(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】車両後方領域監視システム
(51)【国際特許分類】
B60R 11/02 20060101AFI20250107BHJP
B60R 1/20 20220101ALI20250107BHJP
B60R 1/26 20220101ALI20250107BHJP
【FI】
B60R11/02 C
B60R1/20 100
B60R1/26 100
B60R1/26 200
(21)【出願番号】P 2021173920
(22)【出願日】2021-10-25
【審査請求日】2024-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】窪田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 純平
(72)【発明者】
【氏名】日隈 友仁
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑紀
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-131329(JP,A)
【文献】特開2008-13070(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0064030(US,A1)
【文献】特開2016-55801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/20,11/02
G06F 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後方側の画像を含む後方撮像画像を撮影する車両後方側撮像部と、
前記車両の車室内に設けられ、前記後方撮像画像と他画像とを切り換えて表示可能な表示領域を有する表示部と、
前記車両の運転席の乗員の視線を検出する視線検出部と、
前記運転席の乗員の視線が車室外の所定領域を向いた後、所定時間以内に前記表示領域に向いた場合に、前記表示領域に前記後方撮像画像を表示する表示制御部と、
を有する車両後方領域監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後方領域監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両後方の撮像画像(以下、「後方撮像画像」という)を車両の前方に設けられた表示部に表示する車両後方領域監視システムが提案されている。後方撮像画像を表示する専用の表示部を設けるのは、車両の部品点数等の増加につながるため、他の用途に用いられる表示部に必要な時だけ後方撮像画像を表示させることが考えられる。この構成では、乗員がスイッチを操作することによって、表示部の表示画面を他画像から後方撮像画像に切り換えることが行われている。
【0003】
しかし、後方撮像画像を表示させる度にスイッチ操作を行うことは煩雑であり、自動的に表示を切り替えることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、特許文献1には、運転席の乗員の視線が後方撮像画像を表示する表示領域内に向いた場合に後方撮像画像を通常画像で表示領域に表示すると共に、運転席の乗員の視線が表示領域外に向いている場合に、後方撮像画像を通常画像よりも視認性を抑制した抑制画像で表示領域に表示することが提案されている。
【0006】
この技術的思想を援用して、運転席の乗員の視線が表示部の表示領域に向いた場合に、表示部に後方撮像画像を表示させることも考えられる。
【0007】
しかし、表示部が後方撮像画像のみを表示する専用の表示部でないため、例えば、運転席の乗員の視線が表示部の表示領域に向けていても、他画像(例えば、ナビゲーション画像)を視ることが運転席の乗員の意図である可能性がある。すなわち、運転席の乗員の意図に反した画像を表示部に表示するおそれがあった。
【0008】
本発明は上記事実を考慮し、運転席の乗員の意図に応じて後方撮像画像を表示領域に自動的に表示可能な車両後方領域監視システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様に係る車両後方領域監視システムは、車両の後方側の画像を含む後方撮像画像を撮影する車両後方側撮像部と、前記車両の車室内に設けられ、前記後方撮像画像と他画像とを切り換えて表示可能な表示領域を有する表示部と、前記車両の運転席の乗員の視線を検出する視線検出部と、前記運転席の乗員の視線が車室外の所定領域を向いた後、所定時間以内に前記表示領域に向いた場合に、前記表示領域に前記後方撮像画像を表示する表示制御部と、を有する。
