(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 21/50 20130101AFI20250107BHJP
G06F 21/62 20130101ALI20250107BHJP
【FI】
G06F21/50
G06F21/62
(21)【出願番号】P 2021104726
(22)【出願日】2021-06-24
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中根 英貴
【審査官】上島 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-347334(JP,A)
【文献】特開2021-018811(JP,A)
【文献】特開2002-349404(JP,A)
【文献】特開2010-071243(JP,A)
【文献】特開2008-184979(JP,A)
【文献】特表2017-536285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 21/50
G06F 21/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置であって、
セキュアな状態であることを確認する確認部と、
外部装置からの制御要求を受け付ける受付部と、
前記受付部が前記制御要求を受け付けた場合、前記確認部によりセキュアな状態であることを条件として、前記制御要求に基づいて、車載ネットワークを起動又は終了する制御、及びイグニッションをオン又はオフにする制御の少なくともいずれかを行う制御部と、
を備え、
前記確認部は、前記制御装置が定められた特定の場所のネットワーク環境に接続されていればセキュアな状態と
し、
前記特定の場所は、前記車載ネットワークを有する車両を出荷する工場である、制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、さらに
前記車両がロック状態にないことを条件として前記制御要求に基づいた制御を行う、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、車載ネットワークを
終了する制御を行った場合、該制御を行
わない場合に比べて低消費電力で動作する状態に移行する、請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、更に、前記制御要求に基づいて、エンジンをオン又はオフにする制御を行う、請求項1~3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
制御装置の制御方法であって、
プロセッサにより、
セキュアな状態であることを確認し、
外部装置からの制御要求を受け付け、
前記制御要求を受け付けた場合、前記制御装置が定められた特定の場所のネットワーク環境に接続されていることによってセキュアな状態であることを条件として、前記制御要求に基づいて、車載ネットワークを起動又は終了する制御、及びイグニッションをオン又はオフにする制御の少なくともいずれかを行
い、
前記特定の場所は、前記車載ネットワークを有する車両を出荷する工場である、
制御方法。
【請求項6】
制御装置の制御プログラムであって、
コンピュータに、
セキュアな状態であることを確認し、
外部装置からの制御要求を受け付け、
前記制御要求を受け付けた場合、前記制御装置が定められた特定の場所のネットワーク環境に接続されていることによってセキュアな状態であることを条件として、前記制御要求に基づいて、車載ネットワークを起動又は終了する制御、及びイグニッションをオン又はオフにする制御の少なくともいずれかを行
い、
前記特定の場所は、前記車載ネットワークを有する車両を出荷する工場である、
処理を実行させる、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エマージェンシー時のエンジン始動操作に係る構成を低コストで、なおかつ、車室内のレイアウトの自由度を低下させずに実現することを目的としたキーレスエントリーシステムが開示されている。このように、車両内に備えられたボタンを操作することでイグニッションのオン、オフを行う技術がある。このような技術は、例えば、車両を整備する車両工場において作業員が車両の検査又はソフトの書き換えを行う際に用いられる。作業員は、車両に備えられたボタンを押してイグニッションをオンにし、作業を中断する場合、又は作業を完了させた際に、ボタンを押してイグニッションをオフにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ボタンによるイグニッションのオン、オフのような車両に対する制御を繰り返すことは、工程のタクトタイムが延びる原因となる。また、車両が懸架された状態でラインが停止すると、作業員が車両に乗り込むことが出来ず、車両に対する制御が困難であった。一方で、外部から車両に対する制御を安易に行えるようにすることは、悪意のある第三者からの攻撃を受けることを想定すると適切ではない。
