(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】車両用表示制御装置、車両用表示装置、車両、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 9/451 20180101AFI20250107BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
G06F9/451
B60R16/02 660T
(21)【出願番号】P 2022003398
(22)【出願日】2022-01-12
【審査請求日】2023-11-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 純也
(72)【発明者】
【氏名】西田 昌史
【審査官】西間木 祐紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-201761(JP,A)
【文献】特開2021-157110(JP,A)
【文献】特開2021-162602(JP,A)
【文献】特開2020-201762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 9/451
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のプロセッサを備え、前記プロセッサは、
車両に搭載され、かつ前記車両のユーザが視認する表示装置の表示制御を行う第1OS、及び、前記表示装置の表示制御を行い、かつ命令の実行時間の時間制約を保証するOSである第2OSを実行し、
前記表示装置の表示に不具合があ
る場合、前記表示装置に対して前記第2OSの制御のみによる表示を行う
ように構成されている車両用表示制御装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記第1OSの制御による表示と、前記第2OSの制御による表示と、を切り替え可能であって、
前記表示装置の表示に不具合があ
る場合、前記第1OSの制御による表示に代えて前記第2OSの制御による表示を前記表示装置に対して行う
請求項1に記載の車両用表示制御装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記第1OSの制御による表示と、前記第2OSの制御による表示と、前記表示装置に重畳表示可能であって、
前記表示装置の表示に不具合があ
る場合、前記第1OSの制御による前記表示装置に対する表示を中止する
請求項1に記載の車両用表示制御装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記不具合が無くなった場合、前記第1OSの制御による表示を前記表示装置に対して行う請求項1から3の何れか1項に記載の車両用表示制御装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記表示装置の表示に不具合があ
るかどうかの情報を外部の情報処理装置から取得する請求項1から4の何れか1項に記載の車両用表示制御装置。
【請求項6】
前記表示装置と、
請求項1から5の何れか1項に記載の前記車両用表示制御装置と
を備える車両用表示装置。
【請求項7】
前記表示装置と、
請求項1から5の何れか1項に記載の前記車両用表示制御装置と
を備える車両。
【請求項8】
コンピュータが、
車両に搭載され、かつ前記車両のユーザが視認する表示装置の表示制御を行う第1OS、及び、前記表示装置の表示制御を行い、かつ命令の実行時間の時間制約を保証するOSである第2OSを実行し、
前記表示装置の表示に不具合があ
る場合、前記表示装置に対して前記第2OSの制御のみによる表示を行う
処理を実行する車両用表示制御方法。
【請求項9】
車両に搭載され、かつ前記車両のユーザが視認する表示装置の表示制御を行う第1OS、及び、前記表示装置の表示制御を行い、かつ命令の実行時間の時間制約を保証するOSである第2OSを実行し、
前記表示装置の表示に不具合があ
る場合、前記表示装置に対して前記第2OSの制御のみによる表示を行う
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示制御装置、車両用表示装置、車両、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車室内のディスプレイの表示制御を行う統合ECUの起動時に、起動時にさきがけて表示すべき先行表示要素を生成するRTOS(Real―Time Operating System)を、汎用OSよりも先に起動させて表示制御を行う車両用制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の装置は、汎用OSでの表示制御後において、表示装置の表示に不具合が有る又は可能性が有る場合の表示制御に工夫の余地が残る。特に車両用の表示装置においては、常にユーザに対する表示を担保する必要がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、車両に搭載された表示装置に対して複数のOSで表示制御を行う場合においてユーザに対する表示を担保する車両用表示制御装置、車両用表示装置、車両、方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の車両用表示制御装置は、1以上のプロセッサを備え、前記プロセッサは、車両に搭載され、かつ前記車両のユーザが視認する表示装置の表示制御を行う第1OS、及び、前記表示装置の表示制御を行い、かつ命令の実行時間の時間制約を保証するOSである第2OSを実行し、前記表示装置の表示に不具合がある又は可能性がある場合、前記表示装置に対して前記第2OSの制御のみによる表示を行う。
