(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】噴霧された固体分散体の処理助剤としてのアンモニア
(51)【国際特許分類】
A61K 47/04 20060101AFI20241119BHJP
A61K 31/635 20060101ALI20241119BHJP
A61K 31/5415 20060101ALI20241119BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20241119BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20241119BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20241119BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
A61K47/04
A61K31/635
A61K31/5415
A61K47/38
A61K47/32
A61K9/14
A61P29/00
(21)【出願番号】P 2022509012
(86)(22)【出願日】2020-08-11
(86)【国際出願番号】 IB2020057547
(87)【国際公開番号】W WO2021028832
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-08-02
(32)【優先日】2019-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512054458
【氏名又は名称】キャプシュゲル・ベルジウム・エヌ・ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ウォーレン・ケー・ミラー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・エム・モルゲン
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-100997(JP,A)
【文献】国際公開第2018/078383(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00- 47/69
A61K 31/33- 33/44
A61P 1/00- 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴霧された固体分散体を調製する方法であって、
噴霧溶液を形成するために、活性剤、分散ポリマー、ある量のアンモニア、および溶媒を混合することであって、
前記溶媒はC
1~C
3アルカノールを含み、
遊離酸形態の前記活性剤は、前記溶媒中で7以下のpKaおよび40mg/mL以下の溶解度を有し、
前記アンモニアの量は、前記溶媒に前記活性剤を溶解するのに十分である、
混合することと、
前記活性剤、前記分散ポリマー、およびアンモニアを含む噴霧された固体分散体を形成するために、前記噴霧溶液を噴霧することと、
前記噴霧された固体分散体を、30~70℃の範囲内の温度および10~75%の範囲内の相対湿度(RH)で、前記活性剤および前記分散ポリマーの固体分散体を含
み、500ppm以下のアンモニアを含む生成物を形成する
のに十分な時間加熱することによって、前記噴霧された固体分散体から残留アンモニアを除去するこ
とと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記アンモニアの量は、
前記活性剤の酸基の総計に対して少なくとも0.95モル当量である、または
前記活性剤の酸基および前記分散ポリマーの全ての酸基の総計に対して少なくとも0.95モル当量である、または
前記活性剤の酸基および前記分散ポリマーの全ての酸基の総計に対して0.95~10モル当量である、または
前記溶媒中の前記活性剤の前記遊離酸形態の溶解度を超える前記活性剤の量の酸基および前記分散ポリマーの全ての酸基の総計に対して少なくとも0.95モル当量である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生成物中の前記活性剤の少なくとも90重量%は遊離酸形態である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶媒はC
1~C
3アルカノールおよび共溶媒を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記共溶媒は、水、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸メチル、1,3-ジオキソラン、アセトン、メチルエチルケトン、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒は0.01~30重量%の水を含み、残部は前記C
1~C
3アルカノールである、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記活性剤は、アンモニアを含まない前記溶媒中の前記活性剤の遊離酸形態の溶解度より少なくとも2倍高い噴霧溶液への溶解度を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記噴霧溶液は、2~40重量%の範囲内の溶解固形物含有量を有し、前記溶解固形物の0.5~95重量%は前記活性剤である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記噴霧溶液は0.5~20重量%の前記活性剤を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
噴霧された固体分散体を調製する方法であって、
噴霧溶液を形成するために、活性剤、分散ポリマー、ある量のアンモニア、および溶媒を混合することであって、
前記溶媒はC
1
~C
3
アルカノールを含み、
遊離酸形態の前記活性剤は、前記溶媒中で7以下のpKaおよび40mg/mL以下の溶解度を有し、
前記アンモニアの量は、前記溶媒に前記活性剤を溶解するのに十分である、
混合することと、
前記活性剤、前記分散ポリマー、およびアンモニアを含む噴霧された固体分散体を形成するために、前記噴霧溶液を噴霧することと、
を含み、
残留アンモニアを除去することは、前記噴霧された固体分散体を30~70℃の範囲内の温度および10~75%の範囲内の相対湿度(RH)で、500ppm以下のアンモニアを含む前記生成物を形成するのに十分な時間加熱することを含
み、
前記時間は、2~60時間である、方法。
【請求項11】
(i)時間は
4~
48時間である、もしくは
(ii)温度は40~60℃の範囲内である、もしくは
(iii)RHは15~50%の範囲内である、または
(iv)(i)、(ii)、および(iii)の任意の組み合わせである、
請求項
1または10に記載の方法。
【請求項12】
残留アンモニアを除去することは、前記噴霧された固体分散体を前記温度およびRHで加熱しながら、前記噴霧された固体分散体全体にスイープガスを吹き付けることをさらに含む、請求項
1または11に記載の方法。
【請求項13】
前記スイープガスは、窒素、アルゴン、二酸化炭素、空気、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記スイープガスは、水蒸気または揮発性有機溶媒蒸気をさらに含む、請求項13に記
載の方法。
【請求項15】
前記残留溶媒の少なくとも一部は、前記噴霧された固体分散体から残留アンモニアを除去すると同時に除去される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
示差走査熱量測定によって測定されるように、前記分散ポリマーは60℃を超えるドライガラス転移温度T
gを有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記分散ポリマーは、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート(HPMCAS)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ(ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)(PVP-VA)、ポリ(メタクリル酸-co-メチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸-co-エチルアクリレート)、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記噴霧溶液は1つまたは複数の賦形剤をさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記アンモニアの量は、前記活性剤の酸基、前記分散ポリマーの全ての酸基、および前記1つまたは複数の賦形剤の全ての酸基の総計に対して少なくとも0.95モル当量である、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年8月15日に出願された米国仮出願第62/887,471号のより早い出願日の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、噴霧された固体分散体を形成し、続いて噴霧された固体分散体からアンモニアを除去する場合に、処理助剤としてアンモニアを使用するための方法に関する。開示される方法によって形成される噴霧された固体分散体はまた、本開示に含まれる。
【発明の概要】
【0003】
