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特許7615965管理装置、方法、および電力管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】管理装置、方法、および電力管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/0601 20230101AFI20250109BHJP
   G06Q 50/06 20240101ALI20250109BHJP
【FI】
G06Q30/0601
G06Q50/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021136272
(22)【出願日】2021-08-24
(65)【公開番号】P2023030882
(43)【公開日】2023-03-08
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 由貴
(72)【発明者】
【氏名】木村 和峰
(72)【発明者】
【氏名】小幡 一輝
(72)【発明者】
【氏名】木暮 宏光
(72)【発明者】
【氏名】菊池 智志
(72)【発明者】
【氏名】間庭 佑太
【審査官】永野 一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/041010(WO,A1)
【文献】特開2020-115707(JP,A)
【文献】特開2016-046916(JP,A)
【文献】特開2020-188648(JP,A)
【文献】特開2016-167191(JP,A)
【文献】国際公開第2021/131638(WO,A1)
【文献】特開2021-005957(JP,A)
【文献】特開2015-070744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力取引市場の管理装置であって、
プロセッサと、
複数のエージェント装置および他の管理装置と通信可能なインターフェイスとを備え、
前記複数のエージェント装置の各々は、前記電力取引市場における電力の売買取引のための入札条件を決定し、
前記プロセッサは、
第1電力量の受給調整を要請するための要請信号を前記他の管理装置から受信し、
前記要請信号に従う入札を募集するための募集信号を前記複数のエージェント装置に送信し、
前記募集信号を受信した前記複数のエージェント装置のうち、前記第1電力量よりも小さい第2電力量の電力の売買取引のための前記入札条件を決定した少なくとも1つのエージェント装置から、該入札条件を示す入札信号を受信し、
約定条件が成立したときに、前記少なくとも1つのエージェント装置による入札を約定させ、
前記少なくとも1つのエージェント装置から受信した前記入札信号に示される第2電力量の合計値が、前記第1電力量よりも大きい第4電力量に到達すると、該合計値が第4電力量に到達したことを示す超過信号を前記他の管理装置に送信する、管理装置。
【請求項2】
前記約定条件は、前記少なくとも1つのエージェント装置から受信した前記入札信号により示される入札条件に含まれる第2電力量の合計値が、前記第1電力量に到達することにより成立する条件を含む、請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記約定条件は、前記少なくとも1つのエージェント装置から受信した前記入札信号により示される入札条件に含まれる第2電力量の合計値が前記第1電力量よりも小さい第3電力量に到達しかつ前記管理装置が指定した時刻に到達することにより成立する条件を含む、請求項1または請求項2に記載の管理装置。
【請求項4】
前記管理装置は、前記少なくとも1つのエージェント装置の各々に設定されている優先度に基づいて、前記少なくとも1つのエージェント装置による入札を約定させる、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項5】
前記複数のエージェント装置の各々は、取引される電力の充電および放電の少なくとも一方である電力処理を実行する電動車両に対応付けられており、
前記管理装置は、走行計画が定められている電動車両および自動運転を行う電動車両のうち少なくとも一方である特定車両に対応付けられたエージェント装置の方が、該特定車両に対応付けられていないエージェント装置よりも高くなるように、前記優先度を設定する、請求項4に記載の管理装置。
【請求項6】
前記複数のエージェント装置の各々は、取引される電力の充電および放電の少なくとも一方である電力処理を実行する電力装置に対応付けられており、
前記電力取引市場で取引される電力は、
単位量の電力が生成されるために第1量の二酸化炭素が排出される第1取引電力と、
前記単位量の電力が生成されるために前記第1量よりも少ない第2量の二酸化炭素が排出される第2取引電力とを含み、
前記管理装置は、前記第2取引電力の前記電力処理を実行する電力装置に対応するエージェント装置の方が、前記第1取引電力の前記電力処理を実行する電力装置に対応するエ
ージェント装置よりも高くなるように、前記優先度を設定する、請求項4または請求項5に記載の管理装置。
【請求項7】
前記複数のエージェント装置の各々は、取引される電力の充電および放電の少なくとも一方である電力処理を実行する電力装置に対応付けられており、
電力装置は、電力経由施設を経由して、電力を授受し、
前記管理装置は、前記電力経由施設との距離が第1距離である電力装置に対応するエージェント装置の方が、前記電力経由施設との距離が前記第1距離よりも長い第2距離である電力装置に対応するエージェント装置よりも高くなるように前記優先度を設定する、請求項4請求項6のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項8】
前記管理装置は、エージェント装置のエージェントIDと、該エージェント装置の評価ポイントとを対応付けて記憶するメモリをさらに備え、
前記管理装置は、エージェント装置による過去の取引履歴とエージェント装置から受信した前記入札信号により示される前記入札条件の内容とのうち少なくとも一方に基づいて前記評価ポイントを更新し、
前記管理装置は、前記評価ポイントが第1ポイントであるエージェント装置の方が、前記評価ポイントが前記第1ポイントよりも低い第2ポイントであるエージェント装置よりも高くなるように、前記優先度を設定する、請求項4請求項7のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項9】
複数のエージェント装置と、電力取引市場の管理装置とを用いて、該管理装置により実行される方法であって、
前記複数のエージェント装置の各々は、前記電力取引市場における電力の売買取引のための入札条件を決定し、
前記方法は、
第1電力量の受給調整を要請するための要請信号を他の管理装置から受信することと、
前記要請信号に従う入札を募集するための募集信号を前記複数のエージェント装置に送信することと、
前記募集信号を受信した前記複数のエージェント装置のうち、前記第1電力量よりも小さい第2電力量の電力の売買取引のための前記入札条件を決定した少なくとも1つのエージェント装置から、該入札条件を示す入札信号を受信することと、
約定条件が成立したときに、前記少なくとも1つのエージェント装置による入札を約定させることと、
前記少なくとも1つのエージェント装置から受信した前記入札信号に示される第2電力量の合計値が、前記第1電力量よりも大きい第4電力量に到達すると、該合計値が第4電力量に到達したことを示す超過信号を前記他の管理装置に送信することを備える、方法。
【請求項10】
電力量の受給調整を要求する要請信号を出力する第1管理装置と、
前記要請信号に基づいて、第1要請信号および第2要請信号を出力する第2管理装置と、
電力調整リソースと、
前記第2管理装置から出力された前記第1要請信号に基づいて、電力調整リソースの電力を調整する第3管理装置と、
電力取引市場の第4管理装置と、
複数のエージェント装置とを備え、
前記第2要請信号は、第1電力量の受給調整を要請するための信号であり、
前記複数のエージェント装置の各々は、前記電力取引市場における電力の売買取引のための入札条件を決定し、
前記第4管理装置は、
前記第2要請信号に従う入札を募集するための募集信号を前記複数のエージェント装置に送信し、
前記募集信号を受信した前記複数のエージェント装置のうち、前記第1電力量よりも小さい第2電力量の電力の売買取引のための前記入札条件を決定した少なくとも1つのエージェント装置から、該入札条件を示す入札信号を受信し、
約定条件が成立したときに、前記少なくとも1つのエージェント装置による入札を約定させる、
前記少なくとも1つのエージェント装置から受信した前記入札信号に示される第2電力量の合計値が、前記第1電力量よりも大きい第4電力量に到達すると、該合計値が第4電力量に到達したことを示す超過信号を前記第2管理装置に送信する、電力管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、管理装置、方法、および電力管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2021-118618号公報(特許文献1)には、いわゆる仮想発電所(バーチャルパワープラント(VPP:Virtual Power Plant))の構成が採用されたエネルギー管理システムが開示されている。このエネルギー管理システムは、アグリゲーションコーディネータと、N個(Nが2以上の整数)のリソースアグリゲータとを備える。リソースアグリゲータは、たとえば、各コミュニティに設けられる。コミュニティには、1以上の電力リソースが配置される。電力リソースは、電力の充放電を行う。そして、リソースアグリゲータは、コミュニティ内の電力リソースに対して電力の送受信を行う。アグリゲーションコーディネータは、リソースアグリゲータが送受信した電力量をまとめて、電力会社(たとえば、送配電事業者または小売電気事業者など)と電力取引を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-118618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の技術において、電力会社が、大容量(たとえば、MWh単位)の電力取引の要請(以下、「大要請」とも称される。)をアグリゲーションコーディネータに対して出力する場合がある。電力取引は、電力の売却および電力の購入である。この場合には、アグリゲーションコーディネータは、大要請で規定されている大容量の電力をN個に分割した要請(以下、「小要請」とも称される。)を生成する。そして、アグリゲーションコーディネータは、該N個の小要請のそれぞれをN個のリソースアグリゲータに送信する。リソースアグリゲータは、小要請に従う電力取引を、該リソースアグリゲータに対応する1以上の電力リソースとの間で実行する。アグリゲーションコーディネータは、該N個の小要請に従う電力取引をまとめることにより、大要請に従う電力取引を実現する。
【0005】
