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特許7613287地図更新装置、地図更新方法及び地図更新用コンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】地図更新装置、地図更新方法及び地図更新用コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/28 20060101AFI20250107BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
G01C21/28
G09B29/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021103098
(22)【出願日】2021-06-22
(65)【公開番号】P2023002082
(43)【公開日】2023-01-10
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅浩
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-091252(JP,A)
【文献】特開2021-076475(JP,A)
【文献】特許第6762457(JP,B1)
【文献】国際公開第2021/002190(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/181974(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/28
G09B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の道路区間を走行する車両から、当該道路区間に存在する、車両の走行に関連する各地物について、当該地物の位置を表す地物データを、前記車両と通信可能な通信部を介して受信するデータ受信部と、
受信した前記地物データのそれぞれに表される前記地物の位置と、対応する地物の基準位置との差に基づいて、前記車両により得られた地物データに表される前記地物の位置精度を測定する精度測定部と、
前記位置精度が所定の精度条件を満たすか否か判定し、前記精度条件を満たさない場合、前記地物の位置を表す地図情報の更新における前記車両から受信した前記地物データの寄与度を、前記精度条件を満たす場合よりも低くするよう設定する寄与度設定部と、
を有し、
前記精度測定部は、車両の形式ごとに、当該形式に属する複数の前記車両から受信した前記地物データのそれぞれに表される前記地物の位置と、対応する地物の前記基準位置との差に基づいて、前記車両の形式ごとに前記地物の位置精度を測定し、
前記寄与度設定部は、前記車両の形式ごとの前記地物の位置精度に基づいて、前記車両の形式ごとに前記寄与度を設定する、
地図更新装置。
【請求項2】
前記地物データには、前記地物データが生成されたときの前記車両の周囲の環境を表す情報がさらに含まれ、
前記精度測定部は、前記車両について前記環境に応じた前記位置精度を測定し、
前記寄与度設定部は、前記車両について前記環境に応じた前記位置精度に基づいて、前記環境に応じた前記寄与度を設定する、請求項1に記載の地図更新装置。
【請求項3】
受信した前記地物データのそれぞれに表される前記地物の位置と、対応する地物の前記基準位置との差が小さくなるように、前記車両により得られた地物データに表される前記地物の位置を補正するための補正情報を設定する補正情報設定部をさらに有する、請求項1または2に記載の地図更新装置。
【請求項4】
所定の道路区間を走行する車両から、当該道路区間に存在する、車両の走行に関連する各地物について、当該地物の位置を表す地物データを、前記車両と通信可能な通信部を介して受信し、
受信した前記地物データのそれぞれに表される前記地物の位置と、対応する地物の基準位置との差に基づいて、前記車両により得られた地物データに表される前記地物の位置精度を測定し、
前記位置精度が所定の精度条件を満たすか否か判定し、
前記精度条件を満たさない場合、前記地物の位置を表す地図情報の更新における前記車両から受信した前記地物データの寄与度を、前記精度条件を満たす場合よりも低くするよう設定する、
ことを含み、
前記地物の位置精度を測定することは、車両の形式ごとに、当該形式に属する複数の前記車両から受信した前記地物データのそれぞれに表される前記地物の位置と、対応する地物の前記基準位置との差に基づいて、前記車両の形式ごとに前記地物の位置精度を測定し、
前記地物データの寄与度を設定することは、前記車両の形式ごとの前記地物の位置精度に基づいて、前記車両の形式ごとに前記寄与度を設定する、
ことを含む地図更新方法。
【請求項5】
所定の道路区間を走行する車両から、当該道路区間に存在する、車両の走行に関連する各地物について、当該地物の位置を表す地物データを、前記車両と通信可能な通信部を介して受信し、
受信した前記地物データのそれぞれに表される前記地物の位置と、対応する地物の基準位置との差に基づいて、前記車両により得られた地物データに表される前記地物の位置精度を測定し、
前記位置精度が所定の精度条件を満たすか否か判定し、
前記精度条件を満たさない場合、前記地物の位置を表す地図情報の更新における前記車両から受信した前記地物データの寄与度を、前記精度条件を満たす場合よりも低くするよう設定する、
ことをコンピュータに実行させ、
前記地物の位置精度を測定することは、車両の形式ごとに、当該形式に属する複数の前記車両から受信した前記地物データのそれぞれに表される前記地物の位置と、対応する地物の前記基準位置との差に基づいて、前記車両の形式ごとに前記地物の位置精度を測定し、
前記地物データの寄与度を設定することは、前記車両の形式ごとの前記地物の位置精度に基づいて、前記車両の形式ごとに前記寄与度を設定する、
