(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】半導体装置の作製方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20241212BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20241212BHJP
H01L 21/477 20060101ALI20241212BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20241212BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20241212BHJP
H01L 29/788 20060101ALI20241212BHJP
H01L 29/792 20060101ALI20241212BHJP
H10B 12/00 20230101ALI20241212BHJP
H10B 41/70 20230101ALI20241212BHJP
【FI】
H01L29/78 617V
H01L21/477
H01L27/088 E
H01L27/088 H
H01L29/78 371
H01L29/78 627F
H10B12/00 621C
H10B12/00 621Z
H10B12/00 671C
H10B12/00 671Z
H10B12/00 801
H10B41/70
(21)【出願番号】P 2021519022
(86)(22)【出願日】2020-04-27
(86)【国際出願番号】 IB2020053913
(87)【国際公開番号】W WO2020229915
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-03-21
(31)【優先権主張番号】P 2019089717
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019093481
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】村川 努
(72)【発明者】
【氏名】笹川 慎也
(72)【発明者】
【氏名】山出 直人
(72)【発明者】
【氏名】浜田 崇
(72)【発明者】
【氏名】駒形 大樹
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/025911(WO,A1)
【文献】特開2019-047020(JP,A)
【文献】特開2017-050530(JP,A)
【文献】特開2016-021559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 21/477
H01L 21/8234
H01L 27/088
H01L 29/786
H01L 29/788
H01L 29/792
H10B 12/00
H10B 41/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の絶縁体を成膜し、
前記第1の絶縁体上に、第1の酸化物、第2の酸化物、第1の導電体を順に積層した、島状の積層体を形成し、
前記第1の絶縁体、および前記積層体上に、第2の絶縁体を形成し、
前記第2の絶縁体に、前記積層体を露出する開口部を形成し、
前記第1の導電体の前記開口部内に露出した領域を除去することで、前記第2の酸化物の上面を露出し、かつ前記第2の酸化物上に配置された、第2の導電体、および第3の導電体を形成した後、
洗浄処理を行い、
前記開口部内に露出した、前記第1の酸化物の側面、および前記第2の酸化物の上面及び側面に接して、第1の酸化膜を成膜し、
前記第1の酸化膜を介して、前記第2の酸化物および前記第1の酸化膜の界面近傍に、酸素を添加する処理を行った後、加熱処理を行い、
前記第1の酸化膜上に、第1の絶縁膜、および第1の導電膜を成膜した後、化学研磨処理により、
前記第1の導電膜、前記第1の絶縁膜、前記第1の酸化膜、および前記第2の絶縁体の一部を除去することで、前記第2の絶縁体を露出し、かつ、前記第2の絶縁体に設けた開口部内に、第4の導電体、第3の絶縁体、および第3の酸化物を形成する、半導体装置の作製方法。
【請求項2】
第1の絶縁体を成膜し、
前記第1の絶縁体上に、第1の酸化物、第2の酸化物、第1の導電体を順に積層した、島状の積層体を形成し、
前記第1の絶縁体、および前記積層体上に、第2の絶縁体を形成し、
前記第2の絶縁体に、前記積層体を露出する開口部を形成し、
前記第1の導電体の前記開口部内に露出した領域を除去することで、前記第2の酸化物の上面を露出し、かつ前記第2の酸化物上に配置された、第2の導電体、および第3の導電体を形成した後、
洗浄処理を行い、
前記開口部内に露出した、前記第1の酸化物の側面、および前記第2の酸化物の上面及び側面に接して、第1の酸化膜を成膜し、
前記第1の酸化膜を介して、前記第2の酸化物および前記第1の酸化膜の界面近傍に、酸素を添加する処理を行った後、加熱処理を行い、
前記第1の酸化膜上に、第1の絶縁膜、および第1の導電膜を成膜した後、化学研磨処理により、
前記第1の導電膜、前記第1の絶縁膜、前記第1の酸化膜、および前記第2の絶縁体の一部を除去することで、前記第2の絶縁体を露出し、かつ、前記第2の絶縁体に設けた開口部内に、第4の導電体、第3の絶縁体、および第3の酸化物を形成し、
前記第1の酸化物がインジウム酸化物である、半導体装置の作製方法。
【請求項3】
請求項1
または請求項2において、
前記酸素
を添加
する処理は、イオン注入法を用いる半導体装置の作製方法。
【請求項4】
請求項
3において、
前記イオン注入法において、第2の酸化物の短辺方向において、酸素イオンが、第2の酸化物の上面に対する接線に対し、角度θ(45°<θ<135°)にて入射する、半導体装置の作製方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項
4のいずれか一において、
前記加熱処理は、350℃以上400℃以下で行う、半導体装置の作製方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項
5のいずれか一において、
前記加熱処理は、酸化性ガスが1%以上、もしくは10%以上含む雰囲気で行う、半導体装置の作製方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項
6のいずれか一において、
前記第1の酸化物、および前記第3の酸化物は、前記第2の酸化物よりも、酸素の拡散を抑制する、半導体装置の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、トランジスタ、半導体装置、および電子機器に関する。また、本発明の一態様は、半導体装置の作製方法に関する。また、本発明の一態様は、半導体ウエハ、およびモジュールに関する。
【0002】
なお、本明細書等において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能し得る装置全般を指す。トランジスタなどの半導体素子をはじめ、半導体回路、演算装置、記憶装置は、半導体装置の一態様である。表示装置(液晶表示装置、発光表示装置など)、投影装置、照明装置、電気光学装置、蓄電装置、記憶装置、半導体回路、撮像装置、電子機器などは、半導体装置を有すると言える場合がある。
【0003】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の一態様は、物、方法、または、製造方法に関するものである。また、本発明の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関するものである。
【背景技術】
【0004】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を用いてトランジスタを構成する技術が注目されている。当該トランジスタは集積回路(IC)や画像表示装置(単に表示装置とも表記する。)のような電子デバイスに広く応用されている。トランジスタに適用可能な半導体薄膜としてシリコン系半導体材料が広く知られているが、その他の材料として酸化物半導体が注目されている。
【0005】
酸化物半導体において、単結晶でも非晶質でもない、CAAC(c-axis aligned crystalline)構造およびnc(nanocrystalline)構造が見出されている(非特許文献1及び非特許文献2参照)。
【0006】
非特許文献1および非特許文献2では、CAAC構造を有する酸化物半導体を用いてトランジスタを作製する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】S.Yamazaki et al.,“SID Symposium Digest of Technical Papers”,2012,volume 43,issue 1,p.183-186
【文献】S.Yamazaki et al.,“Japanese Journal of Applied Physics”,2014,volume 53,Number 4S,p.04ED18-1-04ED18-10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一態様は、トランジスタ特性のばらつきが少ない半導体装置を提供することを課題の一とする。また、本発明の一態様は、信頼性が良好な半導体装置を提供することを課題の一つとする。また、本発明の一態様は、良好な電気特性を有する半導体装置を提供することを課題の一つとする。また、本発明の一態様は、オン電流が大きい半導体装置を提供することを課題の一つとする。また、本発明の一態様は、微細化または高集積化が可能な半導体装置を提供することを課題の一つとする。また、本発明の一態様は、低消費電力の半導体装置を提供することを課題の一つとする。
【0009】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、第1の絶縁体を成膜し、第1の絶縁体上に、第1の酸化物、第2の酸化物、第1の導電体を順に積層した、島状の積層体を形成し、第1の絶縁体、および積層体上に、第2の絶縁体を形成し、第2の絶縁体に、積層体を露出する開口部を形成し、第1の導電体の開口部内に露出した領域を除去することで、第2の酸化物の上面を露出し、かつ第2の酸化物上に配置された、第2の導電体、および第3の導電体を形成した後、洗浄処理を行い、開口部内に露出した、第1の酸化物の側面、および第2の酸化物の上面及び側面に接して、第1の酸化膜を成膜し、第1の酸化膜を介して、第2の酸化物および第1の酸化膜の界面近傍に、酸素を添加する処理を行った後、加熱処理を行い、第1の酸化膜上に、第1の絶縁膜、および第1の導電膜を成膜した後、化学研磨処理により、第1の導電膜、第1の絶縁膜、第1の酸化膜、および第2の絶縁体の一部を除去することで、第2の絶縁体を露出し、かつ、第2の絶縁体に設けた開口部内に、第4の導電体、第3の絶縁体、および第3の酸化物を形成する。
【0011】
本発明の一態様は、第1の絶縁体を成膜し、第1の絶縁体上に、第1の酸化物、第2の酸化物、第1の導電体を順に積層した、島状の積層体を形成し、第1の絶縁体、および積層体上に、第2の絶縁体を形成し、第2の絶縁体に、積層体を露出する開口部を形成し、第1の導電体の開口部内に露出した領域を除去することで、第2の酸化物の上面を露出し、かつ第2の酸化物上に配置された、第2の導電体、および第3の導電体を形成した後、洗浄処理を行い、開口部内に露出した、第1の酸化物の側面、および第2の酸化物の上面及び側面に接して、第1の酸化膜を成膜し、第1の酸化膜を介して、第2の酸化物および第1の酸化膜の界面近傍に、酸素を添加する処理を行い、第1の酸化膜上に、第2の酸化膜を成膜し、加熱処理を行い、第2の酸化膜上に、第1の絶縁膜、および第1の導電膜を成膜した後、化学研磨処理により、第1の導電膜、第2の酸化膜、第1の絶縁膜、第1の酸化膜、および第2の絶縁体の一部を除去することで、第2の絶縁体を露出し、かつ、第2の絶縁体に設けた開口部内に、第4の導電体、第3の絶縁体、第3の酸化物、および第4の酸化物を形成する。
【0012】
上記において、酸素添加処理は、イオン注入法を用いることが好ましい。
【0013】
上記において、請求項1または請求項2において、イオン注入法において、第2の酸化物の短辺方向において、酸素イオンが、第2の酸化物の上面に対する接線に対し、角度θ(45°<θ<135°)にて入射することが好ましい。
【0014】
上記において、加熱処理は、350℃以上400℃以下で行うことが好ましい。
【0015】
上記において、加熱処理は、酸化性ガスを1%以上、もしくは10%以上含む雰囲気で行うことが好ましい。
【0016】
上記において、第1の酸化物、および第3の酸化物は、第2の酸化物よりも、酸素の拡散を抑制することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様により、トランジスタ特性のばらつきが少ない半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、信頼性が良好な半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、良好な電気特性を有する半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、オン電流が大きい半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、微細化または高集積化が可能な半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、低消費電力の半導体装置を提供することができる。
【0018】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1Aは本発明の一態様である半導体装置の上面図である。
図1Bおよび
図1Cは本発明の一態様である半導体装置の断面図である。
図2Aは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す上面図である。
図2Bおよび
図2Cは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図3Aは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す上面図である。
図3Bおよび
図3Cは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図4Aは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す上面図である。
図4Bおよび
図4Cは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図5Aは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す上面図である。
図5Bおよび
図5Cは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図6Aは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す上面図である。
図6Bおよび
図6Cは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図7Aは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す上面図である。
図7Bおよび
図7Cは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図8Aは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す上面図である。
図8Bおよび
図8Cは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図9Aは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す上面図である。
図9Bおよび
図9Cは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図10Aは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す上面図である。
図10Bおよび
図10Cは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図11Aは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す上面図である。
図11Bおよび
図11Cは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図12A、
図12Bおよび
図12Cは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図13Aは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す上面図である。
図13Bおよび
図13Cは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図14AはIGZOの結晶構造の分類を説明する図である。
図14Bは石英ガラスのXRDスペクトルを説明する図である。
図14Cは結晶性IGZOのXRDスペクトルを説明する図である。
図14Dは結晶性IGZOの極微電子線回折パターンを説明する図である。
図15Aは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す上面図である。
図15Bおよび
図15Cは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図16Aおよび
図16Bは本発明の一態様に係る半導体装置の断面図である。
図17Aは本発明の一態様である半導体装置の上面図である。
図17Bおよび
図17Cは本発明の一態様である半導体装置の断面図である。
図18Aは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す上面図である。
図18Bおよび
図18Cは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図19Aは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す上面図である。
図19Bおよび
図19Cは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図20Aは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す上面図である。
図20Bおよび
図20Cは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図21Aは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す上面図である。
図21Bおよび
図21Cは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図22Aは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す上面図である。
図22Bおよび
図22Cは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図23Aは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す上面図である。
図23Bおよび
図23Cは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図24Aは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す上面図である。
図24Bおよび
図24Cは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図25Aは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す上面図である。
図25Bおよび
図25Cは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図26A、
図26Bおよび
図26Cは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図27Aは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す上面図である。
図27Bおよび
図27Cは本発明の一態様である半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図28Aおよび
図28Bは本発明の一態様に係る半導体装置の断面図である。
図29は本発明の一態様に係る記憶装置の構成を示す断面図である。
図30は本発明の一態様に係る記憶装置の構成を示す断面図である。
図31は本発明の一態様に係る記憶装置の構成を示す断面図である。
図32は本発明の一態様に係る記憶装置の構成を示す断面図である。
図33は、本発明の一態様の半導体装置を作製するための装置を説明する上面図である。
図34Aおよび
図34Bは本発明の一態様に係る記憶装置の構成例を示すブロック図、および斜視図である。
図35A乃至
図35Hは本発明の一態様に係る記憶装置の構成例を示す回路図である。
図36は各種の記憶装置を階層ごとに示す図である。
図37Aおよび
図37Bは本発明の一態様に係る半導体装置の模式図である。
図38Aおよび
図38Bは電子部品の一例を説明する図である。
図39A乃至
図39Eは本発明の一態様に係る記憶装置の模式図である。
図40A乃至
図40Hは本発明の一態様に係る電子機器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。ただし、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0021】
また、図面において、大きさ、層の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお、図面は、本発明の一態様を模式的に示したものであり、図面に示す形状または値などに限定されない。例えば、実際の製造工程において、エッチングなどの処理により層やレジストマスクなどが意図せずに目減りすることがあるが、理解を容易とするため、図に反映しないことがある。また、図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、同様の機能を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0022】
また、特に上面図(「平面図」ともいう。)や斜視図などにおいて、発明の理解を容易とするため、一部の構成要素の記載を省略する場合がある。また、一部の隠れ線などの記載を省略する場合がある。
【0023】
また、本明細書等において、第1、第2等として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順または積層順を示すものではない。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」または「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。また、本明細書等に記載されている序数詞と、本発明の一態様を特定するために用いられる序数詞は一致しない場合がある。
【0024】
また、本明細書等において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成同士の位置関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている。また、構成同士の位置関係は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。したがって、明細書で説明した語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0025】
例えば、本明細書等において、XとYとが接続されている、と明示的に記載されている場合は、XとYとが電気的に接続されている場合と、XとYとが機能的に接続されている場合と、XとYとが直接的に接続されている場合とが、本明細書等に開示されているものとする。したがって、所定の接続関係、例えば、図または文章に示された接続関係に限定されず、図または文章に示された接続関係以外のものも、図または文章に開示されているものとする。ここで、X、Yは、対象物(例えば、装置、素子、回路、配線、電極、端子、導電膜、層、など)であるとする。
【0026】
また、本明細書等において、トランジスタとは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含む少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ドレイン(ドレイン端子、ドレイン領域またはドレイン電極)とソース(ソース端子、ソース領域またはソース電極)の間にチャネルが形成される領域(以下、チャネル形成領域ともいう。)を有しており、チャネル形成領域を介して、ソースとドレインとの間に電流を流すことができるものである。なお、本明細書等において、チャネル形成領域とは、電流が主として流れる領域をいう。
【0027】
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書等においては、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができる場合がある。
【0028】
なお、チャネル長とは、例えば、トランジスタの上面図において、半導体(またはトランジスタがオン状態のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲート電極とが互いに重なる領域、またはチャネル形成領域における、ソース(ソース領域またはソース電極)とドレイン(ドレイン領域またはドレイン電極)との間の距離をいう。なお、一つのトランジスタにおいて、チャネル長が全ての領域で同じ値をとるとは限らない。すなわち、一つのトランジスタのチャネル長は、一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明細書では、チャネル長は、チャネル形成領域における、いずれか一の値、最大値、最小値または平均値とする。
【0029】
チャネル幅とは、例えば、トランジスタの上面図において、半導体(またはトランジスタがオン状態のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲート電極とが互いに重なる領域、またはチャネル形成領域における、チャネル長方向を基準として垂直方向のチャネル形成領域の長さをいう。なお、一つのトランジスタにおいて、チャネル幅がすべての領域で同じ値をとるとは限らない。すなわち、一つのトランジスタのチャネル幅は、一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明細書では、チャネル幅は、チャネル形成領域における、いずれか一の値、最大値、最小値または平均値とする。
【0030】
なお、本明細書等において、トランジスタの構造によっては、実際にチャネルの形成される領域におけるチャネル幅(以下、「実効的なチャネル幅」ともいう。)と、トランジスタの上面図において示されるチャネル幅(以下、「見かけ上のチャネル幅」ともいう。)と、が異なる場合がある。例えば、ゲート電極が半導体の側面を覆う場合、実効的なチャネル幅が、見かけ上のチャネル幅よりも大きくなり、その影響が無視できなくなる場合がある。例えば、微細かつゲート電極が半導体の側面を覆うトランジスタでは、半導体の側面に形成されるチャネル形成領域の割合が大きくなる場合がある。その場合は、見かけ上のチャネル幅よりも、実効的なチャネル幅の方が大きくなる。
【0031】
このような場合、実効的なチャネル幅の、実測による見積もりが困難となる場合がある。例えば、設計値から実効的なチャネル幅を見積もるためには、半導体の形状が既知という仮定が必要である。したがって、半導体の形状が正確にわからない場合には、実効的なチャネル幅を正確に測定することは困難である。
【0032】
本明細書では、単にチャネル幅と記載した場合には、見かけ上のチャネル幅を指す場合がある。または、本明細書では、単にチャネル幅と記載した場合には、実効的なチャネル幅を指す場合がある。なお、チャネル長、チャネル幅、実効的なチャネル幅、見かけ上のチャネル幅などは、断面TEM像などを解析することなどによって、値を決定することができる。
【0033】
なお、半導体の不純物とは、例えば、半導体を構成する主成分以外をいう。例えば、濃度が0.1原子%未満の元素は不純物と言える。不純物が含まれることにより、例えば、半導体の欠陥準位密度が高くなることや、結晶性が低下することなどが起こる場合がある。半導体が酸化物半導体である場合、半導体の特性を変化させる不純物としては、例えば、第1族元素、第2族元素、第13族元素、第14族元素、第15族元素、酸化物半導体の主成分以外の遷移金属などがあり、例えば、水素、リチウム、ナトリウム、シリコン、ホウ素、リン、炭素、窒素などがある。なお、水も不純物として機能する場合がある。また、例えば不純物の混入によって、酸化物半導体に酸素欠損(VO:oxygen vacancyともいう)が形成される場合がある。
【0034】
なお、本明細書等において、酸化窒化シリコンとは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多いものである。また、窒化酸化シリコンとは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多いものである。
【0035】
また、本明細書等において、「絶縁体」という用語を、絶縁膜または絶縁層と言い換えることができる。また、「導電体」という用語を、導電膜または導電層と言い換えることができる。また、「半導体」という用語を、半導体膜または半導体層と言い換えることができる。
【0036】
また、本明細書等において、「平行」とは、二つの直線が-10度以上10度以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、-5度以上5度以下の場合も含まれる。また、「概略平行」とは、二つの直線が-30度以上30度以下の角度で配置されている状態をいう。また、「垂直」とは、二つの直線が80度以上100度以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85度以上95度以下の場合も含まれる。また、「概略垂直」とは、二つの直線が60度以上120度以下の角度で配置されている状態をいう。
【0037】
本明細書等において、金属酸化物(metal oxide)とは、広い意味での金属の酸化物である。金属酸化物は、酸化物絶縁体、酸化物導電体(透明酸化物導電体を含む。)、酸化物半導体(Oxide Semiconductorまたは単にOSともいう。)などに分類される。例えば、トランジスタの半導体層に金属酸化物を用いた場合、当該金属酸化物を酸化物半導体と呼称する場合がある。つまり、OSトランジスタと記載する場合においては、金属酸化物または酸化物半導体を有するトランジスタと換言することができる。
【0038】
また、本明細書等において、ノーマリーオフとは、ゲートに電位を印加しない、またはゲートに接地電位を与えたときに、トランジスタに流れるチャネル幅1μmあたりのドレイン電流が、室温において1×10-20A以下、85℃において1×10-18A以下、または125℃において1×10-16A以下であることをいう。
【0039】
(実施の形態1)
本実施の形態では、
図1乃至
図12を用いて、本発明の一態様に係るトランジスタ200を有する半導体装置の一例、およびその作製方法について説明する。
【0040】
<半導体装置の構成例1>
図1を用いて、トランジスタ200を有する半導体装置の構成を説明する。
図1A乃至
図1Cは、トランジスタ200を有する半導体装置の上面図および断面図である。
図1Aは、当該半導体装置の上面図である。また、
図1B乃至
図1Cは、当該半導体装置の断面図である。ここで、
図1Bは、
図1AにA1-A2の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200のチャネル長方向の断面図でもある。また、
図1Cは、
図1AにA3-A4の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200のチャネル幅方向の断面図でもある。なお、
図1Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いている。
【0041】
本発明の一態様の半導体装置は、基板(図示せず)上の絶縁体212と、絶縁体212上の絶縁体214と、絶縁体214上のトランジスタ200と、トランジスタ200上の絶縁体280と、絶縁体280上の絶縁体282と、絶縁体282上の絶縁体283と、を有する。絶縁体212、絶縁体214、絶縁体280、絶縁体282、および絶縁体283は層間膜として機能する。
【0042】
また、トランジスタ200と電気的に接続し、プラグとして機能する導電体246(導電体246a、および導電体246b)を有する。なお、プラグとして機能する導電体246の側面に接して絶縁体276(絶縁体276a、および絶縁体276b)が設けられる。また、絶縁体283上、および導電体246上には、導電体246と電気的に接続し、配線として機能する導電体248(導電体248a、および導電体248b)が設けられる。また、導電体248上、および絶縁体283上には、絶縁体286が設けられる。
【0043】
具体的には、絶縁体280、絶縁体282、および絶縁体283の開口の内壁に接して絶縁体276aが設けられ、絶縁体276aの側面に接して導電体246aの第1の導電体が設けられ、さらに内側に導電体246aの第2の導電体が設けられている。また、絶縁体280、絶縁体282、および絶縁体283の開口の内壁に接して絶縁体276bが設けられ、絶縁体276bの側面に接して導電体246bの第1の導電体が設けられ、さらに内側に導電体246bの第2の導電体が設けられている。
【0044】
ここで、
図1Bに示すように導電体246の上面の高さと、導電体248と重なる領域の、絶縁体283の上面の高さと、は同程度にできる。なお、トランジスタ200では、導電体246の第1の導電体および導電体246の第2の導電体を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体246を単層、または3層以上の積層構造として設ける構成にしてもよい。構造体が積層構造を有する場合、形成順に序数を付与し、区別する場合がある。
【0045】
[トランジスタ200]
図1A乃至
図1Cに示すように、トランジスタ200は、絶縁体214上の絶縁体216と、絶縁体216に埋め込まれるように配置された導電体205(導電体205a、および導電体205b)と、絶縁体216上、および導電体205上の絶縁体222と、絶縁体222上の絶縁体224と、絶縁体224上の酸化物230aと、酸化物230a上の酸化物230bと、酸化物230b上の、酸化物241(酸化物241a、および酸化物241b)および酸化物230cと、酸化物241a上の導電体240aと、導電体240a上の絶縁体271aと、酸化物241b上の導電体240bと、導電体240b上の絶縁体271bと、酸化物230c上の絶縁体250と、絶縁体250上に位置し、酸化物230cの一部と重なる導電体260(導電体260a、および導電体260b)と、を有する。また、酸化物230cは、酸化物241aの側面、酸化物241bの側面、導電体240aの側面、および導電体240bの側面、絶縁体271aの側面、および絶縁体271bの側面とそれぞれ接する。
【0046】
ここで、
