(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】電極チップ整形装置の制御システム
(51)【国際特許分類】
B23K 11/30 20060101AFI20250109BHJP
B23K 11/11 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B23K11/30 350
B23K11/11 570Z
(21)【出願番号】P 2022124848
(22)【出願日】2022-08-04
【審査請求日】2024-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田所 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】小西 豊
(72)【発明者】
【氏名】林 哲史
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】実開平5-18776(JP,U)
【文献】特開昭60-64781(JP,A)
【文献】特開平6-269949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/30
B23K 11/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極チップの整形システムであって、
互いに異なる種類の前記電極チップを有する複数の溶接ガンを着脱自在に選択的に取り付けられるロボットアームと、
前記電極チップのそれぞれに対応する複数の整形機と、
前記ロボットアームを制御し、前記複数の整形機のうちのいずれか1つの整形機を前記ロボットアームから受信する情報に応じて選択する、ロボットコントローラと、
電源装置から電力を入力する給電端子を少なくとも有し、選択された前記整形機に給電を行う切り替えボックスと、
を備える、電極チップの整形システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電極チップの整形システムであって、
前記情報は、前記ロボットアームに接続されている前記溶接ガンの種類を含む情報を含み、
前記ロボットコントローラは、
前記情報を受信するガン情報受信部と、
受信した前記情報を利用して、前記複数の整形機のうちのいずれか1つの整形機を選択する切り替え制御部と、を更に有する、
電極チップの整形システム。
【請求項3】
請求項2に記載の電極チップの整形システムであって、
前記整形機は、
モータと、
前記モータの回転位置を示すエンコーダ値を検出するエンコーダと、
前記エンコーダにより検出された前記エンコーダ値を前記ロボットコントローラに送信するエンコーダ値送信部と、
をそれぞれ有し、
前記ロボットコントローラは、
前記エンコーダ値送信部から送られる前記エンコーダ値を受信するエンコーダ値受信部と、
前記エンコーダ値受信部が受信した前記エンコーダ値を、前記エンコーダ値を送信した前記整形機と紐づけて記憶するエンコーダ値記憶部と、
前記モータの回転を制御するモータ制御部と、
を更に有し、
前記モータ制御部は、前記切り替え制御部により選択された前記整形機と紐づけて記憶された前記エンコーダ値を前記エンコーダ値記憶部から取得し、取得した前記エンコーダ値を用いて前記複数の整形機のうち前記切り替え制御部により選択された前記整形機が有する前記モータを制御する、
電極チップの整形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極チップ整形装置の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
抵抗溶接において、溶接ロボットによって溶接が行われている。例えば特許文献1に開示されているように、ロボットは、一対の電極チップが取り付けられた溶接ガンを備え、かかる電極チップで被溶接物を挟持し、この状態で電極チップに電流を流すことで溶接が行われる。溶接時の加圧や加熱により電極チップが摩耗するため、溶接後に電極チップ整形装置によって電極チップが整形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の生産環境の変化により、変種変量生産に対応できる溶接設備が望まれているため、溶接ロボットには、ツールチェンジャによって多種多様な溶接ガンが交換して取り付けられる。ここで、溶接ガンごとに取り付けられる電極チップの形状が異なるため、電極チップの形状ごとに異なる電極チップ整形装置が必要となる。