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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】焙煎システム及び焙煎方法
(51)【国際特許分類】
   A23N 12/08 20060101AFI20241211BHJP
   A23N 12/10 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
A23N12/08 A
A23N12/10 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023223772
(22)【出願日】2023-12-29
【審査請求日】2024-02-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503399492
【氏名又は名称】株式会社富士珈機
(73)【特許権者】
【識別番号】524386776
【氏名又は名称】アライドコーヒーロースターズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514043573
【氏名又は名称】ラブ・フォレスト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】523080974
【氏名又は名称】株式会社PEO技術士事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(74)【代理人】
【識別番号】100085291
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117798
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 慎一
(74)【代理人】
【識別番号】100221006
【弁理士】
【氏名又は名称】金澤 一磨
(72)【発明者】
【氏名】福島 達男
(72)【発明者】
【氏名】龍田 和哉
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 昇
(72)【発明者】
【氏名】森木 公朗
(72)【発明者】
【氏名】千田 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】小島 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】三村 和寿
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03178330(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2023/0117149(US,A1)
【文献】特開2011-078382(JP,A)
【文献】特開2007-222108(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0037876(US,A1)
【文献】特開2010-222517(JP,A)
【文献】特開平04-023976(JP,A)
【文献】特表2010-517547(JP,A)
【文献】特開平01-141550(JP,A)
【文献】特開2016-021957(JP,A)
【文献】特表2008-508892(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03659446(EP,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0148454(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0164409(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23N 12/08
A23N 12/10
F23B 10/00-99/00
F23L 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒー豆やナッツ類などの食材を焙煎するロースターと、炉体を具備し炉体内で熱風を生成する熱風生成手段と、前記熱風生成手段と前記ロースターとに接続される第1通路と、前記第1通路又は前記熱風生成手段に一端が接続され他端が外部に開放される第2通路と、前記第1通路及び前記第2通路に設けられた第1開閉器及び第2開閉器とを備える焙煎システムを用いて、食材を焙煎する焙煎方法であり、
前記炉体内で固体バイオ燃料を燃焼させて熱風を生成する熱風生成工程と、
生成した熱風を、前記第1通路を介して、前記ロースターに供給する熱風供給工程と、
前記ロースター内で熱風を用いてコーヒー豆を焙煎する焙煎工程と、を備え、
前記ロースターの目標温度との温度差に応じて、第1及び第2開閉器を開閉制御して、ロースターに供給する熱風の温度を調整するものであり、
さらに、前記焙煎システムは、前記ロースターにガス燃焼により熱風を生成する補助熱風生成手段が設けられていて、
前記熱風供給工程において、前記ロースターの目標温度との温度差に応じて、前記補助熱風生成手段の熱風導入量を制御し、前記ロースターに供給して熱風の温度をさらに調整することを特徴とする、
焙煎方法。
【請求項2】
前記熱風供給工程に先立って、前記第1開閉器を閉じ、第2開閉器を開いた状態で、前記炉体内で生成された熱風を、前記第2通路を介して外部に放出する暖気工程をさらに備える、
請求項記載の焙煎方法。
【請求項3】
前記炉体内での熱風の生成開始から、暖気工程を含み、食材の焙煎終了まで、前記熱風生成手段を停止しないことを特徴とする、
請求項記載の焙煎方法。
【請求項4】
