(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】検査装置、検査方法および検査プログラム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/58 20200101AFI20241113BHJP
G01R 31/52 20200101ALI20241113BHJP
【FI】
G01R31/58
G01R31/52
(21)【出願番号】P 2020207146
(22)【出願日】2020-12-14
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】517161142
【氏名又は名称】株式会社SoBrain
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】頭本 頼数
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-189557(JP,A)
【文献】特開2012-42418(JP,A)
【文献】国際公開第2018/221619(WO,A1)
【文献】特開2019-207176(JP,A)
【文献】特開2020-76671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/50
G01R 31/08
G01R 27/00
H02H 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1相、第2相および第3相がΔ結線された被測定電線路に流れている漏洩電流を検出する漏洩電流検出部と、
前記被測定電線路に印加されている電圧を検出する電圧検出部と、
前記漏洩電流検出部により検出された漏洩電流と、前記電圧検出部により検出された電圧とに基づいて、位相角を検出する位相角検出部と、
前記漏洩電流検出部により検出された漏洩電流と、前記位相角検出部により検出された位相角とに基づいて、前記被測定電線路に流れている漏洩電流に含まれている対地静電容量に起因する容量成分漏洩電流が取り得る範囲を算出する第1算出部と、
前記第1算出部により算出された前記容量成分漏洩電流の取り得る範囲において、基準となる基準容量成分漏洩電流を決定する決定部と、
第1測定時において、前記決定部により特定された前記基準容量成分漏洩電流と、前記位相角検出部により検出された第1位相角と、前記漏洩電流検出部により検出された第1漏洩電流とに基づいて、前記被測定電線路に流れている漏洩電流に含まれている対地絶縁抵抗に起因する第1抵抗成分漏洩電流を算出する第2算出部と、
前記第1測定時から所定時間後の第2測定時において、前記決定部により特定された前記基準容量成分漏洩電流と、前記位相角検出部により検出された第2位相角と、前記漏洩電流検出部により検出された第2漏洩電流とに基づいて、前記被測定電線路に流れている漏洩電流に含まれている対地絶縁抵抗に起因する第2抵抗成分漏洩電流を算出する第3算出部と、
前記第2算出部により算出された前記第1抵抗成分漏洩電流と、前記第3算出部により算出された前記第2抵抗成分漏洩電流とを比較して変化量を算出する変化量算出部とを備え
、
前記決定部は、前記第1算出部により算出された前記容量成分漏洩電流の取り得る範囲において、中央値を前記基準容量成分漏洩電流に決定する構成である検査装置。
【請求項2】
前記決定部は、前記第1算出部により算出された前記容量成分漏洩電流の取り得る範囲において、任意の値を前記基準容量成分漏洩電流に決定する構成である請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記第3算出部は、前回の測定において、前記変化量算出部により算出された変化量に差分がないか、または、その差分が所定の差分以下の場合には、前記所定
時間を延ばして次の測定を行う構成である請求項1
又は2に記載の検査装置。
【請求項4】
第1相、第2相および第3相がΔ結線された被測定電線路に流れている漏洩電流を検出する漏洩電流検出工程と、
前記被測定電線路に印加されている電圧を検出する電圧検出工程と、
前記漏洩電流検出工程により検出された漏洩電流と、前記電圧検出工程により検出された電圧とに基づいて、位相角を検出する位相角検出工程と、
前記漏洩電流検出工程により検出された漏洩電流と、前記位相角検出工程により検出された位相角とに基づいて、前記被測定電線路に流れている漏洩電流に含まれている対地静電容量に起因する容量成分漏洩電流が取り得る範囲を算出する第1算出工程と、
前記第1算出工程により算出された前記容量成分漏洩電流の取り得る範囲において、基準となる基準容量成分漏洩電流
に中央値を決定する決定工程と、
第1測定時において、前記決定工程により特定された前記基準容量成分漏洩電流と、前記位相角検出工程により検出された第1位相角と、前記漏洩電流検出工程により検出された第1漏洩電流とに基づいて、前記被測定電線路に流れている漏洩電流に含まれている対地絶縁抵抗に起因する第1抵抗成分漏洩電流を算出する第2算出工程と、
