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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20250109BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
F02D45/00 368A
F02D29/00 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021109922
(22)【出願日】2021-07-01
(65)【公開番号】P2023006989
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2024-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】麻生 紘司
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-082242(JP,A)
【文献】特開平03-185228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/00 -29/06、 41/00-45/00
F02P 5/145- 5/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関、及び前記内燃機関と駆動輪との間の動力伝達経路に設けられた変速機、を有した車両の制御装置であって、
前記内燃機関でのノッキングを抑制可能な点火時期の遅角量を学習する学習制御を実行する学習制御部と、
前記変速機のギア段を変更する際に前記内燃機関をアイドル運転状態に制御して変速制御を実行する変速制御部と、
前記学習制御の実行中に前記変速制御が開始されたか否かを判定する第1判定部と、
前記第1判定部により肯定判定がなされた場合には前記変速制御の実行中に前記遅角量を保持する保持部と、
前記変速制御が終了したか否かを判定する第2判定部と、を備え、
前記学習制御部は、前記第2判定部により肯定判定がなされた場合に、前記保持部に保持された前記遅角量から前記学習制御を継続し、
前記変速制御が開始されてから所定時間内に前記変速制御が終了しなかった否かを判定する第3判定部を備え、
前記学習制御部は、前記第3判定部により肯定判定がなされた場合に、前記保持部に保持された前記遅角量を初期値にリセットする、車両の制御装置。
【請求項2】
前記変速機は、手動変速機である、請求項1の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関でのノッキングの発生状況に基づいて点火時期の遅角量を学習する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平07-208310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アイドル運転状態では、負荷が小さくノッキングが発生しにくく、回転速度の安定するように点火時期が制御されるため、上述した点火時期の遅角量の学習は実行されない。従って、負荷運転からアイドル運転に制御され、再び負荷運転に復帰した場合には、それまでに学習した遅角量を初期値にリセットして新たに学習し直すことが行われる。しかしながら、変速機による変速制御が実行されるたびに内燃機関がアイドル運転状態に制御されると、変速制御が実行されるたびに遅角量が初期値にリセットされ、学習の進行が遅れるおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、点火時期の遅角量の学習の遅れを抑制した車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、内燃機関、及び前記内燃機関と駆動輪との間の動力伝達経路に設けられた変速機、を有した車両の制御装置であって、前記内燃機関のノッキングの発生状況に基づいて点火時期の遅角量を学習する学習制御を実行する学習制御部と、前記変速機のギア段を変更する際に前記内燃機関をアイドル運転状態に制御して変速制御を実行する変速制御部と、前記学習制御の実行中に前記変速制御が開始されたか否かを判定する第1判定部と、前記第1判定部により肯定判定がなされた場合には前記変速制御の実行中に前記遅角量を保持する保持部と、前記変速制御が終了したか否かを判定する第2判定部と、を備え、前記学習制御部は、前記第2判定部により肯定判定がなされた場合に、前記保持部に保持された前記遅角量から前記学習制御を継続し、前記変速制御が開始されてから所定時間内に前記変速制御が終了しなかった否かを判定する第3判定部を備え、前記学習制御部は、前記第3判定部により肯定判定がなされた場合に、前記保持部に保持された前記遅角量を初期値にリセットする、車両の制御装置によって達成できる。
