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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】検査装置及び検査方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20241204BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20241204BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20241204BHJP
【FI】
H01L21/78 B
B23K26/00 P
B23K26/53
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020068439
(22)【出願日】2020-04-06
(65)【公開番号】P2021166229
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 泰史
(72)【発明者】
【氏名】坂本 剛志
(72)【発明者】
【氏名】荻原 孝文
(72)【発明者】
【氏名】佐野 いく
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-158811(JP,A)
【文献】特開2002-192370(JP,A)
【文献】特開2014-41927(JP,A)
【文献】特開2017-204574(JP,A)
【文献】特開2015-170697(JP,A)
【文献】特開2019-147191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/00
B23K 26/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一表面及び第二表面を有するウエハの前記第一表面側から前記ウエハにレーザ光を照射する照射部と、
前記ウエハに対して透過性を有する光を出力し、前記ウエハを伝搬した前記光を検出する撮像部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記ウエハに前記レーザ光が照射されることにより前記ウエハの内部に一又は複数の改質領域が形成されると共に前記改質領域から延びる亀裂が前記第一表面及び前記第二表面にまで到達したフルカット状態となるように設定された加工条件で前記照射部を制御する第一処理と、
前記光を検出した前記撮像部から出力される信号に基づいて、前記第一表面における前記改質領域から延びる亀裂の状態、並びに、前記ウエハの内部における前記改質領域及び前記亀裂の少なくとも一つの状態を特定する第二処理と、
前記第二処理において特定した情報に基づき、前記加工条件に応じた前記ウエハに対する分断力が適正か否かを判定する第三処理と、を実行するように構成されており、
前記制御部は、
前記第二処理において、前記ウエハの内部における、前記ウエハの厚さ方向に交差する方向への前記亀裂の蛇行の幅を特定し、
前記第三処理において、特定した前記亀裂の蛇行の幅が所定の値よりも大きい場合に前記分断力が適正範囲を超えており適正でないと判定する、検査装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第二処理において、前記ウエハの情報に応じて、前記亀裂の蛇行が発生しやすいと想定される前記ウエハの内部の位置を決定し、決定した位置において、前記亀裂の蛇行の幅を特定する、請求項記載の検査装置。
【請求項3】
第一表面及び第二表面を有するウエハの前記第一表面側から前記ウエハにレーザ光を照射する照射部と、
前記ウエハに対して透過性を有する光を出力し、前記ウエハを伝搬した前記光を検出する撮像部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記ウエハに前記レーザ光が照射されることにより前記ウエハの内部に一又は複数の改質領域が形成されると共に前記改質領域から延びる亀裂が前記第一表面及び前記第二表面にまで到達したフルカット状態となるように設定された加工条件で前記照射部を制御する第一処理と、
前記光を検出した前記撮像部から出力される信号に基づいて、前記第一表面における前記改質領域から延びる亀裂の状態、並びに、前記ウエハの内部における前記改質領域及び前記亀裂の少なくとも一つの状態を特定する第二処理と、
前記第二処理において特定した情報に基づき、前記加工条件に応じた前記ウエハに対する分断力が適正か否かを判定する第三処理と、を実行するように構成されており、
前記制御部は、
前記第二処理において、前記改質領域に係る前記レーザ光のだ痕の鮮明度を特定し、
前記第三処理において、特定した前記だ痕の鮮明度が所定の値よりも高い場合に、前記分断力が適正範囲に達しておらず適正でないと判定する、検査装置。
【請求項4】
第一表面及び第二表面を有するウエハの前記第一表面側から前記ウエハにレーザ光を照射する照射部と、
前記ウエハに対して透過性を有する光を出力し、前記ウエハを伝搬した前記光を検出する撮像部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記ウエハに前記レーザ光が照射されることにより前記ウエハの内部に一又は複数の改質領域が形成されると共に前記改質領域から延びる亀裂が前記第一表面及び前記第二表面にまで到達したフルカット状態となるように設定された加工条件で前記照射部を制御する第一処理と、
前記光を検出した前記撮像部から出力される信号に基づいて、前記第一表面における前記改質領域から延びる亀裂の状態、並びに、前記ウエハの内部における前記改質領域及び前記亀裂の少なくとも一つの状態を特定する第二処理と、
前記第二処理において特定した情報に基づき、前記加工条件に応じた前記ウエハに対する分断力が適正か否かを判定する第三処理と、を実行するように構成されており、
前記制御部は、
前記第二処理において、前記第一表面における前記ウエハの厚さ方向に交差する方向への前記亀裂の蛇行の幅を特定し、
前記第三処理において、特定した前記亀裂の蛇行の幅が所定の値よりも大きい場合に前記分断力が適正範囲を超えており適正でないと判定する、検査装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第二処理において、前記第一表面における前記亀裂の到達状態を特定し、
前記第三処理において、特定した前記亀裂の到達状態が、前記第一表面にまで前記亀裂が到達していないステルス状態である場合に、前記分断力が適正範囲に達しておらず適正でないと判定する、請求項1~4のいずれか一項記載の検査装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記第二処理において、前記第二表面における前記亀裂の到達状態を特定し、
前記第三処理において、特定した前記亀裂の到達状態が、前記第二表面にまで前記亀裂が到達していないステルス状態である場合に、前記分断力が適正範囲に達しておらず適正でないと判定する、請求項1~のいずれか一項記載の検査装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記第三処理において前記分断力が適正でないと判定した場合に、前記分断力が適正範囲となるように前記加工条件を補正する第四処理を更に実行するように構成されており、
前記第四処理において補正された前記加工条件で、再度、前記第一処理、前記第二処理、及び前記第三処理を実行する、請求項1~のいずれか一項記載の検査装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記第一処理において、複数の前記改質領域が形成されるように前記照射部を制御し、
前記第一処理において最後に形成される前記改質領域が形成された後に、前記第二処理及び前記第三処理を実行する、請求項1~のいずれか一項記載の検査装置。
【請求項9】
第一表面及び第二表面を有するウエハの前記第一表面側から前記ウエハにレーザ光を照射する照射部と、
前記ウエハに対して透過性を有する光を出力し、前記ウエハを伝搬した前記光を検出する撮像部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記ウエハに前記レーザ光が照射されることにより前記ウエハの内部に複数の改質領域が形成されると共に前記改質領域から延びる亀裂が前記第一表面及び前記第二表面にまで到達したフルカット状態となるように設定された加工条件で前記照射部を制御する第一処理と、
前記第一処理において最後に形成される改質領域が形成される前に、前記光を検出した前記撮像部から出力される信号に基づいて、前記改質領域及び前記改質領域から延びる亀裂に係る情報を特定する事前特定処理と、
前記事前特定処理において特定した情報に基づき、前記最後に形成される改質領域が形成される前の状態として適正か否かを判定する事前判定処理と、を実行するように構成されている、検査装置。
【請求項10】
前記制御部は、
前記事前判定処理において前記最後に形成される改質領域が形成される前の状態として適正でないと判定した場合に、前記加工条件を補正する事前補正処理を更に実行するように構成されており、
前記事前補正処理において補正された前記加工条件で、再度、前記第一処理、前記事前特定処理、及び前記事前判定処理を実行する、請求項記載の検査装置。
【請求項11】
第一表面及び第二表面を有するウエハの前記第一表面側から、前記ウエハの内部に一又は複数の改質領域が形成されると共に前記改質領域から延びる亀裂が前記第一表面及び前記第二表面にまで到達したフルカット状態となるように設定された加工条件で、レーザ光を照射する第一工程と、
前記第一工程によって前記改質領域が形成された前記ウエハに対して透過性を有する光を出力し、前記ウエハを伝搬した前記光を検出して出力される信号に基づいて、前記第一表面における前記改質領域から延びる亀裂の状態、並びに、前記ウエハの内部における前記改質領域及び前記亀裂の少なくとも一つの状態を特定する第二工程と、
前記第二工程において特定した情報に基づき、前記加工条件に応じた前記ウエハに対する分断力が適正か否かを判定する第三工程と、を含み、
前記第二工程では、前記ウエハの内部における、前記ウエハの厚さ方向に交差する方向への前記亀裂の蛇行の幅を特定し、
前記第三工程では、特定した前記亀裂の蛇行の幅が所定の値よりも大きい場合に前記分断力が適正範囲を超えており適正でないと判定する、検査方法。
【請求項12】
第一表面及び第二表面を有するウエハの前記第一表面側から、前記ウエハの内部に一又は複数の改質領域が形成されると共に前記改質領域から延びる亀裂が前記第一表面及び前記第二表面にまで到達したフルカット状態となるように設定された加工条件で、レーザ光を照射する第一工程と、
前記第一工程によって前記改質領域が形成された前記ウエハに対して透過性を有する光を出力し、前記ウエハを伝搬した前記光を検出して出力される信号に基づいて、前記第一表面における前記改質領域から延びる亀裂の状態、並びに、前記ウエハの内部における前記改質領域及び前記亀裂の少なくとも一つの状態を特定する第二工程と、
前記第二工程において特定した情報に基づき、前記加工条件に応じた前記ウエハに対する分断力が適正か否かを判定する第三工程と、を含み、
前記第二工程では、前記改質領域に係る前記レーザ光のだ痕の鮮明度を特定し、
前記第三工程では、特定した前記だ痕の鮮明度が所定の値よりも高い場合に、前記分断力が適正範囲に達しておらず適正でないと判定する、検査方法。
【請求項13】
第一表面及び第二表面を有するウエハの前記第一表面側から、前記ウエハの内部に一又は複数の改質領域が形成されると共に前記改質領域から延びる亀裂が前記第一表面及び前記第二表面にまで到達したフルカット状態となるように設定された加工条件で、レーザ光を照射する第一工程と、
前記第一工程によって前記改質領域が形成された前記ウエハに対して透過性を有する光を出力し、前記ウエハを伝搬した前記光を検出して出力される信号に基づいて、前記第一表面における前記改質領域から延びる亀裂の状態、並びに、前記ウエハの内部における前記改質領域及び前記亀裂の少なくとも一つの状態を特定する第二工程と、
前記第二工程において特定した情報に基づき、前記加工条件に応じた前記ウエハに対する分断力が適正か否かを判定する第三工程と、を含み、
前記第二工程では、前記第一表面における前記ウエハの厚さ方向に交差する方向への前記亀裂の蛇行の幅を特定し、
前記第三工程では、特定した前記亀裂の蛇行の幅が所定の値よりも大きい場合に前記分断力が適正範囲を超えており適正でないと判定する、検査方法。
【請求項14】
第一表面及び第二表面を有するウエハの前記第一表面側から、前記ウエハの内部に一又は複数の改質領域が形成されると共に前記改質領域から延びる亀裂が前記第一表面及び前記第二表面にまで到達したフルカット状態となるように設定された加工条件で、レーザ光を照射する第一工程と、
