(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20250109BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20250109BHJP
H01M 50/211 20210101ALI20250109BHJP
H01M 50/233 20210101ALI20250109BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20250109BHJP
H01G 11/08 20130101ALI20250109BHJP
H01G 11/16 20130101ALI20250109BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H01M10/48 301
H01M50/204 401D
H01M50/211
H01M50/233
H01M10/44 A
H01G11/08
H01G11/16
H01M10/48 P
H02J7/04 K
(21)【出願番号】P 2021209638
(22)【出願日】2021-12-23
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】須藤 貢治
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/073770(WO,A1)
【文献】特開2013-201027(JP,A)
【文献】特開2010-212192(JP,A)
【文献】特開2008-192432(JP,A)
【文献】特開2006-128062(JP,A)
【文献】特開2000-340264(JP,A)
【文献】特開2011-233471(JP,A)
【文献】国際公開第2009/125544(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102007063188(DE,A1)
【文献】特開2003-187879(JP,A)
【文献】特開2013-149523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/48
H01M 50/204
H01M 50/211
H01M 50/233
H01M 10/44
H01G 11/08
H01G 11/16
H02J 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池要素を外装体で包装したセルと、
前記セルの側面を覆う導電部材と、
前記導電部材と電気的に接続し、前記導電部材へ電流を供給することで前記導電部材の通電状態を検出する検出部と、を備え、
前記導電部材は前記セルの膨張により、前記導電部材の通電状態が変化する構造を有して
おり、
前記導電部材が前記セルと電気的に接続されておらず、
前記導電部材が、六角形が連続的に並んだ形状を有することで、複数の切り欠きを有しており、
前記検出部は、前記導電部材の通電状態を検出する際に、前記導電部材の端部と電気的に接続する接続部を有する、
蓄電デバイス。
【請求項2】
前記導電部材は0.5N~300Nの張力が掛かったときに、前記導電部材の通電状態が変化する構造を有している、請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項3】
前記セルへの電流供給を制御する制御部を備え、
前記検出部が
前記導電部材の通電状態を検出する際に、前記導電部材の端部と前記接続部とを電気的に接続して、前記導電部材の通電状態の変化を検出したとき、前記制御部は前記セルへの電流供給を制御する、
請求項1
または2に記載の蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー密度が高く、取り扱いが容易な電池として、電池要素をラミネートフィルムで包装したラミネートセルが知られている。一方で、ラミネートセルは過充電や内部短絡などの異常発生時に電解質等が分解してガスが発生する場合がある。ガスが発生すると、ラミネートセルは膨張する。従って、このような膨張を検出することで、ラミネートセルに流れる電流を制御し、安全性を高めることができる。このような技術は、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1は、ラミネートセルを所定の拘束板で挟み込み、帯状締結部材でラミネートセルと拘束板とを固定する電池パックにおいて、外部の電力負荷と接続された拘束板にラミネートセルの電極タブを固定し、ラミネートセルの膨張時に電極タブと拘束板との固定が解除される電池パックを開示している。このような電池パックによれば、電極タブと拘束板との固定が解除されることにより、外部の電力負荷とラミネートセルとを電気的に遮断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、リチウムイオンキャパシタを収容するラミネートセルにおいて、100cc程度の小さなセルに1000W以上の電力を大電流で流すことが度々行われる。この場合、セルの内部抵抗によって、電極タブに高い温度の熱が発生する。特許文献1に記載されている電池パックは拘束板と電極タブとを結合する結合部を必須の要件としており、このような接合部は接触抵抗が大きく発熱箇所となる。そうすると、発熱によるエネルギーの損失を伴うだけでなく、熱による変形で接合部の接触状態が変化することによりセルの膨張に関わらず回路が遮断されてしまう問題がある。
