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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】電力制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20250109BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20250109BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H02M3/00 H
B60L50/60
H02J7/00 302C
H02J7/00 303C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021176526
(22)【出願日】2021-10-28
(65)【公開番号】P2023066036
(43)【公開日】2023-05-15
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健
(72)【発明者】
【氏名】村上 香治
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-174487(JP,A)
【文献】特開2009-131079(JP,A)
【文献】特開2013-67227(JP,A)
【文献】特開2010-83420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00
H02J 7/00
B60L 50/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力制御装置であって、
発電機及び第1のバッテリを含む第1の回路と、第2のバッテリ及び電気負荷を含む第2の回路と、の間に設けられたDC-DCコンバータと、
前記第1の回路から前記第2の回路への供給電力が、記憶している制限値以下となるように、前記DC-DCコンバータの動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記電気負荷のオンオフが切り替えられるときに、切り替え後の前記電気負荷による消費電力に基づいて、前記供給電力に対する新たな目標値を決定する第1処理と、
前記新たな目標値が決定されたときに、記憶している現在の制限値を前記新たな目標値に等しくなるまで変化させる第2処理と、
を実行可能に構成されており、
前記第2処理では、前記電気負荷のオンオフが切り替えられる方向と、前記新たな目標値に対する前記現在の制限値の大小関係と、に応じて、前記制限値を変化させる速度を変更する、
電力制御装置。
【請求項2】
前記電気負荷がオフからオンに切り替えられ、かつ、前記現在の制限値が前記新たな目標値よりも大きい場合、前記第2処理では、前記制限値を前記新たな目標値まで瞬時に変化させる、請求項1に記載の電力制御装置。
【請求項3】
前記電気負荷がオフからオンに切り替えられ、かつ、前記現在の制限値が前記新たな目標値よりも小さい場合、前記第2処理では、前記制限値を前記新たな目標値まで所定の変化速度で徐々に変化させる、請求項1又は2に記載の電力制御装置。
【請求項4】
前記電気負荷がオンからオフに切り替えられ、かつ、前記現在の制限値が前記新たな目標値よりも大きい場合、前記第2処理では、前記制限値を前記新たな目標値まで所定の変化速度で徐々に変化させる、請求項1から3のいずれか一項に記載の電力制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、電力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電力制御装置が記載されている。この電力制御装置は、バッテリとモータとの間に設けられたマスタDC-DCコンバータと、そのマスタDC-DCコンバータの動作を制御する制御装置とを備える。制御装置は、マスタDC-DCコンバータを通じて供給される電力が、記憶している制限値以下となるように、マスタDC-DCコンバータの動作を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-090517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発電機及び第1のバッテリを含む第1の回路と、第2のバッテリ及び電気負荷を含む第2の回路との間に設けられたDC-DCコンバータでは、電気負荷のオンオフが切り替えられたときに、DC-DCコンバータに過大な電力が流れたり、発電機や各バッテリにおいて過大な入出力が生じるおそれがある。