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<図1>
  • 特許-太陽熱発電装置 図1
  • 特許-太陽熱発電装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】太陽熱発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03G 6/00 20060101AFI20241206BHJP
   F01D 17/00 20060101ALI20241206BHJP
   F03G 6/06 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
F03G6/00 511
F01D17/00 A
F03G6/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024159180
(22)【出願日】2024-09-13
【審査請求日】2024-09-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイト(出願人公開)https//www.youtube.com/watch?v=pM5_d7biFcM(令和5年11月16日掲載)https//www.youtube.com/watch?v=9MsxoCfiBZw&t=6s(令和6年6月14日掲載)https//www.youtube.com/watch?v=dPxEbw2AdH8&t=54s(令和6年6月14日掲載)https//www.youtube.com/watch?v=ZxoDqyxqT7g&t=21s(令和6年5月17日掲載)
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508330157
【氏名又は名称】鈴木 淳史
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳史
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-340093(JP,A)
【文献】特開平11-343961(JP,A)
【文献】特開2020-94548(JP,A)
【文献】実開平6-43273(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03G 6/00
F03G 6/06
F01D 13/00-25/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を送り方向に送るための管路と、
前記管路の途中の位置で、前記管路の周囲に設けられた集光ミラー部であって、太陽光を集めて前記管路を加熱して、前記管路内の空気を加熱膨張させる集光ミラー部と、
前記管路に接続されて前記空気が送られる第1室および第2室と、
前記送り方向に関して前記集光ミラー部よりも下流側で前記管路に設けられ、前記管路と前記第1室が接続されたA1状態と、前記管路と前記第2室が接続されたA2状態と、を切り替えることが可能な切り替え弁と、
前記第1室と前記第2室とに跨って配置され、回転可能に設けられた出力軸と、
前記出力軸の回転で発電する発電機と、
第1ラチェット機構を含み、前記第1室内で前記出力軸周りに回転可能に設けられた第1タービン部であって、前記空気によって回転方向に回転する回転速度が前記出力軸の自転速度よりも大きいときに前記第1ラチェット機構によって連れ回りさせてその回転力を前記出力軸に伝達するとともに、前記回転速度が前記出力軸の自転速度よりも小さいときに前記第1ラチェット機構によって前記出力軸を空回りさせる第1タービン部と、
第2ラチェット機構を含み、前記第2室内で前記出力軸周りに回転可能に設けられた第2タービン部であって、前記空気によって回転方向に回転する回転速度が前記出力軸の自転速度よりも大きいときに前記第2ラチェット機構によって連れ回りさせてその回転力を前記出力軸に伝達するとともに、前記回転速度が前記出力軸の自転速度よりも小さいときに前記第2ラチェット機構によって前記出力軸を空回りさせる第2タービン部と、
前記切り替え弁を前記A1状態と前記A2状態との間で交互に切り替える制御部と、
を備える太陽熱発電装置。
【請求項2】
前記第1室および前記第2室を負圧にすることが可能な真空ポンプと、
前記真空ポンプと前記第1室および前記第2室とを接続する第2管路と、
