(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】接着剤、包装材、及びリサイクル基材の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 175/06 20060101AFI20250109BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20250109BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20250109BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20250109BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C09J175/06
C09J5/00
C09J7/30
B32B27/00 D
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2020141175
(22)【出願日】2020-08-24
【審査請求日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】P 2019198985
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】396009595
【氏名又は名称】東洋モートン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 宣仁
(72)【発明者】
【氏名】白石 功貴
(72)【発明者】
【氏名】染田 忠
(72)【発明者】
【氏名】門田 昌久
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-261746(JP,A)
【文献】特表2012-501829(JP,A)
【文献】特開2001-207151(JP,A)
【文献】特開2013-018905(JP,A)
【文献】特開2024-083272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00-201/10
B32B1/00-43/00
B65D65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック層と絵柄層とを有する基材1、脱離性接着剤層、及びシーラント基材2が、この順に外側から積層され、基材1を剥離させてシーラント基材2がリサイクルされる包装材を構成する脱離性接着剤層を形成する接着剤であって、
前記接着剤が、ポリエステルポリオール成分と、脂肪族ポリイソシアネート、及び芳香脂肪族ポリイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネート成分とを含み、
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートが、下記に記載の化合物から選択され、
<1,3-又は1,4-キシリレンジイソシアネート若しくはその混合物、ω,ω′-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン若しくはその混合物から選択される化合物;
及び上記の誘導体、複合体から選択される化合物>
前記接着剤の酸価が5~40mgKOH/gである接着剤。
【請求項2】
前記ポリエステルポリオール成分の数平均分子量が、5,000~15,000である、請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
前記ポリエステルポリオール成分の酸価が、10~40mgKOH/gである、請求項1又は2に記載の接着剤。
【請求項4】
前記ポリエステルポリオール成分が、ポリエステルポリウレタンポリオールの酸無水物変性物を含む、請求項1~3いずれか1項に記載の接着剤。
【請求項5】
前記ポリエステルポリオール成分が、数平均分子量5,000~15,000のポリエステルポリオールと、数平均分子量3,000未満のポリエステルポリオールとを含む、請求項1~4いずれか1項に記載の接着剤。
【請求項6】
さらにリンの酸素酸又はその誘導体を、接着剤の固形分を基準として、0.01~5質量%含む、請求項1~5いずれか1項に記載の接着剤。
【請求項7】
さらに、平均粒子径が1~10μmである微粒子を含む、請求項1~6いずれか1項に記載の接着剤。
【請求項8】
前記微粒子の含有量が、接着剤の固形分を基準として、0.1~10質量%である、請求項7に記載の接着剤。
【請求項9】
プラスチック層と絵柄層とを有する基材1、請求項1~8いずれか1項に記載の接着剤から形成された脱離性接着剤層、及びシーラント基材2が、この順に外側から積層されている構成を備える包装材。
【請求項10】
前記シーラント基材2が、押出ラミネーションによって積層されてなる層であり、前記脱離性接着剤層の厚みが、0.01~1μmである、請求項9に記載の包装材。
【請求項11】
包装材を塩基性水溶液に浸漬する工程を含むリサイクル基材製造方法であって、前記包装材は、プラスチック層と絵柄層とを有する基材1、請求項1~8いずれか1項に記載の接着剤から形成された脱離性接着剤層、及びシーラント基材2が、この順に外側から積層されている構成を備え、
前記塩基性水溶液は、塩基性化合物を塩基性水溶液全体の0.5~20質量%含み、浸漬時の塩基性水溶液の水温は25~120℃である、リサイクル基材製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材からシーラント基材をリサイクルするための脱離性接着剤層形成に用いられる接着剤、該接着剤を備える包装材、並びに、該包装材からのリサイクル基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックフィルムを原料とするパッケージ、プラスチックボトルその他のプラスチック製品は海洋にゴミとして廃棄・投棄され、環境汚染問題となっている。これらのプラスチック製品は海水中で分解されてサブミクロンサイズの破片(マイクロプラスチック)となり、海水中に浮遊する。当該プラスチックを魚類などの海洋生物が摂取すれば、生物体内中で濃縮され、当該海洋生物を食料として摂取する海鳥や人間の健康にも影響することが懸念される。また、パッケージから発生したマイクロプラスチックの表面には、インキ、接着剤及びコーティング層などに起因する有害物質等も付着しており、より環境保全の点から懸念されている。このような問題を改善するためにマイクロプラスチックを減らす様々な取り組みが始まっている。
【0003】
上記プラスチック製品としてはプラスチック基材を使用した食品包装パッケージなどが主として挙げられる。当該パッケージでは、フィルム基材としてポリエステル(PET)基材、ナイロン(NY)基材、ポリプロピレン(OPP、CPP)基材など、種々のプラスチック基材が使用されている。これらプラスチック基材は、グラビアインキ、フレキソインキ、その他の印刷インキにより絵柄層が施され、更に接着剤等を介してシーラント基材と貼り合わされ、積層体としたのちに、当該積層体をカットして熱融着されてパッケージとなる。
【0004】
上記マイクロプラスチックを削減する試みとしては上記パッケージにおいて(1)プラスチック基材を、再生可能な資源である木を原料とした「紙」に代替する方法、(2)プラスチック基材を単一素材(ポリオレフィン)にモノマテリアル化してリサイクルする方法、(3)不純物を除去してプラスチック基材をリサイクルする方法、などが挙げられる。
【0005】
上記(1)は、安全性・リサイクル性の面で有望だが、ガスバリア性、水蒸気バリア性、耐水性など従来のプラスチック基材と比較して性能的に劣る面が多々ある。
上記(2)は、バリアコート剤などの機能性コーティング剤でポリオレフィンの弱点をカバーする技術が開発されつつあるが、レトルト適性や遮光性など従来のプラスチック基材と比較して性能的に劣るため、ポリオレフィンへの置き換えは容易ではない。さらに、ポリオレフィン基材間のインキ、機能性コーティング剤及び接着剤などは、ポリオレフィンをリサイクルする上で不純物となる課題もある
【0006】
上記(3)としては、リサイクル過程において不純物となる、パッケージ外表面の絵柄層をアルカリ水溶液で除去する試みが行われてきた。
例えば引用文献1では、プラスチック基材上にアクリル系樹脂やスチレンマレイン酸系樹脂からなる下塗り層を設け、下塗り層上に配置された印刷層をアルカリ水により除去する技術が開示されている。また特許文献2では、酸性基を有するポリウレタン樹脂やアクリル樹脂をバインダー樹脂とするインキを印刷し、同じくアルカリ水により当該印刷層を除去する技術が開示されている。しかしながら、これらはパッケージ外側の表刷りインキを除去するのみの技術であって、ラミネート積層体中のシーラント基材とその他の基材とを剥離させるまでには至っていない。