これを避けるためには、上記した従来技術のように、DC-DCコンバータの動作に対して制限値を設けることが考えられる。しかしながら、そのような制限値を一律に設けるだけでは、上述した過渡的な現象を適切に抑制することは難しい。本明細書では、DC-DCコンバータの動作に対する制限値を適切に設定するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書は、電力制御装置を開示する。電力制御装置は、発電機及び第1のバッテリを含む第1の回路と、第2のバッテリ及び電気負荷を含む第2の回路と、の間に設けられたDC-DCコンバータと、第1の回路から第2の回路への供給電力が、記憶している制限値以下となるように、DC-DCコンバータの動作を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、電気負荷のオンオフが切り替えられるときに、切り替え後の電気負荷による消費電力に基づいて、供給電力に対する新たな目標値を決定する第1処理と、新たな目標値が決定されたときに、記憶している現在の制限値を新たな目標値に等しくなるまで変化させる第2処理と、を実行可能に構成されている。第2処理では、電気負荷のオンオフが切り替えられる方向と、新たな目標値に対する現在の制限値の大小関係と、に応じて、制限値を変化させる速度を変更する。
【0006】
上記した電力制御装置では、第1の回路から前記第2の回路への供給電力が、制御装置に記憶された制限値以下となるように、DC-DCコンバータの動作が制御される。制御装置に記憶された制限値は、電気負荷のオンオフが切り替えられるときに、更新されるように構成されている。先ず、制御装置は、切り替え後の電気負荷による消費電力に基づいて、供給電力に対する新たな目標値を決定する。次いで、制御装置は、記憶している現在の制限値を、新たな目標値に等しくなるまで変化させる。このとき、制御装置は、電気負荷のオンオフが切り替えられる方向と、新たな目標値に対する現在の制限値の大小関係に応じて、制限値を変化させる速度を変更する。
【0007】
例えば、制御装置は、電気負荷がオフからオンに切り替えられ、かつ、現在の制限値が新たな目標値よりも大きい場合、制限値を新たな目標値まで瞬時に変化させてもよい。仮に、上記の状況において、制限値を新たな目標値まで瞬時に変化させない(即ち制限値を目標値まで瞬時に下げない)とする。この場合、電気負荷がオフからオンに切り替えられたときに、第1の回路から第2の回路に供給される電力が増大することで、DC-DCコンバータに過大な電力が流れることがある。一方で、上記の構成では、上記の状況において、制限値を新たな目標値まで瞬時に変化させる(即ち制限値を目標値まで瞬時に下げる)。従って、第1の回路から第2の回路に供給される電力が制限されるので、DC-DCコンバータに過大な電力が流れることが抑制される。このように、制御装置は、DC-DCコンバータの動作に対する制限値を適切に設定することができる。
【0008】
あるいは、制御装置は、電気負荷がオフからオンに切り替えられ、かつ、現在の制限値が新たな目標値よりも小さい場合、制限値を新たな目標値まで所定の変化速度で徐々に変化させてもよい。ここで、第1の回路に含まれる第1のバッテリの容量が小さい等、第1のバッテリからDC-DCコンバータに十分な電力を供給できない状況を想定する。このような場合には、電気負荷がオフからオンに切り替えられると、発電機によって発電された電力が、DC-DCコンバータを介して第2の回路に供給される。仮に、このような状況において、制限値を新たな目標値まで所定の変化速度で徐々に変化させない(即ち、制限値を新たな目標値まで瞬時に上げる)とすると、第1の回路から第2の回路に供給されるべき電力が比較的急激に変動する。この結果、発電機が発電すべき電力が比較的急激に変動することに起因して、発電機が、発電すべき電力に追従できない可能性がある。一方で、上記の構成では、このような状況において、制限値を新たな目標値まで所定の変化速度で徐々に変化させるので、発電機が発電すべき電力は比較的緩やかに変動する。この結果、発電機は、発電すべき電力を適切に発電することができる。このように、制御装置は、DC-DCコンバータの動作に対する制限値を適切に設定することができる。
【0009】
