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特許7615930情報処理システム、情報処理方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 8/65 20180101AFI20250109BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G06F8/65
B60R16/02 660U
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021112912
(22)【出願日】2021-07-07
(65)【公開番号】P2023009536
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 真史
(72)【発明者】
【氏名】田端 淳
(72)【発明者】
【氏名】奥田 弘一
(72)【発明者】
【氏名】牧野 有記
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0125349(US,A1)
【文献】国際公開第2020/194186(WO,A1)
【文献】特表2022-527266(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0157568(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0055228(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0294578(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104503819(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112099977(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 8/65
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両と通信可能に接続される外部装置から前記車両に送信される、前記車両で利用されるソフトウェアの更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる情報処理システムであって、
前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記車両の状態に関する所定のデータを取得する取得部と、
前記ソフトウェアの更新前の前記所定のデータが前記取得部により取得済みであるか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって、前記ソフトウェアの更新前の前記所定のデータが取得済みであると判定される場合に、前記更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる更新部と、
前記更新部による前記ソフトウェアの更新後に、前記車両の運転者に対して、前記ソフトウェアの更新後の前記所定のデータを取得するための走行経路を案内する案内部と、
前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記所定のデータに基づき、前記ソフトウェアの更新による効果を評価する評価部と、を備える
報処理システム。
【請求項2】
車両と通信可能に接続される外部装置から前記車両に送信される、前記車両で利用されるソフトウェアの更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる情報処理システムであって、
前記更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる更新部と、
前記更新部による前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記車両の状態に関する所定のデータを取得する取得部と、
前記車両に相当する仮想モデルを用いて、前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記所定のデータに基づき、仮想シミュレーションを行い、その結果を比較することにより、前記ソフトウェアの更新による効果を評価する評価部と、を備え、
前記評価部は、前記ソフトウェアの更新の内容に応じて、前記効果の評価の際の前記仮想シミュレーションの実施の有無を判断する
報処理システム。
【請求項3】
車両と通信可能に接続される外部装置から前記車両に送信される、前記車両で利用されるソフトウェアの更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる情報処理システムであって、
前記更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる更新部と、
前記更新部による前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記車両の状態に関する所定のデータを取得する取得部と、
前記車両に相当する仮想モデルを用いて、前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記所定のデータに基づき、仮想シミュレーションを行い、その結果を比較することにより、前記ソフトウェアの更新による効果を評価する評価部と、を備え、
前記評価部は、前記ソフトウェアの更新の内容に応じて、前記仮想シミュレーションの際の前記車両の走行条件を変化させる
報処理システム。
【請求項4】
車両と通信可能に接続される外部装置から前記車両に送信される、前記車両で利用されるソフトウェアの更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる情報処理システムであって、
前記更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる更新部と、
前記更新部による前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記車両の状態に関する所定のデータを取得する取得部と、
前記車両に相当する仮想モデルを用いて、前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記所定のデータに基づき、仮想シミュレーションを行い、その結果を比較することにより、前記ソフトウェアの更新による効果を評価する評価部と、を備え、
前記評価部は、前記ソフトウェアの更新前及び更新後の前記所定のデータの比較による前記車両の特性の変化と、前記ソフトウェアの更新前及び更新後の前記所定のデータのそれぞれに基づく前記仮想シミュレーションの結果の比較による前記車両の特性の変化とを比較することによって、前記効果を評価する
報処理システム。
【請求項5】
車両と通信可能に接続される外部装置から前記車両に送信される、前記車両で利用されるソフトウェアの更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる情報処理システムであって、
前記更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる更新部と、
前記更新部による前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記車両の状態に関する所定のデータを取得する取得部と、
前記車両に相当する仮想モデルを生成する生成部と、
前記仮想モデルを用いて、前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記所定のデータに基づき、仮想シミュレーションを行い、その結果を比較することにより、前記ソフトウェアの更新による効果を評価する評価部と、を備え、
前記仮想モデルは、前記車両に相当する専用モデルであり、
前記生成部は、前記車両の経時変化、前記車両の使用条件、及び前記車両の構成要素の変化の少なくとも一つに合わせて、前記仮想モデルを更新する
報処理システム。
【請求項6】
車両と通信可能に接続される外部装置から前記車両に送信される、前記車両で利用されるソフトウェアの更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記車両の状態に関する所定のデータを取得する取得ステップと、
前記ソフトウェアの更新前の前記所定のデータが前記取得ステップで取得済みであるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにて前記ソフトウェアの更新前の前記所定のデータが取得済みであると判定される場合に、前記更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる更新ステップと、
前記更新ステップでの前記ソフトウェアの更新後に、前記車両の運転者に対して、前記ソフトウェアの更新後の前記所定のデータを取得するための走行経路を案内する案内ステップと、
前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記所定のデータに基づき、前記ソフトウェアの更新による効果を評価する評価ステップと、を含む、
情報処理方法。
【請求項7】
車両と通信可能に接続される外部装置から前記車両に送信される、前記車両で利用されるソフトウェアの更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
前記更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる更新ステップと、
前記更新ステップでの前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記車両の状態に関する所定のデータを取得する取得ステップと、
前記車両に相当する仮想モデルを用いて、前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記所定のデータに基づき、仮想シミュレーションを行い、その結果を比較することにより、前記ソフトウェアの更新による効果を評価する評価ステップと、を含
前記評価ステップでは、前記ソフトウェアの更新の内容に応じて、前記効果の評価の際の前記仮想シミュレーションの実施の有無を判断する、
情報処理方法。
【請求項8】
車両と通信可能に接続される外部装置から前記車両に送信される、前記車両で利用されるソフトウェアの更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
前記更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる更新ステップと、
前記更新ステップでの前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記車両の状態に関する所定のデータを取得する取得ステップと、
前記車両に相当する仮想モデルを用いて、前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記所定のデータに基づき、仮想シミュレーションを行い、その結果を比較することにより、前記ソフトウェアの更新による効果を評価する評価ステップと、を含み、
前記評価ステップでは、前記ソフトウェアの更新の内容に応じて、前記仮想シミュレーションの際の前記車両の走行条件を変化させる、
情報処理方法。
【請求項9】
車両と通信可能に接続される外部装置から前記車両に送信される、前記車両で利用されるソフトウェアの更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
前記更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる更新ステップと、
前記更新ステップでの前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記車両の状態に関する所定のデータを取得する取得ステップと、
前記車両に相当する仮想モデルを用いて、前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記所定のデータに基づき、仮想シミュレーションを行い、その結果を比較することにより、前記ソフトウェアの更新による効果を評価する評価ステップと、を含み、
前記評価ステップでは、前記ソフトウェアの更新前及び更新後の前記所定のデータの比較による前記車両の特性の変化と、前記ソフトウェアの更新前及び更新後の前記所定のデータのそれぞれに基づく前記仮想シミュレーションの結果の比較による前記車両の特性の変化とを比較することによって、前記効果を評価する、
情報処理方法。
【請求項10】
車両と通信可能に接続される外部装置から前記車両に送信される、前記車両で利用されるソフトウェアの更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
前記更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる更新ステップと、
前記更新ステップでの前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記車両の状態に関する所定のデータを取得する取得ステップと、
前記車両に相当する仮想モデルを生成する生成ステップと、
前記仮想モデルを用いて、前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記所定のデータに基づき、仮想シミュレーションを行い、その結果を比較することにより、前記ソフトウェアの更新による効果を評価する評価ステップと、を含み、
前記仮想モデルは、前記車両に相当する専用モデルであり、
前記生成ステップでは、前記車両の経時変化、前記車両の使用条件、及び前記車両の構成要素の変化の少なくとも一つに合わせて、前記仮想モデルを更新する、
情報処理方法。
【請求項11】
車両と通信可能に接続される外部装置から前記車両に送信される、前記車両で利用されるソフトウェアの更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる情報処理装置に、
前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記車両の状態に関する所定のデータを取得する取得ステップと、
前記ソフトウェアの更新前の前記所定のデータが前記取得ステップで取得済みであるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにて前記ソフトウェアの更新前の前記所定のデータが取得済みであると判定される場合に、前記更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる更新ステップと、
前記更新ステップでの前記ソフトウェアの更新後に、前記車両の運転者に対して、前記ソフトウェアの更新後の前記所定のデータを取得するための走行経路を案内する案内ステップと、
前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記所定のデータに基づき、前記ソフトウェアの更新による効果を評価する評価ステップと、を実行させる、
プログラム。
【請求項12】
車両と通信可能に接続される外部装置から前記車両に送信される、前記車両で利用されるソフトウェアの更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる情報処理装置に、
前記更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる更新ステップと、
前記更新ステップでの前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記車両の状態に関する所定のデータを取得する取得ステップと、
前記車両に相当する仮想モデルを用いて、前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記所定のデータに基づき、仮想シミュレーションを行い、その結果を比較することにより、前記ソフトウェアの更新による効果を評価する評価ステップと、を実行させ
前記評価ステップでは、前記ソフトウェアの更新の内容に応じて、前記効果の評価の際の前記仮想シミュレーションの実施の有無を判断する、
プログラム。
【請求項13】
車両と通信可能に接続される外部装置から前記車両に送信される、前記車両で利用されるソフトウェアの更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる情報処理装置に、
前記更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる更新ステップと、
前記更新ステップでの前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記車両の状態に関する所定のデータを取得する取得ステップと、
前記車両に相当する仮想モデルを用いて、前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記所定のデータに基づき、仮想シミュレーションを行い、その結果を比較することにより、前記ソフトウェアの更新による効果を評価する評価ステップと、を実行させ、
前記評価ステップでは、前記ソフトウェアの更新の内容に応じて、前記仮想シミュレーションの際の前記車両の走行条件を変化させる、
プログラム。
【請求項14】
