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特許7612933円盤状基板の製造装置及び円盤状基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】円盤状基板の製造装置及び円盤状基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/08 20120101AFI20250106BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20250106BHJP
   B24B 37/28 20120101ALI20250106BHJP
   B24B 57/02 20060101ALI20250106BHJP
   B24B 55/06 20060101ALI20250106BHJP
   G11B 5/84 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
B24B37/08
B24B37/00 K
B24B37/28
B24B57/02
B24B55/06
G11B5/84 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024110552
(22)【出願日】2024-07-09
【審査請求日】2024-09-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524259126
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・ハードディスク
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間舘 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】久志野 高宏
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-057605(JP,A)
【文献】特開平09-066448(JP,A)
【文献】特開2017-170573(JP,A)
【文献】特開昭59-001162(JP,A)
【文献】特開2007-301676(JP,A)
【文献】実開昭59-109446(JP,U)
【文献】実開昭59-046664(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/08
B24B 37/00
B24B 37/28
B24B 57/02
B24B 55/06
G11B 5/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状基板を収納するキャリアが上側に載置される下定盤と、
前記下定盤の上側に前記下定盤に対して近接又は離隔可能に配置され、前記円盤状基板に対向するノズル孔と、前記キャリアに対向する貫通孔と、を有する上定盤と、
前記下定盤と前記上定盤との間に研磨液又は研削液を供給する処理液供給部と、
前記円盤状基板に向かって噴射する剥離エアを前記ノズル孔に供給するエア供給系と、
前記貫通孔の内側に配置され、前記上定盤が前記下定盤から離れる際に上側から前記キャリアを押さえる押さえ部材と、
前記押さえ部材が前記キャリアに接触する位置まで前記押さえ部材を下降させる駆動機構と、
を備え
前記押さえ部材は、前記貫通孔の付着物に向かってエアを噴射する噴射部を有する、円盤状基板の製造装置。
【請求項2】
前記駆動機構は、エアシリンダである、
請求項1に記載の円盤状基板の製造装置。
【請求項3】
前記エア供給系は、前記剥離エアを前記エアシリンダに駆動エアとして供給する、
請求項2に記載の円盤状基板の製造装置。
【請求項4】
下定盤と上定盤とで円盤状基板を挟持して、前記下定盤と前記上定盤との間に研磨液又は研削液を供給しつつ前記円盤状基板を研磨処理又は研削処理する工程と、
前記円盤状基板に向かって剥離エアを噴射する工程と、
前記上定盤が有しキャリアに対向する貫通孔の付着物に向かって前記貫通孔の内側に配置された押さえ部材が有する噴射部を用いてエアを噴射する工程と、
前記円盤状基板を収納する前記キャリアに接触する位置まで前記押さえ部材を下降させる工程と、
前記上定盤が前記下定盤から離れる際に前記押さえ部材によって上側から前記キャリアを押さえる工程と、
を含む、円盤状基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、円盤状基板の製造装置及び円盤状基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気ディスク用の基板として用いられる円盤状基板の製造工程において、研削装置を用いて円盤状基板を研削する研削加工と、研磨装置を用いて円盤状基板の表面を研磨する研磨加工と、が実施されることが知られている。例えば、特許文献1に開示された研磨装置では、下定盤と上定盤とが互いに対向して配置されると共に、下定盤と上定盤との間に円盤状基板が、キャリアの収納孔に収納された状態で配置される。特許文献1では、下定盤と上定盤とが円盤状基板に接触した状態で、下定盤と上定盤との間に研磨液を供給しつつ円盤状基板を回転させることによって、円盤状基板の表面が研磨される。