前記第一工程において最後に形成される改質領域が形成される前に、前記ウエハに対して透過性を有する光を出力し、前記ウエハを伝搬した前記光を検出する撮像部から出力される信号に基づいて、前記改質領域及び前記改質領域から延びる亀裂に係る情報を特定する事前特定工程と、
前記事前特定工程において特定した情報に基づき、前記最後に形成される改質領域が形成される前の状態として適正か否かを判定する事前判定工程と、を含む検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板と、半導体基板の一方の面に形成された機能素子層と、を備えるウエハを複数のラインのそれぞれに沿って切断するために、半導体基板の他方の面側からウエハにレーザ光を照射することにより、複数のラインのそれぞれに沿って半導体基板の内部に複数列の改質領域を形成する検査装置が知られている。特許文献1に記載の検査装置は、赤外線カメラを備えており、半導体基板の内部に形成された改質領域、機能素子層に形成された加工ダメージ等を半導体基板の裏面側から観察することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-64746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような検査装置では、ユーザの要望に応じて、改質領域から延びる亀裂がウエハの両端面にまで延びた状態(フルカット状態)となるように改質領域を形成する場合がある。フルカット状態となっているか否かについては、例えば、ウエハの両端面の状態が観察されることにより判断される。ここで、例えばウエハの両端面の状態を観察することによりフルカット状態であるか否かが判定できるものの、フルカット状態となったウエハの内部が適切な状態であるか(品質を維持しているか)否かについては、検査時において判定することができない。このことにより、フルカット状態に加工するウエハの品質を十分に担保することができない場合がある。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、フルカット状態に加工するウエハの品質を担保することが可能な検査装置及び検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る検査装置は、第一表面及び第二表面を有するウエハの第一表面側からウエハにレーザ光を照射する照射部と、ウエハに対して透過性を有する光を出力し、ウエハを伝搬した光を検出する撮像部と、制御部と、を備え、制御部は、ウエハにレーザ光が照射されることによりウエハの内部に一又は複数の改質領域が形成されると共に改質領域から延びる亀裂が第一表面及び第二表面にまで到達したフルカット状態となるように設定された加工条件で照射部を制御する第一処理と、光を検出した撮像部から出力される信号に基づいて、第一表面における改質領域から延びる亀裂の状態、並びに、ウエハの内部における改質領域及び亀裂の少なくとも一つの状態を特定する第二処理と、第二処理において特定した情報に基づき、加工条件に応じたウエハに対する分断力が適正か否かを判定する第三処理と、を実行するように構成されている。
【0007】
本発明の一態様に係る検査装置では、改質領域から延びる亀裂がウエハの第一表面及び第二表面にまで到達したフルカット状態となるように設定された加工条件でレーザ光が照射される。そして、第一表面における亀裂の状態、並びに、ウエハの内部における改質領域及び亀裂の少なくとも一つの状態が特定され、特定された情報に基づいて、加工条件に応じたウエハに対する分断力が適正か否かが判定される。このように、レーザ光の入射面である第一表面における亀裂の状態に加えて、ウエハの内部における改質領域及び亀裂の少なくとも一つの状態が特定されることにより、ウエハの端面(第一表面)の情報だけでなく、ウエハの内部の情報も考慮して、フルカット状態とするためのウエハに対する分断力の適否が判定されることになる。このことで、例えば、フルカット状態となっているもののウエハの内部の品質が悪化しているような場合に、分断力が適正でないと判定することが可能となる。これによって、フルカット状態に加工するウエハの品質を担保することができる。
【0008】
制御部は、第二処理において、ウエハの内部における、ウエハの厚さ方向に交差する方向への亀裂の蛇行の幅を特定し、第三処理において、特定した亀裂の蛇行の幅が所定の値よりも大きい場合に分断力が適正範囲を超えており適正でないと判定してもよい。分断力が大きくなり過ぎている場合には、ウエハの内部において、ウエハの厚さ方向に交差する方向に亀裂が大きく蛇行することが考えられる。このように亀裂が蛇行している箇所は、ウエハが切断された後において端面の凹凸箇所になる。このため、亀裂の蛇行の幅が大きくなった場合に分断力が大きくなり過ぎていると判定し必要に応じて分断力の補正等が実行されることにより、端面に凹凸箇所が生じることを抑制し、フルカット状態に加工するウエハの品質を適切に担保することができる。
【0009】
制御部は、第二処理において、ウエハの情報に応じて、亀裂の蛇行が発生しやすいと想定されるウエハの内部の位置を決定し、決定した位置において、亀裂の蛇行の幅を特定してもよい。例えばウエハの厚さ等によって、亀裂の蛇行が発生し易い箇所はある程度予測することができる。このため、ウエハの厚さ等のウエハの情報やレーザ集光位置等のレーザ加工条件を考慮して亀裂の蛇行が発生しやすいと想定されるウエハの内部の位置において亀裂の蛇行の幅が特定されることにより、効率的且つ適切に亀裂の蛇行の幅に係る判定を行うことができる。
【0010】
制御部は、第二処理において、改質領域に係るレーザ光のだ痕の鮮明度を特定し、第三処理において、特定しただ痕の鮮明度が所定の値よりも高い場合に、分断力が適正範囲に達しておらず適正でないと判定してもよい。フルカット状態となっている場合においては、改質領域に係るだ痕がぼんやりと観察され鮮明度が低くなる。一方で、フルカット状態となっていない場合においては、改質領域に係るだ痕がはっきりと観察され鮮明度が高くなる。このため、だ痕の鮮明度が高い場合に、分断力が小さいと判定し必要に応じて分断力を大きくする補正等が実行されることにより、確実にフルカット状態とすることができ、フルカット状態に加工するウエハの品質を適切に担保することができる。
【0011】
制御部は、第二処理において、第一表面における亀裂の到達状態を特定し、第三処理において、特定した亀裂の到達状態が、第一表面にまで亀裂が到達していないステルス状態である場合に、分断力が適正範囲に達しておらず適正でないと判定してもよい。亀裂が第一表面にまで到達したハーフカット状態となっていない(ステルス状態である)場合には、当然にフルカット状態とはなっていない。このため、ハーフカット状態となっていない場合に、分断力が小さいと判定し必要に応じて分断力を大きくする補正等が実行されることにより、確実にフルカット状態とすることができ、フルカット状態に加工するウエハの品質を適切に担保することができる。
【0012】
制御部は、第二処理において、第一表面におけるウエハの厚さ方向に交差する方向への亀裂の蛇行の幅を特定し、第三処理において、特定した亀裂の蛇行の幅が所定の値よりも大きい場合に分断力が適正範囲を超えており適正でないと判定してもよい。第一表面においてウエハの厚さ方向に交差する方向に亀裂が大きく蛇行している場合には、分断力が大きくなり過ぎていると考えられる。このため、第一表面における亀裂の蛇行の幅が所定の値よりも大きい場合に、分断力が大きいと判定し必要に応じて分断力を小さくする補正等が実行されることにより、フルカット状態に加工するウエハの品質を適切に担保することができる。
【0013】
制御部は、第二処理において、第二表面における亀裂の到達状態を特定し、第三処理において、特定した亀裂の到達状態が、第二表面にまで亀裂が到達していないステルス状態である場合に、分断力が適正範囲に達しておらず適正でないと判定してもよい。亀裂が第二表面にまで到達したBHC状態となっていない(ステルス状態である)場合には、当然にフルカット状態とはなっていない。このため、BHC状態となっていない場合には、分断力が小さいと判定し必要に応じて分断力を大きくする補正等が実行されることにより、確実にフルカット状態とすることができ、フルカット状態に加工するウエハの品質を適切に担保することができる。
【0014】
制御部は、第三処理において分断力が適正でないと判定した場合に、分断力が適正範囲となるように加工条件を補正する第四処理を更に実行するように構成されており、第四処理において補正された加工条件で、再度、第一処理、第二処理、及び第三処理を実行してもよい。このように、分断力が適正範囲となるように補正された加工条件で、再度各処理が実行されることにより、補正された加工条件が適正であるか否かを判定し、適正な加工条件を確実に導出することができる。
【0015】
制御部は、第一処理において、複数の改質領域が形成されるように照射部を制御し、第一処理において最後に形成される改質領域が形成された後に、第二処理及び第三処理を実行してもよい。これにより、全ての改質領域が形成された後のウエハの状態(すなわち、フルカット状態となっているはずの状態)に基づいて、フルカット状態とするためのウエハに対する分断力の適否を判定することができる。
【0016】
本発明の一態様に係る検査装置は、第一表面及び第二表面を有するウエハの第一表面側からウエハにレーザ光を照射する照射部と、ウエハに対して透過性を有する光を出力し、ウエハを伝搬した光を検出する撮像部と、制御部と、を備え、制御部は、ウエハにレーザ光が照射されることによりウエハの内部に複数の改質領域が形成されると共に改質領域から延びる亀裂が第一表面及び第二表面にまで到達したフルカット状態となるように設定された加工条件で照射部を制御する第一処理と、第一処理において最後に形成される改質領域が形成される前に、光を検出した撮像部から出力される信号に基づいて、改質領域及び改質領域から延びる亀裂に係る情報を特定する事前特定処理と、事前特定処理において特定した情報に基づき、最後に形成される改質領域が形成される前の状態として適正か否かを判定する事前判定処理と、を実行するように構成されている。フルカット状態においては、ウエハの内部の詳細な状態を観察することが難しい場合がある。この点、最後に形成される改質領域が形成される前においては、改質領域及び亀裂に係る情報(改質層位置や亀裂長さ等)の詳細が観察(特定)できるため、フルカット状態での判定と比較してより詳細な判定が可能になる。そして、最後に形成される改質領域が形成される前の状態として適正か否かが判定されることにより、フルカット状態に加工するウエハの品質を担保することができる。
【0017】
制御部は、事前判定処理において最後に形成される改質領域が形成される前の状態として適正でないと判定した場合に、加工条件を補正する事前補正処理を更に実行するように構成されており、事前補正処理において補正された加工条件で、再度、第一処理、事前特定処理、及び事前判定処理を実行してもよい。このように、事前判定処理において状態が適正でないと判定された場合に加工条件が補正されることによって、フルカット状態に加工するウエハの品質を担保することができる。
【0018】
本発明の一態様に係る検査方法は、第一表面及び第二表面を有するウエハの第一表面側から、ウエハの内部に一又は複数の改質領域が形成されると共に改質領域から延びる亀裂が第一表面及び第二表面にまで到達したフルカット状態となるように設定された加工条件で、レーザ光を照射する第一工程と、第一工程によって改質領域が形成されたウエハに対して透過性を有する光を出力し、ウエハを伝搬した光を検出して出力される信号に基づいて、第一表面における改質領域から延びる亀裂の状態、並びに、ウエハの内部における改質領域及び亀裂の少なくとも一つの状態を特定する第二工程と、第二工程において特定した情報に基づき、加工条件に応じたウエハに対する分断力が適正か否かを判定する第三工程と、を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、フルカット状態に加工するウエハの品質を担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実行形態の検査装置の構成図である。
図2】一実行形態のウエハの平面図である。
図3図2に示されるウエハの一部分の断面図である。
図4図1に示されるレーザ照射ユニットの構成図である。
図5図1に示される検査用撮像ユニットの構成図である。
図6図1に示されるアライメント補正用撮像ユニットの構成図である。
図7図5に示される検査用撮像ユニットによる撮像原理を説明するためのウエハの断面図、及び当該検査用撮像ユニットによる各箇所での画像である。
