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特許7614480携行型階段昇降下肢負担制御装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】携行型階段昇降下肢負担制御装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61H 3/00 20060101AFI20250108BHJP
【FI】
A61H3/00 A
A61H3/00 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024007678
(22)【出願日】2024-01-03
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】520464681
【氏名又は名称】森 一幸
(72)【発明者】
【氏名】森 一幸
(72)【発明者】
【氏名】森 洋子
(72)【発明者】
【氏名】朴 完圭
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-161457(JP,A)
【文献】特開2015-93005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
階段手摺の把持又は把持解除を繰り返しながら前記階段手摺上を手で持ち移動される把持部と、前記階段手摺を把持し摩擦力を生ずるブレーキ部で構成する手摺昇降機と、
前記把持部に連結されたロープと、前記ロープの他端に連結された電動ウィンチと、前記電動ウィンチに連結された腰ベルトと、
前記ブレーキ部に連結されたロープと、前記ロープの他端に連結された前記腰ベルトと、加速度計、前記把持部に付帯し昇降する者の手で握られる把手内蔵ひずみゲージ、前記ロープに設置された角度計及び電気操作制御装置を備える携行型階段昇降下肢負担制御装置で、
前記手摺昇降機が階段手摺上を昇降者の手で持ち移動設置させることができる形態及び重量で、かつ電動ウィンチ、電気操作制御装置、角度計及び加速度計が腰ベルトに装着できる形態及び重量であることを特徴とする携行型階段昇降下肢負担制御装置。
【請求項2】
昇段時は、前記把持部を構成する電磁石及び摩擦部によって前記階段手摺を把持した状態で、電動ウィンチによって連結されたロープが引かれることによって、前記腰ベルトを装着した人が昇段上方向に引かれることで、
降段時は、ブレーキ部を構成する電磁石及び摩擦部によって前記階段手摺と摩擦力を生じるため、連結されたロープが引かれることによって、前記腰ベルトを装着した人が降段と反対上方向に引かれることで、
下肢負担を腰部で分担し免荷することを特徴とする請求項1に記載の携行型階段昇降下肢負担制御装置。
【請求項3】
前記把手内蔵ひずみゲージで下肢負担感に運動連鎖する昇降する者の握力を測ることで下肢負担感を推定し、前記角度計でロープの引張角度を測り、前記加速度計で昇降動作の加速度慣性力を推定し、
前記電気操作制御装置によって前記電動ウィンチ及び前記ブレーキ部電磁石の印加電圧を制御することで適切下肢負担感範囲内での階段昇降を実現することを特徴とする請求項1に記載の携行型階段昇降下肢負担制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
下肢の負担を腰部で分担し免荷し、実用的に下肢負担感を評価し、下肢負担感を適切下肢負担感範囲内に収める携行型階段昇降下肢負担制御装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献4では、放射能汚染度の大きな個所を探索するため、移動中の測定器で測定した時系列の放射線量と移動速度から、関数フィッティング法、2サンプリング秒遅れの差分からの計数増加傾向の判定法及び事前の時系列の時系列の自然放射線量の計測を用いて、当該測定器を静止して測定した場合の放射線量を推定している。