【0003】
研磨装置では、円盤状基板の研磨後、研磨された円盤状基板とキャリアとが研磨液を介して上定盤に吸着することによって、上定盤が上昇しても円盤状基板とキャリアとが上定盤から剥離しない場合がある。これを解決するために、特許文献1では、上定盤と円盤状基板との間、及び、上定盤とキャリアとの間のそれぞれに対して剥離エアを噴射することによって、円盤状基板とキャリアとの両方を上定盤から剥離させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-230978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、円盤状基板の周囲に位置するキャリアの厚みは、通常、円盤状基板の厚みより薄い。このため、円盤状基板を収納したキャリアが下定盤の上に配置されると、円盤状基板の高さは、キャリアの高さより高くなる。すなわち、下定盤と上定盤との間では、キャリアの上側の部分におけるキャリアの単位面積あたりの空間体積の方が、円盤状基板の上側の部分における円盤状基板の単位面積あたりの空間体積より大きい。
【0006】
このため、特許文献1では円盤状基板の上側に供給される剥離ガスは、単位面積あたりの空間体積の大きいキャリアの上側に逸れ易い。換言すると、剥離ガスは、円盤状基板の上側よりも圧力損失の小さいキャリアの上側に流れてしまう。結果、特許文献1の研磨装置では、上定盤を下降させる際に生じるキャリアと基板との隙間に、剥離エアが流れてしまう。このため、研磨後の剥離処理の際、剥離エアだけでは円盤状基盤が剥離してもキャリアが上定盤から十分に剥離せず、結果、上定盤に吸着するキャリアが上定盤の上昇に伴って浮いてしまう場合がある。浮いたキャリアの下に円盤状基盤が入り込むと、研磨後の円盤状基盤を移送することが難しくなるという問題が生じる。また、研削液を用いる研削装置においても、円盤状基板の上側の部分に溜まった研削液が十分に排出されず、これによって、研削後に円盤状基板とキャリアとの両方を上定盤から剥離させ難いという問題が同様に生じる。
【0007】
本開示は、上記した問題に着目して為されたものであって、研磨後又は研削後のキャリアを上定盤から確実に剥離できる新規な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を達成するための具体的手段は、以下の通りである。
<1>
円盤状基板を収納するキャリアが上側に載置される下定盤と、
前記下定盤の上側に前記下定盤に対して近接又は離隔可能に配置され、前記円盤状基板に対向するノズル孔と、前記キャリアに対向する貫通孔と、を有する上定盤と、
前記下定盤と前記上定盤との間に研磨液又は研削液を供給する処理液供給部と、
前記円盤状基板に向かって噴射する剥離エアを前記ノズル孔に供給するエア供給系と、
前記貫通孔の内側に配置され、前記上定盤が前記下定盤から離れる際に上側から前記キャリアを押さえる押さえ部材と、
前記押さえ部材が前記キャリアに接触する位置まで前記押さえ部材を下降させる駆動機構と、
を備える、円盤状基板の製造装置。
【0009】
<2>
前記駆動機構は、エアシリンダである、
<1>に記載の円盤状基板の製造装置。
【0010】
<3>
前記エア供給系は、前記剥離エアを前記エアシリンダに駆動エアとして供給する、
<2>に記載の円盤状基板の製造装置。
【0011】
<4>
前記押さえ部材は、前記貫通孔の付着物に向かってエアを噴射する噴射部を有する、
<1>~<3>のいずれか一項に記載の円盤状基板の製造装置。
【0012】
<5>
下定盤と上定盤とで円盤状基板を挟持して、前記下定盤と前記上定盤との間に研磨液又は研削液を供給しつつ前記円盤状基板を研磨処理又は研削処理する工程と、
前記円盤状基板に向かって剥離エアを噴射する工程と、
前記円盤状基板を収納するキャリアに接触する位置まで押さえ部材を下降させる工程と、
前記上定盤が前記下定盤から離れる際に前記押さえ部材によって上側から前記キャリアを押さえる工程と、
を含む、円盤状基板の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、研磨後又は研削後のキャリアを上定盤から確実に剥離できる技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の実施形態に係る円盤状基板の製造装置を説明する平面図である。
図2図1中の2-2線断面図である。
図3】本実施形態に係る円盤状基板の製造方法において、押さえ部がキャリアを押さえる状態を説明する断面図である。
図4】本実施形態に係る円盤状基板の製造方法において、押さえ部材の噴射部が付着物に向かってエアを噴射する状態を説明する拡大断面図である。
図5】本実施形態に係る円盤状基板の製造方法において、押さえ部材との接触によって付着物が落下する状態を説明する拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本開示の実施形態を説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。本開示において図面を参照して実施形態を説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0016】