【0005】
本発明は、セキュリティを担保した上で外部装置からの車両に対する制御を可能にする制御装置、制御方法及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る制御装置は、セキュアな状態であることを確認する確認部と、外部装置からの制御要求を受け付ける受付部と、前記受付部が前記制御要求を受け付けた場合、前記確認部によりセキュアな状態であることを条件として、前記制御要求に基づいて、車載ネットワークを起動又は終了する制御、及びイグニッションをオン又はオフにする制御の少なくともいずれかを行う制御部と、を備える。
【0007】
第1態様に係る制御装置は、確認部がセキュアな状態であることを確認し、受付部が外部装置からの制御要求を受け付け、制御要求を受け付けた場合、セキュアな状態であることを条件として、制御部が、当該制御要求に基づいて、車載ネットワークを起動又は終了する制御、及びイグニッションをオン又はオフにする制御の少なくともいずれかを行う。第1態様に係る制御装置によれば、セキュアな状態にあることを条件として制御要求に基づいた制御を行うので、セキュリティを担保した上で外部装置からの車両に対する制御を可能にする。
【0008】
本発明の第2態様に係る制御装置は、第1態様に係る制御装置であって、前記確認部は、定められた特定の場所にあればセキュアな状態とする。第2態様に係る制御装置によれば、特定の場所にあればセキュリティが担保されているとして、外部装置からの車両に対する制御を可能にする。
【0009】
本発明の第3態様に係る制御装置は、第2態様に係る制御装置であって、前記確認部は、前記特定の場所のネットワーク環境に接続されていればセキュアな状態とする。第3態様に係る制御装置によれば、特定の場所のネットワーク環境に接続されていればセキュリティが担保されているとして、外部装置からの車両に対する制御を可能にする。
【0010】
本発明の第4態様に係る制御装置は、第1態様~第3態様のいずれかに係る制御装置であって、前記制御部は、さらに車両がロック状態にないことを条件として前記制御要求に基づいた制御を行う。第4態様に係る制御装置によれば、車両がロック状態になければ、外部装置からの車両に対する制御を可能にする。
【0011】
本発明の第5態様に係る制御装置は、第1態様~第4態様のいずれかに係る制御装置であって、前記制御部は、車載ネットワークを起動する制御を行った場合、該制御を行う場合に比べて低消費電力で動作する状態に移行する。第5態様に係る制御装置によれば、車載ネットワークを起動した後は電力の消費を抑えることができる。
【0012】
本発明の第6態様に係る制御装置は、第1態様~第5態様のいずれかに係る制御装置であって前記制御部は、更に、前記制御要求に基づいて、エンジンをオン又はオフにする制御を行う。
【0013】
本発明の第7態様に係る制御方法は、プロセッサにより、セキュアな状態であることを確認し、外部装置からの制御要求を受け付け、前記制御要求を受け付けた場合、セキュアな状態であることを条件として、前記制御要求に基づいて、車載ネットワークを起動又は終了する制御、及びイグニッションをオン又はオフにする制御の少なくともいずれかを行う。第6態様に係る制御方法によれば、セキュアな状態にあることを条件として制御要求に基づいた制御を行うので、セキュリティを担保した上で外部装置からの車両に対する制御を可能にする。
【0014】
本発明の第8態様に係る制御プログラムは、コンピュータに、セキュアな状態であることを確認し、外部装置からの制御要求を受け付け、前記制御要求を受け付けた場合、セキュアな状態であることを条件として、前記制御要求に基づいて、車載ネットワークを起動又は終了する制御、及びイグニッションをオン又はオフにする制御の少なくともいずれかを行う、処理を実行させる。第7態様に係る制御プログラムによれば、セキュアな状態にあることを条件として制御要求に基づいた制御を行うので、セキュリティを担保した上で外部装置からの車両に対する制御を可能にする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、セキュリティを担保した上で外部装置からの車両に対する制御を可能にする制御装置、制御方法及び制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る車載システムの概略構成を示す図である。
【
図2】制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】制御装置の機能構成の例を示すブロック図である。
【
図4】制御装置による制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】制御装置による制御処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0018】
図1は、本実施形態に係る車載システムの概略構成を示す図である。
【0019】