【0010】
この車両後方領域監視システムでは、車両の車室内において車両前方側に表示部が設けられている。また、車両後方側撮像部が、車両の後方側の画像を含む後部撮像画像を撮影する。さらに、この表示部の表示領域には、後方撮像画像と他画像とを切り換えて表示可能とされている。
【0011】
ところで、車両後方領域監視システムでは、視線検出部で検出される運転席の乗員の視線が車室外の所定領域に向いた後、所定時間以内に表示領域に向いた場合には、表示制御部が表示部の表示領域に後方撮像画像を表示する。
【0012】
例えば、右側車線から左側車線に車線変更する場合に、運転席の乗員は先ず、車両左側前方(左側車線前方)を視た後、車両左側後方を確認するために車両後方領域監視システムの表示部の表示領域に視線を移す。このため、車両後方領域監視システムの表示制御部では、運転席の乗員の視線が所定領域(車両左側前方領域)を向いた後、所定時間以内に表示領域に向くと、左側車線への車線変更のために車両の後方側を撮像した後方撮像画像を確認すると判断し、表示領域に後方撮像画像を表示する。
【0013】
すなわち、運転席の乗員はスイッチ操作等をすることなく、通常他画像が表示されている車両後方領域監視システムの表示部の表示領域に後方撮像画像を自動的に表示させることができる。
【0014】
なお、「所定領域」とは、運転席の乗員が後方撮像画像を表示領域に表示させて自車両の後方側を確認する必要がある車両操作を企図した場合に、車両後方側を確認する前に確認する領域を意味する。
【0015】
また、「他画像」とは、後方撮像画像以外で表示装置の表示領域に表示される画像を意味する。例えば、カーナビゲーション装置のナビゲーション画像等である。
【発明の効果】
【0016】
運転席の乗員の意図に応じて、表示部の表示領域に後方撮像画像を表示領域に自動的に表示させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る車両後方領域監視システムが適用された車両における車室内の前部を車両後方側から見た概略図である。
【
図2】実施形態に係る後方撮像画像の撮影するための複数のカメラの画角(撮影範囲)を説明する平面図である。
【
図3】実施形態に係る車両後方領域監視システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】実施形態に係る車両後方領域監視システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図5】第1実施形態における表示処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態において、運転席の乗員が視線を向ける所定領域を説明するための平面図である。
【
図7】実施形態に係る車両後方領域監視システムが適用された車両の車室内を車両後方側から視たイメージ上における所定領域を視た視線を示す概略図である。
【
図8】実施形態に係る車両後方領域監視システムが適用された車両の車室内を車両後方側から視たイメージ上における表示部の表示領域を視た視線を示す概略図である。
【
図9】第2実施形態における表示処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図10】第2実施形態における表示処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図11】車両後方側の所定領域を示す平面図である。
【
図12】バリエーションに係る車両後方領域監視システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図13】バリエーションに係る車両後方領域監視システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図14】バリエーションにおける表示処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
【0019】
第1実施形態に係る車両後方領域監視システム10が適用された車両12について、図面を参照して説明する。
【0020】
図1に示すように、車両12における車室内の前部には、インストルメントパネル14が設けられている。
【0021】
インストルメントパネル14は、車両幅方向に延在されており、このインストルメントパネル14の車両左側にはステアリングホイール16が設けられている。すなわち、本実施形態では一例として、左側にステアリングホイール16が設けられた左ハンドル車とされており、運転席24が車両左側に設定されている。
【0022】
