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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】カバーの排水構造
(51)【国際特許分類】
   F02F 7/00 20060101AFI20250107BHJP
   F02F 1/24 20060101ALI20250107BHJP
   F02F 11/00 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
F02F7/00 P
F02F1/24 R
F02F11/00 P
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021125674
(22)【出願日】2021-07-30
(65)【公開番号】P2023020358
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2024-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】宮田 哲次
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-250216(JP,A)
【文献】特開平09-280104(JP,A)
【文献】特開2010-209766(JP,A)
【文献】特開2015-071995(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0066424(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110905681(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第102014208314(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 7/00
F02F 1/24 ~ 1/42
F02F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドの上部に組み付けられるカバーの排水構造であって、
前記カバーは、開口部を有する第1カバーと、前記開口部の下側に配置される第2カバーとに分割されており、
前記第2カバーには貫通孔が形成されており、
前記シリンダヘッドには、前記貫通孔及び当該シリンダヘッドの外部に繋がる連通孔が形成されており、
前記貫通孔と前記連通孔との間にはシール部材が配設されており、
前記貫通孔及び前記連通孔は、前記シリンダヘッドの短手方向の中央に対して吸気ポート側に形成されており、
前記連通孔は、前記シリンダヘッドの側壁のうち、排気ポート側に位置する側壁の反対側の壁面に開口している
カバーの排水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバーの排水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
原動機の構造体の上部に組み付けられる部材には、液体が溜まることがある。そうした液溜まりの発生は部材の腐食や劣化を招くおそれがある。
そこで、例えば特許文献1に記載のものでは、シリンダヘッドの上部に組み付けられる構造体であるカムキャッププレートの上面に溜まる液体を排出するために、当該カムキャッププレートに排出孔を設けるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-299569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、原動機の構造体の上部にはヘッドカバーなどのカバーが組み付けられる。このカバーが、開口部を有する第1カバーと、その開口部の下側に配置される第2カバーとに分割された分割構造をなしている場合には、以下のような不都合が生じるおそれがある。
【0005】
すなわち、上記第2カバーは、カバーにおいて凹部の底面を構成する部材となるため、この第2カバーの上面には液溜まりが生じるおそれがある。ここで、こうした構造では、第2カバーと原動機の構造体とが別部材であるため、構造体の上面に溜まる液体を当該構造体に設けた排出孔で排出するといった上記の構造を適用することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するカバーの排水構造は、原動機の構造体の上部に組み付けられるカバーの排水構造である。前記カバーは、開口部を有する第1カバーと、前記開口部の下側に配置される第2カバーとに分割されている。前記第2カバーには貫通孔が形成されている。前記構造体には、前記貫通孔及び当該構造体の外部に繋がる連通孔が形成されている。前記貫通孔と前記連通孔との間にはシール部材が配設されている。