図1Bおよび
図1Cに示すように、導電体260の上面は、絶縁体250の上面、および酸化物230cの上面と概略一致して配置される。また、絶縁体282は、導電体260、絶縁体250、酸化物230c、および絶縁体280のそれぞれの上面と接する。
【0047】
なお、以下において、絶縁体271aと絶縁体271bをまとめて絶縁体271と呼ぶ場合がある。
【0048】
絶縁体280には、酸化物230bに達する開口が設けられる。当該開口内に、酸化物230c、絶縁体250、および導電体260が配置されている。また、トランジスタ200のチャネル長方向において、導電体240aおよび酸化物241aと、導電体240bおよび酸化物241bと、の間に導電体260、絶縁体250および酸化物230cが設けられている。絶縁体250は、導電体260の側面と接する領域と、導電体260の底面と接する領域と、を有する。また、酸化物230bと重なる領域において、酸化物230cは、酸化物230bと接する領域と、絶縁体250を介して導電体260の側面と重なる領域と、絶縁体250を介して導電体260の底面と重なる領域と、を有する。
【0049】
酸化物230は、絶縁体224の上に配置された酸化物230aと、酸化物230aの上に配置された酸化物230bと、酸化物230bの上に配置され、少なくとも一部が酸化物230bに接する酸化物230cと、を有することが好ましい。
【0050】
なお、トランジスタ200は、チャネル形成領域を含む酸化物230(酸化物230a、酸化物230b、および酸化物230c)に、半導体として機能する金属酸化物(以下、酸化物半導体ともいう。)を用いることが好ましい。
【0051】
チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたトランジスタは、非導通状態において極めてリーク電流が小さいため、低消費電力の半導体装置を提供できる。一方、酸化物半導体を用いたトランジスタは、酸化物半導体中の不純物及び酸素欠損によって、その電気特性が変動し、ノーマリーオン特性(ゲート電極に電圧を印加しなくてもチャネルが存在し、トランジスタに電流が流れる特性)となりやすい。
【0052】
従って、トランジスタのチャネル形成領域に用いる酸化物半導体は、不純物および酸素欠損が低減された高純度真性な酸化物半導体を用いることが好ましい。なお、本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性という。
【0053】
しかしながら、酸化物半導体を用いたトランジスタにおいて、トランジスタを構成する導電体、またはトランジスタと接続するプラグや配線に用いられる導電体に、酸化物半導体の酸素が徐々に吸収され、継時的変化の一つとして、酸素欠損を生じる場合がある。
【0054】
そこで、酸化物230bを実質的に高純度真性とした後、酸化物230bのチャネルが形成される領域を、酸化物230bよりも、酸素の拡散を抑制する酸化物230a、および酸化物230cにより、覆うことが好ましい。
【0055】
具体的には、図に示すように、酸化物230bの下に、酸化物230aを配置することで、酸化物230bから、酸素が引き抜かれることを抑制することができる。また、酸化物230aよりも下方に形成された構造物からの、酸化物230bに対する酸素および不純物の拡散を抑制することができる。
【0056】
また、酸化物230bの上に、酸化物230cを配置することで、酸化物230bから、酸素が引き抜かれることを抑制することができる。また、酸化物230cよりも上方に形成された構造物からの、酸化物230bに対する不純物の拡散を抑制することができる。
【0057】
なお、半導体として機能する金属酸化物は、バンドギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。このように、バンドギャップの大きい金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0058】
酸化物230として、例えば、インジウム、元素Mおよび亜鉛を有するIn-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、錫、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。また、酸化物230として、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物、インジウム酸化物を用いてもよい。
【0059】
ここで、酸化物230は、化学組成が異なる複数の酸化物層の積層構造を有することが好ましい。具体的には、酸化物230bに用いる金属酸化物は、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物230a、または酸化物230cに用いる金属酸化物の元素Mに対するInの原子数比よりも、大きいことが好ましい。
【0060】
つまり、酸化物230a、および酸化物230cに用いる金属酸化物において、主成分である他の金属元素に対する元素Mの原子数比が、酸化物230bに用いる金属酸化物における、主成分である金属元素に対する元素Mの原子数比より、大きいことが好ましい。また、酸化物230aに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物230bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物230bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物230a、および酸化物230cに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。
【0061】
酸化物230aおよび酸化物230cが、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする)ことで、酸化物230a、酸化物230b、および酸化物230cのそれぞれの界面における欠陥準位密度を低くすることができる。このとき、キャリアの主たる経路は酸化物230b、またはその近傍、例えば、酸化物230bと酸化物230cとの界面になる。酸化物230bと酸化物230cとの界面における欠陥準位密度を低くすることができるため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さく、高いオン電流が得られる。
【0062】
例えば、酸化物230bとして、具体的には、In:M:Zn=4:2:3[原子数比]もしくはその近傍の組成、In:M:Zn=5:1:3[原子数比]もしくはその近傍の組成、またはIn:M:Zn=10:1:3[原子数比]もしくはその近傍の組成の金属酸化物、インジウム酸化物などを用いるとよい。
【0063】
また、酸化物230bは、結晶性を有することが好ましい。特に、酸化物230bには、CAAC-OS(c-axis aligned crystalline oxide semiconductor)を用いることが好ましい。
【0064】
CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
【0065】
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、および七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することは難しい。すなわち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためである。
【0066】
なお、明確な結晶粒界(グレインバウンダリー)が確認される結晶構造は、いわゆる多結晶(polycrystal)と呼ばれる。結晶粒界は、再結合中心となり、キャリアが捕獲されトランジスタのオン電流の低下、または電界効果移動度の低下を引き起こす可能性が高い。よって、明確な結晶粒界が確認されないCAAC-OSは、トランジスタの半導体層に好適な結晶構造を有する結晶性の酸化物の一つである。なお、CAAC-OSを構成するには、Znを有する構成が好ましい。例えば、In-Zn酸化物、及びIn-Ga-Zn酸化物は、In酸化物よりも結晶粒界の発生を抑制できるため好適である。
【0067】
また、CAAC-OSは、インジウム、および酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、および酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In,M,Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In,M)層と表すこともできる。
【0068】
上記のように、CAAC-OSは、結晶性の高い、緻密な構造を有しており、不純物や欠陥(酸素欠損Voなど)が少ない金属酸化物である。特に、金属酸化物の形成後に、金属酸化物が多結晶化しない程度の温度(例えば、400℃以上600℃以下)で加熱処理することで、CAAC-OSをより結晶性の高い、緻密な構造にすることができる。このようにして、CAAC-OSの密度をより高めることで、当該CAAC-OS中の不純物または酸素の拡散をより低減することができる。
【0069】
一方、CAAC-OSは、明確な結晶粒界を確認することが難しいため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。したがって、CAAC-OSを有する金属酸化物は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する金属酸化物は熱に強く、信頼性が高い。
【0070】
また、酸化物230bのチャネルが形成される領域は、酸化物230bのソース領域、またはドレイン領域として機能する領域よりも、W幅方向の断面積が小さくてもよい。つまり、絶縁体280に開口部を設ける加工工程、または加工工程後の洗浄工程において、開口部の底部に露出した酸化物230bの表面の一部が除去され、酸化物230bに、溝部(以下、ザグリともいう)が形成されていてもよい。
【0071】
また、酸化物230bにおいて、上記溝部に、酸化物230cを埋め込むことが好ましい。このとき、酸化物230cは、当該溝部の内壁(側壁、および底面)を覆うように配置される。また、酸化物230cの膜厚は、当該溝部の深さと同程度としてもよい。
【0072】
上記構成とすることで、導電体260などを埋め込むための開口部を形成する際に、開口の底部にあたる酸化物230bの表面に損傷領域が形成されても、当該損傷領域を補填することができる。これにより、損傷領域に起因するトランジスタ200の電気特性の不良を抑制することができる。
【0073】
なお、
図1Bでは、導電体260等を埋め込む開口の側面が、酸化物230bの溝部も含めて、酸化物230bの被形成面に対して概略垂直となっているが、本実施の形態はこれに限られるものではない。例えば、当該開口の底部が緩やかな曲面を有する、U字型の形状となってもよい。また、例えば、当該開口の側面が酸化物230bの被形成面に対して傾斜していてもよい。
【0074】
また、
図1Cに示すように、トランジスタ200のチャネル幅方向の断面視において、酸化物230bの側面と酸化物230bの上面との間に、湾曲面を有してもよい。つまり、当該側面の端部と当該上面の端部は、湾曲してもよい(以下、ラウンド状ともいう。)。
【0075】
上記湾曲面での曲率半径は、0nmより大きく、導電体240と重なる領域の酸化物230bの膜厚より小さい、または、酸化物230bの上記湾曲面を有さない領域の長さの半分より小さいことが好ましい。上記湾曲面での曲率半径は、具体的には、0nmより大きく20nm以下、好ましくは1nm以上15nm以下、さらに好ましくは2nm以上10nm以下とする。このような形状にすることで、後の工程で形成する絶縁体250および導電体260の、当該溝部への被覆性を高めることができる。また、上記湾曲面を有さない領域の長さの減少を防ぎ、トランジスタ200のオン電流、移動度の低下を抑制することができる。したがって、良好な電気特性を有する半導体装置を提供することができる。
【0076】
導電体260は、第1のゲート(トップゲートともいう。)電極として機能し、導電体205は、第2のゲート(バックゲートともいう。)電極として機能する。また、絶縁体250は、第1のゲート絶縁体として機能し、絶縁体224は、第2のゲート絶縁体として機能する。また、導電体240aは、ソース電極またはドレイン電極の一方として機能し、導電体240bは、ソース電極またはドレイン電極の他方として機能する。また、酸化物230の導電体260と重畳する領域の少なくとも一部はチャネル形成領域として機能する。
【0077】
なお、導電体260、絶縁体250のそれぞれは、隣接するトランジスタ200間で共通して用いられてもよい。つまり、トランジスタ200の導電体260は、当該トランジスタ200に隣接するトランジスタ200の導電体260と連続して設けられた領域を有する。また、トランジスタ200の絶縁体250は、当該トランジスタ200に隣接するトランジスタ200の絶縁体250と連続して設けられた領域を有する。
【0078】
絶縁体212、絶縁体214、絶縁体271、絶縁体282、絶縁体283、および絶縁体286は、水、水素などの不純物が、基板側から、または、トランジスタ200の上方からトランジスタ200に拡散するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。
【0079】
なお、本明細書において、バリア絶縁膜とは、バリア性を有する絶縁膜のことを指す。本明細書において、バリア性とは、対応する物質の拡散を抑制する機能(透過性が低いともいう)とする。または、対応する物質を、捕獲、および固着する(ゲッタリングともいう)機能とする。
【0080】
従って、絶縁体212、絶縁体214、絶縁体271、絶縁体282、絶縁体283、および絶縁体286は、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(N2O、NO、NO2など)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい)絶縁性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)絶縁性材料を用いることが好ましい。
【0081】
例えば、絶縁体212、絶縁体283、および絶縁体286として、窒化シリコンなどを用い、絶縁体214、絶縁体271、および絶縁体282として、酸化アルミニウムなどを用いることが好ましい。これにより、水、水素などの不純物が絶縁体212、および絶縁体214を介して、基板側からトランジスタ200側に拡散するのを抑制することができる。または、絶縁体224などに含まれる酸素が絶縁体212、および絶縁体214を介して基板側に、拡散するのを抑制することができる。また、水、水素などの不純物が、絶縁体280、導電体248などから酸化物230に拡散するのを抑制することができる。この様に、トランジスタ200を、水、水素などの不純物、および酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁体212、絶縁体214、絶縁体271、絶縁体282、および絶縁体283で取り囲む構造とすることが好ましい。
【0082】
また、絶縁体212、絶縁体283、および絶縁体286の抵抗率を低くすることが好ましい場合がある。例えば、絶縁体212、絶縁体283、および絶縁体286の抵抗率を概略1×1013Ωcmとすることで、半導体装置作製工程のプラズマ等を用いる処理において、絶縁体212、絶縁体283、および絶縁体286が、導電体205、導電体240、導電体260、または導電体248のチャージアップを緩和することができる場合がある。絶縁体212、絶縁体283、および絶縁体286の抵抗率は、好ましくは、1×1010Ωcm以上1×1015Ωcm以下とする。
【0083】
また、絶縁体216、および絶縁体280は、絶縁体214よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体216、および絶縁体280として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンなどを適宜用いればよい。
【0084】
なお、絶縁体212、絶縁体214、および絶縁体216は、スパッタリング法を用いて成膜することが好ましい。スパッタリング法によって成膜された絶縁体212、絶縁体214、および絶縁体216は、膜中の水素濃度が低いことが好ましい。また、絶縁体212、絶縁体214、および絶縁体216の成膜は、大気環境に曝さずに連続して成膜することが好ましい。大気環境に曝さずに成膜することで、絶縁体212、絶縁体214、および絶縁体216上に大気環境からの不純物または水分が付着することを防ぐことができ、絶縁体212と絶縁体214との界面および界面近傍、絶縁体214と絶縁体216との界面および界面近傍を清浄に保つことができるので好ましい。
【0085】
導電体205は、第2のゲート電極として機能する場合がある。その場合、導電体205に印加する電位を、導電体260に印加する電位と、連動させず、独立して変化させることで、トランジスタ200のしきい値電圧(Vth)を制御することができる。特に、導電体205に負の電位を印加することにより、トランジスタ200のVthをより大きくし、オフ電流を低減することが可能となる。したがって、導電体205に負の電位を印加したほうが、印加しない場合よりも、導電体260に印加する電位が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
【0086】
導電体205は、酸化物230、および導電体260と、重なるように配置する。また、導電体205は、絶縁体214または絶縁体216に埋め込まれて設けることが好ましい。
【0087】
なお、導電体205は、
図1Aに示すように、酸化物230aおよび酸化物230bの導電体240aおよび導電体240bと重ならない領域の大きさよりも、大きく設けるとよい。特に、
図1Cに示すように、導電体205は、酸化物230aおよび酸化物230bのチャネル幅方向と交わる端部よりも外側の領域においても、延伸していることが好ましい。つまり、酸化物230aおよび酸化物230bのチャネル幅方向における側面の外側において、導電体205と、導電体260とは、絶縁体を介して重畳していることが好ましい。当該構成を有することで、第1のゲート電極として機能する導電体260の電界と、第2のゲート電極として機能する導電体205の電界によって、酸化物230のチャネル形成領域を電気的に取り囲むことができる。本明細書において、第1のゲート、および第2のゲートの電界によって、チャネル形成領域を電気的に取り囲むトランジスタの構造を、surrounded channel(S-channel)構造とよぶ。
【0088】
なお、本明細書等において、S-channel構造のトランジスタとは、一対のゲート電極の一方および他方の電界によって、チャネル形成領域を電気的に取り囲むトランジスタの構造を表す。また、本明細書等で開示するS-channel構造は、Fin型構造およびプレーナ型構造とは異なる。S-channel構造を採用することで、短チャネル効果に対する耐性を高める、別言すると短チャネル効果が発生し難いトランジスタとすることができる。
【0089】
また、
図1Cに示すように、導電体205は延伸させて、配線としても機能させている。ただし、これに限られることなく、導電体205の下に、配線として機能する導電体を設ける構成にしてもよい。また、導電体205は、必ずしも各トランジスタに一個ずつ設ける必要はない。例えば、導電体205を複数のトランジスタで共有する構成にしてもよい。
【0090】
なお、トランジスタ200では、導電体205は、導電体205aと導電体205bとを積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体205は、単層、または3層以上の積層構造として設ける構成にしてもよい。構造体が積層構造を有する場合、形成順に序数を付与し、区別する場合がある。
【0091】
ここで、導電体205aは、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(N2O、NO、NO2など)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。
【0092】
導電体205aに、酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることにより、導電体205bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウム、酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。したがって、導電体205aとしては、上記導電性材料を単層または積層とすればよい。例えば、導電体205aは、タンタル、窒化タンタル、ルテニウム、または酸化ルテニウムと、チタンまたは窒化チタンとの積層としてもよい。
【0093】
また、導電体205bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。なお、導電体205bを単層で図示したが、積層構造としてもよく、例えば、チタンまたは窒化チタンと、当該導電性材料との積層としてもよい。
【0094】
絶縁体222、および絶縁体224は、ゲート絶縁体として機能する。
【0095】
絶縁体222は、水素(例えば、水素原子、水素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。また、絶縁体222は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。例えば、絶縁体222は、絶縁体224よりも水素および酸素の一方または双方の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。
【0096】
絶縁体222は、絶縁性材料であるアルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を用いるとよい。当該絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。このような材料を用いて絶縁体222を形成した場合、絶縁体222は、酸化物230から基板側への酸素の放出や、トランジスタ200の周辺部から酸化物230への水素等の不純物の拡散を抑制する層として機能する。よって、絶縁体222を設けることで、水素等の不純物が、トランジスタ200の内側へ拡散することを抑制し、酸化物230中の酸素欠損の生成を抑制することができる。また、導電体205が、絶縁体224や、酸化物230が有する酸素と反応することを抑制することができる。
【0097】
または、上記絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。または、これらの絶縁体を窒化処理してもよい。また、絶縁体222は、これらの絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを積層して用いてもよい。
【0098】
また、絶縁体222は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、(Ba,Sr)TiO3(BST)などのいわゆるhigh-k材料を含む絶縁体を単層または積層で用いてもよい。トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁体の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁体として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電圧の低減が可能となる。
【0099】
また、絶縁体224は、絶縁体222よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体216、および絶縁体280として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンなどを適宜用いればよい。
【0100】
なお、絶縁体222、および絶縁体224が、2層以上の積層構造を有していてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。
【0101】
酸化物241(酸化物241a、および酸化物241b)を、酸化物230b上に設けてもよい。
【0102】
酸化物241(酸化物241a、および酸化物241b)は、酸素の透過を抑制する機能を有することが好ましい。ソース電極やドレイン電極として機能する導電体240と酸化物230bとの間に酸素の透過を抑制する機能を有する酸化物241を配置することで、導電体240と、酸化物230bとの間の電気抵抗が低減されるため好ましい。このような構成とすることで、トランジスタ200の電気特性およびトランジスタ200の信頼性を向上させることができる。なお、導電体240と酸化物230bの間の電気抵抗を十分低減できる場合、酸化物241を設けない構成にしてもよい。
【0103】
酸化物241として、元素Mを有する金属酸化物を用いてもよい。特に、元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、または錫を用いるとよい。酸化物241は、酸化物230bよりも元素Mの濃度が高いことが好ましい。また、酸化物241として、酸化ガリウムを用いてもよい。また、酸化物241として、In-M-Zn酸化物等の金属酸化物を用いてもよい。具体的には、酸化物241に用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物230bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物241の膜厚は、0.5nm以上5nm以下が好ましく、より好ましくは1nm以上3nm以下、さらに好ましくは1nm以上2nm以下である。また、酸化物241は、結晶性を有すると好ましい。酸化物241が結晶性を有する場合、酸化物230中の酸素の放出を好適に抑制することが出来る。例えば、酸化物241としては、六方晶などの結晶構造であれば、酸化物230中の酸素の放出を抑制できる場合がある。
【0104】
なお、酸化物230aとなる酸化膜、酸化物230bとなる酸化膜、および酸化物241となる酸化膜の成膜は、大気環境にさらさずに連続して成膜することが好ましい。大気開放せずに成膜することで、酸化物230aとなる酸化膜、酸化物230bとなる酸化膜、および酸化物241となる酸化膜上に大気環境からの不純物または水分が付着することを防ぐことができ、酸化物230aとなる酸化膜と酸化物230bとなる酸化膜との界面および界面近傍、酸化物230bとなる酸化膜と酸化物241となる酸化膜との界面および界面近傍を清浄に保つことができるので好ましい。連続成膜することができる装置の説明は後述する。
【0105】
導電体240aは酸化物241a上に設けられ、導電体240bは、酸化物241b上に設けられる。導電体240aおよび導電体240bは、それぞれトランジスタ200のソース電極またはドレイン電極として機能する。
【0106】
導電体240(導電体240a、および導電体240b)としては、例えば、タンタルを含む窒化物、チタンを含む窒化物、モリブデンを含む窒化物、タングステンを含む窒化物、タンタルおよびアルミニウムを含む窒化物、チタンおよびアルミニウムを含む窒化物などを用いることが好ましい。本発明の一態様においては、タンタルを含む窒化物が特に好ましい。また、例えば、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物などを用いてもよい。これらの材料は、酸化しにくい導電性材料、または、酸素を吸収しても導電性を維持する材料であるため、好ましい。
【0107】
なお、酸化物241を設けない場合、導電体240と、酸化物230bまたは酸化物230cとが接することで、酸化物230bまたは酸化物230c中の酸素が導電体240へ拡散し、導電体240が酸化することがある。導電体240が酸化することで、導電体240の導電率が低下する蓋然性が高い。なお、酸化物230bまたは酸化物230c中の酸素が導電体240へ拡散することを、導電体240が酸化物230bまたは酸化物230c中の酸素を吸収する、と言い換えることができる。
【0108】
また、酸化物230bまたは酸化物230c中の酸素が導電体240aおよび導電体240bへ拡散することで、導電体240aと酸化物230bとの間、および、導電体240bと酸化物230bとの間、または、導電体240aと酸化物230cとの間、および、導電体240bと酸化物230cとの間に層が形成される場合がある。当該層は、導電体240aまたは導電体240bよりも酸素を多く含むため、当該層は絶縁性を有すると推定される。このとき、導電体240aまたは導電体240bと、当該層と、酸化物230bまたは酸化物230cとの3層構造は、金属-絶縁体-半導体からなる3層構造とみなすことができ、MIS(Metal-Insulator-Semiconductor)構造、またはMIS構造を主としたダイオード接合構造とみることができる。
【0109】
なお、酸化物230b、酸化物230cなどに含まれる水素が、導電体240aまたは導電体240bに拡散する場合がある。特に、導電体240aおよび導電体240bに、タンタルを含む窒化物を用いることで、酸化物230b、酸化物230cなどに含まれる水素は、導電体240aまたは導電体240bに拡散しやすく、拡散した水素は、導電体240aまたは導電体240bが有する窒素と結合することがある。つまり、酸化物230b、酸化物230cなどに含まれる水素は、導電体240aまたは導電体240bに吸い取られる場合がある。
【0110】
また、導電体240の側面と導電体240の上面との間に、湾曲面を有する場合がある。つまり、側面の端部と上面の端部は、湾曲している場合がある。湾曲面は、例えば、導電体240の端部において、曲率半径が、3nm以上10nm以下、好ましくは、5nm以上6nm以下とする。端部に角を有さないことで、以降の成膜工程における膜の被覆性が向上する。
【0111】
絶縁体271は、導電体240の上面に接して設けられており、少なくとも酸素に対するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。したがって、絶縁体271も、酸素の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。例えば、絶縁体271は、絶縁体280よりも酸素の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。絶縁体271としては、例えば、アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を成膜するとよい。また、絶縁体271としては、例えば、窒化シリコンを含む絶縁体を用いればよい。
【0112】
また、酸化物230a、酸化物230b、酸化物241、導電体240、絶縁体271の側面を覆って、絶縁体を設けてもよい。当該絶縁体は、少なくとも酸素に対するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。つまり、当該絶縁体は、酸素の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。例えば、当該絶縁体は、絶縁体280よりも酸素の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。当該絶縁体としては、例えば、アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を成膜するとよい。
【0113】
特に、絶縁体271は、スパッタリング法によって、酸素を含む雰囲気にて酸化アルミニウム、または酸化ハフニウムを成膜することが好ましい。スパッタリング法は、水素雰囲気を含まないため、不純物となる水素の混入を抑制することができる。
【0114】
絶縁体271を設けることで、酸化物230a、酸化物230b、酸化物241、および導電体240を、絶縁体280から離隔することができる。よって、酸化物230a、酸化物230b、酸化物241、および導電体240に、絶縁体280から酸素が直接拡散するのを抑制することができる。従って、酸化物230のソース領域およびドレイン領域に過剰な酸素が供給されて、ソース領域およびドレイン領域のキャリア密度が低減するのを防ぐことができる。また、導電体240が過剰に酸化されて抵抗率が増大し、オン電流が低減するのを抑制することができる。
【0115】
絶縁体250は、ゲート絶縁体として機能する。絶縁体250は、酸化物230cの上面に接して配置することが好ましい。絶縁体250は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンなどを用いることができる。特に、酸化シリコン、および酸化窒化シリコンは熱に対し安定であるため好ましい。
【0116】
絶縁体250は、絶縁体224と同様に、加熱により酸素が放出される絶縁体を用いて形成することが好ましい。加熱により酸素が放出される絶縁体を、絶縁体250として、酸化物230cの上面に接して設けることにより、酸化物230bのチャネル形成領域に効果的に酸素を供給し、酸化物230bのチャネル形成領域の酸素欠損を低減することができる。したがって、電気特性の変動を抑制し、安定した電気特性を有するとともに、信頼性を向上させたトランジスタを提供することができる。また、絶縁体224と同様に、絶縁体250中の水、水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。絶縁体250の膜厚は、1nm以上20nm以下とするのが好ましい。
【0117】
なお、
図1Bおよび
図1Cでは、絶縁体250を単層で図示したが、2層以上の積層構造としてもよい。絶縁体250を2層の積層構造とする場合、絶縁体250の下層は、加熱により酸素が放出される絶縁体を用いて形成し、絶縁体250の上層は、酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁体を用いて形成することが好ましい。このような構成にすることで、絶縁体250の下層に含まれる酸素が、導電体260へ拡散するのを抑制することができる。つまり、酸化物230へ供給する酸素量の減少を抑制することができる。また、絶縁体250の下層に含まれる酸素による導電体260の酸化を抑制することができる。例えば、絶縁体250の下層は、上述した絶縁体250に用いることができる材料を用いて設け、絶縁体250の上層は、絶縁体222と同様の材料を用いて設けることができる。
【0118】
なお、絶縁体250の下層に酸化シリコンや酸化窒化シリコンなどを用いる場合、絶縁体250の上層は、比誘電率が高いhigh-k材料である絶縁性材料を用いてもよい。ゲート絶縁体を、絶縁体250の下層と絶縁体250の上層との積層構造とすることで、熱に対して安定、かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。したがって、ゲート絶縁体の物理膜厚を保持したまま、トランジスタ動作時に印加するゲート電圧の低減化が可能となる。また、ゲート絶縁体として機能する絶縁体の等価酸化膜厚(EOT)の薄膜化が可能となる。
【0119】
絶縁体250の上層として、具体的には、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、マグネシウムなどから選ばれた一種、もしくは二種以上が含まれた金属酸化物、または酸化物230として用いることができる金属酸化物を用いることができる。特に、アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を用いることが好ましい。
【0120】
また、絶縁体250と導電体260との間に金属酸化物を設けてもよい。当該金属酸化物は、絶縁体250から導電体260への酸素の拡散を抑制することが好ましい。酸素の拡散を抑制する金属酸化物を設けることで、絶縁体250から導電体260への酸素の拡散が抑制される。つまり、酸化物230へ供給する酸素量の減少を抑制することができる。また、絶縁体250の酸素による導電体260の酸化を抑制することができる。