前記第2管路と前記第1室が接続されたB1状態と、前記第2管路と前記第2室が接続されたB2状態と、を切り替えることが可能な第2切り替え弁と、
を備え、
前記制御部は、前記空気を前記第1室内に供給する前に前記第2切り替え弁を前記B1状態にして前記第1室内を負圧にし、前記空気を前記第2室内に供給する前に前記第2切り替え弁を前記B2状態にして前記第2室内を負圧にする請求項1に記載の太陽熱発電装置。
【請求項3】
前記第1室に設けられ前記第1室内を大気開放する第1大気開放弁と、
前記第2室に設けられ前記第1室内を大気開放する第2大気開放弁と、
を備え、
前記制御部は、前記第1タービン部の回転速度が前記出力軸の自転速度よりも小さくなるタイミングで前記第1大気開放弁を開放動作させて前記第1室内を大気開放するとともに、前記第2タービン部の回転速度が前記出力軸の自転速度よりも小さくなるタイミングで前記第2大気開放弁を開放動作させて前記第2室内を大気開放する請求項2に記載の太陽熱発電装置。
【請求項4】
前記出力軸に取り付けられたフライホイールと、
前記フライホイールを収納するとともに真空状態に維持された第3室と、
前記出力軸の回転力を前記発電機に接続したり、前記出力軸の回転力を前記発電機から分離したり可能なクラッチ部と、
を備える請求項3に記載の太陽熱発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽熱を使って発電する太陽熱発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽熱圧力発電装置が知られている(特許文献1参照)。この方法では、太陽光線によって圧力容器内に封入したガス又はガスと液体の温度を上昇せしめ、それらの膨張によって圧力容器内部の圧力を上昇させる。この圧力のエネルギーをタービン発電機によって電気エネルギーに変換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平6-43273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、この圧力のエネルギーをタービン発電機によって、具体的にどのように電気エネルギーとして取り出すかが明確ではない。このため、発電効率が不明であり、発電効率の向上に関して改良の余地があった。
従って、本発明の目的は、発電効率を向上した太陽熱発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下の本発明により解決される。すなわち、本発明(1)の太陽熱発電装置は、
空気を送り方向に送るための管路と、
前記管路の途中の位置で、前記管路の周囲に設けられた集光ミラー部であって、太陽光を集めて前記管路を加熱して、前記管路内の空気を加熱膨張させる集光ミラー部と、
前記管路に接続されて前記空気が送られる第1室および第2室と、
前記送り方向に関して前記集光ミラー部よりも下流側で前記管路に設けられ、前記管路と前記第1室が接続されたA1状態と、前記管路と前記第2室が接続されたA2状態と、を切り替えることが可能な切り替え弁と、
前記第1室と前記第2室とに跨って配置され、回転可能に設けられた出力軸と、
前記出力軸の回転で発電する発電機と、
第1ラチェット機構を含み、前記第1室内で前記出力軸周りに回転可能に設けられた第1タービン部であって、前記空気によって回転方向に回転する回転速度が前記出力軸の自転速度よりも大きいときに前記第1ラチェット機構によって連れ回りさせてその回転力を前記出力軸に伝達するとともに、前記回転速度が前記出力軸の自転速度よりも小さいときに前記第1ラチェット機構によって前記出力軸を空回りさせる第1タービン部と、
第2ラチェット機構を含み、前記第2室内で前記出力軸周りに回転可能に設けられた第2タービン部であって、前記空気によって回転方向に回転する回転速度が前記出力軸の自転速度よりも大きいときに前記第2ラチェット機構によって連れ回りさせてその回転力を前記出力軸に伝達するとともに、前記回転速度が前記出力軸の自転速度よりも小さいときに前記第2ラチェット機構によって前記出力軸を空回りさせる第2タービン部と、
前記切り替え弁を前記A1状態と前記A2状態との間で交互に切り替える制御部と、
を備える。
【0006】
また、本発明(2)の太陽熱発電装置は、(1)に記載の太陽熱発電装置であって、
前記第1室および前記第2室を負圧にすることが可能な真空ポンプと、
前記真空ポンプと前記第1室および前記第2室とを接続する第2管路と、
前記第2管路と前記第1室が接続されたB1状態と、前記第2管路と前記第2室が接続されたB2状態と、を切り替えることが可能な第2切り替え弁と、