図8図5に示される検査用撮像ユニットによる撮像原理を説明するためのウエハの断面図、及び当該検査用撮像ユニットによる各箇所での画像である。
図9】半導体基板の内部に形成された改質領域及び亀裂のSEM画像である。
図10】半導体基板の内部に形成された改質領域及び亀裂のSEM画像である。
図11図5に示される検査用撮像ユニットによる撮像原理を説明するための光路図、及び当該検査用撮像ユニットによる焦点での画像を示す模式図である。
図12図5に示される検査用撮像ユニットによる撮像原理を説明するための光路図、及び当該検査用撮像ユニットによる焦点での画像を示す模式図である。
図13】ウエハに対する分断力に応じたウエハの状態を説明する図である。
図14】フルカット条件でレーザ加工する場合に内部観察が必要な理由を説明する図である。
図15】ウエハの状態毎の観察結果を模式的に示す図である。
図16】蛇行する亀裂の幅の観察について説明する図である。
図17】ウエハの厚さ毎の端面凹凸発生領域を説明する図である。
図18】加工条件導出処理を説明する図である。
図19】加工条件導出処理に係る画面イメージである。
図20】加工条件導出処理に係る画面イメージである。
図21】加工条件導出処理に係る画面イメージである。
図22】加工条件導出処理に係る画面イメージである。
図23】加工条件導出処理に係る画面イメージである。
図24】加工条件導出処理に係る画面イメージである。
図25】検査方法(加工条件導出処理)のフローチャートである。
図26】変形例に係る加工条件導出処理を説明する図である。
図27】変形例に係る加工条件導出処理に係る画面イメージである。
図28】変形例に係る加工条件導出処理に係る画面イメージである。
図29】変形例に係る検査方法(加工条件導出処理)のフローチャートである。
図30】亀裂検出について説明する図である。
図31】亀裂検出について説明する図である。
図32】だ痕検出について説明する図である。
図33】だ痕検出について説明する図である。
図34】だ痕検出について説明する図である。
図35】加工方法による撮像区間の違いを説明する図である。
図36】輝度キャリブレーション処理のフローチャートである。
図37】シェーディング補正処理のフローチャートである。
図38】各種補正処理を行う場合のレーザ加工方法(加工条件導出処理)のフローチャートである。
図39】各種補正処理を行った画像である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実行形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[検査装置の構成]
【0022】
図1に示されるように、検査装置1は、ステージ2と、レーザ照射ユニット3(照射部)と、複数の撮像ユニット4,5,6と、駆動ユニット7と、制御部8と、ディスプレイ150(入力部,表示部)とを備えている。検査装置1は、対象物11にレーザ光Lを照射することにより、対象物11に改質領域12を形成する装置である。
【0023】
ステージ2は、例えば対象物11に貼り付けられたフィルムを吸着することにより、対象物11を支持する。ステージ2は、X方向及びY方向のそれぞれに沿って移動可能であり、Z方向に平行な軸線を中心線として回転可能である。なお、X方向及びY方向は、互いに垂直な第1水平方向及び第2水平方向であり、Z方向は、鉛直方向である。
【0024】
レーザ照射ユニット3は、対象物11に対して透過性を有するレーザ光Lを集光して対象物11に照射する。ステージ2に支持された対象物11の内部にレーザ光Lが集光されると、レーザ光Lの集光点Cに対応する部分においてレーザ光Lが特に吸収され、対象物11の内部に改質領域12が形成される。
【0025】
改質領域12は、密度、屈折率、機械的強度、その他の物理的特性が周囲の非改質領域とは異なる領域である。改質領域12としては、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等がある。改質領域12は、改質領域12からレーザ光Lの入射側及びその反対側に亀裂が延び易いという特性を有している。このような改質領域12の特性は、対象物11の切断に利用される。
【0026】
一例として、ステージ2をX方向に沿って移動させ、対象物11に対して集光点CをX方向に沿って相対的に移動させると、複数の改質スポット12sがX方向に沿って1列に並ぶように形成される。1つの改質スポット12sは、1パルスのレーザ光Lの照射によって形成される。1列の改質領域12は、1列に並んだ複数の改質スポット12sの集合である。隣り合う改質スポット12sは、対象物11に対する集光点Cの相対的な移動速度及びレーザ光Lの繰り返し周波数によって、互いに繋がる場合も、互いに離れる場合もある。
【0027】
撮像ユニット4は、対象物11に形成された改質領域12、及び改質領域12から延びた亀裂の先端を撮像する。
【0028】
撮像ユニット5及び撮像ユニット6は、制御部8の制御のもとで、ステージ2に支持された対象物11を、対象物11を透過する光により撮像する。撮像ユニット5,6が撮像することにより得られた画像は、一例として、レーザ光Lの照射位置のアライメントに供される。
【0029】
駆動ユニット7は、レーザ照射ユニット3及び複数の撮像ユニット4,5,6を支持している。駆動ユニット7は、レーザ照射ユニット3及び複数の撮像ユニット4,5,6をZ方向に沿って移動させる。
【0030】
制御部8は、ステージ2、レーザ照射ユニット3、複数の撮像ユニット4,5,6、及び駆動ユニット7の動作を制御する。制御部8は、プロセッサ、メモリ、ストレージ及び通信デバイス等を含むコンピュータ装置として構成されている。制御部8では、プロセッサが、メモリ等に読み込まれたソフトウェア(プログラム)を実行し、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込み、並びに、通信デバイスによる通信を制御する。
【0031】
ディスプレイ150は、ユーザから情報の入力を受付ける入力部としての機能と、ユーザに対して情報を表示する表示部としての機能とを有している。
【0032】
[対象物の構成]
本実行形態の対象物11は、図2及び図3に示されるように、ウエハ20である。ウエハ20は、半導体基板21と、機能素子層22と、を備えている。なお、本実行形態では、ウエハ20は機能素子層22を有するとして説明するが、ウエハ20は機能素子層22を有していても有していなくてもよく、ベアウエハであってもよい。半導体基板21は、表面21a(第二表面)及び裏面21b(第一表面)を有している。半導体基板21は、例えば、シリコン基板である。機能素子層22は、半導体基板21の表面21aに形成されている。機能素子層22は、表面21aに沿って2次元に配列された複数の機能素子22aを含んでいる。機能素子22aは、例えば、フォトダイオード等の受光素子、レーザダイオード等の発光素子、メモリ等の回路素子等である。機能素子22aは、複数の層がスタックされて3次元的に構成される場合もある。なお、半導体基板21には、結晶方位を示すノッチ21cが設けられているが、ノッチ21cの替わりにオリエンテーションフラットが設けられていてもよい。
【0033】
ウエハ20は、複数のライン15のそれぞれに沿って機能素子22aごとに切断される。複数のライン15は、ウエハ20の厚さ方向から見た場合に複数の機能素子22aのそれぞれの間を通っている。より具体的には、ライン15は、ウエハ20の厚さ方向から見た場合にストリート領域23の中心(幅方向における中心)を通っている。ストリート領域23は、機能素子層22において、隣り合う機能素子22aの間を通るように延在している。本実行形態では、複数の機能素子22aは、表面21aに沿ってマトリックス状に配列されており、複数のライン15は、格子状に設定されている。なお、ライン15は、仮想的なラインであるが、実際に引かれたラインであってもよい。
【0034】
[レーザ照射ユニットの構成]
図4に示されるように、レーザ照射ユニット3は、光源31と、空間光変調器32と、集光レンズ33と、を有している。光源31は、例えばパルス発振方式によって、レーザ光Lを出力する。空間光変調器32は、光源31から出力されたレーザ光Lを変調する。空間光変調器32は、例えば反射型液晶(LCOS:Liquid Crystal on Silicon)の空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)である。集光レンズ33は、空間光変調器32によって変調されたレーザ光Lを集光する。なお、集光レンズ33は、補正環レンズであってもよい。
【0035】
本実行形態では、レーザ照射ユニット3は、複数のライン15のそれぞれに沿って半導体基板21の裏面21b側からウエハ20にレーザ光Lを照射することにより、複数のライン15のそれぞれに沿って半導体基板21の内部に2列の改質領域12a,12bを形成する。改質領域12aは、2列の改質領域12a,12bのうち表面21aに最も近い改質領域である。改質領域12bは、2列の改質領域12a,12bのうち、改質領域12aに最も近い改質領域であって、裏面21bに最も近い改質領域である。
【0036】
2列の改質領域12a,12bは、ウエハ20の厚さ方向(Z方向)において隣り合っている。2列の改質領域12a,12bは、半導体基板21に対して2つの集光点C1,C2がライン15に沿って相対的に移動させられることにより形成される。レーザ光Lは、例えば集光点C1に対して集光点C2が進行方向の後側且つレーザ光Lの入射側に位置するように、空間光変調器32によって変調される。なお、改質領域の形成に関しては、単焦点であっても多焦点であってもよいし、1パスであっても複数パスであってもよい。
【0037】
レーザ照射ユニット3は、複数のライン15のそれぞれに沿って半導体基板21の裏面21b側からウエハ20にレーザ光Lを照射する。一例として、厚さ400μmの単結晶シリコン<100>基板である半導体基板21に対し、表面21aから54μmの位置及び128μmの位置に2つの集光点C1,C2をそれぞれ合わせて、複数のライン15のそれぞれに沿って半導体基板21の裏面21b側からウエハ20にレーザ光Lを照射する。このとき、例えば2列の改質領域12a,12bに渡る亀裂14が半導体基板21の表面21aに至る条件とする場合、レーザ光Lの波長は1099nm、パルス幅は700n秒、繰り返し周波数は120kHzとされる。また、集光点C1におけるレーザ光Lの出力は2.7W、集光点C2におけるレーザ光Lの出力は2.7Wとされ、半導体基板21に対する2つの集光点C1,C2の相対的な移動速度は800mm/秒とされる。なお、例えば加工パス数が5とされる場合、上述したウエハ20に対して、例えば、ZH80(表面21aから328μmの位置)、ZH69(表面21aから283μmの位置)、ZH57(表面21aから234μmの位置)、ZH26(表面21aから107μmの位置)、ZH12(表面21aから49.2μmの位置)が加工位置とされてもよい。この場合、例えば、レーザ光Lの波長は1080nmであり、パルス幅は400nsecであり、繰り返し周波数は100kHzであり、移動速度は490mm/秒であってもよい。
【0038】
このような2列の改質領域12a,12b及び亀裂14の形成は、次のような場合に実行される。すなわち、後の工程において、例えば、半導体基板21の裏面21bを研削することにより半導体基板21を薄化すると共に亀裂14を裏面21bに露出させ、複数のライン15のそれぞれに沿ってウエハ20を複数の半導体デバイスに切断する場合である。
【0039】
[検査用撮像ユニットの構成]
図5に示されるように、撮像ユニット4(撮像部)は、光源41と、ミラー42と、対物レンズ43と、光検出部44と、を有している。撮像ユニット4はウエハ20を撮像する。光源41は、半導体基板21に対して透過性を有する光I1を出力する。光源41は、例えば、ハロゲンランプ及びフィルタによって構成されており、近赤外領域の光I1を出力する。光源41から出力された光I1は、ミラー42によって反射されて対物レンズ43を通過し、半導体基板21の裏面21b側からウエハ20に照射される。このとき、ステージ2は、上述したように2列の改質領域12a,12bが形成されたウエハ20を支持している。
【0040】
対物レンズ43は、半導体基板21の表面21aで反射された光I1を通過させる。つまり、対物レンズ43は、半導体基板21を伝搬した光I1を通過させる。対物レンズ43の開口数(NA)は、例えば0.45以上である。対物レンズ43は、補正環43aを有している。補正環43aは、例えば対物レンズ43を構成する複数のレンズにおける相互間の距離を調整することにより、半導体基板21内において光I1に生じる収差を補正する。なお、収差を補正する手段は、補正環43aに限られず、空間光変調器等のその他の補正手段であってもよい。光検出部44は、対物レンズ43及びミラー42を透過した光I1を検出する。光検出部44は、例えば、InGaAsカメラによって構成されており、近赤外領域の光I1を検出する。なお、近赤外領域の光I1を検出(撮像)する手段はInGaAsカメラに限られず、透過型コンフォーカル顕微鏡等、透過型の撮像を行うものであればその他の撮像手段であってもよい。
