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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】電池パックおよび車両
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/658 20140101AFI20250109BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20250109BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20250109BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20250109BHJP
   H01M 10/643 20140101ALI20250109BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20250109BHJP
   H01M 10/6555 20140101ALI20250109BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20250109BHJP
   H01M 50/202 20210101ALI20250109BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M50/249
H01M50/291
H01M10/625
H01M10/643
H01M10/647
H01M10/6555
H01M10/613
H01M50/202 501C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022086303
(22)【出願日】2022-05-26
(65)【公開番号】P2023173807
(43)【公開日】2023-12-07
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 遼
(72)【発明者】
【氏名】廣江 佳彦
(72)【発明者】
【氏名】松下 太朗
【審査官】山口 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-211013(JP,A)
【文献】特開2018-001963(JP,A)
【文献】特開2018-195549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/658
H01M 50/249
H01M 50/291
H01M 10/625
H01M 10/643
H01M 10/647
H01M 10/6555
H01M 10/613
H01M 50/202
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に互いに積層される複数の電池セルと、
互いに隣り合う電池セル同士の間に設けられる複数のセパレータ部と、を備え、
前記複数の電池セルの各々は、
前記第1方向と直交する第2方向において電池セルの一方端に位置する第1端部と、
前記第2方向において電池セルの他方端に位置する第2端部と、
前記第1端部と前記第2端部との間に設けられる中間部とを含み、
前記複数のセパレータ部の各々は、
前記第1方向に互いに隣り合う前記中間部同士の間に設けられる断熱部材と、
前記第1方向に互いに隣り合う前記第1端部同士の間において前記断熱部材とは別個に設けられる第1遮蔽板とを含み、
前記中間部は、前記第1方向における幅が一定である平坦部を含み、
前記第1端部は、前記第1方向において前記平坦部よりも幅が小さい幅狭部を含み、
前記第1遮蔽板は、前記第1方向に互いに隣り合う前記幅狭部同士の間に設けられる、電池パック。
【請求項2】
前記複数の電池セルを収容するケースをさらに備え、
前記第1遮蔽板は、前記ケースと接触している、請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記第1遮蔽板は、前記複数の電池セルのうち前記第1方向の中央に設けられる電池セル側を向くように設けられる第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有し、
前記第2面の放射率は、前記第1面の放射率よりも大きい、請求項1または2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記第1方向に互いに隣り合う前記第1遮蔽板と前記第1端部とは、互いに離間している、請求項1または2に記載の電池パック。
【請求項5】