前記炉体内での熱風の生成開始から、暖気工程を含み、食材の焙煎終了後に前記熱風生成手段を停止するまで、前記炉体内を負圧に維持することを特徴とする、
請求項記載の焙煎方法。
【請求項5】
前記焙煎システムは、外気を前記第1通路内に導入する補助空気導入手段を備えていて、
前記熱風供給工程において、前記ロースターの目標温度との温度差に応じて、前記補助空気導入手段の外気導入量を制御し、前記ロースターに供給して熱風の温度をさらに調整する、
請求項記載の焙煎方法。
【請求項6】
前記焙煎システムは、前記第2通路に排気ファンが設けられ、前記ロースターに焙煎に用いた熱風をロースター外に排気する第3通路が接続され、前記第3通路が前記排気ファンよりも上流側で、前記第2通路に接続されていて、
前記焙煎工程において、前記ロースターから前記第3通路及び前記第2通路を介して、焙煎に用いられた熱風が外部に排気される、
請求項記載の焙煎方法。
【請求項7】
前記第2通路の他端が、サイクロン及び消煙装置を介して外部に開放されていて、
前記焙煎工程において、前記ロースターから前記第3通路及び前記第2通路、サイクロン、消煙装置を介して、焙煎に用いられた熱風が外部に排気される、
請求項記載の焙煎方法。
【請求項8】
前記焙煎システムは、前記第2通路又は第3通路の途中に熱交換器が設けられていて、
前記第2通路又は第3通路を流れる排気の熱エネルギーを熱交換器により回収する、
請求項記載の焙煎方法。
【請求項9】
前記熱風生成工程において、前記炉体内で燃焼される前記固体バイオ燃料が、コーヒーペレット、又は、木質ペレット、又は、コーヒーペレットと木質ペレットとの混合物である、
請求項記載の焙煎方法。
【請求項10】
前記熱風生成手段が、電気ヒータを具備する電気炉であり、
前記熱風生成工程が、前記炉体内でバイオ燃料を燃焼させて熱風を生成する工程にかえて、前記電気炉により電気ヒータを熱源として熱風を生成する工程である、
請求項1乃至9のいずれか1項記載の焙煎方法。
【請求項11】
コーヒー豆やナッツ類などの食材を焙煎する焙煎システムであり、
食材を焙煎するロースターと、
前記ロースターに供給する熱風を生成する熱風生成手段と、
前記熱風生成手段の炉体から前記ロースターに熱風を供給する第1通路と、
前記第1通路又は前記熱風生成手段に一端が接続され、他端が外部に開放される第2通路と、
前記第1通路に設けられる第1開閉器と、
前記第2通路に設けられる第2開閉器と、を備え、
前記熱風生成手段は、炉体内で固体バイオ燃料を燃焼させて熱風を生成するものであり、
前記ロースターの目標温度との温度差に応じて、前記第1開閉器及び第2開閉器を開閉制御し、前記ロースターに供給する熱風の温度を調整するものであり、
さらに、前記ロースターには、ガス燃焼により熱風を生成する補助熱風生成手段が設けられていることを特徴とする、
焙煎システム。
【請求項12】
前記第1通路は、外気を前記第1通路内に導入する補助空気導入手段を備え、
前記ロースターの目標温度との温度差に応じて、前記補助空気導入手段の外気導入量を制御し、前記ロースターに供給する前記熱風の温度をさらに調整する、
請求項11記載の焙煎システム。
【請求項13】
前記第2通路に、排気ファンが設けられ、
前記ロースターに、焙煎に用いた熱風をロースター外に排気する第3通路が接続され、
前記第3通路が、前記排気ファンよりも上流側で、前記第2通路に接続されている、
請求項12記載の焙煎システム。
【請求項14】
前記第2通路の他端が、サイクロン及び消煙装置を介して外部に開放されている、
請求項11記載の焙煎システム。
【請求項15】
前記第2通路又は第3通路の途中に、熱交換器が設けられている、
請求項11記載の焙煎システム。
【請求項16】
前記固体バイオ燃料は、コーヒーペレット、又は、木質ペレット、又は、コーヒーペレットと木質ペレットとの混合物である、
請求項11記載の焙煎システム。
【請求項17】
前記熱風生成手段が、前記炉体内で固体バイオ燃料を燃焼させて熱風を生成するものにかえて、電気炉を用いるものであり、
前記電気炉が、電気ヒータを具備し、電気ヒータを熱源として熱風を生成するものである、
請求項11乃至16のいずれか1項記載の焙煎システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焙煎システム及び焙煎方法に関し、特に固体バイオ燃料を用いる焙煎システム及び焙煎方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コーヒー飲料が嗜好飲料として消費量が大きく増え、それに伴いコーヒー豆の消費量も増加している。そのため、コーヒー液抽出後に、大量のコーヒー液抽出カスが発生している。このことは、茶葉や麦、その他食材においても同様の問題がある。
【0003】
しかし、有効利用されているのはほんの一部で、そのほとんどは一般廃棄物や産業廃棄物として廃棄され、焼却処理されているのが現状である。
【0004】
また、コーヒー液抽出カスを有効利用するために、バイオコークス技術を利用して、コーヒー液抽出カスをバイオコークス化し、それを熱源として利用するコーヒー液抽出システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
そのような固体バイオ燃料は、着火性、燃焼安定性が悪く、熱風焙煎の熱源として利用することは、困難である。またその形状から燃料の連続供給ができないため、手動投入しか適用できない。そのため燃料利用が容易なコーヒーペレットなどの小型のバイオ燃料に加工して、コーヒー液抽出カスを、熱風焙煎の熱源として利用することが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2021-176933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、発明者らは、熱風焙煎において、例えばコーヒーペレットなどの固体バイオ燃料を燃料として、一体型で小型のガンタイプのバーナーを用いたところ、ガスを燃料とする場合よりも燃焼の応答性が低く、安定した燃焼の制御が困難であった。これは、ガンタイプバーナーの場合、おき火がないため燃焼が安定しないものと考えられる。
