(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】ハイブリッド自動車
(51)【国際特許分類】
B60W 10/26 20060101AFI20250107BHJP
B60W 20/12 20160101ALI20250107BHJP
B60W 20/13 20160101ALI20250107BHJP
【FI】
B60W10/26 900
B60W20/12
B60W20/13
(21)【出願番号】P 2021100582
(22)【出願日】2021-06-17
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 裕葵
(72)【発明者】
【氏名】後久 恵司
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-079901(JP,A)
【文献】国際公開第2016/038680(WO,A1)
【文献】特開2015-063177(JP,A)
【文献】特開2014-184892(JP,A)
【文献】特開2015-157568(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0193750(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/26
B60W 20/12
B60W 20/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、モータと、バッテリと、現在地から目的地までの走行経路に対して経路案内を行なうナビゲーションシステムと、前記走行経路の各走行区間に対して前記バッテリの残量エネルギと各走行区間を走行するのに消費する区間消費エネルギとに基づいてCDモードとCSモードを含む走行モードのいずれかを割り当てる走行支援計画を生成すると共に前記走行支援計画に沿って走行する走行支援制御を実行する制御装置と、を備えるハイブリッド自動車であって、
前記制御装置は、
前記走行経路の各走行区間に対して、走行区間に設定されているCDモード優先の程度が高い順に、且つ、前記区間消費エネルギが小さい順に並べ、その順に前記区間消費エネルギを積算して積算消費エネルギを計算し、前記積算消費エネルギが前記バッテリの残量エネルギを超えるまでの走行区間にCDモードを割り当てると共に残余の走行区間にCSモードを割り当てて走行支援計画を生成する装置であり、
更に、
アクセル開度が所定開度以上のときのアクセルオンの地点をアクセルオン地点として記憶すると共にその後のアクセルオフの地点をアクセルオフ地点として記憶し、
前記走行経路の前記アクセルオン地点と前記アクセルオフ地点が含まれているときには、前記アクセルオン地点が含まれる走行区間を前記アクセルオン地点で区間分割すると共に前記アクセルオフ地点が含まれる走行区間を前記アクセルオフ地点で区間分割し、前記アクセルオン地点から前記アクセルオフ地点までの各走行区間についてCSモード優先区間に設定する装置である、
ことを特徴とするハイブリッド自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車に関し、詳しくは、走行経路に対して走行支援計画を生成して走行するハイブリッド自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド自動車としては、走行経路の各走行区間に対して、設定されたEV走行モードに適している度合を表すEV適度が高い順に、且つ、同一のEV適度については走行区間の消費エネルギが低い順に走行区間を並べ、その順に消費エネルギを積算し、積算消費エネルギがバッテリ残量を超えるまでの走行区間にEV区間に設定し、残余の走行区間にHV区間設定することにより走行計画を生成するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッド自動車では、上述の手法により走行計画の適切さを向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のハイブリッド自動車では、運転者が上り坂などで加速するためにアクセルペダルを踏み込んだ際に、走行区間の切り替わりのためにHV優先モードからEV優先モードに切り替わると、エンジンの回転数が低下したりエンジン停止したりし、運転者のアクセル操作に対するイメージと走行支援計画によるエンジンなどの挙動とに乖離が生じ、運転者に違和感を与える場合がある。
