IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-運転診断装置 図1
  • 特許-運転診断装置 図2
  • 特許-運転診断装置 図3
  • 特許-運転診断装置 図4
  • 特許-運転診断装置 図5
  • 特許-運転診断装置 図6
  • 特許-運転診断装置 図7
  • 特許-運転診断装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】運転診断装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
G08G1/00 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021187362
(22)【出願日】2021-11-17
(65)【公開番号】P2023074407
(43)【公開日】2023-05-29
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 功
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-184816(JP,A)
【文献】特開2014-229228(JP,A)
【文献】再公表特許第2020/049737(JP,A1)
【文献】特開2013-156803(JP,A)
【文献】特開2019-064494(JP,A)
【文献】特開2017-197066(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0350777(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0167674(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、前記プロセッサは、
道路の諸元に対応する、代表車両の理想の走行に係る理想走行情報を生成し、
前記理想走行情報を診断対象の車両の車種用に変換し、
前記車両から走行に係る車両情報を取得し、取得した前記車両情報と、変換された前記理想走行情報とを比較して前記車両の運転者の診断を実施する運転診断装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、予め決定した代表道路を走行した複数の車両から取得した前記車両情報の分布を用いて前記理想走行情報を生成し、
前記診断対象の車両から前記代表道路を走行した際の前記車両情報を取得して前記診断を実施する請求項1に記載の運転診断装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記諸元が異なる道路の諸元に係る複数の道路情報と、前記複数の道路情報に対応する道路を走行した車両から取得した前記車両情報と、を教師データとして予め学習した運転者モデルを用いて、診断対象の車両が走行した道路の前記道路情報に対応する前記車両情報を導出することにより、導出した前記車両情報を前記理想走行情報として生成する請求項1に記載の運転診断装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記諸元の異なる複数の道路に対応する、複数パターンの前記理想走行情報を生成する請求項1~3の何れか1項に記載の運転診断装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、走行頻度が予め定めた頻度以上の道路を走行した車両の前記車両情報を用いて前記理想走行情報を生成する請求項に記載の運転診断装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記診断対象の車両を自動運転とし、診断結果を用いて前記自動運転をチューニングする請求項1~の何れか1項に記載の運転診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の運転を診断する運転診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、予め設定された基準道路形状と、該基準道路形状に対応した理想走行軌跡とを記憶部に記憶し、道路を走行する車両の走行状況を取得し、取得した車両の走行状況から得られる車両が走行した道路形状に基づいて、記憶部から道路形状に対応する基準道路形状と、該基準道路形状に対応した理想走行軌跡とを取得し、取得した基準道路形状と理想走行軌跡とに基づいて、車両が走行した道路形状に対応する理想軌跡を生成し、生成した理想軌跡と、車両の走行状況から得られる車両の運転走行軌跡とを比較して車両の運転を診断することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-194620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、道路を走行する自車両の走行状況から得られる道路形状に基づいて理想走行軌跡を生成するので、走行状況によって理想走行軌跡が変わってしまう。