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特許7616012車両およびそれを備えた給電システム、ならびに給電計画作成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】車両およびそれを備えた給電システム、ならびに給電計画作成方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/34 20060101AFI20250109BHJP
   G08G 1/0968 20060101ALI20250109BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20250109BHJP
   B60L 53/12 20190101ALI20250109BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20250109BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20250109BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20250109BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20250109BHJP
   G16Y 20/10 20200101ALI20250109BHJP
   G16Y 20/30 20200101ALI20250109BHJP
【FI】
G01C21/34
G08G1/0968 A
B60L5/00 B
B60L53/12
B60L58/12
H02J50/10
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
G16Y10/40
G16Y20/10
G16Y20/30
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021174939
(22)【出願日】2021-10-26
(65)【公開番号】P2023064587
(43)【公開日】2023-05-11
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 大樹
(72)【発明者】
【氏名】坂柳 佳宏
(72)【発明者】
【氏名】杉山 緑
(72)【発明者】
【氏名】金子 智洋
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 洋孝
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-1466(JP,A)
【文献】特開2020-127269(JP,A)
【文献】特開2019-187130(JP,A)
【文献】特開2021-24457(JP,A)
【文献】特表2017-513006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 - 21/36
G08G 1/00 - 1/16
B60L 1/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H02J 13/00
B60M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中に道路上に配置された送電装置からの電力を用いて充電可能な車両であって、
前記送電装置から供給される電力を非接触で受電する受電装置と、
前記受電装置で受電した電力を充電可能なバッテリと、
目的地までの走行経路における前記送電装置の情報および気象情報を受信可能な通信装置と、
前記目的地までの走行経路に配置された前記送電装置からの電力を用いた前記バッテリの給電計画を作成する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記気象情報から、前記送電装置が配置された位置における風の強さに関連する情報を取得し、
前記風の強さに応じて前記送電装置から受電可能な電力量を予測して、前記給電計画を作成する、車両。
【請求項2】
前記制御装置は、前記給電計画の作成において、前記風の強さが強い場合には、前記風の強さが弱い場合に比べて、当該送電装置から受電可能な電力量を小さくする、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記気象情報から風向に関する情報をさらに取得し、
前記風向を考慮して前記給電計画を作成する、請求項1または2に記載の車両。
【請求項4】
前記制御装置は、前記送電装置が配置された位置における前記車両の進行方向と、前記風向とのなす角度に応じて当該送電装置から受電可能な電力量を予測して、前記給電計画を作成する、請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記制御装置は、前記車両の側面からの前記風の強さが強い場合には、前記風の強さが弱い場合に比べて、当該送電装置から受電可能な電力量を小さくする、請求項4に記載の車両。
【請求項6】
