地域範囲決定手段とを有する。』という技術を記載している(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2023-063979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
交流イベントにおいて参加者が他の参加者と交流している状態にあるか否かは、参加者位置に基づき推測することができる。例えば距離が互いに接近している状態がある程度の時間以上継続している参加者同士は、交流していると推測される。特許文献1のような従来技術も、概ねこのような考え方に基づいている。しかしこの手法は、ある瞬間において参加者が交流しているか否かについては推測できるものの、その交流はイベント内に限られた一過性のものである可能性がある。
【0007】
交流イベントの主催者としては、例えばこれまで交流がなかった参加者間の交流が、交流イベントによって新たに発生したのであれば、交流イベントの効果が十分あったと把握することができる。あるいは、交流イベントにおいて発生した交流が、イベント終了後においても継続しているのであれば、交流イベントの効果が十分あったと把握することができる。しかし、単にイベント開催期間中において瞬時的に交流が発生したことを識別するだけでは、このようなイベント期間前後にわたる交流状態の変化を把握することは困難である。
【0008】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、交流イベントの開催期間における参加者間の交流状態の変化を分析することにより、交流イベントの効果を適切に把握することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る情報処理装置は、所定期間中に特定のエリアへ来場した来場者の位置に基づき前記来場者間の交流状態を推定し、その推定結果に基づき、前記来場者間の交流の程度が前記所定期間中において変化したか否かを分析する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る情報処理装置によれば、交流イベントの開催期間における参加者間の交流状態の変化を分析することにより、交流イベントの効果を適切に把握することができる。上記以外の課題、構成、利点などについては、以下の実施形態の説明によって明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】交流イベントにおける参加者が交流する様子を模式的に示す平面図である。
図2】本発明の実施形態1に係る情報処理装置1のブロック図である。
図3】参加者の属性ごとに交流発生率を分析した結果を示す例である。
図4】イベント開催期間中において交流が発生した参加者間の属性の相関を分析部14が分析した結果の例を示す。
図5】交流が発生した参加者間の属性について統計量を計算した結果を示す。
図6】交流が発生した参加者クラスタ内の属性種別ごとに交流継続度を計測した結果の例を示す。
図7】交流イベントに関連する商品売上と、その商品を購入した交流イベント参加者が交流イベントにおいて他の参加者と交流したか否かとの間の相関を分析した結果の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施の形態1>
図1は、交流イベントにおける参加者が交流する様子を模式的に示す平面図である。図の横軸は時間経過を表す。図内における丸印は各参加者を示す。イベント開催前においては参加者(イベント会場に来場した来場者)がまばらに集合しているが、イベント開催期間内においては一部の参加者間で交流が発生し、さらにイベント開催期間が終了した後になってもそのままイベント会場に留まって交流が継続している。
【0013】
2人以上の参加者間の距離がある程度以内に接近し、その状態がある程度の時間以上継続した場合、その参加者間の交流が発生したと推定することができる。従来技術においてはこのような考え方を用いることにより、イベント開催期間中において参加者同士が交流しているか否かを識別できると考えられる。ただしこれは、識別処理を実施したその瞬間において参加者同士が交流しているか否かを判断するに留まり、イベント開催期間の前後にわたって交流状態がどのように変化したのかを判断するものではない。
【0014】