前記第1測定時から所定時間後の第2測定時において、前記決定工程により特定された前記基準容量成分漏洩電流と、前記位相角検出工程により検出された第2位相角と、前記漏洩電流検出工程により検出された第2漏洩電流とに基づいて、前記被測定電線路に流れている漏洩電流に含まれている対地絶縁抵抗に起因する第2抵抗成分漏洩電流を算出する第3算出工程と、
前記第2算出工程により算出された前記第1抵抗成分漏洩電流と、前記第3算出工程により算出された前記第2抵抗成分漏洩電流とを比較して変化量を算出する変化量算出工程とを備える検査方法。
【請求項5】
コンピュータに、
第1相、第2相および第3相がΔ結線された被測定電線路に流れている漏洩電流を検出する漏洩電流検出工程と、
前記被測定電線路に印加されている電圧を検出する電圧検出工程と、
前記漏洩電流検出工程により検出された漏洩電流と、前記電圧検出工程により検出された電圧とに基づいて、位相角を検出する位相角検出工程と、
前記漏洩電流検出工程により検出された漏洩電流と、前記位相角検出工程により検出された位相角とに基づいて、前記被測定電線路に流れている漏洩電流に含まれている対地静電容量に起因する容量成分漏洩電流が取り得る範囲を算出する第1算出工程と、
前記第1算出工程により算出された前記容量成分漏洩電流の取り得る範囲において、基準となる基準容量成分漏洩電流
に中央値を決定する決定工程と、
第1測定時において、前記決定工程により特定された前記基準容量成分漏洩電流と、前記位相角検出工程により検出された第1位相角と、前記漏洩電流検出工程により検出された第1漏洩電流とに基づいて、前記被測定電線路に流れている漏洩電流に含まれている対地絶縁抵抗に起因する第1抵抗成分漏洩電流を算出する第2算出工程と、
前記第1測定時から所定時間後の第2測定時において、前記決定工程により特定された前記基準容量成分漏洩電流と、前記位相角検出工程により検出された第2位相角と、前記漏洩電流検出工程により検出された第2漏洩電流とに基づいて、前記被測定電線路に流れている漏洩電流に含まれている対地絶縁抵抗に起因する第2抵抗成分漏洩電流を算出する第3算出工程と、
前記第2算出工程により算出された前記第1抵抗成分漏洩電流と、前記第3算出工程により算出された前記第2抵抗成分漏洩電流とを比較して変化量を算出する変化量算出工程と、を実行させるための検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相デルタ電線路を検査または監視する検査装置、検査方法および検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気設備の負荷機器を含む電気系統の絶縁性能は、感電、火災等の防止上、非常に重要であるが、電気設備の経年劣化や工事等により絶縁性能が損なわれ、電線路に漏洩電流(以下、「Io」という。)が発生することがある。Ioの発生を予兆したり、または、実際に発生しているIoを検知して、事故を未然に、または、早い段階で防止することが重要である。
【0003】
このため、受電変圧器には、二次側の回路の接地線にIoを検査する検査装置を設けるようにしている。ここで、Ioには、対地静電容量に起因する漏洩電流(以下、「Ioc」という。)と、絶縁抵抗に直接関与している対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流(以下、「Ior」という。)とが含まれている。
【0004】
例えば、特許文献1では、三相の電路の零相電流を検出する零相電流検出手段と、電路の電圧を検出する電圧検出手段と、零相電流及び電圧の中の第1及び第2の周波数成分を抽出するものであって第1の周波数成分は基本波又は第3次の整数倍の高調波成分以外の高調波成分であり第2の周波数成分は第3次の整数倍の高調波成分以外の高調波成分であってかつ第1の周波数成分とは異なるものである指定周波数成分抽出手段と、零相電流の中の第2の周波数成分を所定の補正電流に換算するとともに抽出された零相電流の中の第1の周波数成分、補正電流、三相のうちの任意の一つの相の電圧を基準電圧にして基準電圧に対する零相電流の中の第1及び第2の周波数成分の各位相差、零相電流の中の第1及び第2の周波数成分の周波数に基づき計算により三相のうちの二相の対地絶縁抵抗による漏れ電流を求めるものであって所定の補正電流は零相電流の中の第2の周波数成分を電圧の中の第2の周波数成分が電圧の中の第1の周波数成分に等しいとしたときの値に換算した電流である漏れ電流演算手段を備える絶縁監視装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、Iorは、二つの相のスカラー和で示される。しかしながら、二つの相でIorがどの程度の割合で発生しているのかが分からないと、Iorの問題箇所(Iorが発生している場所など)の特定、発生原因、定期検査時の変化などを捉えることが困難である。なお、二つの相とは、R相とT相、T相とS相、またはS相とR相の二つの相である。また、被測定電線路の検査または監視を行う際に、経時的な変化も含めて行いたいという要望もある。
【0007】