【0041】
撮像ユニット4は、2列の改質領域12a,12bのそれぞれ、及び、複数の亀裂14a,14b,14c,14dのそれぞれの先端を撮像することができる(詳細については、後述する)。亀裂14aは、改質領域12aから表面21a側に延びる亀裂である。亀裂14bは、改質領域12aから裏面21b側に延びる亀裂である。亀裂14cは、改質領域12bから表面21a側に延びる亀裂である。亀裂14dは、改質領域12bから裏面21b側に延びる亀裂である。
【0042】
[アライメント補正用撮像ユニットの構成]
図6に示されるように、撮像ユニット5は、光源51と、ミラー52と、レンズ53と、光検出部54と、を有している。光源51は、半導体基板21に対して透過性を有する光I2を出力する。光源51は、例えば、ハロゲンランプ及びフィルタによって構成されており、近赤外領域の光I2を出力する。光源51は、撮像ユニット4の光源41と共通化されていてもよい。光源51から出力された光I2は、ミラー52によって反射されてレンズ53を通過し、半導体基板21の裏面21b側からウエハ20に照射される。
【0043】
レンズ53は、半導体基板21の表面21aで反射された光I2を通過させる。つまり、レンズ53は、半導体基板21を伝搬した光I2を通過させる。レンズ53の開口数は、0.3以下である。すなわち、撮像ユニット4の対物レンズ43の開口数は、レンズ53の開口数よりも大きい。光検出部54は、レンズ53及びミラー52を通過した光I2を検出する。光検出部54は、例えば、InGaAsカメラによって構成されており、近赤外領域の光I2を検出する。
【0044】
撮像ユニット5は、制御部8の制御のもとで、裏面21b側から光I2をウエハ20に照射すると共に、表面21a(機能素子層22)から戻る光I2を検出することにより、機能素子層22を撮像する。また、撮像ユニット5は、同様に、制御部8の制御のもとで、裏面21b側から光I2をウエハ20に照射すると共に、半導体基板21における改質領域12a,12bの形成位置から戻る光I2を検出することにより、改質領域12a,12bを含む領域の画像を取得する。これらの画像は、レーザ光Lの照射位置のアライメントに用いられる。撮像ユニット6は、レンズ53がより低倍率(例えば、撮像ユニット5においては6倍であり、撮像ユニット6においては1.5倍)である点を除いて、撮像ユニット5と同様の構成を備え、撮像ユニット5と同様にアライメントに用いられる。
【0045】
[検査用撮像ユニットによる撮像原理]
図5に示される撮像ユニット4を用い、図7に示されるように、2列の改質領域12a,12bに渡る亀裂14が表面21aに至っている半導体基板21に対して、裏面21b側から表面21a側に向かって焦点F(対物レンズ43の焦点)を移動させる。この場合、改質領域12bから裏面21b側に延びる亀裂14の先端14eに裏面21b側から焦点Fを合わせると、当該先端14eを確認することができる(図7における右側の画像)。しかし、亀裂14そのもの、及び表面21aに至っている亀裂14の先端14eに裏面21b側から焦点Fを合わせても、それらを確認することができない(図7における左側の画像)。なお、半導体基板21の表面21aに裏面21b側から焦点Fを合わせると、機能素子層22を確認することができる。
【0046】
また、図5に示される撮像ユニット4を用い、図8に示されるように、2列の改質領域12a,12bに渡る亀裂14が表面21aに至っていない半導体基板21に対して、裏面21b側から表面21a側に向かって焦点Fを移動させる。この場合、改質領域12aから表面21a側に延びる亀裂14の先端14eに裏面21b側から焦点Fを合わせても、当該先端14eを確認することができない(図8における左側の画像)。しかし、表面21aに対して裏面21bとは反対側の領域(すなわち、表面21aに対して機能素子層22側の領域)に裏面21b側から焦点Fを合わせて、表面21aに関して焦点Fと対称な仮想焦点Fvを当該先端14eに位置させると、当該先端14eを確認することができる(図8における右側の画像)。なお、仮想焦点Fvは、半導体基板21の屈折率を考慮した焦点Fと表面21aに関して対称な点である。
【0047】
以上のように亀裂14そのものを確認することができないのは、照明光である光I1の波長よりも亀裂14の幅が小さいためと想定される。図9及び図10は、シリコン基板である半導体基板21の内部に形成された改質領域12及び亀裂14のSEM(Scanning Electron Microscope)画像である。図9の(b)は、図9の(a)に示される領域A1の拡大像、図10の(a)は、図9の(b)に示される領域A2の拡大像、図10の(b)は、図10の(a)に示される領域A3の拡大像である。このように、亀裂14の幅は、120nm程度であり、近赤外領域の光I1の波長(例えば、1.1~1.2μm)よりも小さい。
【0048】
以上を踏まえて想定される撮像原理は、次のとおりである。図11の(a)に示されるように、空気中に焦点Fを位置させると、光I1が戻ってこないため、黒っぽい画像が得られる(図11の(a)における右側の画像)。図11の(b)に示されるように、半導体基板21の内部に焦点Fを位置させると、表面21aで反射された光I1が戻ってくるため、白っぽい画像が得られる(図11の(b)における右側の画像)。図11の(c)に示されるように、改質領域12に裏面21b側から焦点Fを合わせると、改質領域12によって、表面21aで反射されて戻ってきた光I1の一部について吸収、散乱等が生じるため、白っぽい背景の中に改質領域12が黒っぽく映った画像が得られる(図11の(c)における右側の画像)。
【0049】
図12の(a)及び(b)に示されるように、亀裂14の先端14eに裏面21b側から焦点Fを合わせると、例えば、先端14e近傍に生じた光学的特異性(応力集中、歪、原子密度の不連続性等)、先端14e近傍で生じる光の閉じ込め等によって、表面21aで反射されて戻ってきた光I1の一部について散乱、反射、干渉、吸収等が生じるため、白っぽい背景の中に先端14eが黒っぽく映った画像が得られる(図12の(a)及び(b)における右側の画像)。図12の(c)に示されるように、亀裂14の先端14e近傍以外の部分に裏面21b側から焦点Fを合わせると、表面21aで反射された光I1の少なくとも一部が戻ってくるため、白っぽい画像が得られる(図12の(c)における右側の画像)。
【0050】
[加工条件導出処理]
以下では、ウエハ20の切断等を目的として改質領域を形成する処理の前処理として実行される、加工条件導出処理における分断力判定処理を説明する。なお、以下では、加工条件導出処理における分断力判定処理を一例に説明するが、分断力判定処理は、加工条件導出処理以外の処理、例えば加工条件を導出した後の各種検査処理において実行されてもよい。加工条件とは、どのような条件・手順でウエハ20を加工するかを示す、加工に係るレシピである。
【0051】
分断力とは、レーザ光が照射されることによってウエハ20に加わるウエハ20の分断(切断)に係る力である。図13は、ウエハ20に対する分断力に応じたウエハ20の状態を説明する図である。図13(a)~図13(d)において、上図はウエハ20の断面の実際の状態(観察される状態)を示す図、下図は上図で示した断面を模式的に示す図である。図13(a)~図13(d)の下図に示されるように、各ウエハ20には、レーザ光の入射面の反対側である表面21aに近い側から、5列の改質領域12a~12eが形成されているとする。図13に示される例では、図13(d)、図13(c)、図13(b)、図13(a)の順でウエハ20に対する分断力が大きくなっている。最も分断力が小さい図13(a)の状態においては、亀裂14が改質領域(SD層)の上下に発生しておらず、裏面21b及び表面21aの双方において亀裂14が到達していないST(Stealth)状態となっている。図13(b)の状態においては、少なくとも改質領域12a,12d,12eから上下に亀裂14が発生しており、亀裂14が裏面21bに到達したハーフカット(HC)状態となっている。図13(b)において表面21aには亀裂14が到達していない(ST状態となっている)。図13(c)の状態においては、全ての改質領域12a~12eから上下に亀裂14が発生しており、亀裂14が裏面21bに到達したHC状態、及び、亀裂14が表面21aに到達したBHC(Bottom side half-cut)状態となっている。このように、図13(c)の状態は、亀裂14が裏面21b及び表面21aにまで到達したフルカット状態である。なお、ウエハ20の内部に極わずかに亀裂14がつながっていない箇所があったとしても、該つながっていない箇所が、標準的なテープエキスパンド(例えば拡張量15mm、拡張速度5mm/secのテープエキスパンド)にてつながりウエハ20の分割が可能になるレベルである状態はフルカット状態であるとする。極わずかに亀裂14がつながっていない箇所とは、改質層部における再凝固箇所(レーザ照射時の溶融後に再凝固する箇所)、又は、チップ品質を良好にすべくあえて亀裂14をつながない黒スジ箇所等である。
【0052】
同様に、最も分断力が大きい図13(d)の状態においても、亀裂14が裏面21b及び表面21aにまで到達したフルカット状態となっている。ここで、図13(d)の下図に示されるように、分断力が大きすぎることによって、図13(d)の例では、ウエハ20の厚さ方向(Z方向)に交差する方向に亀裂14が蛇行している。このように、分断力が大きすぎる場合には、ウエハ20の内部においてZ方向に交差する方向に亀裂14が大きく蛇行することが考えられる。亀裂14が蛇行している箇所は、ウエハ20が切断された後において端面凹凸箇所となってしまう。以上のように、例えばフルカット状態とすることを目的としてレーザ加工が行われ、フルカット状態となっている場合であっても、分断力によっては、ウエハ20の内部の品質が悪化している場合がある。本実行形態では、ウエハ20の内部観察を行うことにより、分断力が適正範囲にあるかを判定し、適正範囲にない場合には分断力が適正範囲となるようにレシピ(加工条件)の補正処理を実行する。このように、分断力判定処理及び補正処理が実行されることによって、分断力を考慮した適切なレシピ(加工条件)を導出することができる。
【0053】
ウエハ20の内部観察が必要になる理由について、図14を参照して更に説明する。上述したように、フルカット状態とすることを目的としてレーザ加工を行った場合において、レーザ入射面である裏面21bに亀裂14が到達していることが確認された場合であっても、ウエハ20の内部の亀裂状態が悪い場合には、デバイス品質がNGとなってしまう。亀裂状態が悪い例としては、例えば上述した端面凹凸箇所の発生が考えられる。端面凹凸の発生によって、チップサイズ不良、チップ抗折強度の低下、パーティクル発塵等の不具合が考えられるため、デバイス品質がNGとなる。図14(a)に示される断面の例では、ウエハ20の内部で発生した亀裂14が裏面21bに向かう途中で止まっているため、裏面21b付近の亀裂14はまっすぐ伸展しているが、ウエハ20のZ方向中心部分においては、亀裂14が曲がって(蛇行して)形成されている。このように、工法によっては、亀裂14の伸展を止めることにより、裏面21b付近の亀裂状態を正常とすることができるものの、ウエハ20の内部において亀裂状態が悪くなる場合がある。このような場合を考えると、ウエハ20の内部観察が必要になる。また、図14(b)に示される断面の模式図に示されるように、入射面品質が特に問われる場合には、入射面である裏面21bに最も近い改質領域(SD1)を先に形成してから、その他の改質領域(SD2~SD4)を形成する、逆打ちSD工法が採用される場合がある。この場合においても、裏面21bの亀裂状態は正常になるものの、例えば図14(b)に示されるように、ウエハ20の内部において亀裂14が連続しない等の問題が発生する可能性がある。このような場合を考えると、ウエハ20の内部観察が必要になる。
【0054】
図15は、ウエハ20の状態毎の内部観察結果を模式的に示す図である。図15(a)~図15(d)は、図13(a)~図13(d)の状態のそれぞれに対応する内部観察結果である。すなわち、図15(a)は裏面21b及び表面21aの双方において亀裂14が到達していないST状態の内部観察結果であり、図15(b)は亀裂14が裏面21bにのみ到達しているHC状態の内部観察結果であり、図15(c)は亀裂14が裏面21b及び表面21aにまで到達したフルカット状態(内部良好)の内部観察結果であり、図15(d)は亀裂14が裏面21b及び表面21aにまで到達したフルカット状態(内部不良)の内部観察結果である。図15(a)~図15(d)においては、それぞれの状態の裏面21b(入射面)の観察結果、改質領域12d(SD4)の観察結果、改質領域12c(SD3)の観察結果が示されている。各内部観察結果は、撮像ユニット4により裏面21b側から各点に焦点Fを合わせることにより(各点からの光を検出した撮像ユニット4から出力される信号に基づいて)取得されている。
