(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】接触抵抗を低減したMEMSデバイス
(51)【国際特許分類】
B81C 1/00 20060101AFI20241114BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20241114BHJP
H01H 49/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B81C1/00
B81B3/00
H01H49/00 L
(21)【出願番号】P 2021566474
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(86)【国際出願番号】 US2020035263
(87)【国際公開番号】W WO2020243529
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-05-19
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517090646
【氏名又は名称】コーボ ユーエス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ダスティダー,シバヨチ・ゴーシュ
(72)【発明者】
【氏名】ルノー,ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ムヤンゴ,ジャック・マーセル
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0175715(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0088112(US,A1)
【文献】特開2014-045030(JP,A)
【文献】特表2009-510707(JP,A)
【文献】特開2016-062984(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0264655(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B81C 1/00
B81B 3/00
H01H 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MEMSデバイスを製造する方法であって、
ルテニウムの接触面を含む1つ以上の電気接点スタックを形成することであって、前記1つ以上の電気接点スタックのうちの少なくとも1つが、少なくとも1つの接触電極にわたって形成される
ように、
前記1つ以上の電気接点スタックを形成することと、
前記1つ以上の電気接点スタックにわたって犠牲材料を置くことと、
前記1つ以上の電気接点スタックが、前記犠牲材料で満たされた空洞内に形成されるように、前記1つ以上の電気接点スタックにわたってビーム構造体を形成することと、
犠牲材料を除去して前記ビーム構造体を解放して空洞内を移動するようにすることであって、前記ビーム構造体の少なくとも1つの接触部分が、前記少なくとも1つの接触電極
の接触面に接触することが可能である
ように、
前記ビーム構造体を解放して前記空洞内を移動するようにすることと、
塩素を含むエッチング剤を使用して前記空洞内のルテニウムの前記接触面の一部分をエッチングすることと、
前記空洞を封止することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記エッチング剤が、酸素またはフッ素系ガスをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エッチング剤が、約2.5分~3分の期間、前記空洞内に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ルテニウムの前記接触面の約5nm~約15nmが、前記エッチングを通して除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ビーム構造体が、ルテニウムを含む少なくとも1つの接触部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
塩素を含む前記エッチング剤を使用してルテニウムの前記接触面の前記
一部分を前記エッチングすることが、ルテニウムを含む前記少なくとも1つの接触部分の底部分をエッチングすることをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ルテニウムを含む前記少なくとも1つの接触部分の前記
底部分をエッチングすることが、前記少なくとも1つの接触部分を前記ビーム構造体内に陥凹させる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
塩素を含む前記エッチング剤を使用してルテニウムの前記接触面の前記
一部分をエッチングする前に、フッ素および酸素を含有するプラズマを前記空洞に導入することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