前記複数のセパレータ部の各々において、前記断熱部材と前記第1遮蔽板とは互いに接触している、請求項1または2に記載の電池パック。
【請求項6】
前記複数のセパレータ部の各々は、前記第1方向に互いに隣り合う前記第2端部同士の間において前記断熱部材とは別個に設けられる第2遮蔽板を含む、請求項1または2に記載の電池パック。
【請求項7】
前記電池パックは、月面において走行する探査車に搭載されている、請求項1または2に記載の電池パック。
【請求項8】
請求項1に記載の電池パックが搭載されている、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池パックおよび車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-187859号公報(特許文献1)には、複数の二次電池が所定の方向に並んで配置されている電池パックが開示されている。電池パックは、上記所定の方向に隣り合う二次電池の間に配置される断熱シートを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-187859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、断熱シート(断熱部材)が大きくなるのを抑制することについて何ら考慮されていない。電池パックの軽量化やコスト低減のために断熱部材を小さくすることは有効である。したがって、断熱シートが大きくなるのを抑制することが望まれている。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、断熱部材が大きくなるのを抑制することが可能な電池パックおよび車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の局面に係る電池パックは、第1方向に互いに積層される複数の電池セルと、互いに隣り合う電池セル同士の間に設けられる複数のセパレータ部と、を備える。複数の電池セルの各々は、第1方向と直交する第2方向において電池セルの一方端に位置する第1端部と、第2方向において電池セルの他方端に位置する第2端部と、第1端部と第2端部との間に設けられる中間部とを含む。複数のセパレータ部の各々は、第1方向に互いに隣り合う中間部同士の間に設けられる断熱部材と、第1方向に互いに隣り合う第1端部同士の間において断熱部材とは別個に設けられる第1遮蔽板とを含む。
【0007】
本開示の第1の局面に係る電池パックでは、上記のように、複数のセパレータ部の各々は、第1方向に互いに隣り合う中間部同士の間に設けられる断熱部材と、第1方向に互いに隣り合う第1端部同士の間において断熱部材とは別個に設けられる第1遮蔽板とを含む。これにより、第1方向に隣り合う第1端部同士の間にも断熱部材が設けられる場合に比べて、断熱部材が大きくなる(断熱部材の量が増加する)のを抑制することができる。
【0008】
上記第1の局面に係る電池パックにおいて、好ましくは、中間部は、第1方向における幅が一定である平坦部を含む。第1端部は、第1方向において平坦部よりも幅が小さい幅狭部を含む。第1遮蔽板は、第1方向に互いに隣り合う幅狭部同士の間に設けられる。このように構成すれば、幅狭部同士の間に断熱部材を敷き詰める(幅狭部同士の間を断熱部材により充填する)場合に比べて、断熱部材が大きくなる(断熱部材の量が増加する)のをより抑制することができる。
【0009】
上記第1の局面に係る電池パックにおいて、好ましくは、複数の電池セルを収容するケースをさらに備える。第1遮蔽板は、ケースと接触している。このように構成すれば、電池セルからの輻射熱により第1遮蔽板の温度が上昇した場合に、第1遮蔽板の熱をケースに容易に移動させる(逃がす)ことができる。なお、放射率とは、物体からの熱放射(熱の移動)のしやすさを表している。
【0010】
上記第1の局面に係る電池パックにおいて、好ましくは、第1遮蔽板は、複数の電池セルのうち第1方向の中央に設けられる電池セル側を向くように設けられる第1面と、第1面とは反対側の第2面とを有する。第2面の放射率は、第1面の放射率よりも大きい。ここで、複数の電池セルの各々(中央の電池セル以外の電池セル)から見て、第1方向の中央に設けられる電池セル側に設けられる電池セルの個数は、反対側に設けられる電池セルの個数よりも多くなる。具体的には、5つの電池セルが左右方向に並んでいる場合に、たとえば左から2番目の電池セルから見て、中央側(右側)には3つの電池セルが設けられているのに対し、反対側(左側)には1つの電池セルしか設けられていない。したがって、複数の電池セルの各々から見て、第1方向の中央に設けられる電池セル側には、反対側に比べてより大きい熱容量(電池セルの熱容量)が設けられている。そこで、第2面の放射率を第1面の放射率よりも大きくすることにより、熱容量がより大きい中央側に、熱をより効率的に移動させることができる。
