IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リンナイ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-燃焼装置 図1
  • 特許-燃焼装置 図2
  • 特許-燃焼装置 図3
  • 特許-燃焼装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】燃焼装置
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/24 20060101AFI20241111BHJP
【FI】
F23N5/24 104
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021045301
(22)【出願日】2021-03-18
(65)【公開番号】P2022144350
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】戸田 卓也
(72)【発明者】
【氏名】家田 陵平
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-286617(JP,A)
【文献】特開昭63-204023(JP,A)
【文献】特開2011-149597(JP,A)
【文献】特開2004-294020(JP,A)
【文献】特開2004-085028(JP,A)
【文献】実開平01-151052(JP,U)
【文献】実開昭63-005260(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内で燃料を燃焼させ、生じた排ガスを屋外へ排出する燃焼装置において、
前記燃料を燃焼させる燃焼部と、
ステンレス鋼製の複数の導管を接合して形成され、前記燃焼部の燃焼運転によって生じた前記排ガスを屋外へ導く排気通路と、
前記排気通路の流入側から流出側までを含んで電気的に接続された直列回路と、
前記直列回路への電圧の印加を制御可能であり、前記燃焼部の燃焼運転に伴って所定の電圧を前記直列回路に印加する電圧印加手段と、
前記燃焼部の燃焼運転に伴って前記直列回路に電圧が印加されている場合に、該直列回路の通電状態に基づいて、前記排気通路の接合が外れた状態を検知する検知手段と
を備え、
前記電圧印加手段は
前記燃焼部の燃焼運転が停止している期間中にも前記直列回路に電圧を印加することとして、
前記燃焼部の燃焼運転が停止している期間中に前記直列回路に所定の周期で断続的に電圧を印加し、
前記燃焼部の燃焼運転が停止している期間中における前記直列回路への電圧の印加を、該燃焼部の燃焼運転中に比べて疎らに行う
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
屋内で燃料を燃焼させ、生じた排ガスを屋外へ排出する燃焼装置において、
前記燃料を燃焼させる燃焼部と、
ステンレス鋼製の複数の導管を接合して形成され、前記燃焼部の燃焼運転によって生じた前記排ガスを屋外へ導く排気通路と、
前記排気通路の流入側から流出側までを含んで電気的に接続された直列回路と、
前記直列回路への電圧の印加を制御可能であり、前記燃焼部の燃焼運転に伴って所定の電圧を前記直列回路に印加する電圧印加手段と、
前記燃焼部の燃焼運転に伴って前記直列回路に電圧が印加されている場合に、該直列回路の通電状態に基づいて、前記排気通路の接合が外れた状態を検知する検知手段と
を備え、
前記電圧印加手段は、
前記燃焼部の燃焼運転が停止している期間中にも前記直列回路に電圧を印加することとして、
前記燃焼部の燃焼運転が停止している期間中に、該燃焼部の燃焼運転中よりも低い電圧を継続して前記直列回路に印加する
ことを特徴とする燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内で燃料を燃焼させ、生じた排ガスを屋外へ排出する燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
暖房機などに用いられる燃焼装置では、屋内で燃料を燃焼させる燃焼部の燃焼運転によって生じた排ガスを、排気通路を介して屋外へ排出するものが知られている。排気通路は、複数の導管を接合して形成されており、酸性の排ガスドレンに対する耐食性を高めるために、ステンレス鋼製の導管を用いるのが一般的である。