インストルメントパネル14の前端部にはウインドシールドガラス18が設けられている。ウインドシールドガラス18は、車両上下方向及び車両幅方向に延在されて車室内部と車室外部とを区画している。
【0023】
ウインドシールドガラス18の車幅方向両端部は、車両の両側に設けられたフロントピラー20L、20Rにそれぞれ固定されている。換言すれば、フロントピラー20L、20Rそれぞれの車幅方向内側端部にはウインドシールドガラス18が固定されている。また、フロントピラー20L、20Rの車両幅方向外側端部にはそれぞれフロントサイドガラス22L、20Rの前端部が固定されている。
【0024】
さらに、インストルメントパネル14には、その車両左側に設けられ、運転席24の正面に位置する第1表示部28と、その車両中央側に設けられた第2表示部30と、が設けられている。第1表示部28、第2表示部30は、それぞれ画像が表示される表示領域28A、30Aを有する。
【0025】
第2表示部30の表示領域には、通常表示される他画像と、後述する後方撮像画像とが、切り換えて表示可能とされている。
【0026】
なお、第2表示部30が「表示部」に相当する。
【0027】
また、インストルメントパネル14の上方には、ルーフ32の車幅方向中央にルームミラー34が取り付けられている。また、車両の両側部には、それぞれサイドミラー36L、36Rが設けられている。
【0028】
さらに、車両12の車室内において、ルームミラー34の下部には車室内カメラ60が設けられており、車室内カメラ60の撮像画像に基づいて運転席24の乗員「以下、「ドライバ」という場合がある」の視線が検出される。
【0029】
また、車両12の左右のサイドミラー36L、36Rの下方側には、それぞれ車両側部後方側を撮影する左側後方カメラ62と、右側後方カメラ64が設けられている。左側後方カメラ62と、右側後方カメラ64は、
図2に示すように、それぞれ車両12の左側側部、右側側部から車両後方側を撮像するものである。
【0030】
さらに、
図2に示すように、車両12の中央後端側には、車両12の中央後方側を撮像する中央後方カメラ66が設けられている。
【0031】
図2に示すように、左側後方カメラ62と、右側後方カメラ64、中央後方カメラ66の撮影範囲はそれぞれ重複しており、各カメラの撮像画像を合成することによって、後方撮像画像が形成される。
左側後方カメラ62、右側後方カメラ64、中央後方カメラ66が「車両後方側撮像部」に相当する。
【0032】
(車両後方領域監視システム10のハードウェア構成)
【0033】
車両12には、制御部としてのECU(Electronic Control Unit)40が設けられている。
図3は、車両後方領域監視システム10のハードウェア構成を示すブロック図である。この
図3に示すように、車両後方領域監視システム10のECU40は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)42、ROM(Read Only Memory)44、RAM(Random Access Memory)46、ストレージ48、通信インタフェース50及び入出力インタフェース52を含んで構成されている。各構成は、バス54を介して相互に通信可能に接続されている。
【0034】
CPU42は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実施したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU42は、ROM44又はストレージ48からプログラムを読み出し、RAM46を作業領域としてプログラムを実施する。CPU42は、ROM44又はストレージ48に記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。
【0035】
ROM44は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM46は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ48は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。本実施形態では、ROM44又はストレージ48には、表示処理を行うためのプログラム、及び各種データなどが格納されている。
【0036】
通信インタフェース(通信I/F)50は、車両後方領域監視システム10が図示しないサーバ及び他の機器と通信するためのインタフェースであり、例えば、イーサネット(登録商標)、LTE、FDDI、Wi-Fi(登録商標)などの規格が用いられる。
【0037】
