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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-12
(45)【発行日】2024-11-20
(54)【発明の名称】洗浄装置及び塗装ガンの洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   B05B 15/55 20180101AFI20241113BHJP
   B05B 5/04 20060101ALI20241113BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
B05B15/55
B05B5/04 A
B08B3/02 F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023032543
(22)【出願日】2023-03-03
(65)【公開番号】P2023152771
(43)【公開日】2023-10-17
【審査請求日】2023-11-24
(31)【優先権主張番号】202210337543.7
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】長友 佑太
(72)【発明者】
【氏名】野北 航
(72)【発明者】
【氏名】小田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】田畑 公秀
(72)【発明者】
【氏名】鍋田 武志
【審査官】谷口 東虎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-123458(JP,A)
【文献】特開2018-012088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 15/55
B05B 5/04
B08B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベル型の噴霧頭を有する塗装ガンの洗浄時における廃液を回収する洗浄装置であって、
前記塗装ガンの先端部を挿入するための挿入孔が形成された上壁を有する箱体と、
前記挿入孔に挿入された前記塗装ガンの前記先端部に向けて洗浄液を噴出する洗浄ノズルと、
前記挿入孔の外縁部の上方に設けられ、前記挿入孔に挿入された前記塗装ガンの前記先端部に向けてエアを噴出するエアノズル孔と、
前記エアノズル孔の下方に設けられ、前記エアノズル孔よりも前記挿入孔の中心軸線に向けて突出した庇部と、
を備え
前記塗装ガンの前記先端部が前記挿入孔に挿入された状態で、前記庇部は、前記塗装ガンの前記先端部から離間するように構成され、
前記エアノズル孔から噴出された前記エアは、前記挿入孔に挿入された前記塗装ガンの前記先端部と前記庇部との間に形成された隙間を介して、前記箱体の内部空間に導入される、洗浄装置。
【請求項2】
請求項1記載の洗浄装置において、
前記箱体に設けられ、前記箱体の内部のエアを排出可能な排出部を備える、洗浄装置。
【請求項3】
請求項2記載の洗浄装置において、
前記排出部は、前記箱体の下部に設けられ、前記箱体の内部から前記廃液を排出する、洗浄装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の洗浄装置において、
前記エアノズル孔を含む複数のエアノズル孔を備え、
前記複数のエアノズル孔は、前記挿入孔の前記外縁部の周方向に配列される、洗浄装置。
【請求項5】
請求項4記載の洗浄装置において、
前記複数のエアノズル孔は、前記挿入孔の軸方向から見て、前記挿入孔の径方向に対して傾斜するように設けられる、洗浄装置。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の洗浄装置において、
前記洗浄ノズルは、前記挿入孔の近傍に設けられ、
前記庇部は、前記洗浄ノズルと前記エアノズル孔との間に設けられる、洗浄装置。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載の洗浄装置において、
前記エアノズル孔は、当該エアノズル孔のエア吐出口に向かって下方に傾斜するように設けられ、
前記庇部の上面は、前記エアノズル孔の傾斜に沿ってテーパ状に形成される、洗浄装置。
【請求項8】
請求項7記載の洗浄装置において、
前記洗浄ノズルは、前記塗装ガンに向けて水平に設けられる、洗浄装置。
【請求項9】