【0006】
そこで本開示の目的は、上記実情を鑑み、セルの抵抗を増加させることなくセルの膨張を検出することができる蓄電デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は上記課題を解決するための一つの態様として、電池要素を外装体で包装したセルと、セルの側面を覆う導電部材と、導電部材と電気的に接続し、導電部材へ電流を供給することで導電部材の通電状態を検出する検出部と、を備え、導電部材はセルの膨張により、導電部材の通電状態が変化する構造を有している、蓄電デバイスを提供する。
【0008】
上記蓄電デバイスにおいて、導電部材は0.5N~300Nの張力が掛かったときに、導電部材の通電状態が変化する構造を有してよい。また、導電部材は切れ込み又は切り欠きを有していてよい。さらに、上記蓄電デバイスはセルへの電流供給を制御する制御部を備え、検出部が導電部材の通電状態の変化を検出したとき、制御部はセルへの電流供給を制御する態様であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示の蓄電デバイスは、導電部材の通電状態が変化を検出することにより、セルの膨張を検出している。ここで、導電部材はセルの側面を覆う部材であり、セルと電気的に接続されていない。従って、本開示の蓄電デバイスによれば、セルの抵抗を増加させることなくセルの膨張を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】導電部材20を正面側から観察した蓄電デバイス100の側面の概略図である。
【
図2】導電部材20の側面側から観察した蓄電デバイス100の側面の概略図を示した。また、点線で示した部分の上面図を矢印で示した。
【
図3】セル積層体15の周囲を巻くように配置された導電部材120を説明するための概略図である。また、点線で示した部分の上面図を矢印で示した。
【
図4】固定部材としてクリップ121を用いた形態を示す図である。
【
図5】固定部材21の一方をセル積層体15の端面に近接した位置に設けた形態を示す図である。
【
図7】(a)導電部材220の正面図である。(b)導電部材220の側面図である。(c)導電部材220に保護フィルム220cを配置した場合の側面図である。
【
図8】
図1に対応し、セル積層体15が膨張した後の蓄電デバイス100の図である。
【
図9】
図2に対応し、セル積層体15が膨張した後の蓄電デバイス100の図である。
【
図10】導電部材20を正面側から観察した蓄電デバイス200の側面の概略図である。
【
図11】蓄電デバイス200の一実施形態の制御フローである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第一実施形態]
本開示の蓄電デバイスについて、第一実施形態である蓄電デバイス100を参照しつつ説明する。
図1に導電部材20を正面側から観察した蓄電デバイス100の側面の概略図を示した。
図2に導電部材20を側面側から観察した蓄電デバイス100の側面の概略図を示した。
【0012】
図1、
図2に示した通り、蓄電デバイス100は複数のセル10が積層されたセル積層体15と、セル積層体15の側面を覆う導電部材20と、導電部材20と電気的に接続し、導電部材20へ電流を供給することで導電部材20の通電状態を検出する検出部30と、を備えている。
【0013】
<セル10>
セル10は電池要素を外装体11で包装した単電池である。電池要素には正極、負極及び電解質が含まれている。セル10の種類は特に限定されず、液系電池であってもよく、固体電池であってもよい。また、セル10は二次電池であってもよく、キャパシタであってもよい。さらに、セル10において、充放電により電池要素内を移動するイオンの種類は特に限定されない。例えば、リチウムイオンやナトリウムイオン等の公知のイオンを挙げることができる。大電流が流れ、膨張が生じやすいセル10としては、例えばリチウムイオンキャパシタが挙げられる。蓄電デバイス100はこのような膨張が生じやすいセル10を用いたとしても、膨張を検出することができる。従って、セル10にリチウムイオンキャパシタを用いてもよい。
【0014】