噴霧された固体分散体を形成する場合に処理助剤としてアンモニアを使用するための方法の実施形態、ならびにその方法によって形成される噴霧された固体分散体の実施形態が開示される。いくつかの実施形態では、噴霧された固体分散体を調製するための方法は、(i)活性剤、分散ポリマー、ある量のアンモニア、および溶媒を混合して噴霧溶液を形成することと、(ii)噴霧溶液を噴霧して、活性剤、分散ポリマー、およびアンモニアを含む噴霧された固体分散体を形成することと、(iii)噴霧された固体分散体から残留アンモニアを除去して、活性剤および分散ポリマーの固体分散体を含む生成物を形成することであって、生成物は、500ppm以下のアンモニアを含む、形成することと、を含む。前記の実施形態のいずれかでは、生成物中の活性剤の少なくとも90重量%は、遊離酸形態であってもよい。
【0004】
いくつかの実施形態では、溶媒は、C1~C3アルカノールを含み、遊離酸形態の活性剤は、溶媒中で7以下のpKaおよび40mg/mL以下の溶解度を有し、アンモニアの量は、溶媒に活性剤を溶解させるのに十分である。溶媒は、C1~C3アルカノールおよび共溶媒を含み得る。
【0005】
前記の実施形態のいずれかでは、アンモニアの量は、活性剤の酸基と分散ポリマーの任意の酸基の総計に対して少なくとも0.95モル当量であることができ、例えば、活性剤の酸基と、分散ポリマーおよび他の賦形剤(存在する場合)の全ての酸基との総計に対して、0.95~10モル当量である。いくつかの実施形態では、アンモニアの量は、活性剤の酸基と、分散ポリマーおよび他の賦形剤(存在する場合)の全ての酸基との総計に対して、0.95~4モル当量である。いくつかの実施形態では、アンモニアの量は、溶媒中の活性剤の遊離酸形態の溶解度を超える活性剤の量の酸基と、分散ポリマーの全ての酸基との総計に対して少なくとも0.95モル当量である。
【0006】
前記の実施形態のいずれかでは、活性剤は、アンモニアを含まない溶媒中の活性剤の遊離酸形態の溶解度よりも少なくとも2倍高い噴霧溶液への溶解度を有することができる。前記の実施形態のいずれかでは、噴霧溶液は、2~40重量%の範囲内の溶解固形物含有量を有することができ、ここで、溶解固形物の0.5~95重量%が活性剤である。いくつかの実施形態では、噴霧溶液は、0.5~20重量%の活性剤を含む。
【0007】
前記の実施形態のいずれかでは、残留アンモニアの除去には、噴霧された固体分散体を30~70℃の範囲内の温度および10~75%の範囲内の相対湿度(RH)で、500ppm以下のアンモニアを含む生成物を形成するのに十分な時間加熱することが含まれる場合がある。いくつかの実施形態では、(i)時間は2~60時間である、もしくは(ii)温度は40~60℃の範囲内である、もしくは(iii)RHは15~50%の範囲内である、または(iv)(i)、(ii)、および(iii)の任意の組み合わせである。前記の実施形態のいずれかでは、残留アンモニアを除去することは、噴霧された固体分散体を温度およびRHで加熱しながら、噴霧された固体分散体全体にスイープガスを吹き付けることをさらに含んでもよい。
【0008】
開示された方法によって調製された噴霧された固体分散体の実施形態は、少なくとも0.5重量%の活性剤および500ppm以下のアンモニアを含む。いくつかの実施形態では、噴霧された固体分散体は、0.5~95重量%の活性剤を含み、少なくとも90重量%の活性剤は、非晶質であり、分散ポリマーであり、そして50ppm以下のアンモニアである。
【0009】
本発明の前記のおよび他の目的、特徴、および利点は、添付の図を参照して進める以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】50℃、相対湿度30%で48時間乾燥した後のピロキシカムおよびPVP-VA64の噴霧乾燥分散体(SDD)の粉末X線分散体(PXRD)スペクトルである。
【
図2】50℃、相対湿度30%で48時間乾燥した後のピロキシカムおよびHPMCASのSDDのPXRDスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
活性剤および分散ポリマーを含む噴霧された固体分散体(例えば、噴霧乾燥分散体、噴霧層状分散体)を形成するための方法は、一般的に、活性剤、分散ポリマー、および溶媒を含む溶液を噴霧することを含む。活性剤、例えば医薬品有効成分(API)の噴霧乾燥中に頻繁に発生する問題は、好ましい揮発性有機噴霧溶媒、例えばアセトンやメタノールへの活性剤の溶解度が低いと、製造性および製品品質に悪影響を及ぼす可能性があることである。具体的には、噴霧溶液中の溶解固形物濃度が低いと、製造スループットが許容できないほど低くなり、粒子特性が低下する可能性がある。場合によっては、噴霧溶媒への溶解度が非常に低いため、噴霧乾燥中間体、例えば噴霧乾燥分散体(SDD)または噴霧層状分散体(SLD)の商業的製造は経済的に実現可能ではなく、ならびに/または特別な手段、例えば高温および/もしくは噴霧時間が長い希薄溶液を使用せずに実行することはできない。しかし、温度が上昇すると、一部の活性剤の熱的および/または化学的劣化につながる可能性がある。希薄溶液の長時間の噴霧は、装置を長期間拘束し、スループットおよび利益を低下させ、粒子の特性に悪影響を及ぼす可能性がある。難溶性の活性剤は、多くの場合、結晶化する傾向が強く、かつ融点が高く、有機溶媒の溶解度が低いことに寄与している。さらに、これらの活性剤の多くは様々な多形体で存在し、噴霧溶媒中で再結晶するか、最も低いエネルギー(最も溶けにくい)多形体に変わる傾向がある。低溶解度活性物質が弱酸(pKa3~7)である場合、活性物質の低有機溶解度に対する1つの解決策は、活性物質を塩基でイオン化して、極性揮発性有機溶媒、例えばメタノールへの活性物質の溶解度を高めることである。このような塩基が、噴霧乾燥された材料から除去されず、酸の塩、例えばカリウム塩として生成物の一部となる不揮発性対イオンを含むプロセスは以前に記載されている(米国特許第8,372,836号)。この方法の2つの重要な欠点は、1)不揮発性対イオンを追加することによって配合物の効力を低下させること、および2)不揮発性対イオンの存在が、例えば、活性物質の塩形態の吸湿性の増加によって、遊離酸形態と比較して生成物の物理的安定性に悪影響を及ぼす可能性があることである。
【0012】
開示されたプロセスの実施形態は、これらの問題の1つまたは複数を軽減する。本明細書に開示されるように、揮発性塩基であるアンモニアは、弱酸活性剤とアンモニウム塩を形成するために使用され、揮発性溶媒に溶解した活性物質の数倍高い濃度をもたらす。活性物質のこのアンモニウム塩は、分散ポリマーおよび他の賦形剤の存在下で調製され、そして噴霧されて(例えば、噴霧乾燥または噴霧積層)、噴霧された分散体(SD)を形成することができる。噴霧プロセス中に、アンモニアの一部が除去され、活性剤の遊離酸形態の一部が再生される。溶媒を除去するためのSDの二次乾燥中に、別のアンモニアが除去されるが、望ましい程度ではない。いくつかの実施形態では、アンモニアのほぼ完全な除去、したがってその遊離酸形態での活性物質のほぼ完全な再生は、通常、延長された処理時間、ならびに/または塩基が追加されていない場合に通常使用されるより積極的な乾燥条件(例えば、溶媒支援乾燥を使用する溶媒の相対飽和、相対湿度、および/もしくは高温)を利用する。場合によっては、処理時間の延長の有無にかかわらず、温度と湿度が上昇すると、ほぼ全てのアンモニアが除去され、ほぼ全ての活性剤が遊離酸として再生される。ほぼ全てのアンモニアを除去するために使用される時間、温度、および/または湿度条件は、少なくとも部分的に、活性剤のpKa、使用される分散ポリマーおよび他の賦形剤のタイプ、これらの材料の質量比、ならびに/または、潜在的に、粒子形態に依存する可能性がある。
【0013】
I.定義および略語
以下の用語および略語の説明は、本開示をよりよく説明し、本開示の実施において当業者を導くために提供される。本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」は「含む(including)」を意味し、単数形「a」または「an」または「the」は、文脈から判断して明らかに他の意味に解釈すべき場合を除いて、複数形の参照を含む。したがって、不定冠詞「a」または「an」は通常「少なくとも1つ」を意味する。用語「または」は、文脈から判断して明らかに他の意味に解釈すべき場合を除いて、述べられた代替要素の単一の要素または2つ以上の要素の組み合わせを指す。
【0014】
特に説明しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する当業者に一般に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または同等の方法および材料を本開示の実施または試験に使用することができるが、好適な方法および材料を以下に記載する。材料、方法、および例は例示にすぎず、限定することを意図したものではない。本開示の他の特徴は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかである。
【0015】
数値範囲の開示は、特に断らない限り、エンドポイントを含む、範囲内の各離散点を指すものとして理解されるべきである。特に指示しない限り、明細書または特許請求の範囲で使用される成分の量、分子量、割合、温度、時間などを表す全ての数字は、用語「約」によって変更されているとして理解されるべきである。数値範囲の開示で使用される用語「約」は、記載された値からの偏差が、偏差が測定のばらつきの結果である、および/または同じもしくは類似の特性の生成物が得られる範囲内において許容されることを示す。したがって、他に暗黙的にもしくは明示的に示されない限り、または当業者が状況を適切に理解してより明確な説明をしない限り、記載される数値パラメータは、当業者に公知の標準的な試験条件/方法の下で、求められる所望の特性および/または検出限界に依存する可能性がある近似値である。説明された先行技術から実施形態を直接的かつ明示的に区別する場合、単語「約」が引用されない限り、実施形態の数値は近似ではない。
【0016】
本明細書に記載される様々な構成要素、パラメータ、動作条件などの代替物があるが、それは、それらの代替物が必ずしも同等であり、および/または同等に良好に機能することを意味するものではない。また、特に明記しない限り、代替物が優先順に記載されていることを意味するものでもない。