【0003】
このような燃焼装置では、排気通路の接合が外れた状態(以下、排気通路外れ)のまま燃焼部で燃焼運転を行うと、排ガスが屋内に漏れ出してしまうことになる。そこで、排気通路の流入側から流出側までを含んで電気的に接続された直列回路を形成しておき、燃焼運転に伴って直列回路に所定の電圧を印加し、流れる電流が基準値よりも小さいことに基づいて排気通路外れを検知することが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-230717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のように直列回路の通電状態によって排気通路外れの検知を行う燃焼装置では、次のような理由で誤検知することがあるという問題があった。まず、ステンレス鋼製の排気通路の接合部分には不動態被膜が生じることがあり、特に、暖房機の例では不使用期間が長い夏場などに不動態被膜が生じ易い。こうした不動態被膜の生成によって排気通路の接合部分における接触抵抗が増大すると、排気通路が接合されているにもかかわらず、電圧の印加時に直列回路に流れる電流が減少することにより、排気通路外れと誤検知してしまう。
【0006】
この発明は、従来の技術における上述した課題に対応してなされたものであり、排気通路を含んで電気的に接続された直列回路の通電状態によって排気通路外れの検知を行う燃焼装置で、誤検知を抑制することが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の第1の燃焼装置は次の構成を採用した。すなわち、
屋内で燃料を燃焼させ、生じた排ガスを屋外へ排出する燃焼装置において、
前記燃料を燃焼させる燃焼部と、
ステンレス鋼製の複数の導管を接合して形成され、前記燃焼部の燃焼運転によって生じた前記排ガスを屋外へ導く排気通路と、
前記排気通路の流入側から流出側までを含んで電気的に接続された直列回路と、
前記直列回路への電圧の印加を制御可能であり、前記燃焼部の燃焼運転に伴って所定の電圧を前記直列回路に印加する電圧印加手段と、
前記燃焼部の燃焼運転に伴って前記直列回路に電圧が印加されている場合に、該直列回路の通電状態に基づいて、前記排気通路の接合が外れた状態を検知する検知手段と
を備え、
前記電圧印加手段は
前記燃焼部の燃焼運転が停止している期間中にも前記直列回路に電圧を印加することとして、
前記燃焼部の燃焼運転が停止している期間中に前記直列回路に所定の周期で断続的に電圧を印加し、
前記燃焼部の燃焼運転が停止している期間中における前記直列回路への電圧の印加を、該燃焼部の燃焼運転中に比べて疎らに行う
ことを特徴とする。
【0008】
ステンレス鋼製の排気通路の接合部分に生じる不動態被膜は、主に酸化クロム(三価)であり、ステンレス鋼に含まれるクロムが電子を放出してイオン化(酸化)することで生成する。本発明の燃焼装置では、燃焼部の燃焼運転が停止している期間(以下、運転OFF期間)中にも直列回路に電圧を印加して排気通路に通電する(電子を送り込む)ことで、クロムから電子が放出され難くなり、排気通路の接合部分における不動態被膜(酸化クロム)の生成が抑制されるので、排気通路の接合が外れた状態(排気通路外れ)の誤検知を抑制することが可能となる。
【0009】
また、排気通路の接合部分に不動態被膜が生成して接触抵抗が増大した場合でも、運転OFF期間中に直列回路に電圧を印加することで接合部分の微小な空隙にアークが発生することがあり、このアークによって不動態被膜が破壊されると、排気通路の接合部分における接触抵抗が減少して通電状態が回復することから、排気通路外れの誤検知を抑制することができる。
【0011】
このように運転OFF期間では、直列回路への電圧の印加中に、排気通路の接合部分における不動態被膜の生成を抑制、あるいは不動態被膜を破壊しつつ、断続的に電圧を印加することで、消費電力を抑えることが可能となる。
【0013】
さらに、運転OFF期間中は燃焼部で排ガスが生じないので、燃焼運転中のように頻繁に排気通路外れを検知するために電圧を印加する必要はなく、疎らに電圧を印加することで消費電力を抑えることが可能となる。
【0014】
また、前述した課題を解決するために、本発明の第2の燃焼装置は次の構成を採用した。すなわち、
屋内で燃料を燃焼させ、生じた排ガスを屋外へ排出する燃焼装置において、
前記燃料を燃焼させる燃焼部と、