車両と通信可能に接続される外部装置から前記車両に送信される、前記車両で利用されるソフトウェアの更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる情報処理装置に、
前記更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる更新ステップと、
前記更新ステップでの前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記車両の状態に関する所定のデータを取得する取得ステップと、
前記車両に相当する仮想モデルを用いて、前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記所定のデータに基づき、仮想シミュレーションを行い、その結果を比較することにより、前記ソフトウェアの更新による効果を評価する評価ステップと、を実行させ、
前記評価ステップでは、前記ソフトウェアの更新前及び更新後の前記所定のデータの比較による前記車両の特性の変化と、前記ソフトウェアの更新前及び更新後の前記所定のデータのそれぞれに基づく前記仮想シミュレーションの結果の比較による前記車両の特性の変化とを比較することによって、前記効果を評価する、
プログラム。
【請求項15】
車両と通信可能に接続される外部装置から前記車両に送信される、前記車両で利用されるソフトウェアの更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる情報処理装置に、
前記更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる更新ステップと、
前記更新ステップでの前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記車両の状態に関する所定のデータを取得する取得ステップと、
前記車両に相当する仮想モデルを生成する生成ステップと、
前記仮想モデルを用いて、前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記所定のデータに基づき、仮想シミュレーションを行い、その結果を比較することにより、前記ソフトウェアの更新による効果を評価する評価ステップと、を実行させ、
前記仮想モデルは、前記車両に相当する専用モデルであり、
前記生成ステップでは、前記車両の経時変化、前記車両の使用条件、及び前記車両の構成要素の変化の少なくとも一つに合わせて、前記仮想モデルを更新する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、外部装置から車両で利用されるソフトウェア(例えば、プログラムやプログラムで使用されるパラメータ等のデータ)を車両に送信し、ソフトウェアの更新を実施させる技術が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、評価シミュレータを用いて、ソフトウェアの更新前及び更新後の車両の動作評価が行われ、ソフトウェアの更新によって、車両の機能が望ましい方向に修正されることを確認した後に、ソフトウェアの更新が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003- 34200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の技術では、ソフトウェア更新前の事前確認が行われるのみであり、実際に車両で利用されるソフトウェアの更新が行われた際に、その車両で所望の効果が得られるかどうかが定かでない。そのため、例えば、今後の車両の保守・点検等のサービス性や今後の車両の開発へのフィードバック等の観点から、実際に車両で利用されるソフトウェアの更新が実施された場合のその車両での効果の評価が行われることが望ましい。
【0006】
そこで、上記課題に鑑み、実際に車両で利用されるソフトウェアの更新が行われた場合のその車両での効果を評価可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の一実施形態では、
車両と通信可能に接続される外部装置から前記車両に送信される、前記車両で利用されるソフトウェアの更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる情報処理システムであって、
前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記車両の状態に関する所定のデータを取得する取得部と、
前記ソフトウェアの更新前の前記所定のデータが前記取得部により取得済みであるか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって、前記ソフトウェアの更新前の前記所定のデータが取得済みであると判定される場合に、前記更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる更新部と、
前記更新部による前記ソフトウェアの更新後に、前記車両の運転者に対して、前記ソフトウェアの更新後の前記所定のデータを取得するための走行経路を案内する案内部と、
前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記所定のデータに基づき、前記ソフトウェアの更新による効果を評価する評価部と、を備える、
情報処理システムが提供される。
また、本開示の他の実施形態では、
車両と通信可能に接続される外部装置から前記車両に送信される、前記車両で利用されるソフトウェアの更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる情報処理システムであって、
前記更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる更新部と、
前記更新部による前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記車両の状態に関する所定のデータを取得する取得部と、
前記車両に相当する仮想モデルを用いて、前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記所定のデータに基づき、仮想シミュレーションを行い、その結果を比較することにより、前記ソフトウェアの更新による効果を評価する評価部と、を備え
前記評価部は、前記ソフトウェアの更新の内容に応じて、前記効果の評価の際の前記仮想シミュレーションの実施の有無を判断する、
情報処理システムが提供される。
また、本開示の更に他の実施形態では、
車両と通信可能に接続される外部装置から前記車両に送信される、前記車両で利用されるソフトウェアの更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる情報処理システムであって、
前記更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる更新部と、
前記更新部による前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記車両の状態に関する所定のデータを取得する取得部と、
前記車両に相当する仮想モデルを用いて、前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記所定のデータに基づき、仮想シミュレーションを行い、その結果を比較することにより、前記ソフトウェアの更新による効果を評価する評価部と、を備え、
前記評価部は、前記ソフトウェアの更新の内容に応じて、前記仮想シミュレーションの際の前記車両の走行条件を変化させる、
情報処理システムが提供される。
また、本開示の更に他の実施形態では、
車両と通信可能に接続される外部装置から前記車両に送信される、前記車両で利用されるソフトウェアの更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる情報処理システムであって、
前記更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる更新部と、
前記更新部による前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記車両の状態に関する所定のデータを取得する取得部と、
前記車両に相当する仮想モデルを用いて、前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記所定のデータに基づき、仮想シミュレーションを行い、その結果を比較することにより、前記ソフトウェアの更新による効果を評価する評価部と、を備え、
前記評価部は、前記ソフトウェアの更新前及び更新後の前記所定のデータの比較による前記車両の特性の変化と、前記ソフトウェアの更新前及び更新後の前記所定のデータのそれぞれに基づく前記仮想シミュレーションの結果の比較による前記車両の特性の変化とを比較することによって、前記効果を評価する、
情報処理システムが提供される。
また、本開示の更に他の実施形態では、
車両と通信可能に接続される外部装置から前記車両に送信される、前記車両で利用されるソフトウェアの更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる情報処理システムであって、
前記更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる更新部と、
前記更新部による前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記車両の状態に関する所定のデータを取得する取得部と、
前記車両に相当する仮想モデルを生成する生成部と、
前記仮想モデルを用いて、前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記所定のデータに基づき、仮想シミュレーションを行い、その結果を比較することにより、前記ソフトウェアの更新による効果を評価する評価部と、を備え、
前記仮想モデルは、前記車両に相当する専用モデルであり、
前記生成部は、前記車両の経時変化、前記車両の使用条件、及び前記車両の構成要素の変化の少なくとも一つに合わせて、前記仮想モデルを更新する、
情報処理システムが提供される。
【0009】
また、本開示の更に他の実施形態では、
車両と通信可能に接続される外部装置から前記車両に送信される、前記車両で利用されるソフトウェアの更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記車両の状態に関する所定のデータを取得する取得ステップと、
前記ソフトウェアの更新前の前記所定のデータが前記取得ステップで取得済みであるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにて前記ソフトウェアの更新前の前記所定のデータが取得済みであると判定される場合に、前記更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる更新ステップと、
前記更新ステップでの前記ソフトウェアの更新後に、前記車両の運転者に対して、前記ソフトウェアの更新後の前記所定のデータを取得するための走行経路を案内する案内ステップと、
前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記所定のデータに基づき、前記ソフトウェアの更新による効果を評価する評価ステップと、を含む、
情報処理方法が提供される。
また、本開示の更に他の実施形態では、
車両と通信可能に接続される外部装置から前記車両に送信される、前記車両で利用されるソフトウェアの更新データに基づき、仮想シミュレーションを行い、その結果を比較することにより、前記ソフトウェアを更新させる情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
前記更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる更新ステップと、
前記更新ステップでの前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記車両の状態に関する所定のデータを取得する取得ステップと、
前記車両に相当する仮想モデルを用いて、前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記所定のデータに基づき、前記ソフトウェアの更新による効果を評価する評価ステップと、を含
前記評価ステップでは、前記ソフトウェアの更新の内容に応じて、前記効果の評価の際の前記仮想シミュレーションの実施の有無を判断する、
情報処理方法が提供される。
また、本開示の更に他の実施形態では、
車両と通信可能に接続される外部装置から前記車両に送信される、前記車両で利用されるソフトウェアの更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
前記更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる更新ステップと、
前記更新ステップでの前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記車両の状態に関する所定のデータを取得する取得ステップと、
前記車両に相当する仮想モデルを用いて、前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記所定のデータに基づき、仮想シミュレーションを行い、その結果を比較することにより、前記ソフトウェアの更新による効果を評価する評価ステップと、を含み、
前記評価ステップでは、前記ソフトウェアの更新の内容に応じて、前記仮想シミュレーションの際の前記車両の走行条件を変化させる、
情報処理方法が提供される。
また、本開示の更に他の実施形態では、
車両と通信可能に接続される外部装置から前記車両に送信される、前記車両で利用されるソフトウェアの更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
前記更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる更新ステップと、
前記更新ステップでの前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記車両の状態に関する所定のデータを取得する取得ステップと、
前記車両に相当する仮想モデルを用いて、前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記所定のデータに基づき、仮想シミュレーションを行い、その結果を比較することにより、前記ソフトウェアの更新による効果を評価する評価ステップと、を含み、
前記評価ステップでは、前記ソフトウェアの更新前及び更新後の前記所定のデータの比較による前記車両の特性の変化と、前記ソフトウェアの更新前及び更新後の前記所定のデータのそれぞれに基づく前記仮想シミュレーションの結果の比較による前記車両の特性の変化とを比較することによって、前記効果を評価する、
情報処理方法が提供される。
また、本開示の更に他の実施形態では、
車両と通信可能に接続される外部装置から前記車両に送信される、前記車両で利用されるソフトウェアの更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
前記更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる更新ステップと、
前記更新ステップでの前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記車両の状態に関する所定のデータを取得する取得ステップと、
前記車両に相当する仮想モデルを生成する生成ステップと、
前記仮想モデルを用いて、前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記所定のデータに基づき、仮想シミュレーションを行い、その結果を比較することにより、前記ソフトウェアの更新による効果を評価する評価ステップと、を含み、
前記仮想モデルは、前記車両に相当する専用モデルであり、
前記生成ステップでは、前記車両の経時変化、前記車両の使用条件、及び前記車両の構成要素の変化の少なくとも一つに合わせて、前記仮想モデルを更新する、
情報処理方法が提供される。
【0010】
また、本開示の更に他の実施形態では、
車両と通信可能に接続される外部装置から前記車両に送信される、前記車両で利用されるソフトウェアの更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる情報処理装置に、
前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記車両の状態に関する所定のデータを取得する取得ステップと、
前記ソフトウェアの更新前の前記所定のデータが前記取得ステップで取得済みであるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにて前記ソフトウェアの更新前の前記所定のデータが取得済みであると判定される場合に、前記更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる更新ステップと、
前記更新ステップでの前記ソフトウェアの更新後に、前記車両の運転者に対して、前記ソフトウェアの更新後の前記所定のデータを取得するための走行経路を案内する案内ステップと、
前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記所定のデータに基づき、前記ソフトウェアの更新による効果を評価する評価ステップと、を実行させる、