【0005】
本発明のハイブリッド自動車は、運転者のアクセル操作と走行支援計画によるエンジンなどの挙動とに生じ得る乖離を抑制し、運転者に違和感を与えるのを抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド自動車は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のハイブリッド自動車は、
エンジンと、モータと、バッテリと、現在地から目的地までの走行経路に対して経路案内を行なうナビゲーションシステムと、前記走行経路の各走行区間に対して前記バッテリの残量エネルギと各走行区間を走行するのに消費する区間消費エネルギとに基づいてCDモードとCSモードを含む走行モードのいずれかを割り当てる走行支援計画を生成すると共に前記走行支援計画に沿って走行する走行支援制御を実行する制御装置と、を備えるハイブリッド自動車であって、
前記制御装置は、
前記走行経路の各走行区間に対して、走行区間に設定されているCDモード優先の程度が高い順に、且つ、前記区間消費エネルギが小さい順に並べ、その順に前記区間消費エネルギを積算して積算消費エネルギを計算し、前記積算消費エネルギが前記バッテリの残量エネルギを超えるまでの走行区間にCDモードを割り当てると共に残余の走行区間にCSモードを割り当てて走行支援計画を生成する装置であり、
更に、
アクセル開度が所定開度以上のときのアクセルオンの地点をアクセルオン地点として記憶すると共にその後のアクセルオフの地点をアクセルオフ地点として記憶し、
前記走行経路の前記アクセルオン地点と前記アクセルオフ地点が含まれているときには、前記アクセルオン地点が含まれる走行区間を前記アクセルオン地点で区間分割すると共に前記アクセルオフ地点が含まれる走行区間を前記アクセルオフ地点で区間分割し、前記アクセルオン地点から前記アクセルオフ地点までの各走行区間についてCSモード優先区間に設定する装置である、
ことを特徴とする。
【0008】
この本発明のハイブリッド自動車では、走行経路の各走行区間に対して、走行区間に設定されているCDモード優先の程度が高い順に、且つ、区間消費エネルギが小さい順に並べ、その順に区間消費エネルギを積算して積算消費エネルギを計算し、積算消費エネルギがバッテリの残量エネルギを超えるまでの走行区間にCDモードを割り当てると共に残余の走行区間にCSモードを割り当てて走行支援計画を生成する。例えば、各走行区間にCDモード優先の程度として、CDモード優先区間、通常区間、CSモード優先区間が設定されている場合には、CDモード優先区間が設定されている走行区間に対して区間消費エネルギが小さい順に並べ、続いて通常区間が設定されている走行区間に対して区間消費エネルギが小さい順に並べ、その後にCSモード優先区間が設定されている走行区間に対して区間消費エネルギが小さい順に並べる。そして、積算消費エネルギがバッテリの残量エネルギを超えるまでの走行区間にCDモードを割り当てると共に残余の走行区間にCSモードを割り当てて走行支援計画を生成する。そして、アクセル開度が所定開度以上のときのアクセルオンの地点をアクセルオン地点として記憶すると共にその後のアクセルオフの地点をアクセルオフ地点として記憶し、走行経路のアクセルオン地点とアクセルオフ地点が含まれているときには、アクセルオン地点が含まれる走行区間をアクセルオン地点で区間分割すると共にアクセルオフ地点が含まれる走行区間をアクセルオフ地点で区間分割し、アクセルオン地点からアクセルオフ地点までの各走行区間についてCSモード優先区間に設定する。このようにアクセルオン地点とアクセルオフ地点とで区間分割が行なわれると、区間分割が行なわれた各走行区間に対して走行支援計画が生成されるから、アクセルオン地点からアクセルオフ地点までの走行区間に対してCSモードが割り当てられやすくなる。この結果、運転者のアクセル操作と走行支援計画によるエンジンなどの挙動とに生じ得る乖離を抑制することができ、運転者に違和感を与えるのを抑制することができる。
【0009】
本発明のハイブリッド自動車において、前記アクセルオン地点と前記アクセルオフ地点が所定距離未満のときには、前記アクセルオン地点から前記所定距離だけ離れた地点をアクセルオフ地点として区間分割するものとしてもよい。こうすれば、短距離のCSモード優先となる走行区間の発生を抑制することができる。
【0010】