【0003】
非特許文献1では、階段昇降(以下「昇降」という)非自立の高齢者は自立する高齢者に比べて、筋力が弱く転倒恐怖感が強いため生活範囲が狭く活動的な生活を実現できないことが示されている。
【0004】
非特許文献2では、関節には外力ベクトルと当該ベクトルと作用点までの距離の積の外部関節モーメント(以下「負荷」という)が働き、又移動加速度が生じた場合は逆向きに慣性力が働き、
非特許文献3では、スクワット運動の場合で関節が損傷しない限度内では、負荷と大きさが同じで反対周りの筋肉及び靭帯による筋張力ベクトルと当該ベクトルと作用点までの距離の積である内部関節モーメント(以下「耐力」という)が生ずることが示されている。
【0005】
非特許文献4では、床反力計と身体につけた赤外線反射マーカーを用い床反力ベクトルと当該ベクトルと対象関節までの距離の情報から解析ソフトで下肢の負荷が算定され、
非特許文献5では、負荷は波形波型をなし、昇降時の下肢関節の負荷は足を接地してから離地するまでの期間(以下「昇降周期」という)中の1踏面の移動所要時間の約50パーセント経過時に最大となり、
非特許文献6では、身体に外部刺激-感覚-知覚-運動の無意識の動作系列(以下「反射動作機能」という)があり、
非特許文献7では外部刺激を運動に伝達する反射動作時間は、応答の遅い長潜時の伸張反射で50ミリ秒であり、人間の意識・思考が関わる随意運動の100から150ミリ秒に比べて小さく、
非特許文献8では、老人の階段昇降の速度は0.21メートル毎秒であり、
建築基準法での踏面の幅は26センチメートル以上である。
【0006】
非特許文献9では、身体部分が複数の関節で連結されている剛体リンクモデルとした場合は身体の部分の動きが隣り合う部分に影響する運動連鎖機能があり、
非特許文献10では、昇降に必要なバランスは動作速度等の課題要因、身体機能等の個人要因及び段差等の環境要因(以下「昇降条件」という)に影響され、
非特許文献11では縦型手摺を掴み椅子から起立する動作で、肘の負荷と膝の負荷は逆相関関係にあり、
又非特許文献12では足把持力測定にひずみゲージを用いている。
【先行技術文献】
【0007】
【文献】特開2022-161457
【文献】特開2001-58758
【文献】特開2013-40543
【文献】特許6843350
【文献】『地域在住高齢者における階段昇降動作が運動機能と活動量・心身機能に及ぼす影響について』 福尾実人 理学療法科学29(5)793-797,2014 頁795表1
【文献】『動作分析に必要な力学的知識』 谷埜予士次 関西理学 2:11-16,2002 頁12、13
【文献】『バイオメカニクスで考える理学療法』 佐藤 久友他 頁921(図4、5)JpnJRehabitMed2021;50:919-924 accessed 2023.10.20
【文献】『健常者の階段降段動作における下肢のバイオメカニクス』 田邊泰雅他 理学療法科学30(2)207-212,2015 頁208
【文献】『関節モーメントによる健常者の段昇降分析』黒後裕彦他 リハビリテーション医学2000;37:389-397 頁394(図4)、頁396(図5
【文献】『人間の知覚と運動の相互作用』 小堀 聡 頁24図1 https://www.rikou.ryukoku.ac.jp/images/journal60/RJ60-04.PDF accessed 2023.10.20
【文献】『巧みで素早い運動を支える脳内情報処理-視覚的な身体情報による伸身反射の調整』 伊藤 翔他 NTT技術ジャーナル 2020.9 頁24
【文献】『千葉県津波避難計画策定指針(H28年10月改訂版)』 資料編 歩行速度設定の目安
【文献】『股関節の運動連鎖』建内宏重 日本医事新報社 頁31 https://jmedi.co.jp/files/item/booksPDF/978-4-7849-5907-5-para:pdf accessed 2023.10.20
