IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両用表示装置 図1
  • 特許-車両用表示装置 図2
  • 特許-車両用表示装置 図3
  • 特許-車両用表示装置 図4
  • 特許-車両用表示装置 図5
  • 特許-車両用表示装置 図6
  • 特許-車両用表示装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/40 20240101AFI20250107BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
B60K35/40
B60R11/02 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021120872
(22)【出願日】2021-07-21
(65)【公開番号】P2023016510
(43)【公開日】2023-02-02
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】不破本 義孝
(72)【発明者】
【氏名】高田 新
(72)【発明者】
【氏名】東 正之
(72)【発明者】
【氏名】南野 絵理
(72)【発明者】
【氏名】大場 豪
【審査官】稲本 遥
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-060247(JP,A)
【文献】特開2021-181255(JP,A)
【文献】特開2015-006830(JP,A)
【文献】特開2010-254201(JP,A)
【文献】特開2009-184668(JP,A)
【文献】特開2014-240228(JP,A)
【文献】特開2013-159172(JP,A)
【文献】特開2019-031198(JP,A)
【文献】特開2013-163492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00-37/20
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発せられた直接光が運転者により視認可能となるように車室前側に設けられたライン状の発光部を備え、前記発光部は、運転者が正面を見て運転する場合の視界よりも下方側の高さ位置に設定されている発光装置と、
前記発光部に対して上側に隣接する部位から車両後方斜め上方側へ延出された庇部と、
を有し、前記発光部の輝度が80cd/m ~200cd/m とされた車両用表示装置。
【請求項2】
前記発光部は、運転者のアイポイントとして想定される位置から前記発光部を見る方向が当該アイポイントとして想定される位置を通る車両水平方向に対して車両側面視で20°~40°の俯角の範囲内となるように、配置位置が設定されている、請求項1記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記発光部は、車室前側における車両幅方向中間領域を含む部分に設けられ、200ms~600msの点滅周期で発光する、請求項1又は請求項2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記発光部には、車室内側を向く面にレンズカバーが設けられ、前記レンズカバーには、非発光状態の前記発光部の内部を見えにくくするように車室内側からの光を拡散させる光拡散部が形成されている、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記発光部は、車室前部に設けられたインストルメントパネルの上部側を構成するアッパパネルと、前記インストルメントパネルの下部側を構成して前記アッパパネルと接合されるロアパネルとの境界部に、設けられている、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項6】
車両の周辺の情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部が取得した情報に基づいて、運転者への注意喚起の必要性の度合いが予め設定された基準よりも低い所定範囲内にあると判断した場合に、前記発光部を発光させるように前記発光装置を制御する制御部と、
