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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】排ガス浄化システム
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20250107BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20250107BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20250107BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20250107BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/08 A
F01N3/28 301P
F01N3/10 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021147945
(22)【出願日】2021-09-10
(65)【公開番号】P2023040788
(43)【公開日】2023-03-23
【審査請求日】2024-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(72)【発明者】
【氏名】竹島 伸一
(72)【発明者】
【氏名】西岡 寛真
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-301526(JP,A)
【文献】特開2009-178625(JP,A)
【文献】特開2013-130146(JP,A)
【文献】特開2013-072334(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0069174(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
B01D 53/73
53/86-53/90
53/94
53/96
F01N 3/00
3/02
3/04- 3/38
9/00-11/00
B01J 20/00-20/28
20/30-20/34
C01G 25/00-47/00
49/10-99/00
C01F 1/00-17/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から出る排ガスを浄化する第1の排ガス浄化触媒層、及び
前記第1の排ガス浄化触媒層によって浄化された前記排ガスを更に浄化する、第2の排ガス浄化触媒層を有しており、
前記第2の排ガス浄化触媒層は、酸素吸蔵材を含有しており、かつ
前記酸素吸蔵材の比表面積(m/g)に対する、比表面積当たりの塩基点量(mmol-CO/m)の比が、4.50×10-5以下であり、
前記第1の排ガス浄化触媒層及び前記第2の排ガス浄化触媒層は、触媒金属粒子としてのPt、Pd、又はRh粒子を含有しており、
前記酸素吸蔵材は、CeO である、
排ガス浄化システム。
【請求項2】
前記酸素吸蔵材の比表面積は、40.0m/g~110.0m/gである、請求項1に記載の排ガス浄化システム。
【請求項3】
前記酸素吸蔵材は、蛍石構造を有している、請求項1又は2に記載の排ガス浄化システム。
【請求項4】
前記第1の排ガス浄化触媒層は、比表面積(m/g)に対する、比表面積当たりの塩基点量(mmol-CO/m)の比が、4.50×10-5超である酸素吸蔵材を含有している、請求項1~のいずれか一項に記載の排ガス浄化システム。
【請求項5】
内燃機関から出る排ガスを浄化する方法であって、
第1の排ガス浄化触媒層によって、前記内燃機関から出る前記排ガスを浄化すること、及び
第2の排ガス浄化触媒層によって、前記第1の排ガス浄化触媒層によって浄化された前記排ガスを更に浄化すること、
