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7595304化合物、有機デバイス用材料、発光層形成用組成物、有機電界効果トランジスタ、有機薄膜太陽電池、有機電界発光素子、表示装置、および照明装置
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  • -化合物、有機デバイス用材料、発光層形成用組成物、有機電界効果トランジスタ、有機薄膜太陽電池、有機電界発光素子、表示装置、および照明装置 図1
  • -化合物、有機デバイス用材料、発光層形成用組成物、有機電界効果トランジスタ、有機薄膜太陽電池、有機電界発光素子、表示装置、および照明装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】化合物、有機デバイス用材料、発光層形成用組成物、有機電界効果トランジスタ、有機薄膜太陽電池、有機電界発光素子、表示装置、および照明装置
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/02 20060101AFI20241129BHJP
   C07F 7/08 20060101ALI20241129BHJP
   C07F 19/00 20060101ALI20241129BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20241129BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20241129BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20241129BHJP
【FI】
C07F5/02 C CSP
C07F7/08
C07F19/00
C09K11/06 660
H05B33/14 B
H05B33/22 B
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2021516289
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2020017800
(87)【国際公開番号】W WO2020218558
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2019086891
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503092180
【氏名又は名称】学校法人関西学院
(73)【特許権者】
【識別番号】521180485
【氏名又は名称】エスケーマテリアルズジェイエヌシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】畠山 琢次
(72)【発明者】
【氏名】近藤 靖宏
(72)【発明者】
【氏名】川角 亮介
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-219487(JP,A)
【文献】特表2021-523567(JP,A)
【文献】特許第7388658(JP,B2)
【文献】国際公開第2018/216990(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/018326(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/022751(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106467554(CN,A)
【文献】国際公開第2015/102118(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/188111(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/152544(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 5/
C07F 7/
C07F 19/
C09K 11/
H10K 50/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物;
【化3】
式(1)中、
1~R11における少なくとも1つは、式(D)で表される部分構造(D)であり、
Yはであり、
1およびX2は、いずれも>Oであり、
部分構造(D)ではないR1~R11は、それぞれ独立して、水素、または、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、ジヘテロアリールアミノ(ただしヘテロアリールは炭素数2~12のヘテロアリール)、アリールヘテロアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリールであり、かつ、ヘテロアリールは炭素数2~12のヘテロアリールである)、炭素数1~12のアルキルもしくは炭素数3~20のシクロアルキルである置換基であり、
部分構造(D)において、Qは、単結合、>O,>S,>C(-R’) 2 ,または>Si(-R’) 2 であり、波線部は結合位置を示し、
前記の>C(-R’)2および>Si(-R’)2におけるR’は、それぞれ独立して、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、炭素数1~24のアルキル、または炭素数3~12のシクロアルキルであり、
部分構造(D)におけるR 21 ~R 28 は、それぞれ独立して、水素、または、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、ジヘテロアリールアミノ(ただしヘテロアリールは炭素数2~12のヘテロアリール)、アリールヘテロアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリールであり、ヘテロアリールは炭素数2~12のヘテロアリール)、炭素数1~12のアルキル、炭素数3~20のシクロアルキル、シアノもしくはハロゲンである置換基であり、
式(1)における部分構造(D)ではないR1~R11および部分構造(D)におけるR21~R28は、全てが水素であることはなく、
式(1)で表される化合物における少なくとも1つの水素がハロゲン、または重水素で置換されてもよい。
【請求項2】
式(1)において、
2が、部分構造(D)であり、
部分構造(D)ではないR1~R11は、それぞれ独立して、水素、または、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、ジヘテロアリールアミノ(ただしヘテロアリールは炭素数2~12のヘテロアリール)、アリールヘテロアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール、ヘテロアリールは炭素数2~12のヘテロアリール)、アルキルの置換しない炭素数1~4のアルキルもしくは炭素数3~20のシクロアルキルである置換基であり、
部分構造(D)におけるQが>C(-R’)2、部分構造(D)における>C(-R’)2におけるR’がメチル、かつ、部分構造(D)におけるR21~R28が水素である場合、式(1)におけるR6およびR9は、それぞれ独立して、部分構造(D)、水素、または、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、ジヘテロアリールアミノ(ただしヘテロアリールは炭素数2~12のヘテロアリール)、アリールヘテロアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール、ヘテロアリールは炭素数2~12のヘテロアリール)、アルキルの置換しない炭素数1~3のアルキルもしくは炭素数3~20のシクロアルキルである置換基である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(1)において、
4、R5、R6、R9、R10およびR11よりなる群から選ばれた少なくとも1つが、部分構造(D)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
式(1)において、部分構造(D)を1つ有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
部分構造(D)におけるQが>Oまたは>Sである、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
部分構造(D)におけるQが>C(-R’) 2 または>Si(-R’) 2である、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
下記式のいずれかで表される化合物である、請求項1に記載の化合物。
【化4】
(式中、Meはメチル、tBuはt-ブチルを表す。)
【請求項8】
下記式(4)で表される化合物
【化6】
式(4)中、
1 ~R 14 の少なくとも1つは式(D)で表される部分構造(D)であり、
部分構造(D)ではないR 1 ~R 14 は、それぞれ独立して、水素、または、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、炭素数1~12のアルキル、炭素数3~20のシクロアルキル、炭素数6~12のアリールオキシ。もしくはジアリールボリル(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)である置換基であり、これらの置換基における少なくとも1つの水素は、炭素数6~12のアリールまたは炭素数1~8のアルキルで置換されていてもよく、
1 ~X 4 は、それぞれ独立して、>Oまたは>N-Rであり、前記>N-RのRはフェニルまたは3,5-キシリルであり、
部分構造(D)中、R 21 ~R 28 は、それぞれ独立して、水素、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、炭素数1~12のアルキル、炭素数3~20のシクロアルキル、シアノ、またはハロゲンであり、
部分構造(D)中のQは単結合、>O、>S、>C(―R’)2または>Si(―R’)2であり、前記>C(―R’)2および>Si(―R’)2のR’は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~8のアルキル、または単結合で連結していてもよい炭素数6~12のアリールであり、
部分構造(D)ではないR 1 ~R 14 および部分構造(D)中、R 21 ~R 28 の全てが水素になることはなく、
部分構造(D)がa環およびc環のみに1つずつ結合していて、かつQが単結合のとき、R24およびR28がともに水素になることはなく、
ただし、部分構造(D)がa環およびc環のみに1つずつ結合していて、かつQがOのとき、X1とX2がともにOになることはなく、
式(4)で表される化合物における少なくとも1つの水素はハロゲン、または重水素で置換されていてもよい。
【請求項9】
式(4)において、R4、R7、R10およびR13のうち、1つまたは2つが部分構造(D)である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
部分構造(D)が、下記式(D-1)~式(D-3)のいずれかで表される構造である、請求項8または9に記載の化合物;
【化7】
式(D-1)において、R50はそれぞれ独立して、水素原子またはメチルを表し、Meはメチルであり、
式(D-2)において、Q1は>O、>S、>C(CH32、または>Si(CH32を表す。
【請求項11】
下記式のいずれかで表される、請求項8に記載の化合物。
【化8】
(式中、Meはメチルを表す。)
【請求項12】
S1とT1のエネルギー準位差が0.1eV以下であり、かつS1とT2のエネルギー準位差が0.05eV以下であり、さらにS1が局所励起状態である、請求項8~11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物を含有する、有機デバイス用材料。
【請求項14】
有機電界発光素子用材料、有機電界効果トランジスタ用材料または有機薄膜太陽電池用材料である、請求項13に記載の有機デバイス用材料。
【請求項15】
有機電界発光素子用の発光層用材料である、請求項14に記載の有機デバイス用材料。
【請求項16】
請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物を含む、有機電界発光素子、有機電界効果トランジスタ、または、有機薄膜太陽電池。
【請求項17】
陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置され、請求項15に記載の発光層用材料を含有する発光層を備える、有機電界発光素子。
【請求項18】
前記発光層が、下記式(H-1)で表される化合物を少なくとも1つ含有する、請求項17に記載の有機電界発光素子;
【化9】
式(H-1)中、L 1 は炭素数6~24のアリーレンである。
【請求項19】
請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物の少なくとも1つと、溶媒とを含む、発光層形成用組成物。
【請求項20】
前記溶媒として、沸点が150℃以上である有機溶剤を含む、請求項19に記載の発光層形成用組成物。
【請求項21】
前記溶媒が、前記化合物の少なくとも1つに対する良溶媒と貧溶媒とを含む混合溶媒であり、良溶媒の沸点が貧溶媒の沸点よりも低い、請求項19または20に記載の発光層形成用組成物。
【請求項22】
式(H-1)で表される化合物を少なくとも1つ含有する、請求項19~21のいずれか一項に記載の発光層形成用組成物;
【化9】
式(H-1)中、L 1 は炭素数6~24のアリーレンである。
【請求項23】
請求項17または18に記載の有機電界発光素子を備えた表示装置または照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造をアクセプターとして有する熱活性型遅延蛍光性の化合物、上記化合物を含む有機デバイス用材料、発光層形成用組成物、前記化合物を発光層に含む有機電界発光素子、有機電界効果トランジスタ、または、有機薄膜太陽電池、および前記有機電界発光素子を備えた表示装置および照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電界発光する発光素子を用いた表示装置は、省電力化や薄型化が可能なことから、種々研究され、さらに、有機材料からなる有機電界発光素子(有機EL素子)は、軽量化や大型化が容易なことから活発に検討されてきた。特に、光の三原色の1つである青色などの発光特性を有する有機材料の開発、および正孔、電子などの電荷輸送能を備えた有機材料の開発については、高分子化合物、低分子化合物を問わずこれまで活発に研究されてきた。
【0003】
有機EL素子は、陽極および陰極からなる一対の電極と、当該一対の電極間に配置され、有機化合物を含む一層または複数の層とからなる構造を有する。有機化合物を含む層には、発光層や、正孔、電子などの電荷を輸送または注入する電荷輸送/注入層などがあるが、これらの層に適当な種々の有機材料が開発されている。
【0004】
有機EL素子の発光機構としては、励起一重項状態からの発光を用いる蛍光発光および励起三重項状態からの発光を用いるりん光発光の主に2つがある。一般的な蛍光発光材料は、励起子利用効率が低く、およそ25%であり、三重項-三重項フュージョン(TTF:Triplet-Triplet Fusion、または、三重項-三重項消滅、TTA:Triplet-Triplet Annihilation)を用いても励起子利用効率は62.5%である。一方、りん光材料は、励起子利用効率が100%に達する場合もあるが、深い青色発光の実現が困難であり、加えて発光スペクトルの幅が広いため色純度が低いという問題がある。
【0005】
有機EL素子に用いられる化合物として、例えば特許文献1、または、非特許文献1~4に記載の化合物等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5669163号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Highly efficient organic light-emitting diodes from delayed fluorescence, Nature 2012, 492, 234-238
【文献】Donor Interlocked Molecular Design for Fluorescence-like Narrow Emission in Deep Blue Thermally Activated Delayed Fluorescent Emitters, Chemistry of Materials, 2016, 28 (15), pp 5400-5405
【文献】Highly efficient blue thermally activated delayed fluorescence emitters based on symmetrical and rigid oxygen-bridged boron acceptors, Nature Photonics, 2019, 13, 540-546 (https://doi.org/10.1038/s41566-019-0415-5)
【文献】Isomeric Bright Sky-Blue TADF Emitters Based on Bisacridine Decorated DBNA: Impact of Donor Locations on Luminescent and Electroluminescent Properties, Advanced Optical Materials. 2019, 1900130
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、九州大学安達千波矢教授によりドナー-アクセプター型(D-A型)熱活性型遅延蛍光(TADF: Thermally Assisting Delayed Fluorescence))機構が提案された(非特許文献1参照)。D-A型TADF化合物は、ドナー構造とアクセプター構造が直接またはπまたはσ結合を介して結合した構造を有しており、熱エネルギーを吸収して、励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差を起こし、その励起一重項状態から放射失活して蛍光(遅延蛍光)を放射しうる化合物である。こうしたTADF化合物を利用することで、三重項励起子のエネルギーも蛍光発光に有効利用することができるため、発光の励起子利用効率は100%に達するようになった。D-A型TADF化合物の特徴として、その構造に起因して色純度が低い幅広な発光スペクトルを与えるが、逆項間交差の速度が極めて速い。
【0009】
また、関西学院大学畠山教授により多重共鳴効果を利用したTADF活性な化合物の分子設計が提案されている(非特許文献3、および、特許文献1)。多重共鳴効果を利用した分子設計では、ホウ素(電子求引性)と窒素(電子供与性)を互いにo位に結合させる。それにより、それぞれが形成するHOMOおよびLUMOが強め合い、原子上に局在することで、HOMOおよびLUMOの分離とTADF性が得られている。形成される堅牢な平面構造により、吸収および発光のピークのストークスシフトが小さい、色純度の高い発光スペクトルが得られる。一方、逆項間交差の速度はD-A型TADF化合物に劣る。
【0010】
D-A型TADF化合物において、色純度の高い発光スペクトルは、構造変化および回転の制限されたD-A構造を利用することで実現できる(非特許文献2)。同様の発想で、ホウ素原子を有するアクセプター構造を利用した発光半値幅の狭い化合物が提案されており(特許文献B、非特許文献CおよびD)、発光半値幅の改善が行われた。一方で、同様のドナー構造を用いても、狭い発光半値幅、速い逆項間交差速度および青色発光が得られるわけではない(非特許文献4)。
【0011】
上記のように、狭い発光半値幅、高いTADF活性、青色発光の全ての実現は難しく、これらの実現のための部分構造の最適化に改善の余地があった。
【0012】
本発明は、有機EL素子等の有機デバイスに用いられる材料として、新規な化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、アクセプター構造およびドナー構造の新規な組み合わせを見出した。本発明は、このような知見に基づいて提案されたものであり、具体例としては、以下の構成を有する。
【0014】
[1] 下記式(i)で表される構造を少なくとも1つ有する化合物;
【化1】
式(i)中、
A環、B環およびC環は、それぞれ独立して、芳香環構造を表し、
A環、B環およびC環のうち少なくとも1つの環における少なくとも1つの環員原子が、式(D)で表される部分構造(D)と結合し、
Yは、B、P、P=O、P=SまたはSi-R’であり、
およびXは、それぞれ独立して、>O、>S、>N-R’、>C(-R’)または>Si(-R’)であり、
部分構造(D)において、Qは、単結合、>O,>S,>C(-R’)または>Si(-R’)であり、波線部は結合位置を示し、
B環に含まれる環員原子とC環に含まれる環員原子とがXで架橋し、B環の一部およびC環の一部ならびにYを含む6員環を形成してもよく、Xは、>O、>S、>N-R’、>C(-R’)または>Si(-R’)のいずれか1つであり、
部分構造(D)におけるR21~R28は、それぞれ独立して、水素、または、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、シアノもしくはハロゲンである置換基であり、これらの置換基のうち、隣り合う置換基は互いに結合し環構造を形成してもよく、これらの置換基における少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよく、
前記の、Si-R’、>N-R’、>C(-R’)および>Si(-R’)におけるR’は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルであり、
式(i)におけるA環、B環およびC環における、部分構造(D)、X、X、またはYと結合していない環員原子に結合する構造ならびに部分構造(D)におけるR21~R28は、全てが水素であることはなく、
式(i)で表される構造を少なくとも1つ有する化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲン、重水素、または部分構造(B)で置換されていてもよい。
【化2】
(部分構造(B)中、R40およびR41は、それぞれ独立してアルキルであり、互いに結合していてもよく、R40およびR41の合計炭素数は2~10であり、波線部は他の構造との結合部位である。)
【0015】
[2] 下記式(1)で表される、[1]に記載の化合物;
【化3】
式(1)中、
~R11における少なくとも1つは、式(D)で表される部分構造(D)であり、
Yは、B、P、P=O、P=SまたはSi-R’であり、
およびXは、それぞれ独立して、>O、>S、>N-R’、>C(-R’)または>Si(-R’)であり、
部分構造(D)ではないR~R11は、それぞれ独立して、水素、または、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、もしくはジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)である置換基であり、これらの置換基のうち、隣り合う置換基は互いに結合し環構造を形成してもよく、これらの置換基における少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよく、
およびRは>Xで架橋し、b環の一部およびc環の一部ならびにYを含む6員環を形成してよく、Xは、>O、>S、>N-R’、>C(-R’)または>Si(-R’)のいずれか1つであり、
前記の、Si-R’、>N-R’、>C(-R’)および>Si(-R’)におけるR’は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルであり、前記>C(―R’)および>Si(―R’)それぞれの2つのR’は、連結していてもよく、
式(1)における部分構造(D)ではないR~R11および部分構造(D)におけるR21~R28は、全てが水素であることはなく、
式(1)で表される化合物における少なくとも1つの水素がハロゲン、または重水素で置換されてもよい。
【0016】
[3] 式(1)において、
およびRよりなる群から選ばれた少なくとも1つが、部分構造(D)であり、
部分構造(D)ではないR~R11は、それぞれ独立して、水素、または、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、ジヘテロアリールアミノ(ただしヘテロアリールは炭素数2~12のヘテロアリール)、アリールヘテロアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリールであり、かつ、ヘテロアリールは炭素数2~12のヘテロアリールである)、炭素数1~12のアルキルもしくは炭素数3~20のシクロアルキルである置換基であり、これらの置換基のうち、隣り合う置換基は互いに結合し環構造を形成してもよく、これらにおける少なくとも1つの水素は炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、炭素数1~12のアルキルまたは炭素数3~20のシクロアルキルで置換されていてもよく、
およびRは>Xで架橋していてもよく、
部分構造(D)におけるR21~R28は、それぞれ独立して、水素、または、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、ジヘテロアリールアミノ(ただしヘテロアリールは炭素数2~12のヘテロアリール)、アリールヘテロアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリールであり、ヘテロアリールは炭素数2~12のヘテロアリール)、炭素数1~12のアルキル、炭素数3~20のシクロアルキル、シアノもしくはハロゲンである置換基であり、これらの置換基のうち、隣り合う置換基は互いに結合し環構造を形成してもよく、これらの置換基における少なくとも1つの水素は炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、炭素数1~12のアルキルまたは炭素数3~20のシクロアルキルで置換されていてもよく、
R’は、それぞれ独立して、炭素数6~20のアリール、炭素数2~15のヘテロアリール、炭素数1~20のアルキルまたは炭素数3~20のシクロアルキルである、[2]に記載の化合物。
【0017】
[4] 式(1)において、
が、部分構造(D)であり、
部分構造(D)ではないR~R11は、それぞれ独立して、水素、または、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、ジヘテロアリールアミノ(ただしヘテロアリールは炭素数2~12のヘテロアリール)、アリールヘテロアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール、ヘテロアリールは炭素数2~12のヘテロアリール)、アルキルの置換しない炭素数1~4のアルキルもしくは炭素数3~20のシクロアルキルである置換基であり、これらの置換基のうち、隣り合う置換基は互いに結合し環構造を形成してもよく、これらの置換基における少なくとも1つの水素は炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、炭素数1~12のアルキルまたは炭素数3~20のシクロアルキルで置換されていてもよく、
部分構造(D)におけるQが>C(-R’)、部分構造(D)における>C(-R’)におけるR’がメチル、かつ、部分構造(D)におけるR21~R28が水素である場合、式(1)におけるRおよびRは、それぞれ独立して、部分構造(D)、水素、または、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、ジヘテロアリールアミノ(ただしヘテロアリールは炭素数2~12のヘテロアリール)、アリールヘテロアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール、ヘテロアリールは炭素数2~12のヘテロアリール)、アルキルの置換しない炭素数1~3のアルキルもしくは炭素数3~20のシクロアルキルである置換基であり、これらの置換基のうち、隣り合う置換基は互いに結合し環構造を形成してもよく、これらの置換基における少なくとも1つの水素は炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、炭素数1~12のアルキルまたは炭素数3~20のシクロアルキルで置換されていてもよい、
[2]に記載の化合物。
【0018】
[5] 式(1)において、
、R、R、R、R10およびR11よりなる群から選ばれた少なくとも1つが、部分構造(D)であり、
部分構造(D)ではないR~R11は、それぞれ独立して、水素、または、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、ジヘテロアリールアミノ(ただしヘテロアリールは炭素数2~12のヘテロアリール)、アリールヘテロアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール、ヘテロアリールは炭素数2~12のヘテロアリール)、炭素数1~12のアルキルもしくは炭素数3~20のシクロアルキルである置換基であり、これらの置換基のうち、隣り合う置換基は互いに結合し環構造を形成してもよく、これらにおける少なくとも1つの水素は炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、炭素数1~12のアルキルまたは炭素数3~20のシクロアルキルで置換されていてもよく、
およびRは>Xで架橋していてもよく、
部分構造(D)におけるR21~R28は、それぞれ独立して、水素、または、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、ジヘテロアリールアミノ(ただしヘテロアリールは炭素数2~12のヘテロアリール)、アリールヘテロアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリールであり、かつ、ヘテロアリールは炭素数2~12のヘテロアリールである)、炭素数1~12のアルキル、炭素数3~20のシクロアルキル、シアノもしくはハロゲンである置換基であり、これらの置換基のうち、隣り合う置換基は互いに結合し環構造を形成してもよく、これらの置換基における少なくとも1つの水素は炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、炭素数1~12のアルキルまたは炭素数3~20のシクロアルキルで置換されていてもよく、
R’は、それぞれ独立して、炭素数6~20のアリール、炭素数2~15のヘテロアリール、炭素数1~20のアルキルまたは炭素数3~20のシクロアルキルである、
[2]に記載の化合物。
【0019】
[6] 式(1)において、XおよびXが、それぞれ独立して、>O、>S、>C(-R’)または>Si(-R’)である、[2]~[5]のいずれかに記載の化合物。
[7] 式(1)において、XおよびXが共に>Oである、[2]~[6]のいずれかに記載の化合物。
[8] 式(1)において、YがBである、[2]~[7]のいずれかに記載の化合物。
[9] 式(1)において、YがP=OまたはP=Sである、[2]~[7]のいずれかに記載の化合物。
[10] 式(1)において、YがSi-R’である、[2]~[7]のいずれかに記載の化合物。
[11] 式(1)において、RおよびRが架橋せず、環を形成しない、[2]~[10]のいずれかに記載の化合物。
[12] 式(1)において、RおよびRが>Xで架橋し、環を形成する、[2]~[10]のいずれかに記載の化合物。
[13] 式(1)において、部分構造(D)を1つ有する、[2]~[12]のいずれかに記載の化合物。
[14] 部分構造(D)におけるQが>Oまたは>Sである、[1]~[13]のいずれかに記載の化合物。
[15] 部分構造(D)におけるQが>C(-R)または>Si(-R)である、[1]~[13]のいずれかに記載の化合物。
【0020】
[16] 下記式のいずれかで表される化合物である、[2]に記載の化合物。
【化4】
(式中、Meはメチル、tBuはt-ブチルを表す。)
【0021】
[17]下記式(ii)で表される、[1]に記載の化合物;
【化5】
式(ii)中、
a環、b環、c環およびd環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、これらの環における少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、また隣接する2つの水素はアルキルで連結されて環を形成していてもよく、
およびZは、それぞれ独立して―CH=または-N=であり、―CH=における水素は置換されていてもよく、
~Xは、それぞれ独立して、OまたはN-Rであり、前記N-RのRはアリール、ヘテロアリールまたはアルキルであり、
a環、b環、c環、d環、およびZとZとを含む6員環からなる群より選択される少なくとも1つの環における少なくとも1つの環員原子は部分構造(D)と結合し、
部分構造(D)中、R21~R28は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、シアノ、またはハロゲンであり、また隣接するR21~R28は連結基により環を形成していてもよく、
部分構造(D)中のQは単結合、>O、>S、>C(―R’)または>Si(―R’)であり、前記>C(―R’)および>Si(―R’)のR’は、それぞれ独立して、水素、アルキルまたは、R’同士で連結していてもよいアリールであり、
部分構造(D)がa環とc環のみに1つずつ結合していて、かつQが単結合のとき、R24およびR28がともに水素になることはなく、
部分構造(D)がa環とc環のみに1つずつ結合していて、かつQがOのとき、XとXがともにOになることはなく、
部分構造(D)中の波線部は式(ii)で表される構造との結合部位を表し、
式(ii)で表される化合物における少なくとも1つの水素がハロゲン、重水素、または部分構造(B)で置換されていてもよい。
【0022】
[18] 下記式(4)で表される、[17]に記載の化合物;
【化6】
式(4)中、R~R14は、それぞれ独立して、水素、または、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、もしくはジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)である置換基であり、これらの置換基における少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよく、
~R14のうち隣接する2つが炭素数2~8のアルキルによって連結して環を形成していてもよく、
~Xは、それぞれ独立して、OまたはN-Rであり、前記N-RのRは炭素数6~20のアリール、炭素数2~15のヘテロアリール、炭素数1~20のアルキルまたは炭素数3~8のシクロアルキルであり、
式(4)におけるR~R14の少なくとも1つは式(D)で表される部分構造(D)であり、
部分構造(D)中、R21~R28は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、シアノ、またはハロゲンであり、
隣接するR21~R28は連結基により環を形成していてもよく、
部分構造(D)中のQは単結合、>O、>S、>C(―R’)または>Si(-R’)であり、前記>C(―R’)および>Si(―R’)のR’は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~8のアルキル、または連結していてもよい炭素数6~12のアリールであり、
部分構造(D)がa環およびc環のみに1つずつ結合していて、かつQが単結合のとき、R24およびR28がともに水素になることはなく、
ただし、部分構造(D)がa環およびc環のみに1つずつ結合していて、かつQがOのとき、XとXがともにOになることはなく、
式(4)で表される化合物における少なくとも1つの水素がハロゲン、重水素、または部分構造(B)で置換されていてもよい。
【0023】
[19] 式(4)において、R~R14は、それぞれ独立して、水素、または、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、炭素数1~12のアルキル、炭素数3~20のシクロアルキル、炭素数6~12のアリールオキシ、もしくはジアリールボリル(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)である置換基であり、これらの置換基における少なくとも1つの水素は、炭素数6~12のアリールまたは炭素数1~8のアルキルで置換されていてもよく、
~Xは、それぞれ独立して、>Oまたは>N-Rであり、前記>N-RのRは、炭素数6~12のアリールまたは炭素数1~8のアルキルであり、
部分構造(D)中、R21~R28は、それぞれ独立して、水素、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、炭素数1~12のアルキル、炭素数3~20のシクロアルキル、シアノ、またはハロゲンであり、部分構造(D)中のQは単結合、>O、>S、>C(―R’)または>Si(―R’)であり、前記>C(―R’)および>Si(―R’)のR’は、それぞれ独立して、水素または炭素数1~8のアルキルであり、
式(4)で表される化合物における少なくとも1つの水素がハロゲン、または重水素で置換されていてもよい、[18]に記載の化合物。
【0024】
[20] 式(4)において、R、R、R10およびR13のうち、1つまたは2つが部分構造(D)である、[18]または[19]に記載の化合物。
[21] 部分構造(D)中、R21~R28の少なくとも1つがフッ素である、[17]~[20]のいずれかに記載の化合物。
【0025】
[22] 部分構造(D)が、下記式(D-1)~式(D-3)のいずれかで表される構造である、[17]~[21]のいずれかに記載の化合物;
【化7】
式(D-1)において、R50はそれぞれ独立して、水素原子またはメチルを表し、Meはメチルであり、
式(D-2)において、Qは>O、>S、>C(CH、または>Si(CHを表す。
【0026】
[23] 下記式のいずれかで表される、[18]に記載の化合物。
【化8】



(式中、Meはメチルを表す。)
【0027】
[24] 部分構造(B)、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を構造中に含む、[17]~[23]のいずれかに記載の化合物。
[25] S1とT1のエネルギー準位差が0.1eV以下であり、かつS1とT2のエネルギー準位差が0.05eV以下であり、さらにS1が局所励起状態である、[17]~[24]のいずれかに記載の化合物。
[26] 式(i)で表される構造を含む繰り返し単位を有する高分子化合物である、[1]に記載の化合物。
[27] 無置換または置換基を有してもよいトリアリールアミン、無置換または置換基を有してもよいフルオレン、無置換または置換基を有してもよいアントラセン、無置換または置換基を有してもよいテトラセン、無置換または置換基を有してもよいトリアジン、無置換または置換基を有してもよいカルバゾール、無置換または置換基を有してもよいテトラフェニルシラン、無置換または置換基を有してもよいスピロフルオレン、無置換または置換基を有してもよいトリフェニルホスフィン、無置換または置換基を有してもよいジベンゾチオフェン、および、無置換または置換基を有してもよいジベンゾフランよりなる群から選ばれた少なくとも1種由来の構造を前記繰り返し単位内に、または前記繰り返し単位とは別の繰り返し単位内に含む、[26]に記載の化合物。
[28] [1]~[27]のいずれかに記載の化合物を含有する、有機デバイス用材料。
[29] 有機電界発光素子用材料、有機電界効果トランジスタ用材料または有機薄膜太陽電池用材料である、[28]に記載の有機デバイス用材料。
[30] 有機電界発光素子用の発光層用材料である、[29]に記載の有機デバイス用材料。
[31] [1]~[27]のいずれかに記載の化合物を含む、有機電界発光素子、有機電界効果トランジスタ、または、有機薄膜太陽電池。
[32] 陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置され、[30]に記載の発光層用材料を含有する発光層を備える、有機電界発光素子。
【0028】
[33] 前記発光層が、下記式(H1)、式(H2)、式(H3)、式(H4)、または式(H5)で表される化合物を少なくとも1つ含有する、または、下記(H1)、式(H2)、式(H3)、式(H4)、または式(H5)で表される化合物由来の構造を繰り返し単位とする高分子化合物を少なくとも1つ含有する、[32]に記載の有機電界発光素子;
【化9】
式(H1)中、Lは炭素数6~24のアリーレンであり、
式(H2)中、LおよびLは、それぞれ独立して、炭素数6~30のアリールまたは炭素数2~30のヘテロアリールであり、
上記各式で表される化合物における少なくとも1つの水素は、炭素数1~6のアルキル、シアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよく、
式(H3)中、Jは、>O、>S、>N-R’、>C(-R’)または>Si(-R’)であり、
Yは、単結合、>O、>S、>C(-R’)、または>Si(-R’)であり、
Zは、C-H、C-R’またはNであり、
式(H4)中、Zは、C-H、C-R’またはNであり、
前記、>N-R’、>C(-R’)、>Si(-R’)およびC-R’におけるR’は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルであり、
式(H5)中、
~R11は、それぞれ独立して、水素、または、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールへテロアリールアミノもしくはアルキルである置換基であり、これらの置換基における少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノまたはアルキルで置換されていてもよく、
~R11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノまたはアルキルで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノまたはアルキルで置換されていてもよく、
式(H5)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、ハロゲンまたは重水素で置換されてもよい。
【0029】
[34] 下記式(AD1)、(AD2)および(AD3)のいずれかで表される化合物を少なくとも一つ含有する、[32]または[33]に記載の有機電界発光素子;
【化10】
式(AD1)、(AD2)および(AD3)中、
Mは、それぞれ独立して、単結合、-O-、>N-Arおよび>CArの少なくとも一つであり、
Jは、それぞれ独立して、炭素数6~18のアリーレンであり、前記アリーレンは、フェニル、炭素数1~6のアルキルおよび炭素数3~12のシクロアルキルで置換されてもよく、
