(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】遠隔運転システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20250109BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20250109BHJP
G08G 1/123 20060101ALI20250109BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G08G1/00 X
G08G1/09 D
G08G1/09 V
G08G1/123 A
G08G1/16 D
(21)【出願番号】P 2022050163
(22)【出願日】2022-03-25
【審査請求日】2024-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100187311
【氏名又は名称】小飛山 悟史
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 康佑
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 博文
(72)【発明者】
【氏名】須田 理央
【審査官】池田 匡利
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-068118(JP,A)
【文献】特開2021-068984(JP,A)
【文献】特開2017-117256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔ドライバが遠隔運転対象車両の遠隔運転を行うための遠隔運転システムであって、
前記遠隔ドライバの操作情報を入力する遠隔運転インターフェースと、
前記遠隔運転インターフェースから無線通信により前記遠隔ドライバの操作情報を取得する操作情報取得部と、前記遠隔運転対象車両の周囲の画像情報を取得するためのカメラと、前記車両の周囲の音情報を取得するためのマイクと、前記画像情報及び前記音情報を前記遠隔運転インターフェースに送信する車両情報送信部と、前記遠隔ドライバの操作情報に基づいて前記遠隔運転対象車両に遠隔運転指示を送信する車両指示部と、を有するポータブル遠隔運転キットと、
前記ポータブル遠隔運転キットを運搬する遠隔運転用ドローンと、
を備える遠隔運転システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔運転システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遠隔運転システムに関する技術文献として、特開平10―145777号公報が知られている。この公報には、車両に複数台のカメラを搭載し、カメラの映像を見ながら遠隔操作するシステムが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、遠隔運転の対象となる車両の全てに遠隔運転用のカメラやマイクなどの設備を搭載すると車両ごとに多数の設備が必要になり車両コストが増大すると言う問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、遠隔ドライバが遠隔運転対象車両の遠隔運転を行うための遠隔運転システムであって、遠隔ドライバの操作情報を入力する遠隔運転インターフェースと、遠隔運転インターフェースから無線通信により遠隔ドライバの操作情報を取得する操作情報取得部、遠隔運転対象車両の周囲の画像情報を取得するためのカメラ、遠隔運転対象車両の周囲の音情報を取得するためのマイク、画像情報及び音情報を遠隔運転インターフェースに送信する車両情報送信部、及び、遠隔ドライバの操作情報に基づいて遠隔運転対象車両に遠隔運転指示を送信する車両指示部を有するポータブル遠隔運転キットと、ポータブル遠隔運転キットを運搬する遠隔運転用ドローンと、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、車両に遠隔運転用のカメラやマイク、遠隔運転インターフェースとの直接通信機器などの設備を備えなくても遠隔ドライバによる車両の遠隔運転を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係る遠隔運転システムを説明するための図である。
【
図2】ポータブル遠隔運転キットが遠隔運転対象車両に装着された状態を説明するための図である。
【
図3】ポータブル遠隔運転キットの構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、一実施形態に係る遠隔運転システムを説明するための図である。
図1に示す遠隔運転システムは、遠隔運転対象車両Mの遠隔運転を実現するためのシステムである。遠隔運転対象車両Mとは、この遠隔運転システムにより遠隔運転可能となる機能を有する車両である。
【0010】
図1に示すように、遠隔運転システムは、遠隔ドライバRが遠隔運転を行う遠隔運転インターフェース1と、ポータブル遠隔運転キット2と、遠隔運転用ドローン3と、を備えている。