ことを含む地図更新用コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図を更新する地図更新装置、地図更新方法及び地図更新用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の自動運転システムが車両を自動運転制御するために参照する高精度な地図には、道路または道路の周囲に設けられた、車両の走行に関連する地物に関する情報を正確に表していることが求められる。そこで、実際に道路を走行する車両から、地物を表すデータを収集する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
例えば、特許文献1に開示された技術では、サーバ装置は、地物に関する地物情報を含む高度化地図を記憶部に記憶する。そして、サーバ装置は、地物を計測する外界センサを搭載する複数の車載機から、地物情報とその地物情報に対応する実際の地物との差異を示す差異情報を受信する。また、サーバ装置は、複数の差異情報に基づいて算出した信頼度に応じて、実際の地物の計測データである生データの送信を要求する生データ要求信号を、車載機に送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/212639号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
収集された地物を表すデータに基づいて、地物の正確な位置を地図に記載するためには、地物を表すデータを生成する車両において、その地物の位置を精度良く推定することが求められる。しかしながら、車両によっては、そのデータに表される地物の位置の精度が低下し、あるいは、車両ごとに、そのデータに表される地物の位置の精度が異なることがある。そして収集された、地物の位置の精度が低いデータが地図の更新に利用されると、地図に表される地物の位置の精度も低下してしまうおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、地図に表される地物の位置の精度を向上することが可能な地図更新装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの実施形態によれば、地図更新装置が提供される。この地図更新装置は、所定の道路区間を走行する車両から、その道路区間に存在する、車両の走行に関連する少なくとも一つの地物について、その地物の位置を表す地物データを、車両と通信可能な通信部を介して受信するデータ受信部と、受信した地物データのそれぞれに表される地物の位置と、対応する地物の基準位置との差に基づいて、車両により得られた地物データに表される地物の位置精度を測定する精度測定部と、位置精度が所定の精度条件を満たすか否か判定し、位置精度がその精度条件を満たさない場合、地物の位置を表す地図情報の更新における、車両から受信した地物データの寄与度を、位置精度がその精度条件を満たす場合よりも低くするよう設定する寄与度設定部とを有する。
【0008】
この地図更新装置において、精度測定部は、車両の形式ごとに、その形式に属する複数の車両から受信した地物データのそれぞれに表される地物の位置と、対応する地物の基準位置との差に基づいて、車両の形式ごとに地物の位置精度を測定し、寄与度設定部は、車両の形式ごとの地物の位置精度に基づいて、車両の形式ごとに寄与度を設定することが好ましい。
【0009】
また、この地図更新装置において、地物データには、その地物データが生成されたときの車両の周囲の環境を表す情報がさらに含まれ、精度測定部は、車両について環境に応じた位置精度を測定し、寄与度設定部は、車両について環境に応じた位置精度に基づいて、環境に応じた寄与度を設定することが好ましい。
【0010】
さらに、この地図更新装置は、受信した地物データのそれぞれに表される地物の位置と、対応する地物の基準位置との差が小さくなるように、車両により得られた地物データに表される地物の位置を補正するための補正情報を設定する補正情報設定部をさらに有することが好ましい。
【0011】
他の形態によれば、地図更新方法が提供される。この地図更新方法は、所定の道路区間を走行する車両から、その道路区間に存在する、車両の走行に関連する少なくとも一つの地物について、その地物の位置を表す地物データを、車両と通信可能な通信部を介して受信し、受信した地物データのそれぞれに表される地物の位置と、対応する地物の基準位置との差に基づいて、車両により得られた地物データに表される地物の位置精度を測定し、位置精度が所定の精度条件を満たすか否か判定し、位置精度がその精度条件を満たさない場合、地物の位置を表す地図情報の更新における、車両から受信した地物データの寄与度を、位置精度がその精度条件を満たす場合よりも低くするよう設定する、ことを含む。
【0012】
さらに他の形態によれば、地図更新用コンピュータプログラムが提供される。この地図更新用コンピュータプログラムは、所定の道路区間を走行する車両から、その道路区間に存在する、車両の走行に関連する少なくとも一つの地物について、その地物の位置を表す地物データを、車両と通信可能な通信部を介して受信し、受信した地物データのそれぞれに表される地物の位置と、対応する地物の基準位置との差に基づいて、車両により得られた地物データに表される地物の位置精度を測定し、位置精度が所定の精度条件を満たすか否か判定し、位置精度がその精度条件を満たさない場合、地物の位置を表す地図情報の更新における、車両から受信した地物データの寄与度を、位置精度がその精度条件を満たす場合よりも低くするよう設定する、ことをコンピュータに実行させるための命令を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る地図更新装置は、地図に表される地物の位置の精度を向上することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】地図更新装置が実装される地図更新システムの概略構成図である。