本発明のハイブリッド自動車において、前記制御装置は、前記アクセルオン地点と前記アクセルオフ地点が所定回以上記憶されたときに前記アクセルオン地点による区間分割と前記アクセルオフ地点による区間分割を行なうものとしてもよい。こうすれば、不用意なアクセル操作による区間分割を抑制することができる。
【0011】
本発明のハイブリッド自動車において、前記制御装置は、前記アクセルオン地点による区間分割と前記アクセルオフ地点による区間分割を行なったときに前記アクセルオン地点から前記アクセルオフ地点までが複数の走行区間であるときには1つの走行区間に統合するものとしてもよい。こすうれば、アクセルオン地点からアクセルオフ地点までを1つの走行区間にすることができる。
【0012】
本発明のハイブリッド自動車において、前記制御装置は、前記アクセルオン地点による区間分割と前記アクセルオフ地点による区間分割を行なったときに前記アクセルオン地点を終点とする走行区間とその前の走行区間とを1つの走行区間に統合すると共に前記アクセルオフ地点を始点とする走行区間とその後の走行区間とを1つの走行区間に統合するものとしてもよい。こうすれば、短距離の走行区間の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の一例をハイブリッドECU50を中心にブロックとして示すブロック図である。
【
図2】ハイブリッドECU50により実行される走行支援制御の一例を示すフローチャートである。
【
図3】ハイブリッドECU50により実行される区間分割地点設定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】アクセルオン地点とアクセルオフ地点とによる区間分割の一例を示す説明図である。
【
図5】アクセルオン地点とアクセルオフ地点とによる区間分割と区間統合の一例を示す説明図である。
【
図6】アクセルオン地点からアクセルオフ地点までの距離が所定距離未満のときにアクセルオン地点から所定距離だけ離れた地点をアクセルオフ地点として区間分割する際の様子の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の一例をハイブリッド電子制御ユニット(以下、ハイブリッドECUという。)50を中心にブロックとして示すブロック図である。図示するように、実施例のハイブリッド自動車20は、動力源としてエンジンEGとモータMGとを備える。実施例のハイブリッド自動車20は、走行モードとして、バッテリ40の蓄電割合SOCを減少させるように電動走行を優先させるCDモード(Charge Depletingモード)と、バッテリ40の蓄電割合SOCを目標割合に維持するように電動走行とハイブリッド走行とを併用するCSモード(Charge Sustainingモード)と、を切り替えて走行する。電動走行は、エンジンEGの運転を停止した状態でモータMGからの動力だけで走行するモードであり、ハイブリッド走行は、エンジンEGを運転してエンジンEGからの動力とモータMGからの動力とにより走行するモードである。
【0015】
実施例のハイブリッド自動車20は、動力源の他に、イグニッションスイッチ21、GPS(Global Positioning System, Global Positioning Satellite)22、車載カメラ24、ミリ波レーダー26、加速度センサ28、車速センサ30、アクセルセンサ32、ブレーキセンサ34、モード切替スイッチ36、電池アクチュエータ38、バッテリ40、エアコン用電子制御ユニット(以下、エアコンECUという。)42、エアコン用コンプレッサ44、ハイブリッドECU50、アクセルアクチュエータ60、ブレーキアクチュエータ62、ブレーキ装置64、表示装置66、走行状態インジケータ67、メーター68、DCM(Data Communication Module)70、ナビゲーションシステム80などを備える。
【0016】
GPS22は、複数のGPS衛星から送信される信号に基づいて車両の位置を検出する装置である。車載カメラ24は、車両の周囲を撮像するカメラであり、例えば、車両前方を撮像する前方用カメラや車両後方を撮像する後方用カメラなどが該当する。ミリ波レーダー26は、自車両と前方の車両との車間距離や相対速度を検知したり、自車両と後方の車両との車間距離や相対速度を検知する。
【0017】