外装体11は電池要素を収容し、内圧の変化で変形し得る外装体であれば特に限定されない。例えば、ラミネートフィルムや金属性の筐体が挙げられる。取り扱いが容易である観点から、外装体11にラミネートフィルムを用いてよい。ラミネートフィルムは他の外装体に比べて剛性が小さいため、セル10の内圧の増加により膨張しやすい。しかしながら、蓄電デバイス100はこのような膨張が生じやすいセル10を用いたとしても、膨張を検出することができる。従って、外装体11としてラミネートフィルムを用いてよい。ラミネートフィルムとしては、例えばアルミラミネート等の公知の金属ラミネートが挙げられる。
【0015】
セル10は外装体11から突出する1対の電極タブ(正極タブ12a及び負極タブ12b)を備えている。正極タブ12aはセル10内に封止されている正極と接続しており、負極タブ12bはセル10内に封止されている負極と接続している。
図1において、正極タブ12a及び負極タブ12bはセル10の対向する側面にそれぞれ設けられている。ただし、本開示の蓄電デバイスはこれに限定されず、正極タブ12a及び負極タブ12bがセルの同一の側面に配置されていてもよく、異なる側面に配置されていてもよい。
【0016】
<セル積層体15>
セル積層体15はセル10が厚さ方向に積層された構造物である。積層されているセル10間において、スタックプレートやヒートスプレッダ等の部材が配置されていてもよい。セル積層体15において、各セル10の電極タブは直列に接続されている。ただし、本開示の蓄電デバイスにおいて、各セルの電極タブの接続方式は特に限定されず、直列であってもよく、並列であってもよい。大電流を流す観点から、各セルの電極タブは直列で接続されていてよい。
【0017】
第一実施形態において、蓄電デバイス100は複数のセル10を積層したセル積層体15を有しているが、本開示の蓄電デバイスはこれに限定されず、1つのセルのみを有する形態であってもよい。後述する第二実施形態も同様である。ただし、大電流を流す観点から、本開示の蓄電デバイスは複数のセルを積層したセル積層体を有していてよい。
【0018】
<導電部材20>
導電部材20はセル積層体15の側面を覆う部材である。導電部材20の材料は導電性を有する部材であれば特に限定されない。例えば、アルミニウム等の柔軟な金属であってもよく、導電性材料を有する樹脂等が挙げられる。導電性材料とは、例えば黒鉛や、金属粉、導電性高分子である。樹脂の種類は特に限定されず、公知の樹脂を適宜採用することができる。
【0019】
導電部材20の形状は特に限定されず、テープ状であってもよく、帯状であってもよく、線状であってよい。また、複数の導電部材を束ねて、1つの導電部材20としてもよい。さらに、導電部材20を補強するために、樹脂フィルム等が導電部材20の表面に貼り付けられていてもよい。また、導電部材20をセル積層体15に固定させるために、樹脂フィルムは粘着性を有していてもよい。これにより、導電部材20をセル積層体15の側面に簡易に固定することができる。
【0020】
導電部材20が配置されるセル積層体15の側面は特に限定されず、何れの側面に配置されていてもよい。ただし、セル10の抵抗を増加させることがないように、導電部材20をセル10の電極タブに電気的に接続しないようにすることを考慮する。従って、導電部材20と電流路(セル10同士の電極タブが接続されることにより形成される電流路)との接触を防止する観点から、導電部材20は少なくともセル10の電流路が配置されていない側面に配置されていてもよい。これにより、導電部材20と電流路(電極タブ)との接触によるエネルギー損失を防止するとともに、検出部30が導電部材20の通電状態の変化を検出する精度の低下を防止することができる。
【0021】
導電部材20はセル積層体15の側面の少なくとも一部を覆うものであればよい。これにより、導電部材20に覆われているセル10の膨張を検出することができる。ただし、セル積層体15全体の膨張を検出する観点から、
図1に示した通り、セル積層体15の側面の厚み方向に亘って覆う部材であってもよい。詳しくは、セル積層体15の側面において、厚さ方向の一方の端部から他方の端部までの範囲を覆う部材であってもよい。また、導電部材20はセル積層体の1つの側面のみを覆う形態だけでなく、その他の面を覆う形態も許容される。例えば、1つの側面を覆うとともに、セル積層体15の厚さ方向の端面を覆っていてもよい。また、導電部材20はセル積層体15の周囲を巻くように配置されていてもよい。すなわち、導電部材20はセル積層体15の対向する両側面及び厚さ方向の両端面を覆う形態であってもよい。
図3にセル積層体15の周囲を巻くように配置された導電部材120を有する形態を示した。
【0022】
図3に示した通り、導電材120をセル積層体15の周囲を巻くように配置することにより、セル積層体15の端面が膨張した場合も、導電部材120の通電状態が変化し得る。従って、このような蓄電デバイスの形態によれば、セル積層体15の側面の膨張だけでなく、端面の膨張も検出することができる。