しかしながら、たとえば、小要請に従う電力取引に応答可能な電力リソースの数が少ない場合などがある。この場合には、数が少ない電力リソースに対応するリソースアグリゲータは、小要請に従うことができず、その結果、アグリゲーションコーディネータは、大要請に従う電力取引を実現出来ない場合がある。このように、電力取引が頻繁に行われている昨今では、より柔軟な電力取引を実現可能な技術のニーズがある。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、より柔軟な電力取引を実現可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示による管理装置は、電力取引市場の管理装置である。管理装置は、プロセッサと、複数のエージェント装置および他の管理装置と通信可能なインターフェイスとを備える。複数のエージェント装置の各々は、電力取引市場における電力の売買取引のための入札条件を決定する。プロセッサは、第1電力量の受給調整を要請するための要請信号を他の管理装置から受信する。また、プロセッサは、要請信号に従う入札を募集するための募集信号を複数のエージェント装置に送信する。また、プロセッサは、募集信号を受信した複数のエージェント装置のうち、第1電力量よりも小さい第2電力量の電力の売買取引のための入札条件を決定した少なくとも1つのエージェント装置から、該入札条件を示す入札信号を受信する。そして、プロセッサは、約定条件が成立したときに、少なくとも1つのエージェント装置による入札を約定させる。
【0008】
このような構成によれば、第1電力量の受給調整を要請するための要請信号に従う入札を、複数のエージェント装置により実現することができる。したがって、より柔軟な電力取引を実現可能とすることができる。
【0009】
また、約定条件は、少なくとも1つのエージェント装置から受信した入札信号により示される入札条件に含まれる第2電力量の合計値が、第1電力量に到達することにより成立する条件を含むようにしてもよい。
【0010】
このような構成によれば、少なくとも1つのエージェント装置からの入札条件に含まれる第2電力量の合計値が、他の管理装置からの要請である第1電力量に到達した場合に、入札は約定することから、要請に応じた電力取引を実現させることができる。
【0011】
また、約定条件は、少なくとも1つのエージェント装置から受信した入札信号により示される入札条件に含まれる第2電力量の合計値が第1電力量よりも小さい第3電力量に到達しかつ管理装置が指定した時刻に到達することにより成立する条件を含むようにしてもよい。
【0012】
このような構成によれば、第2電力量の合計値が、他の管理装置からの要請である第1電力量よりも小さい場合であっても、管理装置が指定した時刻に到達することにより入札は約定する。したがって、管理装置は、電力取引の機会が損失することを抑制できる。
【0013】
また、管理装置は、少なくとも1つのエージェント装置から受信した入札信号に示される第2電力量の合計値が、第1電力量よりも大きい第4電力量に到達すると、該合計値が第4電力量に到達したことを示す超過信号を他の管理装置に送信するようにしてもよい。
【0014】
このような構成によれば、第2電力量の合計値が、他の管理装置からの要請である第1電力量を超えたことを、他の管理装置に特定させることができる。したがって、他の管理装置は、該合計値と、第1電力量との差分量の電力を他のリソースに処理させるなどの制御を実行できる。
【0015】
また、管理装置は、少なくとも1つのエージェント装置の各々に設定されている優先度に基づいて、少なくとも1つのエージェント装置による入札を約定させるようにしてもよい。
【0016】
このような構成によれば、優先度の高いエージェント装置による入札を約定させることから、よりスムーズな電力取引を実現させることができる。
【0017】
また、複数のエージェント装置の各々は、取引される電力の充電および放電の少なくとも一方である電力処理を実行する電動車両に対応付けられていてもよい。管理装置は、走行計画が定められている電動車両および自動運転を行う電動車両のうち少なくとも一方である特定車両に対応付けられたエージェント装置の方が、該特定車両に対応付けられていないエージェント装置よりも高くなるように、優先度を設定するようにしてもよい。
【0018】
このような構成によれば、入札条件通りの電力取引が実行されないといった弊害が生じることを抑制できる。
【0019】
また、複数のエージェント装置の各々は、取引される電力の充電および放電の少なくとも一方である電力処理を実行する電力装置に対応付けられていてもよい。電力取引市場で取引される電力は、第1取引電力と第2取引電力とを含んでいてもよい。第1取引電力は、単位量の電力が生成されるために第1量の二酸化炭素が排出される電力である。第2取引電力は、単位量の電力が生成されるために第1量よりも少ない第2量の二酸化炭素が排出される電力である。管理装置は、第2取引電力の電力処理を実行する電力装置に対応するエージェント装置の方が、第1取引電力の電力処理を実行する電力装置に対応するエージェント装置よりも高くなるように、優先度を設定するようにしてもよい。
【0020】
このような構成によれば、地球環境の保護に貢献する電力取引を実行することを促進できる。
【0021】
また、複数のエージェント装置の各々は、取引される電力の充電および放電の少なくとも一方である電力処理を実行する電力装置に対応付けられていてもよい。電力装置は、電力経由施設を経由して、電力を授受してもよい。管理装置は、電力経由施設との距離が第1距離である電力装置に対応するエージェント装置の方が、電力経由施設との距離が第1距離よりも長い第2距離である電力装置に対応するエージェント装置よりも高くなるように優先度を設定するようにしてもよい。
【0022】
このような構成によれば、電力装置から電力経由施設までの送電線での送電ロスを抑制することができる。
【0023】
また、管理装置は、エージェント装置のエージェントIDと、該エージェント装置の評価ポイントとを対応付けて記憶するメモリをさらに備えてもよい。管理装置は、エージェント装置による過去の取引履歴とエージェント装置から受信した入札信号により示される入札条件の内容とのうち少なくとも一方に基づいて評価ポイントを更新してもよい。管理装置は、評価ポイントが第1ポイントであるエージェント装置の方が、評価ポイントが第1ポイントよりも低い第2ポイントであるエージェント装置よりも高くなるように、優先度を設定するようにしてもよい。
【0024】
このような構成によれば、電力の取引および入札条件をより適切にすることを、エージェント装置のユーザに促進できる。
【0025】
また、本開示の方法は、複数のエージェント装置と、電力取引市場の管理装置とを用いた方法である。複数のエージェント装置の各々は、電力取引市場における電力の売買取引のための入札条件を決定する。方法は、第1電力量の受給調整を要請するための要請信号を他の管理装置から受信することを備える。また、方法は、要請信号に従う入札を募集するための募集信号を複数のエージェント装置に送信することを備える。また、方法は、募集信号を受信した複数のエージェント装置のうち、第1電力量よりも小さい第2電力量の電力の売買取引のための入札条件を決定した少なくとも1つのエージェント装置から、該入札条件を示す入札信号を受信することを備える。そして、方法は、約定条件が成立したときに、少なくとも1つのエージェント装置による入札を約定させることを備える。
【0026】
このような構成によれば、第1電力量の受給調整を要請するための要請信号に従う入札を、複数のエージェント装置により実現することができる。したがって、より柔軟な電力取引を実現可能とすることができる。
【0027】
また、本開示の電力管理システムは、第1管理装置と、第2管理装置と、電力調整リソースと、第3管理装置と、第4管理装置と、複数のエージェント装置とを備える。第1管理装置は、電力量の受給調整を要求する要請信号を出力する。第2管理装置は、要請信号に基づいて、第1要請信号および第2要請信号を出力する。第3管理装置は、第2管理装置から出力された第1要請信号に基づいて、電力調整リソースの電力を調整する。第2要請信号は、第1電力量の受給調整を要請するための信号である。複数のエージェント装置の各々は、電力取引市場における電力の売買取引のための入札条件を決定する。第4管理装置は、第2要請信号に従う入札を募集するための募集信号を複数のエージェント装置に送信する。第4管理装置は、募集信号を受信した複数のエージェント装置のうち、第1電力量よりも小さい第2電力量の電力の売買取引のための入札条件を決定した少なくとも1つのエージェント装置から、該入札条件を示す入札信号を受信する。そして、第4管理装置は、約定条件が成立したときに、少なくとも1つのエージェント装置による入札を約定させる。
【0028】
このような構成によれば、第1電力量の受給調整を要請するための要請信号に従う入札を、複数のエージェント装置により実現することができる。したがって、より柔軟な電力取引を実現可能とすることができる。
【発明の効果】
【0029】
本開示によれば、第1電力量の受給調整を要請するための要請信号に従う入札を、複数のエージェント装置により実現することができる。したがって、より柔軟な電力取引を実現可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本実施の形態の電力管理システムの概略的な構成を示す図である。
図2】第2要請信号の送信タイミングなどを示す図である。
図3】要請信号などで指定されている内容をまとめた図である。
図4】電力管理システムの主な装置の構成例を示す図である。
図5】エージェント装置と、市場サーバとのハードウェア構成を示す図である。
図6】エージェント装置に表示される入力画面の一例を示す図である。
図7】参加者データベースの一例を示す図である。
図8】エージェント装置と市場サーバとの機能ブロック図である。
図9】一時記憶部に一時的に記憶される入札条件を示す図である。
図10】優先度条件を示す図である。
図11】評価ポイントの増減の一例を示す図である。
図12】適切条件を示す図である。
図13】市場サーバの主な処理を示すフローチャートである。
図14】別の実施の形態の市場サーバの主な処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0032】
[第1の実施の形態]
図1は、本実施の形態の電力管理システム1000の概略的な構成を示す図である。電力管理システム1000は、m(mは1以上の整数)個のCEMS1と、CEMSサーバ2と、受変電設備3と、電力系統4と、送配電事業者サーバ(以下、単に「事業者サーバ5」とも称される。)と、電力取引システム80とを備える。CEMSとは、コミュニティエネルギー管理システム(Community Energy Management System)または街エネルギー管理システム(City Energy Management System)を意味する。CEMS1では、マイクログリッドMGが構築されている。なお、マイクログリッドMGは、典型的には「電力網」である。
