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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】筆記具のクリップ
(51)【国際特許分類】
   B43K 25/02 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
B43K25/02 190
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023131832
(22)【出願日】2023-08-14
(62)【分割の表示】P 2020566387の分割
【原出願日】2020-01-09
(65)【公開番号】P2023154429
(43)【公開日】2023-10-19
【審査請求日】2023-09-11
(31)【優先権主張番号】P 2019007086
(32)【優先日】2019-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019101625
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】早川 尚利
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-006315(JP,A)
【文献】特開2016-097682(JP,A)
【文献】実開昭57-179986(JP,U)
【文献】特開2015-116778(JP,A)
【文献】特表2015-514021(JP,A)
【文献】特開2011-156853(JP,A)
【文献】米国特許第06773185(US,B1)
【文献】米国特許第05336006(US,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2009-0006428(KR,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリップ本体、把持部及びクリップベースを含む筆記具のクリップであって、
前記クリップ本体は、前記筆記具の軸筒の前後方向に延びる1つの上壁と、前記上壁の少なくとも前側に形成され、前記上壁の両側部から前記軸筒の表面の方向に突出し、且つ互いの内面が対向する一対の側壁とを備え、
前記把持部は、前記クリップ本体の裏側で、且つ前記一対の側壁の間に設けられ、変形して弾性力を生じさせることが可能な形状を有し、前記一対の側壁よりも前記軸筒の表面の方向に突出し、
前記クリップベースは、前記クリップ本体の後側に結合され、前記一対の側壁が前記軸筒の表面に接触しない高さに前記クリップ本体を支持する、ことを特徴とする筆記具のクリップ。
【請求項2】
前記把持部が、前記軸筒の前後方向に延びる弾性変形可能な板状部材からなり、前記把持部の前端に位置する固定端と、前記固定端から後方へ延びるビームと、前記ビームから前記軸筒の表面の方向に曲げられた突出部と、を含む、請求項1に記載の筆記具のクリップ。
【請求項3】
前記把持部の後端が自由端であり、前記ビームは、前記固定端を支点にして第1の弾性変形をするように構成され、前記突出部は、前記自由端が前記クリップ本体の裏面に接触した後に第2の弾性変形をするように構成される、請求項2に記載の筆記具のクリップ。
【請求項4】
前記把持部の前記自由端を含む後端部の幅が、前記クリップ本体の前記一対の側壁の間隔の1/2以上の広さを有する、請求項3に記載の筆記具のクリップ。
【請求項5】
前記クリップ本体の前記上壁は、前側から後側へ幅が広がる形状を有し、
前記クリップ本体の前記一対の側壁は、前記上壁の前端から後端にわたって形成され、
前記一対の側壁の後側には、前記クリップ本体の内側に向かって突出する一対の係合部が形成され、
前記一対の係合部の前端には、前記上壁の裏面に向かって突出する一対のストッパ壁が形成され、
前記一対の係合部が前記クリップベースの両側に係合し、且つ前記一対のストッパ壁が前記クリップベースの前面に当接する、請求項1~4のいずれか1項に記載の筆記具のクリップ。
【請求項6】
前記クリップ本体が、一枚の金属板を折り曲げることによって構成された、請求項1~5のいずれか1項に記載の筆記具のクリップ。
【請求項7】
前記クリップ本体と前記把持部とが、一枚の金属板を折り曲げることによって構成された、請求項1~5のいずれか1項に記載の筆記具のクリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリップを軸筒の前後方向にスライドさせることにより、ペン先が前記軸筒から突出した状態又は前記軸筒内に没入した状態となるように構成された出没式筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から出没式筆記具が知られている。一般的な出没式筆記具は、軸筒の後端に円柱形状の操作部を備える。出没式筆記具のペン先は、円柱形状の操作部を前方に押し込むことにより、前記軸筒から突出した状態又は前記軸筒内に没入した状態となる。特殊な態様として、例えば、国際公開第2011/096357号には、クリップを軸筒の前後方向にスライドさせることにより、ペン先が前記軸筒から突出した状態又は前記軸筒内に没入した状態となるように構成された出没式筆記具が開示されている。
【0003】
クリップは、合成樹脂によってクリップ本体、玉部及び基部を一体成形した構成となっている。クリップ本体は、軸筒の前後方向に延びる。玉部は、クリップ本体の裏面の前側に位置し、軸筒の表面に設けられたガイド溝の中に入る。基部は、クリップ本体の裏面の後側に位置し、軸筒内に設けられた出没機構に結合される。
【0004】
クリップと軸筒との間に薄い物、例えば、紙や布などを挟み込むと、合成樹脂製のクリップ本体が基部を支点にして弾性変形する。変形したクリップ本体が生じさせる弾性力により、玉部とガイド溝との間に薄い物が把持される。
【0005】
さらに特殊な態様として、特開2017-24224号公報には、合成樹脂製のクリップの前側に、弾性変形することが可能な片持ち梁を一体成形した出没式筆記具が開示されている。薄い物をクリップと軸筒との間に挟み込むと、曲げ剛性の低い片持ち梁が弾性変形して薄い物を把持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2011/096357号
【文献】特開2017-24224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の出没式筆記具において、ペン先を出没させるためのクリップは、合成樹脂で形成されることが一般的であった。その理由として、合成樹脂製のクリップは、物を把持するための弾性力の調整が容易である。また、合成樹脂製のクリップは、玉部を滑らかな曲面にすることができるので、把持した物を破損させたり、軸筒の表面を傷付けたりしないからである。これに対し、金属製のクリップは、弾性力の調整が困難であり、また、把持した物を破損させたり、軸筒の表面を傷付けたりする問題があった。
【0008】
すなわち、筆記具のクリップは、軸筒の前後方向に延びるクリップ全体が変形することによって弾性力を生じさせる。合成樹脂製のクリップは、最適な弾性力を生じるように、全体の形状を自由にデザインすることができる。また、合成樹脂製のクリップに一体成形される玉部も、任意の形状にデザインすることが可能である。
【0009】
一方、金属製のクリップは、軸筒の前後方向に延びる上壁、及び上壁の両側に連続する一対の側壁など、複数の壁によって構成される。複数の壁は、一枚の薄い金属板を折り曲げることによって形成される。
【0010】
金属製のクリップの一対の側壁は、上壁の両側から垂直方向に折り曲げられる。このような一対の側壁は、金属製のクリップに加えられた力に抵抗して、クリップ全体の変形を阻止するように作用する。このため、金属製のクリップ自体に所望する弾性力を生じさせることは難しい。
【0011】
特に、金属製のクリップの一対の側壁は、軸筒の表面を向くエッジを有する。一対の側壁のエッジは、金属製のクリップによって把持された物に接触する。一対の側壁のエッジによって薄い紙や布などを破損させないために、金属製のクリップの弾性力は、最適に調整する必要がある。