図1に示した車載システムは、制御装置10、イグニッションスイッチ20、通信ユニット30、エンジンECU40、エンジン50、照合ECU55を含む。制御装置10、イグニッションスイッチ20、通信ユニット30、エンジンECU40、照合ECU55は、CANバス60で接続されている。
【0020】
制御装置10は、車載システムの外部にある外部装置100からの制御要求に基づいて、車載システムに含まれる各部の制御を行う。外部装置100は、DLC(Data Link Connector)を介して制御装置10と接続される。制御装置10は、例えばセントラルゲートウェイECU(Electronic Control Unit)である。本実施形態では、制御装置10による制御対象としてイグニッションスイッチ20、通信ユニット30及びエンジンECU40を示したが、制御装置10による制御対象は係る例に限定されない。
【0021】
イグニッションスイッチ20は、車載システムが搭載される車両のエンジンを始動させたり、その他電気系統を制御したりするためのスイッチである。イグニッションスイッチ20は、制御装置10からの制御要求に応じてイグニッション、その他電気系統のオン、オフが制御される。
【0022】
通信ユニット30は、車載システムの各部の間の通信が行われる車載ネットワークを制御する。通信ユニット30は、制御装置10からの制御要求に応じて車載ネットワークのオン、オフを制御する。
【0023】
エンジンECU40は、エンジン50の駆動を制御するECUである。エンジンECU40は、制御装置10からの制御要求に応じてエンジン50のオン、オフを制御する。
【0024】
なお、
図1に係る車載システムがハイブリッド車両に搭載される場合には、エンジンECU40に代えてHEV(Hybrid Electric Vehicle)ECUを備え、エンジン50に代えてハイブリッドシステムを有する。この場合、HEV ECUは、エンジンのオン、オフに代えてREADY(ハイブリットシステムによる車両駆動が可能な状態)のオン、オフを制御する。
【0025】
また、
図1に係る車載システムがプラグインハイブリッド車両に搭載される場合には、エンジンECU40に代えてPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)ECUを備え、エンジン50に代えてプラグインハイブリッドシステムを有する。この場合、PHEV ECUは、エンジンのオン、オフに代えてREADY(プラグインハイブリットシステムによる車両駆動が可能な状態)のオン、オフを制御する。
【0026】
また、
図1に係る車載システムが燃料電池車両に搭載される場合には、エンジンECU40に代えてFCEV(Fuel Cell Electric Vehicle)ECUを備え、エンジン50に代えて車両駆動システムを有する。この場合、FCEV ECUは、エンジンのオン、オフに代えてREADY(車両駆動システムによる車両駆動が可能な状態)のオン、オフを制御する。
【0027】
また、
図1に係る車載システム電気自動車両に搭載される場合には、エンジンECU40に代えてBEV(Battery Cell Electric Vehicle)ECUを備え、エンジン50に代えて車両駆動システムを有する。この場合、BEV ECUは、エンジンのオン、オフに代えてREADY(車両駆動システムによる車両駆動が可能な状態)のオン、オフを制御する。
【0028】
照合ECU55は、不図示のスマートキーとの間で通信することにより所定の照合処理を行い、照合に成功すると、イグニッションスイッチ20、通信ユニット30、エンジンECU40へ、制御を許可する信号を送信する。所定の照合処理には、機器照合、キーの照合、生体認証等が含まれ、1以上の照合処理が行われる。照合処理により、制御装置10は、後述する各種条件に加え、これらの所定の照合に成功したことを条件に、イグニッションのオン、オフを制御することができる。
【0029】
本実施形態に係る制御装置10は、車載システムを搭載した車両がセキュアな状態であることを条件として、外部装置100からの制御要求に基づいて、車載システムに含まれる各部の制御を行う。制御装置10は、車載システムを搭載した車両がセキュアな状態であることを条件として車載システムに含まれる各部の制御を行うことで、セキュリティを担保した上で、外部装置からの車両に対する制御が可能となる。
【0030】
図2は、制御装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0031】
図2に示すように、制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、ストレージ14、入力部15、表示部16及び通信インタフェース(I/F)17を有する。各構成は、バス19を介して相互に通信可能に接続されている。
【0032】