加速度センサ28は、例えば、車両の前後方向の加速度を検出したり、車両の左右方向(横方向)の加速度を検出するセンサである。車速センサ30は、車輪速などに基づいて車両の車速を検出する。アクセルセンサ32は、運転者のアクセルペダルの踏み込み量に応じたアクセル開度などを検出する。ブレーキセンサ34は、運転者のブレーキペダルの踏み込み量としてのブレーキポジションなどを検出する。モード切替スイッチ36は、運転席のハンドル近傍に配置されて、CDモードとCSモードとを切り替えるためのスイッチである。
【0018】
電池アクチュエータ38は、バッテリ40の状態、例えば端子間電圧、充放電電流、バッテリ温度を検出しており、これらに基づいてバッテリ40を管理する。電池アクチュエータ38は、充放電電流に基づいて全蓄電容量に対する残存蓄電容量の割合としての蓄電割合SOCを演算したり、蓄電割合SOCやバッテリ温度などに基づいてバッテリ40から出力してもよい許容最大出力電力(出力制限Wout)やバッテリ40に入力してもよい許容最大入力電力(入力制限Win)を演算する。バッテリ40は、充放電可能な二次電池として構成されており、例えばリチウムイオン電池やニッケル水素電池、鉛蓄電池などを用いることができる。
【0019】
エアコンECU42は、図示しないがCPUを中心とするマイクロコンピュータとして構成されており、CPUの他にROMやRAM、フラッシュメモリ、入力ポート、出力ポート、通信ポートなどを備える。エアコンECU42は、乗員室を空気調和する空調装置に組み込まれており、乗員室の温度が設定された温度となるように空調装置におけるエアコン用コンプレッサ44を駆動制御する。
【0020】
エンジンEGは、例えば内燃機関として構成されている。モータMGは、例えば同期発動電動機などの発電機としても機能する電動機として構成されている。モータMGは、図示しないがインバータを介してバッテリ40に接続されており、バッテリ40から供給される電力を用いて駆動力を出力したり、発電した電力によりバッテリ40を充電したりすることができる。
【0021】
ハイブリッドECU50は、図示しないがCPUを中心とするマイクロコンピュータとして構成されており、CPUの他にROMやRAM、フラッシュメモリ、入力ポート、出力ポート、通信ポートなどを備える。ハイブリッドECU50は、走行モードを設定したり、設定した走行モードや、アクセルセンサ32からのアクセル開度、ブレーキセンサ34からのブレーキポジション、電池アクチュエータ38からの出力制限および入力制限に基づいてエンジンEGの目標運転ポイント(目標回転数や目標トルク)やモータMGのトルク指令を設定する。
【0022】
ハイブリッドECU50は、電動走行するときには、アクセルセンサ32からのアクセル開度や車速センサ30からの車速に基づいて要求駆動力や要求パワーを設定し、車両に要求駆動力や要求パワーを出力するようにモータMGのトルク指令を設定し、設定したトルク指令をアクセルアクチュエータ60に送信する。ハイブリッドECU50は、ハイブリッド走行するときには、車両に要求駆動力や要求パワーを出力するようにエンジンEGの目標運転ポイントとモータMGのトルク指令とを設定し、目標運転ポイントとトルク指令とをアクセルアクチュエータ60に送信する。また、ハイブリッドECU50は、ブレーキペダルが踏み込まれたときには、ブレーキセンサ34からのブレーキポジションや車速センサ30からの車速に基づいて要求制動力を設定し、要求制動力や車速に基づいてモータMGを回生制御するための回生用のトルク指令を設定すると共に、ブレーキ装置による目標制動力を設定し、トルク指令についてはアクセルアクチュエータ60に送信し、目標制動力についてはブレーキアクチュエータ62に送信する。
【0023】
アクセルアクチュエータ60は、ハイブリッドECU50により設定された目標運転ポイントやトルク指令によりエンジンEGやモータMGを駆動制御する。アクセルアクチュエータ60は、エンジンEGが目標運転ポイント(目標回転数や目標トルク)で運転されるように、吸入空気量制御や燃料噴射制御、点火制御、吸気バルブ開閉タイミング制御などを行なう。また、アクセルアクチュエータ60は、モータMGからトルク指令に相当するトルクが出力されるようにモータMGを駆動するためのインバータが有するスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
【0024】
ブレーキアクチュエータ62は、ハイブリッドECU50により設定された目標制動力がブレーキ装置64により車両に作用するようにブレーキ装置64を制御する。ブレーキ制御装置64は、例えば油圧駆動の摩擦ブレーキとして構成されている。
【0025】