入出力インタフェース(入出力I/F)52には、第1表示部28と、第2表示部30と、車室内カメラ60と、左側後方カメラ62と、右側後方カメラ64と、中央後方カメラ66と、が接続されている。また、入出力インタフェース52には、センサ類やアクチュエータ等が接続されているが、本実施形態では図示省略する。
【0038】
(車両後方領域監視システム10の機能構成)
【0039】
車両後方領域監視システム10は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。車両後方領域監視システム10が実現する機能構成について
図4を参照して説明する。
【0040】
図4に示すように、車両後方領域監視システム10は、機能構成として、視線検出部70、後方撮像画像生成部72、判定部74及び表示切換部76を含んで構成されている。なお、各機能構成は、CPU42がROM44又はストレージ48に記憶されたプログラムを読み出し、実施することにより実現される。また、判定部74及び表示切換部76が「表示制御部」に相当する。
【0041】
視線検出部70は、車室内カメラ60で撮像された撮像画像から運転席24の乗員の視線を検出する機能を有する。
【0042】
後方撮像画像生成部72は、
図2に示すように、車両12に設けられた左側後方カメラ62、右側後方カメラ64、中央後方カメラ66のそれぞれに撮影された撮像画像を合成することにより、後方撮像画像を生成する。
【0043】
判定部74は、視線検出部70で検出された運転席24の乗員の視線が後述する所定領域VA(
図6及び
図7参照)に向いた後、所定時間以内に第2表示部30の表示領域30Aに向いたか否かを判定する機能を有する。
【0044】
表示切換部76は、判定部74で運転席24の乗員の視線が所定領域VA内に移動した後、所定時間以内に第2表示部30の表示領域30Aに到達したと判定された場合には、第2表示部30の表示領域30Aに他画像に切り換えて後方撮像画像を表示する機能を有する。
【0045】
(作用)
【0046】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0047】
(表示処理)
【0048】
図5に示すフローチャートを用いて説明する。この表示処理は、CPU42がROM44又はストレージ48からプログラムを読み出して、RAM46に展開して実施することによって実施される。
【0049】
この表示処理は、第2表示部30の表示領域30Aに、通常は画像として他画像、例えばカーナビゲーション装置のナビゲーション画像を表示しておき、運転席24の乗員が望む場合のみ後方撮像画像を表示する制御である。一例として、運転席24の乗員が車両12を右側車線から左側車線に車線変更することを企図している場合について説明する。
【0050】
また、この表示制御は、イグニッション・オンによって開始され、後述するようにイグニッションオフによって終了される。また、CPU42は、その間、後方撮像画像生成部72の機能によって、所定時間間隔で、左側後方カメラ62、右側後方カメラ64、中央後方カメラ66の撮像画像を合成して後方撮像画像を形成している。
【0051】
図5に示すように、CPU42は、ステップS102で、視線検出部70の機能によって、運転席24の乗員の視線を検出する。具体的には、車室内カメラ60の撮像画像から運転席24の乗員の視線を検出する。例えば、運転席24の乗員の視線は、
図7における矢印LS1に示す。なお、この矢印は、説明の便宜のために記載しているものであり、実際の視線(方向)と一致するものではない。
【0052】
次に、CPU42は、ステップS104で、判定部74の機能により、運転席24の乗員の視線が所定領域VAに向いたか否かを判定する。ここで、所定領域VAとは、
図6及び
図7にハッチング領域で示すように、左折時又は左側車線への車線変更を望んでいる場合に、運転席24の乗員が先ず確認する(視線を向ける)と考えられる車両12の側部前方領域である。例えば、隣接する左側車線において車両12の車両前方側の領域である。
【0053】
なお、ここでは、左側車線への車線変更についての説明なので、右側に設定された所定領域を図示していないが、
図6及び
図7に示した所定領域VAと左右対称の位置に設けられている。
【0054】
なお、ステップS104で否定判定された場合には、CPU42は、ステップS114で、表示切換部76の機能により、第2表示部30の表示領域30Aに後方撮像画像を非表示とする。具体的には、第2表示部30の表示領域30Aに他画像が表示されている場合には、その状態を維持する。一方、第2表示部30の表示領域30Aに後方撮像画像が表示されていた場合には、後方撮像画像から他画像に切り換えて表示する。
【0055】
なお、これと同様の処理を以下、「後方撮像画像非表示処理」という。
【0056】