【0055】
入射面については、図15(a)のST状態においては亀裂14が観察されず図15(b)~図15(d)の各状態においては亀裂14が観察される。改質領域12d(SD4)については、図15(a)のST状態及び図15(b)のHC状態においてはだ痕Deがくっきりと観察されるが、図15(c),図15(d)のフルカット状態においてはだ痕Deがぼんやりと観察される。改質領域12c(SD3)については、図15(a)のST状態及び図15(b)のHC状態においてはだ痕Deがくっきりと観察されるが、図15(c)のフルカット状態(内部良好)においてはだ痕Deがぼんやりと観察される。また、図15(d)のフルカット状態(内部不良)においては、改質領域12c(SD3)に焦点Fを合わせると、切断後において端面凹凸箇所となる、亀裂14の蛇行部分が観察される。
【0056】
図16は、蛇行する亀裂14の幅の観察について説明する図である。図16(a)は改質領域12a,12bから延びる上下方向の亀裂14の先端を観察する例を示しており、図16(c)は改質領域12c,12d間において蛇行する亀裂14の幅(亀裂14の影の幅)を観察する例を示している。図16(a)に示される状態において、裏面21b側から表面21a側に向かって焦点Fを移動させると、改質領域12bから裏面21b側に延びる亀裂14の先端が図16(b)の上図のように観察される。また、改質領域12aから表面21a側に延びる亀裂14の先端(或いは表面21aに関して亀裂14の先端と対象な点)に焦点Fを移動させることにより、改質領域12bから表面21a側に延びる亀裂14の先端が図16(b)の下図のように観察される。図16(c)に示されるように蛇行する亀裂14の幅を観察する場合においても、同様に、裏面21b側から表面21a側に向かってZ方向に焦点Fを移動させる。そして、図16(d)に示されるように、焦点Fが亀裂14の蛇行部分に到達すると、亀裂14の影の幅が一定ではない領域が観察される。このように、亀裂14の影の幅を観察することによって、亀裂14の蛇行部分を特定することができる。
【0057】
図17は、ウエハ20の厚さ毎の端面凹凸発生領域(亀裂14の蛇行部分)を説明する図である。図17(a)は厚さが500μmであって亀裂14の蛇行部分が生じているウエハ20の断面、図17(b)は厚さが500μmであって亀裂14の蛇行部分が生じていないウエハ20の断面、図17(c)は厚さが400μmであって亀裂14の蛇行部分が生じているウエハ20の断面、図17(d)は厚さが400μmであって亀裂14の蛇行部分が生じていないウエハ20の断面を示している。図17(a)に示されるように、厚さが500μmのウエハ20では、改質領域であるSD2~SD3間において亀裂14の蛇行部分(端面凹凸発生領域)が発生しているのに対して、図17(c)に示されるように、厚さが400μmのウエハ20では、改質領域であるSD3~SD4間において亀裂14の蛇行部分(端面凹凸発生領域)が発生している。このように、亀裂14の蛇行部分は、ウエハ20の厚さによって生じる領域が異なっている。このため、制御部8は、ウエハ20の情報(例えばウエハ20の厚さ)やレーザ加工条件(例えばウエハ20内のレーザ集光位置など)に応じて、亀裂14の蛇行が発生しやすいと想定されるウエハ20の内部の位置を決定し、決定した位置において、亀裂14の蛇行の幅が所定の値よりも大きいか否かを判定し、ウエハ20の内部の亀裂状態を判定してもよい。
【0058】
加工条件導出処理では、制御部8は、ディスプレイ150によって受付けられた情報に基づきレーザ照射ユニット3によるレーザ光の照射条件を含んだレシピ(加工条件)を決定する決定処理と、ウエハ20にレーザ光が照射されることによりウエハ20の内部に複数の改質領域12が形成されると共に改質領域12から延びる亀裂14が裏面21b及び表面21aにまで到達したフルカット状態となるように設定されたレシピ(加工条件)でレーザ照射ユニット3を制御する加工処理(第一処理)と、光を検出した撮像ユニット4から出力される信号に基づいて、裏面21bにおける改質領域12から延びる亀裂14の状態、並びに、ウエハ20の内部における改質領域12及び亀裂14の少なくとも一つの状態を特定する特定処理(第二処理)と、特定処理において特定した情報に基づき、レシピに応じたウエハ20に対する分断力が適正か否かを判定する判定処理(第三処理)と、判定処理において分断力が適正でないと判定した場合に分断力が適正範囲となるようにレシピを補正する補正処理(第四処理)と、を実行するように構成されている。
【0059】
図18は、加工条件導出処理の概要を説明する図である。加工条件導出処理では、上述したように、フルカット状態となるように設定されたレシピ(加工条件)でウエハ20の加工処理が行われ、裏面21bにおける亀裂14の状態、及び、ウエハ20の内部の状態に基づいてウエハ20に対する分断力(フルカット条件下での分断力)が適正か否かが判定される。分断力の適否判定では、具体的には、図18に示されるように、入射面状態、だ痕状態、亀裂の蛇行状態、入射裏面状態の観察結果が参照される。図18(a)は、亀裂14が裏面21b及び表面21aに到達したフルカット状態のウエハ20を模式的に示している。このようなウエハ20について、図18(b)に示されるように入射面状態(裏面21bの状態)が観察されて、亀裂14が裏面21bに到達したHC状態であるか、及び、裏面21bにおいてウエハ20の厚さ方向であるZ方向に交差する方向への亀裂14の幅が所定の値よりも大きくなっていないかが判定される。また、だ痕状態が観察されて、だ痕がくっきりしていて鮮明であるか(図18(c)参照)、だ痕がぼんやりしていて不鮮明であるか(図18(d)参照)が判定される。また、改質領域間(例えばSD3~SD4間)における亀裂14の影の幅(図18(e)参照)が観察されて、亀裂の幅が所定の値よりも大きくなっていないかが判定される。また、入射裏面状態(表面21aの状態)が観察されて、亀裂14が表面21aに到達したBHC状態であるかが判定される。以下、加工条件導出処理の各処理について説明する。
【0060】
(決定処理)
図19図21を参照して、決定処理について説明する。決定処理では、まず、ディスプレイ150が、ウエハ加工情報のユーザ入力を受付ける。ウエハ加工情報とは、レシピ(加工条件)を決定するための情報である。図19は、ディスプレイ150に表示されるウエハ加工情報の設定画面(ユーザ入力受付画面)の一例である。図19に示されるように、ディスプレイ150には、「FC判定」「ウエハ厚さ」「デバイス種類」「加工設定」が表示されている。「FC判定」とは、フルカット状態になると想定される改質領域(最後に形成される改質領域)が形成された後に、フルカット条件での分断力に係る判定が行われることを示す情報である。図19に示される例では、「FC判定」が「実行」とされており、本設定画面ではユーザ入力(ユーザによる判定モードの変更)が受け付けられないようになっている。「ウエハ厚さ」は、ウエハ20の厚さを示す情報である。「ウエハ厚さ」は、例えば複数の選択肢からユーザに選択されることにより入力される。「デバイス種類」は、ウエハ20の種類を示す情報である。「デバイス種類」は、例えばノッチの位置に応じた「0°」品、「45°」品等の種類で示される。「デバイス種類」は、例えば複数の選択肢からユーザに選択されることにより入力される。「加工設定」は、ユーザが希望するレーザ加工に係る設定情報である。「加工設定」は、例えば複数の選択肢からユーザに選択されることにより入力される。「ウエハ厚さ」、「デバイス種類」、及び「加工設定」は、少なくとも一つが入力されればよい。図19の設定画面での入力が完了すると、図20の画面に遷移する。
【0061】
図20は、ディスプレイ150に表示される判定内容確認画面の一例である。判定内容確認画面は、図19の設定画面において入力された内容に基づき実行される判定(加工後の判定)に係る情報を表示するための画面である。図20に示されるように、判定内容確認画面では、大きく、判定内容と判定基準とが表示される。判定内容には、図19の設定画面で設定された(或いは設定された情報から導出された)、「FC判定」「ウエハ厚さ」「デバイス種類」「加工設定」の内容が表示される。判定基準には、判定処理における合格基準が表示されており、レーザ入射面検査(裏面21bにおける改質領域12から延びる亀裂14の状態の検査)の合格基準として、「入射面の亀裂状態」「HC直進性」の合格基準が表示され、ウエハ内部検査(ウエハ20の内部における改質領域12及び亀裂14の状態の検査)の合格基準として、「入射裏面の亀裂状態」「端面凹凸位置」「端面凹凸幅」「だ痕観察」の合格基準が表示される。「入射面の亀裂状態」は、レーザ光の入射面である裏面21bにまで亀裂14が到達しているか否かを示す情報である。フルカット条件での分断力判定を行うため、「入射面の亀裂状態」の合格基準は、HC状態であることとされる。「HC直進性」は、裏面21bにおいて観察される、Z方向に交差する方向への亀裂14の蛇行の幅を示す情報である。「HC直進性」の合格基準は、ユーザによって入力(選択)可能とされている。「入射裏面の亀裂状態」は、表面21aにまで亀裂14が到達しているか否かを示す情報である。フルカット条件での分断力判定を行うため、「入射裏面の亀裂状態」の合格基準は、BHCであることとされる。「端面凹凸位置」は、端面凹凸(亀裂14の蛇行)に関する判定を行う位置を示す情報である。「端面凹凸位置」は、例えば「SD3-4間」のように、改質領域間の位置が規定される。「端面凹凸位置」の情報は、ユーザによって入力(選択)可能とされている。「端面凹凸幅」は、「端面凹凸位置」で規定された位置において観察される、Z方向に交差する方向への亀裂14の蛇行の幅を示す情報である。「端面凹凸幅」の合格基準は、ユーザによって入力(選択)可能とされている。「だ痕観察」は、各改質領域に係るだ痕の鮮明度に関する観察結果を示す情報である。フルカット条件での分断力判定を行うため、「だ痕観察」の合格基準は、「ぼんやり」とされる。図20の確認画面での入力及び確認が完了すると、図21の画面に遷移する。
【0062】
図21は、ディスプレイ150に表示される加工条件確認画面の一例である。加工条件確認画面は、図19の設定画面において入力された内容に基づき制御部8によって決定されたレシピ(加工条件)を表示するための画面である。図21に示されるように、加工条件確認画面には、「加工本数」「ZH(Zハイト)」「VD」「焦点数」「パルスエネルギー」「集光状態パラメータ」「加工速度」「周波数」「パルス幅」が表示される。Zハイトとは、レーザ加工を行う際の加工深さ(高さ)を示す情報である。VDとは複数焦点加工時のSD層間のZ間隔である。集光状態パラメータとは、球面収差、非点収差等のレーザ集光状態を可変させるためのパラメータである。加工条件確認画面に表示される各情報は、ユーザ入力によって補正可能とされている。なお、ウエハ20のシリコン内部の浅い位置と深い位置とでは、最適な集光補正量(例えば球面収差)が異なる。フルカットプロセスにおいては、Z方向の走査量が多いため、各Z位置毎に集光補正量を変更することによって、より詳細な撮像が可能になる。
【0063】
(加工処理)
加工処理では、制御部8は、決定処理において決定し、設定されたレシピ(加工条件)でレーザ照射ユニット3を制御する。設定されたレシピとはすなわち、ウエハ20にレーザ光が照射されることによりウエハ20の内部に複数の改質領域12が形成されると共に改質領域12から延びる亀裂14が裏面21b及び表面21aにまで到達したフルカット状態となるように設定されたレシピである。制御部8は、加工処理において、複数の改質領域12が形成されるようにレーザ照射ユニット3を制御する。
【0064】
(特定処理)
特定処理では、制御部8は、光を検出した撮像ユニット4から出力される信号に基づいて、裏面21bにおける改質領域12から延びる亀裂14の状態、並びに、ウエハ20の内部における改質領域12及び亀裂14の少なくとも一つの状態を特定する。すなわち、制御部8は、撮像ユニット4による裏面21b及びウエハ20内部の観察結果に基づいて、裏面21bにおける改質領域12から延びる亀裂14の状態、並びに、ウエハ20の内部における改質領域12及び亀裂14の少なくとも一つの状態を特定する。本実施形態では、制御部8は、全ての改質領域12(最後に形成される改質領域12)が形成された後に、特定処理を実行する。
【0065】