【0023】
導電部材20を側面に配置する方法は特に限定されず、接着剤によって貼り付けてもよく、所定の固定部材21を用いて配置してもよい。この際、導電部材20を所定の張力を持たせて固定してよい。接着剤としては絶縁性の接着剤を用いてもよいが、導電部材20と固定部材21とを接続するための接着剤には導電性接着剤を用いてもよい。導電性接着剤とは、導電性高分子や金属、炭素粉末を含む接着剤である。
【0024】
図1、
図2ではセル積層体15のそれぞれの端面に固定部材21、21(ターミナル)を配置し、導電部材20の端部をそれぞれ固定部材21、21に固定することで、導電部材20をセル積層体15の側面に配置している。導電部材20の端部と固定部材21との固定は、導電性接着剤を用いている。そして、
図2の上部に示した通り、検出部30の接続部31を導電部材20の端部に電気的に接続する。これにより、検出部30が導電部材20の通電状態の変化を検出することができる。接続部31と導電部材20との接続形態は特に限定されず、カプラや圧着ターミナルを用いて電気的に接続してよい。
【0025】
固定部材21は導電部材20を固定し、かつ、導電部材20と検出部30とを接続することができる形態であれば特に限定されない。
図2に示した通り、固定部材21としてターミナルを用いてもよい。また、固定部材としてクリップを用いてもよい。
図4に固定部材としてクリップ121を用いた形態を示した。
【0026】
図4に示した通り、導電部材20の端部20をクリップ121で挟んで固定してもよい。また、クリップ121は所定のロック機構を有していてもよく、ロック機構を用いて固定状態を維持してもよい。そして、クリップ121の後方から延出している導電部材20の端部と検出部30の接続部31とを電気的に接続する。
【0027】
図1、
図2では、セル積層体15のそれぞれの端面に固定部材21を配置しているが、固定部材21の配置形態はこれに限定されない。
図5に示した通り、固定部材21の一方をセル積層体15の端面に近接した位置に設けてもよい。
図1、
図2の形態では、セル積層体15の両端面に固定部材21が配置されているため、何れの端面も水平ではなく、蓄電デバイス100を安定して載置することができない。一方で、
図5に示した通り、蓄電デバイス100を載置する側の固定部材21をセル積層体15の端面に近接した位置の載置面に配置することにより、蓄電デバイス100を安定して載置することができる。
【0028】
ここで、導電部材20はセル10の膨張により、導電部材20の通電状態が変化する構造を有している。好ましくは、導電部材20は、セル10が膨張し内圧限界に至る前に、導電部材20の通電状態が変化する構造を有していることである。蓄電デバイス100において、電池要素の副反応や熱反応等によってセル10の内部にガスが発生し、セル10が膨張することがある。従って、「内圧限界」とは、セル10内部のガスの発生によって内圧が変化した際に、セル10の外装体11に亀裂や切断等が生じない内圧の限界である。特に、外装体11の接着あるいは溶着等された封止部(例えば、ラミネート封止部)が開封されやすいため、封止部が開封されない内圧の限界としてもよい。「通電状態の変化」とは、検出部30によって検出される導電部材20の電流又は電圧の変化や通電の遮断である。蓄電デバイス100は導電部材20の通電状態が変化したか否かを判断する閾値を設けてもよい。当該閾値は導電部材20に応じて適宜設定してよい。導電部材20へ供給される電流量や、導電部材20の材料によって、当該閾値が変化するためである。「通電状態が変化する構造」とはセル10が膨張し内圧限界に至る前に、導電部材20に亀裂や切断が生じる構造である。例えば、導電部材20に亀裂が生じると検出部30によって検出される導電部材20の電流や電圧が変化し、導電部材20が切断すると導電部材20への通電が遮断される。通電状態が変化したか否かを判断する閾値は、導電部材20に亀裂や切断が生じたときの通電状態に基づいて閾値を設定してもよい。好ましくは電部材20に切断が生じたときの通電状態(通電の遮断)に基づいて閾値を設定することである。
【0029】
蓄電デバイス100は導電部材20を有することにより、導電部材20に覆われているセル10の膨張により導電部材20の通電状態が変化するため、セル10の膨張を検出することができる。セル10の内圧限界はセル10の種類により変化するため、一義的に決められるものではない。従って、セル10の内圧限界を予め実験的、又はシミュレーションにより得ておくことがよい。例えば、(セル10の内圧限界)×(1つのセル10における導電部材20の被覆面積)よりも十分に小さい力で通電状態に変化が生じるように、導電部材20の構造を設計してよい。なお、外装体11にラミネートフィルムを用いたセル10の内圧限界は一般的に40kPa~100kPaである。
【0030】
