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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】風車ブレード
(51)【国際特許分類】
   F03D 1/06 20060101AFI20250109BHJP
   F03D 13/10 20160101ALI20250109BHJP
【FI】
F03D1/06 A
F03D13/10
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022032215
(22)【出願日】2022-03-03
(65)【公開番号】P2023128104
(43)【公開日】2023-09-14
【審査請求日】2024-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金馬 誠郎
【審査官】菊地 牧子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-282177(JP,A)
【文献】国際公開第2020/160857(WO,A1)
【文献】特表2022-520056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/00
F03D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレード本体と、
前記ブレード本体の根本部分及びハブに連結されるコネクタと、
を備える、風車ブレードであって、
前記コネクタは、風車のロータ中心軸の径方向に延設され外周面に接着剤層が塗布される支持軸部を備え、
前記ブレード本体は、前記支持軸部を覆う支持筒部を備え、
前記支持軸部及び前記支持筒部には、互いに軸合わせされる締結孔が径方向に穿孔され、
前記支持軸部及び前記支持筒部の前記締結孔に締結軸部材が挿入され
前記支持軸部及び前記支持筒部の前記締結孔は、前記ロータ中心軸方向前方側である正圧側に設けられ、
前記ブレード本体は、前記正圧側に配置される前板部と、前記正圧側と対向する負圧側に配置される後板部とを備え、
前記前板部は、前記支持筒部の一部として、前記支持軸部を周方向に部分的に覆う断面C字形状の前板C字筒部を備え、
前記後板部は、前記支持筒部の一部として、前記前板C字筒部とともに前記支持軸部の全周を覆う後板C字筒部を備え、
前記前板C字筒部と前記後板C字筒部は、両者が重ねられる重複部を備え、
前記後板C字筒部の前記重複部に前記締結孔が穿孔され、前記前板C字筒部の前記重複部は前記締結孔を含めて前記後板C字筒部の前記重複部を覆う、
風車ブレード。
【請求項2】
請求項1に記載の風車ブレードであって、
前記支持軸部の前記外周面には、前記支持軸部の径方向に張り出すリングが軸方向に沿って間隔を空けて複数設けられ、
前記リング間に前記接着剤層が塗布される、
風車ブレード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、風力発電に用いられる風車のブレードが開示される。
【背景技術】
【0002】
風力発電に用いられる風車は、ブレード、ハブ、ナセル、及びタワーを備える。風を受けるブレードは風車一台につき複数枚(例えば3枚)設けられる。ハブは、複数枚のブレードの根本を支持するとともにロータシャフトに連結される。ナセルには、ロータシャフトに連結する増速器や発電機が収容される。タワーは、ブレード、ハブ、ナセルを支持する。
【0003】
ブレードは、ブレード本体と、ブレード本体の根本部分とハブとに連結されるコネクタを備える。コネクタとハブとはボルト等により締結される。コネクタとブレード本体との連結手段については種々の手法が提案されている。特にコネクタとブレード本体との連結について、ブレード本体に掛かる遠心力によってコネクタからブレード本体が破断離脱されることを抑制するための連結手段が提案されている。
【0004】
例えば特許文献1では、FRP(繊維強化プラスチック)からブレード本体が成形される。またコネクタは円筒形状であってその外周面から爪が突設される。これらブレード本体とコネクタが一体成形される。具体的にはブレード本体はコネクタの爪を含む部分を埋没させるように成形される。この成形の際に、FRPの強化繊維がコネクタの爪に引っ掛かるようにして巻回される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-99047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、風車ブレードは特に長尺物であることから、工場で一体成形された完成品を風車設置現場(山の尾根等)に運ぶよりも、複数の部品に分かれた状態で設置現場まで運び現地で組み立てる方が、運搬過程における風車ブレードの破損リスクが低減される。