制御部8は、撮像ユニット4による裏面21bの観察結果に基づいて、裏面21bにおける亀裂14の到達状態を特定する。具体的には、制御部8は、裏面21bにまで亀裂14が到達していないST状態であるか、裏面21bにまで亀裂14が到達しているHC状態であるかを特定する。制御部8は、撮像ユニット4による裏面21bの観察結果に基づいて、裏面21bにおけるウエハ20の厚さ方向(Z方向)に交差する方向への亀裂14の蛇行の幅を特定する。
【0066】
制御部8は、撮像ユニット4によるウエハ20の内部(例えば複数の改質領域12間)の観察結果に基づいて、ウエハ20の内部におけるウエハ20の厚さ方向(Z方向)に交差する方向への亀裂14の蛇行の幅を特定する。制御部8は、ユーザによって入力された(或いは推定した)ウエハ20の情報、例えばウエハ20の厚さ、またはレーザ加工条件(例えばレーザ集光位置など)に応じて、亀裂14の蛇行が発生しやすいと想定されるウエハ20の内部の位置を決定し、決定した位置における観察結果に基づいて、亀裂14の蛇行の幅を特定してもよい。或いは、制御部8は、ウエハ20の厚さ方向(Z方向)全域における観察結果を取得し、亀裂14の蛇行の幅の最大値を特定してもよい。
【0067】
制御部8は、撮像ユニット4によるウエハ20の内部(例えば各改質領域12)の観察結果に基づいて、改質領域12に係るレーザ光のだ痕Deの鮮明度を特定する。具体的には、制御部8は、所定の鮮明度よりも鮮明である場合にはだ痕Deがくっきりしていると特定し、所定の鮮明度よりも鮮明でない場合にはだ痕Deがぼんやりしていると特定する。制御部8は、撮像ユニット4による表面21aの観察結果に基づいて、表面21aにおける亀裂14の到達状態を特定する。具体的には、制御部8は、表面21aにまで亀裂14が到達していないST状態であるか、表面21aにまで亀裂14が到達しているBHC状態であるかを特定する。
【0068】
(判定処理)
判定処理では、制御部8は、特定処理において特定した情報に基づき、レシピに応じたウエハ20に対する分断力が適正(フルカット条件での分断力として適正)か否かを判定する。制御部8は、特定した亀裂14の到達状態が、裏面21bにまで亀裂14が到達していないST状態である場合に、分断力が適正範囲に達しておらず適正でないと判定する。制御部8は、特定した、裏面21bにおける亀裂14の蛇行の幅が所定の値(例えば数μm~数十μm)よりも大きい場合に、分断力が適正範囲を超えており適正でないと判定する。
【0069】
制御部8は、特定した、ウエハ20の内部における亀裂14の蛇行の幅が所定の値(例えば数μm~数十μm)よりも大きい場合に、分断力が適正範囲を超えており適正でないと判定する。制御部8は、特定しただ痕の鮮明度が所定の鮮明度よりも高くだ痕がくっきりしている場合に、分断力が適正範囲に達しておらず適正でないと判定する。制御部8は、特定した亀裂14の到達状態が、表面21aにまで亀裂14が到達していないST状態である場合に、分断力が適正範囲に達しておらず適正でないと判定する。
【0070】
図22は、ディスプレイ150に表示される判定結果確認画面の一例である。判定結果確認画面は、判定処理における判定結果を表示すると共に、レシピの補正に係るユーザ入力を受付ける画面である。図22に示される例では、判定結果として、判定項目、基準(合格基準)、結果が示されている。いま、「端面凹凸」(ウエハ内部における亀裂14の幅)の項目において、合格基準が6μmであるのに対して、判定結果は11μmとなっており、分断力が大きすぎたと考えられる。この場合、レシピの補正が推奨されるため、「条件を補正し再加工・再判定を実施しますか?」とのメッセージが表示され、ユーザ入力に応じて、分断力を下げるための補正を実施することが可能となっている。なお、判定結果確認画面では、図22に示されるように、入射面の観察画像(HCであるかSTであるかを示す画像)と、ウエハ内部における亀裂14の幅を示す画像とを表示してもよい。
【0071】
(補正処理)
補正処理では、制御部8は、判定処理において分断力が適正でないと判定した場合に分断力が適正範囲となるようにレシピを補正する。制御部8は、分断力が上がる又は下がるように、レシピを補正する。制御部8は、例えば、レシピにおける、加工本数、ZH(Zハイト)、VD、焦点数、パルスエネルギー、集光状態パラメータ、加工速度、周波数、パルス幅等を調整する補正を行う。図23は、ディスプレイ150に表示される加工条件補正画面の一例である。図23に示される例では、分断力を下げるために、各パスのパルス幅を小さくする補正(図21に示された当初レシピよりもパルス幅を小さくする補正)が実行されている。このような補正は、ディスプレイ150においてユーザ入力が受け付けられることにより実行されてもよいし、自動で実行されてもよい。
【0072】
制御部8は、補正処理を行った後に、補正されたレシピで、再度、加工処理、特定処理、及び判定処理を実行する。図24は、補正処理後に再度、加工処理、特定処理、及び判定処理が実行された場合に、ディスプレイ150に表示される判定結果確認画面の一例である。補正処理後の判定結果確認画面では、補正処理前の判定結果(図24中の1’st結果)と補正処理後の判定結果(図24中の2’nd結果)とが表示される。図24に示される補正処理後の判定結果では、全ての判定項目が合格基準を満たしており、合否判定が「合格」となっている。なお、合否判定が「合格」である場合においても、判定結果に応じたユーザに入力に基づき分断力を調整する補正を行ってもよい。
【0073】
[検査方法]
本実施形態の検査方法について、図25を参照して説明する。図25は、検査方法のフローチャートである。図25は、検査装置1が実行する検査方法のうち、ウエハ20に改質領域を形成する処理の前処理として実施される加工条件導出処理を示すフローチャートである。なお、ステップS4,S6,S8の処理は、フローチャートにおける順序以外の順序で実行されてもよい。
【0074】
図25に示されるように、加工条件導出処理では、最初に、ディスプレイ150がウエハ加工情報のユーザ入力を受付ける(ステップS1)。具体的には、ディスプレイ150は、図19に示される各種情報のユーザ入力を受付ける。
【0075】
つづいて、制御部8は、ディスプレイ150によって受付けられた情報に基づき、レーザ照射ユニット3によるレーザ光の照射条件を含んだレシピ(加工条件)を決定する。具体的には、制御部8は、図21に示されるようなレシピを決定する(ステップS2)。当該レシピは、ウエハ20にレーザ光が照射されることによりウエハ20の内部に複数の改質領域12が形成されると共に改質領域12から延びる亀裂14が裏面21b及び表面21aにまで到達したフルカット状態となるように設定されたレシピである。
【0076】
つづいて、制御部8は、決定したレシピに基づいてレーザ照射ユニット3を制御し、ウエハ20を加工する(ステップS3)。制御部8は、加工処理において、複数の改質領域12が形成されるようにレーザ照射ユニット3を制御する。
【0077】
つづいて、制御部8は、撮像ユニット4によるレーザ入射面(裏面21b)の観察結果に基づいて、裏面21bにおける亀裂14の到達状態を特定し、裏面21bがHC状態であるか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4においてHC状態でないと判定された場合には、制御部8は、分断力がアップするようにレシピを補正する(ステップS5)。この場合、再度ステップS2以降の処理が実行される。
【0078】
ステップS4においてHC状態であると判定された場合には、制御部8は、撮像ユニット4によるレーザ入射面(裏面21b)の観察結果に基づいて、裏面21bにおける亀裂14の直進性(亀裂14の蛇行の幅)を特定し、亀裂14の蛇行の幅が所定の値(例えば数μm~数十μm)よりも小さいか(直進性OKか)否かを判定する(ステップS6)。ステップS6において直進性NGと判定された場合には、制御部8は、分断力がダウンするようにレシピを補正する(ステップS7)。この場合、再度ステップS2以降の処理が実行される。
【0079】
ステップS6において直進性OKと判定された場合には、制御部8は、ウエハ20の内部検査がOKか否かを判定する(ステップS8)。内部検査がOKであるとは、例えば、ウエハ20の内部における亀裂14の蛇行の幅が所定の値(例えば数μm~数十μm)よりも小さく、だ痕Deがぼんやりしており、表面21aにまで亀裂14が到達したBHC状態である、との条件を満たすことを言う。ステップS8において内部検査NGと判定された場合には、制御部8は、NG理由に応じて分断力がダウンするように又はアップするようにレシピを補正する(ステップS9)。この場合、再度ステップS2以降の処理が実行される。一方で、ステップS8において内部検査OKと判定された場合には、レシピを確定(決定したレシピに確定)し(ステップS10)、加工条件導出処理を終了する。
【0080】
[作用効果]
次に、本実施形態に係る検査装置1の作用効果について説明する。
【0081】
本実施形態に係る検査装置1は、裏面21b及び表面21aを有するウエハ20の裏面21b側からウエハ20にレーザ光を照射するレーザ照射ユニット3と、ウエハ20に対して透過性を有する光を出力し、ウエハ20を伝搬した光を検出する撮像ユニット4と、制御部8と、を備え、制御部8は、ウエハ20にレーザ光が照射されることによりウエハ20の内部に複数の改質領域12が形成されると共に改質領域12から延びる亀裂14が裏面21b及び表面21aにまで到達したフルカット状態となるように設定されたレシピでレーザ照射ユニット3を制御する加工処理と、光を検出した撮像ユニット4から出力される信号に基づいて、裏面21bにおける改質領域12から延びる亀裂14の状態、並びに、ウエハ20の内部における改質領域12及び亀裂14の少なくとも一つの状態を特定する特定処理と、特定処理において特定した情報に基づき、レシピに応じたウエハ20に対する分断力が適正か否かを判定する判定処理と、を実行するように構成されている。
【0082】
検査装置1では、改質領域12から延びる亀裂14がウエハ20の裏面21b及び表面21aにまで到達したフルカット状態となるように設定されたレシピでレーザ光が照射される。そして、裏面21bにおける亀裂の状態、並びに、ウエハ20の内部における改質領域12及び亀裂14の少なくとも一つの状態が特定され、特定された情報に基づいて、レシピに応じたウエハ20に対する分断力が適正か否かが判定される。このように、レーザ光の入射面である裏面21bにおける亀裂14の状態に加えて、ウエハ20の内部における改質領域12及び亀裂14の少なくとも一つの状態が特定されることにより、ウエハ20の端面(裏面21b)の情報だけでなく、ウエハ20の内部の情報も考慮して、フルカット状態とするためのウエハ20に対する分断力の適否が判定されることになる。このことで、例えば、フルカット状態となっているもののウエハ20の内部の品質が悪化しているような場合に、分断力が適正でないと判定することが可能となる。これによって、フルカット状態に加工するウエハ20の品質を担保することができる。
【0083】
制御部8は、特定処理において、ウエハ20の内部における、ウエハ20の厚さ方向に交差する方向への亀裂14の蛇行の幅を特定し、判定処理において、特定した亀裂14の蛇行の幅が所定の値よりも大きい場合に分断力が適正範囲を超えており適正でないと判定してもよい。分断力が大きくなり過ぎている場合には、ウエハ20の内部において、ウエハ20の厚さ方向に交差する方向に亀裂14が大きく蛇行することが考えられる。このように亀裂14が蛇行している箇所は、ウエハ20が切断された後において端面の凹凸箇所になる。このため、亀裂14の蛇行の幅が大きくなった場合に分断力が大きくなり過ぎていると判定し必要に応じて分断力の補正等が実行されることにより、端面に凹凸箇所が生じることを抑制し、フルカット状態に加工するウエハ20の品質を適切に担保することができる。
【0084】
制御部8は、特定処理において、ウエハ20の情報に応じて、亀裂14の蛇行が発生しやすいと想定されるウエハ20の内部の位置を決定し、決定した位置において、亀裂14の蛇行の幅を特定してもよい。例えばウエハ20の厚さやウエハ20内のレーザ集光位置等によって、亀裂14の蛇行が発生し易い箇所はある程度予測することができる。このため、ウエハ20の厚さ等のウエハ20の情報を考慮して亀裂14の蛇行が発生しやすいと想定されるウエハ20の内部の位置において亀裂14の蛇行の幅が特定されることにより、効率的且つ適切に亀裂14の蛇行の幅に係る判定を行うことができる。
【0085】
制御部8は、特定処理において、改質領域12に係るレーザ光のだ痕の鮮明度を特定し、判定処理において、特定しただ痕の鮮明度が所定の値よりも高い場合に、分断力が適正範囲に達しておらず適正でないと判定してもよい。フルカット状態となっている場合においては、改質領域12に係るだ痕がぼんやりと観察され鮮明度が低くなる。一方で、フルカット状態となっていない場合においては、改質領域12に係るだ痕がはっきりと観察され鮮明度が高くなる。このため、だ痕の鮮明度が高い場合に、分断力が小さいと判定し必要に応じて分断力を大きくする補正等が実行されることにより、確実にフルカット状態とすることができ、フルカット状態に加工するウエハ20の品質を適切に担保することができる。