【0017】
化学の一般的な用語の定義は、John Wiley&Sons,Inc.から2016年に出版されたRichard J.Lewis,Sr.(編)、「Hawley’s Condensed Chemical Dictionary」(ISBN 978-1-118-13515-0)に記載されている。
【0018】
活性剤:本明細書で使用される場合、用語「活性剤」は、ヒトを含むがこれに限定されない哺乳動物に対して所望の生理学的効果を発揮する成分を指す。同義語には、「活性成分」、「活性物質」、「有効成分」、「医薬品有効成分」、および「薬物」が含まれる。
【0019】
非晶質:実質的に非結晶性(例えば、少なくとも95%非結晶性)。非晶質固体には、明確な結晶構造とシャープで明確な融点がなく、その代わりに、非晶質固体は広範囲の温度にわたって徐々に溶ける。
【0020】
分散体:粒子が異なる組成の連続相中に分布している系。固体分散体は、少なくとも1つの固体成分が別の固体成分中に分散している系である。
【0021】
賦形剤:医薬組成物の添加物として使用される生理学的に不活性な物質。本明細書で使用される場合、賦形剤は、医薬組成物の粒子内に組み込まれる場合があるか、または医薬組成物の粒子と物理的に混合される場合がある。例えば、賦形剤は、活性剤を希釈するため、および/または医薬組成物の特性を変えるために使用されることができる。賦形剤の例には、バインダー、充填剤、希釈剤、崩壊剤、滑剤、界面活性剤、コーティング剤、着色剤、香料、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。用語「賦形剤」は、本明細書に開示される分散ポリマーを含まない。
【0022】
ガラス転移温度、Tg:非晶質固体、例えば、ガラスまたはポリマーが、冷却すると脆くなるもしくは強くなる、または加熱すると柔らかくなるもしくは柔軟になる温度。Tgを、例えば、示差走査熱量測定(DSC)によって測定することができる。DSCは、試料および基準の温度を上げるために必要な熱量の差を温度の関数として測定する。相転移中、例えば、非晶質状態から結晶状態への変化中に、必要な熱量が変化する。結晶成分を持たない固体の場合、単一のガラス転移温度は、固体が均質または分子分散体であることを示す。一般的に、ガラスが試料の温度を一定の速度、通常は1~10℃/分で上昇させて試験される場合、Tg付近で熱容量の比較的急激な上昇が観察される。Tgを、動的機械分析装置(DMA)、膨張計、または誘電率測定によって測定することもできる。各技術で測定されるTg値は異なる場合があるが、通常は互いに10~30℃以内に収まる。例えば、DMAで測定されるTgは、多くの場合、DSCで測定されるTgよりも10~30℃高い。ドライガラス転移温度とは、固体が5%以下の相対湿度で平衡となる場合に測定されるTgを指す。
【0023】
相対湿度(RH):空気が特定の温度で保持できる水の量と比較した、空気中の水の量の測定値。
【0024】
SD:噴霧された固体分散体。
【0025】
SDD:噴霧乾燥分散体。
【0026】
SLD:噴霧層状分散体。
【0027】
可溶化:溶解させるまたは溶解度を高めること。
【0028】
溶液:2つ以上の物質から構成される均質な混合物。溶質(微量成分)を溶媒(主成分)に溶解する。懸濁液とは対照的に、光は溶質粒子から散乱することなく溶液を通過する。
【0029】
噴霧溶液:本明細書で使用する場合、用語「噴霧溶液」は、活性剤および分散ポリマーを溶媒およびある量のアンモニアに溶解することによって形成される流体を指す。活性剤の場合、用語「溶解した」は従来の意味を有し、溶媒およびある量のアンモニアと混合した場合に、活性剤が溶液になっていることを示す。分散ポリマーの場合、用語「溶解した」はより広い定義をとることができる。一部の分散ポリマーの場合、用語「溶解した」は、分散ポリマーが溶液になり、従来の意味で溶解したことを意味する場合があり、または、分散ポリマーが、溶媒で分散もしくは非常に膨潤して、それが溶液中にあるかのように作用することを意味する場合があり、または、分散ポリマー分子の一部が溶液中にあり、残りの分散ポリマー分子が溶媒で分散または非常に膨潤していることを意味する場合がある。任意の好適な技術を用いて、活性剤および分散ポリマーが溶解しているかどうかを決定することができる。例としては、動的または静的な光散乱分析、濁度分析、および目視観察が挙げられる。
【0030】
揮発性有機溶媒:沸点が150℃以下の有機溶媒。揮発性有機溶媒には、メタノール、エタノール、プロパノール異性体、ブタノール異性体、1-ペンタノール、2-メチル-1-プロパノール、酢酸、ギ酸、特定のケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、特定のエステル(例えば、酢酸メチル、ギ酸エチル、酢酸エチル)、C4~C7アルカン等が含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
II.噴霧プロセス
理想的には、噴霧溶液は、周囲温度で10~15重量%の溶解固形物含有量(例えば、活性剤および分散ポリマー)を有する。多くの場合、活性剤および分散ポリマーを含む噴霧された固体分散体(SD)を調製することは有利であり、SDは高添加量の活性剤、例えば少なくとも25重量%の活性剤含有量を有する。
【0032】
いくつかの実施形態では、活性剤は、弱酸性活性剤(例えば、その遊離酸形態で3~7の範囲のpKaを有する活性剤)である。多くの弱酸性活性剤は、揮発性有機溶媒、例えばC1~C5アルカノール、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール等、を含む一般的な有機噴霧溶媒に難溶性である。本明細書で使用する場合、「難溶性」とは、遊離酸形態の活性剤が、1つまたは複数のC1~C5アルカノールに40mg/mL以下の溶解度、例えば、1つまたは複数のC1~C5アルカノールに30mg/mL以下、20mg/mL以下、または10mg/mL以下の溶解度を有することを意味する。いくつかの実施形態では、遊離酸形態の活性剤は、1つまたは複数のC1~C3アルカノールに40mg/mL以下の溶解度、例えば、1つまたは複数のC1~C3アルカノールに30mg/mL以下、20mg/mL以下、または10mg/mL以下の溶解度を有する。例えば、活性剤は、周囲温度が20~25℃の範囲内である周囲温度または室温で、メタノール、エタノール、n-プロパノール、および/またはイソプロパノールに40mg/mL以下の溶解度を有することができる。いくつかの例では、活性剤は、周囲温度で、メタノール、エタノール、n-プロパノール、および/またはイソプロパノールに10mg/mL以下の溶解度を有する。
【0033】
活性剤の溶解度は、噴霧溶液中に活性剤のアンモニウム塩を形成することによって増加させることができる。いくつかの実施形態では、弱酸性活性剤は、活性剤を活性剤のアンモニウム塩に変換することにより、C1~C5アルカノールに溶解する。いくつかの実施形態では、C1~C5アルカノールは、C1~C3アルカノールまたはC1~C3アルカノールの組み合わせである。例示的なアルカノールには、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。しかし、最終生成物中にアンモニアが存在することは望ましくないことが多い。アンモニアは生成物に不快な臭いを与える可能性がある。場合によっては、生成物に存在するアンモニアは、経時的に、活性剤および/または分散ポリマーを分解する可能性がある。
【0034】
噴霧される固体分散体は、(i)活性剤、分散ポリマー、ある量のアンモニア、および溶媒を混合して噴霧溶液を形成することと、(ii)噴霧溶液を噴霧乾燥して活性剤、分散ポリマー、およびアンモニアを含むSDを形成することと、(iii)SDから残留アンモニアを除去して、活性剤および分散ポリマーの固体分散体を含む生成物を形成することと、により調製されることができ、生成物は、500ppm以下のアンモニア、例えば、300ppm以下、200ppm以下、100ppm以下、または50ppm以下のアンモニアを含む。特に明記されていない限り、本明細書で使用される「ppm」は、重量百万分率を指す。いくつかの実施形態では、生成物は、1~500ppm、例えば、1~300ppm、1~200ppm、1~100ppm、1~50ppm、または1~25ppmのアンモニアを含む。アンモニア含有量は、任意の好適な方法、例えばアンモニアイオン選択性電極の使用によって決定されることができる。いくつかの実施形態では、固体分散体は固体非晶質分散体である。
【0035】
いくつかの実施形態では、溶媒は、C1~C3アルカノールまたはC1~C3アルカノールの組み合わせを含み、例えば、溶媒は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、溶媒は共溶媒をさらに含む。例示的な共溶媒としては、水、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸メチル、1,3-ジオキソラン、アセトン、メチルエチルケトン、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。共溶媒は、活性剤、分散ポリマー、またはその両方の溶解を促進することができる。ただし、混合溶媒中のC1~C3アルカノールの量は、アンモニアを使用して活性剤の塩を形成するのに十分である。いくつかの実施形態では、溶媒は、50重量%以下の1つまたは複数の共溶媒、例えば、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、または15重量%以下の1つまたは複数の共溶媒を含み、残りは1つまたは複数のC1~C3アルカノールである。例えば、溶媒は、0.01~50重量%の共溶媒、例えば、0.1~40重量%、1~30重量%、2~20重量%、または5~15重量%の1つまたは複数の共溶媒を含むことができる。いくつかの実施形態では、共溶媒は、水、例えば、30重量%以下の水、20重量%以下の水、または15重量%以下の水であり、残りは1つまたは複数のC1~C3アルカノールである。いくつかの実施形態では、溶媒は、0.01~30重量%の水、0.1~30重量%の水、1~30重量%の水、10~30重量%の水、または10~20重量%の水を含む。いくつかの実施例では、分散ポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む場合、水が含まれる。いくつかの実施形態では、共溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)、例えば、30重量%以下のTHF、20重量%以下のTHF、または15重量%以下のTHFであり、残りは1つまたは複数のC1~C3アルカノールである。いくつかの実施例では、分散ポリマーが酢酸フタル酸セルロース(CAP)を含む場合、THFが含まれる。いくつかの実施形態では、溶媒は、0.01~30重量%のTHF、0.1~30重量%のTHF、1~30重量%のTHF、10~30重量%のTHF、または20~30重量%のTHFを含む。例えば、分散ポリマーがCAPを含む場合、溶媒は、メタノールとTHFを重量比8:2または7:3で含んでもよい。