【0008】
上記構成において、前記変速機は、手動変速機である構成を採用してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、点火時期の遅角量の学習の遅れを抑制した車両の制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、車両の概略構成図である。
図2図2は、エンジンの概略構成図である。
図3図3は、学習制御による点火時期の設定方法を示したグラフである。
図4図4は、学習制御の一例を示したタイミングチャートである。
図5図5は、ECUが実行する学習制御の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[車両の概略構成]
図1は、車両1の概略構成図である。車両1は、マニュアルトランスミッション車(MT車)として構成されており、図1に示すように、エンジン10、クラッチ30、手動変速機50、及びECU(Electronic Control Unit)100を備える。エンジン10は、火花点火式のガソリンエンジンである。
【0012】
手動変速機50は、例えば6段変速機として構成されており、図1に示すように、入力軸がクラッチ30を介してエンジン10のクランクシャフトに接続されていると共に、出力軸が駆動軸71に接続されている。駆動軸71は、デファレンシャルギア73を介して駆動輪75に接続されている。手動変速機50は、運転者のシフトレバー52の操作に応じて、前進1~6速の各ギア段を形成したり、入力軸と出力軸とを接続したり、その接続を解除する。
【0013】
クラッチ30は、エンジン10と手動変速機50の入力軸との間に設けられており、運転者によりクラッチペダル32が踏み込まれていないときには係合状態となり、クラッチペダル32が踏み込まれるとスリップ係合状態や解放状態となる。クラッチ30が係合状態となると、エンジン10の駆動力が手動変速機50、駆動軸71、デファレンシャルギア73を介して駆動輪75に伝達される。クラッチ30が解放状態となると、エンジン10の駆動力は手動変速機50や駆動輪75には伝達されない。クラッチ30がスリップ係合状態となると、エンジン10の出力軸と手動変速機50の入力軸とが回転速度差を有して、一方から他方に動力が伝達される。
【0014】
ECU100は、車両1の各種制御を実行する。このECU100は、各種制御に関係する各種の演算処理を実行する中央処理装置、その演算に必要なプログラムやデータが記憶された不揮発性メモリ、中央処理装置の演算結果が一時的に記憶される揮発性メモリ、外部との間で信号を入力及び出力するための入力ポート及び出力ポート等を備えている。ECU100は、車両1の制御装置の一例である。また、ECU100は、学習制御部、変速制御部、保持部、第1、第2、及び第3判定部を機能的に実現する。
【0015】
ECU100の入力ポートには各種のセンサ類が接続されている。センサ類としては、例えば、エンジン10の回転速度(以下、「エンジン回転速度NE」と称する)を検出するクランク角センサ21、クラッチペダル32のストローク(以下、クラッチストロークCSと称する)を検出するクラッチストロークセンサ22、イグニッションのオンオフを検出するイグニッションスイッチ23、アクセルペダル34の開度(以下、「アクセル開度accp」)を検出するアクセル開度センサ24、シフトレバー52のシフトポジションを検出するシフトポジションセンサ25、車速を検出する車速センサ26等である。
【0016】
[エンジンの概略構成]
図2は、エンジン10の概略構成を示した模式図である。図2に示すように、エンジン10の燃焼室11には、吸気通路12を通じて空気が吸入されるとともに、燃料噴射弁13から噴射された燃料が供給される。そして、吸入空気と噴射燃料とからなる混合気に対して点火プラグ14による点火が行われると、その混合気が燃焼してピストン15が往復運動し、エンジン10のクランクシャフト16が回転する。燃焼後の混合気は排気としてエンジン10の燃焼室11から排気通路17に送り出される。尚、図2では、エンジン10のポートに向けて燃料を噴射するポート噴射弁を燃料噴射弁13として例示しているが、燃料噴射弁13はこれに限定されず、例えば燃焼室11内に直接燃料を噴射する筒内噴射弁であってもよいし、ポート噴射弁及び筒内噴射弁の双方を含んでもよい。