を備え、
前記制御部は、前記空気を前記第1室内に供給する前に前記第2切り替え弁を前記B1状態にして前記第1室内を負圧にし、前記空気を前記第2室内に供給する前に前記第2切り替え弁を前記B2状態にして前記第2室内を負圧にする。
【0007】
また、本発明(3)の太陽熱発電装置は、(2)に記載の太陽熱発電装置であって、
前記第1室に設けられ前記第1室内を大気開放する第1大気開放弁と、
前記第2室に設けられ前記第1室内を大気開放する第2大気開放弁と、
を備え、
前記制御部は、前記第1タービン部の回転速度が前記出力軸の自転速度よりも小さくなるタイミングで前記第1大気開放弁を開放動作させて前記第1室内を大気開放するとともに、前記第2タービン部の回転速度が前記出力軸の自転速度よりも小さくなるタイミングで前記第2大気開放弁を開放動作させて前記第2室内を大気開放する。
【0008】
また、本発明(4)の太陽熱発電装置は、(3)に記載の太陽熱発電装置であって、
前記出力軸に取り付けられたフライホイールと、
前記フライホイールを収納するとともに真空状態に維持された第3室と、
前記出力軸の回転力を前記発電機に接続したり、前記出力軸の回転力を前記発電機から分離したり可能なクラッチ部と、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、発電効率を向上した太陽熱発電装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の太陽熱発電装置を示す模式図である。
図2図1に示す太陽熱発電装置の第1タービン本体と、第1ラチェット機構の第1爪部および第1係止面とを示し、第1係止面(第1タービン本体)に対して第1爪部(出力軸)が空回りした状態を示す側面模式図である。
図3図1に示す太陽熱発電装置の第1タービン本体と、第1ラチェット機構の第1爪部および第1係止面とを示し、第1係止面(第1タービン本体)に対して第1爪部(出力軸)が連れ回りした状態を示す側面模式図である。
図4図1に示す太陽熱発電装置において、第1サイクルにおいて、第1室を負圧にする工程を示す模式図である。
図5図1に示す太陽熱発電装置において、第1サイクルにおいて、第1室に膨張した空気を供給して第1タービン部を回転させている工程を示す模式図である。
図6図1に示す太陽熱発電装置において、第1サイクルにおいて、第1室から空気を排気している工程、且つ、第2サイクルにおいて、第2室を負圧にする工程、を示す模式図である。
図7図1に示す太陽熱発電装置において、第2サイクルにおいて、第2室に膨張した空気を供給して第2タービン部を回転させている工程、且つ、第1サイクルにおいて、第1室を負圧にする工程、を示す模式図である。
図8図1に示す太陽熱発電装置において、第2サイクルにおいて、第2室から空気を排気している工程、且つ、第1サイクルにおいて、第1室を負圧にする工程、を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下図面を参照して、太陽熱発電装置11について説明する。太陽熱発電装置11は、例えば、砂漠などの高温の地域で、長期間効率的に発電できる装置である。
【0012】
図1に示すように、太陽熱発電装置11は、主装置12と、主装置12に併設されたバイナリー発電機13と、を備える。
【0013】
バイナリー発電機13は、公知のバイナリー発電機を用いることができる。例えば、バイナリー発電機13は、作動流体が充填されるとともに集光ミラー部14を通るバイナリー発電用管路15と、バイナリー発電用管路15の途中に設けられたタービン16と、タービン16の回転で発電する第2発電機17と、を有する。バイナリー発電用管路15内に充填される作動流体の例としては、アンモニア水やペンタン、代替フロンが挙げられる。バイナリー発電機13は、集光ミラー部14で作動流体を蒸発させ、この作動流体の蒸気でタービンを回転させて第2発電機17で発電することができる。集光ミラー部14におけるバイナリー発電用管路15の長さは、後述する主装置12の空気膨張器54と同じ長さで形成されていてもよい。第2発電機17で発電された電力は、変圧器18を通して変圧されて利用される。
【0014】