換言すると、従来技術においては例えば以下のような交流状態の変化を判断することについては、十分検討されていない:(a)イベント開催期間の前においては交流していなかった参加者間において、イベント開催期間中に新たな交流が発生した;(b)イベント開催期間中において交流した参加者同士が、イベント開催期間後においても交流を継続している。
【0015】
そこで本発明においては、イベント開催期間前後にわたり、参加者間の交流がどのように変化したのかを推定する手法を提供することとした。これにより、交流イベントの効果をより適切に把握できると考えられる。
【0016】
ここでいう交流が発生したか否かの判断基準は、参加者間のコミュニケーションの態様やイベントの性質などによって変わり得ることを付言しておく。例えばイベント会場において対話した参加者集団が、イベント終了後もイベント会場に留まって対話し続けるような場面を想定する。この場合、参加者間の距離が閾値距離以内に接近した状態が、任意の起算時点(例:イベント終了時)から閾値時間以上継続した場合、その参加者間において交流が発生したとみなすことができる。あるいは、マッチングイベントを想定すると、交流が発生したか否かはマッチングが成功したか否かによって判断することができる。例えばこれまで交流がなかった参加者同士が、イベント開催期間中において閾値距離以内に接近し、イベント終了後の適当な判断基準期間(例:イベント終了から3か月)以内において改めてその参加者間の距離が接近することが閾値回数(例:3回)以上発生したのであれば、その参加者間において交流が発生したとみなすことができる。後述する推定部13および分析部14は、これらの手法によって、交流状態を推定することができる。
【0017】
図2は、本発明の実施形態1に係る情報処理装置1のブロック図である。情報処理装置1は、図1が例示するような交流イベントにおける参加者間の交流状態およびその経時的変化を分析する装置である。情報処理装置1は、特定部11、取得部12、推定部13、分析部14、出力部15を備える。
【0018】
特定部11は、イベント開催期間中においてそのイベント会場へ来場した参加者を特定する。例えば参加者の識別情報を取得することにより、各参加者を特定する。参加者の識別情報としては、例えばイベント会場へ到着した参加者に対して固有のIDを割り当て、そのIDを識別情報として用いることによって、各参加者を識別することが考えられる。例えばRFIDタグなどにあらかじめ識別情報を格納してそのタグを参加者へ配布するなどによって、識別情報を参加者に対して割り当てることができる。あるいは、参加者が所持しているモバイル端末は固有IDを有しているので、通信回線事業者を介してその固有IDを識別することにより、参加者を個別識別することができる。その他任意の手法を用いてもよい。
【0019】
通信回線事業者を介してモバイル端末のIDを取得する場合、例えばモバイル端末の位置情報に基づき、イベント開催期間中におけるイベント場所に位置するユーザを参加者として特定することができる。これにより、モバイル端末の位置情報に基づくデータから参加者を特定し分析結果を提供することにより、主催者側とデータ提供者側が個人情報をやり取りすることなく、分析データを提供することができる。
【0020】
特定部11は識別情報の他に、参加者の属性情報(氏名、生年月日、性別など)を取得してもよい。属性情報およびその使用方法の具体例については後述する。属性情報を取得する手段についても併せて後述する。
【0021】
取得部12は、特定部11が特定した参加者の位置を取得する。例えばRFIDタグを参加者に対して配布したのであれば、そのタグの位置を計測することにより、各参加者の位置を取得することができる。モバイル端末の固有IDを用いる場合は、モバイル端末が備えている位置取得システム(例:Global Positioning System)を介して、参加者の位置を取得できる。その他任意の手法を用いてもよい。
【0022】
推定部13は、取得部12が取得した位置に基づき、参加者の交流状態を推定する。ここでいう交流状態は、参加者同士で瞬時的にコミュニケーションをとっているか否かを表す。先に説明したように、瞬時的にコミュニケーションをとったとしても、そのことをもって直ちに交流が発生したといえるものではなく、交流が発生したとみなすためには何らかの判断基準が必要である。推定部13は、交流が発生する前提として、瞬時的なコミュニケーションが発生したか否かを推定する。コミュニケーションが発生したか否かは、例えば参加者間の距離が閾値距離以内に接近したことをもって判断することができる。
【0023】