理想走行軌跡が走行状況によって変化すると、運転診断の基準が変化することになり、適正な運転診断を行うためには改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して成されたもので、適正な運転診断の基準を用いて運転診断が可能な運転診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1に記載の運転診断装置は、プロセッサを備え、前記プロセッサは、道路の諸元に対応する、代表車両の理想の走行に係る理想走行情報を生成し、前記理想走行情報を診断対象の車両の車種用に変換し、前記車両から走行に係る車両情報を取得し、取得した前記車両情報と、変換された前記理想走行情報とを比較して前記車両の運転者の診断を実施する。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、道路の諸元に対応する、代表車両の理想の走行に係る理想走行情報を生成するので、道路形状などの諸元に合わせた理想走行情報を生成することができる。
【0008】
そして、理想走行情報を診断対象の車両の車種用に変換し、診断対象の車両から走行に係る車両情報を取得して、車両情報と、道路形状などの諸元に合わせた理想走行情報とを比較して車両の運転者の診断を実施するので、適正な運転診断の基準を用いて運転診断が可能となる。
【0009】
なお、前記プロセッサは、予め決定した代表道路を走行した複数の車両から取得した前記車両情報の分布を用いて前記理想走行情報を生成し、前記診断対象の車両から前記代表道路を走行した際の前記車両情報を取得して前記診断を実施してもよい。これにより、診断対象の車両以外の他の車両の車両情報から理想走行情報を生成して運転者の診断を実施することが可能となる。
【0010】
また、前記プロセッサは、前記諸元が異なる道路の諸元に係る複数の道路情報と、前記複数の道路情報に対応する道路を走行した車両から取得した前記車両情報と、を教師データとして予め学習した運転者モデルを用いて、診断対象の車両が走行した道路の前記道路情報に対応する前記車両情報を導出することにより、導出した前記車両情報を前記理想走行情報として生成してもよい。これにより、任意の位置において運転者の診断が可能となる。
【0011】
また、前記プロセッサは、前記諸元の異なる複数の道路に対応する、複数パターンの前記理想走行情報を生成してもよい。これにより、診断のバリエーションを増やすことができる。
【0012】
また、前記プロセッサは、前記車両の走行頻度が予め定めた頻度以上の道路を走行した車両の前記車両情報を用いて前記理想走行情報を生成してもよい。これにより、走行頻度が低い道路を走行した場合の車両情報を用いる場合よりも精度の高い診断が可能となる。
【0013】
また、前記プロセッサは、前記理想走行情報を前記車両の車種用に変換し、前記車両情報と、変換された前記理想走行情報とを比較して前記車両の運転者の診断を実施するので、車種の特性を考慮して運転者の診断を行うことが可能となる。
【0014】
また、前記プロセッサは、前記診断対象の車両を自動運転とし、診断結果を用いて前記自動運転をチューニングしてもよい。これにより、地域特性に合わせた自動運転のチューニングも可能となる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、適正な運転診断の基準を用いて運転診断が可能な運転診断装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る運転診断システムの概略構成を示す図である。
図2】実施形態に係る運転診断システムにおける車載器及びクラウドサーバの機能構成を示す機能ブロック図である。
図3】車載器の制御部及びクラウドサーバの中央処理部の構成を示すブロック図である。
図4】第1実施形態の理想走行情報の生成方法及び運転診断方法を説明するための図である。
図5】第1実施形態に係る理想走行情報生成部で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】第1実施形態に係る運転診断部で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7】第2実施形態の理想走行情報の生成方法及び運転診断方法を説明するための図である。
図8】第2実施形態に係る理想走行情報生成部及び運転診断部で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。本実施形態では、運転者の運転を評価する運転診断システムについて説明する。図1は、本実施形態に係る運転診断システムの概略構成を示す図である。
【0018】