【0012】
また、金属製のクリップを軸筒の前後方向にスライドさせたときに、一対の側壁のエッジが軸筒の表面に接触すると、軸筒の表面が傷付いてしまう。特に、装飾のための転写フィルムが軸筒の表面に貼られている場合は、一対の側壁のエッジとの接触によって、転写フィルムが容易に削り取られてしまう。
【0013】
一対の側壁のエッジを軸筒の表面に接触させないための手段として、金属製のクリップを一定の高さに支持する突起部を、軸筒の表面に設けることが考えられる。しかし、このような突起部は、軸筒の表面に転写フィルムを貼ることを困難にする。
【0014】
さらに、従来の出没式筆記具において、ペン先を出没させるためのクリップは、軸筒内に設けられた出没機構に結合される。出没機構は、軸筒の円周方向に回転する部品、及び軸筒の前後方向に移動する部品で構成され、これらの部品が動作するためのクリアランスが設けられる。このようなクリアランスによって、クリップが軸筒の円周方向や前後方向にがたついてしまう問題があった。
【0015】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、以下の技術的課題を解決することが可能な金属製のクリップを備えた出没式筆記具を提供することを目的とする。
-薄い紙や布などを破損させない適度な弾性力に調整することができる。
-金属板のエッジが軸筒の表面を傷付けることがない。
-軸筒の表面に転写フィルムを貼ることを妨げない。
-クリップのがたつきを抑えることができる。
-出没式筆記具の自動組み立てをスムーズに行うことができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(1)上記目的を達成するために、本発明の出没式筆記具は、クリップを軸筒の前後方向にスライドさせることにより、ペン先が前記軸筒から突出した状態又は前記軸筒内に没入した状態となるように構成された出没式筆記具であって、前記クリップは、クリップ本体、把持部及びクリップベースを含み、前記クリップ本体は、前記軸筒の前後方向に延びる1つの上壁と、前記上壁の少なくとも前側に形成され、前記上壁の両側部から前記軸筒の表面の方向に突出し、且つ互いの内面が対向する一対の側壁とを備え、前記把持部は、前記クリップ本体の裏側で、且つ前記一対の側壁の間に設けられ、変形して弾性力を生じさせることが可能な形状を有し、前記一対の側壁よりも前記軸筒の表面の方向に突出し、前記軸筒の表面には、前記軸筒の前後方向に延びる溝であり、前記把持部の側方の動きを制限する一対の側面を備えたガイド溝が設けられ、前記クリップベースは、前記クリップ本体の後側に結合され、前記一対の側壁が前記軸筒の表面に接触しない高さに前記クリップ本体を支持する。
【0017】
(2)好ましくは、上記(1)の出没式筆記具において、前記把持部が、前記軸筒の前後方向に延びる弾性変形可能な板状部材からなり、前記把持部の前端に位置する固定端と、前記固定端から後方へ延びるビームと、前記ビームから前記軸筒の表面の方向に曲げられた突出部と、を含み、少なくとも前記突出部が前記ガイド溝の一対の側面の間に納まる幅を有する。
【0018】
(3)好ましくは、上記(2)の出没式筆記具において、前記把持部の後端が自由端であり、前記ビームは、前記固定端を支点にして第1の弾性変形をするように構成され、前記突出部は、前記自由端が前記クリップ本体の裏面に接触した後に第2の弾性変形をするように構成される。
【0019】
(4)好ましくは、上記(3)の出没式筆記具において、前記把持部の前記自由端を含む後端部の幅が、前記クリップ本体の前記一対の側壁の間隔の1/2以上の広さを有する。
【0020】
(5)好ましくは、上記(1)~(4)のいずれかの出没式筆記具において、前記クリップ本体の前記上壁は、前側から後側へ幅が広がる形状を有し、前記クリップ本体の前記一対の側壁は、前記上壁の前端から後端にわたって形成され、前記一対の側壁の後側には、前記クリップ本体の内側に向かって突出する一対の係合部が形成され、前記一対の係合部の前端には、前記上壁の裏面に向かって突出する一対のストッパ壁が形成され、前記一対の係合部が前記クリップベースの両側に係合し、且つ前記一対のストッパ壁が前記クリップベースの前面に当接する。
【0021】
(6)好ましくは、上記(1)~(5)のいずれかの出没式筆記具において、前記クリップ本体は、一枚の金属板を折り曲げることによって構成される。
【0022】
(7)好ましくは、上記(1)~(5)のいずれかの出没式筆記具において、前記クリップ本体と前記把持部とは、一枚の金属板を折り曲げることによって構成される。
【0023】
(8)好ましくは、上記(1)~(7)のいずれかの出没式筆記具において、前記ガイド溝は、前記クリップをスライドさせたときに、前記把持部を前後方向にガイドするための第1領域を含み、少なくとも前記第1領域の前半部分に底面が形成され、前記クリップベースは、前記把持部が前記ガイド溝の前記底面に接触する高さに前記クリップ本体を支持する。
【0024】
(9)好ましくは、上記(8)の出没式筆記具において、前記ガイド溝は、前記第1領域の後方に連続する第2領域を含み、前記第1領域から前記第2領域の全体に亘って前記底面が形成される。
【0025】
(10)好ましくは、上記(9)の出没式筆記具において、前記軸筒の後側には、前記クリップベースを前記軸筒の前後方向にスライドさせるためのスライド孔が設けられ、前記ガイド溝の前記第2領域が、前記スライド孔の前端に連通する。
【0026】
(11)好ましくは、上記(1)~(7)のいずれかの出没式筆記具において、前記ガイド溝は、前記クリップをスライドさせたときに、前記把持部を前後方向にガイドするための第1領域を含み、少なくとも前記第1領域の後半部分に貫通溝が形成され、前記クリップベースは、前記把持部が前記ガイド溝の前記貫通溝の中に入る高さに前記クリップ本体を支持する。
【0027】
(12)好ましくは、上記(11)の出没式筆記具において、前記ガイド溝は、前記第1領域の後方に連続する第2領域を含み、前記第1領域から前記第2領域の全体に亘って前記貫通溝が形成される。
【0028】
(13)好ましくは、上記(12)の出没式筆記具において、前記軸筒の後側には、前記クリップベースを前記軸筒の前後方向にスライドさせるためのスライド孔が設けられ、前記ガイド溝の前記第2領域が、前記スライド孔の前端に連通する。
【0029】
なお、本発明の出没式筆記具において、「前」はペン先の方向、及び「後」はペン先と反対の方向とそれぞれ定義される。
【発明の効果】
【0030】
本発明の出没式筆記具に備えられた金属製のクリップによれば、以下の技術的課題を解決することが可能となる。
-薄い紙や布などを破損させない適度な弾性力に調整することができる。
-金属板のエッジが軸筒の表面を傷付けることがない。
-軸筒の表面に転写フィルムを貼ることを妨げない。
-クリップのがたつきを抑えることができる。
-出没式筆記具の自動組み立てをスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る出没式筆記具であって、ペン先が軸筒内に没入した状態の出没式筆記具を示す。図1Aは側面図、図1Bは断面図である。
図2図2は、ペン先が軸筒から突出した状態の上記出没式筆記具を示す。図2Aは側面図、図2Bは断面図である。
図3図3は、上記出没式筆記具のクリップを構成するクリップ本体を示す。図3Aは上記クリップ本体を上から見た斜視図である。図3Bは上記クリップ本体を下から見た斜視図である。
図4図4は、上記出没式筆記具に組み付けられる前のクリップ本体の状態を示す。図4Aは平面図、図4Bは側面図、図4Cは底面図である。
図5図5は、上記出没式筆記具のクリップを構成するクリップベースを示す。図5Aは正面図、図5Bは側面図、図5Cは平面図、図5Dは底面図、図5Eは背面図、図5F図5BのA-A線断面図、図5G図5BのB-B線断面図である。
図6図6は、上記出没式筆記具に組み付けられた後のクリップ本体の状態を示す。図6Aは上記クリップ本体を含む上記出没式筆記具の後側部分の側面断面図、図6Bは上記クリップ本体の側面図、図6Cは上記クリップ本体の断面図である。