CPU11は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU11は、ROM12またはストレージ14からプログラムを読み出し、RAM13を作業領域としてプログラムを実行する。CPU11は、ROM12またはストレージ14に記録されているプログラムにしたがって、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM12またはストレージ14には、車載システムを制御する制御プログラムが格納されている。
【0033】
ROM12は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM13は、作業領域として一時的にプログラムまたはデータを記憶する。ストレージ14は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)またはフラッシュメモリ等の記憶装置により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、および各種データを格納する。
【0034】
入力部15は、マウス等のポインティングデバイス、およびキーボードを含み、各種の入力を行うために使用される。
【0035】
表示部16は、たとえば、液晶ディスプレイであり、各種の情報を表示する。表示部16は、タッチパネル方式を採用して、入力部15として機能しても良い。
【0036】
通信インタフェース17は、イグニッションスイッチ20、通信ユニット30、エンジンECU40等の他の機器と通信するためのインタフェースであり、たとえば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)、CAN(Controller Area Network)等の規格が用いられる。
【0037】
上記の制御プログラムを実行する際に、制御装置10は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。制御装置10が実現する機能構成について説明する。
【0038】
次に、制御装置10の機能構成について説明する。
【0039】
図3は、制御装置10の機能構成の例を示すブロック図である。
【0040】
図3に示すように、制御装置10は、機能構成として、確認部101、受付部102及び制御部103を有する。各機能構成は、CPU11がROM12またはストレージ14に記憶された制御プログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0041】
確認部101は、車載システムがセキュアな状態にあるかどうかを確認する。確認部101は、車載システムが、車両工場等の予め定められた特定の場所にあれば、車載システムがセキュアな状態であるとしてもよい。確認部101は、予め定められたネットワークに接続されていることを条件として、車載システムが予め定められた特定の場所にあるとしてもよい。例えば、確認部101は、暗号化されたWi-FiのSSIDまたはイーサネットのMACアドレスで、予め定められたネットワークに接続されているかどうかを特定してもよい。
【0042】
また、確認部101は、車両を整備する権限を有する作業者による操作が行われた場合に、車載システムはセキュアな状態にあるとしてもよい。確認部101は、生体認証又は個人認証機能(特定作業者に付与した暗号鍵を用いた暗号通信による個人認証)を備えた端末を識別する事で、作業者が権限を有するかどうかを判定してもよい。
【0043】
確認部101は、車両工場等の予め定められた特定の場所にある場合にのみ、判定フラグを有効にする。判定フラグは、外部から改竄されないよう、制御装置10内のセキュアな領域(Hardware Security Module、HSM)に保存されうる。判定フラグは、車両工場から出荷時に無効に設定され、無効から有効への変更が出来ない不可逆設定であってもよい。
【0044】
受付部102は、外部装置100からの、車載システムに対する制御要求を受け付ける。車載システムに対する制御要求は、例えば、イグニッションスイッチ20、通信ユニット30、エンジンECU40の少なくともいずれかに対する制御要求である。
【0045】
制御部103は、受付部102が外部装置100から制御要求を受け付けた場合、確認部101により、車載システムがセキュアな状態であることを条件として、受け付けた制御要求に基づいて車載システムに対する制御を行う。制御部103は、イグニッションスイッチ20、通信ユニット30、エンジンECU40の少なくともいずれかに対する制御を行う。
【0046】
制御部103は、さらに、車載システムがアンロック状態にあることを条件として、受け付けた制御要求に基づいて車載システムに対する制御を行ってもよい。アンロック状態とは、制御装置10がセキュリティアンロック状態にあることをいう。具体的には、制御部103は、制御装置10内のセキュアな領域(セキュアメモリ)に保存されたロックフラグの状態を参照して、車載システムがアンロック状態にあるかどうかを判断してもよい。ロックフラグは、車両工場から出荷時にアンロック状態からロック状態に設定され、ロック状態からアンロック状態への変更が出来ない不可逆設定であってもよい。
【0047】