Qは、それぞれ独立して、=C(-H)-または=N-であり、
Arは、それぞれ独立して、水素、炭素数6~18のアリール、炭素数6~18のヘテロアリール、炭素数1~6のアルキルまたは炭素数3~12のシクロアルキルであり、前記アリールおよびヘテロアリールにおける少なくとも1つの水素は、フェニル、炭素数1~6のアルキルまたは炭素数3~12のシクロアルキルで置換されてもよく、
mは、1または2であり、
nは、2~(6-m)の整数であり、
上記各式で表される化合物における少なくとも1つの水素は、ハロゲン、または重水素で置換されていてもよい。
【0030】
[35] [1]~[27]のいずれかに記載の化合物の少なくとも1つと、溶媒とを含む、発光層形成用組成物。
[36] 前記溶媒として、沸点が150℃以上である有機溶剤を含む、[35]に記載の発光層形成用組成物。
[37] 前記溶媒が、前記化合物の少なくとも1つに対する良溶媒と貧溶媒とを含む混合溶媒であり、良溶媒の沸点が貧溶媒の沸点よりも低い、[35]または[36]に記載の発光層形成用組成物。
【0031】
[38] 式(H1)、式(H2)、式(H3)、式(H4)、または式(H5)で表される化合物を少なくとも1つ含有する、または、式(H1)、式(H2)、式(H3)、式(H4)、または式(H5)で表される化合物由来の構造の少なくとも1つを繰り返し単位とする高分子化合物を少なくとも1つ含有する、[35]~[37]のいずれかに記載の発光層形成用組成物;
【化11】
式(H1)中、Lは炭素数6~24のアリーレンであり、
式(H2)中、LおよびLは、それぞれ独立して、炭素数6~30のアリールまたは炭素数2~30のヘテロアリールであり、
上記各式で表される化合物における少なくとも1つの水素は、炭素数1~6のアルキル、シアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよく、
式(H3)中、Jは、>O、>S、>N-R’、>C(-R’)または>Si(-R’)であり、
Yは、単結合、>O,>S,>C(-R’)または>Si(-R’)であり、
Zは、C-H、C-R’またはNであり、
式(H4)中、Zは、C-H、C-R’またはNであり、
前記、>N-R’、>C(-R’)、>Si(-R’)およびC-R’におけるR’は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルであり、
式(H5)中、
~R11は、それぞれ独立して、水素、または、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールへテロアリールアミノもしくはアルキルである置換基であり、これらの置換基における少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノまたはアルキルで置換されていてもよく、
~R11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノまたはアルキルで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノまたはアルキルで置換されていてもよく、
式(H1)、式(H2)、式(H3)、式(H4)、または式(H5)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、ハロゲン、または重水素で置換されてもよい。
【0032】
[39] 陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置され、[35]~[38]のいずれかに記載の発光層形成用組成物から形成された発光層とを有する、有機電界発光素子。
[40] 前記陰極と該発光層との間に配置される電子輸送層および電子注入層よりなる群から選ばれた少なくとも1つの層を有し、該電子輸送層および電子注入層の少なくとも1つは、ボラン誘導体、ピリジン誘導体、フルオランテン誘導体、BO系誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ピリミジン誘導体、アリールニトリル誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、フェナントロリン誘導体およびキノリノール系金属錯体からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、[32]~[34]、および[39]のいずれかに記載の有機電界発光素子。
[41] 前記電子輸送層および電子注入層の少なくとも1つが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体および希土類金属の有機錯体よりなる群から選択される少なくとも1つをさらに含有する、[40]に記載の有機電界発光素子。
[42] [32]~[34]、および[39]~[41]のいずれかに記載の有機電界発光素子を備えた表示装置または照明装置。
【発明の効果】
【0033】
本発明により有機EL素子等の有機デバイスに用いられる材料として、新規な化合物が提供される。本発明の化合物は有機電界発光素子、有機電界効果トランジスタ、または、有機薄膜太陽電池などの有機デバイスの製造に用いることができる有機デバイス用材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本実施形態に係る有機EL素子を示す概略断面図である。
図2】置換基の部分的なHOMOおよび遅延蛍光寿命のプロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において構造式の説明における「水素」は「水素原子(H)」を意味する。
本明細書において、高分子化合物を説明する場合における特定の化合物由来の構造とは、当該化合物の構造の大部分を含み、かつ、高分子化合物の繰り返し単位となり得る構造である。例えば、当該化合物のいずれか1つの水素が重合性基に置換した構造を有するモノマーを重合して得られる高分子化合物における当該モノマー由来の構造単位や、その化合物のいずれか2つ以上の水素がそれぞれ独立に反応性基に置換した反応性化合物が異なる反応性基同士で結合して高分子化合物を形成した場合の当該反応性化合物由来の構造単位などが挙げられる。
本明細書において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0036】
本明細書において「熱活性型遅延蛍光体」(TADF化合物)とは、熱エネルギーを吸収して励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差を起こし、その励起一重項状態から放射失活して遅延蛍光を放射しうる化合物のことを意味する。ここで、「熱活性型遅延蛍光体」には、励起三重項状態から励起一重項状態への励起過程で高次三重項を経るものも含む。高次三重項を経て蛍光を放射する発光機構はFvHT(Fluorescence via Higher Triplet)機構と称されており、これについては、例えば、Durham大学 Monkmanらによる論文(NATURE COMMUNICATIONS,7:13680,DOI: 10.1038/ncomms13680)、産業技術総合研究所 細貝らによる論文(Hosokai et al., Sci. Adv. 2017;3: e1603282)、京都大学 佐藤らによる論文(Scientific Reports,7:4820, DOI:10.1038/s41598-017-05007-7)および、同じく京都大学 佐藤らによる学会発表(日本化学会第98春季年会、発表番号:2I4-15、DABNAを発光分子として用いた有機ELにおける高効率発光の機構、京都大学大学院工学研究科)などに記載されている。本発明では、対象化合物を含むサンプルについて、300Kで蛍光寿命を測定したとき、遅い蛍光成分が観測されたことをもって該対象化合物が「熱活性型遅延蛍光体」であると判定することとする。ここで、「遅い蛍光成分」とは、蛍光寿命が0.1μ秒以上であるもののことを言う。これに対して、基底一重項状態からの直接遷移により生じた励起一重項状態から放射される蛍光は、通常、蛍光寿命が0.1n秒以下である。以下の説明では、寿命が0.1n秒以下の蛍光を「速い蛍光成分」と言う。本発明で用いる「熱活性型遅延蛍光体」が放射する蛍光は、遅い蛍光成分とともに速い蛍光成分を含んでいてもよい。
蛍光寿命の測定は、例えば蛍光寿命測定装置(浜松ホトニクス社製、C11367-01)を用いて行うことができる。
【0037】
本明細書において、特に明記しない限り、「ES1」は、77Kにおける蛍光スペクトルの短波長側の変曲点を通る接線とベースラインとの交点より求められる励起一重項エネルギー準位を示し、「ET1」は、77Kにおける燐光スペクトルの短波長側の変曲点を通る接線とベースラインとの交点より求められる励起三重項エネルギー準位を示し、「ΔEST」は前記ES1からET1を引いたエネルギー差、すなわち、ES1-ET1で算出される値を意味する。ΔESTは0.20eV以下であり、0.15eV以下であることが好ましく、0.10eV以下であることがより好ましい。
【0038】
「蛍光体」とは、励起一重項状態から放射失活して蛍光を放射しうる化合物のことを意味する。蛍光体は、300Kで蛍光寿命を測定したとき、速い蛍光成分のみが観測される、通常の蛍光体であってもよいし、速い蛍光成分と遅い蛍光成分の両方が観測される遅延蛍光体であってもよい。蛍光体は、蛍光スペクトルのピーク短波長側の肩より求められる励起一重項エネルギー準位が、第1成分としてのホスト化合物、および、第2成分としての熱活性型遅延蛍光体よりも低いことが好ましい。
【0039】
本発明において、「エミッター」は、有機EL素子において、発光層中に含まれ、最終的に素子外へ取り出される光を発する化合物を示し、複数の化合物であっても、発光波長が異なっていてもかまわない。特に、後述する「TAF素子」(TADF Assisting Fluorescence素子)に用いられるエミッターを「エミッティングドーパント」と呼ぶ。本発明の化合物は、エミッターとして用いることができ、特にTAF素子中では、エミッティングドーパントまたは「アシスティングドーパント」として機能させることができる。「熱活性型遅延蛍光体」は、蛍光体の発光をアシストするアシスティングドーパントとして機能させることができる。特に、TAF素子中において、アシスティングドーパントは、ホストより受け取った電子および正孔を、アシスティングドーパント上で再結合に引き続き励起三重項エネルギーから励起一重項エネルギーへ逆交換交差させ、エミッティングドーパントへエネルギーを受け渡す。以下の説明では、熱活性型遅延蛍光体をアシスティングドーパントとして用いる有機電界発光素子を、「TAF素子」ということがある。TAF素子では、熱活性型遅延蛍光体での逆項間交差により励起三重項エネルギーが励起一重項エネルギーに変換されるため、蛍光体に励起一重項エネルギーを効率よく供給して発光をアシストすることができる。これにより、高い発光効率が得られる。
【0040】
本発明で用いるホスト、アシスティングドーパントおよびエミッティングドーパントは、そのエネルギー準位が下記式(a)~(c)の少なくともいずれかを満たすことが好ましく、全ての条件を満たすことがより好ましい。
|Ip(H)|≧|Ip(AD)| ・・・式(a)
式(a)において、Ip(H)は、ホスト化合物のイオン化ポテンシャルを表し、Ip(AD)は、アシスティングドーパントのイオン化ポテンシャルを表す。
|Eg(AD)|≧|Eg(ED)| ・・・式(b)
式(b)において、Eg(AD)は、アシスティングドーパントのイオン化ポテンシャルと電子親和力のエネルギー差を表し、Eg(ED)は、エミッティングドーパントのイオン化ポテンシャルと電子親和力のエネルギー差を表す。
ΔEST(H)≧ΔEST(AD) ・・・式(c)
式(c)において、ΔEST(H)は、ホスト化合物の励起一重項エネルギー準位と励起三重項エネルギー準位のエネルギー差を表し、ΔEST(AD)は、アシスティングドーパントの励起一重項エネルギー準位と励起三重項エネルギー準位のエネルギー差を表す。
【0041】
一方、エミッティングドーパントは、その蛍光スペクトルの440~590nmの範囲に、半値全幅FWHMが80nm以下である発光ピークを有するものであることが好ましい。青色発光素子の用途には450~475nmがより好ましく、455~465nmがさらに好ましい。緑色発光素子の用途には490~590nmがより好ましく、510~550nmがさらに好ましい。発光ピークの半値全幅FWHMが35nm以下であることは、発光の色純度が高いことを意味している。したがって、こうした蛍光体を用いることにより、色味が良好な有機発光素子を実現することができる。
【0042】
本明細書中において、イオン化ポテンシャル(Ip)は光電子収量分光(Photoelectron Yield Spectroscopy)によるイオン化ポテンシャル(Ip)を意味し、エネルギーギャップ(Eg)は紫外可視吸光分光により求められたスペクトルの最も長波長側の吸収ピークの接線とベースラインとの交点より求められた光学バンドギャップを意味し、電子親和力(Ea)はIpからEgを減ずることで求められる電子親和力を意味する。
【0043】
本明細書中では、各エネルギー準位を測定するための測定サンプルとして、対象化合物がホスト化合物またはアシスティングドーパントである場合には、ガラス基板上に形成した対象化合物の単独膜(Neat膜、厚さ:50nm)を使用し、対象化合物がエミッティングドーパントである場合には、ガラス基板上に形成した、対象化合物を分散させた不活性ポリマー膜(例えば、ポリメチルメタクリレート膜。他に、ポリスチレン、サイトップ、ゼオネックスなどを用いてよい。厚さ:10μm、対象化合物の濃度:1質量%)を使用する。対象化合物を分散させたポリメチルメタクリレート膜の膜厚については、吸収スペクトル、蛍光スペクトルおよび燐光スペクトルの測定に十分な強度が得られる膜厚であればよく、強度が弱い場合には厚く、強度が強い場合には薄くすればよい。励起光には、吸収スペクトルにおいて得られた吸収ピークの波長を使用し、蛍光スペクトルまたは燐光スペクトルに出現した発光ピークのうち、青色の発光の場合は400~500nmの範囲に、緑色の発光の場合は480~600nmの範囲に、赤色の場合は580~700nmの範囲にそれぞれ出現した発光ピークから得たデータを用いて各エネルギー準位を求めることとする。また、吸収ピークと発光ピークが近く、発光ピーク中に励起光が混合する場合には、より短波長側の吸収ピークや吸収肩を用いてもよい。
[1]蛍光スペクトルのピーク短波長側の接線とベースラインとの交点より求められる励起一重項エネルギー準位ES1
対象化合物を含む測定サンプルに、77Kで励起光を照射して蛍光スペクトルを観測する。その蛍光スペクトルに現れた発光ピークに対して、その短波長側の変曲点を通る接線をひき、その接線とベースラインとの交点の波長(BSh)[nm]から、下記式を用いて励起一重項エネルギー準位ES1を算出する。
S1 [eV]=1240/BSh
[2]燐光スペクトルのピーク短波長側の接線とベースラインとの交点より求められる励起三重項エネルギー準位ET1
対象化合物を含む測定サンプルに、77Kで励起光を照射して燐光スペクトルを観測する。その燐光スペクトルに現れた発光ピークに対して、その短波長側の変曲点を通る接線をひき、その接線とベースラインとの交点の波長(CSh)[nm]から、下記式を用いて励起三重項エネルギー準位ET1を算出する。
T1[eV]=1240/CSh
【0044】
ここで、D-A(ドナー-アクセプター)型TADF材料とMRE(Multi Resonance Effect、多重共鳴)型化合物では、分子の堅牢性により蛍光およびリン光スペクトルの発光幅が異なるために、極大発光波長が同じでもD-A型TADF化合物の方がMRE型化合物分子より分子の持つエネルギーに幅があると考えられる。TAF素子では各成分間でのエネルギー授受を正確に見積もり、構成を設計する必要があるために、励起一重項エネルギー準位および励起三重項エネルギー準位をスペクトルの短波長側より見積もる。
【0045】
(5)逆項間交差速度
逆項間交差速度は、励起三重項から励起一重項への逆項間交差の速度を示す。熱活性型遅延蛍光体の逆項間交差速度は、過渡蛍光分光測定により、Nat. Commun. 2015, 6, 8476.またはOrganic Electronics 2013, 14, 2721-2726に記載の方法を用いて算出することができ、具体的には、熱活性型遅延蛍光体の逆項間交差速度は10-1以上であり、好ましくは、10-1以上である。
【0046】
(6)発光速度
発光速度は、TADF過程を経ないで励起一重項から基底状態へ蛍光発光を経て遷移する速度を示す。熱活性型遅延蛍光体の発光速度は、逆項間交差速度と同様にNat. Commun. 2015, 6, 8476.またはOrganic Electronics 2013, 14, 2721-2726に記載の方法を用いて算出することができ、具体的には、熱活性型遅延蛍光体の発光速度は10-1以上であり、さらに好ましくは、10-1以上である。
以下において、本発明の化合物およびそれを用いた有機電界発光素子等について説明する。
【0047】
本明細書において、「部分的(な)」/「局在(した)」/「電荷移動遷移(した)」などの接頭語を有する、HOMO/LUMO、エネルギーギャップ、(最低)励起一重項エネルギー、および(最低/高次)励起三重項エネルギーなどの用語を用いて、本発明の化合物について説明する。これらの一部は、本発明の化合物を測定することで光学的または電気化学的に求められる値ではなく、分子軌道計算により求められる値であり、実測との相関はある(または、実測との相関があると推測できる)が、数値は一致しないことがある。分子構造の設計のしやすさおよび検証のしやすさのために、ドナー構造とアクセプター構造に分解して、計算、実測、説明を行う。したがって、アクセプターまたはドナーの部分構造について説明する場合は、アクセプター構造のみ、または、ドナー構造のみについて考えればよい。
【0048】
1.化合物
本発明の化合物は、下記式(i)で表される構造を、少なくとも1つ有する化合物である。
本発明の化合物は、アクセプター構造(A)として、式(i)で表される構造のうち、部分構造(D)を除いた構造を、ドナー構造として、部分構造(D)を、それぞれ有するといえる。
九州大学安達らにより、一連の論文(Nature 492, 234-238、Science Advances, 2017:3, e1603282、Science Advances 2018:4, eaao6910) で、高いTADF性を有する熱活性型遅延蛍光性化合物に必要な特徴が明らかにされている。本発明の化合物は、これらの論文で述べられている特徴、つまり、ドナー上に局在するHOMO、アクセプター上に局在するLUMOを有するとともに、小さなΔES1T1および局在した遷移を介したスピン反転過程を示すという特徴を有すると考えられる。
【0049】
【化12】
式(i)中、
A環、B環およびC環は、それぞれ独立して、芳香環構造を表し、
A環、B環およびC環のうち少なくとも1つの環における少なくとも1つの環員原子が、式(D)で表される部分構造(D)と結合し、
Yは、B、P、P=O、P=SまたはSi-R’であり、
およびXは、それぞれ独立して、>O、>S、>N-R’、>C(-R’)または>Si(-R’)であり、
部分構造(D)におけるQは、単結合、>O,>S,>C(-R’)または>Si(-R’)であり、波線部は結合位置を示し、
B環に含まれる環員原子とC環に含まれる環員原子とがXで架橋し、B環の一部およびC環の一部ならびにYを含む6員環を形成してもよく、Xは、>O、>S、>N-R’、>C(-R’)または>Si(-R’)のいずれか1つであり、
部分構造(D)におけるR21~R28は、それぞれ独立して、水素、または、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、シアノもしくはハロゲンである置換基であり、これらの置換基のうち、隣り合う置換基は互いに結合し環構造を形成してもよく、これらの置換基における少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよく、
前記のSi-R’、>N-R’、>C(-R’)および>Si(-R’)におけるR’は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルであり、
式(i)におけるA環、B環およびC環における、部分構造(D)、X、X、またはYと結合していない環員原子に結合する構造ならびに部分構造(D)におけるR21~R28は、全てが水素であることはなく、
式(i)で表される構造を少なくとも1つ有する化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
【0050】
本発明の化合物は、ヘテロ元素を少なくとも中心に有する堅牢な環状構造または多重共鳴効果を利用した構造をアクセプター構造(A)として、および窒素を有する構造をドナー構造(D)として有する化合物であり、D-A型熱活性型遅延蛍光体または多重共鳴効果型遅延蛍光体である。本発明の化合物においてはドナー(D)とアクセプター(A)の適切な選択により高次の励起三重項エネルギー準位と励起一重項エネルギー準位とを近づけることにより高いTADF活性が得られる。より具体的には、高い発光効率、早い遅延蛍光寿命、青色発光および短い発光半値幅を有する化合物であることが好ましい。本化合物は、例えば有機EL素子中で、エミッターまたはアシスティングドーパントとして発光層に含まれ、高い外部量子効率と長い寿命を実現しうると推測される。
【0051】
本発明の化合物の第一の態様は、式(i)で表される構造を単量体として有する化合物(好ましくは、式(1)で表される構造の単量体)であり、これは、強力なドナー構造とアクセプター構造の回転を抑制し、狭い発光半値幅を有する青色のCT発光と極めて高いTADF性を両立した化合物である。
また、本発明の化合物の第二の態様は、式(i)で表される構造の多量体である化合物(好ましくは、式(4)で表される化合物)であり、これは、アクセプター構造内でのLE状態(局所励起状態)を用いた極めて狭い発光半値幅と高いTADF性を両立した化合物である。なお、LE状態はLE性の遷移となるS0―S1遷移を示すときのS1を意味する。「LE性の遷移」は分子内で同一の部分構造上に存在するHOMO-LUMOの間での局所的なエネルギー遷移を表す。一般的に、「LE性の遷移」により得られる発光は半値幅の狭い発光ピークを一つ以上有するまたはそれらが重なったスペクトルであり、明確な振動ピークが見られることが多い。一方、CT状態(電荷移動状態)はCT性の遷移となるS0―S1遷移のときのS1を意味する。「CT性の遷移」は分子内で異なる部分構造上に空間的に離れて存在するHOMO-LUMOの間でのエネルギー遷移を表す。一般的に、「CT性の遷移」により得られる発光は半値幅の広い発光ピークを有するスペクトルであり、明確な振動ピークは見られない。
【0052】
本発明は2つの態様を含むが、いずれの場合においても、高次の励起三重項エネルギー(Tn)の制御が重要である。つまり、HOMO-n(部分構造D)準位をHOMO(主骨格)準位に近づけることでSnとTnを近接させることで、TADFによる励起三重項から励起一重項へのアップコンバージョンを速めることができる。より具体的には、ひとつめについては、T1(CT)→Tn(LE)→S1(CT)のアップコンバージョンを早めることで、もうひとつは、T1(LE)→Tn(CT)→S1(LE)のアップコンバージョンを早める。具体的には、S1-T1が0.20eV以下,S1-T2(あるいはS1-T3)が0.20eV以下が好ましく、S1-T1が0.15eV以下,S1-T2(あるいはS1-T3)が0.10eV以下がより好ましい。S1-T1が0.1eV以下,S1-T2(あるいはS1-T3)が0.05eV以下がさらに好ましい。
特に、S1とT1のエネルギー準位差(S1-T1)が0.1eV以下で、かつS1とT2のエネルギー準位差(S1-T2)が0.05eV以下であり、さらにS1が局所励起状態であることが好ましい。
【0053】
1-1.アクセプター構造
式(i)で表される構造中の部分構造(D)を除いたアクセプター構造は、大きな部分的なエネルギーギャップ(E(A))と高い部分的な最低三重項励起エネルギー(ET1(A))を有する。これは、ヘテロ元素を含む6員環は芳香属性が低いため、共役系の拡張に伴う部分的なエネルギーギャップの減少が抑制されること、ヘテロ元素の電子的な摂動により三重項励起状態(T1)の部分的なSOMO1およびSOMO2が局在化することが原因となっている。上記アクセプター構造は、高い部分的な最低励起三重項エネルギーを有しているために、熱活性型遅延蛍光材料のアクセプター構造として好ましい。
【0054】
式(i)中、A環、B環およびC環は、それぞれ独立して、芳香環構造を表す。芳香環構造は、式(i)において芳香環を構成する環員原子がY、ならびにXおよび/またはXと直接結合する芳香環を含む構造である。さらに、式(i)においては環員原子が部分構造(D)と結合する芳香環構造が少なくとも1つ含まれる。芳香環構造は、芳香族炭化水素環構造または芳香族複素環構造であることが好ましく、芳香族炭化水素環構造であることがより好ましい。
また、A環、B環およびC環は、それぞれ独立して、5員環または6員環の芳香環構造であることが好ましく、6員環の芳香環構造であることがより好ましい。
A環、B環およびC環の少なくとも1つが芳香族炭化水素環構造である場合、芳香族炭化水素環構造としては、ベンゼン環構造が好ましい。
A環、B環およびC環の少なくとも1つが芳香族複素環構造である場合、芳香族複素環構造における複素原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子またはセレン原子等が挙げられる。より具体的には、多重共鳴効果の増強の観点から、ピリジン環構造およびピリミジン環構造が好ましく、NがY(好ましくはB)の結合する炭素のm位にあるピリミジン環構造がより好ましい。言い換えると、ピリミジン環構造における一方のNを1位、他方のNを3位とした場合に、5位の炭素原子において式(i)におけるYと結合するピリミジン環構造がより好ましい。また、ピリジン環構造である場合、NがY(好ましくはB)の結合する炭素のm位にあるピリジン環がより好ましい。言い換えると、ピリジン環におけるNを1位した場合に、3位または5位の炭素原子において式(i)におけるYと結合するピリジン環構造がより好ましい。
A環、B環およびC環は、合成の容易さおよび化合物の安定性の観点から、いずれもベンゼン環構造であることが好ましい。
A環、B環およびC環のうち少なくとも1つの芳香環構造における少なくとも1つの環員原子が、部分構造(D)における波線部と結合する。
ここで、好ましい態様としては、A環における環員原子が部分構造(D)における波線部と結合する態様、B環またはC環における環員原子が部分構造(D)における波線部と結合する態様、B環およびC環それぞれにおける環員原子が部分構造(D)における波線部と結合する態様、等が挙げられる。
また、A環、B環およびC環は、それぞれ独立して、後述する第1置換基を有していてもよい。また、上記第1置換基における少なくとも1つの水素は、後述する第2置換基により置換されていてもよい。
【0055】
式(i)中、X、X、Y、部分構造(D)、第1置換基および第2置換基は、後述する式(1)中のX、X、Y、部分構造(D)、第1置換基および第2置換基と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0056】
1-1-1.単量体
式(i)で表される構造を少なくとも1つ有する化合物が式(i)で表される構造を1つ有する化合物(単量体)であるとき、A環、B環およびC環における、部分構造(D)と結合していない環員原子であって結合手を残している原子(炭素等)は、それぞれ独立して、水素、または、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、もしくはジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)である置換基と結合し、これらの置換基のうち、隣り合う置換基は互いに結合し環構造を形成してもよく、これらの置換基における少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよい。
【0057】
本発明の化合物の第一の態様の好ましい例として、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0058】
【化13】
【0059】
式(1)中、
~R11における少なくとも1つは、式(D)で表される部分構造(D)であり、
Yは、B、P、P=O、P=SまたはSi-R’であり、
およびXは、それぞれ独立して、>O、>S、>N-R’、>C(-R’)または>Si(-R’)であり、
部分構造(D)ではないR~R11は、それぞれ独立して、水素、または、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシもしくはジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)である置換基であり、これらの置換基のうち、隣り合う置換基は互いに結合し環構造を形成してもよく、これらの置換基における少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよく、
およびRは>Xで架橋し、b環の一部およびc環の一部ならびにYを含む6員環を形成してよく、Xは、>O、>S、>N-R’、>C(-R’)または>Si(-R’)のいずれか1つであり、
部分構造(D)におけるR21~R28は、それぞれ独立して、水素、または、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、シアノもしくはハロゲンである置換基であり、これらの置換基のうち、隣り合う置換基は互いに結合し環構造を形成してもよく、これらの置換基における少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよく、
前記のSi-R’、>N-R’、>C(-R’)、および>Si(-R’)におけるR’は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルであり、
式(1)における部分構造(D)ではないR~R11および部分構造(D)におけるR21~R28は、全てが水素であることはなく、
式(1)で表される化合物における少なくとも1つの水素がハロゲン、または重水素で置換されてもよい。
【0060】
本発明の化合物としてより深い青色の発光を得るためには、アクセプターにおける部分的なLUMOは浅く、部分的なHOMOは深く、部分的なエネルギーギャップは広いほうが好ましく、具体的な構造としては、Yは、B、P、P=O、P=SまたはSi-R’であり、B、P=O、P=SまたはSi-R’が好ましく、B、P=OまたはSi-R’がより好ましく、Bがさらに好ましく、XおよびXは、>O、>S、>N-R’、>C(-R’)または>Si(-R’)であり、>O、>S、>C(-R’)または>Si(-R’)が好ましく、>O、>C(-R’)または>Si(-R’)がより好ましく、共に>Oであることがさらに好ましい。
化合物の安定性、多重共鳴効果の増強、広い部分的なエネルギーギャップによる化合物の青色発光、合成の容易さおよび高いTADF活性の観点からは、YはBであることが好ましい。
非常に広いエネルギーギャップによる化合物の深青色発光および合成の容易さの観点からは、YはP=OまたはP=Sであることが好ましい。
化合物の安定性および広いエネルギーギャップによる青色発光の観点からは、YはSi-R’であることが好ましい。
【0061】
Yについては、本発明の化合物に求められる特性にあわせて、ドナー構造と組合せて適切に用いてよい。具体的な構造としては、式(1-B)、式(1-P)、式(1-H)、式(1-T)および式(1-V)が挙げられる。この場合は、X、X、および式(1)におけるYを有するナフトアントラセン構造である。
【0062】
【化14】
【0063】
また、RおよびRは>Xで架橋し、b環、c環およびホウ素含む6員環を形成してよい。この場合は、X、X、XおよびYを有するトリアンギュレン構造である。具体的な構造としては、式(1-BX3)、式(1-PX3)、式(1-HX3)、式(1-TX3)および式(1-VX3)が挙げられる。
ただし、合成の容易さおよび高いTADF性の観点からは、RおよびRが、架橋せず、環を形成しないことが好ましい。
ただし、化合物の安定性および広いエネルギーギャップの観点からは、RおよびRが、>Xで架橋し環を形成することが好ましい。
【0064】
【化15】
【0065】
ナフトアントラセン構造は、部分合成の容易さおよび対称性の低さに起因する凝集性の低さの点で好ましい。トリアンギュレン構造は、骨格の堅牢性および対称性の高さによる分子間相互作用の強さの点で好ましい。本発明においては、ドナー構造との組み合わせにより適切に用いてよい。
【0066】
およびXにおいては、本発明の化合物に求められる特性にあわせて、ドナー構造と組合せて適切に用いてよい。具体的な構造としては、式(1-O2)、式(1-OS)、式(1-OC)、式(1-OI)、式(1-ON)、式(1-S2)、式(1-SC)、式(1-SI)、式(1-SN)、式(1-C2)、式(1-CI)、式(1-CN)、式(1-I2)、式(1-IN)および式(1-N2)が挙げられる。部分的なエネルギーギャップの観点からは、XおよびXが、>Oを少なくとも1つ有する化合物が好ましい。合成の容易さの観点からは、XおよびXが、共に同じである化合物が好ましい。
【0067】
【化16】
【0068】
本発明の化合物はXを有しトリアンギュレン構造であってもよい。部分的なエネルギーギャップおよび合成の容易さの観点からは、X、X、およびXにおいて、>O、>S、>C(-R’)または>Si(-R’)を1つ以上有する化合物、>N-R’が2つ以下である化合物、および、X1~3が2つ以上同じである化合物が好ましく、合成の観点からは、X、X、およびXが全て同じである化合物がより好ましく、部分的なエネルギーギャップの観点からは、X、XおよびXにおいて、>O、>C(-R’)または>Si(-R’)を1つ以上有する化合物がより好ましく、>Oを1つ以上有する化合物がさらに好ましく、>Oを2つ以上有する化合物がいっそう好ましい。
【0069】
【化17】
【0070】
XおよびYの組合せとしては、広い部分的なエネルギーギャップの観点からは、XおよびXが、>O、>S、>C(-R’)または>Si(-R’)であり、かつ、Yが、B、P=OまたはSi-R’である化合物が好ましく、XおよびXまたはX、XおよびXが、>O、>C(-R’)または>Si(-R’)であり、かつ、Yが、B、P=OまたはSi-R’である化合物がより好ましく、XおよびXまたはX、XおよびXが、>Oまたは>C(-R’)であり、かつ、Yが、B、P=OまたはSi-R’である化合物がさらに好ましく、XおよびXが、>Oであり、かつ、Yが、B、P=OまたはSi-R’である化合物がいっそう好ましい。
化合物の安定性の観点からは、Yが、BまたはSi-R’である化合物が好ましく、XおよびXが、>O、>S、>C(-R’)または>Si(-R’)である化合物がより好ましく、XおよびXが、>O、>C(-R’)または>Si(-R’)である化合物がさらに好ましく、トリアンギュレン型化合物がいっそう好ましい。
化合物の合成のしやすさの観点からは、ナフトアントラセン型化合物であり、XおよびXが、>O、>N-R’、>C(-R’)または>Si(-R’)である化合物が好ましく、XおよびXが同じである化合物がより好ましく、XおよびXが共に、>Oである化合物がさらに好ましく、Yが、BまたはP=Oである化合物がいっそう好ましい。
化合物の遅延蛍光寿命および発光効率の観点からは、ナフトアントラセン型化合物が好ましい。
【0071】
【化18】
【0072】
【化19】
【0073】
【化20】
【0074】
【化21】
【0075】
【化22】
【0076】
【化23】
【0077】
およびX(および、Xが含まれる場合はX)において、>N-R’、>C(-R’)または>Si(-R’)のR’は、炭素数6~20のアリール、炭素数2~15のヘテロアリール、炭素数1~20のアルキルまたは炭素数3~20のシクロアルキルであり、具体的には、フェニル、ビフェニル、フルオレニル、ピリジル、ピラジル、トリアジル、ビピリジル、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、インデノカルバゾール、メチル、エチル、プロピル、ブチル、シクロヘキシル、アダマンチルが好ましく、フェニル、フルオレニル、メチルがより好ましい。また、置換基同士がスピロ構造を形成してもよい。また、>C(-R’)または>Si(-R’)における2つのR’は、同一であっても異なっていてもよい。
【0078】
Yにおいて、>Si-R’のR’は、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルであり、炭素数6~20のアリール、炭素数2~15のヘテロアリール、炭素数1~20のアルキルまたは炭素数3~20のシクロアルキルであることが好ましい。具体的には、フェニル、ビフェニル、フルオレニル、ピリジル、ピラジル、トリアジル、ビピリジル、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、インデノカルバゾール、メチル、エチル、プロピル、ブチル、シクロヘキシル、またはアダマンチルが好ましく、フェニルまたはメチルがより好ましい。
【0079】
式(1)における部分構造(D)の置換位置については、アクセプター構造の構造により異なるが、Yのp位に置換する場合にアクセプター構造(A)における部分的なLUMOへ大きな影響を与える。ナフトアントラセン型構造はトリアンギュレン型構造に比べて対称性が低く、置換位置によりアクセプター構造(A)のLUMOへ与える影響を調節することができるため好ましい。詳細には、ナフトアントラセン型構造への置換は、a環への置換は影響が大きく、b環およびc環への置換は影響が小さい。つまり、微調整のためには、部分構造(D)はR、R、R、R、RまたはR11への置換が好ましい。また、部分構造(D)とアクセプター構造(A)の成す二面角の観点からは、互いに直交することが好ましい。さらには、基底状態と励起状態の構造変化が小さい方が半値幅の狭い発光スペクトルが得られるために好ましく、面外振動を起こすb環およびc環よりa環に部分構造(D)を置換するほうが好ましい。
【0080】
式(1)において、R~R11は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、またはジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)(以上、第1置換基)であり、前記アリール、前記ヘテロアリール、および前記ジアリールアミノにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキル(以上、第2置換基)で置換されていてもよい。
【0081】
「アリール」(第1置換基)としては、例えば、炭素数6~30のアリールが挙げられ、炭素数6~24のアリールが好ましく、炭素数6~20のアリールがより好ましく、炭素数6~16のアリールがさらに好ましく、炭素数6~12のアリールが特に好ましく、炭素数6~10のアリールが最も好ましい。
【0082】
具体的なアリールとしては、例えば、単環系アリールであるフェニル、二環系アリールである(2-,3-,4-)ビフェニリル、縮合二環系アリールである(1-,2-)ナフチル、三環系アリールであるテルフェニリル(m-テルフェニル-2’-イル、m-テルフェニル-4’-イル、m-テルフェニル-5’-イル、o-テルフェニル-3’-イル、o-テルフェニル-4’-イル、p-テルフェニル-2’-イル、m-テルフェニル-2-イル、m-テルフェニル-3-イル、m-テルフェニル-4-イル、o-テルフェニル-2-イル、o-テルフェニル-3-イル、o-テルフェニル-4-イル、p-テルフェニル-2-イル、p-テルフェニル-3-イル、p-テルフェニル-4-イル)、縮合三環系アリールである、アセナフチレン-(1-,3-,4-,5-)イル、フルオレン-(1-,2-,3-,4-,9-)イル、フェナレン-(1-,2-)イル、(1-,2-,3-,4-,9-)フェナントリル、四環系アリールであるクアテルフェニリル(5’-フェニル-m-テルフェニル-2-イル、5’-フェニル-m-テルフェニル-3-イル、5’-フェニル-m-テルフェニル-4-イル、m-クアテルフェニリル)、縮合四環系アリールであるトリフェニレン-(1-,2-)イル、ピレン-(1-,2-,4-)イル、ナフタセン-(1-,2-,5-)イル、縮合五環系アリールであるペリレン-(1-,2-,3-)イル、ペンタセン-(1-,2-,5-,6-)イルなどが挙げられる。
【0083】
第1置換基としての「アリール」の上記説明は、第1置換基としての、ジアリールアミノにおける「アリール」、アリールオキシにおける「アリール」、ジアリールボリルにおける「アリール」、第2置換基としての、「アリール」に対しても同じく引用することができる。
【0084】
「ヘテロアリール」(第1置換基)としては、例えば、炭素数2~30のヘテロアリールが挙げられ、炭素数2~25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2~20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2~15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2~10のヘテロアリールが特に好ましい。また、ヘテロアリールとしては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などが挙げられる。
【0085】
具体的なヘテロアリールとしては、例えば、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、フラザニル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、ベンゾ[b]チエニル、ジベンゾチオフェニル、インドリル、イソインドリル、1H-インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H-ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、キナゾリル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェノキサチイニル、チアントレニル、インドリジニルなどが挙げられる。
【0086】
第1置換基としての「ヘテロアリール」の上記説明は、第2置換基としての「ヘテロアリール」に対しても同じく引用することができる。また、第2置換基としての「ヘテロアリール」には、当該ヘテロアリールにおける少なくとも1つの水素がフェニルなどのアリール(具体例は上述した基)やメチルなどのアルキル(具体例は後述する基)で置換された基も第2置換基としてのヘテロアリールに含まれる。その一例としては、第2置換基がカルバゾリルの場合には、9位における少なくとも1つの水素がフェニルなどのアリールやメチルなどのアルキルで置換されたカルバゾリルも第2置換基としてのヘテロアリールに含まれる。
【0087】