図7図7は、上記出没式筆記具を構成する中間軸を示す。図7Aは上記中間軸の後側部分の斜視図、図7Bは上記中間軸に上記クリップを組み付ける過程の断面図である。
図8図8は、本発明の第2実施形態に係る出没式筆記具のクリップを構成するクリップ本体を示す。図8Aは断面図、図8Bは底面図、図8Cは上記クリップ本体を下から見た斜視図である。
図9図9は、ストッパ壁を有しない2つのクリップ本体の意図しない結合状態を示す。図9Aは断面図、図9Bは底面図、図9Cは上記2つのクリップ本体を下から見た斜視図である。
図10図10はストッパ壁を有する2つのクリップ本体の結合が阻止される状態を示す。図10Aは断面図、図10Bは底面図、図10Cは上記2つのクリップ本体を下から見た斜視図である。
図11図11は、把持部に幅広部を有しない2つのクリップ本体の意図しない結合状態を示す。図11Aは意図しない結合状態の第1例を示す断面図、図11Bは意図しない結合状態の他の第2例を示す斜視図である。
図12図12Aは、本発明の第3実施形態に係る出没式筆記具のクリップを構成するクリップ本体を示す断面図である。図12Bは、本発明の第4実施形態に係る出没式筆記具のクリップを構成するクリップ本体を示す断面図である。図12Cは、本発明の第5実施形態に係る出没式筆記具のクリップを構成するクリップ本体を示す断面図である。
図13図13Aは、本発明の第6実施形態に係る出没式筆記具のクリップを構成するクリップ本体を示す断面図である。図13Bは、本発明の第7実施形態に係る出没式筆記具のクリップを構成するクリップ本体を示す断面図である。
図14図14は、上記第1実施形態の出没式筆記具を構成する中間軸を示す。図14Aは、上記中間軸の後側部分の斜視図である。図14Bは、上記中間軸の後側部分の平面図である。
図15図15は、上記第1実施形態の出没式筆記具の内部の構成を示す。図15Aは、ペン先の突出状態を示す断面図である。図15Bは、ペン先の没入状態を示す断面図である。
図16図16は、本発明の第8実施形態に係る出没式筆記具を構成する中間軸を示す。図16Aは、上記中間軸の後側部分の斜視図である。図16Bは、上記中間軸の後側部分の平面図である。図16Cは、上記中間軸にクリップを組み付ける過程の断面図である。
図17図17は、上記第8実施形態の出没式筆記具の内部の構成を示す。図17Aは、ペン先の突出状態を示す断面図である。図17Bは、ペン先の没入状態を示す断面図である。
図18図18Aは、図17Aの拡大図である。図18Bは、図17Bの拡大図である。
図19図19は、本発明の第9実施形態に係る出没式筆記具を構成する中間軸を示す。図19Aは、上記中間軸の後側部分の斜視図である。図19Bは、上記中間軸の後側部分の平面図である。図19Cは、上記中間軸にクリップを組み付ける過程の断面図である。
図20図20は、上記第9実施形態の出没式筆記具の内部の構成を示す。図20Aは、ペン先の突出状態を示す断面図である。図20Bは、ペン先の没入状態を示す断面図である。
図21図21Aは、本発明の第10実施形態に係る出没式筆記具を構成する中間軸の後側部分を示す平面図である。図21Bは、本発明の第11実施形態に係る出没式筆記具を構成する中間軸の後側部分を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
1.第1実施形態
以下、本発明の第1実施形態に係る出没式筆記具について、図1図9を参照しつつ説明する。なお、以下に説明する実施形態では、出没式筆記具として、熱変色性インキの筆跡を摩擦熱によって変色させることが可能な熱変色性筆記具を例示する。しかし、本発明の構成は、熱変色性筆記具に限定されるものではなく、一般的な出没式筆記具に広く適用することが可能である。
【0033】
1.1 出没式筆記具
本発明の第1実施形態に係る出没式筆記具1の構成は、図1A図1B図2A及び図2Bに示される。図中の両矢印により出没式筆記具1の「前」と「後」とが定義される。出没式筆記具1は、軸筒2、回転部材3、クリップ4、スプリング5、筆記体6及び摩擦部7を備える。
【0034】
まず、出没式筆記具1の外部の構成について説明する。図1Aに示されるように、軸筒2は、口金21、前軸22、中間軸23及び後軸24により構成される。前軸22の外周面には、弾性を有するグリップ22aが装着される。後軸24の取付孔24b(図6Aを参照)には、摩擦部7が嵌合される。一方、クリップ4は、クリップ本体41とクリップベース43とにより構成される。出没式筆記具1の外観を構成する部品のうち、口金21及びクリップ本体41が金属によって形成され、その他の部品は合成樹脂によって形成される。出没式筆記具1全体のデザインにおいて、金属製の口金21及びクリップ本体41は、合成樹脂製の軸筒2と質感及び外観が顕著に相違し、ユーザーの視線を惹き付ける特徴となる。合成樹脂製の軸筒2の表面、例えば、中間軸23の表面は、転写フィルムを貼ることによって装飾される。
【0035】
次に、出没式筆記具1の内部の構成について説明する。図1Bに示されるように、軸筒2内には、前から順番に、スプリング5、筆記体6、回転部材3及びクリップベース43の円筒部43d(図6Aを参照)が収納される。
【0036】
筆記体6は、ペン先61、インキ収容管62、熱変色性インキ63、追従体64及び尾栓65を備える。ペン先61は、インキ収容管62の前端に取り付けられる。本実施形態のペン先61は、ボールペンチップであるが、本発明の構成は、ボールペンに限定されるものではなく、例えば、シャープペンシル、マーキングペンなどの出没式筆記具に広く適用することが可能である。熱変色性インキ63及び追従体64は、インキ収容管62の内部に充填される。尾栓65は、インキ収容管62の後端の開口に装着される。尾栓65の中心には、前後方向に延びる通気口が設けられる。熱変色性インキ63によって紙面に形成された筆跡は、摩擦部7によって熱変色させることが可能である。摩擦部7は、紙面に擦過されることによって摩擦熱を生じる。この摩擦熱によって、熱変色性インキ63の筆跡は熱変色される。熱変色性インキ63は、例えば、第1の有色から第2の有色、又は有色から無色に熱変色される。
【0037】
筆記体6のペン先61は、出没機構によって、軸筒2から突出した状態又は軸筒2内に没入した状態となる。出没機構は、軸筒2内に収納されたスプリング5、回転部材3、クリップベース43、及び軸筒2の壁に設けられたスライド孔20、カム歯23a、カム溝23bによって構成される(図6Aを参照)。
【0038】
図1Bに示されるように、スプリング5は、筆記体6の前端部に装着され、常時、筆記体6を後方に付勢する。筆記体6の後方には、回転部材3及びクリップベース43が配置される。
【0039】
図6Aに示されるように、回転部材3は、クリップベース43の円筒部43dに回転可能に結合される。回転部材3は、4つの突条31を備える。4つの突条31は、回転部材3の外面に90°の間隔をおいて均等に設けられる。突条31は、回転部材3の側面から上面に連続する。回転部材3の上面から突出する突条31の後端部は、一方向に傾斜する傾斜面(カム歯)となっている。
【0040】
クリップベース43は、軸筒2の後側に設けられたスライド孔20に沿って前後方向にスライド可能となっている。クリップベース43は、スライダー43a、連結部43c及び円筒部43dを備える(図5Bを参照)。スライダー43aは、軸筒2の外部に位置する。円筒部43dは、軸筒2の内部に位置する。スライダー43aには、クリップ本体41の後側が結合される。連結部43cは、軸筒2のスライド孔20を介して、スライダー43aと円筒部43dとを連結する。円筒部43dの前端には、カム歯43eが設けられる(図5Bを参照)。円筒部43dのカム歯43eは、回転部材3の突条31の後端部と噛み合う。
【0041】
軸筒2の内壁面には、上述したカム歯23a及びカム溝23bが設けられる。カム歯23a及びカム溝23bは、交互に回転部材3の突条31と噛み合う。これにより、筆記体6のペン先61が、突出した状態又は没入した状態になる。すなわち、出没式筆記具1のユーザーは、クリップ本体41とともに、クリップベース43のスライダー43aを軸筒2のスライド孔20に沿って前方にスライドさせる。すると、軸筒2内において、回転部材3が、クリップベース43の円筒部43dに押されて、カム歯23a及びカム溝23bよりも前方に移動する。このとき、回転部材3が一方向に回転し、突条31がカム歯23a又はカム溝23bのいずれか一方と噛み合う。突条31がカム歯23aと噛み合うことにより、回転部材3が前方に移動したまま保持される。この結果、筆記体6のペン先61は、軸筒2の前端孔21aから突出した状態になる。これとは逆に、突条31がカム溝23bと噛み合うことにより、回転部材3がカム溝23bに沿って後方へ移動する。この結果、筆記体6のペン先61は、軸筒2内に没入した状態になる。