を含み、かつ
前記第2の排ガス浄化触媒層は、酸素吸蔵材を含有しており、かつ
前記酸素吸蔵材の比表面積(m/g)に対する、比表面積当たりの塩基点量(mmol-CO/m)の比が、4.50×10-5以下であり、
前記第1の排ガス浄化触媒層及び前記第2の排ガス浄化触媒層は、触媒金属粒子としてのPt、Pd、又はRh粒子を含有しており、
前記酸素吸蔵材は、CeO である、
排ガス浄化方法。
【請求項6】
前記第1の排ガス浄化触媒層は、比表面積(m/g)に対する、比表面積当たりの塩基点量(mmol-CO/m)の比が、4.50×10-5超である酸素吸蔵材を含有している、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排ガス浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、第1貴金属を担持したゼオライト粒子と、該ゼオライト粒子の表面に形成され第2貴金属を担持した多孔質酸化物層と、からなることを特徴とする排ガス浄化用触媒を開示している。特許文献1は、この様な構成により、排ガス浄化用触媒のコーキングが抑制されると記載している。
【0003】
特許文献2は、所定の条件に従って空燃比を制御することにより、三元触媒に酸素を供給してコーキングに至る前にHC被毒からの回復を図ることができる旨を記載している。
【0004】
特許文献3は、XRDパターンにおいて(111)面に起因するピークが2つのピークトップに分かれているセリア-ジルコニア粒子を備え、特定の遷移金属がこのセリア-ジルコニア粒子に担持されている排気ガス浄化用触媒組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-95761号公報
【文献】特開2007-46494号公報
【文献】特開2014-210229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
内燃機関から出る排ガスを浄化する排ガス浄化システムにおいて、排ガス浄化触媒層の下流に向かうにしたがって、HC被毒及びコーキングが生じやすい。これは、排ガス浄化触媒層の下流に向かうにしたがって、排ガス中の酸素濃度が低下すること等によって、排ガス中のO/C比、HO/C比、及び温度が特定の領域に入ることにより、炭素析出の化学平衡に達するためであると考えられる。
【0007】
HC被毒及びコーキングを抑制するための方法としては、例えば特許文献1及び2に開示されている技術の排ガス浄化システムへの適用が考えられる。
【0008】
しかしながら、これらの技術の適用なくHC被毒及びコーキングを抑制する技術が求められている。
【0009】
本開示は、HC被毒及びコーキングを抑制することができる排ガス浄化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示者は、以下の手段により上記課題を達成することができることを見出した:
《態様1》
内燃機関から出る排ガスを浄化する第1の排ガス浄化触媒層、及び
前記第1の排ガス浄化触媒層によって浄化された前記排ガスを更に浄化する、第2の排ガス浄化触媒層を有しており、
前記第2の排ガス浄化触媒層は、酸素吸蔵材を含有しており、かつ
前記酸素吸蔵材の比表面積(m/g)に対する、比表面積当たりの塩基点量(mmol-CO/m)の比が、4.50×10-5以下である、
排ガス浄化システム。
《態様2》
前記酸素吸蔵材の比表面積は、40.0m/g~110.0m/gである、態様1に記載の排ガス浄化システム。
《態様3》
前記酸素吸蔵材は、Ce、La、Pr、又はこれらの組み合わせを含有する酸化物である、態様1又は2に記載の排ガス浄化システム。
《態様4》
前記酸素吸蔵材は、CeO、LaO、PrO、又はこれらの組み合わせである、態様1~3のいずれか一つに記載の排ガス浄化システム。
《態様5》
前記酸素吸蔵材は、蛍石構造を有している、態様1~4のいずれか一つに記載の排ガス浄化システム。