【0036】
結晶性または遊離酸形態の活性剤は、溶媒中で7以下のpKaおよび40mg/mL以下、例えば、30mg/mL以下、20mg/mL以下、または10mg/mL以下の溶解度を有する。いくつかの実施形態では、活性剤の遊離酸形態は、3~7の範囲内のpKaを有する。活性剤は、溶媒中に0.0001mg/mL~40mg/mLの範囲内の遊離酸形態の溶解度、例えば、溶媒に0.001~40mg/mL、0.001~30mg/mL、0.001~20mg/mL、0.001~10mg/mL、0.01~10mg/mL、0.01~5mg/mL、0.01~2.5mg/mL、または0.01~1mg/mLの範囲の遊離酸形態の溶解度を有してもよい。
【0037】
アンモニアの量は、溶媒に活性剤を溶解させるのに、すなわち、溶媒に活性剤の溶液を形成するのに十分である。ただし、過剰なアンモニアは、特定の活性剤および/または分散ポリマーを分解する可能性がある。したがって、アンモニアの量は、活性剤も分散ポリマーも分解させるほど多くはない。いくつかの実施形態では、活性剤および溶媒は、懸濁液またはスラリーを形成するために混合され、そして十分なアンモニアが、活性剤を溶解するために加えられる。一独立した実施形態では、アンモニアと溶媒が混合され、続いて活性剤が加えられて溶液が形成される。いくつかの実施形態では、アンモニアの量は、活性剤の酸基の総計に対して少なくとも0.95モル当量である。ただし、追加のアンモニアが活性剤も分散ポリマーも分解しない場合、アンモニアの量は大幅に多くてもよく、本質的に無制限である。例えば、いくつかの実施例では、アンモニアの量は、活性剤の酸基の総計に対して最大10モル当量であってもよい。いくつかの実施形態では、噴霧溶液中のアンモニアの量は、活性剤の酸基の総計に対して0.95~10モル当量、例えば、活性剤の酸基の総計に対して0.95~5、0.95~4、0.95~3、0.95~2、0.95~1.5、または0.95~1.1モル当量である。
【0038】
活性剤の塩を形成するために使用される加えられるアンモニアの質量は、活性剤の分子量と相関がある。例えば、分子量250g/モルの活性剤100gを含む噴霧される分散液を形成する場合、1当量のアンモニアは6.8gとなる。ただし、分子量500g/モルの活性剤100gを含む噴霧される分散液を形成する場合、1当量のアンモニアはわずか3.4gである。
【0039】
有利なことに、いくつかの実施形態では、アンモニアの添加は、溶媒への活性剤の溶解度を少なくとも2倍増加させる。いくつかの実施形態では、アンモニアは、活性剤の溶解度を、アンモニアを含まない溶媒への活性剤の結晶性(遊離酸形態)溶解度と比較して、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、または少なくとも40倍増加させる。
【0040】
ただし、いくつかの実施形態では、過剰なアンモニアの量を制限することは有益または望ましい場合がある。過剰なアンモニアは、例えば、過剰なアンモニアが活性剤および/または分散ポリマーを分解する場合に制限される場合がある。このような場合、溶解しない活性剤の量を決定または計算することができ、加えられるアンモニアの量は、溶媒への活性剤の遊離酸形態の溶解度を超える活性剤の量、すなわち溶解しない活性剤の量の酸基の総計に対して、0.95~1.1モル当量である場合がある。例えば、活性剤Xは、メタノール中で5.0mg/mLの遊離酸形態の溶解度を有することができ、噴霧乾燥のために20.0mg/mLの濃度が望まれる場合がある。活性剤Xの25%がメタノールに溶解したので、残りの活性剤Xを溶解するためのアンモニアの量は、活性剤Xの総濃度(20mg/mL)に基づいて計算された量の75%であってもよい。したがって、アンモニアの量は、20mg/mLの活性剤Xの酸基の総計に対して約0.75モル当量、または15mg/mLの活性剤Xの酸基の総計に対して0.95~1.1モル当量であってもよい。
【0041】
分散ポリマーを溶液に加えて、噴霧溶液を形成する。いくつかの実施形態では、分散ポリマーは溶媒に溶け、溶液になっている。いくつかの実施形態では、分散ポリマーは、溶媒で分散され、または非常に膨潤し、溶液中であるかのようにふるまう。場合によっては、分散ポリマー分子の一部が溶液中にあり、残りの分散ポリマー分子は、溶媒によって分散されるか、または非常に膨潤する。分散ポリマーは、60℃より高いドライガラス転移温度Tgを有してもよい。分散ポリマーは、アンモニアの添加の前または後に加えられることができる。場合によっては、2つ以上の分散ポリマーを溶液に加えて、噴霧溶液を形成する。一部の分散ポリマーには、1つまたは複数の酸基が含まれている。このような場合、加えられるアンモニアの量は、活性剤を完全に溶解するのに十分なアンモニアが確実に存在するように、活性剤の酸基と分散ポリマーまたは複数の分散ポリマーの全ての酸基の総計に対して、少なくとも0.95モル当量であることができる。アンモニアの量が活性剤および/または分散ポリマーを分解するのに十分でない限り、過剰のアンモニアは利用されてもよい。いくつかの実施形態では、アンモニアの量は、活性剤の酸基と分散ポリマーの全ての酸基との総計に対して0.95~10モル当量、例えば、活性剤の酸基と分散ポリマーの全ての酸基との総計に対して0.95~5、0.95~4、0.95~3、0.95~2、0.95~1.5、または0.95~1.1モル当量である。あるいは、過剰なアンモニアの量を制限することが有益または望ましい場合、加えられるアンモニアの量は、溶解していない活性剤の量の酸基と、分散ポリマーの全ての酸基との総計に対して0.95~1.1モル当量であってもよい。
【0042】
決定された量のアンモニアは、溶媒、または溶媒および活性剤を含むスラリーまたは懸濁液に加えられる。分散ポリマーは、アンモニアの添加の前または後に加えられることができる。いくつかの実施形態では、アンモニアをアルコールのアンモニア溶液、例えば、メタノール、エタノール、またはプロパノールのアンモニア溶液に加える。一つの独立した実施形態では、水に溶解したアンモニアの水溶液(すなわち、水酸化アンモニウム)が加えられる。別の独立した実施形態では、アンモニアガスが加えられる。
【0043】
いくつかの実施形態では、噴霧溶液は、1つまたは複数の賦形剤をさらに含む。本明細書で使用する場合、用語「賦形剤」は、分散ポリマーを含まない。有利なことに、あらゆる賦形剤は噴霧溶液に可溶である。賦形剤は、アンモニアの添加の前または後に加えられることができる。いくつかの実施形態では、溶解固形物の最大25重量%、最大50重量%、最大75重量%、最大90重量%、または最大95重量%が、1つまたは複数の賦形剤によって提供される。例えば、溶解固形物は、0.01~95重量%、0.5~95重量%、1~95重量%、10~95重量%、25~95重量%、50~95重量%、75~95重量%、0.5~90重量%、0.5~75重量%、0.5~50重量%、または0.5~25重量%の賦形剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、アンモニアの量は、活性剤の酸基と、分散ポリマーの全ての酸基および1つまたは複数の賦形剤の全ての酸基との総計に対して0.95~4モル当量、例えば、活性剤の酸基と、分散ポリマーの全ての酸基および賦形剤の全ての酸基との総計に対して0.95~3、0.95~2、0.95~1.5、または0.95~1.1モル当量である。あるいは、過剰なアンモニアの量を制限することが有益または望ましい場合、加えられるアンモニアの量は、溶解していない活性剤の量の酸基と、分散ポリマーおよび1つまたは複数の賦形剤の全ての酸基との総計に対して0.95~1.1モル当量であってもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、噴霧溶液は、周囲温度(例えば、20~25℃の温度)で2~40重量%の溶解固形物含有量、例えば、周囲温度で、2~30重量%、2~25重量%、2~20重量%、2~15重量%、5~15重量%、または10~15重量%の固形物含有量を有し、溶解固形物の0.5~95重量%が活性剤である。したがって、噴霧溶液は、2~40重量%、2~30重量%、2~25重量%、2~20重量%、5~20重量%、5~15重量%、または10~15重量%の、活性剤と分散ポリマーとを組み合わせた含有量を有してもよい。あるいは、噴霧溶液は、2~40重量%、2~30重量%、2~25重量%、2~20重量%、2~15重量%、5~15重量%、または10~15重量%の、活性剤と分散ポリマーと賦形剤とを組み合わせた含有量を有してもよい。多くの場合、噴霧された固体分散体中の活性剤含有量が少なくとも25重量%、例えば、25~95重量%の活性剤含有量を有し、残部は分散ポリマーおよび任意の賦形剤を含むことが望ましい。いくつかの実施形態では、噴霧溶液は、0.5~20重量%の活性剤を含み、総固形分(活性剤、分散ポリマー、およびあらゆる任意の賦形剤)含有量は2~40重量%である。いくつかの実施形態では、噴霧溶液は、2.5~15重量%の活性剤を含み、総固形分は10~20重量%である。いくつかの実施形態では、噴霧溶液は、少なくとも5mg/mLの活性剤、例えば、5~167mg/mLまたは5~125mg/mLの活性剤を含む。
