(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】位置検出装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/244 20060101AFI20241113BHJP
G01D 5/245 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
G01D5/244 K
G01D5/245 110M
G01D5/245 M
(21)【出願番号】P 2021015450
(22)【出願日】2021-02-03
【審査請求日】2024-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】野口 直之
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/121803(WO,A1)
【文献】特開2001-41730(JP,A)
【文献】特開2013-19802(JP,A)
【文献】特開2004-347504(JP,A)
【文献】特開平2-36313(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0158537(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置を示すための目盛りを具備する標示部と、前記目盛りを読み取る読取部とを備え、所定の直線軌道上における前記読取部と前記
標示部との相対位置変化に伴って前記読取部から出力される正弦波信号及び余弦波信号に基づいて、前記標示部又は前記読取部の前記直線軌道上における位置を検出する位置検出装置であって、
前記正弦波信号及び前記余弦波信号のうち、少なくとも何れか一方のピークの平均に相当する電圧である平均相当電圧の信号を生成する平均信号生成部と、
知覚可能な所定の知覚信号を出力し、且つ、前記平均相当電圧について、所定の範囲内にある場合と、前記範囲内にない場合とで、前記知覚信号の出力状態を変化させる知覚信号出力部とを備え
、
前記平均信号生成部が、前記正弦波信号に全波整流を施した全波整流信号と、前記余弦波信号に全波整流を施した全波整流信号とを重畳した重畳波信号を、前記平均相当電圧の信号として出力する、
ことを特徴とする位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の位置を検出する位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、位置を示すための目盛りを具備する標示部と、目盛りを読み取る読取部とを備え、直線軌道上での読取部と指標部との相対位置変化に伴って読取部から出力される正弦波信号及び余弦波信号に基づいて、標示部又は読取部の位置を検出する位置検出装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の位置検出装置としての磁気式リニアエンコーダは、標示部たる磁気スケールと、読取部たる磁気抵抗素子とを備える。磁気スケールは、直線状に延びるリニアスケールである。磁気抵抗素子は、磁気センサ装置のホルダ内に固定される。磁気スケール及び磁気センサ装置のうち、何れか一方は、磁気スケールの延在方向に移動する。磁気スケールは、スケール延在方向に沿って延びる目盛りとしての磁気トラックを備える。磁気トラックは、着磁した着磁領域と無着磁の無着磁領域とを備える。磁気抵抗素子は、磁気スケール又は磁気センサ装置の移動に伴って、正弦波信号及び余弦波信号を出力する。磁気センサ装置の演算処理部は、磁気抵抗素子から出力される正弦波信号及び余弦波信号に基づいて、磁気スケール又は磁気センサ装置の絶対位置を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の磁気式リニアエンコーダでは、機械に対する磁気スケール又は磁気センサ装置の組み付け誤差により、磁気スケール表面と磁気抵抗素子とのギャップが、所定の許容範囲を超えて広くなったり、狭くなったりすると、位置を精度良く検出することができなくなる。このため、磁気スケール及び磁気センサ装置の組み付け時に、ギャップについて許容範囲内に収まっているか否かを確認しつつ、必要に応じて組み付け位置を修正することが望ましい。