塩素を含む前記エッチング剤が、塩酸、三塩化ホウ素、または塩素ガスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
塩素を含む前記エッチング剤を使用してルテニウムの前記接触面の前記
一部分を前記エッチングすることが、ルテニウムの前記接触面から任意の残基または間質層をさらに除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
塩素を含む前記エッチング剤が、毎分約4ナノメートル~毎分約6ナノメートルのエッチング速度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
塩素を含む前記エッチング剤が、酸化物または窒化チタンアルミニウムに対するルテニウムをエッチングするための約20:1の選択比を有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年5月30日に出願された米国仮特許出願第62/854,826号に対する優先権を主張し、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は、概して、1つ以上のルテニウム接点を含む微小電気機械システム(micro-electromechanical system:MEMS)デバイスにおける張り付きを防止しながら、接触抵抗を減少させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
接触溶着または張り付きは、MEMSデバイスの主な故障メカニズムの1つである。張り付きは、実行可能なMEMSデバイスを製造する際の重要な課題の1つである。ルテニウム接点は、低抵抗で耐久性のある接触を提供するが、ルテニウム接点は、動作寿命にわたって潜在的な張り付き現象の影響を受けやすくなる。
【0004】
したがって、張り付き現象の影響を受けにくい低抵抗で耐久性のある接触を有する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、概して、MEMSデバイスを製造する方法に関する。MEMSデバイスは、デバイスの容量を変化させるためにビームが移動することになる空洞を有する。デバイスのビルドアップがほぼ完了した後、犠牲材料を除去してMEMSデバイスの空洞内でビームを解放する。その後、露出したルテニウム接点を、塩素を含むエッチング剤でエッチバックし、頂部および底部両方の接点の頂面を除去する。このエッチバックプロセスにより、張り付き現象の影響を受けにくい、低い接触抵抗を実現することができる。フッ素系プラズマ中のルテニウム接点を調節することによって、張り付き性能をさらに向上させることができる。フッ素系プラズマプロセス、またはフッ素処理は、ルテニウム接点のエッチバックプロセスの前または後に実行することができる。
【0006】
一実施形態では、MEMSデバイスを製造する方法は、空洞内にルテニウムの接触面を含む1つ以上の電気接点スタックを形成することと、空洞内の1つ以上の電気接点スタックにわたってビーム構造体を形成することであって、空洞が犠牲材料を含有する、形成することと、犠牲材料を空洞から除去して、ビームを解放して空洞内を移動するようにすることと、塩素を含むエッチング剤を使用してルテニウムの接触面の一部分をエッチングすることと、空洞を封止することと、を含む。
【0007】
当業者であれば、以下の好ましい実施形態の詳細な記載を添付の図面と関連付けて読むことで、本開示の範囲を理解し、その追加の態様を実現するであろう。
【0008】
本明細書に組み込まれ、この一部を形成する添付の図は、本開示のいくつかの態様を図示し、記載と併せて本開示の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】犠牲材料を除去して、ビームを解除する前のMEMSデバイスの概略図である。
【
図2】犠牲材料が除去され、ビームが解除された後の
図1のMEMSデバイスの概略図である。
【
図3A】犠牲材料が除去された後の
図2のMEMSデバイスの一部分を拡大した概略図である。
【
図3B】デバイスの露出したルテニウムを含む要素がエッチバックされた後の、
図2のMEMSデバイスを拡大した概略図である。
【
図4】MEMSデバイスが封止された後の
図3BのMEMSデバイスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
理解を容易にするために、可能な限り、同一の参照番号が図面に共通の同一の要素を指定するために使用されている。ある実施形態において開示される要素は、具体的な列挙なしに他の実施形態において有益に利用され得ることが想定される。
【0011】
以下では、本開示の実施形態について言及する。しかしながら、本開示は、具体的に記載される実施形態に限定されるものではないことを理解されたい。代わりに、異なる実施形態に関連するかどうかに関わらず、以下の特徴および要素の任意の組み合わせが、本開示を実施し、実践するために企図される。さらに、本開示の実施形態は、他の可能な解決策および/または先行技術よりも優れた利点を達成し得るが、特定の利点が所与の実施形態によって達成されるかどうかは、本開示を限定するものではない。したがって、以下の態様、特徴、実施形態、および利点は単なる例示であり、特許請求の範囲に明示的に記載されている場合を除き、添付の特許請求の範囲の要素または制限とは見なされない。同様に、「開示」への言及は、本明細書に開示される任意の本発明の主題の一般化として解釈されるべきではなく、特許請求の範囲で明示的に列挙される場合を除き、添付の特許請求の範囲の要素または制限と見なされるべきではない。
