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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20250107BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
B60H1/00 101Q
B60H1/00 101E
B60H1/00 101F
B60H1/22 611A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021183543
(22)【出願日】2021-11-10
(65)【公開番号】P2023070999
(43)【公開日】2023-05-22
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 剛生
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-099867(JP,A)
【文献】特開2020-128124(JP,A)
【文献】特開2016-096030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
B60H 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
車両が所定時間以上停車しており、かつ前記車両のユーザの体温が所定温度以下である状態を示す緊急状態であるか否かを判定し、
前記緊急状態であると判定した場合、前記車両の内部を温める暖房装置を、間欠運転を含んで運転するように制御
前記暖房装置は、シートヒータと、前記シートヒータよりも消費電力の大きいヒートポンプと、前記ヒートポンプよりも消費電力の大きい電気ヒータと、を含み、
前記プロセッサは、前記緊急状態であると判定した場合において、
前記ユーザの体温が第一の温度範囲である場合、前記シートヒータを間欠運転させ、前記ヒートポンプおよび前記電気ヒータをOFFとし、
前記ユーザの体温が前記第一の温度範囲よりも低温である第二の温度範囲である場合、前記シートヒータを連続運転させ、前記ヒートポンプおよび前記電気ヒータをOFFとし、
前記ユーザの体温が前記第二の温度範囲よりも低温である第三の温度範囲である場合、前記ヒートポンプを間欠運転させ、前記シートヒータおよび前記電気ヒータをOFFとし、
前記ユーザの体温が前記第三の温度範囲よりも低温である第四の温度範囲である場合、前記シートヒータを間欠運転させ、前記ヒートポンプを連続運転させ、前記電気ヒータをOFFとし、
前記ユーザの体温が前記第四の温度範囲よりも低温である第五の温度範囲である場合、前記シートヒータおよび前記ヒートポンプを連続運転させ、前記電気ヒータはOFFとし、
前記ユーザの体温が前記第五の温度範囲よりも低温である第六の温度範囲である場合、前記シートヒータおよび前記ヒートポンプをOFFとし、前記電気ヒータを間欠運転させ、
前記ユーザの体温が前記第六の温度範囲よりも低温である第七の温度範囲である場合、前記シートヒータおよび前記ヒートポンプをOFFとし、前記電気ヒータを連続運転させる、
車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の乗員の状態、具体的には乗員の体温が高いときは空調出力を下げる(主空調に対するシートヒータの出力比率を大きくする)制御を行うとともに、乗員数が少ないほど空調出力を下げる制御を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-083204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば冬季の車両の立ち往生等の緊急状態の際に、暖房装置の暖房性能を確保しながら、当該暖房装置を長時間運転させることができる技術が求められていた。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、緊急状態の際に、暖房装置の暖房性能を確保しながら、当該暖房装置を長時間運転させることができる車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る車両用空調装置は、プロセッサを備え、前記プロセッサが、車両が所定時間以上停車しており、かつ前記車両のユーザの体温が所定温度以下である状態を示す緊急状態であるか否かを判定し、前記緊急状態であると判定した場合、前記車両の内部を温める暖房装置を、間欠運転を含んで運転するように制御する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、緊急状態の際に、暖房装置の暖房性能を確保しながら、当該暖房装置を長時間運転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る車両用空調装置を含む車両用空調システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、実施形態に係る車両用空調装置が実行する暖房制御方法の第一の実施例の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、実施形態に係る車両用空調装置が実行する暖房制御方法の第一の実施例において、暖房制御の際に用いる切替マップの一例を示す図である。