制御装置10は、
図3に示した機能構成を有することで、車載システムを搭載した車両がセキュアな状態であることを条件として、外部装置100からの制御要求に基づいて、車載システムに含まれる各部の制御を行うことができる。制御装置10は、
図3に示した機能構成を有することで、セキュリティを担保した上で、外部装置からの車両に対する制御が可能となる。
【0048】
次に、制御装置10の作用について説明する。
【0049】
図4は、制御装置10による制御処理の流れを示すフローチャートである。CPU11がROM12又はストレージ14から制御プログラムを読み出して、RAM13に展開して実行することにより、制御処理が行なわれる。
【0050】
CPU11は、まず制御装置10の状態を通常制御モードに設定する(ステップS101)。通常制御モードは、外部装置100からの制御要求を受け付けないモードである。
【0051】
ステップS101に続いて、CPU11は、車載システムが特定のセキュアな状態にあるかどうかを判断する(ステップS102)。CPU11は、上述の確認部101の説明で示したように、車載システムが、車両工場等の予め定められた特定の場所にあれば、車載システムがセキュアな状態であるとしてもよい。
【0052】
ステップS102の判断の結果、車載システムが特定のセキュアな状態にないと判断した場合は(ステップS102;No)、CPU11は、ステップS101の通常制御モードに戻る。
【0053】
一方、ステップS102の判断の結果、車載システムが特定のセキュアな状態にあると判断した場合は(ステップS102;Yes)、CPU11は、車載システムのセキュリティロック状態を確認する(ステップS103)。
【0054】
ステップS103の確認の結果、車載システムがロック状態にあると確認した場合は(ステップS103;No)、CPU11は、ステップS101の通常制御モードに戻る。
【0055】
一方、ステップS103の確認の結果、車載システムがアンロック状態にあると確認した場合は(ステップS103;Yes)、CPU11は、制御装置10の状態を車両状態制御モードに設定する(ステップS104)。車両状態制御モードは、外部装置100からの制御要求を受け付けるモードである。
【0056】
ステップS104に続いて、CPU11は、車両状態制御モードに移行してから所定の時間が経過したかどうか判断する(ステップS105)。
【0057】
ステップS105の判断の結果、車両状態制御モードに移行してから所定の時間が経過した場合は(ステップS105;Yes)、CPU11は、ステップS101の通常制御モードに戻る。
【0058】
一方、ステップS105の判断の結果、車両状態制御モードに移行してから所定の時間が経過していない場合は(ステップS105;No)、CPU11は、外部装置100からの制御要求があったかどうか判断する(ステップS106)。
【0059】
ステップS106の判断の結果、外部装置100からの制御要求が無かった場合は(ステップS106;No)、CPU11は、ステップS104の車両状態制御モードに戻る。
【0060】
一方、ステップS106の判断の結果、外部装置100からの制御要求があった場合は(ステップS106;Yes)、CPU11は、外部装置100からの制御要求による制御対象を判定する(ステップS107)。
【0061】
外部装置100からの制御要求による制御対象が車載ネットワークであれば、CPU11は、通信ユニット30を制御して、車載ネットワークをオン、又はオフする制御を行う(ステップS108)。
【0062】
外部装置100からの制御要求による制御対象がイグニッションスイッチであれば、CPU11は、イグニッションスイッチ20を制御して、イグニッションスイッチ20をオン、又はオフする制御を行う(ステップS109)。
【0063】
制御装置10は、
図4に示した一連の動作を実行することで、車載システムを搭載した車両がセキュアな状態であることを条件として、外部装置100からの制御要求に基づいて、車載システムに含まれる各部の制御を行うことができる。制御装置10は、
図4に示した一連の動作を実行することで、セキュリティを担保した上で、外部装置からの車両に対する制御が可能となる。
【0064】
図4に示した制御処理では、CPU11が、車載システムが特定のセキュアな状態であるかどうかを判断した後に、車載システムのロック状態(制御装置10のセキュリティロック状態)を確認していたが、本発明は係る例に限定されない。CPU11は、車載システムのロック状態を確認し、アンロック状態であれば、車載システムが特定のセキュアな状態であるかどうかを判断してもよい。特定のセキュアな状態であるかどうかを判断する処理に比べて相対的に処理負荷の軽いロック状態の確認処理を先に行うことで、制御装置10の処理負荷を下げることができる。
【0065】
図5は、制御装置10による制御処理の流れを示すフローチャートである。CPU11がROM12又はストレージ14から制御プログラムを読み出して、RAM13に展開して実行することにより、制御処理が行なわれる。
【0066】