【0007】
プラスチック層及び絵柄層などの印刷層を含む基材とシーラント基材とが、接着剤を用いてラミネートされた包装材において、シーラント基材とその他の基材とを剥離し、特に厚みがあり包装材全体に占める割合の高いシーラント基材をリサイクルする技術は、プラスチックのリサイクルを推進し環境保全に貢献するために、産業上利用できる重要な技術となる。しかし、ラミネート接着剤として求められる要求性能と、シーラント基材とその他の基材とを剥離させる機能とを両立した技術は未だ報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001-131484号公報
【文献】特開平11-209677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって、本発明の課題は、包装材から絵柄層等を容易に脱離させて、シーラント基材を容易に回収することが可能な、脱離性に優れた接着剤、及び該接着剤を備える包装材、並びに、該包装材からのリサイクル基材製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は前記課題に対して鋭意研究を重ねた結果、以下に記載のラミネート接着剤を用いることで解決することを見出し、本発明に至った。本発明は、以下の発明〔1〕~〔11〕に関する。
【0011】
〔1〕プラスチック層と絵柄層とを有する基材1、脱離性接着剤層、及びシーラント基材2が、この順に外側から積層され、基材1を剥離させてシーラント基材2がリサイクルされる包装材を構成する脱離性接着剤層を形成する接着剤であって、前記接着剤が、ポリエステルポリオール成分と、脂肪族ポリイソシアネート、及び芳香脂肪族ポリイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネート成分とを含み、前記接着剤の酸価が5~40mgKOH/gである接着剤。
【0012】
〔2〕前記ポリエステルポリオール成分の数平均分子量が、5,000~15,000である、〔1〕に記載の接着剤。
【0013】
〔3〕前記ポリエステルポリオール成分の酸価が、10~40mgKOH/gである、〔1〕又は〔2〕に記載の接着剤。
【0014】
〔4〕前記ポリエステルポリオール成分が、ポリエステルポリウレタンポリオールの酸無水物変性物を含む、〔1〕~〔3〕いずれか1項に記載の接着剤。
【0015】
〔5〕前記ポリエステルポリオール成分が、数平均分子量5,000~15,000のポリエステルポリオールと、数平均分子量3,000未満のポリエステルポリオールとを含む、〔1〕~〔4〕いずれか1項に記載の接着剤。
【0016】
〔6〕さらにリンの酸素酸又はその誘導体を、接着剤の固形分を基準として、0.01~5質量%含む、〔1〕~〔5〕いずれか1項に記載の接着剤。
【0017】
〔7〕さらに、平均粒子径が1~10μmである微粒子を含む、〔1〕~〔6〕いずれか1項に記載の接着剤。
【0018】
〔8〕前記微粒子の含有量が、接着剤の固形分を基準として、0.1~10質量%である、〔7〕に記載の接着剤。
【0019】
〔9〕プラスチック層と絵柄層とを有する基材1、〔1〕~〔8〕いずれか1項に記載の接着剤から形成された脱離性接着剤層、及びシーラント基材2が、この順に外側から積層されている構成を備える包装材。
【0020】
〔10〕前記シーラント基材2が、押出ラミネーションによって積層されてなる層であり、前記脱離性接着剤層の厚みが、0.01~1μmである、〔9〕に記載の包装材。
【0021】
〔11〕包装材を塩基性水溶液に浸漬する工程を含むリサイクル基材製造方法であって、前記包装材は、プラスチック層と絵柄層とを有する基材1、〔1〕~〔8〕いずれか1項に記載の接着剤から形成された脱離性接着剤層、及びシーラント基材2が、この順に外側から積層されている構成を備え、前記塩基性水溶液は、塩基性化合物を塩基性水溶液全体の0.5~20質量%含み、浸漬時の塩基性水溶液の水温は25~120℃である、リサイクル基材製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、包装材から絵柄層等を容易に脱離させて、シーラント基材を容易に回収することが可能な、脱離性に優れた接着剤、及び該接着剤を備える包装材、並びに、該包装材からのリサイクル基材製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明における接着剤は、プラスチック層と絵柄層とを有する基材1、脱離性接着剤層及びシーラント基材2がこの順に外側から積層されている構成を備えた包装材から、基材1を剥離させてシーラント基材2をリサイクルするための脱離性接着剤層を形成することに用いられる接着剤であって、ポリエステルポリオール成分と、脂肪族ポリイソシアネート及び芳香脂肪族ポリイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネート成分とを含み、酸価が5~40mgKOH/gであることを特徴とする。
当該接着剤は、ポリオール由来のエステル結合とポリイソシアネート由来の脂肪族構造とがアルカリ水溶液との親和性を向上させるため、アルカリ水溶液での基材1と基材2との剥離が容易になる。
当該接着剤は、酸価が5mgKOH/g以上において、酸価によるアルカリとの中和作用により、アルカリ水溶液での基材1と基材2との剥離が容易になり、酸価が40mgKOH/g以下の場合には、基材1及び基材2間の接着性及び耐水性が良好となり、その結果、ラミネート接着剤として求められる接着強度や耐レトルト適性を維持しつつ、優れた脱離性を発揮しシーラント基材を回収することができる。
以下に本発明について詳細に説明するが、これらは本発明の実施態様の一例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0024】
<脱離性接着剤層>
本発明の接着剤は、脱離性接着剤層を形成するために用いられる。「脱離」とは、接着剤層が塩基性水溶液での中和・溶解等によりシーラント基材2から脱離することを指し、(1)脱離性接着剤層が溶解してシーラント基材2と基材1とが剥離する場合、(2)中和・溶解等によりシーラント基材2から接着剤層と基材1とが剥離する場合、の両方の形態を含む。
本発明は、脱離後のシーラント基材2を、リサイクル基材・再生基材として得ることを目的としているため、シーラント基材2から、接着剤層及び基材1をできる限り多く除去した態様が好適である。具体的には、脱離性接着剤層100質量%のうち、面積や膜厚方向において少なくとも50質量%以上が脱離していることが好ましい。より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上が脱離している態様が好ましい。
【0025】
塩基性水溶液に使用する塩基性化合物は特に制限されず、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、アンモニア、水酸化バリウム(Ba(OH)2)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)が好適に用いられるが、これらに限定されない。より好ましくは水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群選ばれる少なくとも1種である。
【0026】
脱離のメカニズムとしては、脱離性接着剤層を含む包装材(例えば、プラスチック層/絵柄層/脱離性接着剤層/シーラント基材2などの態様)において、層間の隙間から塩基性水溶液が浸透して脱離性接着剤層と接触し、接着剤層の溶解等により基材2から脱離すると推測される。したがって、脱離の工程は、包装材が裁断され断面が露出した状態すなわち脱離性接着剤層が露出した状態で行うことが好ましい。
【0027】
<接着剤>
脱離性性接着剤層を形成する本発明の接着剤は、ポリエステルポリオール成分と、脂肪族ポリイソシアネート及び芳香脂肪族ポリイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネート成分とを含み、前記接着剤の酸価が5~40mgKOH/gであることを特徴とする。
【0028】
[ポリエステルポリオール成分]
ポリエステルポリオール成分は、従来公知のポリエステルポリオールから選択することができ、単独又は2種以上を併用してもよい。
ポリエステルポリオール成分は、以下に限定されるものではないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等二塩基酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物(以下、カルボキシル基成分ともいう)と、