以下の図面の記載において、同様の部分には、同様の符号が付されている。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各装置と各部材の厚みの比率は、現実のものとは異なる。したがって、具体的な厚みと寸法は以下の説明を参酌して判定すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係と比率とが異なる部分が含まれている。また、明細書中に特段の断りが無い限り、本開示の各構成要素の個数は、1つに限定されず、複数存在してもよい。
【0017】
以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値が、それぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0018】
本開示において、成分が含まれる場合、各成分には、該当する物質が複数種含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において、各成分に該当する粒子には、複数種の粒子が含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において「層」又は「膜」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
【0019】
<円盤状基板の製造装置>
まず、本実施形態に係る円盤状基板の製造装置10を、図1及び2を参照しつつ説明する。円盤状基板の製造装置10は、図1に示すように、下定盤12と、上定盤14と、駆動機構80と、押さえ部材82と、を備える。また、円盤状基板の製造装置10は、図2に示すように、研磨液供給部30と、エア供給系41と、を更に備える。本実施形態では円盤状基板の製造装置10は、研磨装置である。本開示では円盤状基板の製造装置は、円盤状基板を製造するために必要な1つ以上の他の装置を含んで構成されてよい。
【0020】
具体的には、研磨装置の前段において円盤状基板50を研削する研削装置、未加工又は加工済の円盤状基板50の一括移送装置、未加工又は加工済の円盤状基板50を待機させる待機装置等が含まれてよい。また、これらとは独立して、又はこれらを組み合わせて、未加工又は加工済の円盤状基板を収容する収容ラック、円盤状基板50を洗浄する洗浄装置、円盤状基板50を乾燥する乾燥装置等が含まれてよい。
【0021】
(円盤状基板)
図2に示すように、研磨加工の際、円盤状基板50は、キャリア52の収納孔52Aの内側に収納される。本実施形態の円盤状基板50は、例えば、アルミニウム基板又はアルミニウム合金基板であるが、本開示では、これに限定されず、ガラス基板等を採用してもよい。以降、アルミニウム基板、アルミニウム合金基板、ガラス基板等を総称して「基板」ともいう。また、アルミニウム基板及びアルミニウム合金基板を総称して「アルミニウム基板」ともいう。アルミニウム基板の表面には、めっき層が形成されていてもよい。この場合、研磨対象表面は、めっき層とすることができる。アルミニウム基板は、加工性に優れると共に製造コストを抑制できる点で有利である。
【0022】
一方、ガラス基板の表面には、ガラス強化層が形成され得る。この場合、研磨対象表面は、ガラス強化層とすることができる。ガラス強化層の形成は、ガラス基板において必須ではない。本開示は、ガラス強化層が形成されない無垢のガラス基板の表面を研磨する場合にも適用できる。ガラス基板は、アルミニウム基板に比べ、強度、表面の平坦性、耐熱性などに優れるため、円盤状基板の小型化と高密度化とを図り易い。本実施形態の円盤状基板50は、磁気記録媒体用であるが、本開示では、これに限定されない。本開示の円盤状基板は、例えば光ディスク用のような他の情報記録用ディスクであってもよい。
【0023】
図1に示すように、本実施形態では、1つのキャリア52に収納される円盤状基板50の個数が3つである場合が例示されているが、本開示では、これに限定されず、収納される円盤状基板の個数は、1つであってもよいし、任意の複数であってもよい。同様に、本実施形態では、1つの下定盤12に載置されるキャリア52の個数が4つである場合が例示されたが、本開示では、これに限定されず、載置されるキャリアの個数は、1つであってもよいし、任意の複数であってもよい。円盤状基板50は、研磨装置において、キャリア52を介して円盤状基板50の軸を中心として自ら回転、すなわち、自転すると共に、太陽歯車16の軸を中心として太陽歯車16の周囲を回転、すなわち、公転する。
【0024】
(下定盤)
図2に示すように、下定盤12は、円盤状の下ベース12Aと、図2中の下ベース12Aの上に設けられた円盤状の下研磨パッド12Bとを有する。下研磨パッド12Bとしては、研磨布等、公知の研磨素材を採用できる。なお、本開示において、用語「下定盤」は、下研磨パッドを含む総称として用いられる場合がある。下定盤12の下研磨パッド12Bの上側には、円盤状基板50を収納するキャリア52が載置されている。図1に示すように、下定盤12の中央には、4つのキャリア52の周縁の歯車と噛み合う1つの太陽歯車16が配置されている。下定盤12の周囲には、4つのキャリア52の周縁の歯車と噛み合う1つの内歯歯車18が配置されている。図2に示すように、下定盤12と内歯歯車18との間には、研磨液60を排出する排出路Dが形成されている。