前記制御装置は、前記送電装置から受電する電力によって前記バッテリの充電状態を基準値以上にできないと予測される場合には、不足する電力量を、前記目的地到着後に充電するように前記給電計画を作成する、請求項1~5のいずれか1項に記載の車両。
【請求項7】
前記制御装置は、前記目的地までの走行中に、前記バッテリの充電状態と前記送電装置からの受電状態とを用いて前記給電計画を更新する、請求項1~6のいずれか1項に記載の車両。
【請求項8】
走行中に道路上に配置された送電装置からの電力を用いて充電可能な車両と、
前記車両と通信可能に構成されたサーバとを備え、
前記車両は、
前記送電装置から供給される電力を非接触で受電する受電装置と、
前記受電装置で受電した電力を充電可能なバッテリと、
目的地までの走行経路における前記送電装置の情報および気象情報を、前記サーバから受信可能な通信装置とを含み、
前記目的地までの走行経路に配置された前記送電装置からの電力を用いた前記バッテリの給電計画を作成する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記気象情報から、前記送電装置が配置された位置における風の強さに関連する情報を取得し、
前記風の強さに応じて前記送電装置から受電可能な電力量を予測して、前記給電計画を作成する、給電システム。
【請求項9】
走行中に道路上に配置された送電装置からの電力を用いて、搭載されたバッテリの充電が可能な車両についての給電計画を前記車両に備えられた制御装置によって作成する方法であって、
前記制御装置によって、目的地までの走行経路における前記送電装置の情報および気象情報を取得するステップと、
前記制御装置によって、前記気象情報から、前記送電装置が配置された位置における風の強さに関連する情報を取得するステップと、
前記制御装置によって、前記風の強さに応じて前記送電装置から受電可能な電力量を予測して、前記給電計画を作成するステップとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両およびそれを備えた給電システム、ならびに給電計画作成方法に関し、より特定的には、走行中に外部電力を用いて非接触で充電が可能な車両における給電計画を作成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車あるいは電気自動車のように電力を用いて走行する車両に搭載されたバッテリの充電方式として、プラグイン充電方式、非接触充電方式、ソーラー充電方式などの充電方式が知られている。特開2016-140193号公報(特許文献1)は、複数の充電方式を用いてバッテリの充電が可能な車両において、電力料金に関する情報および天候情報などを考慮して各充電方式による充電スケジュールを決定する構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-140193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、非接触による給電方式においては、停車中の車両に電力を供給する「停車中給電」に加えて、車両走行中に道路に配置された送電装置から電力を供給する「走行中給電」が検討されている。
【0005】
非接触給電方式においては、送電装置側の送電用コイルと車両に搭載された受電用コイルとの間の位置ずれが受電効率に影響する。ここで、車両の走行中においては、車体に横風を受けると、風の影響によって走行位置が進行方向に対して横方向にずれてしまう可能性がある。そうすると、走行中の充電量が予定よりも減少してしまい、目的地到着時において予定充電量を確保できない状態となり得る。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、走行中給電が可能な車両について、目的地到着時における予定充電量の精度を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の局面に係る車両は、走行中に道路上に配置された送電装置からの電力を用いた充電が可能である。車両は、受電装置と、受電装置で受電した電力を充電可能なバッテリと、通信装置と、制御装置とを備える。受電装置は、送電装置から供給される電力を非接触で受電することができる。通信装置は、目的地までの走行経路における送電装置の情報および気象情報を受信することができる。制御装置は、目的地までの走行経路に配置された送電装置からの電力を用いたバッテリの給電計画を作成することができる。制御装置は、送電装置が配置された位置における風の強さに関連する情報を気象情報から取得し、風の強さに応じて送電装置から受電可能な電力量を予測して給電計画を作成する。
【0008】
ある実施の形態において、制御装置は、給電計画の作成において、風の強さが強い場合には、風の強さが弱い場合に比べて、当該送電装置から受電可能な電力量を小さくする。
【0009】
このような構成とすることによって、走行中給電が可能な車両において、送電装置が配置された位置における風の強さに応じた受電効率の低下を考慮して給電計画が作成される。したがって、目的地到着時の予測充電量と実際の充電量との差異を低減することができ、予測充電量の精度を高めることができる。