例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3′-ジメチロールヘプタン、1,9-ノナンジオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール等のジオール類若しくはそれらの混合物(以下、水酸基成分ともいう)と、
を反応させて得られるポリエステルポリオール;或いは、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール;等が挙げられる。
上記カルボキシル基成分及び水酸基成分は、2種以上を併用してもよい。
【0029】
上記ポリエステルポリオール成分は、ジイソシアネートを反応させたポリエステルポリウレタンポリオールであってもよいし、さらに酸無水物を反応させたものであってもよい。
ジイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート等を挙げることができる。
酸無水物としては、無水ピロメリット酸、無水メリト酸、無水トリメリット酸、トリメリット酸エステル無水物等が挙げられる。トリメリット酸エステル無水物としては、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、プロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテート等が挙げられる。
【0030】
中でも、ポリエステルポリオール成分は、ポリエステルポリウレタンポリオールの酸無水物変性物を含むことが好ましい。ポリエステルポリオール成分がウレタン結合を有することで、優れた耐熱性、接着性を発揮することができる。ポリエステルポリオール成分が酸無水物変性物であると、酸価の細かい制御が可能となり、後述に示すような好適な酸価範囲のポリエステルポリオール成分を容易に得ることができるため好ましい。
【0031】
本発明の接着剤は、酸価が5~40mgKOH/gであるため、ポリエステルポリオール成分が酸価を有していることが好ましく、ポリエステルポリオール成分の酸価は、好ましくは8mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上である。また、ポリエステルポリオール成分の酸価は、好ましくは40mgKOH/g以下である。ポリエステルポリオール成分が上記酸価であると、当該ポリエステルポリオール成分を含む本発明の接着剤から形成される接着剤層は、接着強度を維持しつつ優れた脱離性を発揮し、包装材からのシーラント基材のリサイクル用途において最適なものとなる。
【0032】
ポリエステルポリオール成分が複数のポリエステルポリオールを含む場合、ポリエステルポリオール成分の酸価は、各々のポリエステルポリオールの酸価とその質量比率から求めることができる。
【0033】
ポリエステルポリオール成分は、接着剤層の耐加熱殺菌処理の点及び塗工性の点から、数平均分子量(Mn)が好ましくは3,000~20,000、より好ましくは5,000~15,000、特に好ましくは7,000~12,000である。
ポリエステルポリオール成分の数平均分子量(Mn)が3,000以上であると、塗工性だけでなく十分なレトルト適性を発揮することができ、20,000以下であると塗工性だけでなく脱離性が向上するため好ましい。
【0034】
ポリエステルポリオール成分は、包装材に要求される各種物性を満たすために、複数のポリエステルポリオールを併用してもよい。ポリエステルポリオール成分が複数のポリエステルポリオールを含む場合、ポリエステルポリオール成分の数平均分子量は、各々のポリエステルポリオールの数平均分子量とその質量比率から求めることができる。
本明細書の数平均分子量は、昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「ShodexGPCSystem-21」を用い、溶媒としてテトロヒドロフランを用いて、標準ポリスチレン換算した値である。
【0035】
ポリエステルポリオール成分は、数平均分子量5,000~15,000のポリエステルポリオールを含むことが好ましく、さらに、基材密着性を向上させるために、数平均分子量3,000未満のポリエステルポリオールを含むことが好ましい。
数平均分子量が3,000未満のポリエステルポリオールの含有量は、ポリエステルポリオール成分の全量に対して、好ましくは0~30質量%であり、好ましくは0~20質量%である。30質量%以下である場合、耐レトルト性は低下しないため好ましい。
【0036】
ポリエステルポリオール成分は、接着性能と脱離性の観点から、下記に示す3種類のポリオール成分を含むことができる。
第1のポリオール成分:酸価10mg/KOH以上のポリエステルポリオール
第2のポリオール成分:数平均分子量3,000未満のポリエステルポリオール
第3のポリオール成分:数平均分子量5,000以上のポリエステルポリオール
(ただし、第2のポリオール成分及び第3のポリオール成分は、第1のポリオール成分である場合を除く)
【0037】
第1のポリオール成分は、脱離性を付与する役割を有する。第2のポリオール成分は、基材密着性を改善して塗工性の向上に寄与する。第3のポリオール成分は、レトルト性を向上させる役割を有する。
第1のポリオール成分の含有量は、十分な脱離性を発揮する観点から、ポリエステルポリオール成分全量に対して50質量%以上であることが好ましい。また、第1のポリオール成分は、好ましくはポリエステルポリウレタンポリオールを酸無水物変性したものであり、より好ましくは数平均分子量が5,000以上10,000以下であり、酸価が15mgKOH/g以上40mgKOH/g以下である。
第2のポリオール成分は、好ましくは酸価が5mgKOH/g以下であり、より好ましくは1mgKOH/g以下である。
第3のポリオール成分は、好ましくはポリエステルポリウレタンポリオールを酸無水物変性したものであり、より好ましくは数平均分子量が5,000以上10,000以下であり、酸価が5mgKOH/g以下である。
【0038】
(その他ポリオール)
本発明の接着剤は、上記ポリエステルポリオール成分以外のその他ポリオールを含有してもよい。ポリエステルポリオール成分以外に含有してもよいポリオールは、特に限定されず、例えば、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、ヒマシ油系ポリオール、フッ素系ポリオールが挙げられる。これらは単独で使用、又は2種類以上を併用してもよい。
【0039】
[ポリイソシアネート成分]
本発明の接着剤は、ポリイソシアネート成分として、脂肪族ポリイソシアネート及び芳香脂肪族ポリイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネート成分を含む。ポリイソシアネート成分は従来公知の脂肪族ポリイソシアネート及び芳香脂肪族ポリイソシアネートから選択でき、2種以上を併用してもよい。
【0040】
(脂肪族ポリイソシアネート)
脂肪族ポリイソシアネートは、以下に限定されるものではないが、周知の脂肪族ジイソシアネート又は脂環式ジイソシアネートから誘導された化合物を用いることができる。
本発明で用いることができる脂肪族ポリイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネート;
1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(以下、イソホロンジイソシアネート)、4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート;
又は、上記脂肪族ジイソシアネート又は脂環式ジイソシアネートから誘導された、アロファネートタイプ、ヌレートタイプ、ビウレットタイプ、アダクトタイプの誘導体、若しくはその複合体等のポリイソシアネート;等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとして好ましくは、ラミネート物性のバランスが確保しやすいヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIともいう)から誘導されたポリイソシアネートである。
【0041】
(芳香脂肪族ポリイソシアネート)
芳香脂肪族ポリイソシアネートは、以下に限定されるものではないが、周知の芳香脂肪族ジイソシアネートから誘導された化合物を用いることができる。
本発明で用いることができる芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、1,3-又は1,4-キシリレンジイソシアネート若しくはその混合物、ω,ω′-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン若しくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート;
又は、上記芳香脂肪族ジイソシアネートの誘導体、若しくはその複合体等のポリイソシアネート;等が挙げられる。
【0042】
(その他のポリイソシアネート成分)