ステンレス鋼製の複数の導管を接合して形成され、前記燃焼部の燃焼運転によって生じた前記排ガスを屋外へ導く排気通路と、
前記排気通路の流入側から流出側までを含んで電気的に接続された直列回路と、
前記直列回路への電圧の印加を制御可能であり、前記燃焼部の燃焼運転に伴って所定の電圧を前記直列回路に印加する電圧印加手段と、
前記燃焼部の燃焼運転に伴って前記直列回路に電圧が印加されている場合に、該直列回路の通電状態に基づいて、前記排気通路の接合が外れた状態を検知する検知手段と
を備え、
前記電圧印加手段は、
前記燃焼部の燃焼運転が停止している期間中にも前記直列回路に電圧を印加することとして、
前記燃焼部の燃焼運転が停止している期間中に、該燃焼部の燃焼運転中よりも低い電圧を継続して前記直列回路に印加する
ことを特徴とする。
【0015】
ステンレス鋼製の排気通路の接合部分に生じる不動態被膜は、主に酸化クロム(三価)であり、ステンレス鋼に含まれるクロムが電子を放出してイオン化(酸化)することで生成する。本発明の燃焼装置では、燃焼部の燃焼運転が停止している期間(以下、運転OFF期間)中にも直列回路に電圧を印加して排気通路に通電する(電子を送り込む)ことで、クロムから電子が放出され難くなり、排気通路の接合部分における不動態被膜(酸化クロム)の生成が抑制されるので、排気通路の接合が外れた状態(排気通路外れ)の誤検知を抑制することが可能となる。そして、電圧の印加を継続して行えば、運転OFF期間を通じて排気通路の接合部分における不動態被膜の生成を予防することが可能となり、燃焼運転中よりも電圧を低くすることで消費電力を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】温風暖房機1を例として本実施例の燃焼装置の構造を示した説明図である。
図2】本実施例の温風暖房機1で排気通路外れを検知するための構成を示した説明図である。
図3】本実施例のコントローラ30が実行する直列回路通電制御処理を示すフローチャートである。
図4】本実施例の運転OFF期間中処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、温風暖房機1を例として本実施例の燃焼装置の構造を示した説明図である。図示した温風暖房機1は、筐状のハウジング2の内側に、室内から取り入れた空気を暖める加熱室3が区画されている。この加熱室3の内部には、燃料ガスを燃焼させるバーナ10を内蔵した燃焼筒4や、燃焼筒4の下流に設置された熱交換器5や、加熱室3内に気流を発生させる気流ファン6などが設けられている。
【0018】
燃焼筒4は、一端(図中の右側)が加熱室3の側壁を貫通し、内部にバーナ10を備えている。バーナ10には、ガス配管11を介して燃料ガスが供給され、ガス配管11には、ガス配管11を開閉する電磁弁12や、ガス配管11内の燃料ガスの流量を調節する比例弁13が設けられている。
【0019】
また、燃焼筒4には、バーナ10に燃焼用空気を送る燃焼ファン14が加熱室3の外側から接続されている。本実施例の燃焼ファン14には、遠心式ファンが採用されており、吸入側に吸入管15が接続されている。吸入管15は、燃焼ファン14とは反対側の端部がハウジング2の側壁を貫通して外側に突出しており、この外側の端部に、屋外からの空気を導く給気管16が接合されている。燃焼ファン14の作動によって燃焼用空気をバーナ10に供給しながら、電磁弁12および比例弁13を開弁して燃料ガスを供給し、図示しない点火プラグで火花を飛ばすと、燃焼筒4内のバーナ10で燃料ガスの燃焼が開始される。尚、本実施例の燃焼筒4は、本発明の「燃焼部」に相当している。
【0020】
熱交換器5は、一端に上流連結管17を介して燃焼筒4が接続され、他端に下流連結管18が接続されている。下流連結管18は、熱交換器5とは反対側の端部がハウジング2の側壁を貫通して外側に突出しており、この外側の端部に、排気を屋外へと導く排気管19が接合されている。そして、排気管19は、前述した給気管16と共に、給排気管20に接合されている。
【0021】
給排気管20は、内側の内管20aと外側の外管20bとが一体化された2重管構造になっており、屋内から屋外に突出している。そして、給排気管20の室内側では、内管20aに排気管19が接合されており、外管20bに給気管16が接合されている。また、図示した例では、給排気管20がハウジング2の上方に離れて設けられていることから、排気管19は長さを確保するために、3本の排気管19a~19cが接合されており、同様に、給気管16は3本の給気管16a~16cが接合されている。