本開示では、Iocの変化を想定してIor測定結果における、二つの相のそれぞれに発生しているIor値を算出し、また、経時的な変化も含めて、Δ結線された被測定電線路の検査または監視を行うことができる検査装置、検査方法および検査プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の構成は、以下の通りである。
(1)第1相、第2相および第3相がΔ結線された被測定電線路に流れている漏洩電流を検出する漏洩電流検出部と、前記被測定電線路に印加されている電圧を検出する電圧検出部と、前記漏洩電流検出部により検出された漏洩電流と、前記電圧検出部により検出された電圧とに基づいて、位相角を検出する位相角検出部と、前記漏洩電流検出部により検出された漏洩電流と、前記位相角検出部により検出された位相角とに基づいて、前記被測定電線路に流れている漏洩電流に含まれている対地静電容量に起因する容量成分漏洩電流が取り得る範囲を算出する第1算出部と、前記第1算出部により算出された前記容量成分漏洩電流の取り得る範囲において、基準となる基準容量成分漏洩電流を決定する決定部と、第1測定時において、前記決定部により特定された前記基準容量成分漏洩電流と、前記位相角検出部により検出された第1位相角と、前記漏洩電流検出部により検出された第1漏洩電流とに基づいて、前記被測定電線路に流れている漏洩電流に含まれている対地絶縁抵抗に起因する第1抵抗成分漏洩電流を算出する第2算出部と、前記第1測定時から所定時間後の第2測定時において、前記決定部により特定された前記基準容量成分漏洩電流と、前記位相角検出部により検出された第2位相角と、前記漏洩電流検出部により検出された第2漏洩電流とに基づいて、前記被測定電線路に流れている漏洩電流に含まれている対地絶縁抵抗に起因する第2抵抗成分漏洩電流を算出する第3算出部と、前記第2算出部により算出された前記第1抵抗成分漏洩電流と、前記第3算出部により算出された前記第2抵抗成分漏洩電流とを比較して変化量を算出する変化量算出部とを備える検査装置。
(2)前記決定部は、前記第1算出部により算出された前記容量成分漏洩電流の取り得る範囲において、中央値を前記基準容量成分漏洩電流に決定する構成である(1)に記載の検査装置。
(3)前記決定部は、前記第1算出部により算出された前記容量成分漏洩電流の取り得る範囲において、任意の値を前記基準容量成分漏洩電流に決定する構成である(1)に記載の検査装置。
(4)前記第3算出部は、前回の測定において、前記変化量算出部により算出された変化量に差分がないか、または、その差分が所定の差分以下の場合には、前記所定間隔を延ばして次の測定を行う構成である(1)から(3)のいずれか1つに記載の検査装置。
(5)第1相、第2相および第3相がΔ結線された被測定電線路に流れている漏洩電流を検出する漏洩電流検出工程と、前記被測定電線路に印加されている電圧を検出する電圧検出工程と、前記漏洩電流検出工程により検出された漏洩電流と、前記電圧検出工程により検出された電圧とに基づいて、位相角を検出する位相角検出工程と、前記漏洩電流検出工程により検出された漏洩電流と、前記位相角検出工程により検出された位相角とに基づいて、前記被測定電線路に流れている漏洩電流に含まれている対地静電容量に起因する容量成分漏洩電流が取り得る範囲を算出する第1算出工程と、前記第1算出工程により算出された前記容量成分漏洩電流の取り得る範囲において、基準となる基準容量成分漏洩電流を決定する決定工程と、第1測定時において、前記決定工程により特定された前記基準容量成分漏洩電流と、前記位相角検出工程により検出された第1位相角と、前記漏洩電流検出工程により検出された第1漏洩電流とに基づいて、前記被測定電線路に流れている漏洩電流に含まれている対地絶縁抵抗に起因する第1抵抗成分漏洩電流を算出する第2算出工程と、前記第1測定時から所定時間後の第2測定時において、前記決定工程により特定された前記基準容量成分漏洩電流と、前記位相角検出工程により検出された第2位相角と、前記漏洩電流検出工程により検出された第2漏洩電流とに基づいて、前記被測定電線路に流れている漏洩電流に含まれている対地絶縁抵抗に起因する第2抵抗成分漏洩電流を算出する第3算出工程と、前記第2算出工程により算出された前記第1抵抗成分漏洩電流と、前記第3算出工程により算出された前記第2抵抗成分漏洩電流とを比較して変化量を算出する変化量算出工程とを備える検査方法。
(6)コンピュータに、第1相、第2相および第3相がΔ結線された被測定電線路に流れている漏洩電流を検出する漏洩電流検出工程と、前記被測定電線路に印加されている電圧を検出する電圧検出工程と、前記漏洩電流検出工程により検出された漏洩電流と、前記電圧検出工程により検出された電圧とに基づいて、位相角を検出する位相角検出工程と、前記漏洩電流検出工程により検出された漏洩電流と、前記位相角検出工程により検出された位相角とに基づいて、前記被測定電線路に流れている漏洩電流に含まれている対地静電容量に起因する容量成分漏洩電流が取り得る範囲を算出する第1算出工程と、前記第1算出工程により算出された前記容量成分漏洩電流の取り得る範囲において、基準となる基準容量成分漏洩電流を決定する決定工程と、第1測定時において、前記決定工程により特定された前記基準容量成分漏