【0008】
そこで、バーナーを、ガンタイプからおき火のある炉床型に変えたところ、安定した燃焼が確認され、熱風の一部を排出したり冷風を導入したりしてそれらのバランスを制御することで熱風温度の制御が可能となることを知見した。
【0009】
本発明は、バイオペレットを用い安定した燃焼が得られ、目標とする熱風温度に制御できる焙煎システム及び焙煎方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一の態様に係る焙煎システムは、コーヒー豆やナッツ類などの食材を焙煎する焙煎システムであり、食材を焙煎するロースターと、前記ロースターに供給する熱風を生成する熱風生成手段と、前記熱風生成手段の炉体から前記ロースターに熱風を供給する第1通路と、前記第1通路又は前記熱風生成手段に一端が接続され、他端が外部に開放される第2通路と、前記第1通路に設けられる第1開閉器と、前記第2通路に設けられる第2開閉器とを備え、前記熱風生成手段は、炉体内で固体バイオ燃料を燃焼させて熱風を生成するものであり、前記ロースターの目標温度との温度差に応じて、前記第1開閉器及び第2開閉器を開閉制御し、前記ロースターに供給する熱風の温度を調整することを特徴とする。
【0011】
このようにすれば、熱風生成手段からの熱風がロースターに供給される際に、第2通路を通じて一部排出させることができるので、熱風生成手段自体での火力制御で熱風の温度を制御するよりも応答性に優れた温度制御が可能になる。
【0012】
また、固体バイオ燃料を用いて熱風を生成できるので、省エネに寄与する。また、固体バイオ燃料の熱風生成手段は、ガスやバーナーに比べて応答性が劣るところ、上記した構成を備えることにより、応答性に優れた温度制御が可能である。
【0013】
この場合、前記第1通路は、外気を前記第1通路内に導入する補助空気導入手段を備え、前記ロースターの目標温度との温度差に応じて、前記補助空気導入手段の外気導入量を制御し、前記ロースターに供給する前記熱風の温度をさらに調整することが望ましい。これにより、第2通路を通じての一部排出に加えて、補助空気導入手段による外気(冷風)の導入ができるようになり、より応答性に優れた細かい温度制御が可能になる。
【0014】
前記第2通路に排気ファンが設けられ、前記ロースターに焙煎に用いた熱風をロースター外に排気する第3通路が接続され、前記第3通路が前記排気ファンよりも上流側で、前記第2通路に接続されている。これにより、排気ファンによって熱風を第1通路より安定して引き込むことができ、バイオ燃焼を安定させることができるとともに、焙煎に用いた排気を熱風生成手段による排気とともに第2通路よりまとめて外部に排出できる。
【0015】
また、熱風生成手段からロースターに熱風を供給する第1通路と、これに接続され排気ファンが配された第2通路と、ロースターからの排気を第2通路に送る第3通路とで、熱風生成手段からロースターを介して排気ファンまでの通路が繋がった構成となる。これにより、熱風生成手段により生成された熱風を、1つの排気ファンで引っ張る1対1の対応関係とできるため、熱風生成手段の導入風量を安定させることができ、ひいては熱風生成手段の燃焼を安定させることができる。
【0016】
また、熱風生成手段による高温の排気と、焙煎後のロースターからの排気とを、同じ通路を介して排出する構成としているので、焙煎後の排気によって生じる通路内に付着する油分などの汚れを、熱風生成手段の高温の排気により除去する、いわゆるサーマルクリーニングの効果を得られる。
【0017】
また、前記第2通路の他端がサイクロン及び消煙装置を介して外部に開放されている。これにより、焙煎後の排気などをクリーンにして外部に排出できる。
【0018】
前記ロースターは、ガス燃焼により熱風を生成する補助熱風生成手段が設けられていることが望ましい。これにより、暖気時において、補助熱風生成手段を用いることで暖気に要する時間を短縮できるとともに、焙煎時にさらに細かい温度調整が可能となる。また、例えば熱風生成手段に不具合が生じた場合など不測の事態が生じた際に、焙煎を継続して行うことも可能となる。
【0019】
前記ロースターには、冷却水を供給する水供給手段が設けられていることが望ましい。このようにすれば、焙煎後のコーヒー豆などの食材の色の調整を容易にできる。また、食材及びロースターの冷却が可能となる。
【0020】
前記第2通路又は第3通路の途中に、熱交換器が設けられていることが望ましい。これにより、焙煎後などの排気による排熱を有効利用することができる。
【0021】
前記固体バイオ燃料は、コーヒーペレット、又は、木質ペレット、又は、コーヒーペレットと木質ペレットとの混合物であることが望ましい。これにより、通常廃棄されるコーヒーかすなどをバイオペレットとして有効活用できる。また、木質ペレットを用いたり、木質ペレットを混合することで、着火性を向上することが可能である。
【0022】
また、前記焙煎システムは、前記熱風生成手段が、前記炉体内で固体バイオ燃料を燃焼させて熱風を生成するものにかえて、電気炉を用いるものであり、前記電気炉が、電気ヒータを具備し、電気ヒータを熱源として熱風を生成するものである。
【0023】