【0033】
図1のCEMS1は、家庭で使用される電力の需給を管理するシステムである。このCEMS1には、1以上のホームエネルギー管理システムが属している。以下では、ホームエネルギー管理システムは、HEMS(Home Energy Management System)13とも称される。HEMS13は、マイクログリッドMGから供給される電力によって動作する家庭用機器(空調設備、照明器具、他の電化製品等)を含む。また、HEMS13は、太陽光パネル、家庭用ヒートポンプシステム、家庭用コージェネレーションシステム、家庭用蓄電池、発電機などの設備を含んでもよい。HEMS11は、本開示に係る「電力調整リソース」の一例に対応する。以下では、電力調整リソースは、「電力リソース」とも称される。電力リソースによる電力の調整は、典型的には、電力の授受(電力の入力および電力の出力)を示す。また、たとえば、電力リソースの保有者は、該電力リソースから出力される電力を売却し、また、該電力リソースに入力される電力を購入することになる。
【0034】
HEMS11に対応づけて、個別サーバ130が設置される。個別サーバ130は、CEMSサーバ2と双方向通信が可能である。
【0035】
なお、電力管理システム1000は、他のCEMSを備えるようにしても良い。他のCEMSは、工場エネルギー管理システム(FEMS:Factory Energy Management System)と、ビルエネルギー管理システム(BEMS:Building Energy Management System)と、発電機と、自然変動電源と、電力貯蔵システム(ESS:Energy Storage System)と、充電設備(EVSE:Electric Vehicle Supply Equipment)と、車両と、蓄熱システムとの少なくとも1つを含む。
【0036】
CEMSサーバ2は、CEMS1内の電力リソースを管理するコンピュータである。CEMSサーバ2は、アグリゲータサーバであってもよい。アグリゲータサーバは、複数の電力リソースを束ねてエネルギーマネジメントサービスを提供する電気事業者のサーバである。
【0037】
受変電設備3は、マイクログリッドMGの受電点(連系点)に設けられ、マイクログリッドMGと電力系統4との並列(接続)および解列(切り離し)を切り替え可能に構成されている。受変電設備3は、図示しないが、高圧側(一次側)の開閉装置、変圧器、保護リレー、計測機器および制御装置を含む。マイクログリッドMGが電力系統4と連系しているときに、受変電設備3は、電力系統4から、たとえば特別高圧(7000Vを超える電圧)の交流電力を受電し、受電した電力を降圧してマイクログリッドMGに供給する。受変電設備3の数は、少なくとも1つとされる。
【0038】
電力系統4は、発電所および送配電設備によって構築された電力網である。この実施の形態では、電力会社が発電事業者と送配電事業者とを兼ねる。電力会社は、一般送配電事業者に相当するとともに、電力系統4の管理者に相当し、電力系統4を保守および管理する。電力系統4は、外部に電力を出力(供給)したり(放電したり)、外部からの電力が入力されたり(受電したり)する。
【0039】
事業者サーバ5は、電力会社に帰属し、電力系統4の電力需給を管理するコンピュータである。事業者サーバ5もCEMSサーバ2と双方向通信が可能に構成されている。
【0040】
次に、電力取引システム80を説明する。電力取引システム80においては、いわゆるP2P(Peer to Peer)電力取引が採用された電力取引市場が実現される。つまり、ある観点においては、電力管理システム1000は、VPPの思想と、P2P電力取引の思想とを統合したシステムである。また、「電力取引」は、電力の購入と、電力の売却との双方を含む。図1の例では、電力取引システム80は、主に、エージェント装置100と、市場サーバ300と、電力装置451とを備える。
【0041】
電力装置451は、電力を生成して出力(放電)することができる。また、電力装置451は、外部からの電力を受けて入力(充電)することができる。図1の例では、電力装置451が、住宅401、工場402、および会社403に配置されている例が示されている。
【0042】
電力装置451は、たとえば、電力で動作する装置(以下、「電力動作装置453」とも称される。)に充電可能である。電力動作装置453は、たとえば、移動体である。移動体は、典型的には、走行用のバッテリが搭載された電動車両であり、たとえば電気自動車(EV:Electric Vehicle)、ハイブリッド車(HEV:Hybrid-Electric Vehicle)、またはプラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)である。図1の例では、電力装置451は、送電線PLを経由して他の電力装置451に電力を送出できる。
【0043】
また、図1に示すように、エージェント装置100は、電力動作装置453(移動体)の車載装置に含まれるようにしてもよい。また、エージェント装置100は、電力装置451に含まれるようにしてもよい。エージェント装置100は、PC(personal computer)、タブレット、スマートフォンなどにより構成されてもよい。図1の例では、エージェント装置100が、電力動作装置453が移動体であり、該移動体の車載装置に搭載されている例が示されている。また、図1の例では、エージェント装置100が、人間が保持するスマートフォンである例が示されている。また、図1の例では、エージェント装置100が、住宅401、工場402、および会社403に配置されているPCである例が示されている。
【0044】
また、事業者サーバ5は、本開示に係る「第1管理装置」の一例に対応する。CEMSサーバ2は、本開示に係る「第2管理装置」または「他の管理装置」の一例に対応する。個別サーバ130は、本開示に係る「第3管理装置」の一例に対応する。市場サーバ300は、本開示に係る「第4管理装置」または「管理装置」の一例に対応する。
【0045】
次に、事業者サーバ5からの要請について説明する。たとえば、電力について以下の第1状況または第2状況が生じる場合がある。第1状況は、たとえば、事業者サーバ5が帰属する電力会社が過度に電力を生成した状況または電力会社が過度に電力を生成することが予想される状況である。第2状況は、たとえば、電力が過度に不足した状況または電力が過度に不足すると予想される状況である。
【0046】
第1状況である場合には、電力会社は、余剰分の電力を売却する(電力を放電する)ことが好ましい。一方、第2状況である場合には、電力会社は、不足分の電力を購入する(電力を充電する)ことが好ましい。
【0047】
そこで、第1状況または第2状況が生じた場合には、事業者サーバ5の管理人などが、事業者サーバ5を操作することにより、事業者サーバ5に要請信号を出力させる。事業者サーバ5からの要請は、上げDR(Demand Response)または下げDRに対応する。
【0048】
第1状況である場合には、管理人は、第1状況に応じた操作を事業者サーバ5に対して行う。この操作により、事業者サーバ5は、余剰分の電力を売却するための要請信号をCEMSサーバ2に出力する。一方、第2状況である場合には、管理人は、第2状況に応じた操作を事業者サーバ5に対して行う。この操作により、事業者サーバ5は、不足分の電力を購入するための要請信号をCEMSサーバ2に出力する。このように、ステップ(A)においては、事業者サーバ5は、要請信号をCEMSサーバ2に出力する。要請信号は、電力量の受給調整を要求する信号である。つまり、要請信号においては、余剰分の電力量または不足分の電力量が指定されている。該指定されている電力量は、A(MWh)であるとする。このように、要請信号で指定されている電力量は、MWh単位であり、多大な電力量である。
【0049】
また、要請信号には、要請開始時刻、要請終了時刻、および要請価格が指定されている。なお、要請信号には、要請価格は含まれていなくてもよい。要請開始時刻および要請終了時刻は、要請時間帯を特定するための時刻である。要請信号が、余剰分の電力を売却するための信号である場合には、要請開始時刻は、電力系統4からの電力の出力が可能な開始時刻であり、要請終了時刻は、電力系統4からの電力の出力が可能な終了時刻である。また、要請信号が、不足分の電力を購入するための信号である場合には、要請開始時刻は、電力系統4からの電力の入力が可能な開始時刻であり、要請終了時刻は、電力系統4からの電力の入力が可能な終了時刻である。また、要請価格は、後述の電力量Aの価格である。
【0050】
CEMSサーバ2は、所定の第1アルゴリズムにより、要請信号で指定されている電力量A(MWh)の電力を、M個のCEMS1の各々で調整される電力と、電力取引システム80で調整される電力とに分割する。また、CEMSサーバ2は、所定の第1アルゴリズムにより、要請信号で指定されている要請価格B(円)の電力を、m個のCEMS1の各々で支払う(または支払われる)価格と、電力取引システム80で支払う(または支払われる)価格とに分割する。
【0051】
以下では、m個のCEMS1で調整される電力は、それぞれ、「A1,A2,...,Am」と示される。また、電力取引システム80で調整される電力は、Apと示される。つまり、以下の式(1)が成立する。
A=A1+A2+・・・+Am+Ap (1)
また、m個のCEMS1で支払う(または支払われる)価格は、「B1,B2,...,Bm」と示される。また、電力取引システム80で支払う(または支払われる)価格は、Bpと示される。つまり、以下の式(2)が成立する。
B=B1+B2+・・・+Bm+Bp (2)
また、CEMSサーバ2は、事業者サーバ5からの要請信号に基づいて、m個の第1要請信号と、1個の第2要請信号を生成する。m個の第1要請信号のそれぞれには、A1、A2、・・・Am、および上述した要請開始時刻および要請終了時刻が指定されている。CEMSサーバ2は、m個の第1要請信号を、それぞれ、m個の個別サーバ130に対して送信する。m個の個別サーバ130は、該個別サーバ130に対応するCEMS1内の電力リソース13に、該第1要請信号で示されている電力量の電力を調整させる。このよに、個別サーバ130は、第1要請信号で示されている電力量の電力を調整させる機能を有する。
【0052】
また、CEMSサーバ2は、第2要請信号を市場サーバ300に送信する。本実施の形態においては、第2要請信号には、電力量Ap、電力価格Bp、要請開始時刻、および要請終了時刻が指定されている。電力量Apは、本開示の「第1電力量」の一例に対応する。第2要請信号は、第1電力量の受給調整を要請するための信号である。第1電力量は、1MWh以上の電力量である。
【0053】
このように、ステップ(B)においては、CEMSサーバ2は、m個の第1要請信号を、それぞれ、m個の個別サーバ130に送信し、かつ、1個の第2要請信号を市場サーバ300に送信する。
【0054】
たとえば、事業者サーバ5からの要請信号が、余剰分の電力の売却を要請するための信号である場合には、第2要請信号は、電力量Apの電力の売却を要請するための信号となる。したがって、エージェント装置100は、電力を購入するための入札が可能となる。
