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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10D 30/01 20250101AFI20250107BHJP
   H10D 30/66 20250101ALI20250107BHJP
   H10D 12/00 20250101ALI20250107BHJP
【FI】
H01L29/78 658F
H01L29/78 652T
H01L29/78 653C
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652M
H01L29/78 655A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021112146
(22)【出願日】2021-07-06
(65)【公開番号】P2023008517
(43)【公開日】2023-01-19
【審査請求日】2023-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津間 博基
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 洋平
(72)【発明者】
【氏名】植茶 雅史
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-062402(JP,A)
【文献】特開平02-244716(JP,A)
【文献】特開平06-053165(JP,A)
【文献】特開2020-150242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/12
H01L 29/78
H01L 29/739
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電極(18)と接続される接続配線(19)を備える炭化珪素半導体装置の製造方法であって、
第1導電型または第2導電型とされた基板(11)と、前記基板上に形成された第1導電型のドリフト層(12)と、前記ドリフト層上に形成された第2導電型のベース層(13)と、前記ベース層の表層部に形成された第1導電型の不純物領域(14)と、を有し、前記ベース層のうちの前記ドリフト層と前記不純物領域との間にゲート絶縁膜(17)が形成されると共に前記ゲート絶縁膜上に前記ゲート電極が形成され、前記ベース層側の面を一面(10a)として前記一面上に、前記ゲート電極と接続されると共にポリシリコンで構成される前記接続配線が形成され、炭化珪素で構成された半導体基板(10)を用意することと、
前記ベース層、前記不純物領域、前記ゲート電極、および前記接続配線が覆われるように層間絶縁膜(20)を形成することと、
前記層間絶縁膜を含む部分に対し、前記ベース層および前記不純物領域を露出させる第1コンタクトホール(21a)を形成すると共に、前記接続配線を露出させる第2コンタクトホール(21b)を形成することと、
熱酸化を行い、前記接続配線のうちの前記第2コンタクトホールから露出する部分に酸化膜(30)を形成することと、
前記半導体基板のうちの前記第1コンタクトホールから露出する部分に金属層(31)を形成することと、
加熱処理を行い、前記金属層と前記半導体基板とを反応させて金属シリサイド膜(24)を形成することと、
前記金属層のうちの前記金属シリサイド膜となった部分と異なる部分の未反応金属層(31a)を除去することと、
前記第1コンタクトホールを通じて前記ベース層および前記不純物領域と電気的に接続される電極(22)を形成すると共に、前記第2コンタクトホールを通じて前記接続配線と電気的に接続され、前記酸化膜の酸素を還元可能な材料で構成された部分を有するゲート配線(23)を形成することと、を行い、
前記ゲート配線を形成することの途中、または前記ゲート配線を形成した後には、前記ゲート配線に関する加熱処理を行い、前記接続配線上に形成されている前記酸化膜の酸素を前記ゲート配線内に還元させて当該酸化膜を除去することを行い、
前記半導体基板を用意することでは、前記ゲート電極を形成することの後、前記半導体基板のうちの前記ゲート絶縁膜との界面におけるダングリングボンドを窒素で終端させることを行い、
前記酸化膜を形成することでは、10nm以下の前記酸化膜を形成する炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記ゲート配線を形成した後、前記ゲート配線に関する加熱処理として、前記ゲート配線の膜質を安定化させる加熱処理を行い、
前記酸化膜を除去することは、前記ゲート配線の膜質を安定化させる加熱処理を行っている際に行う請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記ゲート配線を形成することでは、主配線層(41)を形成することと、前記主配線層を形成することの前に、前記酸化膜の酸素を還元可能な材料であって、前記主配線層より拡散し難い材料であるバリアメタル層(40)を形成することと、前記バリアメタル層および前記主配線層をパターニングして前記ゲート配線を形成することと、を行い、