このようにすれば、電気炉からの熱風がロースターに供給される際に、第2通路を通じて一部排出させることができるので、電気炉での火力制御で熱風の温度を制御するよりも応答性に優れた温度制御が可能になる。また、電気ヒータは、前記した固体バイオ燃料を用いた熱風生成手段と同様、ガスやオイルと違い、熱量のコントロールにおいて応答性が大変緩慢であり、細かいコントロールが苦手であるところ、そのため、上記した構成により、電気ヒータを用いた場合にも、応答性に優れた温度制御が可能となる。
【0024】
本発明の一の態様に係る焙煎方法は、コーヒー豆やナッツ類などの食材を焙煎するロースターと、炉体を具備し炉体内で熱風を生成する熱風生成手段と、前記熱風生成手段と前記ロースターとに接続される第1通路と、前記第1通路又は前記熱風生成手段に一端が接続され他端が外部に開放される第2通路と、前記第1通路及び前記第2通路に設けられた開閉器とを備える焙煎システムを用いて、食材を焙煎する焙煎方法であり、
前記炉体内で固体バイオ燃料を燃焼させて熱風を生成する熱風生成工程と、生成した熱風を、前記第1通路を介して、前記ロースターに供給する熱風供給工程と、前記ロースター内で熱風を用いて食材を焙煎する焙煎工程とを備え、前記ロースターの目標温度との温度差に応じて、第1及び第2開閉器を開閉制御して、ロースターに供給する熱風の温度を調整することを特徴とする。
【0025】
このようにすれば、熱風生成手段からの熱風がロースターに供給される際に、第1及び第2開閉器の開閉により、第2通路を通じて一部排出させるなどすることで、熱風生成手段自体での火力制御で熱風の温度を制御するよりも応答性に優れた温度制御が可能になる。ここで、この開閉器には、例えば開閉ダンパなど、完全に開く・閉じる以外に、開く割合を調整可能なものが含まれていて、調整可能なものが好ましい。
【0026】
ここで、発明者らの焙煎方法の開発にあたり、種々の方法の試験を繰り返した際、焙煎後の食材の風味が損なわれていくことを感じた。その原因を追及していったところ、熱風生成手段からロースターに送る熱風にススが含まれることが原因である可能性を考え、さらに種々の方法の試験を繰り返し、以下の構成を備える焙煎方法を見出した。
【0027】
その焙煎方法は、前記熱風供給工程に先立って、前記第1開閉器を閉じ、第2開閉器を開いた状態で、前記炉体内で生成された熱風を、前記第2通路を介して外部に放出する暖気工程をさらに備えることを特徴とする。
【0028】
ここで、風味を損なう原因について、熱風生成手段における固体バイオ燃料の点火から完全燃焼に至るまでの間は、ススを多く排出する不完全燃焼が生じる。そして、その熱風をそのままロースターへ供給してしまうと、配管やシリンダー内部、ひいては焙煎される食材にススが付着して、風味を損なうことを見出した。
【0029】
そして、上記の構成を備える焙煎方法、具体的には、固体バイオ燃料の点火から完全燃焼に至るまでの間は、前記第1開閉器を閉じ、第2開閉器を開いた状態で、前記炉体内で生成された熱風を、前記第2通路を介して外部に放出することで、すなわち、ススが含まれる熱風をロースターに供給しない暖気工程を経てから、ロースターに熱風を供給することで、ススによる風味の劣化を防ぐことが可能である。したがって、この構成により、所望の温度の熱風が生成された後にロースターに熱風を供給することができるとともに、運転開始した熱風供給手段を停止する必要がなく安全で、かつ、ススによる風味への悪影響を抑えることができる。
【0030】
また、前記炉体内での熱風の生成開始から、前記暖気工程を含み、食材の焙煎終了まで、前記熱風生成手段を停止しないことを特徴とする。この構成にすれば、熱風生成手段の運転開始から焙煎終了まで、熱風生成手段を停止せずに運用でき安全である。
【0031】
これは、熱風生成手段にバイオペレットを燃焼させて熱風を生成するものであり、熱風生成手段を不用意に途中で停止すると、未燃のバイオペレットなどに逆火するおそれがあるためである。したがって、焙煎が終了した後に、バイオペレットの燃焼を止めて、熱風生成手段を停止することが望ましい。なお、コーヒー豆の焙煎終了後、炉体内に残るバイオペレットの燃焼が収まるまで、熱風生成手段を停止しないことがより望ましい。
【0032】
また、前記炉体内での熱風の生成開始から、前記暖気工程を含み、コーヒー豆の焙煎終了後に前記熱風生成手段を停止するまで、前記炉体内を負圧に維持することを特徴とする。この構成によれば、炉体内が正圧になると、未使用のバイオペレットがある燃料供給部へ熱が逆流して逆火するおそれがあるところ、それを防止することができ、安全な運転が可能となる。
【0033】
また、前記焙煎システムは、外気を前記第1通路内に導入する補助空気導入手段を備えていて、前記熱風供給工程において、前記ロースターの目標温度との温度差に応じて、前記補助空気導入手段の外気導入量を制御し、前記ロースターに供給して熱風の温度をさらに調整する。これにより、第2通路を通じての一部排出に加えて、補助空気導入手段による外気(冷風)の導入ができるようになり、より応答性に優れた細かい温度制御が可能になる。
【0034】
また、前記焙煎システムは、前記第2通路に排気ファンが設けられ、前記ロースターに焙煎に用いた熱風をロースター外に排気する第3通路が接続され、前記第3通路が前記排気ファンよりも上流側で、前記第2通路に接続されていて、前記焙煎工程において、前記ロースターから前記第3通路及び前記第2通路を介して、焙煎に用いられた熱風が外部に排気される。
【0035】
これにより、排気ファンによって熱風を第1通路より安定して引き込むことができ、燃焼を安定させることができるとともに、焙煎に用いた排気を熱風生成手段による排気とともに第2通路よりまとめて外部に排出できる。
【0036】
また、熱風生成手段による高温の排気と、焙煎後のロースターからの排気とを、同じ通路を介して排出する構成としているので、焙煎後の排気によって生じる通路内に付着する油分などの汚れを、熱風生成手段の高温の排気により除去する、いわゆるサーマルクリーニングの効果を得られる。
【0037】