しかし、電極チップ整形装置1台につき、1台の制御装置が必要であるため、設備構成が複雑になるだけでなく、設備全体の巨大化、設備費用の増大が問題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、電極チップの整形システムが提供される。この電極チップの整形システムは、互いに異なる種類の前記電極チップを有する複数の溶接ガンを着脱自在に選択的に取り付けられるロボットアームと、前記電極チップのそれぞれに対応する複数の整形機と、前記ロボットアームを制御し、前記複数の整形機のうちのいずれか1つの整形機を前記ロボットアームから受信する情報に応じて選択する、ロボットコントローラと、電源装置から電力を入力する給電端子を少なくとも有し、選択された前記整形機に給電を行う切り替えボックスと、を備える。
この形態の電極チップの整形システムによれば、ロボットコントローラが、ロボットアームから受信する制御信号に応じて複数の整形機のうちのいずれか1つを選択し、切り替えボックスが選択された整形機に給電を行うので、複数の整形機を1つのロボットコントローラと1つの電源装置とで作動させることができる。このため、複数の整形機の1台ごとに電源装置が1台必要な構成と比較して、設備構成を簡易にできるだけでなく、設備全体の巨大化と設備費用の増大を抑制することができる。
また、ロボットコントローラが、ロボットアームの制御と整形機の選択とを行うので、ロボットアームの制御装置と整形機の制御装置とが異なる構成と比較して、設備構成を簡易にできるだけでなく、設備全体の巨大化と設備費用の増大を抑制することができる。
(2)上記形態の電極チップの整形システムにおいて、前記情報は、前記ロボットアームに接続されている前記溶接ガンの種類を含む情報を含み、前記ロボットコントローラは、前記情報を受信するガン情報受信部と、受信した前記情報を利用して、前記複数の整形機のうちのいずれか1つの整形機を選択する切り替え制御部と、を更に有してもよい。
この形態の電極チップの整形システムによれば、ガン情報受信部が、ロボットアームに接続されている溶接ガンの種類を含む情報を受信し、切り替え制御部が受信した情報を利用して複数の整形機のうちのいずれか1つの整形機を選択するので、溶接ガンに取り付けられた一対の電極チップに対応する整形機を選択することができる。
(3)上記形態の電極チップの整形システムにおいて、前記整形機は、モータと、前記モータの回転位置を示すエンコーダ値を検出するエンコーダと、前記エンコーダにより検出された前記エンコーダ値を前記ロボットコントローラに送信するエンコーダ値送信部と、をそれぞれ有し、前記ロボットコントローラは、前記エンコーダ値送信部から送られる前記エンコーダ値を受信するエンコーダ値受信部と、前記エンコーダ値受信部が受信した前記エンコーダ値を、前記エンコーダ値を送信した前記整形機と紐づけて記憶するエンコーダ値記憶部と、前記モータの回転を制御するモータ制御部と、を更に有し、前記モータ制御部は、前記切り替え制御部により選択された前記整形機と紐づけて記憶された前記エンコーダ値を前記エンコーダ値記憶部から取得し、取得した前記エンコーダ値を用いて前記複数の整形機のうち前記切り替え制御部により選択された前記整形機が有する前記モータを制御してもよい。
この形態の電極チップの整形システムによれば、モータ制御部が、整形機と紐づけて記憶されたエンコーダ値をエンコーダ値記憶部から取得し、取得したエンコーダ値を用いて切り替え制御部により選択された整形機が有するモータを制御するので、エンコーダ値を整形機と紐づけて記憶しない構成と比較して、モータを精度良く制御することができる。
また、複数の整形機を、モータ制御部とエンコーダ記憶部とを備える1つのロボットコントローラで制御することができるので、整形機ごとに制御装置が必要な構成と比較して、設備構成を簡易にできるだけでなく、設備全体の巨大化と設備費用の増大を抑制することができる。
本開示は、電極チップの整形システム以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、整形機の切り替え方法、整形機の切り替え方法を実現するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の一実施形態としての電極チップの整形システムを模式的に示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態における整形機切り替え処理の手順を示すフローチャートである。
【
図3】エンコーダ値記憶部が記憶しているエンコーダ値の一例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