プログラムが提供される。
また、本開示の更に他の実施形態では、
車両と通信可能に接続される外部装置から前記車両に送信される、前記車両で利用されるソフトウェアの更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる情報処理装置に、
前記更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる更新ステップと、
前記更新ステップでの前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記車両の状態に関する所定のデータを取得する取得ステップと、
前記車両に相当する仮想モデルを用いて、前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記所定のデータに基づき、仮想シミュレーションを行い、その結果を比較することにより、前記ソフトウェアの更新による効果を評価する評価ステップと、を実行させ
前記評価ステップでは、前記ソフトウェアの更新の内容に応じて、前記効果の評価の際の前記仮想シミュレーションの実施の有無を判断する、
プログラムが提供される。
また、本開示の更に他の実施形態では、
車両と通信可能に接続される外部装置から前記車両に送信される、前記車両で利用されるソフトウェアの更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる情報処理装置に、
前記更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる更新ステップと、
前記更新ステップでの前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記車両の状態に関する所定のデータを取得する取得ステップと、
前記車両に相当する仮想モデルを用いて、前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記所定のデータに基づき、仮想シミュレーションを行い、その結果を比較することにより、前記ソフトウェアの更新による効果を評価する評価ステップと、を実行させ、
前記評価ステップでは、前記ソフトウェアの更新の内容に応じて、前記仮想シミュレーションの際の前記車両の走行条件を変化させる、
プログラムが提供される。
また、本開示の更に他の実施形態では、
車両と通信可能に接続される外部装置から前記車両に送信される、前記車両で利用されるソフトウェアの更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる情報処理装置に、
前記更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる更新ステップと、
前記更新ステップでの前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記車両の状態に関する所定のデータを取得する取得ステップと、
前記車両に相当する仮想モデルを用いて、前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記所定のデータに基づき、仮想シミュレーションを行い、その結果を比較することにより、前記ソフトウェアの更新による効果を評価する評価ステップと、を実行させ、
前記評価ステップでは、前記ソフトウェアの更新前及び更新後の前記所定のデータの比較による前記車両の特性の変化と、前記ソフトウェアの更新前及び更新後の前記所定のデータのそれぞれに基づく前記仮想シミュレーションの結果の比較による前記車両の特性の変化とを比較することによって、前記効果を評価する、
プログラムが提供される。
また、本開示の更に他の実施形態では、
車両と通信可能に接続される外部装置から前記車両に送信される、前記車両で利用されるソフトウェアの更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる情報処理装置に、
前記更新データに基づき、前記ソフトウェアを更新させる更新ステップと、
前記更新ステップでの前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記車両の状態に関する所定のデータを取得する取得ステップと、
前記車両に相当する仮想モデルを生成する生成ステップと、
前記仮想モデルを用いて、前記ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの前記所定のデータに基づき、仮想シミュレーションを行い、その結果を比較することにより、前記ソフトウェアの更新による効果を評価する評価ステップと、を実行させ、
前記仮想モデルは、前記車両に相当する専用モデルであり、
前記生成ステップでは、前記車両の経時変化、前記車両の使用条件、及び前記車両の構成要素の変化の少なくとも一つに合わせて、前記仮想モデルを更新する、
プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0012】
上述の実施形態によれば、実際に車両で利用されるソフトウェアの更新が行われた場合のその車両での効果を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ソフトウェア更新システムの一例を示す概要図である。
図2】車両のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】配信サーバのハードウェア構成の一例を示す図である。
図4】ソフトウェア更新システムの機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
図5】車両の変速機の変速マップの更新の一例を示す図である。
図6】車両の原動機の切替マップの更新の一例を示す図である。
図7】車両の変速機のシフトチェンジ(シフトアップ)に関する制御ロジックの更新前及び更新後のそれぞれについて、変速機のシフトチェンジ時における実際の車両の状態の経時変化の一例を示す図である。
図8】車両の変速機のシフトチェンジ(シフトアップ)に関する制御ロジックの更新前及び更新後のそれぞれについて、変速機のシフトチェンジ時における実際の車両の状態の経時変化の他の例を示す図である。
図9】車両の変速機のシフトチェンジ(シフトアップ)に関する制御ロジックの更新前及び更新後のそれぞれについて、変速機のシフトチェンジ時における車両の状態の経時変化の仮想シミュレーションの結果の一例を示す図である。
図10】セントラルECUによるソフトウェア更新処理の一例を概略的に示すフローチャートである。
図11】セントラルECUによるソフトウェア更新処理の一例を概略的に示すフローチャートである。
図12】セントラルECUによるソフトウェア更新処理の他の例を概略的に示すフローチャートである。
図13】セントラルECUによるソフトウェア更新処理の他の例を概略的に示すフローチャートである。
図14】解析サーバによる効果評価処理の一例を概略的に示すフローチャートである。
図15】解析サーバによる効果評価処理の他の例を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
【0015】
[ソフトウェア更新システムの概要]
図1を参照して、本実施形態に係るソフトウェア更新システム1の概要について説明する。
【0016】
図1は、ソフトウェア更新システム1の一例を示す概要図である。
【0017】
図1に示すように、ソフトウェア更新システム1(情報処理システムの一例)は、車両10と、配信サーバ20と、解析サーバ30と、ユーザ端末40とを含む。
【0018】
ソフトウェア更新システム1は、車両10で利用されるソフトウェアの更新データを車両10に配信し、車両10のソフトウェアを更新させる。
【0019】
車両10のソフトウェアには、例えば、後述のゲートウェイECU(Electronic Control Unit)12やECU13やセントラルECU19等の車両10に搭載されるコンピュータ(車載コンピュータ)で実行されるプログラムが含まれる。また、車両10のソフトウェアには、例えば、車載コンピュータで実行されるプログラムによる処理で利用されるパラメータ等の各種データが含まれる。
【0020】
また、ソフトウェア更新システム1は、ソフトウェアの更新による効果の評価(確認)を行う。これにより、ソフトウェア更新システム1は、ソフトウェアの更新による効果の評価結果を、車両10に相当する現行の車種の開発或いは後継の車種の開発部門や現行車種のサービス・点検部門にフィードバックすることができる。
【0021】
ソフトウェアの更新による効果には、例えば、ソフトウェアの更新の目的に相当する性能の向上(改善)に関する効果を含む。
【0022】
また、ソフトウェアの更新による効果には、例えば、ソフトウェアの更新の内容(更新データ)に沿った車両10の状態が実現されているか否かに関する効果を含む。例えば、車両10の変速機の変速条件(変速線)が更新される場合(後述の図5参照)、ソフトウェアの更新の内容に沿った車両10の状態の実現とは、更新後の変速条件通りに変速機の変速が実際に行われることを意味する。また、例えば、車両10の原動機(エンジン及び電動機)の切替マップが更新される場合(後述の図6参照)、ソフトウェアの更新の内容に沿った車両10の状態の実現とは、更新後の切替条件通りに原動機の切り替えが実際に行われることを意味する。また、例えば、車両10の変速機のシフトチェンジに関する制御ロジックが更新される場合(後述の図7図9参照)、ソフトウェアの更新の内容に沿った車両10の状態の実現とは、更新後の制御ロジック通りに変速機の変速が行われることを意味する。
【0023】
車両10は、ソフトウェアの更新対象である。車両10は、例えば、エンジンや電動機等の所定の原動機から、変速機、ディファレンシャル、及びドライブシャフト等の駆動系を介して駆動輪に伝達される動力で走行する。
【0024】
車両10は、後述の如く、通信装置11を搭載し、所定の通信回線を通じて、例えば、配信サーバ20や解析サーバ30等の外部装置と通信可能に接続される。これにより、車両10は、配信サーバ20や解析サーバ30に情報信号を送信したり、配信サーバ20や解析サーバ30から制御信号や情報信号(例えば、ソフトウェアの更新データ)を受信したりすることができる。
【0025】
所定の通信回線は、例えば、基地局を末端とする移動体通信網、通信衛星を利用する衛星通信網、インターネット網等の広域ネットワーク(WAN:Wide Area Network)を含む。また、所定の通信回線は、例えば、配信サーバ20や解析サーバ30が設置される施設のローカルネットワーク(LAN:Local Area Network)を含んでもよい。また、所定の通信回線は、例えば、WiFiやブルートゥース(登録商標)等の無線通信規格に基づく近距離通信回線を含んでもよい。以下、配信サーバ20と解析サーバ30との間の通信で利用される通信回線、及び配信サーバ20とユーザ端末40との間の通信で利用される通信回線等についても同様であってよい。
【0026】
尚、ソフトウェア更新システム1に含まれる車両10は、一台であってもよいし、複数台であってもよい。後者の場合、ソフトウェア更新システム1に含まれる複数の車両10は、例えば、全て同じ車種であってもよいし、2以上の車種の車両10を含んでいてもよい。
【0027】
配信サーバ20(外部装置の一例)は、車両10で利用される各種データを車両10に配信する。具体的には、配信サーバ20は、車両10にソフトウェアの更新データを配信する。
【0028】
配信サーバ20は、例えば、複数の車両10の状態等の監視を集中的に行う監視センタ等に設置されるオンプレミスサーバやクラウドサーバである。また、配信サーバ20は、例えば、車両10が主に走行する地域(例えば、法規上、車両10が登録されている地域)に設置されるエッジサーバであってもよい。この場合、配信サーバ20は、ソフトウェア更新システム1に含まれる全ての車両10に対して、複数設けられてもよい。以下、解析サーバ30についても同様であってよい。
【0029】
配信サーバ20は、上述の如く、所定の通信回線を通じて、車両10と通信可能に接続される。これにより、配信サーバ20は、車両10から各種の情報信号を受信したり、車両10に各種の情報信号(例えば、ソフトウェアの更新データ)や制御信号(例えば、ソフトウェアの更新の指令)等を送信したりすることができる。
【0030】
解析サーバ30は、例えば、車両10からその状態を表す各種データ(以下、「車両データ」)を取得し、車両10に関する解析を行う。具体的には、解析サーバ30は、車両10のソフトウェアの更新によって得られる効果に関する解析を行う。
【0031】
解析サーバ30は、上述の如く、所定の通信回線を通じて、車両10と通信可能に接続される。これにより、解析サーバ30は、車両10から各種の情報信号(例えば、車両データ)を受信したり、車両10に各種の情報信号や制御信号を送信したりすることができる。
【0032】
また、解析サーバ30は、所定の通信回線を通じて、配信サーバ20やユーザ端末40と通信可能に接続される。これにより、解析サーバ30は、配信サーバ20やユーザ端末40に各種の情報信号や制御信号を送信したり、配信サーバ20やユーザ端末40から各種の情報信号や制御信号を受信したりすることができる。
【0033】
尚、配信サーバ20及び解析サーバ30の機能は、配信サーバ20(情報処理装置の一例)或いは解析サーバ30(情報処理装置の一例)に集約されてもよい。また、配信サーバ20及び解析サーバ30の機能は、3つ以上のサーバにより分散して実現されたりしてもよい。
【0034】
ユーザ端末40は、車両10のユーザが利用(所持)する端末装置である。車両10のユーザは、例えば、車両10の所有者や車両10の所有者の家族等である。ユーザ端末40は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、ラップトップ型のPC(Personal Computer)等の携帯型(可搬型)の端末装置である。また、ユーザ端末40は、例えば、デスクトップ型のPC等の定置型の端末装置であってもよい。
【0035】
ユーザ端末40は、上述の如く、所定の通信回線を通じて、配信サーバ20と通信可能に接続される。これにより、ユーザ端末40は、配信サーバ20から送信される制御信号や情報信号を受信し、信号に含まれる情報をディスプレイやスピーカ等を通じて車両10のユーザに把握させることができる。また、ユーザ端末40は、ユーザからの入力に応じて、その入力内容に応じた制御信号や情報信号を配信サーバに送信し、ユーザからの入力内容に対応するユーザの要求を配信サーバ20に伝えることができる。
【0036】
[ソフトウェア更新システムのハードウェア構成]
次に、図1に加え、図2図3を参照して、ソフトウェア更新システム1のハードウェア構成について説明する。
【0037】
<車両のハードウェア構成>
図2は、車両10のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0038】
図2に示すように、車両10は、通信装置11と、ゲートウェイECU12と、ECU13と、センサ15と、ナビゲーション装置16と、入力装置17と、表示装置18と、セントラルECU19と、を含む。
【0039】
通信装置11は、所定の通信回線を通じて、車両10の外部と通信を行う。通信装置11は、例えば、基地局を末端とする移動体通信網に接続し、外部と通信を行うことが可能な移動体通信モジュールであり、具体的には、DCM(Data Communication Module)であってよい。通信装置11は、車両10の内部の通信回線を通じて、ゲートウェイECU12やECU13やセントラルECU19等と通信可能に接続される。車両10の内部の通信回線は、例えば、一対一の通信線や車載ネットワークである。車載ネットワークは、例えば、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、FlexRay、車載イーサネット(Ethernet)等である。通信装置11は、例えば、ゲートウェイECU12から指令(要求)に応じて、所定の信号を外部に送信してよい。また、通信装置11により外部から受信される信号は、ゲートウェイECU12に取り込まれる。
【0040】
ゲートウェイECU12は、車両10の外部の通信回線と、車両10の内部の通信回線(例えば、車載ネットワーク)との間のゲートウェイとして機能する。
【0041】
ゲートウェイECU12は、その機能が任意のハードウェア或いは任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせ等により実現されてよい。例えば、ゲートウェイECU12は、後述のセントラルECU19と同様のハードウェア構成を有し、補助記憶装置にインストールされるプログラムをメモリ装置にロードしCPU(Central Processing Unit)上で実行することにより、各種機能を実現してよい。以下、ECU13についても同様であってよい。
【0042】
例えば、ゲートウェイECU12は、既知の方法を用いて、通信装置11により外部から受信された信号が正規の送信元からの送信された信号であり、且つ、改ざんがされていない信号であることの認証を行う。正規の送信元とは、予め送信元として登録されている送信元(例えば、配信サーバ20、解析サーバ30等)や相互通信により予め認証が得られている送信元等を意味する。ゲートウェイECU12は、通信装置11により受信される信号のうち、認証が成功した信号のデータのみを車両10の内部の通信回線を通じて、所定の車載機器(例えば、ECU13やセントラルECU19等)に送信する。
【0043】
また、例えば、ゲートウェイECU12は、車両10の各種機器からの要求に応じて、所定の情報や指令(要求)等の内容を含む信号を生成し、通信装置11を通じて、所定の送信先(例えば、配信サーバ20や解析サーバ30)に送信する。