【0042】
1.2 クリップ
本実施形態の出没式筆記具1は、クリップ4の構成に特徴がある。以下、クリップ4の構成について詳細に説明する。本実施形態のクリップ4は、図6Aに示されるクリップ本体41及びクリップベース43からなる。クリップ本体41の前端には、把持部42が一体に設けられる。把持部42は、物を把持するための弾性力を生じさせる。
【0043】
本実施形態のクリップ本体41及び把持部42の構成は、図3A図3B及び図4A図4Cに示される。クリップ本体41及び把持部42は、一枚の金属板を折り曲げることにより一体に構成される。図3B及び図4Cに示される固定端42aが、クリップ本体41と把持部42との境界になる。クリップ本体41は、固定端42aを境界にして、クリップ4の主たる外観を形成する。一方、把持部42は、固定端42aを支点にして、物を把持するための弾性力を生じさせる。
【0044】
1.2.1 クリップ本体
クリップ本体41は、1つの上壁41aと、一対の側壁41bとを備える。上壁41aは、軸筒2の前後方向に延びる。一対の側壁41bは、上壁41aの両側に連続する金属板をそれぞれ垂直方向に折り曲げることによって形成される。一対の側壁41bは、上壁41aの前端から後端に達し、さらに後方へ延びる。このような一対の側壁41bを形成する金属板のエッジは、軸筒2の表面、すなわち、中間軸23の表面に貼られた転写フィルムに対向する。
【0045】
ここで、本実施形態のクリップ4は、図6AのクリアランスCL以下の厚さの物を把持部42によって把持し、クリアランスCLを超える厚さの物をクリップ本体41によって把持する構成となっている。把持部42は、柔軟に変形して弾性力を生じさせ、この弾性力によって、クリアランスCL以下の厚さの物を把持する。一方、クリップ本体41は、金属板の壁で囲まれた箱状となっており、高い剛性を有する。このようなクリップ本体41は、全体を僅かに撓らせてクリアランスCLを超える厚さの物を挟み込む。このため、クリップ本体41の外形は、物を把持するための弾性力を殆ど考慮することなくデザインすることが可能である。すなわち、本実施形態のクリップ本体41は、外形のデザインの自由度が高い。
【0046】
図4Aに示されるように、上壁41aは、前端の幅が最も狭く、前側から後側へ少しずつ幅が広がる。さらに、図4Bに示されるように、上壁41aは、前端から後端にわたって緩やかにカーブする。一方、図4Bに示されるように、側壁41bの前側は、緩やかにカーブする玉部の形状にデザインされている。側壁41bの中央は、他の部分よりも壁の高さが低く、クリップ本体41の中央が柔軟に曲がるかのような印象を与える。側壁41bの後側は、曲線からなる前側と対照的に、直線からなる略平行四辺形にデザインされている。
【0047】
図3B及び図4Cに示されるように、一対の側壁41bの後側には、クリップ本体41の内側に向かって突出する一対の係合部41cが形成される。さらに、図3Bに示されるように、一対の係合部41cの前端には、上壁41aの裏面に向かって突出する一対のストッパ壁41dが形成される。一方、図5B及び図5Fに示されるように、クリップベース43のスライダー43aの両側には、一対の係合溝43bが設けられる。図6Aに示されるように、クリップ本体41の一対の係合部41cは、スライダー43aの一対の係合溝43bと係合する。このとき、一対のストッパ壁41dがスライダー43aの前面に当接する。
【0048】
1.2.2 把持部
図3Bに示されるように、把持部42は、クリップ本体41の裏側で、且つ一対の側壁41bの間に設けられる。より詳細に、把持部42は、一対の側壁41bのうち、玉部の形状にデザインされた前側の部分の間に位置する。把持部42は、クリップ本体41と同じ金属板の一部を折り曲げて構成される。
【0049】
本実施形態の把持部42は、互いに連続するビーム42b及び突出部42cを備える。ビーム42bは、固定端42aから軸筒2の後方へ水平に延びる(図8Aを参照)。突出部42cは、ビーム42bからV字形に曲げられ、軸筒2の表面の方向に突出する。突出部42cの頂部は、玉部を構成する一対の側壁41bのうちの最も高い部位を通る直線上に位置することが好ましい。図4B中の黒点は、一対の側壁41bのうちの最も高い部位を示す。また、図4B中の一点鎖線は、一対の側壁41bのうちの最も高い部位を通る直線を示す。本実施形態の突出部42cの頂部は、図4B中の黒点を通る一点鎖線上に位置する。突出部42cの後端は、自由端42dとなっている。クリップ本体41が出没式筆記具1に組み付けられる前において、突出部42cの自由端42dは、クリップ本体41の上壁41aの裏面に接触しない(図8Aを参照)。
【0050】
さらに、突出部42cは、図7Aに示される軸筒2のガイド溝23fに納まる幅W1を有する。図4Cに示されるように、V字形の突出部42cの頂部の手前から後端までの幅W1は、ビーム42bの幅W3よりも狭くなっている(W1<W3)。突出部42cの幅W1は、軸筒2のガイド溝23fの幅W2よりも若干狭い。ガイド溝23fの幅W2と突出部42cの幅W1との寸法差は、0.1mm≦W2-W1≦4.0mmの範囲内とすることが好ましい。突出部42cは、ガイド溝23fの一対の側面234の間に納まり、ガイド溝23fに沿って軸筒2の前後方向に移動する。突出部42cが、軸筒2のガイド溝23f以外の部分に接触することはない。突出部42cの幅W1は、十分な強度を得るために、ビーム42bの幅W3の20%を超える広さを有することが好ましい(W3×0.2<W1)。
【0051】
ここで、本実施形態の把持部42は、把持される物の厚さに応じて、2段階の弾性力を生じさせるように構成される。第1段階の弾性力は、図6Cに示される固定端42aを支点にしたビーム42bの変形によって生じる。図6Aに示されるように、クリップ本体41が出没式筆記具1に組み付けられたとき、ビーム42bは、固定端42aを支点にして、クリップ本体41の上壁41aの裏面の方向に変形する。この変形の反作用として、突出部42cが、軸筒2のガイド溝23fに対して第1段階の弾性力を及ぼす(図4B及び図6Bに示される突出量AM1、AM2を参照)。第1段階の弾性力の値として、例えば、突出部42cは、常時、軸筒2のガイド溝23fに対して200gfの荷重を加える。
【0052】
次に、第2段階の弾性力は、図6Cに示される突出部42cが、その頂部を支点にして変形することによって生じる。すなわち、第1段階の弾性力が生じている状態で、さらにビーム42bが固定端42aを支点にして変形すると、突出部42cの自由端42dがクリップ本体41の上壁41aの裏面に接触する。これにより、突出部42cは、その頂部を支点にして変形し、第2段階の弾性力を生じさせる。
【0053】
したがって、本実施形態の把持部42は、第1段階の弾性力(例えば200gf)によって薄い物を把持し、第1段階と第2段階とを合計した弾性力(例えば200gf超)によって厚い物を把持する。
【0054】
1.2.3 クリップベース
クリップベース43の構成は、図5A図5Gに示される。既に述べたように、クリップベース43は、スライダー43a、連結部43c及び円筒部43dを備える。スライダー43aには、一対の係合溝43bが設けられる。一対の係合溝43bは、クリップ本体41の一対の係合部41cと係合する。円筒部43dの前端には、カム歯43eが設けられる。カム歯43eは、回転部材3の突条31の後端部と噛み合う。
【0055】