「アルキル」(第1置換基)としては、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1~24のアルキル(炭素数3~24の分岐鎖アルキル)が挙げられ、炭素数1~18のアルキル(炭素数3~18の分岐鎖アルキル)が好ましく、炭素数1~12のアルキル(炭素数3~12の分岐鎖アルキル)がより好ましく、炭素数1~6のアルキル(炭素数3~6の分岐鎖アルキル)がさらに好ましく、炭素数1~4のアルキル(炭素数3~4の分岐鎖アルキル)が特に好ましく、メチルが最も好ましい。
【0088】
具体的なアルキルとしては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t-ペンチル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、n-オクチル、t-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、2,6-ジメチル-4-ヘプチル、3,5,5-トリメチルヘキシル、n-デシル、n-ウンデシル、1-メチルデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、1-ヘキシルヘプチル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、n-エイコシルなどが挙げられる。
【0089】
第1置換基としての「アルキル」の上記説明は、第2置換基としての「アルキル」に対しても同じく引用することができる。第1置換基に対して第2置換基であるアルキルが置換する位置は特に限定されないが、第1置換基のa環、b環およびc環への結合位置(1位)を基準にして、2位または3位が好ましく、2位がより好ましい。
【0090】
「シクロアルキル」(第1置換基)としては、1つの環からなるシクロアルキル、複数の環からなるシクロアルキル、環内で共役しない二重結合を含むシクロアルキルおよび環外に分岐を含むシクロアルキルのいずれでもよく、例えば、炭素数3~12のシクロアルキルが挙げられ、炭素数5~10のシクロアルキルが好ましく、炭素数6~10のシクロアルキルがより好ましい。
【0091】
具体的なシクロアルキルとしては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、デカヒドロナフチル、アダマンチルなどが挙げられる。
【0092】
第1置換基としての「シクロアルキル」の上記説明は、第2置換基としての「シクロアルキル」に対しても同じく引用することができる。
【0093】
「アルコキシ」(第1置換基)としては、例えば、炭素数1~24のアルコキシ(炭素数3~24の分岐鎖のアルコキシ)が挙げられ、炭素数1~18のアルコキシ(炭素数3~18の分岐鎖のアルコキシ)が好ましく、炭素数1~12のアルコキシ(炭素数3~12の分岐鎖のアルコキシ)がより好ましく、炭素数1~6のアルコキシ(炭素数3~6の分岐鎖のアルコキシ)がさらに好ましく、炭素数1~4のアルコキシ(炭素数3~4の分岐鎖のアルコキシ)が特に好ましい。
【0094】
具体的なアルコキシとしては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシなどが挙げられる。
【0095】
また第1の置換基としての「ジアリールアミノ」、「ジヘテロアリールアミノ」、「アリールヘテロアリールアミノ」、「ジアリールボリル」、および「アリールオキシ」における「アリール」や「ヘテロアリール」の詳細は、上述した「アリール」や「ヘテロアリール」の説明を引用することができる。
【0096】
第1の置換基の「ジアリールアミノ」中の2つのアリールは単結合または連結基(例えば>C(-R)、>O、>Sまたは>N-R)を介して結合していてもよい。また、第1の置換基の「ジアリールボリル」中の2つのアリールは単結合または連結基(例えば>C(-R)、>O、>Sまたは>N-R)を介して結合していてもよい。ここで、>C(-R)および>N-RのRは、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはアリールオキシ(以上、第1置換基)であり、当該第1置換基にはさらにアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキル(以上、第2置換基)が置換していてもよく、これらの基の具体例としては、上述した第1置換基としてのアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはアリールオキシの説明を引用できる。
【0097】
第1の置換基としての「ジアルキルアミノ」のアルキルとしては上述した「アルキル」の説明を引用できる。
【0098】
式(1)において、R~R11のうちの隣接する基同士は結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはアリールオキシ(以上、第1置換基)で置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキル(以上、第2置換基)で置換されていてもよい。
【0099】
第1の置換基(第2の置換基で置換されているものを含む)は好ましくは以下の構造式で表される基であり、より好ましくは、メチル、ターシャリ-アルキル(t-ブチル、t-アミル、t-オクチルなど)、フェニル、o-トリル、p-トリル、2,4-キシリル、2,5-キシリル、2,6-キシリル、2,4,6-メシチル、ジフェニルアミノ、ジ-p-トリルアミノ、ビス(p-(t-ブチル)フェニル)アミノ、およびフェノキシであり、さらに好ましくは、メチル、t-ブチル、t-アミル、t-オクチル、フェニル、o-トリル、2,6-キシリル、2,4,6-メシチル、ジフェニルアミノ、ジ-p-トリルアミノ、およびビス(p-(t-ブチル)フェニル)アミノである。合成の容易さの観点からは、立体障害が大きい方が選択的な合成のために好ましく、具体的には、t-ブチル、t-アミル、t-オクチル、o-トリル、p-トリル、2,4-キシリル、2,5-キシリル、2,6-キシリル、2,4,6-メシチル、ジ-p-トリルアミノ、およびビス(p-(t-ブチル)フェニル)アミノが好ましい。
【0100】
下記構造式において、「Me」はメチル、「tBu」はt-ブチル、「tAm」はt-アミル、「tOct」はt-オクチル、*は結合位置を表す。
【0101】
【化24】
【0102】
【化25】
【0103】
【化26】
【0104】
1-1-2.多量体
本発明の化合物は、式(i)で表される構造を2以上有する多量体であってもよい。
式(i)で表される構造を2以上有する化合物は、アクセプター構造内でのLE性の遷移を用いた極めて狭い発光半値幅と高いTADF性を両立した化合物であることが好ましい。
式(i)で表される構造を2以上有する多量体としては、例えば、下記式(i-1)、(i-2-1)、(i-2-2)、式(i-3-1)、式(i-3-2)、または式(i-3-3)で表される化合物等が挙げられる。式(i-2-1)におけるC環などの2つの式(i)で表される構造で共有されている環においては、2つのYは互いにm位に結合する(共有する環がベンゼン環以外の環である場合、共有する環において一方のYが結合する環員原子を1位とした場合に、他方のYが結合する環員原子が3位である)ことが好ましい。X、Xについてもそれぞれ同様である。
【0105】
【化27】
【0106】
式(i-1)中、環A~環Cは、それぞれ独立して、芳香環構造を表し、A環、B環およびC環のうち少なくとも1つの環における少なくとも1つの環員原子が、上述の式(D)で表される部分構造(D)における波線部と結合し、Yは、それぞれ独立して、B、P、P=O、P=SまたはSi-R’であり、XおよびXは、それぞれ独立して、>O、>S、>N-R’、>C(-R’)または>Si(-R’)であり、Lは単結合またはn価の有機基を表し、nは2以上の整数を表す。
式(i-2-1)または式(i-2-2)中、環A~環Eは、それぞれ独立して、芳香環構造を表し、A環、B環、C環、D環およびE環のうち少なくとも1つの環における少なくとも1つの環員原子が、上述の式(D)で表される部分構造(D)における波線部と結合し、Yは、それぞれ独立して、B、P、P=O、P=SまたはSi-R’であり、XおよびXは、それぞれ独立して、>O、>S、>N-R’、>C(-R’)または>Si(-R’)である。
式(i-3-1)、式(i-3-2)または式(i-3-3)中、A環、B環、C環、D環、E環、F環、G環、H環、およびI環は、それぞれ独立して、芳香環構造を表し、A環、B環、C環、D環、E環、F環およびG環のうち少なくとも1つの環における少なくとも1つの環員原子が、上述の式(D)で表される部分構造(D)における波線部と結合し、Yは、それぞれ独立して、B、P、P=O、P=SまたはSi-R’であり、XおよびXは、それぞれ独立して、>O、>S、>N-R’、>C(-R’)または>Si(-R’)である。
式(i-1)中、A環~C環、X、X、およびYはそれぞれ独立して、式(i)中のA環~C環、X、X、およびYと同義であり、好ましい態様も同様である。
式(i-1)中、nは2以上の整数を表し、2~10の整数であることが好ましく、2~6の整数であることがより好ましく、2、3または4であることが更に好ましい。
式(i-1)中、Lは単結合またはn価の有機基を表し、n価の炭化水素基が好ましく、n価の脂肪族飽和炭化水素基またはn価の芳香族炭化水素基がより好ましい。また、Lが単結合の場合、nは2である。
式(i-2-1)または式(i-2-2)中、A環~E環、X、X、およびYはそれぞれ独立して、式(i)中のA環~C環、X、X、およびYと同義であり、好ましい態様も同様である。
式(i-3-1)、式(i-3-2)または式(i-3-3)中、A環~I環、X、X、およびYはそれぞれ独立して、式(i)中のA環~C環、X、X、およびYと同義であり、好ましい態様も同様である。
【0107】
アクセプター構造が多量体である本発明の化合物としては、下記式(ii)で表される化合物が好ましい例として挙げられる。
【化28】
【0108】
式(ii)中、
a環、b環、c環およびd環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、これらの環における少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、また隣接する2つの水素はアルキルで連結されて環を形成していてもよく、
およびZは、それぞれ独立して―CH=または-N=であり、―CH=における水素は置換されていてもよく、
~Xは、それぞれ独立して、OまたはN-Rであり、前記N-RのRはアリール、ヘテロアリールまたはアルキルであり、
a環、b環、c環、d環、およびZとZとを含む6員環からなる群より選択される少なくとも1つの環における少なくとも1つの環員原子は部分構造(D)と結合し、
a環~d環の環員原子、または、ZもしくはZに部分構造Dの波線部が直接結合し、
部分構造(D)中、R21~R28は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、シアノ、またはハロゲンであり、また隣接するR21~R28は連結基により環を形成していてもよく、
部分構造(D)中のQは単結合、>O,>S,>C(―R’)または>Si(―R’)であり、前記>C(―R’)および>Si(―R’)のR’は、それぞれ独立して、水素、アルキルまたは、R’同士で連結していてもよいアリールであり、
部分構造(D)がa環とc環のみに1つずつ結合していて、かつQが単結合のとき、R24およびR28がともに水素になることはなく、
部分構造(D)がa環とc環のみに1つずつ結合していて、かつQがOのとき、XとXがともにOになることはなく、
部分構造(D)中の波線部は式(ii)で表される構造との結合部位を表し、
式(ii)で表される化合物または構造における少なくとも1つの水素がハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
【0109】
式(ii)において、a環、b環、c環およびd環は、それぞれ独立して、アリール環であることが好ましい。
また、a環、b環、c環およびd環がヘテロアリール環である場合、ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子またはセレン原子等が挙げられる。
a環、b環、c環およびd環は、いずれも置換基を有していてもよいベンゼン環であることが好ましい。
また、a環、b環、c環およびd環は、上述の第1置換基を有してもよい。また、上記第1置換基における少なくとも1つの水素は、上述の第2置換基により置換されていてもよい。
【0110】
式(ii)において、ZおよびZは、それぞれ独立して―CH=または-N=であり、合成の容易さおよび化合物の安定性の観点からは、-CH=が好ましい。化合物の広いエネルギーギャップの観点からは、-N=が好ましい。
上記―CH=における水素は置換されていてもよく、置換基としては、部分構造(D)または上述の第1置換基が挙げられる。また、上記第1置換基における少なくとも1つの水素は、上述の第2置換基により置換されていてもよい。
【0111】
~Xは、それぞれ独立して、OまたはN-Rであり、狭い発光半値幅の観点からは、X~Xの少なくとも1つがNであることが好ましく、すべてがNであることがより好ましい。また、広いエネルギーギャップの観点からは、X~Xの少なくとも1つがOであることが好ましく、全てがOであることがより好ましい。
【0112】
式(ii)は少なくとも1つの式(D)で表される部分構造(D)を持ち、a環、b環、c環、d環、およびZとZとを含む6員環からなる群より選択される少なくとも1つの環における少なくとも1つの環員原子は部分構造(D)と結合している。式(ii)における部分構造Dの数は、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましい。昇華精製の温度の観点からは、部分構造Dは1であることが好ましい。また、部分構造(D)の結合する環は、NまたはOと結合した芳香族環であることが好ましく、Nと結合した芳香族環がより好ましい。良好なTADF性の観点からは、部分構造(D)の結合する環は、1つ以上のNと結合した芳香族環であることが好ましく、1つ以上のNかつ1つのBと結合した芳香族環であることがより好ましく、2つのNと1つのBと結合した芳香族環がさらに好ましい。凝集性の抑制の観点からは、部分構造(D)の結合する環は、b環またはd環であることが好ましい。
式(ii)における部分構造(D)は、a環、b環、c環およびd環の環員原子またはZ若しくはZにおける炭素原子と波線部で直接結合することが好ましい。
また、式(ii)において、複数の部分構造(D)を有する場合、同一の構造であっても、異なる構造であってもよい。
【0113】
式(ii)で表される化合物の好ましい例としては下記式(4)で表される化合物が挙げられる。
【化29】
【0114】
式(4)中、R~R14は、それぞれ独立して、水素、または、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシまたはジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)である置換基であり、これらの置換基における少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよく、またR~R14のうち隣接する2つが炭素数2~8のアルキルによって連結して環を形成していてもよく、
~Xは、それぞれ独立して、OまたはN-Rであり、前記N-RのRは炭素数6~20のアリール、炭素数2~15のヘテロアリール、炭素数1~20のアルキルまたは炭素数3~8のシクロアルキルであり、
式(4)におけるR~R14の少なくとも1つは式(D)で表される部分構造(D)であり、
部分構造(D)中、R21~R28は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、シアノ、またはハロゲンであり、
隣接するR21~R28は連結基により環を形成していてもよく、
部分構造(D)中のQは単結合、>O,>S,>C(―R’)または>Si(-R’)であり、前記>C(―R’)および>Si(―R’)のR’は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~8のアルキル、または連結していてもよい炭素数6~12のアリールであり、
ただし、部分構造(D)がa環とc環のみに1つずつ結合していて、かつQが単結合のとき、R24およびR28がともに水素になることはなく、
部分構造(D)がa環とc環のみに1つずつ結合していて、かつQがOのとき、XとXがともにOになることはなく、
式(4)で表される化合物または構造における少なくとも1つの水素がハロゲン、または重水素で置換されていてもよい。
【0115】
式(4)中、X~Xは上述の式(ii)におけるX~Xと同義であり、好ましい態様も同様である。
【0116】
式(4)中、R~R14は、それぞれ独立して、水素、または、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシまたはジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)である置換基であり、具体的には、前記「第1置換基」の記載に準ずる。また、前記「第1置換基」において、隣り合う置換基は互いに結合し環構造を形成してもよい。また、「第1置換基」おける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、またはアルキルで置換されていてもよく、「第1置換基」に結合する置換基は前記「第2置換基」の記載に準ずる。
【0117】
式(4)において、R~R14は、それぞれ独立して、水素、または、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、炭素数1~12のアルキル、炭素数3~20のシクロアルキル、炭素数6~12のアリールオキシもしくはジアリールボリル(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)である置換基であることが好ましい。これらの置換基における少なくとも1つの水素は、炭素数6~12のアリールまたは炭素数1~8のアルキルで置換されていてもよい。
式(4)において、X~Xは、それぞれ独立して、>Oまたは>N-Rであり、前記>N-RのRは、炭素数6~12のアリールまたは炭素数1~8のアルキルであることが好ましい。
式(4)において、部分構造(D)中、R21~R28は、それぞれ独立して、水素、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、炭素数1~12のアルキル、炭素数3~20のシクロアルキル、シアノ、またはハロゲンであることが好ましく、部分構造(D)中のQは単結合、>O,>S,>C(―R’)および>Si(―R’)であり、前記>C(―R’)および>Si(―R’)のR’は、それぞれ独立して、水素または炭素数1~8のアルキルであることが好ましい。
【0118】
良好なTADF活性の観点から、前記式(4)において、R,R,R10およびR13のうちの1つまたは2つが部分構造(D)であることが好ましい。昇華精製の温度の観点からは、部分構造(D)は1であることが好ましい。また、部分構造(D)の結合する環は、NまたはOと結合した芳香族環であることが好ましく、Nと結合した芳香族環がより好ましい。良好なTADF性の観点からは、部分構造(D)の結合する環は、1つ以上のNと結合した芳香族環であることが好ましく、1つ以上のNかつ1つのBと結合した芳香族環であることがより好ましく、2つのNと1つのBと結合した芳香族環がさらに好ましい。凝集性の抑制の観点からは、部分構造(D)の結合する環は、b環またはd環であることが好ましい。
【0119】
アクセプター構造が、多量体である場合、以下の式(4-Y2X4-0000)で表される部分構造であることが特に好ましく挙げられる。
【化30】
【0120】
多量体である場合、YはBが好ましく、Bのとき以下の式(4-B2X4-0000)で表される部分構造で表される。
【化31】
【0121】
Xは、それぞれ独立して、OまたはN-Rであり、狭い発光半値幅の観点からは、Xは少なくとも1つがNであることが好ましく、3つがNであることがより好ましく、すべてがNであることがさらに好ましい。また、広いエネルギーギャップの観点からは、Xは少なくとも1つがOであることが好ましく、全てがOであることがより好ましい。
【0122】
【化32】
【0123】
また、式(4)で表されるアクセプター構造(A)における部分構造(D)の置換位置としては、Bのp位が好ましい。合成の容易さの観点からは、中心のベンゼン環とY(ここではB)との結合に対して線対称であるほうが好ましく、同様の観点から、分子量が小さい方が好ましい。具体的には、式(4-B2X4-04W)、式(4-B2X4-04W/07W)、式(4-B2X4-04W/09W)、式(4-B2X4-04W/07W/09W)および式(4-B2X4-04W/07W/09W/13W)が好ましく、式(4-B2X4-04W)、式(4-B2X4-04W/07W)および式(4-B2X4-04W/09W)がより好ましい。さらに昇華精製の温度の鑑定からは、式(4-B2X4-04W)、式(4-B2X4-07W)、式(4-B2X4-04W/07W)および式(4-B2X4-04W/09W)が好ましく、式(4-B2X4-04W)および式(4-B2X4-07W)がより好ましい。一方、良好なTADF性の観点からは、部分構造(D)はBのp位かつ2つのXのm位であることが好ましく、式(4-B2X4-04W)、式(4-B2X4-04W/07W)、式(4-B2X4-04W/09W)、式(4-B2X4-04W/07W/09W)および式(4-B2X4-04W/07W/09W/13W)が好ましく、式(4-B2X4-04W/09W)がより好ましい。ここでは、部分構造(D)をWで記載する。
【0124】
【化33】
【0125】
式(4)で表されるアクセプター構造(A)において、部分構造(D)以外の置換基は、アクセプター構造(A)のエネルギーの調整に重要な役割を担う。部分構造(D)を1つだけ有する場合、以下に記載の構造が挙げられ、部分構造(D)以外の置換基は、1~4個有することが好ましく、1~3個有することがより好ましく、1または2個有することがさらに好ましい。合成の容易さおよび昇華精製の温度の観点からは1個が好ましい。ここでは、部分構造(D)以外の置換基をVで記載する。
【0126】
【化34】
【0127】
【化35】
【0128】
【化36】
【0129】
式(4)で表されるアクセプター構造(A)において、部分構造(D)以外の置換基は、アクセプター構造(A)のエネルギーの調整に重要な役割を担う。部分構造(D)以外の置換基は、後述の第1置換基が好ましい。より具体的には、アクセプター構造(A)のHOMOを調節し、ドナー構造(D)の高次の励起三重項エネルギーと近づけることができればよく、部分構造(D)以外の置換基の部分的なエネルギーギャップの観点から、無置換または置換基を有してもよいフェニル、無置換または置換基を有してもよいピリジン、無置換または置換基を有してもよいジフェニルアミン、無置換または置換基を有してもよい炭素数1~12のアルキル、無置換または置換基を有してもよい炭素数3~12のシクロアルキルが好ましく、フェニル、トリル、キシリル、メシチル、ピリジル、メチルピリジル、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルがより好ましい。合成の容易さの観点から、フェニル、トリル、キシリル、メシチル、メチル、ブチル、シクロヘキシルが好ましい。
【0130】
1-2.ドナー構造(部分構造(D))
【化37】
【0131】
部分構造(D)におけるQは、単結合、>O、>S、>C(-R’)または>Si(-R’)であり、部分構造(D)における部分的なエネルギーギャップの観点から、>O、>Sまたは>C(-R’)が好ましく、>Oまたは>Sがより好ましい。また、アクセプター構造(A)との立体障害と成す二面角の観点からは、>O、>S、>C(-R’)または>Si(-R’)が好ましく、>C(-R’)または>Si(-R’)がより好ましい。
【0132】
部分構造(D)におけるR21~R28は、それぞれ独立して、水素、または、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、シアノもしくはハロゲンである置換基であり、具体的には、前記「第1置換基」の記載に準ずる。上記ジアリールアミノはアリール同士が架橋されてカルバゾール環構造等の環構造を形成してもよい。また、前記「第1置換基」において、隣り合う置換基は互いに結合し環構造を形成してもよい。また、「第1置換基」おける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよく、「第1置換基」に結合する置換基は前記「第2置換基」の記載に準ずる。
【0133】
また、部分構造(D)における、>N-R’、>C(-R’)および>Si(-R’)におけるR’は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルであり、前記「第1置換基」に準ずる。
【0134】
部分構造(D)においてQが単結合であるときは、R24およびR28はともに水素ではないことが好ましく、いずれも水素ではないことがより好ましく、いずれもアルキルであることがさらに好ましく、いずれもメチルであることが特に好ましい。
【0135】
部分構造(D)におけるQが、>O、>S、>C(-R’)または>Si(-R’)である場合、以下のように記載できる。
【0136】
【化38】
【0137】
また、部分構造(D)とアクセプター構造(A)との二面角が大きいほうが、本発明の化合物のHOMO/LUMOの分離の観点から好ましく、R25およびR24に置換基を有するほうが好ましい。また、HOMOのエネルギーの制御の観点から、R27および/またはR22に置換基を有するほうが好ましい。一方、合成の観点からは分子量が小さい方が好ましく、R21~R28は水素が好ましい。以上より、以下に記載の構造が好ましい。以下本明細書で例示する式中、Meはメチル、tBuはターシャリーブチルを示す。
【0138】
【化39】
【0139】
【化40】
【0140】
【化41】
【0141】
【化42】
【0142】
【化43】
【0143】
【化44】
【0144】
【化45】
【0145】
【化46】
【0146】
【化47】
【0147】
また、前記部分構造(D)はフッ素で置換されてもよい。部分構造(D)中、R21~R28の少なくとも1つがフッ素であることが好ましい。
【0148】
これらの中でも、前記部分構造(D)は、下記式(D-1)~式(D-3)のいずれかで表される構造であることが好ましい。
【化48】
式(D-1)において、R50はそれぞれ独立して、水素原子またはメチルを表す。また、Meはメチルである。
式(D-2)において、Qは>O、>S、>C(CH、または>Si(CHを表す。
【0149】
また、式(i)で表される構造単位、または、式(1)で表される化合物は、部分構造(D)を1つのみ有していてもよく、2以上有していてもよいが、合成の容易さの観点から、B環とC環とが架橋せず(RおよびRが架橋せず)環を形成しない場合は、部分構造(D)を2つまたは3つ有することが好ましく、RおよびRが架橋し環を形成する場合は、部分構造(D)を3つ有することが好ましく、昇華精製の温度およびTgの高さの観点からは、1つのみ有することが好ましい。
【0150】
1-3.アクセプター構造(A)およびドナー構造(部分構造(D))を有する本発明の化合物が有する特性
本発明の化合物は、式(1)で表されるアクセプター構造(A)が少なくとも1つの部分構造(D)を有する化合物であって、アクセプター構造(A)と部分構造(D)の部分的なHOMOおよびLUMOである、それぞれ、HOMO(A)、LUMO(A)、HOMO(D)およびLUMO(D)は、HOMO(A)はHOMO(D)より深く、LUMO(A)はLUMO(D)より深い。また、高いTADF活性のために、高次の励起三重項エネルギー(ETn)が最低励起一重項エネルギー(ES1)と近い必要があるほうが好ましい。実際の化合物における、高次の励起三重項エネルギーの実測はほとんど困難であり、実際には、分子軌道計算による値を用いるかモデル化合物を用いる必要がある。ETnは、ES1-0.01eV~ES1-1.00eVが好ましく、ES1-0.01eV~ES1-0.20eVがより好ましく、ES1-0.01eV~ES1-0.10eVがさらに好ましい。
【0151】
式(1)において、RおよびRよりなる群から選ばれた少なくとも1つが、部分構造(D)であることが好ましく、
およびRよりなる群から選ばれた少なくとも1つが、部分構造(D)であり、
部分構造(D)ではないR~R11は、それぞれ独立して、水素、または、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、ジヘテロアリールアミノ(ただしヘテロアリールは炭素数2~12のヘテロアリール)、アリールヘテロアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリールであり、かつ、ヘテロアリールは炭素数2~12のヘテロアリールである)、炭素数1~12のアルキルもしくは炭素数3~20のシクロアルキルである置換基であり、これらの置換基のうち、隣り合う置換基は互いに結合し環構造を形成してもよく、これらにおける少なくとも1つの水素は炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、炭素数1~12のアルキルまたは炭素数3~20のシクロアルキルで置換されていてもよく、
およびRは、>O、>S、>N-R’、>C(-R’)または>Si(-R’)で互いに結合し、b環、c環およびYを含む6員環を形成してもよく、
部分構造(D)におけるR21~R28は、それぞれ独立して、水素、または、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、ジヘテロアリールアミノ(ただしヘテロアリールは炭素数2~12のヘテロアリール)、アリールヘテロアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリールであり、ヘテロアリールは炭素数2~12のヘテロアリール)、炭素数1~12のアルキル、炭素数3~20のシクロアルキル、シアノもしくはハロゲンである置換基であり、これらの置換基のうち、隣り合う置換基は互いに結合し環構造を形成してもよく、これらの置換基における少なくとも1つの水素は炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、炭素数1~12のアルキルまたは炭素数3~20のシクロアルキルで置換されていてもよく、
前記、>N-R’、>C(-R’)および>Si(-R’)におけるR’は、それぞれ独立して、炭素数6~20のアリール、炭素数2~15のヘテロアリール、炭素数1~20のアルキルまたは炭素数3~20のシクロアルキルであるという態様がより好ましい。
【0152】
式(1)において、
が、部分構造(D)であることが好ましく、
が、部分構造(D)であり、
部分構造(D)ではないR~R11は、それぞれ独立して、水素、または、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、ジヘテロアリールアミノ(ただしヘテロアリールは炭素数2~12のヘテロアリール)、アリールヘテロアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール、ヘテロアリールは炭素数2~12のヘテロアリール)、アルキルの置換しない炭素数1~4のアルキルもしくは炭素数3~20のシクロアルキルである置換基であり、これらの置換基のうち、隣り合う置換基は互いに結合し環構造を形成してもよく、これらの置換基における少なくとも1つの水素は炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、炭素数1~12のアルキルまたは炭素数3~20のシクロアルキルで置換されていてもよく、
部分構造(D)におけるQが>C(-R’)、部分構造(D)における>C(-R’)におけるR’がメチル、かつ、部分構造(D)におけるR21~R28が水素である場合、式(1)におけるRおよびRは、それぞれ独立して、部分構造(D)、水素、または、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、ジヘテロアリールアミノ(ただしヘテロアリールは炭素数2~12のヘテロアリール)、アリールヘテロアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール、ヘテロアリールは炭素数2~12のヘテロアリール)、アルキルの置換しない炭素数1~3のアルキルもしくは炭素数3~20のシクロアルキルである置換基であり、これらの置換基のうち、隣り合う置換基は互いに結合し環構造を形成してもよく、これらの置換基における少なくとも1つの水素は炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、炭素数1~12のアルキルまたは炭素数3~20のシクロアルキルで置換されていてもよいという態様がより好ましい。
【0153】
式(1)において、
、R、R、R、R10およびR11よりなる群から選ばれた少なくとも1つが、部分構造(D)であることが好ましく、
、R、R、R、R10およびR11よりなる群から選ばれた少なくとも1つが、部分構造(D)であり、
部分構造(D)ではないR~R11は、それぞれ独立して、水素、または、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、ジヘテロアリールアミノ(ただしヘテロアリールは炭素数2~12のヘテロアリール)、アリールヘテロアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール、ヘテロアリールは炭素数2~12のヘテロアリール)、炭素数1~12のアルキルもしくは炭素数3~20のシクロアルキルである置換基であり、これらの置換基のうち、隣り合う置換基は互いに結合し環構造を形成してもよく、これらにおける少なくとも1つの水素は炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、炭素数1~12のアルキルまたは炭素数3~20のシクロアルキルで置換されていてもよく、
およびRは>Xで架橋し、b環、c環およびYを含む6員環を形成してよく、Xは、>O、>S、>N-R’、>C(-R’)または>Si(-R’)のいずれか1つであり、部分構造(D)におけるR21~R28は、それぞれ独立して、水素、または、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリール)、ジヘテロアリールアミノ(ただしヘテロアリールは炭素数2~12のヘテロアリール)、アリールヘテロアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6~12のアリールであり、かつ、ヘテロアリールは炭素数2~12のヘテロアリールである)、炭素数1~12のアルキル、炭素数3~20のシクロアルキル、シアノもしくはハロゲンである置換基であり、これらの置換基のうち、隣り合う置換基は互いに結合し環構造を形成してもよく、これらの置換基における少なくとも1つの水素は炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、炭素数1~12のアルキルまたは炭素数3~20のシクロアルキルで置換されていてもよく、
前記、>N-R’、>C(-R’)および>Si(-R’)におけるR’は、それぞれ独立して、炭素数6~20のアリール、炭素数2~15のヘテロアリール、炭素数1~20のアルキルまたは炭素数3~20のシクロアルキルである態様がより好ましい。
【0154】
本発明の化合物は、下記式(1-A-1)~(1-A-4)のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
【0155】
【化49】
【0156】
また、式(ii)で表される構造を含む化合物は、下記式(4-1A)~式(4-1D)のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
【化50】
【0157】
式(i)で表される構造を少なくとも1つ有する化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲン、重水素、または部分構造(B)で置換されていてもよい。
【化51】
上記部分構造(B)中、R40およびR41は、それぞれ独立してアルキルであり、R40およびR41は互いに結合していてもよく、R40およびR41の合計炭素数は2~10であり、波線部は他の構造との結合部位である。
特に、式(ii)で表される化合物の、少なくとも1つの水素が、部分構造(B)、塩素、臭素、またはヨウ素により置換された化合物は、本発明の化合物として好適に用いられる。
【0158】
以下に本発明の化合物を列挙するが、本発明は、これらの具体例により限定されるものではない。
【0159】
【化52】
【0160】
【化53】
【0161】
【化54】
【0162】
【化55】
【0163】
【化56】
【0164】
【化57】
【0165】
【化58】
【0166】
【化59】
【0167】
【化60】
【0168】
【化61】
【0169】
【化62】
【0170】
【化63】
【0171】
【化64】
【0172】
【化65】
【0173】
【化66】
【0174】
【化67】
【0175】
【化68】
【0176】
【化69】
【0177】
【化70】
【0178】
【化71】
【0179】
【化72】
【0180】
【化73】
【0181】
【化74】
【0182】
【化75】
【0183】
【化76】
【0184】
【化77】
【0185】
【化78】
【0186】
【化79】
【0187】
【化80】
【0188】
【化81】
【0189】
【化82】
【0190】
【化83】
【0191】
【化84】
【0192】
【化85】
【0193】
【化86】
【0194】
【化87】
【0195】
【化88】
【0196】
【化89】
【0197】
【化90】
【0198】
【化91】
【0199】
【化92】
【0200】
【化93】
【0201】
【化94】
【0202】
【化95】
【0203】
【化96】
【0204】
【化97】
【0205】
【化98】
【0206】
【化99】
【0207】
【化100】
【0208】
【化101】
【0209】
【化102】
【0210】
【化103】
【0211】
【化104】
【0212】
【化105】
【0213】
【化106】
【0214】
【化107】
【0215】
【化108】
【0216】
【化109】
【0217】
【化110】
【0218】
【化111】
【0219】
【化112】
【0220】
【化113】
【0221】
【化114】
【0222】
【化115】
【0223】
【化116】
【0224】
【化117】
【0225】
【化118】
【0226】
【化119】
【0227】
【化120】
【0228】
【化121】
【0229】
【化122】
【0230】
【化123】
【0231】
【化124】
【0232】
【化125】
【0233】
【化126】
【0234】
【化127】
【0235】
【化128】
【0236】
【化129】
【0237】
【化130】
【0238】
【化131】
【0239】
【化132】
【0240】
【化133】
【0241】
【化134】
【0242】
【化135】
【0243】
【化136】
【0244】
【化137】
【0245】
【化138】
【0246】
【化139】
【0247】
【化140】
【0248】
【化141】
【0249】
【化142】
【0250】
【化143】
【0251】
【化144】
【0252】
【化145】
【0253】
【化146】
【0254】
【化147】
【0255】
【化148】
【0256】
【化149】
【0257】
【化150】
【0258】
【化151】
【0259】
【化152】
【0260】
【化153】
【0261】
【化154】
【0262】
【化155】
【0263】
【化156】
【0264】
【化157】
【0265】
【化158】
【0266】
【化159】
【0267】
【化160】
【0268】
【化161】
【0269】
【化162】
【0270】
【化163】
【0271】
【化164】
【0272】
【化165】
【0273】
【化166】
【0274】
【化167】
【0275】
【化168】
【0276】
【化169】
【0277】
【化170】
【0278】
【化171】
【0279】
【化172】
【0280】
【化173】
【0281】
【化174】
【0282】
【化175】
【0283】
【化176】
【0284】
【化177】
【0285】
【化178】
【0286】
【化179】
【0287】
【化180】
【0288】
【化181】
【0289】
【化182】
【0290】
【化183】
【0291】
【化184】
【0292】
【化185】
【0293】
【化186】
【0294】
【化187】
【0295】
【化188】
【0296】
【化189】
【0297】
【化190】
【0298】
【化191】
【0299】
【化192】
【0300】
【化193】
【0301】
【化194】
【0302】
【化195】
【0303】
【化196】
【0304】
【化197】
【0305】
【化198】
【0306】
【化199】
【0307】
【化200】
【0308】
【化201】
【0309】
【化202】
【0310】
【化203】
【0311】
【化204】
【0312】
【化205】
【0313】
【化206】
【0314】
【化207】
【0315】
【化208】
【0316】
【化209】
【0317】
【化210】
【0318】
【化211】
【0319】
1-4.式(i)で表される構造を少なくとも1つ含む化合物の製造方法
式(i)で表される構造を少なくとも1つ含む化合物(好ましくは、式(1)で表される化合物)は、まずA環~C環(好ましくはa環~c環)を結合基(-X-)で結合させることで中間体を製造し(第1反応)、その後に、a環~c環を結合基(Xを含む基)で結合させることで最終生成物を製造することができる(第2反応)。上記結合基(-X-)は、最終的に式(i)または式(1)中のXおよびXをそれぞれ構成することが好ましい。ここでは、結合基が>Oであるときについて説明する。
【0320】
第1反応では、例えば求核置換反応やウルマン反応といった一般的エーテル化反応が利用できる。また、第2反応では、タンデムヘテロフリーデルクラフツ反応(連続的な芳香族求電子置換反応、以下同様)が利用できる。第1および第2反応の詳細は、国際公開第2015/102118号に記載された説明を参考にすることができる。
【0321】
第2反応は、A環、B環およびC環を結合するB(ホウ素)、P(リン)またはSi(ケイ素)を導入する反応である。ここでは、A環、B環およびC環がいずれも置換基R~R11を有してもよいベンゼン環(下記スキーム(1)におけるa環、b環およびc環)である場合に、B(ホウ素)を導入する反応を説明する。まず、2つのOの間の水素原子をn-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウムまたはt-ブチルリチウム等でオルトメタル化する。次いで、三塩化ホウ素や三臭化ホウ素等を加え、リチウム-ホウ素の金属交換を行った後、N,N-ジイソプロピルエチルアミン等のブレンステッド塩基を加えることで、タンデムボラフリーデルクラフツ反応させ、目的物を得ることができる。第2反応においては反応を促進させるために三塩化アルミニウム等のルイス酸を加えてもよい。