洩電流と、前記位相角検出工程により検出された第1位相角と、前記漏洩電流検出工程により検出された第1漏洩電流とに基づいて、前記被測定電線路に流れている漏洩電流に含まれている対地絶縁抵抗に起因する第1抵抗成分漏洩電流を算出する第2算出工程と、前記第1測定時から所定時間後の第2測定時において、前記決定工程により特定された前記基準容量成分漏洩電流と、前記位相角検出工程により検出された第2位相角と、前記漏洩電流検出工程により検出された第2漏洩電流とに基づいて、前記被測定電線路に流れている漏洩電流に含まれている対地絶縁抵抗に起因する第2抵抗成分漏洩電流を算出する第3算出工程と、前記第2算出工程により算出された前記第1抵抗成分漏洩電流と、前記第3算出工程により算出された前記第2抵抗成分漏洩電流とを比較して変化量を算出する変化量算出工程と、を実行させるための検査プログラム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、Iocの変化を想定してIor測定結果における、二つの相のそれぞれに発生しているIor値を算出し、また、経時的な変化も含めて、Δ結線された被測定電線路の検査または監視を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図2は、Iocの取り得る範囲についての説明に供する図である。
【
図3】
図3は、測定を行うタイミングを模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、t1において算出されたIor(r)、Ior(t)およびIor(rt)と、t2において算出されたIor(r)、Ior(t)およびIor(rt)を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、Iocの想定値を中央値(Ioc(rt)CEN)にした場合のベクトル図を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、検査方法の手順についての説明に供するフローチャートである。
【
図7】
図7は、コンピュータの第1構成例を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、コンピュータの第2構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0012】
図1は、検査装置1の構成を示す図である。検査装置1は、漏洩電流検出部11と、電圧検出部12と、位相角(位相)検出部13と、第1算出部14と、決定部15と、第2算出部16と、第3算出部17と、変化量算出部18とを備える。
【0013】
漏洩電流検出部11は、第1相、第2相および第3相がΔ(デルタ)結線された被測定電線路に流れている漏洩電流を検出する。以下では、第1相をR相と称し、第2相をT相と称し、第3相をS相と称するが、この称呼に限定されない。また、以下では、漏洩電流検出部11により計測される漏洩電流を「Io」と称するが、この称呼に限定されない。
【0014】
また、検査装置1は、3相(R相、S相、T相)の中からS相を接地するものとして説明するが、接地相は、R相またはT相でもよい。
【0015】
漏洩電流検出部11には、零相変流器(ZCT)10が接続されている。零相変流器10は、電線路を一括してクランプする構成である。例えば、零相変流器10は、ハンディータイプの貫通分割形零相変流器で構成されることにより、現場において作業者が簡易に電線路に設置することができる。
【0016】
漏洩電流検出部11は、零相変流器10により計測された信号から被測定電線路に流れているIoを検出(算出)する。
【0017】
電圧検出部12は、被測定電線路に印加されている電圧を検出する。
【0018】
位相角検出部13は、漏洩電流検出部11により検出された漏洩電流(Io)と、電圧検出部12により検出された電圧とに基づいて、位相角(θ)を検出する。具体的には、位相角検出部13は、漏洩電流検出部11により検出された漏洩電流(Io)の実効値と電圧検出部12により検出された電圧(例えば、基準電圧VT-R)の実効値とに基づいて、位相角(θ)を検出する。例えば、位相角検出部13は、基準電圧VT-Rの零クロスする点と漏洩電流(Io)の零クロスする点とに基づいて、基準電圧VT-Rと漏洩電流(Io)の位相角(θ)を検出する。
【0019】
第1算出部14は、漏洩電流検出部11により検出された漏洩電流(Io)と、位相角検出部13により検出された位相角(θ)とに基づいて、被測定電線路に流れている漏洩電流に含まれている対地静電容量に起因する容量成分漏洩電流(以下では、Iocと称する)が取り得る範囲を算出する。
【0020】
ここで、Iocの取り得る範囲について説明する。
図2は、Iocの取り得る範囲についての説明に供する図である。
【0021】
電圧検出部12でR相-T相間の電圧を検出し、検出した電圧から基準点を求めると、