【0006】
磁気スケール表面と磁気抵抗素子とのギャップについて、許容範囲内にあるか否かを確認する方法として、上述の正弦波信号や余弦波信号のピーク変動をデジタル処理によって解析する方法が考えられる。具体的には、磁気抵抗素子からアナログ信号として出力される正弦波信号や余弦波信号をデジタル処理によってデジタル信号に変換し、変換結果に演算処理を施して得られる波形の各ピークの値に基づいて、ギャップの平均値を求めるのである。かかる方法によれば、ギャップの平均値を精度よく解析することが可能であるが、デジタル・アナログ変換器やデジタル演算装置などを新たに付設する必要があることから、コスト高になってしまうという課題がある。
【0007】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、正弦波信号や余弦波信号をデジタル処理することなく、磁気スケール等の標示部と、読取部とのギャップについて許容範囲内にあるか否かを容易に確認することができる位置検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、位置を示すための目盛りを具備する標示部と、前記目盛りを読み取る読取部とを備え、所定の直線軌道上における前記読取部と前記標示部との相対位置変化に伴って前記読取部から出力される正弦波信号及び余弦波信号に基づいて、前記標示部又は前記読取部の前記直線軌道上における位置を検出する位置検出装置であって、前記正弦波信号及び前記余弦波信号のうち、少なくとも何れか一方のピークの平均に相当する電圧である平均相当電圧の信号を生成する平均信号生成部と、知覚可能な所定の知覚信号を出力し、且つ、前記平均相当電圧について、所定の範囲内にある場合と、前記範囲内にない場合とで、前記知覚信号の出力状態を変化させる知覚信号出力部とを備え、前記平均信号生成部が、前記正弦波信号に全波整流を施した全波整流信号と、前記余弦波信号に全波整流を施した全波整流信号とを重畳した重畳波信号を、前記平均相当電圧の信号として出力する、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、正弦波信号や余弦波信号をデジタル処理することなく、標示部と読取部とのギャップについて許容範囲内にあるか否かを容易に確認することができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る磁気式エンコーダ装置を示す斜視図である。
【
図2】同磁気式エンコーダ装置の磁気スケールの一部を示す平面図である。
【
図3】同磁気式エンコーダ装置の磁気センサを示す平面図である。
【
図4】同磁気式エンコーダ装置の電気回路の一部、及び磁気スケールを示すブロック図である。
【
図5】同磁気式エンコーダ装置の組付誤差検出部の電気回路を示すブロック図である。
【
図6】同磁気式エンコーダ装置においてセンサ組み付けが精度良く行われている場合における各種信号の波形を示す波形図である。
【
図7】同磁気式エンコーダ装置においてセンサ組み付けが精度良く行われていない場合における各種信号の波形を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る位置検出装置としての磁気式エンコーダ装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面においては、各構成をわかり易くするために、実際の構造、並びに、各構造における縮尺及び数、などを異ならせる場合がある。
【0012】
まず、実施形態に係る磁気式エンコーダ装置の基本的な構成について説明する。
図1は、実施形態に係る磁気式エンコーダ装置を示す斜視図である。また、
図2は、磁気式エンコーダ装置の磁気スケールの一部を示す平面図である。
【0013】
図1に示されるように、磁気式エンコーダ装置1は、磁気スケール2と、磁気スケール2を読み取る磁気センサ装置3とを備える。標示部としての磁気スケール2は、直線状に延びる形状のリニアスケールである。磁気スケール2及び磁気センサ装置3は、産業用ロボットなどの機械に搭載される。機械は、直線軌道に沿って往復移動可能な移動体を備え、磁気スケール2は、その軌道に沿って真っすぐに延びる態様で機械に固定される。磁気スケール2と磁気センサ装置3とのうち、何れか一方は機械の移動体に固定され、移動体とともに直線軌道上を往復移動する。