【0322】
【化212】
【0323】
上記スキームにおいては、オルトメタル化により所望の位置へリチウムを導入したが、下記スキーム(2)のようにリチウムを導入したい位置に臭素原子等を導入し、ハロゲン-メタル交換によっても所望の位置へリチウムを導入することができる。
【化213】
【0324】
上述の合成法を適宜選択し、使用する原料も適宜選択することで、所望の位置に置換基を有し、式(1)で表される化合物を合成することができる。
【0325】
また、上記以外のYの導入反応については、特許第5669163号公報に記載の合成方法を利用することができる。
【0326】
単結合やスペーサーを有する多量体については、上記の合成方法により製造できる。また、単量体を合成後、単量体同士を結合することで製造できる。
【0327】
式(i)で表される構造を少なくとも1つ含む化合物として多量体(例えば、式(ii)で表される構造を有する化合物)は、基本的には、それぞれの環構造同士で結合させることで中間体を製造し(第1反応)、その後に、それぞれの環構造をホウ素原子で結合させることで最終生成物を製造することができる(第2反応)。第1反応では、例えば、求核置換反応、ウルマン反応といった一般的なエーテル化反応や、ブッフバルト-ハートウィッグ反応といった一般的なアミノ化反応などが利用できる。また、第2反応では、タンデムヘテロフリーデルクラフツ反応(連続的な芳香族求電子置換反応、以下同様)が利用できる。なお、以下の各スキームにおける構造式中の符号は、式(ii)または式(4)のそれらと同じ定義である。
【0328】
第2反応は、下記スキーム(3)に示すように、それぞれの環構造を結合するホウ素原子を導入する反応である。まず、XとXの間およびXとXの間の水素原子をn-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウムまたはt-ブチルリチウムなどでオルトメタル化する。次いで、三塩化ホウ素や三臭化ホウ素などを加え、リチウム-ホウ素の金属交換を行った後、N,N-ジイソプロピルエチルアミンなどのブレンステッド塩基を加えることで、タンデムボラフリーデルクラフツ反応させ、目的物を得ることができる。第2反応においては反応を促進させるために三塩化アルミニウムなどのルイス酸を加えてもよい。
【0329】
特に以下に二量体の合成を示すが、三量体以上の多量体についても同様の合成方法により製造できる。
【化214】
【0330】
スキーム(3)においては、オルトメタル化により所望の位置へリチウムを導入したが、下記スキーム(4)のようにリチウムを導入したい位置に予めハロゲン原子(Hal)を導入し、ハロゲン-メタル交換によっても所望の位置へリチウムを導入することができる。この方法によれば、置換基の影響でオルトメタル化ができないようなケースでも目的物を合成することができ有用である。
【0331】
【化215】
【0332】
上述の合成法を適宜選択し、使用する原料も適宜選択することで、所望の位置に置換基を有し、X、X、XおよびXが、それぞれ独立して、>Oまたは>N-Rである化合物を合成することができる。
【0333】
なお、中間体における例えばアミノ基の回転によりタンデムボラフリーデルクラフツ反応が起こる箇所が異なる場合があるため、副生物が生成する可能性もある。このような場合には、クロマトグラフィーや再結晶等により、これらの混合物から目的の化合物を単離することができる。
【0334】
上記スキームで使用するオルトメタル化試薬としては、例えば、メチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウムなどのアルキルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムテトラメチルピペリジド、リチウムヘキサメチルジシラジド、カリウムヘキサメチルジシラジドなどの有機アルカリ化合物が挙げられる。
【0335】
上記スキームで使用するメタル-Y(ホウ素)の金属交換試薬としては、ホウ素の三フッ化物、三塩化物、三臭化物、三ヨウ化物などのホウ素ハロゲン化物、CIPN(NEtなどのYのアミノ化ハロゲン化物、Yのアルコキシ化物、Yのアリールオキシ化物などが挙げられる。
【0336】
上記スキームで使用するブレンステッド塩基としては、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチルトルイジン、2,6-ルチジン、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、テトラフェニルホウ酸カリウム、トリフェニルボラン、テトラフェニルシラン、ArBNa、ArBK、ArB、ArSi(なお、Arはフェニルなどのアリール)などが挙げられる。
【0337】
上記スキームで使用するルイス酸としては、AlCl、AlBr、AlF、BF・OEt、BCl、BBr、GaCl、GaBr、InCl、InBr、In(OTf)、SnCl、SnBr、AgOTf、ScCl、Sc(OTf)、ZnCl、ZnBr、Zn(OTf)、MgCl、MgBr、Mg(OTf)、LiOTf、NaOTf、KOTf、MeSiOTf、Cu(OTf)、CuCl、YCl、Y(OTf)、TiCl、TiBr、ZrCl、ZrBr、FeCl、FeBr、CoCl、CoBrなどが挙げられる。
【0338】
上記スキームでは、タンデムヘテロフリーデルクラフツ反応の促進のためにブレンステッド塩基またはルイス酸を使用してもよい。ただし、ホウ素の三フッ化物、三塩化物、三臭化物、三ヨウ化物などのホウ素ハロゲン化物を用いた場合は、芳香族求電子置換反応の進行とともに、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素といった酸が生成するため、酸を捕捉するブレンステッド塩基の使用が効果的である。一方、ホウ素のアミノ化ハロゲン化物、ホウ素のアルコキシ化物を用いた場合は、芳香族求電子置換反応の進行とともに、アミン、アルコールが生成するために、多くの場合、ブレンステッド塩基を使用する必要はないが、アミノ基やアルコキシ基の脱離能が低いために、その脱離を促進するルイス酸の使用が効果的である。
【0339】
また、式(ii)または式(4)で表される化合物には、少なくとも一部の水素原子がシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されている化合物も含まれるが、このような化合物などは所望の箇所がシアノ化、ハロゲン化、重水素化された原料を用いることで、上記と同様に合成することができる。
【0340】
1-5.式(i)で表される構造を含む繰り返し単位を有する高分子化合物
本発明の化合物は、式(i)で表される構造を含む繰り返し単位を有する高分子化合物(以下、「本発明の高分子化合物」ということがある。また、「本発明の化合物」というときはこの高分子化合物も含む。)であってもよい。式(i)で表される構造を含む繰り返し単位を有する高分子化合物としては、例えば、式(1)で表される化合物由来の構造を繰り返し単位として含む化合物が挙げられる。
また、本発明の高分子化合物は、無置換または置換基を有してもよいトリアリールアミン、無置換または置換基を有してもよいフルオレン、無置換または置換基を有してもよいアントラセン、無置換または置換基を有してもよいテトラセン、無置換または置換基を有してもよいトリアジン、無置換または置換基を有してもよいカルバゾール、無置換または置換基を有してもよいテトラフェニルシラン、無置換または置換基を有してもよいスピロフルオレン、無置換または置換基を有してもよいトリフェニルホスフィン、無置換または置換基を有してもよいジベンゾチオフェン、および、無置換または置換基を有してもよいジベンゾフランよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物由来の構造を繰返し単位に含むことが好ましい。この繰り返し単位は式(i)で表される構造を含む繰り返し単位であっても、式(i)で表される構造を含む繰り返し単位とは別の繰り返し単位であってもよい。
【0341】
本発明の高分子化合物は、公知の方法によりハロゲン化アリール誘導体とアリールボロン酸誘導体を出発原料として、またはハロゲン化アリールボロン酸誘導体とハロゲン化アリール誘導体とアリールボロン酸誘導体を出発物質として、鈴木・宮浦カップリング、熊田・玉尾・コリューカップリング、根岸カップリング、ハロゲン化反応、またはホウ酸化反応を適宜組み合わせて合成することができる。
【0342】
鈴木-宮浦カップリングにおけるハロゲン化物とボロン酸誘導体は、その反応性官能基は適宜入れ替わってもよく、熊田・玉尾・コリューカップリングや根岸カップリングにおいても同様にそれらの反応に関わる官能基は入れ替わっていてもよい。またGrignard試薬に変換する場合には金属マグネシウムとイソプロピルグリニア試薬は適宜入れ替えてもよい。ボロン酸エステルはそのまま使用してもよく、あるいは酸で加水分解してボロン酸として使用してもよい。ボロン酸エステルとして用いる場合には、そのエステル部分のアルキルは例示した以外のアルキルも用いることができる。
【0343】
反応で用いられるパラジウム触媒の具体例としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0):Pd(PPh、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド:PdCl(PPh、酢酸パラジウム(II):Pd(OAc)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0):Pd(dba)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)クロロホルム錯体:Pd(dba)・CHCl、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0):Pd(dba)、ビス(トリt-ブチルホスフィノ)パラジウム(0):Pd(t-BuP)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II):Pd(dppf)Cl、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン錯体(1:1):Pd(dppf)Cl・CHCl、PdCl{P(t-Bu)-(p-NMe-Ph)}:(A-taPhos)PdCl、パラジウム ビス(ジベンジリデン)、[1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)ジクロリド、PdCl[P(t-Bu)-(p-NMe-Ph)]:(A-taPhos)PdCl(Pd-132:商標;ジョンソン・マッセイ社製)があげられる。
【0344】
また、反応を促進させるため、場合によりこれらのパラジウム化合物にホスフィン化合物を加えてもよい。そのホスフィン化合物の具体例としては、トリ(t-ブチル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、1-(N,N-ジメチルアミノメチル)-2-(ジt-ブチルホスフィノ)フェロセン、1-(N,N-ジブチルアミノメチル)-2-(ジt-ブチルホスフィノ)フェロセン、1-(メトキシメチル)-2-(ジt-ブチルホスフィノ)フェロセン、1,1’-ビス(ジt-ブチルホスフィノ)フェロセン、2,2’-ビス(ジt-ブチルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、2-メトキシ-2’-(ジt-ブチルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、または2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニルがあげられる。
【0345】
反応で用いられる塩基の具体例としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、ナトリウムエトキシド、ナトリウムt-ブトキシド、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸三カリウム、またはフッ化カリウムがあげられる。
【0346】
また、反応で用いられる溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、1,2,4-トリメチルベンゼン、アニソール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、1,4-ジオキサン、メタノール、エタノール、t-ブチルアルコール、シクロペンチルメチルエーテルまたはイソプロピルアルコール、ジメトキシエタン、2-(2-メトキシエトキシ)エタン、2-(2-エトキシエトキシ)エタン等があげられる。これらの溶媒は適宜選択でき、単独で用いてもよく、混合溶媒として用いてもよい。
【0347】
また、塩基は水溶液として加え2相系で反応させてもよい。2相系で反応させる場合は、必要に応じて、第4級アンモニウム塩等の相間移動触媒を加えてもよい。
【0348】
本発明の高分子化合物を製造する際、一段階で製造してもよいし、多段階を経て製造してもよい。また、原料を反応容器に全て入れてから反応を開始する一括重合法により行ってもよいし、原料を反応容器に滴下し加える滴下重合法により行ってもよいし、生成物が反応の進行に伴い沈殿する沈殿重合法により行ってもよく、これらを適宜組み合わせて合成することができる。例えば、本発明の高分子化合物を一段階で合成する際、モノマーユニット(MU)に重合性基が結合したモノマーおよびエンドキャップユニット(EC)に重合性基が結合したモノマーを反応容器に加えた状態で反応を行うことで目的物を得る。また、本発明の高分子化合物を多段階で合成する際、モノマーユニット(MU)に重合性基が結合したモノマーを目的の分子量まで重合した後、エンドキャップユニット(EC)に重合性基が結合したモノマーを加えて反応させることで目的物を得る。
【0349】
また、モノマーの重合性基を選べば高分子化合物の一次構造を制御することができる。例えば、合成スキーム(20)の1~3に示すように、ランダムな一次構造を有する高分子化合物(合成スキーム(20)の1)、規則的な一次構造を有する高分子化合物(合成スキーム(20)の2および3)などを合成することが可能であり、目的物に応じて適宜組み合わせて用いることができる。
【0350】
【化216】
【0351】
式(i)で表される構造を含む繰り返し単位を有する高分子化合物は、例えば、式(1)で表される化合物由来の構造を有する繰り返し単位を有する高分子化合物であってもよい。このとき、式(1)におけるR~R11に重合性基を導入したモノマーを用いて高分子化合物を製造すればよい。を重合性基が導入されるR~R11としての置換基は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、またはジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)(以上、第1置換基)であり、前記アリール、前記ヘテロアリール、および前記ジアリールアミノにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキル(以上、第2置換基)で置換されていてもよい。式(i)で表される構造を含む繰り返し単位を有する高分子化合物は、式(i)で表される構造を含むモノマーに加えて、さらに、コモノマーを使用して製造されていてもよい。より具体的には、高分子化合物の製造において用いてもよいコモノマーは、下記いずれかに重合性基が導入されたものであればよい:無置換または置換してもよいベンゼン、無置換または置換してもよいトリアジン、無置換または置換基を有してもよいアントラセン、無置換または置換してもよいトリアリールアミン、無置換または置換してもよいカルバゾール、無置換または置換基を有してもよいスピロフルオレン、無置換または置換してもよいジベンゾフラン、無置換または置換してもよいジベンゾチオフェン、無置換または置換してもよいテトラアリールシラン、無置換または置換してもよいトリアリールホスフィン、無置換または置換してもよいフェノキサジン、無置換または置換してもよいフェノチアジン、無置換または置換してもよいアクリダン、無置換または置換してもよいアルキルおよび無置換または置換してもよいシクロアルキル。これらのうち、無置換または置換してもよいベンゼン、無置換または置換基を有してもよいトリアリールアミン、無置換または置換基を有してもよいフルオレン、無置換または置換基を有してもよいアントラセン、無置換または置換基を有してもよいテトラセン、無置換または置換基を有してもよいトリアジン、無置換または置換基を有してもよいカルバゾール、無置換または置換基を有してもよいテトラフェニルシラン、無置換または置換基を有してもよいスピロフルオレン、無置換または置換基を有してもよいトリフェニルホスフィン、無置換または置換基を有してもよいジベンゾチオフェン、および、無置換または置換基を有してもよいジベンゾフランが好ましく、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、トリアリールアミン、トリフェニルトリアジンまたはカルバゾールがより好ましい。また、前記、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、トリアリールアミン、トリフェニルトリアジンまたはカルバゾールにおいて、炭素数1~24のアルキルまたは炭素数3~16のシクロアルキルを置換基として有することがさらに好ましい。
【0352】
2.有機デバイス用材料
また、本発明の化合物は、有機デバイス用材料として用いることができる。有機デバイスとしては、例えば、有機電界発光素子、有機電界効果トランジスタまたは有機薄膜太陽電池などがあげられる。これらの中でも、本発明の有機デバイス用材料は、有機電界発光素子用材料として好ましく用いられ、有機電界発光素子用材料の発光層用材料としてより好ましく用いられる。
【0353】
2-1.有機電界発光素子
2-1-1.有機電界発光素子の構造
有機電界発光素子(有機EL素子)は陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置される発光層を備える。有機EL素子は発光層のほかに1以上の有機層を有していてもよい。有機層としては、例えば、電子輸送層、正孔輸送層、電子注入層および正孔注入層等を挙げることができ、さらに、その他の有機層を有していてもよい。
図1に、これらの有機層を備えた有機電界発光素子の層構成の一例を示す。
図1に示された有機EL素子100は、基板101と、基板101上に設けられた陽極102と、陽極102の上に設けられた正孔注入層103と、正孔注入層103の上に設けられた正孔輸送層104と、正孔輸送層104の上に設けられた発光層105と、発光層105の上に設けられた電子輸送層106と、電子輸送層106の上に設けられた電子注入層107と、電子注入層107の上に設けられた陰極108とを有する。
【0354】
なお、有機EL素子100は、作製順序を逆にして、例えば、基板101と、基板101上に設けられた陰極108と、陰極108の上に設けられた電子注入層107と、電子注入層107の上に設けられた電子輸送層106と、電子輸送層106の上に設けられた発光層105と、発光層105の上に設けられた正孔輸送層104と、正孔輸送層104の上に設けられた正孔注入層103と、正孔注入層103の上に設けられた陽極102とを有する構成としてもよい。
【0355】
上記各層すべてがなくてはならないわけではなく、最小構成単位を陽極102と発光層105と陰極108とからなる構成として、正孔注入層103、正孔輸送層104、電子輸送層106、電子注入層107は任意に設けられる層である。また、上記各層は、それぞれ単一層からなってもよいし、複数層からなってもよい。
【0356】
有機EL素子を構成する層の態様としては、上述する「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」の構成態様の他に、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子注入層/陰極」の構成態様であってもよい。
【0357】
2-1-2.有機電界発光素子における発光層
発光層(図1の105)は、電界を与えられた電極間において発光する層である。典型的には、陽極102から注入された正孔と、陰極108から注入された電子とを再結合させることにより発光するものである。発光層を形成する材料としては、正孔と電子との再結合によって励起されて発光する化合物(発光性化合物)であればよく、安定な薄膜形状を形成することができ、かつ、固体状態で強い発光(蛍光)効率を示す化合物が好ましい。
また、発光層は単一層でも複数層からなってもどちらでもよい。それぞれ発光層用材料(ホスト材料、ドーパント材料)により形成される。ホスト材料およびドーパント材料は、それぞれ一種類であっても、複数の組み合わせであっても、いずれでもよい。ドーパント材料はホスト材料の全体に含まれていても、部分的に含まれていても、いずれであってもよい。ドーピング方法としては、ホスト材料との共蒸着法によって形成することができるが、ホスト材料と予め混合してから同時に蒸着してもよい。また、後述するように、発光層は、ホスト材料とドーパント材料とを含む発光層形成用組成物を用いた湿式成膜法により形成することもできる。
【0358】
本発明の化合物は、有機電界発光素子の発光層の形成材料として好ましく用いることができる。本発明の化合物は発光層におけるドーパントとして用いることが好ましい。本発明の化合物は発光層におけるエミッティングドーパントとして用いてもよく、アシスティングドーパントとして用いてもよい。
本発明の化合物、ホスト化合物および後述するその他成分は、同一の層内に含まれていてもよく、複数層に少なくとも1成分ずつ含まれていてもよい。発光層が含む本発明の化合物、およびホスト化合物は、それぞれ一種類であっても、複数の組み合わせであっても、いずれでもよい。アシスティングドーパントおよびエミッティングドーパントは、マトリックスとしてのホスト化合物中に、全体的に含まれていてもよいし、部分的に含まれていてもよい。発光層は蒸着法によって成膜されてもよく、有機溶媒に溶解して調製した塗料を塗布する、湿式成膜法等により形成してもよい。
【0359】
本発明の化合物の使用量は、高いTADF活性の観点からは多いほうが好ましく、半値幅の狭い発光スペクトルの観点からは少ないほうがよい。ホスト化合物の使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全体の0.001~49質量%であり、より好ましくは0.1~40質量%であり、さらに好ましくは0.5~25質量%である。
【0360】
2-1-2-1.ホスト化合物
本発明の化合物を含む発光層は、ホスト化合物を用いてよい。ホスト化合物としては、公知のものを用いることができ、例えばカルバゾール環およびフラン環の少なくとも一方を有する化合物を挙げることができ、中でも、フラニルおよびカルバゾリルの少なくとも一方と、アリーレンおよびヘテロアリーレンの少なくとも一方とが結合した化合物を用いることが好ましい。具体例として、mCPやmCBPなどが挙げられる。
【0361】
ホスト化合物には、例えば、下記式(H1)、式(H2)、式(H3)、式(H4)、および式(H5)のいずれかで表される化合物を用いることができる。
これらの化合物は、下記式(H1)、(H2)、(H3)、(H4)、および(H5)のいずれかで表される化合物由来の構造を繰返し単位とする高分子化合物であってもよい。
本発明の有機電界発光素子は、下記式(H1)~(H5)で表される化合物を少なくとも1つ含有する、または、下記(H1)~(H5)における少なくとも1つの構造を繰り返し単位とする高分子化合物を少なくとも1つ含有することが好ましい。
【0362】
【化217】
【0363】
式(H1)中、Lは炭素数6~24のアリーレンであり、式(H2)中、LおよびLは、それぞれ独立して、炭素数6~30のアリールまたは炭素数2~30のヘテロアリールであり、上記各式で表される化合物における少なくとも1つの水素は、炭素数1~6のアルキル、シアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよく、式(H3)において、Jは、>O、>S、>N-R’、>C(-R’)または>Si(-R’)であり、Yは、単結合、>O,>S,>C(-R’)または>Si(-R’)であり、Zは、C-H、C-R’またはNであり、式(H4)において、Zは、C-H、C-R’またはNであり、前記、>N-R’、>C(-R’)、>Si(-R’)およびC-R’におけるR’は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルであり、式(H5)において、R~R11は、それぞれ独立して、水素、または、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールへテロアリールアミノもしくはアルキルである置換基であり、これらの置換基における少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノまたはアルキルで置換されていてもよく、R~R11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノまたはアルキルで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノまたはアルキルで置換されていてもよく、式(H5)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、ハロゲンまたは重水素で置換されてもよい。
式(H5)のR~R11としては、上述の第1置換基および第1置換基を置換する第2置換基の記載を引用できる。
【0364】
また、ホスト化合物としては、下記式(H-1)、(H-2)および(H-3)のいずれかで表される化合物も用いることができる。
【化218】
【0365】
式(H-1)、(H-2)および(H-3)中、Lは炭素数6~24のアリーレン、炭素数2~24のヘテロアリーレン、炭素数6~24のヘテロアリーレンアリーレンおよび炭素数6~24のアリーレンヘテロアリーレンアリーレンであり、炭素数6~16のアリーレンが好ましく、炭素数6~12のアリーレンがより好ましく、炭素数6~10のアリーレンが特に好ましく、具体的には、ベンゼン環、ビフェニル環、テルフェニル環およびフルオレン環などの二価の基が挙げられる。ヘテロアリーレンとしては、炭素数2~24のヘテロアリーレンが好ましく、炭素数2~20のヘテロアリーレンがより好ましく、炭素数2~15のヘテロアリーレンがさらに好ましく、炭素数2~10のヘテロアリーレンが特に好ましく、具体的には、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、インドール環、イソインドール環、1H-インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、1H-ベンゾトリアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フェナジン環、インドリジン環、フラン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、フラザン環、およびチアントレン環などの二価の基が挙げられる。
上記各式で表される化合物における少なくとも1つの水素は、炭素数1~6のアルキル、シアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
【0366】
ホスト化合物としては、好ましくは以下に列挙したいずれかの構造式で表される化合物である。なお、以下に列挙した構造式においては、少なくとも1つの水素が、ハロゲン、シアノ、炭素数1~4のアルキル(例えばメチルやt-ブチル)、フェニルまたはナフチルなどで置換されていてもよい。
【0367】
【化219】
【0368】
【化220】
【0369】
【化221】
【0370】
【化222】
【0371】
【化223】
【0372】
【化224】
【化225】
【0373】
2-1-2-2.蛍光体(エミッティングドーパント)
本発明の化合物をアシスティングドーパント(TAF素子におけるアシスティングドーパント)として用いる場合、発光層の付加成分としてエミッティングドーパント(TAF素子におけるエミッティングドーパント)を用いてもよい。付加成分は、発光スペクトルの狭半値幅化、色味の改善または長寿命化の目的に用いられる。
【0374】
本発明のエミッティングドーパントとしては、特に限定されるものではなく、既知の化合物を用いることができ、所望の発光色に応じて様々な材料の中から選択することができる。具体的には、例えば、フェナンスレン、アントラセン、ピレン、テトラセン、ペンタセン、ペリレン、ナフトピレン、ジベンゾピレン、ルブレンおよびクリセンなどの縮合環誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、スチルベン誘導体、チオフェン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体やジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体(特開平1-245087号公報)、ビススチリルアリーレン誘導体(特開平2-247278号公報)、ジアザインダセン誘導体、フラン誘導体、ベンゾフラン誘導体、フェニルイソベンゾフラン、ジメシチルイソベンゾフラン、ジ(2-メチルフェニル)イソベンゾフラン、ジ(2-トリフルオロメチルフェニル)イソベンゾフラン、フェニルイソベンゾフランなどのイソベンゾフラン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、7-ジアルキルアミノクマリン誘導体、7-ピペリジノクマリン誘導体、7-ヒドロキシクマリン誘導体、7-メトキシクマリン誘導体、7-アセトキシクマリン誘導体、3-ベンゾチアゾリルクマリン誘導体、3-ベンゾイミダゾリルクマリン誘導体、3-ベンゾオキサゾリルクマリン誘導体などのクマリン誘導体、ジシアノメチレンピラン誘導体、ジシアノメチレンチオピラン誘導体、ポリメチン誘導体、シアニン誘導体、オキソベンゾアンスラセン誘導体、キサンテン誘導体、ローダミン誘導体、フルオレセイン誘導体、ピリリウム誘導体、カルボスチリル誘導体、アクリジン誘導体、オキサジン誘導体、フェニレンオキサイド誘導体、キナクリドン誘導体、キナゾリン誘導体、ピロロピリジン誘導体、フロピリジン誘導体、1,2,5-チアジアゾロピレン誘導体、ピロメテン誘導体、ペリノン誘導体、ピロロピロール誘導体、スクアリリウム誘導体、ビオラントロン誘導体、フェナジン誘導体、アクリドン誘導体、デアザフラビン誘導体、フルオレン誘導体およびベンゾフルオレン誘導体などがあげられる。
【0375】
発色光ごとに例示すると、青~青緑色ドーパント材料としては、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、トリフェニレン、ペリレン、フルオレン、インデン、クリセンなどの芳香族炭化水素化合物やその誘導体、フラン、ピロール、チオフェン、シロール、9-シラフルオレン、9,9’-スピロビシラフルオレン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、イミダゾピリジン、フェナントロリン、ピラジン、ナフチリジン、キノキサリン、ピロロピリジン、チオキサンテンなどの芳香族複素環化合物やその誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、スチルベン誘導体、アルダジン誘導体、クマリン誘導体、イミダゾール、チアゾール、チアジアゾール、カルバゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾールなどのアゾール誘導体およびその金属錯体およびN,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(3-メチルフェニル)-4,4’-ジフェニル-1,1’-ジアミンに代表される芳香族アミン誘導体などがあげられる。
【0376】
また、緑~黄色ドーパント材料としては、クマリン誘導体、フタルイミド誘導体、ナフタルイミド誘導体、ペリノン誘導体、ピロロピロール誘導体、シクロペンタジエン誘導体、アクリドン誘導体、キナクリドン誘導体およびルブレンなどのナフタセン誘導体などがあげられ、さらに上記青~青緑色ドーパント材料として例示した化合物に、アリール、ヘテロアリール、アリールビニル、アミノ、シアノなど長波長化を可能とする置換基を導入した化合物も好適な例としてあげられる。
【0377】
さらに、橙~赤色ドーパント材料としては、ビス(ジイソプロピルフェニル)ペリレンテトラカルボン酸イミドなどのナフタルイミド誘導体、ペリノン誘導体、アセチルアセトンやベンゾイルアセトンとフェナントロリンなどを配位子とするEu錯体などの希土類錯体、4-(ジシアノメチレン)-2-メチル-6-(p-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピランやその類縁体、マグネシウムフタロシアニン、アルミニウムクロロフタロシアニンなどの金属フタロシアニン誘導体、ローダミン化合物、デアザフラビン誘導体、クマリン誘導体、キナクリドン誘導体、フェノキサジン誘導体、オキサジン誘導体、キナゾリン誘導体、ピロロピリジン誘導体、スクアリリウム誘導体、ビオラントロン誘導体、フェナジン誘導体、フェノキサゾン誘導体およびチアジアゾロピレン誘導体などあげられ、さらに上記青~青緑色および緑~黄色ドーパント材料として例示した化合物に、アリール、ヘテロアリール、アリールビニル、アミノ、シアノなど長波長化を可能とする置換基を導入した化合物も好適な例としてあげられる。
【0378】
その他、付加成分としては、化学工業2004年6月号13頁、および、それにあげられた参考文献などに記載された化合物などの中から適宜選択して用いることができる。
【0379】
スチルベン構造を有するアミンは、例えば、下記式で表される。
【化226】
当該式中、Arは炭素数6~30のアリールに由来するm価の基であり、ArおよびArは、それぞれ独立して炭素数6~30のアリールであるが、Ar~Arの少なくとも1つはスチルベン構造を有し、Ar~Arは置換されていてもよく、そして、mは1~4の整数である。
【0380】
スチルベン構造を有するアミンは、下記式で表されるジアミノスチルベンがより好ましい。
【化227】
当該式中、ArおよびArは、それぞれ独立して炭素数6~30のアリールであり、ArおよびArは置換されていてもよい。
【0381】
炭素数6~30のアリールの具体例は、ベンゼン、ナフタレン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、ペリレン、スチルベン、ジスチリルベンゼン、ジスチリルビフェニル、ジスチリルフルオレンなどがあげられる。
【0382】
スチルベン構造を有するアミンの具体例は、N,N,N’,N’-テトラ(4-ビフェニリル)-4,4’-ジアミノスチルベン、N,N,N’,N’-テトラ(1-ナフチル)-4,4’-ジアミノスチルベン、N,N,N’,N’-テトラ(2-ナフチル)-4,4’-ジアミノスチルベン、N,N’-ジ(2-ナフチル)-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノスチルベン、N,N’-ジ(9-フェナントリル)-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノスチルベン、4,4’-ビス[4”-ビス(ジフェニルアミノ)スチリル]-ビフェニル、1,4-ビス[4’-ビス(ジフェニルアミノ)スチリル]-ベンゼン、2,7-ビス[4’-ビス(ジフェニルアミノ)スチリル]-9,9-ジメチルフルオレン、4,4’-ビス(9-エチル-3-カルバゾビニレン)-ビフェニル、4,4’-ビス(9-フェニル-3-カルバゾビニレン)-ビフェニルなどがあげられる。
また、特開2003-347056号公報、および特開2001-307884号公報などに記載されたスチルベン構造を有するアミンを用いてもよい。
【0383】
ペリレン誘導体としては、例えば、3,10-ビス(2,6-ジメチルフェニル)ペリレン、3,10-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)ペリレン、3,10-ジフェニルペリレン、3,4-ジフェニルペリレン、2,5,8,11-テトラ-t-ブチルペリレン、3,4,9,10-テトラフェニルペリレン、3-(1’-ピレニル)-8,11-ジ(t-ブチル)ペリレン、3-(9’-アントリル)-8,11-ジ(t-ブチル)ペリレン、3,3’-ビス(8,11-ジ(t-ブチル)ペリレニル)などがあげられる。
また、特開平11-97178号公報、特開2000-133457号公報、特開2000-26324号公報、特開2001-267079号公報、特開2001-267078号公報、特開2001-267076号公報、特開2000-34234号公報、特開2001-267075号公報、および特開2001-217077号公報などに記載されたペリレン誘導体を用いてもよい。
【0384】
また、エミッティングドーパントとして用いられる化合物として、ホウ素原子を含む化合物が挙げられ、例えば、ボラン誘導体、ジオキサボラナフトアントラセン(DOBNA)誘導体およびその多量体、ジアザボラナフトアントラセン(DABNA)誘導体およびその多量体、オキサアザボラナフトアントラセン(OABNA)誘導体およびその多量体、オキサボラナフトアントラセン(OBNA)誘導体およびその多量体、アザボラナフトアントラセン(ABNA)誘導体およびその多量体、トリオキサボラジベンゾピレン誘導体およびその多量体、ジオキサアザボラベンゾピレン誘導体およびその多量体、オキサジアザボラベンゾピレン誘導体およびその多量体などが挙げられる。
【0385】
ボラン誘導体としては、例えば、1,8-ジフェニル-10-(ジメシチルボリル)アントラセン、9-フェニル-10-(ジメシチルボリル)アントラセン、4-(9’-アントリル)ジメシチルボリルナフタレン、4-(10’-フェニル-9’-アントリル)ジメシチルボリルナフタレン、9-(ジメシチルボリル)アントラセン、9-(4’-ビフェニリル)-10-(ジメシチルボリル)アントラセン、9-(4’-(N-カルバゾリル)フェニル)-10-(ジメシチルボリル)アントラセンなどがあげられる。
また、国際公開第2000/40586号などに記載されたボラン誘導体を用いてもよい。
【0386】
芳香族アミン誘導体は、例えば、下記式で表される。
【化228】
当該式中、Arは炭素数6~30のアリールに由来するn価の基であり、ArおよびArはそれぞれ独立して炭素数6~30のアリールであり、Ar~Arは置換されていてもよく、そして、nは1~4の整数である。
【0387】
特に、Arがアントラセン、クリセン、フルオレン、ベンゾフルオレンまたはピレンに由来する2価の基であり、ArおよびArがそれぞれ独立して炭素数6~30のアリールであり、Ar~Arは置換されていてもよく、そして、nは2である、芳香族アミン誘導体がより好ましい。
【0388】
炭素数6~30のアリールの具体例は、ベンゼン、ナフタレン、アセナフチレン、フルオレンフェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、ペリレン、ペンタセンなどがあげられる。
【0389】
芳香族アミン誘導体としては、クリセン系としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラフェニルクリセン-6,12-ジアミン、N,N,N’,N’-テトラ(p-トリル)クリセン-6,12-ジアミン、N,N,N’,N’-テトラ(m-トリル)クリセン-6,12-ジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(4-イソプロピルフェニル)クリセン-6,12-ジアミン、N,N,N’,N’-テトラ(ナフタレン-2-イル)クリセン-6,12-ジアミン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(p-トリル)クリセン-6,12-ジアミン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(4-エチルフェニル)クリセン-6,12-ジアミン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(4-イソプロピルフェニル)クリセン-6,12-ジアミン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(4-t-ブチルフェニル)クリセン-6,12-ジアミン、N,N’-ビス(4-イソプロピルフェニル)-N,N’-ジ(p-トリル)クリセン-6,12-ジアミンなどがあげられる。
【0390】
また、ピレン系としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラフェニルピレン-1,6-ジアミン、N,N,N’,N’-テトラ(p-トリル)ピレン-1,6-ジアミン、N,N,N’,N’-テトラ(m-トリル)ピレン-1,6-ジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(4-イソプロピルフェニル)ピレン-1,6-ジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(3,4-ジメチルフェニル)ピレン-1,6-ジアミン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(p-トリル)ピレン-1,6-ジアミン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(4-エチルフェニル)ピレン-1,6-ジアミン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(4-イソプロピルフェニル)ピレン-1,6-ジアミン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(4-t-ブチルフェニル)ピレン-1,6-ジアミン、N,N’-ビス(4-イソプロピルフェニル)-N,N’-ジ(p-トリル)ピレン-1,6-ジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(3,4-ジメチルフェニル)-3,8-ジフェニルピレン-1,6-ジアミン、N,N,N,N-テトラフェニルピレン-1,8-ジアミン、N,N’-ビス(ビフェニル-4-イル)-N,N’-ジフェニルピレン-1,8-ジアミン、N,N-ジフェニル-N,N-ビス-(4-トリメチルシラニル-フェニル)-1H,8H-ピレン-1,6-ジアミンなどがあげられる。
例えば、具体例としては式(PYR1)、(PYR2)、(PYR3)および(PYR4)などが挙げられる。
【化229】
【0391】