図2に示すように、R相の軸は、基準点から60°の位置になり、T相の軸は、基準点から120°の位置になる。また、R相のIor(以下、Ior(r)と称する)は、基準点との位相差が60°であるので、Ior(r)は、R相の軸上に生じる。T相のIor(以下、Ior(t)と称する)は、基準点との位相差が120°であるので、Ior(t)は、T相の軸上に生じる。
【0022】
また、Ior(r)とIor(t)を合成(ベクトル合成)したIor(以下、Ior(rt)と称する)は、R相の軸とT相の軸の間(基準点から60°~120°の範囲)に生じる。
【0023】
また、R相のIoc(以下、Ioc(r)と称する)は、R相の軸から90°の位置に生じる。T相のIoc(以下、Ioc(t)と称する)は、T相の軸から90°の位置に生じる。Ioc(r)とIoc(t)が平衡状態の場合には、Ioc(r)とIoc(t)の合成(ベクトル合成)のIoc(以下では、Ioc(rt)と称する)は、基準軸の180°方向(
図2中の「-X」方向)に生じる。
【0024】
Ioは、Ior(rt)とIoc(rt)の合成(ベクトル合成)である。ここで、漏洩電流検出部11で検出されたIoが
図2に示す位置であった場合、Ior(rt)は、Ioの終点P1が属する線L(基準点の線と平行)上であって、基準点から60°~120°の範囲(
図2中のR1)に生じることになる。
【0025】
また、Ioの終点P1からIoc(rt)が生じている線に向かって垂線を下し、その交点を「P2」とすると、原点0から点P3がIoc(rt)の最大値(以下、Ioc(rt)MAXと称する)となる。なお、点P1と点P3と点P2のなす角は、60°である。また、原点0から点P4がIoc(rt)の最小値(以下、Ioc(rt)MINと称する)となる。なお、点P1と点P4と点P2のなす角は、60°である。
【0026】
なお、Ioc(rt)MAXとIoc(rt)MINは、基準軸の180°方向(-X方向)に生じるが、
図2では、説明のために異なる位置に示している。
【0027】
Ioc(rt)MINのときには、「Ior(rt)=Ior(t)」(Ior(r)=0)となる。Ioc(rt)MAXのときには、「Ior(rt)=Ior(r)」(Ior(t)=0)となる。
【0028】
よって、第1算出部14は、漏洩電流検出部11により検出されたIoと、位相角検出部13により検出された位相角(θ)とに基づいて、Ioc(rt)MINとIoc(rt)MAXとを算出する。Ioc(rt)の範囲は、Ioc(rt)MINとIoc(rt)MAXで挟まれた範囲(
図2中のR2)である。
【0029】
決定部15は、第1算出部14により算出されたIocの取り得る範囲において、基準となる基準容量成分漏洩電流(以下では、基準Iocと称する)を決定する。
【0030】
具体的には、決定部15は、第1算出部14により算出されたIocの取り得る範囲において、中央値を基準Iocに決定する構成でもよい。
【0031】
また、決定部15は、第1算出部14により算出されたIocの取り得る範囲において、任意の値を基準Iocに決定する構成でもよい。例えば、検査装置1は、情報を表示する表示部と、ユーザによる操作を受け付ける操作部を備える。ユーザは、表示部に表示されているIocの範囲の中から、任意の値を選択し、操作部を操作して入力する。
【0032】
第2算出部16は、第1測定時において、決定部15により特定された基準Iocと、位相角検出部13により検出された第1位相角と、漏洩電流検出部11により検出された第1漏洩電流とに基づいて、被測定電線路に流れている漏洩電流に含まれている対地絶縁抵抗に起因する第1抵抗成分漏洩電流を算出する。
【0033】
第1抵抗成分漏洩電流とは、基準Iocと、第1位相角と、第1漏洩電流とに基づいて算出される、Ior(r)と、Ior(t)と、Ior(rt)である。
【0034】
第3算出部17は、第1測定時から所定時間後の第2測定時において、決定部15により特定された基準Iocと、位相角検出部13により検出された第2位相角と、漏洩電流検出部11により検出された第2漏洩電流とに基づいて、被測定電線路に流れている漏洩電流に含まれている対地絶縁抵抗に起因する第2抵抗成分漏洩電流を算出する。
【0035】
第2抵抗成分漏洩電流とは、基準Iocと、第2位相角と、第2漏洩電流とに基づいて算出される、Ior(r)と、Ior(t)と、Ior(rt)である。
【0036】
変化量算出部18は、第2算出部16により算出された第1抵抗成分漏洩電流と、第3算出部17により算出された第2抵抗成分漏洩電流とを比較して変化量を算出する。
【0037】
ここで、第2算出部16と、第3算出部17と、変化量算出部18の動作について説明する。
図3は、測定を行うタイミングを模式的に示す図である。
図3では、測定を行うタイミングとしてt1、t2、t3、t4の4つを示しているが、4つに限定されない。
図4は、t1において算出されたIor(r)、Ior(t)およびIor(rt)(以下、各種のIorと称する場合がある)と、t2において算出された各種のIorを模式的に示す図である。
図4では、t3とt4において算出された各種のIorは示されていない。
【0038】
t1(第1測定時)において、第2算出部16は、基準Ioc(Ioc(rt)CEN)と、t1において測定された第1位相角(θ1)および第1漏洩電流(Io1)とに基づいて、Ior1(r)と、Ior1(t)と、Ior1(rt)を算出する。