ベル型の噴霧頭を有する塗装ガンの洗浄方法であって、
箱体の上壁に形成された挿入孔に前記塗装ガンの先端部を挿入する配置工程と、
洗浄ノズルから、前記挿入孔に挿入された前記塗装ガンの前記先端部に向けて洗浄液を噴出し、前記先端部を洗浄する洗浄工程と、を有し、
前記洗浄工程では、前記挿入孔の外縁部の上方に設けられたエアノズル孔から、前記塗装ガンの前記先端部に向けてエアを噴出し、
前記エアノズル孔の下方に、前記エアノズル孔よりも前記挿入孔の中心軸線に向けて突出した庇部が設けられ
前記塗装ガンの前記先端部が前記挿入孔に挿入された状態で、前記庇部は、前記塗装ガンの前記先端部から離間するように構成され、
前記エアノズル孔から噴出された前記エアは、前記挿入孔に挿入された前記塗装ガンの前記先端部と前記庇部との間に形成された隙間を介して、前記箱体の内部空間に導入される、塗装ガンの洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベル型の噴霧頭を有する塗装ガンの洗浄時における廃液の飛散を防止する洗浄装置及び塗装ガンの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗装ブース等においてワークに塗料を塗装する場合、ベル型の噴霧頭(ベルカップ)を有する塗装ガンを備えた回転霧化塗装装置が多く用いられている。回転霧化塗装装置は、塗装ガンのベルカップが回転する際の遠心力で微粒化(霧化)された塗料をシェーピングエアによってワークに吹き付ける。
【0003】
ワークに塗装する塗装色を変更する際に、変更前の塗料と変更後の塗料との混色を防止するために、塗装ガン内に残留する塗料をシンナー等の洗浄液により洗浄することが行われる。洗浄に用いられた洗浄液を再利用するために、洗浄液を含む廃液は、廃液回収装置を用いて回収される(例えば、下記特許文献1参照)。
【0004】
廃液回収装置の内部において、洗浄液及び塗料を含む廃液は微粒化される。微粒化した廃液(廃液ミスト)が跳ね返ることにより飛散すると、塗装ガンに再付着する。微粒化した廃液の跳ね返りによる飛散を抑制するために、特許文献1の廃液回収装置は、塗装ガンの先端部を挿入するための挿入孔の外縁の上方にエア噴射ノズルを備える。挿入孔に向けてエアを吹き付けることで、挿入孔と塗装ガンとの隙間を介した廃液ミストの漏れが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-034635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来技術を改良し、より良好に塗装ガンを洗浄できることが望まれる。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、ベル型の噴霧頭を有する塗装ガンの洗浄時における廃液を回収する洗浄装置であって、前記塗装ガンの先端部を挿入するための挿入孔が形成された上壁を有する箱体と、前記挿入孔に挿入された前記塗装ガンの前記先端部に向けて洗浄液を噴出する洗浄ノズルと、前記挿入孔の外縁部の上方に設けられ、前記挿入孔に挿入された前記塗装ガンの前記先端部に向けてエアを噴出するエアノズル孔と、前記エアノズル孔の下方に設けられ、前記エアノズル孔よりも前記挿入孔の中心軸線に向けて突出した庇部と、を備える、洗浄装置である。
【0009】
本発明の第2の態様は、ベル型の噴霧頭を有する塗装ガンの洗浄方法であって、箱体の上壁に形成された挿入孔に前記塗装ガンの先端部を挿入する配置工程と、洗浄ノズルから、前記挿入孔に挿入された前記塗装ガンの前記先端部に向けて洗浄液を噴出し、前記先端部を洗浄する洗浄工程と、を有し、前記洗浄工程では、前記挿入孔の外縁部の上方に設けられたエアノズル孔から、前記塗装ガンの前記先端部に向けてエアを噴出し、前記エアノズル孔の下方に、前記エアノズル孔よりも前記挿入孔の中心軸線に向けて突出した庇部が設けられる、塗装ガンの洗浄方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エアノズル孔から噴出されるエアによって洗浄液の跳ね返りを抑制できる。庇部によって挿入孔と塗装ガンとの隙間を流れるエアの流速が大きくなるため、塗装ガンに付着した洗浄液を良好に吹き飛ばす(エアブローする)ことができる。庇部によって塗装ガンと洗浄装置との隙間を調整し、塗装ガンを良好にエアブローすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施形態に係る洗浄装置の全体概略図である。