【0045】
噴霧溶液を噴霧して、活性剤、分散ポリマー、およびアンモニアを含む噴霧された固体分散体を形成する。賦形剤が噴霧溶液中に存在する場合、SDはさらに賦形剤を含む。SDには、残留溶媒が含まれている場合もある。噴霧された固体分散体中のアンモニアの存在は望ましくない可能性があるので、アンモニアはその後除去されて、活性剤および分散ポリマーの分散体を含む生成物を形成する。残留溶媒が存在する場合は、それも除去される場合もある。いくつかの実施形態では、残留溶媒およびアンモニアは、単一のプロセスで同時に除去される。
【0046】
いくつかの実施形態では、SDは、噴霧乾燥によって形成され、噴霧乾燥分散体(SDD)である。用語「噴霧乾燥」は、従来から使用されており、液体混合物を小さな液滴に分解すること(噴霧化)、および液滴から溶媒を蒸発させるための強い駆動力がある容器(乾燥チャンバー)内の混合物から溶媒を迅速に除去する事を含むプロセスを広く指す。一般的に、活性剤、分散ポリマー、およびアンモニアを溶媒に加えて、噴霧溶液を形成する。次に、噴霧溶液は、噴霧器によって噴霧乾燥チャンバー内に噴霧される。液滴は、噴霧乾燥チャンバー内で、加熱された乾燥ガス、例えば乾燥窒素と接触する。液滴は急速に乾燥し、活性物質および分散ポリマーを含む、固体分散体またはSDDを含む粒子を形成する。粒子は噴霧乾燥機を出て捕集される。後続のプロセスを用いて、粒子からアンモニアおよび残留溶媒を除去する。
【0047】
SDDを形成するための例示的な装置および手順は、米国特許第8,263,128号、同第9,084,944号、同第9,248,584号、同第9,724,664号、およびPCT国際公開第2010/132827号にも記載されており、その各々が参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
いくつかの実施形態では、噴霧された固体分散体は、コア上に噴霧された噴霧層状分散体(SLD)であり、活性剤の分散体および分散ポリマーを含むコーティングがされる。例えば、噴霧溶液を噴霧器によってコアに噴霧して、活性剤の分散体および分散ポリマーを含むコーティングをコア上に形成することができる。例示的なコアとしては、溶融凝固コア(例えば、米国出願公開第2010/0068276号に記載されているような)、ノンパレイユまたは糖ベースのコア、または錠剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
III.溶媒およびアンモニアの除去
本明細書に開示されるようなプロセスによって作製される噴霧された固体分散体は、活性剤、分散ポリマー、およびアンモニアを含む。SDは、1つまたは複数の賦形剤をさらに含むことができる。SDを含む多くの生成物では、大量の(例えば、500ppmを超える)アンモニアの存在は望ましくない。したがって、いくつかの実施形態では、プロセスは、SDからの残留アンモニアの除去をさらに含み、500ppm以下のアンモニアを含む生成物、例えば、400ppm以下、300ppm以下、200ppm以下、100ppm以下、または50ppm以下のアンモニアを含む生成物を形成する。いくつかの実施形態では、生成物は、0~500ppm、例えば、1~500ppm、1~400ppm、1~300ppm、1~200ppm、1~100ppm、1~50ppm、または1~25ppmのアンモニアを含む。アンモニアが除去されると、活性剤のアンモニア塩はSDで遊離酸形態に戻る。いくつかの実施形態では、噴霧された固体分散体からアンモニアが除去されると、活性剤の少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、または少なくとも99重量%が遊離酸形態に戻る。いくつかの実施形態では、アンモニアが除去されると、活性剤の90~100重量%、95~100重量%、97~100重量%、98~100重量%、または99~100重量%が遊離酸形態に戻る。分散ポリマーに酸基が含まれている場合、それらの基も酸の形態に戻ることができる。
【0050】
生成物中に残留するアンモニアの量と活性剤の分子量との間には相関関係がある。例えば、活性剤の95重量%を遊離酸形態に変えるのに十分なアンモニアが除去される場合、所定の質量の低分子量活性剤を含むSDは、同じ質量の高分子量活性剤を含むSDよりも高いppmレベルのアンモニアを保持する。SDが分子量250g/molの活性剤100gを含み、アンモニウム塩として5重量%が残留する場合、SDは0.02molのアンモニアを保持する。SDが分子量500g/molの活性剤100gを含み、アンモニウム塩として5重量%が残留する場合、SDは0.01molのアンモニアを保持する。
【0051】
いくつかの実施形態では、SDは残留溶媒をさらに含む。残留溶媒を含むことは望ましくない場合がある。別々のプロセスを用いて、残留溶媒およびアンモニアの除去をしてもよい。あるいは、残留溶媒およびアンモニアの少なくとも一部を単一のプロセスで除去することができる。いくつかの実施形態では、溶媒の除去は、同じ条件でのアンモニアの除去よりもはるかに迅速に行われる。いくつかの実施形態では、残留溶媒の全てまたは実質的に全て(例えば、少なくとも95%)はアンモニアで除去される。例えば、メタノール含有量は、アンモニアを500ppm以下の濃度に低減するために4~48時間以上を必要とする温度および相対湿度条件で、30分未満で0.3重量%未満に低減される場合がある。したがって、合理的な期間内に所望の濃度のアンモニアを達成するように選択される条件で単一のプロセスを実行することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、残留アンモニアは、SDを30~70℃の範囲内の温度で十分な時間加熱することにより除去され、500ppm以下のアンモニアを含む生成物を形成する。有利には、温度は、アンモニア除去プロセス中に活性剤の大きな熱劣化が起こらないように選択される。アンモニアが除去されると、残留溶媒が除去される場合がある。いくつかの実施形態では、温度は40~60℃の範囲内である。いくつかの実施形態では、SDは、アンモニアおよび溶媒の除去プロセスの間、10~75%の相対湿度(RH)に維持される。いくつかの実施形態では、SDは、10~60%RH、10~50%RH、15~50%RH、または15~30%RHに維持される。
【0053】
アンモニアの除去は、アンモニア含有量を500ppm以下に低減するのに十分な時間実行される。アンモニア含有量は、任意の好適な方法、例えばアンモニアイオン選択性電極(ISE)の使用によって決定されることができる。いくつかの実施形態では、アンモニアは、既知量のSDを希薄な塩基水溶液(例えば、0.1M NaOH)に溶解し、ISEでミリボルトの測定値を取得することによって測定される。測定値は、SDに残留するアンモニアの量を決定するために、既知のアンモニア濃度の溶液から作成された標準曲線と比較される。いくつかの実施形態では、時間は2~60時間、例えば4~60時間または4~48時間である。
【0054】
いくつかの実施形態では、残留アンモニアを除去することは、さらに、少なくとも一定期間、SD全体にわたってスイープガスを吹き付けることを含む。望ましくは、スイープガスはSDに対して不活性である。好適なスイープガスには、窒素、アルゴン、二酸化炭素、空気、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
いくつかの実施形態では、スイープガスは、水蒸気(例えば、アンモニアおよび溶媒の除去プロセス中に10~50%RHを提供するのに十分な水)ならびに/または揮発性有機溶媒蒸気(例えば、メタノール蒸気)をさらに含む。作用のいかなる理論またはメカニズムにも拘束されることを望むものではないが、スイープガスに水蒸気または揮発性有機溶媒蒸気を含めると、SDの粒子のガラス転移温度を低下させる可能性があり、それにより、粒子内の残留アンモニアおよび/または残留溶媒の拡散速度が増加する。結果として、粒子からのアンモニアおよび/または残留溶媒の物質移動が増加する可能性があり、その結果、アンモニアおよび/または残留溶媒はより迅速に除去される。
【0056】
いくつかの実施形態では、乾燥パラメータ(時間、温度、相対湿度、および/もしくはスイープガス組成)は、少なくとも部分的には、活性剤pKa、分散ポリマー組成、任意の賦形剤の特性、成分の質量比、ならびに/または粒子形態(例えば、粒子径)に依存する。例えば、粒子径が大きくなると時間が長くなる場合がある。さらに、少なくとも一部のSDでは、分散ポリマーは時間に影響を与える。例えば、PVP-VAを含むSDからアンモニアを除去するのに、HPMCASを含む同等のSDからよりも、より長い時間が必要であることが見出された。温度および/またはRHを上げると、所望の量のアンモニアを除去する時間が短縮される場合がある。
【0057】
アンモニア(および溶媒)の除去は、任意の好適な装置、例えば、トレイ乾燥機、機械的に攪拌される乾燥チャンバー、ドラム乾燥機、流動床、装置を通過するコンベヤーベルトを備える乾燥装置等を使用して実行することができる。前記のリストは、全ての実施形態が同等および/または同等に好適であることを示すことを意図するものではない。いくつかの実施形態では、トレイ乾燥機または機械的に攪拌される乾燥チャンバーが利用される。機械的に攪拌される乾燥チャンバーが利用される場合、SDの粒子は、外壁を有する乾燥チャンバー内に導入される。スイープガスは乾燥チャンバーを通って流れ、粒子は壁から独立した機械的攪拌機によって乾燥チャンバー内を循環する。