一方、ステップS104で肯定判定された場合には、CPU42は、ステップS106で、視線検出部70の機能によって、運転席24の乗員の視線を検出する。具体的には、車室内カメラ60の撮像画像から運転席24の乗員の視線を検出する。例えば、運転席24の乗員を視線は、
図8における矢印LS2に示す。なお、この矢印は、説明の便宜のために記載しているものであり、実際の視線(方向)と一致するものではない。
【0057】
次に、CPU42は、ステップS108で、判定部74の機能により、運転席24の乗員の視線が第2表示部30の表示領域30A内にあるか否かを判定する。
【0058】
ステップS108で肯定判定された場合には、CPU42は、ステップS110で、表示切換部76の機能により、第2表示部30の表示領域30Aに後方撮像画像を表示する。具体的には、第2表示部30の表示領域30Aに他画像が表示されている場合には、他画像に切り換えて後方撮像画像を第2表示部30の表示領域30Aに表示する。一方、第2表示部30の表示領域30Aに後方撮像画像が表示されていた場合には、その状態を維持する。
【0059】
なお、これと同様の処理を以下、「後方撮像画像表示処理」という。
【0060】
一方、ステップS108で否定判定された場合には、CPU42は、ステップS112で、判定部74の機能により、ステップS104で肯定判定されてから所定時間が経過したか否かを判定する。
【0061】
ステップS112で否定判定された場合には、ステップS106に戻る。
【0062】
一方、ステップS112で肯定判定された場合には、CPU42は、ステップS114で、表示切換部76の機能により、後方撮像画像非表示処理を行う。
【0063】
最後に、CPU42は、ステップS116で車両12のイグニッションがオフされたか否かを判定する。
【0064】
ステップS116で否定判定された場合には、ステップS102に戻る。
【0065】
一方、ステップS116で肯定判定された場合には、表示処理を終了する。
【0066】
(効果)
【0067】
このように、車両後方領域監視システム10では、運転席24の乗員が車両12の側部前方側の所定領域VAに視線LS1(
図7参照)を向けた後、所定時間内に第2表示部30の表示領域30Aに視線LS2(
図8参照)を向けたことを検出すると、第2表示部30の表示領域30Aに後方撮像画像を自動的に表示する。
【0068】
ここで、運転席24の乗員が後方撮像画像を必要とするような運転操作、例えば左側車線への車線変更を企図した場合には、運転席24の乗員は、先ず、車両12の左側前方側(隣接する左側車線の前方側)の所定領域VAを視認した後、車両12の左側後方側(隣接する左側車線の後方側)の所定領域VB(
図11参照)を視認すると考えられる。しかしながら、運転席24の乗員が後方撮像画像を視る(利用する)場合には、車両12の左側後方側(隣接する左側車線の後方側)の所定領域VB(
図11参照)の視認に換えて、第2表示部30の表示領域30Aに視線を向けると考えられるためである。
【0069】
したがって、運転席24の乗員が後方撮像画像を求めるタイミングで(運転員の意図に応じて)、運転席24の乗員がスイッチ操作等をすることなく、第2表示部30の表示領域30Aに後方撮像画像を自動的に表示することができる。
【0070】
また、第2表示部の表示領域30Aには、通常時には他画像、例えばカーナビゲーションのナビゲーション画像を表示することが可能である。すなわち、後方撮像画像を表示するための専用の表示部が不要となり、車両12の部品点数を削減することができる。
【0071】
さらに、運転席24の乗員が所定領域VAに視線を送った後、所定時間以内に第2表示部30の表示領域30Aに視線を向けなければ、他画像が後方撮像画像に切り換わらないため、運転席24の乗員が他の理由で所定領域VAに視線を向けた後、他画像、例えばナビゲーション画像を見るために第2表示部30の表示領域30Aに視線を向けたのに、第2表示部30の表示領域30Aにおいてナビゲーション画像が後方撮像画像に切り換わるということが防止される。
【0072】
すなわち、車両後方領域監視システム10は、運転席24の乗員の要望に精度良く応えて、第2表示部30の表示領域30Aに表示する画像を自動で切り換えることが可能である。
【0073】
[第2実施形態]
【0074】
次に、第2実施形態に係る車両後方領域監視システムについて、図を参照して説明する。第1実施形態と同様の構成要素については、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。第1実施形態と異なる部分は、判定部の機能のみなので、該当部分(判定部の機能及び制御)の説明のみを行う。
【0075】
(構成)
【0076】
車両後方領域監視システム100は、機能構成として、