ここで、図6Aに示されるように、本実施形態のクリップベース43は、スライダー43aに結合されたクリップ本体41を所定の高さに支持し、軸筒2の表面が傷付かないようにしている。すなわち、クリップベース43は、一対の側壁41bが軸筒2の表面に接触せず、且つ把持部42がガイド溝23fの底面233に接触する高さにクリップ本体41を支持する。この構成により、一対の側壁41bと軸筒2の表面との間に、図6Aに示されるクリアランスCLが維持される。第1に、クリアランスCLは、クリップベース43がクリップ本体41を支持する高さによって維持される。第2に、クリアランスCLは、クリップ本体41が出没式筆記具1に組み付けられたときに生じる把持部42の弾性力(例えば200gf)によって維持される。
【0056】
1.3 軸筒のガイド溝
図7Aに示されるように、上述したガイド溝23fは、軸筒2を構成する中間軸23の後側に設けられる。ガイド溝23fは、軸筒2の前後方向に延びる溝であり、底面233と一対の側面234とで構成される。図6Aに示されるように、ガイド溝23fの底面233は、クリップ4の把持部42を構成する突出部42cと接触する。ガイド溝23fの一対の側面234は、突出部42cの側方の動きを制限する。このような構成のガイド溝23fは、ペン先61を出没させるためにスライドされるクリップ4を、軸筒2の前後方向にガイドして一直線に移動させる。既に述べたとおり、中間軸23の表面は、転写フィルムを貼ることによって装飾されているが、ガイド溝23fに転写フィルムは貼られていない。
【0057】
ここで、本実施形態のガイド溝23fは、クリップ4のスライドに必要な長さを超える全長を有る。図7Aに示されるように、ガイド溝23fは、前側の第1領域231と、後側の第2領域232とを含む。第2領域232は、中間軸23の後側に設けられた第1の長孔23eの前端に連通する。この第1の長孔23eは、図2Bに示される後軸24の第2の長孔24aとともにスライド孔20を構成する。
【0058】
ガイド溝23fの第1領域231は、ペン先61を出没させるためのクリップ4のスライドに使用される。すなわち、ペン先61を出没させるときに、クリップ4は、第1領域231の長さの範囲内で前後方向に移動される。
【0059】
一方、ガイド溝23fの第2領域232は、クリップ4を中間軸23に組み付けるときに使用される。図7Bに示されるように、クリップ4は、クリップベース43の円筒部43dを中間軸23の内部に挿入することにより組み付けられる。クリップ4が中間軸23に組み付けられる過程において、クリップ4の把持部42を構成する突出部42cは、第1の長孔23eを通過し、ガイド溝23fの第2領域232から第1領域231にガイドされる。これにより、金属製の突出部42cを中間軸23の表面に接触させることなく、クリップ4を中間軸23に組み付けることができる。
【0060】
1.4 クリップの技術的効果
本実施形態のクリップ4は、金属板で構成することができ、且つ薄い紙や布などを破損させない適度な弾性力に調整することが可能である。すなわち、金属製のクリップ4は、クリップ本体41と把持部42とで構成される。クリップ4の外観は、複数の壁で囲まれた箱状のクリップ本体41の外形によって形成される。クリップ4の弾性力は、クリップ本体41の裏側に設けられた把持部42が生じさせる。把持部42の構成は、クリップ4の外観に影響を与えない。したがって、把持部42は、適度な弾性力を生じるように自由に構成することができる。一方、クリップ本体41の外形は、物を把持するための弾性力を殆ど考慮することなくデザインすることが可能であり、デザインの自由度が高い。
【0061】
本実施形態のクリップ4は、金属板のエッジによって軸筒2の表面を傷付けることがない。第1に、金属製のクリップ本体41と、転写フィルムが貼られた軸筒2の表面との間には、図6Aに示されるクリアランスCLが維持される。これにより、クリップ本体41の一対の側壁41bが軸筒2の表面に接触しない。第2に、金属製の把持部42は、転写フィルムの貼られていないガイド溝23fのみに接触し、転写フィルムが貼られた軸筒2の表面に接触しない。以上の構成によって、金属製のクリップ4が、軸筒2の表面に接触して傷付けることはない。
【0062】
本実施形態のクリップ4は、従来のような突起部を軸筒2の表面に設けることなく、金属製のクリップ4と軸筒2の表面との接触を阻止することができる。したがって、軸筒2の表面に転写フィルムを効率よく貼ることが可能となる。
【0063】
本実施形態のクリップ4では、常時、把持部42が軸筒2のガイド溝23fに対して弾性力を及ぼす。この把持部42の弾性力によって、常時、クリップ4のがたつきが抑えられる。これにより、第1に、クリップ4の操作性が向上する。すなわち、がたつきのないクリップ4は、スライド孔20及びガイド溝23fに沿って、真っ直ぐにスライドさせることが可能である。第2に、クリップ4のがたつきによる不快な音や振動の発生が防止される。特に、出没式筆記具1によって筆記している最中のクリップ4のがたつきが抑えられ、出没式筆記具1の使用感が良好となる。
【0064】
さらに、本実施形態のクリップ4では、1つのクリップ本体41に設けられた一対のストッパ壁41dが、2つのクリップ本体41の意図しない結合を防止する。これにより、出没式筆記具1の自動組み立てがスムーズに行われるようになる。2つのクリップ本体41の意図しない結合の防止については、次の第2実施形態において詳述する。
【0065】
2.第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態に係る出没式筆記具について、図8図11を参照しつつ説明する。第2実施形態では、出没式筆記具の自動組み立てにおける、2つのクリップ本体の意図しない結合の防止について説明する。
2.1 ストッパ壁及び幅広部
【0066】
2つのクリップ本体41の意図しない結合は、図8A図8Cに示される一対のストッパ壁41dと、1つの幅広部42eとにより防止される。一対のストッパ壁41dの構成については、第1実施形態において既に説明した。一対のストッパ壁41dは、一対の係合部41cの前端に形成され、上壁41aの裏面に向かって突出する。一方、幅広部42eは、把持部42の自由端42dを含む後端部に設けられている。図8Bに示されるように、幅広部42eの幅W4は、少なくとも突出部42cの幅W1より広く、好ましくは、クリップ本体41の一対の側壁41bの間隔の1/2以上の広さを有する。本実施形態の幅広部42eの幅W4は、ビーム42bの幅W3と略同じ寸法であるが、ビーム42bの幅W3を超えてもよい(W3≦W4)。
【0067】
2.2 ストッパ壁の技術的効果
図9A図9Cは、ストッパ壁41d及び幅広部42eが設けられていない2つのクリップ本体41を示す。クリップ本体41の構成は、ストッパ壁41dが設けられていないこと以外、図4A図4Cに示される第1実施形態のクリップ本体41と同一である。
【0068】
図9Bに示されるように、クリップ本体41は、前端の幅が最も狭く、前側から後側へ少しずつ幅が広がる外形を有する。また、図9A及び図9Cに示されるように、クリップ本体41の後端開口は、上壁41a、一対の側壁41b及び一対の係合部41cによって囲まれる。このため、一のクリップ本体41の幅の狭い前側が、他のクリップ本体41の幅の広い後側に深く嵌合してしまうことがある。自動組立機は、嵌合した2つのクリップ本体41を分離させることができない。このため、出没式筆記具1の自動組み立てが一時中断される。
【0069】
図10A図10Cは、一対のストッパ壁41dが設けられた2つのクリップ本体41を示す。一のクリップ本体41に設けられた一対のストッパ壁41dは、他のクリップ本体41の前端に当接し、一及び他のクリップ本体41の嵌合を阻止する。これにより、複数のクリップ本体41が一つずつ分離した状態で自動組立機に供給され、出没式筆記具1の自動組み立てがスムーズに行われる。
【0070】
2.3 幅広部の技術的効果
図11A及び図11Bに示されるように、幅広部42eが設けられていない2つのクリップ本体41は、互いの把持部42が絡み合ってしまうことがある。自動組立機は、把持部42どうしが絡み合った2つのクリップ本体41を分離させることができない。このため、出没式筆記具1の自動組み立てが一時中断される。
【0071】