《態様6》
前記第2の排ガス浄化触媒層は、触媒金属粒子を更に含有している、態様1~5のいずれか一つに記載の排ガス浄化システム。
《態様7》
前記触媒金属粒子は、Pt、Pd、又はRhの粒子である、態様6に記載の排ガス浄化システム。
《態様8》
前記第1の排ガス浄化触媒層は、比表面積(m/g)に対する、比表面積当たりの塩基点量(mmol-CO/m)の比が、4.50×10-5超である酸素吸蔵材を含有している、態様1~7のいずれか一つに記載の排ガス浄化システム。
《態様9》
内燃機関から出る排ガスを浄化する方法であって、
第1の排ガス浄化触媒層によって、前記内燃機関から出る前記排ガスを浄化すること、及び
第2の排ガス浄化触媒層によって、前記第1の排ガス浄化触媒層によって浄化された前記排ガスを更に浄化すること、
を含み、かつ
前記第2の排ガス浄化触媒層は、酸素吸蔵材を含有しており、かつ
前記酸素吸蔵材の比表面積(m/g)に対する、比表面積当たりの塩基点量(mmol-CO/m)の比が、4.50×10-5以下である、
排ガス浄化方法。
《態様10》
前記第1の排ガス浄化触媒層は、比表面積(m/g)に対する、比表面積当たりの塩基点量(mmol-CO/m)の比が、4.50×10-5超である酸素吸蔵材を含有している、態様9に記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、HC被毒及びコーキングを抑制することができる排ガス浄化システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の一つの実施形態に従う排ガス浄化システムの模式図である。
図2図2は、各例における酸素吸蔵材の、塩基点量と比表面積との関係を示すグラフである。
図3図3は、実施例2-4(黒丸)及び比較例3(白丸)の酸素吸蔵材を用いた排ガス浄化触媒層における炭素析出量を比較したグラフである。
図4図4は、実施例2-4(黒丸)及び比較例3(白丸)の酸素吸蔵材を用いた排ガス浄化触媒層におけるNMHC排出量を比較したグラフである。
図5図5は、実施例2-4及び比較例3の酸素吸蔵材を用いた排ガス浄化触媒層において析出した炭素の反応性を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について詳述する。なお、本開示は、以下の実施の形態に限定されるのではなく、開示の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0014】
《排ガス浄化システム》
本開示の排ガス浄化システムは、内燃機関から出る排ガスを浄化する第1の排ガス浄化触媒層、及び第1の排ガス浄化触媒層によって浄化された排ガスを更に浄化する、第2の排ガス浄化触媒層を有しており、第2の排ガス浄化触媒層は、酸素吸蔵材を含有しており、かつ酸素吸蔵材の酸素吸蔵材の比表面積(m/g)に対する、比表面積当たりの塩基点量(mmol-CO/m)の比が、4.50×10-5以下である。
【0015】
本排ガス浄化システムを適用し得る内燃機関は、例えば乗物に搭載されている内燃機関、より具体的には車両、更に具体的には自動車の内燃機関であってよい。
【0016】
原理によって限定されないが、本開示の本排ガス浄化システムにおいてHC被毒及びコーキングを抑制することができる原理は、以下のとおりである。
【0017】
上記のように、内燃機関から出る排ガスを浄化する排ガス浄化システムにおいて、排ガス浄化触媒層の下流に向かうにしたがって、HC被毒及びコーキングが生じやすい。これは、排ガス浄化触媒層の下流に向かうにしたがって、排ガス中の酸素濃度が低下すること等によると考えられる。
【0018】