図4に示すように、視線検出部70、後方撮像画像生成部72、判定部74A及び表示切換部76を含んで構成されている。なお、各機能構成は、CPU42がROM44又はストレージ48に記憶されたプログラムを読み出し、実施することにより実現される。
【0077】
判定部74Aでは、視線検出部70で検出された運転席24の乗員の視線が車両側部前方側の第1領域VAに向いた後、第2表示部30の表示領域30Aに向くまでの間に、サイドミラー36L、36R又はルームミラー34や車両側部後方側の第2領域VB(
図11参照)を経由した否かを含めて判定する機能を有する。
【0078】
(作用)
【0079】
車両後方領域監視システム100が行う表示制御について、
図9及び
図10に示すフローチャートを参照して説明する。なお、車両後方領域監視システム10の表示制御と同様の制御を行うステップについては同一のステップ番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0080】
CPU42は、
図9のステップS102~ステップS108(以下、「
図9」を省略する。)において、視線検出部70及び判定部74Aの機能により、運転席24の乗員の視線が車両12の側部前方の所定領域である第1領域VAに向いた後、所定時間以内に第2表示部30の表示領域30Aに向いたか否かを判定する。
【0081】
ステップS108で肯定判定された場合には、CPU42は、ステップS110で、表示切換部76の機能により、後方撮像画像表示処理を行う。例えば、第2表示部30の表示領域30Aに他画像であるカーナビゲーションの画像が表示されていた場合には、カーナビゲーションの画像から後方撮像画像に第2表示部30の表示領域30Aの表示を切り換える。
【0082】
これは、第1実施形態と同様に、運転席24の乗員が車線変更時又は右左折時に、先ず車両12の側部前方を視認した後、車両12の側部後方を確認するために後方撮像画像を視ようとしている考えられるためである。
【0083】
一方、ステップS108で否定判定された場合には、CPU42は、ステップS202で、判定部74Aの機能により、ステップS104で肯定判定されてから所定時間内に、運転席24の乗員の視線がサイドミラー36L、36R、又はルームミラー34に向いているか否かを判定する。
【0084】
ステップS202で肯定判定された場合には、CPU42は、ステップS204で、視線検出部70の機能により、運転席24の乗員の視線を検出する。
【0085】
続いて、CPU42は、ステップS206で、判定部74Aの機能により、ステップS202で肯定判定されてから所定時間以内に運転席24の乗員の視線が第2表示部30の表示領域30Aに向いたか否かを判定する。
【0086】
ステップS206で肯定判定された場合には、CPU42は、ステップS110で、表示切換部76の機能により、後方撮像画像表示処理を行う。例えば、第2表示部30の表示領域30Aにカーナビゲーションの画像が表示されていた場合には、カーナビゲーションの画像から後方撮像画像に表示を切り換える。
【0087】
これは、運転席24の乗員が視線を車両12の側部前方側の第1領域VAに向けた後、サイドミラーA36L、36R又はルームミラー34で車両後方側を確認した後、車両12の側部後方側の死角部分を後方撮像画像で確認する意図で、第2表示部30の表示領域30Aに視線を向けたと考えられるためである。
【0088】
ステップS202又はステップS206で否定判定された場合には、CPU42は、
図10のステップS208(以下、「
図10」を省略する。)で、判定部74Aの機能によりステップS104又はステップS202で肯定判定されたタイミングから所定時間以内に、
図11に示すように、運転席24の乗員の視線LS3が車両側部後方側の所定領域である第2領域VBに向いているか否かを判定する。
【0089】
ステップS208で否定判定された場合には、CPU42は、ステップS114で、表示切換部76の機能により、後方撮像画像非表示処理を行う。
【0090】
これは、運転席24の乗員は、車両前方側の第1領域VAに視線LS1を向けた(
図7参照)ものの、その後、所定時間以内に、第2表示部30の表示領域30A、ルームミラー34又はサイドミラー36L、36R、車両側部後方側の第2領域VBのいずれにも視線を向けておらず、運転席24の乗員が右左折、車線変更等、後方撮像画像を必要とする運転操作を企図していないと判断されるため、第2表示部30の表示領域30Aに後方撮像画像を表示しない処理を行うものである。
【0091】
ステップS208で肯定判定された場合には、CPU42は、ステップS210で、視線検出部70の機能により、運転席24の乗員の視線を検出する。
【0092】