表示装置66は、例えば運転席前方のインストールパネルに組み込まれており、各種情報を表示する。走行状態インジケータ67は、図示しないがEVインジケータとHVインジケータとを有し、モータ走行しているときには、EVインジケータを点灯すると共にHVインジケータを消灯し、ハイブリッド走行しているときには、EVインジケータを消灯すると共にHVインジケータを点灯する。メーター68は、例えば運転席前方のインストールパネルに組み込まれている。
【0026】
DCM(Data Communication Module)70は、自車両の情報を交通情報管理センター100に送信したり、交通情報管理センター100からの道路交通情報を受信したりする。自車両の情報としては、例えば、自車両の位置や、車速、走行パワー、走行モードなどを挙げることができる。道路交通情報としては、例えば、現在や将来の渋滞に関する情報や、走行経路上の区間における現在の平均車速や将来の平均車速の予測値に関する情報、交通規制に関する情報、天候に関する情報、路面状態に関する情報、地図に関する情報などを挙げることができる。DCM70は、交通情報管理センター100と所定間隔毎(例えば、30秒毎や1分毎、2分毎など)に通信している。
【0027】
ナビゲーションシステム80は、自車両を設定した目的地に誘導するシステムであり、表示部82と地図情報データベース84とを備える。ナビゲーションシステム80は、交通情報管理センター100とDCM(Data Communication Module)70を介して通信している。ナビゲーションシステム80は、目的地が設定されると、目的地の情報とGPS22により取得した現在地(現在の自車両の位置)の情報と地図情報データベース84に記憶されている情報とに基づいて経路を設定する。そして、ナビゲーションシステム80は、所定時間毎(例えば、3分毎や5分毎など)に交通情報管理センター100と通信して道路交通情報を取得し、道路交通情報に基づいて経路案内を行なう。
【0028】
ナビゲーションシステム80は、経路案内を行なう際、交通情報管理センター100から道路交通情報を取得する毎(或いは所定時間毎)に、交通情報管理センター100から取得した道路交通情報のうちの走行経路内の各走行区間の情報や走行負荷に関する情報、各走行区間のCDモード優先の程度の情報、自車両の車速、自車両の走行パワー、自車両の走行モードなどに基づいて各走行区間を走行するのに必要な負荷情報などを先読み情報として生成し、ハイブリッドECU50に送信する。CDモード優先の程度の情報としては、例えばCDモード優先区間や通常区間、CSモード優先区間などを挙げることができる。ハイブリッドECU50は、走行支援制御の実行が可能なときには、ナビゲーションシステム80から受信した先読み情報を用いて経路の各区間の走行モードにCDモードとCSモードとのうちのいずれかを割り当てて走行する走行支援計画を策定し、走行支援計画を実行する。
【0029】
ナビゲーションシステム80は、地図に関する情報に含まれる地図の更新情報を交通情報管理センター100から取得したときには、表示部82に「地図更新」のアイテムを表示すると共に「地図情報の更新の準備ができました。地図更新ボタンを押して下さい。」等のアナウンスを行なう。こうした地図更新の報知に対して「地図更新」のアイテムが操作されると、ナビゲーションシステム80は、DCM70を介して交通情報管理センター100と通信し、更新に係る地図情報を取得して地図情報データベース84に記憶する。この地図更新の際には、「地図情報の更新時には一部の機能が停止します。」等のアナウンスを行なう。
【0030】
ナビゲーションシステム80は、システムが通常に起動していることをハイブリッドECU50等に知らせるために所定時間毎に値1ずつインクリメントする生存カウンタCnbをカウントしている。ハイブリッドECU50は、一定時間毎にナビゲーションシステム80から生存カウンタCnbを取得し、ナビゲーションシステム80が通常に起動していることを確認する。一方、ハイブリッドECU50は、ユニットが通常に起動していることをナビゲーションシステム80等に知らせるために所定時間毎に値1ずつインクリメントする生存カウンタChvをカウントしている。ナビゲーションシステム80は、一定時間毎にハイブリッドECU50から生存カウンタChvを取得し、ハイブリッドECU50が通常に起動していることを確認する。
【0031】
こうして構成されたハイブリッド自動車20の動作、特に走行支援制御を実行しているときの動作について説明する。