本実施形態に係る運転診断システム10は、車両14に搭載された車載器16と、運転診断装置の一例としてのクラウドサーバ12と、外部サーバ13とが通信ネットワーク18を介して接続されている。本実施形態に係る運転診断システム10では、各車両14の状態を表す車両情報をクラウドサーバ12に送信して、クラウドサーバ12が車両情報を蓄積する。また、クラウドサーバ12は、道路の諸元に係る道路情報を外部サーバ13等から取得して蓄積する。そして、クラウドサーバ12が、蓄積した情報に基づいて、運転者の運転を診断する処理等を行う。なお、道路の諸元とは、道路の形状や特徴などを表すものであり、道路情報の一例としては、例えば、道路の長さ、入口角度、出口角度、垂直軸角度、制限速度、平均速度、ジャンクションタイプ、信号機、標識などの情報が適用される。
【0019】
図2は、本実施形態に係る運転診断システム10における車載器16及びクラウドサーバ12の機能構成を示す機能ブロック図である。
【0020】
車載器16は、制御部20、車両情報検出部22、撮影部24、通信部26、及び表示部28を備えている。
【0021】
車両情報検出部22は、車両14に関する車両情報を検出する。車両情報の一例としては、例えば、車両14の位置情報、車速、加速度、舵角、アクセル開度、車両周辺の障害物までの距離、経路等の車両情報を検出する。車両情報検出部22は、具体的には、車両14の周辺環境がどのような状況かを表す情報を取得する複数種のセンサや装置を適用できる。センサや装置の一例としては、車速センサ、舵角センサ、及び加速度センサなどの車両14に搭載されるセンサや、GNSS(Global Navigation Satellite System)装置、車載通信機、ナビゲーションシステム、及びレーダ装置などが挙げられる。GNSS装置は、複数のGNSS衛星からGNSS信号を受信して自車両14の位置を測位する。GNSS装置は受信可能なGNSS信号の数が多くなるに従って測位の精度が向上する。車載通信機は、通信部26を介して他の車両14との間の車車間通信及び路側機との間の路車間通信の少なくとも一方を行う通信装置である。ナビゲーションシステムは、地図情報を記憶する地図情報記憶部を含み、GNSS装置から得られる位置情報と地図情報記憶部に記憶された地図情報とに基づいて、自車両14の位置を地図上で表示したり、目的地迄の経路を案内したりする処理を行う。また、レーダ装置は、検出範囲が互いに異なる複数のレーダを含み、自車両14の周辺に存在する歩行者や他車両14等の物体を検出し、検出した物体と自車両14の相対位置及び相対速度を取得する。また、レーダ装置は周辺の物体の探知結果を処理する処理装置を内蔵している。当該処理装置は、直近の複数回の探知結果に含まれる個々の物体との相対位置や相対速度の変化等に基づき、ノイズやガードレール等の路側物等を監視対象から除外し、歩行者や他車両14等を監視対象物体として追従監視する。そしてレーダ装置は、個々の監視対象物体との相対位置や相対速度等の情報を出力する。なお、本実施形態では、これら複数の情報のうち少なくとも1つの情報を含む車両情報を検出する。
【0022】
撮影部24は、本実施形態では、車両14に搭載されて車両14の前方等の車両周辺を撮影し、動画像の撮影画像を表す動画像データを画像情報として生成する。撮影部24としては、例えば、ドライブレコーダ等のカメラを適用することができる。なお、撮影部24は、車両14の側方及び後方の少なくとも一方の車両周辺を更に撮影してもよい。また、撮影部24は、車室内を更に撮影してもよい。
【0023】
通信部26は、通信ネットワーク18を介してクラウドサーバ12と通信を確立して、撮影部24の撮影によって得られる画像情報や車両情報検出部22によって検出された車両情報等の情報をCAN(Controller Area Network)データとして送受信を行う。
【0024】
表示部28は、情報を表示することにより、乗員に各種情報を提供する。本実施形態では、例えば、クラウドサーバ12から提供される情報等を表示する。
【0025】
制御部20は、図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)20A、ROM(Read Only Memory)20B、RAM(Random Access Memory)20C、ストレージ20D、インタフェース(I/F)20E、及びバス20F等を含む一般的なマイクロコンピュータで構成されている。
【0026】
制御部20は、車両情報検出部22によって検出された車両情報をクラウドサーバ12にアップロードする制御等を行う。なお、車両情報をアップロードする際には、車両14及び運転者の各々を識別する識別情報を付与して送信する。運転者を識別する情報は、例えば、運転者を撮影した撮影画像でもよいし、運転者が携帯するスマートキーの識別情報でもよいし、運転者を識別可能な他の情報でもよい。
【0027】
一方、クラウドサーバ12は、中央処理部30、中央通信部36、及びDB(データベース)38を備えている。
【0028】
中央処理部30は、図3に示すように、プロセッサの一例としてのCPU30A、ROM30B、及びRAM30C、ストレージ30D、インタフェース(I/F)30E、及びバス30F等を含む一般的なマイクロコンピュータで構成されている。
【0029】
中央処理部30は、CPU30AがROM30Bに格納されたプログラムをRAM30Cに展開して実行することで、以下の機能を有する。
【0030】