【0121】
なお、上記金属酸化物は、第1のゲート電極の一部としての機能を有することが好ましい。例えば、酸化物230として用いることができる金属酸化物を、上記金属酸化物として用いることができる。その場合、導電体260aをスパッタリング法で成膜することで、上記金属酸化物の電気抵抗値を低下させて導電体とすることができる。これをOC(Oxide Conductor)電極と呼ぶことができる。
【0122】
上記金属酸化物を有することで、導電体260からの電界の影響を弱めることなく、トランジスタ200のオン電流の向上を図ることができる。また、絶縁体250と、上記金属酸化物との物理的な厚みにより、導電体260と、酸化物230との間の距離を保つことで、導電体260と酸化物230の間のリーク電流を抑制することができる。また、絶縁体250、および上記金属酸化物との積層構造を設けることで、導電体260と酸化物230との間の物理的な距離、および導電体260から酸化物230へかかる電界強度を、容易に適宜調整することができる。
【0123】
導電体260は、トランジスタ200の第1のゲート電極として機能する。導電体260は、導電体260aと、導電体260aの上に配置された導電体260bと、を有することが好ましい。例えば、導電体260aは、導電体260bの底面および側面を包むように配置されることが好ましい。また、
図1Bおよび
図1Cに示すように、導電体260の上面は、絶縁体250の上面および酸化物230cの上面と略一致している。なお、
図1Bおよび
図1Cでは、導電体260は、導電体260aと導電体260bの2層構造として示しているが、単層構造でもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。
【0124】
導電体260aは、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。
【0125】
また、導電体260aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、絶縁体250に含まれる酸素により、導電体260bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウム、酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。
【0126】
また、導電体260は、配線としても機能するため、導電体260bに導電性が高い導電体を用いることが好ましい。例えば、導電体260bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることができる。また、導電体260bは積層構造としてもよく、例えば、チタン、または窒化チタンと上記導電性材料との積層構造としてもよい。
【0127】
また、トランジスタ200では、導電体260は、絶縁体280などに形成されている開口を埋めるように自己整合的に形成される。導電体260をこのように形成することにより、導電体240aと導電体240bとの間の領域に、導電体260を位置合わせすることなく確実に配置することができる。
【0128】
また、
図1Cに示すように、トランジスタ200のチャネル幅方向において、絶縁体222の底面を基準としたときの、導電体260の、導電体260と酸化物230bとが重ならない領域の底面の高さは、酸化物230bの底面の高さ以下であることが好ましい。ゲート電極として機能する導電体260が、絶縁体250などを介して、酸化物230bのチャネル形成領域の側面および上面を覆う構成とすることで、導電体260の電界を酸化物230bのチャネル形成領域全体に作用させやすくなる。よって、トランジスタ200のオン電流を増大させ、周波数特性を向上させることができる。絶縁体222の底面を基準としたときの、酸化物230aおよび酸化物230bと、導電体260とが、重ならない領域における導電体260の底面の高さと、酸化物230bの底面の高さと、の差は、0nm以上100nm以下、好ましくは、3nm以上50nm以下、より好ましくは、5nm以上20nm以下とする。
【0129】
絶縁体280は、絶縁体224、酸化物230、導電体240、および絶縁体271上に設けられる。また、絶縁体280の上面は、平坦化されていてもよい。
【0130】
層間膜として機能する絶縁体280は、誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。絶縁体280は、例えば、絶縁体216と同様の材料を用いて設けることが好ましい。特に、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。特に、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、空孔を有する酸化シリコンなどの材料は、加熱により脱離する酸素を含む領域を容易に形成することができるため好ましい。
【0131】
また、絶縁体280中の水、水素などの不純物濃度は低減されていることが好ましい。また、絶縁体280は、上述した材料が積層された構造でもよく、例えば、スパッタリング法で成膜した酸化シリコンと、その上に積層された化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法で成膜された酸化窒化シリコンの積層構造とすればよい。また、さらに上に窒化シリコンを積層してもよい。
【0132】
絶縁体282または絶縁体283は、水、水素などの不純物が、上方から絶縁体280に拡散するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。また、絶縁体282または絶縁体283は、酸素の透過を抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。絶縁体282および絶縁体283としては、例えば、酸化アルミニウム、窒化シリコン、窒化酸化シリコンなどの絶縁体を用いればよい。例えば、絶縁体282として、酸素に対してブロッキング性が高い酸化アルミニウムを用い、絶縁体283として、水素に対してブロッキング性が高い窒化シリコンを用いればよい。
【0133】
導電体246aおよび導電体246bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体246aおよび導電体246bは積層構造としてもよい。
【0134】
また、導電体246を積層構造とする場合、絶縁体284、絶縁体283、絶縁体282、絶縁体280、および絶縁体271と接する導電体には、水、水素などの不純物の透過を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。例えば、タンタル、窒化タンタル、チタン、窒化チタン、ルテニウム、酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。また、水、水素などの不純物の透過を抑制する機能を有する導電性材料は、単層または積層で用いてもよい。また、絶縁体284より上層に含まれる水、水素などの不純物が、導電体246aおよび導電体246bを通じて酸化物230に混入するのを抑制することができる。
【0135】
絶縁体276aおよび絶縁体276bとしては、例えば、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化酸化シリコンなどの絶縁体を用いればよい。絶縁体276aおよび絶縁体276bは、絶縁体271aに接して設けられるため、絶縁体280などに含まれる水、水素などの不純物が、導電体246aおよび導電体246bを通じて酸化物230に混入することを抑制することができる。特に、窒化シリコンは水素に対するブロッキング性が高いため好適である。また、絶縁体280に含まれる酸素が導電体246aおよび導電体246bに吸収されるのを防ぐことができる。
【0136】
また、導電体246aの上面、および導電体246bの上面に接して配線として機能する導電体248(導電体248a、および導電体248b)を配置してもよい。導電体248は、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、当該導電体は、積層構造としてもよく、例えば、チタン、または窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。なお、当該導電体は、絶縁体に設けられた開口に埋め込むように形成してもよい。
【0137】
絶縁体286は、導電体248上、および絶縁体283上に設けられる。これにより、導電体248の上面、および導電体248の側面は、絶縁体286と接し、導電体248の下面は、絶縁体283と接する。つまり、導電体248は、絶縁体283、および絶縁体286で包まれる構成とすることができる。この様な構成とすることで、外方からの酸素の透過を抑制し、導電体248の酸化を防止することができる。また、導電体248から、水、水素などの不純物が外部に拡散することを防ぐことができるため好ましい。
【0138】
<<金属酸化物>>
酸化物230として、半導体として機能する金属酸化物(酸化物半導体)を用いることが好ましい。以下では、本発明に係る酸化物230に適用可能な金属酸化物について説明する。
【0139】
金属酸化物は、少なくともインジウムまたは亜鉛を含むことが好ましい。特に、インジウムおよび亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、錫などが含まれていることが好ましい。また、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、マグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種が含まれていてもよい。
【0140】
ここでは、金属酸化物が、インジウム、元素Mおよび亜鉛を有するIn-M-Zn酸化物である場合を考える。なお、元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、または錫とする。そのほかの元素Mに適用可能な元素としては、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、マグネシウムなどがある。ただし、元素Mとして、前述の元素を複数組み合わせても構わない場合がある。
【0141】
なお、本明細書等において、窒素を有する金属酸化物も金属酸化物(metal oxide)と総称する場合がある。また、窒素を有する金属酸化物を、金属酸窒化物(metal oxynitride)と呼称してもよい。
【0142】
[金属酸化物の構造]
酸化物半導体(金属酸化物)は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC-OS、多結晶酸化物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)、および非晶質酸化物半導体などがある。
【0143】
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
【0144】
なお、インジウムと、ガリウムと、亜鉛と、を有する金属酸化物の一種である、In-Ga-Zn酸化物(以下、IGZO)は、上述のナノ結晶とすることで安定な構造をとる場合がある。特に、IGZOは、大気中では結晶成長がし難い傾向があるため、大きな結晶(ここでは、数mmの結晶、または数cmの結晶)よりも小さな結晶(例えば、上述のナノ結晶)とする方が、構造的に安定となる場合がある。
【0145】
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する金属酸化物である。a-like OSは、鬆または低密度領域を有する。すなわち、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-OSと比べて、結晶性が低い。
【0146】
酸化物半導体(金属酸化物)は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0147】
また、上述の酸化物半導体以外として、CAC(Cloud-Aligned Composite)-OSを用いてもよい。
【0148】
CAC-OSとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。なお、CAC-OS又はCAC-metal oxideを、トランジスタの活性層に用いる場合、導電性の機能は、キャリアとなる電子(またはホール)を流す機能であり、絶縁性の機能は、キャリアとなる電子を流さない機能である。導電性の機能と、絶縁性の機能とを、それぞれ相補的に作用させることで、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC-OS又はCAC-metal oxideに付与することができる。CAC-OS又はCAC-metal oxideにおいて、それぞれの機能を分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。
【0149】
また、CAC-OS又はCAC-metal oxideは、導電性領域、及び絶縁性領域を有する。導電性領域は、上述の導電性の機能を有し、絶縁性領域は、上述の絶縁性の機能を有する。また、材料中において、導電性領域と、絶縁性領域とは、ナノ粒子レベルで分離している場合がある。また、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ材料中に偏在する場合がある。また、導電性領域は、周辺がぼけてクラウド状に連結して観察される場合がある。
【0150】
また、CAC-OS又はCAC-metal oxideにおいて、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ0.5nm以上10nm以下、好ましくは0.5nm以上3nm以下のサイズで材料中に分散している場合がある。
【0151】
また、CAC-OS又はCAC-metal oxideは、異なるバンドギャップを有する成分により構成される。例えば、CAC-OS又はCAC-metal oxide、絶縁性領域に起因するワイドギャップを有する成分と、導電性領域に起因するナローギャップを有する成分と、により構成される。当該構成の場合、キャリアを流す際に、ナローギャップを有する成分において、主にキャリアが流れる。また、ナローギャップを有する成分が、ワイドギャップを有する成分に相補的に作用し、ナローギャップを有する成分に連動してワイドギャップを有する成分にもキャリアが流れる。このため、上記CAC-OS又はCAC-metal oxideをトランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、トランジスタのオン状態において高い電流駆動力、つまり大きなオン電流、及び高い電界効果移動度を得ることができる。
【0152】
すなわち、CAC-OS又はCAC-metal oxideは、マトリックス複合材(matrix composite)、または金属マトリックス複合材(metal matrix composite)と呼称することもできる。
【0153】
また、酸化物半導体は、結晶構造に着目した場合、上記とは異なる分類となる場合がある。ここで、酸化物半導体における、結晶構造の分類について、
図14Aを用いて説明を行う。
図14Aは、酸化物半導体、代表的にはIGZO(Inと、Gaと、Znと、を含む金属酸化物)の結晶構造の分類を説明する図である。
【0154】
図14Aに示すように、IGZOは、大きく分けてAmorphous(無定形)と、Crystalline(結晶性)と、Crystal(結晶)と、に分類される。また、Amorphousの中には、completely amorphousが含まれる。また、Crystallineの中には、CAAC(c-axis aligned crystalline)、nc(nanocrystalline)、及びCAC(Cloud-Aligned Composite)が含まれる。なお、Crystallineの分類には、single crystal、poly crystal、及びcompletely amorphousは除かれる。また、Crystalの中には、single crystal、及びpoly crystalが含まれる。
【0155】
なお、
図14Aに示す太枠内の構造は、Amorphous(無定形)と、Crystal(結晶)との間の中間状態であり、新しい境界領域(New crystalline phase)に属する構造である。当該構造は、Amorphousと、Crystalとの間の境界領域にある。すなわち、当該構造は、エネルギー的に不安定なAmorphous(無定形)や、Crystal(結晶)とは全く異なる構造と言い換えることができる。
【0156】
なお、膜または基板の結晶構造は、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)像を用いて評価することができる。ここで、石英ガラス、及びCrystallineに分類される結晶構造を有するIGZO(結晶性IGZOともいう。)のXRDスペクトルを
図14B、
図14Cに示す。また、
図14Bが石英ガラス、
図14Cが結晶性IGZOのXRDスペクトルである。なお、
図14Cに示す結晶性IGZOの組成は、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]近傍である。また、
図14Cに示す結晶性IGZOの厚さは、500nmである。
【0157】
図14Bの矢印に示すように、石英ガラスは、XRDスペクトルのピークの形状がほぼ左右対称である。一方で、
図14Cの矢印に示すように、結晶性IGZOは、XRDスペクトルのピークの形状が左右非対称である。XRDスペクトルのピークの形状が左右非対称であることは、結晶の存在を明示している。別言すると、XRDスペクトルのピークの形状で左右対称でないと、Amorphousであるとは言えない。なお、
図14Cには、2θ=31°、またはその近傍に結晶相(IGZO crystal phase)を明記してある。XRDスペクトルのピークにおいて、形状が左右非対称となる由来は当該結晶相(微結晶)に起因すると推定される。
【0158】
具体的には、
図14Cに示す、結晶性IGZOのXRDスペクトルにおいて、2θ=34°またはその近傍にピークを有する。また、微結晶は、2θ=31°またはその近傍にピークを有する。酸化物半導体膜をX線回折像を用いて評価する場合、
図14Cに示すように、2θ=34°またはその近傍のピークよりも低角度側のスペクトルの幅が広くなる。これは、酸化物半導体膜中に、2θ=31°またはその近傍にピークを有する微結晶が内在することを示唆している。
【0159】
また、膜の結晶構造は、極微電子線回折法(NBED:Nano Beam Electron Diffraction)によって観察される回折パターン(極微電子線回折パターンともいう。)にて評価することができる。基板温度を室温として成膜したIGZO膜の回折パターンを
図14Dに示す。なお、
図14Dに示すIGZO膜は、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]である酸化物ターゲットを用いて、スパッタリング法によって成膜される。また、極微電子線回折法では、プローブ径を1nmとして電子線回折が行われた。
【0160】
図14Cに示すように、室温成膜したIGZO膜の回折パターンでは、ハローではなく、スポット状のパターンが観察される。このため、室温成膜したIGZO膜は、結晶状態でもなく、非晶質状態でもない、中間状態であり、非晶質状態であると結論することはできないと推定される。
【0161】
[不純物]
ここで、金属酸化物中における各不純物の影響について説明する。
【0162】
酸化物半導体に不純物が混入すると、欠陥準位または酸素欠損が形成される場合がある。よって、酸化物半導体のチャネル形成領域に不純物が混入することで、酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性が変動しやすく、信頼性が悪くなる場合がある。また、チャネル形成領域に酸素欠損が含まれていると、トランジスタはノーマリーオン特性(ゲート電極に電圧を印加しなくてもチャネルが存在し、トランジスタに電流が流れる特性)となりやすい。
【0163】
金属酸化物を用いたトランジスタは、金属酸化物中の不純物及び酸素欠損によって、その電気特性が変動し、ノーマリーオン特性となりやすい。また、金属酸化物中に、適量値を超えた過剰な酸素を有した状態で、該トランジスタを駆動した場合、過剰な酸素原子の価数が変化し、該トランジスタの電気特性が変動することで、信頼性が悪くなる場合がある。
【0164】
したがって、トランジスタには、キャリア濃度の低い金属酸化物をチャネル形成領域に用いることが好ましい。金属酸化物のキャリア濃度を低くする場合においては、金属酸化物中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性という。なお、本明細書等においては、チャネル形成領域の金属酸化物のキャリア濃度が1×1016cm-3以下の場合を実質的に高純度真性として定義する。
【0165】
また、チャネル形成領域の金属酸化物のキャリア濃度は、1×1018cm-3以下であることが好ましく、1×1017cm-3以下であることがより好ましく、1×1016cm-3以下であることがさらに好ましく、1×1013cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1012cm-3未満であることがさらに好ましい。なお、チャネル形成領域の金属酸化物のキャリア濃度の下限値については、特に限定は無いが、例えば、1×10-9cm-3とすることができる。
【0166】
なお、金属酸化物中の不純物としては、例えば、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。特に、金属酸化物に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、金属酸化物中に酸素欠損を形成する場合がある。金属酸化物中のチャネル形成領域に酸素欠損が含まれていると、トランジスタはノーマリーオン特性となる場合がある。さらに、金属酸化物中の酸素欠損に水素が入った場合、酸素欠損と水素とが結合しVOHを形成する場合がある。酸素欠損に水素が入った欠陥(VOH)はドナーとして機能し、キャリアである電子が生成されることがある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成する場合がある。従って、水素が多く含まれている金属酸化物を用いたトランジスタは、ノーマリーオン特性となりやすい。また、金属酸化物中の水素は、熱、電界などのストレスによって動きやすいため、金属酸化物に多くの水素が含まれると、トランジスタの信頼性が悪化する恐れもある。
【0167】
本発明の一態様においては、酸化物230中のVOHをできる限り低減し、高純度真性または実質的に高純度真性にすることが好ましい。このように、VOHが十分低減された金属酸化物を得るには、金属酸化物中の水分、水素などの不純物を除去すること(脱水、脱水素化処理と記載する場合がある。)と、金属酸化物に酸素を供給して酸素欠損を補填すること(加酸素化処理と記載する場合がある。)が重要である。VOHなどの不純物が十分に低減された金属酸化物をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0168】
酸素欠損に水素が入った欠陥(VOH)は、金属酸化物のドナーとして機能しうる。しかしながら、当該欠陥を定量的に評価することは困難である。そこで、金属酸化物においては、ドナー濃度ではなく、キャリア濃度で評価される場合がある。よって、本明細書等では、金属酸化物のパラメータとして、ドナー濃度ではなく、電界が印加されない状態を想定したキャリア濃度を用いる場合がある。つまり、本明細書等に記載の「キャリア濃度」は、「ドナー濃度」と言い換えることができる場合がある。また、本明細書等に記載の「キャリア濃度」は、「キャリア密度」と言い換えることができる。
【0169】
よって、金属酸化物中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、金属酸化物において、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。水素などの不純物が十分に低減された金属酸化物をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0170】
また、上記欠陥準位には、トラップ準位が含まれる場合がある。金属酸化物のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い金属酸化物をチャネル形成領域に有するトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
【0171】
また、酸化物半導体のチャネル形成領域に不純物が存在すると、チャネル形成領域の結晶性が低くなる場合がある、また、チャネル形成領域に接して設けられる酸化物の結晶性が低くなる場合がある。チャネル形成領域の結晶性が低いと、トランジスタの安定性または信頼性が悪化する傾向がある。また、チャネル形成領域に接して設けられる酸化物の結晶性が低いと、界面準位が形成され、トランジスタの安定性または信頼性が悪化する場合がある。
【0172】
したがって、トランジスタの安定性または信頼性を向上させるには、酸化物半導体のチャネル形成領域およびその近傍の不純物濃度を低減することが有効である。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0173】
具体的には、当該酸化物半導体のチャネル形成領域およびその近傍において、SIMSにより得られる上記不純物の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1016atoms/cm3以下にする。または、当該酸化物半導体のチャネル形成領域およびその近傍において、EDXを用いた元素分析により得られる上記不純物の濃度を、1.0atomic%以下にする。なお、当該酸化物半導体として元素Mを含む酸化物を用いる場合、当該酸化物半導体のチャネル形成領域およびその近傍において、元素Mに対する上記不純物の濃度比を、0.10未満、好ましくは0.05未満にする。ここで、上記濃度比を算出する際に用いる元素Mの濃度は、上記不純物の濃度を算出した領域と同じ領域の濃度でもよいし、当該酸化物半導体中の濃度でもよい。
【0174】
また、不純物濃度を低減した金属酸化物は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
【0175】
また、酸化物半導体を用いたトランジスタは、酸化物半導体中のチャネル形成領域に不純物および酸素欠損が存在すると、当該酸化物半導体が低抵抗化する場合がある。また、電気特性が変動しやすく、信頼性が悪くなる場合がある。
【0176】
例えば、シリコンは、酸素との結合エネルギーが、インジウムおよび亜鉛よりも大きい。例えば、酸化物半導体としてIn-M-Zn酸化物を用いる場合、当該酸化物半導体にシリコンが混入すると、当該酸化物半導体に含まれる酸素がシリコンに奪われることによって、インジウムまたは亜鉛の近傍に酸素欠損が形成される場合がある。
【0177】
チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたトランジスタにおいては、チャネル形成領域に低抵抗領域が形成されると、当該低抵抗領域にトランジスタのソース電極とドレイン電極との間のリーク電流(寄生チャネル)が発生しやすい。また、当該寄生チャネルによって、トランジスタのノーマリーオン化、リーク電流の増大、ストレス印加によるしきい値電圧の変動(シフト)など、トランジスタの特性不良が起こりやすくなる。また、トランジスタの加工精度が低いと、当該寄生チャネルがトランジスタ毎にばらつくことで、トランジスタ特性にばらつきが生じてしまう。
【0178】
したがって、酸化物半導体のチャネル形成領域およびその近傍において、当該不純物および酸素欠損はできる限り低減されていることが好ましい。
【0179】
【0180】
図2A乃至
図11Aは上面図を示す。また、
図2B乃至
図11Bは、
図2A乃至
図11Aに示すA1-A2の一点鎖線で示す部位に対応する断面図であり、トランジスタ200のチャネル長方向の断面図でもある。また、
図2C乃至
図11Cは、
図2A乃至
図11AにA3-A4の一点鎖線で示す部位に対応する断面図であり、トランジスタ200のチャネル幅方向の断面図でもある。なお、
図2A乃至
図11Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いている。
【0181】
まず、基板(図示しない。)を準備し、当該基板上に絶縁体212を成膜する。絶縁体212の成膜は、スパッタリング法、CVD法、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法、パルスレーザ堆積(PLD:Pulsed Laser Deposition)法、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法などを用いて行うことができる。
【0182】
なお、CVD法は、プラズマを利用するプラズマCVD(PECVD:Plasma Enhanced CVD)法、熱を利用する熱CVD(TCVD:Thermal CVD)法、光を利用する光CVD(Photo CVD)法などに分類できる。さらに用いる原料ガスによって金属CVD(MCVD:Metal CVD)法、有機金属CVD(MOCVD:Metal Organic CVD)法に分けることができる。
【0183】
プラズマCVD法は、比較的低温で高品質の膜が得られる。また、熱CVD法は、プラズマを用いないため、被処理物へのプラズマダメージを小さくすることが可能な成膜方法である。例えば、半導体装置に含まれる配線、電極、素子(トランジスタ、容量素子など)などは、プラズマから電荷を受け取ることでチャージアップする場合がある。このとき、蓄積した電荷によって、半導体装置に含まれる配線、電極、素子などが破壊される場合がある。一方、プラズマを用いない熱CVD法の場合、こういったプラズマダメージが生じないため、半導体装置の歩留まりを高くすることができる。また、熱CVD法では、成膜中のプラズマダメージが生じないため、欠陥の少ない膜が得られる。
【0184】
また、ALD法としては、プリカーサ及びリアクタントの反応を熱エネルギーのみで行う熱ALD(Thermal ALD)法、プラズマ励起されたリアクタントを用いるPEALD(Plasma Enhanced ALD)法などを用いることができる。
【0185】
また、ALD法は、原子の性質である自己制御性を利用し、一層ずつ原子を堆積することができるため、極薄の成膜が可能、アスペクト比の高い構造への成膜が可能、ピンホールなどの欠陥の少ない成膜が可能、被覆性に優れた成膜が可能、低温での成膜が可能、などの効果がある。PEALD(Plasma Enhanced ALD)法では、プラズマを利用することで、より低温での成膜が可能となり好ましい場合がある。なお、ALD法で用いるプリカーサには炭素などの不純物を含むものがある。このため、ALD法により設けられた膜は、他の成膜法により設けられた膜と比較して、炭素などの不純物を多く含む場合がある。なお、不純物の定量は、X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)を用いて行うことができる。
【0186】
CVD法およびALD法は、ターゲットなどから放出される粒子が堆積する成膜方法とは異なり、被処理物の表面における反応により膜が形成される成膜方法である。したがって、被処理物の形状の影響を受けにくく、良好な段差被覆性を有する成膜方法である。特に、ALD法は、優れた段差被覆性と、優れた厚さの均一性を有するため、アスペクト比の高い開口部の表面を被覆する場合などに好適である。ただし、ALD法は、比較的成膜速度が遅いため、成膜速度の速いCVD法などの他の成膜方法と組み合わせて用いることが好ましい場合もある。
【0187】
CVD法およびALD法は、原料ガスの流量比によって、得られる膜の組成を制御することができる。例えば、CVD法およびALD法では、原料ガスの流量比によって、任意の組成の膜を成膜することができる。また、例えば、CVD法およびALD法では、成膜しながら原料ガスの流量比を変化させることによって、組成が連続的に変化した膜を成膜することができる。原料ガスの流量比を変化させながら成膜する場合、複数の成膜室を用いて成膜する場合と比べて、搬送や圧力調整に掛かる時間を要さない分、成膜に掛かる時間を短くすることができる。したがって、半導体装置の生産性を高めることができる場合がある。
【0188】
本実施の形態では、絶縁体212として、スパッタリング法によって窒化シリコンを成膜する。
【0189】
このように、絶縁体212として、窒化シリコンなどの銅が透過しにくい絶縁体を用いることにより、絶縁体212より下層(図示せず。)の導電体に銅など拡散しやすい金属を用いても、当該金属が絶縁体212を介して上方に拡散するのを抑制することができる。また、窒化シリコンのように水、水素などの不純物が透過しにくい絶縁体を用いることにより、絶縁体212より下層に含まれる水、水素などの不純物の拡散を抑制することができる。
【0190】
次に、絶縁体212上に絶縁体214を成膜する。絶縁体214の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、ALD法などを用いて行うことができる。本実施の形態では、絶縁体214として、スパッタリング法によって酸化アルミニウムを成膜する。
【0191】
絶縁体214の水素濃度は、絶縁体212の水素濃度より低いことが好ましい。絶縁体212としてスパッタリング法によって窒化シリコンを成膜することで、水素濃度が低い窒化シリコンを形成することができる。また、絶縁体214を酸化アルミニウムとすることで、絶縁体212よりも水素濃度を低くすることができる。
【0192】
この後の工程にて絶縁体214上に、トランジスタ200を形成するが、トランジスタ200に近接する膜は、水素濃度が比較的低いことが好ましく、水素濃度が比較的高い膜は、トランジスタ200から遠隔して配置することが好ましい。
【0193】
次に、絶縁体214上に絶縁体216を成膜する。絶縁体216の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、ALD法などを用いて行うことができる。本実施の形態では、絶縁体216として、スパッタリング法によって酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンを成膜する。
【0194】
なお、絶縁体212、絶縁体214、および絶縁体216は、大気環境に曝さずに減圧下で連続して成膜することが好ましい。大気環境に曝すことなく成膜することで、絶縁体212、絶縁体214、および絶縁体216上に大気環境からの不純物または水分が付着することを防ぐことができ、絶縁体212と絶縁体214との界面および界面近傍、絶縁体214と絶縁体216との界面および界面近傍を清浄に保つことができるため好ましい。連続成膜は、例えば、マルチチャンバー方式の成膜装置を用いればよい。連続成膜することで、半導体装置の作製工程時間の短縮が可能となり好ましい。
【0195】
次に、絶縁体216に絶縁体214に達する開口を形成する。開口には、例えば、溝やスリットなども含まれる。また、開口が形成された領域を指して開口部とする場合がある。開口の形成はウェットエッチングを用いてもよいが、ドライエッチングを用いるほうが微細加工には好ましい。また、絶縁体214は、絶縁体216をエッチングして溝を形成する際のエッチングストッパ膜として機能する絶縁体を選択することが好ましい。例えば、溝を形成する絶縁体216に酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンを用いた場合は、絶縁体214は窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウムを用いるとよい。
