(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】抗菌剤および方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20241115BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241115BHJP
C12N 15/70 20060101ALI20241115BHJP
C12N 15/74 20060101ALI20241115BHJP
C12N 15/87 20060101ALI20241115BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20241115BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20241115BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N1/21 ZNA
C12N15/70 Z
C12N15/74 Z
C12N15/87 Z
A61K35/74 A
A61K31/711
A61P31/04
(21)【出願番号】P 2021567824
(86)(22)【出願日】2020-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2020062957
(87)【国際公開番号】W WO2020229372
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-05-02
(32)【優先日】2019-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521492964
【氏名又は名称】フォリアム フード サイエンス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】ウッドワード,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】コガン,トリスタン
(72)【発明者】
【氏名】フュー,エドワード
(72)【発明者】
【氏名】クヌーパー,ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】リッチオ,アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】グロンダル,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】クルーブ,ジャスパー
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0273940(US,A1)
【文献】国際公開第2019/002471(WO,A1)
【文献】特開2017-012203(JP,A)
【文献】特表2017-512500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜動
物の成長または重量を増進させるための非医学的方法であって、
前記方法が前記動物への複数の
E.coliキャリア細胞の投与を含み、前記動物が細菌標的細胞を含み、それぞれの
E.coliキャリア細胞が標的細胞に対して毒性であるが前記
E.coliキャリア細胞に対して毒性でない抗菌剤をコードする第1のエピソームDNAを
含み、前記
E.coliキャリア細胞が前記
抗菌剤の標的細胞中における発現のために前記
第1のエピソームDNAを前記標的細胞中に接合移入することができ、第1の
エピソームDNAが標的細胞中における発現のために
E.coliキャリア細胞から前記標的細胞に移入されて前記抗菌剤を産生し、それにより前記動物中の標的細胞を死滅させまたは標的細胞の成長もしくは増殖を低減させ、前記動物の成長または重量を増進させ、
ここで標的細胞はSalmonella enterica細胞であり、
前記抗菌剤は、前記標的細胞中のCasヌクレアーゼとともに作動して前記標的細胞に含まれる1つ又は複数の染色体プロトスペーサー配列を切断するCRISPR/Cas系のガイドRNAまたはcrRNAをコードし、およびプロトスペーサー配列は、invB、sseE、およびsicPから選択される遺伝子の1つ又は複数のヌクレオチド配列を含む、前記方法。
【請求項2】
前記方法が前記動物における飼料転換率(FCR)を改善する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標的細胞
がS enterica亜種entericaである、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
複数の異なるS enterica亜種enterica血液型亜型を死滅させ、任意にそれぞれの血液型亜型がTyphimurium、Enteritidis、Virchow、Montevideo、Heidelberg、Hadar、Binza、Bredeney、Infantis、Kentucky、Seftenberg、Mbandaka、Anatum、Agona、およびDublinからなる群から選択される、
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記
E.coliキャリア細胞
がF18、Nissle、またはS17 E coli細
胞である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が前記動物の胃腸管における標的細胞を低減させ、任意に前記動物が鳥であり、前記方法が前記鳥の盲腸、素嚢、肝、脾、および/または回腸中の標的細胞を低減させる、
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のDNAがプラスミドに含まれ、前記プラスミドがRP4移入起点(oriT)および/またはp15A oriを含む、
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記
抗菌剤が前記標的細胞に含まれるプロトスペーサー配列を切断するように
前記標的細胞中で操作可能なCRISPR/Cas系の1つ又は複数の構成要素を含み
、前記標的細胞が
S.entericaの第1および第2の株を含み、それぞれの株が前記プロトスペーサー配列を含み、前記株の
標的細胞を死滅させる、
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記
CRISPR/Cas系が、前記標的細胞ゲノムに含まれる少なくとも3つの異なるプロトスペーサー配列を切断するように操作可能である、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記
抗菌剤が、
標的核酸配列を認識および改変することができるガイドされたヌクレアーゼを含み、前記標的配列が前記標的細胞の内因性染色
体に含まれるが、前記キャリア細胞には含まれず、前記ヌクレアーゼが前記標的細胞を死滅させまたは前記標的細胞の成長もしくは増殖を阻害するように前記染色
体を改
変する、
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記
キャリア細胞が細菌標的細胞に対して毒性であるが前記キャリア細胞に対して毒性でない抗菌剤をコードする第1のエピソームDNAを含む細菌細胞であり、前記キャリア細胞が前記抗菌剤の
前記標的細胞中における発現のために前記DNAを前記標的細胞中に接合移入することができ、それにより前記標的細胞を死滅させ、前記標的細胞がSalmonella
enterica細胞であり、前記キャリア細胞がE.coli細胞であ
り、前記抗菌剤は、前記標的細胞中のCasヌクレアーゼとともに作動して前記標的細胞に含まれる1つ又は複数のプロトスペーサー配列を切断するCRISPR/Cas系のガイドRNAまたはcrRNAをコードし、およびプロトスペーサー配列は、invB、sseE、およびsicPから選択される遺伝子の1つ又は複数のヌクレオチド配列を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法における使用のためのキャリア細胞。
【請求項12】
病原性細菌標的細胞による感染を処置するための対象への
キャリア細胞の投与を含む方法における使用のための複数のキャリア細胞を含む組成物であって、それぞれのキャリア細胞が標的細胞に対して毒性であるが前記キャリア細胞に対して毒性でない抗菌剤をコードする第1のエピソームDNAを含む細菌細胞であり、前記キャリア細胞が前記
抗菌剤の標的細胞中における発現のために前記
第1のエピソームDNAを前記標的細胞中に接合移入することができ、第1の
エピソームDNAが標的細胞中における発現のために
前記キャリア細胞から前記標的細胞に移入されて前記抗菌剤を産生し、それにより前記
家畜動物中の
前記標的細胞を死滅させまたは
前記標的細胞の成長もしくは増殖を低減させ、前記標的細胞がSalmonella細胞であり、前記キャリア細胞が
E.coli細胞であ
り、前記抗菌剤は、前記標的細胞中のCasヌクレアーゼとともに作動して前記標的細胞に含まれる1つ又は複数のプロトスペーサー配列を切断するCRISPR/Cas系のガイドRNAまたはcrRNAをコードし、およびプロトスペーサー配列は、invB、sseE、およびsicPから選択される遺伝子の1つ又は複数のヌクレオチド配列を含む、前記組成物。
【請求項13】
家畜動
物における人畜共通細菌標的細胞を死滅させる非医学的方法であって、前記方法が複数のキャリア細胞を前記動物に投与することを含み、それぞれのキャリア細胞が
前記標的細胞に対して毒性であるが前記キャリア細胞に対して毒性でない抗菌剤をコードする第1のエピソームDNAを含む細菌細胞であり、前記キャリア細胞が前記
抗菌剤の標的細胞中における発現のために前記
第1のエピソームDNAを前記標的細胞中に接合移入することができ、第1の
エピソームDNAが標的細胞中における発現のために
前記キャリア細胞から前記標的細胞に移入されて前記抗菌剤を産生し、それにより
家畜動物中の
前記標的細胞を死滅させまたは
前記標的細胞の成長もしくは増殖を低減させ、前記標的細胞がSalmonella
enterica細胞であり
、前記キャリア細胞が
E.coli細胞であ
り、
前記抗菌剤は、前記標的細胞中のCasヌクレアーゼとともに作動して前記標的細胞に含まれる1つ又は複数のプロトスペーサー配列を切断するCRISPR/Cas系のガイドRNAまたはcrRNAをコードし、およびプロトスペーサー配列は、invB、sseE、およびsicPから選択される遺伝子の1つ又は複数のヌクレオチド配列を含む、前記方法。
【請求項14】
前記方法が前記対象の胃腸管におけるSalmonellaを低減させる、請求項
12に記載の組成
物。
【請求項15】
前記方法が前記対象の胃腸管におけるSalmonellaを低減させる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記方法が動物の群(任意に一団または群れ)において行われ、前記動物の一部または全部が
前記標的細胞を含み、前記標的種の
標的細胞の拡散が前記群において低減され、または前記群から動物の第2の群への拡散が低減される、請求項
12または14に記載の組成物。
【請求項17】
前記方法が動物の群(任意に一団または群れ)において行われ、前記動物の一部または全部が前記標的細胞を含み、前記標的種の標的細胞の拡散が前記群において低減され、または前記群から動物の第2の群への拡散が低減される、請求項13または15に記載の方法。
【請求項18】
前記標的細胞が、死滅させる様々なSalmonella spp.型を含む、請求項
12、14および16のいずれか一項に記載の組成
物。
【請求項19】
前記標的細胞が、死滅させる様々なSalmonella spp.型を含む、請求項13、15、および17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記キャリア細胞、標的細胞、またはDNAがそれぞれ、請求項1から
10のいずれか一項で定義されるキャリア細胞、標的細胞、またはDNAである、請求項
11に記載の
キャリア細胞、
請求項12、14、16、および18のいずれか一項に記載の組成
物。
【請求項21】
前記キャリア細胞、標的細胞、またはDNAがそれぞれ、請求項1から10のいずれか一項で定義されるキャリア細胞、標的細胞、またはDNAである、請求項13、15、17、および19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
請求項
1~10または13、15、17、19、および21のいずれか一項に記載の方法における使用のためのDNA
、請求項11または20に記載のキャリア細胞、あるいは請求項12、14、16、18、および20のいずれか一項に記載の組成物であって、前記DNAが標的細胞中に導入することができ、CRISPR/Cas系の複数のガイドRNAまたはcrRNAをコードし、前記ガイドRNAまたはcrRNAが前記標的細胞ゲノムに含まれる複数の
染色体プロトスペーサー配列を認識するように前記標的細胞中においてCasヌクレアーゼとともに操作可能であり、前記標的細胞がSalmonella
enterica細胞であり、
前記プロトスペーサー配列
がinvB、sicP、
またはsse
Eから選択され
る遺伝子から選択される遺伝子の1つもしくは複数のヌクレオチド配列を含む、前記DNA
、キャリア細胞、または組成物。
【請求項23】
細菌宿主細胞中における前記DNAの複製のために操作可能な移入起点(oriT)および複製起点(oriV)を含むプラスミドに含まれる、請求項
22に記載のDNA。
【請求項24】
前記DNAが、配列番号15を含み、任意にSalmonella
enterica標的細胞への接合のためのキャリア細菌細胞中のプラスミドに含まれる、請求項
22または
23に記載のDNA。
【請求項25】
CRISPRリピート配列およびスペーサー配列を含み、
(a)前記リピート配列がそれぞれ配列番号16を含み、ならびに/または
(b)前記スペーサー配列が配列番号17~19から選択される1つ、2つ、もしくは3つの配列およびその相補配列を含み、任意に
前記Salmonella
enterica標的細胞への接合のための
前記キャリア細菌細胞中のプラスミドに含まれる、請求項
22または
23に記載のDNA。
【請求項26】
(任意に5’から3’への順序で)配列番号17、配列番号18、および配列番号19を含む、請求項
25に記載のDNA。
【請求項27】
前記標的細胞
がSalmonella
enterica細
胞であり、前記DNAがプラスミドに含まれ、前記プラスミドがIncFI、IncFII、IncFIll、IncFIV、IncFV、IncM、Inc9、InclO、Incl、IncA、IncB、IncC、IncH、IncIa、InclIc、IncI2、IncIy、IncJ、IncL、IncN、Inc2e、IncO、IncP、IncS、IncT、およびIncWプラスミドから選択される、請求項
1~10、13、15、17、19、および21のいずれか一項に記載の方
法。
【請求項28】
前記標的細胞がSalmonella enterica細胞であり、前記DNAがプラスミドに含まれ、前記プラスミドがIncFI、IncFII、IncFIll、IncFIV、IncFV、IncM、Inc9、InclO、Incl、IncA、IncB、IncC、IncH、IncIa、InclIc、IncI2、IncIy、IncJ、IncL、IncN、Inc2e、IncO、IncP、IncS、IncT、およびIncWプラスミドから選択される、請求項11、または21に記載のキャリア細胞、請求項12、14、16,18、および20のいずれか一項に記載の組成物、または請求項22~26のいずれか一項に記載のDNA。
【請求項29】
家畜動物が、ニワトリ(例えば、ブロイラーまたは産卵鶏)である、請求項1~10、13、15、17,19、21、および27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
家畜動物が、ニワトリ(例えば、ブロイラーまたは産卵鶏)である、請求項11、21、または28に記載のキャリア細胞、請求項12、14、16,18、20、および28のいずれか一項に記載の組成物、または請求項22~26、および28のいずれか一項に記載のDNA。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は細菌の間の接合を行う手段に関し、特に本発明は抗菌剤を含むキャリア細菌および使用の方法に関する。キャリア細菌は薬剤をコードするDNAを標的細胞中に接合移入することができる。
【0002】
本発明はさらに、動物における成長または飼料転換率(FCR)の促進に関する。本発明はさらに、Salmonellaの死滅またはSalmonellaの成長もしくは増殖の阻害に関する。本発明はさらに、例えば植物の成長、乾燥重量、湿潤重量、または作物生産の促進に有用な、Pseudomonasの死滅またはPseudomonasの成長もしくは増殖の阻害に関する。
【背景技術】
【0003】
染色体外複製(ori)と移入(tra)を制御するDNA配列は互いに区別できる。したがって、複製配列は一般にプラスミドの移入を制御せず、逆もそうである。複製と移入はいずれもプラスミドおよびホストにコードされた機能を利用する複雑な分子プロセスである。細菌の接合は1つの細菌から別の細菌への遺伝情報の一方向で水平な伝染である。移入される遺伝物質はプラスミドであることも、染色体の一部であることもある。接合性プラスミドを有する細菌細胞は、ドナー細胞とレシピエント細胞のカップリングおよび遺伝情報の移入に関与する表面構造(性繊毛)を含む。接合は細胞間の接触を伴い、遺伝属性の移入には多くのプラスミドが介在し得る。全ての天然の移入機構の中で、接合が最も効率的である。例えば、E.coliのFプラスミド、Enterococcus faecalisのpCFlOプラスミド、およびBacillus thuringiensisのpX016プラスミドは、交配対の確立のために異なる機構を採用しており、交配凝集体のサイズは様々であり、これらはグラム陰性細菌(F)ならびにグラム陽性細菌(pCFlOおよびpX016)の中で異なる宿主域を有している。これらのプラスミドサイズも異なっており、それぞれ54、100、および200kbである。しかし注目すべきことに、これらの接合システムは共通して極めて重要な特徴を有している。これらは液体媒体中で接合移入を持続することができ、極めて短い時間で100%に近い移入効率に達することが多い。したがって、接合プロセスによって環境のヌクレアーゼに対するプラスミドDNAの保護およびレシピエント細胞へのプラスミドDNAの極めて効率的な送達が可能になる。接合機能は生来プラスミドにコードされている。関連する遺伝子を1つの種の中で(狭い宿主域)または多くの種の間で(広い宿主域)移入することができる数多くの接合性プラスミド(およびトランスポゾン)が知られている。伝染性のプラスミドは、Streptococcus、Staphylococcus、Bacillus、Clostridium、およびNocardiaの病原性株を含むがこれらに限定されない数多くのグラム陽性の属において報告されてきた。接合の早期の段階は一般にグラム陰性細菌とグラム陽性細菌で異なる。グラム陰性細菌由来の接合性プラスミドにおけるいくつかの移入遺伝子の役割は、繊毛媒介細胞間接触、接合ポアの形成、および関連する形態学的機能を提供することである。繊毛はグラム陽性細菌における接合を開始することには関与していないようである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、
対象の成長または重量を増進させるための(例えば非医学的または医学的)方法を提供し、対象は細菌標的細胞を含み、本方法は標的細胞に対して毒性である抗菌剤をコードする第1のエピソームDNAを対象に投与することを含み、第1のDNAが標的細胞に移入されて薬剤が発現され、それにより対象中の標的細胞を死滅させまたは標的細胞の成長もしくは増殖を低減させ、対象の成長または重量を増進させる。
【0005】
一実施形態では、
対象の成長または重量を増進させるための(例えば非医学的または医学的)方法が提供され、本方法は対象への複数のキャリア細胞の投与を含み、対象は細菌標的細胞を含み、それぞれのキャリア細胞は標的細胞に対して毒性であるがキャリア細胞に対して毒性でない抗菌剤をコードする第1のエピソームDNAを含む細菌細胞であり、キャリア細胞は薬剤の標的細胞中における発現のためにDNAを標的細胞中に接合移入することができ、第1のDNAは標的細胞中における発現のためにキャリア細胞から標的細胞に移入されて抗菌剤を産生し、それにより対象中の標的細胞を死滅させまたは標的細胞の成長もしくは増殖を低減させ、対象の成長または重量を増進させる。
【0006】
有利には、対象におけるFCRが改善され(すなわち増進され)、すなわちFCR数が低下する。対象の群(例えば家畜動物等の動物の群)において本発明の方法を実施するとき、群の中の個体においてFCRが低下し、または群において平均FCRが低下する。低下は、キャリア細胞の投与の前のFCRとの比較として評価でき、または同じ種、年齢群、および同程度のもしくは同じ餌で飼育された動物についての平均と比較される。当業者であれば、例えば家畜動物、例えば子豚、ブタ、ヒツジ、ウシ(乳牛または肉牛)、魚類、甲殻類、家禽(例えばニワトリ(ブロイラーまたは産卵鶏)、ガチョウ、アヒル、またはシチメンチョウ)等についての標準的なFCRは熟知している。
【0007】
本発明はまた、キャリア細胞を提供し、
細胞は細菌標的細胞に対して毒性であるがキャリア細胞に対して毒性でない抗菌剤をコードする第1のエピソームDNAを含む細菌細胞であり、キャリア細胞は抗菌剤の標的細胞中における発現のためにDNAを標的細胞中に接合移入することができ、それにより標的細胞を死滅させ、標的細胞はSalmonella細胞であり、キャリア細胞はEnterobacteriaceae細胞である。
【0008】
病原性細菌標的細胞による感染を処置するための対象への細胞の投与を含む方法における使用のための複数のキャリア細胞を含む組成物であって、それぞれのキャリア細胞は標的細胞に対して毒性であるがキャリア細胞に対して毒性でない抗菌剤をコードする第1のエピソームDNAを含む細菌細胞であり、キャリア細胞は薬剤の標的細胞中における発現のためにDNAを標的細胞中に接合移入することができ、第1のDNAは標的細胞中における発現のためにキャリア細胞から標的細胞に移入されて抗菌剤を産生し、それにより対象中の標的細胞を死滅させまたは標的細胞の成長もしくは増殖を低減させ、標的細胞はSalmonella細胞であり、キャリア細胞はEnterobacteriaceae細胞である、組成物。
【0009】
動物(任意に家畜動物)における人畜共通細菌標的細胞を死滅させる非医学的方法であって、本方法が複数のキャリア細胞を動物に投与することを含み、それぞれのキャリア細胞は標的細胞に対して毒性であるがキャリア細胞に対して毒性でない抗菌剤をコードする第1のエピソームDNAを含む細菌細胞であり、キャリア細胞は薬剤の標的細胞中における発現のためにDNAを標的細胞中に接合移入することができ、第1のDNAは標的細胞中における発現のためにキャリア細胞から標的細胞に移入されて抗菌剤を産生し、それにより対象中の標的細胞を死滅させまたは標的細胞の成長もしくは増殖を低減させ、標的細胞はSalmonella細胞であり、任意にキャリア細胞はEnterobacteriaceae細胞である、方法。
【0010】
(任意に本発明の方法における使用のための)DNAであって、標的細胞中に導入することができ、CRISPR/Cas系の複数のガイドRNAまたはcrRNAをコードし、ガイドRNAまたはcrRNAが標的細胞ゲノムに含まれる複数のプロトスペーサー配列を認識するように標的細胞中においてCasヌクレアーゼとともに操作可能であり、
(a)プロトスペーサー配列が標的細胞ゲノムの1つもしくは複数の病原性アイランドヌクレオチド配列を含み、
(b)プロトスペーサー配列が標的細胞ゲノムの1つもしくは複数の侵入遺伝子配列を含み、
(c)プロトスペーサー配列が標的細胞ゲノムの1つもしくは複数の分泌系遺伝子配列を含み、ならびに/または
(d)プロトスペーサー配列がSalmonellaのavrA、sptP、sicP、sipA、sipD、sipC、sipB、sicA、invB、ssaE、sseA、sseB、sscA、sseC、sseD、sseE、sscB、sseF、sseG、mgtC、cigR、pipA、pipB、pipC、sopB、およびpipDから選択される(任意に、SalmonellaのinvB、sicP、sseE、pipA、pipB、pipC、hilA、marT、およびsopBから選択される)遺伝子から選択される遺伝子の1つもしくは複数のヌクレオチド配列、およびそれらのオルソログもしくはホモログを含む、DNA。
【0011】
本発明は以下の構成も提供する。
【0012】
第1の構成において:
第1のエピソームDNAを含むキャリア細菌細胞であって、DNAが目的の核酸配列(NSI)をコードするか、または標的細菌細胞に対して毒性であるがキャリア細胞に対して毒性でない抗菌剤をコードし、キャリア細胞が薬剤の標的細胞中における発現のためにDNAを標的細胞中に接合移入することができ、任意に、
(a)キャリア細胞が第1のDNAとは異なる第2のDNAを含み、第2のDNAが第1のDNAの複製のために必要な第1の因子を含むかまたはコードし、
(b)第1のDNAが前記第1の因子を含まずまたはコードせず、第1のDNAが第1の因子の非存在下では非自己複製性であるが、第2のDNAによって提供される第1の因子の存在下ではキャリア細胞中で複製することができ、
(c)細胞が標的細菌細胞中への第1のDNAの接合移入を行うために十分な1つまたは複数の接合因子をコードする遺伝子を含む、キャリア細菌細胞。
【0013】
実施形態では、本発明は、標的細胞ゲノム中における標的配列の認識によって作用するがキャリア細胞中では作用しない抗菌剤を使用することの利点を有用に認識し、これは第1のDNAがキャリア細胞に対する毒性なしにキャリア細胞中で自由に複製する能力を解放するものである。
【0014】
第2の構成において:
NSIをコードするか、または標的細菌細胞に対して毒性であるが標的細胞中への接合移入のためにDNAを運搬することができるキャリア細胞に対して毒性でない抗菌剤をコードする、DNAであって、第1のDNAが第1のDNAの複製のために必要な第1の因子を含まずまたはコードせず、第1のDNAが標的細菌細胞中に第1のDNAを接合移入するために必要な構成要素を欠いている、DNA。
【0015】
第3の構成において:
ヒトまたは動物の対象の成長または重量を増進させるための方法であって、本方法が対象の微生物群への本発明による複数のキャリア細胞の投与を含み、微生物群が標的細胞を含み、第1のDNAが標的細胞中における発現のためにキャリア細胞から標的細胞に移入されて抗菌剤を産生し、それにより対象中の標的細胞(例えばSalmonella細胞)を死滅させまたは標的細胞の成長もしくは増殖を低減させる、方法。
【0016】
第4の構成において:
植物の成長または重量を増進させるための方法であって、本方法が植物の微生物群への本発明による複数のキャリア細胞の投与を含み、微生物群が標的細胞を含み、第1のDNAが標的細胞中における発現のためにキャリア細胞から標的細胞に移入されて抗菌剤を産生し、それにより植物中の標的細胞(例えばPseudomonas細胞)を死滅させまたは標的細胞の成長もしくは増殖を低減させる、方法。
【0017】
第5の構成において:
対象に含まれまたは表面に含まれるバイオフィルムを低減させるための方法であって、バイオフィルムが標的細胞(例えばPseudomonas細胞)を含み、本方法がバイオフィルムへの本発明による複数のキャリア細胞の投与を含み、第1のDNAが標的細胞中における発現のためにキャリア細胞から標的細胞に移入されて抗菌剤を産生し、それによりバイオフィルム中の標的細胞を死滅させまたは標的細胞の成長もしくは増殖を低減させる、方法。
【0018】
第6の構成において:
(例えば接合性プラスミドに含まれる)第1のDNAを複製して前記DNAの複数のコピーを産生する方法であって、本方法が本発明による複数のキャリア細菌細胞を培養することを含み、前記第1のDNAを細胞中で複製し、任意にキャリア細胞から第1のDNAの複数のコピーを単離する、方法。
【0019】
第7の構成において:
複数の標的細菌細胞を死滅させまたはその成長もしくは増殖を低減させる方法であって、
(a)本発明によるまたは第6の構成の方法によって得られるキャリア細胞の試料を得ること、
(b)キャリア細胞の試料を複数の標的細菌細胞と接触させてキャリア細胞と標的細胞とを接合させること、および
(c)接合移入によって第1のDNAのコピーをキャリア細胞から標的細胞に移入し、抗菌剤が標的細胞中に提供され、標的細胞が死滅しまたは標的細胞の成長もしくは増殖が低減されること、
(d)第1のDNAが標的細胞中で複製可能でない(または実質的に複製可能でない)こと、
を含む方法。
【0020】
第8の構成において:
本発明による複数のキャリア細胞を含む、医薬組成物、家畜成長促進用組成物、人畜共通感染症制御剤、家畜への投与のための殺生物剤、土壌改良剤、除草剤、植物用肥料、食品もしくは食材の殺菌用組成物、歯科用組成物、個人用衛生組成物もしくは消毒用組成物(例えば家庭用もしくは工業用)。
【0021】
第9の構成において:
第1の態様では、
動物(例えば家畜動物、例えば家禽動物)の成長を促進する方法であって、本方法がガイドされたヌクレアーゼ系またはその構成要素を動物に投与すること、および動物に含まれる標的細菌中に系または構成要素を導入することを含み、ガイドされたヌクレアーゼは標的細菌に含まれる標的ヌクレオチド配列を認識および改変(例えば切断)することができ、それにより標的細菌を死滅させまたは標的細菌の成長もしくは増殖を阻害して動物の成長を促進する、方法。
【0022】
本方法は非医学的方法であり、動物における標的細菌の存在が動物の成長の阻害を可能にする。したがって、本方法は動物におけるかかる細菌の負荷を低減し、成長を促進する。
【0023】
第2の態様では、
動物(例えば家畜動物、例えば家禽動物)における飼料転換率(FCR)を増進させる方法であって、本方法がガイドされたヌクレアーゼ系またはその構成要素を動物に投与すること、および動物に含まれる標的細菌中に系または構成要素を導入することを含み、ガイドされたヌクレアーゼは標的細菌に含まれる標的ヌクレオチド配列を認識および改変(例えば切断)することができ、それにより標的細菌を死滅させまたは標的細菌の成長もしくは増殖を阻害して動物のFCRを増大させる、方法。
【0024】
本方法は非医学的方法であり、動物における標的細菌の存在が動物のFCRの増大を可能にする。したがって、本方法は動物におけるかかる細菌の負荷を低減し、FCRを増進させる(すなわち、FCR数を低減する)。
【0025】
第3の態様では、
動物(例えば家畜動物、例えば家禽動物)の成長を促進する方法であって、本方法がSalmonella細菌に毒性である抗菌剤を動物に投与することを含み、動物に含まれるSalmonella標的細菌が薬剤に曝露されて死滅し、または標的細菌の成長もしくは増殖が阻害されて、動物の成長が促進される、方法。
【0026】
本方法は非医学的方法であり、動物における標的細菌の存在が動物の成長の阻害を可能にする。したがって、本方法は動物におけるかかる細菌の負荷を低減し、成長を促進する。
【0027】
第4の態様では、
動物(例えば家畜動物、例えば家禽動物)における飼料転換率(FCR)を増進させる方法であって、本方法がSalmonella細菌に毒性である抗菌剤を動物に投与することを含み、動物に含まれるSalmonella標的細菌が薬剤に曝露されて死滅し、または標的細菌の成長もしくは増殖が阻害されて、動物のFCRが増進される、方法。
【0028】
本方法は非医学的方法であり、動物における標的細菌の存在が動物のFCRの増大を可能にする。したがって、本方法は動物におけるかかる細菌の負荷を低減し、FCRを増進させる(すなわち、FCR数を低減させる)。
【0029】
第10の構成において:
第1の態様では:
植物の成長、乾燥重量、湿潤重量、または作物生産を促進する方法であって、植物が標的細菌を含む微生物群を含み、本方法が微生物群を標的細菌に対して毒性である抗菌剤と接触させることを含み、標的細菌が死滅しまたは標的細菌の成長もしくは増殖が阻害されて、植物の成長、乾燥重量、湿潤重量、または作物生産が増大する、方法。
【0030】
第2の態様では、
植物の微生物群に含まれる標的細菌が薬剤と接触させられる方法における標的細菌に対して毒性である抗菌剤の使用であって、それにより植物の成長、乾燥重量、湿潤重量、または作物生産を促進するために標的細菌が死滅しまたは標的細菌の成長もしくは増殖が阻害される、使用。
【0031】
第3の態様では、
植物の収率を増大させる方法であって、植物が標的細菌を含む微生物群を含み、本方法が微生物群を標的細菌に対して毒性である抗菌剤と接触させることを含み、標的細菌が死滅しまたは標的細菌の成長もしくは増殖が阻害されて、植物の成長、乾燥重量、湿潤重量、または作物生産が増大する、方法。
【0032】
第4の態様では、
植物の微生物群に含まれる標的細菌が薬剤と接触させられる方法における標的細菌に対して毒性である抗菌剤の使用であって、それにより植物の作物収量を増大させるために、標的細菌が死滅しまたは標的細菌の成長もしくは増殖が阻害される、使用。
【0033】
第5の態様では、
植物の葉の葉緑素を増大させる方法であって、植物が標的細菌を含む微生物群を含み、本方法が微生物群を標的細菌に対して毒性である抗菌剤と接触させることを含み、標的細菌が死滅しまたは標的細菌の成長もしくは増殖が阻害されて、植物の葉の葉緑素が増大する、方法。
【0034】
第6の態様では、
植物の微生物群に含まれる標的細菌が薬剤と接触させられる方法における標的細菌に対して毒性である抗菌剤の使用であって、それにより植物の葉の葉緑素を増大させるために標的細菌が死滅しまたは標的細菌の成長もしくは増殖が阻害される、使用。
【0035】
第7の態様では、
植物の緑化を増大させる方法であって、植物が標的細菌を含む微生物群を含み、本方法が微生物群を標的細菌に対して毒性である抗菌剤と接触させることを含み、標的細菌が死滅しまたは標的細菌の成長もしくは増殖が阻害されて植物の緑化が増大する、方法。
【0036】
第8の態様では、
植物の微生物群に含まれる標的細菌が薬剤と接触させられる方法における標的細菌に対して毒性である抗菌剤の使用であって、それにより植物の緑化を増大させるために標的細菌が死滅しまたは標的細菌の成長もしくは増殖が阻害される、使用。
【0037】
第9の態様では、
植物に含まれるバイオフィルム(例えば葉のバイオフィルム)を減少させる方法であって、植物が標的細菌を含むバイオフィルムを含み、本方法が微生物群を標的細菌に対して毒性である抗菌剤と接触させることを含み、標的細菌が死滅しまたは標的細菌の成長もしくは増殖が阻害されて植物のバイオフィルムが減少する、方法。
【0038】
第10の態様では、
植物のバイオフィルム(例えば葉のバイオフィルム)に含まれる標的細菌が薬剤と接触させられる方法における標的細菌に対して毒性である抗菌剤の使用であって、それにより植物のバイオフィルムを阻害するために標的細菌が死滅しまたは標的細菌の成長もしくは増殖が阻害される、使用。
【0039】
任意に、標的細菌はPseudomonas細菌、例えばP syringaeまたはP aeruginosa細菌、または本明細書で開示した他の任意のPseudomonas細菌である。
【0040】
任意に、薬剤はガイドされたヌクレアーゼ系またはその構成要素、例えば標的細菌に含まれる標的核酸配列を改変(例えば切断)するための本明細書で開示した任意のかかる系または構成要素である。
【0041】
任意に、植物は本明細書で開示した任意の植物である。
【0042】
任意に、葉緑素は葉緑素aおよび/または葉緑素bである。
【0043】
任意に、薬剤は本発明のキャリア細胞に含まれ、前記接触させることは細胞をキャリア細胞と接触させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】レシピエントのコロニーに対して行われたPCRを示す図である。左から右に:1)プラスミドpFSMobC
*(対照)、2)S17内のプラスミドpFSMobC
*(対照)、3)接合完了体プレート(Cm30+Nal25)からのコロニー、4)接合完了体プレート(Cm30+Nal25)からの2番目のコロニー。
【
図2】Salmonella enteritidis FS26に対する、接合によって送達されたpFSMobSal7の生存の影響を示す図である。
【
図3】感染後7日目の盲腸におけるSalmonellaの数を示す図である。群当たりN=15の鳥。
【
図4】感染後7日目の盲腸におけるSalmonellaの検出頻度を示す図である。群当たりN=15の鳥。