【0011】
上記第1の局面に係る電池パックにおいて、好ましくは、第1方向に互いに隣り合う第1遮蔽板と第1端部とは、互いに離間している。このように構成すれば、第1遮蔽板の熱が電池セル(第1端部)に移動するのを抑制することができる。
【0012】
上記第1の局面に係る電池パックにおいて、好ましくは、複数のセパレータ部の各々において、断熱部材と第1遮蔽板とは互いに接触している。このように構成すれば、電池セルから断熱部材に移動した熱を第1遮蔽板に移動させる(逃がす)ことができる。
【0013】
上記第1の局面に係る電池パックにおいて、好ましくは、複数のセパレータ部の各々は、第1方向に互いに隣り合う第2端部同士の間において断熱部材とは別個に設けられる第2遮蔽板を含む。このように構成すれば、第1方向に隣り合う第2端部同士の間にも断熱部材が設けられる場合に比べて、断熱部材が大きくなる(断熱部材の量が増加する)のを抑制することができる。
【0014】
上記第1の局面に係る電池パックにおいて、好ましくは、電池パックは、月面において走行する探査車に搭載されている。ここで、月面には空気がないので、電池セルからの放熱量は地上に比べて小さい。電池セルからの放熱量が小さい分、電池セルから隣り電池セルへの熱の移動が比較的起こりやすい。言い換えると、互いに隣り合う電池セル間において放熱経路が形成されやすい。したがって、第1遮蔽板により第1端部同士の間における熱の移動を抑制することは、月面において走行する探査車に上記電池パックが搭載される場合において電池セルの温度上昇を抑制するのに、特に有効である。
【0015】
本開示の第2の局面に係る車両は、上記第1の局面に係る電池パックが搭載されている。これにより、第1方向に隣り合う第1端部同士の間にも断熱部材が設けられる場合に比べて、断熱部材が大きくなる(断熱部材の量が増加する)のを抑制することが可能な車両を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、断熱部材が大きくなるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態による電池パックが搭載されている月面ローバを示す図である。
図2】一実施形態による電池パックの構成を示す断面図である。
図3】一実施形態による電池セルの湾曲部近傍の部分拡大図である。
図4】一実施形態による中央の電池セルの湾曲部近傍の部分拡大図である。
図5】一実施形態の第1変形例による第1遮蔽板の構成を示す断面図である。
図6】一実施形態の第2変形例による第1遮蔽板の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中、同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0019】
図1は、本実施形態に係る月面ローバ1の構成を示す図である。月面ローバ1は、月面2において走行する。月面ローバ1は、月面2を探査するための車両である。なお、月面ローバ1は、本開示の「探査車」および「車両」の一例である。
【0020】
月面ローバ1は、内部に電池パック100が搭載されている。月面ローバ1は、電池パック100の電力により走行する。
【0021】
図2に示すように、電池パック100は、互いに積層される複数の電池セル10を備える。図2では、5つの電池セル10がX方向に沿って並んで配置されている例が図示されている。なお、複数の電池セル10は、互いに同じ構成を有する。X方向は、本開示の「第1方向」の一例である。
【0022】
複数の電池セル10の各々は、平坦部11と、湾曲部12と、湾曲部13とを含む。湾曲部12は、電池セル10のY1側の端部に位置する。湾曲部13は、電池セル10のY2側の端部に位置する。平坦部11は、湾曲部12と湾曲部13との間に設けられている。なお、湾曲部12と湾曲部13とは、互いに同じ形状を有している。また、Y方向は、X方向と直交する方向であり、本開示の「第2方向」の一例である。また、平坦部11は、本開示の「中間部」の一例である。また、湾曲部12および湾曲部13は、それぞれ、本開示の「第1端部」および「第2端部」の一例である。また、湾曲部12は、本開示の「幅狭部」の一例である。
【0023】
平坦部11は、X方向の幅W1が一定である。また、湾曲部12のX方向における幅W2は、平坦部11の幅W1よりも小さい。また、湾曲部13のX方向における幅W3は、平坦部11の幅W1よりも小さい。
【0024】
湾曲部12および湾曲部13の各々は、XY平面に沿った断面視(図2に示す断面視)において、半円形状を有する。これにより、電池セル10が角形形状を有する場合に比べて、電池セル10の機械的強度を高くすることが可能であるとともに電池セル10を軽量化することが可能である。なお、Y方向は、X方向に直交する方向である。