【0010】
ある実施の形態において、制御装置は、気象情報から風向に関する情報をさらに取得し、風向を考慮して給電計画を作成する。
【0011】
ある実施の形態において、制御装置は、送電装置が配置された位置における車両の進行方向と、風向とのなす角度に応じて当該送電装置から受電可能な電力量を予測して、給電計画を作成する。
【0012】
ある実施の形態において、制御装置は、車両の側面からの風の強さが強い場合には、風の強さが弱い場合に比べて、当該送電装置から受電可能な電力量を小さくする。
【0013】
このような構成とすることによって、風の強さに加えて風向を考慮して給電計画が作成される。そのため、目的地到着時の予測充電量の精度を高めることができる。
【0014】
ある実施の形態において、制御装置は、送電装置から受電する電力によってバッテリの充電状態を基準値以上にできないと予測される場合には、不足する電力を、目的地到着後に充電を行なうように給電計画を作成する。
【0015】
このような構成とすることによって、走行中給電に加えて停車中給電を用いた給電計画を作成することができる。
【0016】
ある実施の形態において、制御装置は、目的地までの走行中に、バッテリの充電状態と送電装置からの受電状態とを用いて給電計画を更新する。
【0017】
このような構成とすることによって、走行中に初期の給電計画と実際の受電状態に差異が生じた場合でも、実際の状態に則した給電計画とすることができる。これにより、目的地到着時の予測充電量の精度を高めることができる。
【0018】
本開示の第2の局面に係る給電システムは、車両と、車両と通信可能に構成されたサーバとを備える。車両は、走行中に道路上に配置された送電装置からの電力を用いて充電可能である。車両は、送電装置から供給される電力を非接触で受電する受電装置と、受電装置で受電した電力を充電可能なバッテリと、通信装置とを含む。通信装置は、目的地までの走行経路における送電装置の情報および気象情報を、サーバから受信することができる。制御装置は、目的地までの走行経路に配置された送電装置からの電力を用いたバッテリの給電計画を作成することができる。制御装置は、送電装置が配置された位置における風の強さに関連する情報を気象情報から取得し、風の強さに応じて送電装置から受電可能な電力量を予測して給電計画を作成する。
【0019】
本開示の第3の局面に係る方法は、走行中に道路上に配置された送電装置からの電力を用いて、搭載されたバッテリの充電が可能な車両についての給電計画を作成する方法に関する。方法は、(a)目的地までの走行経路における送電装置の情報および気象情報を取得するステップと、(b)気象情報から、送電装置が配置された位置における風の強さに関連する情報を取得するステップと、(c)風の強さに応じて送電装置から受電可能な電力量を予測して、給電計画を作成するステップとを含む。
【0020】
このような構成とすることによって、走行中給電が可能な車両において、送電装置が配置された位置における風の強さに応じた受電効率の低下を考慮して給電計画が作成される。したがって、目的地到着時の予測充電量の精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0021】
本開示に係る車両においては、走行中給電が可能な車両において、送電装置が配置された位置における風の強さに応じた受電効率の低下を考慮して給電計画が作成される。したがって、目的地到着時の予測充電量と実際の充電量との差異を低減し、予測充電量の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施の形態に係る給電システムの全体概略図である。
図2図1における車両および給電設備の詳細を説明するための機能ブロック図である。
図3図1の車両で実行される給電計画の作成手法の概要を説明するための図である。
図4】風の影響によって生じる送電装置と車両との位置ずれを説明するための第1図である。
図5】風の影響によって生じる送電装置と車両との位置ずれを説明するための第2図である。
図6】本実施の形態に係る給電計画作成システムにおいて実行される制御を説明するためのフローチャートである。
図7図6におけるステップS130の詳細なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0024】
[システムの概要]
図1は、本実施の形態に係る車両100を含む給電システム10の全体概略図である。図1を参照して、給電システム10は、車両100と、サーバ300とを含む。車両100およびサーバ300は、インターネットなどの通信ネットワーク400を介して、互いに通信可能に構成されている。車両100と通信ネットワーク400との間の通信は、無線を用いて行われる。サーバ300と通信ネットワーク400との通信は、有線であってもよいし無線であってもよい。車両100は、外部に配置された送電装置200から、非接触で電力を受電可能に構成されている。
【0025】
サーバ300は、車両100から目的地の情報を受けると、マップ情報を用いて、車両100の現在位置から目的地までの走行経路(ルート)を探索し、車両100へルート情報を伝達する。車両100においては、サーバ300から提示された走行経路のうちの1つの経路がユーザにより選択される。サーバ300は、車両100の走行に伴って、ユーザによって選択された走行経路の案内を行なう。