【0044】
ECU13は、車両10に一又は複数搭載される。ECU13は、車両10の各種機能に関する制御を行う。例えば、複数のECU13の中には、車両10の動力源としてのエンジンを制御するECU13、車両10の動力源としての電動機(MG:Motor Generator)を制御するECU13、車両10の変速機のシフトポジションを制御するECU13等が含まれる。
【0045】
センサ15は、車両10に一又は複数搭載される。センサ15は、車両10の状態に関する計測データを出力する。センサ15の出力(計測データ)は、車両10の内部の通信回線を通じて、セントラルECU19に取り込まれる。例えば、複数のセンサ15の中には、車両10の各車輪の車輪速を計測するセンサ15(車輪速センサ)が含まれる。また、例えば、複数のセンサ15の中には、車両10の前後方向や左右方向や上下方向の加速度を計測するセンサ15(加速度センサ)が含まれる。また、例えば、複数のセンサ15の中には、車両10の所定部位の温度を計測するセンサ15(温度センサ)が含まれる。温度センサには、例えば、車両10に搭載される駆動用のバッテリや補機用のバッテリの温度を測定する温度センサや各種機器の冷却水の温度を測定する水温センサや各種機器の潤滑油の油温を測定する油温センサ等が含まれる。また、例えば、複数のセンサ15の中には、車両10の位置を測定するセンサ15(GNSS(Global Navigation Satellite System)センサ)を含む。
【0046】
ナビゲーション装置16は、表示装置18を通じて、車両10のユーザ(運転者)に車両10が通過する経路を案内する。例えば、ナビゲーション装置16は、複数のECU13のうちの一のECU13の制御下で、車両10のユーザに車両10が通過する経路を案内する。
【0047】
入力装置17は、車両10の室内に設けられ、搭乗者からの各種入力を受け付ける。入力装置17は、例えば、ボタン、トグル、レバー、タッチパネル、タッチパッド等の搭乗者からの操作入力を受け付ける操作入力装置を含む。また、入力装置17は、例えば、マイクロフォン等、車両10の搭乗者の音声入力を受け付ける音声入力装置を含む。また、入力装置17は、例えば、車両10の室内の搭乗者の様子を撮像可能なカメラ等、車両10の搭乗者のジェスチャ入力を受け付けるジェスチャ入力装置を含む。入力装置17で受け付けられる入力の内容を表す入力信号は、車両10の内部の通信回線を通じて、セントラルECU19に取り込まれる。
【0048】
表示装置18は、車両10の室内の運転席から視認し易い場所に設けられ、各種情報画面を表示する。表示装置18は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等である。表示装置18は、車両10の内部の通信回線を通じて、セントラルECU19と通信可能に接続され、セントラルECU19は、表示装置18に制御信号を出力し、表示装置18に所定の情報画面を表示させることができる。
【0049】
セントラルECU19は、例えば、車両10に搭載されるゲートウェイECU12及びECU13を含む各種ECUの上位の制御装置として、各種ECUの動作を統括制御したり、各種ECUで利用される各種データの登録先として機能したりする。
【0050】
セントラルECU19の機能は、任意のハードウェア或いは任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせ等により実現される。例えば、図2に示すように、セントラルECU19は、バスB1で接続される、補助記憶装置19A、メモリ装置19B、CPU19C、及びインタフェース装置19Dを含む。
【0051】
補助記憶装置19Aは、不揮発性の記憶手段であり、インストールされるプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。補助記憶装置19Aは、例えば、フラッシュメモリ等である。
【0052】
メモリ装置19Bは、例えば、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置19AのプログラムをCPU19Cが読み込み可能なようにロードする。メモリ装置19Bは、例えば、SRAM(Static Random Access Memory)である。
【0053】
CPU19Cは、例えば、メモリ装置19Bにロードされるプログラムを実行し、プログラムの命令に従って、セントラルECU19の各種機能を実現する。
【0054】
インタフェース装置19Dは、例えば、車両10の内部の通信回線に接続するためのインタフェースとして用いられる。インタフェース装置19Dは、接続する通信回線の種類に合わせて、複数の異なる種類のインタフェース装置を含んでよい。
【0055】
セントラルECU19の各種機能を実現するプログラムは、例えば、可搬型の記録媒体19Eによって提供される。この場合、インタフェース装置19Dは、記録媒体19Eからのデータの読み取りや記録媒体19Eへのデータの書き込みのためのインタフェースとして機能する。記録媒体19Eは、例えば、DLC(Data Link Coupler)等の外部接続用のコネクタに着脱可能なケーブルで接続される専用ツールである。また、記録媒体19Eは、例えば、SDメモリカードやUSB(Universal Serial Bus)メモリ等であってもよい。また、プログラムは、所定の通信回線を通じて、車両10の外部の他のコンピュータ(例えば、配信サーバ20)からダウンロードされ、補助記憶装置19Aにインストールされてもよい。
【0056】
<配信サーバのハードウェア構成>
図3は、配信サーバ20のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0057】
配信サーバ20の機能は、任意のハードウェア或いは任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせ等により実現される。例えば、図3に示すように、配信サーバ20は、バスB2で接続される、外部インタフェース21、補助記憶装置22、メモリ装置23、CPU24、通信インタフェース26、入力装置27、及び表示装置28を含む。
【0058】
尚、解析サーバ30やユーザ端末40についても配信サーバ20と同様のハードウェア構成を有してよい。以下、解析サーバ30やユーザ端末40のハードウェア構成の図示や説明を省略する。
【0059】
外部インタフェース21は、記録媒体21Aからデータの読み取りや記録媒体21Aへのデータの書き込みのためのインタフェースとして機能する。記録媒体21Aには、例えば、フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、SDメモリカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ等が含まれる。これにより、配信サーバ20は、記録媒体21Aを通じて、処理で利用する各種データを読み込み、補助記憶装置22に格納したり、各種機能を実現するプログラムをインストールしたりすることができる。
【0060】
尚、配信サーバ20は、通信インタフェース26を通じて、外部装置から各種データやプログラムを取得してもよい。
【0061】
補助記憶装置22は、インストールされた各種プログラムを格納すると共に、各種処理に必要なファイルやデータ等を格納する。補助記憶装置22は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)やSSD(Solid State Drive)やフラッシュメモリ等を含む。
【0062】
メモリ装置23は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置22からプログラムを読み出して格納する。メモリ装置23は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)を含む。
【0063】
CPU24は、補助記憶装置22からメモリ装置23にロードされた各種プログラムを実行し、プログラムに従って配信サーバ20に関する各種機能を実現する。
【0064】
高速演算装置25は、CPU24と連動し、相対的に高い速度で演算処理を行う。高速演算装置25は、例えば、GPU(Graphics Processing Unit)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等を含む。
【0065】
尚、高速演算装置25は、必要な演算処理の速度に応じて、省略されてもよい。
【0066】
通信インタフェース26は、外部機器と通信可能に接続するためのインタフェースとして用いられる。これにより、配信サーバ20は、通信インタフェース26を通じて、例えば、車両10や解析サーバ30やユーザ端末40等の外部機器と通信することができる。また、通信インタフェース26は、接続される機器との間の通信方式等によって、複数の種類の通信インタフェースを有してよい。
【0067】
入力装置27は、ユーザから各種入力を受け付ける。
【0068】
入力装置27は、例えば、ユーザからの機械的な操作入力を受け付ける操作入力装置を含む。操作入力装置は、例えば、ボタン、トグル、レバー等を含む。また、操作入力装置は、例えば、表示装置28に実装されるタッチパネル、表示装置28とは別に設けられるタッチパッド等を含む。
【0069】
また、入力装置27は、例えば、ユーザからの音声入力を受付可能な音声入力装置を含む。音声入力装置は、例えば、ユーザの音声を集音可能なマイクロフォンを含む。
【0070】
また、入力装置27は、例えば、ユーザからのジェスチャ入力を受付可能なジェスチャ入力装置を含む。ジェスチャ入力装置は、例えば、ユーザのジェスチャの様子を撮像可能なカメラを含む。
【0071】
また、入力装置27は、例えば、ユーザからの生体入力を受付可能な生体入力装置を含む。生体入力装置は、例えば、ユーザの指紋や虹彩に関する情報を内包する画像データを取得可能なカメラを含む。
【0072】
表示装置28は、ユーザに向けて、情報画面や操作画面を表示する。表示装置28は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等を含む。
【0073】
[ソフトウェア更新システムの機能構成]
次に、図1図3に加えて、図4を参照して、ソフトウェア更新システム1の機能構成について説明する。
【0074】
図4は、ソフトウェア更新システム1の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0075】
<車両の機能構成>
図4に示すように、ゲートウェイECU12は、機能部として、通信部121と、記憶部122とを含む。通信部121の機能は、例えば、ゲートウェイECU12の補助記憶装置にインストールされるプログラムをメモリ装置にロードしCPU上で実行することにより実現されてよい。また、記憶部122の機能は、例えば、ゲートウェイECU12の補助記憶装置等に規定される記憶領域により実現されてよい。
【0076】
通信部121は、通信装置11を制御し、車両10の外部から受信される信号をゲートウェイECU12に取り込んだり、車両10の外部に信号を送信させたりする。
【0077】
記憶部122には、ゲートウェイECU12で利用される各種データが記憶される。記憶部122には、例えば、ゲートウェイECU12(補助記憶装置)にインストールされた各種プログラムのデータが登録(記憶)される。また、記憶部122には、例えば、ゲートウェイECU12の各種プログラムによる処理で参照されるパラメータのデータ等が登録(記憶)される。
【0078】
ECU13は、機能部として、記憶部131を含む。記憶部131の機能は、例えば、ECU13の補助記憶装置に規定される記憶領域により実現される。
【0079】
記憶部131には、ECU13で利用される各種データが記憶される。記憶部131には、例えば、ECU13(補助記憶装置)にインストールされた各種プログラムのデータが登録(記憶)される。また、記憶部131には、例えば、ECU13の各種プログラムによる処理で参照されるパラメータのデータ等が登録(記憶)される。
【0080】
セントラルECU19は、機能部として、車両データ送信部191と、ダウンロード処理部192と、記憶部193と、ソフトウェア更新部194と、記憶部195と、を含む。また、セントラルECU19は、車両データ取得部196と、経路案内部197と、記憶部198と、車両データ送信部199とを含む。車両データ送信部191、ダウンロード処理部192、ソフトウェア更新部194、車両データ取得部196、経路案内部197、及び車両データ送信部199の機能は、例えば、補助記憶装置19Aにインストールされるプログラムをメモリ装置19BにロードしCPU19C上で実行することにより実現されてよい。記憶部193,195,198の機能は、例えば、補助記憶装置19Aに規定される記憶領域により実現されてよい。
【0081】
車両データ送信部191は、所定周期ごとに、車両10の状態を表す車両データを取得し、ゲートウェイECU12(通信装置11)を通じて、解析サーバ30に送信(アップロード)する。車両データには、例えば、センサ15から出力される計測データが含まれる。また、車両データには、例えば、ゲートウェイECU12、ECU13、及びセントラルECU19等の各種ECUから出力される指令値や制御処理の過程での演算結果の値等の制御データが含まれる。以下、車両データ送信部191による送信対象の車両データを、車両データ取得部196の取得対象(車両データ送信部199の送信対象)の車両データと区別し、便宜的に「第1の車両データ」と称する場合がある。車両データ送信部191は、例えば、取得した第1の車両データをリアルタイムに解析サーバ30にアップロードしてよい。また、車両データ送信部191は、例えば、取得した第1の車両データをメモリ装置19Bや補助記憶装置19Aに蓄積し、所定のタイミングで蓄積された車両データをまとめて解析サーバ30に送信してもよい。
【0082】
ダウンロード処理部192は、配信サーバ20からのソフトウェアの更新データのダウンロードに関する処理を行う。
【0083】
記憶部193は、配信サーバ20からダウンロードされたソフトウェアの更新データを記憶する。
【0084】
ソフトウェア更新部194(更新部の一例)は、記憶部193にダウンロード済のソフトウェアの更新データを用いて、ゲートウェイECU12やECU13やセントラルECU19等で利用されるソフトウェアの更新を行う。
【0085】
尚、後述の如く、車両データ取得部196の機能が解析サーバ30に移管される場合、ソフトウェア更新部194は、配信サーバ20(例えば、通知部201)からの指令に応じて、ソフトウェアの更新を行ってもよい。
【0086】
記憶部195には、セントラルECU19で利用される各種データが記憶される。記憶部195には、例えば、セントラルECU19(補助記憶装置)にインストールされた各種プログラムのデータが登録(記憶)される。また、記憶部195には、例えば、セントラルECU19の各種プログラムによる処理で参照されるパラメータのデータ等が登録(記憶)される。
【0087】
車両データ取得部196(取得部の一例)は、ソフトウェア更新部194により車両10のソフトウェアが更新される場合に、その更新前及び更新後の所定の車両データを取得する。以下、車両データ取得部196の取得対象の所定の車両データを、上述の車両データ送信部191の送信対象(取得対象)の車両データ(第1の車両データ)と区別し、便宜的に「第2の車両データ」と称する場合がある。第2の車両データは、ソフトウェアの更新によって得られる効果を解析サーバ30が検証するために必要な種類の車両データであり、第1の車両データに相当する複数の種類の車両データの一部又は全部の種類の車両データに相当する。また、第2の車両データは、ソフトウェアの種類やその更新の内容によって変化しうる。例えば、取得すべき第2の車両データの種類に関する情報は、ソフトウェアの更新の内容、即ち、更新データと紐付けられる形で予め規定され、配信サーバ20や解析サーバ30等から車両10に配信される態様であってよい。これにより、車両データ取得部196は、ソフトウェアの更新の内容(更新データ)に合わせて、適切な第2の車両データを取得することができる。
【0088】
例えば、車両データ取得部196は、ソフトウェアの種類やその更新の内容等に応じて規定される、第2の車両データとして取得すべき種類の車両データを所定周期ごとにメモリ装置19Bに規定されるリングバッファに時系列で記録する。そして、車両データ取得部196は、ソフトウェアの種類やその更新の内容に応じて規定される所定の条件(以下、「取得条件」)が成立すると、取得条件の成立時の所定期間の車両データをリングバッファから第2の車両データとして取得し、記憶部198に保存する。取得条件は、例えば、ソフトウェアの更新による効果を評価する際の前提となる車両10の走行条件や環境条件等を含む。または、取得条件は、一つであってもよいし、複数であってもよい。
【0089】
尚、車両データ取得部196の機能は、解析サーバ30に移管されてもよい。この場合、解析サーバ30の同機能部(取得部の一例)は、例えば、車両10からアップロードされる第1の車両データの中から取得条件に合致する第2の車両データを取得(抽出)する。そして、配信サーバ20の通知部201(更新部の一例)は、解析サーバ30における車両10のソフトウェアの更新前の第2の車両データの取得状況を把握しながら、車両10にソフトウェアの更新指令を送信してよい。これにより、車両データ取得部196の機能が解析サーバ30に移管された場合であっても、ソフトウェアの更新前の第2の車両データの取得を待って、車両10のソフトウェアの更新を実施させることができる。
【0090】