を有する請求項1~請求項のいずれか1項に記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両用表示装置が開示されている。簡単に説明すると、この車両用表示装置は、車両のインパネ上面に設けられたライン状発光部を有する発光装置を備える。このような装置では、ライン状発光部が発光して運転者に対して効果的に注意喚起をすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-152554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術におけるライン状発光部は、運転者が正面を見て運転する場合の視界内にあるため、例えば注意喚起の必要性の度合いが低い場合等には、運転者がライン状発光部の発光を煩わしく感じてしまうことが懸念される。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、発光部から発せられた光を運転者に認識させつつ発光に対して煩わしさを感じさせにくくすることが可能な車両用表示装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明の車両用表示装置は、発せられた直接光が運転者により視認可能となるように車室前側に設けられたライン状の発光部を備え、前記発光部は、運転者が正面を見て運転する場合の視界よりも下方側の高さ位置に設定されている発光装置と、前記発光部に対して上側に隣接する部位から車両後方斜め上方側へ延出された庇部と、を有し、前記発光部の輝度が80cd/m ~200cd/m とされている。
【0007】
上記構成によれば、発光装置におけるライン状の発光部は、発せられた直接光が運転者により視認可能となるように車室前側に設けられている。このため、ライン状の発光部が発光した場合、発せられた直接光を運転者に認識させることができる。ここで、発光部は、運転者が正面を見て運転する場合の視界よりも下方側の高さ位置に設定されている。このため、発光部が発光した場合に運転者が発光に対して煩わしさを感じる程度を抑えることができる。
また、この車両用表示装置によれば、太陽光が車両のフロントウインドウガラスを通って車室内に射し込んだ場合にも、太陽光が発光部へ直接射し込むのを庇部によって遮ることができる。よって、発光部からの直接光が太陽光によって認識されにくくなるのを防止又は抑制することができる。また、発光部の輝度は80cd/m ~200cd/m となっており、運転者に発光部による発光を気付かせつつ発光に対して運転者が煩わしく感じるのを抑えるのに好ましい輝度となっている。
【0008】
請求項2に記載する本発明の車両用表示装置は、請求項1記載の構成において、前記発光部は、運転者のアイポイントとして想定される位置から前記発光部を見る方向が当該アイポイントとして想定される位置を通る車両水平方向に対して車両側面視で20°~40°の俯角の範囲内となるように、配置位置が設定されている。
【0009】
上記構成によれば、運転者が視線を落としている状態で発光部が発光したときに、発光部による発光を運転者に良好に気付かせることができる。
【0010】
請求項3に記載する本発明の車両用表示装置は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記発光部は、車室前側における車両幅方向中間領域を含む部分に設けられ、200ms~600msの点滅周期で発光する。
【0011】
上記構成によれば、運転者が視線を落としている状態で発光部が発光したときに、発光部による発光を運転者に良好に気付かせることができる。また、点滅周期が200ms~600msであるため、運転者が発光に対して煩わしさを感じる程度を良好に抑えることができる。
【0014】
請求項に記載する本発明の車両用表示装置は、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の構成において、前記発光部には、車室内側を向く面にレンズカバーが設けられ、前記レンズカバーには、非発光状態の前記発光部の内部を見えにくくするように車室内側からの光を拡散させる光拡散部が形成されている。
【0015】
上記構成によれば、発光部には、車室内側を向く面にレンズカバーが設けられており、レンズカバーに形成された光拡散部は、非発光状態の発光部の内部を見えにくくするように車室内側からの光を拡散させる。このため、非発光状態の発光部の見栄えを良好にすることができる。
【0016】
請求項に記載する本発明の車両用表示装置は、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の構成において、前記発光部は、車室前部に設けられたインストルメントパネルの上部側を構成するアッパパネルと、前記インストルメントパネルの下部側を構成して前記アッパパネルと接合されるロアパネルとの境界部に、設けられている。
【0017】
上記構成によれば、例えばインストルメントパネルのロアパネルのみに発光部を組み付けるための部分を設けて発光部を組み付けるような場合に比べて、インストルメントパネルに発光部を設ける構造を製造し易い。
【0018】
請求項に記載する本発明の車両用表示装置は、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の構成において、車両の周辺の情報を取得する情報取得部と、前記情報取得部が取得した情報に基づいて、運転者への注意喚起の必要性の度合いが予め設定された基準よりも低い所定範囲内にあると判断した場合に、前記発光部を発光させるように前記発光装置を制御する制御部と、を有する。