【0007】
同構成によれば、第2カバーの上面に溜まる液体が、シール部材にてシールされた上記貫通孔及び連通孔を介して排出される。そのため、カバーの凹部に液溜まりが生じることを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】シリンダヘッド及びインジェクタホルダの斜視図である。
図2】ヘッドカバー及びインジェクタの斜視図である。
図3】第1チューブ及び第2チューブを取り付けたヘッドカバーの端面図である。
図4図3に示す4-4線に沿った端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、カバーの排水構造の一実施形態について説明する。
本実施形態における排水構造は、原動機である内燃機関のシリンダヘッドHに取り付けられるヘッドカバーCに適用される構造である。
【0010】
<内燃機関のシリンダヘッドについて>
図1に示すように、原動機である内燃機関のシリンダヘッドHは、図示しないシリンダブロックに固定されるシリンダヘッド本体10と、当該シリンダヘッド本体10に固定されるカムシャフトハウジング20とを備えている。なお、以下では、シリンダヘッドHを基準としてシリンダブロック側を下側、その反対側を上側として説明する。
【0011】
シリンダヘッド本体10は、全体として略直方体状になっており、アルミ合金などの金属材料で形成されている。シリンダヘッド本体10において長手方向に延びる一対の側面のうちの1つにおいては、吸気ポート11が4つ開口している。各吸気ポート11は、長手方向に延びる側面からシリンダヘッド本体10の下面に区画されている燃焼室に向けて延びている。これらの吸気ポート11を介して燃焼室内に外気が供給される。
【0012】
また、シリンダヘッド本体10内には、上記燃焼室からの排気を排出するための排気ポート12が形成されている。排気ポート12は、燃焼室から延びて、吸気ポート11が開口している側面とは反対側の側面に開口している。
【0013】
シリンダヘッド本体10の吸気ポート11側には、4つの第1挿入孔13が区画されている。第1挿入孔13は平面視円形の孔であり、シリンダヘッド本体10を上下に貫通している。4つの第1挿入孔13は、シリンダヘッド本体10の長手方向に等間隔毎に配置されている。また、4つの第1挿入孔13は、互いに平行に延びている。
【0014】
シリンダヘッド本体10の排気ポート12側には、4つの第2挿入孔14が区画されている。第1挿入孔13と同様に、第2挿入孔14は平面視円形の孔であり、シリンダヘッド本体10を上下方向に貫通している。4つの第2挿入孔14は、シリンダヘッド本体10の長手方向に等間隔毎に配置されている。また、図3に示すように、4つの第2挿入孔14の中心軸線J2は、第1挿入孔13の中心軸線J1及び第2挿入孔14の中心軸線J2の双方を含む断面視で、第1挿入孔13の中心軸線J1と非平行になっている。換言すると、第2挿入孔14の中心軸線J2と第1挿入孔13の中心軸線J1とは、略V字に延びている。
【0015】
図1に示すように、第1挿入孔13には、第1チューブ23が取り付けられている。第1チューブ23は円筒形であり、当該第1チューブ23の外径は、第1挿入孔13の内径と略同一になっている。第1チューブ23は、第1挿入孔13と同軸となるように当該第1挿入孔13に挿入されている。すなわち、第1チューブ23の中心軸線は、第1挿入孔13の中心軸線J1である。第1チューブ23の軸線方向の長さは、第1挿入孔13の軸線方向の長さよりも長くなっていて第1チューブ23の一部は、第1挿入孔13からシリンダヘッド本体10の上方に向けて突出している。
【0016】
第2挿入孔14には、第2チューブ24が取り付けられている。第2チューブ24は円筒形であり、当該第2チューブ24の外径は、第2挿入孔14の内径と略同一になっている。第2チューブ24は、第2挿入孔14と同軸となるように当該第2挿入孔14に挿入されている。すなわち、第2チューブ24の中心軸線は、第2挿入孔14の中心軸線J2である。第2チューブ24の軸線方向の長さは、第2挿入孔14の軸線方向の長さよりも長くなっていて第2チューブ24の一部は、第2挿入孔14からシリンダヘッド本体10の上方に向けて突出している。
【0017】
なお、上述したとおり、図3に示すように第1挿入孔13及び第2挿入孔14は、断面視で略V字状に延びている。従って、第1チューブ23及び第2チューブ24も同様に、第1挿入孔13の中心軸線J1及び第2挿入孔14の中心軸線J2の双方を含む断面視で、略V字状となるように非平行に延びている。
【0018】