【0012】
以下に記載される実施形態は、当業者が実施形態を実施することを可能にするために必要な情報を表し、実施形態を実施する最良のモードを例示する。添付の図面を参照して以下の記載を読むと、当業者は本開示の概念を理解し、本明細書で特に取り扱われないこれらの概念の応用を認識するであろう。これらの概念および応用は、本開示および添付の特許請求の範囲内であることを理解されたい。
【0013】
第1の(first)、第2の(second)等の用語は、本明細書における様々な要素を記述するために用いられ得るが、これらの要素はこれらの用語によって限定されるべきでないことを理解されたい。これらの用語は、1つの要素を別の要素から区別するためにのみ用いられる。例えば、本開示の範囲から逸脱することなく、第1の要素は第2の要素と称され得、同様に、第2の要素は第1の要素と称され得る。本明細書で使用される場合、「および/または(and/or)」という用語は、挙げられた項目のうちの1つ以上の任意の組み合わせおよび全ての組み合わせを含む。
【0014】
層、領域、または基板等の要素が別の要素の「上に(on)」存在する、または「上へ(onto)」延在するとして言及される場合には、別の要素の上に直接存在するか、または上へ直接延在することができ、または介在する要素が存在し得ることを理解されたい。これとは対照的に、要素が別の要素の「上に直接(directly on)」存在する、または「上へ直接(directly onto)」延在するとして言及される場合には、介在する要素は存在しない。同様に、層、領域、または基板等の要素が「わたって(over)」いる、または「わたって(over)」延在するとして言及される場合には、別の要素に直接わたっているか、または直接わたって延在することができ、または介在する要素が存在し得ることを理解されたい。これとは対照的に、別の要素に「直接わたって(directly over)」いるか、または「直接わたって(directly over)」延在するとして言及される場合には、介在する要素は存在しない。要素が別の要素に「接続される(connected)」または「結合される(coupled)」として言及される場合には、別の要素に直接接続または結合されることができ、または介在する要素が存在し得ることを理解されたい。これとは対照的に、要素が別の要素に「直接接続される(directly connected)」または「直接結合される(directly coupled)」として言及される場合には、介在する要素は存在しない。
【0015】
「より下に(below)」または「より上に(above)」または「上方の(upper)」または「下方の(lower)」または「水平な(horizontal)」または「垂直な(vertical)」等の相対的な用語は、図面中に示される1つの要素、層、または領域と別の要素、層、または領域との関係を記述するために本明細書において用いられ得る。これらの用語およびこれらの上で考察された事項は、図面中で描写された配向に加え、デバイスの異なる配向をも包含することを意図したものであることを理解されたい。
【0016】
明細書において用いられる用語は、特定の実施形態のみを記述することを目的としており、本開示を限定することを意図していない。明細書において用いられるように、「a」、「an」、および「the」という単数形は、文脈において別途明確に示さない限り、複数形(のもの)もまた包含することを意図されている。明細書において用いられる場合の用語「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、および/または「含んでいる(including)」は、記載された特徴、整数、ステップ、操作、元素、および/または構成要素の存在を明示するものであり、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、操作、元素、構成要素および/またはそれらの群の存在を排除するものではないことをさらに理解されたい。
【0017】
別途定義されない限り、明細書において用いられる(技術用語および科学用語を含む)全ての用語は、この開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を持つ。明細書において用いられる用語はこの明細書の文脈および関連技術における意味と矛盾しない意味を有するように解釈されるべきであり、また明細書において明確に定義されない限り、理想化された、または過度に形式的な意味で解釈されるべきではないことをさらに理解されたい。
【0018】
本開示は、概して、MEMSデバイスを製造する方法に関する。MEMSデバイスは、デバイスの容量を変化させるためにビームが移動することになる空洞を有する。デバイスのビルドアップがほぼ完了した後、犠牲材料を除去してMEMSデバイスの空洞内でビームを解放する。その後、露出したルテニウム接点を、塩素を含むエッチング剤でエッチバックし、頂部および底部両方の接点の頂面を除去する。このエッチバックプロセスにより、張り付き現象の影響を受けにくい、低い接触抵抗を実現することができる。フッ素系プラズマ中のルテニウム接点を調節することによって、張り付き性能をさらに向上させることができる。フッ素系プラズマプロセス、またはフッ素処理は、ルテニウム接点のエッチバックプロセスの前または後に実行することができる。