【0019】
上記構成によれば、情報取得部は、車両の周辺の情報を取得する。そして、制御部は、情報取得部が取得した情報に基づいて、運転者への注意喚起の必要性の度合いが予め設定された基準よりも低い所定範囲内にあると判断した場合に、発光部を発光させるように発光装置を制御する。これにより、運転者への注意喚起の必要性の度合いが予め設定された基準よりも低い所定範囲内にある場合、運転者が煩わしさをさほど感じない程度に注意喚起を行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明の車両用表示装置によれば、発光部から発せられた光を運転者に認識させつつ発光に対して煩わしさを感じさせにくくすることが可能になるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用表示装置及びその周辺の概略構成を車両側面視で模式的に示す図である。
図2】車両用表示装置が搭載された車両の車室前部の概略構成を示す図である。
図3】発光装置の発光部の配置位置の一例を車両上方側から見た状態で示す模式的な平面図である。
図4】発光装置の発光部の高さ位置とアイリプスとを車両側面視で模式的に示すと共に発光部及びその周囲部を部分拡大して示す図である。
図5】車両用表示装置のECU等のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図6】発光部の設定位置と通知見落とし率との関係を示す棒グラフである。
図7】発光部の点滅設定等と気付き率との関係を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態について図1図7を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印Wは車両幅方向を示している。
【0023】
(実施形態の構成)
図1には、本実施形態に係る車両用表示装置30及びその周辺の概略構成が車両側面視の模式的な図で示されている。また、図2には、車両用表示装置30が搭載された車両10の車室前部12の概略構成が示されている。なお、本実施形態における車両10は、一例として、所謂左ハンドル車とされている。所謂右ハンドル車の場合は、図2に示す構成を左右反転させたような構成となる。
【0024】
図2に示されるように、車室前部12の前端側かつ上部側には、左右一対のフロントピラー14の間にフロントウインドウガラス16が設けられている。また、車室前部12には、フロントウインドウガラス16の下方側において車室内側へ膨出されたインストルメントパネル20が設けられている。さらに、車室前部12の運転席側(図2では図中左側)には、インストルメントパネル20を貫通するステアリングシャフト(図示省略)に固定された操舵用のステアリングホイール18が設けられている。
【0025】
インストルメントパネル20の上部側は、アッパパネル22によって構成されている。また、インストルメントパネル20の下部側は、ロアパネル24によって構成されている。ロアパネル24の上端部側は、アッパパネル22の下端部側と接合されている。また、インストルメントパネル20の車両幅方向中間領域には、センタクラスタ部20Sが設けられている。
【0026】
一方、図1に示されるように、車両用表示装置30は、発光装置32と、ECU(Electronic Control Unit)40と、情報取得部としての周辺監視装置42と、を有する。なお、本実施形態の車両用表示装置30は、車両用運転支援装置として把握することもできる。発光装置32は、図2に示されるライン状の発光部34を備える。発光部34は、自身から発せられた直接光が運転者D(図1参照)により視認可能となるように車室前側においてインストルメントパネル20に設けられている。本実施形態では、発光部34は、インストルメントパネル20におけるアッパパネル22とロアパネル24との境界部に設けられている。
【0027】
図3には、発光装置32の発光部34の配置位置の一例が車両上方側から見た状態の模式的な平面図で示されている。図2及び図3に示されるように、発光部34は、一例として、左側発光部34L、中央側発光部34S及び右側発光部34Rの計三個配置されている。左側発光部34L、中央側発光部34S及び右側発光部34Rは、いずれも車両幅方向に沿って延在されている。図3に示されるように、左側発光部34Lは、運転席60Lの前方側においてステアリングホイール18よりも車両幅方向外側に設定されている。中央側発光部34Sは、センタクラスタ部20S(図2参照)に設定されている。右側発光部34Rは、助手席60Rの前方側に設定されている。左側発光部34L、中央側発光部34S及び右側発光部34Rは、いずれも運転者D(図1参照)により全長が視認可能となるように設定されている。なお、以下の説明においては、左側発光部34L、中央側発光部34S、及び右側発光部34Rを区別せずに総称する場合は、単に発光部34という。
【0028】
