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特許7585009記録装置、データ生成装置、記録方法、データ生成方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】記録装置、データ生成装置、記録方法、データ生成方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241111BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
B41J2/01 123
B41J2/01 401
B41J2/14
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2020197649
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085779
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】村山 仁昭
(72)【発明者】
【氏名】増山 充彦
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-123747(JP,A)
【文献】特開2008-055852(JP,A)
【文献】特開2007-216495(JP,A)
【文献】特開2010-000691(JP,A)
【文献】特開平08-281929(JP,A)
【文献】特開2007-276400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材を含む第1のインクを記録媒体に付与するための複数の第1の吐出口が第1の方向に沿って一定の第1の間隔で並ぶ第1の吐出口群と、前記第1のインクに対する機能を有する第2のインクを記録媒体に付与するための複数の第2の吐出口が前記第1の方向に沿って並ぶ第2の吐出口群と、複数の前記第2の吐出口が前記第1の方向に沿って一定の前記第1の間隔で配置された第3の吐出口群と、を備え、複数の前記第1の吐出口のうちの前記第1の方向において隣接する2つの間に前記第2の吐出口が少なくとも1つずつ配置され、前記第3の吐出口群の複数の前記第2の吐出口のそれぞれが、前記第1の方向において前記第1の吐出口群の複数の前記第1の吐出口と対応する位置に配置された記録手段と、
前記第1の吐出口群から第1のインクを付与するための第1の付与データに基づいて、前記第2の吐出口群から第2のインクを付与するための第2の付与データを生成する生成手段と、
前記第2の付与データに基づいて第2のインクを付与するように前記記録手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記生成手段は、前記第1の付与データにおいて前記第1のインクを付与することを示す画素であって前記第1の方向に1画素以上の連続するL(L:1以上の整数)画素に対応するように、前記第2の付与データにおいて前記第2のインクを付与することを示す画素が前記第1の方向に(L+M)(M:1以上の奇数)画素連続するように、前記第2の付与データを生成することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記Mは1であることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記第2の吐出口群の複数の前記第2の吐出口は、前記第1の方向に沿って一定の前記第1の間隔で配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記記録手段は、前記第1の吐出口群により第1の解像度で記録媒体上に前記第1のインクを付与可能であり、前記第2の吐出口群及び前記第3の吐出口群により前記第1の解像度よりも高い第2の解像度で記録媒体上に前記第2のインクを付与可能であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記第2の解像度は、前記第1の解像度の2倍の解像度であることを特徴とする請求項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記第2の付与データの前記第1の方向に対応する解像度は、前記第1の付与データの前記第1の方向に対応する解像度と同じであることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記生成手段は、前記第1の付与データにおいて前記第1のインクを付与することを示す画素であって前記第1の方向と交差する第2の方向に1画素以上の連続するN(N:1以上の整数)画素に対応するように、前記第2の付与データにおいて前記第2のインクを付与することを示す画素が前記第2の方向に(N+P)画素(P:1以上の奇数)連続するように、前記第2の付与データを生成することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項8】
前記Pは1であることを特徴とする請求項に記載の記録装置。
【請求項9】
前記第1の方向と交差する第3の方向に沿って、前記記録手段を記録媒体に対して相対的に移動させるための移動手段をさらに備えることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項10】
前記移動手段は、前記第3の方向に記録媒体を搬送する搬送手段であることを特徴とする請求項に記載の記録装置。
【請求項11】
前記第1の方向に記録媒体を搬送する搬送手段をさらに備え、
前記移動手段は、前記第3の方向に前記記録手段を移動させるキャリッジであることを特徴とする請求項10に記載の記録装置。
【請求項12】
色材を含む第1のインクを記録媒体に付与するための複数の第1の吐出口が第1の方向に沿って一定の第1の間隔で並ぶ第1の吐出口群と、前記第1のインクに対する機能を有する第2のインクを記録媒体に付与するための複数の第2の吐出口が前記第1の方向に沿って並ぶ第2の吐出口群と、複数の前記第2の吐出口が前記第1の方向に沿って一定の前記第1の間隔で配置された第3の吐出口群と、を備え、前記第3の吐出口群の複数の前記第2の吐出口のそれぞれが、前記第1の方向において前記第1の吐出口群の複数の前記第1の吐出口と対応する位置に配置された記録手段と、
前記第1のインク及び前記第2のインクを付与するように前記記録手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、記録媒体上の複数の画素領域において、前記第1の方向に1画素以上の連続するL(L:1以上の整数)の画素領域に前記第1のインクを付与する場合、前記Lの画素領域に対応する画素領域及び前記Lの画素領域と前記第1の方向に連続するM(M:1以上の奇数)の画素領域に前記第2のインクを付与するように、前記記録手段を制御することを特徴とする記録装置。
【請求項13】
前記記録手段において、複数の前記第1の吐出口のうちの前記第1の方向において隣接する2つの間に、前記第2の吐出口が少なくとも1つずつ配置されていることを特徴とする請求項12に記載の記録装置。