【
図6】チャレンジの7日後の素嚢消化物におけるSalmonellaの数(CFU/g)を示す図である。N=9の鳥、P=0.03。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明は細菌の間の接合を行う手段に関し、特に本発明は抗菌剤を含むキャリア細菌および使用の方法に関する。キャリア細菌は薬剤をコードするDNAを標的細胞中に接合移入することができる。
【0046】
本発明はさらに、動物における成長、重量、または飼料転換率(FCR)の促進に関する。本発明はさらに、Salmonellaの死滅またはSalmonellaの成長または増殖の阻害に関する。
【0047】
したがって、対象の成長または重量を増進するための(例えば非医学的または医学的)方法であって、対象が細菌標的細胞を含み、本方法が標的細胞に対して毒性である抗菌剤をコードする第1のエピソームDNAを対象に投与することを含み、第1のDNAが標的細胞に移入されて薬剤が発現され、それにより対象中の標的細胞を死滅させまたは標的細胞の成長もしくは増殖を低減させ、対象の成長または重量を増進させる、方法が提供される。
【0048】
有利には、対象においてFCRが増進される。任意に、FCRは、薬剤またはキャリア細胞の投与の前の対象のFCRと比較して、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10%、例えば2~6%、または2~5%(例えば2、3、4、5または6%)増進される(すなわち低下する)。任意に、FCRは、薬剤またはキャリア細胞の投与を受けていない同種、同性の対照対象のFCRと比較して、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10%、例えば2~5%(例えば2、3、4、または5%)増進される。一実施形態では、対象は鳥、家禽、ニワトリ、シチメンチョウ、ガチョウ、またはアヒル(好ましくはニワトリ)であり、FCR数は0.03~0.07、例えば0.04~0.06、例えば0.04、0.05、または0.06の量で低下する。したがって、例えば、対照の鳥と比較して、対照の鳥のFCRは1.7(g飼料/g鳥)であり、本発明を使用して処置した後の対象の鳥は1.64~1.66のFCRを有している。本発明の対象と同種、同性、および同齢の、同じ餌(飼料)で飼育した対照の鳥(例えばニワトリ)は、本発明の処置を受けない。鳥は同じ一団のものでよい。したがって一実施形態では、鳥(例えばニワトリ)は1.64~1.66のFCRを有し、対象は本発明の方法によって処置されている。
【0049】
一例では、本方法は対象の群(例えば同種の対象、例えば家畜動物の群、例えば家禽の一団またはウシもしくはヒツジの群れ)について行われる。本例では、群の平均FCRは、同種、同亜種、または同型の対照動物群と比較して、または本方法によって処置する前の群の平均FCRと比較して、本方法によって増進される(すなわち、FCR数は低下する)。対照群は本発明の群と同じ種、同じ平均齢、同じ雌雄割合の動物群で、同じ餌で飼育されたものでよい。例えば、本発明の群と対照群とは、いずれも例えば1世代、2世代、または3世代遡って共通の先祖を有する家禽(例えばニワトリ)の一団である。一団はブロイラーニワトリまたは産卵鶏の一団であってよい。例えば、本発明の群と対照群とは、いずれも例えば1世代、2世代、または3世代遡って共通の先祖を有する肉牛の群れ、または乳牛の群れである。
【0050】
FCR、FE、およびECI
畜産業において、飼料転換率(FCR)は、家畜の体が動物用飼料を所望のアウトプットに転換する効率を測定する比率である。乳牛については、例えばアウトプットはミルクであり、食肉用に飼育される動物(例えば肉牛、ブタ、ニワトリ、および魚類)では、アウトプットは肉、したがって動物が獲得した体質量であり、動物の最終体重または加工されたアウトプットの質量で表わされる。FCRはインプット質量をアウトプットで除したもの(すなわち乳または肉の質量あたりの飼料の質量)である。いくつかの産業分野では、アウトプットをインプットで除した飼料効率(FE)(すなわち、FCRの逆数)が使用される。これらの概念は、摂取された食料の転換効率(ECI)とも密接に関連している。FCRはブタおよび家禽の生産において広く使用されており、FEはウシにおいてより一般的に使用されている。FCRは比であるので無次元であり、すなわち、これはFCRを決定するために使用される測定単位に影響されない。低いFCRを有する動物は、飼料を有効に利用していると考えられる。
【0051】
好ましくは、本発明によって産生される増進は対象の体質量の増大である。FCRの増進の代わりに、本発明は対象における飼料効率(FE)を増進するため、または対象における摂取食料の転換効率(ECI)を増進するための方法であってよい。
【0052】
FCRは飼料の乾燥質量を使用して計算してよく、または給餌されたままの湿潤質量基準で計算してよい。
【0053】
一実施形態では、FCR、FE、またはECI数は、0.2、0.5、1、1.5、または2、変化する。例えばFCRは1、1.5、または2、低減する。
【0054】
家畜についての転換比
肉牛
米国において2013年現在で、生体重増加について計算した4.5~7.5のFCRが正常範囲であり、6を超えるFCRが典型的であった。したがって、本発明の例において該または各動物は肉牛であり、動物のFCR数(または動物の平均FCR)は、本方法によって(動物の生体重を使用して計算して)6未満、例えば5.5、5、4.5、4、または3.5未満(任意に、前記FCRまたは平均FCRは3.5~5.9、例えば4~5.5)に低下する。
【0055】
乳牛
米国においては、ミルクの価格はタンパク質および脂肪の含量に基づいており、したがってFCRはこれを考慮して計算されることが多い。2011年現在で動物から得られたミルクにおけるタンパク質と脂肪の重量のみに基づいて計算したFCRを使用すれば、FCR13は貧弱であり、FCR8は極めて良好である。したがって、本発明の例において、該または各動物は乳牛であり、動物のFCR数(または動物の平均FCR)は本方法によって11、10、9、または8未満(かつ任意に5または6より大きい)に低減し、ここでFCRは本発明の方法によって処置された動物から得られたミルクのFCRであり、FCRはミルク中のタンパク質と脂肪を合わせた重量を使用して計算されている。
【0056】
タンパク質および脂肪に基づいて価格設定に対処する別の方法は、エネルギー補正したミルク(ECM)を使用することであり、これは最終の乳製品におけるある量の脂肪およびタンパク質を仮定して正規化する因子を付加する。その式は(0.327×ミルク質量)+(12.95×脂肪質量)+(7.2×タンパク質質量)である。酪農業では、飼料効率(ECM/摂取量)がFCR(摂取量/ECM)の代わりに使用されることが多い。1.3未満のFEは問題ありと考えられる。したがって、本発明の例では、該または各動物は乳牛であり、動物のFE数(または動物の平均FE)は本方法によって1.3、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.5、または3を超えて(かつ任意に4または5を超えずに)増大する。任意に、FEは1.3、1.5、1.6を超え、1.7を超えずに増大する。
【0057】
単にミルクの重量に基づくFEも使用される。1.30~1.70のFEが正常である。したがって、本発明の例では、該または各動物は乳牛であり、動物のFE数(または動物のFEの平均)は本方法によって1.3、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.5、または3を超えて(かつ任意に4または5を超えずに)増大する。任意に、FEは1.3、1.5、1.6を超え、1.7を超えずに増大する。
【0058】
ブタ
2011年現在、英国および欧州で商業的に使用されているブタは、体重増加を使用して計算して、子豚では約1、屠畜時には約3で終了するFCRを有していた。2012年現在でオーストラリアでは、アウトプットについての加工重量を使用して、加工肉の重量を使用して計算した4.5のFCRはほぼ良好であり、4.0は「良好」、3.8は「極めて良好」であった。2012年現在で米国では、市販のブタは体重増加を使用して計算して、体重240~250ポンドで3.46、250~260ポンドで3.65、260~270ポンドで3.87、および280~270ポンドで4.09のFCRを有していた。したがって、本発明の例では、該または各動物は子豚であり、動物のFCR数(または動物の平均FCR)は本方法によって1またはそれ未満に低減し、FCRは動物の体重増加を使用して計算している。したがって、本発明の例では、該または各動物は3月齢までのブタであり、動物のFCR数(または動物の平均FCR)は本方法によって1またはそれ未満に低減し、FCRは動物の体重増加を使用して計算している。したがって、本発明の例では、該または各動物は3月齢より大きく6~7月齢までのブタであり、動物におけるFCR数(または動物の平均FCR)は本方法によって3またはそれ未満(例えば1~3)に低減し、FCRは動物の体重増加を使用して計算している。子豚は1.5~3月齢であってよく、屠畜するブタは3月齢を超え、6月齢までであってよい。したがって、本発明の例では、該または各動物はその体重が240~250ポンドのブタであり、動物のFCR数(または動物の平均FCR)は本方法によって3.5またはそれ未満(例えば3.4またはそれ未満であるが、任意に3または2.5以上)に低減し、FCRは動物の体重増加を使用して計算している。したがって、本発明の例では、該または各動物はその体重が250~260ポンドのブタであり、動物のFCR数(または動物の平均FCR)は本方法によって3.7またはそれ未満(例えば3.65またはそれ未満であるが、任意に3または3.5以上)に低減し、FCRは動物の体重増加を使用して計算している。したがって、本発明の例では、該または各動物はその体重が260~270ポンドのブタであり、動物のFCR数(または動物の平均FCR)は本発明によって3.9またはそれ未満(例えば3.8またはそれ未満であるが、任意に3.7または3.5以上)に低下し、FCRは動物の体重増加を使用して計算している。したがって、本発明の例では、該または各動物はその体重が280~270ポンドのブタであり、動物におけるFCR数(または動物の平均FCR)は本方法によって4.1またはそれ未満(例えば4またはそれ未満であるが、任意に3.8または3.9以上)に低下し、FCRは動物の体重増加を使用して計算している。
【0059】
ヒツジ
ヒツジについてのいくつかのデータは、FCRにおける変動を示している。子羊についてのFCR(生体質量増kgあたりの飼料乾燥物摂取量kg)は、約4~6の範囲であることが多い。したがって、本発明の例では、該または各動物はヒツジであり、動物のFCR数(または動物の平均FCR)は本方法によって6またはそれ未満(例えば4~6)に低減し、FCRは動物の生体質量増kgあたりの飼料乾燥物摂取量kgを使用して計算している。
【0060】
家禽
2011年現在で米国では、ブロイラーニワトリは典型的には体重増加に基づいて1.6のFCRを有し、39日で成熟する。ほぼ同じ頃、ブラジルにおけるブロイラーの体重増加に基づくFCRは1.8であった。したがって、本発明の例では、該または各動物は家禽(例えばブロイラーニワトリ)であり、動物のFCR数(または動物の平均FCR)は本方法によって1.9、1.8、1.7、1.6、またはそれ未満(例えば1.9~1.5、または1.8~1.6)に低減し、FCRは体重増加に基づいて計算している。任意に、FCRはそれぞれの動物が35~40日齢、例えば39日齢であるときに計算する。
【0061】
2011年現在で米国における採卵用のニワトリについては、FCRは約2であり、それぞれの雌鶏は1年あたり330個を産卵した。したがって、本発明の例では、該または各動物は家禽(例えば産卵鶏、例えばニワトリ)であり、動物のFCR数(または動物の平均FCR)は本方法によって2またはそれ未満(例えば2~1.5)に低減し、FCRは体重増加に基づいて計算している。したがって、本発明の例では、該または各動物は家禽(例えば産卵鶏、例えばニワトリ)であり、動物が産む卵の数(または動物が産む卵の平均数)は1年あたり(または異なる期間については按分して)330個を超え、例えば1年あたり(または按分した期間で)340、350、または400個を超える。
【0062】
肉食性魚類
FIFO比(またはフィッシュイン-フィッシュアウト比)は、水産養殖に適用される転換比であり、1番目の数字は養殖魚に与えるために使用する捕獲した魚の質量であり、2番目の数字は得られた養殖魚の質量である。FIFOは、水産飼料に使用する捕獲した野生の魚の寄与を食用の養殖魚の量と比較した比として表わす方式である。水産飼料における魚粉および魚油の含有率は、水産養殖業が成長してより多くの飼料が生産されるとともに経時的に連続減少してきたが、魚粉および魚油の年間供給は有限である。計算によって、全体の飼料水産養殖FIFOは2000年の0.63から2010年の0.33および2015年の0.22に減少した。2015年には、捕獲して飼料中に用いた野生魚1kgごとにほぼ4.55kgの養殖魚が生産された。魚粉および魚油の生産において使用する魚は人による消費には使用されないが、水産飼料における魚粉および魚油としてのそれらの使用によって、それらは世界的な食糧生産に寄与している。したがって、例において本発明の方法は、動物が魚類(例えばサケ、テラピア、またはナマズ)である場合に、FIFO比を増進(すなわち増大)させる。例えば、FIFOは0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、もしくは0.8、1、1.5、もしくは2またはそれ以上に増大する。例えば、魚類はサケまたはナマズであり、FIFOは1、1.5、または2を超え(任意に2または2.5を超えず)上昇する。例えば、魚類はテラピアであり、FIFOは1.5または2を超え(任意に2または2.5を超えず)上昇する。
【0063】
成長または重量の増進は、ミルクの生産または収率の増進(増大)、例えば対照群と比較した本発明の群についての平均増大であり得る。対照群は本発明の群と同じ種、同じ平均齢、同じ雌雄割合の動物群で、同じ餌で飼育されたものでよい。例えば、ここで対象は乳牛であってよい。
【0064】
成長または重量の増進は、卵の生産または収率の増進(増大)、例えば対照群と比較した本発明の群についての平均増大であり得る。対照群は本発明の群と同じ種、同じ平均齢、同じ雌雄割合の動物群で、同じ餌で飼育されたものでよい。例えば、ここで対象は産卵鶏であってよい。
【0065】
成長または重量の増進は、食肉の生産または収率の増進(増大)、例えば対照群と比較した本発明の群についての平均増大であり得る。対照群は本発明の群と同じ種、同じ平均齢、同じ雌雄割合の動物群で、同じ餌で飼育されたものでよい。例えば、ここで対象は乳牛、家禽(例えばニワトリ)、魚類、甲殻類、ヒツジ、またはブタであってよい。
【0066】
成長または重量の増進は、脂肪の生産または収率の増進(増大)、例えば対照群と比較した本発明の群についての平均増大であり得る。対照群は本発明の群と同じ種、同じ平均齢、同じ雌雄割合の動物群で、同じ餌で飼育されたものでよい。例えば、ここで対象は乳牛、家禽(例えばニワトリ)、魚類(例えばサケ、テラピア、またはナマズ)、甲殻類、ヒツジ、またはブタであってよい。
【0067】
成長または重量の増進は、毛皮または皮革の生産または収率の増進(増大)、例えば対照群と比較した本発明の群についての平均増大であり得る。対照群は本発明の群と同じ種、同じ平均齢、同じ雌雄割合の動物群で、同じ餌で飼育されたものでよい。例えば、ここで対象はウシであってよい。
【0068】
一例では、対象は甲殻類である。甲殻類はエビ、ザリガニ、カニ、ロブスター、ハマグリ、ホタテ、カキ、クルマエビ、およびイガイから選択され得る。
【0069】
対象は本明細書で開示した任意の対象であってよい。対象は家畜動物、例えば鳥(例えば家禽、またはニワトリもしくはシチメンチョウ)、またはブタ等の動物であってよい。あるいは、対象はヒト、例えば摂食障害(例えば拒食症)を患うヒト、または低体重のヒト、例えばヒトが18.5、18、17、16、または15未満の肥満度指数(BMI)を有する場合であってよい。例えば、ヒトは軽度の拒食症(すなわちヒトが17.5未満のBMIを有している)、中程度の拒食症(すなわちヒトが16~16.99のBMIを有している)、重度の拒食症(すなわちヒトが15~15.99のBMIを有している)、または極端な拒食症(すなわちヒトが15未満のBMIを有している)を有する。
【0070】
一選択肢では、対象は植物であり、例えば標的細菌は植物病原細菌である。一例では、標的細菌はPseudomonas、例えばP syringaeまたはP aeruginosaである。
【0071】
一選択肢では、標的細胞は古細菌細胞である。例えば、標的細胞はメタン細菌細胞である。
【0072】
例えば、標的細胞はメタン生成細胞である。例えば、標的細胞は
・Methanobacterium bryantii
・Methanobacterium formicum
・Methanobrevibacter arboriphilicus
・Methanobrevibacter gottschalkii
・Methanobrevibacter ruminantium
・Methanobrevibacter smithii
・Methanococcus chunghsingensis
・Methanococcus burtonii
・Methanococcus aeolicus
・Methanococcus deltae
・Methanococcus jannaschii
・Methanococcus maripaludis
・Methanococcus vannielii
・Methanocorpusculum labreanum
・Methanoculleus bourgensis(Methanogenium olentangyiおよびMethanogenium bourgense)
・Methanoculleus marisnigri
・Methanoflorens stordalenmirensis[34]
・Methanofollis liminatans
・Methanogenium cariaci
・Methanogenium frigidum
・Methanogenium organophilum
・Methanogenium wolfei
・Methanomicrobium mobile
・Methanopyrus kandleri
・Methanoregula boonei
・Methanosaeta concilii
・Methanosaeta thermophila
・Methanosarcina acetivorans
・Methanosarcina barkeri
・Methanosarcina mazei
・Methanosphaera stadtmanae
・Methanospirillium hungatei
・Methanothermobacter defluvii(Methanobacterium defluvii)
・Methanothermobacter thermautotrophicus(Methanobacterium thermoautotrophicum)
・Methanothermobacter thermoflexus(Methanobacterium thermoflexum)
・Methanothermobacter wolfei(Methanobacterium wolfei)
・Methanothrix sochngenii
から選択される1つまたは複数の細胞の種を含む。
【0073】
任意に、例えば本方法が非医学的方法である場合に、標的細胞は対象に対して病原性ではない。一例では、本方法は美容のための方法である。
【0074】
例えば、標的細胞はメタン産生細胞であり、任意に、対象は家畜動物、好ましくは反芻動物、またはウシ(例えば肉牛または乳牛)である。かかる動物においてメタン産生細胞を低減することにより、本発明は一実施形態において動物の体重を増進させ(例えば動物からの食肉の収率を増進し)、および/またはミルクもしくは動物の別の生産物、例えば毛皮もしくは脂肪の収率を増進させ得る。
【0075】
一例では、標的細胞はE coli、Salmonella、およびCampylobacter細胞から選択される。一例では、標的細胞はE coli、Salmonella、またはCampylobacterの細胞である。一例では、それぞれの動物はニワトリ(例えばブロイラーまたは産卵鶏)であり、標的細胞はSalmonellaまたはCampylobacter細胞である。一例では、それぞれの動物はウシ(例えば肉牛または乳牛)であり、標的細胞はメタン細菌細胞である。
【0076】
一例では、標的細胞はMycoplasma(例えばMycoplasma mycoides(例えばMycoplasma mycoides亜種Mycoides)、Mycoplasma leachiiまたはMycoplasma bovis)、Brucella abortus、Listeria monocytogenes、Clostridium(例えばClostridium chauvoeiまたはClostridium septicum)、Leptospira(例えばL.canicola、L.icterohaemorrhagiae、L.grippotyphosa、L.hardjo、またはL.Pomona)、Mannheimia haemolytica、Trueperella pyogenes、Mycobacterium bovis、Campylobacter spp.(例えばCampylobacter jejuniまたはCampylobacter coli)、Bacillus anthracis、E.coli(例えばE.coli O157:H7)、またはPasteurella multocida(例えばPasteurella multocida B:2、E:2、A:1、またはA:3)から選択される。本例では、任意に、対象または動物は家畜動物、例えばウシ、ヒツジ、ヤギ、またはニワトリ(好ましくはウシ)である。
【0077】
任意に、例えば対象が動物(例えば家畜動物または野生動物)である場合に、標的細胞は人畜共通細菌細胞、例えばBacillus anthracis、Mycobacterium bovis(例えば動物がウシである場合)、Campylobacter spp(例えば動物が家禽動物である場合)、Mycobacterium marinum(例えば動物が魚類である場合)、志賀毒素産生E.Coli(例えば動物が反芻動物である場合)、Listeria spp(例えば動物がウシまたはヒツジである場合)、Chlamydia abortus(例えば動物がヒツジである場合)、Coxiella burnetii(例えば動物がウシ、ヒツジ、またはヤギである場合)、Salmonella spp(例えば動物が家禽動物である場合)、Streptococcus suis(例えば動物がブタである場合)、およびCorynebacterium(例えばC ulcerans)(例えば動物がウシである場合)から選択される種の細胞である。
【0078】
一例では、本明細書に記載した複数のキャリア細胞(例えば本明細書に記載した任意の構成、態様、実施例、または実施形態のキャリア細胞)が対象に投与され、キャリア細胞は薬剤をコードするDNAを含む。
【0079】
一例では、それぞれの動物はニワトリ(例えばブロイラーまたは産卵鶏)であり、標的細胞はSalmonellaまたはCampylobacter細胞である。一例では、それぞれの動物はウシ(例えば肉牛または乳牛)であり、標的細胞はメタン細菌細胞である。
【0080】
したがって、一実施形態では、
対象の成長または重量を増進させるための(例えば非医学的または医学的)方法であって、本方法が対象への複数のキャリア細胞の投与を含み、対象が細菌標的細胞を含み、それぞれのキャリア細胞が標的細胞に対して毒性であるが前記キャリア細胞に対して毒性でない抗菌剤をコードする第1のエピソームDNAを含む細菌細胞であり、キャリア細胞が薬剤の標的細胞中における発現のためにDNAを標的細胞中に接合移入することができ、第1のDNAが標的細胞中における発現のためにキャリア細胞から標的細胞に移入されて抗菌剤を産生し、それにより対象中の標的細胞を死滅させまたは標的細胞の成長もしくは増殖を低減させ、対象の成長または重量を増進させる、方法が提供される。
【0081】
任意に、標的細胞はSalmonella細胞である。一例では、標的細胞はS entericaおよび/またはS typhimurium細胞を含み;任意に、S entericaはS enterica亜種entericaである。任意に、本方法は複数の異なるS enterica亜種enterica血液型亜型を死滅させる;任意に、それぞれの血液型亜型はTyphimurium、Enteritidis、Virchow、Montevideo、Heidelberg、Hadar、Binza、Bredeney、Infantis、Kentucky、Seftenberg、Mbandaka、Anatum、Agona、およびDublinからなる群から選択される。任意に、本方法はS enterica亜種enterica血液型亜型Typhimurium、Infantis、およびEnteritidisを死滅させる。任意に、本方法はS enterica亜種enterica血液型亜型TyphimuriumおよびEnteritidisを死滅させる。任意に、本方法はS enterica亜種enterica血液型亜型TyphimuriumおよびInfantisを死滅させる。任意に、本方法はS enterica亜種enterica血液型亜型EnteritidisおよびInfantisを死滅させる。ニワトリにおいて最も蔓延している血液型亜型はSalmonella Enteritidis、Salmonella Infantis、およびSalmonella Typhimuriumである。一般に、感染したヒトおよびニワトリにおいてSalmonellaの類似の血液型亜型(S.EnteritidisおよびS.Typhimurium)が見られる。家畜動物においてSalmonellaを死滅させることによって、本発明は(例えば家畜または家畜から製造された製品、例えばヒトの消費のための食肉または乳製品を食べること等による)ヒトへの伝染のために利用され得る人畜共通細菌のプールを低減するために有用である。
【0082】
有利には、キャリア細胞はEnterobacteriaceae細胞、任意に、E coli細胞である。以下の実施例で例示するように、本発明者らは驚くべきことに、(i)in vivoとin vitroの両方でかかる細胞からSalmonella標的細胞に抗菌剤を効率的に移入できること、および(ii)薬剤をEnterobacteriacae細胞からSalmonella細胞に接合によって移入した場合に、Salmonellaの100%の死滅が可能であったことを見出した。さらに驚くべきことに、ガイドされたヌクレアーゼ抗菌剤をコードするDNAは、臨床的にも人畜共通感染症としても重要なTyphimurium、Infantis、およびEnteritidisを含む18種のSalmonella spp.血清型を死滅させることができた。任意に、本方法は、S enterica亜種enterica血液型亜型TyphimuriumおよびEnteritidis血液型亜型を死滅させる。任意に、Enterobacteriaciae細胞は、表5に示すEnterobacteriaciae種の細胞である。
【0083】
重要なことに、標的細胞の低減は、対象のGI管で観察された。したがって、任意に、本方法は動物の胃腸管において標的細胞を低減させる。任意に、本方法は動物の空腸、回腸、結腸、肝、脾、または盲腸において標的細胞を低減させる;任意に、動物は鳥であり、本方法は鳥の盲腸において標的細胞を低減させる。これは、家畜動物等の対象の糞便中における人畜共通またはその他の有害な標的株の拡散を低減させるために重要であり得る。したがって、一例では本方法は対象の群(例えば群れまたは一団、例えばブタの群れまたは鳥の一団)について行われ、標的種の細胞の拡散がその群において低減される。本発明者らは、本発明を使用してSalmonellaを死滅させる家禽の一団においてこれを実証し、ここではガイドされたヌクレアーゼを使用して標的細胞中の複数のプロトスペーサー配列を切断し、それにより細胞を死滅させてその一団における細胞の拡散を低減する。
【0084】
したがって、一例では本方法は動物の群(任意に、一団または群れ)において行われ、動物の一部または全部が標的細胞を含み、標的種の細胞の拡散はその群において低減され、またはその群から動物の第2の群への拡散が低減される。
【0085】
任意に、第1のDNAはプラスミドに含まれ、例えばプラスミドはRP4移入起点(oriT)を含む。プラスミドは本明細書で開示した任意の型のプラスミドであってよい。
【0086】
薬剤は本明細書で開示した任意の抗菌剤、好ましくは標的細胞中の1つまたは複数の標的配列を切断するようにプログラムされた、ガイドされたヌクレアーゼであってよい。好適なヌクレアーゼはTALEN、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、またはCasヌクレアーゼであってよい。例えば、薬剤は、標的細胞に含まれるプロトスペーサー配列を切断するように標的細胞中で操作可能なCRISPR/Cas系の1つまたは複数の構成要素(例えばCasヌクレアーゼおよび/またはガイドRNAもしくはcrRNA)を含み、任意に、標的細胞は細菌種の第1および第2の株を含み、それぞれの株はプロトスペーサー配列を含み、その株の細胞が死滅する。例えば、系は細胞ゲノムに含まれる少なくとも3つの異なるプロトスペーサー配列を切断するように操作可能である。任意に、前記プロトスペーサー配列のそれぞれまたはいくつかは、細胞に含まれる病原性アイランドに含まれる。実施例で示すように、これは標的細胞の死滅に高度に効果的である。任意に、薬剤は標的細胞ゲノムに含まれる複数の異なるプロトスペーサー配列を切断するように操作可能である。任意に、薬剤は、標的細胞ゲノムに含まれる(例えば標的細胞の染色体に含まれる)少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の異なるプロトスペーサー配列を切断するように標的細胞中で操作可能なCRISPR/Cas系の1つまたは複数の構成要素を含む。
【0087】
一実施形態では、薬剤は、
(a)標的核酸配列を認識し改変することができるガイドされたヌクレアーゼを含み、標的配列は標的細胞の内因性染色体またはエピソームに含まれるがキャリア細胞には含まれず、ヌクレアーゼは染色体またはエピソームを改変して標的細胞を死滅させまたは標的細胞の成長もしくは増殖を阻害し、および/または
(b)標的細胞に含まれるプロトスペーサー配列を切断するように標的細胞中でCasヌクレアーゼとともに作動するCRISPR/Cas系のガイドRNAまたはcrRNAをコードする。
【0088】
(任意に、本発明の方法における使用のための)キャリア細胞であって、細胞が細菌標的細胞に対して毒性であるがキャリア細胞に対して毒性でない殺菌剤をコードする第1のエピソームDNAを含む細菌細胞であり、キャリア細胞が抗菌剤の標的細胞中における発現のためにDNAを標的細胞中に接合移入することができ、それにより標的細胞を死滅させ、標的細胞がSalmonella細胞であり、キャリア細胞がEnterobacteriaceae細胞である、キャリア細胞も提供される。
【0089】
病原性細菌標的細胞による感染を処置するための対象への細胞の投与を含む方法における使用のための複数のキャリア細胞を含む組成物であって、それぞれのキャリア細胞が標的細胞に対して毒性であるがキャリア細胞に対して毒性でない抗菌剤をコードする第1のエピソームDNAを含む細菌細胞であり、キャリア細胞が薬剤の標的細胞中における発現のためにDNAを標的細胞中に接合移入することができ、第1のDNAが標的細胞中における発現のためにキャリア細胞から標的細胞に移入されて抗菌剤を産生し、それにより対象中の標的細胞を死滅させまたは標的細胞の成長もしくは増殖を低減させ、標的細胞がSalmonella細胞であり、キャリア細胞がEnterobacteriaceae細胞である、組成物も提供される。一選択肢では、本方法は病原性標的細胞による感染の症状を処置しまたは低減する。
【0090】
本明細書における対象への細胞のいずれの投与も、経口投与であってよい。本明細書における対象への細胞のいずれの投与も、好ましくはGI管への投与である。本明細書における対象への細胞のいずれの投与も、全身、経鼻、または吸入投与であってよい。
【0091】
動物における人畜共通細菌標的細胞を死滅させる非医学的方法であって、本方法が複数のキャリア細胞を動物に投与することを含み、それぞれのキャリア細胞が標的細胞に対して毒性であるがキャリア細胞に対して毒性でない抗菌剤をコードする第1のエピソームDNAを含む細菌細胞であり、キャリア細胞が薬剤の標的細胞中における発現のためにDNAを標的細胞中に接合移入することができ、第1のDNAが標的細胞中における発現のためにキャリア細胞から標的細胞に移入されて抗菌剤を産生し、それにより対象中の標的細胞を死滅させまたは標的細胞の成長もしくは増殖を低減させ、標的細胞がSalmonella細胞であり、任意にキャリア細胞がEnterobacteriaceae細胞である、方法も提供される。
【0092】
動物は本明細書で開示した任意の動物、例えば家畜動物、馴化された動物、または野生の動物(例えばコウモリまたは鳥)であってよい。
【0093】
任意に、本明細書におけるいずれの方法も、対象の胃腸管におけるSalmonellaを低減する。任意に、標的細胞は、死滅させる様々なSalmonella spp.型を含む。
【0094】
いずれの態様、構成、実施例、概念、または実施形態でも、キャリア細胞、標的細胞、またはDNAはそれぞれ、他の任意の態様、構成、実施例、概念、または実施形態で定義したキャリア細胞、標的細胞、またはDNAである。
【0095】
本発明はまた、標的細胞中に導入することができるDNAであって、CRISPR/Cas系の複数のガイドRNAまたはcrRNAをコードし、ガイドRNAまたはcrRNAが標的細胞ゲノムに含まれる複数のプロトスペーサー配列を認識するように標的細胞中においてCasヌクレアーゼとともに操作可能であり、任意に、標的細胞がSalmonella細胞または表5に開示した種の細胞であり、
(a)プロトスペーサー配列が標的細胞ゲノムの1つもしくは複数の病原性アイランドヌクレオチド配列を含み;
(b)プロトスペーサー配列が標的細胞ゲノムの1つもしくは複数の侵入遺伝子配列を含み;
(c)プロトスペーサー配列が標的細胞ゲノムの1つもしくは複数の分泌系遺伝子配列を含み;
ならびに/または
(d)プロトスペーサー配列がSalmonella(例えばS.enterica)のavrA、sptP、sicP、sipA、sipD、sipC、sipB、sicA、invB、ssaE、sseA、sseB、sscA、sseC、sseD、sseE、sscB、sseF、sseG、mgtC、cigR、pipA、pipB、pipC、sopB、およびpipDから選択される(任意に、invB、sicP、sseE、pipA、pipB、pipC、hilA、marT、およびsopBから選択される)遺伝子、または前記遺伝子のオルソログまたはホモログの1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む、DNAが提供される。
【0096】
ホモログ:共通の先祖のDNAまたはタンパク質の配列からの家系で第2の遺伝子、ヌクレオチド、またはタンパク質の配列に関係付けられる遺伝子、ヌクレオチド、またはタンパク質の配列。用語「ホモログ」は、遺伝子複製の事象によって分離された遺伝子の間の関係または遺伝子複製の事象によって分離された遺伝子の間の関係に適用され得る。
【0097】
オルソログ:オルソログは、共通の先祖の遺伝子、ヌクレオチド、またはタンパク質の配列からスペシエーションによって進化した異なる種における遺伝子、ヌクレオチド、またはタンパク質の配列である。通常、オルソログは進化の過程において同じ機能を保持する。
【0098】
「前記遺伝子のオルソログまたはホモログ」は、プロトスペーサーが標的細胞ゲノムの遺伝子に含まれる配列であってよく、遺伝子がavrA、sptP、sicP、sipA、sipD、sipC、sipB、sicA、invB、ssaE、sseA、sseB、sscA、sseC、sseD、sseE、sscB、sseF、sseG、mgtC、cigR、pipA、pipB、pipC、sopB、およびpipDから選択される(任意に、invB、sicP、sseE、pipA、pipB、pipC、hilA、marT、およびsopBから選択される)Salmonella遺伝子のオルソログまたはホモログであることを意味する。