【0026】
なお、上記のルート情報には、各走行経路に配置された送電装置200の情報が含まれる。車両100は、選択された走行経路上に配置された送電装置200からの受電電力を算出し、走行中および目的地到着後における車両100の給電計画を作成する。
【0027】
サーバ300は、プロセッサ310と、記憶装置320と、通信装置330とを含む。記憶装置320は、メモリ321と、マップデータベース(DB)322と、送電装置データベース323と、気象データベース324とを含む。プロセッサ310,メモリ321、マップデータベース322、送電装置データベース323、気象データベース324、および通信装置330は、共通のバス340により互いに接続されており、互いに情報の授受が可能に構成されている。
【0028】
プロセッサ310は、たとえばCPU(Central Processing Unit)であって、プログラムに記述された所定の演算処理を実行するように構成されている。メモリ321は、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)とを含む。ROMは、プロセッサ310により実行されるプログラムを格納する。RAMは、プロセッサ310におけるプログラムの実行により生成されるデータと、通信装置330を介して入力されたデータとを一時的に格納する。RAMは、作業領域として利用される一時的なデータメモリとしても機能する。
【0029】
通信装置330は、通信ネットワーク400を介して車両100との間でデータの授受を行なうための通信インターフェースである。上述のように、サーバ300と通信ネットワーク400との通信は、有線あるいは無線で行なわれる。
【0030】
マップデータベース322は、道路情報を含む地図情報を格納している。プロセッサ310は、車両100から送信される現在位置および目的地の情報を受信すると、マップデータベース322に含まれる地図情報を参照して、当該現在位置から目的値までの走行経路の候補を探索する。
【0031】
送電装置データベース323は、道路に配置された送電装置200に関する情報を格納している。送電装置200に関する情報は、送電装置200の位置情報および仕様情報を含む。プロセッサ310は、選択された走行経路の候補の探索において、各走行経路に配置された送電装置200の情報を送電装置データベース323から取得する。
【0032】
気象データベース324は、走行経路において送電装置200が配置される位置における気象情報を格納している。気象データベース324内の情報は、気象庁あるいは他の気象予報サービスから取得可能な情報である。
【0033】
[車両および送電装置の構成]
次に、図2を用いて、車両100および送電装置200の詳細な構成について説明する。図2を参照して、まず、車両100の構成について説明する。車両100は、制御装置であるECU(Electronic Control unit)110と、通信装置120と、受電用コイル130と、充電装置140と、蓄電装置(バッテリ)150と、駆動装置であるPCU(Power Control Unit)160と、モータジェネレータ(MG:Motor Generator)165と、ナビゲーション装置170とを含む。
【0034】
受電用コイル130は、車両100の底面を形成するフロアパネルの下面に配置されている。受電用コイル130は、送電装置200から伝送される電力を非接触で受電する。受電用コイル130で受電された電力は、充電装置140に出力される。
【0035】
充電装置140は、たとえばAC/DCコンバータまたは整流器を含んで構成される。充電装置140は、ECU110によって制御され、受電用コイル130で受けた交流電力を、バッテリ150の充電に適した直流電力に変換して、バッテリ150を充電する。バッテリ150は、複数のセルを含む組電池である、バッテリ150に含まれる各セルは、リチウムイオン電池またはニッケル水素電池のような二次電池である。
【0036】
PCU160は、たとえばDC/DCコンバータおよびインバータを含んで構成される。PCU160は、バッテリ150からの直流電力を交流電力に変換して、MG165を駆動する。MG165は回転電機であり、PCU160からの交流電力によって駆動され、駆動輪166に駆動トルクを与えて車両100を走行させる。
【0037】
通信装置120は、通信ネットワーク400を介してサーバ300との間で信号の授受を行なうための通信インターフェースである。また、通信装置120は、送電装置200の通信装置260とも通信することが可能に構成されている。通信装置120と通信ネットワーク400との間、および、通信装置120と送電装置200との間の通信は、無線で行なわれる。
【0038】
ナビゲーション装置170は、図示しないタッチパネルを含んでおり、ユーザによって指定された目的地までの走行経路を提示して案内する。ナビゲーション装置170は、ユーザに入力された目的地の情報を、通信装置120を介してサーバ300に送信する。ナビゲーション装置170は、サーバ300によって探索された、当該目的地までの走行経路の候補情報を受け、タッチパネル上に表示する。表示された候補の中からユーザによって所望の走行経路が選択されると、ナビゲーション装置170は、選択された走行経路に基づいてユーザを案内する。