図3に示すように、第1チューブ23には、燃焼室内に燃料を噴射するための略棒状のインジェクタ50が挿入されている。インジェクタ50は、第1チューブ23によって位置決めされているとともに保護されている。インジェクタ50の先端は、燃焼室内に臨んでおり、インジェクタ50の基端側の一部は、第1チューブ23よりも上側に露出している。
【0019】
第2チューブ24には、燃焼室内に噴射された燃料を添加するための略棒状の点火プラグ60が挿入されている。点火プラグ60は、第2チューブ24によって位置決めされているとともに保護されている。点火プラグ60の先端は、燃焼室内に臨んでおり、点火プラグ60の基端側の一部は、第2チューブ24よりも上側に露出している。
【0020】
図1に示すように、上記のように構成されたシリンダヘッド本体10の上面には、アルミ合金などの金属材料で形成されたカムシャフトハウジング20が固定されている。
カムシャフトハウジング20は、長方形枠状の外枠部21を備えている。すなわち、外枠部21は、当該外枠部21の長手方向に延びる一対の長側壁21aと、一対の長側壁21aの端部同士を繋ぐように当該外枠部21の短手方向に延びる一対の短側壁21bとで構成されている。一対の短側壁21bのうちの一方には、カムシャフト挿入孔22aが2つ設けられている。各カムシャフト挿入孔22aは、短側壁21bを、外枠部21の長手方向に貫通している。2つカムシャフト挿入孔22aは、外枠部21の短手方向の中央を挟んで両側に配置されている。
【0021】
外枠部21の内部には、4つのカムシャフト支持部25が設けられている。各カムシャフト支持部25は、一対の長側壁21aを繋ぐように短手方向に延びている。この実施形態では、カムシャフト支持部25は、外枠部21の長手方向に略等間隔毎に配置されている。
【0022】
各カムシャフト支持部25には、カムシャフト挿入孔22bが2つずつ設けられている。各カムシャフト挿入孔22bは、カムシャフト支持部25を、外枠部21の長手方向に貫通している。2つカムシャフト挿入孔22bは、外枠部21の短手方向の中央を挟んで両側に配置されている。また、カムシャフト支持部25のカムシャフト挿入孔22bは、上述した短側壁21bのカムシャフト挿入孔22aと同軸となるように配置されている。
【0023】
カムシャフトハウジング20がシリンダヘッド本体10の上面に取り付けられた状態では、第1チューブ23及び第2チューブ24は、外枠部21、カムシャフト支持部25で囲まれる空間を介して、カムシャフトハウジング20よりもやや上側にまで突出している。
【0024】
<ヘッドカバーについて>
上記カムシャフトハウジング20には、当該カムシャフトハウジング20を上側から覆うようにヘッドカバーCが取り付けられている。
【0025】
図2に示すように、ヘッドカバーCは、第1カバーとしてのヘッドカバー本体34と、第2カバーとしてのインジェクタホルダ33とを備えた分割構造になっている。なお、ヘッドカバー本体34及びインジェクタホルダ33はともに樹脂材料で形成されている。
【0026】
インジェクタホルダ33は、全体として略長方形状になっており、板状の平面部33Aを有している。インジェクタホルダ33の長手方向の長さはカムシャフトハウジング20の長手方向の長さより短い。その一方で、インジェクタホルダ33の短辺方向の長さはカムシャフトハウジング20の短辺よりも短くなっている。
【0027】
平面部33Aには、円形状の4つの第1取付孔43が貫通している。4つの第1取付孔43は、インジェクタホルダ33の長手方向に並んでいる。また、第1取付孔43の中心軸線間のピッチは、第1チューブ23の中心軸線J1間のピッチと一致している。各第1取付孔43には、円環状のシール材40が嵌め込まれている。
【0028】
インジェクタホルダ33は、図示しない複数のボルトを介してシリンダヘッドHに固定されている。また、図3に示すように、インジェクタホルダ33がシリンダヘッド本体10に固定された状態では、カムシャフトハウジング20から突出している第1チューブ23の上端部がシール材40を介して第1取付孔43に嵌め込まれている。従って、インジェクタホルダ33はカムシャフトハウジング20の上面のうち、第1チューブ23が突出している箇所の周辺を覆うようにして取り付けられている。
【0029】
図2に示すように、ヘッドカバー本体34は、全体として略長方形の板状になっている。ヘッドカバー本体34の長手方向の長さはカムシャフトハウジング20の長手方向の長さとほぼ一致している。また、ヘッドカバー本体34の短手方向の長さはカムシャフトハウジング20の短手方向の長さとほぼ一致している。従って、ヘッドカバー本体34は、カムシャフトハウジング20全体を覆うカバーとなっている。
【0030】