【0099】
任意に、DNAは本発明の方法における使用のための第1のDNAである。好ましくは、標的細胞はSalmonella細胞、例えばSalmonella enterica亜種enterica血液型亜型Enteritidis細胞等のS enterica細胞である。
【0100】
任意に、本明細書におけるいずれのSalmonellaもSalmonella enterica亜種enterica血液型亜型Typhimurium株LT2である。
【0101】
任意に、標的細胞はSalmonella種以外の表5に開示した種の細胞であり、(d)の配列はSalmonella(例えばS.enterica)のavrA、sptP、sicP、sipA、sipD、sipC、sipB、sicA、invB、ssaE、sseA、sseB、sscA、sseC、sseD、sseE、sscB、sseF、sseG、mgtC、cigR、pipA、pipB、pipC、sopB、およびpipDのオルソログまたはホモログから選択される(任意に、invB、sicP、sseE、pipA、pipB、pipC、hilA、marT、およびsopBから選択される)遺伝子の配列である。
【0102】
DNAは1つまたは複数のCRISPRスペーサーを含んでよく、それぞれのスペーサーは分泌系遺伝子(任意に、SalmonellaのIII型タンパク質分泌系またはSPI-1もしくはSPI-2の分泌系)、またはT3SS遺伝子座遺伝子、またはそれらから10、9、8、7、6、5、4、3、もしくは2までのヌクレオチド差のヌクレオチド配列からなる。
【0103】
任意に、DNA(例えばキャリア細胞のDNA)は、CRISPR/Cas系の複数のガイドRNAまたはcrRNAをコードし、ガイドRNAまたはcrRNAは標的細胞ゲノムに含まれる複数のプロトスペーサー配列を認識するように標的細胞中でCasヌクレアーゼとともに操作可能であり、標的細胞はSalmonella細胞であり、プロトスペーサー配列はinvB、sicP、およびsseEから選択される遺伝子の1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む。例えば、プロトスペーサー配列は遺伝子invB、sicP、およびsseEのヌクレオチド配列を含む。一例では、DNAはまた、Cas、例えばCas9、Cas3、Cpf1、Cas12、Cas13、CasX、またはCasYをコードする。一実施形態では、CasはI型、II型、III型、IV型、V型、またはVI型のCas、好ましくはI型またはII型のCasである。一例では、DNAはまたCas3および関連するCascadeタンパク質(例えばCasA、B、C、D、およびE)をコードする。任意に、Cas(および現在のCascade)はE.coli Cas(およびCascade)である。
【0104】
任意に、標的細胞の遺伝子はシャペロンまたは分泌されたエフェクタータンパク質、例えば病原性アイランドまたはIII型タンパク質分泌系(任意に、SalmonellaのSPI-1およびSPI-2の分泌系等のT3SS遺伝子座)によってコードされるタンパク質をコードする。
【0105】
DNAは1つまたは複数のCRISPRスペーサーを含んでよく、それぞれのスペーサーは、標的細胞のゲノムに含まれる遺伝子の20~40、25~35、または30~35の連続したヌクレオチド、例えば
(a)SalmonellaのavrA、sptP、sicP、sipA、sipD、sipC、sipB、sicA、invB、ssaE、sseA、sseB、sscA、sseC、sseD、sseE、sscB、sseF、sseG、mgtC、cigR、pipA、pipB、pipC、sopB、およびpipD、またはそのホモログもしくはオルソログ、
(b)標的細胞ゲノムに含まれる病原性アイランドに含まれる遺伝子、
(c)標的細胞ゲノムに含まれる分泌系(例えばIII型タンパク質分泌系)遺伝子
からなる。
【0106】
任意に、DNAは、DNAの複製のために細菌宿主細胞中で操作可能な移入起点(oriT)および複製起点(oriV)を含むプラスミドに含まれる。任意に、第1のDNAはプラスミドに含まれ、プラスミドはRP4移入起点(oriT)および/またはp15A複製起点を含む。
【0107】
任意に、DNAは配列番号15を含み、任意に、DNAはSalmonella標的細胞への接合のためにキャリア細菌細胞中のプラスミドに含まれる。一例では、本発明のDNAは接合性プラスミドまたはファージミドに含まれる。
【0108】
一例では、DNAはCRISPRリピート配列およびスペーサー配列を含み、
(e)リピート配列はそれぞれ配列番号16を含み、ならびに/または
(f)スペーサー配列は配列番号17~19から選択される1つ、2つ、もしくは3つの配列およびその相補配列を含み、
任意にDNAはSalmonella標的細胞への接合のためのキャリア細菌細胞中のプラスミドに含まれる。
【0109】
任意に、DNAは(任意に5’から3’への順で)配列番号17、配列番号18、および配列番号19を含む。任意に、DNAは表6に示す1つまたは複数の(例えば、少なくとも3つの)スペーサー配列を含む。
【0110】
一例では、DNAはCas3および任意に1つまたは複数のCascadeタンパク質(例えばCasA、B、C、D、およびEの1つ又は複数)をコードする。一実施形態では、第1のDNAはCas3ならびにCasA、B、C、D、およびEをコードする。一実施形態では、第1のDNAはE.coli Cas3ならびにCasA、B、C、D、およびEをコードする。任意に、ガイドされたヌクレアーゼ(例えばCas3)はI-A、-B、-C、-D、-E、-F、または-U型Casである。
【0111】
一例では、本明細書の任意の構成、実施例、選択肢、または実施形態における薬剤は、標的細胞に含まれるプロトスペーサー配列を切断するように標的細胞中で操作可能なCRISPR/Cas系の1つまたは複数の構成要素を含む。
【0112】
一例では、系は標的細胞ゲノムに含まれる少なくとも3つの異なるプロトスペーサー配列を切断するように操作可能である。一実施形態では、前記プロトスペーサー配列のそれぞれまたはいくつかは、標的細胞に含まれる病原性アイランドに含まれる。
【0113】
一例では、本明細書の任意の構成、実施例、選択肢、または実施形態における薬剤は、
(a)標的核酸配列を認識および改変することができるガイドされたヌクレアーゼを含み、標的配列は標的細胞の内因性染色体またはエピソームに含まれるが、キャリア細胞には含まれず、ヌクレアーゼは標的細胞を死滅させまたは標的細胞の成長もしくは増殖を阻害するように染色体またはエピソームを改変し、ならびに/または
(b)標的細胞中のCasヌクレアーゼとともに作動して標的細胞に含まれるプロトスペーサー配列を切断するCRISPR/Cas系のガイドRNAまたはcrRNAをコードする。
【0114】
任意に、DNAはガイドRNAまたはcrRNAの発現のための構成的プロモーターを含む。任意に、DNAは標的細胞ゲノムのプロトスペーサー配列を改変(例えば切断)するようにガイドRNAまたはcrRNAとともに標的細胞中で操作可能なCasヌクレアーゼの発現のための構成的プロモーターを含む。
【0115】
任意に、Cas、Cascadeタンパク質、gRNA、およびcrRNAは、それぞれE.coli K12(MG1655)のCas、Cascadeタンパク質、gRNA、およびcrRNAである。任意に、DNAはCas1およびCas2タンパク質をコードするヌクレオチド配列を欠いている。
【0116】
本発明はまた、所望のタンパク質またはRNAをコードする(例えば抗菌剤をコードする)キャリア細菌および使用の方法に関する。実施形態では、薬剤は、キャリア細胞(これに対して薬剤は毒性でない)と標的細胞との接合によって標的細胞に移入することができ、薬剤は標的細胞に対して毒性であり、標的細胞を死滅させる。他の実施形態では、標的細胞の成長または増殖が(薬剤の非存在時における成長と比較して、例えば少なくとも40、50、60、70、80、または90%)低減する。それぞれのキャリア細胞は、標的細菌細胞に対して毒性であるがキャリア細胞に対して毒性でない(または毒性が低い)抗菌剤をコードするエピソームDNAを含む。本発明は、例えばヒト、動物、または植物に対して病原性である標的細菌を制御しまたは死滅させることに用途がある。本発明は、例えば動物(例えば家畜動物)に含まれる人畜共通標的細菌を制御しまたは死滅させることに用途がある。例えば、キャリア細胞は、ヒトまたは動物における疾患または状態を処置または防止するための医薬;動物の成長を促進するための動物に投与する成長促進剤;動物における人畜共通細菌を死滅させること、殺虫剤として家畜に投与するため;植物に施す殺虫剤、または植物用肥料に含まれ得る。
【0117】
本発明の利点は、キャリア細胞が、抗菌剤をコードするDNAがその中で複製され得るプロデューサー細胞として使用され得ることである。本発明の例のもう1つの利点は、かかる複製のために必要な1つまたは複数の因子を含まない標的細胞においてDNAのさらなる複製が避けられるということである。したがって、キャリア細胞の中に因子が存在し(かつ薬剤をコードするDNAが複製されて標的細胞中への引き続く接合移入のための多くのコピーを提供し)、標的細胞中ではDNAはさらに複製されないというスキームが想定され、これは、抗菌剤の作用を、例えば環境中、またはヒトもしくは動物の体内、または植物の中(もしくはその上)に封じ込めるために有用である。非標的細胞の望ましくない死滅を避けるため、または一般に過剰摂取および/もしくは死滅活性レジメンの投与を制御するために、封じ込めが必要な場合がある。
【0118】
第1のDNAはキャリア細胞中で複製可能であり(しかし標的細胞中では複製可能でなく)、その場合には薬剤がキャリア細胞に対して毒性でなく、一方で標的細胞に対して毒性であることが重要である。ある特定の実施形態では、この選択性を達成するために、本発明は標的細胞の配列特異的死滅を使用する。この目的のため、一例では、第1のDNAは標的細胞の染色体の標的配列を認識および切断するように標的細胞中で操作可能なガイドされたヌクレアーゼをコードし、それにより細胞を死滅させまたは細胞の成長もしくは増殖を低減させる。これは、その作用において識別性が低く、いくつかの種または株を死滅させることができる(例えばおそらくキャリア細胞に対してもある程度毒性がある)他の種類の毒性薬剤の使用に対して有利である。ガイドされたヌクレアーゼ(例えばTALENまたはCasヌクレアーゼ)を使用することにより、標的細胞ゲノム中に存在する(例えば標的細胞の染色体またはエピソームに含まれる)がキャリア細胞のゲノム中には存在しない標的配列を認識するように、これらをプログラムすることができる。
【0119】
したがって、この場合には、第1のDNAの複製は、コードされた薬剤および薬剤をコードする配列の複製によって細胞を死滅させまたはその成長もしくは増殖を低減させるというリスクなしに、キャリア細胞中で自由に起こることができる。したがって、第1のDNAがガイドされたヌクレアーゼをコードする例では、ガイドされたヌクレアーゼは、標的細胞のゲノム(例えば染色体)に含まれる標的核酸配列を認識および切断することができ、標的細胞はキャリア細胞の中に存在しない。
【0120】
特に有用な例は、第1のDNAがガイドRNAまたはcrRNAとともに標的細胞中で操作可能なCasヌクレアーゼ(例えばCas9またはCas3)をコードする場合であり、RNAはCasを標的配列にガイドするように操作可能であり、Casは標的配列を改変(例えば切断)し、標的細胞が死滅しまたは標的細胞の成長もしくは増殖が阻害される。一実施形態では、第1のDNAはCasおよびガイドRNAまたはcrRNAをコードする。別の実施形態では、第1のDNAはガイドRNAまたはcrRNAをコードするが、関連するCasをコードしない。この実施形態では、RNAは標的細胞ゲノムによってコードされる内因性Casとともに標的細胞中で操作可能であり、RNAはCasを標的配列にガイドするように操作可能であり、Casは標的配列を改変(例えば切断)して標的細胞が死滅しまたは標的細胞の成長もしくは増殖が阻害される。この意味で、薬剤はCRISPR/Cas系の構成要素(例えばCasヌクレアーゼ、CascadeCas、crRNA、ガイドRNA、またはtracrRNA)を含み得る。したがって、本発明は、標的細胞中における標的認識によって作用するがキャリア細胞中では作用しない抗菌剤を使用することの利点を有用に認識し、これは第1のDNAがキャリア細胞に対する顕著な毒性なしにキャリア細胞中で自由に複製する能力を広げるものである。
【0121】
プラスミドの例
CRISPR-Cas系(またはその構成要素)等の任意の薬剤の送達の方法は、細菌の接合、したがってドナー細菌がDNAをそれ自体からレシピエント細菌に移入する天然のプロセスによってよい。ドナー細菌は表面構造、したがってシリンジまたはストローのようにそれを通してDNAを送達すると考えられる繊毛を巧緻に構成している。ドナーの繊毛は受容するレシピエントの表面に結合し、この事象がDNA移入のプロセスを誘発する。この接合プロセスにはプラスミドが好適であり、プラスミドは本発明の薬剤をコードするDNAを含む。
【0122】
接合によるDNAの移入は、「感受性のあるレシピエント」についてのみ起こり得るが、類似の型のプラスミドを含むレシピエントについて一般には起こらない。接合は繊毛の架橋を経るので、その架橋がそれ自体をレシピエントにではなくドナー細菌に付着させる可能性がある。これはプラスミドDNAのそれ自体への移入の無駄なサイクルをもたらすことがある。したがってプラスミドは不適合性因子を天然にコードする。1つは、細菌自体または同じプラスミドを含む他の任意の細菌のような表面タンパク質を呈示する細菌への繊毛の結合を阻止する表面に整列したタンパク質である。さらに、プラスミドは、細菌内部のプラスミドのコピー数を緊密に規制する別の不適合性系を天然にコードする。したがって、接合事象が表面における排除を何とか免れて接合によるDNAの移入を開始したとしても、プラスミドは既に現在のコピー数を維持しており、望ましくないさらなる別のコピーを受容して維持することがないので、レシピエントはそのプラスミドが確立することを阻止することになる。
【0123】
本発明の一例では、薬剤をコードするDNAはプラスミドに含まれる。一実施形態では、プラスミドはプラスミド不適合性群の一員であり、標的細胞は前記群のプラスミドを含まない。任意に、本発明のプラスミドは不適合性群Pの一員である(すなわち、プラスミドはincPプラスミドである)。SalmonellaがincPプラスミドを含むことは極めて稀であり、したがってこのincPプラスミドは標的細胞がSalmonella細胞である場合に有用である。例えば、Enterobacteriaceaeの中で以下のものが送達に使用し得る可能性のあるプラスミドの非排他的なリストである。IncFI、IncFII、IncFIll、IncFIV、IncFV、IncM、Inc9、InclO、Incl、IncA、IncB、IncC、IncH、IncIa、InclIc、IncI2、IncIy、IncJ、IncL、IncN、Inc2e、IncO、IncP、IncS、IncT、および/またはIncW。したがって、任意に、標的細胞はEnterobacteriaceae細胞であり、本発明のDNAはプラスミドに含まれ、プラスミドはIncFI、IncFII、IncFIll、IncFIV、IncFV、IncM、Inc9、InclO、Incl、IncA、IncB、IncC、IncH、IncIa、InclIc、IncI2、IncIy、IncJ、IncL、IncN、Inc2e、IncO、IncP、IncS、IncT、およびIncWプラスミドから選択される。
【0124】
一例では、本発明のキャリア細胞は2つ以上のプラスミドを含み、それぞれのプラスミドは、抗菌剤をコードする本発明のDNAを含み、前記プラスミドの第1は第1の不適合性群の一員であって標的細胞は前記第1の群のプラスミドを含まず、前記プラスミドの第2は第2の不適合性群の一員であって標的細胞は前記第2の群のプラスミドを含まない。例えば、キャリア細胞は、抗標的細胞CRISPR/Cas系またはその構成要素をコードする(例えば標的細胞ゲノムの第1のプロトスペーサー配列を標的とする第1のcrRNAまたはガイドRNAをコードする)incPプラスミドを含み、キャリア細胞は抗標的細胞CRISPR/Cas系またはその構成要素をコードする(例えば標的細胞ゲノムの第2のプロトスペーサー配列を標的とする第2のcrRNAまたはガイドRNAをコードする)incF1プラスミドをさらに含み、プロトスペーサーは異なるヌクレオチド配列を含む。例えば、プロトスペーサーは、標的細胞ゲノムの異なる遺伝子に含まれる。例えば、プロトスペーサーは、標的細胞ゲノムの1つ又は複数の病原性アイランドに含まれる。任意に、標的細胞はEnterobacteriaceae細胞である。任意に、キャリア細胞は、2、3、4、5、6、またはそれ以上の異なる型のプラスミドを含むプラスミドの群を含み、それぞれのプラスミドは標的細胞中に接合移入されることができ、プラスミドは異なる薬剤または抗菌剤の異なる構成要素をコードする。例えば、プラスミドは、標的細胞ゲノムに含まれる異なるプロトスペーサーを標的とする異なるcRNAまたはgRNAをコードする。例えば、プラスミドの群はn個までの異なる型のプラスミドを含み、プラスミドはn個までの異なる不適合性群、例えばIncFI、IncFII、IncFIll、IncFIV、IncFV、IncM、Inc9、InclO、Incl、IncA、IncB、IncC、IncH、IncIa、InclIc、IncI2、IncIy、IncJ、IncL、IncN、Inc2e、IncO、IncP、IncS、IncT、およびIncWから選択される群のメンバーである。例えば、nは2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。
【0125】
例えば、キャリア細胞は、(i)標的細胞ゲノムに含まれる第1のプロトスペーサーを標的とする第1の型のCRISPR/Cas系をコードするかまたは前記系の構成要素をコードする第1のプラスミド、および(ii)標的細胞ゲノムに含まれる第2のプロトスペーサーを標的とする第2の型のCRISPR/Cas系をコードするかまたは前記系の構成要素をコードする第2のプラスミドを含み、第1および第2の型は異なっている。例えば、第1の型はI型系であり、第2の型はII型系である(例えば、第1のプラスミドは、Cas3、Cascade、ならびに第1のプロトスペーサーを改変するように標的細胞中でCas3およびCascadeとともに操作可能なcrRNAまたはガイドRNAをコードし、第2のプラスミドは、Cas9および第2のプロトスペーサーを改変するように標的細胞中でCas9とともに操作可能なcrRNAまたはガイドRNAをコードする)。一選択肢では、Cas3およびCascadeは内因性標的細胞遺伝子によってコードされ、第1のプラスミドは第1のプロトスペーサーを改変するように標的細胞中で内因性Cas3およびCascadeとともに操作可能なcrRNAまたはガイドRNAをコードする。一選択肢では、Cas9は内因性標的細胞遺伝子によってコードされ、第2のプラスミドは第2のプロトスペーサーを改変するように標的細胞中で内因性Cas9とともに操作可能なcrRNAまたはガイドRNAをコードする。任意に、Cas3およびCascadeは標的細胞の内因性遺伝子によってコードされ、Cas9は第2のプラスミドによってコードされる。
【0126】
I型およびII型の系の代わりに、本発明は代替として一実施形態でI型CRISPR/Cas系(またはその構成要素、例えばCas3またはcrRNAもしくはgRNA)をコードする第1のプラスミド、およびIII型CRISPR/Cas系(又はその構成要素)をコードする第2のプラスミドを提供する。I型およびII型の系の代わりに、本発明は代替として一実施形態でI型CRISPR/Cas系(またはその構成要素)をコードする第1のプラスミド、およびIV型CRISPR/Cas系(又はその構成要素)をコードする第2のプラスミドを提供する。I型およびII型の系の代わりに、本発明は代替として一実施形態でI型CRISPR/Cas系(またはその構成要素)をコードする第1のプラスミド、およびV型CRISPR/Cas系(又はその構成要素)をコードする第2のプラスミドを提供する。I型およびII型の系の代わりに、本発明は代替として一実施形態でI型CRISPR/Cas系(またはその構成要素)をコードする第1のプラスミド、およびVI型CRISPR/Cas系(又はその構成要素)をコードする第2のプラスミドを提供する。
【0127】
I型およびII型の系の代わりに、本発明は代替として一実施形態でII型CRISPR/Cas系(またはその構成要素、例えばCas9またはcrRNAもしくはgRNA)をコードする第1のプラスミド、およびIII型CRISPR/Cas系(又はその構成要素)をコードする第2のプラスミドを提供する。I型およびII型の系の代わりに、本発明は代替として一実施形態でII型CRISPR/Cas系(またはその構成要素)をコードする第1のプラスミド、およびIV型CRISPR/Cas系(又はその構成要素)をコードする第2のプラスミドを提供する。I型およびII型の系の代わりに、本発明は代替として一実施形態でII型CRISPR/Cas系(またはその構成要素)をコードする第1のプラスミド、およびV型CRISPR/Cas系(又はその構成要素)をコードする第2のプラスミドを提供する。I型およびII型の系の代わりに、本発明は代替として一実施形態でII型CRISPR/Cas系(またはその構成要素)をコードする第1のプラスミド、およびVI型CRISPR/Cas系(又はその構成要素)をコードする第2のプラスミドを提供する。
【0128】
I型およびII型の系の代わりに、本発明は代替として一実施形態でV型CRISPR/Cas系(またはその構成要素、例えばCas12aまたはcrRNA)をコードする第1のプラスミド、およびIII型CRISPR/Cas系(又はその構成要素)をコードする第2のプラスミドを提供する。I型およびII型の系の代わりに、本発明は代替として一実施形態でV型CRISPR/Cas系(またはその構成要素)をコードする第1のプラスミド、およびIV型CRISPR/Cas系(又はその構成要素)をコードする第2のプラスミドを提供する。I型およびII型の系の代わりに、本発明は代替として一実施形態でV型CRISPR/Cas系(またはその構成要素)をコードする第1のプラスミド、およびV型CRISPR/Cas系(又はその構成要素)をコードする第2のプラスミドを提供する。I型およびII型の系の代わりに、本発明は代替として一実施形態でV型CRISPR/Cas系(またはその構成要素)をコードする第1のプラスミド、およびVI型CRISPR/Cas系(又はその構成要素)をコードする第2のプラスミドを提供する。
【0129】
I型およびII型の系の代わりに、本発明は代替として一実施形態で、それぞれI型CRISPR/Cas系(またはその構成要素)をコードする第1および第2のプラスミドを提供する。I型およびII型の系の代わりに、本発明は代替として一実施形態で、それぞれII型CRISPR/Cas系(またはその構成要素)をコードする第1および第2のプラスミドを提供する。I型およびII型の系の代わりに、本発明は代替として一実施形態で、それぞれIII型CRISPR/Cas系(またはその構成要素)をコードする第1および第2のプラスミドを提供する。I型およびII型の系の代わりに、本発明は代替として一実施形態で、それぞれIV型CRISPR/Cas系(またはその構成要素)をコードする第1および第2のプラスミドを提供する。I型およびII型の系の代わりに、本発明は代替として一実施形態で、それぞれV型CRISPR/Cas系(またはその構成要素)をコードする第1および第2のプラスミドを提供する。I型およびII型の系の代わりに、本発明は代替として一実施形態で、それぞれVI型CRISPR/Cas系(またはその構成要素)をコードする第1および第2のプラスミドを提供する。
【0130】
任意に、プラスミドは異なる不適合性群、例えばIncFI、IncFII、IncFIll、IncFIV、IncFV、IncM、Inc9、InclO、Incl、IncA、IncB、IncC、IncH、IncIa、InclIc、IncI2、IncIy、IncJ、IncL、IncN、Inc2e、IncO、IncP、IncS、IncT、およびIncWから選択される群のメンバーである。本明細書における一例では、標的細胞はEnterobacteriaceae細胞である。
【0131】
実施形態
したがって、例として、本発明は以下の実施形態を提供する。
【0132】
1.第1のエピソームDNAを含むキャリア細菌細胞であって、前記DNAが標的細菌細胞中において目的のタンパク質(POI)または目的のRNA(ROI)を発現させるためにPOIまたはROIをコードする目的の核酸(NSI)を含み、キャリア細胞がPOI、ROI、または薬剤の標的細胞中における発現のためにDNAを標的細胞中に接合移入することができ、
(a)キャリア細胞が第1のDNAとは異なる第2のDNAを含み、第2のDNAが第1のDNAの複製のために必要な第1の因子を含むかまたはコードし、
(b)第1のDNAが前記第1の因子を含まずまたはコードせず、第1のDNAが第1の因子の非存在下では非自己複製性であるが、第2のDNAによって提供される第1の因子の存在下ではキャリア細胞中で複製することができ、
(c)キャリア細胞が標的細菌細胞中への第1のDNAの接合移入を行うために十分な1つまたは複数の接合因子をコードする遺伝子を含む、
キャリア細菌細胞。
【0133】
第1の選択肢において、実施形態1は、
第1のエピソームDNAを含むキャリア細菌細胞であって、前記DNAが標的細菌細胞中において目的のタンパク質(POI)または目的のRNA(ROI)を発現させるためにPOIまたはROIをコードする目的の核酸(NSI)を含み、キャリア細胞がPOIまたはROIの標的細胞中における発現のためにDNAを標的細胞中に接合移入することができる、キャリア細菌細胞を提供する。
【0134】
第2の選択肢において、実施形態1は、
第1のエピソームDNAを含むキャリア細菌細胞であって、前記DNAが標的細菌細胞に対して毒性であるがキャリア細胞に対して毒性でない抗菌剤をコードし、キャリア細胞が薬剤の標的細胞中における発現のためにDNAを標的細胞中に接合移入することができる、キャリア細菌細胞を提供する。
一例では、前記薬剤は標的細胞ゲノムに含まれる標的核酸配列を認識および切断することができるガイドされたヌクレアーゼを含み、標的配列はキャリア細胞に含まれない。したがってこの意味で、抗菌剤は標的細菌細胞に対して毒性であるがキャリア細胞に対して毒性でない。
【0135】
例えば、
第1のエピソームDNAを含むキャリア細菌細胞であって、前記DNAが標的細菌細胞に対して毒性であるが前記キャリア細胞に対して毒性でない抗菌剤をコードし、キャリア細胞が薬剤の標的細胞中における発現のためにDNAを標的細胞中に接合移入することができ、前記薬剤が標的細胞ゲノムに含まれる(例えば標的細胞の染色体に含まれる)標的核酸配列を改変するように標的細胞中で操作可能であるCRISPR/Cas系の構成要素である、キャリア細菌細胞が提供される。
【0136】
別の例は、
第1のエピソームDNAを含むキャリア細菌細胞であって、前記DNAが標的細菌細胞に対して毒性であるがキャリア細胞に対して毒性でない抗菌剤をコードし、キャリア細胞が薬剤の標的細胞中における発現のためにDNAを標的細胞中に接合移入することができ、
(a)キャリア細胞が第1のDNAとは異なる第2のDNAを含み、第2のDNAが第1のDNAの複製のために必要な第1の因子を含むかまたはコードし、
(b)第1のDNAが前記第1の因子を含まずまたはコードせず、第1のDNAが第1の因子の非存在下では非自己複製性であるが、第2のDNAによって提供される第1の因子の存在下ではキャリア細胞中で複製することができ、
(c)キャリア細胞が標的細菌細胞中への第1のDNAの接合移入を行うために十分な1つまたは複数の接合因子をコードする遺伝子を含む、
キャリア細菌細胞を提供する。
【0137】
一例はまた、
第1のDNAを含むプラスミドを含むキャリア細菌細胞であって、前記DNAが標的核酸配列を認識し改変することができるガイドされたヌクレアーゼをコードし、キャリア細胞がヌクレアーゼの標的細胞中における発現のためにプラスミドを標的細胞中に接合移入することができ、標的配列が標的細胞の内因性染色体またはエピソームに含まれるがキャリア細胞には含まれず、ヌクレアーゼが染色体またはエピソームを改変(例えば切断)して標的細胞を死滅させまたは標的細胞の成長もしくは増殖を阻害することができる、キャリア細菌細胞を提供する。
【0138】
任意に、ヌクレアーゼはCasヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、またはTALENである。
【0139】
任意に、ヌクレアーゼはI、II、III、IV、またはV型CRISPR系のCasヌクレアーゼである。
【0140】
一例はまた、
第1のDNAを含むプラスミドを含むキャリア細菌細胞であって、前記DNAが標的核酸配列を認識し改変することができるCRISPR/Cas系の構成要素をコードし、キャリア細胞が構成要素の標的細胞中における発現のためにプラスミドを標的細胞中に接合移入することができ、それにより発現された構成要素が標的細胞中における前記系の一部を形成し、標的配列が標的細胞の内因性染色体またはエピソームに含まれるがキャリア細胞には含まれず、系が染色体またはエピソームを改変(例えば切断)して標的細胞を死滅させまたは標的細胞の成長もしくは増殖を阻害することができる、キャリア細菌細胞を提供する。
【0141】
一態様では、構成要素は標的細胞の標的配列にハイブリダイズすることができるガイドRNAまたはcrRNAである。系はI、II、III、IV、またはV型CRISPR系であってよい。
【0142】
任意に、
(a)キャリア細胞は第1のDNAとは異なる第2のDNAを含み、第2のDNAは第1のDNAの複製のために必要な第1の因子を含むかまたはコードし、
(b)第1のDNAは前記第1の因子を含まずまたはコードせず、第1のDNAは第1の因子の非存在下では非自己複製性であるが、第2のDNAによって提供される第1の因子の存在下ではキャリア細胞中で複製することができ、
(c)キャリア細胞は標的細菌細胞中への第1のDNAの接合移入を行うために十分な1つまたは複数の接合因子をコードする遺伝子を含む。
【0143】
第2のDNAはキャリア細胞の染色体またはエピソーム(例えばプラスミド)に含まれてよい。本発明のいずれかの方法は、これらの実施例のいずれかのキャリア細胞を使用してよい。
【0144】
有利には、細胞はヒトまたは動物の対象(例えばニワトリ、ウシ、ブタ、魚類、または甲殻類)における標的細胞の感染を処置または防止するためである。有利には、キャリア細胞は前記対象に対してプロビオティックな、またはヒトもしくは動物(例えばニワトリ)に対してプロビオティックな種の細胞である。例えば、キャリア細胞はプロビオティックなE.coli細胞である。例えば、キャリア細胞はプロビオティックなBacillus細胞である。一例では、標的細胞は前記対象に対して病原性の、またはヒトもしくは動物(例えばニワトリ)に対して病原性の種の細胞である。有利には、第1のDNAは、標的細胞中でそれぞれの標的核酸配列にハイブリダイズすることができる1つもしくは複数のガイドRNAまたは1つもしくは複数のcrRNAをコードし、標的配列は標的細胞の内因性染色体および/または内因性エピソームに含まれる。例えば、第1のDNAはそれぞれの標的配列にハイブリダイズする2、3、4、5、6、7、7、9、または10個の(または10を超える)異なるgRNAまたは異なるcrRNAをコードし、標的配列は互いに異なる。例えば、第1のDNAによって3つの異なるgRNAまたはcrRNAがコードされる。例えば、第1のDNAによって2つの異なるgRNAまたはcrRNAがコードされる。例えば、第1のDNAによって3つの異なるgRNAまたはcrRNAがコードされる。例えば、第1のDNAによって4つの異なるgRNAまたはcrRNAがコードされる。例えば、第1のDNAによって3つの異なるgRNAまたはcrRNAがコードされる。例えば、第1のDNAによって5つの異なるgRNAまたはcrRNAがコードされる。例えば、第1のDNAによって6つの異なるgRNAまたはcrRNAがコードされる。例えば、第1のDNAによって7つの異なるgRNAまたはcrRNAがコードされる。例えば、第1のDNAによって8つの異なるgRNAまたはcrRNAがコードされる。例えば、第1のDNAによって9つの異なるgRNAまたはcrRNAがコードされる。例えば、第1のDNAによって10個の異なるgRNAまたはcrRNAがコードされる。例えば、第1のDNAによって11個の異なるgRNAまたはcrRNAがコードされる。例えば、第1のDNAによって12個の異なるgRNAまたはcrRNAがコードされる。例えば、第1のDNAによって13個の異なるgRNAまたはcrRNAがコードされる。一例では、標的細胞はSalmonella細胞である(例えば対象はニワトリである)。一例では、標的細胞はE.coli細胞である。一例では、標的細胞はCampylobacter細胞である(例えば対象はニワトリである)。一例では、標的細胞はEdwardsiella細胞である(例えば対象は魚類または甲殻類、例えばナマズ、またはエビ、またはクルマエビである)。一例では、標的細胞はE.coli細胞である。
【0145】
本明細書における一選択肢では、キャリア細胞および標的細胞は古細菌細胞である。本明細書における一選択肢では、キャリア細胞および標的細胞は酵母細胞であり、「接合」はむしろ酵母の「交配」を指すと読むべきであり、例えば第2のDNAはキャリア酵母細胞の染色体に含まれる。
【0146】
好ましい例では、NOIは標的細菌細胞に対して毒性であるがキャリア細胞に対して毒性でない抗菌剤をコードする。一例では、POIは抗生剤、抗体、抗体鎖、または抗体可変ドメインである。一例では、ROIは関連するCas(例えば標的細胞の染色体またはエピソームに含まれるプロトスペーサー配列を標的として切断するCasヌクレアーゼ)とともに標的細胞中で操作可能なガイドRNAまたはcrRNAである。一例では、RNAは、標的細胞の内因性標的核酸配列にハイブリダイズしてその転写および/または翻訳を沈黙させることができるsiRNAである。
【0147】
キャリア細胞は、第1のDNAとは異なる染色体または第2のエピソームDNAを含む。したがって、例えば第2のDNAはキャリア細胞の染色体に含まれる。別の例では、第2のDNAはキャリア細胞のプラスミドに含まれる。
【0148】
2.実施形態1のキャリア細胞であって、
(d)第1のDNAが標的細菌細胞中への第1のDNAの接合移入に必要な構成要素を欠き、
(e)キャリア細胞が前記構成要素を含み、前記構成要素がキャリア細胞に含まれる第2のDNAまたは第3のDNAに含まれまたはそれらによってコードされる、キャリア細胞。
【0149】
第3のDNAは染色体またはエピソーム(例えばプラスミド)に含まれてよい。実施形態2以下に明示的に引用した場合、文脈により明らかになるように、構成要素は接合移入に必要な構成要素を意味している。
【0150】
3.実施形態2のキャリア細胞であって、前記構成要素がMpfまたはDtrモジュールに含まれる、キャリア細胞。
例えば、モジュールはRK2、RP4、またはR6K traモジュールである。任意に、前記構成要素はMpf(交配対形成)モジュール、例えばRK2もしくはRP4 tra1モジュールまたはそのホモログに含まれる。任意に、前記構成要素はDtr(DNA移入複製)モジュール、例えばRK2もしくはRP4 tra2モジュールまたはそのホモログに含まれる。
【0151】
4.実施形態2のキャリア細胞であって、前記構成要素がMpf(例えばtra1)またはDtr(例えばtra2)モジュールのオペロンによってコードされる、キャリア細胞。
例えば、モジュールはRK2、RP4、またはR6K traモジュールである。任意に、モジュールはMpf(交配対形成)モジュール、例えばRK2もしくはRP4 tra1モジュールまたはそのホモログである。任意に、モジュールはDtr(DNA移入複製)モジュール、例えばRK2もしくはRP4 tra2モジュールまたはそのホモログである。
【0152】