あるいは、制御装置は、電気負荷がオンからオフに切り替えられ、かつ、現在の制限値が新たな目標値よりも大きい場合、制限値を新たな目標値まで所定の変化速度で徐々に変化させてもよい。上記の通り、電気負荷がオンされている状態では、発電機によって発電された電力がDC-DCコンバータを介して第2の回路に供給される。その後、電気負荷がオンからオフに切り替えられる場合に、制限値を新たな目標値まで所定の変化速度で徐々に変化させない(即ち、制限値を新たな目標値まで瞬時に下げる)場合を想定する。この場合、第1の回路から第2の回路に供給されるべき電力が比較的急激に変動する。このことに起因して、発電機によって発電された電力の少なくとも一部がDC-DCコンバータに供給されなくなり、当該電力が第1の回路の第1のバッテリに供給される。当該電力が比較的大きいと、第1のバッテリが許容する電力を超える電力が第1のバッテリに供給されるおそれがある。一方で、上記の構成では、制限値を新たな目標値まで所定の変化速度で徐々に変化させるので、第1の回路から第2の回路に供給される電力が比較的緩やかに変動する。即ち、発電機からDC-DCコンバータに供給される電力も比較的緩やかに変動する。このために、当該電力が比較的緩やかに変動する間に、発電機によって発電される電力を変動させることで、第1のバッテリが許容する電力を超える電力が発電機から第1のバッテリに供給されるという事象を抑制することができる。このように、制御装置は、DC-DCコンバータの動作に対する制限値を適切に設定することができる。
【0010】
以上のように、制限値を変化させる速度を、電気負荷のオンオフが切り替えられる方向と、新たな目標値に対する現在の制限値の大小関係と、に応じて変化させることで、DC-DCコンバータの動作に対する制限値を適切に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例の電力制御装置の概略的な回路図を示す。
図2】制御装置によって実行される処理のフローチャートを示す。
図3】様々な状況における制限値と目標値との関係を表わすグラフを示す。
図4】変形例の電力制御装置の概略的な回路図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して実施例の電力制御装置2を説明する。図1に示されるように、電力制御装置2は、第1の回路10と、第2の回路20と、DC-DCコンバータ100と、制御ECU102と、を備える。電力制御装置2は、例えば、ハイブリッド車等の車両に搭載される。なお、図1の実線は電力線を表わし、破線は信号線を表わしている。
【0013】
第1の回路10は、第1のバッテリ12と、第1の電気負荷14と、発電機16と、を備える。第1のバッテリ12は、例えばリチウムイオン電池、鉛電池等の二次バッテリである。本実施例では、第1のバッテリ12の出力は、後述の第2のバッテリ24の出力よりも大きい。第1の電気負荷14は特に限定されず、その動作状態がオフからオンに切り替えられる場合に大電流が流れるものであってもよい。発電機16は、例えばモータジェネレータであり、運動エネルギーを電気エネルギーに変換する装置である。第1のバッテリ12及び発電機16は、制御ECU102と通信可能に構成されている。なお、図示省略しているが、第1の回路10には、第1の回路10に流れる電流等の情報を取得可能なセンサ(例えば電流センサ、電圧センサ等)が設けられており、これらのセンサも制御ECU102と通信可能に構成されている。
【0014】
第2の回路20は、第2の電気負荷22と、第2のバッテリ24と、を備える。第2の電気負荷22は、例えばエンジン(図示省略)を始動させるスタータであり、その動作状態がオフからオンに切り替えられる場合に大電流が流れる。第2のバッテリ24は、例えばリチウムイオン電池、鉛電池等の二次バッテリである。第2のバッテリ24の出力は、例えば12ボルトである。第2のバッテリ24は、制御ECU102と通信可能に構成されている。なお、図示省略しているが、第2の回路20には、第2の回路20に流れる電流等の情報を取得可能なセンサ(例えば電流センサ、電圧センサ等)が設けられており、これらのセンサも制御ECU102と通信可能に構成されている。
【0015】
DC-DCコンバータ100は、第1の回路10と第2の回路20との間に設けられている。DC-DCコンバータ100は、第1の回路10の電力を降圧して第2の回路20に供給することと、第2の回路20の電力を昇圧して第1の回路10に供給することと、を実行可能な双方向コンバータである。例えば、第2のバッテリ24を充電するときに、第1の回路10からDC-DCコンバータ100を介して、第2のバッテリ24に電力が供給される。また、例えば、第2の電気負荷22を動作させる際に、第2のバッテリ24の容量が小さい場合など、第2の電気負荷22を動作させるために十分な電力を第2のバッテリ24から第2の電気負荷22に供給できない場合にも、第1の回路10からDC-DCコンバータ100を介して、第2の回路20に電力が供給される。DC-DCコンバータ100の具体的な回路構成等についてはよく知られているので、その詳細な説明を省略する。DC-DCコンバータ100は、制御ECU102と通信可能に構成されている。
【0016】