図8A図8Cに示される幅広部42eによれば、2つのクリップ本体41の把持部42どうしの絡み合いが減少する。すなわち、幅広部42eは、クリップ本体41の一対の側壁41bの間隔の1/2以上の広さを有する。このため、一のクリップ本体41の幅広部42eは、他のクリップ本体41の把持部42の隙間に入り難い。この結果、把持部42どうしの絡み合いが減少する。このような幅広部42eによれば、複数のクリップ本体41が一つずつ分離した状態で自動組立機に供給され、出没式筆記具1の自動組み立てがスムーズに行われる。
【0072】
また、上述したように、突出部42cは、自由端42dがクリップ本体41の上壁41aの裏面に接触することにより、その頂部を支点にして変形し、第2段階の弾性力を生じさせる。幅広部42eは、突出部42cのがたつきを抑え、第2段階の弾性力を生じさせるときの突出部42cの変形を安定させる。
【0073】
上述した幅広部42eの技術的効果は、幅広部42eの幅W4が広いほど顕著になる。すなわち、幅広部42eの幅W4が広いほど、2つのクリップ本体41の把持部42どうしの絡み合いが確実に防止される。また、幅広部42eの幅W4が広いほど、突出部42cのがたつきが減少し、第2段階の弾性力を生じさせるときの突出部42cの変形が安定する。
【0074】
3.把持部の他の実施形態
クリップ本体41の把持部42の構成は、図4A図4Cに示されるV字形に限定されるものではない。把持部42は、例えば、図12A図12Cに示される構成としてもよい。
【0075】
3.1 第3実施形態
図12Aは、本発明の第3実施形態に係る出没式筆記具のクリップを構成するクリップ本体41及び把持部42を示す。クリップ本体41及び把持部42は、一枚の金属板によって一体に設けられる。把持部42には、弧形の突出部42fが形成される。弧形の突出部42fは、ビーム42bから軸筒2の表面の方向に突出する。突出部42fの頂部の曲率半径Rは、0.5mmより大きいことが好ましく、1.5mmより大きいことがより好ましい。突出部42fの後端は、自由端42dとなっている。このような弧形の突出部42fは、図4A図4Cに示されるV字形の突出部42cと同様に機能する。なお、本実施形態の把持部42の自由端42dを含む後端部に、図8A図8Cに示される幅広部42eを設けてもよい。
【0076】
3.2 第4実施形態
図12Bは、本発明の第4実施形態に係る出没式筆記具のクリップを構成するクリップ本体41及び把持部42を示す。クリップ本体41及び把持部42は、一枚の金属板によって一体に設けられる。把持部42には、W字形の突出部42gが形成される。W字形の突出部42gは、ビーム42bから軸筒2の表面の方向に突出する。W字形の突出部42gは、2つの頂部を有する。突出部42gの2つの頂部の境界は、最も低い谷部となっている。突出部42gの谷部は、玉部を構成する一対の側壁41bのうちの最も高い部位を通る直線上に位置することが好ましい。図12B中の黒点は、一対の側壁41bのうちの最も高い部位を示す。また、図12B中の一点鎖線は、一対の側壁41bのうちの最も高い部位を通る直線を示す。本実施形態の突出部42gの谷部は、図12B中の黒点を通る一点鎖線上に位置する。突出部42gの後端は、自由端42dとなっている。このようなW字形の突出部42gは、図4A図4Cに示されるV字形の突出部42cと同様に機能する。なお、本実施形態の把持部42の自由端42dを含む後端部に、図8A図8Cに示される幅広部42eを設けてもよい。
【0077】
3.3 第5実施形態
図12Cは、本発明の第5実施形態に係る出没式筆記具のクリップを構成するクリップ本体41及び把持部42を示す。クリップ本体41及び把持部42は、一枚の金属板によって一体に設けられる。把持部42には、逆台形の突出部42hが形成される。逆台形の突出部42hは、ビーム42bから軸筒2の表面の方向に突出する。突出部42hの後端は、自由端42dとなっている。このような逆台形の突出部42hは、図4A図4Cに示されるV字形の突出部42cと同様に機能する。なお、本実施形態の把持部42の自由端42dを含む後端部に、図8A図8Cに示される幅広部42eを設けてもよい。
【0078】
4.クリップ本体及び把持部の素材
クリップ本体41及び把持部42は、一枚の金属板によって一体に設けられた構成に限定されるものではない。クリップ本体41及び把持部42は、例えば、図13A及び図13Bに示される構成としてもよい。
【0079】
4.1 第6実施形態
図13Aは、本発明の第6実施形態に係る出没式筆記具のクリップを構成するクリップ本体41及び把持部44を示す。クリップ本体41は、一枚の金属板を折り曲げることによって構成される。把持部44は、合成樹脂により一体成形される。合成樹脂製の把持部44は、図4A図4Cに示される把持部42と同様の固定端44a、ビーム44b、突出部44c及び自由端44dを有する。合成樹脂製の把持部44は、金属製のクリップ本体41の上壁41aの裏面に固定される。把持部44は、例えば、接着又は嵌合によって、上壁41aの裏面に固定される。このような合成樹脂製の把持部44は、図4A図4Cに示される金属製の把持部42と同様に機能する。
【0080】
4.2 第7実施形態
図13Bは、本発明の第7実施形態に係る出没式筆記具のクリップを構成するクリップ本体45及び把持部42を示す。クリップ本体45は、合成樹脂により一体成形される。把持部42は、一枚の金属板を折り曲げることによって構成される。合成樹脂製のクリップ本体45は、図4A図4Cに示されるクリップ本体41と同様の上壁45a、一対の側壁45b及び一対の係合部45cを有する。金属製の把持部42は、合成樹脂製のクリップ本体45の上壁45aの裏面に固定される。把持部42は、例えば、接着又は嵌合によって、上壁45aの裏面に固定される。このような金属製の把持部42は、図4A図4Cに示される金属製の把持部42と同様に機能する。
【0081】
5.ガイド溝の改良
中間軸23に設けられたガイド溝23fは、上述した第1実施形態の図7A及び図7Bに示される構成に限定されるものではない。
【0082】
5.1 第1実施形態に係る出没式筆記具の技術課題
図14A及び図14Bに示されるように、第1実施形態のガイド溝23fは、第1及び第2領域231、232を含む。既に述べたとおり、第1領域231は、ペン先61(図1B及び図2Bを参照)を出没させるためのクリップ4のスライドに使用される。すなわち、ペン先61を出没させるときに、クリップ4は、第1領域231の長さの範囲内で前後方向に移動される。
【0083】
ここで、図15A及び図15Bは、第1実施形態に係る出没式筆記具1の内部の構成を示すものである。図15Aは、ペン先61が軸筒2から突出した状態を示す。図15Bは、ペン先61が軸筒2内に没入した状態を示す。
【0084】
図15Aに示すように、ペン先61が軸筒2から突出した状態となったとき、クリップ4の把持部42は、第1領域231の前半部分231aに位置する。一方、図15Bに示すように、ペン先61が軸筒2内に没入した状態となったとき、クリップ4の把持部42は、第1領域231の後半部分231bに位置する。
【0085】
第1実施形態のガイド溝23fは、第1領域231の後半部分231bに底面233を有する。このため、ペン先61が図15Bに示される完全な没入状態となる直前に、クリップ4の後方への移動が止まることが稀にある。すなわち、第1実施形態に係る出没式筆記具1には、ペン先61を没入状態にするためのクリップ4の正常な動作が確実に行われないという技術課題がある。
【0086】
このような技術課題の原因について、図15A及び図15Bを参照して説明する。図15Aに示されるように、クリップ4は、筆記体6の前端部に装着されたスプリング5(図1B及び図2Bを参照)の付勢力P1によって、軸筒2の後方へスライドされる。一方、クリップ4の把持部42は、ガイド溝23fの底面233に対して弾性力P2を生じさせる。この結果、クリップ4は、弾性力P2と反対方向の反力(図15A及び図15B中の灰色矢印を参照)を底面233から受ける。弾性力P2と反対方向の反力によって、クリップ4は、クリップベース43を支点にして傾いた状態になる。傾いた状態のクリップベース43は、中間軸23及び後軸24の表面及び内面に押し付けられて摩擦抵抗を生じさせる(図15A及び図15B中の鎖線で囲った部分を参照)。
【0087】
図15Aに示されるペン先61の突出状態において、クリップベース43の摩擦抵抗は、クリップ4のがたつきを抑えるという好ましい効果を奏する。しかし、クリップベース43の摩擦抵抗は、ペン先61が図15Bに示される完全な没入状態となる直前に、クリップ4の後方への移動を止める問題を生じさせる。