導電部材20は、セル10の膨張により導電部材20の通電状態が変化する構造を有しているので、蓄電デバイス100の製造時において、導電部材20に容易に亀裂や切断が生じることがないようにすることを考慮する必要がある。例えば、導電部材20は0.5N~300Nの張力が掛かったときに、導電部材20の通電状態が変化する構造を有してもよい。これにより、セル10の膨張を容易に検出することができ、かつ、導電部材20のセル10への配置も容易になる。導電部材20の張力が0.5N未満であると、導電部材20が容易に切断されるため、導電部材20のセル10への配置が困難になりやすい。導電部材20の張力が300Nを超えると、セル10の膨張を検出することが困難になりやすい。導電部材の張力は、例えば国際標準ASTM D882-18、D883、D638に準拠した試験法等の公知の方法により測定することができる。
【0031】
導電部材20は切れ込み又は切り欠きを有していてもよい。これにより、導電部材20の通電状態に変化が生じやすくなり、セル10の膨張を検出する精度が高まる。例えば、強度の強い導電部材20を用いる場合、切れ込み又は切り欠きを導電部材20に追加して強度を調整してもよい。導電部材20が有する切れ込みや切り欠きの形態は特に限定されないが、導電部材20の通電状態が変化しやすいよう、厚さ方向に対し角度を有する切り込み又は切り欠きが好ましい。例えば、厚さ方向に対する切り込み又は切り欠きの角度が0°超であってもよく、10°以上であってもよく、30°以上であってもよく、45°以上であってもよく、60°以上であってもよく、180°未満であってもよく、170°であってもよく、150°以下であってもよく、135°以下であってもよく、120以下であってもよい。
【0032】
図6に導電部材20の拡大図を示した。
図6に示した通り、導電部材20は複数の切り欠き20aを有しており、これにより六角形が連続的に並んだ形状を有している。このように、導電部材20は多角形が連続的に並んだ形状を有していてもよい。導電部材20は切り欠き20aを有することにより、切り欠き20aを起点に通電状態に変化が生じやすくなる。すなわち、切り欠き20aを起点に、導電部材20に亀裂や切断が生じやすくなる。
【0033】
また、
図7に表面に複数の切り込み220aを有する導電部材220を示した。(a)は導電部材220の正面図であり、(b)は導電部材220の側面図である。(c)は導電部材220に保護フィルム220cを配置した場合の側面図である。
【0034】
図7(a)に示した通り、導電部材220はその表面に複数の切り込み220aを有しており、切り込み220aを起点として導電部材220の通電状態に変化が生じやすい構造となっている。導電部材220の表面に切り込みを設ける場合、
図7(b)に示した通り、導電部材220の他方側の表面には樹脂フィルム220bを貼合し、強度を向上してもよい。また、
図7(c)に示した通り、蓄電デバイス製造時において、切れ込み220aを設けた表面を保護する保護フィルム220cが貼り付けられた導電部材120をセル積層体15の側面に配置し、その後保護フィルム220cを剥がしてもよい。
【0035】
<検出部30>
検出部30は導電部材20と電気的に接続し、導電部材20へ電流を供給することで導電部材20の通電状態を検出する部材である。そして、導電部材20の通電状態の変化を検出することにより、セル10の膨張を検出することができる。
図1では、検出部30は導電部材20のそれぞれの端部と電気的に接続している。検出部30は所定の接続部31、31を有しており、接続部31を介して導電部材20と接続している。検出部30は公知の検出装置を適宜採用することができる。検出部30から導電部材20に流す電流及び電圧の大きさは特に限定されず、導電部材20の通電状態の変化を検出しやすい電流及び電圧の大きさに適宜設定する。
【0036】
<効果>
図8、
図9は
図1、
図2に対応し、セル積層体15が膨張した後の蓄電デバイス100の図である。
図8、
図9に示した通り、セル積層15(セル10)の膨張により導電部材20の通電状態が変化している。具体的には、セル積層15(セル10)の膨張により、導電部材20が切断しており、これにより検出部30から導電部材20への通電が遮断している。そして、検出部30はこのような導電部材20の通電状態の変化(通電の遮断)を検出している。従って、蓄電デバイス100によれば、セル10の膨張を検出することができる。
【0037】
また、上述した通り、導電部材20はセル10に電気的に接続されていない。従って、蓄電デバイス100はセル10の抵抗を増加させることなく、セル10の膨張を検出することができる。
【0038】
<補足>
蓄電デバイス100は導電部材20の構造を適宜調整することにより、セル10の膨張の検出に加えて、セル積層体15の位置ずれを検出することができる。通常、導電部材20がセル10の膨張により導電部材20の通電状態が変化する構造を有していれば、検出部30が導電部材20の通電状態の変化を検出することにより、蓄電デバイス100はセル積層体15の位置ずれも検出することができる。