制御ECU102は、第1のバッテリ12、発電機16、第2のバッテリ24、DC-DCコンバータ100等の動作を制御する。特に、制御ECU102は、第1の回路10から第2の回路20への供給電力の制限値を記憶している。制御ECU102は、第1の回路10から第2の回路20への供給電力が、記憶している制限値以下となるように、DC-DCコンバータ100の動作を制御する。なお、制御ECU102は、制限値、第1のバッテリ12の容量等に基づいて、発電機16に発電指示を供給する。この結果、発電機16において電力が発電され、第1のバッテリ12から出力される電力及び発電機16によって発電された電力が、DC-DCコンバータ100に供給される。
【0017】
続いて、図2を参照して、制御ECU102によって実行される処理を説明する。図2の処理は、制御ECU102が起動している間に実行される。図2の初期状態では、制御ECU102は、上述した制限値を記憶している。
【0018】
S10では、制御ECU102は、電気負荷オフ要求を取得したのか否かを判断する。電気負荷オフ要求は、第2の電気負荷22がオンからオフに切り替えらえるときに、上位のコントローラ(図示省略)から出力される。上位のコントローラは、車両全体の動作を制御するコントローラであり、ユーザによる操作又は車両の走行状態等に応じて、第2の電気負荷22のオンオフを切り替える。第2の電気負荷22をオンからオフへ切り替える場合、上位のコントローラは、第2の電気負荷22を制御する下位のコントローラ(図示省略)に、電気負荷オフ要求を送信する。このときに、電気負荷オフ要求は、電力制御装置2の制御ECU102にも送信される。これにより、制御ECU102は、第2の電気負荷22がオンからオフへ切り替えらえることを、未然に認識することができる。制御ECU102は、上位のコントローラから電気負荷オフ要求を取得する場合に、S10でYESと判断して、S40に進む。一方、制御ECU102は、上位のコントローラから電気負荷オフ要求を取得しない場合に、S10でNOと判断して、S12に進む。
【0019】
S12では、制御ECU102は、電気負荷オン要求を取得したのか否かを判断する。前述した電気負荷オフ要求と同様に、電気負荷オン要求も上記のコントローラから出力される。即ち、第2の電気負荷22をオフからオンへ切り替える場合、上位のコントローラは、第2の電気負荷22を制御する下位のコントローラに、電気負荷オン要求を送信する。このとき、電気負荷オン要求は、電力制御装置2の制御ECU102にも送信される。これにより、制御ECU102は、第2の電気負荷22がオフからオンへ切り替えらえることを、未然に認識することができる。制御ECU102は、上位のコントローラから電気負荷オン要求を取得する場合に、S12でYESと判断して、S20に進む。一方、制御ECU102は、上位のコントローラから電気負荷オン要求を取得しない場合に、S12でNOと判断して、図2の処理を終了する。即ち、制御ECU102は、電気負荷オフ要求及び電気負荷オン要求のいずれも取得しない場合には、記憶済みの制限値を維持する。
【0020】
S20では、制御ECU102は、第2の電気負荷22がオフからオンに切り替えられた後の目標値を決定する。具体的には、制御ECU102は、第2の電気負荷22がオフからオンに切り替えられると、第2の回路20に流れる電流等の各種情報に基づいて、第2の電気負荷22がオンに切り替えられた後の第2の電気負荷22による消費電力を算出する。そして、制御ECU102は、算出済みの第2の電気負荷22による消費電力に基づいて、目標値を決定する。即ち、目標値は、第2の電気負荷22がオフからオンに切り替えられた後に、第2の回路20において必要とされる電力である。目標値は、後述のDC-DCコンバータ100の制限値を変化させる際に、その制限値の変化の目標値として利用される。
【0021】
S22では、制御ECU102は、記憶済みの制限値が決定済みの目標値(S20参照)よりも大きいのか否かを判断する。制御ECU102は、制限値が目標値よりも大きい場合に、S22でYESと判断してS30に進み、制限値が目標値よりも小さい場合に、S22でNOと判断してS50に進む。
【0022】
S30では、制御ECU102は、記憶済みの制限値を更新する。具体的には、制御ECU102は、制限値を、S20で決定済みの目標値まで瞬時に変化させる。このように、制御ECU102は、第2の電気負荷22がオフからオンに切り替えられ、かつ、記憶済みの制限値がS20で算出される目標値よりも大きい場合、目標値を新たな制限値として瞬時に設定する。S30の処理が終了すると、図2の処理が終了する。
【0023】
また、S40では、制御ECU102は、第2の電気負荷22がオンからオフに切り替えられた後の目標値を決定する。目標値の決定の具体的な方法は、S20の処理と同様である。