ヘッドカバー本体34においては、3つの開口部42が形成されている。3つの開口部42は、ヘッドカバー本体34の長手方向に並んでいる。長手方向に並んだ開口部42のうち両端の開口部42は、第1取付孔43の開口部よりも大きい面積で開口している。長手方向に並んだ開口部42のうち中央の開口部42は、2つの第1取付孔43の開口部を包括する大きさの面積で開口している。それら3つの開口部42の下側に、インジェクタホルダ33が配置される。ヘッドカバー本体34にインジェクタホルダ33を取り付けた状態でこれらを上側から平面視すると、ヘッドカバー本体34の開口部42から第1取付孔43の全域が覗いて見える。
【0031】
ヘッドカバー本体34には、円形状の第2取付孔44が4つ貫通している。各第2取付孔44は、上述した開口部42に対して、ヘッドカバー本体34の短手方向一方側に配置されている。また、4つの第2取付孔44は、ヘッドカバー本体34の長手方向に並んでいる。第2取付孔44の中心軸線間のピッチは、第2チューブ24の中心軸線J2間のピッチと一致している。各第2取付孔44には、円環状のシール材41が嵌め込まれている。なお、図2では、シール材41のうちの一部を二点鎖線で図示している。
【0032】
ヘッドカバー本体34は、インジェクタホルダ33よりも上側に配置された状態で、図示しない複数のボルトを介してシリンダヘッドHに固定されている。また、ヘッドカバー本体34を固定するためのボルトの一部は、インジェクタホルダ33にも固定されている。なお、図示は省略するが、インジェクタホルダ33とヘッドカバー本体34との間には図示しないガスケットが配置されている。このガスケットによって、インジェクタホルダ33とヘッドカバー本体34との間の隙間が埋められて、インジェクタホルダ33及びヘッドカバー本体34が一体となってヘッドカバーCとしての機能を発揮している。
【0033】
図3に示すように、ヘッドカバー本体34がシリンダヘッドHに固定された状態では、カムシャフトハウジング20から突出している第2チューブ24の上端部がシール材41を介して第2取付孔44に嵌め込まれている。
【0034】
本実施形態のシリンダヘッドを組み立てる際には、シリンダヘッド本体10にカムシャフトハウジング20を取り付けてシリンダヘッドHとした後、インジェクタホルダ33をシリンダヘッドHの上部に取り付ける。
【0035】
インジェクタホルダ33をシリンダヘッドHに取り付ける際には、シリンダヘッド本体10から延びる第1チューブ23の上端部に、インジェクタホルダ33の第1取付孔43を、シール材40を介して嵌合させる。第1チューブ23に第1取付孔43を嵌合させる際には、インジェクタホルダ33を、第1チューブ23の中心軸方向に沿ってシリンダヘッドH側へと移動させつつ組み付ける。
【0036】
インジェクタホルダ33をシリンダヘッドHに取り付けた後、インジェクタホルダ33及びシリンダヘッドHの上面にヘッドカバー本体34を組み付ける。その際には、シリンダヘッド本体10から延びる第2チューブ24の上端部に、ヘッドカバー本体34の第2取付孔44を、シール材41を介して嵌合させる。第2チューブ24に第2取付孔44を嵌合させる際には、ヘッドカバー本体34を第2チューブ24の中心軸方向に沿ってシリンダヘッドH側へと移動させつつ組み付ける。その後、ヘッドカバー本体34にボルトを挿通して、シリンダヘッドH及びインジェクタホルダ33に固定する。
【0037】
このように本実施形態では、ヘッドカバーCが、インジェクタホルダ33及びヘッドカバー本体34に分割されている。そのため、第1取付孔43に第1チューブ23を挿入する際、第1チューブ23の中心軸線J1に沿う方向にインジェクタホルダ33を移動させて組み付けることができる。また、第2取付孔44に第2チューブ24を挿入する際、第2チューブ24の中心軸線J2に沿う方向にヘッドカバー本体34を移動させて組み付けることができる。従って、第1チューブ23の中心軸線J1の方向と第2チューブ24の中心軸線J2の方向とが異なっていても、ヘッドカバーCを各チューブに干渉させることなく簡便に取り付けることができる。
【0038】
<排水構造について>
ヘッドカバーCは、開口部42を有するヘッドカバー本体34と、開口部42の下側に配置されるインジェクタホルダ33とに分割された分割構造をなしている。そのため、インジェクタホルダ33は、ヘッドカバーCにおいて凹部の底面を構成する部材になっている。より詳細には、インジェクタホルダ33の平面部33Aは、ヘッドカバーCにおいて凹部の底面になっている。従って、インジェクタホルダ33の上面、つまり平面部33Aの上面には各種の液体が集まった液溜まりが生じるおそれがある。
【0039】
そこで、本実施形態では、インジェクタホルダ33に溜まる液体を排出するための排出構造を備えている。以下、排出構造について説明する。
図1図2、及び図4に示すように、インジェクタホルダ33の平面部33Aには、貫通孔70が1つ形成されている。この貫通孔70は、平面部33Aの角部33Kに形成されている。この角部33Kは、ヘッドカバーCを組み付けた内燃機関を車両に搭載した状態で、平面部33Aにおいて鉛直下向き方向の最下部に位置する部位となっている。また、貫通孔70は、平面部33Aの第1取付孔43に嵌め込まれるシール材40よりも鉛直下向き方向において下方となる位置に形成されている。
