(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】車載システム
(51)【国際特許分類】
B60T 8/96 20060101AFI20250107BHJP
B60T 17/18 20060101ALI20250107BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
B60T8/96
B60T17/18
B60R16/02 660L
(21)【出願番号】P 2021184836
(22)【出願日】2021-11-12
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 周
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-090246(JP,A)
【文献】特開2021-014173(JP,A)
【文献】特開2020-104529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/96
B60T 17/18
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載システムであって、
バッテリー電源に接続され、かつ、リレーを介してブレーキシステムに接続され、リモート駐車制御を実行しているときに前記リレーを導通させて前記ブレーキシステムにバックアップ電力を供給する第1のバックアップ電源システムと、
前記バッテリー電源に接続され、かつ、前記ブレーキシステムに接続され、前記リモート駐車制御を実行していないときに前記ブレーキシステムにバックアップ電力を供給する第2のバックアップ電源システムと、
前記第1のバックアップ電源システムの前記リレーと前記ブレーキシステムとのあいだに挿入され、前記リレーを介して供給される電力を用いて電源システムの故障診断を実施する故障診断システムと、を備え、
前記第1のバックアップ電源システムは、前記車両のイグニッションがオンされた場合、前記リモート駐車制御を実行しているか否かにかかわらず、所定の時間は前記リレーを導通させる、
車載システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載される車載システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、リモート駐車制御を実行中にメイン電源システムが失陥しても、補助電源システムによって車両を速やかに制動して停止させることができる電動ブレーキ装置の制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の制御装置において、電源システムの故障を診断する故障診断システムに補助電源システムからリレーを介して電力供給を行う場合、車両がリモート駐車制御を実行していないときにはリレーが遮断(オフ)されるため、補助電源システムから故障診断システムに電力供給がされず、電源システムの故障診断が実施できないおそれがあった。
【0005】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、車両がリモート駐車制御を実行していないときでも電源システムの故障診断を実施することができる、車載システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示技術の一態様は、車両に搭載される車載システムであって、バッテリー電源に接続され、かつ、リレーを介してブレーキシステムに接続され、リモート駐車制御を実行しているときにリレーを導通させてブレーキシステムにバックアップ電力を供給する第1のバックアップ電源システムと、バッテリー電源に接続され、かつ、ブレーキシステムに接続され、リモート駐車制御を実行していないときにブレーキシステムにバックアップ電力を供給する第2のバックアップ電源システムと、第1のバックアップ電源システムのリレーとブレーキシステムとのあいだに挿入され、リレーを介して供給される電力を用いて電源システムの故障診断を実施する故障診断システムと、を備え、第1のバックアップ電源システムは、車両のイグニッションがオンされた場合、リモート駐車制御を実行しているか否かにかかわらず、所定の時間はリレーを導通させる、車載システムである。
【発明の効果】
【0007】
上記本開示の車載システムによれば、車両がリモート駐車制御を実行していないときでも、電源システムの故障診断を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係る車載システムとその周辺部の機能ブロック図
【
図2】第1のバックアップ電源システムの制御部によって制御されるリレー指示のタイミング例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の車載システムは、車両のイグニッションスイッチがオンされると毎回必ず所定の時間は故障診断システムに電力を供給させる。これにより、車両がリモート駐車制御を実行していなくても、電力が供給されている所定の時間のあいだで故障診断システムを用いた故障診断を実施することが可能となる。