【文献】『階段昇降バランスの見るべき視点』 萬井太規 理学療法学49-1 83-91,2022 頁83、84(図2
【文献】『縦型手すりの最適位置とその生体力学的評価』 川口亜紀他 人間生活工学Vol.2 No.4,2001.10 頁36(図3
【文献】『ひずみゲージを用いた足把持力測定器の開発』村田伸他 理学療法科学21(4)363-367,2006 頁364
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の階段天井に設置した移動機器に身体を吊り下げる方法は身体重力による負荷を減少させる(以下「免荷」という)効果が有るが、施設改造工事が必要であり又装置が大きいため階段を占有し多くの人が共用する階段では使用できず、
又特許文献2、3の階段手摺に組み入れた電動引き上げ装置のニギリ柄を手で掴み身体を引かせながら昇段する方法は免荷効果が有るが施設改造工事が必要である。
【0009】
特許文献2、3に示す方法では、ニギリ棒を把持する手腕の機能が弱化している場合は握った状態を維持できないため、ニギリ棒の引張力を身体に伝搬できず免荷することができない。
【0010】
非特許文献4で床反力計と身体に付着する赤外線反射マーカーを用いて実験の場合には負荷を算定できるが、
実用時は床反力計及び赤外線反射マーカーを使用できず、非特許文献5に示す負荷の評価のために必要な外力ベクトルの大きさ及び当該ベクトルから関節までの距離を計測できず、当該方法では負荷の評価はできないため、
非特許文献5の昇降周期中に刻々に変動する負荷と非特許文献10の昇降条件によって個人毎に変化する耐力の関係で生ずる、個人毎かつ時間毎に変化する負担感を評価する実用的な方法が必要である。
【0011】
複数の者が同時に使用する場合、
特許文献2、3ではニギリ棒の引張力は斉一的なため、引張力が強すぎて浮いた感覚の不安定な状態になる者が存在したり、逆に弱すぎて免荷が不十分で耐力が不足し関節の損傷を受けたり昇降できない者が存在する可能性があるため、個人毎かつ時間毎に変化する負担感に対応した制御方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ブレーキ台座6、ブレーキ部の摩擦部7、電磁石B24を配置した二本の棒が一点で交叉し接合するハサミ状の圧力変換具8のブレーキ部5(図2)と、電磁石A13、引きばね14、把持部の摩擦部15及び接触感知電気信号端子17が配置された二本の棒が一点で交叉し接合するハサミ状の把持部4(図3)からなる手摺昇降器18、腰ベルト1、電動ウィンチ2、ロープ3、把手内蔵ひずみゲージ16、電気操作制御装置9、角度計25及び加速度計26を備えた携行型階段昇降下肢負担制御装置を用いる。
【0013】
階段手摺10に設置した手摺昇降器18にロープ3及び腰ベルト1を介して腰部を吊り、昇段時は身体前方の階段手摺10に把持部4を及び身体後方にブレーキ部5を配置し、ブレーキ部5の電磁石B24を停止し及び把持部4の電磁石A13を稼働し、電動ウィンチ2でロープ3を介し腰部を把持部4のある昇段上方向に引き、
又降段時は身体前方に把持部4を及び身体後方にブレーキ部5を配置し、電磁石A13及び電磁石B24を稼働し、ブレーキ部の摩擦部7と階段手摺との摩擦力で腰部をブレーキ部5のある降段と反対上方向に引き、下肢負担を腰部で分担し免荷する工程(以下「腰部活用式免荷工程」という)を用いる。
【0014】
非特許文献6では身体には反射動作機能があり、非特許文献9では運動連鎖機能があり、又非特許文献11では負担感に影響する昇降条件の一つである負担に関して、肘の負担と膝の負担は逆相関することから、『階段を昇降するうちに下肢の負担感が増し階段手摺を掴む手の力が強くなる』『転倒しかけて下肢の負荷が急に変動した時は階段手摺を握る手の握力が急激に強くなる』という経験則が、下肢の負担感と手の握力の運動連鎖機能に基づく反射動作機能であることが推断でき、又非特許文献12で足の把持力をひずみゲージで測定できるため、