【0058】
IV.活性剤
開示されたプロセスの実施形態を用いて、活性剤を含む噴霧された固体分散体(SD)を形成する。「活性剤」とは、SDとして処方されることが望まれる可能性のある薬物、薬剤、医薬品、治療薬、栄養補助食品、農薬、肥料、農薬、除草剤、栄養素、または他の化合物を意味する。活性剤は、概ね2000ダルトン以下の分子量を有する「小分子」であってもよい。いくつかの実施形態では、開示されたいくつかのプロセスによって作製されるSDは、2つ以上の活性剤を含む。
【0059】
開示されたプロセスの実施形態は、pKaが7以下の結晶性または遊離酸形態を有する酸性活性剤に特に好適である。いくつかの実施形態では、活性剤の遊離酸形態は、3~7の範囲内のpKaを有する。
【0060】
活性剤は、周囲温度(例えば、20~25℃)で1つまたは複数のC1~C3アルカノールに40mg/mL以下の遊離酸形態の溶解度を有する結晶性薬剤であってもよい。用語「結晶」は、原子または分子が三次元で規則的に繰り返される明確なパターンで配置される固体材料を指す。いくつかの実施形態では、活性剤は、周囲温度で1つまたは複数のC1~C5アルカノールに、30mg/mL以下、20mg/mL以下、10mg/mL以下、5mg/mL以下、2.5mg/mL以下、または1mg/mL以下の遊離酸形態の溶解度を有する。いくつかの実施形態では、活性剤は、周囲温度(例えば、20~25℃の温度)で1つまたは複数のC1~C3アルカノールに0.0001~40mg/mL、0.001~40mg/mL、0.001~30mg/mL、0.001~20mg/mL、0.001~10mg/mL、0.01~10mg/mL、0.1~10mg/mL、0.01~5mg/mL、0.01~2.5mg/mL、または0.01~1mg/mLの範囲内の遊離酸形態の溶解度を有する。
【0061】
V.分散ポリマー
開示されたプロセスの実施形態を用いて、分散ポリマーを含むSDを形成する。いくつかの実施形態では、SDは複数の分散ポリマーを含む。開示された方法によって形成されるSDでの使用に好適な分散ポリマーは、それらが不利な方法で活性剤と化学的に反応しないという意味で、不活性であるべきである。
【0062】
好適な分散ポリマーには、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート(HPMCAS)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ(ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)(PVP-VA)、ポリ(メタクリル酸-co-メチルメタクリレート)(PMMAMA)、ポリ(メタクリル酸-co-エチルアクリレート)、またはそれらの任意の組み合わせ、が含まれるが、これらに限定されない。好適なPMMAMAポリマーには、ポリ(メタクリル酸-co-メチルメタクリレート)1:1(Eudragit(登録商標)L100ポリマー、Evonik Industries AG)、およびポリ(メタクリル酸-co-メチルメタクリレート)1:2(Eudragit(登録商標)S100ポリマー)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ポリ(メタクリル酸-co-エチルアクリレート)はポリ(メタクリル酸-co-エチルアクリレート)1:1である。前記のリストは、全ての実施形態が同等および/または同等に好適であることを示すことを意図するものではない。いくつかの実施形態では、分散ポリマーは、HPMCASまたはPVP-VAを含む。
【0063】
VI.賦形剤
いくつかの実施形態では、SDは、活性剤および分散ポリマーに加えて、1つまたは複数の賦形剤をさらに含む。好適な賦形剤には、バインダー、充填剤、希釈剤、崩壊剤、滑剤、界面活性剤、コーティング剤、着色剤、香料、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0064】
例示的な界面活性剤としては、脂肪酸、アルキルスルホネート、および市販の界面活性剤、例えば商品名で販売されているもの、例えば、ベンゼタニウムクロリド(Lonza,Inc.,Fairlawn,NJから市販されているHyamine(登録商標)1622)、ドキュセートナトリウム(Mallinckrodt Spec.Chem.,St.Louis,MOから市販されている)、およびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ICI Americas Inc.,Wilmington,DEから市販されているTween(登録商標)界面活性剤、Lipochem Inc.,Patterson,NJから市販されているLiposorb(登録商標)P-20、およびAbitec Corp.,Janesville,WIから市販されているCapmul(登録商標)POE-0)、ソルビタンエステル(例えば、Sigma-Aldrich,St.Louis,MOから市販されている、Span(登録商標)20(ソルビタンモノラウレート)、40(ソルビタンモノパルミテート)、60(ソルビタンモノステアレート)、65(ソルビタントリステアレート)、80(ソルビタンモノオレエート)、および85(ソルビタントリオレエート)非イオン性界面活性剤)、ならびに天然界面活性剤、例えばタウロコール酸ナトリウム、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、レシチン、その他のリン脂質、ならびにモノグリセリドおよびジグリセリドが挙げられる。バインダーの例としては、メチルセルロース、微結晶性セルロース、デンプン、およびガム、例えばグアーガム、およびトラガカントが挙げられる。滑剤の例としては、タルク、コロイダルシリカ、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸カルシウムが挙げられる。崩壊剤の例としては、デンプングリコール酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、およびクロスカルメロースナトリウムが挙げられる。他のマトリックス材料、充填剤、または希釈剤の例としては、ラクトース、マンニトール、キシリトール、微結晶性セルロース、二リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸アルミニウム、ベントナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト、三ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、およびデンプンが挙げられる。
【0065】
VII.噴霧された固体分散体
開示された方法の実施形態によって作製された噴霧された固体分散体は、活性剤、分散ポリマー、および500ppm以下のアンモニアを含む。いくつかの実施形態では、SDは、400ppm以下、300ppm以下、200ppm以下、100ppm以下、または50ppm以下のアンモニアを含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、活性剤は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、またはそれらの任意の組み合わせ中で7以下のpKaおよび10mg/mL以下の遊離酸形態の溶解度を有する酸剤である。いくつかの実施形態では、SDは、少なくとも0.5重量%の活性剤、例えば、少なくとも1重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも25重量%、または少なくとも50重量%の活性剤を含む。いくつかの実施形態では、SDは、0.5~95重量%の活性剤、例えば、1~95重量%、5~95重量%、10~95重量%、または25~95重量%の活性剤を含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、SD中の活性剤の少なくとも90重量%は遊離酸形態である。いくつかの実施形態では、活性剤の少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、または少なくとも99重量%は、その遊離酸形態である。例えば、活性剤の90~100重量%、95~100重量%、97~100重量%、98~100重量%、または99~100重量%は、噴霧された分散体中で遊離酸形態である可能性がある。
【0068】
SDは、分散ポリマーをさらに含む。いくつかの実施形態では、分散ポリマーは、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート(HPMCAS)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ(ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)(PVP-VA)、ポリ(メタクリル酸-co-メチルメタクリレート)1:1、ポリ(メタクリル酸-co-メチルメタクリレート)1:2、ポリ(メタクリル酸-co-エチルアクリレート)1:1、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、SDは、2つ以上の分散ポリマーを含む。SDは、1つまたは複数の賦形剤をさらに含んでもよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、SDは、活性剤、分散ポリマー、500ppm以下のアンモニア、および微量の(50ppm以下の)溶媒を含む、本質的にそれらからなる、またはそれらからなる。「本質的になる」とは、SDの特性に実質的な影響を与える構成要素をSDが含んでいないことを意味する。したがって、SDは、例えば、分散ポリマー以外のポリマーも、pKaが7より大きい活性剤も含まない。しかし、SDには、SDの特性に実質的に影響を与えない微量(例えば、500ppm未満)の他の成分、例えばSDの作成に使用される材料に存在する少量の不純物が含まれる場合がある。いくつかの実施形態では、SDは、活性剤、分散ポリマー、50ppm以下のアンモニア、および5ppm以下の溶媒を含む、本質的にそれらからなる、またはそれらからなる。いくつかの実施形態では、SDは、活性剤、分散ポリマー、1つまた複数の賦形剤、500ppm以下のアンモニア、および微量の(50ppm以下の)溶媒を含む、本質的にそれらからなる、またはそれらからなる。別の独立した実施形態では、SDは、活性剤、分散ポリマー、1つまたは複数の賦形剤、50ppm以下のアンモニア、および5ppm以下の溶媒を含む、本質的にそれらからなる、またはそれらからなる。