【0007】
そこで本明細書では、コネクタとブレード本体とが分割された分割型のブレードにおいて、ブレード本体に掛かる遠心力に抗してブレード本体をコネクタに保持可能な、風車ブレードが開示される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書では、風車ブレードが開示される。この風車ブレードは、ブレード本体及びコネクタを備える。コネクタは、ブレード本体の根本部分及びハブに連結される。コネクタは、風車のロータ中心軸の径方向に延設され外周面に接着剤層が塗布される支持軸部を備える。ブレード本体は、支持軸部を覆う支持筒部を備える。支持軸部及び支持筒部には、互いに軸合わせされる締結孔が径方向に穿孔される。支持軸部及び支持筒部の締結孔には、締結軸部材が挿入される。
【0009】
上記構成によれば、接着剤層による化学的結合と締結軸部材による機械的結合により、ブレード本体にコネクタが結合される。特に締結軸部材が支持軸部及び支持筒部に径方向に挿入されることで、ブレード本体に遠心力が生じても、締結軸部材のせん断応力により、コネクタからのブレード本体の離脱が抑制される。
【0010】
また上記構成において、支持軸部の外周面には、支持軸部の径方向に張り出すリングが軸方向に沿って間隔を空けて複数設けられてよい。この場合、リング間に接着剤層が塗布される。
【0011】
上記構成によれば、接着剤層の厚さをリングの張出径に設定可能となり、接着剤層の厚さ管理が可能となる。
【0012】
また上記構成において、支持軸部及び支持筒部の締結孔は、ロータ中心軸方向前方側である正圧側に設けられてよい。
【0013】
ブレード本体が風を受けると、ロータ中心軸方向後方にブレード本体が付勢される。このとき、ブレード本体の根元部分である支持筒部の正圧側は、コネクタの支持軸部から離隔(剥離)されるような力を受ける。支持軸部及び支持筒部の締結孔が正圧側に設けられ、当該締結孔に締結軸部材が挿入されることで、締結軸部材の軸力を用いて、支持軸部からの支持筒部の剥離を抑制可能となる。
【0014】
また上記構成において、ブレード本体は、正圧側に配置される前板部と、正圧側と対向する負圧側に配置される後板部とを備えてよい。この場合、前板部は、支持筒部の一部として、支持軸部を周方向に部分的に覆う断面C字形状の前板C字筒部を備える。また、後板部は、支持筒部の一部として、前板C字筒部とともに支持軸部の全周を覆う後板C字筒部を備える。前板C字筒部と後板C字筒部は、両者が重ねられる重複部を備える。さらに、後板C字筒部の重複部に締結孔が穿孔され、前板C字筒部の重複部は締結孔を含めて後板C字筒部の重複部を覆う。
【0015】
上記構成によれば、締結孔及び締結軸部材を前板C字筒部の重複部で覆うことが可能となる。これにより、締結軸部材の露出が避けられ、当該露出による空力特性の低下が防止される。
【発明の効果】
【0016】
本明細書で開示される風車ブレードによれば、コネクタとブレード本体とが分割された分割型のブレードにおいて、ブレード本体に掛かる遠心力に抗してブレード本体をコネクタに保持可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る風車ブレードの全体図を例示する斜視図である。
図2】コネクタを例示する斜視図である。
図3】ブレード本体の後板部を例示する斜視図である。
図4】ブレード本体の前板部を例示する斜視図である。
図5】本実施形態に係る風車ブレードの組立工程(1/5)を例示する斜視図である。
図6】本実施形態に係る風車ブレードの組立工程(2/5)を例示する斜視図である。
図7】本実施形態に係る風車ブレードの組立工程(3/5)を例示する斜視図である。
図8】本実施形態に係る風車ブレードの組立工程(4/5)を例示する斜視図である。
図9】本実施形態に係る風車ブレードの組立工程(5/5)を例示する斜視図である。
図10図9のA-A断面を例示する図である。