【請求項14】
前記第2の吐出口群の複数の前記第2の吐出口は、前記第1の方向に沿って一定の前記第1の間隔で配置されていることを特徴とする請求項12または13に記載の記録装置。
【請求項15】
前記記録手段は、前記第1の吐出口群により第1の解像度で記録媒体上に前記第1のインクを付与可能であり、前記第2の吐出口群及び前記第3の吐出口群により前記第1の解像度よりも高い第2の解像度で記録媒体上に前記第2のインクを付与可能であることを特徴とする請求項12から14のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項16】
前記制御手段は、前記第1の方向と交差する第2の方向に1画素以上の連続するN(N:1以上の整数)の画素領域に前記第1のインクを付与する場合、前記Nの画素領域に対応する画素領域及び前記Nの画素領域と前記第2の方向に連続するP(P:1以上の奇数)画素領域に対して前記第2のインクを付与するように前記記録手段を制御することを特徴とする請求項12から15のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項17】
色材を含む第1のインクを記録媒体に付与するための複数の第1の吐出口が第1の方向に沿って並ぶ第1の吐出口群と、前記第1のインクに対する機能を有する第2のインクを記録媒体に付与するための複数の第2の吐出口が前記第1の方向に沿って並ぶ第2の吐出口群と、を備え、複数の前記第1の吐出口のうちの前記第1の方向において隣接する2つの間に前記第2の吐出口が少なくとも1つずつ配置された記録手段と、
前記第1の吐出口群から第1のインクを付与するための第1の付与データに基づいて、前記第2の吐出口群から第2のインクを付与するための第2の付与データを生成する生成手段と、
前記第2の付与データに基づいて第2のインクを付与するように前記記録手段を制御する制御手段と、
前記第1の方向と交差する第3の方向に沿って、前記記録手段を記録媒体に対して相対的に移動させるキャリッジと、
前記第1の方向に記録媒体を搬送する搬送手段と、
を備え、
前記生成手段は、前記第1の付与データにおいて前記第1のインクを付与することを示す画素であって前記第1の方向に1画素以上の連続するL(L:1以上の整数)画素に対応するように、前記第2の付与データにおいて前記第2のインクを付与することを示す画素が前記第1の方向に(L+M)(M:1以上の奇数)画素連続するように、前記第2の付与データを生成することを特徴とする記録装置。
【請求項18】
前記Mは1であることを特徴とする請求項17に記載の記録装置。
【請求項19】
前記第2のインクは、前記第1のインクとの反応性を有する液、樹脂を含み且つ記録媒体上もしくはインク膜上での光沢性が前記第1のインクとは異なるインク、白色の色材を含むホワイトインク、UVにより硬化する樹脂を含むインク、金属粒子を含むメタリックインクのいずれかであることを特徴とする請求項1から18のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項20】
記録媒体に対して、前記第2のインクは前記第1のインクよりも先に着弾する、もしくは、前記第2のインクは前記第1のインクよりも後に着弾することを特徴する請求項1から19のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項21】
色材を含む第1のインクを記録媒体に付与するための複数の第1の吐出口が第1の方向に沿って一定の第1の間隔で並ぶ第1の吐出口群と、前記第1のインクに対する機能を有する第2のインクを記録媒体に付与するための複数の第2の吐出口が前記第1の方向に沿って並ぶ第2の吐出口群と、複数の前記第2の吐出口が前記第1の方向に沿って一定の前記第1の間隔で配置された第3の吐出口群と、を備え、複数の前記第1の吐出口のうちの前記第1の方向において隣接する2つの間に前記第2の吐出口が少なくとも1つずつ配置され、前記第3の吐出口群の複数の前記第2の吐出口のそれぞれが、前記第1の方向において前記第1の吐出口群の複数の前記第1の吐出口と対応する位置に配置された記録手段を備える記録装置のためのデータ生成方法であって、
前記第1の吐出口群から第1のインクを付与するための第1の付与データに基づき、前記第1の付与データにおいて前記第1のインクを付与することを示す画素であって前記第1の方向に1画素以上の連続するL(L:1以上の整数)画素に対応するように、前記第2の付与データにおいて前記第2のインクを付与することを示す画素が前記第1の方向に(L+M)(M:1以上の奇数)画素連続するように、前記第2の吐出口群から前記第2のインクを付与するための第2の付与データを生成することを特徴とするデータ生成方法。
【請求項22】
色材を含む第1のインクを記録媒体に付与するための複数の第1の吐出口が第1の方向に沿って一定の第1の間隔で並ぶ第1の吐出口群と、前記第1のインクに対する機能を有する第2のインクを記録媒体に付与するための複数の第2の吐出口が前記第1の方向に沿って並ぶ第2の吐出口群と、複数の前記第2の吐出口が前記第1の方向に沿って一定の前記第1の間隔で配置された第3の吐出口群と、を備え、前記第3の吐出口群の複数の前記第2の吐出口のそれぞれが、前記第1の方向において前記第1の吐出口群の複数の前記第1の吐出口と対応する位置に配置された記録手段を用いて画像を記録するための記録方法であって、
記録媒体上の複数の画素領域において、前記第1の方向に1画素以上の連続するL(L:1以上の整数)の画素領域に前記第1のインクを付与する場合、前記Lの画素領域に対応する画素領域及び前記Lの画素領域と前記第1の方向に連続するM(M:1以上の奇数)の画素領域に前記第2のインクを付与することを特徴とする記録方法。
【請求項23】
請求項21に記載のデータ生成方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項24】
請求項22に記載の記録方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体上に画像を記録するための記録装置、データ生成装置、記録方法、データ生成方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の吐出口が配列された吐出口列を有する記録ヘッドを記録媒体に対して相対的に走査させながら記録媒体にインクを吐出することにより、記録媒体上に画像を記録する記録装置が従来から知られている。このような記録装置において、近年では有色のインクに対して、機能性を付与する液を前記インクの前もしくは後に着弾させることで、画質向上を実現することが知られている。
【0003】
機能性インクは、例えば、有色インクを反応または凝集させる反応液や、印字膜に光沢を付与するオプティマイザ、透明フィルム上での発色を向上させるホワイトインク、金属光沢を付与するメタリックインクなどがある。これらの液は基本的に有色インクに対して、被覆させるように付与するが、有色インクと機能性インクの間で様々な理由で着弾ズレが生じることがある。