【0025】
(上定盤)
図2に示すように、上定盤14は、円盤状の上ベース14Aと、図2中の上ベース14Aの下に設けられた円盤状の上研磨パッド14Bとを有する。上研磨パッド14Bとしては、下研磨パッド12Bと同様に、研磨布等、公知の研磨素材を採用できる。なお、本開示において、用語「上定盤」は、上研磨パッドを含む総称として用いられる場合がある。
上定盤14は、下定盤12の上側に下定盤12に対向した状態で配置されている。本実施形態では下定盤12と上定盤14とはいずれも、油圧駆動装置、電動駆動装置等に接続されることによって昇降自在に設けられている。このため、上定盤14は、下定盤12に対して近接又は離隔可能に配置されている。本開示では、下定盤12と上定盤14とのうち少なくとも一方が昇降自在であることによって、上定盤14が下定盤12に対して近接又は離隔可能に配置されてもよい。
【0026】
図2に示すように、上定盤14は、ノズル孔21と貫通孔22とを有する。ノズル孔21は、円盤状基板50に対向する部分に、上ベース14Aと上研磨パッド14Bとを貫通して形成されている。貫通孔22は、キャリア52に対向する部分に、上ベース14Aと上研磨パッド14Bとを貫通して形成されている。
本実施形態では、図1中に1つの収納孔52Aの円盤状基板50に対向する部分に2つのノズル孔21が形成されると共に、収納孔52A以外のキャリア52に対向する部分に6つの貫通孔22が形成される状態が例示されているが、本開示ではこれに限定されない。本開示では、ノズル孔21と貫通孔22とのそれぞれの個数は、適宜変更できる。
本実施形態では、図1中の2-2線から分かるように、2つのノズル孔21と2つの貫通孔22とが平面視で1つの直線上に配置される状態が例示されているが、本開示では、これに限定されない。ノズル孔21と貫通孔22との配置パターンは、適宜変更できる。
【0027】
(研磨液供給部)
図2に示すように、研磨液供給部30は、研磨液60が蓄えられた研磨液槽30Aと、研磨液槽30Aと上定盤14との間に接続された研磨液用配管30Bと、を有する。研磨液供給部30は、下定盤12と上定盤14との間に研磨液(図3中の研磨液60参照)を供給する。具体的には例えば、研磨液60は、図2中の上定盤14の上ベース14Aの上面上に滴下されると共に、上面側から上定盤14の下側に向かって表面上を移動することによって、下定盤12と上定盤14との間に供給され得る。研磨液60が流れるための経路として、上ベース14Aと上研磨パッド14Bとを貫通する貫通孔が形成されてもよい。本実施形態の研磨液供給部30は、本開示の処理液供給部に対応する。
【0028】
(エア供給系)
図2に示すように、エア供給系41は、エア供給源41Aと、エア配管41Bと、を有する。エア供給源41Aには、円盤状基板50を上定盤14から剥離する剥離エア(図3中の剥離エア71参照)が蓄えられる。本実施形態の剥離エア71は、例えば空気であるが、本開示ではこれに限定されず、空気以外の任意の気体を剥離エアとして採用できる。
エア配管41Bは、エア供給源41Aとノズル孔21との間に接続される。エア供給源41Aは、剥離エア71を貯蔵可能なタンクのような貯蔵装置を含む。エア供給系41は、研磨加工後に上定盤14が下定盤12から離れる際に、ノズル孔21に剥離エア71を供給することによって、ノズル孔21から円盤状基板50に向かって剥離エア71を噴射する。
【0029】
(制御部)
本実施形態では、図2に示すように、研磨工程に含まれる1つ以上の処理を研磨装置に実行させる制御部44が、エア供給系41に接続される。本開示では、研磨工程に含まれる1つ以上の処理は、例えばプログラムの形で制御部44に対して提供され得る。本実施形態では、1つの制御部44がエア供給系41に接続される場合が例示されたが、本開示では、制御部の個数は、1つ以上任意に設定できる。
【0030】
(駆動機構)
図2に示すように、本実施形態の駆動機構80は、エアシリンダである。駆動機構80は、押さえ部材82がキャリア52に接触する位置まで押さえ部材82を下降させることが可能である。また、駆動機構80は、押さえ部材82がキャリア52から離れる位置まで押さえ部材82を上昇させることが可能である。本開示では、駆動機構80は、エアシリンダに限定されず、例えばネジ送り機構のように上下方向に沿ったスライドを実現する他の駆動機構であってもよい。
図2に示すように、駆動機構80は、制御部44、エア供給系41に接続されている。本実施形態のエア供給系41は、剥離エア71を駆動機構80のエアシリンダに駆動エアとして供給する。剥離エア71の供給源と駆動機構80のエアシリンダの駆動エアの供給源とは、共通である。本開示では、駆動エアは、剥離エア71のエア供給源41Aから供給されるエアに限定されず、剥離エア71のエア供給源41A以外の他の供給源から供給されるエアであってよい。駆動エアとしての剥離エア71によって、駆動機構80のエアシリンダのシリンダロッドである押さえ部材82が駆動される。
【0031】
図示を省略するが、本実施形態では、エア供給源41Aと駆動機構80との間の駆動エアの供給流路が形成されている。駆動エアの供給流路には、開閉弁、ポンプ等の必要な制御要素が、制御部44に接続した状態で設けられている。制御部44は、駆動機構80の駆動エアの駆動圧力を制御する。