図11】本実施形態の別例に係る風車ブレードの、A-A断面を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1図11を参照して、本実施形態に係る風車ブレード10が説明される。なお図1図11において、軸C1、軸C2、軸C3による直交座標系が示される。軸C1は風車のロータ中心軸を示す。軸C2はロータ中心軸に対する径方向軸であって、コネクタ60(図2参照)の支持中心軸を示す。軸C3はロータ中心軸C1及び支持中心軸C2に直交する軸である。
【0019】
また、図1図11では、本実施形態に係る風車ブレード10の各構成が、ハブ100に取り付けられたときの向きや位置を基準に説明される。
【0020】
図1には、本実施形態に係る風車ブレード10及び風車ブレード10が取り付けられたハブ100が例示される。ハブ100は複数枚の風車ブレード10を取り付け可能であって、風車ブレード10の取付用の台座102がロータ中心軸C1の周廻りに沿って等間隔に設けられる。
【0021】
風車ブレード10はブレード本体52及びコネクタ60を備える。図2にはコネクタ60の単体斜視図が例示される。コネクタ60はブレード本体52の根元部分(つまりロータ中心軸C1側部分)及びハブ100に連結される連結部材である。コネクタ60は例えば防錆コーティングが施された鉄等の金属材料から構成される。
【0022】
コネクタ60はフランジ62及び支持軸部64を備える。図1図2を参照して、フランジ62はハブ100との締結部となっており、ハブ100の台座102に着座される。フランジ62は例えば円盤形状であって、その直径がハブ100の台座102に収まるように寸法が定められる。
【0023】
フランジ62にはその厚さ方向に貫通する締結孔63が複数穿孔される。例えばフランジ62の盤面に、周方向に等間隔に複数の締結孔63が設けられる。これらの締結孔63はハブ100の台座102に設けられた締結孔(図示せず)と軸合わせされ、さらにボルト等の締結軸部材が螺入され、これによりコネクタ60がハブ100に締結される。
【0024】
また支持軸部64は、フランジ62の中心から、ロータ中心軸C1の径方向(支持中心軸C2方向)に延設される。支持軸部64は例えば円筒形状または円柱形状であってよい。図2には、両者形状のうち、より軽量な円筒形状の支持軸部64が例示される。
【0025】
支持軸部64はその外周面66に複数のリング67を備える。リング67は外周面66から支持軸部64の径方向に張り出す。リング67は支持軸部64の中心軸C2方向に沿って間隔を空けて(例えば等間隔に)複数設けられる。
【0026】
リング67は後述される接着剤層69(図5参照)の充填量を管理するためのシムまたはスペーサの役割を備える。後述される図5のように、リング67,67間に接着剤層69が形成される。さらにコネクタ60の支持軸部64(図2参照)がブレード本体52(図1参照)の支持筒部50に囲まれる。このとき、リング67が支持筒部50の内面と当接する。この当接により、接着剤の押し出しが抑制され、適正量の接着剤を支持軸部64及び支持筒部50間に保持可能となる。
【0027】
支持軸部64の外周面66には、締結孔68が穿孔される。締結孔68は複数のリング67間に設けられる。締結孔68は支持軸部64の径方向に穿孔される。締結孔68の直径は例えば後述される図6のリベット80(締結軸部材)の軸部82の直径以上かつ頭部84の直径未満となるように定められる。
【0028】
風車ブレード10がハブ100に取り付けられるときに、締結孔68は、ロータ中心軸C1に沿った前方側である、正圧側に設けられる。正圧側とは、ブレード本体52が主に風を受ける側を指す。例えば締結孔68の孔軸は、ロータ中心軸C1と平行になるように、コネクタ60がハブ100に締結される。
【0029】
後述されるように、締結孔68及びブレード本体52の締結孔46(図6参照)には締結軸部材であるリベット80が挿入される。後述される図10にて例示されるように、ブレード本体52の正圧側が風を受けるとブレード本体52は付勢力F1で例示されるように、ロータ中心軸C1に沿って後方に付勢される。このとき、ブレード本体52の根元部分には、支持軸部64から支持筒部50を剥離させるような付勢力F2が掛かる。
【0030】
ここで、締結孔46,68が正圧側に穿孔されしたがってリベット80が正圧面に交差するように挿入されていることから、リベット80からは付勢力F2に抗する軸力が得られる。この軸力により、支持軸部64からの支持筒部50の剥離が抑制される。
【0031】
図2を参照して、締結孔68(及びブレード本体52の締結孔46)は支持中心軸C2に沿って複数設けられる。例えば締結孔68(及び締結孔46)は2個設けられる。