【0019】
図1は、犠牲材料を除去し、ビームを解除する前のMEMSデバイス100の概略図である。MEMSデバイス100は、半導体デバイスのための多数の層を含むCMOS基板などの基板102を含む。基板102は、単にシリコン、ゲルマニウム、または他の好適な半導体材料を含有する半導体基板であり得ることも企図される。
【0020】
基板内には、1つ以上の接触電極104A、104Bが存在する。接触電極104A、104Bは、RF導体またはRF電極であり得る。2つの接触電極104A、104Bが示されているが、単一の接触電極、またはさらに3つ以上の接触電極が企図されていることを理解されたい。接触電極104A、104Bは、銅、アルミニウム、窒化チタン、タングステン、およびそれらの組み合わせ等の半導体デバイスでの使用に好適な任意の導電性材料から構成され得る。
【0021】
追加の導電性材料は、接触電極104A、104Bと同様に、基板102上または基板102より上に存在し得る。例えば、多数の追加の電気接点108と同様に、アンカー電極106A、106Bが
図1に示される。アンカー電極106A、106Bは、ビーム構造体114のための電極であり、電気接点108は、引き込み電極に使用され得る。アンカー電極106A、106Bおよび電気接点108は、銅、アルミニウム、窒化チタン、タングステン、およびそれらの組み合わせ等の半導体デバイスでの使用に好適の任意の導電性材料から構成され得る。
【0022】
誘電体層110は、電気接点108をわたって含む、基板102にわたって存在する。誘電体層110は、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、またはそれらの組み合わせなどの電気絶縁材料を包含することが企図されている。
【0023】
第1の犠牲層112は、誘電体層110にわたって存在する。第1の犠牲層112は、最終的に、ビーム構造体114を解放するために除去される。第1の犠牲層112は、誘電体層110とは異なる材料を含む。第1の犠牲層112に好適な材料は、炭素系材料などのスピンオン材料を含む。第1の犠牲層112は、炭素、水素、窒素、および酸素を含み得る。
【0024】
第2の誘電体層110は、第1の犠牲層112にわたって存在し、ビーム構造体114の底部分は、第2の誘電体層110にわたって存在する。第2の誘電体層110は、第1の誘電体層110と同じ材料を含み得る。ビーム構造体114は、銅、アルミニウム、窒化チタン(TiN)、タングステン、窒化チタンアルミニウム(TiAlN)、窒化タンタル(TaN)、およびそれらの組み合わせなどの半導体デバイスでの使用に好適の任意の導電性材料から構成され得る。ビーム構造体114は、さらに、中間部分、頂部分、およびポスト部分を含む。誘電体層110は、ビーム部分の頂面および底面に存在する。
【0025】
さらに、ビーム構造体114が配置されていない領域では、追加の犠牲材料112が存在する。犠牲材料112は、MEMSデバイス100内の全ての場所に同じ材料を含み得る。実際、犠牲材料112は、ビーム構造体114の頂部分にわたって存在する。最頂部の犠牲材料112上にあり、またこれに接触して、追加の誘電体層110が存在する。プルアップ電極116は、追加の誘電体層110にわたっておよびその上に存在する。誘電体ルーフ118はまた、プルアップ電極116にわたって存在する。解除孔120は、誘電体ルーフ118および最頂部の誘電体層110を貫通することで存在する。解除孔120は、ルーフ118を通って延在し、犠牲材料112を露出させる。
【0026】
ビーム構造体114の底は、ルテニウムを含む2つのビーム接触部分122を含む。ルテニウムの接触面124を含有する2つの電気接点スタックが、各接触電極104A、104Bにわたって存在し、2つのビーム接触部分122と整列している。ルテニウムを含む接触面124は、以降に考察されるように、ビーム構造体114の着地位置となる。ビーム接触部分122は、ビーム構造体114が解放され、最大容量状態であるプルダウン状態にあるときに接触面124に接触する。ルテニウムの接触面126を含有する1つ以上の追加の電気接点スタックは、電気接点108の一部分にわたって配置される。
【0027】
ビーム構造体114を解放してデバイス100を移動するために、犠牲材料を除去する必要がある。
図2は、犠牲材料112が除去され、ビーム114が解除された後の、
図1のMEMSデバイス100の概略図である。犠牲材料112は、湿式エッチング剤または乾式エッチング剤であり得るエッチング剤が、解除孔120を通して導入されるエッチングプロセスによって除去される。犠牲材料112が除去されると、犠牲材料のために使用されていた場所は空洞202と見なされる。
【0028】
ビーム構造体114は、犠牲材料112が除去されると空洞202内で自由に移動する。ビーム構造体114は、必要に応じて、プルアップ電極116およびルテニウムの接触面124を含有する電気接点スタックの両方から離間した第1の位置(