分析部14は、推定部13による推定結果に基づき、イベント開催期間中において参加者間の交流状態がどのように経時変化したかを分析する。例えばイベント開催期間前において各参加者間の交流があるか否かを、あらかじめ推定部13による推定結果に基づき把握しておく。交流がない参加者間において、新たにコミュニケーションが発生した旨を推定部13が推定した場合、その参加者間において交流が発生したといえるか否かを判断する。交流が発生したか否かの判断基準は、図1で説明したように、参加者間のコミュニケーションの態様やイベントの性質などによって変わり得るので、これらに応じて適切な判断基準を用いる。イベント開催期間前において交流があるか否かについても同様の判断基準を用いることができる。3人以上の参加者間における交流の場合は、例えばその参加者全ての組み合わせにおける参加者間の距離の最大値(あるいは平均値などその他適当な値)を用いればよい。
【0024】
分析部14は、交流が発生した参加者のうち一部の者が交流から離脱した場合であっても、交流が継続していると判断してもよい。例えば図1における最右の交流集団は、イベント開催期間中においては4人の集団であったが、イベント後においては3人の集団となっている。この場合においても、少なくとも4人のうち3人については交流が継続しているとみなしてもよい。
【0025】
出力部15は、推定部13による推定結果または分析部14による分析結果のうち少なくともいずれかを出力する(両方出力してもよい)。出力手段としては、例えば推定結果や分析結果を記述したデータを出力してもよいし、同様のデータを視覚的に表現した画面表示を生成して任意の表示装置上で表示してもよい。その他適当な出力手法を用いてもよい。
【0026】
分析部14は上記に加えて、従来から交流している参加者間の交流の程度がイベント開催期間中においてどのように変化したか否かを判断してもよい。例えばイベント開催前におけるコミュニケーション頻度(参加者間の距離が閾値距離以内になる回数)をあらかじめ把握しておき、イベント開催期間後においてその頻度がどのように変化したか(コミュニケーションが増加/減少したか)を分析してもよい。これにより、新たに発生した交流のみならず、既存の交流の程度がどのように変化したかについても、適切に分析することができる。
【0027】
<実施の形態1:まとめ>
実施形態1に係る情報処理装置1は、イベント開催期間中にイベント会場へ来場したイベント参加者の位置に基づき、参加者間の交流状態を推定するとともに、交流状態の経時変化を分析する。これにより、イベント開催期間中において発生した参加者間の交流がイベント開催期間後も継続しているか否かを把握することができる。したがって、交流イベントの効果をより適切に把握することができる。
【0028】
<実施の形態2>
実施形態1においては、イベント開催期間後においてコミュニケーションが継続するか否かに基づき、交流が発生したか否かを分析する例を説明した。情報処理装置1は、イベント後のコミュニケーション継続に加えて、交流が発生する原因についても併せて分析してもよい。そこで本発明の実施形態2では、参加者の属性ごとに交流発生率を分析する例を説明する。情報処理装置1の構成は実施形態1と同様である。
【0029】
図3は、参加者の属性ごとに交流発生率を分析した結果を示す例である。以上の実施形態において、分析部14は、参加者の属性にしたがって参加者を分類した上で、その分類ごとに交流発生率を計算してもよい。例えば参加者の年代によって参加者を各年代グループに分類し、年代グループごとに交流発生率を計算してもよい。図3に示す例においては20代グループと30代グループの交流発生率(同じ年代グループに属する参加者数に対する、その年代グループ内において交流が発生した参加者数の割合)が他の年代グループよりも高い傾向が見て取れる。性別や年収などのその他属性についても同様に計算することができる。出力部15は例えば図3のような形式で分析部14による計算結果を出力することができる。
【0030】
交流発生率の傾向を把握するために用いる属性としては、以上の他に例えば職業、居住エリア、などが考えられる。図3と同様に、属性値を横軸とし、交流発生率を縦軸とすればよい。
【0031】
交流発生率に代えて、交流発生件数を計算してもよい。ただし属性グループ(年代グループ、性別グループなど)ごとに参加者の絶対数が異なるので、交流発生件数もその絶対数によって影響される。例えば30代グループは交流発生率が高いが、参加者数が20代グループよりも少ないので、交流発生件数は20代グループのほうが30代グループよりも多い、というようなケースがあり得ることに留意する。