【0007】
請求項1に記載の車両用表示制御装置では、プロセッサが第1OS及び第2OSを実行することにより、車両に搭載された表示装置の表示制御を行う。当該表示装置は、ユーザが視認可能に構成されている。そして、プロセッサは、表示装置の表示に不具合がある又は可能性がある場合に、第2OSの制御のみにより表示装置への表示を行う。そのため、本構成によれば、車両に搭載された表示装置に対して複数のOSで表示制御を行う場合においてユーザに対する表示を担保することが出来る。
【0008】
請求項2に記載の車両用表示制御装置は、請求項1に記載の車両用表示制御装置であって、前記プロセッサは、前記第1OSの制御による表示と、前記第2OSの制御による表示と、を切り替え可能であって、前記表示装置の表示に不具合がある又は可能性がある場合、前記第1OSの制御による表示に代えて前記第2OSの制御による表示を前記表示装置に対して行う。
【0009】
請求項2に記載の車両用表示制御装置では、第1OSによる表示装置の表示に不具合が有る又は可能性が有る場合に第2OSによる表示に切り替えることで、ユーザに対する表示を担保することが出来る。
【0010】
請求項3に記載の車両用表示制御装置は、請求項1に記載の車両用表示制御装置であって、前記プロセッサは、前記第1OSの制御による表示と、前記第2OSの制御による表示と、前記表示装置に重畳表示可能であって、前記表示装置の表示に不具合がある又は可能性がある場合、前記第1OSの制御による前記表示装置に対する表示を中止する。
【0011】
請求項3に記載の車両用表示制御装置では、第1OS及び第2OSによる表示装置の重畳表示に不具合が有る又は可能性が有る場合に第2OSのみによる表示に切り替えることで、ユーザに対する表示を担保することが出来る。また、複数のOSで表示制御を行う場合において、同様の情報を表示する為の制御を行う必要が無くなることで、製品の製作時の効率化や情報のメモリ容量の削減などが可能となる。
【0012】
請求項4に記載の車両用表示制御装置は、請求項1から3の何れか1項に記載の車両用表示制御装置であって、前記不具合が無くなった場合、前記第1OSの制御による表示を前記表示装置に対して行う。
【0013】
第2OSの制御のみによる表示を行う場合、ユーザに対する表示に制約が生じる場合があるが、請求項4に記載の車両用表示制御装置によれば、不具合が無くなった場合、直ちに不具合発生前の表示へ戻すことで、ユーザに対する表示の制約を最小限に留めることができる。
【0014】
請求項5に記載の車両用表示制御装置は、請求項2から4の何れか1項に記載の車両用表示制御装置であって、前記プロセッサは、前記表示装置の表示に不具合がある又は可能性が有るかどうかの情報を外部の情報処理装置から取得する。
【0015】
請求項5に記載の車両用表示制御装置では、表示装置の表示に不具合がある又は可能性が有るかどうかの情報を外部の情報処理装置が行う事でシステムの分散が可能になることで、冗長性や正確性が向上する。
【0016】
請求項6に記載の車両用表示装置は、前記表示装置と、請求項1から5の何れか一項に記載の車両用表示制御装置とを備える。
【0017】
請求項6に記載の車両用表示装置では、プロセッサが第1OS及び第2OSを実行することにより、車両に搭載された表示装置の表示制御を行う。当該表示装置は、ユーザが視認可能に構成されている。そして、プロセッサは、表示装置の表示に不具合がある又は可能性がある場合に、第2OSの制御のみにより表示装置への表示を行う。そのため、本構成によれば、表示装置を備える車両用表示装置として、ユーザに対する表示を担保することが出来る。
【0018】
請求項7に記載の車両は、前記表示装置と、請求項1から6の何れか1項に記載の前記車両用表示制御装置とを備える。
【0019】
請求項7に記載の車両では、プロセッサが第1OS及び第2OSを実行することにより、車両に搭載された表示装置の表示制御を行う。当該表示装置は、ユーザが視認可能に構成されている。そして、プロセッサは、表示装置の表示に不具合がある又は可能性がある場合に、第2OSの制御のみにより表示装置への表示を行う。そのため、本構成によれば、車両として、ユーザに対する表示を担保することができ、これにより、走行安全を確保する事が出来る。
【0020】