【0014】
磁気スケール2は、スケール延在方向に沿って延びる磁気トラック5を備える。機械の移動体が移動すると、磁気センサ装置3が磁気スケール2の表面に形成された磁界の磁気変化を検出して、磁気スケール2又は磁気センサ装置3の絶対位置の信号を出力する。なお、以下、移動体の移動方向をX方向、X方向と直交し且つ磁気スケール2の表面に沿った方向をY方向として、磁気式エンコーダ装置1の構成を説明する。
【0015】
磁気センサ装置3は、非磁性材料からなるホルダ7と、ホルダ7から延びるケーブル8と、読取部たる磁気センサ10とを備える。ホルダ7において、磁気スケール2と対向する対向面9には、開口部9aが設けられる。磁気センサ10は、開口部9aと対向する姿勢で、ホルダ7内に固定される。
【0016】
図3は、磁気式エンコーダ装置1の磁気センサを示す平面図である。磁気センサ10は、シリコン基板、セラミックグレース基板等からなるセンサ基板11を備える。センサ基板11は、磁気スケール(
図2の2)と対向する基板面に形成された第1感磁素子12及び第2感磁素子13を備える。第1感磁素子12、第2感磁素子13のそれぞれは、例えば、パーマロイ膜を感磁膜として具備する磁気抵抗素子を有するものである。第1感磁素子12及び第2感磁素子13のそれぞれは、磁気スケール2と所定の隙間を介して対向する。
【0017】
図2に示されるように、磁気スケール2の磁気トラック5は、X方向に沿って延びるアブソリュートトラック15と、X方向に沿って延びるインクリメンタルトラック16とを備える。アブソリュートトラック15と、インクリメンタルトラック16とは、Y方向に沿って並ぶ態様で磁気スケール2に配置される。
【0018】
絶対指標目盛りとしてのアブソリュートトラック15は、互いにY方向に沿って並ぶ第1アブソリュートトラック21及び第2アブソリュートトラック22を備える。インクリメンタルトラック16は、互いにY方向に沿って並ぶ第1インクリメンタルトラック17及び第2インクリメンタルトラック18を備える。
【0019】
第1アブソリュートトラック21は、X方向に沿って並ぶ複数の第1アブソリュートパターン21aを備える。複数の第1アブソリュートパターン21aのそれぞれは、着磁した領域であり、1組のN極及びS極を備える。
図2において、符号P1は、第1アブソリュートパターン21aのX方向の長さを示す(以下、この長さを第1長さP1と言う)。互いに隣り合う第1アブソリュートパターン21aの間には、無着磁の領域が配置される。複数の無着磁領域のそれぞれにおけるX方向の長さは、ランダムである。
【0020】
アブソリュートトラック15の第2アブソリュートトラック22は、複数の第2アブソリュートパターン22aを備える。第2アブソリュートトラック22において、X方向における無着磁領域の長さの変化パターンは、第1アブソリュートトラック21と同様である。但し、第2アブソリュートパターン22aは、X方向において第1アブソリュートパターン21aよりも第2長さP2だけずれた位置に配置される。第2長さP2は、第1長さP1の半分である。
【0021】
第1アブソリュートトラック15及び第2アブソリュートトラック22のそれぞれは、連続するn組分の着磁領域及び無着磁領域の配列によって絶対位置を示すM系列の不規則循環乱数コードを表現する。より具体的には、着磁領域を論理値の1とし、無着磁領域を論理値の0としたときに、連続するn組分の1と0との配列によってM系列の不規則循環乱数コード値で示す。
【0022】
第1インクリメンタルトラック17は、複数の第1インクリメンタルパターン17aを備える。それぞれの第1インクリメンタルパターン17aは、X方向に並ぶ1組のN極及びS極を備える。第1インクリメンタルパターン17aのX方向の長さは、第2長さP2である。第1インクリメンタルトラック17においては、X方向において、N極とS極とが交互に並ぶ。
【0023】