【0004】
特許文献1には、有色インクデータを膨張処理することにより、反応液吐出データを生成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-276400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている膨張処理は、量子化後の有色インクデータに適用されるため、膨張処理が実行される単位は有色インクデータの量子化解像度と同じである。例えば、有色インクデータの解像度が600dpiである場合には、同じ600dpiの解像度で膨張処理が実行され、有色インクが付与される画素に隣接する周囲の画素に反応液を付与するための反応液吐出データが生成される。この結果、有色インクの付与量に対して画質向上に必要な量以上に反応液を付与するデータが生成されてしまう場合がある。
【0007】
このような課題に対し、本発明は、機能性インクの付与量を適切な量に抑えつつ、機能性インクを用いた画質向上を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、色材を含む第1のインクを記録媒体に付与するための複数の第1の吐出口が第1の方向に沿って一定の第1の間隔で並ぶ第1の吐出口群と、前記第1のインクに対する機能を有する第2のインクを記録媒体に付与するための複数の第2の吐出口が前記第1の方向に沿って並ぶ第2の吐出口群と、複数の前記第2の吐出口が前記第1の方向に沿って一定の前記第1の間隔で配置された第3の吐出口群と、を備え、複数の前記第1の吐出口のうちの前記第1の方向において隣接する2つの間に前記第2の吐出口が少なくとも1つずつ配置され、前記第3の吐出口群の複数の前記第2の吐出口のそれぞれが、前記第1の方向において前記第1の吐出口群の複数の前記第1の吐出口と対応する位置に配置された記録手段と、前記第1の吐出口群から第1のインクを付与するための第1の付与データに基づいて、前記第2の吐出口群から第2のインクを付与するための第2の付与データを生成する生成手段と、前記第2の付与データに基づいて第2のインクを付与するように前記記録手段を制御する制御手段と、を備え、前記生成手段は、前記第1の付与データにおいて前記第1のインクを付与することを示す画素であって前記第1の方向に1画素以上の連続するL(L:1以上の整数)画素に対応するように、前記第2の付与データにおいて前記第2のインクを付与することを示す画素が前記第1の方向に(L+M)(M:1以上の奇数)画素連続するように、前記第2の付与データを生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、機能性インクの付与量を適正な量に抑えつつ、機能性インクを用いた画質向上を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態における記録装置の内部構成を示す図
図2】第1の実施形態における記録ヘッドを示す図
図3】実施形態における記録制御系を示す図
図4】実施形態における画像処理の過程を説明するためのフローチャート
図5】実施形態における解像度変換を示す図である。
図6】実施形態における膨張処理を説明するためのフローチャート
図7】第1の実施形態における解像度変換の一例を示す図
図8】インデックスパターンの一例を示す図
図9】第1の実施形態におけるボールド処理を説明するための図
図10】第1の実施形態における記録ヘッドを示す図
図11】第1の実施形態におけるボールド処理を説明するための図
図12】第2の実施形態における記録ヘッドを示す図
図13】第2の実施形態におけるボールド処理を説明するための図
図14】第2の実施形態におけるYレジを説明するための図
図15】第2の実施形態におけるYレジを説明するための図
図16】第2の実施形態におけるボールド処理を説明するための図
図17】第2の実施形態におけるボールド処理を説明するための図
図18】第2の実施形態におけるボールド処理を説明するための図
図19】その他の実施形態に画像処理の過程を説明するためのフローチャート
図20】その他の実施形態におけるボールド処理を説明するための図
図21】その他の実施形態におけるボールド処理を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。本実施形態では、機能性インクとして、カラーインクに含有される色材と反応または凝集する成分を含む反応液を用いて説明する。後述するように、機能性インクは、カラーインクに機能を有するインクであれば反応液に限られない。
【0012】
図1は、本実施形態におけるインクジェット記録装置(以下、記録装置とも称する)の内部構成を示す図である。本実施形態の記録装置は、インクを吐出するための吐出口が配列した記録ヘッドを用いて、吐出口の配列方向と交差する方向に搬送される記録媒体に対して画像を記録する、所謂フルマルチ方式のインクジェット記録装置である。
【0013】
供給部101から供給される記録媒体Pは、搬送ローラ対103および104に挟持されながら、+X方向(搬送方向、副走査方向)に所定の速度で搬送され、排出部102より排出される。上流側の搬送ローラ対103と下流側の搬送ローラ対104の間には、搬送方向に沿って記録ヘッド105~109が並んで配列しており、記録データに従ってZ方向にインクを吐出する。記録ヘッド105、106、107、108、109は、それぞれ反応液、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のインクを吐出する。また、それぞれのインクは、不図示のチューブを介して記録ヘッド105~109に供給される。
【0014】
本実施形態において、記録媒体Pは供給部101にロール状に保持された連続紙であっても良いし、あらかじめ規格サイズに切断されたカット紙であっても良い。連続紙の場合は、記録ヘッド105~109による記録動作が終了した後、カッタ110によって所定の長さに切断され、排出部102にてサイズごとに排紙トレイに分類される。印刷制御部111は、プリンタ全体の各部の制御を司るユニットである。
【0015】
図2は、本実施形態における記録ヘッドを示す図である。ここでは、記録ヘッド105~109のうち、ブラックインクを吐出する記録ヘッド109(図2(a))と、反応液を吐出する記録ヘッド105(図2(b))のみを示している。他の記録ヘッド106~108については、記録ヘッド109と同様の構成である。また、記録ヘッドに配列された各吐出口30と対向する位置(記録ヘッドの内部)には、記録素子として電気熱変換素子が設けられており、この電気熱変換素子を駆動することにより熱エネルギーが生成され、インクの吐出動作が行われる。記録素子としては、電気熱変換素子以外にも、圧電素子や静電素子、MEMS素子を用いることができる。
【0016】
記録ヘッド109には、X方向と交差するY方向(配列方向、主走査方向)に沿って、色材を含むカラーインクを付与可能な吐出口30が一定の間隔で複数配列されている。簡単のため、吐出口列は、14個の吐出口30から構成されている様子を示しているが、実際には、記録媒体のY方向における全幅を記録可能な範囲に吐出口30が配列されている。