図2図2は、洗浄装置の要部拡大図である。
図3図3は、洗浄装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示す本実施形態に係る洗浄装置10は、ベル型の噴霧頭(以下、「ベルカップ12」という)を有する塗装ガン14の洗浄時における廃液の飛散を防止するための装置である。廃液は、シンナー等の洗浄液及び塗料を含む。塗装ガン14は、ベルカップ12と、ベルカップ12を回転可能に支持する本体胴部16を備えており、例えばロボットアーム(図示せず)の先端に取り付けられる。
【0013】
ベルカップ12は、円周上に配置された多数の塗料供給孔12aを有する。ベルカップ12の背後(噴霧方向と反対側)には、シェーピングエア吐出部18が設けられる。シェーピングエア吐出部18は、本体胴部16の先端面に設けられており、シェーピングエアと呼ばれる高速空気流が吐出される出口である。塗装時に、多数の塗料供給孔12aを介してベルカップ12の内面12bに塗料が供給される。ベルカップ12の内面12bに供給された塗料は、ベルカップ12が回転する際の遠心力でカップ先端縁12cまで運ばれる。塗料は、カップ先端縁12cにて微粒化(霧化)され、被塗装物であるワーク(図示せず)に向けて放出される。
【0014】
洗浄装置10は、箱体20と、機能ユニット26とを備える。
【0015】
箱体20は、本実施形態では円筒形状に形成されている。箱体20の外形形状は、円筒形状に限定されるものではなく、例えば円錐台形状、直方体形状、角錐台形状等でもよい。箱体20は、上壁30と、側壁34とを有する。
【0016】
上壁30は、側壁34の上端に接続された円形の壁である。上壁30は、塗装ガン14の先端部(以下、「ガン先端部14a」ともいう)を挿入するための挿入孔31を有する。塗装ガン14の本体胴部16の軸線に垂直な断面における本体胴部16の外形は円形であるため、挿入孔31は円形に形成されている。挿入孔31は、塗装ガン14の少なくともシェーピングエア吐出部18が挿通可能な直径を有する。
【0017】
側壁34は、本実施形態では中空円筒形状に形成されている。側壁34の下端には、排出部24が形成されており、箱体20は下方に開口した円筒形状に形成される。排出部24は箱体20内部のエアを排出可能であり、エアとともに廃液を箱体20内部から下方に排出可能である。図1の下部において仮想線で示すように、排出部24は側壁34の下端に接続された底壁32に形成された孔又は底壁32に接続された配管であってもよく、排出部24から排出された廃液を回収し、洗浄液を含む廃液を再利用してもよい。
【0018】
排出部24から廃液を回収、再利用する場合、排出部24は箱体20の底壁32に形成された孔又は底壁32に接続された配管であることが好ましい。この場合、図1において仮想線で示すように、廃液受容部22が箱体20内の下部に配置されていることが好ましい。具体的には、廃液受容部22は、底壁32の上方に配置されている。廃液受容部22は、外周部に対して中央部が下方に窪む凹形状に形成されており、廃液を受容する。排出部24は、廃液受容部22に接続されており、廃液受容部22内の廃液を送出可能であるとともに、箱体20の内部のエアを排出可能である。排出部24は、廃液受容部22内の廃液を効率良く送出できるように、廃液受容部22の最も低い領域に接続されている。
【0019】
機能ユニット26は、箱体20の上部に配置されている。具体的に、機能ユニット26は、箱体20の上壁30に固定され、上壁30から上方に突出する。機能ユニット26は、円形の挿入孔31に沿った円環状に構成されている。塗装ガン14の洗浄時に、ガン先端部14aは、機能ユニット26の中空部である円形の配置孔26aに挿入され、配置される。機能ユニット26は、洗浄機構40と、エアブロー機構44とを備える。
【0020】
図2に示すように、洗浄機構40は、機能ユニット26の周方向に互いに間隔を置いて配置された複数の洗浄ノズル42を有する。複数の洗浄ノズル42は、箱体20の上壁30の内周部に固定された円環状の支持部材50に装着されている。複数の洗浄ノズル42は、挿入孔31の近傍に配置されている。洗浄ノズル42は、洗浄液を流す液体流路421と、洗浄液を吐出する洗浄液吐出口422とを有する。液体流路421は、洗浄液供給ライン52と接続されている。
【0021】
洗浄液吐出口422は、配置孔26aの中心に向かって配置された洗浄ノズル42の先端に設けられている。洗浄液吐出口422は、ガン先端部14aの外周面に向かって洗浄液を吐出(噴射)する。洗浄ノズル42は、塗装ガン14に向けて(配置孔26aに向けて)水平に設けられている。具体的には、洗浄ノズル42の洗浄液吐出口422の軸線が水平方向に沿っている。洗浄液吐出口422の軸線は、配置孔26aに向かって下方に傾斜してもよい。