本発明の接着剤は、上記脂肪族ポリイソシアネート及び芳香脂肪族ポリイソシアネート以外のその他ポリイソシアネートを含有してもよい。その他ポリイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート;又は、上記ジイソシアネートの誘導体、若しくはその複合体等のポリイソシアネート;等が挙げられる。
【0043】
[その他成分]
本発明の接着剤は、前述のポリエステルポリオール成分と、脂肪族ポリイソシアネート及び芳香脂肪族ポリイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネート成分以外のその他成分を含有してもよい。その他成分は、ポリエステルポリオール成分又はポリイソシアネート成分のいずれに配合してもよいし、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを配合する際に添加してもよい。
【0044】
(シランカップリング剤)
本発明の接着剤は、耐熱水性を高めるため、さらにシランカップリング剤を含有することができる。シランカップリング剤としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するトリアルコキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシジル基を有するトリアルコキシシラン等が挙げられる。シランカップリング剤の添加量は、接着剤の固形分を基準として0.1~5質量%であることが好ましく、0.5~3質量%であることがより好ましい。
【0045】
(リンの酸素酸又はその誘導体)
本発明の接着剤は、耐酸性を高めるため、さらにリンの酸素酸又はその誘導体を含有することができる。リンの酸素酸又はその誘導体の内、リンの酸素酸としては、遊離の酸素酸を少なくとも1個有しているものであればよく、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸等のリン酸類、メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸等の縮合リン酸類が挙げられる。また、リンの酸素酸の誘導体としては、上記のリンの酸素酸を遊離の酸素酸を少なくとも1個残した状態でアルコール類と部分的にエステル化されたもの等が挙げられる。これらのアルコールとしては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等の脂肪族アルコール、フェノール、キシレノール、ハイドロキノン、カテコール、フロログリシノール等の芳香族アルコール等が挙げられる。リンの酸素酸又はその誘導体は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。リンの酸素酸又はその誘導体の添加量は、接着剤の固形分を基準として0.01~10質量%であることが好ましく、0.05~5質量%であることがより好ましく、0.1~1質量%であることが特に好ましい。
【0046】
また、本発明の接着剤は、脱離性を向上させシーラント基材のリサイクル性を高めるため、上述のリンの酸素酸又はその誘導体を含有することができる。包装材の強度と脱離性の観点から、リンの酸素酸又はその誘導体の含有量は、接着剤の固形分を基準として好ましくは0.01~5質量%である。
より詳細には、リンの酸素酸の配合量は、接着剤の固形分を基準としてより好ましくは0.01~1質量%であり、さらに好ましくは0.01~0.5質量%である。配合量が0.01質量%以上であると、包装材の強度を維持しつつ、より脱離性が向上する。1質量%以内であると、包装材としての強度により優れる。
リン酸誘導体の配合量は、接着剤の固形分を基準として好ましくは0.01~5質量%であり、より好ましくは0.1~3質量%である。配合量が0.01質量%以上であると、包装材の強度を維持しつつ、より脱離性が向上する。5質量%以内であると、包装材としての強度により優れる。
【0047】
(レベリング剤又は消泡剤)
本発明の接着剤は、積層体の外観を向上させるため、さらにレベリング剤又は消泡剤を含有することができる。レベリング剤としては、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アクリル系共重合物、メタクリル系共重合物、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル共重合物、レシチン等が挙げられる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、シリコーン溶液、アルキルビニルエーテルとアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合物等の公知のものが挙げられる。
【0048】
(反応促進剤)
本発明の接着剤は、ウレタン化反応を促進するため、さらに反応促進剤を含有することができる。反応促進剤としては、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジマレート等金属系触媒;1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン-5、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等の3級アミン;トリエタノールアミンのような反応性3級アミン等が挙げられ、これらの群から選ばれた1種又は2種以上の反応促進剤を使用できる。
【0049】
本発明の接着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレークなどの無機充填剤、層状無機化合物、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤等)、防錆剤、増粘剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、フィラー、結晶核剤、硬化反応を調整するための触媒等が例示できる。
【0050】
また、本発明の接着剤は、脱離性を向上させシーラント基材のリサイクル性を高めるため、上述の添加剤として、平均粒子径が1~10μmである微粒子を含有することができる。このような微粒子を含むことで、基材への投錨効果により包装材の強度が維持されつつ、接着剤と基材の接触面積が減少するため脱離性が向上すると推察される。
平均粒子径が1μm以上であると、包装材の強度を維持しつつ、より脱離性が向上する。平均粒子径が10μm以内であると、包装材としての強度が維持できる。なお、本明細書における平均粒子径は、レーザー回折・散乱法を用いた粒子径分布測定装置で測定したときのメジアン径を意味する。
前記平均粒子径が1~10μmである微粒子としては、特に制限されず、例えば、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレークなどの無機充填剤のほか、水酸化アルミニウム、沈降性硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ゼオライト、及びアクリルビーズやウレタンビーズ等の樹脂ビーズが挙げられる。
【0051】
前記微粒子の配合量は、包装材の強度と脱離性の観点から、接着剤の固形分を基準として、好ましくは0.1~10質量%であり、より好ましくは0.5~5.0質量%である。配合量が0.5質量%以上であると、包装材の強度が維持しつつ、より脱離性が向上する。5.0質量%以内であると、包装材としての強度により優れる。
【0052】
本発明の接着剤は、前記リンの酸素酸又はその誘導体と、前記平均粒子径が1~10μmである微粒子と、を併用して配合することが好ましい。上記を併用することで、より脱離性や除去率が向上する。
【0053】
本発明の接着剤は、その粘度が常温~150℃、好ましくは常温~100℃で100~10,000mPa・s、好ましくは100~5,000mPa・sの場合は無溶剤型で用いることができる。接着剤の粘度が上記範囲より高い場合は、有機溶剤で希釈してもよい。有機溶剤としては、例えば酢酸エチル等のエステル系、メチルエチルケトン等のケトン系、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系等の、ポリイソシアネート成分に対して不活性なものが好適に用いられ、適宜選択して使用できる。
【0054】
本発明の接着剤は、ポリエステルポリオール成分及びポリイソシアネート成分を含む2液硬化型のウレタン系接着剤であるが、配合直後の酸価は5mgKOH/g以上であり、より好ましくは7mgKOH/g以上、特に好ましく10mgKOH/g以上である。また、本発明の接着剤の配合直後の酸価は、40mgKOH/g以下であり、好ましくは30mgKOH/g以下、より好ましくは20mgKOH/g以下である。
【0055】