また、アントラセン系としては、例えば、N,N,N,N-テトラフェニルアントラセン-9,10-ジアミン、N,N,N’,N’-テトラ(p-トリル)アントラセン-9,10-ジアミン、N,N,N’,N’-テトラ(m-トリル)アントラセン-9,10-ジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(4-イソプロピルフェニル)アントラセン-9,10-ジアミン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(p-トリル)アントラセン-9,10-ジアミン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(m-トリル)アントラセン-9,10-ジアミン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(4-エチルフェニル)アントラセン-9,10-ジアミン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(4-イソプロピルフェニル)アントラセン-9,10-ジアミン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(4-t-ブチルフェニル)アントラセン-9,10-ジアミン、N,N’-ビス(4-イソプロピルフェニル)-N,N’-ジ(p-トリル)アントラセン-9,10-ジアミン、2,6-ジ-t-ブチル-N,N,N’,N’-テトラ(p-トリル)アントラセン-9,10-ジアミン、2,6-ジ-t-ブチル-N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(4-イソプロピルフェニル)アントラセン-9,10-ジアミン、2,6-ジ-t-ブチル-N,N’-ビス(4-イソプロピルフェニル)-N,N’-ジ(p-トリル)アントラセン-9,10-ジアミン、2,6-ジシクロヘキシル-N,N’-ビス(4-イソプロピルフェニル)-N,N’-ジ(p-トリル)アントラセン-9,10-ジアミン、2,6-ジシクロヘキシル-N,N’-ビス(4-イソプロピルフェニル)-N,N’-ビス(4-t-ブチルフェニル)アントラセン-9,10-ジアミン、9,10-ビス(4-ジフェニルアミノ-フェニル)アントラセン、9,10-ビス(4-ジ(1-ナフチルアミノ)フェニル)アントラセン、9,10-ビス(4-ジ(2-ナフチルアミノ)フェニル)アントラセン、10-ジ-p-トリルアミノ-9-(4-ジ-p-トリルアミノ-1-ナフチル)アントラセン、10-ジフェニルアミノ-9-(4-ジフェニルアミノ-1-ナフチル)アントラセン、10-ジフェニルアミノ-9-(6-ジフェニルアミノ-2-ナフチル)アントラセンなどがあげられる。
【0392】
また、他には、[4-(4-ジフェニルアミノ-フェニル)ナフタレン-1-イル]-ジフェニルアミン、[6-(4-ジフェニルアミノ-フェニル)ナフタレン-2-イル]-ジフェニルアミン、4,4’-ビス[4-ジフェニルアミノナフタレン-1-イル]ビフェニル、4,4’-ビス[6-ジフェニルアミノナフタレン-2-イル]ビフェニル、4,4”-ビス[4-ジフェニルアミノナフタレン-1-イル]-p-テルフェニル、4,4”-ビス[6-ジフェニルアミノナフタレン-2-イル]-p-テルフェニル、インドロカルバゾール誘導体などがあげられる。
また、特開2006-156888号公報などに記載された芳香族アミン誘導体を用いてもよい。
【0393】
インドロカルバゾール誘導体としては、下記式(IDC1)で表される化合物である。具体的には、下記、部分構造(IDC11)、(IDC12)および(IDC13)を有する化合物が挙げられる。下記の式(IDC1)における、式中、Zは、CRまたはNであり、π1およびπ2は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50の芳香族炭化水素または置換もしくは無置換の環形成炭素数5~50の芳香族複素環であり、R,RおよびRCは水素および任意の置換基であり、nおよびmは、それぞれ独立に1~4の整数であり、隣接する2つのR,RおよびRCは互いに結合して置換もしくは無置換の環構造を形成してもよい。より具体的には、式(IDC121)、(IDC131)、(IDC132)、(IDC133)および(IDC134)などが挙げられる。
【0394】
【化230】
【0395】
クマリン誘導体としては、クマリン-6、クマリン-334などがあげられる。
また、特開2004-43646号公報、特開2001-76876号公報、および特開平6-298758号公報などに記載されたクマリン誘導体を用いてもよい。
【0396】
ピラン誘導体としては、下記のDCM、DCJTBなどがあげられる。
【化231】
また、特開2005-126399号公報、特開2005-097283号公報、特開2002-234892号公報、特開2001-220577号公報、特開2001-081090号公報、および特開2001-052869号公報などに記載されたピラン誘導体を用いてもよい。
【0397】
また、本発明で用いる蛍光体は、ホウ素原子を有する化合物であることが好ましい。蛍光体として用いられるホウ素原子を有する化合物として、ジオキサボラナフトアントラセン(DOBNA)誘導体およびその多量体、ジアザボラナフトアントラセン(DABNA)誘導体およびその多量体、オキサアザボラナフトアントラセン(OABNA)誘導体およびその多量体、オキサボラナフトアントラセン(OBNA)誘導体およびその多量体、アザボラナフトアントラセン(ABNA)誘導体およびその多量体などが挙げられる。
【0398】
エミッティングドーパントとしては、下記式(ED1)、(ED1’)および(ED2)で表される化合物を少なくとも1つを用いることも好ましい。
【化232】
【0399】
(式(ED1)中、
、R、R、R、R、R、R、R10およびR11は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、またはジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)であり、これらはさらにアリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよく、また、R~R、R~RおよびR~R11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環はアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、またはジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)で置換されていてもよく、これらはさらにアリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよく、
Xは、>Oまたは>N-Rであり、前記>N-RのRおよびR13はアリール、ヘテロアリールまたはアルキルであり、これらはアリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよく、
ただし、Xがアミノ基のときにRがアミノ基になることはなく、
そして、
式(ED1)で表される化合物および構造における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。)
【化233】
【0400】
(式(ED1‘)中、
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、またはジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)であり、これらはさらにアリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよく、また、R~R、R~R、R~R10およびR11~R14のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環、c環またはd環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環はアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、またはジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)で置換されていてもよく、これらはさらにアリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよく、
Xは、>Oまたは>N-Rであり、前記>N-RのRはアリール、ヘテロアリールまたはアルキルであり、これらはアリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよく、
Lは、単結合、>CR、>O、>Sおよび>N-Rであり、前記>CRおよび>N-RにおけるRは、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、アルコキシ、アリールオキシ、またはジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)であり、これらはさらにアリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよく、
そして、
式(ED1’)で表される化合物および構造における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。)
【0401】
【化234】
【0402】
(式(ED2)中、
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオまたはアルキル置換シリルであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよく、また、R~RおよびR10~R12のうちの隣接する基同士が結合してb環またはd環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオまたはアルキル置換シリルで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよく、
、X、XおよびXは、それぞれ独立して、>O、>N-Rまたは>CRであり、前記>N-RのRおよび>CRのRは、炭素数6~12のアリール、炭素数2~15のヘテロアリールまたは炭素数1~6のアルキルであり、また、前記>N-RのRおよび>CRのRは、-O-、-S-、-C(-R)-または単結合により前記a環、b環、c環およびd環の少なくとも1つと結合していてもよく、前記-C(-R)-のRは水素または炭素数1~6のアルキルであり、
ただし、X、X、X、およびXのうち>Oであるのは2つ以下であり、
そして、
式(ED2)で表される化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。)
【0403】
より具体的には、下記式(ED11)~(ED19)、(ED21)~(ED27)、(ED211)、(ED212)、(ED221)~(ED223)、(ED231)、(ED241)、(ED242)、(ED261)および(ED271)で表される構造を含む化合物を挙げることができる。
【0404】
【化235】
【0405】
【化236】
【0406】
【化237】
【0407】
式(ED11)~(ED19)、(ED21)~(ED27)、(ED211)、(ED212)、(ED221)~(ED223)、(ED231)、(ED241)、(ED242)、(ED261)および(ED271)で表される構造における少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、またはジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)で置換されてもよく、これらはさらにアリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよい。アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシおよびジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)の好ましい範囲と具体例については、式(1)のR~R11における対応する記載を参照することができる。
また、付加成分となる蛍光体は、下記の置換基群Bから選択される少なくとも1つの置換基を有する化合物であることが好ましく、式(ED11)~(ED19)、(ED21)~(ED27)、(ED211)、(ED212)、(ED221)~(ED223)、(ED231)、(ED241)、(ED242)、(ED261)または(ED271)で表される構造を有し、且つ、その構造におけるベンゼン環(縮合環を構成しているベンゼン環も含む)に、置換基群Bから選択される少なくとも1つの構造が結合した構造を有する化合物であることがより好ましい。なお、下記構造式において、「Me」はメチル、「tBu」はt-ブチル、「tAm」はt-アミル、「tOct」はt-オクチル、*は結合位置を表す。
【0408】
置換基群B:
【化238】
【0409】
【化239】
【0410】
【化240】
【0411】
【化241】
【0412】
【化242】
【0413】
2-1-2-3.アシスティングドーパント(熱活性型遅延蛍光体)
本発明の化合物をTAF素子におけるエミッティングドーパント(ED)として用いる場合に用いることができるアシスティングドーパント(熱活性型遅延蛍光体:TADF化合物)は、ドナーと呼ばれる電子供与性の置換基とアクセプターと呼ばれる電子受容性の置換基を用いて分子内のHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)とLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)を局在化させて、効率的な逆項間交差(reverse intersystem crossing)が起きるようにデザインされた、ドナー-アクセプター型TADF化合物(D-A型TADF化合物)であることが好ましい。
ここで、本明細書中において「電子供与性の置換基」(ドナー)とは、TADF化合物分子中でHOMO軌道が局在する置換基および部分構造のことを意味し、「電子受容性の置換基」(アクセプター)とは、TADF化合物分子中でLUMO軌道が局在する置換基および部分構造のことを意味することとする。
一般的に、ドナーやアクセプターを用いたTADF化合物は、構造に起因してスピン軌道結合(SOC: Spin Orbit Coupling)が大きく、かつ、HOMOとLUMOの交換相互作用が小さくΔE(ST)が小さいために、非常に速い逆項間交差速度が得られる。一方、ドナーやアクセプターを用いたTADF化合物は、励起状態での構造緩和が大きくなり(ある分子においては、基底状態と励起状態では安定構造が異なるため、外部刺激により基底状態から励起状態への変換が起きると、その後、励起状態における安定構造へと構造が変化する)、幅広な発光スペクトルを与えるため、発光材料として使うと色純度を低下させる可能性がある。
【0414】
本発明の化合物をTAF素子におけるEDとして用いる場合に用いることができるアシスティングドーパントとして、例えばドナーおよびアクセプターが直接またはスペーサーを介して結合している化合物を用いることができる。熱活性型遅延蛍光体に用いられるドナー性およびアクセプター性の構造としては、例えば、Chemistry of Materials, 2017, 29, 1946-1963に記載の構造を用いることができる。ドナー性の構造としては、カルバゾール、ジメチルカルバゾール、ジ-tert-ブチルカルバゾール、ジメトキシカルバゾール、テトラメチルカルバゾール、ベンゾフルオロカルバソール、ベンゾチエノカルバゾール、フェニルジヒドロインドロカルバゾール、フェニルビカルバゾール、ビカルバゾール、ターカルバゾール、ジフェニルカルバゾリルアミン、テトラフェニルカルバゾリルジアミン、フェノキサジン、ジヒドロフェナジン、フェノチアジン、ジメチルジヒドロアクリジン、ジフェニルアミン、ビス(tert-ブチル)フェニルアミン、(ジフェニルアミノ)フェニルジフェニルベンゼンジアミン、ジメチルテトラフェニルジヒドロアクリジンジアミン、テトラメチル-ジヒドローインデノアクリジンおよびジフェニルージヒドロジベンゾアザシリンなどが挙げられる。アクセプター性の構造としては、スルホニルジベンゼン、ベンゾフェノン、フェニレンビス(フェニルメタノン)、ベンゾニトリル、イソニコチノニトリル、フタロニトリル、イソフタロニトリル、パラフタロニトリル、ベンゼントリカルボニトリル、トリアゾール、オキサゾール、チアジアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾビス(チアゾール)、ベンゾオキサゾール、ベンゾビス(オキサゾール)、キノリン、ベンゾイミダゾール、ジベンゾキノキサリン、ヘプタアザフェナレン、チオキサントンジオキシド、ジメチルアントラセノン、アントラセンジオン、シクロヘプタビピリジン、フルオレンジカルボニトリル、トリフェニルトリアジン、ピラジンジカルボニトリル、ピリミジン、フェニルピリミジン、メチルピリミジン、ピリジンジカルボニトリル、ジベンゾキノキサリンジカルボニトリル、ビス(フェニルスルホニル)ベンゼン、ジメチルチオキサンテンジオキド、チアンスレンテトラオキシドおよびトリス(ジメチルフェニル)ボランが挙げられる。特に、本発明の熱活性型遅延蛍光を有する化合物は、部分構造として、カルバゾール、フェノキサジン、アクリジン、トリアジン、ピリミジン、ピラジン、チオキサンテン、ベンゾニトリル、フタロニトリル、イソフタロニトリル、ジフェニルスルホン、トリアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾールおよびベンゾフェノンから選択される少なくとも一つを有する化合物であることが好ましい。
【0415】
アシスティングドーパントとして用いる化合物は、熱活性型遅延蛍光体であって、その発光スペクトルがエミッティングドーパントの吸収ピークと少なくとも一部重なる化合物であることが好ましい。以下において、本発明の発光層のアシスティングドーパントとして用いることができる化合物を例示する。ただし、本発明においてアシスティングドーパントとして用いることができる化合物は、以下の例示化合物によって限定的に解釈されることはなく、下記式において、Meはメチルを表し、t-Buはt-ブチルを表し、Phはフェニルを表し、波線は結合位置を表す。
【0416】
【化243】
【0417】
【化244】
【0418】
【化245】
【0419】
【化246】
【0420】
【化247】
【0421】
【化248】
【0422】
【化249】
【0423】
【化250】
【0424】
【化251】
【0425】
【化252】
【0426】
【化253】
【0427】
【化254】
【0428】
【化255】
【0429】
【化256】
【0430】
【化257】
【0431】
【化258】
【0432】
【化259】
【0433】
【化260】
【0434】
【化261】
【0435】
さらに、熱活性型遅延蛍光体として、下記式(AD1)、(AD2)および(AD3)のいずれかで表される化合物も用いることができる。
【0436】
【化262】
【0437】
式(AD1)、(AD2)および(AD3)中、
Mは、それぞれ独立して、単結合、-O-、>N-Arまたは>CArであり、形成する部分構造のHOMOの深さおよび励起一重項エネルギー準位および励起三重項エネルギー準位の高さの観点から、好ましくは、単結合、-O-または>N-Arである。Jはドナー性の部分構造とアクセプター性の部分構造を分けるスペーサー構造であり、それぞれ独立して、炭素数6~18のアリーレンであり、ドナー性の部分構造とアクセプター性の部分構造から染み出す共役の大きさの観点から、炭素数6~12のアリーレンが好ましい。より具体的には、フェニレン、メチルフェニレンおよびジメチルフェニレンが挙げられる。Qは、それぞれ独立して、=C(-H)-または=N-であり、形成する部分構造のLUMOの浅さおよび励起一重項エネルギー準位および励起三重項エネルギー準位の高さの観点から、好ましくは、=N-である。Arは、それぞれ独立して、水素、炭素数6~24のアリール、炭素数2~24のヘテロアリール、炭素数1~12のアルキルまたは炭素数3~18のシクロアルキルであり、形成する部分構造のHOMOの深さおよび励起一重項エネルギー準位および励起三重項エネルギー準位の高さの観点から、好ましくは、水素、炭素数6~12のアリール、炭素数2~14のヘテロアリール、炭素数1~4のアルキルまたは炭素数6~10のシクロアルキルであり、より好ましくは、水素、フェニル、トリル、キシリル、メシチル、ビフェニル、ピリジル、ビピリジル、トリアジル、カルバゾリル、ジメチルカルバゾリル、ジーtert-ブチルカルバゾリル、ベンゾイミダゾールまたはフェニルベンゾイミダゾールであり、さらに好ましくは、水素、フェニルまたはカルバゾリルである。mは、1または2である。nは、2~(6-m)の整数であり、立体障害の観点から、好ましくは、4~(6-m)の整数である。さらに、上記各式で表される化合物における少なくとも1つの水素は、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
【0438】
本発明の発光層の第2成分として用いる化合物は、より具体的に言えば、4CzBN、4CzBN-Ph、5CzBN、3Cz2DPhCzBN、4CzIPN、2PXZーTAZ、Cz-TRZ3、BDPCC-TPTA、MA-TA、PA-TA、FA-TA、PXZ-TRZ、DMAC-TRZ、BCzT、DCzTrz、DDCzTRz、spiroAC-TRZ、Ac-HPM、Ac-PPM、Ac-MPM、TCzTrz、TmCzTrzおよびDCzmCzTrzであることが好ましい。
【0439】
2-1-3.有機電界発光素子における電子注入層、電子輸送層
電子注入層107は、陰極108から移動してくる電子を、効率よく発光層105内または電子輸送層106内に注入する役割を果たす。電子輸送層106は、陰極108から注入された電子または陰極108から電子注入層107を介して注入された電子を、効率よく発光層105に輸送する役割を果たす。電子輸送層106および電子注入層107は、それぞれ、電子輸送・注入材料の一種または二種以上を積層、混合することにより形成される。電子輸送層106および電子注入層107は、電子輸送・注入材料と高分子結着剤との混合物により形成してもよい。
【0440】
電子注入・輸送層とは、陰極から電子が注入され、さらに電子を輸送することをつかさどる層であり、電子注入効率が高く、注入された電子を効率よく輸送することが望ましい。そのためには電子親和力が大きく、しかも電子移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが好ましい。しかしながら、正孔と電子の輸送バランスを考えた場合に、陽極からの正孔が再結合せずに陰極側へ流れるのを効率よく阻止できる役割を主に果たす場合には、電子輸送能力がそれ程高くなくても、発光効率を向上させる効果は電子輸送能力が高い材料と同等に有する。したがって、本実施形態における電子注入・輸送層は、正孔の移動を効率よく阻止できる層の機能も含まれてもよい。
【0441】
電子輸送層106または電子注入層107を形成する材料(電子輸送材料)としては、光導電材料において電子伝達化合物として従来から慣用されている化合物、有機EL素子の電子注入層および電子輸送層に使用されている公知の化合物の中から任意に選択して用いることができる。
【0442】
電子輸送層または電子注入層に用いられる材料としては、炭素、水素、酸素、硫黄、ケイ素およびリンの中から選ばれる一種以上の原子で構成される芳香族環もしくは複素芳香族環からなる化合物、ピロール誘導体およびその縮合環誘導体および電子受容性窒素を有する金属錯体の中から選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。具体的には、ナフタレン、アントラセンなどの縮合環系芳香族環誘導体、4,4’-ビス(ジフェニルエテニル)ビフェニルに代表されるスチリル系芳香族環誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノンやジフェノキノンなどのキノン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、アリールニトリル誘導体およびインドール誘導体などが挙げられる。電子受容性窒素を有する金属錯体としては、例えば、ヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体およびベンゾキノリン金属錯体などが挙げられる。これらの材料は単独でも用いられるが、異なる材料と混合して使用しても構わない。
【0443】
また、他の電子伝達化合物の具体例として、ボラン誘導体、ピリジン誘導体、ナフタレン誘導体、フルオランテン誘導体、BO系誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、フェナントロリン誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ペリレン誘導体、オキサジアゾール誘導体(1,3-ビス[(4-t-ブチルフェニル)1,3,4-オキサジアゾリル]フェニレンなど)、チオフェン誘導体、トリアゾール誘導体(N-ナフチル-2,5-ジフェニル-1,3,4-トリアゾールなど)、チアジアゾール誘導体、オキシン誘導体の金属錯体、キノリノール系金属錯体、キノキサリン誘導体、キノキサリン誘導体のポリマー、ベンザゾール類化合物、ガリウム錯体、ピラゾール誘導体、パーフルオロ化フェニレン誘導体、トリアジン誘導体、ピラジン誘導体、ベンゾキノリン誘導体(2,2’-ビス(ベンゾ[h]キノリン-2-イル)-9,9’-スピロビフルオレンなど)、イミダゾピリジン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体(トリス(N-フェニルベンゾイミダゾール-2-イル)ベンゼンなど)、ベンゾオキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、キノリン誘導体、テルピリジンなどのオリゴピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、テルピリジン誘導体(1,3-ビス(4’-(2,2’:6’2”-テルピリジニル))ベンゼンなど)、ナフチリジン誘導体(ビス(1-ナフチル)-4-(1,8-ナフチリジン-2-イル)フェニルホスフィンオキサイドなど)、アルダジン誘導体、ピリミジン誘導体、アリールニトリル誘導体、インドール誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ビススチリル誘導体、シロール誘導体およびアゾリン誘導体などが挙げられる。
【0444】
また、電子受容性窒素を有する金属錯体を用いることもでき、例えば、キノリノール系金属錯体やヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体およびベンゾキノリン金属錯体などが挙げられる。
【0445】
上述した材料は単独でも用いられるが、異なる材料と混合して使用しても構わない。
【0446】
上述した材料の中でも、ボラン誘導体、ピリジン誘導体、フルオランテン誘導体、BO系誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ピリミジン誘導体、アリールニトリル誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、およびキノリノール系金属錯体が好ましい。
【0447】
<ボラン誘導体>
ボラン誘導体は、例えば下記式(ETM-1)で表される化合物であり、詳細には特開2007-27587号公報に開示されている。
【化263】
【0448】
式(ETM-1)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも1つであり、R13~R16は、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、または置換されていてもよいアリールであり、Xは、置換されていてもよいアリーレンであり、Yは、置換されていてもよい炭素数16以下のアリール、置換されているボリル、または置換されていてもよいカルバゾリルであり、そして、nはそれぞれ独立して0~3の整数である。また、「置換されていてもよい」または「置換されている」場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルなどがあげられる。
【0449】
式(ETM-1)で表される化合物の中でも、下記式(ETM-1-1)で表される化合物や下記式(ETM-1-2)で表される化合物が好ましい。
【化264】
【0450】
式(ETM-1-1)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも1つであり、R13~R16は、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、または置換されていてもよいアリールであり、R21およびR22は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも1つであり、Xは、置換されていてもよい炭素数20以下のアリーレンであり、nはそれぞれ独立して0~3の整数であり、そして、mはそれぞれ独立して0~4の整数である。また、「置換されていてもよい」または「置換されている」場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルなどがあげられる。
【0451】
【化265】
【0452】
式(ETM-1-2)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも1つであり、R13~R16は、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、または置換されていてもよいアリールであり、Xは、置換されていてもよい炭素数20以下のアリーレンであり、そして、nはそれぞれ独立して0~3の整数である。また、「置換されていてもよい」または「置換されている」場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルなどがあげられる。
【0453】
の具体的な例としては、下記式(X-1)~式(X-9)のいずれかで表される2価の基があげられる。
【化266】
(各式中、Rは、それぞれ独立してアルキル、シクロアルキルまたは置換されていてもよいフェニルであり、*は結合位置を表す。)
【0454】
このボラン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
【化267】
【0455】
このボラン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
【0456】
<ピリジン誘導体>
ピリジン誘導体は、例えば下記式(ETM-2)で表される化合物であり、好ましくは式(ETM-2-1)または式(ETM-2-2)で表される化合物である。
【0457】
【化268】
【0458】
φは、n価のアリール環(好ましくはn価のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環またはトリフェニレン環)であり、nは1~4の整数である。
【0459】
式(ETM-2-1)において、R11~R18は、それぞれ独立して、水素、アルキル(好ましくは炭素数1~24のアルキル)、シクロアルキル(好ましくは炭素数3~12のシクロアルキル)またはアリール(好ましくは炭素数6~30のアリール)である。
【0460】
式(ETM-2-2)において、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル(好ましくは炭素数1~24のアルキル)、シクロアルキル(好ましくは炭素数3~12のシクロアルキル)またはアリール(好ましくは炭素数6~30のアリール)であり、R11およびR12は結合して環を形成していてもよい。
【0461】
各式において、「ピリジン系置換基」は、下記式(Py-1)~式(Py-15)のいずれか(式中の*は、結合位置を表す。)であり、ピリジン系置換基はそれぞれ独立して炭素数1~4のアルキルで置換されていてもよい。また、ピリジン系置換基はフェニレン基やナフチレン基を介して各式におけるφ、アントラセン環またはフルオレン環に結合していてもよい。
【0462】
【化269】
【0463】
ピリジン系置換基は、上記式(Py-1)~式(Py-15)のいずれかであるが、これらの中でも、下記式(Py-21)~式(Py-44)のいずれか(式中の*は、結合位置を表す。)であることが好ましい。
【0464】
【化270】
【0465】
各ピリジン誘導体における少なくとも1つの水素が重水素で置換されていてもよく、また、上記式(ETM-2-1)および式(ETM-2-2)における2つの「ピリジン系置換基」のうちの一方はアリールで置き換えられていてもよい。
【0466】
11~R18における「アルキル」としては、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1~24の直鎖アルキルまたは炭素数3~24の分岐鎖アルキルが挙げられる。好ましい「アルキル」は、炭素数1~18のアルキル(炭素数3~18の分岐鎖アルキル)である。より好ましい「アルキル」は、炭素数1~12のアルキル(炭素数3~12の分岐鎖アルキル)である。さらに好ましい「アルキル」は、炭素数1~6のアルキル(炭素数3~6の分岐鎖アルキル)である。特に好ましい「アルキル」は、炭素数1~4のアルキル(炭素数3~4の分岐鎖アルキル)である。
【0467】
具体的な「アルキル」としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t-ペンチル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、n-オクチル、t-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、2,6-ジメチル-4-ヘプチル、3,5,5-トリメチルヘキシル、n-デシル、n-ウンデシル、1-メチルデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、1-ヘキシルヘプチル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、n-エイコシルなどが挙げられる。
【0468】
ピリジン系置換基に置換する炭素数1~4のアルキルとしては、上記アルキルの説明を引用することができる。
【0469】
11~R18における「シクロアルキル」としては、例えば、炭素数3~12のシクロアルキルが挙げられる。好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3~10のシクロアルキルである。より好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3~8のシクロアルキルである。さらに好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3~6のシクロアルキルである。
具体的な「シクロアルキル」としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、シクロヘプチル、メチルシクロヘキシル、シクロオクチルまたはジメチルシクロヘキシルなどが挙げられる。
【0470】
11~R18における「アリール」としては、好ましいアリールは炭素数6~30のアリールであり、より好ましいアリールは炭素数6~18のアリールであり、さらに好ましくは炭素数6~14のアリールであり、特に好ましくは炭素数6~12のアリールである。
【0471】
具体的な「炭素数6~30のアリール」としては、単環系アリールであるフェニル、縮合二環系アリールである(1-,2-)ナフチル、縮合三環系アリールである、アセナフチレン-(1-,3-,4-,5-)イル、フルオレン-(1-,2-,3-,4-,9-)イル、フェナレン-(1-,2-)イル、(1-,2-,3-,4-,9-)フェナントリル、縮合四環系アリールであるトリフェニレン-(1-,2-)イル、ピレン-(1-,2-,4-)イル、ナフタセン-(1-,2-,5-)イル、縮合五環系アリールであるペリレン-(1-,2-,3-)イル、ペンタセン-(1-,2-,5-,6-)イルなどが挙げられる。
【0472】
好ましい「炭素数6~30のアリール」は、フェニル、ナフチル、フェナントリル、クリセニルまたはトリフェニレニルなどが挙げられ、さらに好ましくはフェニル、1-ナフチル、2-ナフチルまたはフェナントリルが挙げられ、特に好ましくはフェニル、1-ナフチルまたは2-ナフチルが挙げられる。
【0473】
上記式(ETM-2-2)におけるR11およびR12は結合して環を形成していてもよく、この結果、フルオレン骨格の5員環には、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、フルオレンまたはインデンなどがスピロ結合していてもよい。
【0474】
このピリジン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
【化271】
【0475】
このピリジン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
【0476】
<フルオランテン誘導体>
フルオランテン誘導体は、例えば下記式(ETM-3)で表される化合物であり、詳細には国際公開第2010/134352号に開示されている。
【化272】
【0477】
式(ETM-3)中、X12~X21は水素、ハロゲン、直鎖、分岐もしくは環状のアルキル、直鎖、分岐もしくは環状のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリール、または置換もしくは無置換のヘテロアリールを表す。ここで、置換されている場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルなどがあげられる。
【0478】
このフルオランテン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。以下式中、Meはメチルを表す。
【化273】
【0479】
<BO系誘導体>
BO系誘導体は、例えば下記式(ETM-4)で表される多環芳香族化合物、または下記式(ETM-4)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体である。
【化274】
【0480】
61~R71は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、またはジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)であり、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよい。
【0481】
また、R61~R71のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、またはジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)で置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよい。
【0482】
また、式(ETM-4)で表される化合物または構造における少なくとも1つの水素がハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
【0483】
式(ETM-4)における置換基や環形成の形態の説明については、式(1)または式(2)で表される多環芳香族化合物の説明を引用することができる。
【0484】
このBO系誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
【化275】
【0485】
このBO系誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
【0486】
<アントラセン誘導体>
アントラセン誘導体の1つは、例えば下記式(ETM-5-1)で表される化合物である。
【化276】
【0487】
Arは、それぞれ独立して、2価のベンゼンまたはナフタレンであり、R~Rは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~6のアルキル、炭素数3から6のシクロアルキルまたは炭素数6~20のアリールである。
【0488】
Arは、それぞれ独立して、2価のベンゼンまたはナフタレンから適宜選択することができ、2つのArが異なっていても同じであってもよいが、アントラセン誘導体の合成の容易さの観点からは同じであることが好ましい。Arはピリジンと結合して、「Arおよびピリジンからなる部位」を形成しており、この部位は例えば下記式(Py-1)~式(Py-12)のいずれかで表される基としてアントラセンに結合している。下記の式中の*は、結合位置を表す。
【0489】
【化277】
【0490】
これらの基の中でも、式(Py-1)~式(Py-9)のいずれかで表される基が好ましく、式(Py-1)~式(Py-6)のいずれかで表される基がより好ましい。アントラセンに結合する2つの「Arおよびピリジンからなる部位」は、その構造が同じであっても異なっていてもよいが、アントラセン誘導体の合成の容易さの観点からは同じ構造であることが好ましい。ただし、素子特性の観点からは、2つの「Arおよびピリジンからなる部位」の構造が同じであっても異なっていても好ましい。
【0491】
~Rにおける炭素数1~6のアルキルについては直鎖および分岐鎖のいずれでもよい。すなわち、炭素数1~6の直鎖アルキルまたは炭素数3~6の分岐鎖アルキルである。より好ましくは、炭素数1~4のアルキル(炭素数3~4の分岐鎖アルキル)である。具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t-ペンチル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、または2-エチルブチルなどがあげられ、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、またはt-ブチルが好ましく、メチル、エチル、またはt-ブチルがより好ましい。
【0492】
~Rにおける炭素数3~6のシクロアルキルの具体例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、シクロヘプチル、メチルシクロヘキシル、シクロオクチルまたはジメチルシクロヘキシルなどがあげられる。
【0493】
~Rにおける炭素数6~20のアリールについては、炭素数6~16のアリールが好ましく、炭素数6~12のアリールがより好ましく、炭素数6~10のアリールが特に好ましい。
【0494】
「炭素数6~20のアリール」の具体例としては、単環系アリールであるフェニル、(o-,m-,p-)トリル、(2,3-,2,4-,2,5-,2,6-,3,4-,3,5-)キシリル、メシチル(2,4,6-トリメチルフェニル)、(o-,m-,p-)クメニル、二環系アリールである(2-,3-,4-)ビフェニリル、縮合二環系アリールである(1-,2-)ナフチル、三環系アリールであるテルフェニリル(m-テルフェニル-2’-イル、m-テルフェニル-4’-イル、m-テルフェニル-5’-イル、o-テルフェニル-3’-イル、o-テルフェニル-4’-イル、p-テルフェニル-2’-イル、m-テルフェニル-2-イル、m-テルフェニル-3-イル、m-テルフェニル-4-イル、o-テルフェニル-2-イル、o-テルフェニル-3-イル、o-テルフェニル-4-イル、p-テルフェニル-2-イル、p-テルフェニル-3-イル、p-テルフェニル-4-イル)、縮合三環系アリールである、アントラセン-(1-,2-,9-)イル、アセナフチレン-(1-,3-,4-,5-)イル、フルオレン-(1-,2-,3-,4-,9-)イル、フェナレン-(1-,2-)イル、(1-,2-,3-,4-,9-)フェナントリル、縮合四環系アリールであるトリフェニレン-(1-,2-)イル、ピレン-(1-,2-,4-)イル、テトラセン-(1-,2-,5-)イル、縮合五環系アリールであるペリレン-(1-,2-,3-)イルなどがあげられる。