本開示の第1の実施例に従う排ガス浄化システム2は、例えば図1に示すように、内燃機関1から出る排ガスが流れる流路3によって、内燃機関1と連結されている。排ガス浄化システム2は、内燃機関1から出る排ガスを浄化する第1の排ガス浄化触媒層10、及び第1の排ガス浄化触媒層10によって浄化された排ガスを更に浄化する、第2の排ガス浄化触媒層20を有している。より具体的には、排ガス浄化システム2は、内燃機関1側から順に、第1の排ガス浄化触媒層10及び第2の排ガス浄化触媒層20が配置されている。黒い矢印は、排ガスの流れ100を示す。排ガスは、第1の排ガス浄化触媒層10及び第2の排ガス浄化触媒層20の順に、排ガス浄化システム2内を流れる。
【0019】
このように、第2の排ガス浄化触媒層20は、排ガス浄化触媒層のうち下流に位置するため、概してHC被毒及びコーキングが生じやすい位置にある。
【0020】
ここで、本開示の第1の実施例に従う排ガス浄化システム2では、第2の排ガス浄化触媒層20は、酸素吸蔵材を含有しており、かつ酸素吸蔵材の比表面積(m/g)に対する、比表面積当たりの塩基点量(mmol-CO/m)の比が、4.50×10-5以下である。
【0021】
なお、酸素吸蔵材の塩基点量は、二酸化炭素昇温脱離測定による酸素吸蔵材1g当たりのCOの脱離量として求められる塩基点量である。二酸化炭素昇温脱離測定は、具体的には、固体試料にプローブ分子であるCOを100℃の温度で吸着させ(例えば試料にCO10%、残部N又はHeのガスを流通させることによって)、Heガス又はNガスで気層のCOをパージしたあと、試料層の温度を連続的に上昇(例えば10℃/分で600℃まで昇温)させることによって生じる脱離ガスの濃度を測定する。ガス濃度の測定には、市販の触媒評価装置(ベスト測器社製「CATA-5000」、堀場製作所社製「MEXA-4300FT」、等)を用いることができる。また、測定に先だって、600℃程度において、OとNとからなるガス(又は、OとHeとからなるガス等)を試料に対して供給し、次いで、温度を100℃程度まで下げる操作を行ってもよい。なお、弱い塩基点に吸着しているCOは、低温で脱離し(l(low)-ピーク)、強い塩基点に吸着しているCOは、高温で脱離する(h(high)-ピーク)ことから、塩基点の強度を知ることができる。また、酸素吸蔵材の比表面積は、JISZ-8830により、B.E.T.法を用いて測定することができる。
【0022】
このような酸素吸蔵材は、排ガス中のHCが付着する塩基点の量が少ない。
【0023】
したがって、排ガス中の酸素濃度が低い第2の排ガス浄化触媒層20においてこのような酸素吸蔵材を配置することで、第2の排ガス浄化触媒層20におけるHC被毒及びコーキングを抑制することができる。更には、このような酸素吸蔵材の表面には酸素が多く配置されているため、表面に露出している塩基点に付着したHCを酸化してCOに変換しやすい。これにより、本開示の第1の実施例に従う排ガス浄化システム2では、HC被毒及びコーキングを抑制することができる。逆に、表面に酸素が配置されず金属が露出している場合、金属にHCが吸着して金属上で脱水素をおこし、コーキングしやすい状態となる。
【0024】
なお、図1は、本開示の第1の実施例に従う排ガス浄化システムの模式図であり、すなわち一例にすぎず、本開示の排ガス浄化システムを限定する趣旨ではない。したがって、例えば、図1において、第1の排ガス浄化触媒層と第2の排ガス浄化触媒層は連続しているが、これらは互いに独立して、例えば排ガスが流れる流路によって連結された構成となっていることもできる。
【0025】
〈第1の排ガス浄化触媒層〉
第1の排ガス浄化触媒層は、内燃機関から出る排ガスを浄化する。第1の排ガス浄化触媒層は、排ガス浄化触媒、例えば三元触媒を有している。
【0026】
三元触媒は、Pt、Pd、又はRh等の触媒金属粒子、酸素吸蔵材、及び担体を有していることができる。
【0027】
第1の排ガス浄化触媒層における酸素吸蔵材は、第2の排ガス浄化触媒層が有しているものと同じものであっても異なるものであってもよい。
【0028】