【0011】
遠隔運転インターフェース1は、遠隔ドライバRが遠隔運転対象車両Mの遠隔運転に用いるインターフェースである。遠隔運転インターフェース1には、情報提供部及び操作入力部が設けられている。情報提供部は、遠隔運転対象車両Mの周辺の画像情報及び音情報を遠隔ドライバRに提供する機器である。情報提供部は、遠隔ドライバに対して画像情報を提供するディスプレイと音情報を提供するスピーカとを有している。
【0012】
操作入力部は、遠隔ドライバRにより遠隔運転操作が入力される機器である。操作入力部は、例えばステアリングホイール、アクセルペダル、及びブレーキペダルを模した各種の入力デバイスから構成されている。操作入力部は、遠隔運転用ドローン3を操作可能であってもよい。操作入力部は、遠隔運転用ドローン3を操作するためのコントローラーを別に備えていてもよく、遠隔運転用ドローン3と遠隔運転対象車両Mを同じデバイスにより操作する態様であってもよい。操作入力部は、キーボードやマウス、又はタッチパネルから構成されていてもよい。
【0013】
ポータブル遠隔運転キット2は、車両とは別体の装置であり、遠隔運転対象車両Mと通信接続することで遠隔運転対象車両Mの遠隔運転を実現する。ポータブル遠隔運転キット2は、遠隔運転対象車両Mに対して着脱可能に構成されていてもよい。
図2は、ポータブル遠隔運転キット2が遠隔運転対象車両Mに装着された状態を説明するための図である。
【0014】
図2に示すように、ポータブル遠隔運転キット2が遠隔運転対象車両Mに装着された状態で遠隔運転対象車両Mと通信を行うことにより、ポータブル遠隔運転キット2を介して遠隔ドライバRによる遠隔運転を行うことが可能である。ポータブル遠隔運転キット2は、遠隔運転対象車両Mと無線通信が行われてもよく、遠隔運転対象車両Mに装着される場合には通信部の連結により有線通信が行われてもよい。ポータブル遠隔運転キット2の詳細については後述する。
【0015】
遠隔運転用ドローン3は、ポータブル遠隔運転キット2を運搬するドローン(小型無人航空機)である。遠隔運転用ドローン3には周知のドローンの構成を採用することができる。遠隔運転用ドローン3は、遠隔ドライバにより遠隔運転インターフェース1から遠隔操作可能に構成されていてもよい。遠隔運転用ドローン3は、車両とは別の遠隔ドライバにより遠隔操作可能に構成されていてもよい。遠隔運転用ドローン3は、ポータブル遠隔運転キット2を運搬して、遠隔運転を行う遠隔運転対象車両Mにポータブル遠隔運転キット2を装着させてもよい。遠隔運転用ドローン3とポータブル遠隔運転キット2は一体の装置として構成されていてもよい。
【0016】
次に、ポータブル遠隔運転キット2の構成について
図3を参照して説明する。
図3は、ポータブル遠隔運転キット2の構成の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、ポータブル遠隔運転キット2は、演算処理を行う遠隔運転演算ユニット30を有している。
【0017】
遠隔運転演算ユニット30は、例えばCPU[Central Processing Unit]とROM[Read OnlyMemory]、RAM[Random Access Memory]やHDD[Hard Disk Drive]などの記憶部を有する電子制御ユニットである。遠隔運転演算ユニット30では、例えば、記憶部に記憶されているプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。
【0018】
遠隔運転演算ユニット30には、カメラ21、マイク22、及び通信部23が接続されている。カメラ21は、遠隔運転対象車両Mの周囲の画像情報を取得するためのデバイスである。カメラ21は、遠隔運転対象車両Mの前方だけではなく、複数方向を撮像するために複数設けられていてもよい。マイク22は、遠隔運転対象車両Mの周囲の音情報を取得するためのデバイスである。マイク22も異なる方向に向けて複数設けられていてもよい。
【0019】
通信部23は、遠隔運転インターフェース1及び遠隔運転対象車両Mと通信を行うためのデバイスである。通信部23は、遠隔運転インターフェース1と無線通信可能に構成されている。通信部23は、例えばLTE[Long Term Evolution]通信などのグローバル通信により遠隔運転インターフェース1と接続されている。
【0020】
通信部23は、遠隔運転対象車両Mと通信可能に構成されており、例えばWiFiなどのローカル通信により遠隔運転対象車両Mと接続されている。通信部23は、ポータブル遠隔運転キット2の遠隔運転対象車両Mへの装着により有線で接続される態様であってもよい。
【0021】
続いて、遠隔運転演算ユニット30の機能的構成について説明する。
図3に示すように、遠隔運転演算ユニット30は、操作情報取得部31、車両情報送信部32、及び車両指示部33を有している。
【0022】
操作情報取得部31は、通信部23を介して遠隔運転インターフェース1から遠隔ドライバの操作情報を取得する。操作情報取得部31は、例えば操作情報として、操舵量、アクセルペダル踏み込み量、ブレーキペダル踏み込み量を取得する。操作情報取得部31は、操作情報として、方向指示器の点灯操作を取得してもよい。操作情報取得部31は、40km/hで直進、右折、左折などの指示として操作情報を受け取ってもよい。