【0086】
制御部8は、特定処理において、裏面21bにおける亀裂14の到達状態を特定し、判定処理において、特定した亀裂14の到達状態が、裏面21bにまで亀裂14が到達していないST状態である場合に、分断力が適正範囲に達しておらず適正でないと判定してもよい。亀裂14が裏面21bにまで到達したHC状態となっていない(ST状態である)場合には、当然にフルカット状態とはなっていない。このため、HC状態となっていない場合に、分断力が小さいと判定し必要に応じて分断力を大きくする補正等が実行されることにより、確実にフルカット状態とすることができ、フルカット状態に加工するウエハ20の品質を適切に担保することができる。
【0087】
制御部8は、特定処理において、裏面21bにおけるウエハ20の厚さ方向に交差する方向への亀裂14の蛇行の幅を特定し、判定処理において、特定した亀裂14の蛇行の幅が所定の値よりも大きい場合に分断力が適正範囲を超えており適正でないと判定してもよい。裏面21bにおいてウエハ20の厚さ方向に交差する方向に亀裂14が大きく蛇行している場合には、分断力が大きくなり過ぎていると考えられる。このため、裏面21bにおける亀裂14の蛇行の幅が所定の値よりも大きい場合に、分断力が大きいと判定し必要に応じて分断力を小さくする補正等が実行されることにより、フルカット状態に加工するウエハ20の品質を適切に担保することができる。
【0088】
制御部8は、特定処理において、表面21aにおける亀裂14の到達状態を特定し、判定処理において、特定した亀裂14の到達状態が、表面21aにまで亀裂14が到達していないST状態である場合に、分断力が適正範囲に達しておらず適正でないと判定してもよい。亀裂14が表面21aにまで到達したBHC状態となっていない(ST状態である)場合には、当然にフルカット状態とはなっていない。このため、BHC状態となっていない場合には、分断力が小さいと判定し必要に応じて分断力を大きくする補正等が実行されることにより、確実にフルカット状態とすることができ、フルカット状態に加工するウエハ20の品質を適切に担保することができる。
【0089】
制御部8は、判定処理において分断力が適正でないと判定した場合に、分断力が適正範囲となるようにレシピを補正する補正処理を更に実行するように構成されており、補正処理において補正されたレシピで、再度、加工処理、特定処理、及び判定処理を実行してもよい。このように、分断力が適正範囲となるように補正されたレシピで、再度各処理が実行されることにより、補正されたレシピが適正であるか否かを判定し、適正なレシピを確実に導出することができる。
【0090】
制御部8は、加工処理において、複数の改質領域12が形成されるようにレーザ照射ユニット3を制御し、加工処理において最後に形成される改質領域12が形成された後に、特定処理及び判定処理を実行してもよい。これにより、全ての改質領域12が形成された後のウエハの状態(すなわち、フルカット状態となっているはずの状態)に基づいて、フルカット状態とするためのウエハ20に対する分断力の適否を判定することができる。
【0091】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、制御部8は、最後に形成される改質領域12が形成される前に、光を検出した撮像ユニット4から出力される信号に基づいて、改質領域12及び改質領域12から延びる亀裂14に係る情報を特定する事前特定処理と、事前特定処理において特定した情報に基づき、最後に形成される改質領域12が形成される前の状態として適正か否かを判定する事前判定処理と、を更に実行するように構成されていてもよい。フルカット状態(最後に形成される改質領域12が形成された状態)においては、ウエハ20の内部の詳細な状態を観察することが難しい場合がある。この点、最後に形成される改質領域12が形成される前において、改質領域12及び亀裂14に係る情報が観察(特定)され、最後に形成される改質領域12が形成される前の状態として適正か否かが判定されることにより、ウエハ20の内部の詳細な状態の観察結果を考慮することができ、フルカット状態に加工するウエハ20の品質を担保することができる。
【0092】
図26は、変形例に係る加工条件導出処理における分断力の適否判定の概要を説明する図である。図26(a)に示されるように、本変形例では、最終パスで形成予定の改質領域12e(SD5)が形成される前に、上述した事前特定処理及び事前判定処理が実行される。事前特定処理では図26(a)に示されるように、入射面状態に加えて、ウエハ20内部におけるだ痕状態、改質領域(SD層)位置、及び入射裏面状態等が特定される。最後の改質領域12eが形成された後における判定(FC判定)では、だ痕がぼんやりしていること(図26(b)参照)が判定の合格基準(フルカット状態であることの合格基準)とされたが、最後の改質領域12eが形成される前の事前判定(FC-1)では、だ痕がくっきりしていること(図26(c)参照)が判定の合格基準とされる。この違いは、FC判定においてはフルカット状態となっている状態が正常であるのに対して、FC-1判定においてはフルカット状態となっていない状態が正常であるとの違いによるものである。すなわち、FC-1判定においてだ痕がぼんやりしている場合には、ウエハ内部に亀裂14の凸凹部があり、凸凹部の下の改質領域のだ痕が凸凹部によって視認しにくくなっていると考えられ、最後の改質領域12eを形成した場合には端面凹凸の発生が予想されるため、不合格(事前判定NG)とされる。上述したように、FC-1判定を行う際には、フルカット状態である場合と比較してウエハ20の内部の詳細な状態を観察することができるので、上述した事項以外にも、黒スジ有無、黒スジ位置、BHC検査、亀裂量検査等を実行してもよい。
【0093】
図27は、事前判定(FC-1判定)に関して、ディスプレイ150に表示される判定内容確認画面の一例である。判定基準(FC-1判定の合格基準)には、例えば、「端面凹凸」「だ痕観察」「黒スジ本数」「黒スジ位置」「BHC検査」「各SD層位置」「入射面状態」の合格基準が表示される。図28は、ディスプレイ150に表示される判定結果確認画面の一例である。図28に示される例では、「黒スジ本数」「黒スジ位置」「BHC検査」について合格基準を満たさず不合格となっており、分断力が低すぎることが示されている。この場合、ユーザ入力に応じて、分断力を上げるための補正を実施することが可能となっている。すなわち、制御部8は、事前判定処理において最後に形成される改質領域12が形成される前の状態として適正でないと判定した場合には、レシピを補正する事前補正処理を更に実行するように構成されている。そして、制御部8は、事前補正処理において補正されたレシピで、再度、加工処理、事前特定処理、及び事前判定処理を実行する。このように、事前判定処理において状態が適正でないと判定された場合にレシピが補正されることによって、フルカット状態に加工するウエハの品質を担保することができる。
【0094】
図29は、変形例に係る検査方法(加工条件導出処理)のフローチャートである。具体的には、事前判定(FC-1判定)を実施した後にフルカット状態の判定(FC判定)を実行する処理のフローチャートである。図29に示されるように、最初に、ディスプレイ150がウエハ加工情報のユーザ入力を受付ける(ステップS101)。つづいて、制御部8は、ディスプレイ150によって受付けられた情報に基づき、レーザ照射ユニット3によるレーザ光の照射条件を含んだレシピ(加工条件)を決定する(ステップS102)。つづいて、制御部8は、決定したレシピに基づいてレーザ照射ユニット3を制御し、最終パスを除き改質領域12が形成されるようにウエハ20を加工する(ステップS103)。
【0095】
つづいて、制御部8は、事前特定処理及び事前判定処理を実行し、最後に形成される改質領域12が形成される前の状態として適正か(各種検査OKか)判定する(ステップS104)。ステップS104において各種検査NGと判定された場合には、制御部8は、分断力がアップ又はダウンするようにレシピを補正する(ステップS105)。ステップS104において各種検査OKと判定された場合には、制御部8は、最終パスの改質領域12が形成されるようにウエハ20を加工する(ステップS106)。そして、制御部8は、FC判定に係る処理(図25のステップS4~S9の処理)を実行する(ステップS107)。FC判定に係る処理後、制御部8はレシピを確定する(ステップS108)。
【0096】
(内部観察結果に基づく判定に係るアルゴリズム)
上述した、内部観察結果に基づく各種判定に関して、亀裂14を検出(特定)するアルゴリズム、及び、改質領域に係るだ痕を検出(特定)するアルゴリズムについて、詳細に説明する。
【0097】
図30及び図31は、亀裂検出について説明する図である。図30においては、内部観察結果(ウエハ20内部の画像)が示されている。制御部8は、図30(a)に示されるようなウエハ30内部の画像について、まず、直線群140を検出する。直線群140の検出には、例えばHough変換又はLSD(Line Segment Detector)等のアルゴリズムが用いられる。Hough変換とは、画像上の点に対してその点を通る全ての直線を検出し特徴点をより多く通る直線に重み付けしながら直線を検出する手法である。LSDとは、画像内の輝度値の勾配と角度を計算することにより線分となる領域を推定し、該領域を矩形に近似することにより直線を検出する手法である。
【0098】
つづいて、制御部8は、図31に示されるように直線群140について亀裂線との類似度を算出することにより、直線群140から亀裂14を検出する。亀裂線は、図31の上図に示されるように、線上の輝度値に対しY方向に前後が非常に明るいという特徴を持つ。このため、制御部8は、例えば、検出した直線群140の全ての画素の輝度値を、Y方向の前後と比較し、その差分が前後とも閾値以上である画素数を類似度のスコアとする。そして、検出した複数の直線群140の中で最も亀裂線との類似度のスコアが高いものをその画像における代表値とする。代表値が高いほど、亀裂14の存在する可能性が高いという指標になる。制御部8は、複数の画像における代表値を比較することにより、相対的にスコアが高いものを亀裂画像候補とする。
【0099】
図32図34は、だ痕検出について説明する図である。図32においては、内部観察結果(ウエハ20内部の画像)が示されている。制御部8は、図32(a)に示されるようなウエハ20の内部の画像について、画像内のコーナー(エッジの集中)をキーポイントとして検出し、その位置、大きさ、方向を検出して特徴点250を検出する。このようにして特徴点を検出する手法としては、Eigen、Harris、Fast、SIFT、SURF、STAR、MSER、ORB、AKAZE等が知られている。
【0100】
ここで、図33に示されるように、だ痕280は、円形や矩形等の形が一定間隔で並ぶため、コーナーとしての特徴が強い。このため、画像内の特徴点250の特徴量を集計することにより、だ痕280を高精度に検出することが可能になる。図34に示されるように、深さ方向にシフトして撮像した画像毎の特徴量合計を比較すると、改質層毎の亀裂列量を示すような山の変化が確認できる。制御部8は、当該変化のピークをだ痕280の位置として推定する。このように特徴量を集計することによって、だ痕位置だけでなくパルスピッチを推定することも可能になる。
【0101】
(内部観察に関する設定の調整)
また、例えば、レーザ加工装置は、ウエハに対する内部観察時の設定をより詳細に調整してもよい。図35は、加工方法による撮像区間の違いを説明する図である。図35(a)は、フルカット加工を行う場合の撮像区間を示しており、図35(b)はそれ以外の加工(例えばBHC加工)を行う場合の撮像区間を示している。いずれの加工においても、表面21aに関して対象な仮想焦点についても撮像を行っている。すなわち、図35(a),(b)のウエハにおいて下半分のSD層は仮想焦点に係る領域である。図35に示されるように、フルカット加工を行う場合には、ウエハ20の厚さ方向におけるトータルの撮像区間が広くなる。また、フルカット加工を行う場合には、各改質領域(SD1~SD4)の間隔が狭くなり亀裂14の伸展量も小さくなる。このため、フルカット加工を行う場合には、ウエハ20の厚さ方向において内部観察に関する設定をより詳細に調整する等を実施しなければ、改質領域及び亀裂を鮮明に観察することができないことが考えられる。
【0102】
具体的には、制御部8は、フルカット加工を行う場合においても改質領域等を鮮明に観察するために、以下を行う。
【0103】