把手内蔵ひずみ計で手の握力を表す時系列の電圧値を測定し及び加速度計によって水平方向移動速度を計測し、特許文献4に示されている方法を参考に関数フィッティング法、2サンプリング秒遅れの差分からの電圧増加傾向の判定法及び、下肢が辛く感じる負担感上限から身体が軽すぎ不安定に感ずる負担感下限までの範囲(以下「適切下肢負担感範囲」という)未満の負担感に相当する時系列のひずみ計の電圧値及び変動によって、波形波型に変化する時系列の負担感の関数モデルを推定し、下肢負担感を評価する工程(以下「反射動作機能活用式下肢負担感評価工程」という)を用いる。
【0015】
携行型階段昇降下肢負担制御装置の把手内蔵ひずみゲージ16、電気操作制御装置9、角度計25を用いて、
昇降時に身体前方に配置された把手内蔵ひずみゲージ16を手で握り、
ひずみゲージで計測した手の握力を、適切下肢負担感範囲に相当する手の握力範囲に収斂させるために、
昇降し、外部刺激から下肢の負担感を知覚し、生ずる手の握力を把手内蔵ひずみゲージ16で計測し及び角度計25でロープ3の角度を計測し、電気操作制御装置9で最大負荷量及び出現時刻を算定し、電気操作制御装置9で手の握力が適切下肢負担感範囲になるような荷電圧を算定し、昇段時は電動ウィンチ2の又降段時はブレーキ部5の電磁石B24の荷電圧にフィードバックし、移動時間を調整し、再び昇降を繰り返す工程(以下「下肢負担感フィードバック式制御工程」という)(図6)を用いる。
【発明の効果】
【0016】
携行型階段昇降下肢負担制御装置の手摺昇降器は手で持ち運びできる形状及び重量であり、その他の電動ウィンチ及び電気制御装置等は腰ベルトに装着できるため、階段手摺がある場合は当該装置を使用できるため施設改造工事を必要とせず、
及び当該装置を使用しても使用者は通常の階段昇降のために必要な足元面積以上を必要としないため、階段を占有せず他の当該装置使用者又は非使用者と階段を共用できる。
【0017】
非特許文献9に示す運動連鎖及び非特許文献2、3を参考にし作成した図4、5で示すように、腰部活用式免荷工程を用いることによって、
昇降時は手での手摺引張力モーメント、ロープ引張力モーメント、床反力モーメント、重力モーメント及び加速度慣性力モーメントが釣り合うことから、加速度慣性力モーメントを同じにした状態で、大きなロープ引張力を用いた場合(図4C、5C)は、ロープ引張力を用いない場合(図4A、5A)及び小さなロープ引張力を用いた場合(図4B、5B)に比べて下肢負荷が小さく、ロープ引張力と下肢負荷が逆相関の関係にあることから、下肢の負担を腰部で分担することによって免荷ができ、下肢及び手腕の機能が弱化している場合でも昇降できる。
【0018】
昇降速度が非特許文献8の老人の階段昇降の速度の0.21メートル毎秒である場合、建築基準法での踏面の幅は26センチメートル以上である(計算では安全側に考慮して26センチメートルとした)ことから、
非特許文献5図4、5を用いて作成した図7の、昇段時の最も負荷が大きい膝関節の負荷(図7A)及び降段時の最も負荷が大きい足関節の負荷(図7B)において、先脚と後脚の合計負荷が増加し始めてから最大になる経過時間(以下「最大値到達時間」という)は昇降段とも0.3秒であり、一方、反射動作時間は50ミリ秒であることから、
当該最大値到達時間内に6個の負担感のデータを取得できるため、波形波型に変化する時系列の負担感の関数モデルを推定し、負担感の最大値及び出現時刻を推定できるため、反射動作機能活用式下肢負担感評価工程は実用可能である。
【0019】
図8は昇段周期中の先脚及び後脚の膝関節の経過時間毎の負荷及び負担感を示すもので、負荷は時系列で波形波型状に変動し又昇降周期を繰り返しても同一波型で変動し(図8A)、負担感は昇降周期を繰り返すごとに筋肉及び靭帯が疲労し耐力が減少するため、経過時間とともに増加する波形波型状に変動するが(図8B)、