図2】車両の概略構成図である。
図3】データ取得装置のハードウェア構成図である。
図4】地図更新装置の一例であるサーバのハードウェア構成図である。
図5】地図更新処理に関する、サーバのプロセッサの機能ブロック図である。
図6】(a)は、相対的に地物データの位置精度が高い車両により得られる地物データに表される地物の位置と、対応する基準地物の位置との関係の一例を示す図である。(b)は、相対的に地物データの位置精度が低い車両により得られる地物データに表される地物の位置と、対応する基準地物の位置との関係の一例を示す図である。
図7】地図更新処理の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図を参照しつつ、地図更新装置、及び、地図更新装置にて実行される地図更新方法ならびに地図更新用コンピュータプログラムについて説明する。この地図更新装置は、生成または更新の対象となる地図に表された領域について、通信可能な複数の車両から、車両の走行に関連する地物を表すデータ(以下、地物データと呼ぶ)を収集する。
【0016】
地物データには、そのデータに表される地物の位置を表す情報が含まれる。地物の位置を推定するために、地物を撮影するための車載のカメラの設置高さ、撮影方向等のカメラのパラメータ情報が利用される。カメラのパラメータ情報は、例えば、工場出荷時に、車両ごとに車載のメモリに記憶される。しかし、車両のタイヤ交換、サスペンションの経時劣化などにより、設置高さなどが変化することがある。このような変化が生じたにもかかわらず、パラメータ情報が更新されないと、地物の位置の推定精度が低下してしまう。また、カメラのパラメータ情報が誤って設定された場合も同様である。そのため、地図に表される地物の位置の精度を向上するためには、各車両に対して、地物の位置の推定精度を評価することが求められる。
【0017】
そこで、この地図更新装置は、予め、地物の位置が高精度で求められている所定の道路区間を走行する個々の車両から、その道路区間に存在する地物の推定位置を含む地物データを収集する。この地図更新装置は、車両ごとに、地物データのそれぞれに表される地物の推定位置と、予め位置が記憶されている地物(以下、基準地物と呼ぶ)のうちの対応する地物の位置(以下、基準位置と呼ぶ)との差を算出する。この地図更新装置は、その差に基づいて、その車両により得られた地物データに表される地物の位置精度を測定して、位置精度が所定の精度条件を満たすか否か判定する。そしてこの地図更新装置は、位置精度が精度条件を満たさない車両について、地図情報の更新におけるその車両から受信した地物データの寄与度を、位置精度が精度条件を満たす車両から受信した地物データの寄与度よりも低くする。
【0018】
なお、検出対象となる地物には、例えば、各種の道路標識、各種の道路標示、信号機及びその他の車両の走行に関連する地物が含まれる。
【0019】
図1は、地図更新装置が実装される地図更新システムの概略構成図である。本実施形態では、地図更新システム1は、複数の車両2と、地図更新装置の一例であるサーバ3とを有する。各車両2は、例えば、サーバ3が接続される通信ネットワーク4とゲートウェイ(図示せず)などを介して接続される無線基地局5にアクセスすることで、無線基地局5及び通信ネットワーク4を介してサーバ3と接続される。なお、図1では、簡単化のため、一つの車両2のみが図示されている。同様に、図1では、一つの無線基地局5のみが図示されているが、複数の無線基地局5が通信ネットワーク4に接続されていてもよい。また、サーバ3は、通信ネットワークを介して交通情報を管理する交通情報サーバ(図示せず)と通信可能に接続されていてもよい。
【0020】
本実施形態では、地物データの収集に関して、各車両2は同様の構成及び機能を有する。そこで以下では、一つの車両2について説明する。
【0021】
図2は、車両2の概略構成図である。車両2は、カメラ11と、GPS受信機12と、無線通信端末13と、データ取得装置14とを有する。カメラ11、GPS受信機12、無線通信端末13及びデータ取得装置14は、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワークを介して通信可能に接続される。また、車両2は、車両2の走行予定ルートを探索し、その走行予定ルートに従って車両2が走行するようナビゲートするナビゲーション装置(図示せず)をさらに有してもよい。
【0022】
カメラ11は、車両2の周囲を撮影するための撮像部の一例であり、CCDあるいはC-MOSなど、可視光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に撮影対象となる領域の像を結像する結像光学系を有する。そしてカメラ11は、例えば、車両2の前方を向くように、例えば、車両2の車室内に取り付けられる。そしてカメラ11は、所定の撮影周期(例えば1/30秒~1/10秒)ごとに車両2の前方領域を撮影し、その前方領域が写った画像を生成する。カメラ11により得られた画像は、カラー画像であってもよく、あるいは、グレー画像であってもよい。なお、車両2には、撮影方向または焦点距離が異なる複数のカメラ11が設けられてもよい。
【0023】
カメラ11は、画像を生成する度に、その生成した画像を、車内ネットワークを介してデータ取得装置14へ出力する。
【0024】
GPS受信機12は、所定の周期ごとにGPS衛星からのGPS信号を受信し、受信したGPS信号に基づいて車両2の自己位置を測位する。そしてGPS受信機12は、所定の周期ごとに、GPS信号に基づく車両2の自己位置の測位結果を表す測位情報を、車内ネットワークを介してデータ取得装置14へ出力する。なお、車両2はGPS受信機12以外の衛星測位システムに準拠した受信機を有していてもよい。この場合、その受信機が車両2の自己位置を測位すればよい。
【0025】