【0055】
また、事業者サーバ5からの要請信号が、不足分の電力の購入を要請するための信号である場合には、第2要請信号は、電力量Apの電力の購入を要請するための信号となる。したがって、エージェント装置100は、電力を購入するための入札が可能となる。
【0056】
次に、ステップ(C)において、市場サーバ300は、募集信号を複数のエージェント装置100に送信する。ここで、募集信号は、第2要請信号に従う入札を募集するための信号である。この第2要請信号を受信したエージェント装置100は、該第2要請信号で指定されている電力量Apの電力に対して、入札することが可能となる。つまり、エージェント装置100は、電力を売却するための入札または電力を購入するための入札が可能となる。
【0057】
募集信号を受信したエージェント装置100は、後述するように入札条件を決定する。そして、該エージェント装置100は、該決定した入札信号を市場サーバ300に対して送信する。そして、ステップ(D)において、市場サーバ300は、1以上のエージェント装置100からの入札信号を受信する。
【0058】
その後、m個の個別サーバ130の各々は、調整結果を示す第1結果信号(図示せず)を生成して、CEMSサーバ2に送信する。また、市場サーバ300は、1以上のエージェント装置100からの入札信号の結果を統合して第2結果信号(図示せず)を生成して、CEMSサーバ2に送信する。
【0059】
CEMSサーバ2は、m個の第1結果信号と、1個の第2結果信号とを統合することにより、結果信号を生成し、事業者サーバ5に送信する。
【0060】
市場サーバ300は、複数の電力装置451が存在する地域の電力取引を統括する。図1の例では、電力管理システム1000が有する電力取引システム80の数は1つであるが、電力管理システム1000が有する電力取引システム80の数は複数としてもよい。
【0061】
なお、事業者サーバ5が要請信号を出力していない状況では、電力取引システム80では、通常のP2P電力取引が実現される。通常のP2P電力取引は、個人間での電力取引である。たとえば、図2の例では、工場402の管理者(ユーザ)が保有するエージェント装置100と、電力動作装置453(電動車両)の管理者が保有するエージェント装置100とで実現される電力取引である。市場サーバ300は、該通常のP2P電力取引においては、電力取引を管理する。
【0062】
図2は、第2要請信号、募集信号、入札開始時刻、入札終了時刻、要請開始時刻、および要請終了時刻の各タイミングなどを示す図である。図2の横軸は、時間軸である。
【0063】
図2に示すように、市場サーバ300が、CEMSサーバ2からの第2要請信号を受信したタイミング(図1のタイミング(A))を、タイミングT1であるとする。次に、市場サーバ300が募集信号をエージェント装置100に送信したタイミング(図1のタイミング(B))を、タイミングT2であるとする。
【0064】
また、タイミングT2で送信される募集信号には、入札開始時刻および入札終了時刻が含まれている。入札開始時刻は、エージェント装置100による入札が可能となる開始時刻である。入札開始時刻は、エージェント装置100による入札が可能となる終了時刻である。該入札開始時刻は、タイミングT3とされる。該入札終了時刻は、タイミングT4とされる。また、上述したように、タイミングT1で送信された第2要請信号には、要請開始時刻および要請終了時刻が指定されている。該要請開始時刻は、タイミングT5とされる。該要請終了時刻は、タイミングT6とされる。
【0065】
図3は、要請信号、第2要請信号、募集信号、および入札信号で指定されている内容をまとめた図である。図3に示すように、要請信号には、A(MWh)の電力量と、要請時間帯と、B(円)の電力価格とが指定されている。また、第2要請信号には、Ap(MWh)の電力量と、要請時間帯と、Bp(円)の電力価格とが指定されている。
【0066】
また、募集信号には、入札時間帯および要請時間帯が指定されている一方、電力量および価格は指定されていない。第2要請信号および募集信号で指定されている要請時間帯は、要請信号で指定されている要請時間帯と同一である。入札時間帯は、市場サーバ300が決定する。また、入札信号には、取引電力量と、取引時間帯と、取引電力価格とが指定される。取引電力量と、取引時間帯と、取引電力価格とについては後述する。
【0067】
図4は、図1とは異なる観点で、主な装置が示された電力管理システム1000を示す図である。電力管理システム1000は、主に、市場サーバ300と、複数のエージェント装置100と、CEMSサーバ2と、ネットワーク200と、ネットワーク210とを含む。エージェント装置100と、市場サーバ300とは、ネットワーク200を介して通信可能である。また、市場サーバ300と、CEMSサーバ2とは、ネットワーク210を介して通信可能である。
【0068】
[ハードウェア構成]
図5は、エージェント装置100と、市場サーバ300とのハードウェア構成を示す図である。エージェント装置100は、制御装置150と、入力装置102と、表示装置104とを備える。制御装置150は、CPU(Central Processing Unit)60と、プログラムおよびデータを格納する記憶部と、通信I/F(Interface)68とを有する。各構成要素はデータバスによって相互に接続されている。なお、エージェント装置100が、車載装置に搭載される場合には、CPU60が、ECU(Electronic Control Unit)に代替される。
【0069】
記憶部は、ROM(Read Only Memory)62、RAM(Random Access Memory)63およびHDD(Hard Disk Drive)66を含む。ROM62は、CPU60にて実行されるプログラムを格納できる。RAM63は、CPU60におけるプログラムの実行により生成されるデータ、および通信I/F68を経由して入力されたデータを一時的に格納することができ、作業領域として利用される一時的なデータメモリとして機能できる。HDD66は、不揮発性の記憶装置であり、様々な情報を格納できる。あるいは、HDD66に代えて、フラッシュメモリなどの半導体記憶装置を採用してもよい。
【0070】
通信I/F68は、ネットワーク200を介して、市場サーバ300と通信するためのインターフェイスである。また、通信I/F68は、入力装置102と、表示装置104と通信可能である。
【0071】
入力装置102は、たとえばキーボードあるいはマウスなどのポインティングデバイスであり、ユーザによる操作を受け付ける。表示装置104は、たとえば液晶(LCD:Liquid Crystal Display)パネルで構成され、ユーザに情報を表示する。ユーザインターフェースとしてタッチパネルが用いられる場合には、入力装置102と表示装置104とが一体的に形成される。
【0072】
市場サーバ300は、CPU72と、記憶部(ROM76、RAM74およびHDD78)と、通信I/F84とを有する。
【0073】
ROM76は、CPU72にて実行されるプログラムを格納できる。RAM74は、CPU72におけるプログラムの実行により生成されるデータ、およびエージェント装置100からのデータなどを一時的に格納することができるデータメモリとして機能できる。HDD78は、不揮発性の記憶装置であり、市場サーバ300で生成された情報を格納できる。あるいは、HDD78に代えて、フラッシュメモリなどの半導体記憶装置を採用してもよい。通信I/F84は、ネットワーク200を介して、エージェント装置100と通信するためのインターフェイスである。また、通信I/F84は、ネットワーク210を介して、CEMSサーバ2と通信するためのインターフェイスである。
【0074】
なお、個別サーバ130,CEMSサーバ2、および事業者サーバ5のハードウェア構成は図示されていないが、典型的には、個別サーバ130,CEMSサーバ2、および事業者サーバ5は、市場サーバ300と同様の構成を有する。
【0075】
[入札条件]
図1などで説明した複数のエージェント装置100の各々は、電力取引市場における電力の売買取引のための入札条件を決定できる。たとえば、上述の募集信号を受付けたエージェント装置100は、所定の入札アルゴリズムに基づいて、自動で入札条件を決定することができる。本実施の形態においては、入札条件は、取引電力量、取引時間帯、および取引電力価格を含む。取引電力量、取引時間帯、および取引電力価格については、図3の「入札信号」に示されているパラメータである。
【0076】
取引電力量は、該取引電力量を含む入札条件が約定された場合に取引される電力量を示す。取引時間帯は、該取引時間帯を含む入札条件が約定された場合に取引される時間帯を示す。取引電力価格は、該電力価格を含む入札条件が約定された場合に取引される電力価格を示す。
【0077】
たとえば、エージェント装置100には、電力装置451および電力動作装置453の少なくとも一方に対応付けられている。エージェント装置100は、所定パラメータを用いて、上述の入札アルゴリズムに基づいて入札条件を決定する。所定パラメータは、たとえば、電力動作装置453の電力の残量、電力動作装置453による電力を消費する今後の動作、および電力取引でエージェント装置100のユーザの利益が最大となることのうち少なくとも1つを含む。たとえば、電力動作装置453が上述の電動車両である場合には、エージェント装置100は、該電動車両のSOC(State Of Charge)と、該電動車両のルート(たとえば、電動車両の運転手の通勤ルート)とを特定することにより、該電動車両の走行に必要な電力を特定する。そして、エージェント装置100は、該必要な電力を、ユーザの利益が最大となるように(たとえば、最も安く購入できるように)入札条件を決定する。
【0078】
また、エージェント装置100は、該エージェント装置100のユーザの手動により入札条件を決定できる。具体的には、エージェント装置100は、ユーザから入札条件の入力を入力画面から受け付けることができる。図6は、エージェント装置100の表示装置104の表示領域104Aに表示される入力画面350の一例である。上述の募集信号を受付けたエージェント装置100は、図2で説明した入札開始時刻から入札終了時刻までの時間帯(つまり、入札時間帯)に亘って、入力画面350を表示装置104に表示することができる。入札者(エージェント装置100の保有者)は、この入力画面350に対して、入力装置102を用いて、入札条件を入力する。入札者は、ユーザとも称される。また、電力を購入しようとしている入札者は、「電力購入者」とも称され、電力を売却しようとしている入札者は、「電力売却者」とも称される。
【0079】
入力画面350において、「取引画面」という文字画像351が表示されている。また、入力画面350において、「取引電力量」という入力欄364が表示される。また、該入力欄364に対応付けられて、該取引電力量の入力領域366が表示される。該入力領域366には、入札者は、取引電力量の数値を入力可能である。入札者は、入力領域366に入力された取引電力量で電力購入者または電力売却者として電力取引市場に参加できる。
【0080】