【0023】
車両情報送信部32は、通信部23を介して遠隔運転対象車両Mの周囲の状況に関する車両周辺の情報を遠隔運転インターフェース1(遠隔ドライバR)に送信する。車両情報送信部32は、カメラ21の取得した遠隔運転対象車両Mの周囲の画像情報とマイク22の取得した遠隔運転対象車両Mの周囲の音情報とを遠隔運転インターフェース1に送信する。車両情報送信部32は、遠隔運転対象車両Mから車速情報や燃料情報(又はバッテリー残量情報)を取得して、車両状態の情報として遠隔運転インターフェース1に送信してもよい。車両情報送信部32は、車両状態の情報として、加速度情報や操舵角情報を含めてもよい。
【0024】
車両指示部33は、遠隔ドライバRの操作情報に基づいて遠隔運転対象車両Mに遠隔運転指示を送信する。車両指示部33は、遠隔ドライバRの操作情報をそのまま遠隔運転指示として遠隔運転対象車両Mに送信してもよい。車両指示部33は、遠隔運転対象車両Mの周囲の画像情報から制限速度の標識を認識した場合には、速度上限を設けてもよい。車両指示部33は、遠隔ドライバRのアクセルペダル踏み込み量をそのまま反映すると遠隔運転対象車両Mの車速が速度上限を超える場合、車速が速度上限を超えないようにアクセルペダル踏み込み量を制限した遠隔運転指示を行ってもよい。
【0025】
以上説明した本実施形態に係る遠隔運転システムによれば、ポータブル遠隔運転キット2に機能を集約することで、遠隔運転対象車両Mに遠隔運転用のカメラやマイク、遠隔運転インターフェースとの直接通信設備を備えなくても、遠隔運転用ドローン3で運搬されたポータブル遠隔運転キット2と通信することで遠隔ドライバRによる遠隔運転を実現することができる。これにより遠隔運転が必要な状況下にある遠隔運転対象車両Mにポータブル遠隔運転キット2を搭載することで遠隔運転が可能となるため、遠隔運転対象車両Mに遠隔運転用の設備を備える必要がなくなり、車両コストの低減に寄与する。
【0026】
また、この遠隔運転システムによれば、遠隔ドライバRが遠隔運転用ドローン3を操作して、遠隔運転を行いたい遠隔運転対象車両M上に着陸してドッキングすることで、ポータブル遠隔運転キット2を備えた遠隔運転用ドローン3を介して遠隔運転を実現できる。
【0027】
このような遠隔運転システムは遠隔運転サービスの課題を解決する。具体的に、レンタカー配送(回送)サービスにおいて、たいていの区間はユーザーが運転席で運転するため、遠隔運転が必要とされる稼働時間は少ない。また、鉱山機械の遠隔運転において、バックホーとダンプカーはひとりで担当できるが同時に動かすことはない。このため、必要な時に必要なモビリティ(遠隔運転対象車両M)にだけ、ポータブル遠隔運転キット2を着脱可能とすればコスト抑制と機能付加を両立可能である。一つのポータブル遠隔運転キット2で複数の種類も異なる遠隔運転対象車両Mを遠隔運転できることで、遠隔運転サービスの可能性が拡大する。
【0028】
遠隔運転サービスの可能性の拡大として、例えば物流への適用が考えられる。自動運転トラック(遠隔運転対象車両M)が高速道路の出口まで自動運転された後、高速道路の出口で係員又は遠隔運転用ドローン3の操作により自動運転トラックにポータブル遠隔運転キット2を装着し、物流倉庫まで遠隔運転で遠隔運転することが考えられる。また、物流倉庫で小型モビリティ(遠隔運転対象車両M)に荷物を移し替えると共に小型モビリティにポータブル遠隔運転キット2を装着し直すことも考えられる。これにより、複数の異なる車両を遠隔ドライバRが移動することなく運転可能となる。なお、遠隔ドライバRの運転資格に応じて適時最適な遠隔ドライバRを割り当てることで物流の効率向上を図ることも考えられる。
【0029】
また、空港駐車場における遠隔運転の活用が考えられる。入庫時には、お客様は空港入口で遠隔運転対象車両Mを乗り捨てし、空港入口で係員又は遠隔運転用ドローン3により遠隔運転対象車両Mにポータブル遠隔運転キット2を装着し、遠隔ドライバRが遠隔運転対象車両Mを遠隔運転で駐車場まで運転し、駐車場内の係員がポータブル遠隔運転キット2を取り外し駐車枠まで短距離運転を行うことが考えられる。
【0030】
出庫時には、お客様が空港入口で待機し、駐車場内の係員又は遠隔運転用ドローン3によりお客様の遠隔運転対象車両Mにポータブル遠隔運転キット2を装着し、遠隔ドライバRが遠隔運転対象車両Mを空港入口まで遠隔運転し、空港入口で係員又は遠隔運転用ドローン3により遠隔運転対象車両Mからポータブル遠隔運転キット2を回収することが考えられる。これにより、人の移動を少なくして空港などの施設の駐車場利用の効率化を図ることができる。
【0031】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0032】
1…遠隔運転インターフェース、2…ポータブル遠隔運転キット、3…遠隔運転用ドローン、21…カメラ、22…マイク、23…通信部、30…遠隔運転演算ユニット、31…操作情報取得部、32…車両情報送信部、33…車両指示部、M…遠隔運転対象車両、R…遠隔ドライバ。