続いて、CPU42は、ステップS212で、判定部74Aの機能により、ステップS208で肯定されてから所定時間以内に運転席24の乗員の視線が第2表示部30の表示領域30Aに向いたか否かを判定する。
【0093】
ステップS212で肯定判定された場合には、CPU42は、ステップS110で、表示切換部76の機能により、後方撮像画像表示処理を行う。
【0094】
ステップS208で否定判定された場合には、CPU42は、ステップS114で、表示切換部76の機能により、後方撮像画像非表示処理を行う。
【0095】
(効果)
【0096】
このように、車両後方領域監視システム100は、上記のように表示処理を行うことにより、以下のような作用効果を奏する。なお、第1実施形態の車両後方領域監視システム10と同様の作用効果については、記載を省略する。
【0097】
すなわち、運転席24の乗員が後方撮像画像を視る必要を生ずる運転処理(例えば、右左折、車線変更)を行う際、運転席24の乗員は車両12の側部前方側を視た後、直ちに第2表示部30の表示領域30Aを視る場合もあるが、車両12の側部後方を視認するためにサイドミラー36L、36Rやルームミラー34を視たり、側部後方を振り返って視認した後、死角を確認するために第2表示部30の表示領域30Aを視ることが考えられる。
【0098】
このような場合であっても、第2表示部30の表示領域30Aに運転席24の乗員の意図に応じて後方撮像画像を自動的に表示させることができる。
【0099】
[バリエーション]
【0100】
バリエーションに係る車両後方領域監視システム200について図を参照して説明する。第1実施形態に係る車両後方領域監視システム10と同様の構成要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。なお、車両後方領域監視システム10と異なる部分のみについて説明する。
【0101】
(構成)
【0102】
車両後方領域監視システム200は、
図12に示すように、ECU40にカーナビゲーション装置202が接続されている。
【0103】
また、車両後方領域監視システム200は、
図13に示すように、機能構成において、ナビゲーション検出部204と、ナビゲーション情報取得部206と、判定部208と、を有する。
【0104】
ナビゲーション検出部204は、カーナビゲーション装置202が駆動されているか否かを判定する機能を有する。
【0105】
ナビゲーション情報取得部206は、カーナビゲーション装置202から供給されるナビゲーション情報を取得する機能を有する。例えば、目的地までの車両12の運行計画に基づいて、車両12が現在位置から何m先を右折する等、右左折情報や車線変更情報等を取得する。
【0106】
判定部208は、ナビゲーション情報に基づいて車両12が現在位置から所定距離以内に車線変更や右左折地点があるか否かを判定する機能を有する。
【0107】
表示切換部76は、カーナビゲーション装置202の駆動時に他画像であるナビゲーション画像を通常表示し、判定部208で必要と判断した場合のみ後方撮像画像に表示を切り換える機能を有する。
【0108】
(作用)
【0109】
車両後方領域監視システム200の表示制御について、
図14に示すフローチャートを参照して説明する。第1実施形態と同様のステップには、第1実施形態と同一のステップ番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0110】
CPU42は、
図14のステップS302(以下、「
図14」を省略する。)において、ナビゲーション検出部204の機能により、カーナビゲーション装置202が駆動中であるか否かを判定する。
【0111】
ステップS302で否定判定された場合には、CPU42は、ステップS114で、表示切換部76の機能により、後方撮像画像非表示処理を行う。すなわち、第2表示部30の表示領域30Aにナビゲーション画像を表示し続ける。
【0112】
一方、ステップS302で肯定判定された場合には、CPU42は、ステップS304で、判定部208の機能により、ナビゲーション情報に基づいて車両12の現在位置から所定距離以内で車両12の車線変更が有るか否かを判定する。
【0113】
ステップS304で肯定判定された場合には、CPU42は、ステップS110で、表示切換部76の機能により、後方撮像画像表示処理を行う。具体的には、第2表示部30の表示領域30Aに、ナビゲーション画像から切り換えて後方撮像画像を表示する。
【0114】
すなわち、車両12が現在位置から所定距離以内で車線変更を行う場合には、運転席24の乗員が後方撮像画像を視ることを望むと判断して、第2表示部30の表示領域30Aに後方撮像画像を表示するものである。
【0115】