【0017】
これらの吐出口列には、1インチ当たり1200個の間隔で吐出口30が配置されている。この記録解像度を1200dpiと称する。斜線で示す吐出口が記録に使用される吐出口であり、白地の吐出口31が後述するYレジ用および、膨張処理用に使用される吐出口である。図2(a)、(b)に示すように、Y方向において、記録ヘッド105の各吐出口の位置は、記録ヘッド109の各吐出口の位置に対して2400dpiずれている。
【0018】
図3は、本実施形態における記録制御系を示すブロック図である。記録装置内の記録制御系13は、上位装置(DFE)HC2に通信可能に接続され、また、上位装置HC2はホスト装置HC1に通信可能に接続される。
【0019】
ホスト装置HC1では、記録画像の元になる原稿データが生成あるいは保存される。ここでの原稿データは、例えば、文書ファイルや画像ファイル等の電子ファイルの形式で生成される。この原稿データは、上位装置HC2へ送信され、上位装置HC2では、受信した原稿データを、記録制御系13で利用可能なデータ形式、例えばRGBで画像を表現するRGBデータに変換される。変換後のデータは、上位装置HC2から記録装置内の記録制御系13へ送信される。
【0020】
記録制御系13は、メインコントローラ13Aと、エンジンコントローラ13Bとに大別される。メインコントローラ13Aは、処理部131、記憶部132、操作部133、画像処理部134、通信I/F(インタフェース)135、バッファ136および通信I/F137を含む。
【0021】
処理部131は、CPU等のプロセッサであり、記憶部132に記憶されたプログラムを実行し、メインコントローラ13A全体の制御を行う。記憶部132は、RAM、ROM、ハードディスク、SSD等の記憶デバイスであり、処理部131が実行するプログラムや、データを格納し、また、処理部131にワークエリアを提供する。操作部133は、例えば、タッチパネル、キーボード、マウス等の入力デバイスであり、ユーザの指示を受け付ける。
【0022】
画像処理部134は例えば画像処理プロセッサを有する電子回路である。バッファ136は、例えば、RAM、ハードディスクやSSDである。通信I/F135は上位装置HC2との通信を行い、通信I/F137はエンジンコントローラ13Bとの通信を行う。図3において破線矢印は、記録制御系13に入力されたデータの処理の流れを例示している。上位装置HC2から通信IF135を介して受信されたデータは、バッファ136に蓄積される。画像処理部134はバッファ136からデータを読み出し、読み出したデータに所定の画像処理を施してプリントエンジンが用いる記録データを生成し、再びバッファ136に格納する。
【0023】
そして、バッファ136に格納された画像処理後の記録データは、通信I/F137からエンジンコントローラ13Bへ送信される。その後、エンジンコントローラ13Bによって記録データに基づいて各記録ヘッド105~109に設けられた記録素子が駆動され、記録動作が行われる。
【0024】
なお、ここでは、処理部131や記憶部132、画像処理部134をそれぞれ1つずつ有する形態を例示したが、複数の処理部131や記憶部132、画像処理部134を有する形態であっても良い。
【0025】
(画像処理)
図4は、本実施形態におけるデータ生成処理を実行する制御プログラムのフローチャートである。画像処理の開始の指示が入力されると、ステップS41にて、画像処理部134はバッファ136から読み出されたRGBデータを取得する。本実施形態において、RGBデータは、R、G、Bの各値8bitで構成されるデータであり、Y方向に600dpi、X方向に600dpiのデータ解像度を有している。ステップS41において、RGBデータから反応液のデータ(RGB8bit)を生成する。
【0026】
次にステップS42において、RGBデータを記録に用いるインクの色に対応するCMYKデータに変換する色変換処理を実行する。この色変換処理により、CMYK各値12bitで構成される4プレーンのCMYKデータが生成される。反応液データも同様にステップS42’において、色変換処理により12bit1プレーンの反応液データが生成される。
【0027】
次にステップS43にて、CMYKデータに対して量子化を行い、CMYK各値4bitで構成される量子化データを生成する。この量子化処理としては、ディザ法や誤差拡散法等を実行することができる。反応液データも同様にステップS43’において、4bitの量子化データが生成される。なお、本実施形態では量子化処理によって600dpiのデータ解像度を有する量子化データが生成される。次に、この量子化データに対して、CMYKに対してはステップ44において解像度変換が実施される。
【0028】
図5は、解像度変換の概念を示す図である。図5(a)に示す1画素を600dpi四方の量子化データを解像度変換することにより、図5(b)に示す1画素1200dpiの量子化データ4画素分が生成される。解像度変換後の量子化代表値は変換前の値に基づいて決定される。図5の画素内の数値は量子化代表値である。解像度変換後のデータは、3bitのデータである。
【0029】
一方、ステップS48において、反応液データに対して膨張処理が実行される。図6は、ステップS48の膨張処理の詳細を示すフローチャートである。ステップS51で反応液データを2値化する。ここでは、記録を示すデータが存在する画素は「1」、記録を示すデータが存在しない画素は「0」に変換される。
【0030】
ステップS52で、解像度変換を実施する。図7は、ステップS52の解像度変換を説明するための図であり、600dpi×600dpiのデータが1200dpi×1200dpiのデータに変換される。ステップS53で、ボールド処理が実施され、注目画素に対し、主走査方向および副走査方向の少なくとも一方の周囲の画素に記録を示すデータ(ボールドデータ)が生成される。一方、ステップS55では、ボールド前のデータの解像度変換を実施する。
【0031】
次に、ステップS54において、2値のボールドデータが3bitの量子化データに変換される。変換する量子化代表値は、ボールドする各画素に対して任意の値を指定できる。その後、ステップS56において、ボールド前データとボールド後のデータの論理和を加算して、ボールドデータを生成する。論理和をとることにより、ボールド部分と非ボールド部分の量子化代表値を個別に設定できる。膨張処理に関しての本実施形態における詳細は後述する。
【0032】
次にステップS45において、CMYKの3bitの量子化データに対してインデックス展開処理を行い、CMYK各1bitに変換する。反応液データに対しても膨張処理後の量子化データをステップS45‘において、インデックス展開処理を行い1bitのデータに変換する。1色に複数列の吐出口列を有する場合、このインデックス展開処理において各列の1bitデータを生成する。
【0033】