【0495】
好ましい「炭素数6~20のアリール」は、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリルまたはナフチルであり、より好ましくは、フェニル、ビフェニリル、1-ナフチル、2-ナフチルまたはm-テルフェニル-5’-イルであり、さらに好ましくは、フェニル、ビフェニリル、1-ナフチルまたは2-ナフチルであり、最も好ましくはフェニルである。
【0496】
アントラセン誘導体の1つは、例えば下記式(ETM-5-2)で表される化合物である。
【化278】
【0497】
Arは、それぞれ独立して、単結合、2価のベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、またはフェナレンである。
【0498】
Arは、それぞれ独立して、炭素数6~20のアリールであり、式(ETM-5-1)における「炭素数6~20のアリール」と同じ説明を引用することができる。炭素数6~16のアリールが好ましく、炭素数6~12のアリールがより好ましく、炭素数6~10のアリールが特に好ましい。具体例としては、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、テルフェニリル、アントラセニル、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントリル、トリフェニレニル、ピレニル、テトラセニル、ペリレニルなどがあげられる。
【0499】
~Rは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~6のアルキル、炭素数3から6のシクロアルキルまたは炭素数6~20のアリールであり、式(ETM-5-1)における説明を引用することができる。
【0500】
これらのアントラセン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
【化279】
【0501】
これらのアントラセン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
【0502】
<ベンゾフルオレン誘導体>
ベンゾフルオレン誘導体は、例えば下記式(ETM-6)で表される化合物である。
【化280】
【0503】
Arは、それぞれ独立して、炭素数6~20のアリールであり、式(ETM-5-1)における「炭素数6~20のアリール」と同じ説明を引用することができる。炭素数6~16のアリールが好ましく、炭素数6~12のアリールがより好ましく、炭素数6~10のアリールが特に好ましい。具体例としては、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、テルフェニリル、アントラセニル、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントリル、トリフェニレニル、ピレニル、テトラセニル、ペリレニルなどがあげられる。
【0504】
Arは、それぞれ独立して、水素、アルキル(好ましくは炭素数1~24のアルキル)、シクロアルキル(好ましくは炭素数3~12のシクロアルキル)またはアリール(好ましくは炭素数6~30のアリール)であり、2つのArは結合して環を形成していてもよい。
【0505】
Arにおける「アルキル」としては、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1~24の直鎖アルキルまたは炭素数3~24の分岐鎖アルキルがあげられる。好ましい「アルキル」は、炭素数1~18のアルキル(炭素数3~18の分岐鎖アルキル)である。より好ましい「アルキル」は、炭素数1~12のアルキル(炭素数3~12の分岐鎖アルキル)である。さらに好ましい「アルキル」は、炭素数1~6のアルキル(炭素数3~6の分岐鎖アルキル)である。特に好ましい「アルキル」は、炭素数1~4のアルキル(炭素数3~4の分岐鎖アルキル)である。具体的な「アルキル」としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t-ペンチル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシルなどがあげられる。
【0506】
Arにおける「シクロアルキル」としては、例えば、炭素数3~12のシクロアルキルがあげられる。好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3~10のシクロアルキルである。より好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3~8のシクロアルキルである。さらに好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3~6のシクロアルキルである。具体的な「シクロアルキル」としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、シクロヘプチル、メチルシクロヘキシル、シクロオクチルまたはジメチルシクロヘキシルなどがあげられる。
【0507】
Arにおける「アリール」としては、好ましいアリールは炭素数6~30のアリールであり、より好ましいアリールは炭素数6~18のアリールであり、さらに好ましくは炭素数6~14のアリールであり、特に好ましくは炭素数6~12のアリールである。
【0508】
具体的な「炭素数6~30のアリール」としては、フェニル、ナフチル、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントリル、トリフェニレニル、ピレニル、ナフタセニル、ペリレニル、ペンタセニルなどがあげられる。
【0509】
2つのArは結合して環を形成していてもよく、この結果、フルオレン骨格の5員環には、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、フルオレンまたはインデンなどがスピロ結合していてもよい。
【0510】
このベンゾフルオレン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
【化281】
【0511】
このベンゾフルオレン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
【0512】
<ホスフィンオキサイド誘導体>
ホスフィンオキサイド誘導体は、例えば下記式(ETM-7-1)で表される化合物である。詳細は国際公開第2013/079217号および国際公開第2013/079678号にも記載されている。
【化282】
【0513】
は、置換または無置換の、炭素数1~20のアルキル、炭素数6~20のアリールまたは炭素数5~20のヘテロアリールであり、
は、CN、置換または無置換の、炭素数1~20のアルキル、炭素数1~20のヘテロアルキル、炭素数6~20のアリール、炭素数5~20のヘテロアリール、炭素数1~20のアルコキシまたは炭素数6~20のアリールオキシであり、
およびRは、それぞれ独立して、置換または無置換の、炭素数6~20のアリールまたは炭素数5~20のヘテロアリールであり、
は酸素または硫黄であり、
jは0または1であり、kは0または1であり、rは0~4の整数であり、qは1~3の整数である。
【0514】
ホスフィンオキサイド誘導体は、例えば下記式(ETM-7-2)で表される化合物でもよい。
【化283】
【0515】
~Rは、同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール、複素環基、ハロゲン、シアノ、アルデヒド、カルボニル、カルボキシル、アミノ、ニトロ、シリル、および隣接置換基との間に形成される縮合環の中から選ばれる。
【0516】
Arは、同じでも異なっていてもよく、アリーレンまたはヘテロアリーレ基であり、Arは、同じでも異なっていてもよく、アリールまたはヘテロアリールである。ただし、ArおよびArのうち少なくとも一方は置換基を有しているか、または隣接置換基との間に縮合環を形成している。nは0~3の整数であり、nが0のとき不飽和構造部分は存在せず、nが3のときR1は存在しない。
【0517】
これらの置換基の内、アルキルとは、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどの飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。置換されている場合の置換基には特に制限は無く、例えば、アルキル、アリール、複素環基などを挙げることができ、この点は、以下の記載にも共通する。また、アルキルの炭素数は特に限定されないが、入手の容易性やコストの点から、通常、1~20の範囲である。
【0518】
また、シクロアルキルとは、例えば、シクロプロピル、シクロヘキシル、ノルボルニル、アダマンチルなどの飽和脂環式炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。アルキル部分の炭素数は特に限定されないが、通常、3~20の範囲である。
【0519】
また、アラルキルとは、例えば、ベンジル、フェニルエチルなどの脂肪族炭化水素を介した芳香族炭化水素基を示し、脂肪族炭化水素と芳香族炭化水素はいずれも無置換でも置換されていてもかまわない。脂肪族部分の炭素数は特に限定されないが、通常、1~20の範囲である。
【0520】
また、アルケニルとは、例えば、ビニル、アリル、ブタジエニルなどの二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。アルケニルの炭素数は特に限定されないが、通常、2~20の範囲である。
【0521】
また、シクロアルケニルとは、例えば、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル基などの二重結合を含む不飽和脂環式炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。
【0522】
また、アルキニルとは、例えば、アセチレニルなどの三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。アルキニルの炭素数は特に限定されないが、通常、2~20の範囲である。
【0523】
また、アルコキシとは、例えば、メトキシなどのエーテル結合を介した脂肪族炭化水素基を示し、脂肪族炭化水素基は無置換でも置換されていてもかまわない。アルコキシの炭素数は特に限定されないが、通常、1~20の範囲である。
【0524】
また、アルキルチオとは、アルコキシのエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換された基である。
【0525】
また、アリールエーテル基とは、例えば、フェノキシなどのエーテル結合を介した芳香族炭化水素基を示し、芳香族炭化水素基は無置換でも置換されていてもかまわない。アリールエーテル基の炭素数は特に限定されないが、通常、6~40の範囲である。
【0526】
また、アリールチオエーテル基とは、アリールエーテル基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換された基である。
【0527】
また、アリールとは、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニリル、フェナントリル、テルフェニリル、ピレニルなどの芳香族炭化水素基を示す。アリールは、無置換でも置換されていてもかまわない。アリールの炭素数は特に限定されないが、通常、6~40の範囲である。
【0528】
また、複素環基とは、例えば、フラニル、チオフェニル、オキサゾリル、ピリジル、キノリニル、カルバゾリルなどの炭素以外の原子を有する環状構造基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。複素環基の炭素数は特に限定されないが、通常、2~30の範囲である。
【0529】
ハロゲンとは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を示す。
【0530】
アルデヒド、カルボニル、アミノには、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、複素環などで置換された基も含むことができる。
【0531】
また、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、複素環は無置換でも置換されていてもかまわない。
【0532】
シリルとは、例えば、トリメチルシリルなどのケイ素化合物基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。シリルの炭素数は特に限定されないが、通常、3~20の範囲である。また、ケイ素数は、通常、1~6である。
【0533】
隣接置換基との間に形成される縮合環とは、例えば、ArとR、ArとR、ArとR、ArとR、RとR、ArとArなどの間で形成された共役または非共役の縮合環である。ここで、nが1の場合、2つのR同士で共役または非共役の縮合環を形成してもよい。これら縮合環は、環内構造に窒素、酸素、硫黄原子を含んでいてもよいし、さらに別の環と縮合してもよい。
【0534】
このホスフィンオキサイド誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
【化284】
【0535】
このホスフィンオキサイド誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
【0536】
<ピリミジン誘導体>
ピリミジン誘導体は、例えば下記式(ETM-8)で表される化合物であり、好ましくは下記式(ETM-8-1)で表される化合物である。詳細は国際公開第2011/021689号にも記載されている。
【化285】
【0537】
Arは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールである。nは1~4の整数であり、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2または3である。
【0538】
「置換されていてもよいアリール」の「アリール」としては、例えば、炭素数6~30のアリールが挙げられ、好ましくは炭素数6~24のアリール、より好ましくは炭素数6~20のアリール、さらに好ましくは炭素数6~12のアリールである。
【0539】
具体的な「アリール」としては、単環系アリールであるフェニル、二環系アリールである(2-,3-,4-)ビフェニリル、縮合二環系アリールである(1-,2-)ナフチル、三環系アリールであるテルフェニリル(m-テルフェニル-2’-イル、m-テルフェニル-4’-イル、m-テルフェニル-5’-イル、o-テルフェニル-3’-イル、o-テルフェニル-4’-イル、p-テルフェニル-2’-イル、m-テルフェニル-2-イル、m-テルフェニル-3-イル、m-テルフェニル-4-イル、o-テルフェニル-2-イル、o-テルフェニル-3-イル、o-テルフェニル-4-イル、p-テルフェニル-2-イル、p-テルフェニル-3-イル、p-テルフェニル-4-イル)、縮合三環系アリールである、アセナフチレン-(1-,3-,4-,5-)イル、フルオレン-(1-,2-,3-,4-,9-)イル、フェナレン-(1-,2-)イル、(1-,2-,3-,4-,9-)フェナントリル、四環系アリールであるクアテルフェニリル(5’-フェニル-m-テルフェニル-2-イル、5’-フェニル-m-テルフェニル-3-イル、5’-フェニル-m-テルフェニル-4-イル、m-クアテルフェニリル)、縮合四環系アリールであるトリフェニレン-(1-,2-)イル、ピレン-(1-,2-,4-)イル、ナフタセン-(1-,2-,5-)イル、縮合五環系アリールであるペリレン-(1-,2-,3-)イル、ペンタセン-(1-,2-,5-,6-)イルなどが挙げられる。
【0540】
「置換されていてもよいヘテロアリール」の「ヘテロアリール」としては、例えば、炭素数2~30のヘテロアリールが挙げられ、炭素数2~25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2~20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2~15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2~10のヘテロアリールが特に好ましい。また、ヘテロアリールとしては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などが挙げられる。
【0541】
具体的なヘテロアリールとしては、例えば、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、フラザニル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾ[b]チエニル、インドリル、イソインドリル、1H-インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H-ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、キナゾリル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェノキサチイニル、チアントレニル、インドリジニルなどが挙げられる。
【0542】
また、上記アリールおよびヘテロアリールは置換されていてもよく、それぞれ例えば上記アリールやヘテロアリールで置換されていてもよい。
【0543】
このピリミジン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
【化286】
【0544】
このピリミジン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
【0545】
<アリールニトリル誘導体>
アリールニトリル誘導体は、例えば下記式(ETM-9)で表される化合物、またはそれが単結合などで複数結合した多量体である。詳細は米国出願公開第2014/0197386号明細書に記載されている。
【化287】
【0546】
Arniは、速い電子輸送性の観点からは炭素数が多いことが好ましく、高いT1の観点からは炭素数が少ないことが好ましい。Arniは、具体的には、発光層に隣接する層に用いるには高いT1であることが好ましく、炭素数6~20のアリールであり、好ましくは炭素数6~14のアリール、より好ましくは炭素数6~10のアリールである。また、ニトリルの置換個数nは、高いT1の観点からは多いことが好ましく、高いS1の観点からは少ないことが好ましい。ニトリルの置換個数nは、具体的には、1~4の整数であり、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは1~2の整数であり、さらに好ましくは1である。
【0547】
Arは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールである。高いS1および高いT1の観点からドナー性のヘテロアリールであることが好ましく、電子輸送層として用いるためドナー性のヘテロアリールは少ないことが好ましい。電荷輸送性の観点からは炭素数の多いアリールまたはヘテロアリールが好ましく、置換基を多く有することが好ましい。Arの置換個数mは、具体的には、1~4の整数であり、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは1~2である。
【0548】
「置換されていてもよいアリール」の「アリール」としては、例えば、炭素数6~30のアリールがあげられ、好ましくは炭素数6~24のアリール、より好ましくは炭素数6~20のアリール、さらに好ましくは炭素数6~12のアリールである。
【0549】
具体的な「アリール」としては、単環系アリールであるフェニル、二環系アリールである(2-,3-,4-)ビフェニリル、縮合二環系アリールである(1-,2-)ナフチル、三環系アリールであるテルフェニリル(m-テルフェニル-2’-イル、m-テルフェニル-4’-イル、m-テルフェニル-5’-イル、o-テルフェニル-3’-イル、o-テルフェニル-4’-イル、p-テルフェニル-2’-イル、m-テルフェニル-2-イル、m-テルフェニル-3-イル、m-テルフェニル-4-イル、o-テルフェニル-2-イル、o-テルフェニル-3-イル、o-テルフェニル-4-イル、p-テルフェニル-2-イル、p-テルフェニル-3-イル、p-テルフェニル-4-イル)、縮合三環系アリールである、アセナフチレン-(1-,3-,4-,5-)イル、フルオレン-(1-,2-,3-,4-,9-)イル、フェナレン-(1-,2-)イル、(1-,2-,3-,4-,9-)フェナントリル、四環系アリールであるクアテルフェニリル(5’-フェニル-m-テルフェニル-2-イル、5’-フェニル-m-テルフェニル-3-イル、5’-フェニル-m-テルフェニル-4-イル、m-クアテルフェニリル)、縮合四環系アリールであるトリフェニレン-(1-,2-)イル、ピレン-(1-,2-,4-)イル、ナフタセン-(1-,2-,5-)イル、縮合五環系アリールであるペリレン-(1-,2-,3-)イル、ペンタセン-(1-,2-,5-,6-)イルなどがあげられる。
【0550】
「置換されていてもよいヘテロアリール」の「ヘテロアリール」としては、例えば、炭素数2~30のヘテロアリールがあげられ、炭素数2~25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2~20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2~15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2~10のヘテロアリールが特に好ましい。また、ヘテロアリールとしては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などがあげられる。
【0551】
具体的なヘテロアリールとしては、例えば、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、フラザニル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾ[b]チエニル、インドリル、イソインドリル、1H-インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H-ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、キナゾリル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェノキサチイニル、チアントレニル、インドリジニルなどがあげられる。
【0552】
また、上記アリールおよびヘテロアリールは置換されていてもよく、それぞれ例えば上記アリールやヘテロアリールで置換されていてもよい。
【0553】
アリールニトリル誘導体は、式(ETM-9)で表される化合物が単結合などで複数結合した多量体であってもよい。この場合、単結合以外に、アリール環(好ましくは多価のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環またはトリフェニレン環)で結合されていてもよい。
【0554】
このアリールニトリル誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
【化288】
【0555】
このアリールニトリル誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
【0556】
<トリアジン誘導体>
トリアジン誘導体は、例えば下記式(ETM-10)で表される化合物であり、好ましくは下記式(ETM-10-1)で表される化合物である。詳細は米国公開公報2011/0156013号公報に記載されている。
【化289】
【0557】
Arは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールである。nは1~4の整数であり、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2または3である。
【0558】
「置換されていてもよいアリール」の「アリール」としては、例えば、炭素数6~30のアリールが挙げられ、好ましくは炭素数6~24のアリール、より好ましくは炭素数6~20のアリール、さらに好ましくは炭素数6~12のアリールである。
【0559】
具体的な「アリール」としては、単環系アリールであるフェニル、二環系アリールである(2-,3-,4-)ビフェニリル、縮合二環系アリールである(1-,2-)ナフチル、三環系アリールであるテルフェニリル(m-テルフェニル-2’-イル、m-テルフェニル-4’-イル、m-テルフェニル-5’-イル、o-テルフェニル-3’-イル、o-テルフェニル-4’-イル、p-テルフェニル-2’-イル、m-テルフェニル-2-イル、m-テルフェニル-3-イル、m-テルフェニル-4-イル、o-テルフェニル-2-イル、o-テルフェニル-3-イル、o-テルフェニル-4-イル、p-テルフェニル-2-イル、p-テルフェニル-3-イル、p-テルフェニル-4-イル)、縮合三環系アリールである、アセナフチレン-(1-,3-,4-,5-)イル、フルオレン-(1-,2-,3-,4-,9-)イル、フェナレン-(1-,2-)イル、(1-,2-,3-,4-,9-)フェナントリル、四環系アリールであるクアテルフェニリル(5’-フェニル-m-テルフェニル-2-イル、5’-フェニル-m-テルフェニル-3-イル、5’-フェニル-m-テルフェニル-4-イル、m-クアテルフェニリル)、縮合四環系アリールであるトリフェニレン-(1-,2-)イル、ピレン-(1-,2-,4-)イル、ナフタセン-(1-,2-,5-)イル、縮合五環系アリールであるペリレン-(1-,2-,3-)イル、ペンタセン-(1-,2-,5-,6-)イルなどが挙げられる。
【0560】
「置換されていてもよいヘテロアリール」の「ヘテロアリール」としては、例えば、炭素数2~30のヘテロアリールが挙げられ、炭素数2~25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2~20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2~15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2~10のヘテロアリールが特に好ましい。また、ヘテロアリールとしては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などが挙げられる。
【0561】
具体的なヘテロアリールとしては、例えば、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、フラザニル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾ[b]チエニル、インドリル、イソインドリル、1H-インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H-ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、キナゾリル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェノキサチイニル、チアントレニル、インドリジニルなどが挙げられる。
【0562】
また、上記アリールおよびヘテロアリールは置換されていてもよく、それぞれ例えば上記アリールやヘテロアリールで置換されていてもよい。
【0563】
このトリアジン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
【化290】
【0564】
このトリアジン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
【0565】
<ベンゾイミダゾール誘導体>
ベンゾイミダゾール誘導体は、例えば下記式(ETM-11)で表される化合物である。
【化291】
【0566】
φは、n価のアリール環(好ましくはn価のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環またはトリフェニレン環)であり、nは1~4の整数であり、「ベンゾイミダゾール系置換基」は、上記式(ETM-2)、式(ETM-2-1)および式(ETM-2-2)における「ピリジン系置換基」の中のピリジルがベンゾイミダゾリルに置き換わった置換基であり、ベンゾイミダゾール誘導体における少なくとも1つの水素は重水素で置換されていてもよい。
【化292】
【0567】
上記ベンゾイミダゾリルにおけるR11は、水素、炭素数1~24のアルキル、炭素数3~12のシクロアルキルまたは炭素数6~30のアリールであり、上記式(ETM-2-1)および式(ETM-2-2)におけるR11の説明を引用することができる。
【0568】
φは、さらに、アントラセン環またはフルオレン環であることが好ましく、この場合の構造は上記式(ETM-2-1)または式(ETM-2-2)での説明を引用することができ、各式中のR11~R18は上記式(ETM-2-1)または式(ETM-2-2)での説明を引用することができる。また、上記式(ETM-2-1)または式(ETM-2-2)では2つのピリジン系置換基が結合した形態で説明されているが、これらをベンゾイミダゾール系置換基に置き換えるときには、両方のピリジン系置換基をベンゾイミダゾール系置換基で置き換えてもよいし(すなわちn=2)、いずれか1つのピリジン系置換基をベンゾイミダゾール系置換基で置き換えて他方のピリジン系置換基をR11~R18で置き換えてもよい(すなわちn=1)。さらに、例えば上記式(ETM-2-1)におけるR11~R18の少なくとも1つをベンゾイミダゾール系置換基で置き換えて「ピリジン系置換基」をR11~R18で置き換えてもよい。
【0569】
このベンゾイミダゾール誘導体の具体例としては、例えば1-フェニル-2-(4-(10-フェニルアントラセン-9-イル)フェニル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール、2-(4-(10-(ナフタレン-2-イル)アントラセン-9-イル)フェニル)-1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール、2-(3-(10-(ナフタレン-2-イル)アントラセン-9-イル)フェニル)-1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール、5-(10-(ナフタレン-2-イル)アントラセン-9-イル)-1,2-ジフェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール、1-(4-(10-(ナフタレン-2-イル)アントラセン-9-イル)フェニル)-2-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール、2-(4-(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン-2-イル)フェニル)-1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール、1-(4-(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン-2-イル)フェニル)-2-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール、5-(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン-2-イル)-1,2-ジフェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾールなどが挙げられる。
【化293】
【0570】
このベンゾイミダゾール誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
【0571】
<フェナントロリン誘導体>
フェナントロリン誘導体は、例えば下記式(ETM-12)または式(ETM-12-1)で表される化合物である。詳細は国際公開第2006/021982号に記載されている。
【化294】
【0572】
φは、n価のアリール環(好ましくはn価のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環またはトリフェニレン環)であり、nは1~4の整数である。
【0573】
各式のR11~R18は、それぞれ独立して、水素、アルキル(好ましくは炭素数1~24のアルキル)、シクロアルキル(好ましくは炭素数3~12のシクロアルキル)またはアリール(好ましくは炭素数6~30のアリール)である。また、上記式(ETM-12-1)においてはR11~R18のいずれかがアリール環であるφと結合する。
【0574】
各フェナントロリン誘導体における少なくとも1つの水素が重水素で置換されていてもよい。
【0575】
11~R18におけるアルキル、シクロアルキルおよびアリールとしては、上記式(ETM-2)におけるR11~R18の説明を引用することができる。また、φは上記した例のほかに、例えば、以下の構造式が挙げられる。なお、下記構造式中のRは、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、イソプロピル、シクロヘキシル、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、ビフェニリルまたはテルフェニリルであり、*は、結合位置を表す。
【化295】
【0576】
このフェナントロリン誘導体の具体例としては、例えば4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、9,10-ジ(1,10-フェナントロリン-2-イル)アントラセン、2,6-ジ(1,10-フェナントロリン-5-イル)ピリジン、1,3,5-トリ(1,10-フェナントロリン-5-イル)ベンゼン、9,9’-ジフルオル-ビス(1,10-フェナントロリン-5-イル)、バソクプロインや1,3-ビス(2-フェニル-1,10-フェナントロリン-9-イル)ベンゼンなどが挙げられる。
【化296】
【0577】
このフェナントロリン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
【0578】
<キノリノール系金属錯体>
キノリノール系金属錯体は、例えば下記式(ETM-13)で表される化合物である。
【化297】
式中、R~Rは水素または置換基であり、MはLi、Al、Ga、BeまたはZnであり、nは1~3の整数である。
【0579】
キノリノール系金属錯体の具体例としては、8-キノリノールリチウム、トリス(8-キノリノラート)アルミニウム、トリス(4-メチル-8-キノリノラート)アルミニウム、トリス(5-メチル-8-キノリノラート)アルミニウム、トリス(3,4-ジメチル-8-キノリノラート)アルミニウム、トリス(4,5-ジメチル-8-キノリノラート)アルミニウム、トリス(4,6-ジメチル-8-キノリノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(フェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(2-メチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(3-メチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(4-メチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(2-フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(3-フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(4-フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(2,3-ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(2,6-ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(3,4-ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(3,5-ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(3,5-ジ-t-ブチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(2,6-ジフェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(2,4,6-トリフェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(2,4,6-トリメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(2,4,5,6-テトラメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(1-ナフトラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(2-ナフトラート)アルミニウム、ビス(2,4-ジメチル-8-キノリノラート)(2-フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4-ジメチル-8-キノリノラート)(3-フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4-ジメチル-8-キノリノラート)(4-フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4-ジメチル-8-キノリノラート)(3,5-ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4-ジメチル-8-キノリノラート)(3,5-ジ-t-ブチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)アルミニウム-μ-オキソ-ビス(2-メチル-8-キノリノラート)アルミニウム、ビス(2,4-ジメチル-8-キノリノラート)アルミニウム-μ-オキソ-ビス(2,4-ジメチル-8-キノリノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-4-エチル-8-キノリノラート)アルミニウム-μ-オキソ-ビス(2-メチル-4-エチル-8-キノリノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-4-メトキシ-8-キノリノラート)アルミニウム-μ-オキソ-ビス(2-メチル-4-メトキシ-8-キノリノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-5-シアノ-8-キノリノラート)アルミニウム-μ-オキソ-ビス(2-メチル-5-シアノ-8-キノリノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-5-トリフルオロメチル-8-キノリノラート)アルミニウム-μ-オキソ-ビス(2-メチル-5-トリフルオロメチル-8-キノリノラート)アルミニウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリン)ベリリウムなどが挙げられる。
【0580】
このキノリノール系金属錯体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
【0581】
<還元性物質>
電子輸送層および電子注入層の少なくとも1つは、電子輸送層または電子注入層を形成する材料を還元できる物質を含んでいてもよい。この還元性物質は、一定の還元性を有するものであれば、様々なものが用いられ、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体および希土類金属の有機錯体よりなる群から選択される少なくとも1つを好適に使用することができる。
【0582】
好ましい還元性物質としては、Na(仕事関数2.36eV)、K(同2.28eV)、Rb(同2.16eV)またはCs(同1.95eV)などのアルカリ金属や、Ca(同2.9eV)、Sr(同2.0~2.5eV)またはBa(同2.52eV)などのアルカリ土類金属が挙げられ、仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。これらのうち、より好ましい還元性物質は、K、RbまたはCsのアルカリ金属であり、さらに好ましくはRbまたはCsであり、最も好ましいのはCsである。これらのアルカリ金属は、特に還元能力が高く、電子輸送層または電子注入層を形成する材料への比較的少量の添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。また、仕事関数が2.9eV以下の還元性物質として、これら2種以上のアルカリ金属の組み合わせも好ましく、特に、Csを含んだ組み合わせ、例えば、CsとNa、CsとK、CsとRb、またはCsとNaとKとの組み合わせが好ましい。Csを含むことにより、還元能力を効率的に発揮することができ、電子輸送層または電子注入層を形成する材料への添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
【0583】
2-1-4.有機電界発光素子における陰極
陰極108は、電子注入層107および電子輸送層106を介して、発光層105に電子を注入する役割を果たす。
【0584】
陰極108を形成する材料としては、電子を有機層に効率よく注入できる物質であれば特に限定されないが、陽極102を形成する材料と同様の物質を用いることができる。なかでも、スズ、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金、鉄、亜鉛、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムおよびマグネシウムなどの金属またはそれらの合金(マグネシウム-銀合金、マグネシウム-インジウム合金、フッ化リチウム/アルミニウムなどのアルミニウム-リチウム合金など)などが好ましい。電子注入効率を上げて素子特性を向上させるためには、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウムまたはこれら低仕事関数金属を含む合金が有効である。しかしながら、これらの低仕事関数金属は一般に大気中で不安定であることが多い。この点を改善するために、例えば、有機層に微量のリチウム、セシウムやマグネシウムをドーピングして、安定性の高い電極を使用する方法が知られている。その他のドーパントとしては、フッ化リチウム、フッ化セシウム、酸化リチウムおよび酸化セシウムのような無機塩も使用することができる。ただし、これらに限定されない。