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
<実施形態>
[構成]
図1は、本開示の一実施形態に係る車載システム100とその周辺部の機能ブロック図である。
図1に例示した機能ブロックは、第1のバックアップ電源システム110と、第2のバックアップ電源システム120と、故障診断システム130と、ブレーキシステム140と、制御システム(SBW)150と、制御システム(PDB)160と、を備えている。なお、車載システム100を構成する制御システムの数は、
図1に限定されるものではなく、3つ以上の制御システムが備えられてもよい。
【0011】
本実施形態に係る車載システム100は、冗長的な電源構成を必要とする制御システムを装備する車両などに搭載することが可能である。以下の実施形態では、冗長的な電源構成を必要とする制御システムであるブレーキシステム140を用いてリモート駐車制御を可能とした車両に、車載システム100が搭載される場合を一例に説明する。
【0012】
(1)第1のバックアップ電源システム
第1のバックアップ電源システム110は、車両に搭載されたバッテリーBATTに接続される。また、第1のバックアップ電源システム110は、故障診断システム130、制御システム(SBW)150、及び制御システム(PDB)160にそれぞれ接続される。この第1のバックアップ電源システム110は、バッテリーBATTを電源とする+B電位の電力を、故障診断システム130、制御システム(SBW)150、及び制御システム160(PDB)に供給することができるように構成される。第1のバックアップ電源システム110は、冗長的に構成される電源システムの一方である。
【0013】
第1のバックアップ電源システム110には、第1のリレー111、第2のリレー112、制御部113、DCDCコンバーター(DC/DC)114、及びキャパシタ115が、含まれる。電力の供給に際して、第1のバックアップ電源システム110は、キャパシタ115に蓄えられるバックアップ電力をDCDCコンバーター(DC/DC)114を介して制御システム150(SBW)及び制御システム(PDB)160などに供給することができる。第1のリレー111は、電源失陥時などにバッテリーBATTから第1のバックアップ電源システム110を切り離すためのリレーである。この第1のリレー111には、例えば励磁式のメカニカルリレーなどを用いることができる。また、第1のバックアップ電源システム110は、第2のリレー112を介してバッテリー電源の+B電位の電力を故障診断システム130に供給する。第2のリレー112は、制御部113から出力されるリレー指示に基づいて、電気的な導通/遮断の状態を切り替える。この第2のリレー112には、例えば半導体リレーなどを用いることができる。DCDCコンバーター(DC/DC)114は、バッテリー電源の+B電位の電力をバックアップ電力としてキャパシタ115に蓄積したり、キャパシタ115に蓄積されたバックアップ電力を必要に応じて制御システム(SBW)150及び制御システム160(PDB)などに出力したりする、急速充電用のDCDCコンバーターである。キャパシタ115は、バックアップ電力を蓄える蓄電素子である。
【0014】
この第1のバックアップ電源システム110は、素早い充電速度が求められるリモート駐車制御を実行しているとき(リモート駐車中)に第2のリレー112を導通させる(オン状態にする)ことで、第2のリレー112を介して故障診断システム130に電源を供給するように動作する。
【0015】
また、第1のバックアップ電源システム110は、車両のイグニッションスイッチの状態(IG-ON又はIG-OFF)を示す信号である「IGR信号」を、車両に搭載される他の装置から入力する。制御部113は、このIGR信号に基づいて、第2のリレー112の動作を制御するためのリレー指示を、第2のリレー112に出力する。この制御部113は、例えばプロセッサ、メモリ、及び入出力インターフェースなどを含んだマイコンで構成され、メモリに格納されたプログラムをプロセッサが読み出して実行することによって所定の機能を実現する。
【0016】
(2)第2のバックアップ電源システム
第2のバックアップ電源システム120は、車両に搭載されたバッテリーBATTに接続される。また、第2のバックアップ電源システム120は、ブレーキシステム140に接続される。この第2のバックアップ電源システム120は、バッテリーBATTを電源とする+B電位の電力を、ブレーキシステム140に供給することができるように構成される。第2のバックアップ電源システム120は、冗長的に構成される電源システムの他方である。
【0017】
第2のバックアップ電源システム120には、第1のリレー121、第2のリレー122、及びキャパシタ123が、含まれる。第1のリレー121及び第2のリレー122を導通させて電力を供給する際、第2のバックアップ電源システム120は、バッテリー電源の+B電位の電力を蓄電素子であるキャパシタ123に充電させてからブレーキシステム140に供給する。よって、第2のバックアップ電源システム120の充電速度は、第1のバックアップ電源システム110よりも遅い。第1のリレー121は、電源失陥時などにバッテリーBATTから第2のバックアップ電源システム120を切り離すためのリレーである。この第1のリレー121及び第2のリレー122には、例えば励磁式のメカニカルリレーなどを用いることができる。