【0196】
ドライエッチング装置としては、平行平板型電極を有する容量結合型プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)エッチング装置を用いることができる。平行平板型電極を有する容量結合型プラズマエッチング装置は、平行平板型電極の一方の電極に高周波電圧を印加する構成でもよい。または平行平板型電極の一方の電極に複数の異なった高周波電圧を印加する構成でもよい。または平行平板型電極それぞれに同じ周波数の高周波電圧を印加する構成でもよい。または平行平板型電極それぞれに周波数の異なる高周波電圧を印加する構成でもよい。または高密度プラズマ源を有するドライエッチング装置を用いることができる。高密度プラズマ源を有するドライエッチング装置は、例えば、誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)エッチング装置などを用いることができる。
【0197】
開口の形成後に、導電体205aとなる導電膜を成膜する。該導電膜は、酸素の透過を抑制する機能を有する導電体を含むことが望ましい。たとえば、窒化タンタル、窒化タングステン、窒化チタンなどを用いることができる。または、酸素の透過を抑制する機能を有する導電体と、タンタル、タングステン、チタン、モリブデン、アルミニウム、銅、モリブデンタングステン合金との積層膜とすることができる。該導電膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、ALD法などを用いて行うことができる。
【0198】
本実施の形態では、導電体205aとなる導電膜を多層構造とする。まず、スパッタリング法によって窒化タンタルを成膜し、当該窒化タンタルの上に窒化チタンを積層する。このような金属窒化物を導電体205bの下層に用いることにより、後述する導電体205bとなる導電膜として銅などの拡散しやすい金属を用いても、当該金属が導電体205aから外に拡散するのを防ぐことができる。
【0199】
次に、導電体205bとなる導電膜を成膜する。該導電膜の成膜は、メッキ法、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、ALD法などを用いて行うことができる。本実施の形態では、導電体205bとなる導電膜として、銅などの低抵抗導電性材料を成膜する。
【0200】
次に、化学機械研磨(CMP)処理を行うことで、導電体205aとなる導電膜、および導電体205bとなる導電膜の一部を除去し、絶縁体216を露出する。その結果、開口部のみに、導電体205aおよび導電体205bが残存する。これにより、上面が平坦な、導電体205を形成することができる(
図2A乃至
図2C参照。)。なお、当該CMP処理により、絶縁体216の一部が除去される場合がある。
【0201】
なお、上記においては、導電体205を絶縁体216の開口に埋め込むように形成したが、本実施の形態はこれに限られるものではない。例えば、絶縁体214上に導電体205を形成し、導電体205上に絶縁体216を成膜し、絶縁体216にCMP処理を行うことで、絶縁体216の一部を除去し、導電体205の表面を露出させればよい。
【0202】
次に、絶縁体216、および導電体205上に絶縁体222を成膜する。絶縁体222として、アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を成膜するとよい。なお、アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体は、酸素、水素、および水に対するバリア性を有する。
【0203】
絶縁体222が、水素および水に対するバリア性を有することで、トランジスタ200の周辺に設けられた構造体に含まれる水素、および水が、絶縁体222を通じてトランジスタ200の内側へ拡散することが抑制され、酸化物230中の酸素欠損の生成を抑制することができる。
【0204】
絶縁体222の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、ALD法などを用いて行うことができる。
【0205】
続いて、加熱処理を行うと好ましい。加熱処理は、250℃以上650℃以下、好ましくは300℃以上500℃以下、さらに好ましくは320℃以上450℃以下で行えばよい。なお、加熱処理は、窒素ガスもしくは不活性ガスの雰囲気、または酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、もしくは10%以上含む雰囲気で行う。例えば、窒素ガスと酸素ガスの混合雰囲気で加熱処理をする場合、酸素ガスを20%程度にすればよい。また、加熱処理は減圧状態で行ってもよい。または、加熱処理は、窒素ガスもしくは不活性ガスの雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、または10%以上含む雰囲気で加熱処理を行ってもよい。
【0206】
また、上記加熱処理で用いるガスは、高純度化されていることが好ましい。例えば、上記加熱処理で用いるガスに含まれる水分量が1ppb以下、好ましくは0.1ppb以下、より好ましくは0.05ppb以下にすればよい。高純度化されたガスを用いて加熱処理を行うことで、絶縁体222などに水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。
【0207】
本実施の形態では、加熱処理として、絶縁体222の成膜後に、窒素ガスと酸素ガスの流量比を4slm:1slmとして、400℃の温度で1時間の処理を行う。当該加熱処理によって、絶縁体222に含まれる水、水素などの不純物を除去することなどができる。また、絶縁体222として、ハフニウムを含む酸化物を用いる場合、当該加熱処理によって、絶縁体222の結晶性を向上させることができる。また、加熱処理は、絶縁体224の成膜後などのタイミングで行うこともできる。
【0208】
次に、絶縁体222上に絶縁体224を成膜する。絶縁体224の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、ALD法などを用いて行うことができる。本実施の形態では、絶縁体224として、ALD法によって酸化シリコンまたは酸化窒化シリコン膜を成膜する。絶縁体224は、水素原子が低減または除去されたガスを用いた成膜方法で成膜することが好ましい。これにより、絶縁体224の水素濃度を低減することができる。絶縁体224は、後の工程で酸化物230aと接する絶縁体224となるため、このように水素濃度が低減されていることが好適である。
【0209】
また、絶縁体224に、減圧状態で酸素を含むプラズマ処理を行ってもよい。プラズマ処理の条件を適宜選択することにより、絶縁体224に含まれる水、水素などの不純物を除去することができる。
【0210】
ここで、絶縁体224上に、例えば、スパッタリング法によって、酸化アルミニウムを成膜した後、絶縁体224に達するまで、CMP処理を行ってもよい。当該CMP処理を行うことで絶縁体224表面の平坦化および平滑化を行うことができる。当該酸化アルミニウムを絶縁体224上に配置してCMP処理を行うことで、CMP処理の終点検出が容易となる。また、CMP処理によって、絶縁体224の一部が研磨されて、絶縁体224の膜厚が薄くなることがあるが、絶縁体224の成膜時に膜厚を調整すればよい。絶縁体224表面の平坦化および平滑化を行うことで、後に成膜する酸化物の被覆率の悪化を防止し、半導体装置の歩留りの低下を防ぐことができる場合がある。
【0211】
次に、絶縁体224上に、酸化膜230A、酸化膜230Bを順に成膜する(
図2A乃至
図2C参照。)。
【0212】
酸化膜230A、および酸化膜230Bの成膜はスパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、ALD法などを用いて行うことができる。
【0213】
例えば、酸化膜230A、および酸化膜230Bをスパッタリング法によって成膜する場合は、スパッタリングガスとして酸素、または、酸素と希ガスの混合ガスを用いる。また、上記の酸化膜をスパッタリング法によって成膜する場合は、上記のIn-M-Zn酸化物ターゲットなどを用いることができる。
【0214】
本実施の形態では、酸化膜230Aとして、スパッタリング法によって、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]の酸化物ターゲットを用いて成膜する。また、酸化膜230Bとして、スパッタリング法によって、In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]の酸化物ターゲットを用いて成膜する。なお、各酸化膜は、成膜条件、および原子数比を適宜選択することで、酸化物230a、および酸化物230bに求める特性に合わせて形成するとよい。
【0215】
次に、酸化膜230B上に酸化膜241Aを成膜する(
図2A乃至
図2C参照)。酸化膜241Aの成膜はスパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、ALD法などを用いて行うことができる。酸化膜241Aは、Inに対するGaの原子数比が、酸化膜230BのInに対するGaの原子数比より大きいことが好ましい。本実施の形態では、酸化膜241Aとして、スパッタリング法によって、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]の酸化物ターゲットを用いて成膜する。
【0216】
なお、酸化膜230A、酸化膜230B、および酸化膜241Aは、大気環境に曝さずに減圧下で連続して成膜することが好ましい。大気環境に曝さずに成膜することで、酸化膜230A、酸化膜230B、および酸化膜241A上に大気環境からの不純物または水分が付着することを防ぐことができ、酸化膜230Aと酸化膜230Bとの界面および界面近傍、酸化膜230Bと酸化膜241Aとの界面および界面近傍を清浄に保つことができるため好ましい。例えば、マルチチャンバー方式の成膜装置を用いればよい。連続成膜することで、半導体装置の作製工程時間の短縮が可能となり好ましい。
【0217】
次に、加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理は、酸化膜230A、酸化膜230B、および酸化膜241Aが多結晶化しない温度範囲で行えばよく、250℃以上650℃以下、好ましくは400℃以上600℃以下で行えばよい。なお、加熱処理は、窒素ガスもしくは不活性ガスの雰囲気、または酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、もしくは10%以上含む雰囲気で行う。例えば、窒素ガスと酸素ガスの混合雰囲気で加熱処理をする場合、酸素ガスを20%程度にすればよい。また、加熱処理は減圧状態で行ってもよい。または、加熱処理は、窒素ガスもしくは不活性ガスの雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、または10%以上含む雰囲気で加熱処理を行ってもよい。
【0218】
また、上記加熱処理で用いるガスは、高純度化されていることが好ましい。例えば、上記加熱処理で用いるガスに含まれる水分量が1ppb以下、好ましくは0.1ppb以下、より好ましくは0.05ppb以下にすればよい。高純度化されたガスを用いて加熱処理を行うことで、酸化膜230A、酸化膜230B、および酸化膜241Aなどに水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。
【0219】
本実施の形態では、加熱処理として、窒素雰囲気にて550℃の温度で1時間の処理を行った後に、連続して酸素雰囲気にて550℃の温度で1時間の処理を行う。当該加熱処理によって、酸化膜230A、酸化膜230B、および酸化膜241A中の水、水素などの不純物を除去することなどができる。さらに、当該加熱処理によって、酸化膜230Bの結晶性を向上させ、より密度の高い、緻密な構造にすることができる。これにより、酸化膜230B中における、酸素または不純物の拡散を低減することができる。
【0220】
次に、酸化膜241A上に導電膜240Aを成膜する(
図2A乃至
図2C参照。)。導電膜240Aの成膜はスパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、ALD法などを用いて行うことができる。例えば、導電膜240Aとして、スパッタリング法を用いて窒化タンタルを成膜すればよい。なお、導電膜240Aの成膜前に、加熱処理を行ってもよい。当該加熱処理は、減圧下で行い、大気に暴露することなく、連続して導電膜240Aを成膜してもよい。このような処理を行うことによって、酸化膜241Aの表面などに吸着している水分および水素を除去し、さらに酸化膜230A、酸化膜230B、および酸化膜241A中の水分濃度および水素濃度を低減させることができる。加熱処理の温度は、100℃以上400℃以下が好ましい。本実施の形態では、加熱処理の温度を200℃とする。
【0221】
次に、導電膜240A上に絶縁膜271Aを成膜する(
図2A乃至
図2C参照。)。絶縁膜271Aの成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて行うことができる。絶縁膜271Aは、酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁膜を用いることが好ましい。例えば、絶縁膜271Aとして、スパッタリング法またはALD法によって、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、または窒化シリコンなどを成膜すればよい。
【0222】
次に、絶縁膜271A上に導電膜291Aを成膜する(
図2A乃至
図2C参照)。導電膜291Aの成膜はスパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。導電膜291Aは、例えば、導電膜240Aと同様の導電膜を用いればよい。
【0223】
本実施の形態では、導電膜240A、絶縁膜271A、および導電膜291Aとして、スパッタリング法によって、導電膜240Aは、窒化タンタル、絶縁膜271Aは、酸化アルミニウム、導電膜291Aは、窒化タンタルをそれぞれ成膜する。
【0224】
なお、導電膜240A、絶縁膜271A、および導電膜291Aは、大気環境に曝さずに減圧下で連続して成膜することが好ましい。大気環境に曝すことなく成膜することで、導電膜240A、絶縁膜271A、および導電膜291A上に大気環境からの不純物または水分が付着することを防ぐことができ、導電膜240Aと絶縁膜271Aとの界面および界面近傍、絶縁膜271Aと導電膜291Aとの界面および界面近傍を清浄に保つことができるため好ましい。例えば、マルチチャンバー方式の成膜装置を用いればよい。連続成膜することで、半導体装置の作製工程時間の短縮が可能となり好ましい。
【0225】
次に、リソグラフィー法を用いて、酸化膜230A、酸化膜230B、酸化膜241A、導電膜240A、絶縁膜271A、および導電膜291Aを島状に加工して、酸化物230a、酸化物230b、酸化物層241B、導電層240B、絶縁層271B、および導電層291Bを形成する(
図3A乃至
図3C参照。)。また、当該加工はドライエッチング法やウェットエッチング法を用いることができる。ドライエッチング法による加工は微細加工に適している。また、酸化膜230A、酸化膜230B、酸化膜241A、導電膜240A、絶縁膜271A、および導電膜291Aの加工は、それぞれ異なる条件で加工してもよい。なお、当該工程において、絶縁体224の酸化物230aと重ならない領域の膜厚が薄くなることがある。
【0226】
なお、リソグラフィー法では、まず、マスクを介してレジストを露光する。次に、露光された領域を、現像液を用いて除去または残存させてレジストマスクを形成する。次に、当該レジストマスクを介してエッチング処理することで導電体、半導体、または絶縁体などを所望の形状に加工することができる。例えば、KrFエキシマレーザ光、ArFエキシマレーザ光、EUV(Extreme Ultraviolet)光などを用いて、レジストを露光することでレジストマスクを形成すればよい。また、基板と投影レンズとの間に液体(例えば水)を満たして露光する、液浸技術を用いてもよい。また、前述した光に代えて、電子ビームやイオンビームを用いてもよい。なお、電子ビームやイオンビームを用いる場合には、マスクは不要となる。なお、レジストマスクは、アッシングなどのドライエッチング処理を行う、ウェットエッチング処理を行う、ドライエッチング処理後にウェットエッチング処理を行う、またはウェットエッチング処理後にドライエッチング処理を行うことで、除去することができる。
【0227】
さらに、レジストマスクの下に絶縁体や導電体からなるハードマスクを用いてもよい。ハードマスクを用いる場合、導電膜240A上にハードマスク材料となる絶縁膜や導電膜を形成し、その上にレジストマスクを形成し、ハードマスク材料をエッチングすることで所望の形状のハードマスクを形成することができる。導電膜240Aなどのエッチングは、レジストマスクを除去してから行ってもよいし、レジストマスクを残したまま行ってもよい。後者の場合、エッチング中にレジストマスクが消失することがある。導電膜240Aなどのエッチング後にハードマスクをエッチングにより除去してもよい。一方、ハードマスクの材料が後工程に影響が無い、あるいは後工程で利用できる場合、必ずしもハードマスクを除去する必要は無い。本実施の形態では、絶縁層271B、および導電層291Bをハードマスクとして用いる。
【0228】
また、酸化物230a、酸化物230b、酸化物層241B、導電層240B、絶縁層271B、および導電層291Bは、少なくとも一部が導電体205と重なるように形成する。また、酸化物230a、酸化物230b、酸化物層241B、導電層240B、絶縁層271B、および導電層291Bの側面は、絶縁体222の上面に対し、概略垂直であることが好ましい。酸化物230a、酸化物230b、酸化物層241B、導電層240B、絶縁層271B、および導電層291Bの側面が、絶縁体222の上面に対し、概略垂直であることで、複数のトランジスタ200を設ける際に、小面積化、高密度化が可能となる。または、酸化物230a、酸化物230b、酸化物層241B、導電層240B、絶縁層271B、および導電層291Bの側面と、絶縁体222の上面とのなす角が低い角度になる構成にしてもよい。その場合、酸化物230a、酸化物230b、酸化物層241B、導電層240B、絶縁層271B、および導電層291Bの側面と、絶縁体222の上面とのなす角は60度以上70度未満が好ましい。この様な形状とすることで、これより後の工程において、絶縁膜280Aなどの被覆性が向上し、鬆などの欠陥を低減することができる。
【0229】
次に、導電層291Bを除去する。導電層291Bの除去は、ドライエッチング法を用いる(
図4A乃至
図4C参照。)。
【0230】
次に、絶縁体224、酸化物230a、酸化物230b、酸化物層241B、導電層240B、および絶縁層271Bの上に、絶縁体280となる絶縁膜を形成する。当該絶縁膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、ALD法などを用いて行うことができる。
【0231】
例えば、当該絶縁膜として、スパッタリング法を用いて酸化シリコン膜を成膜し、その上にPEALD法または熱ALD法を用いて酸化シリコン膜を成膜すればよい。また、当該絶縁膜は、水素原子が低減または除去されたガスを用いた成膜方法で成膜することが好ましい。これにより、絶縁体280の水素濃度を低減することができる。なお、当該絶縁膜の成膜前に、加熱処理を行ってもよい。加熱処理は、減圧下で行い、大気に暴露することなく、連続して当該絶縁膜を成膜してもよい。このような処理を行うことによって、絶縁体224、被成膜物の表面などに吸着している水分および水素を除去し、さらに酸化物230a、酸化物230b、酸化物層241B、および絶縁体224中の水分濃度および水素濃度を低減させることができる。当該加熱処理には、上述した加熱処理条件を用いることができる。
【0232】
次に、上記絶縁膜にCMP処理を行い、上面が平坦な絶縁体280を形成する(
図5A乃至
図5C参照。)。なお、絶縁体224と同様に、絶縁体280上に、例えば、スパッタリング法によって、酸化アルミニウムを成膜し、該酸化アルミニウムを絶縁体280に達するまで、CMP処理を行ってもよい。
【0233】
ここで、マイクロ波処理を行ってもよい。マイクロ波処理は、酸素を含む雰囲気下、および減圧下にて行うことが好ましい。マイクロ波処理後に減圧状態を保ったままで、加熱処理を行ってもよい。なお、加熱処理温度は、300℃以上、500℃以下とすることが好ましい。
【0234】
また、マイクロ波処理を行うことにより、絶縁体280の膜質を改質することで、絶縁体280から酸化物230への水素、水、不純物などの拡散を抑制することができる。したがって、絶縁体280形成以降の後工程、または熱処理などにより、絶縁体280を介して、水素、水、不純物などが、酸化物230へ拡散することを抑制することができる。なお、本実施の形態においては、絶縁体280上からマイクロ波処理を行う形態について例示したが、これに限定されない。例えば、マイクロ波処理の他、プラズマ処理、またはマイクロ波励起プラズマ処理などを行ってもよい。
【0235】
次に、絶縁体280の一部、絶縁層271Bの一部、導電層240Bの一部、酸化物層241Bの一部、酸化物230bの一部を加工して、酸化物230bに達する開口を形成する。当該開口は、導電体205と重なるように形成することが好ましい。当該開口の形成によって、絶縁体271a、絶縁体271b、導電体240a、導電体240b、酸化物241a、および酸化物241bを形成する(
図6A乃至
図6C参照。)。
【0236】
ここで、上記開口を形成する工程で、酸化物230bの上部が除去されていてもよい。酸化物230bの一部が除去されることで、酸化物230bに溝部が形成される。
【0237】
なお、絶縁体280の一部、絶縁層271Bの一部、導電層240Bの一部、酸化物層241Bの一部、および酸化物230bの一部の加工は、ドライエッチング法、またはウェットエッチング法を用いることができる。ドライエッチング法による加工は微細加工に適している。また、当該加工は、それぞれ異なる条件で加工してもよい。例えば、絶縁体280の一部をドライエッチング法で加工し、絶縁層271Bの一部をウェットエッチング法で加工し、酸化物層241Bの一部、導電層240Bの一部、および酸化物230bの一部をドライエッチング法で加工してもよい。また、酸化物層241Bの一部および導電層240Bの一部の加工と、酸化物230bの一部の加工とは、異なる条件で行ってもよい。
【0238】
なお、ドライエッチング法を用いて、酸化物230bの一部を除去して、溝部を形成する際に、バイアス電力を高くして処理することが好ましい。例えば、バイアス電力の電力密度を、0.02W/cm2以上にすればよく、0.03W/cm2以上にするのが好ましく、0.06W/cm2以上にするのがより好ましい。また、ドライエッチング処理時間は、溝部の深さに合わせて適宜設定すればよい。
【0239】
ここで、上記開口の工程にて、開口の内部に不純物、または酸化物230bの表面に損傷領域が生じる場合がある。当該不純物、および当該損傷領域は、洗浄工程により除去することが好ましい。
【0240】
当該不純物は、例えば、絶縁体280、絶縁層271Bの一部、および導電層240Bに含まれる成分、上記開口を形成する際に用いられる装置に使われている部材に含まれる成分、エッチングに使用するガスまたは液体に含まれる成分などに起因したものが挙げられる。具体的には、当該不純物として、例えば、アルミニウム、シリコン、タンタル、フッ素、塩素などがある。
【0241】
特に、アルミニウム、またはシリコンなどの不純物は、後の工程で形成する酸化物230cのCAAC-OS化を阻害する場合がある。
【0242】
金属酸化物において、アルミニウム、またはシリコンなどの不純物によりCAAC-OS化が阻害され、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)となった領域を、非CAAC領域と呼ぶ場合がある。非CAAC領域では、結晶構造の緻密さが低下しているため、VOHが多量に形成され、トランジスタがノーマリーオン化しやすくなる。よって、酸化物230b、および酸化物230cの非CAAC領域は、低減または除去されていることが好ましい。
【0243】
従って、酸化物230a、および酸化物230bの表面に付着したアルミニウム、またはシリコンなどの、CAAC-OS化を阻害する不純物元素は、低減または除去されていることが好ましい。例えば、酸化物230bと酸化物230cの界面、およびその近傍における、アルミニウム原子の濃度が、5.0原子%以下とすればよく、2.0原子%以下が好ましく、1.5原子%以下がより好ましく、1.0原子%以下がさらに好ましく、0.3原子%未満がさらに好ましい。
【0244】
また、酸化物230bおよび酸化物230cは、層状のCAAC構造を有していることが好ましい。特に、酸化物230bおよび酸化物230cのドレイン下端部までCAAC構造が形成されることが好ましい。ここで、トランジスタ200において、導電体240aまたは導電体240b、およびその近傍がドレインとして機能する。つまり、導電体240a(導電体240b)の下端部近傍の、酸化物230b、および酸化物230cのいずれか一方または双方が、CAAC構造を有することが好ましい。このように、ドレイン耐圧に顕著に影響するドレイン端部においても、酸化物230bの損傷領域が除去され、CAAC構造を有することで、トランジスタ200の電気特性の変動をさらに抑制することができる。また、トランジスタ200の信頼性を向上させることができる。
【0245】
洗浄処理としては、洗浄液など用いたウェット洗浄、プラズマを用いたプラズマ処理、熱処理による洗浄などがあり、上記洗浄処理を適宜組み合わせて行ってもよい。なお、当該洗浄処理によって、上記溝部が深くなる場合がある。
【0246】
ウェット洗浄としては、アンモニア水、シュウ酸、リン酸、フッ化水素酸などを炭酸水または純水で希釈した水溶液、純水、炭酸水などを用いて洗浄処理を行ってもよい。また、これらの水溶液、純水、または炭酸水を用いた超音波洗浄を行ってもよい。また、これらの洗浄を適宜組み合わせて行ってもよい。
【0247】
なお、本明細書等では、市販のフッ化水素酸を純水で希釈した水溶液を希釈フッ化水素酸と呼び、市販のアンモニア水を純水で希釈した水溶液を希釈アンモニア水と呼ぶ場合がある。また、当該水溶液の濃度、温度などは、除去したい不純物、洗浄される半導体装置の構成などによって、適宜調整すればよい。希釈アンモニア水のアンモニア濃度は0.01%以上5%以下、好ましくは0.1%以上0.5%以下とすればよい。また、希釈フッ化水素酸のフッ化水素濃度は0.01ppm以上100ppm以下、好ましくは0.1ppm以上10ppm以下とすればよい。
【0248】
なお、超音波洗浄には、200kHz以上、好ましくは900kHz以上の周波数を用いることが好ましい。当該周波数を用いることで、酸化物230bなどへのダメージを低減することができる。
【0249】
また、上記洗浄処理を複数回行ってもよく、洗浄処理毎に洗浄液を変更してもよい。例えば、第1の洗浄処理として希釈フッ化水素酸、または希釈アンモニア水を用いた処理を行い、第2の洗浄処理として純水、または炭酸水を用いた処理を行ってもよい。
【0250】
上記洗浄処理として、本実施の形態では、希釈フッ化水素酸を用いてウェット洗浄を行い、続いて純水、または炭酸水を用いてウェット洗浄を行う。当該洗浄処理を行うことで、酸化物230a、酸化物230bなどの表面に付着または内部に拡散した不純物を除去することができる。さらに、酸化物230b上に形成される酸化物230cの結晶性を高めることができる。
【0251】
また、上記ドライエッチングなどの加工、または上記洗浄処理によって、上記開口と重なり、かつ酸化物230bと重ならない領域の、絶縁体224の膜厚が、酸化物230bと重なる領域の、絶縁体224の膜厚より薄くなる場合がある。
【0252】
また、上記エッチング後、または上記洗浄後に加熱処理を行ってもよい。加熱処理は、100℃以上450℃以下、好ましくは350℃以上400℃以下で行えばよい。なお、加熱処理は、窒素ガスもしくは不活性ガスの雰囲気、または酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、もしくは10%以上含む雰囲気で行う。例えば、加熱処理は酸素雰囲気で行うことが好ましい。これにより、酸化物230aおよび酸化物230bに酸素を供給して、酸素欠損の低減を図ることができる。また、加熱処理は減圧状態で行ってもよい。または、酸素雰囲気で加熱処理した後に、大気に露出せずに連続して窒素雰囲気で加熱処理を行ってもよい。
【0253】
次に、酸化膜230Cを成膜する(
図7A乃至
図7C参照)。酸化膜230Cの成膜前に加熱処理を行ってもよく、当該加熱処理は、減圧下で行い、大気に暴露することなく、連続して酸化膜230Cを成膜することが好ましい。また、当該加熱処理は、酸素を含む雰囲気で行うことが好ましい。このような処理を行うことによって、酸化物230bの表面などに吸着している水分および水素を除去し、さらに酸化物230aおよび酸化物230b中の水分濃度および水素濃度を低減させることができる。加熱処理の温度は、100℃以上400℃以下が好ましい。本実施の形態では、加熱処理の温度を200℃とする。
【0254】
ここで、酸化膜230Cは、少なくとも酸化物230bに形成された溝部の内壁、酸化物241の側面の一部、導電体240の側面の一部、絶縁体271の側面の一部、および絶縁体280の側面の一部と接するように設けられることが好ましい。導電体240は、酸化物241、絶縁体271および酸化膜230Cに囲まれることで、以降の工程において導電体240の酸化による導電率の低下を抑制することができる。
【0255】
酸化膜230Cの成膜はスパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、ALD法などを用いて行うことができる。酸化膜230Cは、酸化膜230Aと同様の成膜方法を用いて、成膜すればよい。本実施の形態では、酸化膜230Cとして、スパッタリング法によって、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]の酸化物ターゲットを用いて成膜する。
【0256】
ここで、酸化物230b、および酸化膜230Cが有する酸素欠損を低減し、酸化物230bを実質的に高純度真性とするために、酸化物230b、および酸化膜230Cに対し、酸素を添加する処理(以下、酸素イオン注入処理、または酸素ドープ処理ともいう)を行う(
図8A乃至
図8C、および
図12A参照。なお、
図12Aは、
図8Cの一部を拡大して示した図である。)。
【0257】
酸化膜230Cを介して、酸化物230bのチャネル形成領域に、酸素添加処理を行うことで、チャネル形成領域の表面に不純物が拡散、または損傷領域が生じることを抑制することができる。特に、酸化膜230Cは、酸化物230bと同じ元素から成るため、添加処理により、酸化膜230Cの一部が、酸化物230bへと拡散しても、不純物起因の問題は生じない。
【0258】
図8B、
図8C、および
図12Aに示すように、酸素インプラ処理により、酸化膜230C、酸化物230bの表面、絶縁体280の表面、および絶縁体224の表面に、酸素が添加された領域292を形成する。特に、領域292は、酸化膜230Cおよび酸化物230bの界面近傍に設けることが好ましい。酸化物230bの表面に酸素が添加されることで、後の加熱処理で、効率的に酸化物230bの酸素欠損を低減することができる。
【0259】
具体的に、酸素インプラ処理として、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法などを用いることで、酸化膜230C、および酸化物230bに酸素を添加することができる。また、酸素を添加する処理に用いるガスとして、16O2もしくは18O2などの酸素ガス、亜酸化窒素ガス、オゾンガスなどの酸素を含むガスが挙げられる。なお、当該酸素を添加する処理は、基板を加熱しながら行なってもよい。
【0260】
例えば、イオンドーピング処理における加速電圧は、0.5kV以上100kV以下、好ましくは1kV以上50kV以下、さらに好ましくは1kV以上30kV以下、より好ましくは1kV以上10kV以下とする。また、イオンの注入濃度は、1×1015atoms/cm2以上、好ましくは2×1015atoms/cm2以上、さらに好ましくは5×1015atoms/cm2以上、より好ましくは1×1016atoms/cm2以上、より好ましくは2×1016atoms/cm2以上とする。
【0261】
また、イオンドーピング処理によるイオンの添加は、試料面に対して概略垂直に行ってもよい。また、イオンドーピング処理によるイオンの添加は、試料面に対して角度を有していてもよい。
【0262】
ここで、
図8Bおよび
図8Cにおいて、矢印290は、酸素イオンの進行方向を模式的に示している。矢印290が示すように、酸化物230bのチャネル幅方向において、1つのイオンが、酸化物230bの上面に対する接線に対し、角度θ(45°<θ<135°)にて入射することが好ましい。また、酸化物230bのL長方向においては、1つのイオンが、酸化物230bの上面に対し、概略垂直にて入射することが好ましい。角度θを適宜調節することで、酸化物230bの側面、および酸化物230bの側面に成膜された酸化膜230Cにも酸素を添加することができる。
【0263】
なお、酸化膜230Cを成膜する前に、酸素を添加する処理を行ってもよい。酸化膜230Cを成膜する前に酸素を添加する場合、
図13に示すように、酸化物層241Bが、開口部内に残存していることが好ましい。なお、酸化物層241Bが、開口部底面に残存する場合、酸化物層241Bと、酸化膜230Cとは、同じ材質、かつ同じ原子数比からなることが好ましい。
【0264】
酸化物層241Bを介して、酸化物230bのチャネル形成領域に、酸素添加処理を行うことで、チャネル形成領域の表面に不純物が拡散、または損傷領域が生じることを抑制することができる。特に、酸化物層241Bは、酸化物230bと同じ元素から成るため、添加処理により、酸化物層241Bの一部が、酸化物230bへと拡散しても、不純物起因の問題は生じない。
【0265】
【0266】
当該加熱処理は酸素雰囲気で行うことが好ましい。これにより、酸化物230bに酸素を供給して、酸素欠損の低減を図ることができる。なお、加熱処理は減圧状態で行ってもよい。または、酸素雰囲気で加熱処理した後に、大気に露出せずに連続して窒素雰囲気で加熱処理を行ってもよい。
【0267】
具体的に、加熱処理は、100℃以上450℃以下、好ましくは350℃以上400℃以下で行うとよい。なお、加熱処理は、酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、もしくは10%以上含む雰囲気で行うとよい。
【0268】
当該加熱処理による効果を、
図12を用いて説明する。
図12Bに示すように、当該加熱により、酸素インプラ処理により領域292へと添加された酸素は、酸化物230bの内部、絶縁体224の内部、絶縁体280の内部へと拡散する。また、同時に、
図12Cに示すように、拡散した酸素は、当該加熱により、酸化膜230Cおよび、酸化物230bが有する酸素欠損Voへ供給され、酸素欠損を補填することで、酸化膜230Cおよび酸化物230bの一部となる。一方、絶縁体224、および絶縁体280に拡散した酸素は、過剰酸素として、絶縁体224、および絶縁体280に留まる。
【0269】
チャネル形成領域の欠陥準位または酸素欠損を低減することで、電気特性の変動が少なく、信頼性の高いトランジスタを提供することができる。また、ノーマリーオフ特性のトランジスタを提供することができる。
【0270】
一方、金属酸化物中に、適量値を超えた過剰な酸素を有した状態で、該トランジスタを駆動した場合、過剰な酸素原子の価数が変化し、該トランジスタの電気特性が変動することで、信頼性が悪くなる場合がある。
【0271】
そこで、酸化物230bのチャネル形成領域を、バリア性を有する酸化物230a、およびバリア性を有する酸化物230cで覆うことにより、絶縁体224が有する過剰酸素が、酸化物230bへ、過剰に供給されることを抑制することができる。