【0032】
参加者の属性は、例えば以下のようにして取得することが考えられる。年齢については例えば交流イベントの受付において参加者が年齢を自己申告し、あるいは参加受付Webサイトにおいて同様の入力フォームを設ける。性別と年収についても同様に取得することができる。取得した属性は、参加者に対して配布するRFIDタグ内に記録しておいてもよいし、参加者の識別IDに対して情報処理装置1内部において属性を対応付けて記録しておいてもよい。参加者が所持するモバイル端末の固有IDを用いる場合は、そのIDに対応する回線契約者の情報から、参加者の属性を取得することができる。すなわち、回線契約者の属性情報を記述したデータベース(データを格納した記憶装置)から、その属性を取得すればよい。
【0033】
<実施の形態3>
実施形態2においては、交流が発生した原因を分析するために、参加者の属性ごとに交流発生率を分析する例を説明した。これにより、交流が発生しやすい参加者属性の傾向を把握することができる。他方で、交流が発生するか否かは、参加者間の属性の相関によっても影響を受ける可能性がある。例えば、20代の参加者は交流が発生しやすい傾向があるとしても、交流相手となる参加者の属性がある程度限られている可能性がある(例:同年代の参加者であれば交流が発生しやすい)。そこで本発明の実施形態3では、交流が発生した参加者間の属性の相関度を分析する例を説明する。情報処理装置1の構成は実施形態1~2と同様である。
【0034】
図4は、イベント開催期間中において交流が発生した参加者間の属性の相関を分析部14が分析した結果の例を示す。ここでは参加者の属性として年齢と資産を考慮することとし、これらを縦横軸として用いた。図4の丸印は各参加者の属性をプロットしたものである。プロットは例えば出力部15によって出力することができる。
【0035】
図4に示す例によれば、近い年齢の参加者間においては、資産が大きく異なる場合であっても交流が発生しやすい傾向があることが推測できる。交流グループ1と2に属する参加者は、いずれも年齢25付近であり、資産は大きく異なるからである。他方で交流グループ3は、参加者の年齢が大きく異なるものの、資産はいずれも1000万付近である。したがって資産が近い参加者間においては、年齢が大きく異なる場合であっても交流が発生しやすい傾向があることが推測できる。また、次の交流イベント時の席に配置やディスカッションのグループの属性を検討する際に、このような傾向を用いることができる。
【0036】
同様の分析は、その他の属性についても実施することができる。1つまたは3つ以上の属性について同様の分析を実施してもよい。分析対象となる属性のその他の例としては、年収、居住エリア、買い物履歴、などの属性が考えられる。ここでいう買い物履歴は、交流イベントに関連する商品を販売する場合における、その商品の購入度(購入頻度、購入金額または購入点数などのように、その商品に対する購買意欲の強さを示す指標)のことである。イベント関連商品の購入度との相関を分析することにより、例えばイベントに対する思い入れの強さと交流発生との間の関係を推測することができると考えられる。あるいは、特定の商品を購入している参加者同士は交流があることが多い、などの傾向を分析できると考えられる。
【0037】
図4に示すような参加者属性間の相関は、出力部15が図4のようなプロットを出力することによりユーザが判断してもよいし、分析部14が定量的に評価してもよい。例えば分析部14は、同じ交流グループに属する参加者間の年齢差を計算し、その年齢差と交流発生の有無との間の関係を分析してもよい。具体例は後述の実施形態において改めて説明する。
【0038】
<実施の形態4>
実施形態1において、分析部14は参加者間の交流が発生したか否かを分析する例を説明した。分析部14は上記に加えて、参加者間の交流継続度を判定してもよい。ここでいう交流継続度は、イベント開催期間中において発生した参加者間の交流が、イベント開催期間後においても継続している程度を表す、評価指標である。例えば、イベント開催期間中において発生した交流の継続時間長を、イベント終了時点から起算して計測し、その継続時間長を交流継続度として用いることができる。ただし交流継続度を計算するのは、交流が発生したと判断された参加者間のみであることを付言しておく。
【0039】