RP4またはRK2のMpfオペロンは、遺伝子traFとともにtra2オペロン(trb遺伝子trbBCDEFGHIJKLを含む)である。遺伝子traFは(traJXIHGとともに)tra1オペロン中のRK2またはRP4に含まれる。したがって、一実施形態では、前記構成要素はtrbB、trbC、trbD、trbE、trbF、trbG、trbH、trbI、trbJ、trbK、trbL、およびtraFから選択される遺伝子である。一実施形態では、第1のDNAはRP4 trbB、trbC、trbD、trbE、trbF、trbG、trbH、trbI、trbJ、trbK、trbL、およびtraFまたはそれらのホモログから選択される2つ以上の遺伝子を欠いている。一実施形態では、第1のDNAはRK2 trbB、trbC、trbD、trbE、trbF、trbG、trbH、trbI、trbJ、trbK、trbL、およびtraFまたはそれらのホモログから選択される2つ以上の遺伝子を欠いている。一例では、前記構成要素はtraK、traL、またはtraM遺伝子である。一実施形態では、第1のDNAはRP4 traK、traL、およびtraMまたはそれらのホモログから選択される2つ以上の遺伝子を欠いている。一実施形態では、第1のDNAはRK2 traK、traL、およびtraMまたはそれらのホモログから選択される2つ以上の遺伝子を欠いている。任意に、これらの実施形態では、第1のDNAはRP4またはRK2型のプラスミドに含まれる。
【0153】
R6K Mpfは、DtrモジュールのclpX1をも含むsltX1tivB1B2B3-4B5B6B7B8B9B10B11オペロンによってコードされる。したがって、一実施形態では、前記構成要素はRK6 sltX1tivB1B2B3-4B5B6B7B8B9B10B11オペロンに含まれる遺伝子である。一実施形態では、前記構成要素はRK6 DtrモジュールのclpX1である。一実施形態では、前記構成要素はclpX1およびdtrX1rlxX1から選択される遺伝子である。一実施形態では、前記構成要素はRK6 clpX1およびdtrX1rlxX1またはそれらのホモログから選択される遺伝子である。任意に、これらの実施形態では、第1のDNAはRK6型のプラスミドに含まれる。
【0154】
前記いずれかの実施形態のキャリア細胞であって、キャリア細胞の染色体および/またはキャリア細胞のエピソーム(第1のDNAを含むエピソーム以外)が発現可能なtra1および/もしくはtra2モジュールまたはそれらのホモログを含む、キャリア細胞。
本明細書におけるいずれのエピソームも、プラスミドであってよい。
【0155】
5.前記いずれかの実施形態のキャリア細胞であって、キャリア細胞の染色体および/またはキャリア細胞のエピソーム(第1のDNAを含むエピソーム以外)がtra1および/もしくはtra2モジュールの発現可能なオペロンまたはそれらのホモログを含む、キャリア細胞。
【0156】
6.実施形態3から6のいずれか一のキャリア細胞であって、前記構成要素がtra1構成要素である、キャリア細胞。
【0157】
7.実施形態3から6のいずれか一のキャリア細胞であって、前記構成要素がtra2構成要素である、キャリア細胞。
【0158】
8.実施形態2から7のいずれか一のキャリア細胞であって、キャリア細胞染色体が第1の因子をコードし、前記構成要素を含む、キャリア細胞。
【0159】
9.前記いずれかの実施形態のキャリア細胞であって、第1の因子がrepタンパク質であり、任意に、前記タンパク質がpirもしくはtrfAまたはそれらのホモログによってコードされる、キャリア細胞。
【0160】
10.前記いずれかの実施形態のキャリア細胞であって、第1のDNAがRK2またはR6Kプラスミドに含まれる、キャリア細胞。
【0161】
11.前記いずれかの実施形態のキャリア細胞であって、第1のDNAがRK2もしくはR6KプラスミドのoriVまたはそれらのホモログを含む、キャリア細胞。
【0162】
12.前記いずれかの実施形態のキャリア細胞であって、第1のDNAがRK2もしくはR6KプラスミドのoriTまたはそれらのホモログを含む、キャリア細胞。
【0163】
13.前記いずれかの実施形態のキャリア細胞であって、第1のDNAがプラスミドに含まれる、キャリア細胞。
【0164】
14.前記いずれかの実施形態のキャリア細胞であって、第2のDNAがプラスミドに含まれるか、またはキャリア細胞の染色体に含まれる、キャリア細胞。
【0165】
15.前記いずれかの実施形態のキャリア細胞であって、前記薬剤が標的細胞に含まれるプロトスペーサー配列を切断するように標的細胞中で操作可能なCRISPR/Cas系の1つまたは複数の構成要素を含み、例えばプロトスペーサー配列が細胞染色体に含まれる、キャリア細胞。
【0166】
一実施形態では、本明細書における切断することは標的細胞を死滅させる。別の実施形態では、切断することは標的細胞の成長または増殖を阻害する。
【0167】
16.前記いずれかの実施形態のキャリア細胞であって、前記薬剤が標的細胞に含まれるプロトスペーサー配列を切断するようにCasヌクレアーゼとともに標的細胞中で操作可能なCRISPR/Cas系のガイドRNAまたはcrRNAをコードし、例えばプロトスペーサー配列が細胞染色体に含まれる、キャリア細胞。
【0168】
一例では、標的細胞はSalmonella細胞であり、プロトスペーサーはpipA、pipB、pipC、hilA、sicP、mart、またはsopB遺伝子に含まれる。一例では、プロトスペーサーはSalmonellaのsicP、sseF、pipA、pipB、pipC、hilA、sicP、mart、またはsopB遺伝子のホモログまたはオルソログである遺伝子に含まれる。
【0169】
17.前記いずれかの実施形態のキャリア細胞であって、第1のDNAが産生物をコードする遺伝子を含み、前記産生物が産生物を欠く環境にある場合のキャリア細胞の生存または増殖に必須であり、キャリア細胞の染色体が産生物をコードする発現可能な遺伝子を含まず、任意に、第1のDNAが産生物をコードするキャリア細胞に含まれる唯一のエピソームDNAである、キャリア細胞。
【0170】
18.実施形態17のキャリア細胞であって、前記遺伝子がaroA、argH、hisD、leuB、lysA、metB、proC、thrC、pheA、tyrA、trpC、およびpflA遺伝子から選択され、前記遺伝子が抗毒素遺伝子であり、任意に、第1のDNAが関連する毒素をコードする、キャリア細胞。
【0171】
19.前記いずれかの実施形態のキャリア細胞であって、E coli(例えばNissle、F18、またはS17 E coli株)、Bacillus(例えばB subtilis)、Enterococcus、またはLactobacillus細胞である、キャリア細胞。
【0172】
任意に、キャリア細胞はヒト、ニワトリ、ブタ、ヒツジ、ウシ、魚類(例えばナマズまたはサケ)、または甲殻類(例えばエビまたはロブスター)の片利共生細菌株(例えば片利共生E.coli株)の細胞である。
【0173】
20.前記いずれかの実施形態のキャリア細胞であって、医療用途のためのヒトまたは動物の対象の微生物群への投与のためである、キャリア細胞。
【0174】
例えば、医療用途は、本明細書で開示した疾患を処置または防止するためである。例えば、医療用途は、本明細書で開示した状態を処置または防止するためである。
【0175】
21.実施形態20のキャリアであって、前記医療用途が前記対象細胞によって媒介される疾患または状態の処置または防止のためである、キャリア。
【0176】
22.動物の成長または重量を増進させるために動物に投与するための、実施形態1から20のいずれか一のキャリア。
【0177】
選択肢では、投与はヒトの成長または重量の増進のためのヒトへのものである。任意に、増進することは医学的治療ではない。任意に、増進することは医学的治療である。
【0178】
23.実施形態20から22のいずれか一のキャリアであって、前記使用が対象の微生物群(例えば腸微生物群)への複数のキャリア細胞の投与を含み、微生物群が標的細胞を含み、第1のDNAが標的細胞中における発現のために標的細胞に移入されて抗菌剤を産生し、それにより対象中の標的細胞を死滅させまたは標的細胞の成長もしくは増殖を低減させる、キャリア。
【0179】
24.標的細菌細胞に対して毒性であるがキャリア細胞に対して毒性でない抗菌剤をコードするDNAであって、第1のDNAが複製起点を含むが第1のDNAの複製に必要な第1の因子を含まずまたはコードせず、第1のDNAが移入起点を含むが第1のDNAを標的細菌細胞中に接合移入するために必要な構成要素を欠き、前記構成要素が存在する場合にDNAが標的細胞中に接合移入されることができる、DNA。
【0180】
したがって、DNAがキャリア細胞中に存在する場合には、DNAは標的細胞中に接合移入されることができる。
【0181】
25.実施形態24のDNAであって、実施形態1から23のいずれか一で引用したDNAによるDNA。
【0182】
26.実施形態24または25のDNAであって、前記細胞が実施形態1から23のいずれか一で引用した細胞によるDNA。
【0183】
27.動物対象(例えばニワトリ)の成長または重量を増進させる方法であって、前記方法が対象の微生物群への実施形態1から23のいずれか一による複数のキャリア細胞の投与を含み、前記微生物群が標的細胞を含み、第1のDNAが標的細胞中における発現のためにキャリア細胞から標的細胞に移入されて抗菌剤を産生し、それにより対象中の標的細胞(例えばSalmonella細胞)を死滅させまたは標的細胞の成長もしくは増殖を低減させる、方法。
【0184】
選択肢では、投与はヒトの成長または重量の増進のためのヒトへのものである。任意に、増進することは医学的治療ではない。任意に、増進することは医学的治療である。
【0185】
28.植物(例えばトマト植物)の成長または重量を増進させる方法であって、前記方法が植物の微生物群への実施形態1から23のいずれか一による複数のキャリア細胞の投与を含み、前記微生物群が標的細胞を含み、第1のDNAが標的細胞中における発現のためにキャリア細胞から標的細胞に移入されて抗菌剤を産生し、それにより植物中の標的細胞(例えばPseudomonas細胞)を死滅させまたは標的細胞の成長もしくは増殖を低減させる、方法。
【0186】
植物は本明細書で開示した任意の植物であってよい。例えば、本発明の任意の構成または実施形態における本明細書の植物は、トマト植物、ジャガイモ植物、コムギ植物、トウモロコシ植物、メイズ植物、リンゴ樹、マメ産生植物、エンドウマメ植物、ビート根植物、核果植物、オオムギ植物、ホップ植物、および草から選択される。例えば、植物は樹木、例えばヤシ、トチノキ、マツ、オーク、またはハードウッド樹である。例えば、植物はイチゴ、ラズベリー、ブラックベリー、レッドカラント、キーウィ、バナナ、リンゴ、アプリコット、アボガド、チェリー、オレンジ、クレメンタイン、ミカン、グレープフルーツ、プラス、デーツ、イチジク、ライム、レモン、メロン、マンゴー、ナシ、オリーブ、またはブドウから選択される果実を産生する植物である。任意に、植物は双子葉植物である。任意に、植物は顕花植物である。任意に、植物は単子葉植物である。
【0187】
本明細書におけるいずれの構成、実施形態、または実施例においても、標的細菌は(例えば植物に含まれる)P.syringae細菌である。Pseudomonas syringae pv.syringaeは単子葉植物と双子葉植物の両方で世界的に病気を惹起する一般的な植物関連細菌である。一例では、標的細菌はP.s.pv.aceris、P.s.pv.aptata、P.s.pv.atrofaciens、P.s.pv.dysoxylis、P.s.pv.japonica、P.s.pv.lapsa、P.s.pv.panici、P.s.pv.papulans、P.s.pv.pisi、P.s.pv.syringae、およびP.s.pv.morsprunorumから選択される病原型のP syringae細菌である。
・P.s.pv.acerisはカエデAcer種を攻撃する。
・P.s.pv.actinidiaeはキーウィ果実Actinidia deliciosaを攻撃する。
・P.s.pv.aesculiはトチノキAesculus hippocastanumを攻撃し、潰瘍病を惹起する。
・P.s.pv.aptataはビートBeta vulgarisを攻撃する。
・P.s.pv.atrofaciensはコムギTriticum aestivumを攻撃する。
・P.s.pv.dysoxylisコエコエ樹Dysoxylum spectabileを攻撃する。
・P.s.pv.japonicaはオオムギHordeum vulgareを攻撃する。
・P.s.pv.lapsaはコムギTriticum aestivumを攻撃する。
・P.s.pv.paniciはキビ草種を攻撃する。
・P.s.pv.papulansはクラブアップルMalus sylvestris種を攻撃する。
・P.s.pv.phaseolicolaはマメのカサ枯れ病を惹起する。
・P.s.pv.pisiはエンドウマメPisum sativumを攻撃する。
・P.s.pv.syringaeはSyringa、Prunus、およびPhaseolus種を攻撃する。
・P.s.pv.glycineaはダイズを攻撃し、ダイズの斑点細菌病を惹起する。
【0188】
一例では、標的細菌は、直前のパラグラフにおいて箇条書きで引用した血液型亜型から選択されるP syringaeであり、細菌はその箇条書きでも述べた植物に含まれる。
【0189】
一例では、重量は乾燥重量である。例えば、本方法は(例えば前記投与の1または2週以内に)乾燥重量を増加させるためである。任意に、増加は、全ての植物が同じ環境条件下に保たれ、キャリア細胞の投与がなかった場合の同じ種または株の対照植物と比較して、少なくとも5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20%の増加である。例えば、かかる増加は、キャリア細胞の最初の投与の後、1、2、3、4、5、6、または8週以内である。一例では、本方法は植物、例えばトマト植物の葉および/または果実の乾燥重量を増加させるためである。
【0190】
一例では、重量は湿潤重量である。例えば、本方法は(例えば前記投与の1または2週以内に)湿潤重量を増加させるためである。任意に、増加は、全ての植物が同じ環境条件下に保たれ、キャリア細胞の投与がなかった場合の同じ種または株の対照植物と比較して、少なくとも5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20%の増加である。例えば、かかる増加は、キャリア細胞の最初の投与の後、1、2、3、4、5、6、または8週以内である。一例では、本方法は植物、例えばトマト植物の葉および/または果実の乾燥重量を増加させるためである。
【0191】
29.前記微生物群が植物の葉、幹、根、または茎に含まれる、実施形態28の方法。
【0192】
一例では、本明細書のいずれの構成または実施形態においても、標的細菌(または標的細胞)は、植物の微生物群に含まれる。一例では、微生物群は葉に含まれる。一例では、微生物群は木質部に含まれる。一例では、微生物群は師部に含まれる。一例では、微生物群は根に含まれる。一例では、微生物群は塊茎に含まれる。一例では、微生物群は球根に含まれる。一例では、微生物群は種子に含まれる。一例では、微生物群は外果皮〔exocarp〕、外果皮〔epicarp〕、中果皮、または内果皮に含まれる。一例では、微生物群は果実、例えば単果、複合果、または多花果に含まれる。一例では、微生物群は種子または胚、例えば種皮、子葉、双葉、または幼根に含まれる。一例では、微生物群は花に含まれ、例えば花柄、萼片、花弁、雄しべ、花糸、葯、または雌しべに含まれる。一例では、微生物群は根、例えば主根系または髭根系に含まれる。一例では、微生物群は葉に含まれ、例えば葉身、葉柄、または托葉に含まれる。一例では、微生物群は茎に含まれ、例えば樹皮、表皮、師部、形成層、木質部、または髄に含まれる。
【0193】
30.対象に含まれまたは表面上に含まれるバイオフィルムを低減させる方法であって、前記バイオフィルムが標的細胞(例えばPseudomonas細胞)を含み、前記方法がバイオフィルムへの実施形態1から23のいずれか一による複数のキャリア細胞の投与を含み、第1のDNAが標的細胞中における発現のためにキャリア細胞から標的細胞に移入されて抗菌剤を産生し、それによりバイオフィルム中の標的細胞を死滅させまたは標的細胞の成長もしくは増殖を低減させる、方法。
【0194】
一例では、「バイオフィルムを低減させること」は、バイオフィルムの被覆面積を低減させることを含む。一例では、「バイオフィルムを低減させること」は、バイオフィルムの増殖を低減させることを含む。一例では、「バイオフィルムを低減させること」は、バイオフィルムの永続性を低減させることを含む。一例では、「バイオフィルムを低減させること」は、バイオフィルムの拡散を低減させること(例えば対象の中または上における、例えば対象を含む環境への拡散)を含む。
【0195】
31.対象がヒトまたは動物である、実施形態30の方法。
【0196】
例えば、バイオフィルムは対象の肺に含まれ、例えば標的細胞はPseudomonas(例えばP aeruginosa)細胞である。これは、対象が肺炎または嚢胞性線維症等の肺の疾患または状態に罹患している場合に有用であり得る。
【0197】
例えば、バイオフィルムは、本明細書で開示した動物またはヒトの臓器に含まれる。例えば、バイオフィルムは本明細書で開示したヒトまたは動物の微生物群に含まれる。
【0198】
32.前記対象が植物(例えば本明細書で開示した任意の植物)である、実施形態30の方法。
【0199】
任意に、本実施形態では、標的細胞はPseudomonas syringae細胞である。
【0200】
33.前記バイオフィルムが植物の葉、幹、根、または茎に含まれる、実施形態31または32の方法。
【0201】
一例では、本明細書のいずれの構成または実施形態においても、標的細菌(または標的細胞)は植物のバイオフィルムに含まれる。一例では、バイオフィルムは葉に含まれる。一例では、バイオフィルムは木質部に含まれる。一例では、バイオフィルムは師部に含まれる。一例では、バイオフィルムは根に含まれる。一例では、バイオフィルムは塊茎に含まれる。一例では、バイオフィルムは球根に含まれる。一例では、バイオフィルムは種子に含まれる。一例では、バイオフィルムは外果皮〔exocarp〕、外果皮〔epicarp〕、中果皮、または内果皮に含まれる。一例では、バイオフィルムは果実、例えば単果、複合果、または多花果に含まれる。一例では、バイオフィルムは種子または胚、例えば種皮、子葉、双葉、または幼根に含まれる。一例では、バイオフィルムは花に含まれ、例えば花柄、萼片、花弁、雄しべ、花糸、葯、または雌しべに含まれる。一例では、バイオフィルムは根、例えば主根系または髭根系に含まれる。一例では、バイオフィルムは葉に含まれ、例えば葉身、葉柄、または托葉に含まれる。一例では、バイオフィルムは茎に含まれ、例えば樹皮、表皮、師部、形成層、木質部、または髄に含まれる。
【0202】
34.前記表面がex vivoの表面、例えば家庭用または工業用の装置または容器に含まれる表面である、実施形態30から33(例えば30)のいずれか一の方法。
【0203】
35.第1のDNAを複製して前記DNAの複数のコピーを産生する方法であって、前記方法が実施形態1から23のいずれか一による複数のキャリア細菌細胞を培養することを含み、第1のDNAが細胞中で複製される、方法。
【0204】
任意に、本方法は前記培養の後で第1のDNAを単離することをさらに含む。当業者であれば、使用できる細胞を培養するための手法および条件は熟知している。
【0205】
36.(a)培養後にキャリア細胞の試料を得ること、
(b)キャリア細胞の試料を複数の標的細菌細胞と接触させてキャリア細胞と標的細胞とを接合させること、および
(c)接合移入によって第1のDNAのコピーをキャリア細胞から標的細胞に移入し、抗菌剤が標的細胞中で提供され、標的細胞が死滅しまたは標的細胞の成長もしくは増殖が低減される、実施形態35の方法であって、
(d)第1のDNAが標的細胞中で複製可能でない、方法。
【0206】
例えば、第1のDNAは標的細胞中で実質的に複製可能でない(例えば10、5、4、3、2、または1%未満の複製)。
【0207】
第1のDNAは、標的細胞中にそれをコードする第1の因子または配列が存在しないために、標的細胞中で複製可能でない(または実質的に複製可能でない)。
【0208】
37.複数の標的細菌細胞を死滅させまたはその成長もしくは増殖を低減させる方法であって、
(a)実施形態1から23のいずれか一によるまたは実施形態35の方法によって得られるキャリア細胞の試料を得ること、
(b)キャリア細胞の試料を複数の標的細菌細胞と接触させてキャリア細胞と標的細胞とを接合させること、および
(c)接合移入によって第1のDNAのコピーをキャリア細胞から標的細胞に移入し、抗菌剤が標的細胞中で提供され、標的細胞が死滅しまたは標的細胞の成長もしくは増殖が低減されること
を含み、
(d)第1のDNAが標的細胞中で複製可能でない(または実質的に複製可能でない)、方法。
【0209】
38.標的細胞がバイオフィルム、例えば本明細書で開示したバイオフィルムに含まれる、実施形態36または37の方法。
【0210】
39.抗菌剤の作用を環境中に封じ込める方法であって、前記薬剤が標的細菌細胞に対して毒性であり、前記方法が実施形態37または38の方法を行うことを含み、前記薬剤が実施形態で引用した前記薬剤である、方法。
【0211】
40.環境がヒトまたは動物の対象に含まれ、前記標的細胞が対象のバイオフィルムに含まれ、前記方法がキャリア細胞の試料を対象のバイオフィルムに投与することを含み、前記キャリア細胞がステップ(b)において標的細胞と接触させられ、前記方法が対象中の標的細胞によって媒介される疾患または状態を処置または防止するための封じ込められた方法である、実施形態39の方法。
【0212】
41.標的細菌がSalmonella、Pseudomonas、Escherichia、Klebsiella、Campylobacter、Helicobacter、Acinetobacter、Enterobacteriacea、Clostridium、Staphylococcus、またはStreptococcus細菌である、前記いずれかの実施形態のキャリア細胞、DNA、または方法。
【0213】
42.標的細菌がSalmonella enterica細菌である、前記いずれかの実施形態のキャリア細胞、DNA、または方法。
【0214】
例えば、標的細菌は、Salmonella enterica亜種enterica、血液型亜型Typhimurium、Enteritidis、Virchow、Montevideo、Hadar、およびBinzaからなる群から選択される。
【0215】
43.標的細菌がPseudomonas(例えばP syringaeまたはP aeruginosa)細菌である、実施形態1から41のいずれか一のキャリア細胞、DNA、または方法。
【0216】
44.標的細菌がE.coli細菌である、実施形態1から41のいずれか一のキャリア細胞または方法。
【0217】
任意に、標的細菌は腸管出血性E.coli(EHEC)、E.coli血清型O157:H7、または志賀毒素産生E.coli(STEC)である。一例では、標的細菌は
・志賀毒素産生E.coli(STEC)(STECはベロサイトトキシン産生E.coli(VTEC)とも称される)、
・腸管出血性E.coli(EHEC)(この病原型は食中毒に関連するニュースで最も一般的に聞かれる病原型である)、
・エンテロトキシン産生E.coli(ETEC)、
・腸管病原性E.coli(EPEC)、
・腸管凝集性E.coli(EAEC)、
・腸管侵入性E.coli(EIEC)、および
・散在付着性E.coli(DAEC)
から選択される。
【0218】
腸管出血性Escherichia coli(EHEC)血清型O157:H7は、世界的な出血性下痢および溶血性尿毒症候群(HUS)の突発に関与するヒト病原体である。従来の抗微生物剤はEHECにおいてSOS応答を誘発し、これがEHEC感染に伴う罹患率および死亡率の多くに関与する強力な志賀毒素の放出を促進する。ウシはEHECの天然の保有宿主であり、EHECのアウトブレイクのほぼ75%は汚染されたウシ由来製品の消費に関連している。EHECはヒトで疾患を惹起するが、成長した反芻動物では無症状である。E.coli血清型O157:H7(EHEC)感染の特徴には、腹部の痙攣および出血性下痢、ならびに致命的な合併症である溶血性尿毒症候群(HUS)が含まれる。現在、EHEC感染の処置に対するニーズがある(Goldwater and Bettelheim,2012)。従来の抗生剤の使用は、志賀毒素媒介細胞傷害性を悪化させる。Centers for Disease Control and Preventionによって行われた疫学研究では、EHEC腸炎のための抗生剤で処置された患者は、HUSを発症するリスクが高い(Slutsker et al.,1998)。さらなる研究は、EHEC感染において抗生剤が禁忌であることを支持しており、EHECに伴う出血性腸炎のために抗生剤治療を受けた小児は、HUSを発症する危険が増加した(Wong et al.,2000、Zimmerhackl,2000、Safdar et al.,2002、Tarr et al.,2005)。従来の抗生剤は、染色体内で一体化されたラムダ形プロファージゲノムの中でコードされるstx遺伝子の複製および発現を増進することによって、志賀毒素の産生を促進する。本発明のいくつかの構成のアプローチは、ヌクレアーゼの切断に依拠している。stxの誘導は、EHEC細胞のエンベロープのファージ媒介溶解をも促進し、環境への志賀毒素の放出および散布を可能にする(Karch et al.,1999、Matsushiro et al.,1999、Wagner et al.,2002)。したがって、有利には、本発明のこれらの構成は、ヒトおよび動物の対象においてEHECを処置するための代替の手段を提供する。以下、ヌクレアーゼの作用によって産生される抗EHEC作用の(従来の抗生剤の作用とは反対の)速度および持続についての驚くべき結果とともにこれを例示する。
【0219】
一例では、対象(例えばヒトまたは動物)は、溶血性尿毒症候群(HUS)に罹患しているか、そのリスクにあり、例えば対象はE coli感染、例えばEHEC E coli感染に罹患している。
【0220】
45.実施形態1から23のいずれか一による複数のキャリア細胞を含む医薬組成物、家畜成長促進用組成物、土壌改良剤、除草剤、植物用肥料、食品または食材滅菌用組成物、歯科用組成物、個人衛生用組成物、または消毒用組成物(例えば家庭用または工業用)。
【0221】
本明細書において、キャリア細胞は、例えばヒトまたは動物の対象に投与するためのプロビオティックな細胞である。例えば、キャリア細胞はヒトまたは動物の対象のマイクロバイオーム(例えば腸または血液のマイクロバイオーム)において片利共生的であり、キャリアは対象への投与のためである。一例では、キャリア細胞は細菌細胞である(また任意に標的細胞は細菌細胞である)。一例では、キャリア細胞は古細菌細胞である(また任意に標的細胞は古細菌細胞である)。
【0222】
任意に、キャリア細胞はグラム陽性細菌細胞であり、標的細胞はグラム陽性細菌細胞である。
【0223】
任意に、キャリア細胞はグラム陽性細菌細胞であり、標的細胞はグラム陰性細菌細胞である。
【0224】
任意に、キャリア細胞はグラム陰性細菌細胞であり、標的細胞はグラム陽性細菌細胞である。
【0225】
任意に、キャリア細胞はグラム陰性細菌細胞であり、標的細胞はグラム陰性細菌細胞である。
【0226】
任意に、キャリア細胞はBacillus細菌細胞であり、標的細胞はグラム陽性細菌細胞である。
【0227】
任意に、キャリア細胞はBacillus細菌細胞であり、標的細胞はグラム陰性細菌細胞である。
【0228】
任意に、キャリア細胞はBacillus細菌細胞であり、標的細胞はSalmonella細菌細胞である。
【0229】
任意に、キャリア細胞はBacillus細菌であり、標的細胞はE coli細菌細胞である。
【0230】
任意に、キャリア細胞はE coli細菌細胞であり、標的細胞はPseudomonas細菌細胞である。
【0231】
任意に、キャリア細胞はE coli細菌細胞であり、標的細胞はグラム陽性細菌細胞である。
【0232】
任意に、キャリア細胞はE coli細菌細胞であり、標的細胞はグラム陰性細菌細胞である。
【0233】
任意に、キャリア細胞はE coli細菌細胞であり、標的細胞はSalmonella細菌細胞である。
【0234】
任意に、キャリア細胞はE coli細菌細胞であり、標的細胞はE coli細菌細胞である。
【0235】
任意に、キャリア細胞はE coli細菌細胞であり、標的細胞はPseudomonas細菌細胞である。
【0236】
本明細書においてBacillus細胞は任意にB subtilis細胞である。
【0237】
任意に、キャリア細胞はヒトまたは動物の対象への投与のためのプロビオティックまたは片利共生E coli細菌細胞である。任意に、キャリア細胞はヒトまたは動物の対象への投与のためのプロビオティックまたは片利共生Bacillus細菌細胞である。
【0238】
本明細書では、任意に、第1のDNAはプラスミド、例えば閉環状DNAに含まれる。
【0239】
一実施形態では、一例において第1のDNAはdsDNAである。一実施形態では、一例において第1のDNAはssDNAである。
【0240】
代替の構成では、第1のDNAはその代わりに第1のRNAである。
【0241】
任意に、標的細胞はSalmonella細胞(例えばここでキャリア細胞はE coli細胞である)、例えばSalmonella enterica亜種enterica、例えばSalmonella enterica亜種enterica血液型亜型Typhimurium、Enteritidis、Virchow、Montevideo、Hadar、またはBinzaである。
【0242】
例えば、標的細菌はS enterica、S typhimurium;P aeruginosa;E coli、K pneumoniae;C jujeni;H pylori;A baumanii;C difficile;S aureus;S pyogenes;またはS thermophilusからなる群から選択される。
【0243】
一例では、標的細胞はヒトに院内感染を惹起する種の細胞である。
【0244】
任意に、標的細胞は動物(例えば家禽動物(例えばニワトリ)、ブタ、ウシ、魚類(例えばナマズまたはサケ)、または甲殻類(例えばエビまたはロブスター))のマイクロバイオームに含まれる。任意に、マイクロバイオームは腸マイクロバイオームである。例えば、標的細胞はニワトリの腸のバイオフィルムに含まれるSalmonella細胞である。例えば、標的細胞はex vivoでニワトリの腸のバイオフィルム試料に含まれるSalmonella細胞である。
【0245】
一実施形態では、第1のDNAは細菌のoriVおよび/またはoriTを含む。一実施形態では、第1のDNAはプラスミドに含まれ、プラスミドはoriVおよび/またはoriTを含む。
【0246】
第1の因子はタンパク質またはRNAであってよい。例えば、第1の因子はpirまたはtrfAである。一例では、第1の因子はその複製のために第1のDNAに含まれるoriVとともに操作可能である。
【0247】
一実施形態では、第1のDNAはプラスミドに含まれ、プラスミドはoriVを含み、プラスミドの複製を開始するようにoriVとともに操作可能ないずれの複製タンパク質(例えばpirまたはtrfA)をもコードしない。
【0248】
一実施形態では、第1のDNAは標的細菌細胞中に第1のDNAを接合移入するために必要な構成要素を欠いている。任意に、構成要素はタンパク質である。任意に、構成要素はRNAである。任意に、構成要素はtra1構成要素である。任意に、構成要素はtra2構成要素である。一例では、キャリア細胞は前記構成要素を含み、構成要素はキャリア細胞中のキャリア細胞染色体、第2のDNA、または第3のDNAに含まれまたはそれらによってコードされる。好ましくは、構成要素はキャリア細胞染色体に含まれまたはそれによってコードされる。
【0249】
任意に、接合移入に必要な構成要素はRP4プラスミド構成要素、例えばRP4traモジュール(例えばtra1またはtra2モジュール)の構成要素である。
【0250】
任意に、接合移入に必要な構成要素はRK2プラスミド構成要素、例えばRK2traモジュール(例えばtra1またはtra2モジュール)の構成要素である。
【0251】
任意に、接合移入に必要な構成要素はR6Kプラスミド構成要素、例えばR6Ktraモジュール(例えばtra1またはtra2モジュール)の構成要素である。
【0252】
任意に、第1のDNAは抗生剤耐性マーカー遺伝子および/またはプラスミド依存系遺伝子を含まないプラスミドに含まれる。実施例のセクションで説明したように、これはtrfA(またはこの構成要素が第1のDNAを含むプラスミドによってコードされていない場合に接合のために必要な他の構成要素)を提供する同一のIncPプラスミドが標的細胞中に存在する稀な場合には有利であり、両方のプラスミドは利用可能なtrfA(またはその他の構成要素)について競合して1つのプラスミドの損失をもたらし、それによりいずれの子孫の標的細胞からも急速に失われる。
【0253】
任意に、第1のDNAを含むプラスミドは、I型制限酵素を阻害する抗制限遺伝子として、標的細胞の制限酵素(例えばI型制限酵素)を阻害するための産生物をコードする抗制限遺伝子をさらに含む(例えば、抗制限遺伝子産生物は、T7のocr、RK2のklcA、ardまたはardBである)。
【0254】
さらにまたはその代わりに、プラスミドはIV型分泌系の必須の構成要素をコードする遺伝子を含み、キャリア細胞の染色体は分泌系の残りの部分をコードする遺伝子を含み、必須の構成要素はキャリア細胞から標的細胞へのプラスミドの接合移入のために必要である。例えば、必須の構成要素をコードするtra1およびtra2遺伝子を例外として、(好ましくはプラスミドがRK2型プラスミドである場合に)染色体はRK2tra1のtraKLM、traJXIHGF遺伝子の残り全て、およびRK2tra2のtrbBCEFGHJL遺伝子の残り全てを含む。代替の例では、必須の構成要素をコードする遺伝子を例外として、(好ましくはプラスミドがRK6型プラスミドである場合に)染色体はRK2tra1のtraKLM、traJXIHGF遺伝子のRK6ホモログの残り全て、およびRK2tra2のtrbBCEFGHJL遺伝子のRK6ホモログの残り全てを含む。一代替例では、必須の構成要素をコードする遺伝子を例外として、(好ましくはプラスミドがRP4型プラスミドである場合に)染色体はRK2tra1のtraKLM、traJXIHGF遺伝子のRP4ホモログの残り全て、およびRK2tra2のtrbBCEFGHJL遺伝子のRP4ホモログの残り全てを含む。
【0255】
例えば、必須の構成要素をコードするtra1またはtra2遺伝子を例外として、(好ましくはプラスミドがRK2型プラスミドである場合に)染色体はtraFからtraMまでのRK2プラスミドのDNA断片の残り全て、およびtrbBからtrKまでのRK2プラスミドのDNA断片の残り全てを含む。例えば、必須の構成要素をコードするtra1またはtra2遺伝子を例外として、(好ましくはプラスミドがRK2型プラスミドである場合に)染色体はtraFからtraMまでのRK2プラスミド遺伝子の残り全部、およびtrbBからtrKまでのRK2プラスミド遺伝子の残り全てを含む。例えば、染色体は(以下の順序、5’から3’、または3’から5’で)以下のRK2tra1遺伝子:traFGHIXJKLM、またはtraKLM、またはtraJXIHGFを含む。例えば、染色体は(以下の順序、5’から3’、または3’から5’で)以下のRK2tra2遺伝子:trbBCDEFGHIJKLまたはtrbBCEFGHJLを含む。
【0256】
例えば、必須の構成要素をコードする遺伝子を例外として、(好ましくはプラスミドがRK6型プラスミドである場合に)染色体はRK2traFのホモログからRK2traMのホモログまでのRK6プラスミドのDNA断片の残り全て、およびRK2trbBのホモログからRK2trKのホモログまでのRK6プラスミドのDNA断片の残り全てを含む。例えば、必須の構成要素をコードする遺伝子を例外として、(好ましくはプラスミドがRK6型プラスミドである場合に)染色体はRK2traFのホモログからRK2traMのホモログまでのRK6プラスミド遺伝子の残り全て、およびRK2trbBのホモログからRK2trKのホモログまでのRK6プラスミド遺伝子の残り全てを含む。例えば、染色体は(以下の順序、5’から3’、または3’から5’で)以下のRK2tra1遺伝子:traFGHIXJKLM、またはtraKLM、またはtraJXIHGFのRK6ホモログを含む。例えば、染色体は(以下の順序、5’から3’、または3’から5’で)以下のRK2tra2遺伝子:trbBCDEFGHIJKLまたはtrbBCEFGHJLのRK6ホモログを含む。
【0257】