【0017】
ECU100の入力ポートには、上述したセンサに加え、エンジン10におけるノッキングの発生を検出するノックセンサ27、吸気通路12に設けられたスロットルバルブ19の開度を検出するスロットルセンサ28、吸気通路12を通過する空気の量を検出する空気量センサ29が接続されている。
【0018】
ECU100は、各種センサ類の出力信号に基づき、エンジン回転速度NEやエンジン負荷率KL等の運転状態を把握する。ECU100は、そのようにして把握した運転状態に応じて、出力ポートに接続された各種の駆動回路に指令信号を出力する。このようにしてECU100により行われる制御としては、スロットルバルブ19の開度を調整するスロットル制御、燃料噴射弁13の噴射量を調整する燃料噴射制御、ノッキングの発生状況に基づいてエンジン10での点火時期の遅角量を学習する学習制御、及びシフトポジションとクラッチストロークCSに応じて手動変速機50のギア段を制御する変速制御が挙げられる。
【0019】
[学習制御]
ECU100が実行する、ノッキングの発生状況に応じてエンジン10での点火時期の遅角量を学習する学習制御について説明する。ECU100は、ノックセンサ27の出力信号に基づいてノッキングの発生の有無を判定し、その判定結果に基づいて点火時期を所定時期から徐々に進角させることにより、ノッキングが発生しない範囲内でできる限り点火時期が進角側となるように点火時期を最適化するKSC(Knock Control System)制御を実行する。この際に、ECU100は所定時期からの点火時期の遅角量のなまし値を学習値として記憶、更新する学習制御を実行する。この遅角量は燃料のオクタン価に相関し、オクタン価が高い燃料ほど遅角量は減少する、即ち点火時期は進角側に設定される。このようにECU100は、学習制御部の一例である。遅角量の学習制御は、具体的には以下のようにして行われる。
【0020】
図3は、学習制御による点火時期の設定方法を示したグラフである。最初にECU100は、エンジン回転速度NE及びエンジン負荷率KLに基づき、最大遅角点火時期akmf及び基本点火時期abseがそれぞれ算出される。最大遅角点火時期akmfは、現在のエンジン10の動作点において確実にノッキングが発生しない点火時期の進角限界の点火時期を示す。基本点火時期abseは、現在のエンジン10の動作点において最大の燃焼トルクが得られる点火時期とノッキングを抑制可能な点火時期の進角限界の点火時期とのうち、遅角側の点火時期を示すものであり、エンジン10の機種に応じて予め設定される点火時期である。
【0021】
次に、ECU100は基本点火時期abseからの遅角量akcsを算出する。遅角量akcsは、初期値(-a)[°CA]に、ノッキングが発生しなかった場合には所定の微小な進角量Δα[°CA]が所定時間毎に加算され、ノッキングが発生した場合にはその都度所定の遅角量(-Δβ)[°CA]が加算される。即ち、ノッキングが発生しない場合には、遅角量akcsは0に近づくように算出され、ノッキングが発生した場合には遅角量akcsは0から離れるように負の角度が増大する。進角量Δαの大きさは、遅角量(-Δβ)の大きさよりも小さい値に設定されている。ECU100は、このようにノッキングの発生状況に応じて算出される遅角量akcsに対してその増減速度を鈍化させる処理を施した値、いわゆる「なまし値」である、遅角量なまし値akcssmを算出する。ECU100は、この遅角量なまし値akcssmを学習値として記憶、更新し、遅角量なまし値akcssmが遅角要求量aknkとして算出される。遅角量なまし値akcssmが所定の値に収束すると、学習は完了したものとみなされる。遅角量なまし値akcssmが0になると、遅角要求量aknkも0となる。尚、遅角量なまし値akcssmの初期値は遅角量akcsの初期値と同じ値である。
【0022】
ここで、エンジン10の運転状態がアイドル運転状態となった際には、上記の学習制御は停止され、遅角量なまし値akcssmは初期値にリセットされる。その後、エンジン10がアイドル運転状態から負荷運転状態に復帰した際には、遅角量なまし値akcssmは初期値から学習制御が開始される。例えば、本実施例のように車両1がMT車の場合には、手動変速機50による変速時にアクセルオフがなされ、アクセルオフの際にはエンジン10はアイドル運転状態に制御される。このため、例えば車両1が発進して手動変速機50により変速を繰り返しながら加速するような場合には、手動変速機50による変速が行われるたびに、遅角量なまし値akcssmが初期値にリセットされ、学習が遅れる。本実施例ではECU100は、変速制御中においては、遅角量なまし値akcssmをリセットせずに保持し、変速制御が終了すると、再び保持した遅角量なまし値akcssmから学習制御を継続する。