第2インクリメンタルトラック18は、複数の第2インクリメンタルパターン18aを備える。それぞれの第2インクリメンタルパターン18aは、X方向に並ぶN極及びS極を備える。第2インクリメンタルパターン18aのX方向の長さは、第2長さP2である。第2インクリメンタルトラック18においては、X方向において、N極とS極とが交互に並ぶ。第2インクリメンタルトラック18におけるN極とS極との着磁の順序は、第1インクリメンタルトラック17とは逆である。Y方向において、第1インクリメンタルパターン17aのN極と、第2インクリメンタルパターン18aのS極とが隣り合い、且つ第1インクリメンタルパターン17aのS極と第2インクリメンタルパターン18aのN極とが隣り合う。
【0024】
磁気センサ10のセンサ基板11は、
図3に示されるように、磁気スケール2と対向する基板面に、アブソリュート信号生成用の第1感磁素子12と、インクリメンタル信号生成用の第2感磁素子13とを備える。第1感磁素子12と第2感磁素子13とは、互いにY方向に並ぶ。
【0025】
第1感磁素子12は、第1アブソリュートトラック21の磁気を検出するための第1磁気抵抗パターン31と、第2アブソリュートトラック22の磁気を検出するための第2磁気抵抗パターン32とを備える。第1磁気抵抗パターン31及び第2磁気抵抗パターン32のそれぞれは、X方向に延在し、且つ互いにY方向に並ぶ。第1磁気抵抗パターン31は第1アブソリュートトラック21と対向し、第2磁気抵抗パターン32は第2アブソリュートトラック22と対向する。
【0026】
第1磁気抵抗パターン31及び第2磁気抵抗パターン32のそれぞれは、X方向に感磁方向を向けた姿勢でX方向に配列された複数の磁気抵抗素子を備える。複数の磁気抵抗素子は、第1長さP1のピッチで配列されている。第1磁気抵抗パターン31は、X方向において連続する第1アブソリュートパターン21aの複数の領域のそれぞれの磁界を順次に検出してM系列の第1アブソリュート信号を出力する。同様に、第2磁気抵抗パターン32は、X方向において連続する第2アブソリュートパターン22aの複数の領域のそれぞれの磁界を順次に検出してM系列の第2アブソリュート信号を出力する。
【0027】
第2感磁素子13は、正弦波信号たるSIN+信号を生成する磁気抵抗パターン34(+a)、及び余弦波信号たるCOS+信号を生成する磁気抵抗パターン34(+b)を備える。また、第2感磁素子13は、正弦波信号たるSIN-信号を生成する磁気抵抗パターン34(-a)、及び余弦波信号たるCOS-信号を生成する磁気抵抗パターン34(-b)を備える。SIN+信号生成用の磁気抵抗パターン34(+a)と、COS-信号生成用の磁気抵抗パターン34(-b)とは、互いにX方向に並ぶ。また、COS+信号生成用の磁気抵抗パターン34(+b)と、SIN-信号生成用の磁気抵抗パターン34(-a)とは、互いにX方向に並ぶ。SIN+信号生成用の磁気抵抗パターン34(+a)と、COS+信号生成用の磁気抵抗パターン34(+b)とは、互いにY方向に並ぶ。COS-信号生成用の磁気抵抗パターン34(-b)と、SIN-信号生成用の磁気抵抗パターン34(-a)とは、互いにY方向に並ぶ。SIN+信号生成用の磁気抵抗パターン34(+a)、及びCOS-信号生成用の磁気抵抗パターン34(-b)は、第1インクリメンタルトラック17と対向し、SIN+信号生成用の磁気抵抗パターン34(+a)、及びCOS-信号生成用の磁気抵抗パターン34(-b)は、第2インクリメンタルトラック18と対向する。
【0028】
機械の移動体の移動に伴い、磁気抵抗パターン34(+a)から出力される信号と、磁気抵抗パターン34(+b)から出力される信号とは、互いに90°の位相差を有する。また、磁気抵抗パターン34(-a)から出力される信号と、磁気抵抗パターン34(-b)から出力される信号とは、互いに90°の位相差を有する。また、磁気抵抗パターン34(+a)から出力される信号と、磁気抵抗パターン34(-a)から出力される信号とは、互いに180°の位相差を有する。また、磁気抵抗パターン34(+b)から出力される信号と、磁気抵抗パターン34(-b)から出力される信号とは、互いに180°の位相差を有する。
【0029】