例えば、必須の構成要素をコードする遺伝子を例外として、(好ましくはプラスミドがRP4型プラスミドである場合に)染色体はRK2traFのホモログからRK2traMのホモログまでのRP4プラスミドのDNA断片の残り全て、およびRK2trbBのホモログからRK2trKのホモログまでのRP4プラスミドのDNA断片の残り全てを含む。例えば、必須の構成要素をコードする遺伝子を例外として、(好ましくはプラスミドがRP4型プラスミドである場合に)染色体はRK2traFのホモログからRK2traMのホモログまでのRP4プラスミド遺伝子の残り全て、およびRK2trbBのホモログからRK2trKのホモログまでのRP4プラスミド遺伝子の残り全てを含む。例えば、染色体は(以下の順序、5’から3’、または3’から5’で)以下のRK2tra1遺伝子:traFGHIXJKLM、またはtraKLM、またはtraJXIHGFのRP4ホモログを含む。例えば、染色体は(以下の順序、5’から3’、または3’から5’で)以下のRK2tra2遺伝子:trbBCDEFGHIJKLまたはtrbBCEFGHJLのRP4ホモログを含む。
【0258】
好ましくは、第2のDNAまたは第2のDNAを含む染色体はoriTを欠いている。好ましくは、第3のDNAまたは第3のDNAを含む染色体はoriTを欠いている。
【0259】
例えば、oriTは第1のDNA(またはこれを含むプラスミド)にのみ含まれ、キャリア細胞中の他のいずれのDNAにも含まれない。したがって、移入は第1のDNAまたはそのプラスミドのみに限定されている。
【0260】
全ての実施形態および構成における第1のDNAは、好ましくは暴走複製プラスミドに含まれなくてよい。天然に存在するプラスミドは、特徴的な濃度(本明細書で特定のプラスミドの「コピー数」と称する)で宿主細胞中に存在する。制御エレメントを破壊する変異は、プラスミドコピー数の増加によって現れる過複製表現型(「コピーアップ」表現型)を惹起する。コピー数変異の極端な場合には、プラスミドの複製はコピー制御機構の喪失のために完全に抑制不能になる。これは「暴走プラスミド複製」または単に「暴走複製」と称され、かかる暴走複製に関与するプラスミドは「暴走複製プラスミド」である。
【0261】
一例では、本発明は複数の本発明のキャリア細胞を含む組成物に関する(例えば第1のDNAのコピーがそれぞれのプラスミドに含まれる)。任意に、キャリア細胞の全ては同一の前記第1および第2のDNAを含む。任意に、複数はキャリア細胞の第1の亜集団(第1の細胞)およびキャリア細胞の第2の亜集団(第2の細胞)を含み、第1の細胞は同一の第1のDNAを含み、第2の細胞は同一の第1のDNAを含む(これらは第1の細胞の第1のDNAとは異なる)。例えば、前者のDNAは他のDNAに含まれるNSIとは異なるNSIを含む。例えば、第1のDNAは第1のガイドRNAまたはcrRNAをコードし、第2のDNAは第2のガイドRNAまたはcrRNAをコードし、第1のガイドRNA/crRNAは第1の標的細胞中の第1のプロトスペーサー配列とハイブリダイズすることができ、第2のガイドRNA/crRNAは第2の標的細胞中の第2のプロトスペーサー配列とハイブリダイズすることができ、プロトスペーサーは異なる。任意に、第1の標的細胞は第2の標的細胞とは異なる。任意に、第1の標的細胞は第2の標的細胞と同じ種または株である。あるいは、第1の標的細胞は第2の標的細胞の種または株とは異なる種または株である(このようにして、例えば異なる種または株の複数の標的細胞を標的化して死滅させるために、ヒトまたは動物または植物に投与するためのキャリア細胞のカクテルが提供される)。
【0262】
一例では、該または各第1のDNAは複数の(例えば第1および第2の)NSIを含み、第1のNSIは第2のNSIとは異なる(例えば、これらは異なるタンパク質またはRNA、例えば異なるガイドRNAまたはcrRNAをコードする)。一例では、該または各第1のDNAは、2、3、4、5、6、7、8、9,10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20の異なる種類のNSIを含む。一例では、該または各第1のDNAは2、3、4、5、6、7、8、9,10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20の異なるガイドRNAをコードするNSIを含む。一例では、該または各第1のDNAは2、3、4、5、6、7、8、9,10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20の異なるcrRNAをコードするNSIを含む。一例では、該または各第1のDNAは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9,10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20の異なるガイドRNAをコードするNSIを含む。一例では、該または各第1のDNAは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9,10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20の異なるcrRNAをコードするNSIを含む。
【0263】
任意に、組成物は液体(例えば水性液体または水)に含まれ、組成物は1×103~1×1010(例えば、1×104~1×1010、1×104~1×109 、1×104~1×108、1×104~1×107、1×103~1×1010、1×103~1×109、1×103~1×108、1×103~1×107、1×105~1×1010 、1×105~1×109、1×105~1×108、1×105~1×107、1×106~1×1010 、1×106~1×109、1×106~1×108、または1×106~1×107)cfu/mlの量でキャリア細胞を含む。例えば、液体は例えばヒトまたは動物の消費のための飲料である。例えば、飲料は家畜用飲料、例えば家禽用飲料(すなわちニワトリ等の家禽による消費のための飲料)である。
【0264】
一例では、組成物はヒトまたは動物による消費のための食品(例えば補助食品)組成物である。一例では、組成物はヒトまたは動物による消費のための痩身用組成物である。一例では、組成物はヒトまたは動物による消費のための成長促進組成物である。一例では、組成物はヒトによる消費のためのボディビル組成物である。一例では、組成物はヒトまたは動物による消費のためのプロビオティック組成物である。一例では、組成物はヒトまたは動物による消費のための殺生物性組成物である。一例では、組成物はヒトまたは動物による消費のための殺虫性組成物である。一例では、組成物は動物による消費のための人畜共通感染症制御用組成物である。
【0265】
一例では、組成物はキャリア細胞に加えてビタミン類を含む。一例では、組成物はキャリア細胞に加えてビタミンA、B(例えばB12)、C、D、E、および/またはKを含む。一例では、組成物はキャリア細胞に加えて脂質を含む。一例では、組成物はキャリア細胞に加えて炭水化物を含む。一例では、組成物はキャリア細胞に加えてタンパク質および/またはアミノ酸を含む。一例では、組成物はキャリア細胞に加えてミネラルを含む。一例では、組成物はキャリア細胞に加えて金属イオン(例えばMg2+、Cu2+、および/またはZn2+)を含む。一例では、組成物はナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、マンガンイオン、鉄イオン、コバルトイオン、銅イオン、亜鉛イオン、および/またはモリブデンイオンを含む。
【0266】
一例では、組成物は植物用肥料組成物である。一例では、組成物は除草剤である。一例では、組成物は植物に適用するための殺虫剤組成物である。
【0267】
いずれの実施形態または実施例でも、適用可能な場合には、植物は例えば作物である。植物は、例えばコムギである。植物は、例えばトウモロコシである。植物は、例えばメイズである。植物は、例えば果樹である。植物は、例えば野菜である。植物は、例えばトマト植物である。植物は、例えばジャガイモ植物である。植物は、例えば草植物である。植物は、例えば顕花植物である。植物は、例えば樹木である。植物は、例えば灌木である。
【0268】
一例では、組成物は環境用途向けであり、環境は屋外環境(例えば野外または水路または貯水池への用途)である。
【0269】
一例では、組成物は食品または食品成分(例えばヒトまたは動物の消費のための)に含まれる。一例では、組成物は飲料または飲料成分(例えばヒトまたは動物の消費のための)に含まれる。
【0270】
一例では、標的細胞はヒトバイオフィルム細胞であり、例えばバイオフィルムは腸、皮膚、肺、眼、鼻、耳、胃腸管(GI管)、胃、毛髪、腎、尿道、気管支、口腔、口、肝、心臓、肛門、直腸、膀胱、大腸、小腸、陰茎、膣、または陰嚢のバイオフィルムである。一例では、標的細胞は動物のバイオフィルム細胞であり、例えばバイオフィルムは腸、皮膚、肺、眼、鼻、耳、胃腸管(GI管)、盲腸、空腸、回腸、結腸、胃、毛髪、羽毛、鱗、腎、尿道、気管支、口腔、口、肝、脾、心臓、肛門、直腸、膀胱、大腸、小腸、陰茎、膣、または陰嚢のバイオフィルムである。例えば、バイオフィルムは鳥(例えばニワトリ)盲腸のバイオフィルムである。例えば、バイオフィルムは鳥(例えばニワトリ)の胃腸管(GI管)、盲腸、空腸、回腸、結腸、または胃のバイオフィルムである。
【0271】
一例では、本明細書におけるいずれの方法もex vivoである。一例では、本明細書における方法はin vivoである。一例では、本明細書における方法はin vitroである。一例では、本明細書における方法は環境中、例えば家庭内(例えば屋内)、工業的(例えば工場内)、または農業的環境(例えば野外)で行われる。一例では、本明細書における方法は容器の中もしくはその上、または表面上で行われる。
【0272】
一例では、NSI(またはそのRNA産生物)は、標的細胞に含まれる標的細胞の染色体またはエピソームと組み換えて、染色体またはエピソームを改変することができる。任意に、これは、染色体またはエピソームが(例えばCas、TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、またはメガヌクレアーゼ等のガイドされたヌクレアーゼを使用して所定の部位で)切断され、同時にもしくは逐次的に第1のDNAがキャリア細胞との接合によって標的細胞に導入され、NSIまたはその配列が切断された部位またはその近傍で染色体またはエピソームに挿入される方法によって、行われる。
【0273】
一例では、第1のDNAは標的細胞中でプロトスペーサー切断が成し遂げられるように操作可能なCRISPR/Cas系の1つまたは複数の構成要素を含む(例えばプロトスペーサーは、NSIによってコードされるcrRNAまたはgRNAと標的細胞中でハイブリダイズすることができる10~20、10~30、10~40、10~100、12~15、または12~20の連続したヌクレオチドを含む)。
【0274】
例えば、系はI、II,III、IV、またはV型のCRISPR/Cas系である。
【0275】
一例では、NSIはCas9(および任意に第2の異なるCas、例えばCas3、Cas9、Cpf1、Cas13a、Cas13b、またはCas10)をコードする。一例では、NSIはCas3(および任意に第2の異なるCas、例えばCas3、Cas9、Cpf1、Cas13a、Cas13b、またはCas10)をコードする。一例では、NSIはCas3、Cas9、Cpf1、Cas13a、Cas13b、およびCas10から選択されるCasをコードする。さらにまたはその代わりに、第1のDNA(例えばNSI)は、ガイドRNAまたはcrRNAまたはtracrRNAをコードする。例えば、ガイドRNAまたはcrRNAまたはtracrRNAは第1のCasに関連している(すなわち、標的細胞中でこれとともに操作可能である)。
【0276】
一例では、本明細書においてCasはCas9である。一例では、本明細書においてCasはCas3である。Casは、標的細菌によってコードされるCasと同一であってよい。
【0277】
一実施形態では、標的細菌中におけるNSIまたはそれによってコードされるタンパク質もしくはRNAの存在は、標的細胞の死滅または標的細胞の成長もしくは増殖の下方制御を媒介する。一実施形態では、標的細菌中におけるNSIまたはそれによってコードされるタンパク質もしくはRNAの存在は、標的細胞のゲノムによってコードされる1つまたは複数のRNAもしくはタンパク質の発現のスイッチオフまたはその下方制御を媒介する。
【0278】
一実施形態では、標的細菌中におけるNSIまたはそれによってコードされるタンパク質もしくはRNAの存在は、標的細胞の成長もしくは増殖の上方制御を媒介する。一実施形態では、標的細菌中におけるNSIまたはそれによってコードされるタンパク質もしくはRNAの存在は、標的細胞のゲノムによってコードされる1つまたは複数のRNAもしくはタンパク質の発現のスイッチオンまたはその上方制御を媒介する。
【0279】
一実施形態では、NSIは標的細菌に対して毒性であるCRISPR/Cas系の構成要素をコードする。
【0280】
一実施形態では、第1のDNAはプラスミドまたはシャトルベクターに含まれる。一実施形態では、第2のDNAはベクター(例えばプラスミドまたはシャトルベクター)、ヘルパーファージ(例えばヘルパーファージミド)に含まれるか、または宿主細菌細胞のゲノムに一体化される。
【0281】
任意に、標的細胞は第1のDNA、例えば標的細胞中で機能性であって標的細胞に対して毒性である外因性CRISPR/Cas系の構成要素を含む第1のDNAがその中に移入される前には、機能性内因性CRISPR/Cas系を欠いている。一実施形態は、複数の本発明のキャリア細胞を含む抗菌性組成物を提供し、それぞれの標的細胞は任意にこのパラグラフにより、医療用途のためにヒトまたは動物の対象に投与するためである。
【0282】
一例では、本発明の組成物は除草剤、殺虫剤、殺昆虫剤、植物用肥料、または洗浄剤である。
【0283】
任意に、本明細書における標的細菌は対象のマイクロバイオーム、例えば腸のマイクロバイオームに含まれる。あるいは、マイクロバイオームは皮膚、頭皮、毛髪、眼、耳、口腔、咽喉、肺、血液、直腸、肛門、膣、陰嚢、陰茎、鼻、または舌のマイクロバイオームである。
【0284】
一例では、対象(例えばヒトまたは動物)は、キャリア細胞の投与と同時にまたは逐次的に、医薬がさらに投与される。一例では、医薬は抗生剤、抗体、免疫チェックポイント阻害剤(例えば抗PD-1、抗PD-L1、または抗CTLA4抗体)、養子細胞療法(例えばCAR-T療法)、またはワクチンである。
【0285】
一実施形態では、NSIはガイドされたヌクレアーゼ、例えばCasヌクレアーゼ、TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、またはメガヌクレアーゼをコードする。したがって、毒性薬剤はガイドされたヌクレアーゼ、例えばCasヌクレアーゼ、TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、またはメガヌクレアーゼを含んでよい。任意に、NSIは標的細胞の染色体を切断することができる制限ヌクレアーゼをコードする。
【0286】
任意に、組成物は、ヒトもしくは動物の対象において実施される医療における使用のための医薬組成物である。
【0287】
一例では、動物は家畜または伴侶ペット動物(例えばウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ネコ、またはウサギ)である。一例では、動物は昆虫(そのライフサイクルの任意のステージ、例えば卵、幼虫、またはさなぎにある昆虫)である。一例では、動物は原生動物である。一例では、動物は頭足動物である。
【0288】
任意に、組成物は除草剤、殺虫剤、食品もしくは飲料の加工剤、食品もしくは飲料の添加剤、石油化学もしくは燃料の加工剤、水精製剤、化粧品添加剤、洗剤添加剤、または環境(例えば土壌)添加剤または洗浄剤である。
【0289】
本発明はまた、標的細菌細胞またはそれぞれが前記第1のDNAを含む複数の標的細菌細胞を提供する。
【0290】
例えば、キャリア細菌はLactobacillus(例えばL reuteriまたはL lactis)、E coli、Bacillus、またはStreptococcus(例えばS thermophilus)細菌である。有用には、キャリアは第1のDNAを周囲の環境から保護することができる。キャリアの使用は、キャリアが対象における酸性の胃またはその他の厳しい環境から第1のDNAを保護することができる場合に、経口投与またはその他の経路に有用であり得る。さらに、キャリアは飲料、例えばプロビオティック飲料、例えば適合化させたYakult(商標)、Actimel(商標)、Kevita(商標)、Activa(商標)、Jarrow(商標)、またはヒトの消費用の同様の飲料に配合することができる。
【0291】
任意に、キャリア細胞または組成物は、薬剤またはNSIの発現産生物を使用して標的細菌を死滅させることを含む医療用途のためのヒトまたは動物への投与のためのものであり、標的細菌は対象における疾患または状態を媒介する。一例では、対象がヒトである場合には、対象は胚ではない。一例では、キャリア細胞は対象においてプロビオティックである。
【0292】
本発明はまた、環境中の標的細菌細胞を死滅させる方法を提供し、任意に本方法はヒトまたは動物の身体では実施されず、本方法は本発明のキャリア細胞または組成物に環境を曝露してNSIの産生物を標的細胞中で発現させることを含み、標的細菌は前記産生物の存在下で死滅する。例えば、産生物はCRISPR/Cas系またはその構成要素、例えば本明細書で開示した系または構成要素をコードする。したがって、本系は標的細胞の染色体プロトスペーサー配列を認識および切断することができ、それにより標的細胞が死滅する。任意に、死滅した標的細胞はさらなるステップで単離される。
【0293】
本発明はまた、標的細菌を含むヒトまたは動物の対象における疾患または状態の処置のための、標的細菌を死滅させる抗菌剤の製造における本発明の組成物または細胞の使用を提供する。
【0294】
任意に、環境は土壌のマイクロバイオーム;植物、植物の部分(例えば葉、果実、野菜、または花)もしくは植物製品(例えばパルプ);水;水路;流体、食材もしくはその成分;飲料もしくはその成分;医療用デバイス;化粧品;洗剤;血液;体液;医療用装置;産業用装置;オイルリグ;石油化学加工;保存もしくは輸送の装置;ビヒクルまたは容器である。
【0295】
任意に、環境はex vivo体液(例えば尿、血液、血液製剤、汗、涙、痰、または唾)、体固形物(例えば糞便)、または組成物を投与されたヒトもしくは動物の対象の組織である。
【0296】
任意に、環境はin vivoの体液(例えば尿、血液、血液製剤、汗、涙、痰、または唾液)、体固形物(例えば糞便)、または組成物を投与されたヒトもしくは動物の対象の組織である。
【0297】
一実施形態では、第1のDNAはファージミドまたはクローニングベクター(例えばシャトルベクター、例えばpUCベクター)に含まれる。
【0298】
一実施形態では、第2のDNAは細菌キャリア細胞の染色体に含まれる。
【0299】
任意に、毒性薬剤はCRISPR/Cas系の1つまたは複数の構成要素、例えばI型Cascadeの1つまたは複数の構成要素(例えばCasA)をコードするDNA配列を含む。
【0300】
任意に、毒性薬剤はガイドされたヌクレアーゼ、例えばCasヌクレアーゼ、TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、またはメガヌクレアーゼをコードするDNA配列を含む。
【0301】
一例では、キャリア細胞または組成物は、医療用容器、例えばシリンジ、バイアル、IVバッグ、吸入器、点眼器、またはネブライザーに含まれる。一例では、キャリア細胞または組成物は、無菌の容器に含まれる。一例では、キャリア細胞または組成物は、医療用に適合した容器に含まれる。一例では、キャリア細胞または組成物は、発酵容器、例えば金属、ガラス、またはプラスチックの容器に含まれる。一例では、キャリア細胞または組成物は、農業用装置に含まれる。一例では、キャリア細胞または組成物は、食品の製造用または加工用の装置に含まれる。一例では、キャリア細胞または組成物は、園芸用装置に含まれる。一例では、キャリア細胞または組成物は、飼育用装置に含まれる。一例では、キャリア細胞または組成物は、石油化学の回収用または加工用の装置に含まれる。一例では、キャリア細胞または組成物は、蒸留用装置に含まれる。一例では、キャリア細胞または組成物は、(例えば少なくとも50、100、1000、10000、または100000リットルの容積を有する)細胞培養用容器に含まれる。さらにまたはその代わりに、標的細胞はこれらの装置等のいずれかに含まれる。
【0302】
一例では、キャリア細胞または組成物は、医薬に、例えばヒトまたは動物の対象への経口、IV、皮下、鼻内、眼内、経膣、局所、経直腸、または吸入による投与によって医薬を投与するための指示書を含む説明書またはパッケージラベルと組み合わせて、含まれる。一例では、キャリア細胞または組成物は、経口医薬製剤に含まれる。一例では、キャリア細胞または組成物は、鼻内または経眼医薬製剤に含まれる。一例では、キャリア細胞または組成物は、個人衛生用組成物(例えばシャンプー、石鹸、または脱臭剤)または化粧用製剤に含まれる。一例では、キャリア細胞または組成物は、洗剤製剤に含まれる。一例では、キャリア細胞または組成物は、例えば医療用または工業用のデバイスまたは装置を洗浄するための洗浄用製剤に含まれる。一例では、キャリア細胞または組成物は、食材、食材成分、または食材加工剤に含まれる。一例では、キャリア細胞または組成物は、飲料、飲料成分、または飲料加工剤に含まれる。一例では、キャリア細胞または組成物は、医療用バンデージ、繊維製品、プラスター、またはスワブに含まれる。一例では、キャリア細胞または組成物は、除草剤または殺虫剤に含まれる。一例では、キャリア細胞または組成物は、殺昆虫剤に含まれる。
【0303】
一例では、CRISPR/Cas構成要素はI型CRISPR/Cas系の構成要素である。一例では、CRISPR/Cas構成要素はII型CRISPR/Cas系の構成要素である。一例では、CRISPR/Cas構成要素はIII型CRISPR/Cas系の構成要素である。一例では、CRISPR/Cas構成要素はIV型CRISPR/Cas系の構成要素である。一例では、CRISPR/Cas構成要素はV型CRISPR/Cas系の構成要素である。一例では、CRISPR/Cas構成要素はCas9をコードするヌクレオチド配列を含む(例えばS pyogenes Cas9、S aureus Cas9、またはS thermophilus Cas9)。一例では、CRISPR/Cas構成要素はCas3をコードするヌクレオチド配列を含む(例えばE coli Cas3、C dificile Cas3、またはSalmonella Cas3)。一例では、CRISPR/Cas構成要素はCpfをコードするヌクレオチド配列を含む。一例では、CRISPR/Cas構成要素はCasXをコードするヌクレオチド配列を含む。一例では、CRISPR/Cas構成要素はCasYをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0304】
一例では、それぞれのキャリア細胞は、標的細菌中で操作可能なプロモーターを含むヌクレオチド配列(NSI)からの目的のCRISPR/Cas構成要素またはタンパク質をコードする。
【0305】
任意に、標的細菌はグラム陰性細菌(例えばらせん菌またはビブリオ)である。任意に、標的細菌はグラム陽性細菌である。任意に、標的細菌はマイコプラズマ、クラミジア、スピロヘータ、またはマイコバクテリウム細菌である。任意に、標的細菌はStreptococcus(例えばpyogenesまたはthermophilus)である。任意に、標的細菌はStaphylococcus(例えばaureus、例えばMRSA)である。任意に、標的細菌はE.coli(例えばO157:H7)であり、例えばCasはベクターによってコードされ、または内因性標的細胞Casヌクレアーゼ(例えばCas3)活性は脱抑制されている。任意に、標的細菌はPseudomonas(例えばsyringaeまたはaeruginosa)である。任意に、標的細菌はVibro(例えばcholerae(例えばO139)またはvulnificus)である。任意に、標的細菌はNeisseria(例えばgonnorrhoeaeまたはmeningitidis)である。任意に、標的細菌はBordetella(例えばpertussis)である。任意に、標的細菌はHaemophilus(例えばinfluenzae)である。任意に、標的細菌はShigella(例えばdysenteriae)である。任意に、標的細菌はBrucella(例えばabortus)である。任意に、標的細菌はFrancisella宿主である。任意に、標的細菌はXanthomonasである。任意に、標的細菌はAgrobacteriumである。任意に、標的細菌はErwiniaである。任意に、標的細菌はLegionella(例えばpneumophila)である。任意に、標的細菌はListeria(例えばmonocytogenes)である。任意に、標的細菌はCampylobacter(例えばjejuni)である。任意に、標的細菌はYersinia(例えばpestis)である。任意に、標的細菌はBorelia(例えばburgdorferi)である。任意に、標的細菌はHelicobacter(例えばpylori)である。任意に、標的細菌はClostridium(例えばdificileまたはbotulinum)である。任意に、標的細菌はErlichia(例えばchaffeensis)である。任意に、標的細菌はSalmonella(例えばtyphiまたはenterica、例えば血清型typhimurium、例えばDT104)である。任意に、標的細菌はChlamydia(例えばpneumoniae)である。任意に、標的細菌はParachlamydia宿主である。任意に、標的細菌はCorynebacterium(例えばamycolatum)である。任意に、標的細菌はKlebsiella(例えばpneumoniae)である。任意に、標的細菌はEnterococcus(例えばfaecalisまたはfaecim、例えばリネゾリド耐性)である。任意に、標的細菌はAcinetobacter(例えばbaumannii、例えば多剤耐性)である。
【0306】
標的細胞のさらなる例は、以下の通りである。
1.任意に、標的細菌は、例えばメチシリン、バンコマイシン、リネゾリド、ダプトマイシン、キヌプリスチン、ダルフォプリスチン、およびテイコプラニンから選択される抗生剤に耐性のStaphylococcus aureus細胞である。
2.任意に、標的細菌は、例えばセファロスポリン類(例えばセフタジジム)、カルバペネム類(例えばイミペネムまたはメロペネム)、フルオロキノロン、アミノグリコシド類(例えばゲンタマイシンまたはトブラマイシン)およびコリスチンから選択される抗生剤に耐性のPseudomonas aeruginosa細胞である。
3.任意に、標的細菌は、例えばカルバペネムに耐性のKlebsiella(例えばpneumoniae)細胞である。
4.任意に、標的細菌は、例えばエリスロマイシン、クリンダマイシン、ベータ-ラクタム、マクロライド、アモキシシリン、アジスロマイシン、およびペニシリンから選択される抗生剤に耐性のStreptococcus(例えばthermophilus、pneumoniae、またはpyogenes)細胞である。
5.任意に、標的細菌は、例えばセフトリアキソン、アジスロマイシン、およびシプロフロキサシンから選択される抗生剤に耐性のSalmonella(例えば血清型Typhi)細胞である。
6.任意に、標的細菌は、例えばシプロフロキサシンおよびアジスロマイシンから選択される抗生剤に耐性のShigella細胞である。
7.任意に、標的細菌は、例えばイソニアジド(INH)、リファンピシン(RMP)、フルオロキノロン、アミカシン、カナマイシン、およびカプレオマイシン、およびアジスロマイシンへの耐性から選択される抗生剤に耐性のmycobacterium tuberculosis細胞である。
8.任意に、標的細菌は、例えばバンコマイシンに耐性のEnterococcus細胞である。
9.任意に、標的細菌は、例えばセファロスポリンおよびカルバペネムから選択される抗生剤に耐性のEnterobacteriaceae細胞である。
10.任意に、標的細菌は、例えばトリメトプリム、イトロフラントイン、セファレキシン、およびアモキシシリンから選択される抗生剤に耐性のE.coli細胞である。
11.任意に、標的細菌は、例えばフルオロキノロン抗生剤およびカルバペネムから選択される抗生剤に耐性のClostridium(例えばdificile)細胞である。
12.任意に、標的細菌は、例えばセフィキシム(例えば経口セファロスポリン)、セフトリアキソン(注射用セファロスポリン)、アジスロマイシン、およびテトラサイクリンから選択される抗生剤に耐性のNeisseria gonnorrhoea細胞である。
13.任意に、標的細菌は、例えばベータ-ラクタム、メロペネム、およびカルバペネムから選択される抗生剤に耐性のAcinetobacter〔Acinetoebacter〕 baumannii細胞である。
14.任意に、標的細菌は例えばシプロフロキサシンおよびアジスロマイシンから選択される抗生剤に耐性のCampylobacter(例えばjejuni)細胞である。
15.任意に、標的細胞はベータ(β)-ラクタマーゼを産生する(例えばESBL産生E coliまたはESBL産生Klebsiella)。
16.任意に、標的細胞は、例1~14のいずれか1つに引用した抗生剤に耐性の細菌細胞である。
【0307】
一例では、標的細胞はShigella、E coli、Salmonella、Serratia、Klebsiella、Yersinia、Pseudomonas、およびEnterobacterから選択される種の細胞である。
【0308】
任意に、組成物は、それぞれまたは組み合わせて、Shigella、E coli、Salmonella、Serratia、Klebsiella、Yersinia、Pseudomonas、およびEnterobacterのうち2つ以上から選択される種の標的細胞中に第1のDNAを接合移入することができるキャリア細胞を含む。
【0309】
一例では、キャリア細胞の成長または増殖の低減は、少なくとも50、60、70、80、90、または95%である。任意に、組成物またはキャリア細胞は、標的細胞に対して毒性である抗生剤と同時にまたは逐次的に投与される。例えば、抗生剤は本明細書で開示した任意の抗生剤であってよい。
【0310】
任意に、NSIの発現は、標的細胞中で操作可能な誘起性プロモーターの制御下にある。任意に、NSIの発現は、標的細胞中で操作可能な構造性プロモーターの制御下にある。
【0311】
実施形態では、(例えばプラスミドに含まれる)第1のDNAは、スクリーニング可能なまたは選択可能なマーカー遺伝子を含む。例えば、選択可能なマーカー遺伝子は、抗生剤耐性遺伝子である。
【0312】
キャリア細菌は、表5に現れる種または属から選択される種または属の細菌であってよい。例えば、種は温血動物(例えば家畜脊椎動物)で見出される。例えば、種はヒトで見出される。例えば、種は植物で見出される。好ましくは、ヒトまたは動物の体内の非無菌部分(例えば皮膚、消化管、尿生殖器領域、口、鼻道、咽喉および上気道、耳、ならびに眼)にコロニーを形成する非病原性細菌がキャリア細胞として利用され、一例ではヒトまたは動物の体内のかかる部分の標的細胞細菌感染と闘うために本発明の方法が使用される。別の実施形態では、感染は全身性感染である。特に好ましいキャリア細菌種の例には、それだけに限らないが、Escherichia coliの非病原性株(E.coli F18、S17、およびE. coli Nissle株)、Lactobacillusの種々の種(例えばL.casei、L.plantarum、L.paracasei、L.acidophilus、L.fermentum、L.zeae、およびL.gasseri)、またはその他の皮膚またはGIにコロニーを形成する非病原性もしくはプロビオティックな細菌、例えばLactococcus、Bifidobacteria、Eubacteria、および死滅するように運命付けられているが、それでもプラスミドを移入することができる無核様体細胞である細菌性ミニ細胞が含まれる(例えばAdler et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 57;321-326,1970、Frazer and Curtiss III,Current Topics in Microbiology and Immunology 69:1-84,1975、Curtiss IIIへの米国特許第4,968,619号を参照)。一部の実施形態では、標的レシピエント細胞は、ヒト、動物、または植物に、例えば皮膚の上または消化管、尿生殖器領域、口、鼻道、咽喉および上気道、眼、および耳の中に含まれる病原性細菌である。ターゲティングおよび撲滅のために特に興味あるものは、Pseudomonas aeruginosa、Escherichia coli、Staphylococcus pneumoniae、およびその他の種、Enterobacter spp.、Enterococcus spp.、およびMycobacterium tuberculosisの病原性株である。一例では、標的細胞の属または種は、表5に列挙した任意の属または種である。
【0313】
本発明は、米国特許第6,271,359号、第6,261,842号、第6,221,582号、第6,153,381号、第6,106,854号、および第5,627,275号に記載されたものを含むが、それだけに限らない幅広い設定または環境、例えば治療用、農業用、またはその他の設定において用途を見出す。その他の用途も本明細書で論じており、さらに他の用途も当業者には容易に明らかになる。
【0314】
第1のDNAを含む数多い種類のプラスミドが、本発明における使用のために好適である。この観点において、当業者であれば単一のキャリア細菌株が(例えばそれらがコードする抗菌剤が異なる)2種以上のかかるプラスミドを含み得ることを認識することになる。さらに、別の例では、それぞれが1つまたは複数のかかるプラスミドを含む2つ以上の異なるキャリア細菌株を、マルチターゲット効果のために、すなわち2つ以上の異なる標的種または株を死滅させるために、または標的細胞の同じ種または株の細胞を死滅させるために、組み合わせてよい。
【0315】
本発明は、ヒトの処置および種々の獣医学、農業、園芸、および食品加工への応用に用途がある。ヒトおよび獣医学への用途については、保護のために目標とする細胞集団または組織に応じて、本発明のキャリア細菌の以下の投与様式、したがって局所、経口、経鼻、経眼、経耳、経肺(例えば吸入器を介する)、眼科、直腸、尿生殖器、皮下、腹腔内、および静脈内が意図される。細菌は、処置される患者のために選択される投与の様式に適した送達ビヒクル中で、医薬組成物として供給され得る。本明細書で使用する用語「患者」または「対象」は、ヒトまたは動物を指す(動物は例えば特定のドナー株の臨床的有効性のモデルとして特に有用であり、または飼育された動物もしくは家畜動物である)。商業的に関連のある動物はニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ナマズ、サケ、タラ、ニシン、ロブスター、エビ、クルマエビ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ヤギ、ガチョウ、またはウサギである。
【0316】
例えば、キャリア細菌を胃腸管または鼻道に送達するために、好ましい投与様式は経口摂取もしくは経鼻エアロゾル、または(単独の、または対象の飼料もしくは食料、および/または飲料、例えば飲水に組み込んだ)給餌であってよい。これに関して、キャリア細胞は家畜(または飼育された動物もしくはコンパニオン動物)の食料に含まれてよく、例えばキャリア細菌は家畜用の食料添加物に含まれてよい。あるいは、添加物は家畜用の飲料(例えば飲水)添加物である。Lactobacillus acidophilus等のプロビオティック細菌は、細菌細胞とマンニトール等の固相支持体との凍結乾燥された混合物を含むゲルカプセルとして販売されていることに注目されたい。ゲルカプセルが液体とともに摂取された場合には、凍結乾燥された細胞が再水和され、生存してコロニー形成性の細菌になる。したがって、同様にして、本発明のキャリア細菌細胞は、例えば食品または飲料に散布するためのゲルカプセルまたはバルクで、粉末化され凍結乾燥された製剤として供給することができる。再水和され生存する細菌細胞は、次いで上部および/または下部の胃腸管系にわたる部位に生息し、および/またはコロニーを形成し、その後、標的細菌と接触することになる。
【0317】
局所的適用のため、キャリア細菌は、罹患した皮膚表面上に塗布する軟膏またはクリームとして製剤化することができる。軟膏またはクリームの製剤は、坐剤等の他の標準的な製剤とともに、直腸または膣での送達にも適している。局所、膣、および直腸への投与のための適切な製剤は、医化学者には周知である。