太陽熱発電装置11の主装置12は、コンプレッサー21と、コンプレッサー21で空気を送り方向Sに送るとともに下流側の端部付近で2つに分岐した管路22と、管路22の途中に設けられ接続状態を切り替えるための切り替え弁23と、管路22の途中に設けられる集光ミラー部14と、管路22の下流側の端部に設けられた第1室24と、第1室24に隣接して管路22の下流側の端部に設けられた第2室25と、第2室25に隣接する第3室26と、第1室24と第2室25と第3室26とを貫通する出力軸27と、第1室24内で出力軸27に固定された第1タービン部31と、第2室25内で出力軸27に固定された第2タービン部32と、第3室26内で出力軸27に固定されたフライホイール33と、第1室24および第2室25を大気圧に対して負圧にするための真空ポンプ34と、一端で真空ポンプ34と接続されるとともに他端で分岐されて第1室24および第2室25に接続される第2管路35と、第2管路35の途中に設けられ接続状態を切り替えるための第2切り替え弁36と、第1室24に設けられた第1大気開放弁41と、第2室25に設けられた第2大気開放弁42と、出力軸27に接続された発電機43と、発電機43で発電された電力を変圧する変圧器18と、切り替え弁23、第2切り替え弁36、第1大気開放弁41、および第2大気開放弁42の開閉を制御する制御部44と、出力軸27から伝達された回転力で発電する発電機43と、発電機43と出力軸27との間に介在されたクラッチ部45と、を備える。
【0015】
コンプレッサー21は、公知のコンプレッサーの構造を用いることができる。コンプレッサー21は、駆動源46からの駆動力で回転される回転軸47と、圧縮された空気を送り方向Sに送るための羽根車48と、回転軸47の回転力を羽根車48に伝達する減速歯車列50と、回転軸47に設けられた第2フライホイール51と、を有する。駆動源46は、例えば、公知の太陽熱スターリングエンジンで構成されている。駆動源46を構成する第1の太陽熱スターリングエンジンは、太陽光を集光するレンズ52と、レンズ52で集められた光で蓄熱する蓄熱器53などを有していてもよい。
【0016】
管路22は、下流側の端部付近で分岐した第1分岐22Aと、第2分岐22Bと、を含む。第1分岐22Aは、第1室24に接続されている。第2分岐22Bは、第2室25に接続されている。切り替え弁23は、電磁弁で構成されており、管路22の上流側が第1分岐22A(第1室24)と連通したA1状態と、管路22の上流側が第2分岐22B(第2室25)と連通したA2状態と、を切り替えることができる。
【0017】
集光ミラー部14は、管路22の周囲を取り囲むように配置された複数のミラーを有する。図1では、集光ミラー部14を通る管路22の一部を直管として描いているが、実際には、繰り返し蛇行させて長大な距離に設置されてもよい。集光ミラー部14を通る管路22の一部は、例えば外周面が黒色に塗装された空気膨張器54を構成しており、当該空気膨張器54で太陽光からの光を熱エネルギーとして吸収しやすく、この空気膨張器54内で内側に位置する空気を熱膨張しやすくなっている。集光ミラー部14および空気膨張器54の長さは、数10mから数10kmであってもよい。
【0018】
第1室24および第2室25は、略同形態に形成されており、密閉された室として形成されている。第2室25の容積は、第1室24の容積と同様である。
【0019】
第3室26は、第1室24および第2室25の容積よりも小さくなっている。第3室26は、フライホイール33の空気抵抗を低減するために、図示しない真空ポンプ等を用いて真空状態に維持されることが好ましい。
【0020】
出力軸27は、第1室24を構成する壁部、第2室25を構成する壁部、および第3室26を構成する壁部によって、回転可能に支持されている。出力軸27と各壁部との間には、必要に応じてベアリング55等が介在されていてもよい。
フライホイール33は、公知のフライホイールで構成されている。
【0021】
真空ポンプ34は、公知の真空ポンプの構造を用いることができる。真空ポンプ34は、第2駆動源56からの駆動力で回転される第2回転軸57と、第1室24および第2室25から空気を吸引するための第2羽根車58と、第2回転軸57の回転力を第2羽根車58に伝達する第2減速歯車列61と、回転軸47に設けられた第3フライホイール62と、を有する。第2駆動源56は、例えば、公知の太陽熱スターリングエンジンで構成されている。第2駆動源56を構成する第2の太陽熱スターリングエンジンは、太陽光を集光するレンズと、レンズで集められた光で蓄熱する蓄熱器などを有していてもよい。また、第2駆動源56を構成する第2の太陽熱スターリングエンジンのレンズおよび蓄熱器は、駆動源46を構成する太陽熱スターリングエンジンのレンズ52および蓄熱器53と共通であってもよい。
【0022】