【0039】
t2(第2測定時)において、第3算出部17は、基準Ioc(Ioc(rt)CEN)と、t2において測定された第2位相角(θ2)および第2漏洩電流(Io2)とに基づいて、Ior2(r)と、Ior2(t)と、Ior2(rt)を算出する。
【0040】
変化量算出部18は、Ior1(r)とIor2(r)との差分、Ior1(t)とIor2(t)との差分、および、Ior1(rt)とIor2(rt)との差分を算出する。
【0041】
また、t3において、第2算出部16は、基準Ioc(Ioc(rt)CEN)と、t3において測定された第3位相角(θ3)および第3漏洩電流(Io3)とに基づいて、Ior3(r)と、Ior3(t)と、Ior3(rt)を算出する。
【0042】
変化量算出部18は、t2において第3算出部17で算出したIor2(r)と、Ior2(t)と、Ior2(rt)を利用して、Ior2(r)とIor3(r)との差分、Ior2(t)とIor3(t)との差分、および、Ior2(rt)とIor3(rt)との差分を算出する。
【0043】
また、t4において、第3算出部17は、基準Ioc(Ioc(rt)CEN)と、t4において測定された第4位相角(θ4)および第4漏洩電流(Io4)とに基づいて、Ior4(r)と、Ior4(t)と、Ior4(rt)を算出する。
【0044】
変化量算出部18は、t3において第2算出部16で算出したIor3(r)と、Ior3(t)と、Ior3(rt)を利用して、Ior3(r)とIor4(r)との差分、Ior3(t)とIor4(t)との差分、および、Ior3(rt)とIor4(rt)との差分を算出する。
【0045】
検査装置1は、t4以降も上述と同様の処理を繰り返し行う。また、基準Iocは、各測定において変化させずに固定としている。これは、Iocは、あまり変化しないことを前提としている。なお、基準Iocは、固定ではなく、定期的に変化させてもよい。
【0046】
このようにして、検査装置1は、Iocの取り得る範囲を算出して、基準となるIocを定め、この基準Iocを用いて、各種のIorを算出し、前回算出した各種のIorと、今回算出した各種のIorの変化量を算出し、この変化量を利用して、Δ結線された被測定電線路の検査または監視を行うことができる。
【0047】
また、上述では、測定を行う間隔(所定時間)を等間隔で説明したが、等間隔でなくてもよい。具体的には、第3算出部17は、前回の測定において、変化量算出部18により算出された変化量に差分がないか、または、その差分が所定の差分以下の場合には、次の測定を行うタイミングを所定間隔よりも延ばす構成でもよい。このような構成によれば、検査装置1は、第1抵抗成分漏洩電流と第2抵抗成分漏洩電流の差分がないか、少ない場合には、測定を行うタイミングを延長できるので、第2算出部16、第3算出部17および変化量算出部18の処理負担の軽減を図ることができる。
【0048】
(演算式について)
つぎに、第2算出部16および第3算出部17においてIor(r)、Ior(t)およびIor(rt)を算出する具体的な手順について説明する。なお、Ior(r)、Ior(t)およびIor(rt)を算出する演算式は下記に限定されない。
【0049】
本実施例では、第1算出部14により算出したIocの取り得る範囲内でIoc値を想定することで、Iorの合成ベクトル(Ior(rt))が確定し、Ior(rt)の要素であるIor(r)とIor(t)を算出することができる。
【0050】
具体的には、デルタ結線の電路においてIor(rt)は、(1)を用いて算出することができる。
Ior(rt)=Io×sin(θ)/cos30° ・・・(1)
【0051】
Ior(t)は、(2)式で算出することができる。
Ior(t)=Ior(rt)-Ioc-(Io×sin(120°-θ/cos30°) ・・・(2)
【0052】
また、Ior(r)は、(3)式で算出することができる。
Ior(r)=Ior(rt)-Ior(t) ・・・(3)
【0053】
例えば、漏洩電流検出部11により検出された漏洩電流(Io)が「50.00(mA)」であり、位相角検出部13により検出された位相角(θ)が「110°」であった場合を例にして説明する。ここで、デルタ結線の電路においてIorは、(1)式を用いて算出することができる。
【0054】
Ioとθを(1)式に代入して、Iorを算出する。
Ior(rt)=50×10-3×sin110°/cos30°=54.253(mA)
【0055】
また、「Io=50.00(mA)」、「θ=110°」のときのIoc(rt)の最小値(Ioc(rt)MIN)は、「-10.026(mA)」であり、Ioc(rt)の最大値(Ioc(rt)MAX)は、「44.228(mA)」であり、Ioc(rt)の中央値(Ioc(rt)CEN)は、「((-10.026+44.228)/2=)17.101(mA)」である。
【0056】
なお、Ioc(rt)がマイナスの値の場合には、Ioc(rt)MINを「0(mA)」とする。