【0032】
図1に戻り、ブレード本体52は、主要部である翼部11と、ロータ中心軸C1側の根本部分である支持筒部50を備える。翼部11の形状は所望の空力特性等をもとに定められる。この形状の詳細については既知であるため詳細は省略される。また翼部11の幅方向(C3軸方向)両端部分及び径方向(C2軸方向)外端部分は例えば平板形状となる。支持筒部50はコネクタ60の支持軸部64を覆う。
【0033】
ブレード本体52はロータ中心軸C1方向に沿って前方側(言い換えると正圧側)の前板部20と、後方側(負圧側)の後板部40を備える。前板部20及び後板部40は例えばともにFRP(繊維強化プラスチック)から構成される。
【0034】
図3には後板部40の単体斜視図が例示される。後板部40は主要部である翼片41に加えて、後板C字筒部42及び後板フランジ48を備える。後板C字筒部42は支持筒部50の一部であって、後述される図6のようにコネクタ60の支持軸部64を周方向に部分的に覆う。
【0035】
例えば後板C字筒部42の孤の中心角(α1+α2)は270°を超過するように定められる。図3の軸C3を基準(0°)に取り時計方向に後板C字筒部42が展開される場合、後板C字筒部42の末端角度範囲α2には重複部44が形成される。例えば重複部44は後板C字筒部42の他の部分と比較して肉薄に形成される。この減肉厚L1は、例えば前板部20(図4参照)の板厚L2と等しくなるように構成される。
【0036】
重複部44は、前板部20の重複部24と重ね合わせられる。重複部24,44は例えばブレード本体52の径方向全長に亘って設けられる。重複部44にはその厚さ方向に締結孔46が穿孔される。
【0037】
締結孔46は、コネクタ60の締結孔68と同数及び同ピッチに設けられる。後述されるように、風車ブレード10の組立工程で、コネクタ60の締結孔68と後板部40の締結孔46とが軸合わせされる。上述のように、コネクタ60は締結孔68が正圧側に面するようにハブ100上に配置されるから、締結孔68と軸合わせされる後板部40の締結孔46も正圧側に面する。
【0038】
図3には、締結孔46の拡大図が例示される。締結孔46は図3の露出面側から順に同軸の大径部46A及び小径部46Bを備える。大径部46Aと小径部46Bの切り替わり部分に着座部46Cが設けられる。
【0039】
小径部46Bの直径は、締結軸部材であるリベット80(図6参照)の軸部82の直径以上且つ頭部84の直径未満となるように定められる。一方、大径部46Aの直径は、リベット80の頭部84の直径を超過するように定められる。また大径部46Aの深さは頭部84の厚さ(軸方向寸法)を超過するように定められる。つまりリベット80を締結孔46に挿入すると、リベット80の頭部84が大径部46Aに収容される。
【0040】
後板C字筒部42の、重複部44とは逆側の端部には、後板フランジ48が設けられる。後板フランジ48は例えば軸C3と平行となるように、言い換えるとロータ中心軸C1と垂直となるように延設される。例えば後板フランジ48は後板部40の径方向全長に亘って延設される。
【0041】
図4には前板部20が例示される。前板部20は主要部である翼片21に加えて、前板C字筒部22及び前板フランジ28を備える。
【0042】
前板C字筒部22は支持筒部50の一部であって、コネクタ60の支持軸部64を周方向に部分的に覆う。前板C字筒部22は、後板C字筒部42とともにコネクタ60の支持軸部64の全周を覆う。
【0043】
例えば前板C字筒部22の孤の中心角(α3+α4)は90°を超過するように定められる。図4の軸C3を基準(0°)に取り反時計方向に前板C字筒部22が展開される場合、前板C字筒部22の末端角度範囲α4には重複部24が形成される。重複部24は、締結孔46を含めて、後板C字筒部42の重複部44を覆う。
【0044】
前板C字筒部22の、重複部24とは逆側の端部には、前板フランジ28が設けられる。前板フランジ28は例えば軸C3と平行となるように、言い換えるとロータ中心軸C1と垂直となるように延設される。例えば前板フランジ28は前板部20の径方向全長に亘って延設される。
【0045】
<風車ブレードの組立工程>
図5図10には、本実施形態に係る風車ブレード10の組立工程が例示される。なお以下では、コネクタ60の締結孔68の軸がロータ中心軸C1と平行に位置決めされた状態での組立工程が例示される。
【0046】
図5を参照して、コネクタ60の外周面66であって、リング67間の領域に接着剤層69が塗布される。例えば接着剤層69の厚さは、リング67の厚さと等しくなるように定められる。