図4は、磁気式エンコーダ装置1の電気回路の一部、及び磁気スケール2を示すブロック図である。磁気センサ装置3は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read only memory)、RAM(Random access memory)等を具備する演算処理部40を備える。演算部としての演算処理部40は、センサ基板11に実装されている。演算処理部40の入力側には、アブソリュート信号生成用の第1感磁素子12、及びインクリメンタル信号生成用の第2感磁素子13が接続されている。演算処理部40は、アブソリュート値取得部41、インクリメンタル信号取得部42、絶対位置を算出する算出部44、組付誤差検出部90等を備える。アブソリュート値取得部41は、第1アブソリュート値取得部45と、第2アブソリュート値取得部46とを備える。
【0030】
アブソリュート信号生成用の第1感磁素子12の第1磁気抵抗パターン31と、第1アブソリュート値取得部45とは、第1アブソリュートトラック21を読み取って第1アブソリュート値ABS1を出力する第1アブソリュート値出力部37を構成する。アブソリュート信号生成用の第1感磁素子12の第2磁気抵抗パターン32と、第2アブソリュート値取得部46とは、第2アブソリュートトラック22を読み取って第2アブソリュート値ABS2を出力する第2アブソリュート値出力部38を構成する。インクリメンタル信号生成用の第2感磁素子13とインクリメンタル信号取得部42とは、インクリメンタルトラック16を読み取ってインクリメンタル信号INCを出力するインクリメンタル信号出力部39を構成する。
【0031】
第1アブソリュート値取得部45は、第1磁気抵抗パターン31から出力されるM系列の第1アブソリュート信号(読取結果)に基づいて第1不規則循環乱数コードCODE1を取得する。次に、第1アブソリュート値取得部45は、取得した第1不規則循環乱数コードCODE1を整数の数列に置き換えて第1アブソリュート値ABS1を取得する。第1アブソリュート値取得部45が第1アブソリュート値ABS1を取得すると、第1アブソリュート値出力部37は第1アブソリュート値ABS1を出力する。
【0032】
第2アブソリュート値取得部46は、第2磁気抵抗パターン32から出力されるM系列の第2アブソリュート信号(読取結果)に基づいて第2不規則循環乱数コードCODE2を取得する。そして、第2アブソリュート値取得部46は、取得した第2不規則循環乱数コードCODE2を整数の数列に置き換えて第2アブソリュート値ABS2を取得する。第2アブソリュート値取得部46が第2アブソリュート値ABS2を取得すると、第2アブソリュート値出力部38は第2アブソリュート値ABS2を出力する。第1アブソリュート値出力部37から出力される第1アブソリュート値ABS1と、第2アブソリュート値出力部38から出力される第2アブソリュート値ABS2とは、機械の移動体の移動に伴い、第2長さP2に相当する時間分だけずれて出力される。
【0033】
インクリメンタル信号取得部42は、SIN+信号生成用の磁気抵抗パターン34(+
a)からの信号と、SIN-信号生成用の磁気抵抗パターン34(-a)からの信号とに
基づいて正弦波信号を取得する。また、インクリメンタル信号取得部42は、COS+信
号生成用の磁気抵抗パターン34(+b)からの信号と、COS-信号生成用の磁気抵抗
パターン34(-b)からの信号とに基づいて余弦波信号を取得する。さらに、インクリ
メンタル信号取得部42は、正弦波信号および余弦波信号に基づいて、ゼロから所定の最
大値まで変化する周期的なインクリメンタル信号INCを生成する。インクリメンタル信
号取得部42によりインクリメンタル信号INCが生成されると、インクリメンタル信号
出力部39は、インクリメンタル信号INCを出力する。
【0034】
算出部44は、第1アブソリュート値ABS1、第2アブソリュート値ABS2、及びインクリメンタル信号C_INCに基づいて、絶対位置を算出する。具体的には、算出部44は、インクリメンタル信号C_INCが0となる時点から補正インクリメンタル信号C_INCがゼロと最大値の中央値に達するまでの期間において絶対位置の算出に第1アブソリュート値ABS1を用いる。また、算出部44は、インクリメンタル信号C_INCが中央値となったから補正インクリメンタル信号C_INCが最大値に達するまでの期間T2において絶対位置の算出に第2アブソリュート値ABS2を用いる。