発光部34は、一例として、光を出射する光源34L1、34S1、34R1と、光源34L1、34S1、34R1に基端が接続されたライン状の導光体34L2、34S2、34R2と、を備える。光源34L1、34S1、34R1には一例としてLEDを適用することができる。導光体34L2、34S2、34R2は、その基端から入射された光源34L1、34S1、34R1からの光を先端側に導くように構成されている。また、発光部34の輝度は、運転者Dに発光部34による発光を気付かせる観点と発光に対して運転者Dが煩わしく感じるのを抑える観点から、80cd/m~200cd/mが好ましく、より好ましくは160cd/m~200cd/mとされ、本実施形態では一例として160cd/mとしている。
【0029】
図1に示されるように、発光部34は、運転者Dが正面を見て運転する場合の視界よりも下方側の高さ位置に設定されている。発光部34は、運転者Dのアイポイントとして想定される位置Epから発光部34を見る方向Sdが当該アイポイントとして想定される位置Epを通る車両水平方向(二点鎖線Vh参照)に対して車両側面視で20°~40°(より好ましくは25°~35°)の俯角の範囲内となるように、配置位置が設定されている。
【0030】
図4には、車両用表示装置30の発光部34の高さ位置とアイリプスELPとが車両側面視で模式的に示されている。アイリプスELPは、体格の異なる運転者の目の位置の分布を統計的に表したアイレンジに基づいて、楕円状に設定されている。本実施形態では、前記統計に基づいて、アイリプスELP内の中央部に運転者Dのアイポイントとして想定される位置Epを設定している。なお、アイリプスELPには、一例として95パーセンタイルアイリプスを採用することができる。
【0031】
図3に示されるように、発光装置32は、所定時に光源34L1、34S1、34R1を点滅させる光源制御部36L、36S、36R(図中ではブロック化して図示)を備える。光源制御部36L、36S、36Rは、詳細後述する図5に示されるECU40に接続されている。図3に示される光源制御部36L、36S、36Rが光源34L1、34S1、34R1の発光を制御することで、発光部34は所定周期の点滅周期で発光する。発光部34の点滅周期は、200ms~600msが好ましく、より好ましくは400ms~600msであり、本実施形態では一例として600msとされる。
【0032】
図4の模式的な部分拡大図に示されるように、発光部34には、車室内側を向く面にレンズカバー34Cが設けられている。レンズカバー34Cは、光源34L1、34S1、34R1(図3参照)及び導光体34L2、34S2、34R2(図3参照)で構成された発光部本体34H(図中では簡略化して図示)を車室内側から覆っている。なお、発光部本体34Hは、一例として、車室内側が開口されたケース35に収容されており、このケース35の開口側にレンズカバー34Cが取り付けられている。なお、レンズカバー34C及びケース35は、図3では図示を省略している。
【0033】
図4に示されるように、レンズカバー34Cには、非発光状態の発光部34の内部を見えにくくするように車室内側からの光を拡散させる光拡散部34Dが形成されている。光拡散部34Dは、一例としてレンズカバー34Cの車室内側の面とは反対側の面に形成されているが、レンズカバー34Cの車室内側の面に形成されてもよいし、レンズカバー34Cの車室内側の面及びその反対側の面の両方に形成されてもよい。また、発光部34に対して上側に隣接する部位からは庇部38が車両後方斜め上方側へ延出されている。庇部38は、発光部34の車両幅方向の全長に対応するように車両幅方向に沿って延在されている(図2参照)。なお、図4では、発光部34による光の放射範囲の一例を二点鎖線で示している。
【0034】
図5には、発光装置32が接続されるECU40及びそのECU40に接続される各構成部のハードウェア構成の一例がブロック図で示されている。図5に示されるように、ECU40には、発光装置32の他に、周辺監視装置42、スピーカ46、MID(Multi Information Display)48及び車両状態センサ50が接続されている。
【0035】
周辺監視装置42は、自車両である車両10の周辺の情報を取得する。周辺監視装置42には、例えば、車両10の進行方向の前方側を走行する先行車等を検知するレーダ、及び車両10の周辺情報を撮像するカメラが含まれる。なお、周辺監視装置42は、車両10の複数箇所に配置されているが、図1では便宜上そのうちの一台を簡略化して示す。図5に示されるECU40は、周辺監視装置42が取得した情報等に基づいて各種の制御を実行する。ECU40については後述する。
【0036】
スピーカ46は、ブザー音等の音を発生させることにより運転者Dに警報を発する。MID48は、タッチ操作を可能とするタッチパネルを備えた液晶ディスプレイを含んで構成され、注意喚起情報、警告情報を含む多種多様な情報を表示することができる。車両状態センサ50は、車両10の走行状態及び操作状態を表す情報を取得する。車両状態センサ50には、例えば、車両10のステアリング角を検出する舵角センサ、及び車両10の走行速度を検出する車速センサが含まれる。