また、入力画面350において、「取引時間帯」という入力欄368が表示される。また、該入力欄368に対応付けられて、該取引時間帯の開始時刻の入力領域370と、終了時刻の入力領域372が表示される。入札者は、入力領域370に電力取引の開始時刻を入力可能であり、入力領域372に電力取引の終了時刻を入力可能である。入札者は、入力領域370および入力領域372に入力された取引時間帯で電力購入者または電力売却者として電力取引市場に参加できる。
【0081】
また、入力画面350において、「取引電力価格」という入力欄374が表示される。また、該入力欄374に対応付けられて、該取引電力価格の入力領域376が表示される。該入力領域376には、入札者は、電力価格の数値を入力可能である。入札者は、入力領域376に入力された電力価格で電力購入者または電力売却者として電力取引市場に参加できる。
【0082】
また、入力画面350において、入札開始ボタン378が表示される。入札者が、取引電力量、取引時間帯、および取引電力価格に入力した後には、入札者は、入札開始ボタン378を操作可能となる。入札者により、入札開始ボタン378が操作された場合には、上述の募集信号で示されている募集に対して入札することができる。
【0083】
また、典型的には、エージェント装置100が自動で決定する取引電力量の単位は、「kWh」である。一方、上述の第1電力量の単位は「MWh」である。したがって、エージェント装置100が自動で決定する取引電力量は、第1電力量よりも小さい。また、入力画面350の入力領域366に入力される取引電力量の単位も「kWh」である。したがって、入力領域366に入力される取引電力量も、第1電力量よりも小さい。
【0084】
このように、エージェント装置100が自動的または入札者による手動で決定する入札条件で規定される取引電力量は、第1電力量よりも小さい。以下では、入札条件で規定される取引電力量は、「第2電力量」とも称される。
【0085】
[データベース]
次に、本実施の形態の電力取引システム80において使用されるデータベースを説明する。図7は、参加者データベースの一例である。参加者データベースは、市場サーバ300が保持するデータベースである。図7の例では、エージェントIDに対して、評価ポイント、過去の取引実績、および対応電力装置が対応付けられている。エージェントID(identification)は、エージェント装置100を特定するための情報である。「評価ポイント」は、エージェント装置100のユーザ(以下、「参加者」とも称される。)を評価するために用いられる参加者評価(指標)の一例である。評価ポイントについては後述する。
【0086】
「過去の取引実績」については、エージェントIDにより特定されるエージェント装置100による電力取引システム80における過去の取引実績が示される。過去の取引実績には、過去の電力購入の実績と、過去の電力売却の実績とが含まれる。過去の取引実績は、約定した入札に基づく取引の履歴である。過去の取引実績は、エージェント装置100が、自動で取引した場合およびユーザによる手動で取引した場合いずれにおいてもエージェントデータベースに記憶される。
【0087】
次に、対応電力装置について説明する。上述のように、エージェント装置100には、電力装置451および電力動作装置453の少なくとも一方に対応付けられている。対応電力装置は、該対応されている装置を示す情報である。
【0088】
図7の例では、A1であるエージェントIDに対応付けられている評価ポイントは10ポイントである。また、A1であるエージェントIDに対応付けられている過去の取引実績は、2020年1月6日に13時~15時の時間帯で、X1kWhの再生エネルギー電力を、Y1円で購入した実績などを含む。A1であるエージェントIDに対応付けられている対応電力装置は、蓄電池Eであるとする。蓄電池は、電力装置451の一例であり、電力を放出することおよび電力を蓄電することができる。
【0089】
また、A2であるエージェントIDに対応付けられている対応電力装置は、自動運転を実行可能な電動車両である。また、A3であるエージェントIDに対応付けられている対応電力装置は、走行ルートが決定済みの電動車両である。なお、図7の例での3点リーダは、実際はデータが格納されているが、記載を省略していることを示している。
【0090】
また、参加者データベースで規定されている情報においてエージェントID以外の情報は、本開示の「参加者情報」に対応する。
【0091】
[機能ブロック図]
図8は、エージェント装置100と市場サーバ300との機能ブロック図である。図8の例では、エージェント装置100は、入力装置102と、制御装置150とを有する。制御装置150は、入力部106と、処理部108と、出力部110とを有する。
【0092】
また、市場サーバ300は、入力部302と、処理部304と、記憶部306と、出力部308とを有する。入力部302および出力部308とは、本開示の「インターフェイス」の一例に対応する。該インターフェイスは、複数のエージェント装置100およびCEMSサーバ2(他の管理装置)と通信可能である。処理部304は、本開示の「プロセッサ」の一例に対応する。記憶部306は、本開示の「メモリ」の一例に対応する。また、記憶部306は、エージェントデータベース3061と、一時記憶部3062とを含む。エージェントデータベース3061は、図7で説明したデータベースである。
【0093】
図1のステップ(B)で説明したように、CEMSサーバ2は、第2要請信号を市場サーバ300に送信する。該第2要請信号は、入力部302に入力される。処理部304は、該入力された第2要請信号を受信する。処理部304は、該第2要請信号の要請時間帯に基づいて、入札時間帯を決定する。処理部304は、たとえば、要請時間帯の要請開始時刻より前の時刻を入札終了時刻に設定する(図2参照)。さらに、処理部304は、該入札終了時刻の所定時間(入札時間帯の時間)前の時刻を入札開始時刻に設定する。処理部304は、募集信号を生成する。募集信号には、処理部304が決定した入札時間帯および第2要請信号に含まれる要請時間帯を含まれる(図3参照)。処理部304は、出力部308経由で募集信号を複数のエージェント装置100に送信する(図1のステップ(C)参照))。
【0094】
該募集信号は、エージェント装置100の制御装置150の入力部106に入力される。入力部106に入力された募集信号は、処理部108に出力される。処理部108は、上述の入札アルゴリズムまたはユーザからの入力に基づいて入札条件を決定する。上述のように、入札条件は、取引電力量、取引時間帯、および取引電力価格を含む。処理部108は、入札信号を生成する。入札信号は、エージェントIDおよび該入札条件を含む。処理部108は、入札信号を出力部110経由で市場サーバ300に送信する。なお、処理部108は、該処理部108を含むエージェント装置100のエージェントIDを保持している。
【0095】
なお、複数のエージェント装置100の中には、入札条件を決定しないエージェント装置が存在する。このようなエージェント装置は、たとえば、募集信号で規定されている要請時間帯通りに電力取引が実行できないエージェント装置である。本実施の形態においては、複数のエージェント装置100のうち、入札条件を決定した(入札信号を市場サーバ300に送信した)エージェント装置は、「少なくとも1つのエージェント装置」とも称される。
【0096】
市場サーバ300の入力部302には、少なくとも1つのエージェント装置100から送信された入札信号が入力される。該入力された少なくとも1つの入札信号は、処理部304に出力される。処理部304は、該少なくとも1つの入札信号のそれぞれが含む入札条件を、該入札信号に含まれるエージェントIDに対応付けられて一時記憶部3062に記憶する。
【0097】
処理部304は、少なくとも1つの入札信号のそれぞれが含む入札条件による入札を約定させる。入札条件が、たとえば、以下の第1条件、第2条件、および第3条件を満たす場合に、処理部304は、該入札条件は約定対象となる。第1条件は、入札条件の取引時間帯が、募集信号に含まれる要請時間帯に含まれているという条件である。第2条件は、該入札条件の取引価格が価格正常範囲に属しているという条件である。第3条件は、該入札条件の取引電力量が電力正常範囲に属しているという条件である。処理部304は、第1~第3条件のうち少なくとも1つの条件を満たしていない場合には、該入札条件は約定対象とはならない。なお、処理部304は、第2要請信号に基づいて、価格正常範囲および電力正常範囲を設定する。
【0098】
そして、処理部304は、1以上のエージェント装置100からの約定させた入札条件の結果を統合して第2結果信号を生成して、出力部308経由でCEMSサーバ2に送信する。
【0099】
図9は、一時記憶部3062に一時的に記憶される入札条件を示す図である。図9の例では、エージェントID毎に、入札条件および優先度が対応付けられて記憶される。優先度は、エージェント装置による入札の約定の可否の判断のために用いられる指標である。優先度が高いエージェント装置の入札が優先して約定される。優先度については、後述する。
【0100】
図9の例では、エージェントIDがA5であるエージェント装置の入札条件において、取引時間帯は2020年1月6日の13時~15時であり、取引電力量はX1(kWh)であり、取引電力価格はY1(円)であり、優先度は「高」であることが規定されている。また、エージェントIDがA12であるエージェント装置の優先度は「高」であることが規定されている。また、エージェントIDがA1であるエージェント装置の優先度は「低」であることが規定されている。なお、エージェントIDがA12であるエージェント装置などの入札条件は、3点リーダで記載されているが、実際は存在しているが記載されていない。
【0101】
また、個別サーバ130の機能と、市場サーバ300の機能との相違点を簡潔に説明する。上述のように、個別サーバ130は、第1要請信号で示されている電力量の電力を調整させる機能を有する。一方、市場サーバ300は、このような機能を有さずに、エージェント装置100からの入札条件を募集するという機能を有する。
【0102】
[優先度]
次に、優先度条件について説明する。処理部304は、入札条件を受信すると、該入札条件を送信したエージェント装置100の優先度を設定する。エージェント装置100は、以下に示す優先度条件を満たすことにより優先度は高くなるように設定される。市場サーバ300は、該優先度に基づいて入札条件を選択する。本実施の形態においては、後述の図13に示すように、優先度が「低」である入札条件を除外して、優先度が「高」である入札条件のみに対して入札を約定させる。したがって、市場サーバ300は、優先度の高いエージェント装置による入札を約定させることから、よりスムーズな電力取引を実現させることができる。
【0103】
図10は、優先度条件を説明するための図である。図10の例では、優先度条件は、第1優先度条件、第2優先度条件、第3優先度条件、および第4優先度条件を含む。
【0104】