図4図4は、図3において、Aで示した間欠運転の詳細を示す図である。
図5図5は、実施形態に係る車両用空調装置が実行する暖房制御方法の第二の実施例の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、実施形態に係る車両用空調装置が実行する暖房制御方法の第二の実施例において、暖房制御の際に用いる切替マップの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態に係る車両用空調装置について、図面を参照しながら説明する。なお、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
(車両用空調システム)
実施形態に係る車両用空調装置を含む車両用空調システムについて、図1を参照しながら説明する。車両用空調システムは、図1に示すように、車両用空調装置1と、道路情報サーバ2と、災害情報サーバ3と、を有している。車両用空調装置1、道路情報サーバ2および災害情報サーバ3は、それぞれ通信機能を備えており、ネットワークNを通じて相互に通信可能に構成されている。このネットワークNは、例えばインターネット回線網、携帯電話回線網等から構成される。
【0011】
(車両用空調装置)
車両用空調装置1は、車両の暖房制御を行うためのものである。車両用空調装置1は、例えば車両等の移動体に搭載される。この車両としては、例えばエンジン車、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プライグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)、電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。また、車両用空調装置1が搭載される車両は、手動運転車両であってもよく、あるいは自動運転車両であってもよい。
【0012】
なお、車両用空調装置1は、車両等の移動体に搭載される以外に、一部の機能(例えば制御部10等の機能)を、車両と通信可能なサーバ装置等に搭載させて運用されてもよい。この場合、例えば車両用空調装置1は、車両に設けられたセンサ群50や緊急状態SW(緊急状態スイッチ)60等からネットワークNを経由して取得した情報に基づいて、車両の暖房制御を行うことができる。このように、車両用空調装置1の一部の機能をサーバ装置等に搭載させることにより、車両側の演算負荷を軽減することができる。
【0013】
車両用空調装置1は、図1に示すように、制御部10と、通信部20と、記憶部30と、暖房装置40と、センサ群50と、緊急状態SW60と、を備えている。
【0014】
制御部10は、具体的には、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等からなるプロセッサと、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等からなるメモリ(主記憶部)と、を備えている。
【0015】
制御部10は、各種プログラムを実行することにより、車両用空調装置1に搭載される各種構成要素の動作を統括的に制御する。制御部10は、具体的には、センサ群50や緊急状態SW(スイッチ)60等から取得した情報に基づいて、暖房装置40の暖房制御を実施する。
【0016】
制御部10が実施する暖房装置40の暖房制御には、具体的には、車両のユーザ(例えば運転者を含む車両の乗員)の要求に応じて(例えばユーザによる暖房スイッチの操作により)実施されるものと、車内外の状況に応じて制御部10が自動的に実施するものとの二種類がある。本実施形態では、主に後者の、車内外の状況に応じて制御部10が自動的に実施する暖房制御について説明する。この暖房制御には、以下のような二つの態様が含まれる。
【0017】
例えば制御部10は、車両が所定時間以上停車しており、かつ外気温が所定温度以下である状態を示す緊急状態であるか否かを判定する。そして、制御部10は、緊急状態であると判定した場合、車両の内部を温める暖房装置40を、間欠運転を含んで運転する暖房制御を実施する。なお、「車両が所定時間以上停車している」とは、例えば冬季に積雪による通行止め等で車両が立ち往生しているようなシチュエーションを想定している。また、緊急状態であるか否かは、ユーザが緊急状態SW60を押下したか否かに応じて判定してもよい。
【0018】
また、制御部10は、例えば車両が所定時間以上停車しており、かつ車両のユーザの体温が所定温度以下である状態を示す緊急状態であるか否かを判定する。そして、制御部10は、緊急状態であると判定した場合、車両の内部を温める暖房装置40を、間欠運転を含んで運転する暖房制御を実施する。なお、緊急状態であるか否かは、ユーザが緊急状態SW60を押下したか否かに応じて判定してもよい。
【0019】
通信部20は、例えばDCM(Data Communication Module)等から構成され、ネットワークNWを介した無線通信により、道路情報サーバ2および災害情報サーバ3との間で通信を行う。
【0020】