図2は、ハイブリッドECU50により実行される走行支援制御の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、目的地が設定されたときなどに実行される。
【0032】
走行支援制御では、まず、走行支援制御の実行が可能か否かを判定する(ステップS100)。走行支援制御は、上述したように、ナビゲーションシステム80により現在地から目的地までの経路が設定されたときに経路の各区間の走行モードにCDモードとCSモードとのうちのいずれかを割り当てて走行する制御であるから、目的地の設定がないときには走行支援制御を実行することができない。また、ナビゲーションシステム80に異常が生じているときやGPS22に異常が生じているときなど、経路案内を良好に行なうことができないときにも走行支援制御は実行することはできない。バッテリ温度が低いときにはバッテリ40から出力してもよい許容最大出力電力である出力制限Woutが小さくなり、CDモードで走行していても頻繁にエンジンEGを始動する場合が生じ、適正にCDモードによる走行を行なうことができなくなる。ステップS100では、これらのような事情により走行支援制御の実行が可能であるか否かを判定するのである。ステップS100で走行支援制御の実行が可能ではないと判定したときには、走行支援制御の実行が可能になるまで待機する。
【0033】
ステップS100で走行支援制御の実行が可能であると判定したときには、先読み情報を取得する(ステップS110)。先読み情報は、上述したように、交通情報管理センター100から取得した道路交通情報のうちの走行経路内の各走行区間の情報や走行負荷に関する情報、自車両の車速、自車両の走行パワー、自車両の走行モードなどに基づいて各走行区間を走行するのに必要な負荷情報などが含まれる。
【0034】
次に、走行経路に区間分割地点としてのアクセルオン地点とアクセルオフ地点が存在するか否かを判定する(ステップS120)。区間分割地点としてのアクセルオン地点とアクセルオフ地点は、
図3に例示する区間分割地点設定処理により設定される。この区間分割地点設定処理は、ハイブリッドECU50により繰り返し実行される。
【0035】
区間分割地点設定処理では、まず、アクセル開度Accが閾値Aref以上となるのを待つ処理を実行する(ステップS300)。ここで、閾値Arefは、上り坂で加速する際の比較的大きなアクセル開度Accであり、例えば30%や40%或いは50%などを用いることができる。アクセル開度Accが閾値Aref以上であると判定すると、その地点をアクセルオン地点として記憶し(ステップS310)、アクセルオフされるのを待つ(ステップS320)。アクセルオフを判定すると、その地点をアクセルオフ地点として記憶する(ステップS330)。そして、記憶したアクセルオン地点とアクセルオフ地点が所定回数に亘って記憶されたか否かを判定する(ステップS340)。所定回数としては、3回や5回などを用いることができる。アクセルオン地点とアクセルオフ地点が所定回数に亘って記憶されていないと判定したときには本処理を終了し、アクセルオン地点とアクセルオフ地点が所定回数に亘って記憶されたと判定したときには、区間分割地点としてアクセルオン地点とアクセルオフ地点とを設定して(ステップS350)、本処理を終了する。
【0036】
図2の走行支援制御の説明に戻る。ステップS120で区間分割地点としてのアクセルオン地点とアクセルオフ地点が存在しないと判定したときには、現在地から目的地(制御終了区間)までの走行経路の各走行区間の消費エネルギE(n)とその総和としての総エネルギEsumを計算する(ステップS150)。各走行区間の消費エネルギE(n)は、その走行区間が市街地であるか郊外であるか山間部であるかなどの基準により定めることができる。
【0037】
続いて、総エネルギEsumがバッテリ40の残量以下であるか否かを判定する(ステップS160)。総エネルギEsumがバッテリ40の残量以下であると判定したときには、全走行区間にCDモードを割り当てる(ステップS170)。即ち、全走行区間をCDモードとする走行支援計画を生成するのである。総エネルギEsumがバッテリ40の残量より大きいと判定したときには、CDモード優先の程度の順に、且つ、各走行区間を走行パワーが低い順に並び替え(ステップS180)、その順に割り当てた走行区間の消費エネルギEnの総和がバッテリ40の残量を超えるまでCDモードに割り当てると共に残余の走行区間をCSモードに割り当てる(ステップS190)。こうして全走行区間にCDモードとCSモードとが割り当てられたものが走行支援計画となる。