無線通信端末13は、通信部の一例であり、所定の無線通信規格に準拠した無線通信処理を実行する機器であり、例えば、無線基地局5にアクセスすることで、無線基地局5及び通信ネットワーク4を介してサーバ3と接続される。そして無線通信端末13は、データ取得装置14から受け取った、地物データなどを含むアップリンクの無線信号を生成する。そして無線通信端末13は、そのアップリンクの無線信号を無線基地局5へ送信することで、地物データなどをサーバ3へ送信する。また、無線通信端末13は、無線基地局5からダウンリンクの無線信号を受信して、その無線信号に含まれる、サーバ3からの収集指示などをデータ取得装置14あるいは車両2の走行を制御する電子制御装置(ECU、図示せず)へわたす。
【0026】
図3は、データ取得装置のハードウェア構成図である。データ取得装置14は、カメラ11により生成された画像に基づいて地物データを生成する。さらに、データ取得装置14は、車両2の走行情報を生成する。そのために、データ取得装置14は、通信インターフェース21と、メモリ22と、プロセッサ23とを有する。
【0027】
通信インターフェース21は、車内通信部の一例であり、データ取得装置14を車内ネットワークに接続するためのインターフェース回路を有する。すなわち、通信インターフェース21は、車内ネットワークを介して、カメラ11、GPS受信機12及び無線通信端末13と接続される。そして通信インターフェース21は、カメラ11から画像を受信する度に、受信した画像をプロセッサ23へわたす。また、通信インターフェース21は、GPS受信機12から測位情報を受信する度に、受信した測位情報をプロセッサ23へわたす。さらに、通信インターフェース21は、プロセッサ23から受け取った、地物データを、車内ネットワークを介して無線通信端末13へ出力する。
【0028】
メモリ22は、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。メモリ22は、ハードディスク装置といった他の記憶装置をさらに有してもよい。そしてメモリ22は、データ取得装置14のプロセッサ23により実行される地物データ生成に関連する処理において使用される各種のデータを記憶する。そのようなデータには、例えば、道路地図、車両2の識別情報、カメラ11の設置高さ、撮影方向及び画角といったカメラ11のパラメータ、及び、画像から地物を検出するための識別器を特定するためのパラメータセットなどが含まれる。なお、道路地図は、例えば、ナビゲーション装置で利用される地図とすることができ、その道路地図に表される領域に含まれる各道路区間の位置、長さ、個々の交差点における道路区間の接続関係などの情報を有する。また、メモリ22は、カメラ11から受信した画像、及び、GPS受信機12から受信した測位情報を一定期間記憶してもよい。さらに、メモリ22は、地物データの収集指示にて指定された、地物データの生成及び収集対象となる領域(以下、収集対象領域と呼ぶことがある)を表す情報を記憶する。さらにまた、メモリ22は、プロセッサ23で実行される各処理を実現するためのコンピュータプログラムなどを記憶してもよい。
【0029】
プロセッサ23は、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ23は、論理演算ユニット、数値演算ユニットあるいはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。そしてプロセッサ23は、カメラ11から受信した画像、GPS受信機12から受信した測位情報をメモリ22に記憶する。さらに、プロセッサ23は、車両2が走行している間、所定の周期(例えば、0.1秒~10秒)ごとに、地物データ生成に関連する処理を実行する。
【0030】
プロセッサ23は、地物データ生成に関連する処理として、例えば、GPS受信機12から受信した測位情報で表される車両2の自車位置が収集対象領域に含まれるか否か判定する。そしてプロセッサ23は、自車位置が収集対象領域に含まれる場合、カメラ11から受信した画像に基づいて地物データを生成する。
【0031】
例えば、プロセッサ23は、カメラ11から受信した画像を、検出対象となる地物を検出するように予め学習された識別器に入力することで、入力された画像(以下、単に入力画像と呼ぶことがある)に表された地物を検出する。そしてプロセッサ23は、検出した地物の種類を表す情報を地物データとして生成する。プロセッサ23は、そのような識別器として、例えば、入力画像から、その入力画像に表された地物を検出するように予め学習されたディープニューラルネットワーク(DNN)を用いることができる。そのようなDNNとして、例えば、Single Shot MultiBox Detector(SSD)またはFaster R-CNNといった、コンボリューショナルニューラルネットワーク(CNN)型のアーキテクチャを持つDNNが用いられる。この場合、識別器は、入力画像上の様々な領域において、検出対象となる地物の種類(例えば、車線区画線、横断歩道、一時停止線など)ごとに、その地物がその領域に表されている確からしさを表す確信度を算出する。識別器は、何れかの種類の地物についての確信度が所定の検出閾値以上となる領域に、その種類の地物が表されていると判定する。そしてその識別器は、入力画像上で検出対象となる地物が含まれる領域(例えば、検出対象となる地物の外接矩形、以下、物体領域と呼ぶ)を表す情報、及び、物体領域に表された地物の種類を表す情報を出力する。そこで、プロセッサ23は、検出された物体領域に表された地物の種類を表す情報を含むように地物データを生成すればよい。
【0032】