また、前記第2通路の他端が、サイクロン及び消煙装置を介して外部に開放されていて、前記焙煎工程において、前記ロースターから前記第3通路及び前記第2通路、サイクロン、消煙装置を介して、焙煎に用いられた熱風が外部に排気される。これにより、焙煎に使用した後の熱風をクリーンな状態で外部に放出でき環境によい。
【0038】
また、前記焙煎システムは、前記ロースターにガス燃焼により熱風を生成する補助熱風生成手段が設けられていて、前記熱風供給工程において、前記ロースターの目標温度との温度差に応じて、前記補助熱風生成手段の熱風導入量を制御し、前記ロースターに供給して熱風の温度をさらに調整する。
【0039】
これにより、暖気時において、補助熱風生成手段を用いることで暖気に要する時間を短縮できるとともに、焙煎時にさらに細かい温度調整が可能となる。また、例えば熱風生成手段に不具合が生じた場合など不測の事態が生じた際に、焙煎を継続して行うことも可能となる。
【0040】
また、前記焙煎システムは、前記ロースターに冷却水を供給する水供給手段が設けられていて、前記焙煎工程の終了後に、前記水供給手段により水噴射工程をさらに備える。このようにすれば、焙煎後のコーヒー豆の色の調整を容易にできる。また、コーヒー豆及びロースターの冷却が可能となる。
【0041】
また、前記焙煎システムは、前記第2通路又は第3通路の途中に熱交換器が設けられていて、前記第2通路又は第3通路を流れる排気の熱エネルギーを熱交換器により回収する。これにより、焙煎後などの排気による排熱を有効利用することができる。また、この熱交換器は、例えば、第2通路又は第3通路と、熱風生成手段に通じる配管に跨がるように配するなどして、第2又は第3通路の排気による熱エネルギーを、熱風生成に用いるようにすることなどが考えられる。
【0042】
また、前記熱風生成工程において、前記炉体内で燃焼されるペレットが、コーヒーペレット、又は、コーヒーペレットと木質ペレットとの混合物であるバイオペレットである。これにより、通常廃棄されるコーヒーかすなどをバイオペレットとして有効活用できる。また、木質ペレットを混合することで、着火性を向上することが可能である。
【0043】
また、前記焙煎システムは、前記熱風生成手段が、電気ヒータを具備する電気炉であり、前記熱風生成工程が、前記炉体内でバイオ燃料を燃焼させて熱風を生成する工程にかえて、前記電気炉により電気ヒータを熱源として熱風を生成する工程である。この構成を備える焙煎方法によれば、ガスやバーナーなどに比べて応答性が劣る電気ヒータを用いた場合にも、応答性に優れた温度制御とできる。
【発明の効果】
【0044】
本発明は、熱風生成手段からの熱風をロースターに供給する際に、第2通路を通じて一部排出させることができるので、熱風生成手段自体での火力制御で熱風の温度を制御するよりも応答性に優れた、熱風の温度制御が可能になり、安定した燃焼が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明に係る焙煎システムの概略構成を示す全体図で、ペレットバーナー(熱風生成手段)が暖気状態である場合を示す。
図2】ロースターの回転シリンダに取り付けられている羽根の状態を示す図である。
図3】前記焙煎システムにおける焙煎中(火力が必要なとき)の状態を示す全体図である。
図4】前記焙煎システムにおける焙煎中(火力が不要なとき)の状態を示す全体図である。
図5】前記焙煎システムにおけるクエンチング時の状態を示す全体図である。
図6】前記焙煎システムにおける焙煎終了(前蓋開)状態を示す全体図である。
図7】前記焙煎システムにおける焙煎終了後(冷却開始0~60秒)の状態を示す全体図である。
図8】前記焙煎システムにおける焙煎中(冷却開始60秒以降)の状態を示す全体図である。
図9】前記焙煎システムにおける吸上げ時の状態を示す全体図である。
図10】前記焙煎システムにおける焙煎準備の流れを示すフロー図である。
図11】前記焙煎システムにおける焙煎処理の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明に係る実施の形態を図面に沿って説明する。
図1は本発明に係る焙煎システムの概略構成を示す全体図で、ペレットバーナー(熱風生成手段)が暖気状態である場合を示す。
【0047】
図1において、1はコーヒーペレット(バイオペレット)を燃料として用いる焙煎システムで、前記コーヒーペレットを炉体2A内で燃焼して熱風を生成する炉床型のペレットバーナー2(熱風生成手段)と、前記熱風を利用してコーヒー豆を焙煎するロースター3(焙煎機)と、ペレットバーナー2からロースター3に熱風を供給する第1通路4と、第1通路4に一端が接続される第2通路5と,第2通路5に設けられる開閉ダンパ6とを備える。
【0048】
第2通路5には、排気ファン8よりも上流側の第3通路7が接続されていて、焙煎に用いられた熱風の排気が、第3通路7を通じて、排気ファン8、サイクロン9及び消煙設備10を経て外部に開放されている。なお、第2通路5が分岐される部分の下流側の第1通路4に、アクチュエータによって開閉される開閉ダンパ12が設けられている。そして、ロースター3の目標温度との温度差に応じて、開閉ダンパ6を開閉制御し、ロースター3に供給する前記熱風の温度を調整するようになっている。
【0049】
第2通路5は、外への排気口までの途中に、排気ファン8及びサイクロン9が接続されていて、サイクロン9の下流側に、消煙設備10の脱臭装置ファン(図示せず)が接続されている。また、サイクロン9と消煙設備10を繋ぐ通路11には、消煙設備10の異常停止時などに開放する開閉ダンパ11aが設けられている。
【0050】
また、第1通路4は、炉体2のすぐ下流側に、排気ファン13を有する通路14が接続され、その接続部分のそれぞれの下流側に開閉ダンパ15A,15Bが設けられ、これらは1つのアクチュエータによって連動して開閉され、停電時・冷却運転時のみ、開閉ダンパ15Aが開、開閉ダンパ15Bが閉とされ、排気ファン13が駆動されることで、排気されるようになっている。