昇降周期中に電動ウィンチの引張力又はブレーキ部のブレーキ力を増加させた場合負担感を減少させることができ(図8C)、
又昇降周期中に一時休止させた場合移動時間が増え耐力が回復し、負担感を減少させることができる(図8D)ため、
下肢負担感フィードバック式制御工程を用い、適切な引張力・ブレーキ力・移動時間間隔にすることによって、負担感を適切下肢負担感範囲内に収斂させて昇降ができるため、損傷がなく昇降ができ活動範囲が拡がり健康長寿につながり、
負担が大きすぎて耐力で支えきれなく、又負担が少なすぎて浮いた感じで不安定になりバランスを崩しておこる転倒を防止でき、
又意図的に把手内蔵ひずみゲージ16を握る手の握力を変えて引張力又ブレーキ力を増減し又移動時間間隔を変えて下肢の負荷を変えることができるため、適用下肢負担範囲内の任意の負担感を選択し昇降することができ、
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施例の、携行型階段昇降下肢負担制御装置の構成図である。
図2】本発明の一実施例の、ブレーキ部の構成図である。
図3】本発明の一実施例の、把持器の構成図である。
図4】本発明の一実施例の、昇段時の膝関節の外力ベクトル及び負荷である。[A]は上肢と下肢を使用、[B]は上肢と下肢及び小さなロープ引張力を使用、[C]は上肢と下肢及び大きなロープ引張力を使用。
図5】本発明の一実施例の、降段時の足関節の外力ベクトル及び負荷である。[A]は上肢と下肢を使用、[B]は上肢と下肢及び小さなロープ引張力を使用、[C]は上肢と下肢及び大きなロープ引張力を使用。尚図4図5の各図は比較のため加速度慣性力モーメントを同一にして標準化を行い、非特許文献2、3を参考に作成し、又身体は剛体リンクモデルとした。
図6】本発明の一実施例の、下肢負担感フィードバック式制御工程のブロック図である。
図7】非特許文献5図4、5を用いて作成した反射動作機能活用式下肢負担感評価工程の実用可能性の説明図である。[A]は昇段時に負荷の大きな膝関節の経過時間毎の負荷、[B]は降段時に負荷の大きな足関節の経過時間毎の負荷である。
図8図7Aを基にして作成した昇段時の経過時間毎の負荷及び負担感図である。[A]は昇段時の先脚又は後脚の膝関節の負荷、[B]は昇段時の先脚又は後脚の膝関節の負担感、[C]は昇段時の先脚又は後脚の膝関節の負担感で引張力を増加した時の負担感、[D]は昇段時の先脚又は後脚の膝関節の負担感で一時休止した時の負担感。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は携行型階段昇降下肢負担制御装置の構成図であり、ブレーキ部5は身体の後方に、把持部4は身体の前方の階段手摺に配置し、
降段時に階段手摺10を把持したブレーキ部5を牽引し移動するため、階段手摺10が途中で途切れ又は壁からの手摺固定金具等で把持することのできない形状の個所がある場合は、当該箇所で階段手摺10から離し移動しなければならないため転倒リスクがあり、また昇降時に階段手摺10の把持部分が腰ベルト1より低い位置にある場合は免荷効果がないため、把持部4が腰ベルト1より高い位置になり切れ目がなくかつ把持するのに適した形状の階段手摺10を新設するのが望ましい。
【0022】
手摺昇降器18の移動方法は、昇降時に手摺昇降器のブレーキ部5の電磁石B24及び把持部の電磁石A13を停止し、又把持部4の接触感知電気信号端子17を手で握ることによって引きばねを開き、手摺昇降器18を使用者の任意の移動時間間隔で階段手摺10から離さずに次の到達目標地点に手で持ち移動し、設置後再度電磁石A13を稼働し階段手摺に固定するのが最適であるが、
施設改造工事が必要なく及び階段を占有しない形状及び重さでかつ使用者の任意の移動時間間隔にすることができるならば機械式の移動方法でもよい。