第1の排ガス浄化触媒層が酸素吸蔵材を含有している場合には、第2の排ガス浄化触媒層が有しているものと異なることが好ましい。より具体的には、第1の排ガス浄化触媒層が含有する酸素吸蔵材の比表面積(m/g)に対する、比表面積当たりの塩基点量(mmol-CO/m)の比が、4.50×10-5超であることが好ましい。
【0029】
第1の排ガス浄化触媒層が有している酸素吸蔵材の比表面積(m/g)に対する、比表面積当たりの塩基点量(mmol-CO/m)の比は、4.50×10-5超、5.00×10-5以上、5.50×10-5以上、又は6.00×10-5以上であってよく、15.00×10-5以下、10.00×10-5以下、7.00×10-5以下、又は5.00×10-5以下であってよい。
【0030】
第1の排ガス浄化触媒層は、第2の排ガス浄化触媒層よりも先に排ガスを浄化する。したがって、第1の排ガス浄化触媒層を流れる排ガス中のO濃度が高い。そのため、HC被毒及びコーキングが、第2の排ガス浄化触媒層と比較して生じにくい。したがって、第1の排ガス浄化触媒層では塩基点の量を多くすることで、よりHC等の浄化しやすくすることができる。
【0031】
すなわち、第1の排ガス浄化触媒層において比表面積(m/g)に対する、比表面積当たりの塩基点量(mmol-CO/m)の比が、4.50×10-2超である酸素吸蔵材を採用しつつ、第2の排ガス浄化触媒層において酸素吸蔵材の比表面積(m/g)に対する、比表面積当たりの塩基点量(mmol-CO/m)の比が、4.50×10-5以下である酸素吸蔵材を採用することで、第1の排ガス浄化触媒層において高い排ガス浄化性能を発揮して、第2の排ガス浄化触媒層に流れるHCの量を低減することで、より第2の排ガス浄化触媒層におけるHC被毒及びコーキングを低減することができる。
【0032】
なお、第1の排ガス浄化触媒層は、基材上に形成されていることができる。基材は、排ガス流れ上流端及び排ガス流れ下流端を有している。ここで、排ガス流れ上流端とは、排ガス浄化装置の使用時において、基材の端部のうち、内燃機関から排出される排ガスが流入する側を意味している。また、排ガス流れ下流端とは、基材の端部のうち、排ガスが流出する側を意味している。
【0033】
基材は、排ガス浄化装置において、排ガス浄化用触媒を担持するために用いられる任意の基材を用いることができる。このような基材は、例えばセラミックス製、又は金属製のものを用いることができる。セラミックス製の基材としては、例えばコージェライト、SiC等の基材を挙げることができる。
【0034】
基材は、排ガスを通過させる流路を有していてよい。流路の構造は、例えば、ハニカム構造、フォーム構造、又はプレート構造を有していてよい。
【0035】
基材がハニカム基材である場合、触媒は、ハニカム基材の流路内に配置されていてよい。
【0036】
基材の排ガス流れ上流端から排ガス流れ下流端までの長さは特に限定されず、排ガス浄化装置として一般的に用いられているものと同様の長さであってよい。
【0037】
第1の排ガス浄化触媒層は、例えば排ガス浄化触媒及びバインダ等を分散媒に分散させたスラリーを基材上に例えば塗工等によって付着させ、随意に乾燥させ、そして焼成することによって形成することができる。
【0038】
〈第2の排ガス浄化触媒層〉
第2の排ガス浄化触媒層は、第1の排ガス浄化触媒層によって浄化された排ガスを更に浄化する。したがって、第2の排ガス浄化触媒層は、排ガス浄化触媒層全体のうち、下流側から50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、又は10%以下の長さの部分であってよい。なお、排ガス浄化触媒層の下流側とは、排ガス浄化触媒層における排ガスの流れの下流側を意味する。
【0039】
第2の排ガス浄化触媒層は、酸素吸蔵材を含有している。
【0040】
第2の排ガス浄化触媒層は、酸素吸蔵材以外にも、Pt、Pd、又はRh等の触媒金属粒子、及び担体を有していることができる。すなわち、第2の排ガス浄化触媒層は、三元触媒を含んでおり、当該三元触媒の要素として、酸素吸蔵材を含有していることができる。