図2に示される)から、接触面124と接触する第2の位置まで、およびプルアップ電極116に隣接して配置され、第1の位置よりも接触面124からより大きな距離で離間した第3の位置まで前後に移動し得る。「第1の位置」、「第2の位置」、および「第3の位置」という用語は、限定することを意図するものではなく、ビーム構造体114は、任意の順序で3つの位置のいずれかに移動し、そこから移動し得る。
【0029】
上述したように、犠牲材料112は除去されるが、デバイス100内の他のすべては残る。このように、接触面124、126は、ルテニウムを含有する接触部分122と同様に露出している。追加的に上述したように、ルテニウムは、低抵抗で耐久性のある接点であるが、ルテニウム接点は、動作寿命にわたって潜在的な張り付き現象の影響を受けやすくなる。したがって、驚くべきことに、ルテニウムの追加処理は、より少ない張り付きをもたらし、デバイスの接触抵抗をさらに低下させることが見出されている。
【0030】
デバイス100のルテニウムを含む要素(すなわち、ビーム接触部分122および接触面124、126)は、フッ素系処理で処理され得る。例えば、フッ素および酸素を含有するプラズマは、任意選択的に、解除孔120を通して空洞202に導入され得る。一実施形態において、プラズマは、O2およびCF4から形成される。NF3、SF6およびCHF3などの他のフッ素系ガスが使用され得ることが企図される。一実施形態では、フロン系自己組織化単層(SAM)を利用し得る。したがって、本開示は、CF4に限定されるものではない。フッ素系処理の導入中に形成される過剰な量のCxFyポリマー形成は、許容できないレベルまで接触抵抗を増加させ得る。ルテニウムの過剰なフッ素ドーピングは、許容できないレベルまで接触抵抗を増加させ得る。したがって、低い接触抵抗を維持するために、できるだけ少ないポリマー形成が望まれる。
【0031】
図3Aは、犠牲材料112が除去された後、および/または任意選択的なフッ素系処理の後の、
図2のMEMSデバイス100の一部分を拡大した概略図である。
図3Aに示されるように、間質層330または残基の層は、接触面124の頂面332上に配置され得る。間質層330または残基の層は、MEMSデバイス100の様々な形成動作中、例えば、製造中もしくは構築中、犠牲材料112の除去中、または任意選択的なフッ素系処理中に接触面124、126上に形成され得る。
【0032】
任意選択的なフッ素系処理の後、塩素(Cl)エッチングプロセスが実行される。一実施形態において、塩素エッチングプロセスは、任意選択的なフッ素系処理の前に実行される。したがって、任意選択的なフッ素系処理は、塩素エッチングプロセスの前または後に行われ得る。塩素エッチングプロセスは、犠牲材料112の除去後に発生し得る。塩酸(HCl)、三塩化ホウ素(BCl3)、または塩素ガス(Cl2)などの塩素を含むエッチング剤は、解除孔120を通して空洞202に導入される。塩素エッチバックプロセスは、「湿式」または「乾式」プロセスであり得る。塩素に加えて、乾式エッチバックプロセスは、酸素および/または酸素とフッ素の組み合わせを含み得る。塩素含有エッチング剤は、デバイス100のルテニウムを含む要素、および間質層330などの残基のみをエッチングするような高いエッチング選択性を有している。したがって、塩素含有エッチング剤は、ビーム構造体114または誘電体層110をエッチングすることなく、接触電極面124、126の一部分、および/またはビーム接触面122の底部分をエッチングする。塩素含有エッチバックプロセスは、誘電体、チタン、窒化チタン、および窒化チタンアルミニウムに対して非常に高い選択性(20:1)を有し、これにより、エッチバックプロセスは、空洞内の他の構成要素に悪影響を与えることなく、接触電極面124、126を選択的にエッチバックすることが可能になる。
【0033】
図3Bは、デバイス100の露出したルテニウムを含む要素(すなわち、ビーム接触部分122および接触面124、126)がエッチングされた後の、
図2のMEMSデバイス100を拡大した概略図である。
図3Bにおいて、接触面124、126の頂部分または表面332、およびビーム接触部分122の底部分または表面334は、塩素エッチングプロセスを通じて部分的に除去されている。
図3Bは、接触面124、126およびビーム接触部分122の両方からのルテニウムの除去を示すが、除去は、接触面124、126にのみ、ビーム接触部分122にのみ、または接触面124、126およびビーム接触部分122の両方に生じ得る。
【0034】
ビーム接触部分122の底部分または表面334をエッチングすることにより、ビーム接触部分122をビーム構造体114内に陥凹させ、接触面124、126の頂部分または表面332をエッチングすることにより、接触電極の全体的な高さを低減する。
図3Bに示されるように、塩素エッチングプロセス中にエッチングされた露出したルテニウムを含む要素(すなわち、接触面124、126の頂面332および/またはビーム接触部分122の底面334)は、上昇した粗さを有する表面を有し得る。言い換えれば、接触面124、126の頂面332および/またはビーム接触部分122の底面334は、塩素を含有するエッチング剤でエッチングされたことによる表面粗さを有する。一実施形態では、頂面332および底面334は、各々、約1nm~約10nm、例えば、約2nm~約5nmの粗さの二乗平均平方根を有する。表面粗さは、塩素を含有するエッチング剤への表面332、334の長時間の露出により増加し得る。さらに、塩素エッチングプロセスに続いて、デバイス100の形成中に形成され得る任意の残基または間質層330は、アルゴンなどの不活性ガスを空洞内にポンプ圧送することによって、露出したルテニウムを含む要素から除去される。