記憶部30は、EPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)およびリムーバブルメディア等の記録媒体から構成される。リムーバブルメディアとしては、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリ、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)のようなディスク記録媒体が挙げられる。記憶部30には、オペレーティングシステム(Operating System:OS)、各種プログラム、各種テーブル、各種データベース等が格納可能である。
【0021】
記憶部30には、例えば暖房装置40の暖房制御の際に用いる切替マップ(図3図6参照)、センサ群50によって検出された各種センサデータ、道路情報サーバ2から取得した道路情報、災害情報サーバ3から取得した災害情報等が、必要に応じて格納される。
【0022】
暖房装置40は、車両に搭載され、当該車両の内部を温めるための空調機器である。暖房装置40としては、例えばシートヒータ、ヒートポンプ、電気ヒータ等が含まれる。制御部10は、暖房装置40の暖房制御の際に、予め用意した切替マップ(図3図6参照)に基づいて、シートヒータ、ヒートポンプおよび電気ヒータの連続運転、間欠運転、シートヒータ、ヒートポンプおよび電気ヒータ間の運転切替等を実施する。なお、制御部10が実施する暖房制御の詳細については、後ほど説明する(図2図6参照)。
【0023】
センサ群50は、車両の内外の各種データを検出するためのものである。このセンサ群50としては、例えば車両の外の外気温を検出する外気温センサ、車両の内部の温度を検出する車内温度センサ、車両のユーザ(乗員)の数を検出する乗員検知センサ(または重量センサ)、車両のユーザの身体の表面温度(体温)を検出するサーマルカメラ、車内を撮影するカメラ等が含まれる。なお、サーマルカメラは、車両に設けられたドライブレコーダ等のカメラや、ユーザが所有するスマートフォンのカメラにより構成されていてもよい。センサ群50は、検出したこれらのセンサデータを、必要に応じて制御部10および記憶部30に送信する。
【0024】
緊急状態SW60は、車両のユーザが緊急状態であることを車両用空調装置1側に知らせるためのスイッチである。緊急状態SW60の実現方法は特に限定されず、例えば車両の運転席付近に設けられた物理的なスイッチ(ボタン)により緊急状態SW60を実現してもよく、あるいは車両に設けられたカーナビゲーションシステムの画面にスイッチを表示させることにより緊急状態SW60を実現してもよい。ユーザによって緊急状態SW60が押下された場合、緊急状態SW情報が制御部10に入力される。
【0025】
(道路情報サーバ)
道路情報サーバ2は、例えばサーバ装置等により構成され、道路の渋滞情報を収集して保有している。そして、道路情報サーバ2は、車両用空調装置1からの求めに応じて、車両が走行する道路の道路情報を、当該車両用空調装置1に対して送信する。
【0026】
(災害情報サーバ)
災害情報サーバ3は、例えばサーバ装置等により構成され、各種災害情報を収集して保有している。そして、災害情報サーバ3は、車両用空調装置1からの求めに応じて、車両が走行する道路の付近の災害情報を、当該車両用空調装置1に対して送信する。
【0027】
(暖房制御方法:第一の実施例)
車両用空調装置1が実行する暖房制御方法の第一の実施例の処理手順の一例について、図2図4を参照しながら説明する。なお、本実施例では、図2のステップS1の処理は必須ではなく、ステップS2以降の処理のみを実施してもよい。また、例えば車両において、既にユーザの要求に応じて(例えばユーザによる暖房スイッチの操作により)暖房制御が実施されている場合においても、以下で説明する暖房制御を優先して実施する。
【0028】
まず、制御部10は、図2に示すように、道路情報および災害情報を、道路情報サーバ2および災害情報サーバ3からそれぞれ取得する(ステップS1)。続いて、制御部10は、センサ群50の外気温センサの検出値に基づいて、外気温を取得する(ステップS2)。
【0029】
続いて、制御部10は、車両が所定時間以上停車中であるか否かを判定する(ステップS3)。車両が所定時間以上停車中であると判定した場合(ステップS3でYes)、制御部10は、外気温が予め設定されたT℃以下であるか否かを判定する(ステップS4)。
【0030】
外気温がT℃以下であると判定した場合(ステップS4でYes)、制御部10は、センサ群50の車内温度センサの検出値に基づいて、車内温度を取得する(ステップS6)。続いて、制御部10は、センサ群50の乗員検知センサの検出値に基づいて、車両の乗員数を取得する(ステップS7)。続いて、制御部10は、暖房装置40の暖房制御を実施し(ステップS8)、本処理を完了する。
【0031】
ここで、ステップS3において車両が所定時間以上停車中ではない判定した場合(ステップS3でNo)、あるいはステップS4において外気温がT℃以下ではないと判定した場合(ステップS4でNo)、制御部10は、ユーザの緊急状態SW情報を取得したか否かを判定する(ステップS5)。このステップS5の判定は、ユーザによる緊急状態SW60の押下の有無に基づいて判定することができる。
【0032】