【0040】
図1及び図4に示すように、内燃機関の構造体であるカムシャフトハウジング20にあって一対の短側壁21bのうちの一方の側壁、より詳細にはカムシャフト挿入孔22aが設けられていない短側壁21baには、突出部80が形成されている。この突出部80は、短側壁21baからカムシャフトハウジング20の内側に向かって突出している。また、突出部80は、外枠部21の短手方向の中央に対して吸気ポート11側に形成されている。そして、この突出部80には、カムシャフトハウジング20にインジェクタホルダ33を組み付けた状態において、上記貫通孔70及びカムシャフトハウジング20の外部に繋がる連通孔81が形成されている。
【0041】
図4に示すように、連通孔81は略L字形状の孔であって、一端側は貫通孔70と繋がるように開口している。また、連通孔81の他端側は、短側壁21baの外部に向かって開口している。これにより、連通孔81の他端側は、一対の長側壁21aのうちの排気ポート12側に位置する長側壁21aeとは異なる壁面に開口している。
【0042】
そして、貫通孔70と連通孔81との間には、シール部材90が配設されている。このシール部材90は円環状であってヤング率が小さい材料、例えばゴム系の材料で形成されている。
【0043】
<作用及び効果>
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)ヘッドカバーCにおいて凹部の底面となるインジェクタホルダ33の上面に溜まる液体は、シール部材90にてシールされた上記貫通孔70及び連通孔81を介して排出される。そのため、ヘッドカバーCにおいて凹部となる部位に液溜まりが生じることを抑えることができる。従って、例えばインジェクタホルダ33の腐食や劣化を抑えることもできる。
【0044】
(2)ヘッドカバーCを組み付けた内燃機関を車両に搭載した状態で、平面部33Aにおいて鉛直下向き方向の最下部に位置する角部33Kに貫通孔70を設けている。従って、インジェクタホルダ33の上面に溜まる液体は重力の作用を受けて貫通孔70に向かうようになる。そのため、インジェクタホルダ33の上面に溜まる液体の排出性が良好になる。
【0045】
(3)貫通孔70は、平面部33Aの第1取付孔43に嵌め込まれるシール材40よりも鉛直下向き方向において下方となる位置に形成されている。従って、シール材40の周囲に存在する液体は貫通孔70を介して外部に排出されるようになる。そのため、液溜まりによるシール材40の腐食や劣化を抑えることができる。
【0046】
(4)インジェクタホルダ33とカムシャフトハウジング20とは互いに異なる材料で形成されており熱膨張率が異なっている。そのため、温度によっては貫通孔70と連通孔81との相対変位量が大きくなって互いの孔がずれるおそれがある。また、仮に同一の材料で形成した場合でも、インジェクタホルダ33とカムシャフトハウジング20の温度が異なれば、貫通孔70と連通孔81との相対変位量が大きくなって互いの孔がずれるおそれがある。この点、本実施形態では、貫通孔70と連通孔81との間に、ヤング率が小さく変形が容易なシール部材90を配設している。そのため、貫通孔70と連通孔81との相対変位量が大きくなって互いの孔がずれた場合でも、そうした相対変位に追従してシール部材90が変形することによりシール性が維持される。従って、シール部材90によるシール性についてその信頼性が向上するようになる。
【0047】
(5)排気ポート12には、機関運転中や機関停止直後などにおいて温度が高い状態になるエキゾーストマニホールドが接続される。こうしたエキゾーストマニホールドに、連通孔81の他端側から排出された液体がかかると、同エキゾーストマニホールドが急冷されて、例えば損傷するおそれがある。この点、本実施形態では、連通孔81の他端側は、上記短側壁21baの外部に向かって開口している。つまり、排気ポート12側に位置する長側壁21aeとは異なる壁面に開口している。従って、そうしたエキゾーストマニホールドの急冷による損傷などを抑えることができる。
【0048】
<変更例>
本実施形態では、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0049】
・インジェクタホルダ33の角部33Kに貫通孔70を設けたが、貫通孔70の配設位置は適宜変更することができる。なお、貫通孔70の配設位置を変更する場合には、その変更に併せて上記連通孔81の形成位置も変更する。
【0050】
・インジェクタホルダ33に形成する貫通孔70の数は適宜変更することができる。