図8は、本実施形態で用いるインデックスパターンを模式的に示す図である。このうち、図8(a)は解像度変換前の量子化データ600dpiに対応する4bitの情報が示す階調値を示している。図8(b)は解像度変換後の量子化データ1200dpiに対応する3bitの情報が示す階調値を示している。図8(c)は3bitの量子化データに対する2値のデータを示す。図8(c)からわかるように、解像度が600dpi×600dpiの領域にレベル0の階調値のデータが入力された場合、解像度が1200dpi×1200dpiの画素それぞれにインクの非吐出を示す「0」の値が定められる。次にレベル1の階調値の合成データが入力された場合、図8(b)の左上の画素にのみインクの吐出を示す「1」の値が定められる。次にレベル2の階調値の合成データが入力された場合左上の画素に加え、右下の画素にも「1」の値が定められる。
【0034】
以下、同様にして合成データの階調値が1つ大きくなるごとに、「1」の値が定められる画素の数が1つずつ多くなっていく。本実施形態では図2に示すように各色1列の吐出口列なので、記録できる階調値は図8(c)に示すように、各色レベル4までとなる。仮に各色1200dpiの解像度で4列の吐出口列を有する場合は、図8(d)、図8(e)、図8(f)、図8(g)に示すようにレベル15までの階調値を記録することができる。
【0035】
上記のようにしてステップS45およびステップS45‘におけるインデックス展開処理が行われ、1200dpi×1200dpiの解像度でのインクの吐出/非吐出を示す1bitの情報により構成される画像データが生成される。
【0036】
次に、ステップS46およびステップS46‘において、CMYK各色および反応液データの主走査方向(Y)のレジ調が実施される。本実施形態においてはYレジは実施しない。その後エンジンコントローラ13Bへの記録データの送信が行われる。
【0037】
次に、ステップS47およびステップS47‘において、エンジンコントローラ13Bによって、CMYK各色および反応液データの副走査方向(X)のレジ調が実施される。その結果、副走査方向におけるCMYKと反応液データの着弾ずれを補正する。その後、記録データに基づく記録動作が行われる。
【0038】
図9は、本実施形態のボールド処理(膨張処理)の詳細を説明するための図である。図9(a)は600dpiの量子化代表値4を示す図である。これに対し前述した膨張処理により、2値化され(図9(b))、解像度変換(図9(c))される。解像度変換された後の、比較例を図9(d)及び(e)に示す。図9(d)は、従来のようにボールド処理された状態を示す図であり、図9(e)は、図9(d)のデータの配置に対応する記録媒体上の画素領域にインク及び反応液を付与することにより記録した場合の、着弾の様子を示す図である。斜線のドット91は、CMYKインクの着弾を示し、ここでは、主走査方向(Y)に連続する2画素、副走査方向(X)に連続する2画素の計4画素にカラーインクが付与されるデータであることを示す。グレー部92は、反応液のボールドデータを示す。この場合は、主走査方向(Y)及び副走査方向(X)にそれぞれ1画素ボールドさせる処理(1ボールド)が施された例である。1ボールドの場合の1画素分の幅をボールド幅と呼ぶ。本図の場合は、主走査方向(Y)及び副走査方向(X)にそれぞれ1200dpiのボールド幅でボールド処理した例である。1ボールドさせた結果、ボールドデータは4画素×4画素の16画素となり、主走査方向に上下1画素ずつの合計2画素分、副走査方向に左右1画素ずつの合計2画素分、ボールドしている。すなわち、従来のボールド処理の場合には、カラーインクを付与する画素が連続する数に対して、一方の端部と他方の端部の両方に所定の画素数、ボールドさせる。このため、反応液を付与する画素数は、カラーインクを付与する連続画素数に対して2画素もしくはそれ以上の偶数画素増える。このようなボールド処理の結果、CMYKインクによるドットカバレッジ(斜線部91)よりも、ボールドした反応液によるドットカバレッジ(グレー部92)の方が広くなる。
【0039】
一方、図9(d’)は、本実施形態のボールド処理を示した状態を示す図である。従来のようにボールドさせる方向に対して一方の端部と他方の端部にそれぞれボールド処理を行うのではなく、一方の端部にのみボールド処理を行う。図9(d’)の例では、主走査方向(Y)及び副走査方向(X)にそれぞれ1画素ずつボールドさせて、3画素×3画素の合計9画素が反応液を付与するデータとなっている。図9(e’)は、図9(d’)のデータに基づいてカラーインク及び反応液を付与した際の着弾の様子を示す図である。斜線のドット93は、CMYKのインクの着弾を示し、主走査方向(Y)に2画素、副走査方向(X)に2画素連続する画素にカラーインクが付与される。一方、グレー部94は、反応液の着弾を示し、主走査方向(Y)に3画素、副走査方向(X)に3画素連続する画素に反応液が付与される。ここで、図2に示したように、CMYKの記録106~109ヘッドの吐出口群の配置に対して、反応液ヘッド105の吐出口群の配置は、Y方向に2400dpiずれている。そのため、図9(e’)に示すように、主走査方向(Y)において、CMYKインクに対して反応液が2400dpiずれて着弾する。これにより、主走査方向(Y)においては、図9(d)及び(e)に示した従来のボールド処理に比べて、反応液インクの付与量を低減させることができる。
【0040】
図9(f)は、図9(e’)の状態から、さらに副走査方向(X)の着弾をずらすレジ調整を行った場合を示す図である。ステップS47およびステップS47’において、CMYK各色のデータに基づくCMYKのヘッド106~109からの吐出タイミングに対し、反応液データに基づく反応液ヘッド105からの吐出タイミングを、2400dpiずらしている。その結果、主走査方向(Y)及び副走査方向(X)の両方において、CMYKインクが吐出される画素に対する、反応液のボールド幅を2400dpiとすることができる。
【0041】
第1の実施形態においては、図2に示すように各ヘッドに吐出口列が1列設けられている例を示したが、各インクについて複数列設けられていても良い。図10は、1ヘッドに複数列の吐出口列を備える場合の例である、図10(a)は、CMYKのカラーインクを吐出する記録ヘッド106~109であり、図10(b)は、反応液を吐出する記録ヘッド105である。そして、図2と同様に、Y方向において、記録ヘッド106~109に配列されたカラーインクの吐出口と記録ヘッド105に配列された反応液の吐出口とは、2400dpiずれている。
【0042】
また、図9(f)に、主走査方向(Y)と副走査方向(X)の両方においてCMYKインクに対してボールド幅が2400dpiとなる例を示した。CMYKインクの着弾位置に対する反応液の着弾位置のずれの特性によっては、副走査方向(X)への吐出タイミング制御によるレジずれを実施しなくても良い。あえてレジ調整を行わなくても図9(f)に近い着弾位置を得られる場合には、X方向のレジ調整は不要である。
【0043】