【0038】
走行支援計画を生成すると、走行支援計画に沿って各走行区間を割り当てた走行モードで走行するように制御して(ステップS220)、本制御を終了する。
【0039】
ステップS120で区間分割地点としてのアクセルオン地点とアクセルオフ地点が存在すると判定したときには、アクセルオン地点を有する走行区間をアクセルオン地点で区間分割すると共にアクセルオフ地点を有する走行区間をアクセルオフ地点で区間分割する(ステップS130)。
図4にアクセルオン地点を有する走行区間をアクセルオン地点で区間分割すると共にアクセルオフ地点を有する走行区間をアクセルオフ地点で区間分割する様子の一例を示す。なお、
図4の例では、全ての走行区間1~6には通常区間が設定されているものとする。現在地から目的地までの走行経路に走行区間1~6の6つの走行区間のうち走行区間3に白丸で示すアクセルオン地点が存在すると共に走行区間4に黒丸で示すアクセルオフ地点が存在するときには、下段に示すように、アクセルオン地点で走行区間3が走行区間3,4と2つの区間に分割され、アクセルオフ地点で走行区間4が走行区間5,6の2つ区間に分割され、全体として走行区間1~8の8つの走行区間となる。
【0040】
続いて、アクセルオン地点からアクセルオフ地点までの走行区間にCSモード優先区間を設定する(ステップS140)。
図4の例では走行区間4,5にCSモード優先区間が設定される。そして、ステップS150以降の処理を実行する。このとき、ステップS180では、CDモード優先の程度の順に、且つ、各走行区間を消費エネルギEnが低い順に並び替えが行なわれるが、
図4の例では、通常区間として設定された走行区間1~3と走行区間6~8に対して消費エネルギEnが低い順に並び替え、その後に走行区間4,5を消費エネルギEnが低い順に並び替える。このため、アクセルオン地点からアクセルオフ地点までの走行区間にはCSモードが設定されやすくなる。
【0041】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車では、走行経路に区間分割地点としてのアクセルオン地点とアクセルオフ地点が存在するときには、アクセルオン地点が存在する走行区間をアクセルオン地点で区間分割すると共にアクセルオフ地点が存在する走行区間をアクセルオフ地点で区間分割し、アクセルオン地点からアクセルオフ地点までの各走行区間にCSモード優先区間を設定する。そして、走行経路の各走行区間に対して、走行区間に設定されているCDモード優先の程度が高い順に、且つ、走行パワーが小さい順に並べ、その順に消費エネルギE(n)を積算して積算消費エネルギを計算し、積算消費エネルギがバッテリ40の残量を超えるまでの走行区間にCDモードを割り当てると共に残余の走行区間にCSモードを割り当てて走行支援計画を生成する。これにより、アクセルオン地点からアクセルオフ地点までの走行区間にはCSモードが割り当てられやすくなり、運転者のアクセル操作と走行支援計画によるエンジンEGの挙動とに生じ得る乖離を抑制することができる。この結果、運転者に違和感を与えるのを抑制することができる。
【0042】
しかも、アクセルオン地点とアクセルオフ地点が所定回数に亘って記憶されたときに区間分割地点としてアクセルオン地点とアクセルオフ地点が設定されるから、運転者の不用意なアクセル操作によって区間分割地点としてアクセルオン地点とアクセルオフ地点とが設定されるのを抑止することができる。
【0043】
実施例のハイブリッド自動車20では、走行経路に区間分割地点としてのアクセルオン地点とアクセルオフ地点が存在するときには、アクセルオン地点が存在する走行区間をアクセルオン地点で区間分割すると共にアクセルオフ地点が存在する走行区間をアクセルオフ地点で区間分割し、アクセルオン地点からアクセルオフ地点までの各走行区間にCSモード優先区間を設定するものとした。しかし、こうした区間分割に加えてアクセルオン地点からアクセルオフ地点までの走行区間が複数のときには1つの走行区間に統合したり、アクセルオン地点を終点とする走行区間とその前の走行区間とを1つの走行区間に統合したり、アクセルオフ地点を始点とする走行区間とその後の走行区間とを1つの走行区間に統合したりしてもよい。
図5にアクセルオン地点とアクセルオフ地点とによる区間分割と区間統合の一例を示す。
図5の上段および中段は
図4と同一である。