前記バリアメタル層を形成することの後であって前記主配線層を形成することの前に、前記ゲート配線に関する加熱処理として、前記バリアメタル層と前記接続配線とを反応させて金属シリサイド膜(26)を形成する加熱処理を行い、
前記酸化膜を除去することは、当該金属シリサイド膜を形成する加熱処理を行っている際に行う請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素(以下では、単にSiCともいう)で構成されたSiC半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、SiCで構成された半導体基板にベース層やソース領域等を有するMOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistorの略)が形成されたSiC半導体装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、このSiC半導体装置は、ドリフト層を有し、ドリフト層上にベース層やソース領域等が形成されている。また、このSiC半導体装置では、ゲート絶縁膜上にゲート電極が配置されたゲート構造が形成されており、半導体基板の一面側に、ゲート電極と接続される接続配線が形成されている。なお、ゲート電極および接続配線は、ポリシリコンで構成されている。
【0003】
また、半導体基板の一面側には、ゲート電極や接続配線を覆うように層間絶縁膜が形成されている。そして、層間絶縁膜には、ソース領域等を露出させる第1コンタクトホールが形成されていると共に、接続配線を露出させる第2コンタクトホールが形成されている。
【0004】
層間絶縁膜上には、第1コンタクトホールを通じてソース領域等と接続されるソース電極と、第2コンタクトホールを通じて接続配線と接続されるゲート配線が形成されている。また、ソース電極とソース領域等との間には、金属シリサイド膜が配置されている。
【0005】
このようなSiC半導体装置は、次のように製造される。具体的には、ベース層やソース領域等が形成された半導体基板の一面側に層間絶縁膜を形成した後、第1コンタクトホールおよび第2コンタクトホールを同時に形成する。次に、熱酸化し、半導体基板のうちの第1コンタクトホールから露出する部分に酸化膜を形成すると共に、第2コンタクトホールから露出する接続配線に酸化膜を形成する。この際、半導体基板がSiCで構成され、接続配線がポリシリコンで構成されているため、接続配線上の酸化膜が半導体基板上の酸化膜よりも厚く形成される。なお、この酸化膜は、後述する金属層を用いて金属シリサイド膜を形成する際、金属層を構成する原子が接続配線等に拡散することを抑制するためのものである。
【0006】
続いて、接続配線上の酸化膜を残しつつ、半導体基板のうちの第1コンタクトホールから露出する部分に形成された酸化膜を除去する。その後、ニッケル等で構成される金属層が第1コンタクトホール内に配置されるように成膜し、加熱処理を行うことで半導体基板のうちの第1コンタクトホールから露出する部分に金属シリサイド膜を形成する。この際、接続配線上に酸化膜が形成されているため、金属層を構成する原子が接続配線等に拡散することが抑制され、SiC半導体装置の特性が変化することが抑制される。
【0007】
次に、接続配線上に形成された酸化膜を除去する。その後、第1コンタクトホールを通じてソース領域等と接続される上部電極を形成すると共に、第2コンタクトホールを通じて接続配線と電気的に接続されるゲート配線を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2010-62402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記のようなSiC半導体装置では、接続配線上の酸化膜を除去するための工程のみを行う必要があり、製造工程が増加し易い。
【0010】
本発明は上記点に鑑み、製造工程の削減を図ることのできるSiC半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための請求項1では、ゲート電極(18)と接続される接続配線(19)を備えるSiC半導体装置の製造方法であって、第1導電型または第2導電型とされた基板(11)と、基板上に形成された第1導電型のドリフト層(12)と、ドリフト層上に形成された第2導電型のベース層(13)と、ベース層の表層部に形成された第1導電型の不純物領域(14)と、を有し、ベース層のうちのドリフト層と不純物領域との間にゲート絶縁膜(17)が形成されると共にゲート絶縁膜上にゲート電極が形成され、ベース層側の面を一面(10a)として一面上に、ゲート電極と接続されると共にポリシリコンで構成される接続配線が形成され、SiCで構成された半導体基板(