請求項8に記載の車両用表示制御方法は、コンピュータが、車両に搭載され、かつ前記車両のユーザが視認する表示装置の表示制御を行う第1OS、及び、前記表示装置の表示制御を行い、かつ命令の実行時間の時間制約を保証するOSである第2OSを実行し、前記表示装置の表示に不具合がある又は可能性がある場合、前記表示装置に対して前記第2OSの制御のみによる表示を行う処理を実行する。
【0021】
請求項8に記載の車両用表示制御方法では、コンピュータが第1OS及び第2OSを実行することにより、車両に搭載された表示装置の表示制御を行う。当該表示装置は、ユーザが視認可能に構成されている。そして、コンピュータは、表示装置の表示に不具合がある又は可能性がある場合に、第2OSの制御のみにより表示装置への表示を行う。そのため、当該方法によれば、車両に搭載された表示装置に対して複数のOSで表示制御を行う場合においてユーザに対する表示を担保することが出来る。
【0022】
請求項9に記載のプログラムは、車両に搭載され、かつ前記車両のユーザが視認する表示装置の表示制御を行う第1OS、及び、前記表示装置の表示制御を行い、かつ命令の実行時間の時間制約を保証するOSである第2OSを実行し、前記表示装置の表示に不具合がある又は可能性がある場合、前記表示装置に対して前記第2OSの制御のみによる表示を行う処理をコンピュータに実行させる。
【0023】
請求項9に記載のプログラムでは、コンピュータにより第1OS及び第2OSを実行させることにより、車両に搭載された表示装置の表示制御を行わせる。当該表示装置は、ユーザが視認可能に構成されている。そして、コンピュータは、表示装置の表示に不具合がある又は可能性がある場合に、第2OSの制御のみにより表示装置への表示をさせる。そのため、当該プログラムによれば、車両に搭載された表示装置に対して複数のOSで表示制御を行う場合においてユーザに対する表示を担保することが出来る。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、車両に搭載された表示装置に対して複数のOSで表示制御を行う場合においてユーザに対する表示を担保することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1実施形態に係る車両用表示装置を含む車両の概略構成図である。
【
図2】第1実施形態に係る車両用表示装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態に係る車両用表示装置の電子制御ユニットの機能構成を示すブロック図である。
【
図4】第1実施形態に係る車両用表示装置の電子制御ユニットの制御作動の要部を説明するフローチャートである。
【
図5】第1実施形態の変形例に係る車両用表示装置の電子制御ユニットの表示制御画面例であって、(a)はRTOS実行部による表示制御画面の例であり、(b)は汎用OS実行部及びRTOS実行部による重畳表示に係る制御画面の例である。
【
図6】第1実施形態の変形例に係る車両用表示装置の電子制御ユニットの制御作動の要部を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載および図面は適宜、簡略化されている。
【0027】
本発明はプロセッサが、車両に搭載され、かつ前記車両のユーザが視認する表示装置の表示制御を行う第1OS(Operating System)、及び、前記表示装置の表示制御を行い、かつ命令の実行時間の時間制約を保証するOSである第2OSを実行し、前記表示装置の表示に不具合がある又はその可能性がある場合 、前記表示装置に対して前記第2OSの制御による表示を行うものである。
【0028】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る車両用表示装置10を含む車両1の概略構成図である。
図1に示されるように、車両1のユーザから視界に入る様に、メータディスプレイ102は設置されている。メータディスプレイ102は車両用表示装置10における表示装置の一例であり、ヘッドアップディスプレイやセンタディスプレイ等、車両に搭載された任意の表示装置を用いても良い。
【0029】
(車両用表示装置10のハードウェア構成)
図2は、車両用表示装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2に示すように、車両用表示装置10は、電子制御ユニット(以下、「ECU」という)100と、メータディスプレイ102と、センタディスプレイ104と、操作スイッチ112と、車両駆動装置106と、車載センサ108と、車外通信インターフェイス(車外通信I/F)114等を備えている。ECU100は車両用表示制御装置の一例である。車両用表示装置10においてECU100は、メータディスプレイ102、センタディスプレイ104、操作スイッチ112及び、種々の搭載スイッチ等のそれぞれと通信可能に接続されている。
【0030】
また、CAN(Controller Area Network)バス116により、車両駆動装置106、車載センサ108、車外通信I/F114及び、他のECUや車載機器等のそれぞれとも通信可能に接続されている。
【0031】