図5の例では、アクセルオン地点とアクセルオフ地点で区間分割された中段の状態から区間統合により下段の状態となる。即ち、中段に示すアクセルオン地点からアクセルオフ地点までの走行区間4,5は下段に示す走行区間3に統合し、中段に示すアクセルオン地点を終点とする走行区間3とその前の走行区間2は下段に示す走行区間2に統合し、中段に示すアクセルオフ地点を始点とする走行区間6とその後の走行区間7は下段に示す走行区間4に統合し、全体として5つの走行区間1~5とするのである。こうすれば、アクセルオン地点からアクセルオフ地点までを1つの走行区間にすることができると共に、短距離の走行区間の発生を抑制することができる。なお、上記3つの区間統合は、いずれか1つだけを実行するものとしてもよいし、いずれか2つを実行するものとしてもよい。
【0044】
実施例のハイブリッド自動車20では、走行経路に区間分割地点としてのアクセルオン地点とアクセルオフ地点が存在するときには、アクセルオン地点が存在する走行区間をアクセルオン地点で区間分割すると共にアクセルオフ地点が存在する走行区間をアクセルオフ地点で区間分割し、アクセルオン地点からアクセルオフ地点までの各走行区間にCSモード優先区間を設定するものとした。しかし、アクセルオン地点からアクセルオフ地点までの距離が所定距離未満のときには、アクセルオン地点から所定距離だけ離れた地点をアクセルオフ地点として区間分割するものしてもよい。
図6にアクセルオン地点からアクセルオフ地点までの距離が所定距離未満のときにアクセルオン地点から所定距離だけ離れた地点をアクセルオフ地点として区間分割する際の様子の一例を示す。
図6の例では、上段に示すように走行区間3に白丸で示すアクセルオン地点と近距離に黒丸で示すアクセルオフ地点が存在するときには、走行区間3がアクセルオン地点で区間分割されて下段に示す走行区間3,4となり、アクセルオン地点から所定距離だけ離れた地点が存在する走行区間4がその地点で区間分割されて下段に示す走行区間5,6となる。この場合、走行区間4,5にCSモード優先区間が設定される。このように、アクセルオン地点からアクセルオフ地点までの距離が所定距離未満のときにはアクセルオン地点から所定距離だけ離れた地点をアクセルオフ地点として区間分割することにより、短距離のCSモード優先となる走行区間の発生を抑制することができる。なお、上述したように、走行区間4,5や走行区間2,3、走行区間6,7を区間統合するものとしてもよい。
【0045】
実施例のハイブリッド自動車20では、ナビゲーションシステム80は、現在地の情報と目的地の情報とに基づいて地図情報データベース84を用いて現在地から目的地までの走行経路を設定するものとしたが、交通情報管理センター100との協調により現在地から目的地までの走行経路を設定するものとしてもよい。即ち、ナビゲーションシステム80は、交通情報管理センター100に現在地の情報と目的地の情報とを送信し、交通情報管理センター100により現在地の情報と目的地の情報とに基づいて設定された走行経路を交通情報管理センター100から受信することにより、走行経路を設定するものとしてもよい。
【0046】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジンEGが「エンジン」に相当し、モータMGが「モータ」に相当し、バッテリ40が「バッテリ」に相当し、ハイブリッドECU50とナビゲーションシステム80とが「制御装置」に相当する。
【0047】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0048】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、ハイブリッド自動車の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
20 ハイブリッド自動車、21 イグニッションスイッチ、22 GPS、24 車載カメラ、26 ミリ波レーダー、28 加速度センサ、30 車速センサ、32 アクセルセンサ、34 ブレーキセンサ、36 モード切替スイッチ、38 電池アクチュエータ、40 バッテリ、42 エアコン用電子制御ユニット(エアコンECU)、44 エアコン用コンプレッサ、50 ハイブリッド用電子制御ユニット(ハイブリッドECU)、60 アクセルアクチュエータ、62 ブレーキアクチュエータ、64 ブレーキ装置、66 表示装置、67 走行状態インジケータ、68 メーター、70 DCM、80 ナビゲーションシステム、82 表示部、84 地図情報データベース、100 交通情報管理センター、EG エンジン、MG モータ。