交流継続度は、参加者の属性によってある程度の傾向が存在する可能性が考えられる。例えば交流している参加者間の年齢差が小さいほど交流が継続し易い、などの傾向が想定される。そこで本発明の実施形態4においては、交流が発生した参加者の属性についてさらに分析することにより、このような傾向を把握する例について説明する。情報処理装置1の構成は実施形態1~3と同様である。
【0040】
図5は、交流が発生した参加者間の属性について統計量を計算した結果を示す。ここでは参加者の属性として、年齢、性別、経済力(例えば年収)を取得した例を示す。分析部14は、交流が発生している参加者集団を1つのクラスタとみなし、クラスタごとに参加者の属性の統計量を計算する。
【0041】
年齢については、例えばクラスタ内の参加者の最大年齢と最少年齢との間の年齢差を、そのクラスタにおける年齢に関する統計量とみなすことができる。性別については、例えばクラスタ内の参加者の男女比を、そのクラスタにおける性別に関する統計量とみなすことができる。年収については、例えばクラスタ内の参加者の最大年収と最小年収との間の年収差を、そのクラスタにおける年収に関する統計量とみなすことができる。図5はこれら統計量を計算した結果を併せて示している。
【0042】
その他の属性としては、特定のイベントにおけるそのイベントに関連する商品の購入度を用いることもできる。例えばペットに関するイベントにおいては、商品の購入頻度の高い多頭飼い同士の方が交流が続きやすい、投資イベントにおいては、金融商品の購入量が少ない人同士の方が情報を求めて交流が継続しやすい、などの傾向があることが想定される。商品購入度を属性として用いることにより、このような交流継続度を分析することができる。
【0043】
クラスタ1は、イベント開催期間中において交流が発生した参加者集団であり、イベント開催期間後も交流が継続している。クラスタ2も同様に交流が継続しているが、イベント開催期間中またはその後において1人の参加者が交流から離脱した。そこで便宜上、イベント開催期間中とイベント開催期間後それぞれのクラスタを区別するために、クラスタ番号に枝番を付与し、枝番ごとに統計量を計算した。クラスタ3は、イベント開催期間中において交流が発生した参加者集団であるが、イベント開催期間後は交流が継続しなかった。
【0044】
図6は、交流が発生した参加者クラスタ内の属性種別ごとに交流継続度を計測した結果の例を示す。交流継続度は、例えば実施形態1で説明したように、イベント終了時点を起算時として、イベント開催期間後に交流が継続した時間長である。分析部14は、図5で説明した属性の統計量の種別(年齢差、男女比、年収差)ごとに、交流継続度のヒストグラムを作成することができる。出力部15は、その結果を出力する。図4は画面表示による出力例である。
【0045】
年齢差については、例えば年齢差0~10のクラスタについて交流継続度の平均値を計算し、その結果を図4における年齢差『0~10』のグループの縦軸とする。その他の年齢差グループについても同様に計算する。図6に示す例においては、年齢差が小さいクラスタほど、交流継続度が大きい傾向が見て取れる。
【0046】
男女比については、例えばクラスタ内の男性人数/女性人数を横軸とする。例えば男女比0.5~1.0のクラスタについて交流継続度の平均値を計算し、その結果を図6における男女比『0.5~1.0』のグループの縦軸とする。その他の男女比グループについても同様に計算する。図6に示す例においては、男女が概ね同数に近いクラスタほど、交流継続度が大きい傾向が見て取れる。
【0047】
<実施の形態4:まとめ>
実施形態4に係る情報処理装置1は、交流が発生した参加者クラスタにおける参加者属性の統計量を計算し、その統計量の種別ごとに交流継続度を出力する。これにより、参加者属性ごとに、交流がイベント終了後も継続する傾向を把握することができる。したがって交流イベントの効果をより詳細に分析することができる。
【0048】
<実施の形態5>
以上の実施形態においては、交流イベントの効果として、交流発生またはイベント終了後の交流継続について説明した。交流イベントにおいては、参加者間の交流に加えて、そのイベントに関連する商品を販売する場合がある。その商品の売上も、交流イベントの効果として考えることができる。そこで本発明の実施形態5では、交流イベントに関連する商品売上について分析する例を説明する。情報処理装置1の構成は実施形態1~4と同様である。
【0049】