【0025】
また、電池パック100は、複数の電池セル10を収容するケース20を備える。ケース20は、複数の電池セル10のY1側に設けられる上側ケース21を含む。また、ケース20は、複数の電池セル10のY2側に設けられる下側ケース22を含む。上側ケース21および下側ケース22の各々は、X方向に沿って延びるように設けられている。複数の電池セル10の各々は、下側ケース22と接触している。上側ケース21および下側ケース22の各々は、板状に形成されている。なお、ケース20(21、22)は、たとえばアルミニウムにより形成されている。
【0026】
複数の電池セル10の各々と下側ケース22とは、熱伝導体30を介して接触している。熱伝導体30は、電池セル10と下側ケース22との間で熱を伝導させる。熱伝導体30は、たとえば熱抵抗が比較的低く(熱伝導性が比較的高く)かつ弾性(粘性)が比較的高い樹脂等により構成されている。熱伝導体30の弾性(粘性)が比較的高いことによって、複数の電池セル10間に大きさや配置位置等のばらつきがあった場合にも、熱伝導体30により上記ばらつきを吸収することが可能である。
【0027】
また、電池パック100は、互いに隣り合う電池セル10同士の間に設けられる複数のセパレータ部40を備える。複数のセパレータ部40の各々は、断熱部材41と、第1遮蔽板42と、第2遮蔽板43とを含む。第1遮蔽板42および第2遮蔽板43の各々は、断熱部材41とは別個に設けられている。なお、第1遮蔽板42と第2遮蔽板43とは、互いに同じ構成を有する。
【0028】
断熱部材41は、X方向に互いに隣り合う平坦部11同士の間に設けられている。具体的には、断熱部材41は、X方向に互いに隣り合う平坦部11同士に挟まれている。断熱部材41は、たとえば発泡プラスチック系断熱材により構成されている。なお、断熱部材41が、繊維系断熱材により構成されていてもよい。
【0029】
第1遮蔽板42は、X方向に互いに隣り合う湾曲部12同士の間に設けられている。第1遮蔽板42は、X方向に互いに隣り合う湾曲部12同士を区画する(仕切る)ように設けられている。
【0030】
第2遮蔽板43は、X方向に互いに隣り合う湾曲部13同士の間に設けられている。第2遮蔽板43は、X方向に互いに隣り合う湾曲部13同士を区画する(仕切る)ように設けられている。
【0031】
第1遮蔽板42は、ケース20(上側ケース21)に接触している。具体的には、第1遮蔽板42は、上側ケース21から断熱部材41側(Y2側)に延びる(突出する)ように設けられている。第1遮蔽板42は、溶接またはネジ締結等により、上側ケース21に固定されている。すなわち、第1遮蔽板42と上側ケース21とは、互いに別部材である。なお、第1遮蔽板42と上側ケース21とが単一の部材として一体的に形成されていてもよい。第1遮蔽板42は、たとえばアルミニウムにより形成されている。第1遮蔽板42の熱抵抗は、断熱部材41の熱抵抗よりも小さい。
【0032】
第2遮蔽板43は、下側ケース22から断熱部材41側(Y1側)に延びる(突出する)ように設けられている。第2遮蔽板43は、溶接またはネジ締結等により、下側ケース22に固定されている。すなわち、第2遮蔽板43と下側ケース22とは、互いに別部材である。なお、第2遮蔽板43と下側ケース22とが単一の部材として一体的に形成されていてもよい。
【0033】
本実施形態では、X方向に互いに隣り合う第1遮蔽板42と湾曲部12とは、互いに離間している。具体的には、第1遮蔽板42のX方向の厚みt1は、断熱部材41のX方向の厚みt2よりも小さい。第1遮蔽板42の厚みt1および断熱部材41の厚みt2の各々は、一定である。また、互いに隣り合う湾曲部12同士の間の距離Dは、Y1側に向かって徐々に大きくなる。第1遮蔽板42の厚みt1は、距離D1の最小値よりも小さい。
【0034】
また、第1遮蔽板42および湾曲部12と同様に、X方向に互いに隣り合う第2遮蔽板43と湾曲部13とは、互いに離間している。なお、詳細な説明は、上記第1遮蔽板42および湾曲部12に関する説明と同様であるので、繰り返し行わない。
【0035】
また、本実施形態では、複数のセパレータ部40の各々において、断熱部材41と第1遮蔽板42とは互いに接触している。具体的には、断熱部材41の第1遮蔽板42側(Y1側)の端面41aと、第1遮蔽板42の断熱部材41側(Y2側)の端面42aとが、互いに接触(密着)している。
【0036】
また、複数のセパレータ部40の各々において、断熱部材41と第2遮蔽板43とは互いに接触している。なお、詳細な説明は、上記第1遮蔽板42および断熱部材41に関する説明と同様であるので、繰り返し行わない。
【0037】