経路案内部197は、ナビゲーション装置16を制御し、GNSSセンサ(センサ15)の出力に基づき、車両10の位置を把握しながら、第2の車両データを取得するのに適した経路を通過するように車両10のユーザ(運転者)を案内(誘導)する。例えば、セントラルECU19(経路案内部197)は、直接、ナビゲーション装置16に制御指令を出力し、ナビゲーション装置16を制御してよい。また、例えば、セントラルECU19(経路案内部197)は、ナビゲーション装置16を制御するECU13に制御指令を出力することにより、そのECU13を通じて、ナビゲーション装置16を制御してもよい。
【0091】
第2の車両データを取得するのに適した経路とは、ソフトウェアの更新による車両10の状態の変化が相対的に高い頻度で発生する経路である。第2の車両データを取得するのに適した経路(道路)の条件は、例えば、制限速度、通過車両の平均速度、勾配、カーブの曲率半径等のパラメータによって予め規定され、配信サーバ20や解析サーバ30等から車両10に配信される態様であってよい。これにより、経路案内部197は、ソフトウェアの更新の内容に適合する第2の車両データを取得するのに適した経路を通過するように車両10のユーザ(運転者)を適切に誘導することができる。
【0092】
尚、車両データ取得部196の機能が解析サーバ30に移管される場合、経路案内部197の機能も解析サーバ30に移管されてもよい。この場合、解析サーバ30の同機能部は、図示しないナビゲーションサーバを利用しながら、車両10の外部からナビゲーション装置16を制御し、車両10の経路案内を実施してよい。
【0093】
記憶部198には、車両データ取得部196により取得された第2の車両データが記憶される。
【0094】
車両データ送信部199は、記憶部198に記憶される第2の車両データを、ゲートウェイECU12(通信装置11)を通じて、解析サーバ30に送信する。
【0095】
<配信サーバの機能構成>
図4に示すように、配信サーバ20は、機能部として、通知部201と、配信部202とを含む。通知部201及び配信部202の機能は、例えば、補助記憶装置22にインストールされるプログラムをメモリ装置23にロードしCPU24上で実行することにより実現される。
【0096】
通知部201は、車両10で利用されるソフトウェアの更新データがある場合に、車両10のユーザにソフトウェアの更新データの存在を通知する。ソフトウェア更新システム1に複数の車両10が含まれる場合、複数の車両10のうちの更新データによるソフトウェアの更新の対象の車両10のユーザだけにソフトウェアの更新データの存在を通知する。例えば、複数の車両10の中に2以上の車種の車両10が含まれる場合、車種ごとに、ソフトウェアの更新の有無や更新の内容が異なりうるからである。また、例えば、複数の車両10が全て同じ車種であっても、グレードによって、ソフトウェアの更新の有無や更新の内容に差異が生じうるからである。また、例えば、車両10に関する契約内容によって、ユーザが受けることのできるサービス、即ち、契約内容で規定される対価(料金)に対するサービスが異なり、ソフトウェアの更新の有無や更新の内容に差異が生じうるからである。
【0097】
具体的には、通知部201は、ソフトウェアの更新データの存在を通知する信号を車両10に送信する。これにより、車両10のセントラルECU19(ダウンロード処理部192)は、表示装置18を通じて、ソフトウェアの更新データの存在を通知することができる。また、通知部201は、車両10に代えて、或いは、加えて、車両10のユーザのユーザ端末40にソフトウェアの更新データの存在を通知する信号を送信してもよい。これにより、ユーザ端末40(通知部401)は、表示装置を通じて、ソフトウェアの更新データの存在を車両10のユーザに通知することができる。また、通知部201は、ソフトウェアの更新のためにユーザによる対価(料金)の支払いが必要な場合、ソフトウェアの更新による効果の予測結果の内容、及び対価の額を含む、ソフトウェアの更新データの存在を通知する信号を車両10やユーザ端末40に送信してもよい。これにより、車両10のセントラルECU19(ダウンロード処理部192)は、表示装置18を通じて、ソフトウェアの更新に必要な対価の額と共に、ソフトウェアの更新データの存在を車両10のユーザに通知することができる。また、ユーザ端末40(通知部401)は、表示装置を通じて、ソフトウェアの更新に必要な対価の額と共に、ソフトウェアの更新データの存在を車両10のユーザに通知することができる。
【0098】
また、通知部201は、車両10或いは車両10のユーザのユーザ端末40からソフトウェアの更新を許可する信号(以下、「更新許可信号」)が受信されると、その旨を通知する信号を解析サーバ30に送信する。更新許可信号は、車両10の入力装置17やユーザ端末40の入力装置を通じて、車両10のユーザがソフトウェアの更新を許可するための所定の入力を行ったことを示す信号である。この際、信号には、対象の車両10を特定する情報(例えば、車両10ごとに規定されるID(Identifier)等の識別情報やVIN(Vehicle Identification Number)等)、及びソフトウェアの更新内容に関する情報等が含まれる。これにより、解析サーバ30(後述の効果評価部304)は、ソフトウェアの更新による効果の評価対象の車両10、及びソフトウェアの更新の内容等を把握することができる。
【0099】
配信部202は、ソフトウェアの更新データを車両10に配信する。例えば、通知部201は、車両10或いはユーザ端末40から更新許可信号が受信されると、配信部202に更新データの配信指令を送信し、配信部202は、更新指令に応じて、対象の車両10に更新データを送信する。
【0100】
<解析サーバの機能構成>
図4に示すように、解析サーバ30は、機能部として、仮想車両モデル取得部301と、仮想車両モデル記憶部302と、シミュレータ部303と、効果評価部304とを含む。仮想車両モデル取得部301、シミュレータ部303、及び効果評価部304の機能は、例えば、解析サーバ30の補助記憶装置にインストールされるプログラムをメモリ装置にロードしCPU上で実行することにより実現される。仮想車両モデル記憶部302の機能は、例えば、解析サーバ30の補助記憶装置に規定される記憶領域によって実現される。
【0101】
仮想車両モデル取得部301(生成部の一例)は、車両10に相当する仮想モデル(以下、「仮想車両モデル」)を取得する。仮想車両モデルは、車両10の各種特性が仮想空間上で再現されたデジタルモデルである。仮想車両モデルは、例えば、車両10の全体の各種特性が再現されたフルビークルモデルであってもよいし、後述の効果予測の対象となる車両10の一部の特性だけが再現されたパーシャルビークルモデルであってもよい。また、仮想車両モデルは、車両10の一部又は全部の形状が再現された三次元モデルであってもよい。
【0102】
例えば、仮想車両モデル取得部301は、仮想車両モデルとして、同じ車種や同じ車種且つ同じグレードの車両10に汎用の仮想モデル(汎用モデルの一例)を取得する。汎用の仮想車両モデルは、例えば、車両10に相当する車種の開発段階で作成される、車両10に相当する車種やグレードの最終仕様のフルビークルモデルやパーシャルビークルモデルであってよい。
【0103】
また、例えば、仮想車両モデル取得部301は、車両10ごとに専用の仮想モデル(専用モデルの一例)を生成することにより、仮想車両モデルを取得してもよい。具体的には、仮想車両モデル取得部301は、汎用の仮想車両モデルをベースにして、車両10からアップロードされる第1の車両データに基づき、仮想車両モデルを適宜更新することで、車両10に専用の仮想車両モデルを生成してよい。これにより、仮想車両モデル取得部301は、車両10の経時変化、車両10の使用条件、及び車両10の構成要素の変化の少なくとも一つに合わせて、仮想車両モデルを生成(更新)することができる。そのため、車両10に専用の仮想車両モデルに、車両10の経時変化や車両10の使用条件や車両10の構成要素の変化を反映させることができる。車両10の使用条件には、例えば、車両10が使用される環境に関する条件、車両10が使用されるときの走行条件、車両10が使用される頻度に関する条件等が含まれてよい。車両10の構成要素の変化には、例えば、車両10の部品等のハードウェアの変化、車両10のソフトウェアの変化、車両10で使用される冷却水や潤滑油の種類の変化等が含まれてよい。また、仮想車両モデル取得部301は、車両10から逐次アップロードされる車両データに基づき、リアルタイムに仮想車両モデルを更新することで、車両10に相当する専用モデルとしてのデジタルツインを生成してもよい。
【0104】
仮想車両モデル記憶部302には、仮想車両モデル取得部301により取得(生成)された仮想車両モデルが記憶される。ソフトウェア更新システム1に含まれる車両10が複数である場合、複数の車両10ごとの仮想車両モデルが記憶される。但し、上述の如く、仮想車両モデルとして、汎用のモデルが取得される場合、複数の車両10のうちの一部又は全部に共通する汎用の仮想車両モデルが仮想車両モデルとして仮想車両モデル記憶部302に記憶されてもよい。
【0105】
シミュレータ部303は、仮想車両モデル記憶部302に登録(記憶)されている車両10の仮想車両モデルを用いて、車両10に関する仮想シミュレーションを行う。車両10に関する仮想シミュレーションには、所定の走行条件下での車両10の走行シミュレーションが含まれる。
【0106】
効果評価部304(評価部の一例)は、車両10からアップロードされる、車両10のソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの第2の車両データに基づき、車両10で利用されるソフトウェアの更新によって得られた効果を評価する。
【0107】
例えば、効果評価部304は、車両10のソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの第2の車両データを比較することにより、車両10で利用されるソフトウェアの更新による効果を評価する。具体的には、効果評価部304は、車両10のソフトウェアの更新前及び更新後の第2の車両データに含まれる、或いは、第2の車両データから導出(演算)される、ソフトウェアの更新による効果に関する車両データを比較してよい。これにより、効果評価部304は、車両10(車両データ取得部196)によって取得済みの第2の車両データを比較することで、比較的容易に車両10のソフトウェアの更新による効果を評価することができる。
【0108】
また、例えば、効果評価部304は、車両10のソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの第2の車両データを用いて、車両10のソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれに対応する仮想シミュレーションをシミュレータ部303に実施させる。具体的には、シミュレータ部303は、車両10のソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの第2の車両データを反映させた、車両10のソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれに対応する仮想車両モデルを用いて、同じ走行条件や環境条件下での車両10の仮想シミュレーションを実施してよい。仮想シミュレーションの際の走行条件は、例えば、ソフトウェアの種類やその更新の内容等によって可変される。ソフトウェアの種類やその更新の内容等によって、ソフトウェアの更新に伴って車両10の特性が変化する走行条件が異なり得るからである。そして、効果評価部304は、車両10のソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれに対応する仮想シミュレーションの結果を比較することにより、車両10のソフトウェアの更新による効果を評価してよい。これにより、効果評価部304は、同じ条件下での仮想シミュレーションの結果を比較することで、より高い精度で車両10のソフトウェアの更新による効果を評価することができる。
【0109】
また、効果評価部304は、ソフトウェアの更新前及び更新後の第2の車両データの比較結果と、ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれに相当する仮想シミュレーションの比較結果とを用いて、ソフトウェアの更新による効果を評価してもよい。例えば、効果評価部304は、ソフトウェアの更新前及び更新後の第2のデータの比較による車両10の特性の変化と、ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれに対応する仮想シミュレーションの結果の比較による車両10の特性の変化とを比較する。具体的には、効果評価部304は、実際の車両10の第2の車両データ同士の比較による車両10の特性の変化と、仮想シミュレーションの結果同士の比較による車両10の特性の変化とを平均化する等により、ソフトウェアの更新による効果を評価してよい。
【0110】
尚、車両10のソフトウェアの更新の内容に沿った車両10の状態が実現されているか否かの効果を評価する場合、効果評価部304は、更新前及び更新後の第2のデータのうちの更新後の第2のデータのみを用いてもよい。
【0111】
効果評価部304は、例えば、ソフトウェアの更新の目的に相当する性能の向上(改善)に関する効果を評価する場合、ソフトウェアの更新によって改善される性能の指標値が所定基準を超えているか否かによって、効果の有無を評価してよい。また、効果評価部304は、ソフトウェアの更新によって改善される性能の指標値に基づき、効果の度合いを評価してもよい。
【0112】
また、効果評価部304は、例えば、ソフトウェアの種類やその更新の内容に応じて、効果の評価方法を選択してもよい。具体的には、効果評価部304は、ソフトウェアの種類やその更新の内容に応じて、車両10のソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの第2の車両データを比較するのか、車両10のソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれに対応する仮想シミュレーションを実施するのかを判断してもよい。何れの評価方法を実施するかは、例えば、更新データごとに予め規定されており、その規定された内容に応じて、自動的に判断されてもよい。また、仮想シミュレーションを実施するか否かは、例えば、ソフトウェアの種類、その更新の内容、及びソフトウェアの更新により変化する車両10の特性項目等に基づき、テーブル情報等を用いて、判断されてもよい。
【0113】
尚、効果評価部304の機能は、車両10(例えば、セントラルECU19)に移管されてもよい。この場合、車両10(セントラルECU19)の同機能部(評価部の一例)は、例えば、車両データ取得部196による取得済みのソフトウェアの更新後の第2の車両データを確認したり、ソフトウェア更新前及び更新後の第2の車両データを比較したりすることより、ソフトウェアの更新による効果を評価する。
【0114】
<ユーザ端末の機能構成>
図4に示すように、ユーザ端末40は、機能部として、通知部401を含む。通知部401の機能は、例えば、ユーザ端末40の補助記憶装置にインストールされるプログラムをメモリ装置にロードしCPU上で実行することにより実現される。
【0115】
通知部401は、配信サーバ20から受信される上述の信号に基づき、表示装置を通じて、車両10のソフトウェアの更新データの存在をユーザに通知する。これにより、車両10のユーザは、車両10を利用中以外のタイミングでも、車両10のソフトウェアの更新データの存在を把握することができる。そのため、例えば、ユーザは、ユーザ端末40の入力装置を通じて、ソフトウェアの更新を許可する入力を行い、車両10の未使用のタイミングで更新データの車両10への配信を完了させることができる。
【0116】
[車両のソフトウェアの更新による効果の評価方法の具体例]
次に、図5図9を参照して、効果評価部304による車両10のソフトウェアの更新による効果の評価方法の具体例について説明する。具体的には、車両10のソフトウェアの更新の目的に相当する性能の向上に関する効果の評価方法を例示的に説明する。
【0117】
<第1の具体例>
図5は、車両10の変速機の変速マップの更新の一例を示す図である。具体的には、図5は、横軸を車両10の車速とし、縦軸を車両10の要求駆動力とする座標系上において、車両10の変速機の1速と2速との間、2速と3速との間、及び3速と4速との間のそれぞれの切替条件を表す。
【0118】
尚、車両10の要求駆動力は、例えば、車両10の運転者のアクセル開度に応じて決定される。また、図5中で、実線は、シフトアップ時の切替条件(変速線)を表し、点線は、シフトダウン時の切替条件(変速線)を表している。
【0119】
図5に示すように、本例では、変速機のシフトポジションに関する制御を行うECU13のソフトウェアの更新によって、3速と4速との間の切替条件が変速線501から変速線502に変更されている。
【0120】
例えば、効果評価部304は、3速と4速との間の切替条件が変更された動作領域503でのソフトウェア更新後の第2の車両データを用いて、ソフトウェアの更新の内容に沿った変速機の変速が適切に実現されているかを評価する。また、効果評価部304は、ソフトウェア更新前及び更新後のそれぞれの動作領域503での第2の車両データを比較し、ソフトウェアの更新の内容に沿った変速機の変速が適切に実現されているかを評価してもよい。
【0121】