第一に、制御部8は、撮像ユニット4により撮像が行われるウエハ20の厚さ方向における各領域について、ウエハ20の厚さ方向における位置に応じた収差補正(各厚さ方向に最適な収差補正)が行われるように撮像ユニット4を制御する収差補正処理を更に実行するように構成されている。制御部8は、例えば加工条件から推定されるSD加工位置(改質領域形成位置)に応じた各領域について、空間光変調器32又は対物レンズ43の補正環43aを調整することにより、最適な収差補正を実施する。
【0104】
第二に、制御部8は、撮像ユニット4により撮像が行われるウエハ20の厚さ方向における各領域について所定(例えば一定若しくは最適)の輝度で撮像ユニット4による撮像が行われるよう、各領域のウエハ20の厚さ方向における位置に応じた光量で撮像ユニット4から光が出力されるように、撮像ユニット4を制御する輝度キャリブレーション処理を更に実行するように構成されている。内部観察においては、観察深さが深くなるほど、十分な輝度を確保するために多量の光量が必要になる。すなわち、深さ毎に必要な光量が変化する。そのため、観察前又はレーザ装置立ち上げ時、デバイス変更時等の度に、深さ毎に最適な輝度値になるように必要な光量を把握する必要がある。輝度キャリブレーション処理では、厚さ方向における各位置を観察する際の光量を決定し、各位置の観察時において、当該光量で撮像ユニット4から光が出力されるように設定される。
【0105】
輝度キャリブレーション処理では、図36に示されるように、最初に輝度キャリブレーションに係る入力が受け付けられる(ステップS71)。当該輝度キャリブレーションに係る入力とは、例えば加工条件の導出に関して入力されるウエハ厚さの入力等であってもよい。つづいて、制御部8は、輝度キャリブレーションに係る入力(例えばウエハ厚さ)に応じて、キャリブレーション実施区間を決定する。ここでのキャリブレーション実施区間とは、例えば輝度キャリブレーションを実施する複数のZHの情報である。なお、キャリブレーション実施区間はユーザが決定して入力してもよい。つづいて、撮像ユニット4による撮像位置が、キャリブレーション実施区間の1つのZHに設定される(ステップS73)。そして、当該ZHにおいて撮像される輝度が最適な輝度になるように光源41の光量が調整され(ステップS74)、当該ZHと光量とが対応付けて記憶される(ステップS75)。光源41の調整は開口絞り等が利用される。全てのZHについて光量の調整が完了するまで、ステップS73~S75の処理が実施される。そして、このようにして調整された光量が、各位置の観察時において撮像ユニット4の光源41から出力されることにより、各位置の観察を適切に輝度で行うことができる。
【0106】
第三に、制御部8は、改質領域の加工前において、撮像ユニット4により撮像が行われるウエハ20の厚さ方向における各領域についてシェーディング用画像を撮像するように撮像ユニット4を制御すると共に、改質領域の加工後において、撮像ユニット4により撮像された各領域の画像と対応する領域のシェーディング用画像との差分データを特定するシェーディング補正処理を更に実行するように構成されている。この場合、制御部8は、当該差分データに基づき、改質領域に係る状態を特定する。
【0107】
シェーディング補正処理では、図37(a)に示されるように、SD加工(改質領域の加工)の前に、各内部観察位置(判定位置)におけるシェーディング用画像が取得される。そして、SD加工が行われて、各内部観察位置(判定位置)について、図37(b)に示されるようなSD加工後の画像が取得される。そして、各内部観察位置について、SD加工後の画像とシェーディング用画像との差分データ(図37(c)参照)が取得される(シェーディング補正が実施される)。なお、SD加工後の画像とシェーディング用画像との位置ずれがある場合には、ずれ量に応じた補正を実施してもよい。シェーディング補正によってシェーディングされるものは、例えばデバイスパターン、点欠陥、画面の明るさのムラ等である。
【0108】
上述した収差補正処理、輝度キャリブレーション処理、シェーディング補正処理を実施する場合の、レーザ加工方法(加工条件導出処理)について、図38を参照して説明する。なお、図38においては、加工処理及び判定処理について簡略化して記載している。図38に示されるように、最初に、ディスプレイ150がウエハ加工情報のユーザ入力を受け付ける(ステップS51)。具体的には、ディスプレイ150は、少なくともウエハ厚さの情報の入力を受け付ける。これにより、加工条件が自動で仮決定される。
【0109】
つづいて、制御部8は、輝度キャリブレーション処理を実施する(ステップS52)。具体的には、制御部8は、撮像ユニット4により撮像が行われるウエハ20の厚さ方向における各領域について所定(例えば一定若しくは最適)の輝度で撮像ユニット4による撮像が行われるよう、各領域のウエハ20の厚さ方向における位置に応じた光量で撮像ユニット4から光が出力されるように、撮像ユニット4に設定を行う。
【0110】
つづいて、制御部8は、シェーディング補正用の画像(シェーディング用画像)を取得する(ステップS53)。具体的には、制御部8は、SD加工前の各内部観察位置における画像をシェーディング用画像として取得する。
【0111】
つづいて、制御部8は、加工条件に基づいてレーザ照射ユニット3を制御することにより、ウエハ20にSD層を加工する(ステップS54)。つづいて、制御部8は、ウエハ20の厚さ方向における位置に応じた収差補正を実施する(ステップS55)。制御部8は、例えば加工条件から推定されるSD加工位置(改質領域形成位置)に応じた各領域について、空間光変調器32又は対物レンズ43の補正環43aを調整することにより、最適な収差補正を実施する。
【0112】
つづいて、撮像ユニット4によって、加工されたウエハ20が撮像される(ステップS56)。制御部8は、シェーディング補正を実施する(ステップS57)。具体的には、制御部8は、撮像ユニット4により撮像された各領域の画像と対応する領域のシェーディング用画像との差分データを取得する。
【0113】
そして、制御部8は、ディスプレイ150に撮像結果が表示されるようにディスプレイ150を制御する(ステップS58)。つづいて、制御部8は、撮像結果に基づいて、SD層に係る状態を特定し、特定した情報に基づき、加工が適正であるか(すなわち、加工条件が適正であるか)否かを判定する(ステップS59)。ここでの判定処理については、制御部8は、シェーディング補正後の差分データを用いて行う。ステップS59において加工条件が適正でない場合には、制御部8は新たな加工条件の入力を受け付け、再度加工処理が実施される。この場合、図38に示されるように、再度輝度キャリブレーション処理(ステップS52)から実施されてもよいし、SD加工(ステップS54)から実施されてもよい。一方で、加工条件が適正である場合には、制御部8は、該加工条件を加工条件として本決定し処理が終了する。
【0114】
以上のように、制御部8は、撮像ユニット4により撮像が行われるウエハ20の厚さ方向における各領域について所定の輝度で撮像ユニット4による撮像が行われるよう、各領域のウエハ20の厚さ方向における位置に応じた光量で撮像ユニット4から光が出力されるように、撮像ユニット4を制御する輝度キャリブレーション処理を更に実行するように構成されている。このような構成によれば、ウエハ20の厚さ方向(深さ方向)における各撮像領域毎に一定若しくは最適な輝度になるように、撮像ユニット4の光量を決定することができる。これにより、各改質領域に係る状態を適切に特定することができる。
【0115】
制御部8は、改質領域の加工前において、撮像ユニット4により撮像が行われるウエハ20の厚さ方向における各領域についてシェーディング用画像を撮像するように撮像ユニット4を制御すると共に、改質領域の加工後において、撮像ユニット4により撮像された各領域の画像と対応する領域のシェーディング用画像との差分データを特定するシェーディング補正処理を更に実行するように構成されており、判定処理では、差分データに基づき、改質領域に係る状態を特定する。シェーディング補正処理によって取得される差分データは、デバイスパターンや点欠陥、画面の明るさのムラ等のノイズが除去された画像データであり、観察したい改質領域及び亀裂状態等のみの画像データである。このような差分データに基づき改質領域に係る状態が特定されることにより、加工後のウエハ20の状態が適切に特定される。これによって、より好適に加工後のウエハ20の品質を担保することができる。
【0116】
制御部8は、撮像ユニット4により撮像が行われるウエハ20の厚さ方向における各領域について、ウエハ20の厚さ方向における位置に応じた収差補正が行われるように撮像ユニット4を制御する収差補正処理を更に実行するように構成されている。例えばフルカット加工が行われる場合には、各改質領域の間隔が狭く、また、亀裂の伸展量も小さいことから、ウエハ20の厚さ方向における各位置毎に収差補正を加えなければ鮮明な観察ができない。この点、上述したように、ウエハ20の厚さ方向における各領域についてウエハ20の厚さに応じた収差補正が行われることにより、鮮明な観察が可能になり、改質領域に係る状態をより適切に特定することができる。
【0117】
図39は、収差補正処理、輝度値キャリブレーション処理、及びシェーディング補正処理を実施することによる効果について説明する図である。図39(a)はこれらの処理を何も施していない画像であり、図39(b)は収差補正処理のみを施した画像であり、図39(c)は収差補正処理及び輝度値キャリブレーション処理を施した画像であり、図39(d)は収差補正処理、輝度値キャリブレーション処理、及びシェーディング補正処理を施した画像である。図39に示されるように、これらの処理が施されることによって、画像における亀裂14等の鮮明度が大幅に向上していることがわかる。
【0118】
(加工条件導出処理の自動化について)
上述した実施形態では、ウエハ加工情報が入力されることにより、仮の加工条件が自動で導出され、該加工条件に基づき推定加工結果イメージが自動で導出されて表示されると共に実際の加工結果のイメージが表示され、実際の加工結果が推定加工結果に一致するまで加工条件の補正が行われて、最終的な加工条件が導出されるとして説明した。しかしながら、このような加工条件導出処理は、その全てが自動で実施されなくてもよい。
【0119】
例えば、加工条件導出処理を自動化するための第一ステップでは、ウエハ加工情報に基づく加工条件(仮の加工条件)について、ユーザが手動で生成し設定してもよい。そして、生成した加工条件での実際の加工結果を取得し、入力されたウエハ加工情報と手動で生成した加工条件との組み合わせ毎に、実際の加工結果と対応付けてデータベースに蓄積してもよい。
【0120】
さらに、第二ステップでは、上記データベースに蓄積した情報を学習することにより、ウエハ加工情報及び加工条件から、推定加工結果を導出するモデルを生成してもよい。そして、上述したデータベース内のデータを分析することにより、ウエハ加工情報及び加工条件から、最適な(一番精度のたかい)推定加工結果を導出する回帰モデルを生成してもよい。この場合の分析手法としては、多変量解析や機械学習を利用してもよい。具体的には、単回帰、重回帰、SGD回帰、Lasso回帰、Ridge回帰、決定木、サポートベクター回帰、ベイズ線形回帰、深層学習、k-近傍法等の分析手法を用いてもよい。
【0121】
さらに、第三ステップでは、入力されたウエハ加工情報から目標の加工結果を得るための最適な加工条件(レシピ)を自動導出する回帰モデルを生成してもよい。すなわち、入力されたウエハ加工情報に対して加工条件のパラメータを調整しながら当該回帰モデルに入力(シミュレーション)し、目標とする加工結果を出力する最適な加工条件を探索してもよい。このような最適化手法としては、例えばグリッドサーチ、ランダムサーチ、ベイズ最適化等の手法を用いることができる。
【0122】
さらに、第四ステップでは、シミュレーションした結果(推定加工結果)と実際の加工結果とを比較することにより、条件を修正する必要があった場合にはそのデータをデータベースに蓄積し、再度回帰モデルを生成(アクティブラーニング)することにより、実運用を通して回帰モデルの精度を向上させてもよい。このように、推定加工結果と実加工結果との差から加工条件を補正することにより、実加工結果をフィードバックして回帰モデルの精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0123】
1…検査装置、3…レーザ照射ユニット、4…撮像ユニット、8…制御部、20…ウエハ、150…ディスプレイ。
図1
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図3
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