【0032】
(押さえ部材、噴射部)
図2に示すように、本実施形態の押さえ部材82は、エアシリンダのシリンダロッドである。押さえ部材82は、駆動機構80で駆動されることによって図2中の上下方向に沿ってスライドする。押さえ部材82は、貫通孔22の内側に配置される。図1中では、駆動機構80、押さえ部材82は、平面視でキャリア52の上に開口している貫通孔22の上に重ねて例示されている。図2中の押さえ部材82の下端には、噴射部82Aが取り付けられている。本実施形態の押さえ部材82は、キャリア52を押さえる機能とエアを噴射する機能とを有する。
噴射部82Aは、押さえ部材82の駆動に連動してスライドする。本実施形態の噴射部82Aは、キャリア52側の先端からエアを噴射する筒状のエアノズルである。本開示では、噴射部は、エアノズルに限定されず、公知の他の構成が採用されてもよい。本開示では、押さえ部材が噴射部82Aを有することは必須ではなく、押さえ部材が、例えばエアを噴射することなく、簡易な構造を有する棒状部材のような他の部材によって構成されてもよい。
図2に示すように、噴射部82Aは、制御部44、エア供給源41Aに接続されている。本実施形態ではエア供給系41は、エア供給源41Aから剥離エア71を、噴射部82Aのエアノズルが噴射するエアとして噴射部82Aに供給する。このため、剥離エア71の供給源と噴射部82Aのエアの供給源とが共通である。本開示では、噴射部82Aのエアは、剥離エア71のエアとは異なるエアであってもよい。
【0033】
図示を省略するが、本実施形態では、エア供給源41Aと噴射部82Aとの間のエアの供給流路が形成されている。噴射部82Aのエアの供給流路には、開閉弁、ポンプ等の必要な制御要素が、制御部44に接続した状態で設けられている。制御部44は、噴射部82Aの噴射エアの噴射圧力を制御する。エア供給源41Aと噴射部82Aとの間のエアの供給流路は、例えば押さえ部材82のピストンロッドの内部に形成されてもよいし、或いは、他の配管等の流路部材が用いられてもよい。
【0034】
<円盤状基板の製造方法>
次に、本実施形態に係る円盤状基板の製造装置10を用いた円盤状基板の製造方法を、図3を参照しつつ説明する。本実施形態に係る円盤状基板の製造方法は、
(A)円盤状基板50を収納するキャリア52を下定盤12と上定盤14との間に配置する工程と、
(B)下定盤12と上定盤14とで円盤状基板50を挟持して、下定盤12と上定盤14との間に研磨液60を供給しつつ円盤状基板50を研磨処理する工程と、
(C)上定盤14と円盤状基板50との間に、円盤状基板50を上定盤14から剥離する剥離エア71を、エア供給系41を用いて供給する工程と、
(D)押さえ部材82がキャリア52に接触する位置まで押さえ部材82を下降させる工程と、
(E)研磨加工後に上定盤14が下定盤12から離れる際に、押さえ部材82によって上側からキャリア52を押さえる工程と、
を含む。
本実施形態では、円盤状基板の製造方法を実施するためのプログラムを用いて制御部44が操作されることによって、(A)~(E)の工程を含む円盤状基板の製造方法を実施する場合が例示的に説明される。本開示では、円盤状基板の製造装置10の操作者が制御部44を操作することによって円盤状基板の製造方法が実行されてもよい。
【0035】
本実施形態では、円盤状基板の製造方法は、(C)~(E)の工程のように、研磨工程における円盤状基板50の上定盤14からの剥離処理を含む。本開示では、円盤状基板の製造方法は、円盤状基板の種類に応じて、円盤状基板50を製造するために必要な通常公知の1つ以上の他の処理を含んで構成されてよい。
【0036】
例えばアルミニウム基板の場合、円盤状基板の製造方法は、以下の工程を含む。
ブランク基板用意工程:アルミニウム合金鋳塊を圧延することによって、厚さ2mm以下程度のアルミニウム合金板材が得られる。得られたアルミニウム合金板材を円盤状に打ち抜くことによって、所望の寸法のアルミニウム合金基板が用意される。
切削工程:用意されたアルミニウム合金基板に対して、内外径の面取り加工及び両主面の切削加工が施される。
研削工程:切削加工後のアルミニウム合金基板の表面粗さ、うねり等を下げるために、アルミニウム合金基板の両主面に砥石による研削加工が施される。
めっき工程:研削加工が施された基板に対して、表面硬さの付与と表面欠陥の抑制を目的として、アルミニウム合金基板の表面に無電解ニッケルめっき(NiP)等のめっきが施される。
研磨工程:めっき被膜が形成されたアルミニウム合金基板の両主面に対して、研磨加工が施される。
【0037】
ガラス基板の場合、円盤状基板の製造方法は、例えば、以下の工程を含む。
ブランク基板用意工程:一対の主表面を有する板状の磁気記録媒体用ガラス基板の素材となるガラスブランクがプレス成形等により作製される。作製されたガラスブランクの中心部分に円孔を形成することによって、ガラスブランクを円環状に形成する。次に、形状加工を行うことによって、面取り面を有するガラス基板が得られる。形状加工が施されたガラス基板の内外周端面に対して研削工程及び研磨工程が行われる。
研削工程:端面研磨後のガラス基板の主表面に、固定砥粒による研削が施される。
研磨工程:研削工程後のガラス基板の主表面に対して、所定の研磨剤による研磨が行われる。研磨工程の間に、ガラス基板に対して化学強化処理を行ってもよい。