【0272】
次に絶縁膜250Aを成膜する(
図10A乃至
図10C参照)。絶縁膜250Aの成膜前に加熱処理を行ってもよい。当該加熱処理を減圧下で行った後、大気に暴露することなく、連続して絶縁膜250Aを成膜することが好ましい。また、当該加熱処理は、酸素を含む雰囲気で行うことが好ましい。このような処理を行うことによって、酸化膜230Cの表面などに吸着している水分および水素を除去し、さらに酸化物230a、酸化物230b、および酸化膜230C中の水分濃度および水素濃度を低減させることができる。加熱処理の温度は、100℃以上400℃以下が好ましい。
【0273】
絶縁膜250Aは、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、ALD法などを用いて成膜することができる。また、絶縁膜250Aは、水素原子が低減または除去されたガスを用いた成膜方法で成膜することが好ましい。これにより、絶縁膜250Aの水素濃度を低減することができる。絶縁膜250Aは、後の工程で酸化物230cと接する絶縁体250となるため、このように水素濃度が低減されていることが好適である。
【0274】
なお、絶縁体250を2層の積層構造とする場合、絶縁体250の下層となる絶縁膜および絶縁体250の上層となる絶縁膜は、大気環境にさらさずに連続して成膜することが好ましい。大気開放せずに成膜することで、絶縁体250の下層となる絶縁膜、および絶縁体250の上層となる絶縁膜上に大気環境からの不純物または水分が付着することを防ぐことができ、絶縁体250の下層となる絶縁膜と絶縁体250の上層となる絶縁膜との界面近傍を清浄に保つことができる。
【0275】
ここで、絶縁膜250Aを成膜後に、酸素を含む雰囲気下、および減圧下にて、マイクロ波処理を行ってもよい。なお、マイクロ波処理後に減圧状態を保ったままで、加熱処理を行ってもよい。マイクロ波処理を行うことにより、絶縁膜250Aなどの膜質を改質することで、水素、水、不純物等の拡散を抑制することができる。従って、導電体260となる導電膜の成膜などの後工程、または熱処理などの後処理により、絶縁体250を介して、水素、水、不純物等が、酸化物230b、酸化物230aなどへ拡散することを抑制することができる。
【0276】
次に、導電膜260A、導電膜260Bを順に成膜する(
図10A乃至
図10C参照。)。導電膜260Aおよび導電膜260Bの成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、ALD法などを用いて行うことができる。本実施の形態では、ALD法を用いて、導電膜260Aを成膜し、大気解放せずに減圧下にて、連続してCVD法を用いて導電膜260Bを成膜する。
【0277】
次に、CMP処理によって、酸化膜230C、絶縁膜250A、導電膜260A、および導電膜260Bを絶縁体280が露出するまで研磨することによって、酸化物230c、絶縁体250、および導電体260(導電体260a、および導電体260b)を形成する(
図11A乃至
図11C参照。)。
【0278】
上記CMP処理により、絶縁体280の領域292を含む一部を除去してもよい。当該領域を除去することで、絶縁体280が有する過剰酸素の量を低減することができる。
【0279】
上記加工により、酸化物230cは、酸化物230bに達する開口および酸化物230bの溝部の内壁(側壁、および底面)を覆うように配置される。また、絶縁体250は、酸化物230cを介して、上記開口および上記溝部の内壁を覆うように配置される。また、導電体260は、酸化物230c、および絶縁体250を介して、上記開口および上記溝部を埋め込むように配置される。
【0280】
次に、上記の加熱処理と同様の条件で加熱処理を行ってもよい。本実施の形態では、窒素雰囲気にて400℃の温度で1時間の処理を行う。該加熱処理によって、絶縁体250および絶縁体280中の水分濃度および水素濃度を低減させることができる。なお、上記加熱処理後、大気に曝すことなく連続して、絶縁体282の成膜を行ってもよい。
【0281】
次に、酸化物230b上、酸化物230c上、絶縁体250上、導電体260上、および絶縁体280上に、絶縁体282を形成する。絶縁体282の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、ALD法などを用いて行うことができる。絶縁体282としては、例えば、スパッタリング法によって、酸化アルミニウムを成膜することが好ましい。また、基板加熱を行いながら、絶縁体282を成膜することが好ましい。また、導電体260の上面に接して、絶縁体282を形成することで、この後の加熱処理において、絶縁体280が有する酸素が導電体260へ吸収されることを抑制することができるため好ましい。
【0282】
次に、絶縁体282上に、絶縁体283を形成する。絶縁体283の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。本実施の形態では、スパッタリング法を用いて、窒化シリコンを成膜する。
【0283】
次に、絶縁体271、絶縁体280、絶縁体282、および絶縁体283に、導電体240に達する開口を形成する。当該開口の形成は、リソグラフィー法を用いて行えばよい。なお、
図1Aで当該開口の形状は、上面視において円形状にしているが、これに限られるものではない。例えば、当該開口が、上面視において、楕円などの略円形状、四角形などの多角形状、四角形等の多角形の角部を丸めた形状になっていてもよい。
【0284】
次に、絶縁体276となる絶縁膜を成膜し、当該絶縁膜を異方性エッチングして絶縁体276(絶縁体276a、および絶縁体276b)を形成する。絶縁体276となる絶縁膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。絶縁体276となる絶縁膜としては、酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁膜を用いることが好ましい。例えば、ALD法を用いて、酸化アルミニウムを成膜することが好ましい。または、PEALD法を用いて、窒化シリコンを成膜することが好ましい。窒化シリコンは水素に対するブロッキング性が高いため好ましい。
【0285】
また、絶縁体276となる絶縁膜の異方性エッチングとしては、例えばドライエッチング法などを用いればよい。開口の側壁部に絶縁体276を設けることで、外方からの酸素の透過を抑制し、次に形成する導電体246aおよび導電体246bの酸化を防止することができる。また、導電体246aおよび導電体246bから、水、水素などの不純物が外部に拡散することを防ぐことができる。
【0286】
次に、導電体246aおよび導電体246bとなる導電膜を成膜する。導電体246aおよび導電体246bとなる導電膜は、水、水素など不純物の透過を抑制する機能を有する導電体を含む積層構造とすることが望ましい。たとえば、窒化タンタル、窒化チタンなどと、タングステン、モリブデン、銅など、と、の積層とすることができる。導電体246となる導電膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて行うことができる。
【0287】
次に、CMP処理を行うことで、導電体246aおよび導電体246bとなる導電膜の一部を除去し、絶縁体283および絶縁体276の上面を露出する。その結果、開口のみに、当該導電膜が残存することで上面が平坦な導電体246aおよび導電体246bを形成することができる。なお、当該CMP処理により、絶縁体283の上面の一部および絶縁体276の上面の一部が除去される場合がある。
【0288】
次に、導電体248となる導電膜を成膜する。導電体248となる導電膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて行うことができる。
【0289】
次に、導電体248となる導電膜をリソグラフィー法によって加工し、導電体246aの上面と接する導電体248a、および導電体246bの上面と接する導電体248bを形成する。この時、図示しないが、導電体248aおよび導電体248bと、絶縁体283とが重ならない領域の絶縁体283の一部が除去されることがある。
【0290】
次に、導電体248上、および絶縁体283上に、絶縁体286を成膜する(
図1A乃至
図1C参照。)。絶縁体286の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて行うことができる。また、絶縁体286は、多層としてもよい。例えば、スパッタリング法を用いて、窒化シリコンを成膜し、当該窒化シリコン上に、CVD法を用いて窒化シリコンを成膜してもよい。
【0291】
以上により、
図1A乃至
図1Cに示すトランジスタ200を有する半導体装置を作製することができる。
【0292】
<半導体装置の変形例1>
以下では、
図15A乃至
図15Cを用いて、本発明の一態様である半導体装置の一例について説明する。
【0293】
図15Aは半導体装置の上面図を示す。また、
図15Bは、
図15Aに示すA1-A2の一点鎖線で示す部位に対応する断面図である。また、
図15Cは、
図15AにA3-A4の一点鎖線で示す部位に対応する断面図である。
図15Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いている。
【0294】
なお、
図15A乃至
図15Cに示す半導体装置において、<半導体装置の構成例1>に示した半導体装置を構成する構造と同機能を有する構造には、同符号を付記する。なお、本項目においても、半導体装置の構成材料については<半導体装置の構成例1>で詳細に説明した材料を用いることができる。
【0295】
【0296】
図15A乃至
図15Cに示す半導体装置では、絶縁体214、絶縁体216、絶縁体222、絶縁体224、絶縁体280、および絶縁体282がパターニングされている。また、絶縁体283は、絶縁体214、絶縁体216、絶縁体222、絶縁体224、絶縁体280、および絶縁体282を覆う構造になっている。つまり、絶縁体283は、絶縁体282の上面および側面と、絶縁体212の上面に接する。これにより、酸化物230などを含む、絶縁体214、絶縁体216、絶縁体222、絶縁体224、絶縁体280、および絶縁体282は、絶縁体283と、絶縁体212とによって、外部から隔離される。別言すると、トランジスタ200は、絶縁体283と絶縁体212とで封止された領域内に配置される。
【0297】
例えば、絶縁体214、および絶縁体282を、水素を捕獲および水素を固着する機能を有する材料を用いて形成し、絶縁体212、および絶縁体283を水素および酸素に対する拡散を抑制する機能を有する材料を用いて形成すると好ましい。代表的には、絶縁体214、および絶縁体282としては、酸化アルミニウムを用いることができる。また、代表的には、絶縁体212、および絶縁体283としては、窒化シリコンを用いることができる。
【0298】
上記構成にすることで、上記封止された領域外に含まれる水素が、上記封止された領域内に混入することを抑制することができる。
【0299】
また、
図15A乃至
図15Cに示すトランジスタ200では、絶縁体212、および絶縁体283を、単層として設ける構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、絶縁体212、および絶縁体283のそれぞれを2層以上の積層構造として設ける構成にしてもよい。
【0300】
絶縁体284は、層間膜として機能する。絶縁体284は、絶縁体214よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。絶縁体284は、例えば、絶縁体280と同様の材料を用いて設けることができる。
【0301】
<半導体装置の応用例1>
以下では、
図16Aおよび
図16Bを用いて、先の<半導体装置の構成例1>および先の<半導体装置の変形例1>で示したものとは異なる、本発明の一態様に係るトランジスタ200を有する半導体装置の一例について説明する。なお、
図16Aおよび
図16Bに示す半導体装置において、<半導体装置の変形例1>に示した半導体装置(
図1A乃至
図1C参照。)を構成する構造と同機能を有する構造には、同符号を付記する。なお、本項目において、トランジスタ200の構成材料については<半導体装置の構成例1>および<半導体装置の変形例1>で詳細に説明した材料を用いることができる。
【0302】
図16Aおよび
図16Bに、複数のトランジスタ200_1乃至トランジスタ200_nを、絶縁体283と絶縁体212で、包括して封止した構成について示す。なお、
図16Aおよび
図16Bにおいて、トランジスタ200_1乃至トランジスタ200_nは、チャネル長方向に並んでいるように見えるが、これにかぎられるものではない。トランジスタ200_1乃至トランジスタ200_nは、チャネル幅方向に並んでいてもよいし、マトリクス状に配置されていてもよい。また、設計に応じて、規則性を持たずに配置されていてもよい。
【0303】
図16Aに示すように、複数のトランジスタ200_1乃至トランジスタ200_nの外側において、絶縁体283と絶縁体212が接する部分(以下、封止部265と呼ぶ場合がある。)が形成されている。封止部265は、複数のトランジスタ200_1乃至トランジスタ200_nを囲むように形成されている。このような構造にすることで、複数のトランジスタ200_1乃至トランジスタ200_nを絶縁体283と絶縁体212で包み込むことができる。よって封止部265に囲まれたトランジスタ群が、基板上に複数設けられることになる。
【0304】
また、封止部265に重ねてダイシングライン(スクライブライン、分断ライン、又は切断ラインと呼ぶ場合がある)を設けてもよい。上記基板はダイシングラインにおいて分断されるため、封止部265に囲まれたトランジスタ群が1チップとして取り出されることになる。
【0305】
また、
図16Aでは、複数のトランジスタ200_1乃至トランジスタ200_nを一つの封止部265で囲む例について示したが、これに限られるものではない。
図16Bに示すように、複数のトランジスタ200_1乃至トランジスタ200_nを複数の封止部で囲む構成にしてもよい。
図16Bでは、複数のトランジスタ200_1乃至トランジスタ200_nを封止部265aで囲み、さらに外側の封止部265bでも囲む構成にしている。
【0306】
このように、複数の封止部で複数のトランジスタ200_1乃至トランジスタ200_nを囲む構成にすることで、絶縁体283と絶縁体212が接する部分が増えるため、絶縁体283と絶縁体212の密着性をより向上させることができる。これにより、より確実に複数のトランジスタ200_1乃至トランジスタ200_nを封止することができる。
【0307】
この場合、封止部265aまたは封止部265bに重ねてダイシングラインを設けてもよいし、封止部265aと封止部265bの間にダイシングラインを設けてもよい。
【0308】
本発明の一態様により、トランジスタ特性のばらつきが少ない半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、信頼性が良好な半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、良好な電気特性を有する半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、オン電流が大きい半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、微細化または高集積化が可能な半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、低消費電力の半導体装置を提供することができる。
【0309】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態または実施例に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0310】
(実施の形態2)
本実施の形態では、
図17乃至
図26を用いて、本発明の一態様に係るトランジスタ200を有する半導体装置の一例、およびその作製方法について説明する。
【0311】
なお、先の実施の形態で示した半導体装置と同様の機能を有する構造体には同符号を付与している。従って、同符号を付した構造体については、先の実施の形態を参酌することができる。
【0312】
<半導体装置の構成例2>
図17を用いて、トランジスタ200を有する半導体装置の構成を説明する。
図17A乃至
図17Cは、トランジスタ200を有する半導体装置の上面図および断面図である。
図17Aは、当該半導体装置の上面図である。また、
図17B乃至
図17Cは、当該半導体装置の断面図である。ここで、
図17Bは、
図17AにA1-A2の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200のチャネル長方向の断面図でもある。また、
図17Cは、
図17AにA3-A4の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200のチャネル幅方向の断面図でもある。なお、
図17Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いている。
【0313】
本発明の一態様の半導体装置は、基板(図示せず)上の絶縁体212と、絶縁体212上の絶縁体214と、絶縁体214上のトランジスタ200と、トランジスタ200上の絶縁体274と、絶縁体274上の絶縁体280と、絶縁体280上の絶縁体282と、絶縁体282上の絶縁体283と、を有する。絶縁体212、絶縁体214、絶縁体274、絶縁体280、絶縁体282、および絶縁体283は層間膜として機能する。
【0314】
また、トランジスタ200と電気的に接続し、プラグとして機能する導電体246(導電体246a、および導電体246b)を有する。なお、プラグとして機能する導電体246の側面に接して絶縁体276(絶縁体276a、および絶縁体276b)が設けられる。また、絶縁体283上、および導電体246上には、導電体246と電気的に接続し、配線として機能する導電体248(導電体248a、および導電体248b)が設けられる。また、導電体248上、および絶縁体284上には、絶縁体286が設けられる。
【0315】
具体的には、絶縁体274、絶縁体280、絶縁体282、および絶縁体283の開口の内壁に接して絶縁体276aが設けられ、絶縁体276aの側面に接して導電体246aの第1の導電体が設けられ、さらに内側に導電体246aの第2の導電体が設けられている。また、絶縁体280、絶縁体282、および絶縁体283の開口の内壁に接して絶縁体276bが設けられ、絶縁体276bの側面に接して導電体246bの第1の導電体が設けられ、さらに、内側に導電体246bの第2の導電体が設けられている。
【0316】
ここで、
図17Bに示すように導電体246の上面の高さと、導電体248と重なる領域の、絶縁体283の上面の高さと、は同程度にできる。なお、トランジスタ200では、導電体246の第1の導電体および導電体246の第2の導電体を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体246を単層、または3層以上の積層構造として設ける構成にしてもよい。構造体が積層構造を有する場合、形成順に序数を付与し、区別する場合がある。
【0317】
[トランジスタ200]
図17A乃至
図17Cに示すように、トランジスタ200は、絶縁体214上の絶縁体216と、絶縁体214または絶縁体216に埋め込まれるように配置された導電体205(導電体205a、および導電体205b)と、絶縁体216上、および導電体205上の絶縁体222と、絶縁体222上の絶縁体224と、絶縁体224上の酸化物230aと、酸化物230a上の酸化物230bと、酸化物230b上の、酸化物241(酸化物241a、および酸化物241b)および酸化物230cと、酸化物230c上の酸化物230dと、酸化物241a上の導電体240aと、導電体240a上の絶縁体271aと、酸化物241b上の導電体240bと、導電体240b上の絶縁体271bと、酸化物230d上の絶縁体250と、絶縁体250上に位置し、酸化物230c、および酸化物230dの一部と重なる導電体260(導電体260a、および導電体260b)と、を有する。また、酸化物230cは、酸化物241aの側面、酸化物241bの側面、導電体240aの側面、および導電体240bの側面、絶縁体271aの側面、および絶縁体271bの側面とそれぞれ接する。
【0318】
ここで、
図17Bおよび
図17Cに示すように、導電体260の上面は、絶縁体250の上面、酸化物230c、および酸化物230dの上面と略一致して配置される。また、絶縁体282は、導電体260、絶縁体250、酸化物230c、酸化物230d、および絶縁体280のそれぞれの上面と接する。
【0319】
なお、以下において、絶縁体271aと絶縁体271bをまとめて絶縁体271と呼ぶ場合がある。
【0320】
絶縁体280には、酸化物230bに達する開口が設けられる。当該開口内に、酸化物230c、酸化物230d、絶縁体250、および導電体260が配置されている。また、トランジスタ200のチャネル長方向において、導電体240aおよび酸化物241aと、導電体240bおよび酸化物241bと、の間に導電体260、絶縁体250、酸化物230d、および酸化物230cが設けられている。絶縁体250は、導電体260の側面と接する領域と、導電体260の底面と接する領域と、を有する。酸化物230d、は酸化物230cと絶縁体250との間に、設けられている。また、酸化物230bと重なる領域において、酸化物230cは、酸化物230bと接する領域と、酸化物230d、および絶縁体250を介して導電体260の側面と重なる領域と、絶縁体250を介して導電体260の底面と重なる領域と、を有する。
【0321】
酸化物230は、絶縁体224の上に配置された酸化物230aと、酸化物230aの上に配置された酸化物230bと、酸化物230bの上に配置され、少なくとも一部が酸化物230bに接する酸化物230c、酸化物230c上に配置された酸化物230dと、を有することが好ましい。
【0322】
なお、トランジスタ200は、チャネル形成領域を含む酸化物230(酸化物230a、酸化物230b、酸化物230c、および酸化物230d)に、半導体として機能する金属酸化物(以下、酸化物半導体ともいう。)を用いることが好ましい。
【0323】
チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたトランジスタは、非導通状態において極めてリーク電流が小さいため、低消費電力の半導体装置を提供できる。一方、酸化物半導体を用いたトランジスタは、酸化物半導体中の不純物及び酸素欠損によって、その電気特性が変動し、ノーマリーオン特性(ゲート電極に電圧を印加しなくてもチャネルが存在し、トランジスタに電流が流れる特性)となりやすい。
【0324】
従って、トランジスタのチャネル形成領域に用いる酸化物半導体は、不純物および酸素欠損が低減された高純度真性な酸化物半導体を用いることが好ましい。なお、本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性という。
【0325】
しかしながら、酸化物半導体を用いたトランジスタにおいて、トランジスタを構成する導電体、またはトランジスタと接続するプラグや配線に用いられる導電体に、酸化物半導体の酸素が徐々に吸収され、継時的変化の一つとして、酸素欠損を生じる場合がある。
【0326】
そこで、酸化物230bを実質的に高純度真性とすることが好ましい。酸化物230bを高純度真性とするために、酸化物230bに対し、酸素を添加する処理(以下、酸素インプラ処理、または酸素ドープ処理ともいう)を行うとよい。具体的に、酸素インプラ処理として、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法などを用いることができる。
【0327】
一方、イオン注入法などを用いて酸素を添加する処理を行う際に、酸化物230bの表面に、物理的な損傷が生じる場合がある。そのため、酸化膜230Cを介して、酸化物230bに、酸素を添加する処理を行うことが好ましい。従って、酸化膜230Cは、酸化物230bと同じ材料を用いるとよい。
【0328】
酸化物230cを介して、酸化物230bのチャネル形成領域に、酸素添加処理を行うことで、チャネル形成領域の表面に不純物が拡散、または損傷領域が生じることを抑制することができる。また、酸化物230bと、酸化物230cとに、同じ材料を用いるため、添加処理により、酸化膜230Cの一部が、酸化物230bへと拡散しても、不純物起因の問題は生じない。
【0329】
また、酸化物230bを実質的に高純度真性とした後、酸化物230bのチャネルが形成される領域を、酸化物230bよりも、酸素の拡散を抑制する酸化物230a、および酸化物230dにより、覆うことが好ましい。
【0330】
具体的には、図に示すように、酸化物230bの下に、酸化物230aを配置することで、酸化物230bから、酸素が引き抜かれることを抑制することができる。また、酸化物230aよりも下方に形成された構造物からの、酸化物230bに対する酸素および不純物の拡散を抑制することができる。
【0331】
また、酸化物230b、および酸化物230cの上に、酸化物230dを配置することで、酸化物230b、および酸化物230cから、酸素が引き抜かれることを抑制することができる。また、酸化物230dよりも上方に形成された構造物からの、酸化物230bに対する不純物の拡散を抑制することができる。
【0332】
なお、半導体として機能する金属酸化物は、バンドギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。このように、バンドギャップの大きい金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0333】
酸化物230として、例えば、インジウム、元素Mおよび亜鉛を有するIn-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、錫、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。また、酸化物230として、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物、インジウム酸化物を用いてもよい。
【0334】
ここで、酸化物230は、化学組成が異なる複数の酸化物層により、積層構造を有することが好ましい。具体的には、酸化物230bに用いる金属酸化物は、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物230a、または酸化物230dに用いる金属酸化物の元素Mに対するInの原子数比よりも、大きいことが好ましい。
【0335】
つまり、酸化物230a、および酸化物230dに用いる金属酸化物において、主成分である金属元素に対する元素Mの原子数比が、酸化物230bに用いる金属酸化物における、主成分である金属元素に対する元素Mの原子数比より、大きいことが好ましい。また、酸化物230aに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物230bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物230bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物230a、および酸化物230dに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。
【0336】
酸化物230aおよび酸化物230dが、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする)ことで、酸化物230a、酸化物230b、および酸化物230dのそれぞれの界面における欠陥準位密度を低くすることができる。このとき、キャリアの主たる経路は酸化物230b、またはその近傍、例えば、酸化物230bと酸化物230cとの界面になる。酸化物230bと酸化物230cとの界面における欠陥準位密度を低くすることができるため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さく、高いオン電流が得られる。
【0337】
例えば、酸化物230b、および酸化物230cとして、具体的には、In:M:Zn=4:2:3[原子数比]もしくはその近傍の組成、In:M:Zn=5:1:3[原子数比]もしくはその近傍の組成、またはIn:M:Zn=10:1:3[原子数比]もしくはその近傍の組成の金属酸化物、インジウム酸化物などを用いるとよい。
【0338】
また、酸化物230b、および酸化物230cは、結晶性を有することが好ましい。特に、酸化物230bには、CAAC-OS(c-axis aligned crystalline oxide semiconductor)を用いることが好ましい。
【0339】
また、本発明の一態様において、例えば、絶縁体212、絶縁体282、絶縁体283、絶縁体274、および絶縁体286として、窒化シリコンなどを用い、絶縁体214、および絶縁体271として、酸化アルミニウムなどを用いることが好ましい。これにより、水、水素などの不純物が絶縁体212、および絶縁体214を介して、基板側からトランジスタ200側に拡散するのを抑制することができる。または、絶縁体224などに含まれる酸素が絶縁体212、および絶縁体214を介して基板側に、拡散するのを抑制することができる。また、水、水素などの不純物が、絶縁体280、導電体248などから酸化物230に拡散するのを抑制することができる。この様に、トランジスタ200を、水、水素などの不純物、および酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁体212、絶縁体214、絶縁体271、絶縁体274、絶縁体282、および絶縁体283で取り囲む構造とすることが好ましい。
【0340】
例えば、酸化物230a、酸化物230b、酸化物241、導電体240、絶縁体271の側面を覆って、絶縁体274を設ける。絶縁体274は、絶縁体280よりも、少なくとも酸素に対するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。つまり、当該絶縁体は、酸素の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。例えば、絶縁体274は、絶縁体280よりも酸素の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。
【0341】
また、絶縁体274は、酸素を含まない雰囲気、特に不活性雰囲気下で成膜することが好ましい。酸素を含む雰囲気で成膜する場合、被成膜面に酸素が添加される場合がある。絶縁体224に酸素が添加された場合、当該酸素は酸化物230cを介して、チャネル形成領域へと拡散する蓋然性が高い。過剰な酸素がチャネル形成領域へと拡散した場合、トランジスタの電気特性の劣化の一因となる場合がある。従って、絶縁体274としては、例えば、窒化シリコンなどの窒化物などを成膜するとよい。
【0342】
特に、絶縁体274は、スパッタリング法によって、成膜することが好ましい。スパッタリング法は、水素雰囲気を含まないため、不純物となる水素の混入を抑制することができる。
【0343】
絶縁体271、および絶縁体274を設けることで、酸化物230a、酸化物230b、酸化物241、および導電体240を、絶縁体280から離隔することができる。よって、酸化物230a、酸化物230b、酸化物241、および導電体240に、絶縁体280から酸素が直接拡散するのを抑制することができる。従って、酸化物230のソース領域およびドレイン領域に過剰な酸素が供給されて、ソース領域およびドレイン領域のキャリア密度が低減するのを防ぐことができる。また、導電体240が過剰に酸化されて抵抗率が増大し、オン電流が低減するのを抑制することができる。
【0344】
また、導電体246を積層構造とする場合、絶縁体284、絶縁体283、絶縁体282、絶縁体280、および絶縁体271と接する導電体には、水、水素などの不純物の透過を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。例えば、タンタル、窒化タンタル、チタン、窒化チタン、ルテニウム、酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。また、水、水素などの不純物の透過を抑制する機能を有する導電性材料は、単層または積層で用いてもよい。また、絶縁体284より上層に含まれる水、水素などの不純物が、導電体246aおよび導電体246bを通じて酸化物230に混入するのを抑制することができる。
【0345】
特に、絶縁体282は、絶縁体274と同様に、酸素を含まない雰囲気、および不活性雰囲気下で成膜することが好ましい。酸素を含む雰囲気で成膜する場合、被成膜面に酸素が添加される場合がある。絶縁体280に酸素が添加された場合、当該酸素は酸化物230cを介して、チャネル形成領域へと拡散する蓋然性が高い。過剰な酸素がチャネル形成領域へと拡散した場合、トランジスタの電気特性の劣化の一因となる場合がある。従って、絶縁体282としては、例えば、窒化シリコンなどの窒化物などを成膜するとよい。
【0346】
なお、絶縁体282に、酸化アルミニウムなどのバリア性が高い酸化膜を用いたい場合、被成膜面に酸素が注入されない条件で成膜するとよい。
【0347】
また、絶縁体282は、スパッタリング法によって、成膜することが好ましい。スパッタリング法は、水素雰囲気を含まないため、不純物となる水素の混入を抑制することができる。
【0348】
【0349】
【0350】
まず、本実施の形態において、先の実施の形態の
図2乃至
図4を用いて説明した作成方法を参酌することができる。
【0351】
次に、絶縁体224、酸化物230a、酸化物230b、酸化物層241B、導電層240B、および絶縁層271Bの上に、絶縁体274を成膜する。
【0352】
絶縁体274は、少なくとも酸素を含まない雰囲気下で成膜する。例えば、希ガス、窒素などの不活性雰囲気下で、成膜することが好ましい。具体的に、絶縁体274としては、窒化シリコンなどの窒化物などを成膜するとよい。
【0353】
酸素を含む雰囲気で成膜する場合、被成膜面に酸素が添加される場合がある。絶縁体224に酸素が添加された場合、当該酸素は酸化物230cを介して、チャネル形成領域へと拡散する蓋然性が高い。過剰な酸素がチャネル形成領域へと拡散した場合、トランジスタの電気特性の劣化の一因となる場合がある。
【0354】
続いて、絶縁体274上に、絶縁体280となる絶縁膜を形成する。当該絶縁膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、ALD法などを用いて行うことができる。
【0355】
次に、上記絶縁膜にCMP処理を行い、上面が平坦な絶縁体280を形成する(
図18A乃至
図18C参照。)。なお、絶縁体224と同様に、絶縁体280上に、例えば、スパッタリング法によって、酸化アルミニウムを成膜し、該酸化アルミニウムを絶縁体280に達するまで、CMP処理を行ってもよい。
【0356】
ここで、マイクロ波処理を行ってもよい。マイクロ波処理は、酸素を含む雰囲気下、および減圧下にて行うことが好ましい。マイクロ波処理後に減圧状態を保ったままで、加熱処理を行ってもよい。なお、加熱処理温度は、300℃以上、500℃以下とすることが好ましい。
【0357】
また、マイクロ波処理を行うことにより、絶縁体280の膜質を改質することで、水素、水、不純物などの拡散を抑制することができる。したがって、絶縁体280形成以降の後工程、または熱処理などにより、絶縁体280を介して、水素、水、不純物などが、酸化物230へ拡散することを抑制することができる。なお、本実施の形態においては、絶縁体280上からマイクロ波処理を行う形態について例示したが、これに限定されない。例えば、マイクロ波処理の他、プラズマ処理、またはマイクロ波励起プラズマ処理などを行ってもよい。
【0358】