ポリエステルポリオール成分とポリイソシアネート成分とを配合する際は、ポリオール中の水酸基に対するポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、0.3~5.0になるよう配合する。より好ましくは0.3~2.0であり、特に好ましくは、0.5~1.5である。
【0056】
脱離性接着剤層は本発明の接着剤から形成される。接着剤層を形成する方法としては、一般的に、プラスチック層と絵柄層とを有する基材1の一方の面に接着剤を塗布し、必要に応じて乾燥工程を経て有機溶剤を揮散させた後、ラミネーターを用いてシーラント基材2の一方の面と貼り合せ、常温又は加温下に硬化させて脱離性接着剤層を形成する方法が挙げられる。
また、前記シーラント基材2は、押出ラミネーションによって積層されてなる層であってもよい。押出ラミネーションでシーラント基材2を積層する方法としては、プラスチック層と絵柄層とを有する基材1の一方の面に接着剤を塗布し、必要に応じて乾燥工程を経て有機溶剤を揮散させた後、Tダイ法により溶融させたシーラント樹脂を押し出し、冷却ロールによりシーラント基材2を積層させ、常温又は加温下で硬化させて脱離性接着剤層を形成する方法が挙げられる。
接着剤の乾燥後塗布量は任意であるが、通常0.001~6g/m2の範囲であり、好ましくは、無溶剤型では1~2g/m2、溶剤型では1~6g/m2の範囲である。
また、前記シーラント基材2が、押出ラミネーションによって積層されてなる層である場合、接着剤の乾燥後塗布量は、好ましくは0.01~1g/m2の範囲であり、より好ましくは0.05~0.5g/m2の範囲である。
【0057】
<包装材>
本発明における包装材は、プラスチック層と絵柄層とを有する基材1、本発明の接着剤から形成された脱離性接着剤層及びシーラント基材2が、この順に外側から積層されている構成を備えたものであり、基材1に接して脱離性接着剤層が設けられており、かつ、前記脱離性接着剤層の基材1と反対の側にシーラント基材2が設けられているものである。
前記脱離性接着剤層の厚みは、接着剤の種類やシーラント基材2によって適宜調整可能だが、好ましくは1~10μmであり、より好ましくは1~6μmである。特にシーラント基材2が押出ラミネーションによって積層されてなる層である場合、脱離性接着剤層の厚みは、好ましくは0.01~1μmであり、より好ましくは0.05~0.5μmである。
【0058】
[基材1]
基材1は、基材1を構成する複数の層中に、少なくともプラスチック層と絵柄層とを有し、フィルム状であることが好ましい。基材1の厚みは、好ましくは5~200μm、より好ましくは10~100μmである。
【0059】
(プラスチック層)
プラスチック層としては、包装材に一般的に使用されるものが挙げられ、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)等のポリエステル樹脂フィルム;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂フィルム;ポリスチレン樹脂フィルム;ナイロン6、ポリ-p-キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)等のポリアミド樹脂フィルム;ポリカーボネート樹脂フィルム;ポリアクリルニトリル樹脂フィルム;ポリイミド樹脂フィルム;これらの複層体(例えば、ナイロン6/MXD6/ナイロン6、ナイロン6/エチレン-ビニルアルコール共重合体/ナイロン6)や混合体等が挙げられる。中でも、機械的強度や寸法安定性を有するものが好ましい。
プラスチック層は、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上30μm以下の厚みを有するものである。
【0060】
(絵柄層)
絵柄層は、装飾、内容物の表示、賞味期間の表示、製造者、販売者などの表示、その他などの表示や美感の付与のために、文字、数字、絵柄、図形、記号、模様などの所望の任意の印刷模様を形成する層であり、ベタ印刷層も含む。絵柄層は、従来公知の顔料や染料を用いて形成することができ、絵柄層の形成方法は特に限定されない。
一般的には、絵柄層は、顔料や染料等の着色剤を含む印刷インキを用いて形成される。印刷インキの塗工方法は特に限定されず、グラビアコート法、フレキソコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スピンコート法、インクジェット法等の方法により塗布することができる。これを放置するか、必要により送風、加熱、減圧乾燥、紫外線照射等を行うことにより印刷層を形成することができる。
絵柄層は、好ましくは0.1μm以上10μm以下、より好ましくは1μm以上5μm以下、さらに好ましくは1μm以上3μm以下の厚みを有するものである。
【0061】
基材1は、プラスチック層及び絵柄層に加えて、さらに別の層を有していてもよい。上記別の層は、プラスチック層と絵柄層との間、プラスチック層上又は絵柄層上のいずれかに設けることができる。
プラスチック層と絵柄層との間に有してもよい別の層としては、例えば、下地層又はアンカー層が挙げられる。プラスチック層上又は絵柄層上に有してもよい別の層としては、上述のプラスチック層、紙、又は金属箔や蒸着層等のガスバリア層が挙げられる。これら別の層は複数形成されていてもよく、接着剤層を介して積層されていてもよい。
紙としては、天然紙や合成紙等が挙げられる。
ガスバリア層としては、アルミニウム箔の他、アルミニウム、シリカ、アルミナ等の蒸着層が挙げられる。例えばアルミニウム箔の場合は、経済的な面から3~50μmの範囲の厚みが好ましい。
別の層を積層するための接着剤層としては、公知の接着剤又は本発明の接着剤いずれを用いてもよい。
【0062】
[シーラント基材2]
シーラント基材2としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテート共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマー等が挙げられる。
リサイクル性の観点からは、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレン等のポリエチレン、酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン等ポリオレフィン樹脂が好ましい。
レトルト時の耐熱性の観点からは、ポリプロピレン系樹脂が好ましく、ヒートシール性の観点から未延伸ポリプロピレンが特に好ましい。
シーラント基材2の厚みは特に限定されないが、包装材への加工性やヒートシール性等を考慮すると、好ましくは10~150μmであり、より好ましくは20~70μmである。また、シーラント基材2に数μm程度の高低差を有する凸凹を設けることで、滑り性や包装材の引き裂き性を付与することができる。
シーラント基材を積層する方法は特に限定されず、例えば、本発明の接着剤を用いて、基材1とシーラント基材2とを熱によってラミネートする方法(熱ラミネート、ドライラミネート)や、シーラント樹脂を溶融させて本発明の接着剤を用いた接着剤層上に押出し、冷却固化させてシーラント基材2を形成する方法(押出ラミネーション法)等が挙げられる。
【0063】
以下に、本発明の包装材の構成の一例を挙げるが、これらに限定されない。
2軸延伸ポリプロピレン(OPP)/絵柄層/脱離性接着剤層/無延伸ポリプロピレン(CPP)、
OPP/絵柄層/脱離性接着剤層/AL蒸着CPP、
OPP/絵柄層/脱離性接着剤層/PE、
絵柄層/OPP/脱離性接着剤層/CPP、
NY/絵柄層/脱離性接着剤層/PE、
絵柄層/NY/脱離性接着剤層/CPP
NY/絵柄層/脱離性接着剤層/CPP、
PET/絵柄層/脱離性接着剤層/CPP、
絵柄層/PET/脱離性接着剤層/CPP
PET/絵柄層/接着剤層/NY/脱離性接着剤層/CPP、
透明蒸着PET/絵柄層/接着剤層/NY/脱離性接着剤層/CPP、
PET/絵柄層/接着剤層/AL/脱離性接着剤層/CPP、
PET/絵柄層/接着剤層/AL/脱離性接着剤層/PE、
PET/絵柄層/接着剤層/NY/接着剤層/AL/脱離性接着剤層/CPP、
PET/絵柄層/接着剤層/AL/接着剤層/NY/脱離性接着剤層/CPP。
【0064】
<リサイクル基材製造方法>
本発明のリサイクル基材製造方法は、プラスチック層と絵柄層とを有する基材1、脱離性接着剤層及びシーラント基材2が、この順に外側から積層されている構成を備えた包装材を、塩基性水溶液に浸漬する工程を含む。より詳細には、本発明のリサイクル基材製造方法は、包装材を塩基性水溶液に浸漬する工程、及び、包装材から、プラスチック層と絵柄層とを有する基材1を剥離させてシーラント基材2を回収する工程、を含む。
【0065】
塩基性水溶液は、塩基性化合物を塩基性水溶液全体の0.5~20質量%含むことが好ましく、より好ましくは1~15質量%、特に好ましくは、3~15質量%含む。濃度が上記範囲内にあることで、塩基性水液は、脱離性接着剤を溶解又は膨潤により脱離させて、基材1を剥離させるのに充分な塩基性を保持することができる。