【0035】
以上のように、演算処理部40は、正弦波信号(SIN信号)と、余弦波信号(COS信号)とに基づいて、絶対位置を検出する。
【0036】
次に、実施形態に係る磁気式エンコーダ装置1の特徴的な構成について説明する。
図4に示されるように、演算処理部40においては、インクリメンタル信号取得部42が組付誤差検出部90に対してSIN信号(正弦波信号)及びCOS信号(余弦波信号)を出力する。
【0037】
図5は、組付誤差検出部90の電気回路を示すブロック図である。組付誤差検出部90は、基準電圧生成部91、第1全波整流処理部92、第2全波整流処理部93、ローパスフィルタ94、コンパレータ95、及び発光部96を備える。
【0038】
基準電圧生成部91は、出力電圧を安定化させるための第1コンデンサC1及び第1オペアンプOA1を備える。第1コンデンサC1は、入力電圧Viを安定化させる役割を担う。入力電圧Viが入力される第1オペアンプOA1からは、安定化した基準電圧VREFが出力される。
【0039】
インクリメンタル信号取得部42から送られてくるCOS信号は、第1全波整流処理部92に入力される。第1全波整流処理部92は、第1抵抗R1、第2オペアンプOA2、第2抵抗R2、第1ダイオードD1、第2ダイオードD2、及び第1チップ抵抗器RA1を備える。第2オペアンプOA2の反転入力端子(マイナス(-)端子)には、第1抵抗R1を経由したCOS信号が入力され、非反転入力端子(プラス(+)端子)には、基準電圧VREFが入力される。第1全波整流処理部92は、第1ダイオードD1及び第2ダイオードD2のそれぞれにおいて正方向にしか電流を流さない特性を利用して、次のような処理を行う。即ち、COS信号における基準電圧VREFよりもプラス側の波形部分を、そのままの形で出力する一方で、マイナス側の波形部分を、プラス側に反転させて出力する。以下、全波整流処理部を経由した信号を、全波整流信号と言う。
【0040】
インクリメンタル信号取得部42から送られてくるSIN信号は、第2全波整流処理部93に入力される。第2全波整流処理部93は、第3抵抗R3、第3オペアンプOA3、第4抵抗R4、第3ダイオードD3、第4ダイオードD4、及び第2チップ抵抗器RA2を備える。第3オペアンプOA3の反転入力端子(マイナス(-)端子)には、第3抵抗R3を経由したSIN信号が入力され、非反転入力端子(プラス(+)端子)には、基準電圧VREFが入力される。第2全波整流処理部93は、第3ダイオードD3及び第4ダイオードD4のそれぞれにおいて正方向にしか電流を流さない特性を利用して、次のような処理を行う。即ち、SIN信号における基準電圧VREFよりもプラス側の波形部分を、そのままの形で出力する一方で、マイナス側の波形部分を、プラス側に反転させて出力する。
【0041】
第1全波整流処理部92によって得られた全波整流信号、及び第2全波整流処理部93によって得られた全波整流信号は、互いに重畳されて重畳波信号となった後、ローパスフィルタ94に入力される。ローパスフィルタ94は、第2コンデンサC2と、第5抵抗R5と、第4オペアンプOA4とを備える。ローパスフィルタ94に入力された重畳波信号は、ローパスフィルタ94を経由することでノイズが除去される。
【0042】
ローパスフィルタ94を経由した重畳波信号は、コンパレータ95に入力される。コンパレータ95は、第6抵抗R6、第7抵抗R7、第8抵抗R8、第5オペアンプOA5、及び第9抵抗R9を備える。第5オペアンプOA5のマイナス(-)端子には、しきい値電圧Vthが入力される。また、第5オペアンプOA5のプラス(+)端子には、第8抵抗R8を経由した重畳波信号が入力される。コンパレータ95のプラス(+)端子に入力される重畳波信号がしきい値電圧Vthよりも高い場合(重畳波信号>しきい値電圧Vth)、コンパレータ95は、所定のHigh電圧を出力する。一方、コンパレータ95のプラス(+)端子に入力される重畳波信号がしきい値電圧Vthよりも高い場合(重畳波信号<しきい値電圧Vth)、コンパレータ95は、所定のLow電圧を出力する。
【0043】