【0022】
図3に示すように、洗浄ノズル42は、挿入孔31を中心とする周方向に等角度間隔で配置されている。本実施形態では、6個の洗浄ノズル42が等角度間隔で配置されている。なお、洗浄ノズル42の個数は、5個以下でもよく、7個以上でもよい。
【0023】
図1に示すように、本実施形態において洗浄ノズル42は箱体20の上部で、挿入孔31の外縁部の近傍に配置されているが、洗浄ノズル42の配置はこれに限定されない。洗浄ノズル42は、箱体20の内部で、挿入孔31に挿入された塗装ガン14の先端部に向けて洗浄液を噴射できればよい。このため、洗浄ノズル42は箱体20の内部における下部に設けられてもよく、箱体20の内部における下部と上部との間の中間高さに設けられてもよい。
【0024】
エアブロー機構44は、洗浄機構40の上方に配置されている。図3に示すように、エアブロー機構44は、複数のエアノズル孔541を有する円環状のノズルブロック54と、ノズルブロック54を囲む円環状のエア供給ブロック56とを有する。複数のエアノズル孔541は、挿入孔31の外縁部の周方向に互いに間隔を置いて形成されている。複数のエアノズル孔541は、挿入孔31の軸方向から見て、挿入孔31の径方向に対して傾斜するように設けられている。なお、複数のエアノズル孔541は、挿入孔31の軸方向から見て、挿入孔31の径方向に沿って設けられてもよい。
【0025】
図2に示すように、エアノズル孔541の内端は、ノズルブロック54の内周面にて開口したエア吐出口542である。エアノズル孔541は、エア吐出口542に向かって下方に傾斜するように設けられている。すなわち、各エアノズル孔541は、ノズルブロック54の内周面に向かって下方に傾斜している。
【0026】
エア供給ブロック56は、ノズルブロック54を囲む円環状のエア流路561を有する。エア流路561は、エア供給ライン58に接続されている。エア供給ライン58からエア流路561に供給されたエアは、エア流路561にて周方向に流動して複数のエアノズル孔541へと流入する。エアは、複数のエアノズル孔541のエア吐出口542から配置孔26aに向かって吐出される。
【0027】
機能ユニット26は、庇リング部材60をさらに備える。庇リング部材60は、洗浄ノズル42とノズルブロック54との間に配置されている。庇リング部材60は、配置孔26aを囲む円環状に形成されている。庇リング部材60は、当該庇リング部材60の外周部を構成する外周基部62と、外周基部62の内周から径方向内側に突出した庇部64とを有する。
【0028】
庇部64は、エアノズル孔541の下方に設けられ、エアノズル孔541よりも挿入孔31の中心軸線に向けて突出する。庇部64は、洗浄ノズル42とエアノズル孔541との間に設けられる。より具体的には、庇部64は、エア吐出口542と洗浄液吐出口422との間の高さに配置されている。
【0029】
庇部64の上面641(内面)は、エアノズル孔541の傾斜に沿ってテーパ状に形成されている。従って、庇部64の上面641と、エアノズル孔541の軸線とは、略平行である。庇部64の下面642は、洗浄ノズル42の洗浄液吐出口422の軸線と平行な水平面である。挿入孔31の径方向において、庇部64の内周端643は、洗浄ノズル42の洗浄液吐出口422よりも内側に位置する。図3に示すように、庇部64は、挿入孔31の外縁部に沿って全周に亘って延在する環状に形成されている。庇部64は、挿入孔31と同心状に形成されている。庇部64の上面641は、下方に向かって縮径する円環状テーパ面である。
【0030】
洗浄装置10を用いた塗装ガン14の洗浄方法は、以下のように行われる。
【0031】
例えば、ワークに塗装する塗装色を変更する場合、又は定期的な洗浄作業を行う場合に、塗装ガン14の洗浄が行われる。洗浄方法は、塗装ガン14を所定位置に配置する配置工程と、塗装ガン14を洗浄する洗浄工程とを有する。
【0032】
まず、配置工程が行われる。図1に示すように、配置工程では、箱体20の上壁30に形成された挿入孔31に塗装ガン14の先端部(ガン先端部14a)を挿入する。具体的には、例えばロボットアームを移動させることにより、ロボットアームの先端に取り付けられたガン先端部14aが、機能ユニット26の配置孔26aを介して挿入孔31に挿入される。これにより、ガン先端部14aは、機能ユニット26の内側(配置孔26a)に配置される。このとき、複数の洗浄ノズル42と、複数のエアノズル孔541のエア吐出口542とが、ガン先端部14aの外周面と向き合う。