塩基性水溶液は、包装材の端部分から浸透して脱離性接着剤層に接触し、溶解又は膨潤することで、基材1と基材2とを分離する。したがって効率的に脱離工程を進めるために、包装材は裁断又は粉砕され、塩基性水溶液に浸漬する際に、断面に脱離接着剤層が露出している状態であることが好ましい。このような場合、より短時間で絵柄インキ層・基材等を脱離することができる。
【0066】
包装材を浸漬する時の塩基性水溶液の温度は、好ましくは25~120℃、より好ましくは30~120℃、特に好ましくは30~80℃である。塩基性水溶液への浸漬時間は、好ましくは1分間~24時間、より好ましくは1分間~12時間、好ましくは1分間~6時間である。塩基性水溶液の使用量は、包装材の質量に対して、好ましくは100~100万倍量であり、脱離効率を向上させるために、塩基性水溶液の撹拌又は循環等を行うことが好ましい。回転速度は、好ましくは80~250rpm、より好ましくは80~200rpmである。
【0067】
包装材から、プラスチック層と絵柄層とを有する基材1を剥離させてシーラント基材2を回収した後、シーラント基材2を水洗・乾燥する工程を経た後、リサイクル基材を得ることができるシーラント基材2の表面における、脱離性接着剤層の除去率は、脱離性接着剤層100質量%のうち、好ましくは40質量%以上、より好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0068】
したがって、本発明によれば、包装材を塩基性水溶液に浸漬する工程、接着剤層を脱離させる工程、包装材からプラスチック層と絵柄層とを有する基材1を剥離させてシーラント基材2を回収する工程、シーラント基材2を水洗及び乾燥する工程、を経ることで、シーラント基材のリサイクル基材を得ることができる。また、得られたリサイクル基材は、押出機等によりペレット状に加工し、再生樹脂として再利用することができる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に断りの無い限り「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0070】
<酸価の測定>
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解し、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持した。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定し、次式により酸価を求めた。
酸価(mgKOH/g)=(5.611×a×F)/S
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液のファクター
【0071】
<数平均分子量(Mn)>
数平均分子量(Mn)の測定は、昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「ShodexGPCSystem-21」を用いて測定した。測定では、溶媒としてテトロヒドロフランを用い、標準ポリスチレン換算した値を求めた。
【0072】
<ポリオールの製造>
(製造例1)ポリエステルポリオール(P-1)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール263部、ネオペンチルグリコール468部、イソフタル酸472部、アジピン酸528部を仕込み、窒素気流下で撹拌しながら250℃まで昇温した。酸価が5以下になるまで反応を続けた後に、徐々に減圧を行って、1mmHgで5時間脱グリコール反応を行い、ポリエステルポリオールを得た。次いで不揮発分50%になるまで酢酸エチルで希釈することで、数平均分子量2,500、酸価0.5mgKOH/gのポリエステルポリオール(P-1)の溶液を得た。
【0073】
(製造例2)ポリエステルポリオール(P-2)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール236部、ネオペンチルグリコール263部、1,6-ヘキサンジオール202部、テレフタル酸82部、イソフタル酸682部、アジピン酸236部を仕込み、窒素気流下で撹拌しながら250℃まで昇温した。酸価が5以下になるまで反応を続けた後に、徐々に減圧を行って、1mmHgで5時間脱グリコール反応を行い、ポリエステルポリオールを得た。その後、イソホロンジイソシアネート2部を徐々に添加し、150℃で約2時間反応を行い、ポリエステルポリウレタンポリオールを得た。このポリエステルポリウレタンポリオール100部に無水トリメリット酸を2.5部添加し、180℃で約2時間反応させ、その後不揮発分50%になるまで酢酸エチルで希釈することで、数平均分子量6,000、酸価14.5mgKOH/gの部分酸変性ポリエステルポリオール(P-2)の溶液を得た。
【0074】
(製造例3)ポリエステルポリオール(P-3)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール202部、2-メチル-1,3-プロパンジオール331部、1,6-ヘキサンジオール77部、テレフタル酸262部、イソフタル酸393部、アジピン酸345部を仕込み、窒素気流下で撹拌しながら250℃まで昇温した。酸価が5以下になるまで反応を続けた後に、徐々に減圧を行って、1mmHgで5時間脱グリコール反応を行い、ポリエステルポリオールを得た。その後、イソホロンジイソシアネート2部を徐々に添加し、150℃で約2時間反応を行い、ポリエステルポリウレタンポリオールを得た。このポリエステルポリウレタンポリオール100部に無水トリメリット酸を0.6部添加し、180℃で約2時間反応させ、その後不揮発分50%になるまで酢酸エチルで希釈することで、数平均分子量7,000、酸価3.6mgKOH/gの部分酸変性ポリエステルポリオール(P-3)の溶液を得た。
【0075】
(製造例4)ポリエステルポリオール(P-4)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール202部、ネオペンチルグリコール253部、1,6-ヘキサンジオール247部、イソフタル酸682部、アジピン酸72部、セバシン酸274部を仕込み、窒素気流下で撹拌しながら250℃まで昇温した。酸価が5以下になるまで反応を続けた後に、徐々に減圧を行って、1mmHgで5時間脱グリコール反応を行い、ポリエステルポリオールを得た。その後、イソホロンジイソシアネート20部を徐々に添加し、150℃で約2時間反応を行い、ポリエステルポリウレタンポリオールを得た。このポリエステルポリウレタンポリオール100部にエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートを3.5部添加し、180℃で約2時間反応させ、その後不揮発分50%になるまで酢酸エチルで希釈することで、数平均分子量8,000、酸価9.9mgKOH/gの部分酸変性ポリエステルポリオール(P-4)の溶液を得た。
【0076】
(製造例5)ポリエステルポリオール(P-5)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール240部、ネオペンチルグリコール253部、1,6-ヘキサンジオール247部、イソフタル酸682部、アジピン酸72部、セバシン酸274部を仕込み、窒素気流下で撹拌しながら250℃まで昇温した。酸価が5以下になるまで反応を続けた後に、徐々に減圧を行って、1mmHgで5時間脱グリコール反応を行い、ポリエステルポリオールを得た。その後、イソホロンジイソシアネート40部を徐々に添加し、150℃で約2時間反応を行い、ポリエステルポリウレタンポリオールを得た。このポリエステルポリウレタンポリオール100部にエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートを13.0部添加し、180℃で約2時間反応させ、その後不揮発分50%になるまで酢酸エチルで希釈することで、数平均分子量9,500、酸価32.1mgKOH/gの部分酸変性ポリエステルポリオール(P-5)の溶液を得た。
【0077】
(製造例6)ポリエステルポリオール(P-6)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール283部、ネオペンチルグリコール468部、イソフタル酸472部、アジピン酸528部を仕込み、窒素気流下で撹拌しながら250℃まで昇温した。酸価が5以下になるまで反応を続けた後に、徐々に減圧を行って、1mmHgで5時間脱グリコール反応を行い、ポリエステルポリオールを得た。このポリエステルポリオール100部に無水トリメリット酸を3.5部添加し、180℃で約2時間反応させ、その後不揮発分50%になるまで酢酸エチルで希釈することで、数平均分子量2,000、酸価21.1mgKOH/gの部分酸変性ポリエステルポリオール(P-6)の溶液を得た。