コンパレータ95から出力されるHigh電圧又はLow電圧は、発光部96に入力される。発光部96は、緑色に発光する緑LEDと、赤色に発光する赤LEDとを備える。発光部96にHigh電圧が入力された場合には、緑LEDと赤LEDとの両方が点灯する。これにより、緑と赤との混色による黄色光が発光部96から発せられる。一方、発光部96にLow電圧が入力された場合には、緑LEDと赤LEDとのうち、赤LEDだけが点灯する。これにより、発光部96から赤色光が発せられる。
【0044】
図6は、機械に対する磁気スケール2の組み付け、及び磁気センサ装置3の組み付け(以下、これらの組み付けをまとめてセンサ組み付けと言う)が精度良く行われている場合における各種信号の波形を示す波形図である。磁気スケール2の表面と、磁気センサ10とのギャップが大きくなるほど、磁気センサ10によって検出される磁気が弱くなることから、SIN波のピーク値、及びCOS波のピーク値のそれぞれが低くなる。センサ組み付けが精度良く行われている場合には、COS信号及びSIN信号のそれぞれにおいて、適切な振幅の波形(正弦波、余弦波)が得られる。即ち、磁気スケール2表面と磁気センサ10とのギャップが許容範囲内に収まる。同図において、3つ示されるグラフ座標のうち、一番上のグラフ座標には、COS信号の波形と、COS信号に全波整流処理を施した全波整流信号(FWR(COS))の波形とが示されている。全波整流信号(FWR(COS)の波形においては、互いに隣り合う2つの+側のピークの間における谷部の一部領域が、マイナス側の反転波形部によって埋められている。
【0045】
同図において、3つ示されるグラフ座標のうち、真ん中のグラフ座標には、SIN信号の波形と、SIN信号に全波整流処理を施した全波整流信号(FWR(SIN))の波形とが示されている。全波整流信号(FWR(SIN))の波形においても、互いに隣り合う2つの+側のピークの間における谷部の一部領域が、マイナス側の反転波形部によって埋められている。
【0046】
同図において、3つ示されるグラフ座標のうち、一番下のグラフ座標には、全波整流信号(FWR(COS))の波形と、全波整流信号(FWR(SIN))の波形と、両者を重畳した重畳波SWの波形とが示される。重畳波SWにおいては、全波整流信号(FWR(COS))と、全波整流信号(FWR(SIN))とが、互いの谷部を互いの山部で補い合う。これにより、ピーク付近の狭い電圧領域内だけで、少しだけ波打つ形状の安定した電圧の波形が得られる。ピーク付近の高低差の低い波打ちは、全波整流信号(FWR(COS))、全波整流信号(FWR(SIN))のそれぞれのピークよりも高い位置で生じている。このような重畳波SWは、SIN信号(正弦波信号)及びCOS信号(余弦波信号)のピークの平均に相当する平均相当電圧の信号である。即ち、実施形態においては、
図5に示される第1全波整流処理部92及び第2全波整流処理部93の組み合わせが、平均相当電圧たる重畳波SW信号を生成する平均信号生成部として機能している。
【0047】
図6に示される例では、しきい値電圧Vthが、重畳前の全波整流信号(FWR(COS))のピーク、及び重畳前の全波整流信号(FWR(SIN))のピークよりも少しだけ低い値に設定されている。このような設定において、センサ組み付けが適切に行われている場合には、図示のように、磁気スケール2又は磁気センサ装置3の位置(グラフの横軸)にかかわらず、重畳波SWがしきい値電圧Vthを超える。これにより、磁気スケール2又は磁気センサ装置3が直線軌道上を移動しているときに、直線軌道上での位置にかかわらず、発光部(
図5の36)が黄色に点灯し続ける。この点灯により、作業者は、磁気スケール2表面と磁気センサ10とのギャップについて許容範囲を超えて広くなっていないことを容易に確認することができる。
【0048】
図7は、センサ組み付けが精度良く行われていない場合における各種信号の波形を示す波形図である。センサ組み付けが精度良く行われないことにより、前述のギャップが許容範囲を超えて広くなると、COS信号及びSIN信号のそれぞれにおいて、同図に示されるような低振幅の波形が出力される。すると、重畳波SWの振幅も低振幅になることから、重畳波SWにおけるピーク付近の高低差の低い波打ちが、図示のようにしきい値電圧Vthを跨ぐようになる。これにより、発光部36は、黄色発光と赤色発光とを交互に繰り返す。作業者は、このような交互発光により、センサ組み付けについて許容範囲を超えて広くなっていることを容易に確認することができる。