ステップS5において、ユーザの緊急状態SW情報を取得したと判定した場合(ステップS5でYes)、制御部10は、ステップS6以降の処理を実施する。一方、ステップS5において、ユーザの緊急状態SW情報を取得していないと判定した場合(ステップS5でNo)、制御部10は、本処理を完了する。
【0033】
ここで、図2のステップS8では、例えば図3に示すような切替マップに基づいて暖房制御を実施する。例えば車内温度がT1(以下)~T2(超え)の区間では、シートヒータを間欠運転させ、ヒートポンプおよび電気ヒータはOFFとする。また、車内温度がT2(以下)~T3(超え)の区間では、シートヒータを連続運転させ、ヒートポンプおよび電気ヒータはOFFとする。また、車内温度がT3(以下)~T4(超え)の区間では、ヒートポンプを間欠運転させ、シートヒータおよび電気ヒータはOFFとする。
【0034】
また、車内温度がT4(以下)~T5(超え)の区間では、シートヒータを間欠運転させ、ヒートポンプを連続運転させ、電気ヒータはOFFとする。また、車内温度がT5(以下)~T6(超え)の区間では、シートヒータおよびヒートポンプを連続運転させ、電気ヒータはOFFとする。また、車内温度がT6(以下)~T7(超え)の区間では、シートヒータおよびヒートポンプをOFFとし、電気ヒータを間欠運転させる。また、車内温度がT7(以下)~では、シートヒータおよびヒートポンプをOFFとし、電気ヒータを連続運転させる。
【0035】
また、図3のA(T1~T2の区間)で示した間欠運転では、例えば図4に示すように、区間t1ではシートヒータをON、区間t2ではシートヒータをOFF、という制御を繰り返す。また、このような制御を、図3のT3以降の間欠運転においても同様に実施する。
【0036】
このように、実施形態に係る暖房制御方法の第一の実施例では、車両が所定時間以上停車しており、かつ外気温が所定以下である場合に、外気温に応じて、暖房装置40(シートヒータ、ヒートポンプ、電気ヒータ)のONOFFを切り替えながら、間欠運転を含む暖房制御を実施する。
【0037】
ここで、暖房装置40としての消費電力は、「シートヒータ<ヒートポンプ<電気ヒータ」の順に大きくなる。車内温度が極低温でなければ、例えば図3の「T1~T3」に示すように、シートヒータによって局所的に暖めることにより、暖房能力を十分に確保でき、ましてや乗員数が少ない場合は車内全体を暖める必要もない。一方、車内温度が極低温となった場合、例えば同図の「T3~」に示すように、身体全体を暖めるヒートポンプや電気ヒータ等を用いることが望ましい。また、例えば車内温度が-10℃~-15℃以下となった場合は、ヒートポンプは暖房としての性能が無いため、例えば同図の「T6~」に示すように、消費電力の大きい電気ヒータに頼らざるを得ない。
【0038】
従って、実施形態に係る暖房制御方法の第一の実施例では、外気温、車内温度、乗員数、ユーザ要求(緊急状態SW情報)等に基づいて、暖房性能を確保しながら、暖房装置40を極力長時間運転できるようにする。これにより、例えば冬季に積雪による通行止め等で車両が立ち往生したような場合に、救援、復旧までの時間をかせぐことが可能となる。
【0039】
(暖房制御方法:第二の実施例)
車両用空調装置1が実行する暖房制御方法の第二の実施例の処理手順の一例について、図5および図6を参照しながら説明する。なお、本実施例では、図5のステップS11の処理は必須ではなく、ステップS12以降の処理のみを実施してもよい。また、例えば車両において、既にユーザの要求に応じて(例えばユーザによる暖房スイッチの操作により)暖房制御が実施されている場合においても、以下で説明する暖房制御を優先して実施する。
【0040】
まず、制御部10は、図5に示すように、道路情報および災害情報を、道路情報サーバ2および災害情報サーバ3からそれぞれ取得する(ステップS11)。続いて、制御部10は、センサ群50の外気温センサの検出値に基づいて、外気温を取得する(ステップS12)。続いて、制御部10は、センサ群50のサーマルカメラによって撮影したサーモグラフィ映像から、ユーザの身体の表面温度を算出する(ステップS13)。このステップS13では、公知の画像解析技術等を用いて、サーモグラフィ映像から、ユーザの身体の表面温度を算出することができる。
【0041】
続いて、制御部10は、車両が所定時間以上停車中であるか否かを判定する(ステップS14)。車両が所定時間以上停車中であると判定した場合(ステップS14でYes)、制御部10は、ユーザの身体の表面温度が、予め設定されたT’℃以下であるか否かを判定する(ステップS15)。
【0042】
ユーザの身体の表面温度がT’℃以下であると判定した場合(ステップS15でYes)、制御部10は、暖房装置40の暖房制御を実施し(ステップS16)、本処理を完了する。
【0043】
ここで、ステップS14において車両が所定時間以上停車中ではない判定した場合(ステップS14でNo)、あるいはステップS15においてユーザの身体の表面温度がT’℃以下ではないと判定した場合(ステップS15でNo)、制御部10は、ユーザの緊急状態SW情報を取得したか否かを判定する(ステップS17)。このステップS17の判定は、ユーザによる緊急状態SW60の押下の有無に基づいて判定することができる。
【0044】