【0039】
次に、送電装置200の構成について説明する。送電装置200は、送電ユニット210と、給電装置220と、制御装置250と、通信装置260とを含む。送電ユニット210は、複数の送電用コイル210A~210Eを含む。なお、図2においては、送電装置200が、路面に一列に配置された5台の送電用コイル210A~210Eを含む例が示されているが、送電用コイルの台数はこれに限定されるものではなく、4台以下であってもよいし6台以上であってもよい。また、送電用コイルは、路面に沿って複数列に配置されていてもよい。
【0040】
制御装置250は、いずれも図示しないが、CPUおよびメモリを含んで構成されており、送電装置200内の他の機器を統括的に制御する。具体的には、制御装置250は、通信装置260を介して受信する車両100からの情報に基づいて、送電に用いる送電用コイルを選択するとともに、各送電用コイルに供給する電力を決定する。
【0041】
通信装置260は、車両100と無線で通信するための通信インターフェースである。制御装置250は、通信装置260を介して、車両の位置情報、受電装置の仕様に関する情報、バッテリ150のSOC(State of Charge)の情報、課金情報などを送受信する。
【0042】
送電用コイル210A~210Eは、給電装置220に接続される。給電装置220は、送電装置200の外部に配置された交流電源230に接続されている。給電装置220は、制御装置250からの指令に従って、交流電源230から受けた交流電力を、所定の周波数の交流電力に変換し、送電用コイル210A~210Eに出力する。このとき、制御装置250は、車両100の位置に基づいて、送電用コイル210A~210Eのうち、車両100の受電用コイル130が上方に位置している送電用コイルに対して、交流電源230からの交流電力を供給する。
【0043】
より詳細には、たとえば送電用コイル210Bの上方に受電用コイル130が対向して位置している場合に、制御装置250は、給電装置220から送電用コイル210Bに交流電力を供給する。送電用コイル210Bに交流電流が流れることによって、送電用コイル210Bの周囲に電磁界が形成される。車両100側の受電用コイル130は、送電用コイル210Bによって形成される電磁界を通して、送電用コイル210Bから非接触で電力を受電する。
【0044】
そして、受電用コイル130が送電用コイル210Bの上方から離脱すると、制御装置250は、給電装置220を制御して、送電用コイル210Bへの交流電力の供給を停止する。このような一連の制御が、送電用コイル210A~210Eの各々に対して順次行なわれることによって、走行中の車両100に対して、非接触で電力を伝達することができる。当然ながら、送電装置200上に車両100が停車している場合にも、送電装置200から車両100に対して非接触で電力を伝達することが可能である。なお、送電用コイル210A~210Eは、走行レーンの路面に配置されていてもよいし、交差点において信号待ちで停車する位置に配置されていてもよい。
【0045】
制御装置250は、送電装置200に設けられたセンサ(図示せず)、および/または、車両100から送信される車両の位置データ等に基づいて、各送電用コイルの上方に受電用コイルが位置しているか否かを判定する。
【0046】
このように、送電装置200が車両走行用の道路上に配置されている場合には、車両100の走行中に給電を行なう「走行中給電」を行なうことができる。また、送電装置200が、駐車場のパーキングスペースに配置されている場合には、停車中に給電を行なう「停車中給電」を行なうことができる。
【0047】
[給電計画の作成]
サーバ300から提案された候補の中から指定した目的地までの走行経路がユーザによって選択されると、ECU110は、選択された走行経路に配置された送電装置200の情報と、現在のバッテリ150のSOCとに基づいて、現在地から目的地までの経路におけるバッテリ150の給電計画を作成する。より具体的には、走行経路上に配置された送電装置を用いた走行中給電によって受電される電力量、および、目的地における停車中給電によって受電される電力量を予測し、バッテリ150が満充電となるように給電計画を作成する。
【0048】
図3は、ECU110で実行される給電計画の作成手法の概要を説明するための図である。図3においては、現在地500から目的地510までの走行経路上のN箇所に送電装置200-1~200-Nが配置されている場合を考える。ここで、各送電装置において走行中給電により給電される電力量をW(i=1~N)とし、目的地において停車中給電により給電される電力量をWdistとした場合、全体で給電される電力量Wtotalは以下の式(1)のように表すことができる。
【0049】
【数1】
【0050】
なお、不足するSOCが走行中給電によって満たされる場合には、停車中給電による電力量Wdistはゼロとなる。
【0051】