【0022】
燃焼ファン14が作動すると、屋外から給排気管20の外管20b、給気管16、吸入管15を介して取り入れた燃焼用空気がバーナ10に送られる。また、バーナ10での燃料ガスの燃焼によって生じた高温の排ガスは、燃焼ファン14の送風で燃焼筒4から上流連結管17を介して熱交換器5へと送られる。そして、熱交換器5の内側を通過した排ガスは、下流連結管18、排気管19、給排気管20の内管20aを介して屋外に排出される。このように本実施例の温風暖房機1は、燃焼ファン14によって強制的に屋外から燃焼用空気を取り入れると共に、排ガスを屋外へ排出する強制給排気式(FF式)となっている。また、本実施例の下流連結管18、排気管19、および給排気管20の内管20aは、酸性の排ガスドレンに対する耐食性を高めるために、ステンレス鋼で形成されている。
【0023】
気流ファン6は、いわゆるクロスフローファンが採用されており、熱交換器5と略平行に配設されている。ハウジング2の背面には、図示しない吸込口が形成されており、気流ファン6を駆動すると、室内空気が吸込口から加熱室3に取り入れられて、加熱室3内に室内空気の流れが生じる。そして、熱交換器5の外側を通過する室内空気は、熱交換器5の内側を通過する排ガスとの熱交換によって加熱された後、燃焼筒4の外側を通過しながら更に加熱される。ハウジング2の前面には、図示しない吐出口が形成されており、加熱室3を通過した温風が吐出口から吹き出して、室内を暖める。
【0024】
また、ハウジング2内には、温風暖房機1の全体を制御するコントローラ30が搭載されており、前述した電磁弁12、比例弁13、燃焼ファン14、点火プラグ、気流ファン6などがコントローラ30と電気的に接続されている。また、ハウジング2の上面には、運転スイッチ7が設けられており、コントローラ30と運転スイッチ7とが電気的に接続されている。温風暖房機1の使用者によって運転スイッチ7がONにされると、コントローラ30が電磁弁12、比例弁13、燃焼ファン14、点火プラグ、気流ファン6などの駆動を制御することにより、温風暖房機1の暖房運転(燃焼筒4における燃焼運転)が開始される。
【0025】
このような温風暖房機1では、熱交換器5の内側を通過した排ガスを屋外へと導く排気通路が、下流連結管18、排気管19a~19c、給排気管20の内管20aを接合して形成されていることから、それらの接合の何れかが外れた状態(以下、排気通路外れ)のままで暖房運転(燃焼運転)が行われると、排ガスが屋内に漏れ出してしまうことになる。そこで、本実施例の温風暖房機1では、以下のような構成を採用することにより、排気通路外れの検知が可能となっている。尚、本実施例の下流連結管18、排気管19a~19c、および給排気管20の内管20aは、それぞれ本発明の「導管」に相当している。
【0026】
図2は、本実施例の温風暖房機1で排気通路外れを検知するための構成を示した説明図である。前述したように排気通路は、下流連結管18、排気管19a~19c、給排気管20の内管20aを接合して形成されている。そして、この排気通路の流入側(下流連結管18)から流出側(内管20a)までを含んでコントローラ30と共に電気的に接続された直列回路31が形成されている。
【0027】
すなわち、第1リード線32によって下流連結管18がコントローラ30と接続されていると共に、第2リード線33によって給排気管20の内管20aがコントローラ30と接続されている。また、前述したように下流連結管18、排気管19a~19c、および給排気管20の内管20aは、何れもステンレス鋼で形成されているため、導電性を有する。
【0028】
コントローラ30には、図示しない電源基板が接続されており、温風暖房機1の図示しない電源コードがコンセントに接続されると、電源基板で所定の直流電圧に変換されてコントローラ30に電力が供給される。そして、コントローラ30は、直列回路31に所定の直流電圧を印加すると共に、直列回路31に流れる電流を基準値と比較することが可能となっている。尚、直列回路31には図示しない抵抗器が含まれており、この抵抗器で直列回路31に流れる電流を制限している。
【0029】