【0078】
(製造例7)ポリエーテルポリオール(P-7)
P-2000(商品名、ADEKA株式会社製、2官能ポリオキシプロピレングリコール、水酸基価56.1)を81.95部、P-400(商品名、ADEKA株式会社製、2官能ポリオキシプロピレングリコール、水酸基価265.9)を382.3部、T-400(商品名、三井化学株式会社製、3官能ポリオキシプロピレングリコール、水酸基価404)を81.95部、ジメチロールプロピオン酸19部、酢酸エチルを132.91部、トリレンジイソシアネートを95.53部、及び4,4-ジフェニルメタンジイソシアネートを121部、ジブチル錫ラウレート0.22部を仕込み、90℃に昇温し、赤外吸収スペクトルでイソシアネート基のピークが無くなるまで反応を行った。次いで、不揮発分50%になるように酢酸エチルで希釈することで、数平均分子量9,000、酸価10.4mgKOH/gの部分酸変性ポリエーテルポリオール(P-7)の溶液を得た。
【0079】
【0080】
<ポリイソシアネートの調整>
(製造例8)ポリイソシアネート(C-1)
コロネート2785(ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるビウレット型ポリイソシアネート、東ソー社製)を酢酸エチルに希釈して、不揮発分50%、NCO%=9.6%に調整し、ポリイソシアネート(C-1)の溶液を得た。
【0081】
(製造例9)ポリイソシアネート(C-2)
ベスタナートT1890/100(イソホロンジイソシアネート(以下、IPDI)から誘導されるヌレート型ポリイソシアネート、エボニックコーポレーション製)を酢酸エチルに希釈して、不揮発分50%、NCO%=8.7%に調整し、ポリイソシアネート(C-2)の溶液を得た。
【0082】
(製造例10)ポリイソシアネート(C-3)
タケネートD-110NB(キシリレンジイソシアネート(以下、XDI)から誘導されるトリメチロールプロパンアダクト型ポリイソシアネート、三井化学社製)を酢酸エチルに希釈して、不揮発分50%、NCO%=7.9%に調整し、ポリイソシアネート(C-3)の溶液を得た。
【0083】
(製造例11)ポリイソシアネート(C-4)
コロネートL(トルエンジイソシアネート(以下、TDI)から誘導されるトリメチロールプロパンアダクト型ポリイソシアネート、東ソー社製)を酢酸エチルに希釈して、不揮発分50%、NCO%=8.8%に調整し、ポリイソシアネート(C-4)の溶液を得た。
【0084】
(製造例12)ポリイソシアネート(C-5)
ミリオネートMR-200(ジフェニニルメタンジイソシアネート(以下、MDI)から誘導されるポリメリック型ポリイソシアネート、東ソー社製)を酢酸エチルに希釈して、不揮発分50%、NCO%=8.8%に調整し、ポリイソシアネート(C-5)の溶液を得た。
【0085】
<接着剤の製造>
[実施例1~23、比較例1~6]
上記製造例1~12で得られたポリオール溶液、及びポリイソシアネート溶液を、表2及び表3に示す割合(質量比)で配合し、酢酸エチルを加えて不揮発分30%の接着剤溶液を調整した。
【0086】
[実施例24~26]
上記製造例1~3、5、6、8で得られたポリオール溶液、及びポリイソシアネート溶液を、表4に示す割合(質量比)で配合し、酢酸エチルを加えて不揮発分13%の接着剤溶液を調整した。
【0087】
<接着剤の評価>
得られた接着剤溶液を用いて、下記の方法で包装材1~3を作製した。得られた包装材について、接着強度、脱離性試験を下記の通り行った。結果を表2~表4に示す。
【0088】
(包装材1の製造)
印刷インキ(東洋インキ(株)製、リオアルファR39藍、R631白)を、各々、酢酸エチル/IPA混合溶剤(質量比70/30)により、粘度が16秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈した。コロナ処理PETフィルム(厚み12μm)に対し、希釈した各印刷インキを、版深35μmのベタ版を備えたグラビア校正2色機にて、藍、白の順で印刷した。印刷速度は50m/分であり、乾燥は各ユニットにおいて50℃で行い、PET/絵柄層の積層体を得た。絵柄層の厚みは、1μmとした。
次いで、得られた積層体の絵柄層上に、ラミネーターを用いて接着剤(東洋モートン(株)製、TM-250HV/CAT-RT86L-60)を塗布し溶剤を揮散させた後、塗布面を、厚み15μmのナイロンフィルムと貼り合わせた。接着剤層の厚みは3μmとした。
次いで、得られた積層体のナイロンフィルム面に、実施例及び比較例で得られた接着剤を先程と同様に塗布し溶剤を揮散させた後、塗布面を、厚み70μmの表面コロナ放電処理済みCPPフィルムと貼り合わせた。脱離性接着剤層の厚みは3μmとした。
次いで、得られた積層体を40℃で4日間保温し、PET(12μm)/絵柄層(1μm)/接着剤層(3μm)/NY(15μm)/脱離性接着剤層(3μm)/CPP(70μm)の構成を備えた包装材を得た。
【0089】
(包装材2の製造)
印刷インキ(東洋インキ(株)製、リオアルファR39藍、R631白)を、各々、酢酸エチル/IPA混合溶剤(質量比70/30)により、粘度が16秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈した。コロナ処理OPPフィルム(厚み20μm)に対し、希釈した各印刷インキを、版深35μmのベタ版を備えたグラビア校正2色機にて、藍、白の順で印刷した。印刷速度は50m/分であり、乾燥は各ユニットにおいて50℃で行い、OPP/絵柄層の積層体を得た。絵柄層の厚みは、1μmとした。
次いで、得られた積層体の絵柄層上に、ラミネーターを用いて、実施例及び比較例で得られた接着剤を塗布し溶剤を揮散させた後、塗布面を、厚み25μmの表面コロナ放電処理済みCPPフィルムと貼り合わせた。
次いで、得られた積層体を40℃で4日間保温し、OPP(20μm)/絵柄層(1μm)/脱離性接着剤層(2μm)/CPP(25μm)の構成を備えた包装材を得た。
【0090】
(包装材3の製造)
印刷インキ(東洋インキ(株)製、リオアルファR39藍、R631白)を、各々、酢酸エチル/IPA混合溶剤(質量比70/30)により、粘度が16秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈した。厚み12μmのコロナ処理PETフィルム(PET)に対し、希釈した各印刷インキを、版深35μmのベタ版を備えたグラビア校正2色機にて、藍、白の順で印刷した。印刷速度は50m/分であり、乾燥は各ユニットにおいて50℃で行い、PET/絵柄層の積層体を得た。絵柄層の厚みは、1μmとした。
次いで、得られた積層体を第一のロールから送出し、絵柄層上に実施例で得られた接着剤を、グラビアコーターを用いて塗布し溶剤を揮散させ、厚み0.3μmの脱離性接着剤層を形成し、Tダイからエクストリュージョンポリエチレン(LDPEEXT)を315℃で押出した後、冷却ロールで冷却し巻き取った。
次いで、得られた積層体を40℃で4日間保温し、PET(12μm)/絵柄層(1μm)/脱離性接着剤層(0.3μm)/LDPEEXT(30μm)の構成を備えた包装材を得た。
【0091】
<包装材1の評価>
(レトルト前の接着強度)
包装材1から、15mm×300mmの大きさの試験片を作り、引張り試験機を用い、温度20℃、相対湿度65%の条件下で、T型剥離により、剥離速度30cm/分で、NY/CPP間のラミネート強度(N/15mm)を測定した。
【0092】
(レトルト後の接着強度)
包装材1を用いて、21cm×30cmの大きさのパウチを作製し、内容物として、サラダ油、ケチャップ、4.2%食酢を1:1:1の質量比で配合したソースを真空充填した。得られたパウチを10rpm、120℃、30分間、3MPaの加圧下で熱水殺菌を行った。
上記レトルト処理を行ったパウチから、15mm×300mmの大きさの試験片を作り、レトルト前の接着強度と同様にして、NY/CPP間のラミネート強度(N/15mm)を測定した。
【0093】
(脱離性)
上記レトルト処理した後のパウチから、2.0cm×2.0cmの大きさの試験片を3片切り出し、70℃の水酸化ナトリウム(NaOH)2%水溶液50g中に、回転速度100rpmで浸漬・撹拌を行った。NYとCPPとの間が剥離する時間を測定し、下記基準で評価した。
◎:20分間以内に、NYとCPPとの間が全て剥離する(非常に良好)
○:20分間以上1時間以内に、NYとCPPとの間が全て剥離する(良好)
△:1時間以上12時間以内に、NYとCPPとの間が全て剥離する(使用可能)
×:12時間以内に、NYとCPPとの間が全て剥離しない(使用不可)
【0094】
(除去率)