さらに、プロセッサ23は、地物データに表される地物の実空間における位置を特定し、その位置を表す情報を地物データに含める。ここで、画像上の各画素の位置は、カメラ11からその画素に表された物体への方位と1対1に対応する。そこで、プロセッサ23は、画像上の物体領域の重心に対応するカメラ11からの方位、地物データの生成に用いられた画像が生成されたときの車両2の自車位置、進行方向及びカメラ11のパラメータに基づいて、その物体領域に表された地物の位置を推定する。その際、プロセッサ23は、地物データの生成に用いられた画像の生成時に最も近いタイミングでGPS受信機12から受信した測位情報で表される位置を、車両2の自車位置とすることができる。あるいは、ECU(図示せず)が車両2の自車位置を推定する場合には、プロセッサ23は、ECUから通信インターフェース21を介して、推定された車両2の自車位置を表す情報を取得してもよい。さらに、プロセッサ23は、ECU(図示せず)から、車両2の進行方向を表す情報を取得すればよい。あるいはまた、プロセッサ23は、いわゆるStructure from Motion (SfM)により、地物データに表される地物の位置を推定してもよい。この場合、プロセッサ23は、互いに異なるタイミングで得られた二つの画像間で、オプティカルフローを利用して同じ地物が表された物体領域同士を対応付ける。そしてプロセッサ23は、その二つの画像のそれぞれが得られたときの車両2の位置及び進行方向と、カメラ11のパラメータと、各画像における物体領域の位置とに基づいて、三角測量により、地物の位置を推定できる。
【0033】
プロセッサ23は、地物データに表される地物の位置を表す緯度及び経度を、地物データに表される地物の位置を表す情報として地物データに含める。さらに、プロセッサ23は、道路地図を参照して、地物データに表される地物の位置を含み、あるいは、その位置に最も近い道路区間であるリンクを特定する。そしてプロセッサ23は、特定したリンクの識別番号を地物データに含める。
【0034】
プロセッサ23は、さらに、地物データに、車両2の識別情報を含める。また、プロセッサ23は、地物データに、地物の位置の推定に利用される情報、例えば、カメラ11のパラメータ、及び、画像上での地物の位置を含めてもよい。さらに、プロセッサ23は、地物データに、地物の位置の推定の際に利用した、地物データ生成時の車両2の位置、進行方向、及び、車両2の自車位置の測位に利用されたGPS信号の受信強度を含めてもよい。さらにまた、プロセッサ23は、地物データに、カメラ11により生成された画像そのもの、あるいは、画像から路面が表された領域を切り出すことで得られる部分画像を含めてもよい。そしてプロセッサ23は、地物データを生成する度に、その生成した地物データを、通信インターフェース21を介して無線通信端末13へ出力する。これにより、地物データがサーバ3へ送信される。なお、プロセッサ23は、地物データとは別個に、地物の位置の推定に利用される情報を車両2の識別情報とともに、無線通信端末13を介してサーバ3へ送信してもよい。
【0035】
次に、地図更新装置の一例であるサーバ3について説明する。
図4は、地図更新装置の一例であるサーバ3のハードウェア構成図である。サーバ3は、通信インターフェース31と、ストレージ装置32と、メモリ33と、プロセッサ34とを有する。通信インターフェース31、ストレージ装置32及びメモリ33は、プロセッサ34と信号線を介して接続されている。サーバ3は、キーボード及びマウスといった入力装置と、液晶ディスプレイといった表示装置とをさらに有してもよい。
【0036】
通信インターフェース31は、通信部の一例であり、サーバ3を通信ネットワーク4に接続するためのインターフェース回路を有する。そして通信インターフェース31は、車両2と、通信ネットワーク4及び無線基地局5を介して通信可能に構成される。すなわち、通信インターフェース31は、車両2から無線基地局5及び通信ネットワーク4を介して受信した、地物データをプロセッサ34へわたす。また、通信インターフェース31は、プロセッサ34から受け取った収集指示を、通信ネットワーク4及び無線基地局5を介して車両2へ送信する。
【0037】
ストレージ装置32は、記憶部の一例であり、例えば、ハードディスク装置または光記録媒体及びそのアクセス装置を有する。そしてストレージ装置32は、地図データ収集処理において使用される各種のデータ及び情報を記憶する。例えば、ストレージ装置32は、更新対象となる地図、及び、各車両2の地物の位置精度の推定の際に基準となる、所定の道路区間の1以上の基準地物について、その基準位置を記憶する。なお、所定の道路区間及び基準位置についての詳細は後述する。さらに、ストレージ装置32は、各車両2の識別情報、及び、各車両2から受信した地物データを記憶する。さらにまた、ストレージ装置32は、各車両2において地物の位置の推定に利用される情報を記憶してもよい。さらにまた、ストレージ装置32は、プロセッサ34上で実行される、地図更新処理を実行するためのコンピュータプログラムを記憶してもよい。
【0038】
メモリ33は、記憶部の他の一例であり、例えば、不揮発性の半導体メモリ及び揮発性の半導体メモリを有する。そしてメモリ33は、地図更新処理の実行中に生成される各種データなどを一時的に記憶する。
【0039】
プロセッサ34は、制御部の一例であり、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ34は、論理演算ユニットあるいは数値演算ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。そしてプロセッサ34は、地図更新処理を実行する。
【0040】
図5は、地図更新処理に関連するプロセッサ34の機能ブロック図である。プロセッサ34は、データ受信部41と、精度測定部42と、寄与度設定部43と、補正情報設定部44と、地図更新部45とを有する。プロセッサ34が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサ34上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、プロセッサ34が有するこれらの各部は、プロセッサ34に設けられる、専用の演算回路であってもよい。