【0035】
塩素含有エッチング剤は、例えば約4nm/分などの、約2nm/分~約10nm/分のルテニウムエッチング速度と、約20:1~約25:1の酸化物、TiAlN、およびTiNなどの周囲の露出材料に対するルテニウムのエッチングの選択比とを有する(すなわち、塩素含有エッチング剤は、塩素含有エッチング剤が酸化物、TiAlN、TiNをエッチングするよりも20~25倍速くルテニウムをエッチングし得る)。塩素を含有するエッチング剤は、空洞202内に、約1分~5分の間、例えば約2.5分~3分存在し得る。塩素エッチングプロセスは、接触面124、126およびビーム接触部分122の各々から約5nm~15nmのルテニウムを除去し得る。接触面124、126およびビーム接触部分122からルテニウムをエッチングすることによって、MEMSデバイス100の接触抵抗は、効果的に低下する。一実施形態では、塩素エッチングプロセスは、従来のMEMSデバイスと比較して、デバイス100の接触抵抗を約2倍低下させる。
【0036】
電気接点スタックの各々からの接触面124、126の一部分および/または各ビーム接触部分122の一部分をエッチングすることにより、犠牲材料112と接触していたルテニウム表面が洗浄される。塩素エッチングプロセスは、製造中もしくは構築中、犠牲材料112の除去中、または任意選択的なフッ素含有プラズマ処理中などのMEMSデバイス100を形成している間に表面上に形成され得る残基、間質層、または間質不純物をさらに除去する。例えば、塩素エッチングプロセスは、任意選択的なフッ素含有プラズマ処理の間に形成され得る任意のCxFyポリマー形成を除去し得る。
【0037】
犠牲材料112が除去され、露出したルテニウムが処理されると、デバイス100を封止する準備が整う。
図4は、MEMSデバイスが封止された後の
図3BのMEMSデバイス100の概略図である。
図4に示すように、封止部402は、解除孔120を封止するように形成される。封止部402は、ビーム構造体114上に配置された最頂部の誘電体層110に接触するように下方に延在する。封止部402は、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、またはそれらの組み合わせなどの誘電体材料を含み得る。
【0038】
犠牲材料が除去された後に露出したルテニウム表面を処理することにより、結果として生じるMEMSデバイスは、低抵抗で耐久性があり、張り付き現象の影響を受けにくい接触面を有することになる。
【0039】
一実施形態では、MEMSデバイスを製造する方法は、空洞内にルテニウムの接触面を含む1つ以上の電気接点スタックを形成することと、空洞内の1つ以上の電気接点スタックにわたってビーム構造体を形成することであって、空洞が犠牲材料を含有する、形成することと、犠牲材料を空洞から除去して、ビームを解放して空洞内を移動するようにすることと、塩素を含むエッチング剤を使用してルテニウムの接触面の一部分をエッチングすることと、空洞を封止することと、を含む。
【0040】
エッチング剤は、酸素またはフッ素系ガスをさらに含み得る。エッチング剤は、約2.5分~3分の期間、空洞内に存在し得る。ルテニウムの接触面の約5nm~約15nmは、エッチングを通して除去され得る。ビーム構造体は、ルテニウムを含む少なくとも1つの接触部分を含み得る。塩素を含むエッチング剤を使用してルテニウムの接触面の部分をエッチングすることは、ルテニウムを含む少なくとも1つの接触部分の底部分をエッチングすることをさらに含み得る。ルテニウムを含む少なくとも1つの接触部分の部分をエッチングすることにより、ルテニウムを含む少なくとも1つの接触部分をビーム構造体内に陥凹させ得る。MEMSデバイスは、少なくとも1つの接触電極を含み得る。ルテニウムの接触面を含む1つ以上の電気接点スタックのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの接触電極にわたって形成され得る。
【0041】
本方法は、塩素を含むエッチング剤を使用してルテニウムの接触面の部分をエッチングする前に、フッ素および酸素を含有するプラズマを空洞に導入することをさらに含み得る。塩素を含むエッチング剤は、塩酸、三塩化ホウ素、または塩素ガスを含み得る。塩素を含むエッチング剤を使用してルテニウムの接触面の部分をエッチングすることにより、ルテニウムの接触面から任意の残基または間質層をさらに除去し得る。塩素を含むエッチング剤は、毎分約4ナノメートル~毎分約6ナノメートルのエッチング速度を有し得る。塩素を含むエッチング剤は、酸化物または窒化チタンアルミニウムに対するルテニウムをエッチングするための約20:1の選択比を有し得る。
【0042】
当業者は、本開示の好ましい実施形態に対する改善および修正を認識するであろう。このような改善および修正は全て、本明細書に開示される概念および以下の特許請求の範囲内とみなされる。