【0023】
次にECU100が実行する学習制御について説明する。図4は、学習制御の一例を示したタイミングチャートである。図4には、エンジン回転速度NE、クラッチストロークCS、ギア段、アクセル開度accp、アイドル運転フラグXidle、KCS制御実行フラグxkcs、ノックカウンタcsknk、遅角要求量aknk、遅角量なまし値akcssm、車速、変速制御実行フラグxmtsftの推移が示されている。尚、図4の例では、遅角要求量aknk及び遅角量なまし値akcssmについて、変速制御中に学習制御を停止して遅角量なまし値akcssmを初期値にリセットする比較例の場合を点線で示し、変速制御中に遅角量なまし値akcssmが保持され変速制御が終了すると保持された遅角量なまし値akcssmから学習制御が継続される本実施例の場合を実線で示している。図4の例では、遅角要求量aknk及び遅角量なまし値akcssmに関して、縦軸の上側が進角側を示し下側が遅角側を示す。また、図4の例では、ノッキングは発生せずにノックカウンタcsknkは0に維持されている状態を示している。
【0024】
時刻t0では、車両1は停止しており、車速は0であり、アイドル運転フラグXidleがONであるためKCS制御実行フラグxkcsはOFFであり、また、アクセル開度accpも0%であり、エンジン回転速度NEはアイドル回転速度に維持されている。また、クラッチストロークCSは0であってクラッチ30は係合状態にありギア段は前進1速ギア段に制御され、変速制御実行フラグxmtsftはOFFである。また、アイドル運転状態では、遅角要求量aknkは図3に示した基本点火時期abseに設定され、遅角量なまし値akcssmは初期値に設定されている。
【0025】
時刻t1で、車両1を発進させるために運転者によりアクセルペダル34が踏み込まれてアクセル開度accpが増大すると、エンジン回転速度NE及び車速は徐々に増大すると共にアイドル運転フラグXidleがOFFとなる。アイドル運転フラグXidleがOFFとなってから所定のディレイ時間経過後にKCS制御実行フラグxkcsがONとなって上述した学習制御が実行され、遅角量なまし値akcssmは徐々に進角側の値となり、遅角要求量aknkも徐々に進角側に制御される。
【0026】
時刻t2で、変速するために運転者がアクセルペダル34の踏込みを解除してクラッチペダル32が踏み込まれると、アクセル開度accpが0にまで低下してクラッチストロークCSが増大し、変速制御実行フラグxmtsftがONとなって変速制御が開始される。また、この際にアイドル運転フラグXidleがONとなりKCS制御実行フラグxkcsはOFFとなり、学習制御は停止される。
【0027】
その後に運転者はシフトレバー52を操作してクラッチストロークCSを減少させ、時刻t3でギア段が前進1速から前進2速に切り替えてアクセル開度accpが増大し、変速制御実行フラグxmtsftはOFFとなって変速制御が終了し、アイドル運転フラグXidleがOFFとなる。アイドル運転フラグXidleがOFFとなってから所定のディレイ時間経過後にKCS制御実行フラグxkcsはONとなって学習制御が開始される。
【0028】
ここで、時刻t2から時刻t3の後までのKCS制御実行フラグxkcsがOFFである期間において、比較例での遅角量なまし値akcssmは初期値にリセットされているのに対して、本実施例での遅角量なまし値akcssmは、KCS制御実行フラグxkcsがOFFの期間では、時刻t2の時点での値に保持されている。また、KCS制御実行フラグxkcsがONとなった後は、比較例では遅角量なまし値akcssmは初期値から学習が開始されるのに対して、本実施例では遅角量なまし値akcssmは保持された値から学習が継続される。
【0029】
同様に、時刻t4で変速制御が開始され時刻t5でギア段が3速に切り替えられて変速制御が終了すると、比較例での遅角量なまし値akcssmはKCS制御実行フラグxkcsがOFFの期間で初期値に再びリセットされ、KCS制御実行フラグxkcsがONとなった後は再び初期値から学習が開始される。本実施例での遅角量なまし値akcssmは、KCS制御実行フラグxkcsがOFFの期間では時刻t4の時点での値に保持され、KCS制御実行フラグxkcsがONとなった後は遅角量なまし値akcssmは保持された値から再び学習が継続される。