ステップS17において、ユーザの緊急状態SW情報を取得したと判定した場合(ステップS17でYes)、制御部10は、ステップS16以降の処理を実施する。一方、ステップS17において、ユーザの緊急状態SW情報を取得していないと判定した場合(ステップS17でNo)、制御部10は、本処理を完了する。
【0045】
ここで、図5のステップS16では、例えば図6に示すような切替マップに基づいて暖房制御を実施する。例えばユーザの身体の表面温度がT’1(以下)~T’2(超え)の区間では、シートヒータを間欠運転させ、ヒートポンプおよび電気ヒータはOFFとする。また、ユーザの身体の表面温度がT’2(以下)~T’3(超え)の区間では、シートヒータを連続運転させ、ヒートポンプおよび電気ヒータはOFFとする。また、ユーザの身体の表面温度がT’3(以下)~T’4(超え)の区間では、ヒートポンプを間欠運転させ、シートヒータおよび電気ヒータはOFFとする。
【0046】
また、ユーザの身体の表面温度がT’4(以下)~T’5(超え)の区間では、シートヒータを間欠運転させ、ヒートポンプを連続運転させ、電気ヒータはOFFとする。また、ユーザの身体の表面温度がT’5(以下)~T’6(超え)の区間では、シートヒータおよびヒートポンプを連続運転させ、電気ヒータはOFFとする。また、ユーザの身体の表面温度がT’6(以下)~T’7(超え)の区間では、シートヒータおよびヒートポンプをOFFとし、電気ヒータを間欠運転させる。また、ユーザの身体の表面温度がT’7(以下)~では、シートヒータおよびヒートポンプをOFFとし、電気ヒータを連続運転させる。
【0047】
このように、実施形態に係る暖房制御方法の第二の実施例では、車両が所定時間以上停車しており、かつユーザの身体の表面温度が所定以下である場合に、ユーザの身体の表面温度に応じて、暖房装置40(シートヒータ、ヒートポンプ、電気ヒータ)のONOFFを切り替えながら、間欠運転を含む暖房制御を実施する。
【0048】
すなわち、実施形態に係る暖房制御方法の第二の実施例では、外気温、ユーザの身体の表面温度、ユーザ要求(緊急状態SW情報)等に基づいて、暖房性能を確保しながら、暖房装置40を極力長時間運転できるようにする。これにより、例えば冬季に積雪による通行止め等で車両が立ち往生したような場合に、救援、復旧までの時間をかせぐことが可能となる。
【0049】
ここで、従来提案されてきた技術では、例えば冬季における車両の立ち往生等の、緊急状態のことまでは想定されておらず、暖房装置の使用により、車両のバッテリ残容量が早期になくなってしまう可能性があった。一方、実施形態に係る車両用空調装置によれば、緊急状態の際に、間欠運転を含む暖房制御を行うことにより、暖房装置40の暖房性能を確保しながら、当該暖房装置40を長時間運転させることができる。
【0050】
また、実施形態に係る車両用空調装置によれば、冬季に積雪による通行止め等で車両が立ち往生し、ユーザが車内に閉じ込められたような緊急状態において、通行が復旧または救援が来るまでの間、ユーザが暖房を使い続けることができるように、暖房制御を行うことができる。
【0051】
更なる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、以上のように表わし、かつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。従って、添付のクレームおよびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【0052】
例えば、センサ群50のサーマルカメラにより、ユーザの日々の体温から健康状態を診断し、それに応じた暖房制御を実施してもよい。この場合、例えばサーマルカメラによって、ユーザの日々の体温を計測して平熱を求めておき、道路情報と、ユーザの体温が平熱未満であるか否かを判定することにより、緊急状態を判定することができる。また、その際に、ユーザの体温の平熱からの下がり代に応じて、図6に示すような暖房制御を実施してもよい。
【0053】
また、暖房制御では、センサ群50のサーマルカメラで取得したサーモグラフィ映像を分析し、ユーザの身体の冷えているところを重点的に温めるように、暖房装置40を制御してもよい。この場合、例えば車両のシートに当たっている部分の体温が低ければシートヒータをONとする、ユーザの顔が冷えていれば顔に向けて電気ヒータ等をONとする、ユーザの足元が冷えていれば足元に向けて電気ヒータ等をONとする、等の制御を行うことができる。
【0054】
また、緻密な暖房制御により、残り何時間暖房を継続できるのかを推定し、ユーザに通知してもよい。また、車内に設けられたカメラにより、ユーザが寝ているか否かを判定し、寝ている場合は身体が冷えやすいので、起きているときに比べて判定や制御に使う温度の閾値を高めに設定してもよい。また、車内に設けられたカメラにより、ユーザの服装を検出し、例えば薄着の人と厚着の人とで判定や制御に使う温度の閾値を変えてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 車両用空調装置
10 制御部
20 通信部
30 記憶部
40 暖房装置
50 センサ群
60 緊急状態SW
N ネットワーク
2 道路情報サーバ
3 災害情報サーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6