A1.システム構成:
図1は、本開示の一実施形態としての電極チップの整形システム1を模式的に示すブロック図である。電極チップの整形システム1は、溶接ロボットにより行われる抵抗溶接において用いられ、複数の電極チップ整形機を制御するシステムである。電極チップの整形システム1は、溶接ロボット300と、ロボットコントローラ100と、第1整形機510と、第2整形機520と、切り替えボックス400と、を備える。なお、本開示では、第1整形機510と第2整形機520とを区別せずに示すときは、「整形機500」と呼ぶものとする。
【0009】
溶接ロボット300は、ロボットコントローラ100の制御のもとで溶接を実行するロボットである。溶接ロボット300は、基体304と、ロボットアーム301と、溶接ガン302aと、を備える。ロボットアーム301は、基体304に支持されている。ロボットアーム301は、例えば多関節アームである。ロボットアーム301の先端には、溶接ガン302aが取り付けられている。溶接ガン302aには、一対の電極チップ303aが取り付けられている。一対の電極チップ303aで被溶接物を挟持し加圧しながら電極チップ303a間に電圧を加えることで、抵抗溶接が行われる。本開示において、ロボットアーム301は、種々の溶接ガン302aを着脱自在に、かつ選択的に取り付けられるように構成されている。また、溶接ガン302a,302bには、溶接ガン302a,302bごとに互いに異なる種類の一対の電極チップ303a,303bが取り付けられている。したがって、被溶接物の形状や求められる溶接品質等に応じて、ツールチェンジャにより溶接ガン302a,302bを交換しながら抵抗溶接が行われる。本開示では、2種類の溶接ガン302a,302bをツールチェンジャにより交換する構成について説明する。即ち、本開示において溶接ロボット300は、互いに異なる種類の電極チップ303a,303bが取り付けられた2種類の溶接ガン302a,302bを、ツールチェンジャで交換しながら溶接を行う。
【0010】
溶接ロボット300は、電力線201およびロボット信号線202を介してロボットコントローラ100と接続している。電力線201は、ロボットコントローラ100から溶接ロボット300に電力を供給する。ロボット信号線202は、ロボットコントローラ100および溶接ロボット300間の制御信号を伝達する。
【0011】
ロボットコントローラ100は、電極チップの整形システム1の各部の制御を行う。ロボットコントローラ100には図示しない外部電源から電力が供給されている。ロボットコントローラ100は、CPU101と、メモリ102と、入出力インターフェイス部(入出力I/F部)103と、を備える。CPU101と、メモリ102と、入出力I/F部103とは、いずれも内部バス104を介して互いに通信可能に構成されている。CPU101は、メモリ102に記憶されている制御プログラムを実行することにより、ロボットアーム制御部110、溶接制御部120、ガン情報受信部130、切り替え制御部140、モータ制御部150、およびエンコーダ値受信部160として機能する。
【0012】
ロボットアーム制御部110は、溶接ロボット300のロボットアーム301を制御する。かかる制御により、ロボットアーム301の関節の回転等が実行される。
【0013】
溶接制御部120は、溶接ロボット300が実行する溶接を制御する。具体的には、溶接制御部120は、一対の電極チップ303に流れる電流、被溶接物に電流を流す時間、被溶接物に加えられる圧力等を制御する。
【0014】
ガン情報受信部130は、ロボットアーム301に取り付けられた溶接ガン302aの情報を受信する。溶接ガン302aの情報は、ロボットアーム301から制御信号としてガン情報受信部130に送信される。「溶接ガン302aの情報」は、溶接ガン302aの種類、溶接ガン302aに取り付けられている電極チップ303aの種類等の情報を含む。かかる情報の送信は、ツールチェンジャにより溶接ガン302aが交換された場合や、ガン情報受信部130から要求された場合に行われる。
【0015】
切り替え制御部140は、作動させる整形機500の選択と、切り替えボックス400内の第1スイッチ411,第2スイッチ412,第3スイッチ421,第4スイッチ422の制御と、を行う。切り替え制御部140の詳細については、後述する。
【0016】
モータ制御部150は、整形機500が備えるモータ511,521を制御する。具体的には、モータ制御部150は、切り替え制御部140により選択された整形機500が備えるモータ511,521の回転速度や回転方向を制御する。
【0017】