上記レトルト処理した後のパウチから、2.0cm×2.0cmの大きさの試験片を切り出し、70℃の水酸化ナトリウム(NaOH)2%水溶液50g中に、回転速度100rpmで1時間浸漬・撹拌を行い、NYとCPPとの間を剥離させた後、水洗、乾燥を行い、2.0cm×2.0cmの大きさのリサイクルCPPフィルムを得た。
得られたリサイクルCPPフィルムの、脱離性接着剤層が接していた面の、4端部とセンター部の計5か所について、FT-IRを用いて接着剤の吸収ピークの有無を確認し、下記基準で評価した。1時間以内にNYとCPPとの間が剥離しないものは、評価不可とした。
◎:5か所全てにおいて、接着剤の吸収ピークが無い(除去率が100%程度:非常に良好)
○:5か所中1か所のみに、接着剤の吸収ピークがある(除去率が80%程度:良好)
△:5か所中2~3か所に、接着剤の吸収ピークがある(除去率が40~60%程度:使用可能)
×:5か所中4か所以上に、接着剤の吸収ピークがある(除去率が20%程度:使用不可)
【0095】
<包装材2の評価>
(接着強度)
包装材2から、15mm×300mmの大きさの試験片を作り、引張り試験機を用い、温度20℃、相対湿度65%の条件下で、T型剥離により、剥離速度30cm/分で、OPP/CPP間のラミネート強度(N/15mm)を測定した。
【0096】
(脱離性(1))
得られた包装材2について、2.0cm×2.0cmの大きさの試験片を切り出し、70℃の水酸化ナトリウム(NaOH)2%水溶液50g中に、回転速度100rpmで浸漬・撹拌を行った。OPPとCPPとの間が剥離する時間を測定し、下記基準で評価した。
◎:20分間以内に、OPPとCPPとの間が全て剥離する(非常に良好)
○:20分間以上1時間以内に、OPPとCPPとの間が全て剥離する(良好)
△:1時間以上12時間以内に、OPPとCPPとの間が全て剥離する(使用可能)
×:12時間以内に、OPPとCPPとの間が全て剥離しない(使用不可)
【0097】
(脱離性(2))
得られた包装材2について、3.0cm×3.0cmの大きさの試験片を切り出し、70℃の水酸化ナトリウム(NaOH)2%水溶液50g中に、回転速度50rpmで浸漬・撹拌を行った。OPPとCPPとの間が剥離する時間を測定し、下記基準で評価した。
◎:20分間以内に、OPPとCPPとの間が全て剥離する(非常に良好)
○:20分間以上1時間以内に、OPPとCPPとの間が全て剥離する(良好)
△:1時間以上12時間以内に、OPPとCPPとの間が全て剥離する(使用可能)
×:12時間以内に、OPPとCPPとの間が全て剥離しない(使用不可)
【0098】
(除去率(1))
得られた包装材2について、2.0cm×2.0cmの大きさの試験片を切り出し、70℃の水酸化ナトリウム(NaOH)2%水溶液50g中に、回転速度100rpmで1時間浸漬・撹拌を行い、OPPとCPPとの間を剥離させた後、水洗、乾燥を行い、2.0cm×2.0cmの大きさのリサイクルCPPフィルムを得た。
得られたリサイクルCPPフィルムの、脱離性接着剤層が接していた面の、4端部とセンター部の計5か所について、FT-IRを用いて接着剤の吸収ピークの有無を確認し、下記基準で評価した。1時間以内にOPPとCPPとの間が剥離しないものは、評価不可とした。
◎:5か所全てにおいて、接着剤の吸収ピークが無い(除去率が100%程度:非常に良好)
○:5か所中1か所のみに、接着剤の吸収ピークがある(除去率が80%程度:良好)
△:5か所中2~3か所に、接着剤の吸収ピークがある(除去率が40~60%程度:使用可能)
×:5か所中4か所以上に、接着剤の吸収ピークがある(除去率が20%程度:使用不可)
【0099】
(除去率(2))
得られた包装材2について、3.0cm×3.0cmの大きさの試験片を切り出し、70℃の水酸化ナトリウム(NaOH)2%水溶液50g中に、回転速度50rpmで1時間浸漬・撹拌を行い、OPPとCPPとの間を剥離させた後、水洗、乾燥を行い、3.0cm×3.0cmの大きさのリサイクルCPPフィルムを得た。
得られたリサイクルCPPフィルムの、脱離性接着剤層が接していた面の、4端部とセンター部の計5か所について、FT-IRを用いて接着剤の吸収ピークの有無を確認し、下記基準で評価した。1時間以内にOPPとCPPとの間が剥離しないものは、評価不可とした。
◎:5か所全てにおいて、接着剤の吸収ピークが無い(除去率が100%程度:非常に良好)
○:5か所中1か所のみに、接着剤の吸収ピークがある(除去率が80%程度:良好)
△:5か所中2~3か所に、接着剤の吸収ピークがある(除去率が40~60%程度:使用可能)
×:5か所中4か所以上に、接着剤の吸収ピークがある(除去率が20%程度:使用不可)
【0100】
<包装材3の評価>
(ボイル前の接着強度)
包装材3から、15mm×300mmの大きさの試験片を作り、引張り試験機を用い、温度20℃、相対湿度65%の条件下で、T型剥離により、剥離速度30cm/分で、PET/LDPEEXT間のラミネート強度(N/15mm)を測定した。
【0101】
(ボイル後の接着強度)
包装材3を用いて、21cm×30cmの大きさのパウチを作製し、内容物として水を真空充填した。得られたパウチを85℃、30分間加熱処理を行った。
上記ボイル処理を行ったパウチから、15mm×300mmの大きさの試験片を作り、ボイル前の接着強度と同様にして、PET/LDPEEXT間のラミネート強度(N/15mm)を測定した。
【0102】
(脱離性)
上記ボイル処理した後のパウチから、2.0cm×2.0cmの大きさの試験片を3片切り出し、70℃の水酸化ナトリウム(NaOH)2%水溶液50g中に、回転速度100rpmで浸漬・撹拌を行った。PETとLDPEEXTとの間が剥離する時間を測定し、下記基準で評価した。
◎:20分間以内に、PETとLDPEEXTとの間が全て剥離する(非常に良好)
○:20分間以上1時間以内に、PETとLDPEEXTとの間が全て剥離する(良好)
△:1時間以上12時間以内に、PETとLDPEEXTとの間が全て剥離する(使用可能)
×:12時間以内に、PETとLDPEEXTとの間が全て剥離しない(使用不可)
【0103】
(除去率)
上記ボイル処理した後のパウチから、2.0cm×2.0cmの大きさの試験片を切り出し、70℃の水酸化ナトリウム(NaOH)2%水溶液50g中に、回転速度100rpmで1時間浸漬・撹拌を行い、PETとLDPEEXTとの間を剥離させた後、水洗、乾燥を行い、2.0cm×2.0cmの大きさのリサイクルPEフィルムを得た。
得られたリサイクルPEフィルムの、脱離性接着剤層が接していた面の、4端部とセンター部の計5か所について、FT-IRを用いて接着剤の吸収ピークの有無を確認し、下記基準で評価した。1時間以内にPETとLDPEEXTとの間が剥離しないものは、評価不可とした。
◎:5か所全てにおいて、接着剤の吸収ピークが無い(除去率が100%程度:非常に良好)
○:5か所中1か所のみに、接着剤の吸収ピークがある(除去率が80%程度:良好)
△:5か所中2~3か所に、接着剤の吸収ピークがある(除去率が40~60%程度:使用可能)
×:5か所中4か所以上に、接着剤の吸収ピークがある(除去率が20%程度:使用不可)
【0104】
【0105】
上記表2の結果によれば、ポリエステルポリウレタンポリオールの酸無水物変性物を含むポリエステルポリオール成分と、脂肪族ポリイソシアネート及び芳香脂肪族ポリイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネート成分とを含み、酸価が5~40mgKOH/gである本発明の接着剤は、レトルト適性を有し、且つ、アルカリ脱離性に優れ、包装材から容易にシーラント基材を分離させることができる。これにより、シーラント基材のリサイクル性を高めることができる。
特に、数平均分子量3,000未満のポリエステルポリオールを併用した実施例5、6、11は、良好なアルカリ脱離性・除去率に加え、優れたラミネート強度を示した。
【0106】
【0107】
表3中の略称を以下に示す。
リン酸:85%リン酸水溶液
リン酸誘導体:フォスファノールRL-310、東邦化学工業株式会社製
水酸化アルミニウム1:BF013、日本軽金属株式会社製、平均粒子径1μm
水酸化アルミニウム2:BX103、日本軽金属株式会社製、平均粒子径5μm
水酸化アルミニウム3:BF083、日本軽金属株式会社製、平均粒子径10μm
アクリル樹脂ビーズ:アートパールJ-7P、根上工業株式会社製、平均粒子径6μm
【0108】
上記表3の結果によれば、実施例11と比較して、リン酸又はリン酸誘導体を添加した実施例12~16、及び平均粒子径が1~10μmの微粒子を添加した実施例17は、脱離性が向上した。さらに、リン酸と平均粒子径が1~10μmの微粒子を両方添加した実施例18~23は、脱離性又は除去率が向上する傾向を示した。
【0109】
【0110】
上記表4の結果によれば、押出ラミネーションにてシーラント基材2を積層した包装材3は、通常のドライラミネーションと比べて脱離性接着剤層の厚みは薄いが、良好なアルカリ脱離性・除去率に加え、優れたラミネート強度を示した。