【0049】
なお、
図5に示されるコンパレータ95と発光部96との組み合わせは、知覚可能な知覚信号たる発光信号を出力し、且つ、平均相当電圧について、所定の範囲内にある場合と、範囲内にない場合とで、発光信号の出力状態を変化させる知覚信号出力部として機能している。
【0050】
図5~
図7に示される組付誤差検出部90においては、しきい値電圧Vthが、ギャップの許容範囲の上限値として機能している。
図5に示される組付誤差検出部90において、コンパレータを更に1つ付加して、重畳波SWの電圧がしきい値電圧Vth1(下限値)~しきい値電圧Vth2の範囲内にある場合だけ、発光部36を所定の色に点灯させてもよい。
【0051】
平均相当電圧として重畳波SWを出力させるようにした例について説明したが、ピークホールド回路により、SIN信号又はCOS信号のピーク値を継続的に出力させるようにしてもよい。但し、ピーク値を継続的に出力させる構成では、磁気スケール2又は磁気センサ装置3を移動させる速度によっては、波形の周期と、ピークホールド回路の放電時定数との関係が不適切になって、安定した平均相当電圧を出力することが困難になるおそれがある。
【0052】
また、知覚信号として、視認可能な発光信号を出力させるようにした例について説明したが、知覚信号は発光信号に限られない。例えば、聴覚的信号、痛覚的信号、温度覚的信号、圧覚的信号、振動覚的信号等を、知覚信号として出力させるようにしてもよい。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。実施形態は、発明の範囲及び要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0054】
本発明は、以下の態様毎に特有の効果を奏する。
〔第1態様〕
第1態様は、位置を示すための目盛りを具備する標示部(例えば磁気スケール2)と、前記目盛りを読み取る読取部(例えば磁気センサ10)とを備え、所定の直線軌道上における前記読取部と前記標示部との相対位置変化に伴って前記読取部から出力される正弦波信号(SIN信号)及び余弦波信号(COS信号)に基づいて、前記標示部又は前記読取部の前記直線軌道上における位置を検出する位置検出装置(例えば磁気式エンコーダ装置1)であって、前記正弦波信号及び前記余弦波信号のうち、少なくとも何れか一方のピークの平均に相当する電圧である平均相当電圧(例えば重畳波SW)の信号を生成する平均信号生成部(例えば第1全波整流処理部92及び第2全波整流処理部93の組み合わせ)と、知覚可能な所定の知覚信号を出力し、且つ、前記平均相当電圧について、所定の範囲内にある場合と、前記範囲内にない場合とで、前記知覚信号の出力状態を変化させる知覚信号出力部(例えばコンパレータ95と発光部96との組み合わせ)とを備える、ことを特徴とするものである。
【0055】
第1態様によれば、正弦波信号や余弦波信号をデジタル処理することなく、標示部と読取部とのギャップについて許容範囲内にあるか否かを容易に確認することができる。
【0056】
〔第2態様〕
第2態様は、第1態様の構成を備え、且つ、前記平均信号生成部が、前記正弦波信号に全波整流を施した全波整流信号と、前記余弦波信号に全波整流を施した全波整流信号とを重畳した重畳波信号を、前記平均相当電圧の信号として出力する、ことを特徴とする位置検出装置である。
【0057】
第2態様によれば、平均相当電圧として、ピークホールド回路によってホールドしたホールドピーク値を出力する構成に比べて、標示部と読取部との相対位置変化速度の不適による平均相当電圧の不適化を抑えることができる。
【符号の説明】
【0058】
1・・・磁気式エンコーダ装置(位置検出装置)、 2・・・磁気スケール(標示部)、 15・・・アブソリュートトラック(目盛り)、 40・・・演算処理部(演算部)、 92・・・第1全波整流処理部(平均信号生成部の一部)、 93・・・第2全波整流処理部(平均信号生成部の一部)、 95・・・(知覚信号出力部の一部)、 96・・・発光部(知覚信号出力部の一部)