・平面部33Aの表面に、貫通孔70に向かって延びる溝を形成してもよい。この場合には、インジェクタホルダ33の上面に溜まる液体が溝を介してスムーズに貫通孔70に導かれるようになる。従って、インジェクタホルダ33の上面における液溜まりの量が低減されるようになり、これにより例えばインジェクタホルダ33の腐食や劣化をより一層抑えることができる。
【0051】
・シール部材90として、ゴム系の材料よりもヤング率の大きい材料、例えば金属材料や樹脂材料を採用してもよい。この場合でも、上記(4)以外の作用効果を得ることができる。
【0052】
・連通孔81の他端側を、上記長側壁21aeの外部に向かって開口させてもよい。この場合でも、上記(5)以外の作用効果を得ることができる。
・第2カバーは、第1取付孔43を有するインジェクタホルダ33であったが、そうした第1取付孔43を備えていないカバーでもよい。
【0053】
・短側壁21bに突出部80を形成した。この他、短側壁21bの肉厚を厚くして、その肉厚を厚くした箇所に上記連通孔81を設けるようにしてもよい。
・連通孔81は略L字状の孔であったが、他の形状でもよい。
【0054】
・分割構造とされたカバーは、内燃機関のヘッドカバーCであった。この他、原動機が電動機であって、その電動機の上部に組み付けられる分割構造のカバーに対して上述した排水構造を適用してもよい。
【0055】
・上記実施形態では、吸気ポート11及び排気ポートの数が4つ、すなわち4気筒の内燃機関を前提としていたが、その他の気筒数の内燃機関に適用してもよい。すなわち、第1チューブ23、第2チューブ24、第1挿入孔13、第2挿入孔14、第1取付孔43、第2取付孔44の数は、内燃機関の気筒の数に合わせればよい。
【0056】
・第1チューブ23や第2チューブ24に組み付けられる部材は、インジェクタ50及び点火プラグ60の組み合わせに限られるものではなく、他の組み合わせでもよい。例えばツインプラグ方式を採用した内燃機関などのように、各チューブに点火プラグを取り付けるものでもよい。
【0057】
・上記実施形態では、第1チューブ23と第2チューブ24とがシリンダヘッド本体10に取り付けられていた。しかし、第1チューブ23及び第2チューブ24以外に、第3のチューブやそれ以上のチューブが互いに非平行で配置される内燃機関のヘッドカバーにおいて上記の分割構造を適用してもよい。その場合、増加したチューブに従ってインジェクタホルダ33と同様の役割を果たすホルダが追加される。
【0058】
・上記実施形態においてヘッドカバーCを平面視した際に、ヘッドカバー本体34の開口部42から、ヘッドカバー本体34の下部に存在するインジェクタホルダ33の第1取付孔43の開口全域を確認できるのであれば、開口部42の個数や開口形状は適宜変更してもよい。
【0059】
・上記実施形態のシリンダヘッドHは、シリンダヘッド本体10と、カムシャフトを支持するカムシャフトハウジング20とが別部材になっていた。その他、シリンダヘッド本体10とカムシャフトハウジング20とが一体形成されたシリンダヘッドでもよい。
【0060】
・上記実施形態では、第1挿入孔13の中心軸線J1及び第2挿入孔14の中心軸線J2の双方を含む断面が存在する。しかし、第1挿入孔13の中心軸線J1と第2挿入孔14の中心軸線J2とが同一平面状に存在しないように第1挿入孔13と第2挿入孔14とが配置されていてもよい。ただし、どの場合においても、すべての第1挿入孔13の中心軸線J1は互いに平行に配置され、すべての第2挿入孔14の中心軸線J2は互いに平行に配置される。
【0061】
・上記実施形態では、吸気ポート11側に配置された第1チューブ23がインジェクタホルダ33の第1取付孔43に取り付けられ、排気ポート12側配置された第2チューブ24がヘッドカバー本体34の第2取付孔44に取り付けられていた。一方で、吸気ポート11側及び排気ポート12側に配置されるチューブ及びヘッドカバーの組み合わせは限定されない。例えば、吸気ポート側に第2チューブ24が配置され、第2チューブ24がヘッドカバー本体34の第2取付孔44に取り付けられてもよい。
【0062】
・上記実施形態で説明したシリンダヘッドの組み立て手順は一例であり、当該手順は適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0063】
C…ヘッドカバー
H…シリンダヘッド
10…シリンダヘッド本体
11…吸気ポート
12…排気ポート
13…第1挿入孔
14…第2挿入孔
20…カムシャフトハウジング
21ae…長側壁
21ba…短側壁
23…第1チューブ
24…第2チューブ
33…インジェクタホルダ
33A…平面部
33K…角部
34…ヘッドカバー本体
40…シール材
41…シール材
42…開口部
43…第1取付孔
44…第2取付孔
50…インジェクタ
60…点火プラグ
70…貫通孔
80…突出部
81…連通孔
90…シール部材
図1
図2
図3
図4