【0070】
SD中の活性剤は、結晶性、非晶質、またはその間の任意の状態である可能性がある。いくつかの実施形態では、SD中の活性剤は、非晶質である、または実質的に(すなわち、少なくとも90重量%)非晶質である。一実施形態では、活性剤はSD全体に分子的に分散している。独立した実施形態では、SDは、複数の粒子を含む噴霧乾燥分散液であり、粒子の少なくとも一部は、活性剤ドメインを含む。活性剤ドメインは、非晶質活性剤、結晶性活性剤、または非晶質と結晶性活性剤との組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態では、活性剤ドメイン中の活性剤の少なくとも90重量%、例えば90~100重量%、90~99.9重量%、または90~99.5重量%は非晶質である。
【0071】
いくつかの実施形態では、開示された方法によって調製されるSDは、他の方法によって調製されるSD、例えば、不揮発性対イオン、例えばNa+もしくはK+で調製された活性剤の塩を含むSD、または活性剤の遊離酸形態を噴霧することによって調製されるSDと比較して利点を有する。例えば、本明細書に開示されるSDの実施形態は、活性剤の塩を含むSDと比較して、より高い効力および/またはより高い物理的安定性(例えば、低下した吸湿性)を有することができる。いくつかの実施形態では、SDの実施形態は、溶解度の制約が噴霧溶液中の活性剤の濃度およびその後の固体分散体を制限する、活性剤の遊離酸形態から調製されるSDと比較して、より高い割合の活性剤を含む。
【0072】
VII.代表的な実施形態
いくつかの代表的な実施形態は、以下の段落に記載されている。
【0073】
噴霧された固体分散体を調製するための方法であって、噴霧溶液を形成するために、活性剤、分散ポリマー、ある量のアンモニア、および溶媒を混合することであって、溶媒はC1~C3アルカノールを含み、遊離酸形態の活性剤は溶媒中で7以下のpKaおよび40mg/mL以下の溶解度を有し、アンモニアの量は活性剤を溶媒に溶解させるのに十分である、混合することと、活性剤、分散ポリマー、およびアンモニアを含む噴霧された固体分散体を形成するために、噴霧溶液を噴霧することと、活性剤および分散ポリマーの固体分散体を含む生成物を形成するために、噴霧された固体分散体から残留アンモニアを除去することであって、生成物は500ppm以下のアンモニアを含む、除去することと、を含む方法。
【0074】
アンモニアの量は、活性剤の酸基の総計に対する活性剤等価物の酸基の総計に対して、少なくとも0.95モル当量である、前記段落に記載の方法。
【0075】
アンモニアの量は、活性剤の酸基および分散ポリマーの全ての酸基の総計に対して、少なくとも0.95モル当量である、第1の段落に記載の方法。
【0076】
アンモニアの量は、活性剤の酸基および分散ポリマーの全ての酸基の総計に対して、0.95~4モル当量である、前記段落に記載の方法。
【0077】
アンモニアの量は、溶媒中の活性剤の遊離酸形態の溶解度を超える活性剤の量の酸基および分散ポリマーの全ての酸基の総計に対して、少なくとも0.95モル当量である、第1の段落に記載の方法。
【0078】
生成物中の活性剤の少なくとも90重量%は遊離酸形態である、前記段落のいずれか1つに記載の方法。
【0079】
C1~C3アルカノールは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、またはそれらの任意の組み合わせを含む、前記段落のいずれか一つに記載の方法。
【0080】
溶媒はC1~C3アルカノールおよび共溶媒を含む、前記段落のいずれか一つに記載の方法。
【0081】
共溶媒は、水、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸メチル、1,3-ジオキソラン、アセトン、メチルエチルケトン、またはそれらの任意の組み合わせを含む、前記段落に記載の方法。
【0082】
溶媒は0.01~30重量%の水を含み、残部はC1~C3アルカノールである、前記段落のいずれか一つに記載の方法。
【0083】
活性剤は、アンモニアを含まない溶媒中の活性剤の遊離酸形態の溶解度より少なくとも2倍高い噴霧溶液への溶解度を有する、前記段落のいずれか一つに記載の方法。
【0084】
噴霧溶液は、2~40重量%の範囲内の溶解固形物含有量を有し、溶解固形物の0.5~95重量%は活性剤である、前記段落のいずれか一つに記載の方法。
【0085】
前記噴霧溶液は0.5~20重量%の活性剤を含む、前記段落のいずれか一つに記載の方法。
【0086】
残留アンモニアの除去することは、噴霧された固体分散体を30~70℃の範囲内の温度および10~75%の範囲内の相対湿度(RH)で、500ppm以下のアンモニアを含む生成物を形成するのに十分な時間加熱することを含む、前記段落のいずれか一つに記載の方法。
【0087】
(i)時間は2~60時間である、もしくは(ii)温度は40~60℃の範囲内である、もしくは(iii)RHは15~50%の範囲内である、または(iv)(i)、(ii)、および(iii)の任意の組み合わせである、前記段落に記載の方法。
【0088】
残留アンモニアを除去することは、噴霧された固体分散体を温度およびRHで加熱しながら、噴霧された固体分散体全体にスイープガスを吹き付けることをさらに含む、前記段落のいずれか一つに記載の方法。
【0089】
スイープガスは、窒素、アルゴン、二酸化炭素、空気、またはそれらの任意の組み合わせを含む、前記段落に記載の方法。
【0090】
スイープガスは水蒸気または揮発性有機溶媒蒸気をさらに含む、前記段落に記載の方法。
【0091】
スイープガスは揮発性有機溶媒蒸気をさらに含み、揮発性有機溶媒はメタノールである、前記段落に記載の方法。
【0092】
残留アンモニアの除去がトレイ乾燥機または機械的に攪拌される乾燥チャンバーで行われる、前記段落のいずれか一つに記載の方法。
【0093】
残留溶媒の少なくとも一部は、噴霧された固体分散体から残留アンモニアを除去すると同時に除去される、前記段落のいずれか一つに記載の方法。
【0094】
示差走査熱量測定によって測定されるように、分散ポリマーは60℃を超えるドライガラス転移温度Tgを有する、前述の段落のいずれか一つに記載の方法。
【0095】
分散ポリマーは、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート(HPMCAS)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ(ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)(PVP-VA)、ポリ(メタクリル酸-co-メチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸-co-エチルアクリレート)、またはそれらの任意の組み合わせを含む、前記段落のいずれか一つに記載の方法。
【0096】
噴霧溶液は複数の分散ポリマーを含む、前記段落のいずれか一つに記載の方法。
【0097】
噴霧溶液は1つまたは複数の賦形剤をさらに含む、前記段落のいずれか一つに記載の方法。
【0098】
1つまたは複数の賦形剤は、1つまたは複数のバインダー、充填剤、希釈剤、崩壊剤、滑剤、界面活性剤、コーティング剤、着色剤、香料、またはそれらの任意の組み合わせを含む、前記段落に記載の方法。
【0099】
アンモニアの量は、活性剤の酸基、分散ポリマーの全ての酸基、および1つまたは複数の賦形剤の全ての酸基の総計に対して少なくとも0.95モル当量である、前記段落のいずれか一つに記載の方法。
【0100】
アンモニアの量は、活性剤の酸基、分散ポリマーの全ての酸基、および1つまたは複数の賦形剤の全ての酸基の総計に対して0.95~4モル当量である、前記段落に記載の方法。
【0101】
噴霧された固体分散体は、少なくとも0.5重量%の活性剤および500ppm以下のアンモニアを含む、前記段落のいずれか一項の方法によって調製される噴霧された固体分散体。
【0102】
噴霧された固体分散体中の少なくとも90重量%の活性剤は、遊離酸形態である、前記段落に記載の噴霧された固体分散体。
【0103】
0.5~95重量%の活性剤であって、少なくとも90重量%の活性剤は非晶質である、活性剤と、分散ポリマーと、50ppm以下のアンモニアと、を含む、前記段落のいずれか一つに記載の噴霧された固体分散体。
【0104】
生成物は300ppm以下のアンモニア、100ppm以下のアンモニア、または50ppm以下のアンモニアを含む、前記段落のいずれか一つに記載の方法。
【実施例】
【0105】
VIII.実施例
キャラクタリゼーションの方法
GC分析:ヘッドスペースガスクロマトグラフィー(GC)を使用して、試験試料に存在する残留メタノールの量を定量化した。GC試料を一定の時間間隔でトレイ乾燥機から取り出し、既知の質量の10~60mgの試料を20mLのヘッドスペースバイアルに密閉した。試料を、PTFE/シリコンセプタムから注入された4mLのN-N-ジメチルアセトアミドに溶解した。自動ヘッドスペースサンプラーを備えるAgilent(登録商標)G7890GC(Agilent Technologies, Santa Clara, CA)を、DB-624カラム(30m×0.32mm ID×1.8μm)と水素炎イオン化検出器とともに使用した。試料に存在する残留溶媒は、既知の溶媒含有量を有するヘッドスペース試料の6点検量線を用いて定量される。