第2切り替え弁36は、電磁弁で構成されている。第2切り替え弁36は、第2管路35(真空ポンプ34)と第1室24とが連通したB1状態と、第2管路35(真空ポンプ34)と第2室25とが連通したB2状態と、を切り替えることができる。
【0023】
第1大気開放弁41および第2大気開放弁42は、それぞれ電磁弁で構成されている。第1大気開放弁41は、第1室24と外界とが連通した状態と、第1室24を密封した状態を切り替えるように開閉できる。第2大気開放弁42は、第2室25と外界とが連通した状態と、第2室25を密封した状態を切り替えるように開閉できる。
【0024】
発電機43は、公知の発電機で構成されている。また、クラッチ部45は、公知のものを採用することができる。クラッチ部45は、出力軸27と発電機43の回転軸とが接続した状態と、出力軸27と発電機43の回転軸とが分離した状態と、を切り替えることができる。
制御部44は、一般的なコンピューターで構成されており、また、電磁弁で構成される各弁を直接駆動する各種のドライバを含んでいる。
【0025】
第1タービン部31は、羽根車を構成する第1タービン本体63と、第1タービン本体63の内側に設けられる第1ラチェット機構64と、を有する。第1タービン本体63の羽根車の形状は、一般的なもので構成されている。図2に示すように、第1ラチェット機構64は、出力軸27に取り付けられた第1爪部65と、第1タービン本体63の内周面で第1爪部65を係止可能に内側に突出する複数の突起を有するように環状に形成された第1係止面66と、を有する。第1爪部65は、出力軸27に取り付けられたホルダー部材65Aの固定軸周りに介在された図示しないばねの作用によって外側に向けて回転するように付勢されている。
【0026】
図1に示すように、第2タービン部32は、羽根車を構成する第2タービン本体71と、第2タービン本体71の内側に設けられる第2ラチェット機構72と、を有する。第2タービン本体71の羽根車の形状は、一般的なもので構成されている。第2ラチェット機構72の構造は、第1ラチェット機構64の構造と同様に構成されているため、これの詳細についての図示を省略している。すなわち、第2ラチェット機構72は、出力軸27に取り付けられた第2爪部73と、第2タービン本体71の内周面で第2爪部73を係止可能に内側に突出する複数の突起を有するように環状に形成された第2係止面74と、を有する。第2爪部73は、出力軸27に取り付けられたホルダー部材の固定軸周りに介在された図示しないばねの作用によって外側に向けて付勢されている。
【0027】
図3に示すように、第1タービン部31は、第1タービン本体63が回転して、第1タービン本体63の回転速度が出力軸27の自転速度よりも高くなった場合に、第1爪部65が第1係止面66に対して係止される。この状態で、第1タービン部31の回転に対して出力軸27が連れ回りさせて、第1タービン部31の回転力を出力軸27に伝達できる。一方、図2に示すように、第1タービン本体63の回転速度が低下して出力軸27の自転速度よりも低くなった場合に、第1爪部65は第1係止面66に対して空回りする。これによって、第1タービン本体63の速度低下にかかわらず、出力軸27を回転させ続けることができる。
【0028】
第2タービン部32の動作も同様である。すなわち、第2タービン部32は、第2タービン本体71が回転して、第2タービン本体71の回転速度が出力軸27の自転速度よりも高くなった場合に、第2爪部73が第2係止面74に対して係止される。この状態で、第2タービン部32の回転に対して出力軸27が連れ回りさせて、第2タービン部32の回転力を出力軸27に伝達できる。一方、第2タービン本体71の回転速度が低下して出力軸27の自転速度よりも低くなった場合に、第2爪部73は第2係止面74に対して空回りする。これによって、第2タービン本体71の速度低下にかかわらず、出力軸27を回転させ続けることができる。
【0029】
続いて、図1図8を参照して、本実施形態の太陽熱発電装置11の作用について説明する。本実施形態の太陽熱発電装置11では、第1室24での真空引き、第1室24内への空気の供給(出力軸27への回転力の伝達)、および第1室24からの排気からなる第1サイクルと、第2室25での真空引き、第2室25内への空気の供給(出力軸27への回転力の伝達)、および第2室25からの排気からなる第2サイクルと、を交互に繰り返すことで、連続的に発電機43で発電を行えるものである。
【0030】