図5に示したのは、車載ネットワーク、イグニッションスイッチのオン、オフ制御に加え、エンジンのオン、オフ制御を行う場合の、制御装置10による制御処理の流れである。
【0067】
ステップS106までは
図4に示した制御処理と同様である。
【0068】
ステップS106の判断の結果、外部装置100からの制御要求があった場合は(ステップS106;Yes)、CPU11は、外部装置100からの制御要求による制御対象を判定する(ステップS107)。
【0069】
外部装置100からの制御要求による制御対象が車載ネットワークであれば、CPU11は、通信ユニット30を制御して、車載ネットワークをオン、又はオフする制御を行う(ステップS108)。
【0070】
外部装置100からの制御要求による制御対象がイグニッションスイッチであれば、CPU11は、まず車両停止保持又は解除の制御を行う(ステップS111)。続いて、CPU11は、イグニッションスイッチ20を制御して、イグニッションスイッチ20をオン、又はオフする制御を行う(ステップS109)。
【0071】
外部装置100からの制御要求による制御対象がエンジンであれば、CPU11は、まず車両停止保持又は解除の制御を行う(ステップS112)。続いて、CPU11は、エンジンECU40を制御してエンジン50をオン、又はオフする制御を行う(ステップS113)。
【0072】
外部装置100からの制御要求による制御対象がその他のものであれば、CPU11は、その他のものに対する制御を行う(ステップS114)。
【0073】
なお、
図4及び
図5の制御処理において、CPU11は、車載ネットワークを起動する制御を行った後は、車両状態制御モードではなく、通常制御モードに戻ってもよい。
【0074】
また、
図4及び
図5の制御処理において、CPU11は、車載ネットワークを終了する制御を行った後は、CPU11は、車両状態制御モードではなく、スリープモードに移行してもよい。スリープモードは、車両状態制御モードおよび通常制御モードよりも低消費電力となるモードである。
【0075】
スリープモードから通常制御モードに移行し、ステップS101に示した車載システムが特定のセキュアな状態にあるかどうかの確認、及び、ステップS102に示したロック状態の確認を開始するトリガは、例えば以下の通りである。なお、前提として車載システムが搭載されたバッテリの容量が残っているものとする。
【0076】
制御装置10は、例えば、車両のボタン操作等によりイグニッションスイッチ20のオン、又は車両のアクセサリのオンを認識した場合に、スリープモードから通常制御モードに移行してもよい。
【0077】
また、制御装置10は、例えば、制御装置10とCANバス60で接続されているECU等がCANメッセージの送信を開始したことを検出した場合に、スリープモードから通常制御モードに移行してもよい。この場合は、イグニッションスイッチ20がオフの状態のまま通常制御モードに移行する。なお、この場合、DLCからの通信があった場合は、制御装置10は、通常制御モードに移行しない。DLCを除外する理由は、車外からの通信又はノイズで制御装置10がスリープモードに移行出来ない状態になることによるバッテリ上がりの発生を避けるためである。
【0078】
また、制御装置10は、例えば、制御装置10に繋がるCANバス60にドミナント(電圧変化)が発生した場合に、スリープモードから通常制御モードに移行してもよい。この場合は、イグニッションスイッチ20がオフの状態のまま通常制御モードに移行する。なお、この場合、DLCのドミナントがあった場合は、制御装置10は、通常制御モードに移行しない。DLCを除外する理由は、車外からの通信又はノイズで制御装置10がスリープモードに移行出来ない状態になることによるバッテリ上がりの発生を避けるためである。
【0079】
制御装置10は、車両状態制御モードの場合のみDLCのドミナントがあった場合であっても通常制御モードに移行してもよい。これにより、制御装置10がスリープ状態にある場合でも、車両の外部から制御装置10を通して通信ユニット30をオンにして、車両を通信可能な状態にするができる。
【0080】
なお、上記各実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した制御処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、制御処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0081】
また、上記各実施形態では、制御処理のプログラムがROMまたはストレージに予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的(non-transitory)記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0082】
10 制御装置
20 イグニッションスイッチ
30 通信ユニット
40 エンジンECU
50 エンジン
60 CANバス