【0318】
本発明は、種々の細菌感染または細菌に関連する望ましくない状態を処置するための局所または経粘膜投与に特に有用である。これらの使用のいくつかの代表的な例には、(1)Haemophilus sp.によって惹起される結膜炎、およびPseudomonas aeruginosaによって惹起される角膜潰瘍、(2)Pseudomonas aeruginosaによって惹起される外耳炎、(3)多くのグラム陽性球菌およびグラム陰性桿菌によって惹起される慢性副鼻腔炎、または気管支の一般的な汚染除去、(4)Pseudomonas aeruginosaに伴う嚢胞性線維症、(5)Helicobacter pylori、Escherichia coli、Salmonella typhimurium、Campylobacter、またはShigella sp.によって惹起される腸炎(例えば胃潰瘍を処置または防止するため)、(6)例えば予防手段としての手術または非手術としての開放創傷、(7)Pseudomonas aeruginosaまたはその他のグラム陰性病原体を除去するための熱傷、(8)例えばPropionobacter acnesによって惹起される座瘡、(9)例えばメチシリン耐性Staphylococcus aureus(MSRA)によって惹起される鼻または皮膚の感染、(10)例えばグラム陽性嫌気性菌によって惹起される体臭(すなわち、脱臭剤におけるキャリア細胞の使用)、(11)例えばGardnerella vaginalisまたはその他の嫌気性細菌に伴う細菌性膣炎、ならびに(12)種々の生命体によって惹起される歯肉炎および/または齲蝕の処置が含まれる。
【0319】
一例では、標的細胞はE coli細胞であり、ヒトにおいて処置すべき疾患または状態は子宮管の感染または呼吸器関連の感染、例えば肺炎である。
【0320】
他の実施形態では、本発明のキャリア細胞は、望ましくない標的細菌の除去または減衰のための表面の処置における応用、例えば標的細菌を含むかかる表面または環境を処置する方法における使用に用途があり、本方法は表面または環境を本発明のキャリア細菌と接触させてキャリアから標的細菌に本発明の第1のDNAを接合移入させ、抗菌剤に標的細胞を死滅させることを含む。例えば、表面における細菌汚染による対象の感染を防止するために、手術、カテーテル挿入、その他の侵襲的処置において使用される表面を処置してよい。その上における細菌汚染を制御するために、本発明の方法および組成物を使用して数多くの表面、対象物、材料、その他(例えば医療用または救急用の装置、看護施設、ならびに厨房用の装置および表面)を処置することができることが意図されている。
【0321】
キャリア細菌を含む医薬製剤またはその他の組成物は、投与を容易にし、用量を均一にするために、用量単位形態に製剤化することができる。用量単位形態は、本明細書で使用する場合、処置を受ける患者または植物または環境または表面に適した医薬製剤の物理的に離散した単位を意味する。それぞれの用量は、選択したキャリアと共同して所望の抗菌効果を生じるように計算された量のキャリア細菌を含む必要がある。適切な用量単位を決定するための手順は、当業者には周知である。用量単位は、患者、植物、表面、または環境の重量に基づいて比例的に増加または減少してよい。(例えば患者の組織に含まれる)病原性標的細胞の撲滅を達成するための適切な濃度は、当技術で既知の用量濃度曲線の計算によって決定してよい。
【0322】
本発明のキャリア細菌のその他の使用も意図されている。これらには、種々の農業用、園芸用、環境用、および食品加工用の用途が含まれる。例えば、農業および園芸においては、植物の疾患を最小化するために種々の植物病原性細菌が標的化され得る。標的化に適した植物病原体の一例は、Erwinia(例えば、E amylovora、火傷病の病原体)である。切り花の立ち枯れを低減または防止するために同様の戦略が利用され得る。獣医または動物飼育のために、本発明のキャリア細胞を動物の飼料(ニワトリ、ブタ、家禽、ヤギ、ヒツジ、魚類、甲殻類、またはウシの飼料)に組み込んで生体負荷を低減し、またはある種の病原性生命体(例えばニワトリ、シチメンチョウ、またはその他の家禽におけるSalmonella)を除去してよい。他の実施形態では、望ましくないまたは病原性の細菌を除去するために本発明を食肉またはその他の食品に適用してよい(例えば食肉におけるE coli O157:H7、または海産物の「魚臭」の一因であるProteus spp.)。
【0323】
環境への効用には、(例えばマラリアまたは西ナイルウイルスを蔓延させる蚊を制御するために)例えば抗菌剤に加えてまたはその代わりに殺昆虫剤を送達し、条件に応じて発現するためのキャリア細菌、例えばBacillus thurengiensisおよびその接合性プラスミドの1つを操作することが含まれる。かかる応用においては、上記の農業用および園芸用またはその他の応用と同様に、溶液、エアロゾル、またはゲルカプセルとしてのキャリア細菌の製剤が意図される。
【0324】
本発明の好ましい実施形態では、環境における操作されたDNAまたは遺伝子的に改変された生命体の使用に伴うリスクの可能性を最小化するために、本発明のDNA、プラスミド、およびキャリア細胞においてある種の特徴が採用される。例えば、環境的に慎重であるべき状況では、自己伝染性でないDNAまたはプラスミドを利用することが有利であろう。その代わりに、DNAまたはプラスミドは接合機構によって移動可能となるが自己伝染性ではなくなる。これは、一部の実施形態では、その産生物が接合機構のアセンブリーに必要なtra遺伝子の全部または一部をキャリア細胞の染色体に一体化することによって達成され得る。かかる実施形態では、本発明のDNAまたはプラスミドは、移入起点(oriT)を有するが細胞の染色体に提供されるtra遺伝子を有しないように構成される。この特徴により、レシピエントキラー細胞が、それが死滅する前またはその後でさえもキラーDNAまたはプラスミドをさらに移入することが防止される。別の生物安全性の特徴には、所定の宿主域を有する接合系を利用することが含まれる。あるエレメントは関係する僅かな細菌においてのみ機能する(狭い宿主域)ことが知られている一方、他のエレメントは多くの無関係な細菌において機能する(広い宿主域または無差別)ことが知られている(del Solar et al.,Mol.Microbiol.32:661-666,1996、Zatyka and Thomas,FEMS Microbiol.Rev.21:291-319,1998)。また、これらの接合系の多くはグラム陽性またはグラム陰性の細菌のいずれかにおいて機能し得るが、一般に両方では機能しない(del Solar,1996,上掲、Zatyka and Thomas,1998)。
【0325】
抗生剤耐性の不注意による増殖は、標的細胞中に接合移入される本発明のDNAまたはプラスミドにおける抗生剤耐性マーカーの使用を避けることにより、実施形態において最小化することができる。代替のアプローチでは、アミノ酸(すなわちセリン)の合成に関与する遺伝子を変異させて、ドナーにおけるこのアミノ酸に対する要求を発生させることができる。かかるミュータント細菌は、これらの細菌が、その産生物が成長に必要なser遺伝子を有するプラスミドを含むことを前提として、セリンを欠く培地で増殖することになる。したがって、本発明は、ser遺伝子または別の栄養遺伝子マーカーを含むプラスミドの有利な使用を意図している。これらのマーカーによって、キャリア細胞中のDNAまたはプラスミドの選択および維持が可能になる。別の生物安全性のアプローチには、DNAまたはプラスミドの宿主域を調節するための制限改変系の使用が含まれる。接合およびプラスミドの確立は、その中でプラスミドが制限系を免れて複製することができる分類学的に関連する種の間でより頻繁に起こることが予想される。II型制限エンドヌクレアーゼは、二本鎖DNAの特定の認識配列の中またはその近くで二本鎖切断を生じる。関連する改変酵素は同じ配列をメチル化して、それを切断から保護することができる。制限改変系(RM)は細菌および古細菌において普遍的であるが、真核細胞には存在しない。RM系のいくつかはプラスミドによってコードされるが、他のものは細菌の染色体の上にある(Roberts and Macelis,Nucl.Acids Res.24:223-235,1998)。制限酵素は、ウイルスまたはプラスミドのDNAのような外来のDNAが適切な改変酵素によって改変されていない場合には、このDNAを切断する。このようにして、細胞は外来のDNAの侵入から保護される。したがって、1つまたは複数のメチラーゼを産生するキャリア株を使用することによって、1つまたは複数の制限酵素による切断を免れることができる。特定の制限部位を欠くかまたは新規な部位を含むプラスミドDNAを産生し、エンドヌクレアーゼに対してそれぞれプラスミドDNAを保護するかまたは脆弱にするために、部位指向変異が使用される。広い宿主域のプラスミド(例えばRP4)は、典型的には狭い宿主域のプラスミドの上に存在する制限切断部位の多くを単に有しないことによって、制限系を免れることができる(Willkins et al.,1996,J.Mol.Biol 258,447-456)。本発明の好ましい実施形態はまた、キャリアとして環境に安全な細菌を利用する。例えば、弱毒化した細胞内グラム陽性およびグラム陰性の細菌によるDNAワクチンの送達が報告されている(Dietrich et al.,2001 Vaccine 19,2506-2512、Grillot-Courvalin et al,1999 Current Opinion in Biotech.10,477-481)。さらに、ドナー株は身体の非無菌部分(例えば皮膚、胃腸、尿生殖器、口、鼻道、咽喉、および上気道の系)にコロニーを形成する数千の無害な細菌の1つであってよい。好ましいドナー(すなわち、キャリア)細菌種の例は、本明細書の上記で説明している。
【0326】
別の戦略では、分裂せず成長しないキャリア細胞が、生細胞の代わりに利用される。ミニ細胞およびマキシ細胞は、代謝的に活性であるが自力で生存できない細菌細胞のよく研究されたモデル系である。ミニ細胞は染色体DNAを欠いており、DNAの複製なしに細胞分裂する特別な変異細胞によって生成する。細胞がマルチコピープラスミドを含む場合には、ミニ細胞の多くはプラスミドを含むことになる。ミニ細胞は分裂も成長もしない。しかし、接合性プラスミドを有するミニ細胞は、プラスミドDNAを接合複製して生きたレシピエント細胞に移入することができる(Adler et al.,1970,上掲、Frazer and Curtiss,1975,上掲、米国特許第4,968,619号,上掲)。マキシ細胞は、重要なDNA修復経路において変異を有するE.coliの株から得ることができる(recA、uvrA、およびphr)。マキシ細胞は多くのDNA修復機能を欠いているので、これらは低線量のUV照射によって死滅する。重要なことに、UV照射を受けていないプラスミド分子(例えばpBR322)は複製を続ける。かかる条件の下では、(プラスミドに指示された)複製および翻訳は効率的に起こることができ(Sancar et al.,J.Bacteriol.137:692-693,1979)、照射の前に生成したタンパク質は接合を維持するために十分である。これは以下の2つの観察によって支持される。i)ストレプトマイシンによって死滅した細胞は活性なドナーであり続ける。ii)de novoの遺伝子発現を防止する抗生剤の存在下に、接合性プラスミドの移入が起こり得る(Heineman and Ankenbauer,1993,J.Bacteriol.175,583-588、Cooper and Heineman,2000.Plasmid 43,171-175)。したがって、UV処理したマキシ細胞は、プラスミドDNAを生きたレシピエントに移入することができる。細菌の間でのrecAおよびuvrA遺伝子の保存によってE.coli以外のドナー株のマキシ細胞が得られることにも注目されたい。
【0327】
必須の細胞機能(例えば上掲の米国特許第4,968,619号に記載されている細胞壁、タンパク質合成、RNA合成)をコードする遺伝子における温度感受性変異を含むために機能することができない改変された細菌のいずれかも、本発明における使用が意図されている。
【0328】
一選択肢では、キャリア細胞のために、古細菌が細菌の代わりに使用される。さらにまたはその代わりに、標的細胞は古細菌細胞である。
【0329】
本明細書で使用する場合、用語「キャリア細胞」は、分裂するおよび/または分裂しない細菌細胞(ミニ細胞およびマキシ細胞)、または条件によって機能性のない細胞を含む。
【0330】
一例では、第1のDNAは操作されたRK2プラスミド(すなわち、組換えDNA技術によって改変されたRK2プラスミド、またはかかる改変されたプラスミドの子孫)に含まれる。プラスミドRK2は、29種類の(およびおそらくそれより多い)グラム陰性種の中で複製することができる無差別なプラスミドである(Guiney and Lanka,1989,p27-54.In C.M.Thomas(ed)Promiscous plasmids in gram-negative bacteria.London,Ltd London United Kingdom)。プラスミドRK2は、完全なヌクレオチド配列が知られている60kbの自己伝染性プラスミドである(Pansegrau et al.,1994,J.Mol.Biol.239,623-663)。この大きなプラスミドから誘導され、TrfAと呼ばれるプラスミドのRepタンパク質および栄養複製の起点であるoriVをコードするtrfA遺伝子を除いて全ての遺伝子を欠く最小のレプリコンが得られている。RK2複製およびTrfAタンパク質によるその制御の総説については、Helinski et al.,1996(In Escherichia coli and Salmonella Cellular and Molecular Biology,Vol.2(ed.F.Neidhardt,et al.,2295-2324,ASM Press,Washington D.C.)を参照されたい。
【0331】
一例では、第1のDNAは操作されたR6Kプラスミド(すなわち、組換えDNA技術によって改変されたR6Kプラスミド、またはかかる改変されたプラスミドの子孫)に含まれる。
【0332】
本発明は任意に産業用または家庭用の使用のためであるか、またはかかる使用のための方法において使用される。例えば、これは農業、油もしくは石油の産業、食品もしくは飲料の産業、被服産業、包装産業、電子産業、コンピュータ産業、環境産業、化学産業、航空宇宙〔aeorspace〕産業、自動車産業、バイオテクノロジー産業、医療産業、ヘルスケア産業、歯科産業、エネルギー産業、消費者製品産業、医薬産業、鉱業、クリーニング産業、森林産業、水産業、レジャー産業、リサイクル業、化粧品産業、プラスチック産業、パルプもしくは製紙産業、テキスタイル産業、被服産業、皮革もしくはスエードもしくは動物革産業、タバコ産業、または製鋼業のためであるかまたはこれらにおいて使用される。
【0333】
本発明は任意に、産業における使用のためであり、または環境は産業的環境であり、産業は医療およびヘルスケア、医薬、ヒト用食料、飼料、植物用肥料、飲料、乳業、食肉加工、農業、牧畜業、養鶏業、魚介水産業、獣医学、油、ガス、石油化学、水処理、下水処理、包装、電子およびコンピュータ、パーソナルヘルスケアおよびトイレタリー、化粧品、歯科、非医療歯科、眼科、非医療眼科、鉱業および鉱産物加工、金属鉱業および金属加工、採石業、航空、自動車、鉄道、輸送、宇宙、環境、土壌処理、パルプおよび紙、被服製造、染料、印刷、接着剤、空調、溶剤、生体防御、ビタミン補給、低温保存、繊維の浸漬および生産、バイオテクノロジー、化学、産業用洗浄製品、家庭用洗浄製品、石鹸および洗剤、消費者製品、森林業、水産業、レジャー、リサイクル、プラスチック、皮革、レザーおよびスエード、廃棄物処理、葬儀および請負、燃料、建設、エネルギー、鉄鋼、ならびにタバコ産業の分野からなる群から選択される分野の産業である。
【0334】
一例では、第1のDNAは標的細菌を標的とするCRISPRアレイを含み、アレイは、標的細菌のゲノムを標的とする1つまたは2つもしくはそれ以上の異なるスペーサー(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50またはそれ以上のスペーサー)を含む。
【0335】
一例では、標的細菌は以下のように環境に含まれる。一例では、環境はヒトのマイクロバイオーム、例えば口腔マイクロバイオームもしくは腸マイクロバイオーム、または血流である。一例では、環境はヒトの中またはその上の環境ではない。一例では、環境は非ヒト動物の中またはその上の環境ではない。一実施形態では、環境は空気環境である。一実施形態では、環境は農業環境である。一実施形態では、環境は油または石油の回収環境、例えば油または石油の油田または油井である。一例では、環境はヒトまたは非ヒト動物による消費のための食料または飲料の中またはその上における環境である。一例では、環境は海洋環境、例えば海水中または船上(例えば船またはボートのバラスト水)である。
【0336】
一例では、環境はヒトまたは動物のマイクロバイオーム(例えば腸、膣、頭皮、腋窩、皮膚、または口腔のマイクロバイオーム)である。一例では、標的細菌はヒトまたは動物のマイクロバイオーム(例えば腸、膣、頭皮、腋窩、皮膚、または口腔のマイクロバイオーム)に含まれる。
【0337】
一例では、本発明のキャリア細菌、または組成物は、鼻内、局所、もしくは経口でヒトもしくは非ヒト動物に投与されるか、またはかかる投与のためのものである。ヒトまたは動物のマイクロバイオームを処置しようとする当業者は、目的のマイクロバイオームに応じて最良の投与経路を決定することができる。例えば、マイクロバイオームが腸のマイクロバイオームである場合には、投与は経鼻または経口であってよい。マイクロバイオームが頭皮または腋窩のマイクロバイオームである場合には、投与は局所であってよい。マイクロバイオームが口または咽頭である場合には、投与は経口であってよい。
【0338】
一例では、環境は飲料もしくは水(例えばヒトの消費のための水路または飲料水)または土壌に含まれる。水は任意に加熱、冷却、もしくは産業用のシステムの中にあるか、または飲料水保存容器の中にある。
【0339】
一例では、キャリアおよび/または標的細菌はAnaerotruncus、Acetanaerobacterium、Acetitomaculum、Acetivibrio、Anaerococcus、Anaerofilum、Anaerosinus、Anaerostipes、Anaerovorax、Butyrivibrio、Clostridium、Capracoccus、Dehalobacter、Dialister、Dorea、Enterococcus、Ethanoligenens、Faecalibacterium、Fusobacterium、Gracilibacter、Guggenheimella、Hespellia、Lachnobacterium、Lachnospira、Lactobacillus、Leuconostoc、Megamonas、Moryella、Mitsuokella、Oribacterium、Oxobacter、Papillibacter、Proprionispira、Pseudobutyrivibrio、Pseudoramibacter、Roseburia、Ruminococcus、Sarcina、Seinonella、Shuttleworthia、Sporobacter、Sporobacterium、Streptococcus、Subdoligranulum、Syntrophococcus、Thermobacillus、Turibacter、およびWeisellaから選択されるFirmicutesである。
【0340】
一例では、キャリア細菌、組成物、使用、または方法は、病原性感染を低減するため、または腸もしくは口腔のバイオフィルムのバランスを調整するため、例えばヒトまたは動物における肥満または疾患を処置または防止するため、またはGIの状態(例えばクローン病、IBD、または腸炎)を処置または防止するためである。例えば、DNA、キャリア細菌、組成物、使用、または方法は、ヒトまたは動物または植物、好ましくはヒトまたは動物の腸のバイオフィルムにおいてSalmomnella、Campylobacter、Erwinia、Xanthomonous、Edwardsiella、Pseudomonas、Klebsiella、Pectobacterium、Clostridium dificileまたはE coli細菌をノックダウンするためである。
【0341】
一例では、動物は例えばニワトリであり、標的細菌はSalmomnellaまたはCampylobacterである。一例では、動物は例えば魚類(例えばナマズまたはサケ)または甲殻類(例えばエビまたはロブスター)であり、標的細菌はEdwardsiellaである。一例では、植物は例えばジャガイモ植物であり、標的細菌はPectobacteriumである。一例では、植物は例えばキャベツ植物であり、標的細菌はXanthomonous(例えばX campestris)である。一例では、植物はマリファナ植物であり、例えば標的細菌はPseudomonas(例えばP cannabinaまたはP amygdali)、Agrobacterium(例えばA tumefaciens)、またはXanthomonas(例えばX campestris)である。一例では、植物は麻植物であり、例えば標的細菌はPseudomonas(例えばP cannabinaまたはP amygdali)、Agrobacterium(例えばA tumefaciens)またはXanthomonas(例えばX campestris)である。
【0342】
一例では、疾患または状態はがん、炎症性もしくは自己免疫の疾患または状態、例えば肥満、糖尿病IBD、GI管の状態または口腔の状態である。
【0343】
任意に、環境または標的細菌は、腸バイオフィルム、皮膚バイオフィルム、口腔バイオフィルム、咽喉バイオフィルム、毛髪バイオフィルム、腋窩バイオフィルム、膣バイオフィルム、直腸バイオフィルム、肛門バイオフィルム、眼バイオフィルム、鼻バイオフィルム、舌バイオフィルム、肺バイオフィルム、肝バイオフィルム、腎バイオフィルム、生殖器バイオフィルム、陰茎バイオフィルム、陰嚢バイオフィルム、乳腺バイオフィルム、耳バイオフィルム、尿道バイオフィルム、陰唇バイオフィルム、臓器バイオフィルム、または歯科バイオフィルムに含まれる。任意に、環境は、または標的細菌は、植物(例えばタバコ、作物、果樹、野菜、またはタバコ、例えば植物の表面上もしくは植物に含まれる)または環境(例えば土壌または水もしくは水路または水性液体)に含まれる。
【0344】
一例では、キャリア細胞または組成物は、動物またはヒトにおける疾患または状態を処置するためである。一例では、疾患または状態は、対象または患者に含まれる標的細胞の感染によって惹起されまたは媒介される。一例では、疾患または状態は、対象または患者に含まれる標的細胞の感染に伴う。一例では、疾患または状態の症状は、対象または患者に含まれる標的細胞の感染である。
【0345】
任意に、ヒトまたは動物の対象の疾患または状態は、
(a)神経変性の疾患または状態、
(b)脳の疾患または状態、
(c)CNSの疾患または状態、
(d)記憶の喪失または損傷、
(e)心臓または心臓血管の疾患または状態、例えば心臓麻痺、発作、または心房細動、
(f)肝臓の疾患または状態、
(g)腎臓の疾患または状態、例えば慢性腎疾患(CKD)、
(h)膵臓の疾患または状態、
(i)肺の疾患または状態、例えば嚢胞性線維症またはCOPD、
(j)胃腸の疾患または状態、
(k)咽喉または口腔の疾患または状態、
(l)眼の疾患または状態、
(m)生殖器の疾患または状態、例えば膣、陰唇、陰茎、または陰嚢の疾患または状態、
(n)性感染性の疾患または状態、例えば淋病、HIV感染、梅毒、またはクラミジア感染、
(o)耳の疾患または状態、
(p)皮膚の疾患または状態、
(q)心臓の疾患または状態、
(r)鼻の疾患または状態、
(s)血液の疾患または状態、例えば貧血、例えば慢性疾患またはがんの貧血、
(t)ウイルス感染、
(u)病原性細菌感染、
(v)がん、
(w)自己免疫性の疾患または状態、例えばSLE、
(x)炎症性の疾患または状態、例えばリウマチ性関節炎、乾癬、皮膚炎、喘息、潰瘍性大腸炎、大腸炎、クローン病、またはIBD、
(y)自閉症、
(z)ADHD、
【0346】
(aa)双極性障害、
(bb)ALS(筋委縮性側索硬化症)、
(cc)骨関節炎、
(dd)先天性または発育の欠陥または状態、
(ee)流産、
(ff)血液凝固状態、
(gg)気管支炎、
(hh)乾燥または湿潤AMD、
(ii)新生血管形成(例えば腫瘍または眼の)、
(jj)一般的な風邪、
(kk)てんかん、
(ll)線維症、例えば肝臓または肺の線維症、
(mm)真菌性の疾患または状態、例えば鵞口瘡、
(nn)代謝性の疾患または状態、例えば肥満、拒食症、糖尿病、I型もしくはII型の糖尿病、
(oo)潰瘍、例えば胃潰瘍または皮膚潰瘍、
(pp)乾燥皮膚、
(qq)シェーグレン症候群、
(rr)サイトカインストーム、
(ss)難聴、聴覚の喪失または損傷、
(tt)代謝の遅延または亢進(したがって、対象の体重、性別、および年齢の平均より遅延または亢進)
(uu)受胎障害、例えば不妊または受精能低下、
(vv)黄疸、
(ww)皮膚発疹、
(xx)川崎病、
(yy)ライム病、
(zz)アレルギー、例えばナッツ、草、花粉、イエダニ、ネコ、またはイヌの毛皮または鱗屑に対するアレルギー、
【0347】
(aaa)マラリア、腸チフス熱、結核、またはコレラ、
(bbb)うつ病、
(ccc)精神発達遅滞、
(ddd)小頭症、
(eee)栄養不良、
(fff)結膜炎、
(ggg)肺炎、
(hhh)肺塞栓症、
(iii)肺高血圧症、
(jjj)骨障害、
(kkk)敗血症または敗血性ショック、
(lll)静脈洞炎、
(mmm)ストレス(例えば職業性ストレス)、
(nnn)サラセミア、貧血、フォンウィレブラント病、または血友病、
(ooo)帯状疱疹またはヘルペス、
(ppp)月経、
(qqq)精子数減少
から選択される。
【0348】
本発明による処置または防止のための神経変性またはCNSの疾患または状態
一例では、神経変性またはCNSの疾患または状態は、アルツハイマー病、老年期精神病、ダウン症候群、パーキンソン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、糖尿病性神経障害、パーキンソン症候群、ハンチントン病、マシャド・ジョセフ病、筋委縮性側索硬化症、糖尿病性神経障害、およびクロイツフェルト・クロイツフェルト・ヤコブ病からなる群から選択される。例えば、疾患はアルツハイマー病である。例えば、疾患はパーキンソン症候群である。
【0349】
本発明の方法がCNSまたは神経変性の疾患または状態を処置するためにヒトまたは動物の対象に対して実施される例では、本方法は対象におけるTreg細胞の下方制御を惹起し、それにより全身的な単球誘導マクロファージおよび/またはTreg細胞が脈絡叢を横切って対象の脳の中に進入することを促進し、それにより疾患または状態(例えばアルツハイマー病)を処置し、防止し、またはその進行を低減する。一実施形態では、本方法は対象のCNSシステムにおける(例えば脳および/またはCSFにおける)IFN-ガンマの増加を惹起する。一例では、本方法は神経線維を回復し、および/または神経線維の損傷の進行を低減する。一例では、本方法は神経ミエリンを回復し、および/または神経ミエリンの損傷の進行を低減する。一例では、本発明の方法はWO2015136541に開示された疾患または状態を処置または防止し、および/または本方法はWO2015136541に開示された任意の方法とともに使用することができる(本書類の開示は、例えばCNSおよび神経変性の疾患および状態の処置および/または防止をもたらすために対象に投与することができるかかる方法、疾患、状態、および可能性のある治療剤、例えば免疫チェックポイント阻害剤、例えば抗PD-1、抗PD-L1、抗TIM3、または本明細書で開示したその他の抗体などの薬剤の開示を提供するために、参照により全体として本明細書に組み込まれる)。
【0350】
本方法による処置または防止のためのがん
処置し得るがんは、血管新生していない、または実質的に血管新生していない腫瘍、ならびに血管新生した腫瘍を含む。がんは非固形腫瘍(血液腫瘍、例えば白血病およびリンパ腫など)を含み得る、または固形腫瘍を含み得る。本発明によって処置すべきがんの型には、癌腫、芽腫、および肉腫、ならびにある種の白血病またはリンパ悪性疾患、良性および悪性の腫瘍、および悪性疾患、例えば肉腫、癌腫、および黒色腫が含まれるが、これらに限定されない。成人の腫瘍/がんおよび小児の腫瘍/がんも含まれる。
血液がんは血液または骨髄のがんである。血液の(または造血性の)がんの例には、急性白血病(急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄原性白血病、および骨髄芽球、前骨髄球、骨髄単球、単球、および赤白血病など)、慢性白血病(慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄原性白血病、および慢性リンパ性白血病など)を含む白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(不活性および高グレードの形態)、多発性骨髄腫、ワルデンストロームのマクログロブリン血症、重鎖疾患、骨髄異形成症候群、ヘアリー細胞白血病、および骨髄異形成が挙げられる。
【0351】
固形腫瘍は、通常嚢胞または液体の区域を含まない組織の異常な塊である。固形腫瘍は良性または悪性であり得る。様々な型の固形腫瘍の名称は、それらを形成する細胞の型に由来する(肉腫、癌腫、およびリンパ腫など)。肉腫および癌腫などの固形腫瘍の例には、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、およびその他の肉腫、滑液腫瘍、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、リンパ性悪性疾患、膵がん、乳がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、肝細胞癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭癌、褐色細胞脂肪腺癌腫、乳頭癌、乳頭腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛腫、ウィルムズ腫瘍、子宮頸がん、睾丸腫瘍、精上皮腫、膀胱癌、黒色腫、およびCNS腫瘍(例えば神経膠腫(脳幹神経膠腫および混合神経膠腫など)、神経膠芽腫(多形神経膠芽腫としても知られている)、星状細胞腫、CNSリンパ腫、胚細胞腫、髄芽腫、神経鞘腫、頭蓋咽頭腫〔craniopharyogioma〕、上衣腫、松果体腫〔pineaioma〕、血管芽細胞腫、聴覚神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫〔menangioma〕、神経芽細胞腫、網膜芽腫、および脳転移)が挙げられる。
【0352】
本方法による処置または防止のための自己免疫疾患
1.急性播種性脳脊髄炎(ADEM)
2.急性壊死性出血性白質脳炎
3.アジソン病
4.無ガンマグロブリン血症
5.円形脱毛症
6.アミロイドーシス
7.強直性脊髄炎
8.抗GBM/抗TBM腎炎
9.抗リン脂質症候群(APS)
10.自己免疫性血管性浮腫
11.自己免疫性再生不良性貧血
12.自己免疫性自律神経障害
13.自己免疫性肝炎
14.自己免疫性高脂血症
15.自己免疫性免疫不全
16.自己免疫性内耳疾患(AIED)
17.自己免疫性心筋炎
18.自己免疫性卵巣炎
19.自己免疫性膵炎
20.自己免疫性網膜炎
21.自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)
22.自己免疫性甲状腺疾患
23.自己免疫性蕁麻疹
24.軸索およびニューロンの神経障害
25.バロー病
26.ベーチェット病
27.水疱性類天疱瘡
28.心筋ミオパチー
29.キャスルマン病
30.セリアック病
31.チャガス病
32.慢性疲労症候群
33.慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)
34.慢性再発性多発性骨髄炎〔ostomyelitis〕(CRMO)
35.チャーグ・ストラウス症候群
36.瘢痕性類天疱瘡/良性粘膜類天疱瘡
37.クローン病
38.コーガンス症候群
39.寒冷凝集素症
40.先天性心ブロック
41.コクサッキー心筋炎
42.CREST病
43.本態性混合クリオグロブリン血症
44.脱髄性神経障害
45.疱疹状皮膚炎
46.皮膚筋炎
47.デビッチ病(視神経脊髄炎)
48.ディスコイドループス
49.ドレスラー症候群
50.子宮内膜症
【0353】
51.好酸球性食道炎
52.好酸球性筋膜炎
53.結節性紅斑
54.実験性アレルギー性脳脊髄炎
55.エバンス症候群
56.線維筋痛症
57.線維化性肺胞炎
58.巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)
59.巨細胞性心筋炎
60.糸球体腎炎
61.グッドパスチャー症候群
62.多発性血管炎を伴う内芽腫症(GPA)(以前はウェゲナー内芽腫症と呼ばれていた)
63.グレーブス病
64.ギランバレー症候群
65.橋本脳炎
66.橋本甲状腺炎
67.溶血性貧血
68.ヘノッホ・シェーンライン紫斑病
69.妊娠性ヘルペス
70.低ガンマグロブリン血症
71.特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
72.IgA腎症
73.IgG4関連硬化性疾患
74.免疫調節性リポタンパク質
75.封入体筋炎
76.間質性膀胱炎
77.若年性関節炎
78.若年性糖尿病(1型糖尿病)
79.若年性筋炎
80.川崎症候群
81.ランバート・イートン症候群
82.白血球破砕性血管炎
83.扁平苔癬
84.硬化性苔癬
85.木質性結膜炎
86.線状IgA疾患(LAD)
87.ループス(SLE)
88.ライム病、慢性
89.メニエール病
90.顕微鏡的多発性血管炎
91.混合結合組織病(MCTD)
92.モーレン潰瘍
93.ムッカ・ハーベルマン病
94.多発性硬化症
95.重症筋無力症
96.筋炎
97.ナルコレプシー
98.視神経脊髄炎(デビッチの)
99.好中球減少症
100.眼瘢痕性類天疱瘡
【0354】
101.視神経炎
102.回帰性リウマチ
103.PANDAS(ストレプトコッカス関連小児自己免疫性神経精神障害)
104.傍腫瘍性小脳変性症
105.発作性夜間血色素尿症(PNH)
106.パリー・ロンバーグ症候群
107.パーソナージ・ターナー症候群
108.扁平部炎(末梢ぶどう膜炎)
109.天疱瘡
110.末梢神経障害
111.静脈周囲脳脊髄炎
112.悪性貧血
113.POEMS症候群
114.結節性多発性動脈炎
115.I型、II型、およびIII型の自己免疫性多腺性症候群
116.リウマチ性多発性筋痛
117.多発性筋炎
118.心筋梗塞後症候群
119.心膜切開術後症候群
120.プロゲステロン皮膚炎
121.原発性胆汁性肝硬変
122.原発性硬化性胆管炎
123.乾癬
124.乾癬性関節炎
125.特発性肺線維症
126.壊疽性膿皮症
127.赤芽球癆
128.レイノー現象
129.反応性関節炎
130.反射性交感神経性ジストロフィー
131.ライター症候群
132.再発性多発性軟骨炎
133.下肢静止不能症候群
134.後腹膜線維化症
135.リウマチ熱
136.リウマチ性関節炎
137.サルコイドーシス
138.シュミット症候群
139.強膜炎
140.強皮症
141.シェーグレン症候群
142.精子および睾丸の自己免疫
143.スティッフパーソン症候群
144.亜急性細菌性心内膜炎(SBE)
145.スーザック症候群
146.交感性眼炎
147.高安動脈炎
148.側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎
149.血小板減少性紫斑病(TTP)
150.トロサ・ハント症候群
【0355】
151.横断性脊髄炎
152.1型糖尿病
153.潰瘍性大腸炎
154.未分化結合組織疾患(UCTD)
155.ブドウ膜炎
156.血管炎
157.小水疱水疱性皮膚病
158.白斑
159.ウェゲナー肉芽腫症(現在では多発性血管炎を伴う肉芽腫症(GPA)と称する)
【0356】
本方法による処置または防止のための炎症性疾患
1.アルツハイマー病
2.強直性脊椎炎
3.関節炎(骨関節炎、リウマチ性関節炎(RA)、乾癬性関節炎)
4.喘息
5.アテローム性動脈硬化
6.クローン病
7.結腸炎
8.皮膚炎
9.憩室炎
10.線維筋痛
11.肝炎
12.過敏性腸症候群(IBS)