図1に示すように、コンプレッサー21の駆動源46である太陽熱スターリングエンジンと、真空ポンプ34の第2駆動源56である太陽熱スターリングエンジンとで共有されるレンズ52に対して太陽光が注がれると、その熱によって駆動源46および第2駆動源56が回転駆動される。駆動源46の回転は、第2フライホイール51によって安定化され、第1減速歯車列50を介して回転軸47および羽根車48に伝達される。羽根車48の回転によって空気(圧縮空気)を管路22の送り方向S(下流方向)に向けて送ることができる。コンプレッサー21の作用で管路22内を送られる空気は、集光ミラー部14およびその内側の空気膨張器54において、太陽光からの熱を受け取って膨張される。このとき、数10mから数10kmに及ぶ空気膨張器54内を通過する空気の温度は、最大で200~300℃にまで達する。
【0031】
一方、空気膨張器54内で高温にされた空気を第1室24および第2室25に供給するに先立ち、真空ポンプ34は、第1室24および第2室25を負圧にする。第2駆動源56の回転によって、第2羽根車58が回転して第2管路35に対して吸引(真空引き)を開始する。そして、制御部44は、図4に示すように、第2切り替え弁36を制御して真空ポンプ34と第1室24とが連通したB1状態にするとともに、真空ポンプ34と第2室25とが分離された状態にする。これによって、第1サイクルが開始される。
【0032】
所定時間真空ポンプ34による吸引を行って、第1室24内をある一定程度の負圧にすると、制御部44は、図5に示すように、第2切り替え弁36を制御して、真空ポンプ34と第1室24とが分離された状態にするとともに真空ポンプ34と第2室25とが連通したB2状態にする。これと同時に、制御部44は、切り替え弁23を制御して、管路22の上流側が第2室25と連通した状態から、管路22の上流側が第1室24と連通したA1状態に切り替える。これによって、空気膨張器54内で高温になって膨張された空気が第1室24内に勢い良く供給される。このように、管路22から第1室24内に空気が勢い良く噴射されることで、第1タービン部31の第1タービン本体63が回転される。このとき、図3に示すように、第1タービン本体63とともに第1係止面66に係合した第1爪部65が連れ回りして、第1タービン本体63の回転力が出力軸27に伝達される。出力軸27は回転することで、フライホイール33を回転させて、その回転が安定化する。出力軸27の回転が発電機43に伝達されて43において発電される。発電機43で発電された電気は、変圧器18で変圧されて利用される。
【0033】
第1室24内がある程度、管路22から供給される空気でいっぱいになったタイミングで、管路22から第1室24内に流れる空気流の勢いが低下し、第1タービン本体63の回転速度は低下する。一方、出力軸27の回転速度は、フライホイール33の作用である程度一定に維持されるために、出力軸27の回転速度が第1タービン本体63の回転速度よりも速くなる。このとき、図2に示すように、第1爪部65は、第1タービン本体63の内面の第1係止面66に対して係合しないで、第1係止面66上を滑るように移動する。このため、回転速度が低下した第1タービン本体63に対して出力軸27が空回りして、出力軸27の回転速度が維持される。
【0034】
制御部44は、第1大気開放弁41を制御して、図6に示すように、第1室24を密封した状態から、第1室24と外界とが連通した状態に移動させる。これによって、第1室24内にたまった過剰な空気を外界に排出する。以上で、第1サイクルを終了する。
【0035】
一方、第2室25では、図5に示すように、空気膨張器54内で高温になって膨張された空気が管路22から第1室24に供給されている間に、第2サイクルが開始されており、制御部44は、第2切り替え弁36を制御して、真空ポンプ34と第2室25とが連通したB2状態にする。これによって、第2室25内が吸引(真空引き)されて、第2室25内をある一定程度の負圧にする。
【0036】
続いて、制御部44は、図7に示すように、第2切り替え弁36を制御して、真空ポンプ34と第2室25とが連通したB2状態から、真空ポンプ34と第1室24とが連通したB1状態にする。これと同時に、制御部44は、切り替え弁23を制御して、管路22の上流側が第1室24と連通したA1状態から、管路22の上流側が第2室25と連通したA2状態に切り替える。
【0037】