【0024】
S50では、制御ECU102は、制限値の変化速度を設定する。変化速度は、例えば、制御ECU102によって予め記憶されている値であってもよいし、現在の制限値と、決定された目標値(S20又はS40参照)と、の差分に基づいて制御ECU102によって決定される値であってもよい。
【0025】
S52では、制御ECU102は、S50で設定された変化速度で、制限値を変化させる処理を実行する。そして、S54では、制御ECU102は、変化後の制限値が、決定済みの目標値(S20又はS30参照)に一致するのか否かを判断する。制御ECU102は、変化後の制限値が目標値に一致する場合に、S54でYESと判断して、図2の処理を終了する。一方、制御ECU102は、制限値が目標値に一致しない場合に、S54でNOと判断して、S52の処理に戻る。即ち、制御ECU102は、記憶済みの制限値が目標値に一致するまで、設定された変化速度で制限値を変化させる処理を繰り返し実行する。
【0026】
なお、図示省略しているが、上記の通り、制御ECU102は、S30又はS50で設定された新たな制限値に基づいて、第1の回路10から第2の回路20への供給電力が当該制限値以下となるように、DC-DCコンバータ100を制御する。
【0027】
続いて、図3を参照して、具体的なケースを説明する。まず、図3(A)を参照して、第2の電気負荷22がオフからオンに切り替えられ、かつ、現在の制限値が目標値よりも大きいケースを説明する。図3(A)の初期状態では、第2の電気負荷22はオフである。
【0028】
図3(A)に示されるように、制御ECU102は、時刻t1において、第2の電気負荷22がオフからオンに切り替えられることに応じて、電気負荷オン要求を上位のコントローラから取得する(図2のS12でYES)。この場合、制御ECU102は、第2の電気負荷22がオフからオンに切り替えられた後の目標値G1を決定する(S20)。図3(A)のケースでは、現在の制限値が目標値G1よりも大きいので(S22でYES)、制御ECU102は、制限値を目標値G1に瞬時に変化させる(S30)。
【0029】
仮に、図3(A)のように、第2の電気負荷22がオフからオンに切り替えられ、かつ、現在の制限値が目標値G1よりも大きい場合に、制限値を目標値G1まで瞬時に変化させない(即ち制限値を目標値G1まで瞬時に下げない)状況を想定する。この場合、第2の電気負荷22がオフからオンに切り替えられたときに、第1の回路10から第2の回路20に供給される電力が増大することで、DC-DCコンバータ100に過大な電力が流れることがある。一方で、本実施例の構成では、上記の状況において、制限値を目標値G1まで瞬時に変化させる(即ち制限値を目標値G1まで瞬時に下げる(時刻t1参照))。従って、第1の回路10から第2の回路20に供給される電力が制限されるので、DC-DCコンバータ100に過大な電力が流れることが抑制される。このように、制御ECU102は、DC-DCコンバータ100の動作に対する制限値を適切に設定することができる。
【0030】
続いて、図3(B)を参照して、第2の電気負荷22がオフからオンに切り替えられ、かつ、現在の制限値が目標値よりも小さいケースを説明する。図3(B)の初期状態は、第2の電気負荷22はオフである。
【0031】
図3(B)に示されるように、制御ECU102は、時刻t2において、第2の電気負荷22がオフからオンに切り替えられることに応じて、電気負荷オン要求を上位のコントローラから取得する(図2のS12でYES)。この場合、制御ECU102は、目標値G1を決定する(S20)。図3(B)のケースでは、現在の制限値が目標値G1よりも小さいので(S22でNO)、制御ECU102は、変化速度(即ち図3(B)の時刻t2からt3の間の直線の傾き)を設定する(S50)。制御ECU102は、設定された変化速度(即ち、傾き)で、制限値を変化させる(S52)。制御ECU102は、制限値が目標値G1に一致するまで、制限値を変化させる(S54でNO、S52)。そして、時刻t3において、制限値が目標値G1に一致する(S54でYES、リターン)。
【0032】
ここで、第1の回路10に含まれる第1のバッテリ12の容量が小さい等、第1のバッテリ12からDC-DCコンバータ100に十分な電力を供給できない状況を想定する。このような場合には、第2の電気負荷22がオフからオンに切り替えられると、発電機16によって発電された電力がDC-DCコンバータ100を介して第2の回路20に供給される。仮に、このような状況において、制限値を目標値G1まで所定の変化速度で徐々に変化させない(即ち、制限値を目標値G1まで瞬時に上げる)とすると、第1の回路10から第2の回路20に供給されるべき電力が比較的急激に変動する。この結果、発電機16が発電すべき電力が比較的急激に変動することに起因して、発電機16が、発電すべき電力に追従できない可能性がある。一方で、本実施例の構成では、このような状況において、制限値を目標値G1まで所定の変化速度で徐々に変化させる(図2のS50~S54)ので、発電機16が発電すべき電力は比較的緩やかに変動する。この結果、発電機16は、発電すべき電力を適切に発電することができる。このように、制御ECU102は、DC-DCコンバータ100の動作に対する制限値を適切に設定することができる。