【0047】
図6を参照して、コネクタ60の支持軸部64が後板部40の後板C字筒部42に一部覆われる(咥え込まれる)。この時、後板C字筒部42の締結孔46とコネクタ60の締結孔68が軸合わせされる。
【0048】
さらに締結孔46,68に締結軸部材であるリベット80が挿入される。図7に例示されるように、後板部40の締結孔46(図3参照)の大径部46A内にリベット80の頭部84が収容される。
【0049】
リベット80の軸部82の先端部が潰されることで、図10に例示されるように後板部40と支持軸部64とが機械的結合される。また、接着剤層69により、後板部40と支持軸部64とが化学的結合される。
【0050】
ここで、リベット80のカシメ力(締結力)が強い場合であっても、支持軸部64の外周面66に設けられたリング67が後板部40の内周面と当接し、それ以上の後板部40の進入(径方向内側への進入)が規制される。その結果、接着剤層69が外部に押し出されることが抑制される。
【0051】
次に図8を参照して、後板フランジ48及び重複部44に接着剤層49が塗布される。上述のように、後板フランジ48及び重複部44は後板部40の径方向(長手方向、C2軸方向)全長に亘って延設されることから、後板部40の径方向全長に亘って接着剤層49が塗布される。
【0052】
さらに図8図9を参照して、後板部40の重複部44と前板部20の重複部24とが重ね合わせられ、また後板フランジ48及び前板フランジ28とが重ね合わせられる。
【0053】
図10には、図9に例示されるブレード本体52の完成品の、A-A断面図(C1ー-C2断面図)が例示される。上述のように、締結軸部材であるリベット80により、後板部40と支持軸部64とが機械的結合される。また、接着剤層69により、後板部40と支持軸部64とが化学的結合される。ブレード本体52の回転に伴い、ブレード本体52には遠心力が加わる。このとき、締結軸部材であるリベット80にせん断応力が働き、コネクタ60からの後板部40の破断離脱が抑制される。
【0054】
また、前板部20は後板部40と径方向全長に亘って接着剤層49によって化学的結合されていることから、後板部40から前板部20の剥離が抑制される。
【0055】
さらに、ブレード本体52の正圧側(紙面右側)が風を受ける際に、付勢力F1で示されるように、ブレード本体52の翼部11(図1参照)はロータ中心軸C1方向後方に付勢される。このとき、ブレード本体52の根元部分である支持筒部50の正圧側には、支持軸部64から剥離されるような付勢力F2が掛かる。このような付勢力F2に対して、締結軸部材であるリベット80の軸力が働き、上記剥離が抑制される。
【0056】
また、リベット80の頭部84が前板部20に覆われるため、リベット80の正圧側への露出が避けられる。その結果、リベット80によるブレード本体52の空力特性の低下が避けられる。
【0057】
<本実施形態の別例>
上述した実施形態では、締結軸部材としてリベット80が用いられたが、本実施形態に係る風車ブレード10は、この形態に限定されない。要するに締結軸部材は、後板部40に遠心力が掛かったときにせん断応力で後板部40の移動(抜け)を押し留め、また軸力により支持軸部64からの後板部40の剥離が避けられるような部材であればよい。
【0058】
例えば図11に例示されるように、締結軸部材として、リベット80の代わりにボルト180が用いられてもよい。またボルト180とともにナット186が用いられてよい。この場合、例えばナット186は支持軸部64の内面に溶接されたウェルドナットであってよい。また、後板部40の締結孔46の大径部46Aの直径は、ボルト180の頭部184の直径を超過し、なおかつ締結工具が挿入可能な寸法に定められる。
【符号の説明】
【0059】
10 風車ブレード、11 翼部、20 前板部、22 前板C字筒部、24 前板部の重複部、28 前板フランジ、40 後板部、42 後板C字筒部、44 後板部の重複部、46 後板部の締結孔、46A 大径部、46B 小径部、46C 着座部、48 後板フランジ、49,69 接着剤層、50 支持筒部、52 ブレード本体、60 コネクタ、62 フランジ、64 支持軸部、66 支持軸部の外周面、67 リング、68 支持軸部の締結孔、80 リベット(締結軸部材)、100 ハブ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11