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  • 特許-車両前部構造 図1
  • 特許-車両前部構造 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】車両前部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20250109BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B62D25/08 C
B62D25/20 C
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022074830
(22)【出願日】2022-04-28
(65)【公開番号】P2023163734
(43)【公開日】2023-11-10
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉本 雅則
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0370569(US,A1)
【文献】特開2021-104762(JP,A)
【文献】特開2005-186727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部の車両幅方向両側に配置され、前後方向に延びて、キャビンのフロアを支持するフロントサイドメンバと、
前記フロアの下方に配置される高電圧部品と、を備える車両前部構造であって、
後端部が前記フロントサイドメンバに結合され、前記フロントサイドメンバから前方かつ下方へ向かって斜めに延びる支持部材を備え
前記支持部材の前端が、前記フロントサイドメンバの前端よりも前方に配置されているため、車両が前面衝突した際に、前記フロントサイドメンバへ前方から荷重が加わる前に、前記支持部材へ前方から荷重が加わり、前記支持部材から前記フロントサイドメンバを上側へ屈曲させる方向へ荷重が加わることを特徴とする車両前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前後方向に延びるフロントサイドメンバを車両幅方向両側に備える車両前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、前後方向に延びるフロントサイドメンバを車両幅方向両側に備える車両前部構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-306171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャビンのフロアの下方に走行用電気モータなどの高電圧部品が配置される場合、キャビンのフロアと高電圧部品の間の隙間が狭いと、車両が前面衝突した際にフロントサイドメンバが下側へ向かって屈曲するように変形することにより、フロントサイドメンバに支持されているキャビンのフロアが高電圧部品に接触して高電圧部品を損傷させることがある。
【0005】
そこで、本発明は、車両が前面衝突した際にフロントサイドメンバが下側へ向かって屈曲するように変形することを抑制し、キャビンのフロアの下方に配置された高電圧部品の損傷を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両前部構造は、車両前部の車両幅方向両側に配置され、前後方向に延びて、キャビンのフロアを支持するフロントサイドメンバと、前記フロアの下方に配置される高電圧部品と、を備える車両前部構造であって、後端部が前記フロントサイドメンバに結合され、前記フロントサイドメンバから前方かつ下方へ向かって斜めに延びる支持部材を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明は、車両が前面衝突した際に、支持部材からフロントサイドメンバへ上向きの荷重が伝達されるため、フロントサイドメンバが下側へ向かって屈曲するように変形することを抑制し、キャビンのフロアの接触による高電圧部品の損傷を防ぐことができる。
【0008】
本発明に係る車両前部構造は、前記支持部材の前端が、前記フロントサイドメンバの前端よりも前方に配置されているため、車両が前面衝突した際に、前記フロントサイドメンバへ前方から荷重が加わる前に、前記支持部材へ前方から荷重が加わり、前記支持部材から前記フロントサイドメンバを上側へ屈曲させる方向へ荷重が加わることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、車両が前面衝突した際にフロントサイドメンバが下側へ向かって屈曲するように変形することを抑制し、キャビンのフロアの下方に配置された高電圧部品の損傷を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態の車両前部構造の側面図である。
図2】本実施形態の車両前部構造の前面から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1及び図2を参照しながら、本実施形態の車両前部構造10について説明する。図1及び図2に示す矢印FR、矢印UP、矢印RHは、車両の前方向(進行方向)、上方向、右方向をそれぞれ示している。また、各矢印FR、UP、RHの反対方向は、それぞれ車両後方向、下方向、左方向を示す。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両左右方向(車両幅方向)の左右、車両上下方向の上下を示すものとする。
【0012】
図1は車両前部構造10の側面図であり、図2は車両前部構造10の前面図である。図1及び図2に示すように、車両前部構造10は、車両前部の骨格部材として、前後方向に延びるフロントサイドメンバ1を車両幅方向両側に備えている。フロントサイドメンバ1は、前端1aから後方へ向かって延びる水平部1bと、水平部1bの後端から後方かつ下方へ向かって斜めに延びる傾斜部1cを有する。フロントサイドメンバ1はキャビンのフロア2と結合しており、フロア2を車両幅方向両側で下から支持している。
【0013】
車両前部構造10は、フロア2の下方に配置される高電圧部品3を備える。高電圧部品3は、走行用電気モータ及びインバータ等の回路で構成される。図2に示すように、フロア2と高電圧部品3の上端との間には、上下方向の幅が極端に狭い隙間Gが確保されている。
【0014】
車両前部構造10は、フロントサイドメンバ1を下側から支える骨格部材として支持部材4を備える。支持部材4は、フロントサイドメンバ1の水平部1bの前後方向中央部に結合されており、結合位置から前方かつ下方へ向かって斜めに延びている。図1に示すように、支持部材4は、前端部4a、中部4b及び後端部4cで構成され、後端部4cがフロントサイドメンバ1の水平部1bに結合されている。
【0015】
支持部材4の前端部4aの前端4dは、フロントサイドメンバ1の前端1aよりも前方に配置されている。そのため、車両が前面衝突した際には、フロントサイドメンバ1へ前方から荷重が加わる前に、図1に矢印A1で示すように支持部材4へ前方から荷重が加わる。すると、図1に矢印A2で示すように荷重が伝達され、図1に矢印A3で示すようにフロントサイドメンバ1を上側へ屈曲させる方向へ荷重が加わることになる。そのため、車両前部構造10では、車両の前面衝突によりフロントサイドメンバ1が変形するとしても、常にフロントサイドメンバ1が上側へ向かって屈曲するように変形し、フロントサイドメンバ1が下側へ向かって屈曲するように変形することを防止できる。そして、このようにフロントサイドメンバ1が下側へ向かって屈曲するように変形することを防止できるため、車両前部構造10は、車両が前面衝突した際に、フロントサイドメンバ1によって支持されたフロア2が側面視で下側へ向かって屈曲するように変形することを抑制し、フロア2が高電圧部品3へ接触して高電圧部品3を損傷させることを防止できる。
【0016】
また、車両前部構造10は、従来技術の車両前部構造へ支持部材4を追加するだけでフロントサイドメンバ1が下側へ向かって屈曲するように変形することを防止する効果を生じるため、フロントサイドメンバ1の板厚の増加や材質の変更により強度を向上させてフロントサイドメンバ1の屈曲を抑制する手法と比較して、質量やコストの増加を最小限に抑えることができる。
【0017】
<実施形態の補足>
本開示の車両前部構造は、上述した形態に限定されず、本開示の要旨の範囲内において種々の形態にて実施できる。例えば、フロアの下方に配置される高電圧部品は走行用電気モータやインバータ等に限らず、空調用のコンプレッサやヒータなど他の部品であってもよい。
【符号の説明】
【0018】
1 フロントサイドメンバ、1a 前端、1b 水平部、1c 傾斜部、2 フロア、3 高電圧部品、4 支持部材、4a 前端部、4b 中部、4c 後端部、4d 前端、10 車両前部構造。
図1
図2