【0033】
続いて、図3(C)を参照して、第2の電気負荷22がオンからオフに切り替えられ、かつ、現在の制限値が目標値よりも大きいケースを説明する。図3(C)の初期状態では、第2の電気負荷22はオンである。
【0034】
図3(C)に示されるように、制御ECU102は、時刻t4において、第2の電気負荷22がオンからオフに切り替えられることに応じて、電気負荷オフ要求を上位のコントローラから取得する(図2のS10でYES)。この場合、制御ECU102は、第2の電気負荷22がオンからオフに切り替えられた後の目標値G2を決定する(S40)。そして、制御ECU102は、変化速度(即ち図3(C)の時刻t4からt5の間の直線の傾き)を設定する(S50)。制御ECU102は、設定された変化速度(即ち、傾き)で、制限値を変化させる(S52)。制御ECU102は、制限値が目標値G2に一致するまで、制限値を変化させる(S54でNO、S52)。そして、時刻t5において、制限値が目標値G2に一致する(S54でYES、リターン)。
【0035】
第2の電気負荷22がオンされている状態では、DC-DCコンバータ100を介して、発電機16によって発電された電力が第2の回路20に供給される。その後、第2の電気負荷22がオンからオフに切り替えられる場合に、制限値を目標値G2まで所定の変化速度で徐々に変化させない(即ち、制限値を目標値G2まで瞬時に下げる)場合を想定する。この場合、第1の回路10から第2の回路20に供給されるべき電力が比較的急激に変動する。このことに起因して、発電機16によって発電された電力の少なくとも一部がDC-DCコンバータ100に供給されなくなり、当該電力が第1の回路10の第1のバッテリ12に供給される。当該電力が比較的大きいと、第1のバッテリ12が許容する電力を超える電力が第1のバッテリ12に供給されるおそれがある。一方で、本実施例の構成では、制限値を目標値G2まで所定の変化速度で徐々に変化させるので(図2のS50~S54)、第1の回路10から第2の回路20に供給される電力が比較的緩やかに変動する。即ち、発電機16からDC-DCコンバータ100に供給される電力も比較的緩やかに変動する。このために、当該電力が比較的緩やかに変動する間に、発電機16によって発電される電力を変動させることで、第1のバッテリ12が許容する電力を超える電力が発電機16から第1のバッテリ12に供給されるという事象を抑制することができる。このように、制御ECU102は、DC-DCコンバータ100の動作に対する制限値を適切に設定することができる。
【0036】
以上のように、制限値を変化させる速度を、第2の電気負荷22のオンオフが切り替えられる方向(即ちオフからオンの方向、又はオンからオフの方向)と、新たな目標値に対する現在の制限値の大小関係と、に応じて変化させることで、DC-DCコンバータ100の動作に対する制限値を適切に設定することができる。
【0037】
上記の実施例に関する留意点を述べる。図4に示されるように、第1の回路10には、第1の電気負荷14が設けられていなくてもよい。また、上記の実施例では、第1の回路10と第2の回路20との電圧が異なる例を説明したが、第1の回路10と第2の回路20の電圧が同じであってもよい。
【0038】
実施例における制御ECU102が、本明細書が開示する技術における「制御装置」の一例である。実施例における図2のS20の処理、及びS40の処理が、本明細書が開示する技術における「第1処理」の一例である。実施例における図2のS30の処理、及びS50~S54の処理が、本明細書が開示する技術における「第2処理」の一例である。
【0039】
以上、本明細書が開示する技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独で、あるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0040】
2:電力制御装置
10:第1の回路
12:第1のバッテリ
14:第1の電気負荷
16:発電機
20:第2の回路
22:第2の電気負荷
24:第2のバッテリ
100:DC-DCコンバータ
102:制御ECU
図1
図2
図3
図4