【0041】
データ受信部41は、各車両2のうち、所定の道路区間を走行する車両2から、その道路区間に存在する各地物を表す地物データを、無線基地局5、通信ネットワーク4及び通信インターフェース31を介して受信する。そしてデータ受信部41は、受信した地物データをメモリ33またはストレージ装置32に保存する。なお、データ受信部41は、所定の道路区間の地物を表す地物データか否かを判定するために、その地物データに含まれる、道路区間のリンクの識別番号を参照すればよい。そして、地物データに含まれるリンクの識別番号が、所定の道路区間に相当するリンクの識別番号と一致する場合、データ受信部41は、その地物データは、その所定の道路区間の地物を表す地物データであると判定すればよい。
【0042】
上記のように、地物データには、カメラ11により生成された画像そのものまたは部分画像が含まれていてもよい。この場合には、データ受信部41は、その画像または部分画像に対して、データ取得装置14のプロセッサ23が地物の位置を検出するために実行する処理と同じ処理を実行して、地物の位置を検出してもよい。
【0043】
精度測定部42は、個々の車両2のそれぞれについて、その車両2から受信した、所定の道路区間についての地物データのそれぞれに表される地物の位置と、対応する、サーバ3に記憶された基準地物の基準位置との差を算出する。そして精度測定部42は、各地物データに表される地物についてのその位置の差に基づいて、その車両2により得られた地物データに表される地物の位置精度を測定する。
【0044】
本実施形態において、所定の道路区間は、その道路区間における各地物の位置が高精度で求められている道路区間とすることができる。例えば、所定の道路区間は、自動車専用道において、前回の地図更新後に道路工事が行われていないことが確認されているといった、地図に表される各地物の位置の精度が高いことが確認されている道路区間とすることができる。また、地図において、各地物の位置が、位置の信頼度の確率分布で表されている場合、所定の道路区間は、各地物について、その確率分布の広がり度合いが一定以下となり、かつ、衛星測位による測位精度が所定の精度閾値以上となる区間とすることができる。なお、確率分布の広がり度合いは、例えば、所定の方向(例えば、道路区間の延伸方向及び延伸方向と直交する方向)についての分散値で表される。
【0045】
精度測定部42は、着目する車両2から受信した所定の道路区間の各地物データについて、その地物データで表される地物の種類と同じ種類、かつ、その地物の位置に最も近い基準地物を、その地物データで表される地物に対応する基準地物とする。そして精度測定部42は、着目する車両2から受信した所定の道路区間の各地物データについて、その地物データに表される地物ごとに、対応する基準地物の基準位置からその地物の位置への距離及び方向を算出する。精度測定部42は、各地物データについて算出した距離の絶対値の平均値、あるいは、各地物データについて算出した距離の二乗平均を、着目する車両2による地物データの位置精度を表す精度指標として算出する。なお、各地物の位置が位置の信頼度の確率分布で表されている場合、基準位置から地物データに表される地物の位置までの距離はマハラノビス距離で表されてもよい。さらに、精度測定部42は、各地物データについて、その地物データ生成時の車両2の進行方向と、基準地物の基準位置からその地物データに表された地物の位置への方向とがなす角度(以下、角度誤差と呼ぶ)を算出する。そして精度測定部42は、各地物データについて算出した角度誤差及び距離を、着目する車両2について地物の位置を補正するために利用される補正指標とする。精度測定部42は、上記の処理を各車両2について実行することで、車両2ごとに、精度指標及び補正指標を算出することができる。
【0046】
図6(a)は、地物データの位置精度が相対的に高い車両2により得られる地物データに表される地物の位置と、対応する基準地物の位置との関係の一例を示す図である。一方、図6(b)は、地物データの位置精度が相対的に低い車両2により得られる地物データに表される地物の位置と、対応する基準地物の位置との関係の一例を示す図である。図6(a)及び図6(b)では、破線で示される道路標示が基準地物である。
【0047】
図6(a)に示されるように、地物データの位置精度が相対的に高い場合、基準地物601の基準位置に対して、地物データに表される対応する地物602の位置は十分に近くなる。これに対して、図6(b)に示されるように、地物データの位置精度が相対的に低い場合、基準地物601の基準位置と地物データに表される対応する地物602の位置間の距離は大きくなる。
【0048】
精度測定部42は、各車両2について算出した精度指標を寄与度設定部43へ通知する。また、精度測定部42は、各車両2について算出した精度指標及び補正指標を補正情報設定部44へ通知する。
【0049】
寄与度設定部43は、各車両2に対して、地図の更新におけるその車両2から受信した地物データの寄与度を、精度測定部42から受け取った精度指標に基づいて設定する。本実施形態では、各車両2について、精度指標で表される、地物データに含まれる地物の位置精度が精度条件を満たさない場合にその車両2から受信した地物データの寄与度を、位置精度が精度条件を満たす場合にその車両2から受信した地物データの寄与度よりも低く設定する。したがって、位置精度が精度条件を満たす車両から受信した地物データの寄与度が、位置精度が精度条件を満たさない他の車両から受信した地物データの寄与度よりも高くなる。その結果として、位置精度が精度条件を満たす車両から受信した地物データに表される地物の位置が地図により反映されるようになるので、地図に表される地物の位置の精度が向上される。
【0050】