このような直列回路31では、仮に排気通路における下流連結管18、排気管19a~19c、給排気管20の内管20aの互いの接合(図中に破線で示した4箇所)の何れかが外れていると、開放状態となるので電流が流れない。従って、温風暖房機1の暖房運転(燃焼運転)に伴って直列回路31に所定の直流電圧を印加し、流れる電流が基準値よりも小さいことに基づいて、排気通路外れを検知することが可能である。
【0030】
但し、上述のように直列回路31の通電状態によって排気通路外れを検知する場合には、排気通路が接合されているにもかかわらず、排気通路外れと誤検知することがある。この原因としては、ステンレス鋼を用いた排気通路(下流連結管18、排気管19a~19c、給排気管20の内管20a)の接合部分に不動態被膜が生じることが考えられる。不動態被膜は絶縁性であり、特に温風暖房機1では不使用期間が長い夏場などに不動態被膜が生じ易い。こうした不動態被膜の生成によって排気通路の接合部分における接触抵抗が増大すると、電圧の印加時に直列回路31に流れる電流が減少することから、排気通路外れと誤検知してしまう。そこで、本実施例の温風暖房機1では、排気通路外れの検知を可能としつつ誤検知を抑制するために、コントローラ30が以下のような直列回路通電制御処理を実行している。
【0031】
図3は、本実施例のコントローラ30が実行する直列回路通電制御処理を示すフローチャートである。この処理は、温風暖房機1の電源コードがコンセントに接続されてコントローラ30に電力が供給された状態で実行される。直列回路通電制御処理では、まず、コントローラ30と接続された運転スイッチ7がONであるか否かを判断する(STEP1)。前述したように運転スイッチ7はハウジングの上面に設けられており、運転スイッチ7がONであれば、温風暖房機1の暖房運転(燃焼運転)が行われ、運転スイッチ7がOFFであれば、暖房運転が停止されている。
【0032】
運転スイッチ7がOFFである場合は(STEP1:no)、続いて、使用者によって運転スイッチ7がON操作されたか否かを判断する(STEP2)。そして、運転スイッチ7がON操作された場合は(STEP2:yes)、直列回路31に所定電圧(例えば直流10V)を印加する(STEP3)。尚、本実施例の温風暖房機1の暖房運転中は、直列回路31への電圧の印加を継続するようになっている。また、本実施例のコントローラ30は、本発明の「電圧印加手段」に相当する機能を有している。
【0033】
直列回路31に電圧を印加すると、直列回路31に流れる電流が基準値以上であるか否かを判断する(STEP4)。前述したように直列回路31に流れる電流は抵抗器によって制限されており、例えば、直列回路31に10Vの直流電圧を印加する場合に、電流が0.3mA程度に制限されるのであれば、基準値を0.1mAとすることができる。そして、直列回路31に電流が流れていないなど、電流値が基準値よりも小さい場合は(STEP4:no)、排気通路外れと判断し、排気通路外れを報知する(STEP5)。本実施例の温風暖房機1では、ハウジング2に設けられた図示しない異常ランプを点灯することで排気通路外れを報知するようになっているが、これに限られず、液晶画面の表示や、スピーカなどから出力する音声によって排気通路外れを報知してもよい。また、排気通路外れの検知に基づいて、温風暖房機1の暖房運転(燃焼運転)を強制的に停止してもよい。尚、本実施例のコントローラ30は、本発明の「検知手段」に相当する機能を有している。
【0034】
一方、直列回路31に流れる電流が基準値以上である場合は(STEP4:yes)、STEP5の処理を省略して、次に、使用者によって運転スイッチ7がOFF操作されたか否かを判断する(STEP6)。そして、運転スイッチ7がOFF操作されていない場合は(STEP6:no)、そのまま直列回路通電制御処理の先頭へと戻る。
【0035】
すると、STEP1で運転スイッチ7がONであると判断されるので(STEP1:yes)、STEP2およびSTEP3の処理を省略して、再び直列回路31の通電状態を判断する(STEP4)。その後、使用者によって運転スイッチ7がOFF操作されたか否かを再び判断し(STEP6)、運転スイッチ7がOFF操作された場合は(STEP6:yes)、直列回路31への電圧の印加を停止して(STEP7)、直列回路通電制御処理の先頭に戻る。
【0036】
そして、運転スイッチ7がOFFであり(STEP1:no)、且つ、使用者によって運転スイッチ7がON操作されていない場合(STEP2:no)、すなわち、温風暖房機1の暖房運転(燃焼運転)が停止している期間(以下、運転OFF期間)中である場合は、以下の運転OFF期間中処理を実行する(STEP8)。