【0030】
以上のように、比較例では変速制御が実行されるたびに遅角量なまし値akcssmが初期値にリセットされため、学習に時間を要し、点火時期を最適な時期に制御するまでに時間を要する。このため、その間に燃費や出力が低下するおそれがある。本実施例では、変速制御が実行されても遅角量なまし値akcssmが保持され変速制御が終了してから学習制御が継続されるため、点火時期を早期に最適な点火時期に制御することができる。これにより、ノッキングを抑制しつつ燃費や出力を確保することができる。尚、図4の例では、ギア段がシフトアップする場合を例に説明したが、これに限定されず、ギア段がシフトダウンする場合も同様に変速制御実行フラグxmtsftがONの期間中は、遅角量なまし値akcssmが保持される。
【0031】
図5は、ECU100が実行する学習制御の一例を示したフローチャートである。ECU100は、イグニッションがオンの間、本制御を繰り返し実行する。ECU100は、学習制御の実行中であるか否かを判定する(ステップS1)。上述したようにKCS制御実行フラグxkcsがONの場合には学習制御の実行中であると判定され、KCS制御実行フラグxkcsがOFFの場合には学習制御は停止中であると判定される。ステップS1でNoの場合には、本制御は終了する。
【0032】
ステップS1でYesの場合、ECU100は変速制御が開始されたか否かを判定する(ステップS2)。具体的には、車速が所定値Vα以上であってクラッチストロークCSが所定値Cα以上の場合に、ECU100は変速制御が開始されたと判定する。例えば所定値Vαは3[km/h]であり、所定値Cαは20[%]であるがこれに限定されない。即ち、車両1が走行中であって運転者が変速操作を行ったことを判定できれば、所定値Vα及び所定値Cαは上記の値以外であってもよい。ステップS2は、第1判定部が実行する処理の一例である。ステップS2でNoの場合には、本制御は終了する。
【0033】
ステップS2でYesの場合には、ECU100は遅角量なまし値akcssmを例えば揮発性メモリに記憶することにより保持する(ステップS3)。ステップS3の処理は、保持部が実行する処理の一例である。
【0034】
次にECU100は、変速制御が終了したか否かを判定する(ステップS4)。具体的には、シフトレバー52が操作されてクラッチストロークCSが所定値Cα未満となった場合には、ECU100は変速制御が終了したと判定する。ステップS4は、第2判定部が実行する処理の一例である。
【0035】
ステップS4でYesの場合には、ECU100は保持された遅角量なまし値akcssmを用いて学習制御を継続する(ステップS5)。ステップS5は、学習制御が実行する処理の一例である。
【0036】
ステップS4でNoの場合には、変速制御が開始されてから所定期間経過したか否かを判定する(ステップS6)。所定期間とは、例えば5秒である。ステップS6の処理は、第3判定部が実行する処理の一例である。
【0037】
ステップS6でNoの場合には、ステップS3の処理が実行される。ステップS6でYesの場合には、ECU100は遅角量なまし値akcssmを初期値にリセットする(ステップS7)。この場合、所定期間内に変速制御が終了しなかった場合であり、例えば運転者がクラッチペダル32を踏み込んだが、所定期間内にシフトレバー52を操作しなかったような場合である。この場合に、遅角量なまし値akcssmを長期間保持していると、変速終了後に点火時期が不安定となる恐れがあるからである。ステップS7の処理は、学習制御部が実行する処理の一例である。
【0038】
上記実施例では、手動変速機50を備えたMT車である車両1を例に説明したが、これに限定されない。例えば車両は、自動変速機を備えたオートマチックトランスミッション車(AT車)であってもよい。AT車であっても、変速制御の際にエンジンをアイドル運転状態に制御する場合や、変速制御の際に運転者によりアクセルオフがなされてアイドル運転状態に制御される場合には、変速制御が終了するまで遅角量を保持して変速制御が終了後に学習を継続することにより、学習の遅れを抑制することができる。
【0039】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 車両
10 エンジン
14 点火プラグ
27 ノックセンサ
30 クラッチ
32 クラッチペダル
34 アクセルペダル
50 手動変速機
100 ECU(制御装置)
図1
図2
図3
図4
図5