また、例えば、効果評価部304は、ソフトウェアの更新前及び更新後の動作領域503での動力性能に関する第2の車両データを比較し、車両10の動力性能(例えば、加速性能)の向上の効果を評価する。また、効果評価部304は、ソフトウェア更新前及び更新後のそれぞれの動作領域503での第2の車両データを反映させた仮想車両モデルに基づく仮想シミュレーションの結果を比較し、車両10の動力性能の向上の効果を評価してもよい。
【0122】
また、例えば、効果評価部304は、ソフトウェアの更新前及び更新後の動作領域503での電費性能や燃費性能等の省エネルギ性能に関する第2の車両データを比較し、車両10の省エネルギ性能を評価する。また、効果評価部304は、動作領域503でのソフトウェア更新前及び更新後のそれぞれの第2の車両データを反映させた仮想車両モデルに基づく仮想シミュレーションの結果を比較し、車両10の省エネルギ性能の向上の効果を評価してもよい。
【0123】
このように、本例では、効果評価部304は、車両10からアップロードされる第2の車両データに基づき、車両10のソフトウェア(変速マップ)の更新による効果を評価することができる。
【0124】
<第2の具体例>
図6は、車両10の原動機の切替マップの更新の一例を示す図である。本例では、車両10は、エンジン及び電動機の2つの原動機を切り替えて走行可能な、いわゆるハイブリッド車両である。具体的には、図6は、横軸を車両10の車速とし、縦軸を車両10の要求駆動力とする座標系において、エンジンを停止させて電動機(MG)のみで車両10を走行させる状態と、エンジンを始動させてエンジンで車両10を走行させる状態との切替条件を表す。
【0125】
尚、エンジンで車両10を走行させる状態には、エンジンのみで車両10を走行させる状態と、エンジン及び電動機の双方で車両10を走行させる状態の双方が含まれうる。
【0126】
図6に示すように、本例では、2つの原動機の動作状態を統合的に制御するECU13のソフトウェアの更新によって、電動機のみで車両10を走行させる状態とエンジンで車両10を走行させる状態とを切り替える切替条件が切替線601(細い実線)から切替線602(太い実線)に更新されている。
【0127】
例えば、効果評価部304は、原動機の切替条件が変更された動作領域603でのソフトウェア更新後の第2の車両データを用いて、ソフトウェアの更新の内容に沿った2つの原動機の切り替えが適切に実現されているかを評価する。また、効果評価部304は、ソフトウェア更新前及び更新後のそれぞれの動作領域603での第2の車両データを比較し、ソフトウェアの更新の内容に沿った2つの原動機の切り替えが適切に実現されているかを評価してもよい。
【0128】
また、例えば、効果評価部304は、ソフトウェア更新前及び更新後の動作領域603での燃費性能に関する第2の車両データを比較し、車両10の燃費性能の向上の効果を評価する。また、効果評価部304は、ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの動作領域603での第2の車両データを反映させた仮想車両モデルに基づく仮想シミュレーションの結果を比較し、車両10の動力性能の向上の効果を評価してもよい。
【0129】
このように、本例では、効果評価部304は、車両10からアップロードされる第2の車両データに基づき、ソフトウェア(原動機の切替マップ)の更新による効果を評価することができる。
【0130】
<第3の具体例>
図7は、車両10の変速機のシフトチェンジ(シフトアップ)に関する制御ロジックの更新前及び更新後のそれぞれについて、変速機のシフトチェンジ時における実際の車両10の状態の経時変化の一例(タイムチャート700)を示す図である。具体的には、図7は、ソフトウェア更新システム1に含まれる一の車両10の第2の車両データを示す図である。タイムチャート700は、変速機のシフトチェンジ時における解放圧指令値、係合圧指令値、原動機(エンジン)の回転数、及び車両10の前後加速度のそれぞれの経時変化を表すタイムチャート701~704を含む。図8は、車両10の変速機のシフトチェンジ(シフトアップ)に関する制御ロジックの更新前及び更新後のそれぞれについて、変速機のシフトチェンジ時における車両10の状態の経時変化の他の例(タイムチャート800)を示す図である。具体的には、図8は、ソフトウェア更新システム1に含まれる、上述の一の車両10と同じ仕様の変速機を搭載する他の車両10の第2の車両データを示す図である。タイムチャート800は、変速機のシフトチェンジ時における解放圧指令値、係合圧指令値、変速機の出力軸の回転数、及び車両10の前後加速度のそれぞれの経時変化を表すタイムチャート801~804を含む。図9は、車両10の変速機のシフトチェンジ(シフトアップ)に関する制御ロジックの更新前及び更新後のそれぞれについて、変速機のシフトチェンジ時における車両10の状態の経時変化の仮想シミュレーションの結果の一例(タイムチャート900)を示す図である。具体的には、図9は、ソフトウェア更新システム1に含まれる、上述の一の車両10に専用の仮想車両モデルに基づく仮想シミュレーションの結果を示す図である。タイムチャート900は、変速機のシフトチェンジ時における解放圧指令値、係合圧指令値、変速機の出力軸の回転数、及び車両10の前後加速度のそれぞれの経時変化を表すタイムチャート901~904を含む。
【0131】
尚、解放圧指令値は、シフトチェンジによって係合状態から解放状態に移行する変速機の構成要素(例えば、ブレーキやクラッチ等)を作動させるための油圧の指令値を表す。また、係合圧指令値は、シフトチェンジによって解放状態から係合状態に移行する変速機の構成要素を作動させるための油圧の指令値を表す。また、図7図9において、更新前及び更新後の変速機のシフトチェンジに関する制御ロジックは、同じである。そのため、制御ロジックに相当するタイムチャート701,702、タイムチャート801,802、及びタイムチャート901,902は、同じである。
【0132】
図7図9に示すように、本例では、シフトチェンジ(シフトアップ)の開始(解放圧指令値の減少の開始)から終了(係合圧指令値の増大の終了)までの時間(変速時間)が短くなるように、変速機のシフトチェンジの制御ロジックが更新されている。
【0133】
例えば、効果評価部304は、ソフトウェアの更新後のタイムチャート701,702を用いて、一の車両10でソフトウェアの更新の内容に沿った制御ロジックが適切に実現されているか否かを評価する。同様に、効果評価部304は、ソフトウェアの更新後のタイムチャート801,802を用いて、他の車両10でソフトウェアの更新の内容に沿った制御ロジックが適切に実現されているか否かを評価してよい。また、効果評価部304は、ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれのタイムチャート701,702を比較し、一の車両10でソフトウェアの更新の内容に沿った制御ロジックが適切に実現されているか否かを評価してもよい。同様に、効果評価部304は、ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれのタイムチャート701,702を比較し、他の車両10でソフトウェアの更新の内容に沿った制御ロジックが適切に実現されているか否かを評価してもよい。
【0134】
また、例えば、効果評価部304は、ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれのタイムチャート703,704を比較し、変速機のシフトチェンジの速度(変速速度)の向上の効果を評価する。同様に、効果評価部304は、ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれのタイムチャート803,804を比較し、変速機のシフトチェンジの速度(変速速度)の向上の効果を評価してよい。
【0135】
タイムチャート703では、制御ロジックの更新によって、変速機のシフトチェンジに伴う原動機(エンジン)の回転数の変化速度(時間経過に対する変化率)が相対的に大きくなっている。また、タイムチャート704では、変速機のシフトチェンジに伴う車両10の前後加速度の変動も相対的に大きくなっている。そのため、一の車両10のユーザは、変速機の変速速度の向上を明確に実感することができる。よって、一の車両10の場合、効果評価部304は、ソフトウェアの更新による変速速度の向上の効果がある、或いは、効果の度合いが相対的に大きいと評価することができる。
【0136】
一方、タイムチャート803では、制御ロジックの更新の前後で、変速機のシフトチェンジに伴う原動機(エンジン)の回転数の変化速度(時間経過に対する変化率)が略変化していない。また、タイムチャート804では、制御ロジックの更新の前後で、変速機のシフトチェンジに伴う車両10の前後加速度の変動の大きさにほとんど変化がない。そのため、他の車両10のユーザは、変速機の変速速度の向上を実感しにくくなる。よって、他の車両10の場合、効果評価部304は、ソフトウェアの更新による変速速度の向上の効果がない、或いは、効果の度合いが相対的に小さいと予測することができる。
【0137】
尚、同じ仕様の変速機を搭載する車両10によって制御ロジックの更新による効果に差異が生じる原因としては、例えば、変速機に使用されている潤滑油の粘度の影響が考えられる。例えば、変速機に工場出荷時に充填される潤滑油よりも高粘度の市販の潤滑油が使用されている場合、ユーザが変速速度の向上を実感しにくくなる可能性がある。また、同じ仕様の変速機を搭載する車両10によって制御ロジックの更新による効果に差異が生じる原因としては、例えば、変速機のクラッチパックのクリアランスの製造上のばらつきによる影響が考えられる。例えば、変速機のクラッチパックのクリアランスが製造上の許容範囲の中で下限付近にある場合、その上限付近にある場合よりもユーザが変速速度の向上を実感しにくくなる可能性がある。また、同じ仕様の変速機を搭載する車両10によって制御ロジックの更新による効果に差異が生じる原因としては、例えば、変速機の累積での変速回数による影響が考えられる。例えば、車両10の工場出荷後或いは変速機の新品への交換後の累積での変速回数が相対的に少ない場合、累積での変速回数が多い場合よりも変速機のクラッチパックのクリアランスが相対的に小さく、ユーザが変速速度の向上を実感しにくくなる可能性がある。また、同じ仕様の変速機を搭載する車両10によって制御ロジックの更新による効果に差異が生じる原因としては、例えば、変速機のクラッチやブレーキの係合及び解放を実行するソレノイドバルブのエア漏れの影響が考えられる。例えば、変速機のソレノイドバルブのエア漏れが相対的に小さい場合、エア漏れが相対的に大きい場合よりも変速速度が相対的に高くなることから、制御ロジックの更新が実施されても、変速速度の向上をユーザが実感しにくくなる可能性がある。また、同じ仕様の変速機を搭載する車両10によって制御ロジックの更新による効果に差異が生じる原因としては、例えば、車両10が使用されている温度環境の影響が考えられる。例えば、車両10が温度の非常に低い、いわゆる寒冷地で使用されている場合、比較的気温が高い状態で使用されている場合よりも潤滑油の粘度が高くなることから、制御ロジックの更新が実施されても、変速速度の向上をユーザが実感しにくくなる可能性がある。
【0138】
また、例えば、効果評価部304は、タイムチャート703,704に代えて、或いは、加えて、仮想シミュレーションの結果のタイムチャート903,904を用いて、一の車両10の変速機のシフトチェンジの速度(変速速度)の向上の効果を評価してもよい。具体的には、効果評価部304は、ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれのタイムチャート903,904を比較し、一の車両10の変速機のシフトチェンジの速度(変速速度)の向上の効果を評価してもよい。これにより、効果評価部304は、ソフトウェアの更新前及び更新後の走行条件や環境条件等の各種条件を揃えた状態で、変速機の出力軸の回転数、及び車両10の前後加速度のタイムチャートを比較することができる。そのため、効果評価部304は、一の車両10の変速機の変速速度の向上の効果をより高い精度で評価することができる。
【0139】
タイムチャート903では、タイムチャート703の場合と同様、制御ロジックの更新によって、変速機のシフトチェンジに伴う原動機(エンジン)の回転数の変化速度(時間経過に対する変化率)が相対的に大きくなっている。また、タイムチャート904では、タイムチャート704の場合と同様、変速機のシフトチェンジに伴う一の車両10の前後加速度の変動も相対的に大きくなっている。そのため、一の車両10のユーザは、変速機の変速速度の向上を明確に実感することができる。よって、一の車両10の場合、効果評価部304は、ソフトウェアの更新による変速速度の向上の効果がある、或いは、効果の度合いが相対的に大きいと評価することができる。
【0140】
尚、効果評価部304は、一の車両10の場合と同様、タイムチャート803,804に代えて、或いは、加えて、仮想シミュレーションの結果のタイムチャートを用いて、他の車両10の変速機のシフトチェンジの速度(変速速度)の向上の効果を評価してもよい。
【0141】
このように、本例では、効果評価部304は、車両10からアップロードされる第2の車両データに基づき、ソフトウェア(変速機のシフトチェンジの制御ロジック関するプログラム)の更新による効果を評価することができる。
【0142】
[ソフトウェア更新処理の一例]
次に、図10図11を参照して、セントラルECU19による車両10のソフトウェアの更新に関する処理(以下、「ソフトウェア更新処理」)の一例について説明する。
【0143】
図10図11は、セントラルECU19によるソフトウェア更新処理の一例を概略的示すフローチャートである。本フローチャートは、例えば、車両10の起動時の初期処理終了後から車両の停止時の終了処理の開始までの間で繰り返し実行される。車両10の起動は、例えば、車両10のイグニッションスイッチのオンであり、車両10の停止は、例えば、車両10のイグニッションスイッチのオフである。
【0144】
尚、本例では、ゲートウェイECU12及びセントラルECU19は、車両10の停止中でも動作可能である前提で説明を進める。
【0145】
図10に示すように、ステップS102にて、車両データ取得部196は、後述のステップS114で開始される、ソフトウェアの更新前の第2の車両データの取得の途中であるか否かを判定する。車両データ取得部196は、ソフトウェアの更新前の第2の車両データの取得の途中である場合、ステップS114に進み、それ以外の場合、ステップS104に進む。
【0146】
ステップS104にて、車両データ取得部196は、後述のステップS130で開始される、ソフトウェアの更新後の第2の車両データの取得の途中であるか否かを判定する。車両データ取得部196は、ソフトウェアの更新後の第2の車両データの取得の途中である場合、ステップS130に進み、それ以外の場合、ステップS106に進む。
【0147】
ステップS106にて、ダウンロード処理部192は、配信サーバ20からソフトウェアの更新データの存在を通知する信号が受信されているか否かを判定する。ダウンロード処理部192は、配信サーバ20から更新データの存在を通知する信号が受信されている場合、ステップS108に進み、それ以外の場合、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0148】
ステップS108にて、ダウンロード処理部192は、ソフトウェアの更新データの存在を通知する通知画面を表示装置18に表示させる。
【0149】
セントラルECU19は、ステップS108の処理が完了し、入力装置17を通じてソフトウェアの更新の許否に関する入力が受け付けられると、ステップS110に進む。
【0150】
ステップS110にて、ダウンロード処理部192は、ソフトウェアの更新を許可する入力が受け付けられたか否かを判定する。ダウンロード処理部192は、ソフトウェアの更新を許可する入力が受け付けられた場合、ステップS112に進み、ソフトウェアの更新を拒否する入力が受け付けられた場合、今回のフローチャートを終了する。
【0151】
ステップS112にて、ダウンロード処理部192は、更新データのダウンロードを開始する。
【0152】
セントラルECU19は、ステップS112の処理が完了すると、ステップS114に進む。
【0153】
尚、ソフトウェアの更新の許否をユーザに確認する前に、更新データが車両10にダウンロードされてもよい。この場合、ステップS112の処理は省略される。
【0154】
ステップS114にて、車両データ取得部196は、第2の車両データの取得を開始する。
【0155】
セントラルECU19は、ステップS114の処理が完了すると、ステップS116に進む。
【0156】
ステップS116にて、車両データ取得部196(判定部の一例)は、第2の車両データの取得が完了したか否かを判定する。例えば、車両データ取得部196は、上述の取得条件が複数ある場合、複数の取得条件ごとの第2の車両データの取得が全て完了しているか否かを判定する。車両データ取得部196は、第2の車両データの取得が完了していない場合、ステップS118に進み、完了している場合、ステップS126に進む。
【0157】
ステップS118にて、車両データ取得部196は、車両10が停止されたか否か(例えば、イグニッションスイッチがオフされたか否か)を判定する。車両データ取得部196は、車両10が停止されていない場合、ステップS120に進む。一方、車両データ取得部196は、車両10が停止された場合、例えば、ソフトウェアの更新前の第2の車両データの取得の途中であることを示すフラグをONにし、今回のフローチャートの処理を終了する。これにより、車両データ取得部196は、次回の車両10の起動時に、ステップS102にて、ソフトウェアの更新前の第2の車両データの取得の途中であると判定することができる。
【0158】