図7は、交流イベントに関連する商品売上と、その商品を購入した交流イベント参加者が交流イベントにおいて他の参加者と交流したか否かとの間の相関を分析した結果の例を示す。交流イベントに関連する商品は、典型的にはイベント会場において販売する商品だが、必ずしもこれに限るものではなく、そのイベントのWebサイトなどにおいて販売するものであってもよい。すなわち、その交流イベントに関連して販売される(購入者がその交流イベントに関連する商品であることを認識したうえで購入する)商品であれば、販売手段は任意でよい。
【0050】
分析部14は、イベント参加者が購入した商品売上のうち、イベント開催期間中において交流が発生した者が購入した売上と、発生しなかった者が購入した売上を、それぞれ集計する。これにより、イベント関連商品売上/交流発生者/交流非発生者の間の相関を分析することができる。例えば図7のような集計結果によれば、交流発生者のほうがより多くイベント関連商品を購入していることが分かる。したがって、イベント中における参加者間の交流を促進することにより、イベント関連商品の売上も向上すると予測することができる。
【0051】
参加者が商品を購入する際に、参加者IDと商品購入額(または商品IDと個数などのように、購入額を特定できる情報)を関連付けて情報処理装置1内に記録することにより、商品を購入した参加者が交流発生者であるか否かを識別することができる。交流が発生した参加者は、その位置を特定する際に、参加者IDも特定されているからである。分析部14は、商品を購入した参加者のIDとその商品購入額との間の関連付けにしたがって、図7のような統計値を計算することができる。出力部15はその結果を出力する。
【0052】
<本発明の変形例について>
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0053】
以上の実施形態において、参加者の識別情報としてRFIDタグやモバイル端末の固有IDを用いる例を説明したが、その他任意の識別手法を用いてもよい。例えば顔認証によって参加者を個別に識別してもよい。
【0054】
実施形態2において、交流発生率(または交流発生件数)を計算する際には、参加者間の全ての組み合わせについて交流があるか否かをカウントしてもよいし、実施形態4で説明した1つのクラスタを1つの交流発生としてカウントしてもよい。その他適当な単位ごとに交流有無をカウントしてもよい。
【0055】
実施形態3において、交流が発生したグループ内の参加者をその属性ごとにプロットすることにより、属性間の相関を分析することを説明した。属性の数値は属性の性質によって大きく異なる場合もあるので、属性の数値を正規化した上で同様の分析を実施してもよい。例えば正規化した各属性値を用いてグループ毎の相関係数(例えば年齢と試算)を算出することにより、グループ毎の分析を実施してもよい。
【0056】
実施形態4において、クラスタ内の参加者年齢の統計量として年齢差を例示したが、参加者年齢に関するその他の統計量を用いてもよい。例えばクラスタ内の参加者の平均年齢や分散などが考えられる。平均年齢を用いる場合、クラスタの平均年齢と交流継続度との間の関係を分析することができる。年齢分散を用いる場合、クラスタ内の年齢のばらつきと交流継続度との間の関係を分析することができる。男女比と年収差についても同様に、性別や経済力に関するその他の統計量を用いてもよい。例えばクラスタ内の参加者の平均年収あるいは年収合計は、そのクラスタ全体としての経済レベルを表している。この統計量は、経済レベルの高さによって交流継続度が影響を受けるか否かを分析するために用いることができる。
【0057】
以上の実施形態において、情報処理装置1が備える各機能部(特定部11、取得部12、推定部13、分析部14、出力部15)は、これらの機能を実装した回路デバイスなどのハードウェアによって構成することもできるし、これらの機能を実装したソフトウェアをCPU(Central Processing Unit)などの演算装置が実行することによって構成することもできる。
【符号の説明】
【0058】
1:情報処理装置
11:特定部
12:取得部
13:推定部
14:分析部
15:出力部
【要約】
【課題】交流イベントの開催期間における参加者間の交流状態の変化を分析することにより、交流イベントの効果を適切に把握する。
【解決手段】本発明に係る情報処理装置は、所定期間中に特定のエリアへ来場した来場者の位置に基づき前記来場者間の交流状態を推定し、その推定結果に基づき、前記来場者間の交流の程度が前記所定期間中において変化したか否かを分析する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7