車両用表示装置10のECU100は、メータディスプレイ102の表示制御を行う機能を有する。ECU100は、CPU(Central Processing Unit)1000、ROM(Read Only Memory)1001、RAM(Random Access Memory)1002、eMMC(embedded Multi Media Card)1003、入出力インターフェイス(入出力I/F)1004及び通信インターフェイス(通信I/F)1005を含んで構成されている。各構成は、内部バス1006を介して相互に通信可能に接続されている。
【0032】
CPU1000は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU1000は、ROM1001又はeMMC1003からプログラムを読み出し、RAM1002を作業領域としてプログラムを実行する。また、CPU1000は、ROM1001又はeMMC1003に記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。CPU1000は、マルチプロセッサでも良いし、マルチコアでも良い。CPU1000は、プロセッサの一例である。
【0033】
ROM1001は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM1002は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。eMMC1003はオペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する非一時的記録媒体である。本実施形態ではストレージにeMMCを用いたが、HDD(Hard Disk Drive)や、SSD(Solid State Drive)、SSHD(Solid State Hybrid Drive)等の記憶装置によりストレージが構成されても良い。
【0034】
入出力I/F1004は、外部に接続する機器との情報の入出力を行うためのインターフェイスであり、USBポートやDVIポート等を有し、メータディスプレイ102やセンタディスプレイ104、操作スイッチ112、及び、車両に搭載された種々のタッチパッドやスイッチ、マイクやカメラ等の各種機器が接続されている。ECU100がメータディスプレイ102の表示制御を行う際にも用いられる。
【0035】
通信I/F1005は、車両1に搭載された他の機器と通信するためのインターフェイスであり、CAN規格のバスであるCANバス116により、車両駆動装置106、車載センサ108、車外通信I/F114及び、他のECUや車載機器等のそれぞれと通信可能に接続されている。通信規格はデジタルコンテンツなど大量データの転送にはMOSTまたはIDB-1394や車載Ethernet(商標登録)、転送速度をそれほど要求されないシステムにおいてはLocal Interconnect Network(LIN)、エアバッグやシートベルトなどの乗員保護装置には、低速で信頼性を高めたSafe-by-Wireという規格を用いる等、適宜変更しても良い。
【0036】
メータディスプレイ102は、車両1のユーザから運転姿勢において視界に入る位置に設置される表示装置である。入出力I/F1004を通じて、ECU100により表示制御がなされることで、車両1のユーザに対して情報の表示を行い、車両操作の支援を行う。また、ECU100は、車両1に搭載された各種メータ機器と接続されている。そのため、メータディスプレイ102には車両1の車速や、エンジン回転数、残燃料量、ギアや蓄電池の状態、表示灯や警告灯を始めとする各種車両機能等の情報が表示される。
【0037】
センタディスプレイ104は、車両1のインストルメントパネルの車幅方向中央付近に取り付けられた表示装置である。メータディスプレイ102と同様に、入出力I/F1004を通じて、ECU100により表示制御がなされることで、車両1のユーザに対して情報の表示を行い、車両操作の支援を行う。車両1のユーザによって入力された信号に基づき、目的地までユーザを誘導する地図情報やニュース、天気情報の表示や音楽再生等の機能を有する。また、センタディスプレイ104の表示制御部とメータディスプレイ102の表示制御部は情報の共有を行っても良く、それぞれのディスプレイに表示する、周辺の地図情報や車両の走行状態などの表示画像を作成する基となる情報を他方が提供する事で情報の連携を行っても良い。
【0038】
操作スイッチ112は、車両ユーザの操作可能な位置に設置されたものであり、メータディスプレイ102やセンタディスプレイ104の表示の変更やオーディオの制御、運転支援システムの実行・停止等の車両操作をユーザが行う際に用いられる。
【0039】
車両駆動装置106は、車両1に設けられた駆動用の装置類であって、ユーザによって入力された信号に基づいて車両1を駆動させる。すなわち、車両駆動装置106は、ボデー各部、エンジン各部に装着されたモータ、バルブ、アクチュエータを含む。これらは専用のECUを介してCANバス116と繋がっていても良い。
【0040】
車載センサ108は、車両1に設けられたセンサ類であって、車両1及びその運転支援の為の各種情報を取得する目的で設けられ、車両1のボデー各部やエンジン各部等に装着されたセンサを含む。これらは専用のECUを介してCANバス116と繋がっていても良い。