【0051】
第1通路4は、大径の熱風導入部16を介してロースター3に接続されている。熱風導入部16に、前記熱風の温度を調整するために外気を導入する補助空気導入手段17が設けられている。なお、本実施形態の補助空気導入手段17には、一例として電動ファンを用いている。
【0052】
補助空気導入手段17による熱風温度の調整は、ロースター3の目標温度との温度差に応じて、補助空気導入手段17の外気導入量が制御され、ロースター3に供給する前記熱風の温度を下げる調整をするようになっている。そして、補助空気導入手段17により導入する風量はインバータ制御される。
【0053】
なお、導入風量の制御はインバータに限らず、吸気口にモーターダンパを設けて、その制御により調整することも可能である。インバータを使用しないことで、コストを抑えることができる。
【0054】
また、補助空気導入手段17は、上記した役割以外にも使用する。例えば、焙煎の後半の仕上げの段階で、焙煎機の蓄熱や焙煎されている焙煎豆の蓄熱のために、熱を遮断してしまって、熱を与えなくてもそれらの熱でどんどん加熱して行き、加熱のブレーキ制御が効きづらいところ、この補助空気導入手段17により外気を取り込んでブレーキをかける役割がある。
【0055】
また、熱風導入部16には、ガス燃焼により熱風を暖気などの際に補助的に生成する補助熱風生成手段も設けられている。本実施形態においては、一例として、補助空気導入手段にガスバーナー18を用いている。ガスバーナー18の空気導入路には、ガスバーナー不使用時にリークする冷風を遮断するために、開閉弁18aが設けられている。
【0056】
ロースター3は、炉体19内に、コーヒー豆(生豆)を内部に収容し焙煎する回転シリンダ20が回転可能に設けられ、回転シリンダ20が焙煎時には、熱風が導入されながら、モータによって回転駆動される。炉体19は、アクチュエータによって開閉される排気バイパスダンパ21を有する通路22を介して、第3通路7に接続されている。
【0057】
この接続部分の第3通路7の上流側にも、アクチュエータによって開閉される排気ダンパ23が設けられている。排気ダンパ23は、熱風の温度制御を行わず、ガスバーナー18の不使用時に漏れを遮断するために使用することができる。
【0058】
ここで、排気ダンパ23と排気バイパスダンパ21の用途について説明する。
焙煎時などは、排気ダンパ23を開として、ロースター3からの排気を第3通路7を通じて第2通路5を介して外部に排気する。一方、原料ホッパーダンパ26を開く時は、排気ダンパ23を閉とし、排気バイパスダンパ21を開とすることで、原料が下流側(第3通路7側)へ飛ばされないようにする。また、水で冷却するクエンチング時も同様に、排気バイパスダンパ21を開として熱風を逃がすことで、原料が飛ばされないようにしている。クエンチング時は、発生する水蒸気により回転シリンダ20内の内圧が大きくなるので、原料が外へ追い出されようにするためである。
【0059】
また、排気バイパスダンパ21については、後述する前蓋24が開のときに、前蓋24から外部の冷えた空気が中に入り込み排気ダンパ23を通じて第3通路7に流入しようとするところ、この時、排気バイパスダンパ21を開とすることで、第3通路7に外部からの冷えた空気の流入を抑え、ガスバーナー18による熱風導入部16からの熱風が排気バイパスダンパ21より第3通路7に流入するような流れを作ることができる。このようにすることで、冷えた空気が第3通路7に流入した場合の、ガスバーナー18の燃焼性や消煙設備10の燃費などを抑えることができる。
【0060】
なお、上記した排気ダンパ23を閉じる場合、全閉とならないように構成しており、これは、ガスバーナー18を用いて焙煎した場合などにタイミングが悪いと、排気ダンパ23が完全に閉となっている状態でガスバーナー18が失火すると、炉体19内に燃焼ガスが充満して発火などのリスクがあるため、排気ダンパ23が全閉とならないようにしている。
【0061】
また、回転シリンダ20は、図2に示すように、円筒状の本体20A内部に、撹拌用の羽根20Bが無規則に設けられている。
【0062】
回転シリンダ20には、図1に示すように、アクチュエータ駆動によるスライド移動により開閉される前蓋24が設けられ、この前蓋24は原材料が投入される筒状の投入部24aを備える。この投入部24aが、第3通路7の下流端部に分離可能に接続され、この第3通路7の下流端部付近に、原材料を収納するホッパ部25の投入口部25aが設けられている。
【0063】
投入口部25aには、アクチュエータによって開閉される原料ホッパーダンパ26が設けられ、原材料の投入時に開放される。回転シリンダ20に対し、焙煎後のコーヒー豆の色の調整等のために、冷却水を供給する水供給手段27が設けられている。暖気時やロースター3側の停電等によるトラブルに対処するために用いることもできる。また、ロースター3の熱風制御として、急激に熱風温度を下げることにも使用できる。
【0064】
上記システムによれば、ロースター3へ第1通路4を通じて供給する熱風量と、第2通路5を通じて排出させる風量、さらに、補助空気導入手段17により導入される外気(冷風)量とのバランスを制御することで、応答性のよい熱風の温度制御が可能となり、一旦燃焼を開始すると、安定した燃焼が確保される。つまり、火力が必要なときは、図3に示すような状態とし、焙煎中は、図4に示す状態とされ、火力が不要なときには、図5に示す状態とされる。
【0065】