【0106】
PXRD:粉末X線回折(PXRD)は、シータ/2シータモードで動作するD/tex高速線形検出器を備えるRigaku(登録商標)Miniflex(登録商標)600X線回折計(Rigaku Corporation、東京、日本)で実行された。試料を0.5mmのゼロバックグラウンドホルダー上に広げた。分析は、600W(40kVおよび15mA)のCu K-ファルファ放射線、入射ビームと回折ビームの両方に1.25°の分散スリット、8.0mmの散乱スリット、5°のソラースリット、および15ミクロンのNi箔を用いて実行され、Cu K-ベータ回折ビームを除去した。試料は、0.02°2θのステップで、3°~40°2θまで2.5°/分でスキャンされた。
【0107】
アンモニアの定量-イオン選択電極(ISE)法:SDD試料のアンモニアの定量は、アンモニアイオン選択電極、Orion(登録商標)9512HPBNWP(ThermoFisher Scientific)、およびBeckman CoulterモデルPHI410メーターを使用して行われた。ISEは、spectrum chemical製の硫酸アンモニウム一次標準を使用して較正された。0.1Mの水酸化ナトリウム中の既知のアンモニア濃度の水溶液をミリボルトで測定し、その値を用いて線形標準曲線を作成した。既知の質量のSDD試料を0.1モルの水酸化ナトリウムに溶解し、そしてISEを使用して分析した。ミリボルトの測定値が記録され、そして濃度に変換された。SDD中のアンモニア濃度は、100万分率(ppm)として報告される。
【0108】
実施例1
アンモニアを含むメタノール中のスルファサラジン濃度の向上
スルファサラジン(Spectrum Chemical)の飽和溶液を、過剰の結晶性スルファサラジンを含むメタノールで調製した。遠心分離後、熱重量分析法による上澄みの分析により、メタノール中で約1.0mg/mLの結晶溶解度が得られた。
【0109】
メタノール中のスルファサラジンの第2の混合物は、14.00mLのメタノール中に656.0mgのスルファサラジン(1.65ミリモル)を攪拌することによって調製された。このスラリーに、2.14Mアンモニアのメタノール溶液0.825mL(1.76ミリモル)を攪拌しながら加え、1分以内にスルファサラジンを完全に溶解させた。スルファサラジン濃度は、メタノール中で43mg/mLより高い。アンモニアの存在下でのメタノール中のスルファサラジンの観察された溶解度の向上は、約43倍であった。
【0110】
実施例2
アンモニアを含むメタノール中のピロキシカム濃度の向上
ピロキシカム(Spectrum Chemical)の飽和溶液を、過剰の結晶性ピロキシカムを含むメタノール中で調製した。遠心分離後、熱重量分析法による上澄みの分析により、メタノール中で約2.1mg/mLの結晶溶解度が得られた。
【0111】
メタノール中のピロキシカムの第2の混合物は、15.00mLのメタノール中に661.8mgのピロキシカム(2.00ミリモル)を攪拌することによって調製された。このスラリーに、2.14Mアンモニアのメタノール溶液1.0mL(2.14ミリモル)を攪拌しながら加え、1分以内に透明な黄色の溶液が得られた。ピロキシカム濃度は、メタノール中で41mg/mLより高い。アンモニアの存在下でのメタノール中のピロキシカムの観察された溶解度の向上は、19倍より大きかった。
【0112】
実施例3
処理助剤としてアンモニアを含むピロキシカム/PVP-VA65SDD
噴霧溶液は、16.02グラムのKollidon(登録商標)VA-64ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー(BASF Corp.)を475.07gのメタノール中に溶解することによって調製された。この溶液4.00gに、12.07ミリモルのピロキシカムを添加して、ピロキシカムの懸濁液を得た。この懸濁液に、2.14M(12.84ミリモル)のアンモニアのメタノール溶液(Aldrich Chemical)6.00mLを攪拌しながら加え、透明な黄色の溶液を得た。
【0113】
溶液は、溶液ポットで150psiのヘッド圧力を用いて、実験室規模の噴霧乾燥チャンバー内にポンプで送られた。溶液流量は30g/分と推定された。薬物/ポリマー溶液は、Schlickモデル121サイズ2.0の圧力スワールノズルによって噴霧された。加熱した窒素ガスを直径0.3mのステンレス鋼チャンバー内に139℃の温度と500g/分の流量で導入した。チャンバーを出るガスの出口温度は45℃であった。サイクロンを使用して固体分散体を収集し、ガス流から固体粒子を分離し、2~8℃の密閉容器に保存した。
【0114】
実施例4
処理助剤としてアンモニアを含むピロキシカム/HPMCAS SDD
噴霧溶液は、16.00gのHPMCAS-M(Shin-Etsu AQOAT(登録商標))を468.01gのメタノールに溶解することにより調製された。この溶液4.00gに、12.07ミリモルのピロキシカムを添加して、活性剤の懸濁液を得た。この懸濁液に、2.14M(31.71ミリモル)のアンモニアのメタノール溶液(Aldrich Chemical)14.82mLを攪拌しながら加え、わずかに濁った黄色の溶液を得た。この量のアンモニアを使用して、活性剤およびポリマーの両方を中和した。
【0115】
溶液は、溶液ポットで150psiのヘッド圧力を用いて、実験室規模の噴霧乾燥チャンバー内にポンプで送られた。溶液流量は30g/分と推定された。薬物/ポリマー溶液は、Schlickモデル121サイズ2.0の圧力スワールノズルによって噴霧された。加熱した窒素ガスを直径0.3mのステンレス鋼チャンバー内に139℃の温度と500g/分の流量で導入した。チャンバーを出るガスの出口温度は45℃であった。サイクロンを使用して固体分散体を収集し、ガス流から固体粒子を分離し、2~8℃の密閉容器に保存した。
【0116】
実施例5~10
アンモニア除去
アンモニアは、3つの異なる条件でEnvironmental Specialties、Inc.製のES2000環境チャンバーを使用して噴霧乾燥分散体から除去された。乾燥チャンバーの一定の温度および相対湿度(RH)は、試験された3つの条件、40℃および15%RH、50℃および30%RH、ならびに60℃および30%RHについて維持された。
【0117】
条件の各セットで、噴霧乾燥された分散体の試料を、0時間、4時間、8時間、24時間、および48時間の時間間隔で環境チャンバーから取り出した。試料は、上記のようにイオン選択性電極を使用した残留アンモニア分析のために、密封されたバイアル内に保存された。結果を表1に示す。
【表1】
【0118】
図1は、50℃、30%RHで48時間後の実施例7のSDDのPXRDスペクトルである。
図2は、50℃、30%RHで48時間後の実施例8のSDDのPXRDスペクトルである。スペクトルに鋭いピークがないことは、試料が非晶質であることを示している。
【0119】
実施例11
溶媒の除去
SDの溶媒およびアンモニアを除去するために必要な時間および条件の大きな違いを示すために、HPMCASまたはPVPVA-64ポリマーのいずれかを含むピロキシカムSDDの第2のセットを、実施例3と4と同じ手順と量を用いて製造した。湿ったSDDは、すぐに40℃/15%RHに設定されたES2000環境チャンバーに移された。GC試料は、0、0.5、1、2、および4時間の時点で取得された。SDDの初期溶媒含有量は約1~2重量%のメタノールであった。0.5時間以上の全ての時点で試料にメタノールは検出されなかった。これは、これらの乾燥条件で30分以内にメタノールがICH(International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use)の仕様である0.3重量%を大きく下回って除去されたことを示している。
【0120】
SDDから残留溶媒および残留アンモニアを除去するために同じ装置が使用されたが、それぞれの許容可能な低レベルを達成するために必要な条件および処理時間に大きな違いがあることは明らかである。例えば、実施例3および4の方法で調製されたSDDからのメタノールの除去を監視したが、どちらの場合も、40℃/15%RHの乾燥機でわずか30分後に、残留メタノールはICH仕様の0.3重量%を大きく下回った。これらの条件では、500ppm未満のアンモニアの目標値までのアンモニアの除去は、HPMCAS SDDからメタノールを除去するのに必要な時間の8倍を超えて遅くなる(表1、実施例6)。PVP-VA 64 SDDの場合、24時間を超える長時間、およびより高い温度/湿度(50℃/30%RH)の条件の両方が必要である(表1、実施例7)。これは、40℃/15%RHでのメタノール除去の48倍超になる。SDD中でアンモニアが100ppm未満のより好ましい目標値に到達するには、HPMCAS SDDで必要な時間は40℃/15%RHで24時間に近づき(表1、実施例6)、これはメタノール除去の48倍より長い。PVP-VA SDDの場合、50℃/30%RH条件(表1、実施例7)を用いてアンモニアが100ppm未満の値に達するには、メタノール除去の98倍より長い48時間をはるかに超える処理が必要になる。PVP-VA SDDの処理時間を24時間以内にするには、処理条件を60℃/30%RHに上げる必要があり(表1、実施例9)、これは、メタノール除去に必要な条件よりもはるかに高い値である。
【0121】
開示された発明の原理が適用されることができる多くの可能な実施形態を考慮して、例示される実施形態は本発明の好ましい例にすぎず、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではないことを認識する必要がある。むしろ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。したがって、これらの特許請求の範囲および趣旨の範囲内にある全てのものを発明として主張する。