【0041】
車外通信I/F114は、外部センタなどの外部装置との通信を行う為に設けられる。通信では、CANバス116を通じて他の車載機器から取得した情報の送信や、外部装置から車両の周辺情報やメンテナンス情報など、各種サービス情報の受信が行われる。通信モジュールを有し、有線または無線の通信回線、例えば、CAN、イーサネット(登録商標)、FDDI(Fiber Distributed Data Interface)、Wi-Fi(登録商標)、I2C(Inter-Integrated Circuit)、Zigbee(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、LTE(Long Term Evolution)などの種々の規格を用いて通信を行って良い。また、車外通信を行う機能は任意の制御ユニットが有しても良く、例えば、ECU100が車外通信機能を合わせ持つ構成としても良い。
【0042】
(本実施形態に係る車両用表示装置の機能構成)
図3は、第1実施形態に係る車両用表示装置の機能構成を示すブロック図である。
【0043】
車両1が備える車両用表示装置10では、車両駆動装置106や車載センサ108、車外通信I/F114、センタディスプレイ104および操作スイッチ112等の車載機器から取得した情報を基に、ECU100がメータディスプレイ102の表示制御を行う。
【0044】
ハイパーバイザ1007は、ROM1001やeMMC1003に保存されたプログラムが、電源入力時にRAM1002を作業領域としてCPU1000により実行されることで機能する。ハイパーバイザ1007は、ハードウェア上に仮想機械(バーチャルマシン)を作成し、OSを動作させることができる。具体的には、ハイパーバイザ1007条で動作させるゲストOSが意図する制御を基に、CPU1000やROM1001、RAM1002、eMMC1003、入出力I/F1004、通信I/F1005等のハードウェアを制御する。また、ハイパーバイザ1007は常時、メータディスプレイ102の表示を監視している。ハイパーバイザ1007はCPU1000がメータディスプレイ102の表示制御を行うOSを切り替える際に用いるシステムの一例である。
【0045】
本実施形態ではECU100がメータディスプレイ102の表示制御を行う表示制御アプリケーションの動作の為、ゲストOSとして用いる、第1OSの一例として、汎用OSを用いる。また、第2OSの一例として、命令の実行時間の時間制約を保証するOSのRTOSを用いる。汎用OSには、AGL(Auto motive Grade Linux)(商標登録)、AAOS(Android Automotive Operating System)(商標登録)等が有り、RTOSには、QNX(商標登録)、μITRON(商標登録)、RTLinux(商標登録)等がある。また、OSは命令の実行時間の時間制約を保証する為、ユーザーアプリケーションから、待ちが発生しないサービスコールを呼出した場合に要する最悪値の要求を満たす・ハードウェア割り込みが発生してから、処理ルーチンを呼出すまでの最悪値の要求を満たす・高優先度のタスクが確実に実行されることを保証するスケジューリング規則を持つ、等の要求を満たすOSが選定される。
【0046】
汎用OSは汎用OS実行部1008により実行され、実行した汎用OSのシステム上でメータディスプレイ102の表示制御アプリケーションを動作させる。また、RTOSも同様に、RTOS実行部1009により実行され、実行したRTOSのシステム上でメータディスプレイ102の表示制御アプリケーションを動作させる。メータディスプレイ102の表示制御において、汎用OS実行部1008により実行されているメータディスプレイ102の表示制御アプリケーションと、RTOS実行部1009により実行されているメータディスプレイ102の表示制御アプリケーションはどちらも常に動作しており、ハイパーバイザ1007が適宜表示制御を行うアプリケーションが動作するOSを切り替える事で、それぞれのOS上の表示制御アプリケーションによる表示制御が行われる。また、本実施形態では常にどちらのアプリケーションも動作させる構成としたが、一時的にアプリケーションを停止させ、必要な時に再度アプリケーションを実行する構成としても良い。
【0047】
また、本実施形態の記載では、センタディスプレイ104の表示制御についても、同一のハイパーバイザ1007上で同様に行われるが、異なるハードウェア上で行われても良い。また、表示制御部が通信を行い、情報を共有した上で表示情報に用いても良い。
【0048】
(制御作動の要部を説明するフローチャート)
図4は、第1実施形態に係る車両1のECU100の制御作動の要部を説明するフローチャートである。以下の処理は、ECU100におけるCPU1000がハイパーバイザ1007、汎用OS実行部1008及びRTOS実行部1009として機能することにより実現される。
【0049】
図4のフローチャートは車両1のイグニッションがONになる毎に実行される。先ず、ステップ(以下、ステップを省略する)S100において、CPU1000は車両1のイグニッションのONを検知する。