【0041】
第2の排ガス浄化触媒層も、第1の排ガス浄化触媒層と同様に、基材上に形成されていることができる。第2の排ガス浄化触媒層が形成される基材は、第1の排ガス浄化触媒層に関して用いるものと同様のものであってよい。
【0042】
第2の排ガス浄化触媒層は、第1の排ガス浄化触媒層と同一の基材上に形成されていても、別個の基材上に形成されていてもよい。第2の排ガス浄化触媒層が第1の排ガス浄化触媒層と同一の基材上に形成されている場合、第2の排ガス浄化触媒層は、基材上の排ガス浄化触媒層全体のうち、下流側から50%以下の長さの部分であってよい。また、第1の排ガス浄化触媒層と第2の排ガス浄化触媒層とは、部分的に重複していてもよい。
【0043】
第2の排ガス浄化触媒層は、例えば酸素吸蔵材の比表面積(m/g)に対する、比表面積当たりの塩基点量(mmol-CO/m)の比が4.50×10-5以下である酸素吸蔵材を用いて、第1の排ガス浄化触媒層と同様の方法によって形成することができる。
【0044】
〈酸素吸蔵材〉
第2の排ガス浄化触媒層が有している酸素吸蔵材の比表面積(m/g)に対する、比表面積当たりの塩基点量(mmol-CO/m)の比は、4.50×10-5以下である。
【0045】
第2の排ガス浄化触媒層が有している酸素吸蔵材の比表面積(m/g)に対する、比表面積当たりの塩基点量(mmol-CO/m)の比は、4.50×10-5以下、4.00×10-5以下、3.50×10-5以下、又は3.00×10-5以下であってよく、0.50×10-5以上、1.00×10-5以上、1.50×10-5以上、又は2.00×10-5以上であってよい。
【0046】
酸素吸蔵材の比表面積は、40.0m/g~110.0m/gであってよい。酸素吸蔵材の比表面積は、40.0m/g以上、50.0m/g以上、60.0m/g以上、又は70.0m/g以上であってよく、110.0m/g以下、100.0m/g以下、90.0m/g以下、又は80.0m/g以下であってよい。
【0047】
酸素吸蔵材は、Ce、La、Pr、又はこれらの組み合わせを含有する酸化物であってよい。より具体的には、酸素吸蔵材は、CeO、LaO、PrO、又はこれらの組み合わせであってよい。
【0048】
酸素吸蔵材は、蛍石構造を有していることができる。蛍石構造を有している酸素吸蔵材は、その表面に(111)面が露出している構造であってよい。
【0049】
蛍石構造を有している酸素吸蔵材の(111)面は、酸素原子が露出しており、かつ金属原子がその下層に位置する、すなわち露出していない。したがって、(111)面の露出を多くすることで、塩基点となる金属原子を減少させ、それによって酸素吸蔵材の比表面積(m/g)に対する、比表面積当たりの塩基点量(mmol-CO/m)の比を4.50×10-5以下にすることができる。
【0050】
なお、このような酸素吸蔵材は、例えば水熱合成等によって製造することができる。
【0051】
例えば、酸素吸蔵材がCeOである場合には、Ce(NO・6HOをNaPOを含む10Lの水溶液に良く溶かし溶液のpHを4に調整したうえで、170℃で静置して12h水熱合成し、その後、150℃で乾燥させ、最後に500℃で空気焼成することによって製造することができる。
【0052】
なお、酸素吸蔵材の製造方法は、上記に限定されない。
【0053】
《排ガス浄化方法》
本開示の排ガス浄化方法は、内燃機関から出る排ガスを浄化する方法であって、第1の排ガス浄化触媒層によって、内燃機関から出る排ガスを浄化すること、及び第2の排ガス浄化触媒層によって、第1の排ガス浄化触媒層によって浄化された排ガスを更に浄化すること、を含む。ここで、第2の排ガス浄化触媒層は、酸素吸蔵材を含有しており、かつ酸素吸蔵材の比表面積(m/g)に対する、比表面積当たりの塩基点量(mmol-CO/m)の比が、4.50×10-5以下である。
【0054】
本開示の排ガス浄化方法に用いる排ガス浄化システムは、例えば上記の《排ガス浄化システム》において記載のものを使用することができるが、この様な構成に限定されない。