すなわち、中央処理部30は、車両情報取得部44、道路情報取得部46、理想走行情報生成部48、及び運転診断部50の機能を有する。
【0031】
車両情報取得部44は、複数の車両14の車載器16の各々で検出された車両情報を取得して、DB38に蓄積する処理を行う。車両情報としては、車両14に搭載された各種センサ等によって検出された情報を収集する。検出される車両情報は、例えば、車両14の位置、速度、加速度、振動、及びハンドルの操舵角等の情報を含み得る。
【0032】
道路情報取得部46は、道路情報を管理する外部サーバ13から道路の諸元に係る道路情報を取得する。例えば、道路の長さ、入口角度、出口角度、垂直軸角度、制限速度、平均速度、ジャンクションタイプ、信号機、標識などの道路情報を取得する。
【0033】
理想走行情報生成部48は、道路情報に対応する道路における代表車両14の理想の走行に係る理想走行情報を生成する。すなわち、運転診断の基準となる理想的な車両情報となる理想走行情報を生成する。本実施形態では、複数の車両の車両情報を用いて理想走行情報を生成する。
【0034】
運転診断部50は、理想走行情報と、診断対象の車両14の車両情報とを比較して運転診断を行う。すなわち、理想走行情報が複数の車両の車両情報から生成するので、他の車両に対する相対的な運転診断を行う。例えば、運転診断部50は、理想走行情報に対する診断対象の車両14の車両情報の差の大小により、運転診断を行う。
【0035】
中央通信部36は、通信ネットワーク18を介して車載器16と通信を確立して、画像情報や車両情報等の情報の送受信を行う。
【0036】
DB38には、車両情報取得部44によって収集された車両情報、及び道路情報取得部46によって収集された道路情報を蓄積する。
【0037】
また、クラウドサーバ12は、運転診断部50の運転診断結果を運転者にフィードバックするサービスなどの各種サービスを提供する。
【0038】
(第1実施形態)
ここで、理想走行情報生成部48による理想走行情報の生成方法及び運転診断部50による運転診断方法の第1実施形態について説明する。図4は、第1実施形態の理想走行情報の生成方法及び運転診断方法を説明するための図である。
【0039】
本実施形態では、複数の代表道路箇所において、運転者の車両挙動分布と診断対象の車両14の車両挙動とを比較することによって運転診断を行う。
【0040】
例えば、図4に示すように、比較箇所1~8のように、道路の諸元の異なる複数の代表道路箇所を決定する。代表道路は、例えば、交差点の大きさや、曲率などを元に決定する。なお、代表道路箇所の決定は、手動で決定してもよいし、交差点の大きさや曲率などの道路情報が予め定めた値の箇所などを抽出して決定してもよい。また、代表道路箇所を決定する際に、車両14の走行頻度が予め定めた閾値以上の道路を決定することで、精度の高い運転診断が可能となる。
【0041】
また、決定した代表道路箇所を走行した複数の車両14を教師車両とし、教師車両の車両情報を取得して、教師車両の車両情報の分布を求め、分布に基づいて理想走行情報を生成する。一例としては、求めた分布の平均値を理想走行情報として生成する。なお、平均値に限るものではなく、分布の中央値を理想走行情報として生成してもよいし、他の値を理想走行情報としてもよい。
【0042】
そして、各代表道路箇所において、生成した理想走行情報と、運転診断の対象の車両14の走行情報とを比較することにより運転者の診断を行う。なお、各代表道路箇所の比較結果から総合的な運転診断を行ってもよい。
【0043】
続いて、第1実施形態に係る運転診断システム10のクラウドサーバ12で行われる具体的な処理について説明する。
【0044】
まず、理想走行情報生成部48で行われる具体的な処理について説明する。図5は、第1実施形態に係る理想走行情報生成部48で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図5の処理は、例えば、オペレータによって理想走行情報の生成が指示された場合に開始する。
【0045】
ステップ100では、CPU30Aが、運転診断箇所決定処理を行ってステップ102へ移行する。運転診断箇所決定処理は、例えば、オペレータが、図4に示すように、比較箇所1~8等の複数の代表道路箇所を指定することにより決定する。或いは、道路情報取得部46が取得した道路情報から、交差点の大きさや曲率などが予め定めた値の箇所などを抽出して決定してもよい。
【0046】
ステップ102では、CPU30Aが、ステップ100で決定した運転診断箇所のうち、1箇所に着目してステップ104へ移行する。
【0047】
ステップ104では、CPU30Aが、運転診断箇所を通過した車両14の車両情報を取得してステップ106へ移行する。すなわち、理想走行情報生成部48が、車両情報取得部44が取得した複数の車両情報の中から、該当箇所を通過した教師車両の車両情報を抽出する。
【0048】
ステップ106では、CPU30Aが、理想走行情報を生成してステップ108へ移行する。すなわち、取得した教師車両の車両情報の分布を求め、分布に基づいて理想走行情報を生成する。一例としては、求めた分布の平均値を理想走行情報として生成してもよいし、分布の中央値を理想走行情報として生成してもよい。