【0057】
つぎに、Iocの想定値を中央値(Ioc(rt)CEN)にした場合について検討する。
図5は、Iocの想定値を中央値(Ioc(rt)CEN)にした場合のベクトル図を模式的に示す図である。Ioc(rt)CENは、上述したように、「17.101(mA)」である。
【0058】
Ior(t)は、(2)式から以下のように算出される。
Ior(t)=27.13 (mA)
【0059】
また、Ior(r)は、(3)式から以下のように算出される。
Ior(r)=27.13 (mA)
【0060】
(検査方法について)
ここで、検査装置1による検査方法について説明する。
図6は、検査方法の手順についての説明に供するフローチャートである。
【0061】
ステップST1において、漏洩電流検出部11は、第1相、第2相および第3相がΔ結線された被測定電線路に流れている漏洩電流を検出する(漏洩電流検出工程)。
【0062】
ステップST2において、電圧検出部12は、被測定電線路に印加されている電圧を検出する(電圧検出工程)。
【0063】
ステップST3において、位相角検出部13は、漏洩電流検出工程により検出された漏洩電流と、電圧検出工程により検出された電圧とに基づいて、位相角を検出する(位相角検出工程)。
【0064】
ステップST4において、第1算出部14は、漏洩電流検出工程により検出された漏洩電流と、位相角検出工程により検出された位相角とに基づいて、被測定電線路に流れている漏洩電流に含まれている対地静電容量に起因する容量成分漏洩電流が取り得る範囲を算出する(第1算出工程)。
【0065】
ステップST5において、決定部15は、第1算出工程により算出された容量成分漏洩電流の取り得る範囲において、基準となる基準容量成分漏洩電流を決定する(決定工程)。
【0066】
ステップST6において、第2算出部16は、第1測定時において、決定工程により特定された基準容量成分漏洩電流と、位相角検出工程により検出された第1位相角と、漏洩電流検出工程により検出された第1漏洩電流とに基づいて、被測定電線路に流れている漏洩電流に含まれている対地絶縁抵抗に起因する第1抵抗成分漏洩電流を算出する(第2算出工程)。
【0067】
ステップST7において、第3算出部17は、第1測定時から所定時間後の第2測定時において、決定工程により特定された基準容量成分漏洩電流と、位相角検出工程により検出された第2位相角と、漏洩電流検出工程により検出された第2漏洩電流とに基づいて、被測定電線路に流れている漏洩電流に含まれている対地絶縁抵抗に起因する第2抵抗成分漏洩電流を算出する(第3算出工程)。
【0068】
ステップST8において、変化量算出部18は、第2算出工程により算出された第1抵抗成分漏洩電流と、第3算出工程により算出された第2抵抗成分漏洩電流とを比較して変化量を算出する(変化量算出工程)。
【0069】
このようにして、検査方法は、Iocの取り得る範囲を算出して、基準となるIocを定め、この基準Iocを用いて、各種のIorを算出し、前回算出した各種のIorと、今回算出した各種のIorの変化量を算出し、この変化量を利用して、Δ結線された被測定電線路の検査または監視を行うことができる。
【0070】
(検査プログラムについて)
Iocの取り得る範囲を算出して、基準となるIocを定め、この基準Iocを用いて、各種のIorを算出し、前回算出した各種のIorと、今回算出した各種のIorの変化量を算出し、この変化量を利用して、Δ結線された被測定電線路の検査または監視を行う検査プログラムは、主に以下の工程で構成されており、コンピュータ500(ハードウェア)によって実行される。
【0071】
工程1:第1相、第2相および第3相がΔ結線された被測定電線路に流れている漏洩電流を検出する(漏洩電流検出工程)
工程2:被測定電線路に印加されている電圧を検出する(電圧検出工程)
工程3:漏洩電流検出工程により検出された漏洩電流と、電圧検出工程により検出された電圧とに基づいて、位相角を検出する(位相角検出工程)
工程4:漏洩電流検出工程により検出された漏洩電流と、位相角検出工程により検出された位相角とに基づいて、被測定電線路に流れている漏洩電流に含まれている対地静電容量に起因する容量成分漏洩電流が取り得る範囲を算出する(第1算出工程)
工程5:第1算出工程により算出された容量成分漏洩電流の取り得る範囲において、基準となる基準容量成分漏洩電流を決定する(決定工程)
工程6:第1測定時において、決定工程により特定された基準容量成分漏洩電流と、位相角検出工程により検出された第1位相角と、漏洩電流検出工程により検出された第1漏洩電流とに基づいて、被測定電線路に流れている漏洩電流に含まれている対地絶縁抵抗に起因する第1抵抗成分漏洩電流を算出する(第2算出工程)
工程7:第1測定時から所定時間後の第2測定時において、決定工程により特定された基準容量成分漏洩電流と、位相角検出工程により検出された第2位相角と、漏洩電流検出工程により検出された第2漏洩電流とに基づいて、被測定電線路に流れている漏洩電流に含まれている対地絶縁抵抗に起因する第2抵抗成分漏洩電流を算出する(第3算出工程)
