(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】潤滑剤噴霧装置
(51)【国際特許分類】
B21J 13/02 20060101AFI20250109BHJP
B21D 37/18 20060101ALI20250109BHJP
B05B 1/04 20060101ALI20250109BHJP
B21J 3/00 20060101ALI20250109BHJP
B05B 7/04 20060101ALN20250109BHJP
【FI】
B21J13/02 Z
B21D37/18
B05B1/04
B21J3/00
B05B7/04
(21)【出願番号】P 2022031707
(22)【出願日】2022-03-02
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】小栗 哲平
(72)【発明者】
【氏名】五十川 雅之
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-114140(JP,A)
【文献】特開昭61-097064(JP,A)
【文献】特開平02-237661(JP,A)
【文献】実開平07-007771(JP,U)
【文献】特開2009-262233(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111804819(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 13/02
B21D 37/18
B05B 1/04
B21J 3/00
B05B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑剤供給路と、不活性ガス供給路と、潤滑ハンドと、金型に対して潤滑剤を噴霧するノズルチップ
と、を備え、
前記潤滑剤供給路は、潤滑剤を前記潤滑ハンドへ供給し、
前記不活性ガス供給路は、不活性ガスを前記潤滑ハンドへ供給し、
前記潤滑ハンドは、前記潤滑剤供給路と連通する第1の流路と、前記不活性ガス供給路と連通するとともに前記第1の流路と対向して配置された第2の流路と、前記第1の流路及び前記第2の流路と交差して配置され、前記第1の流路と前記第2の流路の連結部から前記ノズルチップに向かって延在する第3の流路と、を備え、
前記ノズルチップは、
基部、中央部、先端部を備え、
前記基部は、環形状を有し、前記潤滑ハンドと連結し、
前記中央部は、内部にノズル流路が形成された円筒形状を有し、前記基部が前記潤滑ハンドと連結することにより前記ノズル流路は前記第3の流路と連通し、
前記先端部
は、
ドーム形状を有し、前記先端部の直径は、先端に向かうにつれて、前記中央部の直径と等しい長さから徐々に小さくなっており、
前記第1の流路と前記第2の流路の前記連結部において不活性ガスと混合され、前記第3の流路から前記ノズル流路へ供給された潤滑剤を噴射するためのスリットを
1つ備え、
前記スリットは、前記ノズル流路と連通しており、前記中央部の直径に平行であり、前記中央部の直径全体にわたる長さを有し、
前記スリットの幅は、前記ノズル流路の幅の25%以上であり、
前記スリットは、少なくとも先端側に、スリット幅が先端に向かうにつれて広くなる幅広部を備える、
潤滑剤噴霧装置。
【請求項2】
前記スリットの前記幅広部の開き角度は40°以上である、
請求項1に記載の潤滑剤噴霧装置。
【請求項3】
前記幅広部の深さは、前記スリットの深さの40%以上である、
請求項1又は2に記載の潤滑剤噴霧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鍛造成形に用いられる金型の鍛造加工面に離型剤を吹き付けて塗布する離型剤塗布装置が記載されている。具体的には、特許文献1では、成形加工後に型開きされた下型及び上型に離型剤吹き付けヘッダーを配置し、その各ノズルから、下型及び上型の対応する各部位に向けて離型剤を吹き付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の鍛造金型のように大型の金型では、潤滑被膜を形成する範囲が比較的広いため、均一に潤滑被膜を形成することが困難であるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、金型に対してより均一に潤滑被膜を形成することができる潤滑剤噴霧装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る潤滑剤噴霧装置は、金型に対して潤滑剤を噴霧するノズルチップを備え、前記ノズルチップは、先端部に、前記潤滑剤を噴射するためのスリットを有し、前記スリットは、少なくとも先端側に、スリット幅が先端に向かうにつれて広くなる幅広部を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の第1の態様に係る潤滑剤噴霧装置によれば、スリットの幅広部によって、潤滑剤の噴射角度をより広くすることができる。よって、金型に対してより均一に潤滑被膜を形成することができる潤滑剤噴霧装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る潤滑剤噴霧装置の構成の一例を簡略して示す断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係るノズルチップの一例を示す下面を含む斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係るノズルチップの一例を示す上面を含む斜視図である。
【
図4】本発明の実施の形態1に係るノズルチップの一例を示す断面を含む斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態1の実施例1に係るノズルチップの一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態1について説明する。ただし、本発明は以下の実施の形態1に限定されるものではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0010】
図1は、本実施の形態1に係る潤滑剤噴霧装置100の構成の一例を示す図である。潤滑剤噴霧装置100は、
図1に示すように、潤滑剤供給路110、不活性ガス供給路120、潤滑ハンド130、ノズルチップ140を備える。潤滑剤噴霧装置100は、ノズルチップ140から金型に潤滑剤を噴霧して、金型の所望する表面に潤滑被膜を形成する。