【0050】
S102において、CPU1000はハイパーバイザ1007を実行する。具体的に、前のステップのS100でイグニッションがONになり、ECU100にも自動的に電力が供給されると、ECU100はeMMC1003に保存された制御プログラムを、RAM1002を作業領域としてCPU1000により実行することでハイパーバイザ1007を実行する。
【0051】
S104において、CPU1000は汎用OSとRTOSを実行する。具体的には、S102で実行したハイパーバイザ1007の上で汎用OSとRTOSを実行し、メータディスプレイ102の表示制御の準備を行う。
【0052】
S106では、CPU1000はRTOSによるメータディスプレイ102の表示制御を行う。具体的には、RTOSが実行され、RTOS上の表示制御アプリケーションによるメータディスプレイ102の表示制御の準備が完了すると、RTOSによるメータディスプレイ102の表示制御を行う。
【0053】
S108では、CPU1000は汎用OSによる表示制御の準備が完了したか否かの判定を行う。具体的に、CPU1000は実行された汎用OS上で動作する表示制御アプリケーションによるメータディスプレイ102の表示制御の準備が完了したかの判定を行う。CPU1000は汎用OSによる表示制御の準備が完了したと判定した場合(S108でYesの場合)、S110へ進む。一方、CPU1000は汎用OSによる表示制御の準備が完了していないと判定した場合(S108でNoの場合)、S106に戻る。
【0054】
S110では、CPU1000は汎用OSによる表示制御へと表示制御を行うOSを切り替える。すなわち、汎用OSによる表示制御の準備が完了すると、ハイパーバイザ1007はRTOSによる表示制御から汎用OSによる表示制御へと表示制御を行うOSを切り替える。
【0055】
S112では、CPU1000がメータディスプレイ102の表示に不具合又はその可能性があるか否かの判定を行う。CPU1000がメータディスプレイ102の表示に不具合又はその可能性が無いと判定した場合、つまり、不具合及びその可能性もない場合(S112でNoの場合)はS114に進む。一方、CPU1000がメータディスプレイ102の表示に不具合又はその可能性があると判定した場合、つまり、不具合及びその可能性の何れかがある場合(S112でYesの場合)はS116に進む。
【0056】
S114では、CPU1000は汎用OSによる表示制御を実行する。すなわち、これまで汎用OSによる表示制御を実行していた場合は、汎用OSによる表示制御を続け、これまでRTOSによる表示制御を実行していた場合は、汎用OSによる表示制御に切り替える。
【0057】
S116では、CPU1000はRTOSによる表示制御を実行する。すなわち、これまで汎用OSによる表示制御を実行していた場合は、RTOSによる表示制御に切り替え、これまでRTOSによる表示制御を実行していた場合は、RTOSによる表示制御を続ける。
【0058】
S118では、CPU1000は一定時間が経過したかどうかを判定。CPU1000は一定時間が経過したと判定した場合(S118でYesの場合)、S112に戻る。一方、CPU1000は一定時間が経過していないと判定した場合(S118でNoの場合)、S118を繰り返す。本構成により、不具合又はその可能性が無くなった場合、元の汎用OSによる表示制御へ戻すことを可能とする。
【0059】
以上の様に、本実施形態によれば、汎用OS実行部1008によるメータディスプレイ102の表示制御後にメータディスプレイ102の表示に不具合が有る又はその可能性が有る場合は、RTOS実行部1009による表示制御に切り替える事で、メータディスプレイ102の表示に不具合がある又はその可能性がある場合においても表示装置のユーザに対しての表示を担保することが出来る。特に、表示装置にメータディスプレイ102を用いる場合はユーザとしての運転者に向けての表示を担保することができる。本実施形態によれば、運転者が車両1を運転する際に、運転者に対する表示が確保されるため、車両1の走行安全に寄与することができる。
【0060】
(変形例)
第1実施形態では、メータディスプレイ102の表示制御時は汎用OSによる表示制御、もしくは、RTOSによる表示制御としたが、汎用OSとRTOSの両方による重畳表示制御を行っても良い。
【0061】
図5(a)は第1実施形態の変形例に係る車両用表示装置10の電子制御ユニット100のRTOS実行部1009による表示制御画面例である。RTOS実行部1009による表示制御では、情報量よりも表示制御の準備速度を優先する為、運転支援を行う為にメータディスプレイ102に表示を行う情報量は限られ、一部の重要表示情報1020のみの表示を行う。重要表示情報1020にて表示される重要表示の一例として、ABS不良やエンジン不良を表すテルテール、フラッシャ、現在のシフト操作情報、累積走行距離、現在速度、ガソリン残量、水温などの情報がある。
【0062】