ところでペレットバーナー2において炉内圧力が正圧になると、燃料供給部へ熱が逆流する一方、炉内圧力を負圧にしすぎると、空気の供給過多となり、炉内が冷やされ、燃焼の妨げとなるので、その点は考慮される。なお、さらに細かい制御ができるように、第2通路5に加えて、開閉ダンパ41,42を有する通路43(循環通路)を設けることも可能である。なお、万一ペレットバーナー2が使用できない状態となった場合、ガスバーナー18のみで焙煎することも可能であり、その場合は開閉ダンパ41、42、通路43(循環通路)を用いて焙煎を行う。
【0066】
燃焼の応答性はペレット供給量の制御による影響が大きく、温度に反映されるには数分のタイムラグが発生するので、熱風をロースター3に全て導入するか、第2通路5を通じて一部を排気するかのバランス制御を行うことで、タイムラグの影響を最小限にすることができる。
【0067】
焙煎終了後には、前蓋24が開放され(図6参照)、回転シリンダ20の端部の保持枠20aがアクチュエータによって動かされて、ロースター3の隣の冷却槽28の上部に焙煎後のコーヒー豆が移動せしめられる(図7参照)。このとき、導入ファン29を有する第4通路30を通じて外気(屋内エア)が導入されて冷却される(図8参照)。
【0068】
この冷却後のエアは、開閉ダンパ31、排気ファン32及びサイクロン33を有する第5通路34を通じて排気される。この冷却開始から例えば60秒の間に原材料となるコーヒー豆(生豆)が投入され、冷却開始60秒以降には次の焙煎が開始される。なお、この60秒の時間は一例であり、これに限られない。また、原料供給や炉体19内の温度等により投入条件を満たさない場合は待機となる。
【0069】
冷却後、冷却槽28において、吸上用ダンパ35が開放され(図9参照)、吸上通路36を通じて貯留タンク37に冷却終了後の焙煎コーヒー豆が運ばれ、貯留される。貯留タンク37には、製品排出ダンパ37a、レベル計37bが設けられている。そして、吸上空気は、アクチュエータによって開閉される開閉ダンパ38を有する第6通路39を通じて、第5通路34の排気ファン32の下流側部分に排出される。
【0070】
そして、ペレットバーナー2からの熱風を、ロースター3へそのまま導入するか第2通路5により一部排気するかという風量制御(開閉ダンパ6の開閉制御)に加えて、補助空気導入手段17による外気(冷風)の導入風量を制御することで,従来のガスバーナーの火力制御で制御する以上に、応答性に優れる温度制御が実現される。
【0071】
また、従来の一般的な焙煎機に用いられるガスバーナーと補助送風機との構成では、ロースターへ供給する熱風を一気に下げたい場合、バーナー出力を最弱として送風量を上げるか、または、バーナーを失火させて送風のみにするという方法をとられていた。しかし、前者ではバーナーのターンダウン比の限界以下に絞ることができずに冷えた風のみを送ることができず、後者ではバーナー再点火に時間を要するため適用するタイミングが難しかった。一方、本実施形態の焙煎システムは、熱風の遮断を開閉器(開閉ダンパ)が担い、送風は送風機が担うため、上記した従来の問題を解決することができ、これにより深煎りの焙煎を行う場合も安全性が向上する。
【0072】
また、熱風の一部を排気させる第2通路5には排気ファン8が配されているので、熱風の一部排気がスムーズに行われ、ペレットバーナー2での安定燃焼を損なうこともない。
【0073】
ペレットバーナー2より供給される過剰な熱風を、第2通路5を通じて排気するようにしているので、その後の消煙設備10へ高温のまま排気することが可能となるため、消煙設備10の燃費を抑えることもできる。
【0074】
そして、ペレットバーナー2より供給される過剰な熱風が第2通路5を通じて排気すると併せて、ロースター3の排気も第3通路7を介して第2通路5を通じて排気する構成としているので、ロースター3の排気による通路内に付着するコーヒーの油分を含んだ汚れを、ペレットバーナー2よりの熱風により焼いて除去する、いわゆるサーマルクリーニングの効果も得られる。また、これによりダクト内火災のリスクを取り除く。
【0075】
続いて、ロースター3の炉温の基本制御と排気バイパスダンパ21の基本制御とについて、次に説明する。
【0076】
(ロースター3の炉温の基本制御)
ペレットバーナー2の炉温設定値は、ロースター3側の操作盤で設定される。
そして、炉温設定値である設定温度まで温度上昇後は、ペレットバーナー2により生成された一定量の熱風が第1通路4に供給され、開閉ダンパ6と12との制御により適切な風量に分配された熱風が、ロースター3の炉内に供給される。その際、その熱風が補助空気導入手段17より導入される空気と混ぜ合わされ、熱風の温度が適正温度に制御される。
【0077】
補助空気導入手段17よりの導入量は前記設定温度を目標に、補助空気導入手段17の開閉ダンパ17aの開度がPID制御され、炉温の温度制御がなされる。
【0078】
そして、図10に示すように、操作電源がONされ(ステップS1)、スタートする。そして、ロースターボタンがONされ(ステップS2)、予熱ボタンがONされ(ステップS3)、補助熱風生成手段(ガスバーナー18)が点火され(ステップS4)、予熱完了条件がOKかどうかを確認し(ステップS5)、ガスバーナー待機設定に移行する(ステップS6)。
【0079】
一方、ロースターボタンがONされると、コーヒー燃料バーナー(ペレットバーナー2)自動接続かどうかを選択し(ステップS7)、ONの場合はコーヒー燃料バーナー炉内温度設定以上とし(ステップS8)、OFFの場合はバーナー接続ボタンを長押しし(ステップS9)、コーヒー燃料バーナー接続指令を出す(ステップS10)。
【0080】
それから、補助熱風生成手段(ガスバーナー18)が消火され(ステップS11)、バーナー吸気ダンパ(開閉弁18a)が閉とされる(ステップS12)。一方、バーナーダンパ(開閉ダンパ12)は開とされ(ステップS13)、連続運転ボタンがONされ(ステップS14)、準備完了となる(ステップS15)。
【0081】