また、複数の第1遮蔽板42の各々は、複数の電池セル10のうちX方向の中央に設けられる電池セル10側を向くように設けられる第1面42bを有する。また、複数の第1遮蔽板42の各々は、第1面42bの反対側の(裏面の)第2面42cを有する。具体的には、図2に示す例において、X1側の2つの第1遮蔽板42では、第1面42bはX2側を向く面であり、かつ、第2面42cはX1側を向く面である。一方、X2側の2つの第1遮蔽板42では、第1面42bはX1側を向く面であり、かつ、第2面42cはX2側を向く面である。
【0038】
ここで、本実施形態では、第2面42cの放射率は、第1面42bの放射率よりも大きい。複数の電池セル10の各々から見て、X方向の中央に設けられる電池セル10側には、反対側に比べてより大きい熱容量(電池セル10の熱容量)が設けられている。そこで、第2面42cの放射率を第1面42bの放射率よりも大きくすることにより、熱容量がより大きい中央側に、熱をより効率的に移動させることができる。
【0039】
具体的には、図3に示すように、第1面42bおよび第2面42cの各々は、凹凸が形成されている。そして、第1遮蔽板42は、第2面42cの表面荒さが第1面42bの表面荒さよりも大きくなるように形成されている。これにより、第2面42cの放射率が第1面42bの放射率よりも大きくなっている。なお、第2遮蔽板43も、第1遮蔽板42と同様に構成されているので、詳細な説明は繰り返さない。
【0040】
また、複数の第1遮蔽板42のうち、中央の電池セル10側に配置されている第1遮蔽板42ほど、放射率が低い。言い換えると、複数の第1遮蔽板42のうち、X方向の端部側に配置されている第1遮蔽板42ほど、放射率が高い。これにより、熱容量がより大きい中央側に、熱をより一層効率的に移動させることが可能である。
【0041】
図3では、X2側の第1遮蔽板42が、X1側の第1遮蔽板42よりも、中央の電池セル10側に配置されているとする。この場合、X1側の第1遮蔽板42の第1面42bは、X2側の第2遮蔽板43の第1面42bよりも表面荒さが大きいとともに放射率が大きい。また、X1側の第1遮蔽板42の第2面42cは、X2側の第2遮蔽板43の第2面42cよりも表面荒さが大きいとともに放射率が大きい。なお、複数の第2遮蔽板43についても同様である。
【0042】
また、図4に示すように、中央の電池セル10(湾曲部12)を挟むように設けられる2つの第1遮蔽板42は、互いに向きが反転して設けられているだけであって、互いに同じ構成を有する。具体的には、図4のX1側の第1遮蔽板42の第1面42bと、X2側の第1遮蔽板42の第2面42cとは、互いに同じ表面荒さ(放射率)を有する。また、X1側の第1遮蔽板42の第2面42cと、X2側の第1遮蔽板42の第1面42bとは、互いに同じ表面荒さ(放射率)を有する。なお、中央の電池セル10を挟む2つの第2遮蔽板43に関しても同様である。なお、最もX1側の第1遮蔽板42(第2遮蔽板43)と、最もX2側の第1遮蔽板42(第2遮蔽板43)とが、互いに向きが反転して設けられているとともに互いに同じ構成を有していてもよい。
【0043】
また、図2に示すように、電池パック100は、最もX1側の電池セル10に対してX1側に設けられるエンドプレート50を備える。エンドプレート50は、最もX1側の電池セル10の全体をX1側から覆うように設けられている。また、エンドプレート50と最もX1側の電池セル10(平坦部11)とは、互いに接触(密着)している。なお、エンドプレート50は、たとえばアルミニウムにより形成されている。
【0044】
また、電池パック100は、最もX2側の電池セル10のX2側に配置されているエンドプレート51を備える。エンドプレート51は、最もX2側の電池セル10の全体をX2側から覆うように設けられている。また、エンドプレート51と最もX2側の電池セル10(平坦部11)とは、互いに接触(密着)している。なお、エンドプレート51は、たとえばアルミニウムにより形成されている。
【0045】
また、エンドプレート50およびエンドプレート51の各々は、下側ケース22に固定されている。エンドプレート50の下側ケース22側(Y2側)の端部には、下側ケース22と接続される接続部50aが設けられている。エンドプレート51の下側ケース22側(Y2側)の端部には、下側ケース22と接続される接続部51aが設けられている。なお、エンドプレート50(51)は、接続部50a(51a)が下側ケース22と締結または溶接されることにより、下側ケース22に固定されている。
【0046】
以上のように、本実施形態においては、複数のセパレータ部40の各々は、X方向に互いに隣り合う平坦部11同士の間に設けられる断熱部材41と、X方向に互いに隣り合う湾曲部12同士の間において断熱部材41とは別個に設けられる第1遮蔽板42とを含む。これにより、湾曲部12同士の間において第1遮蔽板42が設けられることにより、湾曲部12同士の間における輻射熱を遮断するのに断熱部材を用いる必要がない。その結果、断熱部材が大型化するのを抑制することができる。