ここで、各送電装置の送電用コイルから供給可能な電力をP(i=1~N)とし、車両100が当該送電装置を通過する通過時間をt(i=1~N)とする。なお、通過時間tについては、各送電装置の送電用コイルが配置される区間の距離L(i=1~N)と当該区間を走行する標準車速Vi(i=1~N)とから、t=L/Viによって算出される。この場合、車両100が送電装置200から受電することができる電力量Wは、理想的には、以下の式(2)のように表すことができる。
【0052】
=P・t …(2)
しかしながら、実際の走行においては、送電用コイルと受電用コイルとの間の位置関係が必ずしも理想的な配置とはならないため、受電効率が低下して上記の式(2)の電力量よりも低下し得る。たとえば、図4に示されるように、車両100の走行中に、車両100が側面方向(図4の矢印AR1の方向)からの強風にあおられた場合には、風の影響によって車両100の走行位置が進行方向に対して垂直な方向(図4の矢印AR2の方向)にずれてしまう場合がある。
【0053】
ここで、図5に示されるように、車両100の進行方向(矢印AR3)に対して、θの角度の風向(矢印AR1)で車両100に風があたった場合、風力(=風速)をFとすると、車両100には、進行方向に垂直な方向(矢印AR2)にF・sinθの力が加わることになる。すなわち、車両100にあたる風の向きと強さによって、送電用コイルと受電用コイルとのズレ量が変化し、受電効率が低下し得る。
【0054】
本実施の形態においては、送電装置が配置されている位置における風の影響による受電効率の低下を考慮して、当該送電装置から給電される電力量を予測することによって、目的地到着時における予定充電量の精度を高める構成を採用する。
【0055】
より具体的には、図3に示されるように、送電装置200がm個の送電用コイル210-1~210-mを有する場合、サーバ300から送信される気象情報に基づいて各送電用コイルの位置における風の向きと風の強さに関するパラメータ(θ,F)(j=1~m)が取得され、これらのパラメータに基づいて、受電効率の低下係数Kが式(3)のように算出される。
【0056】
【数2】
【0057】
そして、この低下係数Kを使用して、各送電装置から給電される電力量Wを式(4)のように定める。
【0058】
【数3】
【0059】
なお、式(3)において、風の強さに関するパラメータFは、たとえば基準となる最大風速に対する比率として表される。また、Cは調整用の係数である。
【0060】
このように、低下係数Kを用いることによって、風の強さが強い場合には、風の強さが弱い場合に比べて受電可能な電力量が小さくなるように予測することができる。また、同じ強さの風であっても、風向が車両の進行方向に垂直な方向(すなわち、側面方向)に近いほど、受電可能な電力量が小さくなるように予測することができる。言い換えれば、上記の角度θが大きいほど、受電効率の低下に大きな影響が及ぼされる。角度θがゼロに近い場合、すなわち向かい風または追い風の場合には、風の影響による受電効率の低下率は小さくなる。
【0061】
このように、走行経路に配置された送電装置において、給電される電力量の予測において風の影響を考慮することによって、走行中給電によって給電される電力量の精度を向上することができる。
【0062】
なお、上述した受電可能な電力量の予測式は一例に過ぎず、他の予測式を用いて電力量を予測してもよい。
【0063】
図6は、本実施の形態に係る給電システム10において、車両100およびサーバ300で実行される制御の詳細を説明するためのフローチャートである。図6のフローチャートは、車両100のECU110およびサーバ300のプロセッサ310において、予め定められた条件成立時にメインルーチンから呼び出されて実行される。フローチャート中の各ステップは、ECU110およびプロセッサ310のソフトウェア処理により実現されるが、一部あるいは全てのステップは、ECU110およびプロセッサ310に含まれるLSI(Large Scale Integration)等のハードウェアにより実現されてもよい。
【0064】
図6を参照して、車両100のECU110は、ステップ(以下、ステップをSと略す。)100において、ユーザの操作によってナビゲーション装置170に対して入力された目的地の情報を取得する。次に、ECU110は、S110にて、バッテリ150に配置されたセンサの情報に基づいてSOCを演算するとともに、目的地およびSOCを含む車両情報INFOを、通信ネットワーク400を介してサーバ300へ送信する。
【0065】
サーバ300のプロセッサ310は、S200にて、車両100からの車両情報INFOを取得したか否かを判断する。車両情報INFOが取得されていない場合(S200にてNO)は、処理がS200に戻されて、プロセッサ310は、車両100から車両情報INFOが送信されるのを待つ。
【0066】
車両情報INFOが取得された場合(S200にてYES)は、処理がS210に進められて、プロセッサ310は、マップデータベース322および送電装置データベース323を用いて、目的地までの走行経路の選択候補を探索する。走行経路の選択候補が決定されると、プロセッサ310は、S220にて、決定した走行経路のルート候補情報と各走行経路上の送電装置の位置における気象情報とを含む経路情報RTCDを車両100へと送信する。