【0037】
ECU40は、注意喚起による運転支援制御を実行可能になっている。この運転支援制御には、一例として、TMN(先行車発進告知機能)用の制御が含まれる。なお、詳細説明を省略するが、ACC(Adaptive Cruise Control)の実行中には、一例として、TMN用の制御も実行される。
【0038】
ECU40は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)40A、ROM(Read Only Memory)40B、RAM(Random Access Memory)40C、ストレージ40D、通信インタフェース(図5では「通信I/F」と略す)40E及び入出力インタフェース(図5では「入出力I/F」と略す)40Fを含んで構成されている。CPU40A、ROM40B、RAM40C、ストレージ40D、通信インタフェース40E及び入出力インタフェース40Fは、バス40Zを介して相互に通信可能に接続されている。
【0039】
CPU40Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU40Aは、ROM40B又はストレージ40Dからプログラムを読み出し、RAM40Cを作業領域としてプログラムを実行する。CPU40Aは、ROM40B又はストレージ40Dに記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。
【0040】
ROM40Bは、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM40Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ40Dは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置により構成され、各種プログラム及び各種データを格納する。本実施形態では、ROM40B又はストレージ40Dには、先行車発進告知プログラム等が格納されている。通信インタフェース40Eは、車両用表示装置30が他の機器と通信するためのインタフェースである。
【0041】
入出力インタフェース40Fは、車両10に搭載される各装置と通信するためのインタフェースである。本実施形態のECU40には、入出力インタフェース40Fを介して、一例として、発光装置32、周辺監視装置42、スピーカ46、MID48及び車両状態センサ50が接続されている。
【0042】
図1にブロック化されて示されるように、ECU40は、機能構成として制御部400を有する。図5に示されるCPU40AがROM40B又はストレージ40Dに記憶されたプログラム(一例として前述した先行車発進告知プログラム)を読み出し、実行することにより、ECU40は制御部400(図1参照)として機能する。
【0043】
図1に示される制御部400は、周辺監視装置42が取得した情報に基づいて、運転者への注意喚起の必要性の度合いが予め設定された基準よりも低い所定範囲内にあると判断した場合に、発光部34を発光させるように発光装置32を制御する。
【0044】
(実施形態の作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0045】
図5に示されるCPU40AがROM40B又はストレージ40Dから先行車発進告知プログラムを読み出して、RAM40Cに展開して実行することにより、ECU40による先行車発進告知制御処理が行なわれる。
【0046】
先行車発進告知プログラムが実行された場合、周辺監視装置42が取得した情報に基づいて、自車両である車両10が停車している状態で停車中の先行車が発進した直後に(一例として先行車が0.1m前進したタイミングで)、CPU40Aは、運転者Dへの注意喚起の必要性の度合いが予め設定された基準よりも低い所定範囲内にあると判断して、発光部34(図2参照)を発光させるように発光装置32を制御しかつ先行車発進情報を表示させるようにMID48を制御する。これらにより、運転者Dに軽い注意喚起を行うことができる。なお、発光部34による点滅は一例として数回(例えば二回)実行させる。
【0047】
その後、前記先行車が更に所定距離(一例として4m)前進したにも関わらず車両10が発進していない場合、CPU40Aは、ブザー音の音を発生させるようにスピーカ46を制御する。なお、スピーカ46によるブザー音は車両10が発進するまで継続させる。また、前述したMID48による先行車発進情報の表示も一例として車両10が発進するまで継続させる。
【0048】