【0049】
ステップ108では、CPU30Aが、全箇所の理想走行情報を生成したか否かを判定する。該判定が否定された場合にはステップ110へ移行し、肯定されたところで一連の理想走行情報生成部48の処理を終了する。
【0050】
ステップ110では、CPU30Aが、他の箇所に着目してステップ104に戻って上述の処理を繰り返す。
【0051】
次に、運転診断部50で行われる具体的な処理について説明する。図6は、第1実施形態に係る運転診断部50で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図6の処理は、例えば、運転者又はオペレータ等によって運転診断の開始が指示された場合に開始する。
【0052】
ステップ200では、CPU30Aが、1診断箇所に着目してステップ202へ移行する。すなわち、上述のステップ100で決定した運転診断箇所のうち、1つの診断箇所に着目する。
【0053】
ステップ202では、CPU30Aが、理想走行情報を取得してステップ204へ移行する。すなわち、診断箇所に対応する、図5の処理で生成した理想走行情報を取得する。
【0054】
ステップ204では、CPU30Aが、診断対象の車両情報を取得してステップ206へ移行する。すなわち、診断対象の車両14の車両情報のうち、着目診断箇所における車両情報を取得する。
【0055】
ステップ206では、CPU30Aが、診断対象の車両情報と、理想走行情報とを比較してステップ208へ移行する。例えば、理想走行情報からの乖離度や、偏差値等を運転診断結果として算出してもよい。
【0056】
ステップ208では、CPU30Aが、全箇所の比較が終了したか否かを判定する。該判定は、運転診断箇所として決定した全箇所についてステップ206の比較が終了した否かを判定する。該判定が否定された場合にはステップ210へ移行し、肯定された場合にはステップ212へ移行する。
【0057】
ステップ210では、CPU30Aが、他の箇所に着目してステップ202に戻って上述の処理を繰り返す。
【0058】
一方、ステップ212では、CPU30Aが、診断結果を出力して一連の処理を終了する。診断結果の出力先としては、運転診断の要求元へ運転診断結果を送信する。例えば、診断対象の車両14を運転する運転者の携帯端末装置やパーソナルコンピュータ等に送信する。
【0059】
このように、本実施形態では、代表道路を走行した教師車両の車両情報の分布から、運転診断の基準となる理想走行情報を生成して、診断対象の車両14の車両情報と比較することにより運転診断を行う。これにより、適正な運転診断の基準を用いて運転診断が可能となる。また、道路形状などの影響を受けることなく、運転診断を行うことが可能となる。
【0060】
さらに、地域によって車両14の走り方が異なるが、地域毎の特性に応じた理想走行情報を生成可能であるため、地域の特性に応じた運転診断が可能となる。また、自動運転にも適用可能であり、運転診断の結果を用いて自動運転をチューニングすることで、地域特性に合わせた自動運転のチューニングも可能となる。
【0061】
(第2実施形態)
続いて、理想走行情報生成部48による理想走行情報の生成方法及び運転診断部50による運転診断方法の第2実施形態について説明する。図7は、第2実施形態の理想走行情報の生成方法及び運転診断方法を説明するための図である。
【0062】
本実施形態では、あらゆる道路における、運転者の車両挙動分布を比較して運転診断を行う。
【0063】
具体的には、道路の長さ、入口角度、出口角度、垂直軸角度、制限速度、平均速度、ジャンクションタイプ、信号機、標識などの道路の諸元によって、車両14の速度、アクセル開度、舵角、加速度等の車両情報が変化する。
【0064】
そこで、前処理として、道路の諸元に係る道路情報を入力として、代表車両14の理想の走行に係る理想走行情報を導出する運転者モデルを構築する。
【0065】
運転者モデルは、道路の諸元に係る道路情報と、代表車両14の車両情報のデータセットを教師データとして機械学習を行うことによりモデルを構築する。例えば、図7に示すように、複数箇所の道路情報と、当該道路情報に対応する道路を走行した際の代表車両14の車両情報を教師データとして、ニューラルネットワーク等の機械学習によって学習器52を学習することにより運転者モデル54を構築する。
【0066】
これにより、運転者モデル54に任意の位置の道路情報を入力することにより、任意の位置における代表車両14の車両情報を理想走行情報として得ることができる。すなわち、理想走行情報生成部48が、診断対象の車両14が走行した位置における道路情報を運転者モデル54に入力することで、診断対象の車両14が走行した位置における理想走行情報を生成することができる。
【0067】
そして、運転診断部50が、生成された理想走行情報と、診断対象の車両14の車両情報とを比較することにより、上記の実施形態と同様に、運転診断を行うことが可能となる。
【0068】