これによって、空気膨張器54内で高温になって膨張された空気が第2室25内に勢い良く供給される。このように、管路22から第2室25内に空気が勢い良く噴射されることで、第2タービン部32の第2タービン本体71が回転される。このとき、図3に示す第1タービン部31の状態と同様に、第2タービン本体71とともに第2係止面74に係合した第2爪部73が連れ回りして、第2タービン本体71の回転力が出力軸27に伝達される。出力軸27は回転することで、フライホイール33を回転させて、その回転が安定化する。出力軸27の回転が発電機43に伝達されて43において発電される。発電機43で発電された電気は、変圧器18で変圧されて利用される。
【0038】
第2室25内がある程度、管路22から供給される空気でいっぱいになったタイミングで、管路22から第2室25内に流れる空気流の勢いが低下し、第2タービン本体71の回転速度は低下する。一方、出力軸27の回転速度は、フライホイール33の作用である程度一定に維持されるために、出力軸27の回転速度が第2タービン本体71の回転速度よりも速くなる。このとき、図2に示す第1タービン部31の状態と同様に、第2爪部73は、第2タービン本体71の内面の第2係止面74に対して係合しないで、第2係止面74上を滑るように移動する。このため、回転速度が低下した第2タービン本体71に対して出力軸27が空回りして、出力軸27の回転速度が維持される。
【0039】
制御部44は、第2大気開放弁42を制御して、図8に示すように、第2室25を密封した状態から、第2室25と外界とが連通した状態に移動させる。これによって、第2室25内にたまった過剰な空気を外界に排出する。以上で、第2サイクルを終了する。
【0040】
一方、第1室24では、図7に示すように、空気膨張器54内で高温になって膨張された空気が管路22から第2室25に供給されている間に、第1サイクルが開始されている。このように、本実施形態の太陽熱発電装置では、第1サイクルと第2サイクルを交互に行うことで、発電機43において連続的に発電をすることができる。
【0041】
また、必要に応じて、制御部44は、クラッチ部45を制御して、出力軸27と発電機43とが接続して出力軸27の回転が発電機43の回転軸に伝達された状態と、出力軸27と発電機43の回転軸とが分離した状態と、を切り替えることができる。出力軸27と発電機43とが分離した状態では、出力軸27側に回転力が蓄えられているために、これを電池として活用することもできる。
【0042】
本実施形態によれば、以下のことがいえる。太陽熱発電装置11は、空気を送り方向Sに送るための管路22と、管路22の途中の位置で、管路22の周囲に設けられた集光ミラー部14であって、太陽光を集めて管路22を加熱して、管路22内の空気を加熱膨張させる集光ミラー部14と、管路22に接続されて前記空気が送られる第1室24および第2室25と、送り方向Sに関して集光ミラー部14よりも下流側で管路22に設けられ、管路22と第1室24が接続されたA1状態と、管路22と第2室25が接続されたA2状態と、を切り替えることが可能な切り替え弁23と、第1室24と第2室25とに跨って配置され、回転可能に設けられた出力軸27と、出力軸27の回転で発電する発電機43と、第1ラチェット機構64を含み、第1室24内で出力軸27周りに回転可能に設けられた第1タービン部31であって、前記空気によって回転方向に回転する回転速度が出力軸27の自転速度よりも大きいときに第1ラチェット機構64によって連れ回りさせてその回転力を出力軸27に伝達するとともに、前記回転速度が出力軸27の自転速度よりも小さいときに第1ラチェット機構64によって出力軸27を空回りさせる第1タービン部31と、第2ラチェット機構72を含み、第2室25内で出力軸27周りに回転可能に設けられた第2タービン部32であって、前記空気によって回転方向に回転する回転速度が出力軸27の自転速度よりも大きいときに第2ラチェット機構72によって連れ回りさせてその回転力を出力軸27に伝達するとともに、前記回転速度が出力軸27の自転速度よりも小さいときに第2ラチェット機構72によって出力軸27を空回りさせる第2タービン部32と、切り替え弁23を前記A1状態と前記A2状態との間で交互に切り替える制御部44と、を備える。
【0043】
この構成によれば、第1タービン部31および第2タービン部32で得られた回転力を、第1ラチェット機構64および第2ラチェット機構72の作用によって出力軸27の回転力を落とすことなく安定的に出力軸27に伝達することができる。これによって、発電機43で安定的に発電を行うことができる。
【0044】