【0055】
本開示の排ガス浄化方法では、第1の排ガス浄化触媒層は、比表面積(m/g)に対する、比表面積当たりの塩基点量(mmol-CO/m)の比が、4.50×10-5超である酸素吸蔵材を含有しているのがより好ましい。
【0056】
上記の《排ガス浄化システム》において記載のように、第1の排ガス浄化触媒層において比表面積(m/g)に対する、比表面積当たりの塩基点量(mmol-CO/m)の比が、4.50×10-2超である酸素吸蔵材を採用しつつ、第2の排ガス浄化触媒層において酸素吸蔵材の比表面積(m/g)に対する、比表面積当たりの塩基点量(mmol-CO/m)の比が、4.50×10-5以下である酸素吸蔵材を採用することで、第1の排ガス浄化触媒層において高い排ガス浄化性能を発揮して、第2の排ガス浄化触媒層に流れるHCの量を低減することで、より第2の排ガス浄化触媒層におけるHC被毒及びコーキングを低減することができる。
【実施例
【0057】
《実施例1-1、1-2、及び2-1~2-6、並びに比較例1~5》
〈実施例1-1〉
100部のCe(NO・6HOを、pH緩衝のために0.37gのNaPOを含む10Lの水溶液に良く溶かした。溶液のpH=4を確認した。攪拌型の耐食性反応器に溶液を移し、最初の一定時間のみ攪拌して、170℃で静置して12h水熱合成した。水熱合成後、得られた固形物は定法により、遠心分離、あるいは濾過して、蒸留水で洗浄し、Na分の減少を確認した。150℃で乾燥させ、500℃で空気焼成した。得られたCeO粉末を、実施例1-1の酸素吸蔵材とした。
【0058】
実施例1-1の酸素吸蔵材の比表面積(m/g)、塩基点量(mmol-CO/g)、比表面積当たりの塩基点量(mmol-CO/m)、及び比表面積に対する、比表面積当たりの塩基点量の比は、以下の表1に示すとおりである。
【0059】
〈実施例1-2〉
水熱条件を変えたことを除いて実施例1-1と同様にして、実施例1-2の酸素吸蔵材を調製した。
【0060】
実施例1-2の酸素吸蔵材の比表面積(m/g)、塩基点量(mmol-CO/g)、比表面積当たりの塩基点量(mmol-CO/m)、及び比表面積に対する、比表面積当たりの塩基点量の比は、以下の表1に示すとおりである。
【0061】
〈実施例2-1〉
100部のCe(NO・6HOを、pH緩衝のために0.37gのNaPOを含む10Lの水溶液に良く溶かした。蒸留水で2倍に希釈するとともに硝酸を加えてpH=2に調整した。水熱合成条件は、比較的低温の120℃で18h反応させた。水熱合成後、得られた固形物は定法により、遠心分離、あるいは濾過して、蒸留水で洗浄し、Na分の減少を確認した。150℃で乾燥させ、500℃で空気焼成した。得られたナノロッドCeO粉末を、実施例2-1の酸素吸蔵材とした。
【0062】
実施例2-1の酸素吸蔵材の比表面積(m/g)、塩基点量(mmol-CO/g)、比表面積当たりの塩基点量(mmol-CO/m)、及び比表面積に対する、比表面積当たりの塩基点量の比は、以下の表1に示すとおりである。
【0063】
〈実施例2-2~2-6〉
水熱条件を変えたことを除いて実施例2-1と同様にして、実施例2-2~2-6の酸素吸蔵材を調製した。
【0064】
実施例2-2~2-6の酸素吸蔵材の比表面積(m/g)、塩基点量(mmol-CO/g)、比表面積当たりの塩基点量(mmol-CO/m)、及び比表面積に対する、比表面積当たりの塩基点量の比は、以下の表1に示すとおりである。
【0065】
〈比較例1~5〉
比較例1~5の酸素吸蔵材として、従来の製造方法で製造したCeO粉末を用いた。
【0066】
比較例1~5の酸素吸蔵材の比表面積(m/g)、塩基点量(mmol-CO/g)、比表面積当たりの塩基点量(mmol-CO/m)、及び比表面積に対する、比表面積当たりの塩基点量の比は、以下の表1に示すとおりである。なお、酸素吸蔵材の比表面積は、JISZ-8830により、B.E.T.法を用いて測定した。また、酸素吸蔵材の塩基点量は、二酸化炭素昇温脱離測定による担体1g当たりの二酸化炭素の脱離量を基準として求めた。