次に、絶縁体280の一部、絶縁体274の一部、絶縁層271Bの一部、導電層240Bの一部、酸化物層241Bの一部、酸化物230bの一部を加工して、酸化物230bに達する開口を形成する。当該開口は、導電体205と重なるように形成することが好ましい。当該開口の形成によって、絶縁体271a、絶縁体271b、導電体240a、導電体240b、酸化物241a、および酸化物241bを形成する(
図19A乃至
図19C参照。)。
【0359】
ここで、上記開口を形成する工程で、酸化物230bの上部が除去されていてもよい。酸化物230bの一部が除去されることで、酸化物230bに溝部が形成される。
【0360】
なお、絶縁体280の一部、絶縁体274の一部、絶縁層271Bの一部、導電層240Bの一部、酸化物層241Bの一部、および酸化物230bの一部の加工は、ドライエッチング法、またはウェットエッチング法を用いることができる。ドライエッチング法による加工は微細加工に適している。また、当該加工は、それぞれ異なる条件で加工してもよい。例えば、絶縁体280の一部、および絶縁体274の一部をドライエッチング法で加工し、絶縁層271Bの一部をウェットエッチング法で加工し、酸化物層241Bの一部、導電層240Bの一部、および酸化物230bの一部をドライエッチング法で加工してもよい。また、酸化物層241Bの一部および導電層240Bの一部の加工と、酸化物230bの一部の加工とは、異なる条件で行ってもよい。
【0361】
なお、ドライエッチング法を用いて、酸化物230bの一部を除去して、溝部を形成する際に、バイアス電力を強くして処理することが好ましい。例えば、バイアス電力の電力密度を、0.02W/cm2以上にすればよく、0.03W/cm2以上にするのが好ましく、0.06W/cm2以上にするのがより好ましい。また、ドライエッチング処理時間は、溝部の深さに合わせて適宜設定すればよい。
【0362】
ここで、上記開口の工程にて、開口の内部に不純物、または酸化物230bの表面に損傷領域が生じる場合がある。当該不純物、および当該損傷領域は、洗浄工程により除去することが好ましい。
【0363】
次に、酸化膜230Cを成膜する(
図20A乃至
図20C参照)。酸化膜230Cの成膜前に加熱処理を行ってもよく、当該加熱処理は、減圧下で行い、大気に暴露することなく、連続して酸化膜230Cを成膜することが好ましい。また、当該加熱処理は、酸素を含む雰囲気で行うことが好ましい。このような処理を行うことによって、酸化物230bの表面などに吸着している水分および水素を除去し、さらに酸化物230aおよび酸化物230b中の水分濃度および水素濃度を低減させることができる。加熱処理の温度は、100℃以上400℃以下が好ましい。本実施の形態では、加熱処理の温度を200℃とする。
【0364】
ここで、酸化膜230Cは、少なくとも酸化物230bに形成された溝部の内壁、酸化物241の側面の一部、導電体240の側面の一部、絶縁体271の側面の一部、および絶縁体280の側面の一部と接するように設けられることが好ましい。導電体240は、酸化物241、絶縁体271および酸化膜230Cに囲まれることで、以降の工程において導電体240の酸化による導電率の低下を抑制することができる。
【0365】
酸化膜230Cの成膜はスパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、ALD法などを用いて行うことができる。酸化膜230Cは、酸化膜230Aと同様の成膜方法を用いて、成膜すればよい。本実施の形態では、酸化膜230Cとして、スパッタリング法によって、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]の酸化物ターゲットを用いて成膜する。
【0366】
ここで、酸化物230b、および酸化膜230Cが有する酸素欠損を低減し、酸化物230bを実質的に高純度真性とするために、酸化物230b、および酸化膜230Cに対し、酸素を添加する処理(以下、酸素インプラ処理、または酸素ドープ処理ともいう)を行う(
図21A乃至
図21C、および
図26A参照。なお、
図26Aは、
図21Cの一部を拡大して示した図である。)。
【0367】
酸化膜230Cを介して、酸化物230bのチャネル形成領域に、酸素添加処理を行うことで、チャネル形成領域の表面に不純物が拡散、または損傷領域が生じることを抑制することができる。特に、酸化膜230Cは、酸化物230bと同じ材料を用いているため、添加処理により、酸化膜230Cの一部が、酸化物230bへと拡散しても、不純物起因の問題は生じない。
【0368】
図21B、
図21C、および
図26Aに示すように、酸素インプラ処理により、酸化膜230C、酸化物230bの表面、絶縁体280の表面、および絶縁体224の表面に、酸素が添加された領域292を形成する。特に、領域292は、酸化膜230Cおよび酸化物230bの界面近傍に設けることが好ましい。酸化物230bの表面に酸素が添加されることで、後の加熱処理で、効率的に酸化物230bの酸素欠損を低減することができる。
【0369】
具体的に、酸素インプラ処理として、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法などを用いることで、酸化膜230C、および酸化物230bに酸素を添加することができる。また、酸素を添加する処理に用いるガスとして、16O2もしくは18O2などの酸素ガス、亜酸化窒素ガス、オゾンガスなどの酸素を含むガスが挙げられる。なお、当該酸素を添加する処理は、基板を加熱しながら行なってもよい。
【0370】
例えば、イオンドーピング処理における加速電圧は、0.5kV以上100kV以下、好ましくは1kV以上50kV以下、さらに好ましくは1kV以上30kV以下、より好ましくは1kV以上10kV以下とする。また、イオンの注入濃度は、1×1015atoms/cm2以上、好ましくは2×1015atoms/cm2以上、さらに好ましくは5×1015atoms/cm2以上、より好ましくは1×1016atoms/cm2以上、より好ましくは2×1016atoms/cm2以上とする。
【0371】
また、イオンドーピング処理によるイオンの添加は、試料面に対して概略垂直に行ってもよい。また、イオンドーピング処理によるイオンの添加は、試料面に対して角度を有していてもよい。
【0372】
ここで、
図21Bおよび
図21Cにおいて、矢印290は、酸素イオンの進行方向を模式的に示している。矢印290が示すように、酸化物230bのチャネル幅方向において、1つのイオンが、酸化物230bの上面に対する接線に対し、角度θ(45°<θ<135°)にて入射することが好ましい。また、酸化物230bのL長方向においては、1つのイオンが、酸化物230bの上面に対し、概略垂直にて入射することが好ましい。角度θを適宜調節することで、酸化物230bの側面、および酸化物230bの側面に成膜された酸化膜230Cにも酸素を添加することができる。
【0373】
次に、酸化膜230C上に、酸化膜230Dを成膜する(
図22A乃至
図22C参照)。酸化膜230Dは、酸化物230b、および酸化膜230Cよりも、酸素、および不純物に対するバリア性を有することが好ましい。
【0374】
酸化物230b、および酸化膜230Cの上に、酸化膜230Dを配置することで、酸化物230b、および酸化膜230Cから、酸素が引き抜かれることを抑制することができる。また、酸化膜230Dよりも上方に形成された構造物からの、酸化物230bに対する不純物の拡散を抑制することができる。
【0375】
【0376】
当該加熱処理は酸素雰囲気で行うことが好ましい。これにより、酸化物230bに酸素を供給して、酸素欠損の低減を図ることができる。なお、加熱処理は減圧状態で行ってもよい。または、酸素雰囲気で加熱処理した後に、大気に露出せずに連続して窒素雰囲気で加熱処理を行ってもよい。
【0377】
具体的に、加熱処理は、100℃以上450℃以下、好ましくは350℃以上400℃以下で行うとよい。なお、加熱処理は、酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、もしくは10%以上含む雰囲気で行うとよい。
【0378】
当該加熱処理による効果を、
図26を用いて説明する。
図26Bに示すように、当該加熱により、酸素インプラ処理により領域292へと添加された酸素は、酸化物230bの内部、絶縁体224の内部、絶縁体280の内部へと拡散する。また、同時に、
図26Cに示すように、拡散した酸素は、当該加熱により、酸化膜230Cおよび、酸化物230bが有する酸素欠損Voへ供給され、酸素欠損を補填することで、酸化膜230Cおよび酸化物230bの一部となる。一方、絶縁体224、および絶縁体280に拡散した酸素は、過剰酸素として、絶縁体224、および絶縁体280に留まる。
【0379】
チャネル形成領域の欠陥準位または酸素欠損を低減することで、電気特性の変動が少なく、信頼性の高いトランジスタを提供することができる。また、トランジスタはノーマリーオフ特性のトランジスタを提供することができる。
【0380】
一方、金属酸化物中に、適量値を超えた過剰な酸素を有した状態で、該トランジスタを駆動した場合、過剰な酸素原子の価数が変化し、該トランジスタの電気特性が変動することで、信頼性が悪くなる場合がある。
【0381】
そこで、酸化物230bのチャネル形成領域を、バリア性を有する酸化物230a、およびバリア性を有する酸化物230dで覆うことにより、絶縁体224が有する過剰酸素が、酸化物230bへ、過剰に供給されることを抑制することができる。
【0382】
次に絶縁膜250Aを成膜する(
図24A乃至
図24C参照)。絶縁膜250Aの成膜前に加熱処理を行ってもよい。当該加熱処理を減圧下で行った後、大気に暴露することなく、連続して絶縁膜250Aを成膜することが好ましい。また、当該加熱処理は、酸素を含む雰囲気で行うことが好ましい。このような処理を行うことによって、酸化膜230Dの表面などに吸着している水分および水素を除去し、さらに酸化物230a、酸化物230b、および酸化膜230D中の水分濃度および水素濃度を低減させることができる。加熱処理の温度は、100℃以上400℃以下が好ましい。
【0383】
次に、導電膜260A、導電膜260Bを順に成膜する(
図24A乃至
図24C参照。)。導電膜260Aおよび導電膜260Bの成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、ALD法などを用いて行うことができる。本実施の形態では、ALD法を用いて、導電膜260Aを成膜し、大気解放せずに減圧下にて、連続してCVD法を用いて導電膜260Bを成膜する。
【0384】
次に、CMP処理によって、酸化膜230C、酸化膜230D、絶縁膜250A、導電膜260A、および導電膜260Bを絶縁体280が露出するまで研磨することによって、酸化物230c、酸化物230d、絶縁体250、および導電体260(導電体260a、および導電体260b)を形成する(
図25A乃至
図25C参照。)。
【0385】
上記CMP処理により、絶縁体280の領域292を含む一部を除去してもよい。当該領域を除去することで、絶縁体280が有する過剰酸素の量を低減することができる。
【0386】
上記加工により、酸化物230cは、酸化物230bに達する開口および酸化物230bの溝部の内壁(側壁、および底面)を覆うように配置される。また、絶縁体250は、酸化物230cを介して、上記開口および上記溝部の内壁を覆うように配置される。また、導電体260は、酸化物230c、および絶縁体250を介して、上記開口および上記溝部を埋め込むように配置される。
【0387】
次に、上記の加熱処理と同様の条件で加熱処理を行ってもよい。本実施の形態では、窒素雰囲気にて400℃の温度で1時間の処理を行う。該加熱処理によって、絶縁体250および絶縁体280中の水分濃度および水素濃度を低減させることができる。なお、上記加熱処理後、大気に曝すことなく連続して、絶縁体282の成膜を行ってもよい。
【0388】
次に、酸化物230d上、酸化物230c上、絶縁体250上、導電体260上、および絶縁体280上に、絶縁体282を形成する。絶縁体282の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、ALD法などを用いて行うことができる。
【0389】
絶縁体282は、少なくとも酸素を含まない雰囲気下で成膜する。例えば、希ガス、窒素などの不活性雰囲気下で、成膜することが好ましい。具体的に、絶縁体282としては、窒化シリコンなどの窒化物などを成膜するとよい。
【0390】
酸素を含む雰囲気で成膜する場合、被成膜面に酸素が添加される場合がある。絶縁体280に酸素が添加された場合、当該酸素は酸化物230cを介して、チャネル形成領域へと拡散する蓋然性が高い。過剰な酸素がチャネル形成領域へと拡散した場合、トランジスタの電気特性の劣化の一因となる場合がある。
【0391】
次に、絶縁体282上に、絶縁体283を形成する。
【0392】
次に、絶縁体271、絶縁体280、絶縁体282、および絶縁体283に、導電体240に達する開口を形成する。
【0393】
次に、絶縁体276となる絶縁膜を成膜し、当該絶縁膜を異方性エッチングして絶縁体276(絶縁体276a、および絶縁体276b)を形成する。
【0394】
次に、導電体246aおよび導電体246bとなる導電膜を成膜する。導電体246aおよび導電体246bとなる導電膜は、水、水素など不純物の透過を抑制する機能を有する導電体を含む積層構造とすることが望ましい。
【0395】
次に、CMP処理を行うことで、導電体246aおよび導電体246bとなる導電膜の一部を除去し、絶縁体283および絶縁体276の上面を露出する。その結果、開口のみに、当該導電膜が残存することで上面が平坦な導電体246aおよび導電体246bを形成することができる。なお、当該CMP処理により、絶縁体283の上面の一部および絶縁体276の上面の一部が除去される場合がある。
【0396】
次に、導電体248となる導電膜を成膜する。
【0397】
次に、導電体248となる導電膜をリソグラフィー法によって加工し、導電体246aの上面と接する導電体248a、および導電体246bの上面と接する導電体248bを形成する。
【0398】
次に、導電体248上、および絶縁体283上に、絶縁体286を成膜する(
図17A乃至
図17C参照。)。
【0399】
以上により、
図17A乃至
図17Cに示すトランジスタ200を有する半導体装置を作製することができる。
【0400】
<半導体装置の変形例2>
以下では、
図27A乃至
図27Cを用いて、本発明の一態様である半導体装置の一例について説明する。
【0401】
図27Aは半導体装置の上面図を示す。また、
図27Bは、
図27Aに示すA1-A2の一点鎖線で示す部位に対応する断面図である。また、
図27Cは、
図27AにA3-A4の一点鎖線で示す部位に対応する断面図である。
図27Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いている。
【0402】
なお、
図27A乃至
図27Cに示す半導体装置において、<半導体装置の構成例2>に示した半導体装置を構成する構造と同機能を有する構造には、同符号を付記する。なお、本項目においても、半導体装置の構成材料については<半導体装置の構成例2>で詳細に説明した材料を用いることができる。
【0403】
【0404】
図27A乃至
図27Cに示す半導体装置では、絶縁体214、絶縁体216、絶縁体222、絶縁体224、絶縁体280、および絶縁体282がパターニングされている。また、絶縁体283は、絶縁体214、絶縁体216、絶縁体222、絶縁体224、絶縁体280、および絶縁体282を覆う構造になっている。つまり、絶縁体283は、絶縁体282の上面および側面と、絶縁体212の上面に接する。これにより、酸化物230などを含む、絶縁体214、絶縁体216、絶縁体222、絶縁体224、絶縁体280、および絶縁体282は、絶縁体283と、絶縁体212とによって、外部から隔離される。別言すると、トランジスタ200は、絶縁体283と絶縁体212とで封止された領域内に配置される。
【0405】
例えば、絶縁体214を、水素を捕獲および水素を固着する機能を有する材料を用いて形成し、絶縁体212、絶縁体282、および絶縁体283を水素および酸素に対する拡散を抑制する機能を有する材料を用いて形成すると好ましい。代表的には、絶縁体214としては、酸化アルミニウムを用いることができる。また、代表的には、絶縁体212、絶縁体282、および絶縁体283としては、窒化シリコンを用いることができる。
【0406】
上記構成にすることで、上記封止された領域外に含まれる水素が、上記封止された領域内に混入することを抑制することができる。
【0407】
また、
図27A乃至
図27Cに示すトランジスタ200では、絶縁体212、および絶縁体283を、単層として設ける構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、絶縁体212、および絶縁体283のそれぞれを2層以上の積層構造として設ける構成にしてもよい。
【0408】
絶縁体284は、層間膜として機能する。絶縁体284は、絶縁体214よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。絶縁体284は、例えば、絶縁体280と同様の材料を用いて設けることができる。
【0409】
<半導体装置の応用例2>
以下では、
図28Aおよび
図28Bを用いて、先の<半導体装置の構成例2>および先の<半導体装置の変形例2>で示したものとは異なる、本発明の一態様に係るトランジスタ200を有する半導体装置の一例について説明する。なお、
図28Aおよび
図28Bに示す半導体装置において、<半導体装置の変形例2>に示した半導体装置(
図17A乃至
図17C参照。)を構成する構造と同機能を有する構造には、同符号を付記する。なお、本項目において、トランジスタ200の構成材料については<半導体装置の構成例2>および<半導体装置の変形例2>で詳細に説明した材料を用いることができる。
【0410】
図28Aおよび
図28Bに、複数のトランジスタ200_1乃至トランジスタ200_nを、絶縁体283と絶縁体212で、包括して封止した構成について示す。なお、
図28Aおよび
図28Bにおいて、トランジスタ200_1乃至トランジスタ200_nは、チャネル長方向に並んでいるように見えるが、これにかぎられるものではない。トランジスタ200_1乃至トランジスタ200_nは、チャネル幅方向に並んでいてもよいし、マトリクス状に配置されていてもよい。また、設計に応じて、規則性を持たずに配置されていてもよい。
【0411】
図28Aに示すように、複数のトランジスタ200_1乃至トランジスタ200_nの外側において、絶縁体283と絶縁体212が接する部分(以下、封止部265と呼ぶ場合がある。)が形成されている。封止部265は、複数のトランジスタ200_1乃至トランジスタ200_nを囲むように形成されている。このような構造にすることで、複数のトランジスタ200_1乃至トランジスタ200_nを絶縁体283と絶縁体212で包み込むことができる。よって封止部265に囲まれたトランジスタ群が、基板上に複数設けられることになる。
【0412】
また、封止部265に重ねてダイシングライン(スクライブライン、分断ライン、又は切断ラインと呼ぶ場合がある)を設けてもよい。上記基板はダイシングラインにおいて分断されるため、封止部265に囲まれたトランジスタ群が1チップとして取り出されることになる。
【0413】
また、
図28Aでは、複数のトランジスタ200_1乃至トランジスタ200_nを一つの封止部265で囲む例について示したが、これに限られるものではない。
図28Bに示すように、複数のトランジスタ200_1乃至トランジスタ200_nを複数の封止部で囲む構成にしてもよい。
図28Bでは、複数のトランジスタ200_1乃至トランジスタ200_nを封止部265aで囲み、さらに外側の封止部265bでも囲む構成にしている。
【0414】
このように、複数の封止部で複数のトランジスタ200_1乃至トランジスタ200_nを囲む構成にすることで、絶縁体283と絶縁体212が接する部分が増えるため、絶縁体283と絶縁体212の密着性をより向上させることができる。これにより、より確実に複数のトランジスタ200_1乃至トランジスタ200_nを封止することができる。
【0415】
この場合、封止部265aまたは封止部265bに重ねてダイシングラインを設けてもよいし、封止部265aと封止部265bの間にダイシングラインを設けてもよい。
【0416】
本発明の一態様により、トランジスタ特性のばらつきが少ない半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、信頼性が良好な半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、良好な電気特性を有する半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、オン電流が大きい半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、微細化または高集積化が可能な半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、低消費電力の半導体装置を提供することができる。
【0417】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態または実施例に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0418】
(実施の形態3)
本実施の形態では、半導体装置の一形態を、
図29乃至
図32を用いて説明する。
【0419】
[記憶装置1]
本発明の一態様に係る半導体装置(記憶装置)の一例を
図29、および
図30に示す。本発明の一態様の半導体装置は、トランジスタ200、トランジスタ300、および容量素子100を有する。トランジスタ200はトランジスタ300の上方に設けられ、容量素子100はトランジスタ300、およびトランジスタ200の上方に設けられている。なお、トランジスタ200として、先の実施の形態で説明したトランジスタ200を用いることができる。
【0420】
トランジスタ200は、酸化物半導体を有する半導体層にチャネルが形成されるトランジスタである。トランジスタ200は、オフ電流が小さいため、これを記憶装置に用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作を必要としない、あるいは、リフレッシュ動作の頻度が極めて少ないため、記憶装置の消費電力を十分に低減することができる。
【0421】
図29、および
図30に示す半導体装置において、配線1001はトランジスタ300のソースと電気的に接続され、配線1002はトランジスタ300のドレインと電気的に接続されている。また、配線1003はトランジスタ200のソースおよびドレインの一方と電気的に接続され、配線1004はトランジスタ200の第1のゲートと電気的に接続され、配線1006はトランジスタ200の第2のゲートと電気的に接続されている。そして、トランジスタ300のゲート、およびトランジスタ200のソースおよびドレインの他方は、容量素子100の電極の一方と電気的に接続され、配線1005は容量素子100の電極の他方と電気的に接続されている。
【0422】
また、
図29、および
図30に示す記憶装置は、マトリクス状に配置することで、メモリセルアレイを構成することができる。
【0423】
<トランジスタ300>
トランジスタ300は、基板311上に設けられ、ゲートとして機能する導電体316、ゲート絶縁体として機能する絶縁体315、基板311の一部からなる半導体領域313、およびソース領域またはドレイン領域として機能する低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bを有する。トランジスタ300は、pチャネル型、あるいはnチャネル型のいずれでもよい。
【0424】
ここで、
図29、および
図30に示すトランジスタ300はチャネルが形成される半導体領域313(基板311の一部)が凸形状を有する。また、半導体領域313の側面および上面を、絶縁体315を介して、導電体316が覆うように設けられている。なお、導電体316は仕事関数を調整する材料を用いてもよい。このようなトランジスタ300は半導体基板の凸部を利用していることからFIN型トランジスタとも呼ばれる。なお、凸部の上部に接して、凸部を形成するためのマスクとして機能する絶縁体を有していてもよい。また、ここでは半導体基板の一部を加工して凸部を形成する場合を示したが、SOI基板を加工して凸形状を有する半導体膜を形成してもよい。
【0425】
なお、
図29、および
図30に示すトランジスタ300は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
【0426】
<容量素子100>
容量素子100は、トランジスタ200の上方に設けられる。容量素子100は、第1の電極として機能する導電体110と、第2の電極として機能する導電体120、および誘電体として機能する絶縁体130とを有する。ここで、絶縁体130は、上記実施の形態に示す絶縁体286として用いることができる絶縁体を用いることが好ましい。
【0427】
また、例えば、導電体246上に設けた導電体112と、導電体110は、同時に形成することができる。なお、導電体112は、容量素子100、トランジスタ200、またはトランジスタ300と電気的に接続するプラグ、または配線としての機能を有する。
【0428】
図29、および
図30では、導電体112、および導電体110は単層構造を示したが、当該構成に限定されず、2層以上の積層構造でもよい。例えば、バリア性を有する導電体と導電性が高い導電体との間に、バリア性を有する導電体、および導電性が高い導電体に対して密着性が高い導電体を形成してもよい。
【0429】
また、絶縁体130は、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム、窒化酸化ハフニウム、窒化ハフニウムなどを用いればよく、積層または単層で設けることができる。
【0430】
例えば、絶縁体130には、酸化窒化シリコンなどの絶縁耐力が大きい材料と、高誘電率(high-k)材料との積層構造を用いることが好ましい。当該構成により、容量素子100は、高誘電率(high-k)の絶縁体を有することで、十分な容量を確保でき、絶縁耐力が大きい絶縁体を有することで、絶縁耐力が向上し、容量素子100の静電破壊を抑制することができる。
【0431】
なお、高誘電率(high-k)材料(高い比誘電率の材料)の絶縁体としては、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化物、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化窒化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化窒化物またはシリコンおよびハフニウムを有する窒化物などがある。
【0432】
一方、絶縁耐力が大きい材料(低い比誘電率の材料)としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンまたは樹脂などがある。
【0433】
<配線層>
各構造体の間には、層間膜、配線、およびプラグ等が設けられた配線層が設けられていてもよい。また、配線層は、設計に応じて複数層設けることができる。ここで、プラグまたは配線としての機能を有する導電体は、複数の構造をまとめて同一の符号を付与する場合がある。また、本明細書等において、配線と、配線と電気的に接続するプラグとが一体物であってもよい。すなわち、導電体の一部が配線として機能する場合、および導電体の一部がプラグとして機能する場合もある。
【0434】
例えば、トランジスタ300上には、層間膜として、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326が順に積層して設けられている。また、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326には容量素子100、またはトランジスタ200と電気的に接続する導電体328、および導電体330等が埋め込まれている。なお、導電体328、および導電体330はプラグ、または配線として機能する。
【0435】
また、層間膜として機能する絶縁体は、その下方の凹凸形状を被覆する平坦化膜として機能してもよい。例えば、絶縁体322の上面は、平坦性を高めるために化学機械研磨(CMP)法等を用いた平坦化処理により平坦化されていてもよい。
【0436】
絶縁体326、および導電体330上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図29、および
図30において、絶縁体350、絶縁体352、及び絶縁体354が順に積層して設けられている。また、絶縁体350、絶縁体352、及び絶縁体354には、導電体356が形成されている。導電体356は、プラグ、または配線として機能する。
【0437】
同様に、絶縁体210、絶縁体212、絶縁体214、および絶縁体216には、導電体218、及びトランジスタ200を構成する導電体(導電体205)等が埋め込まれている。なお、導電体218は、容量素子100、またはトランジスタ300と電気的に接続するプラグ、または配線としての機能を有する。さらに、導電体120、および絶縁体130上には、絶縁体150が設けられている。
【0438】
ここで、上記実施の形態に示す絶縁体271と同様に、プラグとして機能する導電体218の側面に接して絶縁体217が設けられる。絶縁体217は、絶縁体210、絶縁体211、絶縁体212、絶縁体214、および絶縁体216に形成された開口の内壁に接して設けられている。つまり、絶縁体217は、導電体218と、絶縁体210、絶縁体211、絶縁体212、絶縁体214、および絶縁体216と、の間に設けられている。なお、導電体205は導電体218と並行して形成することができるため、導電体205の側面に接して絶縁体217が形成される場合もある。
【0439】
絶縁体217としては、例えば、窒化シリコン、酸化アルミニウム、または窒化酸化シリコンなどの絶縁体を用いればよい。絶縁体217は、絶縁体211、絶縁体212、絶縁体214、および絶縁体222に接して設けられるため、絶縁体210または絶縁体216などから水または水素などの不純物が、導電体218を通じて酸化物230に混入するのを抑制することができる。特に、窒化シリコンは水素に対するブロッキング性が高いため好適である。また、絶縁体210または絶縁体216に含まれる酸素が導電体218に吸収されるのを防ぐことができる。
【0440】
絶縁体217は、絶縁体271と同様の方法で形成することができる。例えば、PEALD法を用いて、窒化シリコンを成膜し、異方性エッチングを用いて導電体356に達する開口を形成すればよい。
【0441】
層間膜として用いることができる絶縁体としては、絶縁性を有する酸化物、窒化物、酸化窒化物、窒化酸化物、金属酸化物、金属酸化窒化物、金属窒化酸化物などがある。
【0442】
例えば、層間膜として機能する絶縁体には、比誘電率が低い材料を用いることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。したがって、絶縁体の機能に応じて、材料を選択するとよい。
【0443】
例えば、絶縁体150、絶縁体210、絶縁体352、および絶縁体354等には、比誘電率の低い絶縁体を有することが好ましい。例えば、当該絶縁体は、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンまたは樹脂などを有することが好ましい。または、当該絶縁体は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコンまたは空孔を有する酸化シリコンと、樹脂との積層構造を有することが好ましい。酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、樹脂と組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の低い積層構造とすることができる。樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミドなど)、ポリイミド、ポリカーボネートまたはアクリルなどがある。
【0444】
また、酸化物半導体を用いたトランジスタは、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体で囲うことによって、トランジスタの電気特性を安定にすることができる。従って、絶縁体214、絶縁体212および絶縁体350等には、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体を用いればよい。
【0445】
水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体としては、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウムまたはタンタルを含む絶縁体を、単層で、または積層で用いればよい。具体的には、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムまたは酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどを用いることができる。
【0446】
配線、プラグに用いることができる導電体としては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウムなどから選ばれた金属元素を1種以上含む材料を用いることができる。また、リン等の不純物元素を含有させた多結晶シリコンに代表される、電気伝導度が高い半導体、ニッケルシリサイドなどのシリサイドを用いてもよい。
【0447】
例えば、導電体328、導電体330、導電体356、導電体218、および導電体112等としては、上記の材料で形成される金属材料、合金材料、金属窒化物材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を、単層または積層して用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、タングステンを用いることが好ましい。または、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
【0448】
<酸化物半導体が設けられた層の配線、またはプラグ>
なお、トランジスタ200に、酸化物半導体を用いる場合、酸化物半導体の近傍に過剰酸素領域を有する絶縁体を設けることがある。その場合、該過剰酸素領域を有する絶縁体と、該過剰酸素領域を有する絶縁体に設ける導電体との間に、バリア性を有する絶縁体を設けることが好ましい。
【0449】
例えば、
図29、および
図30では、過剰酸素を有する絶縁体224および絶縁体280と、導電体246との間に、絶縁体271を設けるとよい。絶縁体271と、絶縁体222、絶縁体282、および絶縁体283とが接して設けられることで、絶縁体224、およびトランジスタ200は、バリア性を有する絶縁体により、封止する構造とすることができる。
【0450】
つまり、絶縁体271を設けることで、絶縁体224および絶縁体280が有する過剰酸素が、導電体246に吸収されることを抑制することができる。また、絶縁体271を有することで、不純物である水素が、導電体246を介して、トランジスタ200へ拡散することを抑制することができる。
【0451】
なお、絶縁体271としては、水または水素などの不純物、および酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。特に、窒化シリコンは水素に対するブロッキング性が高いため好ましい。また、他にも、例えば、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジムまたは酸化タンタルなどの金属酸化物などを用いることができる。
【0452】