ステップS120にて、車両データ取得部196は、第2の車両データの取得開始から所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間は、ソフトウェアの種類やその更新の内容に依らず、固定されていてもよいし、ソフトウェアの種類やその更新の内容によって可変されてもよい。車両データ取得部196は、第2の車両データの取得開始から所定時間が経過している場合、ステップS122に進み、所定時間が経過していない場合、ステップS116に戻る。
【0159】
ステップS122にて、経路案内部197は、後述のステップS124における第2の車両データの取得に適した経路案内が実施済みか否かを判定する。経路案内部197は、経路案内が実施済みでない場合、ステップS124に進み、経路案内が実施済みである場合、ステップS116に戻る。
【0160】
ステップS124にて、経路案内部197は、ナビゲーション装置16を制御し、第2の車両データを取得するのに適した経路を探索し、その経路を通過するように車両10のユーザ(運転者)を案内(誘導)する。
【0161】
セントラルECU19は、ステップS124の処理が完了すると、ステップS116に戻る。
【0162】
尚、経路案内部197は、車両データ取得部196による第2の車両データの取得開始に合わせて、第2の車両データを取得するのに適した経路を探索し、その経路を通過するように車両10のユーザ(運転者)の案内を開始してもよい。この場合、ステップS124の処理は、ステップS114の直前に実施される。また、ステップS120,S122の処理も併せて省略され、ステップS118で車両10が停止されていないと判定されると、ステップS116に戻る。また、ステップS124の処理は省略されてもよい。この場合、ステップS120,S122の処理も併せて省略され、ステップS118で車両10が停止されていないと判定されると、ステップS116に戻る。
【0163】
ステップS126にて、ソフトウェア更新部194は、ソフトウェアの更新が可能か否かを判定する。ソフトウェア更新部194は、例えば、ダウンロード処理部192による更新データのダウンロードが完了し、且つ、ソフトウェアの更新に適した車両10の状態である場合に、ソフトウェアの更新が可能と判定する。
【0164】
ソフトウェアの更新に適した車両10の状態は、ソフトウェアの種類やその更新の内容によって異なる。例えば、車両10の走行に関連するソフトウェアの更新(例えば、図5図9のソフトウェアの更新)の場合、ソフトウェアの更新に適した車両10の状態は、車両10の停止状態(例えば、イグニッションスイッチがオフの状態)である。一方、例えば、車両10の走行に関連しないソフトウェアの更新の場合、ソフトウェアの更新に適した車両10の状態には、車両10の起動から停止までの状態が含まれうる。ソフトウェアの更新に適した車両10の状態に関する情報は、更新データごとに予め規定され、更新データと共に配信サーバ20からセントラルECU19にダウンロードされてよい。
【0165】
ソフトウェア更新部194は、ソフトウェアの更新が可能な場合、ステップS128に進み、ソフトウェアの更新が可能でない場合、ソフトウェアの更新が可能になるまで、ステップS126の処理を繰り返しながら待機する。
【0166】
ステップS128にて、ソフトウェア更新部194は、記憶部193にダウンロード済の更新データを用いて、ソフトウェアの更新を実施する。
【0167】
セントラルECU19は、ステップS128の処理が完了すると、ステップS130に進む。
【0168】
図11に示すように、ステップS130にて、車両データ取得部196は、第2の車両データの取得を開始する。
【0169】
セントラルECU19は、ステップS130の処理が完了すると、ステップS132に進む。
【0170】
ステップS132にて、車両データ取得部196は、第2の車両データの取得が完了したか否かを判定する。車両データ取得部196は、第2の車両データの取得が完了していない場合、ステップS134に進み、完了している場合、ステップS142に進む。
【0171】
ステップS134にて、車両データ取得部196は、車両10が停止されたか否か(例えば、イグニッションスイッチがオフされたか否か)を判定する。車両データ取得部196は、車両10が停止されていない場合、ステップS136に進む。一方、車両データ取得部196は、車両10が停止された場合、例えば、ソフトウェアの更新後の第2の車両データの取得の途中であることを示すフラグをONにし、今回のフローチャートの処理を終了する。これにより、車両データ取得部196は、次回の車両10の起動時に、ステップS104にて、ソフトウェアの更新後の第2の車両データの取得の途中であると判定することができる。
【0172】
ステップS136にて、車両データ取得部196は、第2の車両データの取得開始から所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間は、ソフトウェアの種類やその更新の内容等に依らず、固定されていてもよいし、ソフトウェアの種類やその更新の内容等によって可変されてもよい。車両データ取得部196は、第2の車両データの取得開始から所定時間が経過している場合、ステップS138に進み、所定時間が経過していない場合、ステップS132に戻る。
【0173】
ステップS138にて、車両データ取得部196は、後述のステップS140における第2の車両データの取得に適した経路案内が実施済みか否かを判定する。車両データ取得部196は、経路案内が実施済みでない場合、ステップS140に進み、経路案内が実施済みである場合、ステップS132に戻る。
【0174】
ステップS140にて、経路案内部197は、ステップS124の場合と同様、ナビゲーション装置16を制御し、第2の車両データを取得するのに適した経路を探索し、その経路を通過するように車両10のユーザ(運転者)を案内(誘導)する。この際、経路案内部197は、第2の車両データを取得するのに適した経路として、ソフトウェアの更新前の第2の車両データが取得されたときと同じ経路を通過するように案内してもよい。
【0175】
セントラルECU19は、ステップS140の処理が完了すると、ステップS132に戻る。
【0176】
尚、経路案内部197は、車両データ取得部196による第2の車両データの取得開始に合わせて、第2の車両データを取得するのに適した経路を探索し、その経路を通過するように車両10のユーザ(運転者)の案内を開始してもよい。この場合、ステップS140の処理は、ステップS130の直前に実施される。また、ステップS136,S138の処理も併せて省略され、ステップS134で車両10が停止されていないと判定されると、ステップS132に戻る。また、ステップS140の処理は省略されてもよい。この場合、ステップS136,S138の処理も併せて省略され、ステップS134で車両10が停止されていないと判定されると、ステップS132に戻る。
【0177】
ステップS142にて、車両データ送信部199は、記憶部198に記憶済みのソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの第2の車両データを、ゲートウェイECU12(通信装置11)を通じて解析サーバ30に送信する。これにより、解析サーバ30(効果評価部304)は、ソフトウェアの更新前及び更新後の第2の車両データを取得(受信)し、ソフトウェアの更新による効果を評価することができる。
【0178】
セントラルECU19は、ステップS142の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0179】
このように、本例では、セントラルECU19は、第2の車両データの取得完了後に、ソフトウェアの更新を実施する。
【0180】
これにより、セントラルECU19は、ソフトウェアの更新前の第2の車両データを確実に取得することができる。その結果、ソフトウェア更新システム1は、ソフトウェアの更新前及び更新後の第2の車両データを利用し、ソフトウェアの更新による効果を確実に評価することができる。
【0181】
[ソフトウェア更新処理の他の例]
次に、図12図13を参照し、セントラルECU19によるソフトウェア更新処理の他の例について説明する。
【0182】
ステップS202~S212の処理は、図10のステップS102~S112の処理と同じであるため、説明を省略する。
【0183】
セントラルECU19は、ステップS212の処理が完了すると、ステップS214に進む。
【0184】
ステップS214にて、車両データ取得部196は、ソフトウェアの更新前の第2の車両データの取得回数N1(2以上の整数)を決定する。例えば、上述の如く、取得条件の成立時における所定期間の時系列データとして第2の車両データが取得される場合、取得回数N1は、所定期間の時系列データとして取得される第2の車両データの数に相当する。また、例えば、取得条件が複数ある場合、取得回数N1は、複数の取得条件ごとの第2の車両データの取得回数に相当する。取得回数N1は、固定されていてもよいし、可変されてもよい。
【0185】
取得回数N1は、例えば、ソフトウェアの種類やその更新の内容に応じて可変される。例えば、ソフトウェアの種類やその更新の内容によっては、第2の車両データの取得条件(走行条件や環境条件等)の幅が非常に狭く、不適切な第2の車両データが取得される確率が高まる場合があり得る。そのため、このような場合に、同じ取得条件下でのより多くの第2の車両データが取得されることにより、適切な第2の車両データを取得できる確率を高めることができる。また、例えば、ソフトウェアの種類やその更新の内容によっては、取得対象となる種類の第2の車両データのばらつきが相対的に大きい場合があり得る。そのため、このような場合に、同じ取得条件下でのより多くの第2の車両データが取得されることにより、解析サーバ30は、複数の第2の車両データを統計的に処理し、ソフトウェアの更新による効果をより精度良く評価することができる。
【0186】
また、取得回数N1は、例えば、ソフトウェアの更新の規模に応じて可変される。ソフトウェアの更新の規模は、例えば、ソフトウェアの更新によって更新される車両10の特性項目の数によって規定される。また、ソフトウェアの更新の規模は、例えば、ソフトウェアの更新データのデータ量で規定されてもよい。
【0187】
例えば、ソフトウェアの更新によって変化する特性項目の数が多くなるほど、車両10のメーカがソフトウェアの更新による効果に対する車両10のメーカや開発者の関心度が相対的に高くなる。また、例えば、ソフトウェアの更新によって変化する車両10の特性項目が多くなるほど、プログラムのソースコードの行数や参照データの規模が相対的に大きくなり、その結果、更新データのデータ量が相対的に大きくなる。また、例えば、ソフトウェアの更新によって車両10の特定の特性項目を大きく改善させる場合、アルゴリズムの大改変等によって、プログラムのソースコードの行数や参照データの規模が相対的に大きくなり、その結果、更新データのデータ量が相対的に大きくなる。そして、ソフトウェアの更新によって変化する車両10の特性項目が相対的に多くなるほど、或いは、車両10の特定の特性項目の改善代が相対的に大きくなるほど、ソフトウェアの更新による効果に対する車両10のメーカや開発者等の関心度が相対的に高くなる可能性が高い。そのため、ソフトウェアの更新の規模が大きくなるほど、車両10のメーカや開発者等がソフトウェアの更新による効果のより高い精度での評価結果を必要とする可能性が高い。よって、取得回数N1は、ソフトウェアの更新の規模が大きくなるほど、大きく(多く)なるように可変されてよい。
【0188】
セントラルECU19は、ステップS214の処理が完了すると、ステップS216に進む。
【0189】
ステップS216は、図10のステップS114の処理と同じであるため、説明を省略する。
【0190】
セントラルECU19は、ステップS216の処理が完了すると、ステップS218に進む。
【0191】
ステップS218にて、車両データ取得部196は、取得回数N1の第2の車両データを取得完了したか否かを判定する。車両データ取得部196は、取得回数N1の第2の車両データを取得完了していない場合、ステップS220に進み、取得回数N1の第2の車両データを取得完了した場合、ステップS228に進む。
【0192】
ステップS220~S230は、図1のステップS118~S128の処理と同じであるため、説明を省略する。
【0193】
セントラルECU19は、ステップS230の処理が完了すると、ステップS232に進む。
【0194】
ステップS232にて、車両データ取得部196は、ソフトウェアの更新後の第2の車両データの取得回数N2を決定する。例えば、上述の如く、取得条件の成立時における所定期間の時系列データとして第2の車両データが取得される場合、取得回数N2は、取得回数N1と同様、所定期間の時系列データとして取得される第2の車両データの数に相当する。また、例えば、取得条件が複数ある場合、取得回数N2は、取得回数N1と同様、複数の取得条件ごとの第2の車両データの取得回数に相当する。取得回数N2は、取得回数N1と同様、固定されていてもよいし、可変されてもよい。また、取得回数N2は、取得回数N1と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0195】
取得回数N2は、例えば、取得回数N1の場合と同様、ソフトウェアの種類やその更新の内容に応じて可変される。
【0196】
また、取得回数N2は、例えば、取得回数N1と同様、ソフトウェアの更新の規模に応じて可変される。具体的には、取得回数N2は、ソフトウェアの更新の規模が大きくなるほど、大きく(多く)なるように可変されてよい。また、取得回数N2は、取得回数N1と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0197】
セントラルECU19は、ステップS232の処理が完了すると、ステップS234に進む。
【0198】
図13に示すように、ステップS234は、図11のステップS130と同じであるため、説明を省略する。
【0199】
セントラルECU19は、ステップS234の処理が完了すると、ステップS236に進む。
【0200】
ステップS236にて、車両データ取得部196は、取得回数N2の第2の車両データを取得完了したか否かを判定する。車両データ取得部196は、取得回数N2の第2の車両データを取得完了していない場合、ステップS238に進み、取得回数N2の第2の車両データを取得完了した場合、ステップS246に進む。
【0201】
ステップS238~S246は、図11のステップS134~S142の処理と同じであるため、説明を省略する。
【0202】
セントラルECU19は、ステップS246の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0203】
このように、本例では、セントラルECU19は、2以上の取得回数N1の第2の車両データを取得完了後に、ソフトウェアの更新を実施する。また、セントラルECU19は、ソフトウェアの更新後、2以上の取得回数N2の第2の車両データを取得する。
【0204】
これにより、セントラルECU19は、ソフトウェアの更新前及び更新後の第2の車両データをそれぞれ複数取得することができる。そのため、ソフトウェア更新システム1(解析サーバ30)は、例えば、取得した複数の第2の車両データから不適切なデータを除去したり、取得した複数の第2の車両データを統計的に処理したりして、ソフトウェアの更新による効果を評価することができる。よって、ソフトウェア更新システム1は、より確実に且つより高い精度でソフトウェアの更新による効果を評価することができる。
【0205】
[ソフトウェアの更新による効果の評価処理の一例]
次に、図14を参照して、解析サーバ30による、車両10のソフトウェアの更新による効果の評価処理の一例について説明する。
【0206】
図14は、解析サーバ30による、車両10のソフトウェアの更新による効果の評価処理の一例を概略的に示すフローチャートである。本フローチャートは、例えば、車両10からソフトウェアの更新前及び更新後の第2の車両データが受信されると、実行される。以下、後述の図15のフローチャートについても、同様であってよい。
【0207】
図14に示すように、ステップS302にて、効果評価部304は、車両10からアップロードされた、ソフトウェアの更新前及び更新後の第2の車両データを比較し、対象の車両10のソフトウェアの更新による効果を評価する。
【0208】
例えば、ソフトウェア更新前及び更新後のそれぞれの第2の車両データが1つである場合、効果評価部304は、第2の車両データ同士をそのまま比較することにより、車両10のソフトウェアの更新による効果を評価する。また、効果評価部304は、ソフトウェアの更新前及び更新後の第2の車両データの少なくとも一方を補正し、補正後の第2の車両データ同士を比較することにより、車両10のソフトウェアの更新による効果を評価してもよい。例えば、ソフトウェアの更新前及び更新後の第2の車両データの少なくとも一方は、それぞれの取得時の走行条件や環境条件等の相対的な差異、或いは、取得時の走行条件や環境条件等の所定の基準に対する絶対的な差異を無くすように、所定の方法で補正される。また、ソフトウェアの更新前及び更新後の第2の車両データがそれぞれ複数存在する場合(図12図13参照)、効果評価部304は、複数の第2の車両データに対して統計的な処理を施し、処理済みの1つの第2の車両データを生成し、処理済みの第2の車両データ同士を比較することにより、ソフトウェアの更新による効果を評価してもよい。また、この際、効果評価部304は、複数の第2の車両データの中から不適切な第2の車両データを除去してもよい。不適切な第2の車両データは、例えば、複数の第2の車両データのうちの想定される範囲を超える異常値に相当する車両データや取得条件が不成立の状態の第2の車両データ等である。