【0067】
【表1】
【0068】
表1及び図2に示すように、実施例1-1、1-2、及び2-1~2-6の酸素吸蔵材は、比表面積に対する、比表面積当たりの塩基点量の比が0.52×10-5~4.04×10-5であった。これに対して、比較例1~5の酸素吸蔵材は、比表面積に対する、比表面積当たりの塩基点量の比が4.60×10-5~10.48×10-5であった。
【0069】
〈炭素析出量の測定〉
実施例2-4及び比較例3の酸素吸蔵材について、金属触媒粒子としてのPt及び触媒担体としてのZrO粒子と混合して、排ガス浄化触媒とした。この排ガス浄化触媒を分散させたスラリーを、基材上に塗布、乾燥させて、基材上に排ガス浄化触媒層を形成した。
【0070】
この排ガス浄化触媒層を排気管に取り付けた、直列3気筒、排気量0.660Lのガソリンエンジンを、低慣性動力計(明電舎製)により、WLTC-Hモード試験手順に沿って運転した。
【0071】
所定時間経過後に、排ガス浄化触媒層の上流側から所定の長さの位置における炭素析出量を可視吸光光度計により測定した。
【0072】
測定結果を図3に示す。
【0073】
図3は、実施例2-4及び比較例3の酸素吸蔵材を用いた排ガス浄化触媒層における炭素析出量を比較したグラフである。なお、図3において、黒丸は、実施例2-4の酸素吸蔵材を用いた排ガス浄化触媒層、白丸は、比較例3の酸素吸蔵材を用いた排ガス浄化触媒層を用いた場合の結果を示している。
【0074】
図3に示すように、実施例2-4の酸素吸蔵材を用いた場合、及び比較例3の酸素吸蔵材を用いた場合のいずれの場合においても、炭素の析出が始まる位置は、排ガス浄化触媒層の前側から40mm付近であった。
【0075】
しかしながら、両者を比較すると、実施例2-4の酸素吸蔵材を用いた排ガス浄化触媒層の方が、炭素析出量が低かった。この差は、排ガス浄化触媒層の後側に向かうにつれて顕著であった。
【0076】
〈NMHC排出量の測定〉
上記の「《炭素析出量の測定》」におけるのと同様の試験において、排出されたNMHC(ノンメタン炭化水素)を排ガス分析装置(HORIBA社製)で測定した。
【0077】
図4は、実施例2-4及び比較例3の酸素吸蔵材を用いた排ガス浄化触媒層におけるNMHC排出量を比較したグラフである。
【0078】
図4に示すように、実施例2-4の酸素吸蔵材を用いた場合、及び比較例3の酸素吸蔵材を用いた場合のいずれの場合においても、定常運転時間が1分程度経過後からNMHCが検出され始めた。
【0079】
実施例2-4の酸素吸蔵材を用いた場合、定常運転時間が約5分経過した後、NMHC排出量は横ばいとなり、約10分経過してもオン・ボード・ダイアグノーシス(OBD)規制許容値を大きく下回った。
【0080】
これに対して、比較例3の酸素吸蔵材を用いた場合、約5分経過した時点でOBD規制許容値を上回った。
【0081】
〈炭素の反応性の測定〉
上記の「《炭素析出量の測定》」におけるのと同様の試験後の実施例2-4及び比較例3の酸素吸蔵材を空気中で加熱して、排ガス浄化触媒層の前側から90mm付近において析出している炭素の空気中の酸素との反応性を可視吸光光度計により測定した。
【0082】
図5は、実施例2-4及び比較例3の酸素吸蔵材を用いた排ガス浄化触媒層において析出した炭素の反応性を比較したグラフである。
【0083】
図5に示すように、実施例2-4の酸素吸蔵材を用いた場合、500℃を若干上回る温度において炭素析出量が低下し始めた。
【0084】
これに対して、比較例3の酸素吸蔵材を用いた場合、約650℃付近になるまで炭素析出量が低下しなかった。
【符号の説明】
【0085】
1 内燃機関
2 排ガス浄化システム
3 流路
10 第1の排ガス浄化触媒層
20 第2の排ガス浄化触媒層
100 排ガスの流れ
図1
図2
図3
図4
図5