【0033】
次に、洗浄工程が行われる。洗浄工程は、塗装ガン14の内部流路を洗浄する内部洗浄工程と、ガン先端部14aの外周面を洗浄する外部洗浄工程とを有する。内部洗浄工程では、ベルカップ12を回転させながら塗装ガン14の内部流路に洗浄液を供給するとともに、シェーピングエア吐出部18からシェーピングエアを吐出して、廃液を噴霧する。廃液は、塗装ガン14の内部流路に残留していた塗料と、洗浄液とを含む液体である。シェーピングエアによってカップ先端縁12cで微粒化された廃液は、下方に向かって広がる噴霧パターンPを形成して、カップ先端縁12cから噴霧される。
【0034】
内部洗浄工程の後に、あるいは内部洗浄工程と並行して、外部洗浄工程が行われる。図2に示すように、外部洗浄工程では、洗浄液供給ライン52から洗浄ノズル42の液体流路421に洗浄液が供給され、洗浄液吐出口422からガン先端部14aの外周面に向けて洗浄液が噴射される。これにより、ガン先端部14aの外周面に付着していた塗料が洗浄液によって洗い流される。
【0035】
洗浄工程において、エアブロー機構44の複数のエアノズル孔541にエアが供給され、エア吐出口542から配置孔26aに向かってエアが吐出される。エアは、配置孔26a(具体的には、機能ユニット26の内周部と塗装ガン14の外周部との間)及び挿入孔31を介して箱体20の内部空間へと導入される。これにより、内部洗浄工程においては、微粒化した廃液が、挿入孔31及び配置孔26aを介して上方に移動して洗浄装置10の外部に出ることが抑制される。外部洗浄工程においては、ガン先端部14aの外周面に衝突した洗浄液の上方への跳ね返りが抑制され、配置孔26aを介して洗浄液が洗浄装置10の外部に出ること(飛散)が抑制される。また、外部洗浄工程においては、エアブロー機構44から吐出されるエアによって、ガン先端部14aに付着した洗浄液が下方に吹き飛ばされる(エアブローされる)。
【0036】
また、洗浄方法は箱体20内部の廃液を排出する排出工程を有してもよい。排出工程は、洗浄工程の後、あるいは洗浄工程中に実施される。排出工程では、箱体20の下部に受容された廃液を回収する。具体的に、洗浄工程において発生した廃液は、図1に示す廃液受容部22にて受容された後、廃液受容部22から排出部24を介して箱体20の外部に送出されて回収される。
【0037】
本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0038】
図2に示したように、洗浄装置10は、塗装ガン14の先端部に向けて洗浄液を噴出する洗浄ノズル42と、塗装ガン14の先端部に向けてエアを噴出するエアノズル孔541と、エアノズル孔541の下方に設けられた庇部64とを備える。この構成により、エアノズル孔541から噴出されるエアによって洗浄液の跳ね返りを抑制できる。庇部64によって挿入孔31と塗装ガン14との隙間を流れるエアの流速が大きくなるため、塗装ガン14に付着した洗浄液を良好に吹き飛ばす(エアブローする)ことができる。庇部64によって塗装ガン14と洗浄装置10(挿入孔31)との隙間を調整し、塗装ガン14を良好にエアブローすることができる。
【0039】
複数のエアノズル孔541が挿入孔31の外縁部の周方向に配列される。複数のエアノズル孔541によって塗装ガン14と挿入孔31との隙間にエアカーテンを形成し、洗浄液の跳ね返りを抑制することができる。
【0040】
複数のエアノズル孔541が、挿入孔31の軸方向から見て、挿入孔31の径方向に対して傾斜するように設けられるため(図3参照)、エアカーテンが形成され、洗浄液の飛散を抑制することができる。また、上記のように配置された複数のエアノズル孔541から吐出されるエアにより旋回流が形成されるため、塗装ガン14を良好にエアブローすることができる。
【0041】
洗浄ノズル42は、挿入孔31の近傍に設けられ、庇部64は、洗浄ノズル42とエアノズル孔541との間に設けられる。庇部64が洗浄ノズル42とエアノズル孔541との間に配置されるため、洗浄液の跳ね返り抑制と、エアノズル孔541からのエアによる塗装ガン14に対するエアブローとを良好に両立させることができる。
【0042】
エアノズル孔541は、当該エアノズル孔541のエア吐出口542に向かって下方に傾斜するように設けられ、庇部64の上面641は、エアノズル孔541の傾斜に沿ってテーパ状に形成される。エアノズル孔541が下方に傾斜するように設けられるため、塗装ガン14に付着した洗浄液を排出部24に向かってより良好にエアブローすることができる。