【0088】
クリップ4の後方への移動を止める原因は、把持部42の弾性力P2だけではない。スプリング5の伸縮に応じて付勢力P1が変化することも、クリップ4の後方への移動を止める原因となる。すなわち、スプリング5の付勢力P1は、スプリング5が圧縮されるほど大きくなり、スプリング5が伸長するほど小さくなる。このため、スプリング5の付勢力P1は、図15Aに示されるペン先61の突出状態において最大となり、図15Bに示されるペン先61の没入状態において最小となる。ペン先61が突出状態から没入状態となる過程において、スプリング5の付勢力P1が、クリップベース43の摩擦抵抗を超えられない場合、クリップ4の後方への移動は、クリップベース43の摩擦抵抗によって止まってしまう。
【0089】
このような問題を解決するために、スプリング5の付勢力P1を増大させることが考えられる。しかし、スプリング5の付勢力P1を増大させると、クリップ4を軸筒2の前方にスライドさせるためにより大きな力が必要になり、ペン先61を出没させるための操作性が低下してしまう。したがって、クリップ4の後方への移動が止まる問題は、スプリング5の付勢力P1を増大させることなく解決することが望ましい。
【0090】
5.2 第8実施形態
以下、本発明の第8実施形態に係る出没式筆記具について、図16図18を参照しつつ説明する。第8実施形態に係る出没式筆記具は、クリップ4の後方への移動が止まる問題を解決するための構成を備える。
【0091】
5.2.1 ガイド溝の構成
図16A図16B及び図16Cは、第8実施形態に係る出没式筆記具の中間軸23を示す。第8実施形態に係る出没式筆記具は、中間軸23に設けられたガイド溝23fの構成に特徴がある。ガイド溝23fは、底面233、一対の側面234及び貫通溝235で構成される。
【0092】
ガイド溝23fの底面233は、必須の構成ではないが、ガイド溝23fにおける第1領域231の後半部分231b以外の部分に形成される。好ましくは、底面233は、第1領域231の前半部分231aに形成される。この場合、底面233は、前半部分231aと実質的に同じ長さとする。本実施形態の底面233は、第1領域231の前半部分231aの全長よりも僅かに短い長さとしてある。すなわち、図17Aに示されるように、底面233は、ペン先61が突出状態となったときに、クリップ4の把持部42を構成する突出部42cと接触することが可能な最低限の長さとしてある。
【0093】
ガイド溝23fの貫通溝235は、少なくとも第1領域231の後半部分231bに形成される。本実施形態の貫通溝235は、底面233を除く第1領域231から第2領域232の全体に亘って形成され、第1の長孔23eに連続する。
【0094】
5.2.2 ガイド溝の技術的効果
図17Aに示されるペン先61の突出状態においては、クリップ4の把持部42を構成する突出部42cが、ガイド溝23fの第1領域231の前半部分231aに位置する。突出部42cが、ガイド溝23fの底面233に接触することによって、クリップ4の把持部42が、ガイド溝23fの底面233に対して弾性力P2を生じさせる。この結果、クリップ4は、弾性力P2と反対方向の反力(図17A中の灰色矢印を参照)を底面233から受ける。弾性力P2と反対方向の反力によって、クリップ4は、クリップベース43を支点にして傾いた状態になる。傾いた状態のクリップベース43は、中間軸23及び後軸24の表面及び内面に押し付けられて摩擦抵抗を生じさせる(図17A中の鎖線で囲った部分を参照)。
【0095】
クリップベース43の摩擦抵抗は、クリップ4のがたつきを抑えるという好ましい効果を奏する。すなわち、ガイド溝23fの第1領域231の前半部分231aに形成された底面233により、ペン先61の突出状態におけるクリップ4のがたつきが防止される。
【0096】
次に、図17Aに示されるペン先61の突出状態は、クリップ4を軸筒2(図2Aを参照)の前方にスライドさせることにより、図17Bに示されるペン先61の没入状態へ移行する。ペン先61の突出状態から没入状態へ移行する過程において、クリップ4は、筆記体6の前端部に装着されたスプリング5(図1B及び図2Bを参照)の付勢力P1によって、軸筒2の後方へスライドされる。
【0097】
ペン先61の突出状態から没入状態へ移行する過程において、クリップ4の把持部42を構成する突出部42cは、ガイド溝23fの第1領域231における前半部分231aと後半部分231bとの境界を通過する位置で、底面233の上から貫通溝235の中に入る。その後、クリップ4の把持部42は、貫通溝235に沿って、第1領域231の後半部分231bと第2領域232との境界まで移動する。これにより、ペン先61が図17Bに示される完全な没入状態となる。
【0098】
図17Bに示されるように、ガイド溝23fに貫通溝235を形成したことにより、ペン先61の突出状態から没入状態へ移行するまでの間、クリップ4の把持部42が弾性力P2を生じさせなくなる。これにより、弾性力P2と反対方向の反力がゼロになり、クリップベース43の摩擦抵抗もゼロになる。したがって、本実施形態のガイド溝23fによれば、ペン先61が図17Bに示される完全な没入状態となる直前に、クリップ4の後方への移動が止まることがなくなる。すなわち、本実施形態に係る出没式筆記具では、ペン先61を没入状態にするためのクリップ4の正常な動作が確実に行われるようになる。
【0099】
図16Cに示されるように、ガイド溝23fの第2領域232に形成された貫通溝235は、クリップ4を中間軸23に組み付けるときに使用される。クリップ4が中間軸23に組み付けられる過程において、クリップ4の把持部42を構成する突出部42cは、第1の長孔23eを通過し、ガイド溝23fの第2領域232に形成された貫通溝235によって第1領域231へガイドされる。これにより、金属製の突出部42cを中間軸23の表面に接触させることなく、クリップ4を中間軸23に組み付けることができる。
【0100】
5.2.3 ガイド溝の好ましい構成
好ましくは、図18Aに示されるように、ガイド溝23fの底面233の後端に、貫通溝235に向かって下がる傾斜面233aを形成する。このような傾斜面233aによって、クリップ4の把持部42を構成する突出部42cが、底面233をスムーズに上り下りすることが可能となる。これにより、ペン先61を出没させるためのクリップ4のスライド操作がスムーズになる。
【0101】
好ましくは、図18Bに示されるように、ペン先61の没入状態において、ガイド溝23fの底面233の後端と、クリップ4の突出部42cとの間に、間隔Dが形成されるようにする。間隔Dにより、ペン先61が図17Bに示される完全な没入状態となる前に、クリップ4の突出部42cが貫通溝235の中に入り、把持部42の弾性力P2がゼロになる。さらに、間隔Dにより、把持部42の表面が底面233の後端に接触しなくなり、ペン先61の突出状態から没入状態へ移行する過程において、把持部42の表面と底面233の後端との間に摩擦抵抗が生じない。このような間隔Dの技術的効果によって、クリップ4の後方への移動が止まることが、より確実になくなる。
【0102】
5.3 第9実施形態
次に、本発明の第9実施形態に係る出没式筆記具について、図19及び図20を参照しつつ説明する。
【0103】
図19A図19B及び図19Cは、第9実施形態に係る出没式筆記具の中間軸23を示す。第9実施形態に係る出没式筆記具のガイド溝23fは、第1底面233A、貫通溝235及び第2底面233Bを有する。第1底面233Aは、上述した第8実施形態と同様に、第1領域231の前半部分231aに形成される。第2底面233Bは、第2領域232に形成される。貫通溝235は、第1底面233Aと第2底面233Bとの間に形成される。本実施形態の貫通溝235は、第1底面233Aの後端から、第1領域231と第2領域232との境界を超え、第2底面233Bの前端に達する長さとなっている。本実施形態のガイド溝23fも、上述した第8実施形態と同様の技術的効果を奏する。
【0104】