10)を用意することと、ベース層、不純物領域、ゲート電極、および接続配線が覆われるように層間絶縁膜(20)を形成することと、層間絶縁膜を含む部分に対し、ベース層および不純物領域を露出させる第1コンタクトホール(21a)を形成すると共に、接続配線を露出させる第2コンタクトホール(21b)を形成することと、熱酸化を行い、接続配線のうちの第2コンタクトホールから露出する部分に酸化膜(30)を形成することと、半導体基板のうちの第1コンタクトホールから露出する部分に金属層(31)を形成することと、加熱処理を行い、金属層と半導体基板とを反応させて金属シリサイド膜(24)を形成することと、金属層のうちの金属シリサイド膜となった部分と異なる部分の未反応金属層(31a)を除去することと、第1コンタクトホールを通じてベース層および不純物領域と電気的に接続される電極(22)を形成すると共に、第2コンタクトホールを通じて接続配線と電気的に接続され、酸化膜の酸素を還元可能な材料で構成された部分を有するゲート配線(23)を形成することと、を行う。そして、ゲート配線を形成することの途中、またはゲート配線を形成した後には、ゲート配線に関する加熱処理を行い、接続配線上に形成されている酸化膜の酸素をゲート配線内に還元させて当該酸化膜を除去することを行い、半導体基板を用意することでは、ゲート電極を形成することの後、半導体基板のうちのゲート絶縁膜との界面におけるダングリングボンドを窒素で終端させることを行い、酸化膜を形成することでは、10nm以下の酸化膜を形成する
【0012】
これによれば、ゲート配線に関する加熱処理を行う際、ゲート配線内に酸化膜の酸素を還元させることで酸化膜を除去している。このため、酸化膜を除去する工程のみを行う必要がなく、製造工程が増加することを抑制できる。
【0013】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態におけるSiC半導体装置の断面図である。
図2A図1に示すSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図2B図2Aに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図2C図2Bに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図2D図2Cに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図2E図2Dに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図2F図2Eに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図2G図2Fに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図2H図2Gに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図2I図2Hに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図3】半導体基板とゲート絶縁膜との界面の組成を示す模式図である。
図4】酸化膜の厚さと閾値電圧との関係を示す図である。
図5】第2実施形態におけるSiC半導体装置の断面図である。
図6A図5に示すSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図6B図6Aに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図6C図6Bに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図6D図6Cに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0016】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、SiC半導体装置として、トレンチゲート構造の反転型のMOSFETが形成されたものを例に挙げて説明する。まず、SiC半導体装置の構成について説明する。
【0017】
図1に示されるように、SiC半導体装置は、SiCで構成される半導体基板10を用いて構成されている。具体的には、SiC半導体装置の半導体基板10は、SiCからなるn型の基板11を備えている。本実施形態では、基板11として、例えば、(0001)Si面に対して0~8°のオフ角を有し、窒素やリン等のn型不純物濃度が1.0×1019/cmとされ、厚さが50~300μm程度とされたものが用いられる。なお、基板11は、本実施形態ではドレイン領域を構成するものである。
【0018】
基板11の表面上には、SiCで構成される、n型のドリフト層12およびp型のベース層13等がエピタキシャル成長等によって形成されている。以下では、半導体基板10のうちのベース層13側の面を半導体基板10の一面10aとし、半導体基板10のうちの基板11側の面を半導体基板10の他面10bとして説明する。