【0037】
図4は、本実施例の運転OFF期間中処理のフローチャートである。運転OFF期間中処理では、まず、直列回路31に電圧を印加中であるか否かを判断する(STEP9)。本実施例の温風暖房機1では、運転OFF期間中にも直列回路31に所定の周期で断続的に電圧を印加するようになっている。
【0038】
直列回路31に電圧を印加していない場合は(STEP9:no)、次に、印加停止時間(例えば30分)が経過したか否かを判断する(STEP10)。そして、未だ印加停止時間が経過していない場合は(STEP10:no)、直列回路31に電圧を印加することなく、そのまま図4の運転OFF期間中処理を終了して、図3の直列回路通電制御処理に復帰する。
【0039】
これに対して、印加停止時間が経過した場合は(STEP10:yes)、直列回路31に所定電圧を印加する(STEP11)。本実施例の温風暖房機1では、運転OFF期間中においても温風暖房機1の暖房運転中と同様の電圧を印加するようになっており、例えば10Vの直流電圧を印加する。その後、図4の運転OFF期間中処理を終了して、図3の直列回路通電制御処理に復帰する。直列回路通電制御処理では、運転OFF期間中処理(STEP8)から復帰すると、そのまま先頭に戻り、運転OFF期間が継続していれば(STEP1:no、STEP2:no)、再び運転OFF期間中処理(STEP8)を実行する。
【0040】
そして、STEP9の判断において、直列回路31に電圧を印加中である場合は(STEP9:yes)、続いて、印加時間(例えば30分)が経過したか否かを判断する(STEP12)。未だ印加時間が経過していない場合は(STEP12:no)、直列回路31への電圧の印加を継続したまま、図4の運転OFF期間中処理を終了して、図3の直列回路通電制御処理に復帰する。
【0041】
一方、印加時間が経過した場合は(STEP12:yes)、直列回路31への電圧の印加を停止して(STEP13)、図4の運転OFF期間中処理を終了し、図3の直列回路通電制御処理に復帰する。
【0042】
以上に説明したように本実施例の温風暖房機1では、ステンレス鋼製の排気通路(下流連結管18、排気管19a~19c、給排気管20の内管20a)を含んで電気的に接続された直列回路31を備えており、温風暖房機1の暖房運転(燃焼運転)に伴って直列回路31に所定電圧を印加し、直列回路31に流れる電流が基準値よりも小さいことに基づいて排気通路外れを検知するだけでなく、運転OFF期間中にも直列回路31に電圧を印加するようになっている。
【0043】
ステンレス鋼製の排気通路の接合部分に生じる不動態被膜は、主に酸化クロム(三価)であり、ステンレス鋼に含まれるクロムが電子を放出してイオン化(酸化)することで生成する。本実施例の温風暖房機1では、運転OFF期間中にも直列回路31に電圧を印加して排気通路に通電する(電子を送り込む)ことで、クロムから電子が放出され難くなり、排気通路の接合部分における不動態被膜(酸化クロム)の生成が抑制されるので、排気通路外れの誤検知を抑制することが可能となる。
【0044】
また、排気通路の接合部分に不動態被膜が生成して接触抵抗が増大した場合でも、運転OFF期間中に直列回路31に電圧を印加することで接合部分の微小な空隙にアークが発生することがあり、このアークによって不動態被膜が破壊されると、排気通路の接合部分における接触抵抗が減少して通電状態が回復することから、排気通路外れの誤検知を抑制することができる。
【0045】
特に、本実施例の温風暖房機1では、運転OFF期間中における直列回路31への電圧の印加を所定の周期で断続的に行うようになっている。このようにすれば、直列回路31への電圧の印加中に、上述のように排気通路の接合部分における不動態被膜の生成を抑制、あるいは不動態被膜を破壊しつつ、断続的に電圧を印加することで、消費電力を抑えることが可能となる。
【0046】
また、本実施例の温風暖房機1の暖房運転中は、直列回路31に継続して電圧を印加するのに対して、運転OFF期間中は、所定の周期で断続的に電圧を印加することとして、暖房運転中に比べて電圧の印加を疎らに行うようになっている。運転OFF期間中は燃焼運転が行われず排ガスが生じないので、暖房運転(燃焼運転)中のように頻繁に排気通路外れを検知するために電圧を印加する必要はなく、疎らに電圧を印加することで消費電力を抑えることが可能となる。尚、暖房運転中は、直列回路31への電圧の印加を必ずしも継続しなければならないわけではなく、断続的に電圧を印加してもよい。この場合も、運転OFF期間中における電圧の印加を、暖房運転中に比べて疎らに行えばよい。