【0023】
図2はブレーキ部の構成図であり、摩擦力の調整のための圧力変換具8を使用するのが精度よく最適であるが、精度は劣るがロープ3をブレーキ台座6の両下部に直接連結し降段加速度によって生ずるロープ3の張力をブレーキ部の摩擦部7と階段手摺10間の圧力・摩擦力に変換する方法を用いてもよい。
【0024】
円柱型階段手摺の場合ブレーキ台座6の形状は圧力が均等に階段手摺10にかかるように縦に開閉できる円筒型が最適であるが、階段手摺の形状が異なる場合は当該形状に適合した形状とする。
【0025】
図3は把持部の構成図であり、把持部の摩擦部15の形状は摩擦面積を大きくできるように手摺の形状に一致させるのが最適である。
【0026】
図4Cは昇段時の膝関節の外力ベクトル及び負荷であり、把持部の把手内蔵ひずみゲージ16を手で握り、把持部の電磁石A13に荷電し、ブレーキ部の電磁石B24への荷電は停止する。
【0027】
図5Cは降段時の足関節の外力ベクトル及び負荷であり、把持部の把手内蔵ひずみゲージ16を手で握り、把持部の電磁石A13及びブレーキ部の電磁石B24に荷電する。
【0028】
負担感を適切下肢負担感範囲に収めるためには下肢負担感フィードバック式制御工程を用いるのが精度よく最適であるが、
昇降速度が大きいため、身体の反射動作時間(高速の半分と言われる回路の通信速度及び電動ウィンチ及びブレーキ部の電磁石のトルクに関係する反応時間が算定のために有意な場合はこれらを加算した時間)と負担感の関数モデルを推定できるデータ数の積の値が最大値到達時間を超える場合は、下肢負担感フィードバック式制御方法だけでは制御できないため、
精度は落ちるが事前に作成した昇降条件毎の個人毎又は一般的な負担感関数モデルを利用したフィードフォワード制御方法を用いてもよい。
【0029】
本発明の産業上の利用可能性は、エレベータ又はエスカレータの設置されていない集合住宅、一般家屋又は公共の場における階段昇降、及びリハビリの補助具の提供、及び身体の反射動作を活用した人間―機械系システムの制御に用いることである。
【符号の説明】
【0030】
1 腰ベルト
2 電動ウィンチ
3 ロープ
4 把持部
5 ブレーキ部
6 ブレーキ台座
7 ブレーキ部の摩擦部
8 圧力変換具
9 電気操作制御装置
10 階段手摺
11 信号通信線
12 動力線
13 電磁石A
14 引ばね
15 把持部の摩擦部
16 把手内蔵ひずみゲージ
17 接触感知電気信号端子
18 手摺昇降器
19 重力
20 加速度慣性力
21 ロープ引張力
22 手での階段手摺引張力の反作用力
23 床反力
24 電磁石B
25 角度計
26 加速度計
27 手での手摺引張力の反作用力モーメント
28 ロープ引張力モーメント
29 床反力モーメント
30 重心モーメント
31 加速度慣性力モーメント
32 上半身重心
33 重心
34 股関節
35 膝関節
36 足関節
【要約】      (修正有)
【課題】下肢の負担を腰部で分担し免荷し、実用的に下肢負担感を評価し、下肢負担感を適切下肢負担感範囲内に収める改良された携行型階段昇降下肢負担制御装置及び方法を提供する。
【解決手段】階段手摺10に設置した手摺昇降器にロープ3及び腰ベルト1を介して腰部を吊り、昇段時は身体前方の階段手摺10に把持部4を及び身体後方にブレーキ部5を配置し、ブレーキ部5の電磁石を停止し及び把持部4の電磁石を稼働し、電動ウィンチ2でロープ3を介し腰部を把持部4のある昇段上方向に引き、降段時は身体前方に把持部4を及び身体後方にブレーキ部5を配置し、電磁石を稼働し、ブレーキ部5の摩擦部と階段手摺10との摩擦力で腰部をブレーキ部5のある降段と反対上方向に引き、下肢負担を腰部で分担し免荷する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8-1】
図8-2】