13.全身性エリテマトーデス(SLE)
14.腎炎
15.パーキンソン病
16.潰瘍性大腸炎
【0357】
成長プロモーターおよび飼料転換率の低下
本実施例は、家禽において成長を促進しFCRを増進させるために、抗菌剤を使用して標的細菌を標的化することができることを実証する。本実施例では、ガイドされたヌクレアーゼ系を使用して、家禽におけるSalmonellaを特異的に標的化した。
第1の態様では、
動物(例えば家畜動物、例えば家禽動物)の成長を促進する方法であって、本方法がガイドされたヌクレアーゼ系またはその構成要素を動物に投与すること、および動物に含まれる標的細菌に系または構成要素を導入することを含み、ガイドされたヌクレアーゼが標的細菌に含まれる標的ヌクレオチド配列を認識および改変(例えば切断)することができ、それにより標的細菌が死滅しまたは標的細菌の成長もしくは増殖が阻害されて動物の成長が促進される、方法が提供される。
本方法は非医学的方法であり、動物における標的細菌の存在が動物の成長を阻害することができる。したがって、本方法は動物におけるかかる細菌の負荷を低減し、成長を促進する。
【0358】
第2の態様では、
動物(例えば家畜動物、例えば家禽動物)における飼料転換率(FCR)を増進させる方法であって、本方法がガイドされたヌクレアーゼ系またはその構成要素を動物に投与すること、および動物に含まれる標的細菌に系または構成要素を導入することを含み、ガイドされたヌクレアーゼが標的細菌に含まれる標的ヌクレオチド配列を認識および改変(例えば切断)することができ、それにより標的細菌が死滅しまたは標的細菌の成長もしくは増殖が阻害されて動物のFCRが増進される、方法が提供される。
本方法は非医学的方法であり、動物における標的細菌の存在が動物のFCRを増大させることができる。したがって、本方法は動物におけるかかる細菌の負荷を低減し、FCRを増進させる(すなわち、FCR数を低減させる)。
【0359】
第3の態様では、
動物(例えば家畜動物、例えば家禽動物)の成長を促進する方法であって、Salmonella細菌に対して毒性である抗菌剤を動物に投与することを含み、動物に含まれるSalmonella標的細菌が薬剤に曝露されて死滅しまたは標的細菌の成長もしくは増殖が阻害されて、動物の成長が促進される、方法が提供される。
本方法は非医学的方法であり、動物における標的細菌の存在が動物の成長を阻害することができる。したがって、本方法は動物におけるかかる細菌の負荷を低減し、成長を促進する。
【0360】
第4の態様では、
動物(例えば家畜動物、例えば家禽動物)における飼料転換率(FCR)を増進させる方法であって、Salmonella細菌に対して毒性である抗菌剤を動物に投与することを含み、動物に含まれるSalmonella標的細菌が薬剤に曝露されて死滅しまたは標的細菌の成長もしくは増殖が阻害されて、動物のFCRが増進される、方法が提供される。
【0361】
本方法は非医学的方法であり、動物における標的細菌の存在が動物のFCRを増加させることができる。したがって、本方法は動物におけるかかる細菌の負荷を低減し、FCRを増進させる(すなわち、FCR数を低減させる)。
【0362】
これらの態様のいずれにおいても、任意に動物は家畜動物である。任意に、動物は鳥、例えば家禽、例えばニワトリ、シチメンチョウ、ガチョウ、またはアヒルである。好ましくは、動物はニワトリである。
【0363】
これらの態様のいずれにおいても、任意に細菌はEnterobacteriaciae細菌、例えばSalmonellaである。例えば、細菌はSalmonella enterica、typhimurium、またはenteritidisである。例えば、Salmonellaは本明細書で開示した任意のSalmonella種または株である。
【0364】
例えば、系、構成要素、または薬剤は、動物飼料および/または飲料(例えば飲水に混合して)で動物に供給される。飲料で供給される場合には、系、構成要素、または薬剤はキャリア細菌に含まれ、キャリア細菌は飲料中に1×103~1×1010(例えば1×104~1×1010、1×104~1×109、1×104~1×108、1×104~1×107、1×103~1×1010、1×103~1×109、1×103~1×108、1×103~1×107、1×105~1×1010、1×105~1×109、1×105~1×108、1×105~1×107、1×106~1×1010、1×106~1×109、1×106~1×108、または1×106~1×107)cfu/mlの量で含まれる。飲料中で供給される場合には、系、構成要素、または薬剤はキャリア細菌に含まれ、キャリア細菌は飲料中に少なくとも1×108cfu/mlの量で含まれ、例えば、動物は家禽、例えばニワトリである。
【0365】
任意に、ガイドされたヌクレアーゼは、本明細書で開示した任意のガイドされたヌクレアーゼ、例えばCas、TALEN、メガヌクレアーゼ、またはジンクフィンガーヌクレアーゼである。一例では、構成要素は関連するCasヌクレアーゼとともに標的細胞中で操作可能なcrRNAまたはガイドRNAである。Casヌクレアーゼは、本明細書で開示した任意のCasヌクレアーゼであってよい。Casヌクレアーゼは標的細胞の内因性Casであってよく、または動物に投与される外因性核酸によってコードされてもよい。
【0366】
本発明の系、構成要素、および薬剤は、細菌接合(例えばキャリア細胞から標的細胞への接合移入)によって、または系、構成要素、または薬剤をコードする標的細胞の核酸の中に形質導入されるファージによって、標的細菌に導入される。
【0367】
任意に、標的細菌は、動物で見出される本明細書で開示した任意の微生物群に含まれる。好ましくは、微生物群は腸微生物群(例えばニワトリの腸微生物群)である。
【0368】
家畜動物は本明細書で開示した任意の家畜動物、例えばニワトリ、ブタ、ウシ、ヒツジ、養殖魚(例えばサケまたはナマズ)、または養殖甲殻類(例えばロブスター、クルマエビ、またはエビ)であってよい。
【0369】
本明細書に記載した特定の実施形態は説明のために示されており、本発明の限定としてではないことが理解されよう。本発明の範囲から逸脱することなく、種々の実施形態において本発明の主要な特徴を採用することができる。当業者であれば、日常の検討を超えることなく、本明細書に記載した特定の手順に数多くの等価物を認識し、または確定することができる。かかる等価物は本発明の範囲内であると考えられ、特許請求の範囲によって包含されている。明細書中で述べた全ての出版物および特許出願は、本発明が関係する当業者のスキルのレベルを示す。全ての出版物および特許出願、ならびに全ての等価の米国特許出願および特許は、それぞれ個別の出版物または特許出願が具体的かつ個別に参照により組み込まれると同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。単語「1つ(〔a〕または〔an〕)」の使用は、特許請求の範囲および/または明細書において用語「含む」と併せて使用される場合には、「1つ」を意味し得るが、これは「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは2つ以上」の意味とも合致する。本開示は選択肢のみおよび「および/または」を意味する定義を支持するが、特許請求の範囲における用語「または」の使用は、選択肢のみを意味するように明示的に指示され、または選択肢が相互に排他的である場合以外には、「および/または」を意味するように使用される。本出願を通じて、用語「約」は、ある値がデバイスについての固有の誤差変動を含むことを示すために使用され、本方法はその値または検討対象の間に存在する変動を決定するために採用される。
【0370】
本明細書および特許請求の範囲で使用する場合、語句「含む〔comprising〕」(および〔comprising〕の任意の形態、例えば〔comprise〕および〔comprises〕)、「有する〔having〕」(および〔having〕の任意の形態、例えば〔have〕および〔has〕)、「含む〔including〕」(および〔including〕の任意の形態、例えば〔includes〕および〔include〕)、または「含む〔containing〕」(および〔containing〕の任意の形態、例えば〔contains〕および〔contain〕)は包括的またはオープンエンドであり、引用していないさらなるエレメントまたは方法ステップを排除しない。
【0371】
用語「またはそれらの組合せ」又は同様の用語は、本明細書で使用する場合、その用語に先立って列挙された項目の全ての順列および組合せを意味する。例えば、「A、B、C、またはそれらの組合せ」は、A、B、C、AB、AC、BC、またはABCのうち少なくとも1つを、また特定の文脈において順序が重要な場合には、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、またはCABのうち少なくとも1つを含むことも意図している。この例を続けて、1つまたは複数の項目または用語、例えばBB、AAA、MB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABB等々の繰り返しを含む組合せが明示的に含まれる。文脈から他が明白でない限り、典型的には任意の組合せにおいて項目または用語の数に制限がないことが当業者には理解されよう。
【0372】
文脈から他が明白でない限り、本開示のいずれの部分も本開示の任意の他の部分と組み合わせて読むことができる。
【0373】
本明細書で開示し特許請求する組成物および/または方法の全ては、本開示に照らして、不必要な実験をすることなく作成し実行することができる。本発明の組成物および方法は好ましい実施形態に関して記載しているが、本発明の概念、精神、および範囲から逸脱することなく、組成物および/または方法に、また本明細書に記載した方法のステップまたはステップの順列に、変更を適用できることは、当業者には明らかであろう。当業者には明らかな全てのかかる同様の置換および改変は、添付した特許請求の範囲で定義される本発明の精神、範囲、および概念に含まれるとみなされる。
【実施例】
【0374】
[実施例1]
標的遺伝子配列の評価およびcrRNAアレイの設計
Salmonellaにおける推定標的遺伝子のリスト
慎重な分析および決定を介して、本発明者らは、本発明に従ったキャリア細胞から接合性プラスミドによって送達されたCRISPR/Cas構成要素を使用する切断による評価のために、以下の標的遺伝子を編集した。
1)pipA 病原性アイランドによってコードされるタンパク質:SPI5
2)mViM 推定病原性因子
3)mViN 推定病原性因子
4)phoP 低Mg+濃度下で発現する遺伝子(OmpRファミリー)を転写する;病原性転写調節タンパク質PHOP
5)hilA 侵入遺伝子の転写アクチベーター
6)BigA 推定表面曝露病原性タンパク質
7)sugR ATP結合タンパク質;病原性アイランドによってコードされるタンパク質:SPI3
8)rhuM 病原性アイランドによってコードされるタンパク質:SPI3
9)pipC 侵入遺伝子Eタンパク質/病原性アイランドによってコードされるタンパク質:SPI5
10)pipB 病原性アイランドによってコードされるタンパク質:SPI5
11)sicP 病原性に関連するシャペロン
12)sopB 侵入遺伝子Dタンパク質/病原性アイランドによってコードされるタンパク質:SPI5
13)marT 推定転写調節タンパク質/病原性アイランドによってコードされるタンパク質:SPI3
【0375】
標的の選択
Salmonella特異的遺伝子の最初の標的選択は、Salmonella病原性アイランドにほぼ排他的に位置する13の推定候補を同定した(この実施例の最初に列挙した)。細密に検査した後、標的のリストは7個の遺伝子、すなわち、pipA、pipB、pipC、hilA、marT、sicP、およびsopBに減り、これら遺伝子は、重要なことに、本発明者らが見出したところによると、Enterobacteriaの他の遺伝子に対して有意な配列相同性を示さず、したがって、in vivoで、および異なる(非Salmonella)種の非標的Enterobacteriaを含有するマイクロバイオームにおいて、高いSalmonella細胞標的特異性を可能とする。PAMモチーフ(NGG)の存在によって規定されるS.pyogenes Cas9の標的部位を、分子生物学ソフトウェアにおいて利用可能なそれぞれの機能を使用して抽出した。多くの6から14個の推定標的部位が、7個の選択された遺伝子のそれぞれにおいて同定された。
【0376】
crRNAの設計および合成
dsDNAの効率的な制限をもたらす可能性が最も高い標的部位を選択するために、全ての潜在的な配列を、Cas9によって導入される二本鎖切断の効率に対する正または負の効果を有することが、利用可能な文献において記載されている、重要な位置でのヌクレオチドの存在についてスクリーニングした。3つの刊行物が、sgRNAについてであるが、このようなデータを報告した。
(1)Doench et al. 2014, Nature Biotechnology
(2)Gagnon et al. 2014, PLoS One
(3)Liu et al. 2016, Scientific Reports
【0377】
これら3つの刊行物のそれぞれにおいて制限の効率に影響すると記載されているパラメーターのほとんどに左右された各遺伝子の1つの標的配列を、crRNAアレイに組み込むために選択し、その結果、3つのアレイを試験することとなった。crRNAアレイは、S.pyogenesの配列データ(Deltcheva et al. 2011, Natureにおいて公開されている)に基づいて設計した。以下の配列を構築した:配列番号1~3。
【0378】
crRNAをコードするこれらの配列のうちの2つを、同族tracrRNAおよびCas9をコードする配列とアセンブルした。
【0379】
Cas9構築物(tracrRNA-Cas9-crRNA)
crRNAをコードする選択された配列を、異なるバージョンのtracrRNA-Cas9モジュールと組み合わせ、その結果、変化したプラスミドセットが得られた。
【0380】
全ての構成要素(tracrRNA、Cas9、およびcrRNA)の構成的な発現のために、プラスミドpCas9に基づくtracr-Cas断片(Jiang et al. 2013, Nature Biotechnology、配列番号4で示される配列)をS.pyogenesのgDNAから増幅した。本発明者らは、この断片を、利用可能なcrRNAコード断片と繋ぎ、高コピー数の一般的なクローニングプラスミドpJet1.2にクローニングする。この一連の構築物は、pFS1と名付けられる。
【0381】
低コピー数のバックグラウンドにおけるこの構成的なCRISPR/Cas構築物の発現が効率的に機能するかどうかを判定するために、本発明者らは、上記の系を低コピー数のプラスミドに移す。pFS2構築物はしたがって、pZS21MCS(Expressys)からの低コピー数のpSC101起点に基づく。
【0382】
CRISPR/Cas構成要素のうちの少なくとも1つの発現を誘導性プロモーターによって制御するために、本発明者らは、構成的Cas9プロモーターを、TetR調節型プロモーターPLtetO-1で置換する。pFS3の得られたプラスミドも同様に、pZS21MCSの低コピー数のpSC101起点に基づく。導入される変化は、以下の通りである:
- RBSと開始ATGとの間のスペースが、7bpに短縮されている(TAAATAC)
- 停止コドンが、あまり効果的でないTGACからタンデムTAATAAT配列に変化している。
【0383】
最後に、本発明者らは、上記のpFS1およびpFS2のような移動可能なバージョンの構成的に発現されるプラスミドを産生する。この目的のために、本発明者らは、プラスミドRP4の移入起点(oriT)を、クロラムフェニコール耐性を有する中間コピー数のプラスミド(p15A起点)にクローニングする。この構築物は、RP4および他の移動可能なプラスミドに存在するような、染色体に組み込まれた接合機構によって移動および移入することが可能であるはずである。
【0384】
さらなる構築物
最終的な選択およびSalmonellaへの形質転換の前に、選択されたcrRNAによるdsDNA制限の効率を決定するために、本発明者らは、標的遺伝子(またはその大部分)を、適合するプラスミドにクローニングすることを目指す。選択されたプラスミドは、上記のpFS1/pFS2/pFS3構築物に適合するp15A起点を有するpZA31MCS(Expressys)である。次いで、クロラムフェニコール耐性を失わせること(または、yfp誘導体がレポーターとして存在する場合には蛍光を失わせること)によって、効率をE.coliにおいて試験することができる。最も性能の良い標的配列をその後、将来的に、より標的化されたプラスミドとして使用することができる。
【0385】
本発明者らは、以下のプラスミドを作製した:
pFSmob-C tracrRNA/Cas9-mob-pZA31MCS
pFSmobSal7 tracrRNA/Cas9-Salcr7-3-mob-pZA31MCS
pFSmobSal3 tracrRNA/Cas9-Salcr3.2-mob-pZA31MCS
pFSmob-C* Salcr7-3-mob-pZA31MCSに基づく対照
【0386】
プラスミドの詳細
プラスミド名:pFSmob-C
説明:4768bpのインサート(tracrRNA-Cas9-oriT/mob)を有するpZA31MCS(Expressys)に基づくp15A起点プラスミド
プラスミド長:6685bp
配列の検証:あり;プライマーウォーキングシーケンシングによって検証されたインサート配列
さらなる注記:crRNAアレイは存在しない;対照プラスミド
【0387】
プラスミドの詳細
プラスミド名:pFSmobSal7
説明:5598bpのインサート(tracrRNA-Cas9-crRNA-oriT/mob)を有するpZA31MCS(Expressys)に基づくp15A起点プラスミド
プラスミド長:7515bp
配列の検証:あり;プライマーウォーキングシーケンシングによって検証されたインサート配列
【0388】
プラスミドの詳細
プラスミド名:pFSmobSal3
説明:5341bpのインサート(tracrRNA-Cas9-crRNA-oriT/mob)を有するpZA31MCS(Expressys)に基づくp15A起点プラスミド
プラスミド長:7258bp
配列の検証:あり;プライマーウォーキングシーケンシングによって検証されたインサート配列
【0389】
プラスミドの詳細
プラスミド名:pFSmob-C*
説明:pZA31MCS(Expressys)に基づくp15A起点プラスミド
プラスミド長:7348bp
配列の検証:あり;プライマーウォーキングシーケンシングによって検証されたインサート配列
【0390】
[実施例2]
ガイドされたヌクレアーゼを使用する接合による望ましくないSalmonella株の選択的除去
研究の目的
この研究の目的は、接合実験によって望ましくないSalmonella株を選択的に除去することであった。本発明者らは、pFSMobSal7プラスミドを、E.coli S17からSalmonella sppに移動させた。このプラスミドは、tracr-Cas9、crRNAをコードするアレイ(Sal7-3)、および移入起点(oriT)を有している。
【0391】
概要
概念証明として、Salmonella sppへの移動の前に、E.coliからE.coliへの接合実験をまず行った。プラスミドpFSMobSal7(クロラムフェニコール耐性、CmR)を、移動を可能にするキャリア株に、まず形質転換した。この実験において、線毛を生じさせた株は、E.coli S17(ATCC(登録商標)47055TM)であった。接合機能は、染色体に組み込まれたRP4プラスミドによってもたらされる。レシピエント細胞はナリジクス酸耐性であるべきであり(25μg/ml)、ここで、本発明者らは、E.coli JM109(ATCC(登録商標)53323TM)を使用した。標的化されたSalmonellaは、本発明者らのSalmonella sppコレクション由来のFS26であった。結果は、E.coli S17からE.coli JM109への、およびE.coli S17からSalmonella enteritidis(FS26)への良好な接合効率を示した。レシピエントとしてのSalmonellaへ接合の後、pFSMob-3での死滅が効率的であった。
【0392】
導入
pFSmobSal7プラスミドは、中間コピー数のpZA31MCS(Expressys)に由来するものであった。移入起点(OriT)配列を合成し(mob2と呼ぶ)、tracr-Cas9およびcrRNAアレイ断片に加えて、アセンブリー法によってpZA31MCSにクローニングした。
【0393】
接合実験を開始する前に、E.coli S17株を標準的なプロトコールによってエレクトロコンピテントにした(O’Challahan and Charbit, 1990)。プラスミドpFSMobsal7およびpFSMobC*を次いで、電気穿孔によってE.coli S17に形質転換し、クロラムフェニコール(Cm30、30μg/mL)中で選択した。
【0394】
pFSMobSal7およびpFSMobC*を、フィルター上での交配によって、ドナーE.coli S17からレシピエントE.coli JM109に、およびナリジクス酸耐性(NalR)かつクロラムフェニコール感受性(CmS)のSalmonella sppに移動させ、その後、37℃でインキュベートした。混合物を次いで、Cm30、Nal25、およびCm30+Nal25中に播種した。接合完了体を二重の抗生物質Cm30+Nal25中で選択した(Phornphisutthimas et al, 2007)。
【0395】
接合実験を開始する前に、Salmonellaにおける形質転換によってpFSMobプラスミドの死滅効率がまず試験されたことに留意されたい。
【0396】
方法論
材料:
- ドナー株:pFSMobSal7/pFSMobC*を形質転換されたE.coli S17
- レシピエント株:JM109/Salmonella enteritidis FS26
- ルリア・ベルターニ培養液(LB)(製品番号L3522、Sigma-Aldrich)、LB Cm30μg/ml
- LB寒天1%のプレート
- LB寒天1% Cm30μg/mlのプレート
- LB寒天1% NaL25μg/mlのプレート
- LB寒天1% Cm30+NaL25のプレート
- Whatman(登録商標)膜フィルターナイロン、孔サイズ0.45μmから1μm、直径25mm。Sigma-Aldrichによって供給される参照番号28420770。
【0397】
実験1:E.coli S17からE.coli JM109へのpFSMobC*の移動
概念証明として、対照プラスミド(pFSMobC*)を有するE.coli S17からE.coli JM109への接合実験をまず行った。この実験は、Phornphisutthimas(Phornphisutthimas et al, 2007)のプロトコールに従った。
1. LB+Cm30における本発明者らのコレクション由来のドナーpFSMobC*(S17)の培養物、およびLB培養液におけるレシピエント株JM109の培養物を、一晩成長させる。
2. 朝、実験を開始する前に、LB寒天(1%)のプレートを少なくとも30分間、事前に温める。
3. ドナー株とレシピエントとを、1:1の比率で以下のように混合する。
4. 50μlのpFSMobC*(S17)+50μlのJM109
5. 50μlのpFSMobC*(S17)+50μlのLB
6. 50μlのLB+50μlのJM109
7. 各反応で、フィルター膜(0.45μMから1μM)を、事前に温めたLB寒天プレート(1%)の一番上に置く
8. 各交配試料をフィルターにロードする
9. プレートを3時間、37℃で、振とうせずに放置し、LBは吸収され、細菌はフィルター上に残る
10. インキュベーションの後、各フィルターを1mlのLB培養液を有するユニバーサルチューブ内に入れ、良くボルテックスする
11. 100μl(および連続希釈物)を、Cm30、Nal25、およびCm30+Nal25に播種し、37℃でO.Nで放置する。
【0398】
Cm30のプレートはドナーの数を提供する。Nal25のプレートはレシピエントの数を提供し、Nal25+Cm30のプレートは接合完了体(すなわち、ドナーからレシピエントに移動したプラスミド)の数を提供する。ドナーおよびレシピエントのみ(交配なし)を有するプレートは、陰性対照である。
【0399】
結果
1)37℃で18時間の後、計数可能の場合はコロニーを異なる希釈で個別に計数し、コロニーの数はcfu/mLで表した。陰性対照プレートでは予想通り、コロニーは回収されなかった(データは示していない)。結果(表1)は、E.coli S17からE.coli JM109への良好な接合効率を示している。
【0400】
【0401】
2)レシピエント株におけるpFSmobC
*プラスミドの移動を、PCRによって確認した。プライマーspCas9-6フォワード(5’-ATTGTTTGTGGAGCAGCATAAGC)(配列番号8)およびmob2リバース(5’-GCCTCTAGCACGCGTACCATGGGAT)(配列番号9)を、50℃のアニーリング温度で使用した。接合完了体を有するプレートから得た2つのコロニーがPCRによって試験されている。陽性対照もまた含まれた(
図1)。
【0402】
結論1:
E.coliからE.coliへの接合実験は、良好な移動効率を示している。E.coliの接合についてのさらなる最適化試験は、交配物を37℃で6時間、1:4の比率でインキュベートした場合に、より高い接合効率を示した。
【0403】
実験2:E.coli S17からSalmonella sppへのpFSMobSal7の接合
この実験は、いくつかの修正を加えて、Phornphisutthimas(Phornphisutthimas et al, 2007)およびCarraro et al, 2017のプロトコールに従っている:
1. LB+Cm30における本発明者らのコレクション由来のpFSMobSal7(S17)および対照pFSMobC*(S17)の培養物、ならびにLB培養液におけるレシピエント株Salmonella enteritidis FS26の培養物を、一晩成長させる。
2. 朝、実験を開始する前に、LB寒天(1%)のプレートを少なくとも30分間、事前に温める。
3. ドナー株とレシピエントとを、1:4の比率で以下のように混合する。
4. 100μlのpFSMobC*(S17)+400μlのSalmonella FS26
5. 100μlのpFSMobSal7(S17)+400μlのSalmonella FS26
6. 100μlのpFSMobC*(S17)+400μlのLB
7. 100μlのpFSMobSal7(S17)+400μlのLB
8. 100μlのLB+400μlのSalmonella
9. 2000×gで3分間回転させる
10. 200μlのLB中に再懸濁させる
11. 2000×gで3分間回転させる
12. 25μlのLB中に再懸濁させる
13. 各反応で、フィルター膜(0.45μMから1μM)を、事前に温めたLB寒天プレート(1%)の一番上に置く
14. 各交配試料をフィルターにロードする
15. プレートを6時間、37℃で、振とうせずに放置し、LBは吸収され、細菌はフィルター上に残る
16. インキュベーションの後、各フィルターを1mlのLB培養液を有するユニバーサルチューブ内に入れ、良くボルテックスする
17. 100μl(および連続希釈物)をCm30、Nal25、およびCm30+Nal25に播種し、37℃でO.Nで放置する。
【0404】
Cm30プレートのプレートはドナーの数を提供する。Nal25のプレートはレシピエントの数を提供し、Nal25+Cm30のプレートは接合完了体(すなわち、ドナーからレシピエントに移動したプラスミド)の数を提供する。
【0405】
結果
- 37℃で18時間の後、コロニーを希釈-3で個別に計数し、コロニーの数はcfu/mLで表した(表2)。陰性対照プレートでは予想通り、コロニーは回収されなかった(データは示していない)。
【0406】
【0407】
- プラスミド対照pFSMobC
*と比較すると、これらのデータは、接合によって標的株に送達されたプラスミドpFSMobSal7が株Salmonella enteritidis(FS26)を100%除去し得ることを示している(
図2)。
【0408】
結論
この研究は、接合がE.coli S17からSalmonella enteritidis(FS26)への良好な送達方法であること、および、pFSMobSal7が、接合によってレシピエントに送達されても依然として効率的に致死性であることを示した。接合は、Salmonellaの100%を除去する(死滅させる)ことができた。
【0409】
参考文献
Carraro N, Durand R, Rivard N, Anquetil C, Barrette C, Humbert M, Burrus V. (2017)。Salmonella genomic island 1(SGI1) reshapes the mating apparatus of IncC conjugative plasmids to promote self-propagation. PLOS Gen。
O’Challahan D,Charbit A. (1990). High efficiency transformation of Salmonella typhimurium and Salmonella typhi by electroporation. Mol. Gen. Genet., 223; 156-8。
Phornphisutthimas S, Thamchaipenet A, and Panijpan B. (2007). Conjugation in Escherichia coli. Biochem and Mol Bio Education Vol. 35, No. 6, 440-445
【0410】
[実施例3]
全血清型接合移入およびSalmonellaの死滅
研究の目的
この研究の目的は、接合によってpFSmobSal7プラスミドおよびpFSmobSal3プラスミドのSalmonella enterica亜種enterica血清型を選択的に除去するin vitroでの能力を試験することであった。
【0411】
概要
Salmonella enterica亜種enterica株、すなわち、血液型亜型Typhimurium(4)、Enteritidis(1)、Virchow(1)、Montevideo(1)、Heidelberg(1)、Hadar(1)、Binza(1)、Bredeney(1)、Infantis(1)、Kentucky(1)、Seftenberg(1)、Mbandaka(1)、Anatum(1)、Agona(1)、およびDublin(1)の18種を、本発明者らのSalmonella spp.コレクションから選択した(表3)。細菌をコンピテントにし、2つのバージョンのpFSmobプラスミド、すなわち、pFSmobSal7およびpFSmobSal3、2つのバージョンのpFSmob対照プラスミド、すなわち、pFSmob-C*およびpFSmob-C、ならびにさらなる対照としてのpZA31MCS(Expressys)で形質転換した。電気穿孔およびSOC Outgrowth培地(NEB、B90205、LOT-10019857)における37℃で2時間のインキュベーションの後、オリジナル溶液の異なる希釈物を、クロラムフェニコール(Cm30、30μg/mL)を添加した1%LB寒天に播種した。プレートを37℃で18時間インキュベートした。結果は、コロニー形成単位/mL(CFU/mL)として解釈した。
【0412】
導入
pFSmobSal7プラスミドおよびpFSmobSal3プラスミドは、それらのcrRNAアレイに7つの標的遺伝子(pipA、pipB、pipC、hilA、sicP、mart、sopB)および3つの標的遺伝子(pipC、hilA、mart)をそれぞれ有している。pFSmobSal7プラスミドに由来する陽性対照pFSmob-Cを使用し、特に、pFSmob-Cは、crRNAアレイを有していない。中間コピー数のpZA31MCS(Expressys)に由来する対照pFSmob-Cをさらなる対照として使用した。陽性コロニーの選択を、クロラムフェニコール(Cm30、30μg/mL)で行った。pFSmobSal7の、形質転換によってSalmonella enterica血液型亜型Typhimurium、Enteritidis、Virchow、Montevideo、Hadar、およびBinzaを選択的に除去するin vitroでの能力が以前に示された。この研究の目的は、本発明者らのコレクションに存在する全てのSalmonella spp.血清型を評価して、pFSmobSal7プラスミドおよびpFSmobSal3プラスミド両方の、望ましくない細菌を選択するin vitroでの能力を評価した。多くの結果を集めるために、18の異なる血清型を本発明者らのコレクションから選択し、電気穿孔によって試験した(表3)。プラスミドpFSmob-C、pFSmob-C*、およびpZA31MCS(Expressys)を対照として使用した。
【0413】
方法論
細菌株を、-80℃で維持した凍結ストックから回収し、37℃で24時間培養した(Edwards and Ewing,1986)。Cm30(30μg/mL)に対する感受性を、EUCAST臨床ブレークポイントテーブルに従って寒天希釈法を使用して試験した。細菌を、O’ChallahanおよびCharbitのプロトコール(O’Challahan and Charbit,1990)を使用してコンピテントにした。全ての選択された株を、100ngのpFSmobSal7、pFSmobSal3、pFSmob-C、pFSmob-C*、およびpZA31MCS(Expressys)で形質転換した。陰性対照もまた含まれた(DNAの付加を伴わないコンピテント細胞)(表4)。18時間のインキュベーションの後、計数可能なコロニー(30から300の間のコロニー数)を、mL当たりのコロニー数(CFU/mL)として表した(表4)。
【0414】
【0415】
結果
全ての選択された細菌は、EUCASTブレークポイント(EUCAST、2013)に従って、Cm30に対して感受性があることが分かった。電気穿孔、およびCm30(30μg/mL)(Sigma)を添加したLB寒天プレート(Fisher Bioreagents、BP1425-500、LOT-171784)への異なる希釈物(未希釈、10-1、10-2)の播種の後、プレートを37℃で18時間インキュベートした。細菌は、Cm30(30μg/mL)寒天プレートで成長した場合、形質転換されているとみなされた。計数可能なコロニー(30から300の間)を、CFU/mlとして表した(表4)。陰性対照プレートでは予想通り、コロニーは回収されなかった。1つ(FS67、S.Dublin)を除いた全ての血清型が、pZA31MCS(Expressys)で効率的に形質転換された。ほぼ全ての血清型が2つの対照プラスミド(pFSmob-C*およびpFSmob-C)で効率的に形質転換され、102から106CFU/mLの間の多くのコロニーであった。
【0416】
pFSmobSal7およびpFSmobSal3に関して、死滅効果は全ての血清型において生じ、これらは同様であることが分かった。大部分の血清型において、コロニー数の減少は、対照プラスミドを形質転換されたものと比較して、比較的明らかであった。1つの株(FS38、S.Montevideo)を除いて、pFSmobSal7とpFSmobSal3との間で、それらの死滅効果に有意差は見られなかった。
【0417】
【0418】
結論
この実験において使用した全てのSalmonella spp.血清型を効率的にコンピテントにし、pZA31MCS(Expressys)、pFSmob-C、および対照として使用したpFSmob-C*で形質転換した。Salmonella Typhimurium血清型は、これまでに観察されたように、pFSmob-C*によって常に形質転換可能という訳ではないと思われる。さらに一般的には、この研究において使用された2つのpFSmob由来対照プラスミドの間に特定の違いは生じなかった(102から106CFU/mLの間)。その一方で、pFSmobSal7およびpFSmobSal3の死滅効果は同様であることが分かった(101から103の間)。結論として、この研究において、pFSmobSal7およびpFSmobSal3が、対照プラスミドと比較して、異なるSalmonella spp.血清型を選択的に除去し得ることが実証された。
【0419】
参考文献
Edwards PR, Ewing WH. (1986). Identification of Enterobateriaceae (4th ed.). Elsevier, New York.