図11は、主走査方向(Y)についてのみ、ボールド処理を2400dpiで行った例を示す。図11(a)は、図9と同様に、600dpiの量子化代表値4を示す図である。これに対し、前述した膨張処理により、2値化され(図11(b))、解像度変換(図11(c))される。図11(d)は、ボールド処理により生成されたボールドデータであり、主走査方向に3画素、副走査方向に4画素の合計12画素に反応液を付与するデータである。このとき、カラーインクを付与する2画素が、反応液の3画素の中央ではなく、主走査方向に偏った位置にある。図11(e)は、図11(d)のデータの配置に対応する記録媒体上の画素領域に、CMYKのカラーインクと反応液が着弾した場合の図である。副走査方向(X)において、吐出タイミングを2400dpiずらすレジ調整を実施しないため、図11(f)のように主走査方向(Y)に2400dpi、副走査方向(X)に1200dpiのボールド幅となる。
【0044】
以上のように、ボールドさせる方向において、カラーインクが付与される画素に対して一方のみのボールド処理とすることで、カラーインクが付与される画素の連続する画素数+1画素となるように反応液データを生成することができる。このときの連続する画素数は、1画素であってもよく2画素以上であってもよく、カラーインクの連続するL(L:1以上の整数)画素に対し、L+1画素の反応液が付与される。これにより、カラーインクの記録データの出力解像度(1200dpi)よりも高い解像度(上記例では2400dpi)でボールド処理された反応液データを生成することができる。この連続画素数に対して、+1画素ボールドさせる処理を実行するのは、主走査方向及び副走査方向の少なくとも一方に対して行えばよい。このようなボールド処理の結果、CMYKインクによるドットカバレッジ(斜線部93)よりもボールドした反応液によるドットカバレッジ(グレー部94)の方が、主走査方向および副走査方向において2400dpi分だけ広くなる。このような構成により、反応液の付与量を必要以上に増やすことなく、記録される画像の画質を向上させることができる。
【0045】
尚、カラーインクと反応液の種類に応じて、カラーインクが付与される画素の連続する画素数に対してボールドさせる画素の数を、1画素ではなく、3画素以上とする構成であってもよい。このとき、従来のボールド処理は、連続するカラーインクのL画素に対して+偶数画素増やす構成であったが、L画素+M(M:1以上の奇数)画素増やすことにより、カラーインクの記録解像度以上の高解像度で反応液の付与位置を制御することができる。この結果、カラーインクの解像度に対して整数分の1の解像度で反応液インクの付与位置を設定することができ、より高精度に反応液の付与量を制御することができる。
【0046】
また、本実施形態では、ステップS42’において4プレーンの12bitのCMYKデータから12bitの1プレーンの反応液データを生成する例について説明したが、これに限られない。特許文献1に記載されているように、CMYKの量子化後の付与データからボールド処理を行って、カラーインク色毎の反応液の付与データを生成し、ANDを取って1プレーンとする構成でもよい。カラーインクデータに基づいて反応液の付与データを生成するものであれば、その生成方法には限定されない。
【0047】
(第2の実施形態)
本実施形態においては、インクジェット記録装置の内部構成、画像処理においては第1の実施形態と同様である。図12は、本実施形態において使用する記録ヘッドを示す図である。図12(a)は、記録ヘッド105~109のうちブラックインクの記録ヘッド109を示しているが、他の記録ヘッド106~108についても記録ヘッド109と同様の構成である。図12(b)は、反応液ヘッド105を示している。
【0048】
図12(a)に示す記録ヘッド109は、インクを吐出するための吐出口30がY方向に沿って配列された、8列の吐出口列0~7がX方向に並んで配置されている。ここでは簡単のため各吐出口列0~7は16個の吐出口30から構成されている様子を示しているが、実際には各吐出口列0~7は記録媒体のY方向における全幅を記録可能な範囲に吐出口30が配列されている。
【0049】
各吐出口列には、各吐出口が1インチ当たり600個の吐出口30が配置されるような解像度(以下、上記の解像度を600dpiと称する)で配置されている。そして、X方向に隣接する2つの吐出口列は、各吐出口の間隔が+Y方向に1200dpiの距離に対応する解像度だけずれるようにして配置されている。例えば、吐出口列0に対して吐出口列1は+Y方向側に1200dpiだけずれて配置されている。したがって、記録ヘッド109は、吐出口列0、吐出口列2、吐出口列4、吐出口列6がY方向に同じ位置にドットを形成可能なように各吐出口列が配置されている。同様に、吐出口列1、3、5、7の組もまたそれぞれY方向に同じ位置にドットを形成可能となっている。
【0050】
このように、記録ヘッド109の主走査方向(Y)における記録解像度は1200dpiであり、1200dpiで吐出口が配列されているものとみなすことができる。
【0051】
一方、記録ヘッド105の構成は、記録ヘッド109とほぼ同様であるが、X方向に隣接する2つの吐出口列は、各吐出口の間隔のY方向に2400dpiの距離に対応する解像度ずれるようにして配置されている。例えば、吐出口列0に対して吐出口列1は+Y方向側に2400dpiだけずれて配置され、吐出口列2は+Y方向側に1200(=2400/2)dpiだけずれて配置されている。したがって、記録ヘッド105は、吐出口列0と吐出口列4がY方向に同じ位置にドットを形成可能なように各吐出口列が配置されている。同様に、吐出口列1、5の組、吐出口列2、6の組、吐出口列3、7の組もまたそれぞれY方向に同じ位置にドットを形成可能となっている。
【0052】
また、図12の左側に示したように、各吐出口列0~7のY方向に対応する位置に配列された8つの吐出口を同じsegに属する吐出口として分類する。例えば、各吐出口列0~7の―Y方向側端部に位置する8つの吐出口30はseg0と、+Y方向側端部に位置する8つの吐出口30はseg15と分類する。
【0053】
このように、記録ヘッド105の主走査方向(Y)における記録解像度は2400dpiであり、2400dpiで吐出口が配列されているものとみなすことができる。そして、記録ヘッド105は、記録ヘッド109の解像度(1200dpi)の2倍の解像度で反応液を付与することができる。尚、吐出口列1列を1つの吐出口群とみなし、各記録ヘッドが複数の吐出口群を備える構成とみなしてもよい。
【0054】
図4のフローに基づいて、ボールド処理(膨張処理)について説明する。ステップS41~ステップS44およびステップS41~ステップS44’、ステップS48’は第1の実施形態と同様である。ステップS45およびステップS45’において、インデックス展開処理が行われる。吐出口列数が600dpiの解像度で8列あるので、図8(d)のパターンは図12の列0と列2による展開パターン、図8(e)のパターンは図12の列1と列3による展開パターン、図8(f)のパターンは図12の列4と列6による展開パターン、図8(g)のパターンは図12の列5と列7による展開パターンを示す。
【0055】