工程8:第2算出工程により算出された第1抵抗成分漏洩電流と、第3算出工程により算出された第2抵抗成分漏洩電流とを比較して変化量を算出する(変化量算出工程)
【0072】
ここで、コンピュータ500の構成と動作について図を用いて説明する。コンピュータ500は、
図7に示すように、プロセッサ501と、メモリ502と、ストレージ503と、入出力I/F504と、通信I/F505とがバスA上に接続されて構成されており、これらの各構成要素の協働により、本開示に記載される機能、および/または、方法を実現する。
【0073】
入出力I/F504には、例えば、各種の情報を表示するディスプレイ、および、ユーザの操作を受け付けるタッチパネルなどが接続される。タッチパネルは、ディスプレイの前面に配置される。よって、ユーザは、ディスプレイに表示されるアイコンを指でタッチ操作などをすることにより、直感的な操作を行うことができる。なお、タッチパネルは、ディスプレイの前面に配置されていなくてもよい。また、タッチパネルに代えて、または、タッチパネルと共に、キーボードおよびマウスなどのポインティングデバイスが入出力I/F504に接続される構成でもよい。また、入出力I/F504には、外部に音声を出力するスピーカや、外部の音声が入力されるマイクが接続されてもよい。
【0074】
ディスプレイは、液晶ディスプレイまたは有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどにより構成され、プロセッサ501による制御の下、種々の情報を表示する。
【0075】
メモリ502は、RAM(Random Access Memory)で構成される。RAMは、揮発メモリまたは不揮発性メモリで構成されている。
【0076】
ストレージ503は、ROM(Read Only Memory)で構成される。ROMは、不揮発性メモリで構成されており、例えば、HDD(Hard Disc Drive)またはSSD(Solid State Drive)により実現される。ストレージ503には、上述した工程1から工程8で実現される検査プログラムなどの各種のプログラムが格納されている。
【0077】
例えば、プロセッサ501は、コンピュータ500全体の動作を制御する。プロセッサ501は、ストレージ503からオペレーティングシステムや多様な機能を実現する様々なプログラムをメモリ502にロードし、ロードしたプログラムに含まれる命令を実行する演算装置である。
【0078】
具体的には、プロセッサ501は、ユーザの操作を受け付けた場合、ストレージ503に格納されているプログラム(例えば、検査プログラム)を読み出し、読み出したプログラムをメモリ502に展開し、プログラムを実行する。また、プロセッサ501が検査プログラムを実行することにより、漏洩電流検出部11、電圧検出部12、位相角検出部13、第1算出部14、決定部15、第2算出部16、第3算出部17および変化量算出部18の各機能が実現される。
【0079】
ここで、プロセッサ501の構成について説明する。プロセッサ501は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、これら以外の各種演算装置、またはこれらの組み合わせにより実現される。
【0080】
また、本開示に記載される機能、および/または、方法を実現するために、プロセッサ501、メモリ502およびストレージ503などの機能の一部または全部は、
図8に示すように、専用のハードウェアである処理回路601で構成されてもよい。処理回路601は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、並列プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はこれらを組み合わせたものである。
【0081】
また、プロセッサ501は、単一の構成要素として説明したが、これに限られず、複数の物理的に別体のプロセッサの集合により構成されてもよい。本明細書において、プロセッサ501によって実行されるとして説明されるプログラムまたは当該プログラムに含まれる命令は、単一のプロセッサ501で実行されてもよいし、複数のプロセッサにより分散して実行されてもよい。また、プロセッサ501によって実行されるプログラムまたは当該プログラムに含まれる命令は、複数の仮想プロセッサにより実行されてもよい。
【0082】
通信I/F505は、所定の通信規格に準拠したインターフェイスであり、有線または無線により外部装置と通信を行う。
【0083】
このようにして、検査プログラムは、コンピュータ500で実行されることにより、Iocの取り得る範囲を算出して、基準となるIocを定め、この基準Iocを用いて、各種のIorを算出し、前回算出した各種のIorと、今回算出した各種のIorの変化量を算出し、この変化量を利用して、Δ結線された被測定電線路の検査または監視を行うことができる。
【符号の説明】
【0084】
1 検査装置
10 零相変流器
11 漏洩電流検出部
12 電圧検出部
13 位相角検出部
14 第1算出部
15 決定部
16 第2算出部
17 第3算出部
18 変化量算出部