【0209】
解析サーバ30は、ステップS302が完了すると、ステップS304に進む。
【0210】
ステップS304にて、効果評価部304は、ステップS302でソフトウェアの更新による効果がある旨の評価が出たか否かを判定する。
【0211】
例えば、評価対象がソフトウェアの更新の目的に相当する性能の向上(改善)に関する効果である場合、効果評価部304は、評価結果としての指標値が所定基準を超えているか否かにより、効果の有無を評価する。また、例えば、評価対象がソフトウェアの更新の内容に沿った車両10の状態が実現されているか否かに関する効果である場合、効果評価部304は、ソフトウェアの更新の内容に沿った車両10の状態が実現されている場合に効果ありと評価する。
【0212】
効果評価部304は、ソフトウェアの更新による効果がある場合、ステップS306に進み、ソフトウェアの更新による効果がない場合、ステップS308に進む。
【0213】
ステップS306にて、効果評価部304は、ソフトウェアの更新による効果がある旨を表すフラグを"ON"に設定する。
【0214】
解析サーバ30は、ステップS306の処理が完了すると、ステップS310に進む。
【0215】
一方、ステップS308にて、効果評価部304は、ソフトウェアの更新による効果がある旨を表すフラグを"OFF"に設定する。
【0216】
解析サーバ30は、ステップS308の処理が完了すると、ステップS310に進む。
【0217】
ステップS310にて、効果評価部304は、ステップS306或いはステップS308で設定されたフラグのデータを含む、対象の車両10のソフトウェアの更新による効果の評価結果のデータを補助記憶装置等に規定される所定の記憶部に登録する。この際、効果評価部304は、評価結果に関するデータを、対象の車両10の識別情報に対応付ける形で、所定の記憶部に登録する。これにより、例えば、車両10の開発者やサービスの担当者は、車両10ごとのソフトウェアの更新による効果の評価結果を確認することができる。
【0218】
解析サーバ30は、ステップS310の処理が完了すると、今回のフローチャートを終了する。
【0219】
このように、本例では、解析サーバ30は、車両10からアップロードされる、ソフトウェアの更新前及び更新後の第2の車両データを比較することにより、対象の車両10のソフトウェアの更新による効果を評価する。
【0220】
これにより、解析サーバ30は、車両10のソフトウェアの更新による効果をより容易に(より効率的に)評価することができる。
【0221】
[ソフトウェアの更新による効果の評価処理の他の例]
次に、図15を参照して、解析サーバ30による、車両10のソフトウェアの更新による効果の評価処理の他の例について説明する。
【0222】
図15は、解析サーバ30による、車両10のソフトウェアの更新による効果の評価処理の他の例を概略的に示すフローチャートである。
【0223】
図15に示すように、ステップS402にて、効果評価部304は、対象の車両10の今回のソフトウェアの更新による効果が、車両10の仮想車両モデルに基づく仮想シミュレーションによる効果の評価対象であるか否かを判定する。
【0224】
例えば、対象の車両10の今回のソフトウェアの更新による効果が、車両10の仮想車両モデルに基づく仮想シミュレーションによる効果の評価対象であるか否かは、上述の如く、更新データごとに予め規定され、その規定された内容に応じて、自動的に判断される。また、対象の車両10の今回のソフトウェアの更新による効果が、車両10の仮想車両モデルに基づく仮想シミュレーションによる効果の評価対象であるか否かは、ソフトウェアの種類、その更新の内容、及びソフトウェアの更新により変化する車両10の特性項目等に基づき、テーブル情報等を用いて判断されてもよい。
【0225】
効果評価部304は、対象の車両10の今回のソフトウェアの更新による効果が、車両10の仮想車両モデルに基づく仮想シミュレーションによる効果の評価対象である場合、ステップS404に進み、それ以外の場合、ステップS404に進む。
【0226】
ステップS404にて、効果評価部304は、対象の車両10のソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの第2の車両データを反映させた仮想車両モデルに基づく、同じ条件したでの仮想シミュレーションをシミュレータ部303に実施させる。
【0227】
解析サーバ30は、ステップS404の処理が完了し、シミュレータ部303による仮想シミュレーションが完了すると、ステップS406に進む。
【0228】
ステップS406にて、効果評価部304は、車両10のソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれに対応する仮想車両モデルに基づく仮想シミュレーションの結果を比較し、車両10のソフトウェアの更新による効果を評価する。
【0229】
解析サーバ30は、ステップS406の処理が完了すると、ステップS410に進む。
【0230】
一方、ステップS408は、図14のステップS302の処理と同じであるため、説明を省略する。
【0231】
解析サーバ30は、ステップS408の処理が完了すると、ステップS410に進む。
【0232】
ステップS410~S416は、図14のステップS304~S310の処理と同じであるため、説明を省略する。
【0233】
このように、本例では、解析サーバ30は、仮想車両モデルを用いて、車両10のソフトウェアの更新前及び更新後の第2の車両データのそれぞれに基づき、同じ条件下での仮想シミュレーションを行う。そして、解析サーバ30は、車両10のソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれに対応する仮想シミュレーションの結果を比較することにより、車両10のソフトウェアの更新による効果を評価する。
【0234】
これにより、解析サーバ30は、同じ条件下の仮想シミュレーション結果を比較できることから、車両10のソフトウェアの更新による効果をより高い精度で評価することができる。
【0235】
また、本例では、解析サーバ30は、ソフトウェアの種類やその更新の内容やソフトウェアの更新によって変化する車両10の特性項目の種類等に応じて、仮想シミュレーションによる効果の評価の実施の有無を判断する。
【0236】
これにより、解析サーバ30は、評価対象の効果に合わせて、評価の効率と評価の精度とのバランスを図ることができる。
【0237】
[作用]
次に、本実施形態に係るソフトウェア更新システム1の作用について説明する。
【0238】
本実施形態では、ソフトウェア更新システム1は、車両10と通信可能に接続される配信サーバ20から車両10に送信される、車両10で利用されるソフトウェアの更新データに基づき、ソフトウェアを更新させる。具体的には、ソフトウェア更新システム1は、更新部と、取得部と、評価部と、を備える。より具体的には、更新部(例えば、ソフトウェア更新部194)は、更新データに基づき、車両10のソフトウェアを更新させる。また、取得部(例えば、車両データ取得部196)は、更新部による車両10のソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの車両10の状態に関する所定のデータ(例えば、第2の車両データ)を取得する。そして、評価部(例えば、効果評価部304)は、ソフトウェアの更新前及び更新後のそれぞれの所定のデータに基づき、ソフトウェアの更新による効果を評価する。
【0239】
これにより、ソフトウェア更新システム1は、実際に車両10で利用されるソフトウェアの更新が行われた場合のその車両10での効果を評価することができる。
【0240】
また、本実施形態では、ソフトウェア更新システム1は、判定部を備える。具体的には、判定部(例えば、車両データ取得部196)は、ソフトウェアの更新前の所定のデータが取得部により取得済みであるか否かを判定してよい。そして、更新部は、判定部によって、ソフトウェアの更新前の所定のデータが取得済みであると判定される場合に、ソフトウェアを更新させてよい。
【0241】
これにより、ソフトウェア更新システム1は、ソフトウェアの更新前の車両10の状態に関する所定のデータを確実に取得することができる。そのため、ソフトウェア更新システム1は、ソフトウェアの更新による効果を確実に評価することができる。
【0242】
また、本実施形態では、判定部は、2以上の第1の所定数(例えば、取得回数N1)のソフトウェアの更新前の所定のデータが取得済であるか否かを判定してもよい。
【0243】
これにより、ソフトウェア更新システム1は、ソフトウェアの更新前の車両10の状態に関する複数の所定のデータを利用することができる。そのため、ソフトウェア更新システム1は、ソフトウェアの更新による効果をより高い精度で評価することができる。
【0244】
また、本実施形態では、上述の第1の所定数は、車両10のソフトウェアの更新の内容、及び規模の少なくとも一方によって可変されてもよい。
【0245】
これにより、ソフトウェア更新システム1は、ソフトウェアの更新の内容や規模に合わせて、所定のデータの取得数を少なくしデータ取得の効率化を図ったり、所定のデータの取得数を多くしソフトウェアの更新による効果の評価精度の向上を図ったりすることができる。そのため、ソフトウェア更新システム1は、ソフトウェアの更新の内容や規模に合わせて、データの取得の効率化と、ソフトウェアの更新による効果の評価精度の向上とのバランスを図ることができる。
【0246】
また、本実施形態では、ソフトウェア更新システム1は、案内部を備えてもよい。具体的には、案内部(例えば、経路案内部197)は、更新部によるソフトウェアの更新後に、車両10の運転者に対して、ソフトウェアの更新後の所定のデータを取得するための走行経路を案内してもよい。
【0247】
これにより、ソフトウェア更新システム1は、例えば、ソフトウェアの更新による効果を評価するために必要な所定のデータを取得するための走行条件や環境条件に適合する経路に車両10を誘導することができる。また、ソフトウェア更新システム1は、例えば、ソフトウェアの更新前の所定のデータの取得時と同じ経路に車両10を誘導することができる。そのため、ソフトウェア更新システム1は、ソフトウェアの更新後の車両10の状態に関する所定データをより適切に取得することができ、その結果、ソフトウェアの更新による効果をより高い精度で評価することができる。
【0248】
また、本実施形態では、取得部は、2以上の第2の所定数(例えば、取得回数N2)のソフトウェアの更新後の所定のデータを取得してもよい。
【0249】
これにより、ソフトウェア更新システム1は、ソフトウェアの更新後の車両10の状態に関する複数の所定のデータを利用することができる。そのため、ソフトウェア更新システム1は、ソフトウェアの更新による効果をより高い精度で評価することができる。
【0250】
また、本実施形態では、上述の第2の所定数は、車両10のソフトウェアの更新の内容、及び規模の少なくとも一方によって可変されてもよい。
【0251】
これにより、ソフトウェア更新システム1は、ソフトウェアの更新の内容や規模に合わせて、所定のデータの取得数を少なくしデータ取得の効率化を図ったり、所定のデータの取得数を多くしソフトウェアの更新による効果の評価精度の向上を図ったりすることができる。そのため、ソフトウェア更新システム1は、ソフトウェアの更新の内容や規模に合わせて、データの取得の効率化と、ソフトウェアの更新による効果の評価精度の向上とのバランスを図ることができる。
【0252】
また、本実施形態では、評価部は、車両10のソフトウェアの更新前及び更新後の所定のデータを比較することにより、ソフトウェアの更新による効果を評価してもよい。
【0253】
これにより、ソフトウェア更新システム1は、ソフトウェアの更新による効果を評価することができる。
【0254】
また、本実施形態では、評価部は、車両10に相当する仮想モデルを用いて、ソフトウェアの更新前及び更新後の所定のデータのそれぞれに基づき、仮想シミュレーションを行い、その結果を比較することにより、効果を評価してもよい。
【0255】
これにより、ソフトウェア更新システム1は、ソフトウェアの更新による効果をより高い精度で評価することができる。
【0256】
また、本実施形態では、評価部は、ソフトウェアの更新の内容に応じて、車両10のソフトウェアの更新による効果の評価の際の仮想シミュレーションの実施の有無を判断してもよい。
【0257】
これにより、ソフトウェア更新システム1は、ソフトウェアの更新の内容に合わせて、仮想シミュレーションを実施せずに、評価の効率化を図ったり、仮想シミュレーションを実施し、より高い精度での評価を図ったりすることができる。そのため、ソフトウェア更新システム1は、ソフトウェアの更新の内容に合わせて、評価の効率化と、評価の高精度化とのバランスを図ることができる。
【0258】
また、本実施形態では、評価部は、ソフトウェアの更新の内容に応じて、仮想シミュレーションの際の車両10の走行条件を変化させてもよい。
【0259】
これにより、ソフトウェア更新システム1は、ソフトウェアの更新によって影響を受ける走行条件に合わせて、仮想シミュレーションを実施することができる。そのため、ソフトウェア更新システム1は、ソフトウェアの更新による効果をより高い精度で評価することができる。
【0260】
また、本実施形態では、評価部は、ソフトウェアの更新前及び更新後の所定のデータの比較による車両10の特性の変化と、ソフトウェアの更新前及び更新後の所定のデータのそれぞれに基づく仮想シミュレーションの結果の比較による車両10の特性の変化とを比較することによって、ソフトウェアの更新による効果を評価してもよい。
【0261】
これにより、ソフトウェア更新システム1は、実際の車両10での所定のデータ同士の比較結果と、仮想シミュレーションの結果同士の比較結果との双方を用いて、ソフトウェアの更新の効果を評価することができる。そのため、ソフトウェア更新システム1は、ソフトウェアの更新による効果をより高い精度で評価することができる。
【0262】
また、本実施形態では、仮想車両モデルは、車両10に相当する汎用モデルであってもよい。
【0263】
これにより、ソフトウェア更新システム1は、例えば、同じ車種の複数の車両10に共通の仮想車両モデル(汎用モデル)を用いて、ソフトウェアの更新による効果を予測することができる。そのため、ソフトウェア更新システム1は、例えば、ソフトウェアの更新による効果を評価するための仮想車両モデルの準備にかかる労力や時間を軽減し、より効率的にソフトウェアの更新による効果を評価することができる。
【0264】
また、本実施形態では、仮想車両モデルは、車両10に相当する専用モデルであってもよい。
【0265】
これにより、ソフトウェア更新システム1は、車両10ごとに専用の仮想車両モデルを用いて、ソフトウェアの更新による効果を評価することができる。そのため、ソフトウェア更新システム1は、車両10ごとに固有の事情を反映させることができ、その結果、ソフトウェアの更新による効果をより高い精度で評価することができる。
【0266】
また、本実施形態では、ソフトウェア更新システム1は、仮想車両モデルを生成する生成部を備えてもよい。具体的には、生成部(例えば、仮想車両モデル取得部301)は、車両10の経時変化、車両10の使用条件、及び車両10の構成要素の変化の少なくとも一つに合わせて、仮想車両モデルを更新してもよい。
【0267】
これにより、ソフトウェア更新システム1は、車両10の経時変化や車両10の使用条件や車両10の構成要素の変化等の車両10の固有の事情を、具体的に、車両10に専用の仮想車両モデルに反映させることができる。
【0268】
また、本実施形態では、生成部は、車両10の現実の状態を表すデータ(例えば、第1の車両データ)を取得し、仮想車両モデルとして車両10のデジタルツインの生成及び更新を行ってもよい。
【0269】
これにより、ソフトウェア更新システム1は、車両10の最新の状態が常に反映された仮想車両モデル(デジタルツイン)を用いて、ソフトウェアの更新による効果を評価することができる。そのため、ソフトウェア更新システム1は、ソフトウェアの更新によって得られる効果をより高い精度で評価することができる。
【0270】
以上、実施形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において、種々の変形・改良が可能である。
【符号の説明】
【0271】
1 ソフトウェア更新システム(情報処理システム)
10 車両
11 通信装置
12 ゲートウェイECU
13 ECU
15 センサ
16 ナビゲーション装置
17 入力装置
18 表示装置
19 セントラルECU(情報処理装置)
19A 補助記憶装置
19B メモリ装置
19C CPU
19D インタフェース装置
19E 記録媒体
20 配信サーバ(情報処理装置)
21 外部インタフェース
21A 記録媒体
22 補助記憶装置
23 メモリ装置
24 CPU
25 高速演算装置
26 通信インタフェース
27 入力装置
28 表示装置
30 解析サーバ(情報処理装置)
40 ユーザ端末
121 通信部
122 記憶部
131 記憶部
191 車両データ送信部
192 ダウンロード処理部
193 記憶部
194 ソフトウェア更新部(更新部)
195 記憶部
196 車両データ取得部(取得部、判定部)
197 経路案内部(案内部)
198 記憶部
199 車両データ送信部
201 通知部(更新部)
202 配信部
301 仮想車両モデル取得部(生成部)
302 仮想車両モデル記憶部
303 シミュレータ部
304 効果評価部(評価部)
401 通知部
図1
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