【0047】
以上、本実施例の燃焼装置について温風暖房機1を例に説明したが、本発明は上記の実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0048】
例えば、前述した実施例では、直列回路31に直流電圧を印加するようになっていたが、直流電圧に限られず、交流電圧を印加してもよい。直列回路31に交流電圧を印加すれば、所定の周波数で排気通路に流れる電流の方向が変わることで、直流電圧よりも不動態被膜が更に生成し難いことから、排気通路の接合部分における接触抵抗の増大を抑制する効果を高めることが可能となる。
【0049】
尚、直列回路31に交流電圧を印加する場合、電流の流れる方向が変わる毎に電流が0となり、前述した実施例のように電流が基準値よりも小さいことに基づいて排気通路外れを検知することができないため、以下のように電圧に基づいて排気通路外れを検知すればよい。まず、直列回路31に印加された交流電圧を直流電圧に変換して、電圧値を確認する。直列回路31に通電されている場合の電圧は、電源電圧から通電電流と内部抵抗との積を引いたものとなるため、電源電圧よりも低下することになる。一方、直列回路31が開放状態で通電されていない場合の電圧は、通電電流が0であるので、電源電圧が維持されることになる。従って、電圧が基準電圧値よりも高いことに基づいて、排気通路外れを検知することができる。
【0050】
また、前述した実施例では、運転OFF期間中における直列回路31への電圧の印加を所定の周期で断続的に行うようになっていた。しかし、運転OFF期間中は直列回路31への電圧の印加を継続することとしてもよく、その場合は、温風暖房機1の暖房運転中よりも低い電圧を印加するようにしてもよい。電圧の印加を継続して行えば、運転OFF期間を通じて排気通路の接合部分における不動態被膜の生成を予防することが可能となり、暖房運転中よりも電圧を低くすることで消費電力を抑えることができる。
【0051】
また、前述した実施例では、温風暖房機1の暖房運転中と運転OFF期間中とで直列回路31に同じ電圧を印加するようになっていた。しかし、運転OFF期間中における電圧の印加を暖房運転中に比べて疎らに行うのであれば、運転OFF期間中に直列回路31に印加する電圧を、暖房運転中に比べて高くしてもよい。このようにすれば、排気通路の接合部分に不動態被膜が生成して接触抵抗が増大した場合に、直列回路31に高い電圧を印加することにより、接合部分にアークが発生し易くなるため、アークによる不動態被膜の破壊を促進することができる。結果として、排気通路の接合部分における接触抵抗が減少して通電状態が回復することにより、排気通路外れの誤検知を抑制することが可能となる。
【0052】
また、前述した実施例では、運転OFF期間中における直列回路31への電圧の印加を所定の周期で断続的に行うこととして、印加時間および印加停止時間を共に30分としていた。しかし、印加時間および印加停止時間は同じでなくてもよく、印加時間よりも印加停止時間を長くすれば、消費電力を抑えることができる。
【0053】
また、前述した実施例では、強制給排気式(FF式)の温風暖房機1を例に説明した。しかし、本発明の適用は、排気通路を介して排ガスを屋外へ排出するものであれば、FF式に限られず、燃焼用空気は室内から取り入れて、排ガスを屋外へ排出する強制排気式(FE式)であってもよい。
【0054】
加えて、前述した実施例では、燃焼装置の例として温風暖房機1を挙げたが、暖房機に限られず、給湯器であってもよい。さらに、燃焼装置で燃焼させる燃料は、ガス燃料に限られず、液体燃料(石油)であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…温風暖房機、 2…ハウジング、 3…加熱室、
4…燃焼筒、 5…熱交換器、 6…気流ファン、
7…運転スイッチ、 10…バーナ、 11…ガス配管、
12…電磁弁、 13…比例弁、 14…燃焼ファン、
15…吸入管、 16…給気管、 17…上流連結管、
18…下流連結管、 19…排気管、 20…給排気管、
20a…内管、 20b…外管、 30…コントローラ、
31…直列回路、 32…第1リード線、 33…第2リード線。
図1
図2
図3
図4