【0039】
例えば、蓄電デバイス100に外部から力が加わったとき、セル積層体15における何れかのセル10の相対位置がずれることがある。セル10の相対位置がずれると、セル10間の電極タブの結合が外れることや、電極タブの結合が外れない場合であっても、電極タブ付近に高い負荷がかかる場合がある。電極タブの結合が外れると、蓄電デバイス100の使用ができなくなる虞がある。また、電極タブ付近に高い負荷がかかると、電極タブに接続されている電池要素を破損する虞がある。さらに電極タブに限られた断面積に大きい電流が流れる場合があるため、位置ずれにより電極タブの結合が弱まったとき、電極タブが発熱する虞がある。このように、セル10の相対位置のずれは、蓄電デバイス100を異常な状態に導くものであるため好ましくない。特許文献1に記載の電池パックは、このような位置ずれを検出する手段はない。
【0040】
一方で、蓄電デバイス100の導電部材20は、セル10の位置ずれにより導電部材20に亀裂や切断が生じ、通電状態が変化し得る。特に、導電部材20がセル積層体15の側面に貼り付けられている場合、セル10の位置ずれにより導電部材20に亀裂や切断が生じやすく、それにより通電状態も変化しやすい。従って、蓄電デバイス100はセル10の相対位置のずれを検出することができる。
【0041】
また、蓄電デバイス100は導電部材20を有することにより、意図しないセル10の交換の有無を検知することができる。すなわち、意図しないセル10の交換が行われた場合、導電部材20は亀裂や切断が生じることが予想される。従って、セル10の交換後、検出部30は導電部材20の通電状態の変化を検出することとなる。このように導電部材20はセル10(セル積層体15)を封印する役割も有する。
【0042】
[第二実施形態]
本開示の蓄電デバイスの第二実施形態である蓄電デバイス200について説明する。蓄電デバイス200は蓄電デバイス100に制御部40を加えた形態である。
図10に蓄電デバイス200の概略図を示した。
【0043】
図10に示した通り、蓄電デバイス200は蓄電デバイス100の構成に加えて、検出部30と接続した制御部40を備えている。制御部40は蓄電デバイス200の制御を行うものである。具体的には、制御部40はセル積層体15への電流供給を制御(電流供給量や電流供給の停止)する。制御部40は、例えばバッテリーマネジメントシステム等の公知の演算装置(コンピュータシステム)である。
【0044】
蓄電デバイス200は、検出部30が導電部材20の通電状態の変化を検出したとき、制御部40がセル積層体15への電流供給を制御するものである。これにより、速やかに蓄電デバイス200を制御し、安全状態に移行することができる。従って、蓄電デバイス200はより安全性の高い蓄電デバイスであるといえる。
【0045】
以下に、制御部40による蓄電デバイス200の制御フローの一実施形態を説明する。
図11に一実施形態の制御フローを示した。ただし、制御部40による蓄電デバイス200の制御はこれに限定されるものではない。
【0046】
一実施形態である制御フローは、以下の処理S1~処理S4を繰り返し実行するものである。
【0047】
処理S1では、制御部40が検出部30から導電部材20の通電状態の変化を検出したことを示す情報を受信したか否かを判断する。当該情報を受信していない場合は、再度処理S1を行う。当該情報を受信した場合は、処理S2に進む。「導電部材20の通電状態が変化したことを示す情報」とは、検出部30により検出された導電部材20の電流や電圧が変化したことを示す情報である。そして、この情報はセル10に膨張又は位置ずれ等の異常状態が発生したことを示すものである。
【0048】
処理S2では、セル積層体15への電流供給を制御する。例えばセル積層体15(セル10)への電流供給を低減してもよく、遮断してもよい。蓄電デバイスの状況に応じてより安全な制御を行う。処理S2後は処理S3を行う
【0049】
処理S3では、セル積層体15の温度を測定し、測定した温度が異常な温度であるか否かを判断する。セル積層体15の温度測定は不図示の温度測定装置によって行う。測定温度が異常温度である場合、処理S4を行う。測定温度が異常温度でない場合、制御フローを終了する。
【0050】
処理S4ではセル積層体15の温度を冷却する。セル積層体15の冷却は不図示の冷却装置によって行う。セル積層体15の温度が所定の温度まで低下したら、処理S4を終了する。
【符号の説明】
【0051】
10 セル
11 外装体
12a 正極タブ
12b 負極タブ
15 セル積層体
20、120、220 導電部材
20a 切り欠き
220a 切れ込み
220b 樹脂フィルム
220c 保護フィルム
21、121、 固定部材
30 検出部
31 接続部
40 制御部
100、200 蓄電デバイス