図5(b)は第1実施形態の変形例に係る車両用表示装置10の電子制御ユニット100の汎用OS実行部1008とRTOS実行部1009による重畳表示制御画面例である。汎用OS実行部1008とRTOS実行部1009による重畳表示制御では、
図5(a)のRTOS実行部1009の表示制御に対して、汎用OS実行部1008による表示制御を重畳する。汎用OS実行部は、表示制御の準備速度よりも情報量やレンダリングなどの高度な画面表示を優先する為、多様な情報の表示制御が可能となり、一般表示情報1021の表示が行える。一般表示情報1021にて表示される一般表示の一例として、タコメータの情報や、3D表示での運転支援システムの行動予定情報、時刻等の情報や、装飾表示がある。
【0063】
図6は第1実施形態の変形例に係る車両用表示装置の電子制御ユニットの制御作動の要部を説明するフローチャートである。
【0064】
S200からS208の処理は上述した第1実施形態のS100からS108の処理と同様である。続くステップであるS210に対応する、上述した第一実施形態のS110では、汎用OSのみによりメータディスプレイ102の表示制御を行っていたが、本変形例のS210では、汎用OSによる表示制御に、RTOSによる表示制御を加えた、重畳表示制御を行う。これにより、RTOSおよび、汎用OSの両方において、同様の情報を表示する為の制御を行う必要が無くなり、製品の製作時の効率化や情報のメモリ容量の削減などを可能とする。
【0065】
続くS212の処理はS112の処理と同様である。また、S214は上述したS210と同様である。S216、S218の処理はS116、S118と同様である。
【0066】
また、第1実施形態ではメータディスプレイ102の表示に不具合又はその可能性が有るかをハイパーバイザ1007が判断する構成としたが、メータディスプレイ102の表示に不具合又はその可能性が有るかを判断する情報処理装置を外部に別途設けて情報を取得する構成としても良い。本構成によれば、表示装置の表示に不具合がある又は可能性が有るかどうかの情報を外部の情報処理装置が行う事でシステムの分散が可能になり、冗長性や正確性が向上する。
【0067】
また、第1実施形態では、一定時間経過ごとにS112でハイパーバイザ1007がメータディスプレイ102の表示に不具合又はその可能性が有るかを判断する構成としたが、汎用OS実行部1008によるメータディスプレイ102の表示制御を正常に行えなかった旨のフェイル情報を取得した場合は、一定時間を待たずに即座にS116のステップを実行する構成としても良い。
【0068】
第一実施形態では、CPU1000がメータディスプレイ102の表示制御を行うOSを切り替える際に用いるシステムの一例として、ハードウェアの上で動作するハイパーバイザ1007上で更に汎用OS実行部1008とRTOS実行部1009が動作する構成としたが、ハードウェアとハイパーバイザ1007の間に有する、別のホストOSを通じてハードウェアを間接的に制御する等、任意の既知の構成としても良い。
【0069】
第一実施形態では、ハイパーバイザ1007上で汎用OS実行部1008とRTOS実行部1009が動作する構成としたが、ホストOSは2つに限らず、更に冗長性を持たせるために3つ以上のホストOSが動作する構成としても良い。また、変形例の重畳表示においても、3つ以上のホストOSによる重畳表示とする構成としても良い。
【0070】
本発明を諸図面及び実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であり、本発明は上記実施形態に限られたものではなく、これらの変形及び修正も本発明の範囲に含まれることに留意されたい。たとえば、各手段または各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段またはステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割して複数のユニットや任意のサーバによって行ったりさせることが可能である。また、車両用表示制御装置の制御処理部にて本実施形態にかかる動作を行う装置や方法、および、本実施形態にかかる動作を行わせるプログラムも本発明の範囲に含まれる。
【0071】
なお、上記実施形態でCPU1000がソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した各種処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、上述した各処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0072】
また、上記実施形態において、各プログラムはコンピュータが読み取り可能な非一時的記録媒体に予め記憶(インストール)されている態様で説明した。例えば、ECU100における制御用のプログラムはeMMC1003に予め記憶されている。しかしこれに限らず、各プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 車両
10 車両用表示装置
100 電子制御ユニット(ECU・車両用表示制御装置)
1000 CPU(プロセッサ)
102 メータディスプレイ(表示装置)