精度条件は、例えば、位置精度が精度条件を満たす地物データを用いて更新された地図に表された地物の位置の誤差が車両の自動運転制御において許容範囲となるように設定される。上記のように、精度指標が、各地物データに表される地物と対応する基準地物間の距離の絶対値の平均値またはその距離の二乗平均で表される場合、精度条件は、精度指標の値が許容される地物の位置の誤差(例えば、10cm~数10cm)またはその二乗に相当する値以下となることに設定される。また、地図において、各地物の位置が、位置の信頼度の確率分布で表されている場合、精度条件は、精度指標の値がマハラノビス距離で表される所定の距離閾値以下となることに設定されてもよい。
【0051】
寄与度設定部43は、各車両2のうち、地物データの位置精度が精度条件を満たす車両2に対して第1の寄与度(例えば、1.0)を設定する。一方、寄与度設定部43は、各車両2のうち、地物データの位置精度が精度条件を満たさない車両2に対して第1の寄与度よりも低い第2の寄与度(例えば、0.0~0.5)を設定する。寄与度設定部43は、精度指標の値と精度条件との乖離が大きくなるほど、第2の寄与度を低くしてもよい。
【0052】
寄与度設定部43は、各車両2に対して設定した寄与度を、地図更新部45へ通知する。
【0053】
補正情報設定部44は、各車両2のうち、位置精度が精度条件を満たさない車両2に対して、その車両2から受信した地物データの地物の位置を補正するための補正情報を設定する。
【0054】
地物データの位置精度は、地物データに表される地物の位置の推定に利用されるパラメータの精度に依存する。本実施形態では、車両2に搭載されたカメラ11により生成された画像上での地物の位置及び車両2の自車位置に基づいて実空間でのその地物の位置が推定されている。そのため、カメラ11の撮影方向及び設置高さといったパラメータ、及び、GPS信号の強度が、地物データの位置精度に影響する。特に、車両2のデータ取得装置14に記憶されているカメラ11のパラメータの値が実際の値からずれているほど、地物データの位置精度は低下する。例えば、上記のように、車両2のタイヤ交換、サスペンションの経時劣化などにより、カメラ11の設置高さなどが変化することに伴い、データ取得装置14に記憶されているカメラ11のパラメータの値が実際の値からずれることがある。
【0055】
カメラ11の撮影方向または設置高さといったパラメータの値が実際の値とずれていると、地物データに表される地物の位置は、実際の位置に対してそのずれに起因した方向及び距離だけずれることになる。そこで、補正情報設定部44は、所定の道路区間についての地物データに表される地物の位置と対応する基準地物の基準位置との差を小さくするように補正情報を設定する。この例では、補正情報設定部44は、補正指標に表される、各地物データに対する角度誤差の平均値、及び、距離の平均値を算出する。そして補正情報設定部44は、車両2の進行方向に対して、その角度誤差の平均値と逆向きの角度、及び、距離の平均値を、補正情報に設定する。
【0056】
補正情報設定部44は、位置精度が精度条件を満たさない車両2に対して設定した補正情報を、地図更新部45へ通知する。
【0057】
地図更新部45は、各車両2から収集された地物データに基づいて、ストレージ装置32から読み込んだ地図を生成または更新する。例えば、地図更新部45は、各地物データに表される地物のうち、所定範囲内に位置する、同じ種類の地物を、同一の地物を表す地物データとして選択する。各地物の位置が位置の信頼度の確率分布で表されている場合、所定範囲はマハラノビス距離で表されてもよい。そして地図更新部45は、同一の地物を表す各地物データに含まれる地物の位置を、その地物データを生成した車両2に対して設定された寄与度にて重み付け平均することで得られた位置を、その地物の位置として特定する。そして地図更新部45は、位置を特定した地物ごとに、その地物の種類及び特定した位置を表す情報を地図に含めることで地図を生成または更新する。
【0058】
また、地図更新部45は、位置精度が精度条件を満たさない車両2から受信した地物データに対して、その車両2に対して設定した補正情報を用いて地物の位置を補正してから、その補正後の位置を上記の重み付け平均に利用すればよい。具体的に、地図更新部45は、地物データに含まれる車両2の進行方向に対して、補正情報で示される方向及び距離だけ、その地物データに含まれる地物の位置を移動させることで、その地物の位置を補正する。
【0059】
図7は、サーバ3における、地図更新処理の動作フローチャートである。サーバ3のプロセッサ34は、所定の周期ごとに、以下に示される動作フローチャートに従って地図更新処理を実行すればよい。
【0060】
プロセッサ34のデータ受信部41は、各車両2から所定の道路区間についての地物データを受信して、その地物データをストレージ装置32に保存する(ステップS101)。また、プロセッサ34の精度測定部42は、個々の車両2のそれぞれについて、受信した地物データのそれぞれに表される地物の位置と、対応する基準地物の基準位置との差に基づいて、地物データに表される地物の位置の精度を測定する(ステップS102)。
【0061】
プロセッサ23の寄与度設定部43は、地物の位置精度が精度条件を満たさない車両2から受信した地物データの寄与度を、位置精度が精度条件を満たす車両2から受信した地物データの寄与度よりも低くなるように、各車両2の寄与度を設定する(ステップS103)。さらに、プロセッサ23の補正情報設定部44は、位置精度が精度条件を満たさない車両2に対して、所定の道路区間の地物データのそれぞれに表される地物の位置と、対応する基準地物の基準位置との差が小さくなるように補正情報を設定する(ステップS104)。
【0062】
プロセッサ23の地図更新部45は、各車両2について設定された寄与度及び位置精度が精度条件を満たさない車両2に対して設定された補正情報を用いて、各車両2から受信した地物データに表される地物の位置を特定する(ステップS105)。そして地図更新部45は、特定したその地物の位置及び地物の種類を地図に含めることで、地図を生成または更新する(ステップS106)。その後、プロセッサ34は、地図更新処理を終了する。