【0043】
洗浄ノズル42が塗装ガン14に向けて水平に設けられるため、洗浄時に、洗浄ノズル42から塗装ガン14に向けて噴射された洗浄液は、塗装ガン14の外面形状に沿って矢印Fで示すように流れる。従って、塗装ガン14の洗浄不要な領域Sに洗浄液が浸入することを抑制でき、洗浄ノズル42によって良好にエアブローすることができる。洗浄不要な領域Sへの洗浄液の浸入が抑制されるため、洗浄後の液垂れの発生を抑制することができる。なお、図2に示すように、本体胴部16の先端内周面とベルカップ12の外周面との間の径方向の隙間が、洗浄不要な領域Sである。
【0044】
図1に示すように、洗浄装置10は、箱体20の内部のエアを排出可能な排出部24を備える。排出部24からエアが排出されるため、箱体20の内部にエアの流れを形成して塗装ガン14に対して良好にエアブローすることができる。
【0045】
排出部24は、箱体20の下部に設けられ、箱体20の内部から廃液を排出する。排出部24がエア及び廃液を排出するため、洗浄装置10を簡素化できる。
【0046】
なお、塗装ガン14の洗浄後に、ガン先端部14aを挿入孔31に挿入したまま、塗装ガン14から塗料を噴霧する確認作業(いわゆる試し吹き)を行ってもよい。試し吹きの際に、エアブロー機構44からのエアの吐出を実施してもよい。エアブロー機構44から吐出されるエアにより、挿入孔31から箱体20の内部へ向かう気流が生じるため、試し吹きの際に、微粒化された廃液(この場合、微粒化された塗料)が挿入孔31と塗装ガン14との間から洗浄装置10の外部に漏れ出ることを抑制できる。
【0047】
上記の実施形態をまとめると、以下のようになる。
【0048】
上記の実施形態は、ベル型の噴霧頭(12)を有する塗装ガン(14)の洗浄時における廃液を回収する洗浄装置(10)であって、前記塗装ガンの先端部を挿入するための挿入孔(31)が形成された上壁(30)を有する箱体(20)と、前記挿入孔に挿入された前記塗装ガンの前記先端部に向けて洗浄液を噴出する洗浄ノズル(42)と、前記挿入孔の外縁部の上方に設けられ、前記挿入孔に挿入された前記塗装ガンの前記先端部に向けてエアを噴出するエアノズル孔(541)と、前記エアノズル孔の下方に設けられ、前記エアノズル孔よりも前記挿入孔の中心軸線に向けて突出した庇部(64)と、を備える、洗浄装置を開示する。
【0049】
洗浄装置は、前記箱体に設けられ、前記箱体の内部のエアを排出可能な排出部(24)を備える。
【0050】
前記排出部は、前記箱体の下部に設けられ、前記箱体の内部から前記廃液を排出する。
【0051】
洗浄装置は、前記エアノズル孔を含む複数のエアノズル孔を備え、前記複数のエアノズル孔は、前記挿入孔の前記外縁部の周方向に配列される。
【0052】
前記複数のエアノズル孔は、前記挿入孔の軸方向から見て、前記挿入孔の径方向に対して傾斜するように設けられる。
【0053】
前記洗浄ノズルは、前記挿入孔の近傍に設けられ、前記庇部は、前記洗浄ノズルと前記エアノズル孔との間に設けられる。
【0054】
前記エアノズル孔は、当該エアノズル孔のエア吐出口(542)に向かって下方に傾斜するように設けられ、前記庇部の上面(641)は、前記エアノズル孔の傾斜に沿ってテーパ状に形成される。
【0055】
前記洗浄ノズルは、前記塗装ガンに向けて水平に設けられる。
【0056】
上記の実施形態は、ベル型の噴霧頭(12)を有する塗装ガン(14)の洗浄方法であって、箱体(20)の上壁(30)に形成された挿入孔(31)に前記塗装ガンの先端部を挿入する配置工程と、洗浄ノズル(42)から、前記挿入孔に挿入された前記塗装ガンの前記先端部に向けて洗浄液を噴出し、前記先端部を洗浄する洗浄工程と、を有し、前記洗浄工程では、前記挿入孔の外縁部の上方に設けられたエアノズル孔(541)から、前記塗装ガンの前記先端部に向けてエアを噴出し、前記エアノズル孔の下方に、前記エアノズル孔よりも前記挿入孔の中心軸線に向けて突出した庇部(64)が設けられる、塗装ガンの洗浄方法を開示する。
【0057】
なお、本発明は、上述した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を取り得る。
【符号の説明】
【0058】
10…洗浄装置
14…塗装ガン
20…箱体
24…排出部
30…上壁
31…挿入孔
42…洗浄ノズル
64…庇部
541…エアノズル孔
542…エア吐出口
641…上面
図1
図2
図3