【0019】
ドリフト層12は、例えば、n型不純物濃度が1.0~50.0×1015/cm程度とされ、厚さが5~50μm程度とされている。ベース層13は、ドリフト層12上の一部に形成されており、例えば、p型不純物濃度が2.0×1017/cm程度とされ、厚さが0.5~2μm程度とされている。
【0020】
ベース層13の表層部には、n型のソース領域14およびp型のコンタクト領域15が形成されている。ソース領域14は、後述するトレンチ16の側面に接するように形成され、コンタクト領域15は、ソース領域14を挟んでトレンチ16と反対側に形成されている。ソース領域14は、表層部におけるn型不純物濃度、すなわち表面濃度が例えば1.0×1021/cmとされている。コンタクト領域15は、表層部におけるp型不純物濃度、すなわち表面濃度が例えば1.0×1021/cmとされている。なお、本実施形態では、ソース領域14が不純物領域に相当している。また、コンタクト領域15は、ベース層13の一部が高不純物濃度とされた領域と捉えることもでき、ベース層13の一部であるともいえる。
【0021】
半導体基板10には、ベース層13およびソース領域14を貫通してドリフト層12に達するように、例えば、幅が0.8μm程度とされたトレンチ16が形成されている。なお、図1では1本のトレンチ16のみを示しているが、トレンチ16は、実際には、複数本が紙面左右方向に等間隔に配置されたストライプ状とされている。
【0022】
各トレンチ16内は、各トレンチ16の壁面を覆うように形成されたゲート絶縁膜17と、このゲート絶縁膜17の上に形成されたポリシリコン等により構成されるゲート電極18とにより埋め込まれている。これにより、トレンチゲート構造が構成されている。なお、本実施形態では、トレンチ16の壁面のうちのベース層13と接する部分が、不純物領域とドリフト層との間に挟まれたベース層の表面に相当する。
【0023】
また、ゲート絶縁膜17は、トレンチ16の内壁面以外の表面にも形成されている。具体的には、ゲート絶縁膜17は、トレンチ16の内壁面から半導体基板10の一面10aに渡って形成されている。そして、ゲート絶縁膜17のうちの半導体基板10の一面10aに形成された部分には、ソース領域14およびコンタクト領域15を露出させるコンタクトホール17aが形成されている。
【0024】
ゲート絶縁膜17うちの半導体基板10の一面10aに形成された部分上には、ゲート電極18と接続される接続配線19が形成されている。この接続配線19は、後述するようにトレンチ16にポリシリコンを配置してゲート電極18を構成する際、半導体基板10の一面10a上に形成されたポリシリコンがパターニングされることで構成される。なお、接続配線19は、図1とは別断面において、ゲート電極18と電気的に接続されている。
【0025】
また、半導体基板10の一面10a上に形成されたポリシリコンをパターニングして接続配線19を形成する際、トレンチ16に埋め込まれたポリシリコンは、トレンチ16の開口部側に位置する部分が除去される。このため、トレンチ16の開口部側は、ゲート電極18が埋め込まれていない状態となっている。つまり、トレンチ16の開口部側に位置するゲート絶縁膜17は、ゲート電極18から露出した状態となっている。特に限定されるものではないが、例えば、トレンチ16は、開口部側から50~150nm程度の部分にゲート電極18が配置されていない状態となっている。
【0026】
半導体基板10の一面10a上には、ゲート電極18やゲート絶縁膜17等を覆うように、層間絶縁膜20が形成されている。なお、ゲート電極18を覆う層間絶縁膜20は、トレンチ16の開口部を埋め込むように配置されている。本実施形態の層間絶縁膜20は、BPSG(Borophosphosilicate Glassの略)等で構成されている。
【0027】
層間絶縁膜20には、コンタクトホール17aと連通してソース領域14およびコンタクト領域15を露出させるコンタクトホール20aが形成されている。なお、層間絶縁膜20に形成されたコンタクトホール20aは、ゲート絶縁膜17に形成されたコンタクトホール17aと共に1つのコンタクトホールとして機能する。このため、以下では、コンタクトホール17aおよびコンタクトホール20aを纏めて第1コンタクトホール21aともいう。
【0028】
また、層間絶縁膜20には、接続配線19を露出させる第2コンタクトホール21bが形成されている。第1コンタクトホール21aおよび第2コンタクトホール21bのパターンは、任意であり、例えば複数の正方形のものを配列させたパターン、長方形のライン状のものを配列させたパターン、または、ライン状のものを並べたパターン等が挙げられる。
【0029】
層間絶縁膜20上には、第1コンタクトホール21aを通じてソース領域14およびコンタクト領域15と電気的に接続されるソース電極22が形成されている。また、層間絶縁膜20上には、第2コンタクトホール21bを通じて接続配線19と電気的に接続されるゲート配線23が形成されている。