図13は、第2の実施形態における膨張処理の詳細について示す模式図である。図13(a)~(c)は、600dpiで量子化代表値8である画素が、2値化されて画素値「1」となり、1200dpiに解像度変換されて2×2画素の各画素値が「2」となった例を示している。図13(d)は、解像度変換された後、本実施形態におけるボールド処理を示した図である。ボールド処理は、第1の実施形態と同様にボールド幅1であるが、周囲1画素に対して1律に行うのではなく、9画素に偏らせて行われる。
【0056】
図14は、インデックス展開処理後のボールドデータと吐出口の関係を示す図である。図14(a)はCMYKヘッド106~109を示しており、斜線部は記録データが入っている吐出口30を示している。白地の吐出口31はYレジ用の吐出口である。図14(b)はボールド処理後の反応液ヘッド105を示しており、斜線部30は記録データが入っている吐出口を示している。ここでは、列0、列2および、列4、列6にボールド後の反応液データが入っている。反応液ヘッド105の全ての列にボールドデータが入っていないが、これはステップS45‘のインデックス展開におけるパラメータにより、列の分配をこのように制御した結果である。白地の吐出口31はボールドおよび、Yレジに使用する吐出口である。図13(e)は、図13(d)のデータを記録した場合の着弾の様子を示している。斜線のドット93はCMYKのインクの着弾を示し、グレー部94はボールド後の反応液データを示す。図14(b)で示した記録データは、図13(e)に示すようなCMYKインク93に対して反応液のボールドデータ94は偏って着弾する。本実施形態においては、図4のフローのステップS46およびステップS46‘において、CMYKヘッド106~109に対して、反応液ヘッド105の主走査方向のレジ調(Y)を2400dpiずらす。2400dpiのレジ調(Y)は、次のように実施する。図14(c)で示すように反応液データの記録ヘッド105の列0のデータは列3にシフトし、1seg分上にシフトさせる。また、同様に列4のデータは列7にシフトし、1seg分上にシフトさせる。列2のデータと列6のデータはそれぞれ列1および列5へシフトさせる。その結果、13(f)に示すように、CMYKインク93に対して反応液のボールドデータ94は2400dpi主走査方向にずれて着弾し、Y方向のボールド幅は2400dpiとなる。図13(g)はステップS47およびステップS47’において、CMYK各色および反応液データの副走査方向(X)のレジ調が実施された後の着弾を示した図である。この時CMYKのインクに対して、反応液の副走査方向(X)レジを2400dpiずらしている。その結果、副走査方向(X)においてもCMYKインクに対する反応液のボールド幅は2400dpiとなる。その結果、反応液の付与量を低減しつつ、CMYKインクによるドットカバレッジ(斜線部93)よりもボールドした反応液によるドットカバレッジ(グレー部94)の方が、主走査方向および副走査方向において2400dpi分だけ広くなる。
【0057】
図13に主走査方向(Y)と副走査方向(X)において、CMYKインクに対して反応液のボールド幅が2400dpiとなる例を示したが、CMYKインクに対しての反応液データのずれの方向の特性によってボールド幅を適宜変えても良い。図17(g)に示すように、副走査方向(X)と主走査方向(Y)のボールド幅を変えて、主走査方向(Y)のみボールド幅2400dpiとする例や、図17(g’)に示すように、副走査方向(X)のみボールド幅2400dpiとしてもよい。また、図17(g’’)に示すように、主走査方向(Y)のみボールドし、その幅を2400dpiとする例や、図17(g’’’)に示すように副走査方向(X)のみボールドし、その幅を2400dpiとしても良い。さらに、図17(g’’’’)に示すようにカラードット93の1ドットあたり対角に反応液データが置かれるように反応液データを生成してもよい。この場合は図17(h)に示すように、カラードット93に対して反応液ドット95が大きいことが必要となる。
【0058】
本実施形態においては、図14に示すような反応液を付与可能な記録ヘッド105の列分配データのボールドの例を示したが、これに限るものではなく、図15のように全列への分配としても良い。図15(a)はCMYKのカラーインクを付与可能なヘッド106~109を示しており、斜線部は記録データが入っている吐出口を示している。図15(b)はボールド処理後の反応液の記録ヘッド105を示しており、格子や斜線、点のパターンが記されている部分は記録データが入っている吐出口を示している。ここでは、CMYKの記録ヘッド106~109と反応液の記録ヘッド105は同様のヘッド形態となっており、X方向に隣接する2つの吐出口列は、各吐出口の間隔のY方向に2400dpiの距離に対応する解像度だけずれるようにして配置されている。また、列0~列7までボールド後の反応液データが入っている。図16(e)に着弾の様子を示す。2値化(図16(b))から解像度変換(図16(c)、ボールド処理(図16(d))までは上記記載の例と同一である。ステップS45‘のインデックス展開処理により、反応液ヘッド105へは全列へデータが分配される。図16(e)の斜線のドット93はCMYKのインクの着弾を示し、グレー部94はボールド後の反応液ドットを示している。ここでは、CMYKの記録ヘッド106~109および、反応液の記録ヘッド105はY方向に2400dpiずれた吐出口を有するので、着弾も2400dpiずれたドットが存在する。次に図4のフローのステップS46およびステップS46‘において、CMYKの記録ヘッド106~109に対して、反応液の記録ヘッド105の主走査方向のレジ調(Y)を2400dpiずらす。2400dpiのレジ調(Y)は、次のように実施する。図15(c)で示すように反応液データの記録ヘッド105の列0のデータは列3にシフトし、1seg分上にシフトさせる。また、同様に列4のデータは列7にシフトし、1seg分上にシフトさせる。列1と列5のデータはそれぞれ列0と列4にシフトさせる。列2と列6のデータはそれぞれ列1と列5にシフトさせる。列3と列7のデータはそれぞれ列2と列6へシフトさせる。その結果、図16(f)に示すように、CMYKインク93に対して反応液のボールドデータ94は2400dpi主走査方向にずれて着弾し、Y方向のボールド幅は2400dpiとなる。図16(g)はステップS47およびステップS47’において、CMYK各色および反応液データの副走査方向(X)のレジ調が実施された後の着弾を示した図である。この時CMYKのインクに対して、反応液の副走査方向(X)レジを2400dpiずらしている。その結果、副走査方向(X)においてもCMYKインクに対する反応液のボールド幅は2400dpiとなる。
【0059】
上記説明では、図13図16では主走査方向(Y)と副走査方向(X)において、CMYKインクに対してボールド幅が2400dpiとなる例を示したが、CMYKインクに対しての反応液データのずれの方向の特性によっては、図18(g)に示すように副走査方向(X)と主走査方向(Y)のボールド幅を変えて、主走査方向(Y)のみボールド幅2400dpiとする例や、図18(g’)に示すように副走査方向(X)のみボールド幅2400dpiとしても良い。また、図18(g’’)に示すように、主走査方向(Y)のみボールドし、その幅を2400dpiとする例や、図18(g’’’)に示すように副走査方向(X)のみボールドし、その幅を2400dpiとしても良い。さらに、図18(g’’’’)に示すようにカラードット93の1ドットあたり対角に反応液データが置かれるように反応液データを生成してもよい。この場合は図18(h)に示すように、カラードット93に対して反応液ドット95が大きいことが必要となる。