まず、第1優先度条件を説明する。以下では、「走行計画が定められている電動車両」および「自動運転を行う電動車両」の少なくとも一方は、「特定車両」とも称される。第1優先度条件は、電力動作装置453の一例である特定車両に対応付けられたエージェント装置100が満たす条件である。換言すれば、エージェント装置100に対応付けられている対応電力装置(図7参照)が、特定車両「走行計画が定められている電動車両」および「自動運転を行う電動車両」のうち少なくとも一方である場合に、該エージェント装置100は、第1優先度条件を満たす。
【0105】
以下に理由を説明する。電力動作装置453である「走行計画が定められている電動車両」および「自動運転を行う電動車両」である特定車両に対応するエージェント装置100は、該特定車両の取引電力量および取引時間帯を入札条件として決定することができる。よって、該エージェント装置100により決定された取引電力量および取引時間帯通りに、電力動作装置453は、電力処理を実行すると推測される。電力処理とは、取引される電力の充電および放電の少なくとも一方の処理である。このように、取引電力量および取引時間帯通りに電力取引が実行されることにより、電力管理システム1000において、スムーズな電力取引が実現される。したがって、該特定車両に対応付けられたエージェント装置100の入札は、優先されることが好ましい。なお、電力動作装置453は、たとえば蓄電池などとしてもよい。
【0106】
一方、特定車両とは異なる電力装置については、該電力装置に対応付けられているエージェント装置100により決定された取引電力量および取引時間帯通りに電力取引が実行されない可能性がある。よって、処理部304は、特定車両に対応付けられたエージェント装置の方が、該特定車両に対応付けられていないエージェント装置よりも高くなるように、優先度を設定する。これにより、市場サーバ300は、エージェント装置100からの入札条件通りの電力取引が実行されないといった弊害が生じることを抑制できる。
【0107】
次に、第2優先度条件を説明する。本実施の形態においては、電力管理システム1000において取引される電力は、第1取引電力と第2取引電力とを含む。第1取引電力は、単位量の電力が生成されるために第1量の二酸化炭素が排出される電力である。単位量は予め定められた量である。また、第2取引電力は、該単位量の電力が生成されるために第1量よりも少ない第2量の二酸化炭素が排出される電力である。つまり、同一の単位量の電力が生成される場合に排出される二酸化炭素の量は、第2取引電力の方が、第1取引電力よりも少ない。
【0108】
第1取引電力は、たとえば、枯渇性エネルギーが用いられて生成された電力である。枯渇性エネルギーは、たとえば、石油、天然ガス、オイルサンド、メタンハイドレート、およびウランなどを含む。
【0109】
第2取引電力は、たとえば、再生可能エネルギーが用いられて生成された電力である。再生可能エネルギーは、たとえば、風力、太陽光、水力、およびバイオマスなどのエネルギーを含む。本実施の形態においては、再生エネルギー電力は、第2取引電力の一例であり、通常電力は、第1取引電力の一例である。
【0110】
地球の環境保護などの観点から、第1取引電力が取引されるよりも第2取引電力が取引されることが好ましい。したがって、第2取引電力の電力処理を実行する電力装置451に対応するエージェント装置100の方が、第1取引電力の電力処理を実行する電力装置451に対応するエージェント装置100よりも高くなるように優先度を設定する。よって、市場サーバ300は、地球の環境保護に貢献する電力取引をエージェント装置100またはエージェント装置100の保有者に対して促進できる。
【0111】
次に、第3優先度条件を説明する。図1で説明したように、電力系統4からの電力は、複数の受変電設備3を経由して、複数の電力装置451に出力される。該複数の受変電設備3のうち、該複数の電力装置451と直接的に電気的接続されている受変電設備は、「特定の受変電設備」と称される。特定の受変電設備は、本開示に係る「電力経由施設」の一例に対応する。また、特定の受変電設備と、電力装置451とのは電力線により接続されている。特定の受変電設備と、電力装置451との距離が長い場合には、特定の受変電設備と、電力装置451とを結ぶ電力線は長くなり、該電力線の電気抵抗は大きくなる。したがって、該電力線における電力ロスは大きくなる。
【0112】
よって、電力ロスを低減するために、特定の受変電設備と距離の近い電力装置451と、電力系統4とが電力の授受を実行する場合の方が、特定の受変電設備と距離の遠い電力装置451と、電力系統4とが電力の授受を実行する場合よりも好ましい。たとえば、特定受変動設備と、電力装置451との距離についての距離閾値が規定される。そして、処理部304は、特定の受変電設備との距離が第1距離(距離閾値よりも短い距離)である電力装置451に対応するエージェント装置100の方が、特定の変電設備との距離が第1距離よりも長い第2距離(距離閾値よりも長い距離)である電力動作装置453に対応するエージェント装置100よりも高くなるように優先度を設定する。したがって、市場サーバ300は、電力線における電力ロスを抑制できる。
【0113】
次に、第4優先度条件を説明する。処理部304は、入札条件とともに送信されたエージェントIDに対応する評価ポイントを、エージェントデータベースを参照することにより取得する。第4優先度条件は、該取得された評価ポイント(図7参照)が所定の評価閾値よりも高いことにより成立する。つまり、処理部304は、評価ポイントが第1ポイント(評価閾値よりも高いポイント)であるエージェント装置100の方が、評価ポイントが第1ポイントよりも低い第2ポイント(評価閾値よりも低いポイント)であるエージェント装置よりも高くなるように、優先度を設定する。したがって、市場サーバ300は、電力の取引および入札条件をより適切にすることを、エージェント装置100の保有者に促進できる。評価ポイントの増減の条件については後述する。
【0114】
なお、本実施の形態において、処理部304は、第1優先条件が成立したエージェント装置100に対して優先度ポイントとしてP1を付与する。また、処理部304は、第2優先条件が成立したエージェント装置100に対して優先度ポイントとしてP2を付与する。また、処理部304は、第3優先条件が成立したエージェント装置100に対して優先度ポイントとしてP3を付与する。また、処理部304は、第4優先条件が成立したエージェント装置100に対して優先度ポイントとしてP4を付与する。
【0115】
そして、処理部304は、以下の式(3)により、総合優先度ポイントPを算出する。
【0116】
総合優先度ポイントP=P1×P2×P3×P4 (3)
そして、処理部304は、総合優先度ポイントPが、予め定められた閾値以上である場合には優先度を「高」と設定し、閾値未満である場合には優先度を「低」と設定する。
【0117】
[評価ポイント]
次に、評価ポイントを説明する。評価ポイントは、エージェント装置100の取引履歴に基づいて設定(更新)される。本実施の形態においては、市場サーバ300は、第1更新条件または第2更新条件が成立したときに、評価ポイントを更新する。また、市場サーバ300は、電力取引システム80に対して好ましい取引が実行された場合には、評価ポイントを増加させ、電力取引システム80に対して好ましくない取引が実行された場合には、評価ポイントを減少させる。
【0118】
図11は、第1更新条件が成立したときの評価ポイントの増減の一例を示す図である。市場サーバ300の処理部304は、エージェント装置100の取引履歴に基づいて、評価ポイントを増減する。本実施の形態では、市場サーバ300は、エージェント装置100のの取引履歴から算出される達成度に基づいて評価ポイントを増減する。達成度は、電力取引システム80の電力取引の介入度合いを示す指数である。図11の例では、市場サーバ300は、以下の式(4)により達成度を算出する。
【0119】
達成度=A×B×C×D (4)
式(4)の例では、市場サーバ300は、実数A、実数B、実数C、および実数Dを乗算することにより達成度を算出する。
【0120】
式(4)の右辺の実数Aは、エージェント装置100により過去に取引きされた取引電力量の合計量である。式(4)の右辺の実数Bは、エージェント装置100により過去に取引きされた電力取引時間の合計量である。式(4)の右辺の実数Cは、エージェント装置100により過去に取引きされた電力価格の合計量である。式(4)の右辺の実数Dは、エージェント装置100により過去に取引きされた再生エネルギー電力の比率の合計量である。再生エネルギー電力の比率は、たとえば、以下の式(5)により算出される。
【0121】
再生エネルギー電力の比率=過去に取引きされた再生エネルギー電力の合計量
/過去に取引きされた全ての電力の合計量 (5)
式(5)の例では、市場サーバ300は、「過去に取引きされた再生エネルギー電力の合計量」を、「過去に取引きされた全ての電力の合計量」で除算することにより、再生エネルギー電力の比率(実数D)を算出する。過去に取引きされた全ての電力の合計量は、通常電力と再生エネルギー電力との合計量である。
【0122】
市場サーバ300は、実数A~実数Dについては、たとえば、エージェントデータベース(図7参照)の過去の取引履歴から取得できる。
【0123】
なお、変形例として、市場サーバ300は、実数A、実数B、実数C、および実数Dのうちの1~3つの実数を用いて達成度を算出するようにしてもよい。また、市場サーバ300は、実数A~実数Dのうちの少なくとも2つの和により達成度を算出するようにしてもよい。
【0124】
そして、図11に示すように、市場サーバ300は、前回の達成度(つまり、1か月まえの達成度)と、今回の達成度(つまり、現時点での達成度)との差分を算出する。具体的には、市場サーバ300は、今回の達成度から前回の達成度を差し引くことにより差分を算出する。そして、市場サーバ300は、差分が予め定められた閾値以上である場合には、所定量(本実施の形態では、1ポイント)分、評価ポイントを増加させる。一方、市場サーバ300は、差分が該閾値未満である場合には、特定量(本実施の形態では、1ポイント)分、評価ポイントを減少させる。ここで、閾値は、予め定められた値であり、たとえば、市場サーバ300の管理者などが変更可能としてもよい。
【0125】
差分が閾値以上であるということは、前回の達成度算出から今回の達成度算出までの期間(つまり1か月)の間に、エージェント装置100は、多くの電力取引を行ったということである。したがって、市場サーバ300は、このようなエージェント装置100の評価ポイントを増加させる。一方、差分が閾値未満であるということは、前回の達成度算出から今回の達成度算出までの期間の間に、エージェント装置100は、殆ど電力取引を行っていない、または、全く電力取引を行っていないということである。したがって、市場サーバ300は、このようなエージェント装置100の評価ポイントを減少させる。
【0126】