すなわち、図20Aに示されるペン先61の突出状態においては、クリップ4の突出部42cが、ガイド溝23fの第1底面233Aに接触することによって、クリップ4の把持部42が、ガイド溝23fの第1底面233Aに対して弾性力P2を生じさせる。弾性力P2と反対方向の反力(図20A中の灰色矢印を参照)によって、クリップ4は、クリップベース43を支点にして傾いた状態になる。傾いた状態のクリップベース43は、中間軸23及び後軸24の表面及び内面に押し付けられて摩擦抵抗を生じさせる(図20A中の鎖線で囲った部分を参照)。クリップベース43の摩擦抵抗は、クリップ4のがたつきを抑えるという好ましい効果を奏する。
【0105】
ペン先61の突出状態から没入状態へ移行する過程において、クリップ4の突出部42cは、ガイド溝23fの第1領域231における前半部分231aと後半部分231bとの境界を通過する位置で、第1底面233Aの上から貫通溝235の中に入る。その後、クリップ4の把持部42は、貫通溝235に沿って、第1領域231の後半部分231bと第2領域232との境界まで移動する。これにより、ペン先61が図20Bに示される完全な没入状態となる。
【0106】
図20Bに示されるように、ガイド溝23fに貫通溝235を形成したことにより、ペン先61の突出状態から没入状態へ移行するまでの間、クリップ4の把持部42が弾性力P2を生じさせなくなる。これにより、弾性力P2と反対方向の反力がゼロになり、クリップベース43の摩擦抵抗もゼロになる。したがって、本実施形態のガイド溝23fによれば、ペン先61が図20Bに示される完全な没入状態となる直前に、クリップ4の後方への移動が止まることがなくなる。すなわち、本実施形態に係る出没式筆記具では、ペン先61を没入状態にするためのクリップ4の正常な動作が確実に行われるようになる。
【0107】
図19Cに示されるように、ガイド溝23fの第2領域232は、クリップ4を中間軸23に組み付けるときに使用される。クリップ4が中間軸23に組み付けられる過程において、クリップ4の把持部42を構成する突出部42cは、第1の長孔23eを通過し、ガイド溝23fの第2領域232によって第1領域231へガイドされる。これにより、金属製の突出部42cを中間軸23の表面に接触させることなく、クリップ4を中間軸23に組み付けることができる。
【0108】
さらに、ガイド溝23fの第2領域232に第2底面233Bを形成したことにより、中間軸23の後側部分の剛性が向上する。すなわち、中間軸23の後側部分には、貫通溝235及び第1の長孔23eが形成される。図16Bに示されるように、貫通溝235及び第1の長孔23eが連続すると、中間軸23の後側部分の剛性が低下して撓みやすくなる。図19Bに示される第2底面233Bは、貫通溝235及び第1の長孔23eの連続を断ち、中間軸23の後側部分の剛性を向上させる。これにより、中間軸23の後側部分が撓みにくくなり、中間軸23の表面に転写フィルムを効率よく貼ることが可能となる。
【0109】
5.4 第10実施形態
次に、本発明の第10実施形態に係る出没式筆記具について、図21Aを参照しつつ説明する。
【0110】
図21Aは、第10実施形態に係る出没式筆記具の中間軸23を示す。第10実施形態に係る出没式筆記具のガイド溝23fは、底面233を有さず、貫通溝235と一対の側面234とで構成される。本実施形態の貫通溝235は、第1領域231から第2領域232の全体に亘って形成され、第1の長孔23eに連続する。
【0111】
図21Aに示されるガイド溝23fによれば、ペン先61の状態に拘わらず、常時、クリップ4の把持部42が弾性力P2を生じさせなくなる。これにより、弾性力P2と反対方向の反力がゼロになり、クリップベース43の摩擦抵抗もゼロになる。したがって、クリップ4の後方への移動が止まることがなくなる。すなわち、本実施形態に係る出没式筆記具では、ペン先61を没入状態にするためのクリップ4の正常な動作が確実に行われるようになる。
【0112】
ガイド溝23fの第2領域232に形成された貫通溝235は、クリップ4を中間軸23に組み付けるときに使用される。クリップ4が中間軸23に組み付けられる過程において、クリップ4の把持部42を構成する突出部42cは、第1の長孔23eを通過し、ガイド溝23fの第2領域232に形成された貫通溝235によって第1領域231へガイドされる。これにより、金属製の突出部42cを中間軸23の表面に接触させることなく、クリップ4を中間軸23に組み付けることができる。
【0113】
5.5 第11実施形態
次に、本発明の第11実施形態に係る出没式筆記具について、図21Bを参照しつつ説明する。
【0114】
図21Bは、第11実施形態に係る出没式筆記具の中間軸23を示す。第11実施形態に係る出没式筆記具のガイド溝23fは、第1領域231のみを有し、第2領域232を有しない。第1領域231の前半部分231aには、底面233が形成される。第1領域231の後半部分231bには、貫通溝235が形成される。本実施形態のガイド溝23fも、上述した第8実施形態と同様の技術的効果を奏する。
【0115】
すなわち、ペン先61の突出状態においては、クリップ4の突出部42cが、ガイド溝23fの底面233に接触することによって、クリップ4の把持部42が、ガイド溝23fの底面233に対して弾性力P2(図17Aを参照)を生じさせる。弾性力P2と反対方向の反力によって、クリップ4は、クリップベース43を支点にして傾いた状態になる。傾いた状態のクリップベース43は、中間軸23及び後軸24の表面及び内面に押し付けられて摩擦抵抗を生じさせる。クリップベース43の摩擦抵抗は、クリップ4のがたつきを抑えるという好ましい効果を奏する。
【0116】
ペン先61の突出状態から没入状態へ移行する過程において、クリップ4の突出部42cは、ガイド溝23fの第1領域231における前半部分231aと後半部分231bとの境界を通過する位置で、底面233の上から貫通溝235の中に入る。その後、クリップ4の把持部42は、貫通溝235に沿って、第1領域231の後半部分231bの後方へ移動する。これにより、ペン先61が完全な没入状態となる。
【0117】
図21Bに示されるように、ガイド溝23fに貫通溝235を形成したことにより、ペン先61の突出状態から没入状態へ移行するまでの間、クリップ4の把持部42が弾性力P2を生じさせなくなる。これにより、弾性力P2と反対方向の反力がゼロになり、クリップベース43の摩擦抵抗もゼロになる。したがって、本実施形態のガイド溝23fによれば、ペン先61が完全な没入状態となる直前に、クリップ4の後方への移動が止まることがなくなる。すなわち、本実施形態に係る出没式筆記具では、ペン先61を没入状態にするためのクリップ4の正常な動作が確実に行われるようになる。
【0118】
さらに、ガイド溝23fが、第2領域232を有しないことにより、第1領域231の貫通溝235と第1の長孔23eとの連続が断たれる。これにより、中間軸23の後側部分の剛性が向上する。この結果、中間軸23の後側部分が撓みにくくなり、中間軸23の表面に転写フィルムを効率よく貼ることが可能となる。
【符号の説明】
【0119】
1 出没式筆記具
2 軸筒
20 スライド孔
21 口金
21a 前端孔
22 前軸
22a グリップ
23 中間軸
23a カム歯
23b カム溝
23e 第1の長孔
23f ガイド溝
231 第1領域
231a 前半部分
231b 後半部分
232 第2領域
233 底面
233A 第1底面
233B 第2底面
233a 傾斜面
234 側面
235 貫通溝
24 後軸
24a 第2の長孔
24b 取付孔
3 回転部材
31 突条
4 クリップ
41、45 クリップ本体
41a、45a 上壁
41b、45b 側壁
41c、45c 係合部
41d ストッパ壁
42、44 把持部
42a、44a 固定端
42b、44b ビーム
42c、42f、42g、42h、44c 突出部
42d、44d 自由端
42e 幅広部
43 クリップベース
43a スライダー
43b 係合溝
43c 連結部
43d 円筒部
43e カム歯
5 スプリング
6 筆記体
61 ペン先
62 インキ収容管
63 熱変色性インキ
64 追従体
65 尾栓
7 摩擦部
D 間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21