【0030】
ゲート配線23は、酸化膜の酸素を還元可能な材料で構成されており、本実施形態では、アルミニウム、またはアルミニウムを主成分とする材料を用いて構成されている。ソース電極22は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、後述するようにゲート配線23と同じ工程で形成される。このため、本実施形態のソース電極22は、ゲート配線23と同様に、アルミニウム、またはアルミニウムを主成分とする材料を用いて構成されている。
【0031】
なお、ソース電極22は、ゲート配線23と異なる材料を用いて構成されていてもよく、酸化膜の酸素を還元可能な材料で構成されていなくてもよい。また、本実施形態では、ソース電極22が電極に相当している。
【0032】
半導体基板10のうちの第1コンタクトホール21aから露出する部分には、ソース領域14およびコンタクト領域15とソース電極22との間の接触抵抗を低減するための金属シリサイド膜24が形成されている。そして、ソース電極22は、金属シリサイド膜24を介してソース領域14およびコンタクト領域15と電気的に接続されている。なお、本実施形態の金属シリサイド膜24は、ニッケルシリコン(NiSi)等で構成されている。
【0033】
半導体基板10の他面10b側には、基板11と電気的に接続されるドレイン電極25が形成されている。本実施形態のSiC半導体装置では、このような構造により、nチャネルタイプの反転型であるトレンチゲート構造のMOSFETが構成されている。
【0034】
このようなSiC半導体装置は、ソース電極22にドレイン電極25より低い電圧が印加された状態でゲート電極18に所定の閾値電圧以上の電圧が印加されると、ベース層13のうちのトレンチ16と接する部分にn型の反転層(すなわち、チャネル)が形成される。そして、ソース領域14から反転層を介して電子がドリフト層12に供給されることでオン状態となる。
【0035】
次に、上記SiC半導体装置の製造方法について、図2A図2Iを参照しつつ説明する。
【0036】
まず、図2Aに示されるように、SiCで構成される半導体基板10に、ベース層13、ソース領域14、コンタクト領域15、トレンチ16、ゲート絶縁膜17、ゲート電極18、接続配線19が形成されたものを用意する。なお、この工程では、トレンチ16の壁面に形成されたゲート絶縁膜17と半導体基板10の一面10aに形成されたゲート絶縁膜17とが繋がった状態となっている。
【0037】
また、本実施形態では、トレンチ16を形成した後、CVD法等でポリシリコンを成膜することにより、トレンチ16を埋め込むゲート電極18を形成すると共に、半導体基板10の一面10a上にポリシリコンを堆積させる。なお、CVDは、Chemical Vapor Depositionの略である。その後、半導体基板10の一面10a上に形成されたポリシリコンをパターニングすることにより、ゲート電極18と接続される接続配線19を形成する。この際、トレンチ16に埋め込まれたポリシリコンは、トレンチ16の開口部側に位置する部分が除去される。このため、トレンチ16の開口部側は、ゲート電極18が埋め込まれていない状態となっている。
【0038】
その後、特に図示しないが、本実施形態では、酸素窒素雰囲気(すなわち、NO雰囲気)で加熱処理を行うことにより、半導体基板10のうちのゲート絶縁膜17との界面におけるダングリングボンドを窒素で終端させる窒素終端化処理を行う。つまり、ベース層13のうちのゲート絶縁膜17との界面におけるダングリングボンドを窒素で終端させる。これにより、界面準位を低くすることで閾値電圧の低下を図ることができる。
【0039】
続いて、図2Bに示されるように、CVD法等により、ゲート電極18や接続配線19等を覆うように層間絶縁膜20を形成する。なお、層間絶縁膜20は、トレンチ16の開口部側の部分も埋め込むように配置される。
【0040】
次に、図2Cに示されるように、図示しないマスクを用いてエッチング等を行い、ソース領域14およびコンタクト領域15を露出させる第1コンタクトホール21a、および接続配線19を露出させる第2コンタクトホール21bを同時に形成する。
【0041】
続いて、図2Dに示されるように、熱酸化を行い、接続配線19のうちの第2コンタクトホール21bから露出する部分に、厚さが1~10nm程度の酸化膜30を形成する。なお、このような酸化膜30は、例えば、ドライ酸化を700℃で40分行うこと、またはパイロ酸化を700℃で5分間行うことによって形成される。
【0042】