【0038】
以下に、本実施形態に係る研磨工程の詳細について説明する。
[研磨工程]
研磨工程では、下定盤12と上定盤14とが円盤状基板50に接触した状態で、下定盤12と上定盤14との間に研磨液60を供給しつつ円盤状基板50を回転させることによって、円盤状基板50の表面が、下定盤12と上定盤14とによって研磨される。
アルミニウム基板を研磨する際の研磨液は、通常用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、酸化アルミニウム、コロイダルシリカ等を含むスラリーが挙げられる。ガラス基板を研磨する際の研磨液は、通常用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、酸化セリウム、ジルコニア、コロイダルシリカ等を含むスラリーが挙げられる。
【0039】
ここで、円盤状基板50の研磨後、研磨された円盤状基板50とキャリア52とが研磨液60を介して上定盤14に吸着することによって、上定盤14が上昇しても円盤状基板50が上定盤14から剥離されない場合がある。
このため、円盤状基板50については、図3に示すように、上定盤14と円盤状基板50との間に対して、エア供給系41によって剥離エア71が、上定盤14に設けられたノズル孔21を介して外部から供給される。制御部44が用いられる場合、制御部44は、エア供給系41を制御することによって、剥離エア71を上定盤14と円盤状基板50との間に供給する処理を実行する。
【0040】
本開示では、「供給」は、目的の場所に結果として到達することを意味する。例えば剥離エア71の供給とは、剥離エア71が上定盤14と円盤状基板50との間に到達することを意味する。
【0041】
剥離エア71を供給するためにエア供給系41が剥離エア71への駆動力の付与を開始するタイミングは、上定盤14の上昇開始前であってもよいし、上昇開始後であってもよい。上昇開始後に剥離エア71が供給される場合、例えば上昇開始直後のように上定盤14が下定盤12から離れすぎない位置に存在するタイミングで剥離エア71を供給することが、剥離効果を考慮して好ましい。剥離エア71への駆動力の付与を停止するタイミングは、上定盤14が予め設定された高さまで到達する上昇完了前であってもよいし、上昇完了後であってもよい。
【0042】
一方、キャリア52については、図3に示すように、駆動機構80は、研磨加工後に上定盤14が上昇によって下定盤12から離れる際に、押さえ部材82がキャリア52に接触する位置まで押さえ部材82を下降させる。下降した押さえ部材82は、上側からキャリア52を押さえる。
【0043】
押さえ部材82をキャリア52に接触させるために駆動機構80が押さえ部材82への駆動力の付与を開始するタイミングは、上定盤14の上昇開始前であってもよいし、上昇開始後であってもよい。押さえ部材82への駆動力の付与を停止するタイミングは、上定盤14が予め設定された高さまで到達する上昇完了前であってもよいし、上昇完了後であってもよい。
【0044】
剥離エア71の円盤状基板50への供給処理と、押さえ部材82がキャリア52へ向かう下降処理と、上定盤14が下定盤12から離れる上昇処理とは、別々に実行されてもよいし、並行して実行されてもよい。それぞれの処理が別々に実行される場合の一例としては、まず、押さえ部材82がキャリア52へ向かって下降した後、押さえ部材82が、キャリア52に接触した状態で停止する。次に、剥離エア71が、円盤状基板50に供給される。そして、上定盤14が、上昇によって下定盤12から離れればよい。上定盤14が上昇する際には、キャリア52との接触状態を保持するために必要な押さえ部材82の長さが維持されるように、押さえ部材82の貫通孔22からの突出長さが、制御部44によって制御される。
【0045】
上記のように、剥離エア71の円盤状基板50への到達タイミングと押さえ部材82のキャリア52への到達タイミングとの間に時間的な隔たりが形成されることは除外されない。また、円盤状基板50とキャリア52とを上定盤14から剥離する場合、剥離エア71の円盤状基板50への到達と、押さえ部材82の下端の噴射部82Aのキャリア52への到達とは、時差を抑えて実行されてもよい。これにより、円盤状基板50とキャリア52との両方が、上定盤14から剥離される。
【0046】
図3に示すように、円盤状基板50とキャリア52との上定盤14からの剥離が実行された後、研磨された円盤状基板50とキャリア52とを上定盤14に吸着させる研磨液60は、下定盤12と内歯歯車18との間の排出路Dを通って排出される。
その後、円盤状基板50が、不図示の一括移送装置によってキャリア52の内側から取り出されると共に、後工程へ移送される。駆動機構80は、剥離処理が行われた後、任意のタイミングで、円盤状基板50に研削加工又は研磨加工が施される際に押さえ部材82がキャリア52から離れる位置まで押さえ部材82を上昇させる。
【0047】
本開示では、研磨処理は、複数回実施してもよい。研磨処理が複数回実施される場合、それぞれの研磨処理で用いられる研磨液60の種類を互いに異ならせてもよい。また、例えば、複数回の研磨処理の間に、円盤状基板50の耐衝撃性能を向上させるため、円盤状基板50に対する化学強化処理が含まれてもよい。そして、移送された円盤状基板50に対して、洗浄、磁性膜の成膜、冷却等の所定の工程が実施されることによって、所望の仕様を有する磁気記録媒体を製造できる。