【0060】
以上のように、カラーインクの記録解像度が1200dpiであるのに対し、反応液の記録解像度が2400dpiである場合に、カラーインクの記録解像度以上の解像度で反応液データのボールド処理を行うことができる。その結果、反応液の付与量を必要以上に増やすことなく、画質向上を実現することが可能となる。
【0061】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の第1の実施形態及び第2の実施形態に説明した構成に限られるものではなく、下記のような構成であっても良い。
【0062】
<ボールド処理>
図19は、制御プログラムのフローチャートである。図19(a)のように、ステップS45’の後にステップS49ボールド処理を行っても良い。また、量子化解像度と出力データ解像度が等しい場合、図19(b)のように、ステップS49のボールド処理は、ステップS43’の量子化処理の前に実行しても良い。
【0063】
<機能性インク>
上述の実施形態では、機能性を付与する液として色材を含むカラーインクとの反応性を有する反応液を使用する例を示したが、これに限られるものではない。樹脂を含み、記録媒体上もしくはインク膜上における光沢性が有色インクとは異なるインクであっても良い。例えば、印字膜に光沢を付与する樹脂を含む透明液のオプティマイザ等であっても良い。また、透明フィルムなどの基材上での発色を向上させるための白色の色材を含むホワイトインク、UVにより硬化する樹脂を含むインク、金属光沢を付与する金属粒子を含むメタリックインクなどであっても良い。また、記録ヘッド105が反応液を付与する記録ヘッドである構成について説明したが、機能性を付与する液を吐出するヘッド位置はこれに限られるものではなく、105~109のいずれかの位置であっても良い。また、カラーインクを付与する画素領域に対して、カラーインクが着弾する前もしくは後に機能性を付与する液を着弾させることで、画質向上を実現することが知られているが、付与タイミングをカラーインクと混ぜる形態であってもよい。
【0064】
<ボールド幅>
図9図11図13図16図17図18に、CMYKの各インクに対して反応液のボールドする例を示したが、これに限るものではなくボールド幅をさらに増やしても良い。
【0065】
図20は、800dpiのボールド、つまり、出力データ解像度1200dpiの2倍の解像度で3つ分のボールドを示した例である。このようにボールド幅を増やしても、出力データ解像度よりも高解像度の単位でボールド幅を実現できるため、付与する反応液をより減らすことができる。一般化すると、主走査方向または、副走査方向において、出力データ解像度(Ndpi)の倍の解像度(2×Ndpi)の整数倍の単位でずれて着弾するようにボールド処理を実施する。
【0066】
また、ボールドした画素が重なった場合には、図21に示すように、ボールド画素の論理和とする。図21(a)は、隣接する2画素にCMYKのインクデータが存在することを示す図であり、図21(b)は、2値化を行った結果を示す図である。図21(c)は、解像度変換を実施した後の図である。図21(d)は、(i)の画素に対してボールド処理をした結果と、(ii)の画素にボールド処理をした結果の論理和と取った図(iii)を示している。図21(e)は着弾の様子を示し、図21(d)はYレジ後、図21(e)は更にXレジ後の着弾の様子を示している。
【0067】
<記録ヘッド>
図2に1列の吐出口解像度が1200dpiの例を示したが、これに限られるものではなく、これよりも高解像度の場合(例えば、1列2400dpiの吐出口解像度で(a)、(b)間のY方向のずらし量は4800dpi)や、これよりも低解像度の場合(例えば1列600dpiの解像度で(a)、(b)間のY方向のずらし量は1200dpi)であっても本発明の効果が得られる。一般化すると、1列の吐出口解像度Ndpiのときに、(a)(b)間のY方向のずらし量は2×Ndpiであっても良い。
【0068】
図12(b)に1列の吐出口解像度が600dpiの例を示したが、これに限るものではなく、図12(b)における1吐出口列の解像度Ndpi、列間のY方向のずらし量Ydpi、吐出口列数X,総列数Aに関して次の関係が成り立てば良い。A=B×X(Bは1以上の整数、X=Y/N)。例えば1列1200dpiの吐出口解像度(N)で列間のY方向のずらし量は4800dpi(Y)、列数4(X)、総列数8(2×X)の場合や、1列300dpiの解像度(N)で列間のY方向のずらし量は1200dpi(Y)、列数4(X)、総列数8(2×X)であっても良い。
【0069】
また、前述の実施形態では、記録ヘッドの吐出口が配列するY方向における記録媒体の全幅に画像を記録可能な、所謂フルマルチプリンタを用いて説明したが、本発明はこの形態に限られるものではない。記録媒体と記録ヘッドが相対的に移動することにより画像が記録される記録装置であればよい。例えば、記録媒体の搬送方向と交差する方向に沿って記録ヘッドを搭載したキャリッジを移動させることにより記録媒体上に画像を記録する、所謂シリアルプリンタであってもよい。
【0070】
また、前述の実施形態では、フルマルチプリンタにおいて、機能性インクを吐出する吐出口は、CMYKのカラーインクを吐出する吐出口の配列に対してY方向に配列解像度の1/2ずれて配列した記録ヘッドの例を説明した。一方、シリアルプリンタの場合には、Y方向における記録媒体と記録ヘッドの相対位置の関係を、記録媒体の搬送量によって調整することができる。従って、CMYKのカラーインクを吐出する吐出口列の配列に対して、機能性インクを吐出する吐出口列の配列を、Y方向にずらして配列させたものに限られない。CMYKのカラーインクを吐出する各吐出口の位置と、機能性インクを吐出する各吐出口の位置とが、Y方向において一致していてもよく、ずれていてもよい。記録媒体の搬送量を調整することにより、CMYKのカラーインクの隣接する2つの吐出口から吐出されて記録媒体上に形成されたインクドットの間の位置に、機能性インクのインクドットを形成することが可能である。
【0071】
また、上記実施形態では、記録装置内の画像処理部134により図4の画像処理フローのデータ生成処理が行われる形態について説明したが、データ生成処理までをホスト装置HC1や上位装置HC2にて実行するデータ生成装置の形態であってもよい。また、図4に示した制御プログラムが記憶された記憶媒体から読み出し、コンピュータに実行させる形態であってもよい。
【符号の説明】
【0072】
30 吐出口
105~109 記録ヘッド
134 画像処理部
132 記憶部
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