ここで、この工程での酸化膜30の形成は、ゲート電極18が配置されていないトレンチ16の開口部側からゲート絶縁膜17を通じて半導体基板10に酸素が入り込む可能性がある。この場合、酸素は、酸化膜30を厚く形成しようとするほど半導体基板10に入り込み易くなる。そして、図3に示されるように、酸素が半導体基板10に入り込むと、半導体基板10のうちのゲート絶縁膜17との界面に終端させた窒素が酸素に置き換わってしまい、界面準位が高くなって閾値電圧が高くなる。本発明者らの検討によれば、図4に示されるように、酸化膜30が10nmより大きくなると、閾値電圧が基準値に対して10%以上高くなることが確認された。なお、ここでの基準値とは、酸化膜30の厚さが0nmである場合の閾値電圧を基準値(すなわち、閾値電圧が1)としている。そして、現状では、閾値電圧は、基準値に対して10%程度の誤差にすることが望まれている。このため、本実施形態では、酸化膜30を10nm以下となるように形成する。
【0043】
また、上記のように、本実施形態の半導体基板10は、SiCで構成されており、シリコンよりも酸化し難い材料である。このため、酸化膜30を10nm以下の薄い膜で形成した場合には、半導体基板10の一面10aのうちの第1コンタクトホール21aから露出する部分には、ほぼ酸化膜が形成されない。
【0044】
次に、図2Eに示されるように、スパッタ法等により、第1コンタクトホール21aから露出する部分を含む部分に、ニッケル等の金属層31を形成する。なお、この工程を行う前に、必要に応じてウェットエッチング等を行い、半導体基板10の一面10aのうちの第1コンタクトホール21aから露出する部分に形成され得る酸化膜を除去するようにしてもよい。
【0045】
続いて、図2Fに示されるように、窒素雰囲気下において、700~800℃程度で加熱処理を行うことにより、第1コンタクトホール21aから露出する半導体基板10と金属層31とを反応させて金属シリサイド膜24を形成する。この際、第2コンタクトホール21bから露出する接続配線19上には、酸化膜30が形成されているため、金属層31を構成する原子が接続配線19等に拡散することが抑制される。
【0046】
なお、本実施形態では、金属層31としてニッケル膜を形成しているため、ニッケルシリコンで構成される金属シリサイド膜24を形成する。そして、金属層31のうちの半導体基板10(すなわち、SiC)と反応しない部分は、未反応金属層31aとして残存する。
【0047】
次に、図2Gに示されるように、ウェットエッチング等を行い、未反応金属層31aを除去する。その後、特に図示しないが、窒素雰囲気下において、950~1050℃程度の加熱処理を行い、金属シリサイド膜24と半導体基板10(すなわち、ソース領域14およびコンタクト領域15)とのコンタクト抵抗をさらに低減させる。
【0048】
次に、図2Hに示されるように、CVD法等によって層間絶縁膜20上に金属層を成膜した後に図示しないマスクを用いたエッチング等を行い、金属層をパターニングしてソース電極22およびゲート配線23を形成する。なお、ゲート配線23は、上記のように、酸化膜30の酸素を還元可能な材料で構成される。また、本実施形態では、共通の金属層をパターニングすることでソース電極22およびゲート配線23を形成するため、ソース電極22は、ゲート配線23と同じ材料で構成される。
【0049】
その後、図2Iに示されるように、ゲート配線23の融点以下の温度であって、後工程となるはんだ付け等の温度以上に加熱することにより、ソース電極22やゲート配線23の膜質を安定化させる。この際、接続配線19上に形成されている酸化膜30は、ゲート配線23が酸化膜30の酸素を還元可能な材料で構成されているため、酸素がゲート配線23に還元されることで除去される。つまり、本実施形態では、ゲート配線23の膜質を安定化させることと、酸化膜30を除去することとを同一工程で行う。なお、本実施形態では、この工程がゲート配線23に関する加熱処理に相当する。以上のようにして、本実施形態のSiC半導体装置が製造される。
【0050】
以上説明した本実施形態によれば、ゲート配線23を酸化膜30の酸素を還元可能な材料で構成している。そして、ゲート配線23の膜質を安定化させる加熱処理を行う際、ゲート配線23に酸化膜30の酸素を還元させることで酸化膜30を除去している。このため、酸化膜30を除去する工程のみを行う必要がなく、製造工程が増加することを抑制できる。
【0051】
(1)本実施形態では、ゲート電極18を形成した後に窒素終端化処理を行い、酸化膜30を形成する際には、酸化膜30の厚さが10nm以下となるようにしている。このため、ベース層13のうちのゲート絶縁膜17との界面に置換された窒素が酸素に置き換わってしまうことを抑制でき、界面準位が増加することでオン抵抗が増加することを抑制できる。
【0052】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、バリアメタル膜を形成したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0053】