【0063】
以上に説明してきたように、この地図更新装置は、地物の基準位置が求められている所定の道路区間を走行する個々の車両から、その道路区間に存在する地物の推定位置を含む地物データを収集する。この地図更新装置は、車両ごとに、地物データのそれぞれに表される地物の推定位置と、対応する地物の基準位置との差に基づいて、その車両により得られた地物データに表される地物の位置精度を測定して、位置精度が所定の精度条件を満たすか否か判定する。そしてこの地図更新装置は、位置精度が精度条件を満たさない車両について、地図情報の更新におけるその車両から受信した地物データの寄与度を、位置精度が精度条件を満たす車両から受信した地物データの寄与度よりも低くする。このように、この地図更新装置は、生成または更新される地図に対する、地物の位置精度が低い車両から受信した地物データの寄与度を低下させるので、地図に表される地物の位置の精度を向上することができる。
【0064】
なお、複数の車両2のうち、同じ車両形式である2以上の車両において、同じ種類のカメラが同じ撮影方向及び同じ設置位置となるように取り付けられることが想定される。そこで変形例によれば、カメラ11のパラメータは、車両単位ではなく、車両形式ごとに設定されてもよい。この場合には、各車両2のデータ取得装置14は、地物データに、その車両2の車両形式の識別情報を含めてもよい。あるいは、サーバ3のストレージ装置32に、各車両2について、その車両2の識別情報とともに、その車両2の車両形式の識別情報が記憶されていてもよい。
【0065】
この場合、精度測定部42は、車両形式ごとに、その車両形式に属する複数の車両から受信した、所定の道路区間の地物データに対して上記の実施形態と同様の処理を実行することで、車両形式ごとに位置精度を測定すればよい。また、寄与度設定部43も、車両形式ごとに上記の実施形態と同様の処理を実行することで、車両形式ごとに寄与度を設定すればよい。さらに、補正情報設定部44も、位置精度が精度条件を満たさない車両形式に対して上記の実施形態と同様の処理を実行することで、その車両形式に対して補正情報を設定すればよい。
【0066】
この変形例によれば、地図更新装置は、個々の車両ではなく、車両形式単位で寄与度及び補正情報を設定するので、寄与度及び補正情報の管理を容易化することができる。
【0067】
また、地物データが生成されたときの車両2の周囲の環境条件が、地物の位置精度に影響することもある。例えば、車両2の周囲の環境により、GPS信号の受信強度が低下すると、車両2の自車位置の推定精度が低下し、その結果として、地物の位置精度も低下する。そこで、上記の実施形態または変形例において、各車両2に設けられたデータ取得装置14は、地物データに、その地物データを生成したときの車両2の周囲の環境を表す情報(天候、気温など)を含めてもよい。この場合、データ取得装置14は、例えば、車両2に設けられた温度センサなどのセンサからのセンサ信号、あるいは、無線通信端末13を介して受信した、車両2の現在位置周辺の天候情報に基づいて、車両2の周囲の環境を表す情報を取得すればよい。そして地図更新装置の精度測定部42は、個々の車両2について、同一の環境条件ごとに、その車両から受信した所定の道路区間の地物データに対して上記の実施形態と同様の処理を実行することで、その車両について環境に応じた位置精度を測定すればよい。また、寄与度設定部43も、個々の車両2について、環境条件ごとに上記の実施形態と同様の処理を実行することで、その車両について環境に応じた寄与度を設定すればよい。さらに、補正情報設定部44も、位置精度が精度条件を満たさない車両及び環境条件に対して上記の実施形態と同様の処理を実行することで、その車両について環境に応じた補正情報を設定すればよい。
【0068】
この変形例によれば、地図更新装置は、個々の車両におけるカメラのパラメータだけでなく、環境条件も考慮して寄与度及び補正情報を設定するので、地図に表される地物の位置の精度をより向上することができる。
【0069】
上記の実施形態または変形例において、寄与度設定部43及び補正情報設定部44の何れか一方の処理が省略されてもよい。寄与度設定部43の処理が省略される場合には、各車両、各車両形式または各環境条件について、地物の位置精度によらず同じ寄与度が設定されてもよい。この場合でも、位置精度が精度基準を満たさない車両などから得られた地物データに対しては、補正情報を用いて地物の位置が補正されるので、地図更新装置は、地図に表される地物の位置の精度を向上することができる。また、補正情報設定部44の処理が省略される場合でも、位置精度が精度基準を満たさない車両などから得られた地物データの寄与度が相対的に低く設定されるので、地図更新装置は、地図に表される地物の位置の精度を向上することができる。
【0070】
さらに、上記の各実施形態または変形例による地図更新装置のプロセッサが有する各部の機能をコンピュータに実現させるコンピュータプログラムは、コンピュータによって読取り可能な記録媒体に記憶された形で提供されてもよい。なお、コンピュータによって読取り可能な記録媒体は、例えば、磁気記録媒体、光記録媒体、又は半導体メモリとすることができる。
【0071】
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0072】
1 地図更新システム
2 車両
11 カメラ
12 GPS受信機
13 無線通信端末
14 データ取得装置
21 通信インターフェース
22 メモリ
23 プロセッサ
3 サーバ
31 通信インターフェース
32 ストレージ装置
33 メモリ
34 プロセッサ
41 データ受信部
42 精度測定部
43 寄与度設定部
44 補正情報設定部
45 地図更新部
4 通信ネットワーク
5 無線基地局
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7