【0018】
この第2のバックアップ電源システム120は、素早い充電速度が求められないリモート駐車制御を実行していないときに、ブレーキシステム140に電源を供給するように動作する。
【0019】
(3)故障診断システム
故障診断システム130は、電源システムの故障診断を行うためのシステムであり、より具体的には、構成要素として備えられるリレー131の故障診断を行うためのシステムである。より具体的には、故障診断システム130は、リレー131がOFF状態で固着している故障が生じているか否かをチェックする。この故障診断システム130は、第1のバックアップ電源システム110の第2のリレー112の出力端側とブレーキシステム140とのあいだに挿入されて接続される。リレー131には、例えば励磁式のメカニカルリレーなどを用いることができる。
【0020】
(4)その他のシステム
ブレーキシステム140は、図示しない電動ブレーキ機構によって車両のブレーキアクチュエーター(ACT)を介して車両に制動力を発生させることが可能な制御システムである。
【0021】
制御システム(SBW)150及び制御システム(PDB)160は、車両に搭載されるシステムである。車両には、制御システム(SBW)150及び制御システム(PDB)160以外のシステムが搭載されてもよい。
【0022】
[制御]
次に、
図2をさらに参照して、本実施形態に係る車載システム100が実行する制御を説明する。
図2は、第1のバックアップ電源システム110の制御部113によって制御される、第2のリレー112の動作を制御するためのリレー指示のタイミングの一例を示す図である。
【0023】
図2に示すように、本実施形態の第1のバックアップ電源システム110の制御部113は、車両のイグニッションスイッチがオンされた状態を示すIGR信号である「IGR信号-ON」を受信すると、その「IGR信号-ON」を受信した時点から2秒経過後に10秒間だけ第2のリレー112を継続して導通させるリレー指示である「リレー指示-ON」を、第2のリレー112に出力する。
【0024】
この制御によって、車両がリモート駐車制御を実行しているか否かにかかわらず、イグニッションスイッチがオンされると毎回必ず10秒間は第2のリレー112が導通する。つまり、バッテリー電源→第1のバックアップ電源システム110→第2のリレー112→故障診断システム130の電源供給経路が形成される。従って、車両がリモート駐車制御を実行していなくても、第1のバックアップ電源システム110から故障診断システム130に電力が供給されるので、この10秒のあいだでリレー131の故障診断を行うことが可能となる。
【0025】
なお、
図2で示した「IGR信号-ON」を受信した時点から2秒経過後に10秒間だけ第2のリレー112を継続して導通させる「リレー指示-ON」を出力する制御はあくまで一例である。よって、「IGR信号-ON」を受信した時点からどれだけ待機させるのか、第2のリレー112をどれだけ継続して導通させるのかについては、車載システム100に求められる性能や精度などに基づいて任意の時間を設定することが可能である。
【0026】
<作用・効果>
以上のように、本開示の一実施形態に係る車載システム100によれば、車両がリモート駐車制御を実行しているか否かにかかわらず、車両のイグニッションスイッチがオンされると毎回必ず所定の時間(例えば10秒間)は第2のリレー112を導通させる。
【0027】
従って、車両がリモート駐車制御を実行していなくても、第1のバックアップ電源システム110から故障診断システム130に電力が供給されるので、この電力が供給されている所定の時間のあいだで電源システム(リレー131)の故障診断を行うことが可能となる。
【0028】
以上、本開示技術の一実施形態を説明したが、本開示は、車載システム、プロセッサとメモリとを備えた車載システムが実行する制御方法、制御方法を実行するための制御プログラム、制御プログラムを記憶したコンピューター読み取り可能な非一時的記憶媒体、及び車載システムを含めた電源システムを搭載した車両として捉えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本開示の車載システムは、電源システムを冗長的に備えた車両などに利用可能である。
【符号の説明】
【0030】
110 第1のバックアップ電源システム
111 第1のリレー
112 第2のリレー
113 制御部
114 DCDCコンバーター(DC/DC)
115 キャパシタ
120 第2のバックアップ電源システム
121 第1のリレー
122 第2のリレー
123 キャパシタ
130 故障診断システム
131 リレー
140 ブレーキシステム
150 制御システム(SBW)
160 制御システム(PDB)