また、上記実施の形態と同様に、トランジスタ200は、絶縁体212、絶縁体214、絶縁体282、および絶縁体283で封止されることが好ましい。このような構成とすることで、絶縁体284、絶縁体150などに含まれる水素が絶縁体280などに混入するのを低減することができる。
【0453】
ここで、絶縁体283、および絶縁体282には導電体246が、絶縁体214、絶縁体212、および絶縁体211には導電体218が貫通しているが、上記の通り、絶縁体271が導電体246に接して設けられ、絶縁体217が導電体218に接して設けられている。これにより、導電体246および導電体218を介して、絶縁体212、絶縁体214、絶縁体282、および絶縁体283の内側に混入する水素を低減することができる。このようにして、絶縁体212、絶縁体214、絶縁体282、絶縁体283、絶縁体271、および絶縁体217でトランジスタ200をより確実に封止し、絶縁体284等に含まれる水素などの不純物が外側から混入するのを低減することができる。
【0454】
また、絶縁体216、絶縁体224、絶縁体280、絶縁体250、および絶縁体284は、先の実施の形態に示すように、水素原子が低減または除去されたガスを用いた成膜方法で形成されることが好ましい。これにより、絶縁体216、絶縁体224、絶縁体280、絶縁体250、および絶縁体284の水素濃度を低減することができる。
【0455】
このようにして、トランジスタ200近傍のシリコン系絶縁膜の水素濃度を低減し、酸化物230の水素濃度を低減することができる。
【0456】
<ダイシングライン>
以下では、大面積基板を半導体素子ごとに分断することによって、複数の半導体装置をチップ状で取り出す場合に設けられるダイシングライン(スクライブライン、分断ライン、又は切断ラインと呼ぶ場合がある)について説明する。分断方法としては、例えば、まず、基板に半導体素子を分断するための溝(ダイシングライン)を形成した後、ダイシングラインにおいて切断し、複数の半導体装置に分断(分割)する場合がある。
【0457】
ここで、例えば、
図29、および
図30に示すように、絶縁体283と、絶縁体212とが接する領域がダイシングラインと重なるように設計することが好ましい。つまり、複数のトランジスタ200を有するメモリセルの外縁に設けられるダイシングラインとなる領域近傍において、絶縁体282、絶縁体280、絶縁体224、絶縁体222、絶縁体216、および絶縁体214に開口を設ける。
【0458】
つまり、上記絶縁体282、絶縁体280、絶縁体224、絶縁体222、絶縁体216、および絶縁体214に設けた開口において、絶縁体212と、絶縁体283とが接する。絶縁体212、および絶縁体283を、同材料、および同方法で設けることで、密着性を高めることができる。例えば、窒化シリコンを用いることが好ましい。
【0459】
当該構造により、絶縁体212、絶縁体214、絶縁体282、および絶縁体283で、トランジスタ200を包み込むことができる。絶縁体212、絶縁体214、絶縁体282、および絶縁体283の少なくとも一は、酸素、水素、及び水の拡散を抑制する機能を有しているため、本実施の形態に示す半導体素子が形成された回路領域ごとに、基板を分断することにより、複数のチップに加工しても、分断した基板の側面方向から、水素又は水などの不純物が混入し、トランジスタ200に拡散することを防ぐことができる。
【0460】
また、当該構造により、絶縁体280、および絶縁体224の過剰酸素が外部に拡散することを防ぐことができる。従って、絶縁体280、および絶縁体224の過剰酸素は、効率的にトランジスタ200におけるチャネルが形成される酸化物に供給される。当該酸素により、トランジスタ200におけるチャネルが形成される酸化物の酸素欠損を低減することができる。これにより、トランジスタ200におけるチャネルが形成される酸化物を欠陥準位密度が低い、安定な特性を有する酸化物半導体とすることができる。つまり、トランジスタ200の電気特性の変動を抑制すると共に、信頼性を向上させることができる。
【0461】
なお、
図29、および
図30に示す記憶装置では、容量素子100の形状をプレーナ型としたが、本実施の形態に示す記憶装置はこれに限られるものではない。たとえば、
図31、および
図32に示すように、容量素子100の形状をシリンダ型にしてもよい。なお、
図32に示す記憶装置は、絶縁体150より下の構成は、
図31に示す半導体装置と同様である。
【0462】
図31、および
図32に示す容量素子100は、絶縁体130上の絶縁体150と、絶縁体150上の絶縁体142と、絶縁体150および絶縁体142に形成された開口の中に配置された導電体115と、導電体115および絶縁体142上の絶縁体145と、絶縁体145上の導電体125と、導電体125および絶縁体145上の絶縁体152と、を有する。ここで、絶縁体150および絶縁体142に形成された開口の中に導電体115、絶縁体145、および導電体125の少なくとも一部が配置される。
【0463】
導電体115は容量素子100の下部電極として機能し、導電体125は容量素子100の上部電極として機能し、絶縁体145は、容量素子100の誘電体として機能する。容量素子100は、絶縁体150および絶縁体142の開口において、底面だけでなく、側面においても上部電極と下部電極とが誘電体を挟んで対向する構成となっており、単位面積当たりの静電容量を大きくすることができる。よって、当該開口の深さを深くするほど、容量素子100の静電容量を大きくすることができる。このように容量素子100の単位面積当たりの静電容量を大きくすることにより、半導体装置の微細化または高集積化を推し進めることができる。
【0464】
絶縁体152は、絶縁体280に用いることができる絶縁体を用いればよい。また、絶縁体142は、絶縁体150の開口を形成するときのエッチングストッパとして機能することが好ましく、絶縁体214に用いることができる絶縁体を用いればよい。
【0465】
絶縁体150および絶縁体142に形成された開口を上面から見た形状は、四角形としてもよいし、四角形以外の多角形状としてもよいし、多角形状において角部を湾曲させた形状としてもよいし、楕円を含む円形状としてもよい。ここで、上面視において、当該開口とトランジスタ200の重なる面積が多い方が好ましい。このような構成にすることにより、容量素子100とトランジスタ200を有する半導体装置の占有面積を低減することができる。
【0466】
導電体115は、絶縁体142、および絶縁体150に形成された開口に接して配置される。導電体115の上面は、絶縁体142の上面と略一致することが好ましい。また、導電体115の下面は、絶縁体130の開口を介して導電体110に接する。導電体115は、ALD法またはCVD法などを用いて成膜することが好ましく、例えば、導電体205に用いることができる導電体を用いればよい。
【0467】
絶縁体145は、導電体115および絶縁体142を覆うように配置される。例えば、ALD法またはCVD法などを用いて絶縁体145を成膜することが好ましい。絶縁体145は、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム、窒化酸化ハフニウム、窒化ハフニウムなどを用いればよく、積層または単層で設けることができる。例えば、絶縁体145として、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムの順番で積層された絶縁膜を用いることができる。
【0468】
また、絶縁体145には、酸化窒化シリコンなどの絶縁耐力が大きい材料、または高誘電率(high-k)材料を用いることが好ましい。または、絶縁耐力が大きい材料と高誘電率(high-k)材料の積層構造を用いてもよい。
【0469】
なお、高誘電率(high-k)材料(高い比誘電率の材料)の絶縁体としては、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化物、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化窒化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化窒化物、シリコンおよびハフニウムを有する窒化物などがある。このようなhigh-k材料を用いることで、絶縁体145を厚くしても容量素子100の静電容量を十分確保することができる。絶縁体145を厚くすることにより、導電体115と導電体125の間に生じるリーク電流を抑制することができる。
【0470】
一方、絶縁耐力が大きい材料としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、樹脂などがある。例えば、ALD法を用いて成膜した窒化シリコン(SiNx)、PEALD法を用いて成膜した酸化シリコン(SiOx)、ALD法を用いて成膜した窒化シリコン(SiNx)の順番で積層された絶縁膜を用いることができる。このような、絶縁耐力が大きい絶縁体を用いることで、絶縁耐力が向上し、容量素子100の静電破壊を抑制することができる。
【0471】
導電体125は、絶縁体142および絶縁体150に形成された開口を埋めるように配置される。また、導電体125は、導電体140、および導電体153を介して配線1005と電気的に接続している。導電体125は、ALD法またはCVD法などを用いて成膜することが好ましく、例えば、導電体205に用いることができる導電体を用いればよい。
【0472】
また、導電体153は、絶縁体154上に設けられており、絶縁体156に覆われている。導電体153は、導電体112に用いることができる導電体を用いればよく、絶縁体156は、絶縁体152に用いることができる絶縁体を用いればよい。ここで、導電体153は導電体140の上面に接しており、容量素子100、トランジスタ200、またはトランジスタ300の端子として機能する。
【0473】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態または実施例に示す構成、構造、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0474】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を作製する際に用いることができる装置について、
図33を参照して説明する。
【0475】
本発明の一態様の半導体装置を作製する際には、異なる膜種が連続成膜可能となる複数の処理室を有する、所謂マルチチャンバー装置を用いることが好ましい。各処理室では、それぞれ、スパッタリング、CVD、及びALDなどの成膜処理を行うことができる。例えば、1つの処理室をスパッタリング室とした場合、当該スパッタリング室には、ガス供給装置、当該ガス供給装置に接続されるガス精製装置、真空ポンプ、ターゲットなどを接続することができる。
【0476】
また、各処理室では、基板のクリーニング処理、プラズマ処理、逆スパッタリング処理、エッチング処理、アッシング処理、加熱処理などを行ってもよい。各処理室において、適宜異なる処理を行うことで、絶縁体、導電体、および半導体膜を、大気開放を行わずに成膜することができる。
【0477】
本発明の一態様に用いる半導体膜としては、代表的には酸化物半導体膜が挙げられる。特に、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い(酸素欠損の少ない)酸化物半導体膜は、優れた電気特性を有するトランジスタを作製することができる。ここでは、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性とよぶ。
【0478】
高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。従って、該酸化物半導体膜にチャネル形成領域が形成されるトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、オフ電流が著しく小さく、チャネル幅が1×106μmでチャネル長Lが10μmの素子であっても、ソース電極とドレイン電極間の電圧(ドレイン電圧)が1Vから10Vの範囲において、オフ電流が、半導体パラメータアナライザの測定限界以下、すなわち1×10-13A以下という特性を得ることができる。
【0479】
なお、酸化物半導体膜中の不純物としては、代表的には水、水素などが挙げられる。また、本明細書等において、酸化物半導体膜中から水および水素を低減または除去することを、脱水化、脱水素化と表す場合がある。また、酸化物半導体膜に酸素を添加することを、加酸素化と表す場合があり、加酸素化され且つ化学量論的組成よりも過剰の酸素を有する状態を過剰酸素状態と表す場合がある。
【0480】
ここで、酸化物半導体と、酸化物半導体の下層に位置する絶縁体、または導電体と、酸化物半導体の上層に位置する絶縁体、または導電体とを、大気開放を行わずに、異なる膜種を連続成膜することで、不純物(特に、水素、水)の濃度が低減された、実質的に高純度真性である酸化物半導体膜を成膜することができる。
【0481】
まず、本発明の一態様の半導体装置を作製する際に用いることができる装置の構成例の詳細について、
図33を用いて説明する。
図33に示す装置を用いることで、半導体膜と、半導体膜の下層に位置する絶縁体、または導電体と、半導体膜の上層に位置する絶縁体、または導電体とを連続成膜することができる。従って、半導体膜中に入り込みうる不純物(特に水素、水)を抑制することができる。
【0482】
図33は、枚葉式のマルチチャンバーの装置4000の上面図を模式的に示している。
【0483】
装置4000は、大気側基板供給室4010と、大気側基板供給室4010から、基板を搬送する大気側基板搬送室4012と、基板の搬入を行い、且つ室内の圧力を大気圧から減圧、または減圧から大気圧へ切り替えるロードロック室4020aと、基板の搬出を行い、且つ室内の圧力を減圧から大気圧、または大気圧から減圧へ切り替えるアンロードロック室4020bと、真空中の基板の搬送を行う搬送室4029、および搬送室4039と、搬送室4029と搬送室4039とを接続する移送室4030a、および移送室4030bと、成膜、または加熱を行う処理室4024a、処理室4024b、処理室4034a、処理室4034b、処理室4034c、処理室4034d、および処理室4034eと、を有する。
【0484】
なお、複数の処理室は、それぞれ、並列して異なる処理を行うことができる。従って、異なる膜種の積層構造を容易に作製することができる。なお、並列処理は、最大で処理室の数だけ行うことができる。例えば、
図33に示す装置4000は、7つの処理室を有する装置である。従って、1つの装置を用いて(本明細書ではin-situともいう)、7つの成膜処理を、大気解放せずに連続して行うことができる。
【0485】
一方、積層構造において、大気開放せずに作製できる積層数は、必ずしも処理室の数と同じにはならない。例えば、求める積層構造において、同材料の層を複数有する場合、当該層は1つの処理室で設けることができるため、設置された処理室の数よりも、多い積層数の積層構造を作製することができる。
【0486】
また、大気側基板供給室4010は、基板を収容するカセットポート4014と、基板のアライメントを行うアライメントポート4016と、を備える。なお、カセットポート4014は、複数(例えば、
図33においては、3つ)有する構成としてもよい。
【0487】
また、大気側基板搬送室4012は、ロードロック室4020aおよびアンロードロック室4020bと接続される。搬送室4029は、ロードロック室4020a、アンロードロック室4020b、移送室4030a、移送室4030b、処理室4024a、および処理室4024bと接続される。移送室4030a、および移送室4030bは、搬送室4029、および搬送室4039と接続される。また、搬送室4039は、移送室4030a、移送室4030b、処理室4034a、処理室4034b、処理室4034c、処理室4034d、および処理室4034eと接続される。
【0488】
なお、各室の接続部にはゲートバルブ4028、またはゲートバルブ4038が設けられており、大気側基板供給室4010と、大気側基板搬送室4012を除き、各室を独立して真空状態に保持することができる。また、大気側基板搬送室4012は、搬送ロボット4018を有する。搬送室4029は、搬送ロボット4026を有し、搬送室4039は、搬送ロボット4036を有する。搬送ロボット4018、搬送ロボット4026、および搬送ロボット4036は、複数の可動部と、基板を保持するアームと、を有し、各室へ基板を搬送することができる。
【0489】
なお、搬送室、処理室、ロードロック室、アンロードロック室および移送室は、上述の数に限定されず、設置スペースやプロセス条件に合わせて、適宜最適な数を設けることができる。
【0490】
特に、搬送室を複数有する場合、一つの搬送室と、他の搬送室との間には、2以上の移送室を有することが好ましい。例えば、
図33に示すように、搬送室4029、および搬送室4039を有する場合、搬送室4029と搬送室4039との間に、移送室4030aおよび移送室4030bが並列して配置されることが好ましい。
【0491】
移送室4030aおよび移送室4030bを並列して配置することで、例えば、搬送ロボット4026が移送室4030aに基板を搬入する工程と、搬送ロボット4036が移送室4030bに基板を搬入する工程と、を同時に行うことができる。また、搬送ロボット4026が移送室4030bから基板を搬出する工程と、搬送ロボット4036が移送室4030aから基板を搬出する工程と、を同時に行うことができる。つまり、複数の搬送ロボットを同時に駆動することで、生産効率が向上する。
【0492】
また、
図33では、1室の搬送室が、1つの搬送ロボットを有し、かつ複数の処理と接続する例を示したが、本構造に限定されない。1室の搬送室につき、複数の搬送ロボットを有していてもよい。
【0493】
また、搬送室4029、および搬送室4039の一方、または両方は、バルブを介して真空ポンプと、クライオポンプと、に接続している。従って、搬送室4029、および搬送室4039は、真空ポンプを用いて、大気圧から低真空または中真空(数100Paから0.1Pa程度)まで排気した後、バルブを切り替え、クライオポンプを用いて、中真空から高真空または超高真空(0.1Paから1×10-7Pa程度)まで排気することができる。
【0494】
また、例えば、クライオポンプは、1室の搬送室に対し、2台以上並列に接続してもよい。複数のクライオポンプを有することで、1台のクライオポンプがリジェネ中であっても、他のクライオポンプを使って排気することが可能となる。なお、リジェネとは、クライオポンプ内にため込まれた分子(または原子)を放出する処理とする。クライオポンプは、分子(または原子)をため込みすぎると排気能力が低下してくるため、定期的にリジェネを行うとよい。
【0495】
処理室4024a、処理室4024b、処理室4034a、処理室4034b、処理室4034c、処理室4034d、および処理室4034eは、それぞれ、異なる処理を並列して行うことができる。つまり、処理室毎に、設置された基板に対し、スパッタ法、CVD法、MBE法、PLD法、およびALD法などによる成膜処理、加熱処理、またはプラズマ処理を行うことができる。また、処理室では、加熱処理、またはプラズマ処理を行った後、成膜処理を行ってもよい。
【0496】
装置4000は、複数の処理室を有することで、処理と処理の間で基板を大気暴露することなく搬送することが可能なため、基板に不純物が吸着することを抑制できる。また、処理室毎に、異なる膜種の成膜処理、加熱処理、または、プラズマ処理を行うことができるため、成膜や加熱処理などの順番を自由に構築することができる。
【0497】
なお、各処理室は、バルブを介して真空ポンプと接続してもよい。真空ポンプとしては、例えば、ドライポンプ、およびメカニカルブースターポンプ等を用いることができる。
【0498】
また、各処理室は、プラズマを発生させることができる電源と接続してもよい。当該電源としては、DC電源、AC電源、高周波(RF、マイクロ波など)電源を設ければよい。また、DC電源にパルス発生装置を接続してもよい。
【0499】
また、処理室は、ガス供給装置を介して、ガス精製装置と接続してもよい。なお、ガス供給装置およびガス精製装置は、ガス種の数だけ設けるとよい。
【0500】
例えば、処理室で、スパッタリングによる成膜処理を行う場合、処理室は、ターゲットと、ターゲットに接続されたバッキングプレートと、バッキングプレートを介して、ターゲットと対向して配置されたカソードと、防着板と、基板ステージなどを備えてもよい。また、例えば、基板ステージは、基板を保持する基板保持機構や、基板を裏面から加熱する裏面ヒーター等を備えていてもよい。
【0501】
なお、基板ステージは、成膜時に床面に対して概略垂直状態に保持され、基板受け渡し時には床面に対して概略水平状態に保持される。ここで、基板ステージを床面に対して概略垂直とすることで、成膜時に混入しうるゴミまたはパーティクルが基板に付着する確率を、水平状態に保持するよりも抑制することができる。ただし、基板ステージを床面に対して垂直(90°)状態に保持すると、基板が落下する可能性があるため、基板ステージの床面に対する角度は、80°以上90°未満とすることが好ましい。
【0502】
なお、基板ステージの構成としては、上記構成に限定されない。例えば、基板ステージを床面に対して概略水平とする構成としてもよい。当該構成の場合、基板ステージよりも下方にターゲットを配置し、ターゲットと、基板ステージとの間に基板を配置すればよい。また、基板ステージは、基板が落下しないような基板を固定する治具、または基板を固定する機構を備えていてもよい。
【0503】
また、処理室に防着板を備えることで、ターゲットからスパッタリングされる粒子が不要な領域に堆積することを抑制することができる。また、防着板は、累積されたスパッタリング粒子が剥離しないように、加工することが望ましい。例えば、表面粗さを増加させるブラスト処理、または防着板の表面に凹凸を設けてもよい。
【0504】
バッキングプレートは、ターゲットを保持する機能を有し、カソードは、ターゲットに電圧(例えば、負電圧)を印加する機能を有する。
【0505】
なお、ターゲットは、導電体、絶縁体、または半導体を用いることができる。例えば、ターゲットが金属酸化物などの酸化物半導体の場合、処理室にて酸化物半導体膜を成膜することができる。また、ターゲットが金属酸化物の場合においても、成膜ガスとして、窒素ガスを用いると酸化窒化物半導体膜を形成することもできる。
【0506】
また、各処理室は、ガス加熱機構を介してガス供給装置と接続してもよい。ガス加熱機構はガス供給装置を介してガス精製装置と接続される。処理室に導入されるガスは、露点が-80℃以下、好ましくは-100℃以下、さらに好ましくは-120℃以下であるガスを用いることができ、例えば、酸素ガス、窒素ガス、および希ガス(アルゴンガスなど)を用いることができる。また、ガス加熱機構により、処理室に導入されるガスを40℃以上400℃以下、好ましくは50℃以上200℃以下に加熱することができる。なお、ガス加熱機構、ガス供給装置、およびガス精製装置は、ガス種の数だけ設けるとよい。
【0507】
また、各処理室は、バルブを介してターボ分子ポンプおよび真空ポンプと接続してもよい。また、各処理室には、クライオトラップを設けてもよい。
【0508】
なお、クライオトラップは、水などの比較的融点の高い分子(または原子)を吸着することができる機構である。ターボ分子ポンプは大きいサイズの分子(または原子)を安定して排気し、かつメンテナンスの頻度が低いため、生産性に優れる一方、水素や水の排気能力が低い。そこで、水などに対する排気能力を高めるため、クライオトラップを用いることができる。クライオトラップの冷凍機の温度は100K以下、好ましくは80K以下とする。また、クライオトラップが複数の冷凍機を有する場合、冷凍機ごとに温度を変えると、効率的に排気することが可能となるため好ましい。例えば、1段目の冷凍機の温度を100K以下とし、2段目の冷凍機の温度を20K以下とすればよい。
【0509】
なお、処理室の排気方法は、これに限定されず、接続する搬送室に示す排気方法(クライオポンプと真空ポンプとの排気方法)と同様の構成としてもよい。なお、搬送室の排気方法を処理室と同様の構成(ターボ分子ポンプと真空ポンプとの排気方法)としてもよい。
【0510】
特に、酸化物半導体膜を成膜する処理室の排気方法としては、真空ポンプとクライオトラップとを組み合わせる構成としてもよい。酸化物半導体膜を成膜する処理室に設けられる排気方法としては、少なくとも水分子を吸着することができる機能を有すると好ましい。
【0511】
また、酸化物半導体膜を成膜する処理室は、水素分子の分圧が1×10-2Pa以下であり、且つ水分子の分圧が1×10-4Pa以下である、と好ましい。また、酸化物半導体膜を成膜する処理室の待機状態における圧力が8.0×10-5Pa以下、好ましくは5.0×10-5Pa以下、さらに好ましくは1.0×10-5Pa以下である。また、上記の水素分子の分圧、および水分子の分圧の数値については、スパッタリングを行う処理室が待機状態のとき、および成膜状態(プラズマが放電状態)のときの双方の数値である。
【0512】
なお、処理室の全圧および分圧は、質量分析計を用いて測定することができる。例えば、株式会社アルバック製、四重極形質量分析計(Q-massともいう。)Qulee CGM-051を用いればよい。
【0513】
処理室の水素分子の分圧、水分子の分圧、および待機状態における圧力を上記の範囲とすることで、形成される、酸化物半導体膜の膜中の不純物の濃度を低くすることができる。
【0514】
特に、各処理室を、それぞれ、スパッタリングによる成膜処理に用いることで、先の実施の形態で示したトランジスタ200の構成の一部を、in-situで連続成膜した積層構造により作製することができる。
【0515】
トランジスタ200の作製方法においては、絶縁体212、絶縁体214、および絶縁体216を、装置4000を用いて連続成膜する。また、酸化膜230A、酸化膜230B、および酸化膜243Aを、装置4000を用いて連続成膜する。また、導電膜242A、絶縁膜271A、および導電膜248Aを、装置4000を用いて連続成膜する。
【0516】
つまり、絶縁体212、絶縁体214、および絶縁体216を、大気解放を行わず、連続して成膜することができる。また、酸化膜230A、酸化膜230B、および酸化膜243Aを、大気解放を行わず、連続して成膜することができる。また、導電膜242A、絶縁膜271A、および導電膜248Aを、大気解放を行わず、連続して成膜することができる。
【0517】
上記構成とすることで、不純物(代表的には、水、水素など)を徹底的に排除した積層膜を形成することが可能となる。また、上記積層膜の各界面は、大気に曝されないため、不純物濃度が低減される。
【0518】
また、例えば、処理室で、加熱処理を行う場合、処理室は、基板を格納することができる複数の加熱ステージを備えてもよい。なお、加熱ステージは、多段の構成としてもよい。加熱ステージの段数を増やすことで複数の基板を同時に加熱処理できるため、生産性を向上させることができる。
【0519】
処理室に用いることのできる加熱機構としては、例えば、抵抗発熱体などを用いて加熱する加熱機構としてもよい。または、加熱されたガスなどの媒体からの熱伝導または熱輻射によって、加熱する加熱機構としてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)などのRTA(Rapid Thermal Anneal)を用いることができる。LRTAは、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する。GRTAは、高温のガスを用いて熱処理を行う。ガスとしては、不活性ガスが用いられる。
【0520】
ロードロック室4020aは、基板受け渡しステージや、基板を裏面から加熱する裏面ヒーター等を備えていてもよい。ロードロック室4020aは、減圧状態から大気まで圧力を上昇させ、ロードロック室4020aの圧力が大気圧になった時に、大気側基板搬送室4012に設けられている搬送ロボット4018から基板受け渡しステージが基板を受け取る。その後、ロードロック室4020aを真空引きし、減圧状態としたのち、搬送室4029に設けられている搬送ロボット4026が基板受け渡しステージから基板を受け取る。
【0521】
また、ロードロック室4020aは、バルブを介して真空ポンプ、およびクライオポンプと接続されている。なお、アンロードロック室4020bは、ロードロック室4020aと同様の構成とすればよい。
【0522】
大気側基板搬送室4012は、搬送ロボット4018を有するため、搬送ロボット4018により、カセットポート4014とロードロック室4020aとの基板の受け渡しを行うことができる。また、大気側基板搬送室4012、および大気側基板供給室4010の上方にHEPAフィルター(High Efficiency Particulate Air Filter)等のゴミまたはパーティクルの混入を抑制するための機構を設けてもよい。また、カセットポート4014は、複数の基板を格納することができる。
【0523】
上記の装置4000を用いて、絶縁膜、半導体膜、および導電膜を、大気開放を行わず連続成膜することで、半導体膜への不純物の入り込みを好適に抑制できる。
【0524】
上記より、本発明の一態様の装置を用いることで、半導体膜を有する積層構造を連続成膜により、作製することができる。従って、半導体膜中に取り込まれる水素、水などの不純物を抑制し、且つ欠陥準位密度の低い半導体膜を作製することができる。
【0525】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態または実施例に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0526】
(実施の形態5)
本実施の形態では、
図34A、
図34Bおよび
図35A乃至
図35Hを用いて、本発明の一態様に係る、酸化物を半導体に用いたトランジスタ(以下、OSトランジスタと呼ぶ場合がある。)、および容量素子が適用されている記憶装置(以下、OSメモリ装置と呼ぶ場合がある。)について説明する。OSメモリ装置は、少なくとも容量素子と、容量素子の充放電を制御するOSトランジスタを有する記憶装置である。OSトランジスタのオフ電流は極めて小さいため、OSメモリ装置は優れた保持特性をもち、不揮発性メモリとして機能させることができる。
【0527】
<記憶装置の構成例>
図34AにOSメモリ装置の構成の一例を示す。記憶装置1400は、周辺回路1411、およびメモリセルアレイ1470を有する。周辺回路1411は、行回路1420、列回路1430、出力回路1440、およびコントロールロジック回路1460を有する。
【0528】
列回路1430は、例えば、列デコーダ、プリチャージ回路、センスアンプ、書き込み回路等を有する。プリチャージ回路は、配線をプリチャージする機能を有する。センスアンプは、メモリセルから読み出されたデータ信号を増幅する機能を有する。なお、上記配線は、メモリセルアレイ1470が有するメモリセルに接続されている配線であり、詳しくは後述する。増幅されたデータ信号は、出力回路1440を介して、データ信号RDATAとして記憶装置1400の外部に出力される。また、行回路1420は、例えば、行デコーダ、ワード線ドライバ回路等を有し、アクセスする行を選択することができる。
【0529】
記憶装置1400には、外部から電源電圧として低電源電圧(VSS)、周辺回路1411用の高電源電圧(VDD)、メモリセルアレイ1470用の高電源電圧(VIL)が供給される。また、記憶装置1400には、制御信号(CE、WE、RE)、アドレス信号ADDR、データ信号WDATAが外部から入力される。アドレス信号ADDRは、行デコーダおよび列デコーダに入力され、データ信号WDATAは書き込み回路に入力される。
【0530】
コントロールロジック回路1460は、外部から入力される制御信号(CE、WE、RE)を処理して、行デコーダ、列デコーダの制御信号を生成する。制御信号CEは、チップイネーブル信号であり、制御信号WEは、書き込みイネーブル信号であり、制御信号REは、読み出しイネーブル信号である。コントロールロジック回路1460が処理する信号は、これに限定されるものではなく、必要に応じて、他の制御信号を入力すればよい。
【0531】
メモリセルアレイ1470は、行列状に配置された、複数個のメモリセルMCと、複数の配線を有する。なお、メモリセルアレイ1470と行回路1420とを接続している配線の数は、メモリセルMCの構成、一列に有するメモリセルMCの数などによって決まる。また、メモリセルアレイ1470と列回路1430とを接続している配線の数は、メモリセルMCの構成、一行に有するメモリセルMCの数などによって決まる。
【0532】
なお、
図34Aにおいて、周辺回路1411とメモリセルアレイ1470を同一平面上に形成する例について示したが、本実施の形態はこれに限られるものではない。例えば、
図34Bに示すように、周辺回路1411の一部の上に、メモリセルアレイ1470が重なるように設けられてもよい。例えば、メモリセルアレイ1470の下に重なるように、センスアンプを設ける構成にしてもよい。
【0533】
図35A乃至
図35Hに上述のメモリセルMCに適用できるメモリセルの構成例について説明する。
【0534】
[DOSRAM]
図35A乃至
図35Cに、DRAMのメモリセルの回路構成例を示す。本明細書等において、1OSトランジスタ1容量素子型のメモリセルを用いたDRAMを、DOSRAM(Dynamic Oxide Semiconductor Random Access Memory)と呼ぶ場合がある。
図35Aに示す、メモリセル1471は、トランジスタM1と、容量素子CAと、を有する。なお、トランジスタM1は、ゲート(トップゲートと呼ぶ場合がある。)、及びバックゲートを有する。
【0535】
トランジスタM1の第1端子は、容量素子CAの第1端子と接続され、トランジスタM1の第2端子は、配線BILと接続され、トランジスタM1のゲートは、配線WOLと接続され、トランジスタM1のバックゲートは、配線BGLと接続されている。容量素子CAの第2端子は、配線CALと接続されている。
【0536】
配線BILは、ビット線として機能し、配線WOLは、ワード線として機能する。配線CALは、容量素子CAの第2端子に所定の電位を印加するための配線として機能する。データの書き込み時、及び読み出し時において、配線CALには、低レベル電位を印加するのが好ましい。配線BGLは、トランジスタM1のバックゲートに電位を印加するための配線として機能する。配線BGLに任意の電位を印加することによって、トランジスタM1のしきい値電圧を増減することができる。
【0537】
また、メモリセルMCは、メモリセル1471に限定されず、回路構成の変更を行うことができる。例えば、メモリセルMCは、
図35Bに示すメモリセル1472のように、トランジスタM1のバックゲートが、配線BGLでなく、配線WOLと接続される構成にしてもよい。また、例えば、メモリセルMCは、
図35Cに示すメモリセル1473ように、シングルゲート構造のトランジスタ、つまりバックゲートを有さないトランジスタM1で構成されたメモリセルとしてもよい。
【0538】
上記実施の形態に示す半導体装置をメモリセル1471等に用いる場合、トランジスタM1としてトランジスタ200を用い、容量素子CAとして容量素子100を用いることができる。トランジスタM1としてOSトランジスタを用いることによって、トランジスタM1のリーク電流を非常に小さくすることができる。つまり、書き込んだデータをトランジスタM1によって長時間保持することができるため、メモリセルのリフレッシュの頻度を少なくすることができる。また、メモリセルのリフレッシュ動作を不要にすることができる。また、リーク電流が非常に小さいため、メモリセル1471、メモリセル1472、メモリセル1473に対して多値データ、又はアナログデータを保持することができる。
【0539】
また、DOSRAMにおいて、上記のように、メモリセルアレイ1470の下に重なるように、センスアンプを設ける構成にすると、ビット線を短くすることができる。これにより、ビット線容量が小さくなり、メモリセルの保持容量を低減することができる。
【0540】
[NOSRAM]
図35D乃至
図35Gに、2トランジスタ1容量素子のゲインセル型のメモリセルの回路構成例を示す。