(排気バイパスダンパ21の基本制御)
ロースター3の炉温制御に加え、ロースター3の状態によって排気バイパスダンパ21は開閉制御される。つまり、(i)投入待機時には閉、(ii)原料投入時には開、(iii)仕上り3℃前には開,(iv)水噴射時には開、(v)前蓋開時には閉、(vi)アフターパージには閉とされるが、他の開閉ダンパと同様に、アクチュエータの制御によって開閉駆動される。
【0082】
そして、図11に示すように、準備完了がONでスタートし(ステップS21)、生豆供給完了かどうか判断され(ステップS22)、ONであれば、昇温が開始され(ステップS23)、OFFであれば、投入待機状態とされる(ステップS24)。このとき、排気バイパスダンパ21は閉である。
【0083】
昇温が開始されると、設定炉温を昇温設定値に変更し(ステップS25)、投入温度適温とされ(ステップS26)、投入開始(焙煎開始)となる(ステップS27)。ここで、排気バイパスダンパ21が開、排気ダンパ23が閉とされる。
【0084】
原料ホッパーダンパ26が開とされ(ステップS28)、原料ホッパーレベル計25bがOFFとされ(ステップS29)、原料ホッパーダンパ26が閉とされる(ステップS30)。ここで、排気バイパスダンパ21が閉、排気ダンパ23が開とされる。なお、焙煎中は、基本動作にて、炉温制御されている。
【0085】
仕上がりマイナス3℃達温(仕上がり温度-3℃達成)で(ステップS31)、排気バイパスダンパ21が開となり、続いて仕上がり温度達温となるかあるいは排出ボタンONとされる(ステップS32)。
【0086】
排気バイパスダンパ21が開で、水供給手段27による水噴射が開始され(ステップS33)、水噴射量がOKとなると(ステップS34)、水噴射後待ち時間がアップされ(ステップS35)、排気バイパスダンパ21が開で、前蓋24が開で、焙煎した豆の排出が開始される(ステップS36)。前蓋24の開時間がアップされ(ステップS37)、排気バイパスダンパ21が閉で(ステップS38)、前蓋24が閉じられる。
【0087】
焙煎サイクル停止か否かが判断され(ステップS39)、ONであれば、冷却・吸上げ工程終了し(ステップS40)、自動運転終了し(ステップS41)、排気バイパスダンパ21が閉でアフターパージが開始される(ステップS42)一方、OFFであれば、サイクルを停止することなく、準備完了ONのスタート(ステップS21)に戻る。
【0088】
なお、ペレットバーナー2は、バイオペレットの燃焼開始から焙煎終了まで停止させず運転し、常に炉内が負圧になるよう制御する。また、焙煎終了後に、ペレットバーナー2を停止する際は、バイオペレットの燃焼が収まるまで、炉内を負圧に保つため、第2通路5の開閉ダンパ6を開にするなどして、熱風が排気されるようにしておく。
【0089】
また、ペレットバーナー2の燃焼停止には数日単位の時間を要することも考えられ、その場合、開閉ダンパ6及び12を閉として、補助空気導入手段17から冷たい外気を取り入れて、ロースター3を先に冷却することができる。
【0090】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。
【0091】
・開閉ダンパ6の開閉制御や補助空気導入手段17の外気導入量の制御はマニュアル操作によってアクチュエータを駆動することによりできるが、ロースター3に炉内温度を検出する温度センサを設け、前記温度センサからの信号を受け、ロースター3側の操作盤で設定される設定温度との温度差に応じて、開閉ダンパ6の開閉制御や補助空気導入手段17の外気導入量の制御を行うこともできる。
【0092】
・ペレットバーナー2からの飛灰の影響を回避するために、ペレットバーナー2の下流にサイクロンを設けることが可能である。
【0093】
・第2通路5又は第3通路7の途中に、熱交換器を設け、排熱を有効利用することも可能である。
【0094】
・ロースター3において、燃費向上のために、排気する熱風の一部を循環させて使用することが可能である。
【0095】
・固体バイオ燃料を燃焼して熱風を生成する熱風生成手段をペレットバーナー2にかえて、電気ヒータを具備する電気炉とすることも可能である。電気ヒータは、前記した固体バイオ燃料を用いたペレットバーナーと同様、ガスやオイルと違い、熱量のコントロールにおいて応答性が大変緩慢であり、細かいコントロールが苦手であるが、上記した焙煎システム1の構成により、電気ヒータを用いた場合にも、応答性に優れた温度制御が可能となる。
【符号の説明】
【0096】
1 焙煎システム
2 ペレットバーナー
2A 炉体
3 ロースター
4 第1通路
5 第2通路
6 開閉ダンパ
7 第3通路
8 排気ファン
9 サイクロン
10 消煙設備
11 通路
11a 開閉ダンパ
12 開閉ダンパ
13 排気ファン
14 通路
15A,15B 開閉ダンパ
16 熱風導入部
17 補助空気導入手段
18 ガスバーナ(補助熱風生成手段)
20 回転シリンダ
21 排気バイパスダンパ
22 通路
23 排気ダンパ
24 前蓋
25 ホッパ部
26 原料ホッパーダンパ
27 水供給手段
【要約】
【課題】 バイオペレットを用い、安定した燃焼が得られ、目標とする熱風温度に制御できる焙煎システムを提供する。
【解決手段】 ペレットバーナー2でバイオペレットを燃焼して熱風を生成し、その熱風をロースター3に送り、コーヒー豆を焙煎する焙煎システムである。ペレットバーナー2は、炉体2A内でバイオペレットを燃焼させる炉床型である。ペレットバーナー2の炉体2Aからロースター3に熱風を供給する第1通路4と、第1通路4に一端が接続され他端が外部に開放される第2通路5と、第2通路5に設けられる開閉ダンパ6とを備える。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11