【0048】
(付着物の剥離処理)
本実施形態の貫通孔22は、洗浄処理の際、洗浄液の流路として用いられる。このため、図4に示すように、貫通孔22の内面上には、残存した洗浄液が乾燥で固化することによって形成される、洗浄成分の付着物Sが形成される。付着物Sは、いわゆるスラッジである。付着物Sが、円盤状基板50の上面へ、キャリア52の上面へ、又は、キャリア52の収納孔52Aの内側へ落下すると共に、研磨加工の際に上定盤14から付着物Sに力が加えられると、付着物Sによって、円盤状基板50又はキャリア52が損傷する懸念がある。付着物Sは、研磨加工に不具合を生じさせる要因である。このため、本実施形態では、噴射部82Aのエアノズルを用いて付着物Sの剥離処理が行われる。
【0049】
例えば円盤状基板50とキャリア52との両方を上定盤14から剥離させた後、図4に示すように、貫通孔22の内面に付着した付着物Sに向かって、付着物Sの上側に位置する噴射部82Aのエアノズルからエアが噴射される。噴射の際の噴射部82Aのエアノズルの高さは、制御部によって適宜調整され得る。このエアの噴射によって、貫通孔22の内面からの付着物Sの剥離が促進される。
【0050】
次に、図5に示すように、エアの噴射後、押さえ部材82を下降させることによって、押さえ部材82の下端の噴射部82Aが、付着物Sに物理的に接触する。接触によって、貫通孔22の内面からの付着物Sの剥離が、一層促進される。キャリア52上に落下した付着物Sは、例えば洗浄液が円盤状基板に供給されることによって、研磨液60と共に排出路Dへ排出され得る。図5中には噴射部82Aとの接触によって剥離した付着物Sが落下する状態が例示されている。本開示では付着物Sの剥離処理及び排出処理は、円盤状基板50がキャリア52の収納孔52Aに収納されていない状態において実行されてよい。
【0051】
本開示では貫通孔22は、洗浄液の流路として用いられる必要はない。押さえ部材が配置される貫通孔と、洗浄液の流路として用いられる貫通孔とが、別々に形成されてもよい。
【0052】
(作用効果)
本実施形態の円盤状基板の製造装置10では、駆動機構80は、円盤状基板50に研削加工又は研磨加工が施される際に、押さえ部材82がキャリア52から離れる位置まで押さえ部材82を上昇させる。また、研削加工後又は研磨加工後に上定盤14が下定盤12から離れる際に、剥離エア71が、円盤状基板50に向かって噴射される。駆動機構80は、押さえ部材82がキャリア52を押さえる際に、押さえ部材82がキャリア52に接触する位置まで押さえ部材82を下降させる。
押さえ部材82は、上側からキャリア52を押さえる。押さえ部材82によってキャリア52の動きが物理的に止められるので、上定盤14が下定盤12から離れる動作に伴い、キャリア52は、上定盤14から離れる。このため、研磨後の円盤状基板50とキャリア52とが研磨液60を介して上定盤14に吸着していても、円盤状基板50とキャリア52との両方を上定盤14から剥離させ易い。特に、キャリア52を上定盤14から確実に剥離できる。
【0053】
また、円盤状基板50又はキャリア52が上定盤14へ吸着すると、研磨装置の自動運転を停止した状態で、吸着した円盤状基板50又はキャリア52を上定盤14から剥離する作業が必要になる。本実施形態では円盤状基板50又はキャリア52の上定盤14への吸着が抑制されるので、剥離作業の発生が低減する。このため、研磨装置の自動運転を安定的に実行できる。
また、円盤状基板50又はキャリア52が上定盤14へ吸着した状態のまま、移送装置による一括移送処理、次の研磨加工処理等が実行されると、移送装置、上定盤14、下定盤12等の装置に不具合が発生する。本実施形態では円盤状基板50又はキャリア52の上定盤14への吸着が抑制されるので、装置の不具合の発生率が低下する。このため、装置の稼働率が改善し、結果、生産量の増加を図ることができる。
【0054】
また、本実施形態では駆動機構80は、エアシリンダである。このため、エアの供給圧力を細かく調整することによって、押さえ部材82がキャリア52に接触する際にキャリア52にかかる接触圧を制御し易い。例えば、ネジ送り機構によって押さえ部材82をキャリア52に接触させる場合に比べて、接触の際にキャリア52にかかる負担を小さくできる。
【0055】
また、本実施形態ではエアシリンダの駆動エアは、剥離エア71のエア供給源41Aから供給されるエアである。剥離エア71を駆動機構80のエアシリンダに駆動エアとして供給する。剥離エア71の供給源と駆動機構80のエアシリンダの駆動エアの供給源とが共通であるので、円盤状基板50の製造装置10を簡易に構成できる。
【0056】
また、本実施形態では押さえ部材82の噴射部82Aは、貫通孔22の内面の付着物Sに向かってエアを噴射するので、付着物Sの除去を図ることができる。
【0057】
<その他の実施形態>
本開示は上記の開示した実施の形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述と図面とは、本開示を限定するものであると理解すべきではない。
【0058】