図35Dに示す、メモリセル1474は、トランジスタM2と、トランジスタM3と、容量素子CBと、を有する。なお、トランジスタM2は、トップゲート(単にゲートと呼ぶ場合がある。)、及びバックゲートを有する。本明細書等において、トランジスタM2にOSトランジスタを用いたゲインセル型のメモリセルを有する記憶装置を、NOSRAM(Nonvolatile Oxide Semiconductor RAM)と呼ぶ場合がある。
【0541】
トランジスタM2の第1端子は、容量素子CBの第1端子と接続され、トランジスタM2の第2端子は、配線WBLと接続され、トランジスタM2のゲートは、配線WOLと接続され、トランジスタM2のバックゲートは、配線BGLと接続されている。容量素子CBの第2端子は、配線CALと接続されている。トランジスタM3の第1端子は、配線RBLと接続され、トランジスタM3の第2端子は、配線SLと接続され、トランジスタM3のゲートは、容量素子CBの第1端子と接続されている。
【0542】
配線WBLは、書き込みビット線として機能し、配線RBLは、読み出しビット線として機能し、配線WOLは、ワード線として機能する。配線CALは、容量素子CBの第2端子に所定の電位を印加するための配線として機能する。データの書き込み時、データ保持の最中、データの読み出し時において、配線CALには、低レベル電位を印加するのが好ましい。配線BGLは、トランジスタM2のバックゲートに電位を印加するための配線として機能する。配線BGLに任意の電位を印加することによって、トランジスタM2のしきい値電圧を増減することができる。
【0543】
ここで、
図35Dに示すメモリセル1474は、
図37に示す記憶装置に対応している。つまり、トランジスタM2はトランジスタ200に、容量素子CBは容量素子100に、トランジスタM3はトランジスタ300に、配線WBLは配線1003に、配線WOLは配線1004に、配線BGLは配線1006に、配線CALは配線1005に、配線RBLは配線1002に、配線SLは配線1001に対応している。
【0544】
また、メモリセルMCは、メモリセル1474に限定されず、回路の構成を適宜変更することができる。例えば、メモリセルMCは、
図35Eに示すメモリセル1475のように、トランジスタM2のバックゲートが、配線BGLでなく、配線WOLと接続される構成にしてもよい。また、例えば、メモリセルMCは、
図35Fに示すメモリセル1476のように、シングルゲート構造のトランジスタ、つまりバックゲートを有さないトランジスタM2で構成されたメモリセルとしてもよい。また、例えば、メモリセルMCは、
図35Gに示すメモリセル1477のように、配線WBLと配線RBLを一本の配線BILとしてまとめた構成であってもよい。
【0545】
上記実施の形態に示す半導体装置をメモリセル1474等に用いる場合、トランジスタM2としてトランジスタ200を用い、トランジスタM3としてトランジスタ300を用い、容量素子CBとして容量素子100を用いることができる。トランジスタM2としてOSトランジスタを用いることによって、トランジスタM2のリーク電流を非常に小さくすることができる。これにより、書き込んだデータをトランジスタM2によって長時間保持することができるため、メモリセルのリフレッシュの頻度を少なくすることができる。また、メモリセルのリフレッシュ動作を不要にすることができる。また、リーク電流が非常に小さいため、メモリセル1474に多値データ、又はアナログデータを保持することができる。メモリセル1475乃至メモリセル1477も同様である。
【0546】
なお、トランジスタM3は、チャネル形成領域にシリコンを有するトランジスタ(以下、Siトランジスタと呼ぶ場合がある)であってもよい。Siトランジスタの導電型は、nチャネル型としてもよいし、pチャネル型としてもよい。Siトランジスタは、OSトランジスタよりも電界効果移動度が高くなる場合がある。よって、読み出しトランジスタとして機能するトランジスタM3として、Siトランジスタを用いてもよい。また、トランジスタM3にSiトランジスタを用いることで、トランジスタM3の上に積層してトランジスタM2を設けることができるため、メモリセルの占有面積を低減し、記憶装置の高集積化を図ることができる。
【0547】
また、トランジスタM3はOSトランジスタであってもよい。トランジスタM2およびトランジスタM3にOSトランジスタを用いた場合、メモリセルアレイ1470をn型トランジスタのみを用いて回路を構成することができる。
【0548】
また、
図35Hに3トランジスタ1容量素子のゲインセル型のメモリセルの一例を示す。
図35Hに示すメモリセル1478は、トランジスタM4乃至トランジスタM6、および容量素子CCを有する。容量素子CCは適宜設けられる。メモリセル1478は、配線BIL、配線RWL、配線WWL、配線BGL、および配線GNDLに電気的に接続されている。配線GNDLは低レベル電位を与える配線である。なお、メモリセル1478を、配線BILに代えて、配線RBL、配線WBLに電気的に接続してもよい。
【0549】
トランジスタM4は、バックゲートを有するOSトランジスタであり、バックゲートは配線BGLに電気的に接続されている。なお、トランジスタM4のバックゲートとゲートとを互いに電気的に接続してもよい。あるいは、トランジスタM4はバックゲートを有さなくてもよい。
【0550】
なお、トランジスタM5、トランジスタM6はそれぞれ、nチャネル型Siトランジスタまたはpチャネル型Siトランジスタでもよい。或いは、トランジスタM4乃至トランジスタM6がOSトランジスタでもよい。この場合、メモリセルアレイ1470をn型トランジスタのみを用いて回路を構成することができる。
【0551】
上記実施の形態に示す半導体装置をメモリセル1478に用いる場合、トランジスタM4としてトランジスタ200を用い、トランジスタM5、トランジスタM6としてトランジスタ300を用い、容量素子CCとして容量素子100を用いることができる。トランジスタM4としてOSトランジスタを用いることによって、トランジスタM4のリーク電流を非常に小さくすることができる。
【0552】
なお、本実施の形態に示す、周辺回路1411、メモリセルアレイ1470等の構成は、上記に限定されるものではない。これらの回路、および当該回路に接続される配線、回路素子等の、配置または機能は、必要に応じて、変更、削除、または追加してもよい。
【0553】
一般に、コンピュータなどの半導体装置では、用途に応じて様々な記憶装置(メモリ)が用いられる。
図36に、各種の記憶装置を階層ごとに示す。上層に位置する記憶装置ほど速いアクセス速度が求められ、下層に位置する記憶装置ほど大きな記憶容量と高い記録密度が求められる。
図36では、最上層から順に、CPUなどの演算処理装置にレジスタとして混載されるメモリ、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、3D NANDメモリを示している。
【0554】
CPUなどの演算処理装置にレジスタとして混載されるメモリは、演算結果の一時保存などに用いられるため、演算処理装置からのアクセス頻度が高い。よって、記憶容量よりも速い動作速度が求められる。また、レジスタは演算処理装置の設定情報などを保持する機能も有する。
【0555】
SRAMは、例えばキャッシュに用いられる。キャッシュは、メインメモリに保持されている情報の一部を複製して保持する機能を有する。使用頻繁が高いデータをキャッシュに複製しておくことで、データへのアクセス速度を高めることができる。
【0556】
DRAMは、例えばメインメモリに用いられる。メインメモリは、ストレージから読み出されたプログラムやデータを保持する機能を有する。DRAMの記録密度は、おおよそ0.1乃至0.3Gbit/mm2である。
【0557】
3D NANDメモリは、例えばストレージに用いられる。ストレージは、長期保存が必要なデータや、演算処理装置で使用する各種のプログラムなどを保持する機能を有する。よって、ストレージには動作速度よりも大きな記憶容量と高い記録密度が求められる。ストレージに用いられる記憶装置の記録密度は、おおよそ0.6乃至6.0Gbit/mm2である。
【0558】
本発明の一態様の記憶装置は、動作速度が速く、長期間のデータ保持が可能である。本発明の一態様の記憶装置は、キャッシュが位置する階層とメインメモリが位置する階層の双方を含む境界領域901に位置する記憶装置として好適に用いることができる。また、本発明の一態様の記憶装置は、メインメモリが位置する階層とストレージが位置する階層の双方を含む境界領域902に位置する記憶装置として好適に用いることができる。
【0559】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態または実施例に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0560】
(実施の形態6)
本実施の形態では、
図37Aおよび
図37Bを用いて、本発明の半導体装置が実装されたチップ1200の一例を示す。チップ1200には、複数の回路(システム)が実装されている。このように、複数の回路(システム)を一つのチップに集積する技術を、システムオンチップ(System on Chip:SoC)と呼ぶ場合がある。
【0561】
図37Aに示すように、チップ1200は、CPU1211、GPU1212、一または複数のアナログ演算部1213、一または複数のメモリコントローラ1214、一または複数のインターフェース1215、一または複数のネットワーク回路1216等を有する。
【0562】
チップ1200には、バンプ(図示しない)が設けられ、
図37Bに示すように、プリント基板(Printed Circuit Board:PCB)1201の第1の面と接続する。また、PCB1201の第1の面の裏面には、複数のバンプ1202が設けられており、マザーボード1203と接続する。
【0563】
マザーボード1203には、DRAM1221、フラッシュメモリ1222等の記憶装置が設けられていてもよい。例えば、DRAM1221に先の実施の形態に示すDOSRAMを用いることができる。また、例えば、フラッシュメモリ1222に先の実施の形態に示すNOSRAMを用いることができる。
【0564】
CPU1211は、複数のCPUコアを有することが好ましい。また、GPU1212は、複数のGPUコアを有することが好ましい。また、CPU1211、およびGPU1212は、それぞれ一時的にデータを格納するメモリを有していてもよい。または、CPU1211、およびGPU1212に共通のメモリが、チップ1200に設けられていてもよい。該メモリには、前述したNOSRAMや、DOSRAMを用いることができる。また、GPU1212は、多数のデータの並列計算に適しており、画像処理や積和演算に用いることができる。GPU1212に、本発明の酸化物半導体を用いた画像処理回路や、積和演算回路を設けることで、画像処理、および積和演算を低消費電力で実行することが可能になる。
【0565】
また、CPU1211、およびGPU1212が同一チップに設けられていることで、CPU1211およびGPU1212間の配線を短くすることができ、CPU1211からGPU1212へのデータ転送、CPU1211、およびGPU1212が有するメモリ間のデータ転送、およびGPU1212での演算後に、GPU1212からCPU1211への演算結果の転送を高速に行うことができる。
【0566】
アナログ演算部1213はA/D(アナログ/デジタル)変換回路、およびD/A(デジタル/アナログ)変換回路の一、または両方を有する。また、アナログ演算部1213に上記積和演算回路を設けてもよい。
【0567】
メモリコントローラ1214は、DRAM1221のコントローラとして機能する回路、およびフラッシュメモリ1222のインターフェースとして機能する回路を有する。
【0568】
インターフェース1215は、表示装置、スピーカー、マイクロフォン、カメラ、コントローラなどの外部接続機器とのインターフェース回路を有する。コントローラとは、マウス、キーボード、ゲーム用コントローラなどを含む。このようなインターフェースとして、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)などを用いることができる。
【0569】
ネットワーク回路1216は、LAN(Local Area Network)などのネットワーク回路を有する。また、ネットワークセキュリティー用の回路を有してもよい。
【0570】
チップ1200には、上記回路(システム)を同一の製造プロセスで形成することが可能である。そのため、チップ1200に必要な回路の数が増えても、製造プロセスを増やす必要が無く、チップ1200を低コストで作製することができる。
【0571】
GPU1212を有するチップ1200が設けられたPCB1201、DRAM1221、およびフラッシュメモリ1222が設けられたマザーボード1203は、GPUモジュール1204と呼ぶことができる。
【0572】
GPUモジュール1204は、SoC技術を用いたチップ1200を有しているため、そのサイズを小さくすることができる。また、画像処理に優れていることから、スマートフォン、タブレット端末、ラップトップPC、携帯型(持ち出し可能な)ゲーム機などの携帯型電子機器に用いることが好適である。また、GPU1212を用いた積和演算回路により、ディープニューラルネットワーク(DNN)、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)、自己符号化器、深層ボルツマンマシン(DBM)、深層信念ネットワーク(DBN)などの手法を実行することができるため、チップ1200をAIチップ、またはGPUモジュール1204をAIシステムモジュールとして用いることができる。
【0573】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態または実施例に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0574】
(実施の形態7)
本実施の形態は、上記実施の形態に示す記憶装置などが組み込まれた電子部品および電子機器の一例を示す。
【0575】
<電子部品>
まず、記憶装置720が組み込まれた電子部品の例を、
図38Aおよび
図38Bを用いて説明を行う。
【0576】
図38Aに電子部品700および電子部品700が実装された基板(実装基板704)の斜視図を示す。
図38Aに示す電子部品700は、モールド711内に記憶装置720を有している。
図38Aは、電子部品700の内部を示すために、一部を省略している。電子部品700は、モールド711の外側にランド712を有する。ランド712は電極パッド713と電気的に接続され、電極パッド713は記憶装置720とワイヤ714によって電気的に接続されている。電子部品700は、例えばプリント基板702に実装される。このような電子部品が複数組み合わされて、それぞれがプリント基板702上で電気的に接続されることで実装基板704が完成する。
【0577】
記憶装置720は、駆動回路層721と、記憶回路層722と、を有する。
【0578】
図38Bに電子部品730の斜視図を示す。電子部品730は、SiP(System in package)またはMCM(Multi Chip Module)の一例である。電子部品730は、パッケージ基板732(プリント基板)上にインターポーザ731が設けられ、インターポーザ731上に半導体装置735、および複数の記憶装置720が設けられている。
【0579】
電子部品730では、記憶装置720を広帯域メモリ(HBM:High Bandwidth Memory)として用いる例を示している。また、半導体装置735は、CPU、GPU、FPGAなどの集積回路(半導体装置)を用いることができる。
【0580】
パッケージ基板732は、セラミック基板、プラスチック基板、ガラスエポキシ基板などを用いることができる。インターポーザ731は、シリコンインターポーザ、樹脂インターポーザなどを用いることができる。
【0581】
インターポーザ731は、複数の配線を有し、端子ピッチの異なる複数の集積回路を電気的に接続する機能を有する。複数の配線は、単層または多層で設けられる。また、インターポーザ731は、インターポーザ731上に設けられた集積回路をパッケージ基板732に設けられた電極と電気的に接続する機能を有する。これらのことから、インターポーザを「再配線基板」または「中間基板」と呼ぶ場合がある。また、インターポーザ731に貫通電極を設けて、当該貫通電極を用いて集積回路とパッケージ基板732を電気的に接続する場合もある。また、シリコンインターポーザでは、貫通電極として、TSV(Through Silicon Via)を用いることも出来る。
【0582】
インターポーザ731としてシリコンインターポーザを用いることが好ましい。シリコンインターポーザでは能動素子を設ける必要が無いため、集積回路よりも低コストで作製することができる。一方で、シリコンインターポーザの配線形成は半導体プロセスで行なうことができるため、樹脂インターポーザでは難しい微細配線の形成が容易である。
【0583】
HBMでは、広いメモリバンド幅を実現するために多くの配線を接続する必要がある。このため、HBMを実装するインターポーザには、微細かつ高密度の配線形成が求められる。よって、HBMを実装するインターポーザには、シリコンインターポーザを用いることが好ましい。
【0584】
また、シリコンインターポーザを用いたSiPやMCMなどでは、集積回路とインターポーザ間の膨張係数の違いによる信頼性の低下が生じにくい。また、シリコンインターポーザは表面の平坦性が高いため、シリコンインターポーザ上に設ける集積回路とシリコンインターポーザ間の接続不良が生じにくい。特に、インターポーザ上に複数の集積回路を横に並べて配置する2.5Dパッケージ(2.5次元実装)では、シリコンインターポーザを用いることが好ましい。
【0585】
また、電子部品730と重ねてヒートシンク(放熱板)を設けてもよい。ヒートシンクを設ける場合は、インターポーザ731上に設ける集積回路の高さを揃えることが好ましい。例えば、本実施の形態に示す電子部品730では、記憶装置720と半導体装置735の高さを揃えることが好ましい。
【0586】
電子部品730を他の基板に実装するため、パッケージ基板732の底部に電極733を設けてもよい。
図38Bでは、電極733を半田ボールで形成する例を示している。パッケージ基板732の底部に半田ボールをマトリクス状に設けることで、BGA(Ball Grid Array)実装を実現できる。また、電極733を導電性のピンで形成してもよい。パッケージ基板732の底部に導電性のピンをマトリクス状に設けることで、PGA(Pin Grid Array)実装を実現できる。
【0587】
電子部品730は、BGAおよびPGAに限らず様々な実装方法を用いて他の基板に実装することができる。例えば、SPGA(Staggered Pin Grid Array)、LGA(Land Grid Array)、QFP(Quad Flat Package)、QFJ(Quad Flat J-leaded package)、またはQFN(Quad Flat Non-leaded package)などの実装方法を用いることができる。
【0588】
本実施の形態は、他の実施の形態または実施例などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0589】
(実施の形態8)
本実施の形態では、先の実施の形態に示す半導体装置を用いた記憶装置の応用例について説明する。先の実施の形態に示す半導体装置は、例えば、各種電子機器(例えば、情報端末、コンピュータ、スマートフォン、電子書籍端末、デジタルカメラ(ビデオカメラも含む)、録画再生装置、ナビゲーションシステムなど)の記憶装置に適用できる。なお、ここで、コンピュータとは、タブレット型のコンピュータ、ノート型のコンピュータ、デスクトップ型のコンピュータの他、サーバシステムのような大型のコンピュータを含むものである。または、先の実施の形態に示す半導体装置は、メモリカード(例えば、SDカード)、USBメモリ、SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)等の各種のリムーバブル記憶装置に適用される。
図39A乃至
図39Eにリムーバブル記憶装置の幾つかの構成例を模式的に示す。例えば、先の実施の形態に示す半導体装置は、パッケージングされたメモリチップに加工され、様々なストレージ装置、リムーバブルメモリに用いられる。
【0590】
図39AはUSBメモリの模式図である。USBメモリ1100は、筐体1101、キャップ1102、USBコネクタ1103および基板1104を有する。基板1104は、筐体1101に収納されている。例えば、基板1104には、メモリチップ1105、コントローラチップ1106が取り付けられている。メモリチップ1105などに先の実施の形態に示す半導体装置を組み込むことができる。
【0591】
図39BはSDカードの外観の模式図であり、
図39Cは、SDカードの内部構造の模式図である。SDカード1110は、筐体1111、コネクタ1112および基板1113を有する。基板1113は筐体1111に収納されている。例えば、基板1113には、メモリチップ1114、コントローラチップ1115が取り付けられている。基板1113の裏面側にもメモリチップ1114を設けることで、SDカード1110の容量を増やすことができる。また、無線通信機能を備えた無線チップを基板1113に設けてもよい。これによって、ホスト装置とSDカード1110間の無線通信によって、メモリチップ1114のデータの読み出し、書き込みが可能となる。メモリチップ1114などに先の実施の形態に示す半導体装置を組み込むことができる。
【0592】
図39DはSSDの外観の模式図であり、
図39Eは、SSDの内部構造の模式図である。SSD1150は、筐体1151、コネクタ1152および基板1153を有する。基板1153は筐体1151に収納されている。例えば、基板1153には、メモリチップ1154、メモリチップ1155、コントローラチップ1156が取り付けられている。メモリチップ1155はコントローラチップ1156のワークメモリであり、例えばDOSRAMチップを用いればよい。基板1153の裏面側にもメモリチップ1154を設けることで、SSD1150の容量を増やすことができる。メモリチップ1154などに先の実施の形態に示す半導体装置を組み込むことができる。
【0593】
本実施の形態は、他の実施の形態または実施例に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0594】
(実施の形態9)
本発明の一態様に係る半導体装置は、CPUやGPUなどのプロセッサ、またはチップに用いることができる。
図40A乃至
図40Hに、本発明の一態様に係るCPUやGPUなどのプロセッサ、またはチップを備えた電子機器の具体例を示す。
【0595】
<電子機器・システム>
本発明の一態様に係るGPUまたはチップは、様々な電子機器に搭載することができる。電子機器の例としては、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型またはノート型の情報端末用などのモニタ、デジタルサイネージ(Digital Signage:電子看板)、パチンコ機などの大型ゲーム機、などの比較的大きな画面を備える電子機器の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、電子ブックリーダー、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、などが挙げられる。また、本発明の一態様に係るGPUまたはチップを電子機器に設けることにより、電子機器に人工知能を搭載することができる。
【0596】
本発明の一態様の電子機器は、アンテナを有していてもよい。アンテナで信号を受信することで、表示部で映像や情報等の表示を行うことができる。また、電子機器がアンテナ及び二次電池を有する場合、アンテナを、非接触電力伝送に用いてもよい。
【0597】
本発明の一態様の電子機器は、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、においまたは赤外線を測定する機能を含むもの)を有していてもよい。
【0598】
本発明の一態様の電子機器は、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)を実行する機能、無線通信機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出す機能等を有することができる。
図40A乃至
図40Hに、電子機器の例を示す。
【0599】
[情報端末]
図40Aには、情報端末の一種である携帯電話(スマートフォン)が図示されている。情報端末5100は、筐体5101と、表示部5102と、を有しており、入力用インターフェースとして、タッチパネルが表示部5102に備えられ、ボタンが筐体5101に備えられている。
【0600】
情報端末5100は、本発明の一態様のチップを適用することで、人工知能を利用したアプリケーションを実行することができる。人工知能を利用したアプリケーションとしては、例えば、会話を認識してその会話内容を表示部5102に表示するアプリケーション、表示部5102に備えるタッチパネルに対してユーザが入力した文字、図形などを認識して、表示部5102に表示するアプリケーション、指紋や声紋などの生体認証を行うアプリケーションなどが挙げられる。
【0601】
図40Bには、ノート型情報端末5200が図示されている。ノート型情報端末5200は、情報端末の本体5201と、表示部5202と、キーボード5203と、を有する。
【0602】
ノート型情報端末5200は、先述した情報端末5100と同様に、本発明の一態様のチップを適用することで、人工知能を利用したアプリケーションを実行することができる。人工知能を利用したアプリケーションとしては、例えば、設計支援ソフトウェア、文章添削ソフトウェア、献立自動生成ソフトウェアなどが挙げられる。また、ノート型情報端末5200を用いることで、新規の人工知能の開発を行うことができる。
【0603】
なお、上述では、電子機器としてスマートフォン、およびノート型情報端末を例として、それぞれ
図40A、
図40Bに図示したが、スマートフォン、およびノート型情報端末以外の情報端末を適用することができる。スマートフォン、およびノート型情報端末以外の情報端末としては、例えば、PDA(Personal Digital Assistant)、デスクトップ型情報端末、ワークステーションなどが挙げられる。
【0604】
[ゲーム機]
図40Cは、ゲーム機の一例である携帯ゲーム機5300を示している。携帯ゲーム機5300は、筐体5301、筐体5302、筐体5303、表示部5304、接続部5305、操作キー5306等を有する。筐体5302、および筐体5303は、筐体5301から取り外すことが可能である。筐体5301に設けられている接続部5305を別の筐体(図示せず)に取り付けることで、表示部5304に出力される映像を、別の映像機器(図示せず)に出力することができる。このとき、筐体5302、および筐体5303は、それぞれ操作部として機能することができる。これにより、複数のプレイヤーが同時にゲームを行うことができる。筐体5301、筐体5302、および筐体5303の基板に設けられているチップなどに先の実施の形態に示すチップを組み込むことができる。
【0605】
また、
図40Dは、ゲーム機の一例である据え置き型ゲーム機5400を示している。据え置き型ゲーム機5400には、無線または有線でコントローラ5402が接続されている。
【0606】
携帯ゲーム機5300、据え置き型ゲーム機5400などのゲーム機に本発明の一態様のGPUまたはチップを適用することによって、低消費電力のゲーム機を実現することができる。また、低消費電力により、回路からの発熱を低減することができるため、発熱によるその回路自体、周辺回路、およびモジュールへの影響を少なくすることができる。
【0607】
更に、携帯ゲーム機5300に本発明の一態様のGPUまたはチップを適用することによって、人工知能を有する携帯ゲーム機5300を実現することができる。
【0608】
本来、ゲームの進行、ゲーム上に登場する生物の言動、ゲーム上で発生する現象などの表現は、そのゲームが有するプログラムによって定められているが、携帯ゲーム機5300に人工知能を適用することにより、ゲームのプログラムに限定されない表現が可能になる。例えば、プレイヤーが問いかける内容、ゲームの進行状況、時刻、ゲーム上に登場する人物の言動が変化するといった表現が可能となる。
【0609】
また、携帯ゲーム機5300で複数のプレイヤーが必要なゲームを行う場合、人工知能によって擬人的にゲームプレイヤーを構成することができるため、対戦相手を人工知能によるゲームプレイヤーとすることによって、1人でもゲームを行うことができる。
【0610】
図40C、
図40Dでは、ゲーム機の一例として携帯ゲーム機、および据え置き型ゲーム機を図示しているが、本発明の一態様のGPUまたはチップを適用するゲーム機はこれに限定されない。本発明の一態様のGPUまたはチップを適用するゲーム機としては、例えば、娯楽施設(ゲームセンター、遊園地など)に設置されるアーケードゲーム機、スポーツ施設に設置されるバッティング練習用の投球マシンなどが挙げられる。
【0611】
[大型コンピュータ]
本発明の一態様のGPUまたはチップは、大型コンピュータに適用することができる。
【0612】
図40Eは、大型コンピュータの一例である、スーパーコンピュータ5500を示す図である。
図40Fは、スーパーコンピュータ5500が有するラックマウント型の計算機5502を示す図である。
【0613】
スーパーコンピュータ5500は、ラック5501と、複数のラックマウント型の計算機5502と、を有する。なお、複数の計算機5502は、ラック5501に格納されている。また、計算機5502には、複数の基板5504が設けられ、当該基板上に上記実施の形態で説明したGPUまたはチップを搭載することができる。
【0614】
スーパーコンピュータ5500は、主に科学技術計算に利用される大型コンピュータである。科学技術計算では、膨大な演算を高速に処理する必要があるため、消費電力が高く、チップの発熱が大きい。スーパーコンピュータ5500に本発明の一態様のGPUまたはチップを適用することによって、低消費電力のスーパーコンピュータを実現することができる。また、低消費電力により、回路からの発熱を低減することができるため、発熱によるその回路自体、周辺回路、およびモジュールへの影響を少なくすることができる。
【0615】
図40E、
図40Fでは、大型コンピュータの一例としてスーパーコンピュータを図示しているが、本発明の一態様のGPUまたはチップを適用する大型コンピュータはこれに限定されない。本発明の一態様のGPUまたはチップを適用する大型コンピュータとしては、例えば、サービスを提供するコンピュータ(サーバー)、大型汎用コンピュータ(メインフレーム)などが挙げられる。
【0616】
[移動体]
本発明の一態様のGPUまたはチップは、移動体である自動車、および自動車の運転席周辺に適用することができる。
【0617】
図40Gは、移動体の一例である自動車の室内におけるフロントガラス周辺を示す図である。
図40Gでは、ダッシュボードに取り付けられた表示パネル5701、表示パネル5702、表示パネル5703の他、ピラーに取り付けられた表示パネル5704を図示している。
【0618】
表示パネル5701乃至表示パネル5703は、スピードメーターやタコメーター、走行距離、燃料計、ギア状態、エアコンの設定などを表示することで、その他様々な情報を提供することができる。また、表示パネルに表示される表示項目やレイアウトなどは、ユーザの好みに合わせて適宜変更することができ、デザイン性を高めることが可能である。表示パネル5701乃至表示パネル5703は、照明装置として用いることも可能である。
【0619】
表示パネル5704には、自動車に設けられた撮像装置(図示しない。)からの映像を映し出すことによって、ピラーで遮られた視界(死角)を補完することができる。すなわち、自動車の外側に設けられた撮像装置からの画像を表示することによって、死角を補い、安全性を高めることができる。また、見えない部分を補完する映像を映すことによって、より自然に違和感なく安全確認を行うことができる。表示パネル5704は、照明装置として用いることもできる。
【0620】
本発明の一態様のGPUまたはチップは人工知能の構成要素として適用できるため、例えば、当該チップを自動車の自動運転システムに用いることができる。また、当該チップを道路案内、危険予測などを行うシステムに用いることができる。表示パネル5701乃至表示パネル5704には、道路案内、危険予測などの情報を表示する構成としてもよい。
【0621】
なお、上述では、移動体の一例として自動車について説明しているが、移動体は自動車に限定されない。例えば、移動体としては、電車、モノレール、船、飛行体(ヘリコプター、無人航空機(ドローン)、飛行機、ロケット)なども挙げることができ、これらの移動体に本発明の一態様のチップを適用して、人工知能を利用したシステムを付与することができる。
【0622】
[電化製品]
図40Hは、電化製品の一例である電気冷凍冷蔵庫5800を示している。電気冷凍冷蔵庫5800は、筐体5801、冷蔵室用扉5802、冷凍室用扉5803等を有する。
【0623】
電気冷凍冷蔵庫5800に本発明の一態様のチップを適用することによって、人工知能を有する電気冷凍冷蔵庫5800を実現することができる。人工知能を利用することによって電気冷凍冷蔵庫5800は、電気冷凍冷蔵庫5800に保存されている食材、その食材の消費期限などを基に献立を自動生成する機能や、電気冷凍冷蔵庫5800に保存されている食材に合わせた温度に自動的に調節する機能などを有することができる。
【0624】
電化製品の一例として電気冷凍冷蔵庫について説明したが、その他の電化製品としては、例えば、掃除機、電子レンジ、電子オーブン、炊飯器、湯沸かし器、IH調理器、ウォーターサーバ、エアーコンディショナーを含む冷暖房器具、洗濯機、乾燥機、オーディオビジュアル機器などが挙げられる。
【0625】
本実施の形態で説明した電子機器、その電子機器の機能、人工知能の応用例、その効果などは、他の電子機器の記載と適宜組み合わせることができる。
【0626】
本実施の形態は、他の実施の形態または実施例に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0627】
100:容量素子、110:導電体、112:導電体、115:導電体、120:導電体、125:導電体、130:絶縁体、140:導電体、142:絶縁体、145:絶縁体、150:絶縁体、152:絶縁体、153:導電体、154:絶縁体、156:絶縁体、200:トランジスタ、200_n:トランジスタ、200_1:トランジスタ、205:導電体、205a:導電体、205b:導電体、210:絶縁体、211:絶縁体、212:絶縁体、214:絶縁体、216:絶縁体、217:絶縁体、218:導電体、222:絶縁体、224:絶縁体、230:酸化物、230a:酸化物、230A:酸化膜、230b:酸化物、230B:酸化膜、230c:酸化物、230C:酸化膜、240:導電体、240a:導電体、240A:導電膜、240b:導電体、240B:導電層、241:酸化物、241a:酸化物、241A:酸化膜、241b:酸化物、241B:酸化物層、242A:導電膜、243A:酸化膜、246:導電体、246a:導電体、246b:導電体、248:導電体、248a:導電体、248A:導電膜、248b:導電体、250:絶縁体、250A:絶縁膜、260:導電体、260a:導電体、260A:導電膜、260b:導電体、260B:導電膜、265:封止部、265a:封止部、265b:封止部、271:絶縁体、271a:絶縁体、271A:絶縁膜、271b:絶縁体、271B:絶縁層、274:絶縁体、276:絶縁体、276a:絶縁体、276b:絶縁体、280:絶縁体、280A:絶縁膜、282:絶縁体、283:絶縁体、284:絶縁体、286:絶縁体、290:矢印、291A:導電膜、291B:導電層、292:領域、300:トランジスタ、311:基板、313:半導体領域、314a:低抵抗領域、314b:低抵抗領域、315:絶縁体、316:導電体、320:絶縁体、322:絶縁体、324:絶縁体、326:絶縁体、328:導電体、330:導電体、350:絶縁体、352:絶縁体、354:絶縁体、356:導電体