特に、車両部品を成形する鍛造金型は、形状が比較的大きいため、潤滑被膜を形成する必要がある範囲も大きい。このような大きい範囲に潤滑被膜を均一に形成することは困難であった。また、車両部品のように強度を確保する必要がある場合、金型温度が例えば280℃となり、一般の金型温度(150℃~200℃)より高いため、ライデンフロスト現象が発生し、金型に潤滑剤が付着しにくいという問題もある。しかし、後述するように、本実施の形態に係るノズルチップ140を備えることによって、金型に対してより均一に潤滑被膜を形成することができる潤滑剤噴霧装置100を提供することができる。以下、本実施の形態1に係る潤滑剤噴霧装置100について詳細に説明する。
【0011】
潤滑剤供給路110は、潤滑剤を貯留している潤滑剤タンク(不図示)から潤滑剤を潤滑ハンド130へ供給する。
【0012】
不活性ガス供給路120は、不活性ガス発生装置(不図示)から不活性ガスを潤滑ハンド130へ供給する。
【0013】
潤滑ハンド130は、潤滑剤供給路110と連通する第1の流路131、不活性ガス供給路120と連通する第2の流路132を備える。第1の流路131と第2の流路132とは、互いに対向して配置され、連通している。また、潤滑ハンド130は、第1の流路131及び第2の流路132と交差して配置される第3の流路133を備える。また、第3の流路133は、第1の流路131及び第2の流路132と連通している。そのため、第1の流路131を通って供給された潤滑剤と第2の流路を通って供給された不活性ガスとは、第1の流路131と第2の流路132との連結部において混合され、混合された潤滑剤と不活性ガスとは第3の流路133に流入する。
【0014】
ノズルチップ140の下面を含む斜視図、上面を含む斜視図、断面を含む斜視図を、それぞれ、
図2~
図4に示す。
図4は、ノズルチップ140のスリット145(後述)の位置において、当該スリット145及びノズルチップ140の軸方向に平行な面でノズルチップ140を切断した状態を示す斜視図である。
図2~
図4に示すように、ノズルチップ140は、内部に、潤滑ハンド130の第3の流路133と連通するノズル流路141が形成された、筒形状を有する。そのため、潤滑ハンド130の第3の流路133に流入した、不活性ガスと混合された潤滑剤はノズル流路141に流入する。なお、
図2~
図4に示すように、本実施の形態に係るノズルチップ140は、略円筒形状を有しているが、これに限られるものではなく、楕円筒形状、角筒形状等であってもよい。また、ノズルチップ140は、基部142、中央部143、先端部144を備える。
【0015】
基部142は、環形状を有し、ノズルチップ140を潤滑ハンド130に装着する際に、潤滑ハンド130の第3の流路133とノズルチップ140のノズル流路141とが連通するように、潤滑ハンド130の所定の連結部(不図示)と連結する。
【0016】
中央部143は、基部142よりも幅(直径)の小さい円筒形状を有し、内部にノズル流路141が形成されている。ノズル流路141の幅(直径)は、第3の流路133の幅(直径)に実質的に等しい。
【0017】
先端部144は、中央部143の先端側、すなわち、中央部143の基部142側とは反対側に位置する。また、先端部144は、先端に向かうにつれて、その外形形状が小さくなる、略ドーム形状を有している。すなわち、先端部144の当該外形形状の幅(直径)は、先端に向かうにつれて、中央部143の外形形状の幅(直径)と等しい長さから、徐々に小さくなっている。
【0018】
また、先端部144は、その中央に、中央部143の外形の直径に平行なスリット145を備える。当該スリット145は、ノズル流路141と連通しており、ノズル流路141をノズルチップ140の外部につなげている。すなわち、ノズル流路141に流入した不活性ガスを混合された潤滑剤は、スリット145を通って、ノズルチップ140の外部へと噴射される。スリット145は、中央部143の外形の直径全体にわたる長さを有する。したがって、先端部144は、スリット145によって、2つの部分に分断されている。なお、スリット145の長さは、これに限定されるものではなく、ノズル流路141の直径より長ければよい。
【0019】
また、スリット145は、その先端側に、当該スリット145のスリット幅が先端に向かうにつれて広くなる幅広部146を備える。これにより、スリット145によって噴射される潤滑剤の噴射角度を広げることができる。
【0020】
なお、幅広部146のノズルチップ140の軸方向の長さ(以下、「深さ」と称する。)、幅広部146の開き角度、及びスリット145の幅は、潤滑剤の種類や、金型に対して潤滑剤を塗布する所望の範囲の大きさ等によって、決定され得る。
【0021】
実施例1
図5に、本実施の形態1に係るノズルチップ140の実施例1を示す。
図5に示すように、幅広部146の開き角度θは40°以上であることが好ましい。また、幅広部146の深さD1は、スリット145の深さD2の40%以上であることが好ましい。また、スリット145の幅W1は、ノズル流路141の直径W2の25%以上であることが好ましい。
【0022】
以上に説明した本実施の形態1に係る潤滑剤噴霧装置100によれば、スリット145の幅広部146によって、潤滑剤の噴射角度をより広くすることができる。よって、金型に対してより均一に潤滑被膜を形成することができる潤滑剤噴霧装置100を提供することができる。
【0023】
特に、一般的な2流体方式の潤滑剤噴霧装置の構成を変更することなく、潤滑ハンド130に取り付けるノズルチップを本実施の形態1に係るノズルチップ140に変更するだけであるため、費用を抑えて、潤滑被膜形成の改善を図ることができる。
【0024】
また、スリット145の幅広部146の開き角度は40°以上であるため、より確実に、スリット145によって噴射される潤滑剤の噴射角度を広げることができる。これにより、より広範囲に均一に潤滑被膜を形成することができる。
【0025】
また、幅広部146の深さD1は、スリット145の深さD2の40%以上であるため、より確実に、スリット145によって噴射される潤滑剤の噴射角度を広げることができる。これにより、より広範囲に均一に潤滑被膜を形成することができる。
【0026】
また、スリット145の幅W1は、ノズル流路141の幅(直径)W2の25%以上であるため、より確実に、スリット145によって噴射される潤滑剤の噴射角度を広げることができる。これにより、より広範囲に均一に潤滑被膜を形成することができる。
【0027】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0028】
100 潤滑剤噴霧装置
110 潤滑剤供給路
120 不活性ガス供給路
130 潤滑ハンド
131 第1の流路
132 第2の流路
133 第3の流路
140 ノズルチップ
141 ノズル流路
142 基部
143 中央部
144 先端部
145 スリット
146 幅広部