EUCAST, European Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing. (2013). Breakpoint tables for interpretation of MICs and zone diameters. Available at: http://www.eucast.org (last accessed August 16, 2013., Version 3.1.
O’Challahan D, Charbit A.(1990). High efficiency transformation of Salmonella typhimurium and Salmonella typhi by electroporation. Mol. Gen. Genet., 223;156-8.
【0420】
[実施例4]
ニワトリにおける飼料転換率の向上。組み合わされた第2の2週間の有効性、2週間の安全性、および6週間の生産性の試験。
研究の目的
- ニワトリの健康、福祉、および生産性に対する抗菌性接合性プラスミド(pFSmobSal7)の影響を6週間にわたり判定すること。
【0421】
方法論
Ross 308鳥を、制御されたバイオセキュリティーのある条件下で飼育し、水および標準的な市販の飼料を自由摂取させた。
【0422】
鳥に、以下のいずれかを継続的に投与した:
1. 添加物なしの水(60羽の鳥)
2. 108cfu/mlの株S17が入った飲用水(30羽の鳥)
3. 108cfu/mlのpFSmob-C*を有する株S17が入った飲用水(30羽の鳥)
4. 108cfu/mlのpFSmobSal7を有する株S17が入った飲用水(60羽の鳥)
5. 109cfu/mlのpFSmobSal7を有する株S17が入った飲用水(30羽の鳥)
6. 1010cfu/mlのpFSmobSal7を有する株S17が入った飲用水(30羽の鳥)
【0423】
-78℃で維持した凍結ストックから細菌株を回収し、LB寒天上で、37℃で24時間培養した。プラスミドのロスを防ぐために、培養物を、抗生物質を含有するLB培養液中に、37℃で16時間、180rpmで振とうしながら、1日に1回調製し、次いで、4000×gで10分間遠心分離した。培地を除去し、ペレットをPBS中に再懸濁し、次いで、PBS中で希釈して、ニワトリへの投与のための溶液を得た。
【0424】
並行して、30羽の鳥の群に、105CFU/mLのSalmonella Enteritidis株FS26(Folium)0.5mlを、1日目に経口投与した。鳥を、実験の3日目に、Salmonellaのコロニー形成について、ISO 6759法を使用して総排泄腔スワブによって確認した(1)。実験の5日目に、これらの検証された、Salmonellaがコロニー形成した鳥(伝播鳥〔seeder bird〕)のうちの3羽に印を付け、群1~6のそれぞれに加えた。鳥を週に1回秤量し、飼料の消費および死亡率を記録した。
【0425】
各群から15羽の鳥を、12日目および19日目(伝播鳥と混ぜた7日後および14日後)に安楽死させた。盲腸を、ISO 6759によってSalmonellaについての検査のために除去した。膝部および足部の印を記録した。1gの肝臓および盲腸内容物の試料を液体窒素瞬間冷凍した。
【0426】
群1および群4の各々から30羽の鳥を次いで、42日目まで週に1回、挙動および重量について観察し、42日目に鳥を安楽死させ、上記のように鳥を検査した。
【0427】
結果は、書類に記録するか、または、バイオセキュリティーのある宿泊施設における電話もしくは無線を介して口述し、Microsoft Excel(商標)に書き写した。データ変換の目的で、細菌が検出されなかった鳥は、1g当たり1細菌の計数値に割り当てた。計数値および重量はlog変換し、統計分析を、GraphPad Prism(商標)を使用して行った。データを、ダゴスティーノおよびピアソンのオムニバス正規性検定を使用して分布の正規性について評価し、非正規としては、クラスカル・ウォリス検定とダンの多重比較事後検定とを使用して分析した。鳥の割合における差を、フィッシャーの正確確率検定を使用して分析した。
【0428】
結果
全ての伝播鳥で、3日目までにSalmonellaがコロニー形成した。試験群において感染を伝播させるために使用した鳥は、糞1g当たり>105cfuの計数値を有していた。
【0429】
7日目に、群当たり15羽の鳥を安楽死させ、盲腸内のSalmonellaを測定した(
図3)。
図4は、Salmonellaが陽性/陰性の鳥を表したデータを示す。
【0430】
S17-pFSmobSal7(最低用量)およびpFSmob-C
*を投与された鳥は、対照よりも有意に少ない数のSalmonellaを盲腸に有しており(
図3)、伝播鳥と混ぜた後7日目に、検出可能なSalmonellaを盲腸に有する可能性が有意に低かった。
【0431】
いずれの群においても死亡は見られなかった。罹患は見られず、高投与量のS17-mobSal7は良く忍容された。鳥を挙動の正および負についてスコア付けしたが、群間で違いは見られなかった。
【0432】
群1および群4の各々から30羽の鳥を、42日齢までさらに観察した。この期間でもまた、挙動における有意差は見られなかった。群間の飼料消費は有意には異ならず、重量は、生きている間、測定された群の間で有意には異ならなかった。死後、Salmonellaは、直接計数によっては盲腸において検出不可能であった。膝部または足部の印は観察されなかった。S17-pFSmobSal7群における鳥の死骸重量の中央値は対照群におけるそれよりも205g大きく、有意な増大であった(
図5)。これは、群間で同等の飼料消費を伴っていたため、S17-pFSmobSal7群は、有意に向上した飼料転換率(FCR)を有していた。
【0433】
参考文献
ISO. 2007. ISO 6579:2007: Microbiology of food and animal feeding stuffs - Horizontal method for the detection of Salmonella spp. (ISO 6579:2002+Amd 1:2007). Geneva, Switzerland
【0434】
[実施例5]
条件付き必須遺伝子マーカーを有する非複製性接合性プラスミド
規制上の要件を満たすために、使用される全てのプラスミドは、抗生物質選択マーカーを好ましくは有しておらず、宿主細胞(すなわちキャリア細胞)を除いた、全てではないが大部分の細胞において、非複製性である。プラスミドを非複製性にするために、極めて低コピー数のプラスミドである、宿主範囲の広いプラスミドRK2の複製系を利用する。RK2の複製は、複製タンパク質、RK2上のtrfAによってコードされるTrfA、およびプラスミドの増殖起点(oriV)へのTrfAの結合の存在に依存し、複製開始のための宿主機構を利用しない。プラスミドからのtrfAの物理的分離および染色体へのこの遺伝子の組み込みは、宿主によってコードされる機能に依存するRK2 oriVを有するプラスミドを結果として生じさせる。これは、接合を介する送達の後にプラスミドが標的株において活性に複製することを防ぐ。trfAを提供する標的細胞内に同一のIncPプラスミドが存在する稀なケースでは、両プラスミドが、利用可能なTrfAに対して競合し、その結果、1つのプラスミドが失われる。この実施例における本発明者らのプラスミドは、有利な抗生物質耐性マーカーまたは類似のものをさらに有さず、また、プラスミド依存系を欠いているため、このプラスミドは子孫から速やかに失われる。
【0435】
抗生物質耐性の不存在下での選択マーカーとして、芳香族アミノ酸の生合成経路における酵素をコードするaroA遺伝子が使用される。これは、宿主細胞が、利用可能な芳香族アミノ酸またはaroAによって触媒される反応の中間体の不存在下で成長する場合に必須の、条件付き必須遺伝子である。宿主ゲノムからプラスミド骨格へのaroA遺伝子の移動は、この選択マーカーをもたらす。染色体のaroA遺伝子は、宿主(キャリア細胞)株においてtrfAのコピーによって置換される。
【0436】
E.coli実験株DH10BにおけるaroAのノックアウトおよびtrfA発現カセットによる染色体コピーの置換を行って、プラスミドを試験するための試験細菌株を生成する。使用されるtrfA発現カセットは、配列番号10の配列を有する。
【0437】
ニワトリに由来する、最終宿主(キャリア)株である片利共生E.coli単離株を、同一の株構築手順にかける。
【0438】
aroAコード配列(配列番号11)を類似のプロモーターおよびターミネーター領域で増幅し、Cas9、tracrRNA、crRNA、およびRK2のoriVのモジュールと共にプラスミドにアセンブルする。
【0439】
さらに、代替モジュールを、I型制限酵素を阻害する抗制限遺伝子(T7のocr、RK2のklcA、接合性プラスミド/トランスポゾンのardA、接合性プラスミドのardB)などこのプラスミド立体構造において試験して、標的細胞に移入した後のDNAの安定性を向上させることができる。
【0440】
さらにまたはあるいは、接合のために存在するIV型分泌系の必須部分をコードするモジュールがプラスミド上に位置するが、それは、これが、プラスミドが存在しない場合に細胞内に存在する非機能的移入系をもたらすためである。宿主細胞による接合を容易にするために、プラスミドRK2上に存在するIV型分泌系が宿主ゲノムに組み込まれる必要がある。この系の必須構成要素は、プラスミドの2つの位置tra1およびtra2にある3つのオペロン内でコードされている。Tra1は、traKLMオペロンおよびtraJXIHGFオペロンをコードし、tra2はtrbBCEFGHJL遺伝子をコードする。組み込みプロセスの間に、traKLMオペロンとtraJXIHGFオペロンとの間に位置するtra1に存在する調節領域が修飾される。この配列は、DNAの移入開始に関与するTraJタンパク質への結合部位を有する移入起点(oriT)を含む。この結合部位が、TraJの結合を防ぐための変異生成によって改変されていない場合、接合プロセスの間の染色体DNA断片の移入が開始され、望ましくない遺伝情報の移入が生じる。
【0441】
使用されるRK2のtra1モジュールおよびtra2モジュールの配列は、配列番号13および14に示されている。
【0442】
[実施例6]
抗Salmonellaプラスミドの構築および試験
概要
E.coli K12(MG1655)のI-E型Cas系は、侵入する外来の遺伝物質を分解のために標的化する原核生物での適応免疫系を表すClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat(CRISPR)およびCRISPR関連タンパク質系(CRISPR-Cas)として既知の、RNAガイド特異的DNase機構である。Escherichia coli I-E型カスケード系は、異なるCasタンパク質(casABCDE12およびcas3)から構成され、広範なPAM配列を様々な程度の有効性で認識する。主要なPAM配列は、5’-AAG、AGG、ATG、GAG-3’である。E.coli K12のI-E型Cas系を使用して、Salmonella種を選択的に除去した。この系を、E.coli MG1655におけるように修飾し、casタンパク質複合体の主要構成要素は、2つの転写単位、cas3およびcasABCDE12からそれぞれ発現される。プラスミド構築プロセスの間に導入された修飾は、casABCDEオペロンのネイティブな調節されたプロモーターエレメントの、構成的J23114プロモーターでの交換、ならびに、cas1遺伝子およびcas2遺伝子の、そのネイティブなリボソーム結合部位を含むcas3遺伝子での置換を含んでいた。これらの変化は、実質的に、構成的に発現されたCRISPR-Casモジュールを生じさせ、このモジュールはその後、Salmonella種の特異的標的化のためのcrRNAアレイの追加によって、機能性について試験された。
【0443】
複製起点(oriV)および抗生物質選択マーカーが異なる2つのバージョンのGuided Biotic(登録商標)プラスミドを構築した。得られたプラスミドをpFS-Sal-08-rmおよびpFS-Sal-09-rmと名付け、接合性DNAの移入によるSalmonella enterica亜種enterica血液型亜型Enteritidisの成長の選択的阻害についてin vitroで試験した。接合実験において、pFS-EcoCas3-01-rmおよびpFS-EcoCas3-03-rmを、Salmonella特異的な成長阻害についての対照プラスミドとして使用した。
【0444】
I-E型E coli Cas3ならびに同族のcasA、B、C、D、およびEをコードするヌクレオチド配列;Cas3で操作可能で、S entericaのinvB遺伝子の配列に相補的な第1のスペーサー、S entericaのsicP遺伝子の配列に相補的な第2のスペーサー、およびS entericaのsseE遺伝子の配列に相補的な第3のスペーサーを含む、CRISPRアレイ;RP4 oriT;p15A ori;E coliのproA遺伝子;ならびにE coliのproB遺伝子をそれぞれ含むプラスミドを構築した。さらなる詳細については、表7を参照されたい。
【0445】
方法論
crRNAアレイの設計
CRISPRスペーサーを設計するための標的遺伝子の選択の焦点を、Salmonellaにとっての主要な病原性因子であるSalmonella特異的病原性アイランド(SPI)に当てた。選択基準は、Salmonella enterica内での保存、ならびに、他の細菌におけるそれぞれの遺伝子の低度から極めて低度の存在および保存であった。これらの分析は、Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)を使用して行った。非Salmonella種におけるヒット数のカットオフは1000に設定した。保存レベルは、検索によって>1000のヒットが生じた場合、高いと見なした。100から1000の間は中程度であり、20から100の間は低く、<20ヒットであれば非常に低い。具体的には、SPI-1およびSPI-2のIII型タンパク質分泌系T3SSに関連する遺伝子を標的として調査し、ただし、Salmonella種の間で保存されている遺伝子候補を含めるが、他の細菌種の間で保存されている遺伝子候補は排除するように注意した。まず、検索の焦点は、T3SSの調節因子および機能的構成要素を避けて、分泌されるエフェクターおよびシャペロンに当てた。
【0446】
3つの選択された高度に保存された遺伝子標的、sicP、invB、およびsseEは全て、Salmonella病原性アイランド(SPI)、すなわち、sicPおよびinvB(共にシャペロン)のケースではSPI-1、ならびにsseE(分泌されるエフェクター)のケースではSPI-2によってコードされるT3SS遺伝子座の一部である。これら遺伝子標的は全て、Salmonella enterica亜種enterica血液型亜型Typhimurium株LT2においてただ1つのコピーに生じ、このことは、一部の株においてこれらが二重にあることを無視することはできないが、全てのSalmonella entericaに当てはまる。
【0447】
候補標的遺伝子(a)、およびその後、スペーサー(b)を、Blastで検索して、これらがSalmonellaに特異的であることを確認し、オフターゲットを最小にした。検索はRefSeqデータベースを使用して行い、これは、約10600のSalmonella entericaゲノムを含んでいる。
a)遺伝子選択のためのBlast検索パラメーター:
- Salmonellaの保存:Salmonella enterica(taxid:28901)に制限されたRefSeq DB、megablast、最大ヒット:20000、標準パラメーター
- Salmonella外での存在:Salmonella(taxid:590)を除く細菌(taxid:2)に制限されたRefSeq DB、Blastn、最大ヒット1000、標準パラメーター
b)スペーサー配列のためのBlast検索パラメーター(PAMを含む):
- Salmonellaの保存:Salmonella enterica(taxid:28901)に制限されたRefSeq DB、blastn、最大ヒット:20000、標準パラメーター
- Salmonella外での存在:Salmonella enterica(taxid:28901)を除く細菌(taxid:2)に制限されたRefSeq DB、Blastn、最大ヒット1000、標準パラメーターであるが、予想値は、低いが依然として有意な相同性で配列を捕捉するために、100に設定された。
【0448】
異なるSalmonella enterica遺伝子を標的化する多くのスペーサーを最初にin silicoでスクリーニングし、選択し、クローニングし、そして、Salmonella enterica亜種enterica血液型亜型Enteritidis FS26を標的化するそれらの有効性について個別にin vitroで試験した(標的遺伝子およびスペーサーの選択については概要を、また、Rep-21:スペーサーレポーター系の構築およびin vitroでの試験を参照されたい)。Salmonella種に対して活性な、3つの最も性能の良いスペーサー配列を選択し、短鎖crRNAアレイに組み合わせた。スペーサー配列は、Salmonella病原性アイランド(SPI)に存在する3つの高度に保存された遺伝子、invB、sicP、およびsseEに由来するものであった。簡潔に述べると、DNA制限を開始し得る強力なコンセンサス5’-PAM配列の存在を特徴とする制限された潜在的スペーサー配列を選択し、効率的な標的DNA制限、Salmonella単離体内での保存、およびSalmonella enterica外でのDNA相同性の欠如を伴う配列特徴に従ってランク付けした。これらの基準を満たす3つのスペーサー配列を最後に選択し、機能的crRNAアレイに組み込んだ。ファイナライズされたcrRNAアレイを、標準的なクローニングプラスミド(GeneArt、Thermo Fisher Scientific)に挿入された合成遺伝子配列として並べた。
【0449】
選択された遺伝子の配列は、配列番号20~22で示される。各遺伝子において、スペーサーは太字で強調されており、それぞれのPAMはイタリック体で記載されている(invBのケースでは、スペーサーは負のDNA鎖(アンチセンス)で選択され、そのため、PAMはスペーサーの3’側にある)。スペーサーの選択に使用したPAM配列は、AAG、ATG、AGG、およびGAGであった。スペーサーの、それらのそれぞれのPAMでのBlast検索を行った(表10)。
【0450】
非Salmonellaヒットを、それらの保存レベルについてさらに分析した(オフターゲットにおける保存レベルが<75%であった場合、スペーサーは許容された)。配列選択はまた、ミスマッチがオフターゲットヒットのどこに位置するかに応じ、保存されたPAMおよびシード(スペーサーの最初の8bp)を示すものは除外された。本発明者らの選択のための1つのさらなる基準はまた、ヒットが存在した細菌のタイプも含んでおり、病原体に存在する場合、スペーサーは依然として、考えられる候補とみなされた。
【0451】
各スペーサーを、Salmonella enterica亜種enterica血液型亜型Enteritidis S26を標的化するそれらの有効性について、in vitroで個別に試験し、その後、これらを、プラスミドpFS-Sal-09-rmに存在するアレイにおいて共に組み合わせた。
【0452】
プラスミドのアセンブリー
相同性に基づくDNAアセンブリーのために、個々のDNAモジュールは、隣接するモジュールに対する正確な相同性を有する5’および/または3’の伸長を有していた。伸長は、モジュールのPCR増幅ステップの間に導入されたか、または、合成DNAモジュールの設計の間に組み込まれた。構成的J23114プロモーターが導入された。
【0453】
CasA~E:4464bpのcasA-casB-casC-casD-casEモジュールを、E.coli K12(MG1655)ゲノムDNAから増幅した。
【0454】
Cas3:2709bpのCas3モジュールを増幅した。
【0455】
crRNA:crRNAアレイモジュールSal-crRNA1(546bp)は、Cas3モジュールの3’末端に相同な25bpの伸長を有する。Sal-crRNAアレイ1の配列は配列番号15で示され、プロモーターの-10領域はイタリック体で記載され、直接リピートは下線を引かれ、そしてinvB、sicP、およびseeEの選択されたSalmonella標的配列に対応するスペーサー領域は、太字で記載されている。
【0456】
pFS-Sal-08-rmおよびpFS-Sal-09-rmの検証および接合によるin vitroでの試験
両構築物の配列を確認して、プラスミドを、接合を介してプラスミドの移動を可能にしたキャリア株に形質転換して、Cas3系がSalmonellaを選択的に死滅させる有効性を、Sal-crRNAアレイ1の存在下で評価した。この研究において、E.coli株S17-1ΔTn7を使用した。100ngのpFS-Sal-08-rmおよびpFS-Sal-09-rmを、電気穿孔によるE.coli S17-1ΔTn7の50μlのエレクトロコンピテント細胞の形質転換に使用し、カナマイシンおよびクロラムフェニコールでそれぞれ選択した。両プラスミドでの形質転換によって、E.coli S17-1 ΔTN7の良好な形質転換効率がもたらされた(105~106形質転換CFU/mL)。crRNAアレイを欠いている対照プラスミド、pFS-EcoCas3-01-rmおよびpFS-EcoCas3-03もまた、S17-1 ΔTn7キャリア株に形質転換して、pFS-Sal-09-rmおよびpFS-Sal-08-rmのFS26形質転換における対照として使用した。新たなプラスミドの移動能力を確認するために、S17-1キャリア細胞をまず使用して、E.coli JM109細胞(ナリジクス酸、Nal、耐性の)を接合した。表8で報告されている結果は、E.coli JM109における、pFS-EcoCas3-01とpFS-Sal-09-rmとの間、およびpFS-EcoCas3-03とpFS-Sal-08-rmとの間での、同様の接合効率を示している。接合効率は、接合完了体(二重抗生物質を有するプレート上で選択された)の数(CFU/mL)をレシピエント(Nalを有するプレート上で選択された)の数で割って計算される。
【0457】
その後、プラスミドで事前に形質転換したE.coliキャリア株S17-1 ΔTn7を使用して、対照プラスミドpFS-EcoCas3-03-rmと比較したpFS-Sal-08-rmの接合によるSalmonella Enteritidis FS26の有意な成長阻害、およびpFS-EcoCas3-01-rmと比較したpFS-Sal-09-rmの接合によるSalmonella Enteritidis FS26の有意な成長阻害があるかどうかを評価した。接合は、E.coli S17-1 ΔTn7からナリジクス酸(Nal)耐性のSalmonella Enteritidis FS26に行った。結果は、それぞれの対照プラスミドと比較した、pFS-Sal-08-rmと接合されたS.Enteritidis株FS26およびpFS-Sal-09-rmと接合されたS.Enteritidis株FS26の両方における有意な低減(CFU/mL)を示した(表9)。
【0458】
結論として、この本研究において生成されたSal-crRNAアレイ1を有する両プラスミドによるSalmonellaの成長の阻害は、修飾されたCasモジュールが機能的であり、I-E型カスケード複合体、Cas3ヌクレアーゼ、およびcrRNAアレイという個々の構成要素の全てを、非標的E.coli宿主株であるS17-1およびJM109の成長に負の影響を与えることなく発現し得たことを示した。本発明者らは、E.coli I-E型 Cas系に基づくプラスミドの、E.coli S17-1キャリア株からS.Enteritidis株FS26に接合によって移入される能力を実証した。本発明者らは、使用した対照と比較した、pFS-Sal-08-rmおよびpFS-Sal-09-rmの両方の接合を介する、選択された株のSalmonella接合完了体における有意な成長阻害(>99.9%)を観察した。これらのデータは、したがって、これらのE.coli I-E型カスケードに基づく構築物の、例えば人畜共通感染症の制御のために、望ましくない細菌を除去する可能性を強調した。
【0459】
[実施例7]
Salmonellaを含有する飼料を与えられたニワトリにおける、Folium E.coliに基づく生成物の安定性および有効性の試験。
実施例4において、本発明者らは、S17株のE coliキャリア細胞に含まれるGuided Biotic(登録商標)プラスミドを試験した。この本実施例7において、本発明者らはその代わりとして、E coliキャリアの異なる株(株X)に含まれるGuided Biotic(登録商標)プラスミド(GBプラスミドpFS-Sal-09-proAB-rm、実施例6および表7)を試験した。ヘルパープラスミドpCon_aroAは、宿主細胞からレシピエント細胞への、oriTを含むプラスミドの移動を容易にすることがin vitroで分かっている、プラスミドRP4(traJXIHGF-traKLM-trbBCDEFGHIJKL)の接合機構の機能的コピーを有していた。
【0460】
研究の目的
- 飲用水中のGuided Biotic(登録商標)でのE.coli株Xの安定性を24時間にわたり判定する。
- 飼料中で与えられたSalmonellaでの腸および臓器内の汚染を測定する。
- 飼料中のSalmonellaでチャレンジされたニワトリにおける、活性なGBプラスミドを含むE.coli株Xの有効性を判定する。
【0461】
概要
- E.coli株Xは、安定剤を含有する脱イオン水に投与した直後に、5×log-8CFU/mLの予想レベルであることが分かり、24時間で8×log-7CFU/mLまで低下した。
- 24時間の飼料でのチャレンジ(飼料1g当たり104CFU)の後、低レベル(約log-2~5CFU/g)のSalmonellaが、チャレンジ後1日目、3日目、および7日目に、素嚢および盲腸で見られた。より低いレベル(約log-1CFU/g)もまた、チャレンジの7日後に、回腸内容物、肝臓、および脾臓で見られた。
- 活性なGuided Biotic(登録商標)、活性なGBプラスミドを含むE.coli株Xは、チャレンジの7日後に、素嚢におけるSalmonella数を約log-1CFU/g低減させた(P<0.03)。
【0462】
方法論
Ross 308鳥(30羽)を、制御されたバイオセキュリティーのある条件下で飼育し、水および標準的な市販の飼料を自由摂取させた。各実験群は、おがくずの床敷を敷いた個別の檻で保持した。鳥には、18時間の明期/6時間の暗期のレジメンを与えた。温度および湿度は、表11に示す標準的なレベルの間で維持した。
【0463】
処置群:
- 低対照- 水への添加物なし、7日目に、飼料1g当たり104CFUのSalmonellaを24時間(15羽の鳥)
- GB-Sal- 1~14日目に飲用水中に108CFU/mLの活性なGBプラスミド(pFS-Sal-09-proAB-rm)を含むE.coli株X Guided Biotic(登録商標)、7日目に、飼料1g当たり104CFUのSalmonellaを24時間(15羽の鳥)
【0464】
Guided Biotic(登録商標)株を、-78℃で維持した凍結ストックから毎日回収し、クロラムフェニコール(30μg/mL)を加えたLB寒天で、24時間、37℃で培養した。活性なGBプラスミド株を有する株XをTerrific培養液中に準備し、180rpmで振とうしながら、37℃で16時間成長させた。OD600を測定して細胞数を推定した後、細胞を遠心分離し、安定剤を含有する脱イオン水中に再懸濁して、ニワトリに投与するための溶液を得た(飲用水中で108CFU/mL)。青の染料を含有するVac Pacを、試料採取の日に、回収の3時間前に含めて、水およびGBの摂取を確認した。添加物を有する水試料を、試験4~14日目のGBの添加時点および24時間後に回収し、GBを測定した。水試料をPBS中に10倍希釈し、次いで、MacConkey寒天第3番(Oxoid CM0115)に播種し、次いで、37℃で24時間インキュベートした。
【0465】
Salmonella株(FS26、ナリジクス酸マーカーを伴う)を、-78℃で維持した凍結ストックから回収し、LB寒天上で、37℃で24時間培養した。試験培養物をLB培養液中に、37℃で16時間、180rpmで振とうしながら、1日に1回調製した。OD600を測定して細胞数を推定した後、細胞を遠心分離し、リン酸緩衝食塩水中に再懸濁および希釈して、1×107CFU/mlの溶液を得、これを、飼料を十分に混合しながら、飼料100gに対して1mlの細菌懸濁液の割合で飼料に滴下した。Salmonella含有量を測定するために、4つの飼料試料を回収した。
【0466】
動物試料の回収および播種
鳥の死亡は記録されなかった。照明レベル、床敷の追加、温度、湿度、および飼育密度を記録し、これらは処置間で異ならなかった。1日目および3日目に各群から得た3羽の鳥を、ならびにチャレンジ後7日目の9羽の鳥を安楽死させ、素嚢、回腸、盲腸、肝臓、および脾臓から試料を得た。安楽死、死亡、および解剖の時刻を記録した。羽毛は、水を噴霧して濡らした。鳥を使い捨てのメスで開き、このメスは開いた後に廃棄し、手袋は交換した。1gの肝臓、ならびに素嚢、回腸、および盲腸の内容物の試料を採取し、液体窒素中で瞬間冷凍した。メスは、各臓器を採取する度に廃棄した。試料を、9倍容積のリン酸緩衝食塩水中でホモジナイズし、リン酸緩衝食塩水中で10倍希釈し、そして、寒天を37℃で16~18時間インキュベートして調べた。直接播種が陰性であった試料を、9倍容積のセレナイト・シスチン培養液(Oxoid CM0699)中で、37℃で16~18時間濃縮することによって、Salmonellaについて調べた。濃縮された培養液をその後、表12に示す抗生物質を含有するXLD寒天(CM0469)上に筋状に載せ、37℃で16~18時間インキュベートした。
【0467】
直接計数で細菌が検出されなかった鳥は、1g当たり0細菌という計数値に割り当て、一方、直接計数は陰性であったが増強した方法では陽性であった鳥は、50CFU/gに割り当てた。結果は、書類に記録するか、または、バイオセキュリティーのある宿泊施設における電話もしくは無線を介して口述し、Microsoft Excelに書き写した。データは、GraphPad Prismにおいて分析した。データを、ダゴスティーノおよびピアソンのオムニバス正規性検定を使用して分布の正規性について評価し、非正規としては、マン・ホイットニーのU検定を使用して分析した。対応のあるデータを、対応のあるT検定を使用して分析した。
【0468】
結果
1.飼料中のSalmonella
- 飼料中のSalmonella(平均9×log-4CFU/g)の存在は予想通りであった。
【0469】
2.飲用水中のGuided Biotic(登録商標)レベル
- 混合直後の飲用水中の分析されたGBレベル(平均5×log-8CFU/mL)は計画通りであった。24時間後に採取された試料では、8×log-7CFU/mLへの平均の低下が確認された。
【0470】
3.Salmonella用量の効果
- 全体として、低レベルのSalmonellaが、チャレンジ後1日目および3日目に素嚢(約log1~3CFU/g)および盲腸(約log4~5CFU/g)で見られた。回腸、肝臓、または脾臓の試料では、これらの時点で、Salmonellaは見られなかった。
- チャレンジ後7日目に、同様のレベルのSalmonellaが素嚢および盲腸で再び見られ、また、より低いレベル(約log1)が回腸、肝臓、および脾臓で見られた。
【0471】
4.活性なGuided Biotic(登録商標)の効果(対照対GB)
- GBは、チャレンジの7日後の素嚢におけるSalmonella数を低減させた(P<0.03)(
図6)。
【0472】
- 3日目の素嚢(P=0.40)および盲腸(P=0.50)で、ならびに7日目の回腸(P=0.58)および盲腸(P=0.60)で、GBがSalmonellaを低減させる弱い傾向があった。
【0473】
【0474】
【0475】
【0476】
【0477】
【0478】
【0479】
【0480】
【0481】
【0482】
【配列表】