【0585】
さらに、電極保護のために白金、金、銀、銅、鉄、スズ、アルミニウムおよびインジウムなどの金属、またはこれら金属を用いた合金、そしてシリカ、チタニアおよび窒化ケイ素などの無機物、ポリビニルアルコール、塩化ビニル、炭化水素系高分子化合物などを積層することが、好ましい例として挙げられる。これらの電極の作製法も、抵抗加熱、電子ビーム蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングおよびコーティングなど、導通を取ることができれば特に制限されない。
【0586】
2-1-5.有機電界発光素子における正孔注入層、正孔輸送層
正孔注入層103は、陽極102から移動してくる正孔を、効率よく発光層105内または正孔輸送層104内に注入する役割を果たすものである。正孔輸送層104は、陽極102から注入された正孔または陽極102から正孔注入層103を介して注入された正孔を、効率よく発光層105に輸送する役割を果たすものである。正孔注入層103および正孔輸送層104は、それぞれ、正孔注入・輸送材料の一種または二種以上を積層、混合するか、正孔注入・輸送材料と高分子結着剤の混合物により形成される。また、正孔注入・輸送材料に塩化鉄(III)のような無機塩を添加して層を形成してもよい。
【0587】
正孔注入・輸送性物質としては電界を与えられた電極間において正極からの正孔を効率よく注入・輸送することが必要で、正孔注入効率が高く、注入された正孔を効率よく輸送することが望ましい。そのためにはイオン化ポテンシャルが小さく、しかも正孔移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが好ましい。
【0588】
正孔注入層103および正孔輸送層104を形成する材料としては、光導電材料において、正孔の電荷輸送材料として従来から慣用されている化合物、p型半導体、有機電界発光素子の正孔注入層および正孔輸送層に使用されている公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。それらの具体例は、カルバゾール誘導体(N-フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなど)、ビス(N-アリールカルバゾール)またはビス(N-アルキルカルバゾール)などのビスカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体(芳香族第3級アミノを主鎖あるいは側鎖に持つポリマー、1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(3-メチルフェニル)-4,4’-ジアミノビフェニル、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジナフチル-4,4’-ジアミノビフェニル、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(3-メチルフェニル)-4,4’-ジフェニル-1,1’-ジアミン、N,N’-ジナフチル-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジフェニル-1,1’-ジアミン、N,N4’-ジフェニル-N,N4’-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン、N,N,N4’,N4’-テトラ[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン、4,4’,4”-トリス(3-メチルフェニル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミンなどのトリフェニルアミン誘導体、スターバーストアミン誘導体など)、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体(無金属、銅フタロシアニンなど)、ピラゾリン誘導体、ヒドラゾン系化合物、ベンゾフラン誘導体やチオフェン誘導体、オキサジアゾール誘導体、キノキサリン誘導体(例えば、1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリルなど)、ポルフィリン誘導体などの複素環化合物、ポリシランなどである。ポリマー系では前記単量体を側鎖に有するポリカーボネートやスチレン誘導体、ポリビニルカルバゾールおよびポリシランなどが好ましいが、発光素子の作製に必要な薄膜を形成し、陽極から正孔が注入できて、さらに正孔を輸送できる化合物であれば特に限定されるものではない。
【0589】
また、有機半導体の導電性は、そのドーピングにより、強い影響を受けることも知られている。このような有機半導体マトリックス物質は、電子供与性の良好な化合物、または、電子受容性の良好な化合物から構成されている。電子供与物質のドーピングのために、テトラシアノキノンジメタン(TCNQ)または2,3,5,6-テトラフルオロテトラシアノ-1,4-ベンゾキノンジメタン(F4TCNQ)などの強い電子受容体が知られている(例えば、文献「M.Pfeiffer,A.Beyer,T.Fritz,K.Leo,Appl.Phys.Lett.,73(22),3202-3204(1998)」および文献「J.Blochwitz,M.Pfeiffer,T.Fritz,K.Leo,Appl.Phys.Lett.,73(6),729-731(1998)」を参照)。これらは、電子供与型ベース物質(正孔輸送物質)における電子移動プロセスによって、いわゆる正孔を生成する。正孔の数および移動度によって、ベース物質の伝導性が、かなり大きく変化する。正孔輸送特性を有するマトリックス物質としては、例えばベンジジン誘導体(TPDなど)またはスターバーストアミン誘導体(TDATAなど)、あるいは、特定の金属フタロシアニン(特に、亜鉛フタロシアニンZnPcなど)が知られている(特開2005-167175号公報)。
【0590】
2-1-6.有機電界発光素子における陽極
陽極102は、発光層105へ正孔を注入する役割を果たすものである。なお、陽極102と発光層105との間に正孔注入層103および/または正孔輸送層104が設けられている場合には、これらを介して発光層105へ正孔を注入することになる。
【0591】
陽極102を形成する材料としては、無機化合物および有機化合物があげられる。無機化合物としては、例えば、金属(アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、クロムなど)、金属酸化物(インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウム-スズ酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)など)、ハロゲン化金属(ヨウ化銅など)、硫化銅、カーボンブラック、ITOガラスやネサガラスなどがあげられる。有機化合物としては、例えば、ポリ(3-メチルチオフェン)などのポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマーなどがあげられる。その他、有機電界発光素子の陽極として用いられている物質の中から適宜選択して用いることができる。
【0592】
透明電極の抵抗は、発光素子の発光に十分な電流が供給できればよいので限定されないが、発光素子の消費電力の観点からは低抵抗であることが望ましい。例えば、300Ω/□以下のITO基板であれば素子電極として機能するが、現在では10Ω/□程度の基板の供給も可能になっていることから、例えば100~5Ω/□、好ましくは50~5Ω/□の低抵抗品を使用することが特に望ましい。ITOの厚みは抵抗値に合わせて任意に選ぶ事ができるが、通常50~300nmの間で用いられることが多い。
【0593】
2-1-7.有機電界発光素子における基板
基板101は、有機電界発光素子100の支持体となるものであり、通常、石英、ガラス、金属、プラスチックなどが用いられる。基板101は、目的に応じて板状、フィルム状、またはシート状に形成され、例えば、ガラス板、金属板、金属箔、プラスチックフィルム、プラスチックシートなどが用いられる。なかでも、ガラス板、および、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂製の板が好ましい。ガラス基板であれば、ソーダライムガラスや無アルカリガラスなどが用いられ、また、厚みも機械的強度を保つのに十分な厚みがあればよいので、例えば、0.2mm以上あればよい。厚さの上限値としては、例えば、2mm以下、好ましくは1mm以下である。ガラスの材質については、ガラスからの溶出イオンが少ない方がよいので無アルカリガラスの方が好ましいが、SiOなどのバリアコートを施したソーダライムガラスも市販されているのでこれを使用することができる。また、基板101には、ガスバリア性を高めるために、少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜などのガスバリア膜を設けてもよく、特にガスバリア性が低い合成樹脂製の板、フィルムまたはシートを基板101として用いる場合にはガスバリア膜を設けるのが好ましい。
【0594】
2-1-8.有機電界発光素子における電子阻止層
正孔注入・輸送層と発光層との間には発光層からの電子および/または励起子の拡散を防ぐ電子阻止層を設けてもよい。電子阻止層の形成には、上述の式(H1)、(H2)および(H3)のいずれかで表される化合物を用いることができる。
【0595】
2-1-9.有機電界発光素子の作製方法
有機電界発光素子を構成する各層は、各層を構成すべき材料を蒸着法、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、分子積層法、印刷法、スピンコート法またはキャスト法、コーティング法などの方法で薄膜とすることにより、形成することができる。このようにして形成された各層の膜厚については特に限定はなく、材料の性質に応じて適宜設定することができるが、通常2nm~5000nmの範囲である。膜厚は通常、水晶発振式膜厚測定装置などで測定できる。蒸着法を用いて薄膜化する場合、その蒸着条件は、材料の種類、膜の目的とする結晶構造および会合構造などにより異なる。蒸着条件は一般的に、蒸着用ルツボの加熱温度+50~+400℃、真空度10-6~10-3Pa、蒸着速度0.01~50nm/秒、基板温度-150~+300℃、膜厚2nm~5μmの範囲で適宜設定することが好ましい。
【0596】
次に、有機電界発光素子を作製する方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ホスト化合物、熱活性型遅延蛍光体およびホウ素原子を有する化合物を含む発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機電界発光素子の作製法について説明する。
【0597】
2-1-9-1.蒸着法
適当な基板上に、陽極材料の薄膜を蒸着法などにより形成させて陽極を作製した後、この陽極上に正孔注入層および正孔輸送層の薄膜を形成させる。この上に、ホスト化合物、熱活性型遅延蛍光体およびホウ素原子を有する化合物を共蒸着し薄膜を形成させて発光層とし、この発光層の上に電子輸送層、電子注入層を形成させ、さらに陰極用物質からなる薄膜を蒸着法などにより形成させて陰極とすることにより、目的の有機電界発光素子が得られる。なお、上述の有機電界発光素子の作製においては、作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。
【0598】
2-1-9-2.湿式成膜法
発光層形成用組成物の場合は、湿式成膜法を用いることによって成膜される。
【0599】
湿式成膜法は、一般的には、基板に発光層形成用組成物を塗布する塗布工程および塗布された発光層形成用組成物から溶媒を取り除く乾燥工程を経ることで塗膜を形成する。塗布工程の違いにより、スピンコーターを用いる手法をスピンコート法、スリットコーターを用いる手法をスリットコート法、版を用いる手法をグラビア、オフセット、リバースオフセット、フレキソ印刷法、インクジェットプリンタを用いる手法をインクジェット法、霧状に吹付ける手法をスプレー法と呼ぶ。乾燥工程には、風乾、加熱、減圧乾燥などの方法がある。乾燥工程は1回のみ行なってもよく、異なる方法や条件を用いて複数回行なってもよい。また、例えば、減圧下での焼成のように、異なる方法を併用してもよい。
すなわち、本発明の有機電界発光素子は、陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置され、本発明の発光層形成用組成物から形成された発光層とを有する、有機電界発光素子であることも好ましい。
【0600】
湿式成膜法とは溶液を用いた成膜法であり、例えば、一部の印刷法(インクジェット法)、スピンコート法またはキャスト法、コーティング法などである。湿式成膜法は真空蒸着法と異なり高価な真空蒸着装置を用いる必要が無く、大気圧下で成膜することができる。加えて、湿式成膜法は大面積化や連続生産が可能であり、製造コストの低減につながる。
【0601】
一方で、真空蒸着法と比較した場合には、湿式成膜法は積層化が難しい。湿式成膜法を用いて積層膜を作製する場合、上層の組成物による下層の溶解を防ぐ必要があり、溶解性を制御した組成物、下層の架橋および直交溶媒(Orthogonal solvent、互いに溶解し合わない溶媒)などが駆使される。しかしながら、それらの技術を用いても、全ての膜の塗布に湿式成膜法を用いるのは難しい場合がある。
【0602】
そこで、一般的には、幾つかの層だけを湿式成膜法を用い、残りを真空蒸着法で有機EL素子を作製するという方法が採用される。
【0603】
例えば、湿式成膜法を一部適用し有機EL素子を作製する手順を以下に示す。
(手順1)陽極の真空蒸着法による成膜
(手順2)正孔注入層の湿式成膜法による成膜
(手順3)正孔輸送層の湿式成膜法による成膜
(手順4)ホスト化合物、熱活性型遅延蛍光体およびホウ素原子を有する化合物を含む発光層形成用組成物の湿式成膜法による成膜
(手順5)電子輸送層の真空蒸着法による成膜
(手順6)電子注入層の真空蒸着法による成膜
(手順7)陰極の真空蒸着法による成膜
この手順を経ることで、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ホスト材料とドーパント材料からなる発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子が得られる。
【0604】
2-1-9-3.有機溶媒
本発明の化合物は、溶媒に溶解させ発光層形成用組成物として用いることができる。
本発明の発光層形成用組成物は、本発明の化合物を少なくとも1つと、溶媒とを含む。
また、本発明の発光層形成用組成物は上記式(H1)~(H5)で表される化合物を少なくとも1つ含有する、または、上記式(H1)~(H5)で表される構造の少なくとも1つを繰り返し単位とする高分子化合物を少なくとも1つ含有することが好ましい。
また、本発明の発光層形成用組成物は、発光層の付加成分として用いられるエミッティングドーパント、アシスタントドーパント等の、他の成分を更に含んでもよい。
例えば、本発明の発光層形成用組成物は、上述の式(AD1)、(AD2)および(AD3)のいずれかで表される化合物を少なくとも一つ含有することが好ましい。
本発明の発光層形成用組成物は、前記溶媒として、少なくとも1種の有機溶媒を含むことが好ましい。成膜時に有機溶媒の蒸発速度を制御することで、成膜性および塗膜の欠陥の有無、表面粗さ、平滑性を制御および改善することができる。また、インクジェット法を用いた成膜時は、インクジェットヘッドのピンホールでのメニスカス安定性を制御し、吐出性を制御・改善することができる。加えて、膜の乾燥速度および誘導体分子の配向を制御することで、該発光層形成用組成物より得られる発光層を有する有機EL素子の電気特性、発光特性、効率、および寿命を改善することができる。
【0605】
(有機溶媒の物性)
本発明の発光層形成用組成物は、前記溶剤として、沸点が130℃以上である有機溶剤を含むことが好ましく、140℃以上である有機溶剤を含むことがより好ましく、150℃以上である有機溶剤を含むことが更に好ましい。また、上記有機溶剤の沸点の上限は、300℃以下であることが好ましく、270℃以下であることがより好ましく、250℃以下であることが更に好ましい。沸点が130℃より高い場合、インクジェットの吐出性の観点から好ましい。また、沸点が300℃より低い場合、塗膜の欠陥、表面粗さ、残留溶媒および平滑性の観点から好ましい。溶媒は、良好なインクジェットの吐出性、製膜性、平滑性および低い残留溶媒の観点から、2種以上の有機溶媒を含む構成がより好ましい。一方で、場合によっては、運搬性などを考慮し、発光層形成用組成物中から溶媒を除去することで固形状態とした組成物であってもよい。
【0606】
また、前記溶媒は、本発明の化合物の少なくとも1つに対する良溶媒(GS)と貧溶媒(PS)を含む混合溶媒であり、良溶媒(GS)の沸点(BPGS)が貧溶媒(PS)の沸点(BPPS)よりも低いことが好ましい。
高沸点の貧溶媒を加えることで成膜時に低沸点の良溶媒が先に揮発し、組成物中の含有物の濃度と貧溶媒の濃度が増加し速やかな成膜が促される。これにより、欠陥が少なく、表面粗さが小さい、平滑性の高い塗膜が得られる。
良溶媒(GS)に対する本発明の化合物の少なくとも1つの溶解度(SGS、%)と、貧溶媒(PS)に対する本発明の化合物の少なくとも1つの溶解度(SPS、%)の差(SGS-SPS)は、1%以上であることが好ましく、3%以上であることがより好ましく、5%以上であることがさらに好ましい。
上記良溶媒(GS)の沸点(BPGS)と貧溶媒(PS)の沸点(BPPS)の差(BPPS-BPGS)は、10℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましい。
【0607】
さらに、溶媒は式(1)、式(H1)、式(H2)、式(H3)または式(H4)で表される化合物に対する良溶媒(GS)と貧溶媒(PS)とを含み、良溶媒(GS)の沸点(BPGS)が貧溶媒(PS)の沸点(BPPS)よりも低い組み合わせが特に好ましい。
高沸点の貧溶媒を加えることで成膜時に低沸点の良溶媒が先に揮発し、組成物中の含有物の濃度と貧溶媒の濃度が増加し速やかな成膜が促される。これにより、欠陥が少なく、表面粗さが小さい、平滑性の高い塗膜が得られる。
【0608】
良溶媒(GS)に対する式(1)、式(H1)、式(H2)、式(H3)、式(H4)または式(H5)で表される化合物の溶解度(SGS)と、貧溶媒(PS)に対する式(1)、式(H1)、式(H2)、式(H3)、式(H4)または式(H5)で表される化合物の溶解度(SPS)の差(SGS-SPS)は、1%以上であることが好ましく、3%以上であることがより好ましく、5%以上であることがさらに好ましい。沸点の差(BPPS-BPGS)は、10℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましい。
【0609】
有機溶媒は、成膜後に、真空、減圧、加熱などの乾燥工程により塗膜より取り除かれる。加熱を行う場合、塗布製膜性改善の観点からは、第1成分のガラス転移温度(Tg)+30℃以下で行うことが好ましい。また、残留溶媒の削減の観点からは、第1成分のガラス転移点(Tg)-30℃以上で加熱することが好ましい。加熱温度が有機溶媒の沸点より低くても膜が薄いために、有機溶媒は十分に取り除かれる。また、異なる温度で複数回乾燥を行ってもよく、複数の乾燥方法を併用してもよい。
【0610】
(有機溶媒の具体例)
発光層形成用組成物に用いられる有機溶媒としては、アルキルベンゼン系溶媒、フェニルエーテル系溶媒、アルキルエーテル系溶媒、環状ケトン系溶媒、脂肪族ケトン系溶媒、単環性ケトン系溶媒、ジエステル骨格を有する溶媒および含フッ素系溶媒などがあげられ、具体例として、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサン-2-オール、ヘプタン-2-オール、オクタン-2-オール、デカン-2-オール、ドデカン-2-オール、シクロヘキサノール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオール、δ-テルピネオール、テルピネオール(混合物)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、p-キシレン、m-キシレン、o-キシレン、2,6-ルチジン、2-フルオロ-m-キシレン、3-フルオロ-o-キシレン、2-クロロベンゾ三フッ化物、クメン、トルエン、2-クロロ-6-フルオロトルエン、2-フルオロアニソール、アニソール、2,3-ジメチルピラジン、ブロモベンゼン、4-フルオロアニソール、3-フルオロアニソール、3-トリフルオロメチルアニソール、メシチレン、1,2,4-トリメチルベンゼン、t-ブチルベンゼン、2-メチルアニソール、フェネトール、ベンゾジオキソール、4-メチルアニソール、s-ブチルベンゼン、3-メチルアニソール、4-フルオロ-3-メチルアニソール、シメン、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、2-フルオロベンゾニトリル、4-フルオロベラトロール、2,6-ジメチルアニソール、n-ブチルベンゼン、3-フルオロベンゾニトリル、デカリン(デカヒドロナフタレン)、ネオペンチルベンゼン、2,5-ジメチルアニソール、2,4-ジメチルアニソール、ベンゾニトリル、3,5-ジメチルアニソール、ジフェニルエーテル、1-フルオロ-3,5-ジメトキシベンゼン、安息香酸メチル、イソペンチルベンゼン、3,4-ジメチルアニソール、o-トルニトリル、n-アミルベンゼン、ベラトロール、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、安息香酸エチル、n-ヘキシルベンゼン、安息香酸プロピル、シクロヘキシルベンゼン、1-メチルナフタレン、安息香酸ブチル、2-メチルビフェニル、3-フェノキシトルエン、2,2’-ビトリル、ドデシルベンゼン、ジペンチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、トリメトキシベンゼン、トリメトキシトルエン、2,3-ジヒドロベンゾフラン、1-メチル-4-(プロポキシメチル)ベンゼン、1-メチル-4-(ブチルオキシメチル)ベンゼン、1-メチル-4-(ペンチルオキシメチル)ベンゼン、1-メチル-4-(ヘキシルオキシメチル)ベンゼン、1-メチル-4-(ヘプチルオキシメチル)ベンゼンベンジルブチルエーテル、ベンジルペンチルエーテル、ベンジルヘキシルエーテル、ベンジルヘプチルエーテル、ベンジルオクチルエーテルなどがあげられるが、それだけに限定されない。また、溶媒は単一で用いてもよく、混合してもよい。
【0611】
2-1-10.有機電界発光素子の応用例
また、本発明は、有機電界発光素子を備えた表示装置または有機電界発光素子を備えた照明装置などにも応用することができる。
本発明の表示装置は、本発明の有機電界発光素子を備える。また、本発明の照明装置は、本発明の有機電界発光素子を備える。
有機電界発光素子を備えた表示装置または照明装置は、本実施形態にかかる有機電界発光素子と公知の駆動装置とを接続するなど公知の方法によって製造することができ、直流駆動、パルス駆動、交流駆動など公知の駆動方法を適宜用いて駆動することができる。
【0612】
表示装置としては、例えば、カラーフラットパネルディスプレイなどのパネルディスプレイ、フレキシブルカラー有機電界発光(EL)ディスプレイなどのフレキシブルディスプレイなどが挙げられる(例えば、特開平10-335066号公報、特開2003-321546号公報、特開2004-281086号公報など参照)。また、ディスプレイの表示方式としては、例えば、マトリクスおよび/またはセグメント方式などが挙げられる。なお、マトリクス表示とセグメント表示は同じパネルの中に共存していてもよい。
【0613】
マトリクスでは、表示のための画素が格子状やモザイク状など二次元的に配置されており、画素の集合で文字や画像を表示する。画素の形状やサイズは用途によって決まる。例えば、パソコン、モニター、テレビの画像および文字表示には、通常一辺が300μm以下の四角形の画素が用いられ、また、表示パネルのような大型ディスプレイの場合は、一辺がmmオーダーの画素を用いることになる。モノクロ表示の場合は、同じ色の画素を配列すればよいが、カラー表示の場合には、赤、緑、青の画素を並べて表示させる。この場合、典型的にはデルタタイプとストライプタイプがある。そして、このマトリクスの駆動方法としては、線順次駆動方法やアクティブマトリックスのどちらでもよい。線順次駆動の方が構造が簡単であるという利点があるが、動作特性を考慮した場合、アクティブマトリックスの方が優れる場合があるので、これも用途によって使い分けることが必要である。
【0614】
セグメント方式(タイプ)では、予め決められた情報を表示するようにパターンを形成し、決められた領域を発光させることになる。例えば、デジタル時計や温度計における時刻や温度表示、オーディオ機器や電磁調理器などの動作状態表示および自動車のパネル表示などが挙げられる。
【0615】
照明装置としては、例えば、室内照明などの照明装置、液晶表示装置のバックライトなどが挙げられる(例えば、特開2003-257621号公報、特開2003-277741号公報、特開2004-119211号公報など参照)。バックライトは、主に自発光しない表示装置の視認性を向上させる目的に使用され、液晶表示装置、時計、オーディオ装置、自動車パネル、表示板および標識などに使用される。特に、液晶表示装置、中でも薄型化が課題となっているパソコン用途のバックライトとしては、従来方式が蛍光灯や導光板からなっているため薄型化が困難であることを考えると、本実施形態に係る発光素子を用いたバックライトは薄型で軽量が特徴になる。
【0616】
2-2.その他の有機デバイス
本発明の化合物は、上述した有機電界発光素子の他に、有機電界効果トランジスタまたは有機薄膜太陽電池などの作製に用いることができる。有機電界効果トランジスタにおいて本発明の化合物は活性層に用いられていることが好ましい。有機薄膜太陽電池において本発明の化合物は活性層に用いられていることが好ましい。
【0617】
有機電界効果トランジスタは、電圧入力によって発生させた電界により電流を制御するトランジスタのことであり、ソース電極とドレイン電極の他にゲート電極が設けられている。ゲート電極に電圧を印加すると電界が生じ、ソース電極とドレイン電極間を流れる電子(またはホール)の流れを任意にせき止めて電流を制御することができるトランジスタである。電界効果トランジスタは、単なるトランジスタ(バイポーラトランジスタ)に比べて小型化が容易であり、集積回路などを構成する素子としてよく用いられている。
【0618】
有機電界効果トランジスタの構造は、通常、本発明の化合物を用いて形成される有機半導体活性層に接してソース電極およびドレイン電極が設けられており、さらに有機半導体活性層に接した絶縁層(誘電体層)を挟んでゲート電極が設けられていればよい。その素子構造としては、例えば以下の構造があげられる。
(1)基板/ゲート電極/絶縁体層/ソース電極・ドレイン電極/有機半導体活性層
(2)基板/ゲート電極/絶縁体層/有機半導体活性層/ソース電極・ドレイン電極
(3)基板/有機半導体活性層/ソース電極・ドレイン電極/絶縁体層/ゲート電極
(4)基板/ソース電極・ドレイン電極/有機半導体活性層/絶縁体層/ゲート電極
このように構成された有機電界効果トランジスタは、アクティブマトリックス駆動方式の液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの画素駆動スイッチング素子などとして適用できる。
【0619】
有機薄膜太陽電池は、ガラスなどの透明基板上にITOなどの陽極、ホール輸送層、光電変換層、電子輸送層、陰極が積層された構造を有する。光電変換層は陽極側にp型半導体層を有し、陰極側にn型半導体層を有している。本発明の化合物は、その物性に応じて、ホール輸送層、p型半導体層、n型半導体層、電子輸送層の材料として用いることが可能である。本発明の化合物は、有機薄膜太陽電池においてホール輸送材料や電子輸送材料として機能しうる。有機薄膜太陽電池は、上記の他にホールブロック層、電子ブロック層、電子注入層、ホール注入層、平滑化層などを適宜備えていてもよい。有機薄膜太陽電池には、有機薄膜太陽電池に用いられる既知の材料を適宜選択して組み合わせて用いることができる。
【実施例
【0620】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されない。以下に、実施例で使用した化合物の合成例を示す。
<基礎物性の評価方法>
サンプルの準備
評価対象の化合物の吸収特性と発光特性(蛍光と燐光)を評価する場合、評価対象の化合物を溶媒に溶解して溶媒中で評価する場合と薄膜状態で評価する場合がある。さらに、薄膜状態で評価する場合は、評価対象の化合物の有機EL素子における使用の態様に応じて、評価対象の化合物のみを薄膜化し評価する場合と評価対象の化合物を適切なマトリックス材料中に分散して薄膜化して評価する場合がある。ここでは、評価対象化合物のみを蒸着して得た薄膜を「単独膜」といい、評価対象化合物とマトリックス材料を含む塗工液を塗布、乾燥して得た薄膜を「塗膜」という。
【0621】
マトリックス材料としては、市販のPMMA(ポリメチルメタクリレート)などを用いることができる。本実施例では、PMMAと評価対象の化合物をトルエン中で溶解させた後、スピンコーティング法により石英製の透明支持基板(10mm×10mm)上に薄膜を形成してサンプルを作製する。
【0622】
また、マトリックス材料がホスト化合物である場合の薄膜サンプルは、以下のようにして作製する。
石英製の透明支持基板(10mm×10mm×1.0mm)を市販の蒸着装置(長州産業(株)製)の基板ホルダーに固定し、ホスト化合物を入れたモリブデン製蒸着用ボート、ドーパント材料を入れたモリブデン製蒸着用ボートを装着した後、真空槽を5×10-4Paまで減圧する。次に、ホスト化合物が入った蒸着用ボートとドーパント材料が入った蒸着用ボートを同時に加熱して、ホスト化合物とドーパント材料を適切な膜厚になるように共蒸着してホスト化合物とドーパント材料の混合薄膜(サンプル)を形成した。ここで、ホスト化合物とドーパント材料の設定質量比に応じて蒸着速度を制御する。
【0623】
吸収特性と発光特性の評価
サンプルの吸収スペクトルの測定は、紫外可視近赤外分光光度計((株)島津製作所、UV-2600)を用いて行う。また、サンプルの蛍光スペクトルまたは燐光スペクトルの測定は、分光蛍光光度計(日立ハイテク(株)製、F-7000)を用いて行う。
【0624】
蛍光スペクトルの測定に対しては、室温で適切な励起波長で励起しフォトルミネッセンスを測定する。燐光スペクトルの測定に対しては、付属の冷却ユニットを使用して、前記サンプルを液体窒素に浸した状態(温度77K)で測定する。燐光スペクトルを観測するため、光学チョッパを使用して励起光照射から測定開始までの遅れ時間を調整した。サンプルは適切な励起波長で励起しフォトルミネッセンスを測定する。
【0625】
また、絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス(株)製、C9920-02G)を用いて蛍光量子収率(PLQY)を測定する。
【0626】
蛍光寿命(遅延蛍光)の評価
蛍光寿命測定装置(浜松ホトニクス(株)製、C11367-01)を用いて300Kで蛍光寿命を測定した。具体的には、適切な励起波長で測定される極大発光波長において蛍光寿命の早い発光成分と遅い発光成分を観測した。蛍光を発光する一般的な有機EL材料の室温における蛍光寿命測定では、熱による3重項成分の失活により、燐光に由来する3重項成分が関与する遅い発光成分が観測されることはほとんどない。評価対象の化合物において遅い発光成分が観測された場合は、励起寿命の長い3重項エネルギーが熱活性化により1重項エネルギーに移動して遅延蛍光として観測されたことを示すことになる。
【0627】
エネルギーギャップ(Eg)の算出
前述の方法で得られた吸収スペクトルの長波長末端A(nm)からEg=1240/Aで算出する。
【0628】
イオン化ポテンシャル(Ip)の測定
ITO(インジウム・スズ酸化物)の蒸着された透明支持基板(28mm×26mm×0.7mm)を市販の蒸着装置(長州産業(株)製)の基板ホルダーに固定し、対象化合物を入れたモリブデン製蒸着用ボートを装着した後、真空槽を5×10-4Paまで減圧する。次に、蒸着用ボートを加熱して対象化合物を蒸発させ、対象化合物の単独膜(Neat膜)を形成する。
【0629】
得られた単独膜をサンプルとし、光電子分光計(住友重機械工業株式会社 PYS-201)を用いて対象化合物のイオン化ポテンシャルを測定する。
【0630】
電子親和力(Ea)の算出
前述の方法で測定したイオン化ポテンシャルと前述の方法で算出したエネルギーギャップとの差より、電子親和力を見積ることができる。
【0631】
励起一重項エネルギー準位E(S,Sh)、励起三重項エネルギー準位E(T,Sh)の測定
ガラス基板上に形成した対象化合物の単独膜について、77Kで、吸収スペクトルの蛍光ピークが重ならない程度に長波長側のピークを励起光に蛍光スペクトルを観測し、その蛍光スペクトルのピーク短波長側の肩より励起一重項エネルギー準位E(S,Sh)を求める。
また、ガラス基板上に形成した対象化合物の単独膜に、77Kで、吸収スペクトルの蛍光ピークが重ならない程度に長波長側のピークをnm励起光に燐光スペクトルを観測し、その燐光スペクトルのピーク短波長側の肩より励起三重項エネルギー準位E(T,Sh)を求める。
【0632】
<有機EL素子の評価>
以上のように、本発明の化合物は、適切なエネルギーギャップ(Eg)、高い三重項励起エネルギー(E)および小さいΔESTを特徴として有しているため、例えば発光層および電荷輸送層への適用が期待でき、特に発光層への適用が期待できる。
【0633】
評価項目および評価方法
評価項目としては、駆動電圧(V)、発光波長(nm)、CIE色度(x,y)、外部量子効率(%)、発光スペクトルの最大波長(nm)および半値幅(nm)などがある。これらの評価項目は、適切な発光輝度時の値を用いることができる。
【0634】
発光素子の量子効率には、内部量子効率と外部量子効率とがあるが、内部量子効率は、発光素子の発光層に電子(または正孔)として注入される外部エネルギーが純粋に光子に変換される割合を示している。一方、外部量子効率は、この光子が発光素子の外部にまで放出された量に基づいて算出され、発光層において発生した光子は、その一部が発光素子の内部で吸収されたりあるいは反射され続けたりして、発光素子の外部に放出されないため、外部量子効率は内部量子効率よりも低くなる。
【0635】
分光放射輝度(発光スペクトル)と外部量子効率の測定方法は次の通りである。アドバンテスト社製電圧/電流発生器R6144を用いて、電圧を印加することにより素子を発光させた。TOPCON社製分光放射輝度計SR-3ARを用いて、発光面に対して垂直方向から可視光領域の分光放射輝度を測定した。発光面が完全拡散面であると仮定して、測定した各波長成分の分光放射輝度の値を波長エネルギーで割ってπを掛けた数値が各波長におけるフォトン数である。次いで、観測した全波長領域でフォトン数を積算し、素子から放出された全フォトン数とした。印加電流値を素電荷で割った数値を素子へ注入したキャリア数として、素子から放出された全フォトン数を素子へ注入したキャリア数で割った数値が外部量子効率である。また、発光スペクトルの半値幅は、極大発光波長を中心として、その強度が50%になる上下の波長間の幅として求められる。
【0636】
[1]有機EL素子の作製と評価
本実施例では、Adv. Mater. 2016, 28, 2777-2781に記載された構造に準じて有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子の層構成を表1に示す。
【0637】
【表1】
【0638】
表1において、「NPD」はN,N’-ジフェニル-N,N’-ジナフチル-4,4’-ジアミノビフェニルであり、「TcTa」は4,4’,4”-トリス(N-カルバゾリル)トリフェニルアミンであり、「mCP」は1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼンであり、「mCBP」は3,3’-ビス(N-カルバゾリル)-1,1’-ビフェニルであり、「BPy-TP2」は2,7-ジ([2,2’-ビピリジン]-5-イル)トリフェニレン、「2CzBN」は3,4-ジカルバゾリルベンゾニトリル、(DOBNA1)は3,11-ジ-o-トリル-5,9-ジオキサ-13b-ボラナフト[3,2,1-de]アントラセンである。
【0639】
【化298】
【0640】
実施例1:化合物(1-2)をドーパントとして用いた素子1の作製と評価
厚さ50nmのITO(インジウム・スズ酸化物)からなる陽極が形成されたガラス基板(26mm×28mm×0.7mm)の上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度5×10-4Paで積層する。
まず、ITO上に、NPDを膜厚40nmになるように蒸着し、その上に、TcTaを膜厚15nmになるように蒸着して2層からなる正孔注入輸送層を形成する。続いて、mCPを膜厚15nmになるように蒸着して電子阻止層を形成する。次に、ホストとしての化合物mCBP、ドーパントとしての化合物(1-2)を異なる蒸着源から共蒸着し、膜厚20nmの発光層を形成する。このとき、ホスト、アシスティングドーパントおよびエミッティングドーパントの質量比は90:10とする。次に、2CzBNを膜厚10nm、次いで、BPy-TP2を膜厚20nmになるように蒸着して電子輸送層を形成する。続いて、LiFを膜厚1nmになるように蒸着し、その上に、アルミニウムを膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成し、有機EL素子を得る。
【0641】
実施例2:化合物(4-1)をドーパントとして、DOBNA1をホストとして用いた素子の作製と評価
化合物(1-2)を化合物(4-1)へ、mCBPをDOBNA1へ変更する以外は実施例1と同様の手順および構成にてEL素子を得られる。
【0642】
実施例3:化合物(4-4)をドーパントとして用いた素子の作製と評価
化合物(4-1)を化合物(4-4)へ変更する以外は実施例2と同様の手順および構成にてEL素子を得られる。
【0643】
実施例4:化合物(4-10)をドーパントとして用いた素子の作製と評価
化合物(4-1)を化合物(4-10)へ変更する以外は実施例2と同様の手順および構成にてEL素子を得られる。
【表2】
【0644】
表2において、「TSPO1」はジフェニル[4-(トリフェニルシリル)フェニル]ホスフィンオキシドである。以下に化学構造を示す。
【0645】
【化299】
【0646】
<実施例5>
<構成A:ホスト化合物をmCBP、アシスティングドーパントを2PXZ-TAZ、エミッティングドーパントを化合物(1-2)とした素子>
スパッタリングにより200nmの厚さに製膜したITOを50nmまで研磨した、26mm×28mm×0.7mmのガラス基板((株)オプトサイエンス製)を透明支持基板とする。この透明支持基板を市販の蒸着装置(長州産業(株)製)の基板ホルダーに固定し、NPD、TcTa、mCP、mCBP、2PXZ-TAZ、化合物(1-2)、およびTSPO1をそれぞれ入れたタンタル製蒸着用ボート、LiFおよびアルミニウムをそれぞれ入れた窒化アルミニウム製蒸着用ボートを装着する。
【0647】
透明支持基板のITO膜の上に順次、下記各層を形成する。真空槽を5×10-4Paまで減圧し、まず、NPDを加熱して膜厚40nmになるように蒸着し、次に、TcTaを加熱して膜厚15nmになるように蒸着して2層からなる正孔注入輸送層を形成する。次に、mCPを加熱して膜厚15nmになるように蒸着して電子阻止層を形成する。次に、ホストとしてmCBP、アシスティングドーパントとして2PXZ-TAZおよびエミッティングドーパントとして化合物(ED1)を同時に加熱して膜厚20nmになるように共蒸着して発光層を形成する。ホスト、アシスティングドーパントおよびエミッティングドーパントの質量比がおよそ90対9対1になるように蒸着速度を調節する。次に、TSPO1を加熱して膜厚30nmになるように蒸着して電子輸送層を形成する。以上の各層の蒸着速度は0.01~1nm/秒とする。その後、LiFを加熱して膜厚1nmになるように0.01~0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着し、次いで、アルミニウムを加熱して膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成し、有機EL素子を得られる。このとき、アルミニウムの蒸着速度は1nm~10nm/秒になるように調節する。
【0648】
<実施例6>
<構成A:ホスト化合物をmCBP、アシスティングドーパントを2PXZ-TAZ、エミッティングドーパントを化合物(4-1)とした素子>
エミッティングドーパントを化合物(4-1)に変更した以外は実施例5と同様の手順および構成にてEL素子を得られる。
【0649】
<実施例7>
<構成A:ホスト化合物をmCBP、アシスティングドーパントを化合物(1-2)、エミッティングドーパントを化合物(ED1)とした素子>
アシスティングドーパントを化合物(1-2)、エミッティングドーパントを化合物(ED1)に変更した以外は実施例5と同様の手順および構成にてEL素子を得られる。
【0650】
<実施例8>
<構成A:ホスト化合物をmCBP、アシスティングドーパントを化合物(1-2)、エミッティングドーパントを化合物(4-1)とした素子>
アシスティングドーパントを化合物(4-1)に変更した以外は実施例7と同様の手順および構成にてEL素子を得られる。
【0651】
合成実施例1:化合物(4-4-1)の合成
【化300】
【0652】
窒素雰囲気下、10H-フェノキサジン (0.68g、3.7mmol)、ナトリウム-t-ブトキシド(NaOtBu、0.45g、4.6mmol)、トルエン(30ml)、トリ-t-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート([(t-Bu)PH]BF、0.05g、0.15mmol)、中間体A(1.5g、1.54mmol)、およびパラジウム触媒としてビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(Pd(dba)2、0.04g、0.04mmol)をフラスコに入れ、加熱還流下で6時間加熱した。
反応後、反応液に水とトルエンを加え攪拌した後、有機層を分離して水洗した。有機層を濃縮後に、シリカゲルショートカラム(溶離液:トルエン)で精製した。得られた粗生成物をトルエンで再結晶させることで、化合物(4-4-1)を得た(0.32g、収率16%)。
【0653】
NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=2.30(s,30H)、5.72(s,2H)、5.75(5.745.745.745.745.745.745.745.745.745.745.745.745.745.745.745.745.74,2H)、5.84(s,1H)、6.82(d,2H)、6.94(d,4H)、7.02-7.05(m,12H)、7.12-7.14(m,6H)、7.33-7.37(m,6H)、7.41(s,2H)、9.31(d,2H)、10.52(s,1H).