本実施形態の半導体装置は、図5に示されるように、ソース電極22およびゲート配線23は、それぞれバリアメタル膜22a、23aと、バリアメタル膜22a、23a上に積層された主配線部22b、23bとを有する構成とされている。主配線部23bは、例えば、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする材料で構成されている。バリアメタル膜22a、23aは、主配線部22b、23bに含まれるアルミニウムが接続配線19等へ拡散することを抑制する材料で構成される。また、バリアメタル膜22a、23aは、酸化膜30の酸素を還元可能な材料であって、主配線部22b、23bより拡散し難い材料で構成されている。本実施形態のバリアメタル膜22a、23aは、例えば、チタン等で構成されている。
【0054】
また、ゲート配線23におけるバリアメタル膜23aと接続配線19との間には、バリアメタル膜23aと接続配線19との間の接触抵抗を低減するための金属シリサイド膜26が形成されている。なお、本実施形態の金属シリサイド膜26は、チタンシリコンで構成されている。
【0055】
以上が本実施形態におけるSiC半導体装置の構成である。次に、本実施形態におけるSiC半導体装置の製造方法について、図6A図6Dを参照しつつ説明する。
【0056】
本実施形態では、図2Gの工程を行って未反応金属層31aを除去した後、図6Aに示されるように、CVD法等により、主配線部23bより拡散し難い材料で構成されるバリアメタル層40を形成する。なお、本実施形態では、バリアメタル層40としてのチタン層を形成する。
【0057】
その後、図6Bに示されるように、窒素雰囲気において、700~800℃程度で加熱処理を行う。これにより、酸化膜30は、バリアメタル層40に酸素が還元されて除去される。また、700~800℃の加熱処理を行っているため、接続配線19とバリアメタル層40とが反応して金属シリサイド膜26が構成される。なお、バリアメタル層40は、拡散し難い材料で構成されているため、この工程でバリアメタル層40を構成する原子が接続配線19等に拡散することが抑制される。つまり、バリアメタル層40は、金属シリサイド膜26を形成する際、酸化膜30の酸素を還元可能な材料であって、接続配線19等に拡散し難い材料で構成されている。また、本実施形態では、この工程がゲート配線23に関する加熱処理に相当する。
【0058】
続いて、図6Cに示されるように、主配線部22b、23bを構成する主配線層41を形成する。その後、図6Dに示されるように、図示しないマスクを用いたエッチング等を行い、バリアメタル層40および主配線層41をパターニングすることでソース電極22およびゲート配線23を形成する。
【0059】
その後、特に図示しないが、図2Iと同様の工程を行ってソース電極22およびゲート配線23の膜質を安定化させることにより、本実施形態のSiC半導体装置が製造される。なお、本実施形態では、既に酸化膜30が除去されているため、この工程では、酸化膜30は除去されない。
【0060】
以上説明した本実施形態によれば、ゲート配線23を構成するバリアメタル層40(すなわち、バリアメタル膜23a)を酸化膜30の酸素を還元可能な材料で構成している。そして、金属シリサイド膜26を形成する加熱処理を行う際、バリアメタル層40に酸化膜30の酸素を還元させることで酸化膜30を除去している。このため、酸化膜30を除去する工程のみを行う必要がなく、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0061】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0062】
例えば、上記各実施形態では、第1導電型をn型、第2導電型をp型としたnチャネルタイプのトレンチゲート構造のMOSFETが形成されている半導体装置を説明した。しかしながら、半導体装置は、例えばnチャネルタイプに対して各構成要素の導電型を反転させたpチャネルタイプのトレンチゲート構造のMOSFETが形成されて構成されていてもよい。さらに、半導体装置は、MOSFET以外に、同様の構造のIGBTが形成された構成とされていてもよい。IGBTの場合、上記各実施形態におけるn型の基板11をp型のコレクタ層に変更する以外は、上記第1実施形態で説明したMOSFETと同様である。
【0063】
また、上記各実施形態では、トレンチゲート構造を有する半導体装置について説明したが、プレーナゲート構造を有する半導体装置とされていてもよい。
【0064】
そして、上記各実施形態において、半導体装置を製造する際に形成する酸化膜30は、10nm以上の厚さとされていてもよい。このような酸化膜30を形成したとしても、上記第1、第2実施形態では酸化膜30を除去する工程のみを行う必要がないため、製造工程が増加することを抑制できる。
【符号の説明】
【0065】
10 半導体基板
10a 一面
11 基板
12 ドリフト層
13 ベース層
14 ソース領域(不純物領域)
15 ゲート絶縁膜
18 ゲート電極
19 接続配線
20 層間絶縁膜
22 ソース電極
23 ゲート配線
24 金属シリサイド膜
31 金属層
31a 未反応金属層
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D