次に、第2更新条件を説明する。第2更新条件は、電力取引が開始したという条件または電力取引が終了したという条件を含む。以下では、入札者により、図5の入力画面350に入力されるデータ(入札条件)は、「入力データ」と称される。市場サーバ300は、第2更新条件が成立したときにおいて、入力データの内容が適切条件を満たせば、該入力データに対応する評価ポイントを所定量(たとえば、1ポイント)増加させる。一方、市場サーバ300は、第2更新条件が成立したときにおいて、入力データの内容が適切条件を満たさなければ、該入力データに対応する評価ポイントを特定量(たとえば、1ポイント)減少させる。
【0127】
図12は、適切条件を説明するための図である。図12の例では、適切条件は、第1適切条件、第2適切条件、および第3適切条件を含む。図12の適切条件は、主に、通常P2P電力取引で採用される条件である。
【0128】
第1適切条件は、上述の入力データに含まれる取引電力価格が第1正常範囲以内であることを含む。該第1正常範囲は、予め定められる範囲である。第1正常範囲は、所定のアルゴリズムにより、市場サーバ300に定められるようにしてもよい。また、第1正常範囲は、市場サーバ300の管理者などにより手動で定められるようにしてもよい。
【0129】
電力購入者が取引電力価格を異常に高く入力した場合(つまり、取引電力価格が第1正常範囲を上回っている場合)には、たとえば、該電力購入者により電力取引市場での電力の買占めが行われるという弊害が生じ得る。したがって、市場サーバ300は、このような電力購入者の評価ポイントを減少させることが好ましい。
【0130】
また、電力購入者が取引電力価格を異常に安く入力した場合(つまり、取引電力価格が第1正常範囲を下回っている場合)には、たとえば、電力取引市場での電力価格が異常に安くなるという弊害が生じ得る。したがって、市場サーバ300は、このような電力購入者の評価ポイントを減少させることが好ましい。
【0131】
また、電力売却者が取引電力価格を異常に高く入力した場合(つまり、取引電力価格が第1正常範囲を上回っている場合)には、たとえば、電力取引市場での電力価格が異常に高くなるという弊害が生じ得る。したがって、市場サーバ300は、このような電力売却者の評価ポイントを減少させることが好ましい。
【0132】
また、電力売却者が取引電力価格を異常に安く入力した場合(つまり、取引電力価格が第1正常範囲を下回っている場合)には、たとえば、電力購入者により電力取引市場での電力の買占めが行われるという弊害が生じ得る。したがって、市場サーバ300は、このような電力売却者の評価ポイントを減少させることが好ましい。
【0133】
一方、電力購入者または電力売却者が入力した取引電力価格が第1正常範囲以内であれば、上述の弊害は生じ難く、スムーズな電力取引が行われる。したがって、市場サーバ300は、このような電力購入者または電力売却者の評価ポイントを増加させることが好ましい。
【0134】
第2適切条件は、上述の入力データに含まれる取引電力量(図5の入力画面350に入力される取引電力量)が第2正常範囲以内であることを含む。該第2正常範囲は、予め定められる範囲である。第2正常範囲は、所定のアルゴリズムにより、市場サーバ300に定められるようにしてもよい。また、第2正常範囲は、市場サーバ300の管理者などにより手動で定められるようにしてもよい。
【0135】
電力購入者が取引電力量を異常に多く入力した場合(つまり、取引電力量が第2正常範囲を上回っている場合)には、たとえば、該電力購入者により電力取引市場での電力の買占めが行われるという弊害が生じ得る。したがって、市場サーバ300は、このような電力購入者の評価ポイントを減少させることが好ましい。
【0136】
また、電力購入者が取引電力量を異常に少なく入力した場合(つまり、取引電力量が第2正常範囲を下回っている場合)には、たとえば、電力取引市場での電力取引の混乱を招くという弊害が生じ得る。したがって、市場サーバ300は、このような電力購入者の評価ポイントを減少させることが好ましい。
【0137】
また、電力売却者が取引電力量を異常に多く入力した場合(つまり、取引電力量が第2正常範囲を上回っている場合)には、たとえば、電力購入者により電力取引市場での電力の買占めが行われるという弊害が生じ得る。したがって、市場サーバ300は、このような電力売却者の評価ポイントを減少させることが好ましい。
【0138】
また、電力売却者が取引電力量を異常に少なく入力した場合(つまり、取引電力量が第2正常範囲を下回っている場合)には、たとえば、電力取引市場での電力取引の混乱を招くという弊害が生じ得る。したがって、市場サーバ300は、このような電力売却者の評価ポイントを減少させることが好ましい。
【0139】
一方、電力購入者または電力売却者が入力した取引電力量が第2正常範囲以内であれば、上述の弊害は生じ難く、スムーズな電力取引が行われる。したがって、市場サーバ300は、このような電力購入者または電力売却者の評価ポイントを増加させることが好ましい。
【0140】
次に、第3適切条件を説明する。通常のP2P電力取引においては、取引される電力の種別が入力画面の種別入力領域(図示せず)に入力される。本実施の形態においては、電力の種別は、再生エネルギー電力および通常電力である。
【0141】
たとえば、電力売却者は、売却する電力が、再生エネルギー電力であるか否かを入力画面350に入力する。ここで、種別入力領域に入力する情報は、電力の生成手法を示す情報であることから、該情報は、本開示の「生成情報」に対応する。第3適切条件は、市場サーバ300が、この生成情報が正確であることを示す情報を取得するという条件である。
【0142】
悪意のある電力売却者が、実際は再生エネルギー電力でないにもかかわらず、種別入力領域に再生エネルギー電力であることを入力して電力を売却するという虚偽を行う場合がある。市場サーバ300は、このような虚偽を行う電力売却者の評価ポイントを減少させることが好ましい。一方、電力売却者が、種別入力領域に再生エネルギー電力であることを入力して再生エネルギー電力を売却した場合には、地球環境保護に貢献したことから、該電力売却者の評価ポイントを増加させることが好ましい。
【0143】
取引された電力が再生エネルギー電力であるか否かの判断の手法は、たとえば、市場サーバ300の管理者などが、再生ラベルを付して電力を売却した電力売却者の電力装置を検査する手法などを含む。
【0144】
該管理者が該電力装置451を検査した結果、生成情報は正確であると判断した場合には、該生成情報が正確であることを示す正確情報を、入力装置(図示せず)を用いて市場サーバ300に入力する。この場合には、市場サーバ300は、該正確情報を取得する。該正確情報を取得した場合には、入力データ第3適切条件を満たしたとして、該電力売却者の評価ポイントを増加させる。
【0145】
一方、該管理者は、該電力装置451を検査した結果、生成情報は誤りであると判断した場合(つまり、電力売却者が虚偽をした場合)には、該生成情報が不正確であることを示す不正確情報を入力装置を用いて市場サーバ300に入力する。この場合には、市場サーバ300は、該不正確情報を取得する。該不正確情報を取得した場合には、入力データ第3適切条件を満たしていないとして、該電力売却者の評価ポイントを減少させる。
【0146】
また、市場サーバ300が、電力売却者の電力装置451からの電力を分析することにより、再生エネルギー電力であるか否かを判断するようにしてもよい。
【0147】
[市場サーバ300の処理フロー]
図13は、市場サーバ300の主な処理を示すフローチャートである。まず、ステップS2において、市場サーバ300のCEMSサーバ2から第2要請信号を受信する(図1のステップ(B)参照)。次に、ステップS4において、市場サーバ300は、図2に示すように、入札開始時刻と、入札終了時刻とを決定する。次に、ステップS5において、市場サーバ300は、該入札開始時刻と入札終了時刻とを含む募集信号を生成し、複数のエージェント装置100に対して送信する(図1のステップ(C)参照)。
【0148】
次に、ステップS6において、市場サーバ300は、ステップS4で決定した入札開始時刻に、現在の時刻が到達したか否かを判断する。市場サーバ300は、ステップS4で決定された入札開始時刻に到達したと判断するまで待機する(ステップS6でNO)。
【0149】
ステップS6でYESと判断されると、処理は、ステップS8に進む。ステップS8において、市場サーバ300は、一時記憶部3062に記憶されている入札条件を取得する。次に、ステップS10において、市場サーバ300は、取得した入札条件で規定されている優先度に基づいて入札条件を選別する。本実施の形態においては、市場サーバ300は、優先度が「高」である入札条件を抽出し、優先度が「低」である入札条件を破棄する。ステップS10においては、さらに、抽出した入札条件から、上述の第1~第3条件を満たす入札条件を選別する。
【0150】
次に、ステップS12において抽出された入札条件(つまり、優先度が「高」である入札条件)に含まれる取引電力量(つまり、第2電力量)の合計電力量を算出する(更新する)。
【0151】
次に、ステップS14において、市場サーバ300は、ステップS12で更新した合計電力量が第1電力量(つまり、上記式(1)の電力量Ap)に到達したか否かを判断する。合計電力量が第1電力量に到達した場合(ステップS14でYES)、つまり、CEMSサーバ2からの第2要請信号による要請に応じることができた場合には、処理は、ステップS16に進む。ステップS16においては、ステップS14で第1電力量に到達したと判断された合計電力量の算出に用いられた第2電力量の入札条件(ステップS10で選別された入札条件)の全てを約定させる。
【0152】
次に、ステップS16の後のステップS18において、市場サーバ300は、ステップS14で第1電力量に到達したと判断された合計電力量の算出に用いられた第2電力量の入札条件を送信したエージェント装置100に約定成立信号を送信する。約定成立信号は、約定が成立したことを示す信号である。エージェント装置100は、該約定成立信号を受信したことにより、約定が成立したことを認識する。また、市場サーバ300は、約定成立信号を上述の第2結果信号として、CEMSサーバ2に送信する。
【0153】
また、ステップS14でNOと判断された場合、つまり、CEMSサーバ2からの第2要請信号による要請に応じていない場合には、処理は、ステップS20に進む。ステップS20においては、市場サーバ300は、現在の時刻がステップS4で決定した入札終了時刻に到達したか否かを判断する。
【0154】
現在の時刻が入札終了時刻に到達していない場合には(ステップS20でNO)、処理は、ステップS8に戻る。また、現在の時刻が入札終了時刻に到達した場合には(ステップS20でYES)、処理は、ステップS22に進む。
【0155】
ステップS22においては、市場サーバ300は、合計電力量が第3電力量に到達したか否かを判断する。ここで、第3電力量は、第1電力量よりも小さい電力量である。第3電力量は、第1電力量に対して所定割合(1未満の実数)を乗算することにより算出される値である。第3電力量は予め定められる値である。また、第3電力量は、たとえば、1MWh以上であることが好ましい。
【0156】