【0047】
また、上記実施形態では、互いに隣り合う第1遮蔽板42と湾曲部12とが互いに離間している例を示したが、本開示はこれに限られない。第1遮蔽板と湾曲部12とが互いに接触していてもよい。
【0048】
具体的には、図5に示すように、第1遮蔽板142は、X1側の湾曲部12およびX2側の湾曲部12の各々と接触している。第1遮蔽板142は、上側ケース21からY2側に延びる部分142aと、部分142aと断熱部材41とによりY方向に挟まれる部分142bとを含む。
【0049】
部分142aのX方向の厚みt11は、一定である。すなわち、部分142aは、平坦形状を有する。また、部分142bのX方向の厚みt12は、断熱部材41側(Y2側)に向かって徐々に小さくなる。部分142bは、断熱部材41側(Y2側)に向かって先細るテーパ形状を有する。具体的には、部分142bは、X1側の湾曲部12およびX2側の湾曲部12の各々と接触する一対の傾斜面142cを有する。一対の傾斜面142cの各々は、平坦面状に形成されている。なお、一対の傾斜面142cの各々が、湾曲面状に形成されていてもよい。また、部分142bのY2側の端面142dと断熱部材41のY1側の端面41aとは、互いに接触(密着)している。
【0050】
このように構成することにより、第1遮蔽板142を介して、電池セル10の熱を上側ケース21に効果的に移動させる(逃がす)ことが可能である。
【0051】
また、図6に示す第1遮蔽板242は、図5の第1遮蔽板142の変形例である。第1遮蔽板242は、隣り合う2つの湾曲部12のうち、X1側の電池セル10(中央の電池セル10とは反対側の電池セル10)の湾曲部12のみと接触している。第1遮蔽板242は、平坦状の部分242aと、テーパ状の部分242bとを有する。部分242bは、X1側の湾曲部12と接触する傾斜面242cを有する。これにより、中央の電池セル10とは反対側の電池セル10の熱を、熱容量が大きい中央の電池セル10側に容易に移動させることが可能である。
【0052】
なお、図5および図6に示す第1遮蔽板142および第1遮蔽板242の構成を、第2遮蔽板に適用してもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、電池セル10が湾曲部12および湾曲部13を含む例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、電池セルが平坦部のみにより構成されていてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、第1遮蔽板42および第2遮蔽板43の各々と断熱部材41とが接触している例を示したが、本開示はこれに限られない。第1遮蔽板42および第2遮蔽板43の少なくとも一方と断熱部材41とが接触していなくてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、第1遮蔽板42の第1面42bと第2面42cとで凹凸による表面荒さを互いに異ならせることによって放射率を互いに異ならせる例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、第1面42bと第2面42cとで光沢、酸化状態、および、汚れの状態等により放射率を互いに異ならせてもよい。また、放射率が互いに異なる板部材を貼り合わせることにより、互いに放射率の異なる第1面および第2面を有する第1遮蔽板を形成してもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、電池パック100が月面ローバ1に搭載される例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、電池パック100は、地上用の車両に搭載されてもよい。
【0057】
なお、上記実施形態に記載されている構成、および、上記の各種変形例は、任意に組み合わされて実施されてもよい。
【0058】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0059】
1 月面ローバ(探査車)(車両),2 月面,10 電池セル,11 平坦部(中間部),12 湾曲部(第1端部)(幅狭部),13 湾曲部(第2端部),20 ケース,40 セパレータ部,41 断熱部材,42 第1遮蔽板,42b 第1面,42c 第2面,43 第2遮蔽板、100 電池パック,X 方向(第1方向),Y 方向(第2方向)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6