例えば本実施形態では、キャリア52を内歯歯車18と太陽歯車16とを用いて自転及び公転させることで、複数の円盤状基板50を一括して研磨加工する場合が例示されたが、本開示ではこれに限定されない。本開示では、例えば複数の円盤状基板を上側に向かって突出した状態に保持しつつ、上側から研磨盤を円盤状基板の表面に接触させてもよい。そして、上側の研磨盤を回転させることによって、複数の円盤状基板の一括研磨が実施されてもよい。円盤状基板を回転させることなく、研磨盤が、自転及び公転してもよい。
【0059】
(研削装置)
本実施形態では、円盤状基板の製造装置10は研磨装置として説明されたが、本開示ではこれに限定されず、製造装置10は研削装置であってもよい。本実施形態では円盤状基板の製造方法として、製造装置10として研磨装置を用いた、研磨処理済の円盤状基板の製造方法が例示されたが、本開示では円盤状基板の製造方法は、製造装置として研削装置を用いた、研削処理済の円盤状基板の製造方法であってもよい。
【0060】
円盤状基板の製造装置が研削装置である場合には、図2中の製造装置10の下定盤12における下研磨パッド12B及び上定盤14における上研磨パッド14Bには、それぞれ砥石が適用される。このとき、用語「上定盤」及び用語「下定盤」は、それぞれ砥石を含む総称として用いられる場合がある。
また、研削装置における研削処理では、研磨液60の代わりに、研削液として例えばクーラントを供給して研削処理が実施される。このため、本実施形態における研磨液槽30A、研磨液用配管30B等は、それぞれクーラント槽、クーラント用配管等に、それぞれ適宜読み替えられる。なお、研削処理における研削はクーラントに限られず、上定盤及び下定盤の間に供給される処理液であれば他の液体であってもよい。
【0061】
製造装置が研削装置である場合には、上述した本実施形態と同様に、押さえ部材は、上側からキャリアを押さえる。キャリアの動きは押さえ部材によって物理的に止められるので、上定盤が下定盤から離れる動作に伴って、キャリアは、上定盤から離れる。このため、上述した本実施形態と同様に、研削後の円盤状基板とキャリアとが研削液を介して上定盤に吸着していても、円盤状基板とキャリアとの両方を上定盤から剥離させ易いなどの利点を有する。製造装置が研削装置である場合の他の利点は、上述した本実施形態と同様である。
【0062】
(製造方法)
本開示の研削処理済の円盤状基板の製造方法は、本実施形態の研磨処理済の円盤状基板の製造方法における(A)(C)(D)の各工程と同様の工程と、本実施形態の円盤状基板の製造方法の(B)(E)に対応する工程と、を含み、具体的には、研削装置における以下の工程:
(A1)円盤状基板を収納するキャリアを下定盤と上定盤との間に配置する工程と、
(B1)下定盤と上定盤とで円盤状基板を挟持して、下定盤と上定盤との間に研削液を供給しつつ円盤状基板を研削処理する工程と、
(C1)上定盤と円盤状基板との間に、円盤状基板を上定盤から剥離する剥離エアを、エア供給系を用いて供給する工程と、
(D1)押さえ部材がキャリアに接触する位置まで押さえ部材を下降させる工程と、
(E1)研削加工後に上定盤が下定盤から離れる際に、押さえ部材によって上側からキャリアを押さえる工程と、
を含むものであってもよい。
【0063】
本実施形態の研磨処理済の円盤状基板の製造方法は、研削装置における処理工程として、上述の研削処理済みの円盤状基板の製造方法における(A1)(B1)(C1)(D1)(E1)の各工程と、研磨装置における処理工程として、研磨装置における各工程として、本実施形態における(A)(B)(C)(D)(E)の各工程と、を含むものであってもよい。これにより、研削処理済みの円盤状基板の製造方法による利点と、研磨処理済みの円盤状基板の製造方法による利点の双方を経時的に得ながら効率よく、研削及び研磨処理済みの円盤状基板を得ることができる。
【0064】
本開示は、上記に記載していない様々な実施の形態を含むと共に、本開示の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によって定められるものである。
【符号の説明】
【0065】
10 円盤状基板の製造装置 12 下定盤
14 上定盤 21 ノズル孔
22 貫通孔 30 研磨液供給部(処理液供給部)
41 エア供給系 50 円盤状基板
52 キャリア 52A 収納孔
60 研磨液 71 剥離エア
80 駆動機構 82 押さえ部材
82A 噴射部 S 付着物
【要約】
【課題】研磨後又は研削後のキャリアを上定盤から確実に剥離できる技術を提供する。
【解決手段】円盤状基板の製造装置10は、円盤状基板50を収納するキャリア52が上側に載置される下定盤12と、下定盤12の上側に下定盤12に対して近接又は離隔可能に配置され、円盤状基板50に対向するノズル孔21と、キャリア52に対向する貫通孔22と、を有する上定盤14と、下定盤12と上定盤14との間に研磨液又は研削液を供給する研磨液供給部30(処理液供給部)と、円盤状基板50に向かって噴射する剥離エア71をノズル孔21に供給するエア供給系41と、貫通孔22の内側に配置され、上定盤14が下定盤12から離れる際に上側からキャリア52を押さえる押さえ部材82と、押さえ部材82がキャリア52に接触する位置まで押さえ部材82を下降させる駆動機構80と、を備える。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5