【0067】
ECU110は、サーバ300から経路情報RTCDを受信すると(S120)、次にS130にて、探索された各走行経路の候補における給電計画を作成し、取得した走行経路の候補情報とともにナビゲーション装置170に表示する。
【0068】
次に、ECU110は、S140にて、ユーザによる走行経路の選択操作を受け付ける。そして、ECU110は、S150にて、サーバ300に対して、選択された走行経路についての選択ルート情報RTを送信する。
【0069】
プロセッサ310は、車両100から選択ルート情報RTを受信すると(S230)、S240にて、ナビゲーションに必要となる情報(ナビゲーション情報NVI)を編集して、車両100へ送信する。ECU110は、S160において、サーバ300から取得したナビゲーション情報に基づいて、ナビゲーション装置170を利用して、目的地までの案内(ナビゲーション)を開始する。
【0070】
なお、図6には記載されていないが、プロセッサ310は、車両100が走行経路上の送電装置200に到達すると、当該送電装置200に対して給電指令を出力する。そして、ECU110は、充電装置140を作動させてバッテリ150を充電する。
【0071】
図7は、図6におけるステップS130の給電計画作成処理の詳細なフローチャートである。図7を参照して、S120においてサーバ300から経路情報RTCDを受信すると、ECU110は、S131にて、経路情報RTCDに含まれる各送電装置の位置情報、および、当該位置における風に関する情報に基づいて、図3で説明したように式(4)を用いて、各送電装置から供給される電力量Wを推定する。そして、ECU110は、S132にて、算出された電力量Wを加算することによって、走行中給電により供給されるトータル電力量を算出する。
【0072】
その後、S133にて、ECU110は、走行中給電で得られる電力量と、目的地に到達するまでに消費する電力量とに基づいて、目的地到着時において基準値以上のSOCが達成されるか否かを判定する。ここで、基準値以上のSOCとは満充電に近いSOCである。
【0073】
目的地到着時においてSOCが基準値未満となることが予測される場合(S133にてNO)、ECU110は、S134に処理を進めて、目的地到着後に停車中給電によって給電すべき電力量を算出する。そして、ECU110は、S135にて、作成された給電計画をナビゲーション装置170に表示する。
【0074】
一方、目的地到着時において基準値以上のSOCが達成されると予測される場合(S133にてYES)には、ECU110は、S134をスキップして処理をS135に進めて、作成された給電計画をナビゲーション装置170に表示する。
【0075】
S135における給電計画の表示が完了すると、ECU110は、上述したS140以降の処理を実行する。
【0076】
以上のように、走行中給電が可能な車両において、送電装置が配置された位置における風の状態(風向,風速)に応じた受電効率の低下を考慮して給電計画を作成することができる。したがって、目的地到着時の予測充電量と実際の充電量との差異を低減することができ、予測充電量の精度を高めることができる。
【0077】
なお、上記の説明においては、目的地への走行開始前に給電計画を作成する場合について説明したが、走行開始後も、所定時間毎あるいは所定条件が成立する毎に、バッテリ150のSOCとそれまでの受電状態とに基づいて、給電計画を逐次更新するようにしてもよい。このように、走行中に、受電実績に基づいて給電計画を修正することによって、予測充電量の精度をさらに高めることができる。
【0078】
また、走行経路において、複数の車両による隊列走行が行なわれる場合には、車列の先頭を走行する車両については、後続車両よりも風の影響を多く受けるため、後続車両に比べて消費電力が多くなることを前提として給電計画を作成することが好ましい。逆に、隊列走行時の後続車両については、先頭車両よりも消費電力が少なくなることを前提として給電計画を作成することが好ましい。
【0079】
なお、上述の実施の形態においては、給電計画の作成を車両側で行なう場合を例として説明したが、給電計画の作成をサーバ側で行なうようにしてもよい。
【0080】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0081】
10 給電システム、100 車両、110 ECU、120,260,330 通信装置、130 受電用コイル、140 充電装置、150 バッテリ、166 駆動輪、170 ナビゲーション装置、200,200-1~200-N 送電装置、210 送電ユニット、210-1~210-m,210A~210E 送電用コイル、220 給電装置、230 交流電源、250 制御装置、300 サーバ、310 プロセッサ、320 記憶装置、321 メモリ、322 マップデータベース、323 送電装置データベース、324 気象データベース、340 バス、400 通信ネットワーク、500 現在地、510 目的地。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7