このように、本実施形態では、二段階で運転者Dに注意喚起を行うことができる。そして、一回目の軽い注意喚起に用いられる図1に示される発光部34は、自身から発せられた直接光が運転者Dにより視認可能となるように車室前側に設けられている。このため、発光部34が発光した場合、発せられた直接光を運転者Dに認識させることができる。ここで、発光部34は、運転者Dが正面を見て運転する場合の視界よりも下方側の高さ位置に設定されている。このため、発光部34が発光した場合に運転者Dが発光に対して煩わしさを感じる程度を抑えることができる。
【0049】
また、発光部34は、運転者Dのアイポイントとして想定される位置Epから発光部34を見る方向Sdが当該アイポイントとして想定される位置Epを通る車両水平方向(二点鎖線Vh参照)に対して車両側面視で20°~40°の俯角の範囲内となるように、配置位置が設定されている。このため、運転者Dが視線を落としている状態(図中に二点鎖線で示す運転者D参照)で発光部34が発光したときに、発光部34による発光を運転者Dに良好に気付かせることができる。
【0050】
この点について補足説明する。図6には、発光部の設定位置と通知見落とし率との関係を示す試験結果が示されている。この試験は、図1に二点鎖線で示されるように、運転者Dにはステアリングホイール18の下部手前側に配置したスマートフォン99でゲームをしてもらい、発光部(34)の発光に気が付いた場合には顔を上げるというものである。また、ゲームは、画面上の大きい円を探してタップするというものを採用している。
【0051】
図6のグラフにおいて、縦軸には、発光部を配置した場所、及び運転者Dがその発光部を見る場合にその見る方向が車両水平方向(図1の二点鎖線Vh参照)に対して何度の俯角になっているかが示されている。「ステアリングホイール 10°」は、ステアリングホイールのリム部分の上部であって図2の符号aが付された部分辺りに相当し、「メーター 20°」は、メーターの上の部分であって図2の符号bが付された部分辺りに相当する。また、「ステアリングSW 30°」は、ステアリングホイールの左右のスポーク部分におけるスイッチ操作部付近であって図2の符号cが付された部分辺りに相当し、「インストルメントパネル 30°」は、本実施形態の発光部34の配置部分を指す。なお、図示を省略するが、各発光部の幅(短手方向の寸法)は実質的に同様としている。また、図6のグラフの横軸は、発光部による通知(つまり発光部の発光)を見落とした率である。この図6のグラフより、俯角が20°以下になると、見落とし率が下がり、俯角が30°になると、見落とし率が非常に低くなることが判る。
【0052】
また、本実施形態では、図2に示されるように、発光部34は、車室前側における車両幅方向中間領域(センタクラスタ部20S)を含む部分に設けられており、200ms~600msの点滅周期で発光する。このため、図1に示される運転者Dが視線を落としている状態(図中に二点鎖線で示す運転者D参照)で発光部34が発光したときに、発光部34による発光を運転者Dに良好に気付かせることができる。また、点滅周期が200ms~600msであるため、運転者Dが発光に対して煩わしさを感じる程度を良好に抑えることができる。
【0053】
この点について補足説明する。図7には、発光部の点滅設定等と発光の気付き率との関係を示す試験結果が示されている。この試験は、発光部の点滅設定及び配置設定の点を除き、図6で説明した試験と実質的に同様の試験である。なお、試験時のインストルメントパネル上面の環境照度は50000lx以上である。図7の横軸は、発光部の点滅周期を示し、縦軸は、発光部の点滅に気付いた率(すべて気付いた場合を1とする率)を示す。また、棒グラフのうち、ハッチングがあるものは左側発光部34L及び右側発光部34Rを発光させた場合(つまり中央側発光部34Sを含まない場合)を示し、ハッチングがないものは左側発光部34L、中央側発光部34S及び右側発光部34Rを発光させた場合を示す。このグラフより、中央側発光部34Sを発光させた場合で点滅周期が600ms以下になると、顕著に気付き率が上がることが判る。
【0054】
また、本実施形態では、図4の模式的な部分拡大図に示されるように、発光部34に対して上側に隣接する部位から車両後方斜め上方側へ延出された庇部38が設けられている。このため、太陽光が図1に示される車両10のフロントウインドウガラス16を通って車室内に射し込んだ場合にも、太陽光が発光部34へ直接射し込むのを庇部38によって遮ることができる。よって、発光部34からの直接光が太陽光によって認識されにくくなるのを防止又は抑制することができる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の車両用表示装置30によれば、発光部34から発せられた光を運転者Dに認識させつつ発光に対して煩わしさを感じさせにくくすることが可能になる。
【0056】
また、本実施形態では、図4の模式的な部分拡大図に示されるように、発光部34には、車室内側を向く面にレンズカバー34Cが設けられ、レンズカバー34Cには、非発光状態の発光部34の内部を見えにくくするように車室内側からの光を拡散させる光拡散部34Dが形成されている。このため、非発光状態の発光部34の見栄えを良好にすることができる。