ステップS22において、合計電力量が第3電力量に到達した場合には(ステップS22でYES)、処理は、ステップS16に進む。また、該ステップS16の後のステップS18において、市場サーバ300は、合計電力量が第3電力量であること(合計電力量が第1電力量に到達しなかったこと)を示す約定成立信号をCEMSサーバ2に送信する。
【0157】
また、ステップS22でNOと判断された場合には、ステップS24において、市場サーバ300は、約定不成立信号を上述の第2結果信号として、CEMSサーバ2に送信する。また、ステップS24において、市場サーバ300は、全てのエージェント信号に約定不成立信号を送信する。エージェント装置100は、該約定不成立信号を受信したことにより、約定が不成立であることを認識する。
【0158】
従来のVPPにおいては、電力会社が、大容量(たとえば、MWh単位)の電力取引の大要請をアグリゲーションコーディネータに対して出力する場合がある。この場合には、アグリゲーションコーディネータは、大要請で規定されている大容量の電力をN個に分割した小要請を生成する。そして、アグリゲーションコーディネータは、該N個の小要請のそれぞれをN個のリソースアグリゲータに送信する。リソースアグリゲータは、小要請に従う電力取引を、該リソースアグリゲータに対応する1以上の電力リソースとの間で実行する。アグリゲーションコーディネータは、該N個の小要請に従う電力取引をまとめることにより、大要請に従う電力取引を実現する。
【0159】
ここで、たとえば、小要請で指定されている電力が、9MWhであり、電力リソースが電動車両である場合を説明する。この場合には、該電動車両が授受する電力量は、一般的には、3~6kWhである。したがって、この小要請に応じる場合には、約1500台の電動車両(約1500個の電力リソース)が必要となる。しかしながら、電動車両が十分に普及していない場合には、1500台といった多数の電動車両が準備されることは困難である。また、走行している電動車両については一般的に、小要請に応じることはできない。また、この小要請に応じるために、電動車両の他に、他の調整リソース(たとえば、定置型蓄電池など)を準備することが考えられる。しかしながら、他の調整リソースを準備するためには、コストが高価になる可能性がある。
【0160】
このように、従来のVPPでは、小要請に従う電力取引に応答可能な電力リソースの数が少ない場合などがある。この場合には、アグリゲーションコーディネータは、大要請に従う電力取引を実現出来ない場合がある。このように、電力取引が頻繁に行われている昨今では、より柔軟な電力取引を実現可能な技術のニーズがある。
【0161】
これに対し、本実施の形態においては、CEMSサーバ2は、電力取引システム80(P2Pシステム)の市場サーバ300にも小要請(第2要請信号)を出力することができる。したがって、仮に、リソースコーディネータの電力リソースが不足している場合であっても、CEMSサーバ2は、リソースコーディネータの電力リソースのみならず、電力取引システム80の複数のエージェント装置100に対しても電力取引を行うことができる。よって、市場サーバ300は、従来と比較して、より柔軟な電力取引を実現することができる。
【0162】
また、事業者サーバ5から要請信号が出力される場合というは、たとえば、上述の第1状況または第2状況といった比較的、緊急性を有する場合である。事業者サーバ5が、このような要請信号を出力した場合において、たとえば、事業者サーバ5の事業者は、この要請信号の要請に協力した入札者に対して報酬を支払う場合がある。報酬は、たとえば、現金などである。このような報酬が支払われた場合には、エージェント装置100を保有するユーザは、電力を安く購入できるまたは電力を高く売却することができる。このように、市場サーバ300は、エージェント装置100のユーザに良い条件で電力取引を行わせることができる。
【0163】
また、たとえば、電力系統4は、MWh単位の電力量の入力または出力を前提とした構成となっており、kWh単位の電力量(つまり、第2電力量)の入力または出力を前提とした構成とはなっていない。したがって、電力系統4は、kWh単位の電力量の入力または出力を実行することは困難である。
【0164】
そこで、本実施の形態においては、第2要請信号で規定されている入札の約定条件は、図13のステップS14およびステップS16に示すように、少なくとも1つのエージェント装置から受信した入札信号により示される入札条件に含まれる第2電力量(典型的には、kWh単位)の合計値(合計電力量)が、第1電力量(典型的には、MWh単位)に到達することにより成立する条件を含む。したがって、事業者サーバ5からの要請、つまりCEMSサーバ2からの第2要請信号の要請(つまり、Mwh単位の電力の売却または購入)に応じた電力取引を実現させることができる。
【0165】
また、約定条件は、図13のステップS20およびステップS22に示すように、電力合計値が第3電力量に到達しかつ市場サーバ300が指定した時刻(入札終了時刻)に到達することにより成立する条件を含む。したがって、電力合計値がCEMSサーバ2からの要請である第1電力量よりも小さい場合であっても、市場サーバ300が指定した入札終了時刻に到達することにより入札は約定する。したがって、市場サーバ300は、電力取引の機会が損失することを抑制できる。
【0166】
また、市場サーバ300は、図10およびステップS10に示すように、少なくとも1つのエージェント装置の各々に設定されている優先度に基づいて、該少なくとも1つのエージェント装置による入札を約定させる。したがって、市場サーバ300は、優先度の高いエージェント装置による入札を約定させることから、よりスムーズな電力取引を実現させることができる。
【0167】
[変形例]
(1) 図13では、市場サーバ300は、入札開始時刻から入札終了時刻までの入札時間帯(図2参照)において、合計電力量が第1電力量に到達した時点で入札を約定させる構成(ステップS14およびステップS16参照)を説明した。
【0168】
しかしながら、市場サーバ300は、入札時間帯の全ての期間でエージェント装置100から送信された入札条件を取得して入札を約定する構成が採用されてもよい。図14は、このような構成が採用された市場サーバ300の動作におけるフローチャートである。図14図13と比較すると、図13においては、ステップS20の処理が、ステップS14でNOと判断されたときに実行されるが、図14では、ステップS20の処理は、ステップS8の後に実行される。さらに、図14の例では、ステップS16の後に、ステップS26の処理が実行される。
【0169】
市場サーバ300は、ステップS8の処理の終了後、ステップS20において、現在の時刻が入札終了時刻に到達したか否かを判断する。ステップS20において、NOと判断された場合には、処理は、ステップS8に戻る。また、ステップS20において、YESと判断された場合には、処理は、ステップS10に進む。
【0170】
つまり、市場サーバ300は、ステップS8およびステップS20の処理により、入札時間帯の全ての期間でエージェント装置100から送信された入札条件を取得することができる。そして、ステップS16の処理の後、ステップS26において、市場サーバ300は、合計電力量が第4電力量以上であるか否かを判断する。
【0171】
ここで、第4電力量は、たとえば、第1電力量よりも大きな量である。合計電力量が、第4電力量以上になるということは、合計電力量が過度に大きい電力量であることを意味する。たとえば、第4電力量は、たとえば、第1電力量よりも1MWh以上大きい電力である。
【0172】
ステップS26において、YESと判断された場合、つまり、合計電力量が過度に大きい場合には、ステップS28において、市場サーバ300は、超過信号をCEMSサーバ2に送信する。この超過信号は、合計電力量が第4電力量に到達したことを示す信号である。このように、市場サーバ300は、合計電力量が第4電力量に到達した場合には、合計電力量が第4電力量に到達したことを示す超過信号をCEMSサーバ2に送信する。したがって、市場サーバ300は、合計電力量が、CEMSサーバ2からの要請である第1電力量を超えたことを、CEMSサーバ2に特定させることができる。よって、CEMSサーバ2は、合計電力量と第1電力量との差分量の電力を他のリソースに処理させるなどの制御を実行できる。該処理とは、たとえば、CEMSサーバ2が他のリソースから差分量の電力を購入させる処理、および、CEMSサーバ2が他のリソースに差分量の電力を売却させたりする処理である。
【0173】
(2) 図13および図14の例では、市場サーバ300は、優先度が「低」である入札条件を破棄し、優先度が「高」である入札条件に含まれる取引電力量の合計電力量を用いる構成を説明した。しかしながら、市場サーバ300は、優先度が「低」である入札条件に含まれる取引電力量を用いてもよい。たとえば、図13および図14に示すステップS14でNOと判断された場合、つまり、合計電力量(つまり、優先度が「高」である入札条件に含まれる取引電力量の合計量)が第1電力量に到達せずに、現在の時刻が入札終了時刻に到達した場合には、市場サーバ300は、優先度が「低」である入札条件に含まれる取引電力量の合計量を該合計電力量に加算するようにしてもよい。そして、該加算により算出された合計電力量が第1電力量に到達した場合には、ステップS16の処理を実行し、該合計電力量が第1電力量に到達しなかった場合にはステップS22の処理を実行する。
【0174】
(3) 本実施の形態においては、優先度は、2段階(「高」または「低」)である構成を説明した。しかしながら、優先度は3段階以上としてもよい。このような構成によれば、市場サーバ300は、入札条件に対して、優先度によるより細やかな選別を行うことができる。
【0175】
(4) 上述の実施の形態では、入札時間帯が存在する構成を説明した(図2参照)。しかしながら、入札時間帯は無くてもよい。たとえば、電力取引システム80に含まれるエージェント装置100が、募集信号を受信したときに即座に入札条件を決定し、該入札条件を含む入札信号を市場サーバ300に送信する構成が採用されてもよい。この構成が採用される電力取引システム80であれば、入札時間帯は無くてもよい。
【0176】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0177】
2 CEMSサーバ、3 受変電設備、4 電力系統、5 事業者サーバ、13 電力リソース、18 車両、19 蓄熱システム、62,76 ROM、63,74 RAM、80 電力取引システム、100 エージェント装置、102 入力装置、104 表示装置、104A 表示領域、106,302 入力部、108,304 処理部、110,308 出力部、130 個別サーバ、150 制御装置、200,210 ネットワーク、300 市場サーバ、306 記憶部、350 入力画面、351 文字画像、364,368,374 入力欄、366,370,372,376 入力領域、378 入札開始ボタン、401 住宅、402 工場、403 会社、451 電力装置、453 電力動作装置、1000 電力管理システム。
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