この場合、太陽熱発電装置11は、第1室24および第2室25を負圧にすることが可能な真空ポンプ34と、真空ポンプ34と第1室24および第2室25とを接続する第2管路35と、第2管路35と第1室24が接続されたB1状態と、第2管路35と第2室25が接続されたB2状態と、を切り替えることが可能な第2切り替え弁36と、を備え、制御部44は、前記空気を第1室24内に供給する前に第2切り替え弁36を前記B1状態にして第1室24内を負圧にし、前記空気を第2室25内に供給する前に第2切り替え弁36を前記B2状態にして第2室25内を負圧にする。
【0045】
この構成によれば、空気を供給する前に、第1室24および第2室25が負圧になるために、第1室24および第2室25に供給される空気流の勢いをさらに強くすることができる。
【0046】
この場合、太陽熱発電装置11は、第1室24に設けられ第1室24内を大気開放する第1大気開放弁41と、第2室25に設けられ第1室24内を大気開放する第2大気開放弁42と、を備え、制御部44は、第1タービン部31の回転速度が出力軸27の自転速度よりも小さくなるタイミングで第1大気開放弁41を開放動作させて第1室24内を大気開放するとともに、第2タービン部32の回転速度が出力軸27の自転速度よりも小さくなるタイミングで第2大気開放弁42を開放動作させて第2室25内を大気開放する。
【0047】
この構成によれば、管路22からの空気流の供給によって第1室24及び第2室25が高圧になった場合に、次の真空状態を作る前段階で第1室24及び第2室25を大気圧程度に落とすことができる。これによって、真空ポンプ34にかかる負担を低減して、太陽熱発電装置11の長期の信頼性を確保することができる。また、第1室24及び第2室25の短時間での負圧化を可能にして、発電効率をさらに向上することができる。
【0048】
この場合、太陽熱発電装置11は、出力軸27に取り付けられたフライホイール33と、フライホイール33を収納するとともに真空状態に維持された第3室26と、出力軸27の回転力を発電機43に接続したり、出力軸27の回転力を発電機43から分離したり可能なクラッチ部45と、を備える。
【0049】
この構成によれば、フライホイール33によって、出力軸27の回転速度を安定化することができる。また、第3室26が真空状態に維持されるために、空気の摩擦による回転の損失を極力小さくすることができる。また、クラッチ部45によって、接続状態を切り替えることができるために、出力軸27を発電機43から分離した状態で、出力軸27に回転力を蓄えることで、出力軸27側を回転力を蓄えた電池のように活用することができる。利用者は、必要に応じて、クラッチ部45を作動させて出力軸27と発電機43とを接続することで、再び発電を再開することができる。
なお、上記実施形態は一例であり、発明の要旨を変更しない限度で適宜に変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0050】
11 太陽熱発電装置
12 主装置
13 バイナリー発電機
14 集光ミラー部
18 変圧器
21 コンプレッサー
S 送り方向
22 管路
22A 第1分岐
22B 第2分岐
23 切り替え弁
24 第1室
25 第2室
26 第3室
27 出力軸
31 第1タービン部
32 第2タービン部
33 フライホイール
34 真空ポンプ
35 第2管路
36 第2切り替え弁
41 第1大気開放弁
42 第2大気開放弁
43 発電機
44 制御部
45 クラッチ部
46 駆動源
52 レンズ
53 蓄熱器
54 空気膨張器
55 ベアリング
65 第1爪部
66 第1係止面
71 第2タービン本体
72 第2ラチェット機構
73 第2爪部
74 第2係止面
【要約】
【課題】発電効率を向上した太陽熱発電装置を提供する。
【解決手段】 太陽熱発電装置は、管路と、前記管路内の空気を加熱膨張させる集光ミラー部と、前記管路に接続されて前記空気が送られる第1室および第2室と、前記管路と前記第1室が接続されたA1状態と、前記管路と前記第2室が接続されたA2状態と、を切り替えることが可能な切り替え弁と、出力軸と、前記出力軸の回転で発電する発電機と、前記空気によって回転方向に回転する回転速度が前記出力軸の自転速度よりも大きいときにラチェット機構によって連れ回りさせてその回転力を前記出力軸に伝達するとともに、前記回転速度が前記出力軸の自転速度よりも小さいときに前記ラチェット機構によって前記出力軸を空回りさせる第1タービン部および第2タービン部と、前記切り替え弁を交互に切り替える制御部と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8