【0057】
また、本実施形態では、図2に示されるように、発光部34は、インストルメントパネル20のアッパパネル22とロアパネル24との境界部に設けられている。このため、例えばインストルメントパネル(20)のロアパネル(24)のみに発光部(34)を組み付けるための部分を設けて発光部(34)を組み付けるような場合に比べて、インストルメントパネル20に発光部34を設ける構造を製造し易い。
【0058】
(実施形態の補足説明)
なお、上記実施形態では、ライン状の発光部34は、インストルメントパネル20のアッパパネル22とロアパネル24との境界部に設けられているが、ライン状の発光部は、例えばインストルメントパネル(20)のロアパネル(24)において前記境界部よりも下方側の部位に設けられてもよい。また、他の変形例として、ライン状の発光部は、例えば、ステアリングホイール18の左右のスポーク部分におけるスイッチ操作部付近(符号c参照)やステアリングホイール18のリム部分の下部等のように、車室前側でインストルメントパネル20以外の部分に設けられてもよい。
【0059】
また、上記実施形態の変形例として、中央側発光部(34S)と右側発光部(34R)とが一体化されて連続していてもよい。なお、各発光部における光源の数は、上記実施形態の例に限定されない。さらに、上記実施形態の変形例として、ライン状の発光部は、運転者が正面を見て運転する場合の視界よりも下方側の高さ位置に設定されて車両上下方向に延在されたものでもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、図1等に示される発光部34は、運転者Dのアイポイントとして想定される位置Epから発光部34を見る方向Sdが当該アイポイントとして想定される位置Epを通る車両水平方向(二点鎖線Vh参照)に対して車両側面視で20°~40°の俯角の範囲内となるように、配置位置が設定されているが、例えば、このように設定される場合よりも若干低い高さ位置に設定されてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、発光部34は、車室前側における車両幅方向中間領域(センタクラスタ部20S(図2参照))を含む部分に設けられ、200ms~600msの点滅周期で発光するように構成されているが、発光部の構成はこのような構成に限定されるものではない。
【0062】
また、上記実施形態では、発光部34に対して上側に隣接する部位から車両後方斜め上方側へ延出された庇部38が設けられているが、本発明の実施形態ではない参考例として、庇部38が設けられない構成も採り得る。
【0063】
また、上記実施形態では、図4の模式的な部分拡大図に示されるように、発光部34において車室内側を向く面に設けられたレンズカバー34Cには、非発光状態の発光部34の内部を見えにくくするように車室内側からの光を拡散させる光拡散部34Dが形成されているが、本発明はこのような構成を含むものに限定されるものではない。
【0064】
また、上記実施形態の変形例として、例えば、運転者の脇見を検出する脇見検出装置を設けると共にその脇見検出装置が運転者の脇見を検出した場合に発光部(34)を発光させるような構成としてもよい。さらに、他の変形例として、注意喚起以外の所定の目的で発光部(34)を発光させるような構成としてもよい。なお、複数の発光部(34)は、イルミネーションとしても把握し得る。
【0065】
なお、上記各実施形態で図5に示されるCPU40Aがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した各処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、各処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0066】
また、上記実施形態で説明した各プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0067】
なお、上記実施形態及び上述の複数の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。
【0068】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0069】
10 車両
20 インストルメントパネル
20S センタクラスタ部(車室前側における車両幅方向中間領域)
22 アッパパネル
24 ロアパネル
30 車両用表示装置
32 発光装置
34 発光部
34C レンズカバー
34D 光拡散部
38 庇部
42 周辺監視装置(情報取得部)
400 制御部
D 運転者
Ep 運転者のアイポイントとして想定される位置
Sd 発光部を見る方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7