【0654】
合成実施例2:化合物(4-10-1)の合成
【化301】
【0655】
窒素雰囲気下、10H-フェノチアジン (0.80g、4.0mmol)、ナトリウム-t-ブトキシド(NaOtBu、0.45g、3.0mmol)、トルエン(30ml)、トリ-t-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート([(t-Bu)PH]BF、0.04g、0.14mmol)、中間体A(1.5g、1.5mmol)、およびパラジウム触媒としてビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(Pd(dba)、0.04g、0.04mmol)をフラスコに入れ、加熱還流下で3時間加熱した。反応後、反応液に水とトルエンを加え攪拌した後、有機層を分離して水洗した。有機層を濃縮後に、シリカゲルショートカラム(溶離液:トルエン)で精製した。得られた粗生成物をトルエンで再結晶させることで、化合物(4-10-1)を得た(0.9g、1.5mmol、収率45%)。
【0656】
NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=2.27(s,30H)、5.71(s,2H)、5.75(s,2H)、5.86(s,1H)、6.83(d,2H)、6.96(t,4H)、7.07-7.20(m,18H)、7.31(s,4H)、7.36(d,2H)、7.43(s,2H)、9.31(d,2H)、10.52(s,1H).
【0657】
合成実施例3:化合物(4-1-1)の合成
【化302】
【0658】
窒素雰囲気下、9,9-ジメチル-9,10-ジヒドロアクリジン (0.78g、3.7mmol)、ナトリウム-t-ブトキシド(NaOtBu、0.45g、4.6mmol)、トルエン(30ml)、トリ-t-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート([(t-Bu)PH]BF、0.05g、0.15mmol)、中間体A(1.5g、1.54mmol)、およびパラジウム触媒としてビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(Pd(dba)、0.04g、0.039mmol)をフラスコに入れ、加熱還流下で5時間加熱した。
反応後、反応液に水とトルエンを加え攪拌した後、有機層を分離して水洗した。有機層を濃縮後に、シリカゲルショートカラム(溶離液:トルエン)で精製した。得られた粗生成物をトルエンで再結晶させることで、化合物(4-1-1)を得た(0.7g、収率35%)。
【0659】
NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=1.68(s,12H)、2.30(s,30H)、5.74(s,2H)、5.75(s,2H)、5.87(s,1H)、6.81(d,2H)、6.94(t,4H)、7.06(s,4H)、7.10(s,2H)、7.14-7.19(m,12H)、7.34-7.36(m,6H)、7.43(s,2H)、9.32(d,2H)、10.51(s,1H).
【0660】
合成実施例4:化合物(4-94-1)の合成
【化303】
【0661】
窒素雰囲気下、9,9-ジメチル-9,10-ジヒドロアクリジン (0.87g、4.15mmol)、ナトリウム-t-ブトキシド(NaOtBu、0.50g、5.2mmol)、トルエン(30ml)、トリ-t-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート([(t-Bu)PH]BF、0.05g)、中間体B(1.5g、1.73mmol)、およびパラジウム触媒としてビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(Pd(dba)、0.04g、0.04mml)をフラスコに入れ、加熱還流下で8時間加熱した。
反応後、反応液に水とトルエンを加え攪拌した後、有機層を分離して水洗した。有機層を濃縮後に、シリカゲルショートカラム(溶離液:トルエン)で精製した。得られた粗生成物をトルエンで再結晶させることで、化合物(4-94-1)を得た(0.91g、収率43%)。
【0662】
NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=1.69(s,12H)、2.29(s,24H)、5.72(s,2H)、5.73(s,2H)、5.84(s,1H)、6.36(d,2H)、6.81-6.95(m,6H)、7.07(s,2H)、7.13-7.36(m,18H)、7.13(s,3H)、7.39(s,2H)、9.16(d,2H)、10.30(s,1H).
【0663】
合成実施例5:化合物(4-222-1)の合成
【化304】
【0664】
窒素雰囲気下、10H-フェノチアジン (0.85g、4.25mmol)、ナトリウム-t-ブトキシド(NaOtBu、0.51g、5.3mmol)、トルエン(30ml)、トリ-t-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート([(t-Bu)PH]BF、0.05g、0.18mmol)、中間体C(1.5g、1.77mmol)、およびパラジウム触媒としてビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(Pd(dba)、0.04g、0.04mmol)をフラスコに入れ、加熱還流下で10時間加熱した。
反応後、反応液に水とトルエンを加え攪拌した後、有機層を分離して水洗した。有機層を濃縮後に、シリカゲルショートカラム(溶離液:トルエン)で精製した。得られた粗生成物をトルエンで再結晶させることで、化合物(4-222-1)を得た(0.77g、収率37%)。
【0665】
NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=1.26(s,18H)、2.28(s,12H)、5.71(s,2H)、5.73(s,2H)、5.86(s,1H)、6.84-7.36(m,20H)、7.04(s,4H)、7.14(s,2H)、9.16(d,2H)、10.32(s,1H).
【0666】
合成実施例6:化合物(1-296-1)の合成
【化305】
【0667】
窒素雰囲気下、10,10-ジメチル-5,10-ジヒドロジベンゾ[b,e][1,4]アザシリン (1.35g、6.0mmol)、ナトリウム-t-ブトキシド(NaOtBu、1.4g、15.0mmol)、トルエン(100ml)、トリ-t-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート([(t-Bu)PH]BF、0.15g、0.5mmol)、中間体E(2.81g、5.0mmol)、およびパラジウム触媒としてビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(Pd(dba)、0.11g、0.13mmol)をフラスコに入れ、加熱還流下で4時間加熱した。
反応後、反応液に水とトルエンを加え攪拌した後、有機層を分離して水洗した。有機層を濃縮後に、シリカゲルショートカラム(溶離液:トルエン)で精製した。得られた粗生成物をトルエン/ヘプタン(=1/9(容量比))で再結晶させることで、化合物(1-296-1)を得た(2.50g、収率53%)。
【0668】
NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=0.65(s,12H)、2.20(s,12H)、7.04-7.12(m,10H)、7.23(s,2H)、7.29-7.41(m,12H)、7.40(s,2H)、7.71(d,2H)、8.70(d,2H).
【0669】
合成実施例7:化合物(1-295)の合成
【化306】
【0670】
窒素雰囲気下、10,10-ジメチル-5,10-ジヒドロジベンゾ[b,e][1,4]アザシリン (1.35g、6.0mmol)、ナトリウム-t-ブトキシド(NaOtBu、1.4g、15.0mmol)、トルエン(100ml)、トリ-t-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート([(t-Bu)PH]BF、0.15g、0.5mmol)、中間体E(2.37g、5.0mmol)、およびパラジウム触媒としてビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(Pd(dba)、0.11g、0.13mmol)をフラスコに入れ、加熱還流下で4時間加熱した。
反応後、反応液に水とトルエンを加え攪拌した後、有機層を分離して水洗した。有機層を濃縮後に、シリカゲルショートカラム(溶離液:トルエン)で精製した。得られた粗生成物をトルエン/ヘプタン(=1/20(容量比))で再結晶させることで、化合物(1-295)を得た(1.80g、収率42%)
【0671】
NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=0.67(s,12H)、1.74-2.01(m,15H)、7.04(t,4H)、7.21(s,2H)、7.28-7.43(m,12H)、7.39(s,2H)、7.69(d,2H)、8.67(d,2H).
【0672】
合成実施例8:化合物(2-30)の合成
【化307】
【0673】
窒素雰囲気下、10,10-ジメチル-5,10-ジヒドロジベンゾ[b,e][1,4]アザシリン (1.35g、6.0mmol)、ナトリウム-t-ブトキシド(NaOtBu、1.4g、15.0mmol)、トルエン(100ml)、トリ-t-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート([(t-Bu)PH]BF、0.15g、0.5mmol)、中間体F(2.08g、5.0mmol)、およびパラジウム触媒としてビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(Pd(dba)、0.11g、0.13mmol)をフラスコに入れ、加熱還流下で3時間加熱した。
反応後、反応液に水とトルエンを加え攪拌した後、有機層を分離して水洗した。有機層を濃縮後に、シリカゲルショートカラム(溶離液:トルエン)で精製した。得られた粗生成物をトルエン/ヘプタン(=1/9(容量比))で再結晶させることで、化合物(2-30)を得た(1.93g、収率64%)
【0674】
NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=0.64(s,6H)、1.25(s,18H)、7.02(t,2H)、7.24(s,2H)、7.30-7.40(m,6H)、7.40(s,2H)、7.71(d,2H)、8.67(d,2H).
【0675】
合成実施例9:化合物(2-26)の合成
【化308】
【0676】
窒素雰囲気下、10H-フェノキサジン (1.10g、6.0mmol)、ナトリウム-t-ブトキシド(NaOtBu、1.4g、15.0mmol)、トルエン(100ml)、トリ-t-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート([(t-Bu)PH]BF、0.15g、0.5mmol)、中間体F(2.08g、5.0mmol)、およびパラジウム触媒としてビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(Pd(dba)、0.11g、0.13mmol)をフラスコに入れ、加熱還流下で3時間加熱した。
反応後、反応液に水とトルエンを加え攪拌した後、有機層を分離して水洗した。有機層を濃縮後に、シリカゲルショートカラム(溶離液:トルエン)で精製した。得られた粗生成物をトルエン/ヘプタン(=1/5(容量比))で再結晶させることで、化合物(2-26)を得た(1.44g、収率51%)
【0677】
NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=1.27(s,18H)、6.96-7.00(m,6H)、7.15(d,2H)、7.21(s,2H)、7.40(s,2H)、7.71(d,2H)、8.69(d,2H).
【0678】
合成実施例10:化合物(4-4)の合成
【化309】
【0679】
窒素雰囲気下、10H-フェノキサジン (2.20g、12.0mmol)、ナトリウム-t-ブトキシド(NaOtBu、1.44g、15.0mmol)、トルエン(150ml)、トリ-t-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート([(t-Bu)3PH]BF4、0.15g、0.50mmol)、中間体G(4.16g、1.54mmol)、およびパラジウム触媒としてビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(Pd(dba)2、0.11g、0.13mmol)をフラスコに入れ、加熱還流下で8時間加熱した。
反応後、反応液に水とトルエンを加え攪拌した後、有機層を分離して水洗した。有機層を濃縮後に、シリカゲルショートカラム(溶離液:トルエン)で精製した。得られた粗生成物をトルエンで再結晶させることで、化合物(4-4)を得た(0.83g、収率15%)。
【0680】
NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=5.70(s,2H)、5.74(s,2H)、5.86(s,1H)、6.83-7.15(m,28H)、7.32-7.45(m,14H)、9.29(d,2H)、10.30(s,1H).
【0681】
合成実施例11:化合物(4-10)の合成
【化310】
【0682】
窒素雰囲気下、10H-フェノチアジン (0.80g、4.0mmol)、ナトリウム-t-ブトキシド(NaOtBu、0.45g、3.0mmol)、トルエン(30ml)、トリ-t-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート([(t-Bu)3PH]BF4、0.04g、0.14mmol)、中間体A(1.5g、1.5mmol)、およびパラジウム触媒としてビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(Pd(dba)2、0.04g、0.04mmol)をフラスコに入れ、加熱還流下で3時間加熱した。反応後、反応液に水とトルエンを加え攪拌した後、有機層を分離して水洗した。有機層を濃縮後に、シリカゲルショートカラム(溶離液:トルエン)で精製した。得られた粗生成物をトルエンで再結晶させることで、化合物(4-10-1)を得た(0.9g、1.5mmol、収率45%)。
【0683】
NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=5.73(s,2H)、5.74(s,2H)、5.87(s,1H)、6.81-7.18(m,28H)、7.33-7.48(m,14H)、9.28(d,2H)、10.30(s,1H).
【0684】
合成実施例12:化合物(4-1)の合成
【化311】
【0685】
窒素雰囲気下、9,9-ジメチル-9,10-ジヒドロアクリジン (0.78g、3.7mmol)、ナトリウム-t-ブトキシド(NaOtBu、0.45g、4.6mmol)、トルエン(30ml)、トリ-t-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート([(t-Bu)3PH]BF4、0.05g、0.15mmol)、中間体A(1.5g、1.54mmol)、およびパラジウム触媒としてビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(Pd(dba)2、0.04g、0.039mmol)をフラスコに入れ、加熱還流下で5時間加熱した。
反応後、反応液に水とトルエンを加え攪拌した後、有機層を分離して水洗した。有機層を濃縮後に、シリカゲルショートカラム(溶離液:トルエン)で精製した。得られた粗生成物をトルエンで再結晶させることで、化合物(4-1-1)を得た(0.7g、収率35%)。
【0686】
NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=1.68(s,12H)、5.73(s,2H)、5.73(s,2H)、5.87(s,1H)、6.83-7.45(m,42H)、9.32(d,2H)、10.30(s,1H).
【0687】
合成実施例13:化合物(4-438-1)の合成
【化312】
【0688】
窒素雰囲気下、カルバゾール (0.62g、3.7mmol)、ナトリウム-t-ブトキシド(NaOtBu、0.45g、4.6mmol)、トルエン(30ml)、トリ-t-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート([(t-Bu)PH]BF、0.05g、0.15mmol)、中間体A(1.5g、1.54mmol)、およびパラジウム触媒としてビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(Pd(dba)、0.04g、0.039mmol)をフラスコに入れ、加熱還流下で5時間加熱した。
反応後、反応液に水とトルエンを加え攪拌した後、有機層を分離して水洗した。有機層を濃縮後に、シリカゲルショートカラム(溶離液:トルエン)で精製した。得られた粗生成物をトルエンで再結晶させることで、化合物(4-438-1)を得た(0.5g、収率31%)。
【0689】
NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=2.26(s,30H)、5.72(s,2H)、5.74(s,2H)、5.86(s,1H)、6.82(d,2H)、7.04(s,4H)、7.10(s,2H)、7.16(t,4H)、7.31-7.37(m,10H)、7.42(s,2H)、7.96(d,4H)、8.56(d,4H)、9.32(d,2H)、10.48(s,1H)
【0690】
合成実施例14:化合物(4-13-1)の合成
【化313】
【0691】
窒素雰囲気下、1,3,6,8-テトラメチル-9H-カルバゾール (0.83g、3.7mmol)、ナトリウム-t-ブトキシド(NaOtBu、0.45g、4.6mmol)、トルエン(30ml)、トリ-t-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート([(t-Bu)PH]BF、0.05g、0.15mmol)、中間体A(1.5g、1.54mmol)、およびパラジウム触媒としてビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(Pd(dba)、0.04g、0.039mmol)をフラスコに入れ、加熱還流下で5時間加熱した。
反応後、反応液に水とトルエンを加え攪拌した後、有機層を分離して水洗した。有機層を濃縮後に、シリカゲルショートカラム(溶離液:トルエン)で精製した。得られた粗生成物をトルエンで再結晶させることで、化合物(4-13-1)を得た(0.3g、収率14%)。
【0692】
NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=1.91(s,12H)、2.29(s,30H)、2.37(s,12H)、5.72(s,2H)、5.74(s,2H)、5.84(s,1H)、6.84(d,2H)、6.86(s,4H)、7.04(s,4H)、7.13(s,2H)、7.30(d,4H)、7.40(dd,2H)、7.42(s,2H)、8.69(s,4H)、9.30(d,2H)、10.50(s,1H)
【0693】
以下の実施例では下記の化合物を使用した。
【化314】
【0694】
構造計算例1:化合物(4-4-1)をドーパントとして用いたドープ膜の作製と評価
ホストとしての化合物DOBNA1、ドーパントとしての化合物(4-4-1)を異なる蒸着源から共蒸着し、膜厚60nmの発光層を形成した。このとき、ホストおよびエミッティングドーパントの質量比は99:1とした。
【0695】
作製したドープ膜を分光蛍光光度計(日立ハイテク(株)製、F-7000)を用いて、室温における蛍光スペクトル、77Kにおける蛍光スペクトルおよび77Kにおける燐光スペクトルを測定した。室温における蛍光スペクトルからは蛍光スペクトルピーク波長を、77Kにおける蛍光スペクトルおよび77Kにおける燐光スペクトルからはそれぞれのピークの立ち上がりより最低励起一重項エネルギー(S1)および最低励起三重項エネルギー(T1)を求めた。
【0696】
作製したドープ膜を蛍光寿命測定装置(浜松ホトニクス(株)製、C11367-01)を用いて300Kで蛍光寿命を測定した。
【0697】
また、化合物(4-4-1)における置換基(フェノキサジン基)の部分的なHOMOエネルギーを見積もるために、N-フェニルフェノキサジンの構造計算を行った。
【0698】
構造計算例2:化合物(BD2)をドーパントとして用いたドープ膜の作製と評価
ドーパントとして化合物(BD2)を用いた以外は実施例9と同様の手順でドープ膜を作製した。加えて、作製したドープ膜を用いて、室温における蛍光スペクトル、77Kにおける蛍光スペクトルおよび77Kにおける燐光スペクトルおよび遅延蛍光寿命を測定した。また、化合物(BD2)における置換基(ジフェニルアミン基)の部分的なHOMOエネルギーを見積もるために、トリフェニルアミンの構造計算を行った。
【0699】
構造計算例3:化合物(4-10-1)をドーパントとして用いたドープ膜の作製と評価
ドーパントとして化合物(4-10-1)を用いた以外は実施例9と同様の手順でドープ膜を作製した。加えて、作製したドープ膜を用いて、室温における蛍光スペクトル、77Kにおける蛍光スペクトルおよび77Kにおける燐光スペクトルおよび遅延蛍光寿命を測定した。また、化合物(4-10-1)における置換基(フェノチアジン基)の部分的なHOMOエネルギーを見積もるために、N-フェニルフェノチアジンの構造計算を行った。
【0700】
構造計算例4:化合物(4-1-1)をドーパントとして用いたドープ膜の作製と評価
ドーパントとして化合物(4-1-1)を用いた以外は実施例9と同様の手順でドープ膜を作製した。加えて、作製したドープ膜を用いて、室温における蛍光スペクトル、77Kにおける蛍光スペクトルおよび77Kにおける燐光スペクトルおよび遅延蛍光寿命を測定した。また、化合物(4-1-1)における置換基(ジメチルアクリジン基)の部分的なHOMOエネルギーを見積もるために、N-フェニルジメチルアクリジンの構造計算を行った。
【0701】
構造計算例5:化合物(BD3)をドーパントとして用いたドープ膜の作製と評価
ドーパントとして化合物(BD3)を用いた以外は実施例9と同様の手順でドープ膜を作製した。加えて、作製したドープ膜を用いて、室温における蛍光スペクトル、77Kにおける蛍光スペクトルおよび77Kにおける燐光スペクトルおよび遅延蛍光寿命を測定した。また、化合物(BD3)における置換基(カルバゾリル)の部分的なHOMOエネルギーを見積もるために、N-フェニルカルバゾールの構造計算を行った。
【0702】
構造計算例1~5の評価結果および計算結果については表3にまとめた。加えて、置換基の部分的なHOMOおよび遅延蛍光寿命のプロットを図2に示す。
【0703】
【表3】
【0704】
構造計算例1~5を比較すると、いずれの化合物もΔESTが小さく、測定された遅延蛍光寿命は本発明の化合物(4-4-1)が最もTADF性が高かった。直接に高次三重項エネルギーを測定することはできないため、置換基構造の構造計算値より求められたHOMOに対して遅延蛍光寿命をプロットした。構造計算例2の化合物(BD2)に対して置換基のHOMOが浅い化合物である化合物(4-4-1)は遅延蛍光寿命が小さく、化合物(BD2)に対して化合物(4-4-1)は適切な置換基を選ぶことにより、高次三重項エネルギーが適切に調節されたためTADF性が改善したと予想された。
【0705】
以上より、主骨格の部分的なエネルギーおよび置換基の部分的なエネルギーの調整によるTADF性が改善できることが示された。つまり、主骨格の構造が異なれば部分構造も異なり、実施例9、比較例1および参考例1~3は置換基の限定を示すものではない。
【0706】
ホウ素原子および/または窒素原子が互いにm位に置換されている化合物は極めて半値幅の狭い発光が得られることが知られているが、適切な置換基を用いて高次三重項エネルギーを調節することでTADF性を向上することができる。
【0707】
実施例9:化合物(4-4-1)をドーパントとして用いた素子の作製と評価
厚さ50nmのITO(インジウム・スズ酸化物)からなる陽極が形成されたガラス基板(26mm×28mm×0.7mm)の上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度5×10-4Paで積層した。
まず、ITO上に、NPDを膜厚40nmになるように蒸着し、その上に、TcTaを膜厚15nmになるように蒸着して2層からなる正孔注入輸送層を形成した。続いて、mCPを膜厚15nmになるように蒸着して電子阻止層を形成した。次に、ホストとしての化合物DOBNA1、ドーパントとしての化合物(4-4-1)を異なる蒸着源から共蒸着し、膜厚20nmの発光層を形成した。このとき、ホストおよびエミッティングドーパントの質量比は99:1とした。次に、2CzBNを膜厚10nm、次いで、BPy-TP2を膜厚20nmになるように蒸着して電子輸送層を形成した。続いて、LiFを膜厚1nmになるように蒸着し、その上に、アルミニウムを膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成し、有機EL素子を得た。
【0708】
比較例1:化合物(BD2)をドーパントとして用いた素子の作製と評価
化合物(4-4-1)を化合物(BD2)へ変更する以外は実施例9と同様の手順および構成にてEL素子を得た。
【0709】
実施例10:化合物(4-94-1)をドーパントとして用いた素子の作製と評価
化合物(4-4-1)を化合物(4-94-1)へ変更する以外は実施例9と同様の手順および構成にてEL素子を得た。
【0710】
実施例11:化合物(4-222-1)をドーパントとして用いた素子の作製と評価
化合物(4-4-1)を化合物(4-222-1)へ変更する以外は実施例9と同様の手順および構成にてEL素子を得た。
【0711】
実施例9~11および比較例1で作製された素子を、100cd/mにおける素子特性およびLT90(初期輝度100cd/mにおける電流密度で連続駆動させたときの90cd/mになるまでの時間)を表4にまとめた。
実施例9~11および比較例1を比較すると、本発明の化合物は発光波長の違いを考慮しても高い効率と長寿命が得られた。また、式(4)で表される骨格を有する場合、式(1)で表される化合物と比較しても、発光スペクトルの半値幅は極めて狭い。
【0712】
【表4】
【0713】
実施例12:化合物(1-296-1)をドーパントとして用いた素子の作製と評価
厚さ50nmのITO(インジウム・スズ酸化物)からなる陽極が形成されたガラス基板(26mm×28mm×0.7mm)の上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度5×10-4Paで積層した。
まず、ITO上に、NPDを膜厚40nmになるように蒸着し、その上に、TcTaを膜厚15nmになるように蒸着して2層からなる正孔注入輸送層を形成した。続いて、mCPを膜厚15nmになるように蒸着して電子阻止層を形成した。次に、ホストとしての化合物mCBP、ドーパントとしての化合物(4-10-1)を異なる蒸着源から共蒸着し、膜厚20nmの発光層を形成した。このとき、ホストおよびエミッティングドーパントの質量比は90:10とした。次に、2CzBNを膜厚10nm、次いで、BPy-TP2を膜厚20nmになるように蒸着して電子輸送層を形成した。続いて、LiFを膜厚1nmになるように蒸着し、その上に、アルミニウムを膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成し、有機EL素子を得た。
【0714】
実施例13:化合物(1-295)をドーパントとして用いた素子の作製と評価
化合物(1-296-1)を化合物(1-295)へ変更する以外は実施例12と同様の手順および構成にてEL素子を得た。
【0715】
実施例14:化合物(2-30)をドーパントとして用いた素子の作製と評価
化合物(1-296-1)を化合物(2-30)へ変更する以外は実施例12と同様の手順および構成にてEL素子を得た。
【0716】
実施例15:化合物(2-26)をドーパントとして用いた素子の作製と評価
化合物(1-296-1)を化合物(2-26)へ変更する以外は実施例12と同様の手順および構成にてEL素子を得た。
【0717】
比較例2:化合物(BD4)をドーパントとして用いた素子の作製と評価
化合物(1-296-1)を化合物(BD4)へ変更する以外は実施例12と同様の手順および構成にてEL素子を得た。
【0718】
実施例12~15および比較例2で作製された素子を、100cd/mにおける素子特性およびLT90(初期輝度100cd/mにおける電流密度で連続駆動させたときの90cd/mになるまでの時間)を表5にまとめた。
実施例12~15および比較例2を比較すると、本発明の化合物は発光波長の違いを考慮しても高い効率と長寿命が得られた。
【0719】
【表5】
【0720】
実施例16:化合物(4-438-1)をドーパントとして用いた素子の作製と評価
厚さ50nmのITO(インジウム・スズ酸化物)からなる陽極が形成されたガラス基板(26mm×28mm×0.7mm)の上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度5×10-4Paで積層した。
まず、ITO上に、NPDを膜厚40nmになるように蒸着し、その上に、TcTaを膜厚15nmになるように蒸着して2層からなる正孔注入輸送層を形成した。続いて、mCPを膜厚15nmになるように蒸着して電子阻止層を形成した。次に、ホストとしての化合物DOBNA1、ドーパントとしての化合物(4-438-1)を異なる蒸着源から共蒸着し、膜厚20nmの発光層を形成した。このとき、ホストおよびエミッティングドーパントの質量比は99:1とした。次に、2CzBNを膜厚10nm、次いで、BPy-TP2を膜厚20nmになるように蒸着して電子輸送層を形成した。続いて、LiFを膜厚1nmになるように蒸着し、その上に、アルミニウムを膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成し、有機EL素子を得た。
【0721】
実施例17:化合物(4-13-1)をドーパントとして用いた素子の作製と評価
化合物(4-438-1)を化合物(4-13-1)へ変更する以外は実施例16と同様の手順および構成にてEL素子を得た。
【0722】
実施例16,17で作製された素子を、100cd/mにおける素子特性およびLT90(初期輝度100cd/mにおける電流密度で連続駆動させたときの90cd/mになるまでの時間)を表6にまとめた。
【0723】
【表6】
【符号の説明】
【0724】
100 有機電界発光素子
101 基板
102 陽極
103 正孔注入層
104 正孔輸送層
105 発光層
106 電子輸送層
107 電子注入層
108 陰極
図1
図2