続いて、第2実施形態に係る運転診断システム10のクラウドサーバ12で行われる具体的な処理について説明する。図8は、第2実施形態に係る理想走行情報生成部48及び運転診断部50で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図8の処理は、例えば、運転者又はオペレータ等によって運転診断の開始が指示された場合に開始する。
【0069】
ステップ300では、CPU30Aが、診断対象の車両14の車両情報を取得してステップ302へ移行する。すなわち、理想走行情報生成部48が、車両情報取得部44が取得した複数の車両情報の中から、診断対象の車両14の車両情報を取得する。
【0070】
ステップ302では、CPU30Aが、診断対象の車両14が走行した道路の道路情報を取得してステップ304へ移行する。すなわち、理想走行情報生成部48が、道路情報取得部46が取得した道路情報の中から、診断対象の車両14が走行した道路の道路情報を取得する。
【0071】
ステップ304では、CPU30Aが、道路情報から理想走行情報を生成してステップ306へ移行する。すなわち、理想走行情報生成部48が、診断対象の車両の位置における道路情報を運転者モデル54に入力することで、診断対象の車両14の位置における理想走行情報を生成する。
【0072】
ステップ306では、CPU30Aが、診断対象の車両情報と理想走行情報を比較してステップ308へ移行する。すなわち、運転診断部50が、ステップ300で取得した診断対象の車両14の車両情報と、ステップ304で生成した理想走行情報と、を比較することにより運転診断を行う。例えば、理想走行情報からの乖離度や、偏差値等を運転診断結果として算出してもよい。
【0073】
ステップ308では、CPU30Aが、診断結果を出力して一連の処理を終了する。診断結果の出力先としては、運転診断の要求元へ運転診断結果を送信する。例えば、診断対象の車両14を運転する運転者の携帯端末装置やパーソナルコンピュータ等に送信する。
【0074】
このように、本実施形態では、運転者モデル54を用いて診断対象の車両14の位置における理想走行情報を生成して、診断対象の車両14の車両情報と比較することにより運転診断を行う。これにより、上記実施形態と同様に、適正な運転診断の基準を用いて運転診断が可能となる。また、道路形状などの影響を受けることなく、運転診断を行うことが可能となる。
【0075】
さらに、地域によって車両14の走り方が異なるが、運転者モデル54を地域毎に構築すれば、地域毎の特性に応じた理想走行情報を生成可能であるため、地域の特性に応じた運転診断が可能となる。また、自動運転にも適用可能であり、運転診断の結果を用いて自動運転をチューニングすることで、地域特性に合わせた自動運転のチューニングも可能となる。
【0076】
また、図8の処理例では、1箇所の位置における運転診断を行うようにしたが、複数箇所の道路情報を取得して、複数パターンの理想走行情報を生成し、複数箇所の運転診断を行ってもよい。この場合は、複数箇所の診断対象の車両14の車両情報と理想走行情報との比較結果から総合的な運転診断を行うようにしてもよい。また、運転者モデル54を構築する際には、車両14の走行頻度が予め定めた頻度以上の道路の道路情報を取得することで、精度の高い運転診断が可能となる。
【0077】
なお、上記の実施形態では、車種を考慮することなく、理想走行情報と、診断対象の車両情報を比較することにより運転診断を行うようにしたが、これに限るものではない。舵角に応じた旋回角度や、アクセル開度に応じた速度などが車種毎に異なるので、診断対象の車種に対応する理想走行情報を生成するようにしてもよい。例えば、第1実施形態では、診断対象の車種毎の教師車両の車両情報の分布を求めて理想走行情報を生成する。また、第2実施形態では、車種毎に運転者モデル54を構築して理想走行情報を生成する。なお、教師車両数が少ない車種については、車種を限定せずに生成した理想走行情報を車種用に変換してもよい。車種用の理想走行情報の変換は、例えば、変換するための係数等を予め導出して、係数を用いて理想走行情報を車種用に変換してもよい。
【0078】
また、上記の各実施形態におけるクラウドサーバ12で行われる処理は、プログラムを実行することにより行われるソフトウエア処理として説明したが、これに限るものではない。例えば、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウエアで行う処理としてもよい。或いは、ソフトウエア及びハードウエアの双方を組み合わせた処理としてもよい。また、ソフトウエアの処理とした場合には、プログラムを各種記憶媒体に記憶して流通させるようにしてもよい。
【0079】
さらに、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0080】
10 運転診断システム
12 クラウドサーバ(運転診断装置)
30 中央処理部
30A CPU(プロセッサ)
52 学習器
54 運転者モデル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8