一方、ステップS304で否定判定された場合には、CPU42は、ステップS306で、判定部208の機能により、ナビゲーション情報に基づいて車両12の現在位置から所定距離以内に車両12の右左折地点が有るか否かを判定する。
【0116】
ステップS306で肯定判定された場合には、CPU42は、ステップS110で、表示切換部76の機能により、後方撮像画像表示処理を行う。すなわち、第2表示部30の表示領域30Aに、ナビゲーション画像から切り換えて後方撮像画像を表示する。
【0117】
すなわち、車両12が現在位置から所定距離以内で右左折を行う場合には、運転席24の乗員が後方撮像画像を視ることを望むと判断して、第2表示部30の表示領域30Aにナビゲーション画像から切り換えて後方撮像画像を表示するものである。
【0118】
一方、ステップS306で否定判定された場合には、CPU42は、ステップS114で、表示切換部76の機能により、後方撮像画像非表示処理を行う。例えば、第2表示部30の表示領域30Aにナビゲーション画像を表示し続ける。
【0119】
(効果)
【0120】
車両後方領域監視システム200では、運転席24の乗員の視線でなく、カーナビゲーション装置202のナビゲーション情報に基づいて、第2表示部30の表示領域30Aに後方撮像画像を表示させるか否かを判定し、必要性のある場合には第2表示部30の表示領域30Aに後方撮像画像を自動で表示する構成とされている。
【0121】
したがって、車両12にカーナビゲーション装置202を搭載していれば、換言すれば、車両12がナビゲーション機能を有していれば、運転席24の乗員の視線検知等することなく、通常ナビゲーション画像を表示している第2表示部30の表示領域30Aに適切なタイミングで後方撮像画像を自動的に表示することができる。
【0122】
(その他)
【0123】
以上、実施形態及びバリエーションに係る車両後方領域監視システム及について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、第2表示部30をインストルメントパネル14における車幅方向中央に設けたが、これに限定されるものではない。
【0124】
また、実施形態やバリエーションでは、第2表示部30の表示領域30Aに表示する他画像の一例としてナビゲーション画像を示したが、これに限定されるものではない。第2表示部30の表示領域30Aにおいて、車両12の使用中に表示される後方撮像画像以外の画像であれば、特に限定されるものではない。
【0125】
さらに、実施形態やバリエーションでは、左側後方カメラ62、右側後方カメラ64、中央後方カメラ66の各カメラで撮影した撮像画像を合成して後方撮像画像を形成していたが、いずれかのカメラで単独で撮影した撮像画像を後方撮像画像として第2表示部30の表示領域30Aに表示しても良い。例えば、運転席24の乗員の視線が車両左側の所定領域に向いた場合には、左側後方カメラ62の撮像画像を後方撮像画像として第2表示部30の表示領域30Aに表示し、車両右側の所定領域に向いた場合には、右側後方カメラ64の撮像画像を後方撮像画像として第2表示部30の表示領域30Aに表示することが考えられる。この場合には、後方撮像画像の視認性が向上するというメリットが考えられる。
【0126】
また、上記実施形態でCPU42がソフトウェア(プログラム)を読み込んで実施した表示処理を、CPU42以外の各種のプロセッサが実施してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実施させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、表示処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実施してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実施してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0127】
さらに、上記実施形態では、ストレージ48に種々のデータを記憶させる構成としたが、これに限定されない。例えば、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体を記憶部としてもよい。この場合、これらの記録媒体に各種プログラム及びデータなどが格納されることとなる。
【符号の説明】
【0128】
10 車両後方領域監視システム
12 車両
30 第2表示部(表示部)
30A 表示領域
62 左側後方カメラ(車両後方側撮像部)
64 右側後方カメラ(車両後方側撮像部)
66 中央後方カメラ(車両後方側撮像部)
70 視線検出部
74 判定部(表示制御部)
76 表示切換部(表示制御部)