エンコーダ値受信部160は、整形機500が備えるエンコーダ値送信部513,523から送信されたエンコーダ値を受信し、エンコーダ値記憶部170に記憶させる。エンコーダ値受信部160の詳細については、後述する。
【0018】
メモリ102は、上述した制御プログラムを記憶している。また、メモリ102は、エンコーダ値記憶部170を備える。エンコーダ値記憶部170は、エンコーダ値受信部160が受信したエンコーダ値を、かかるエンコーダ値を送信した整形機500と紐づけて記憶する。
【0019】
入出力I/F部103は、溶接ロボット300および切り替えボックス400と接続するインターフェイス群を有する。入出力I/F部103には、ロボット信号線202と、整形機信号線204と、第1リレーコイル線210と、第2リレーコイル線220と、が接続されている。ロボット信号線202は、ロボットコントローラ100と溶接ロボット300との間の情報を伝達する。整形機信号線204は、ロボットコントローラ100と整形機500との間の情報を伝達する。第1リレーコイル線210は、後述する第1リレーコイル401に電流を流す導線である。第2リレーコイル線220は、後述する第2リレーコイル402に電流を流す導線である。
【0020】
整形機500は、一対の電極チップ303の整形を行う。一対の電極チップ303は、溶接時の圧力および熱により、変形や摩耗し得る。変形や摩耗した電極チップ303では良好な溶接が行われないため、溶接終了後または電極チップ303の摩耗状況に応じて適宜、整形機500による電極チップ303の整形が行われる。整形機500は、電極チップ303の形状に対応した整形ローラ(図示せず)を有する。したがって、溶接で使用される電極チップ303の種類の数に対応した整形機500が必要となる。本開示では、上述したように、互いに異なる電極チップ303a,303bが取り付けられた2種類の溶接ガン302a,302bをツールチェンジャで交換しながら溶接を行う。そのため、整形機500は、溶接ガン302a,302bのそれぞれに対応する第1整形機510および第2整形機520が必要となる。整形機500は、モータ511,521と、エンコーダ512,522と、エンコーダ値送信部513,523と、を備える。第1整形機510には、電力を供給する配線である第1電力線211が接続されている。また、第1整形機510には、ロボットコントローラ100との間の制御信号を伝達する第1信号線212が接続している。第2整形機520には、電力を供給する配線である第2電力線221が接続されている。また、第2整形機520には、ロボットコントローラ100との間の制御信号を伝達する第2信号線222が接続している。
【0021】
モータ511,521は、図示しない整形ローラを回転させる。モータ511,521は、ロボットコントローラ100のモータ制御部150により制御される。
【0022】
エンコーダ512,522は、モータ511,521の回転位置、回転角度、回転方向等をエンコーダ値として検出する。エンコーダ512,522は、例えばアブソリュートエンコーダである。エンコーダ512,522が検出したエンコーダ値は、エンコーダ値送信部513,523に伝達される。
【0023】
エンコーダ値送信部513,523は、エンコーダ値をロボットコントローラ100のエンコーダ値受信部160に送信する。送信されたエンコーダ値は、エンコーダ値記憶部170に記憶され、モータ制御部150によるモータ511,521の制御に用いられる。詳細は、後述する。
【0024】
切り替えボックス400は、切り替え制御部140の制御に応じて、ロボット電力線203および整形機信号線204をいずれか1つの整形機500に接続するように接続の切り替えを行う。切り替えボックス400は、複数の端子tmと、第1スイッチ411と、第2スイッチ412と、第3スイッチ421と、第4スイッチ422と、第1リレーコイル401と、第2リレーコイル402と、を備える。複数の端子tmには、ロボット電力線203と、第1電力線211と、第2電力線221と、整形機信号線204と、第1信号線212と、第2信号線222と、第1リレーコイル線210と、第2リレーコイル線220と、が接続されている。
【0025】
第1スイッチ411は、ロボット電力線203と第1電力線211との接続のオンとオフとを切り替える。ロボット電力線203は、溶接ロボット300から整形機500に電力を供給する導線である。即ち、ロボット電力線203が接続している端子tmは、電力を入力する給電端子である。本開示において、整形機500への電力の供給は、切り替えボックス400を介して溶接ロボット300から行われる。即ち、外部電源から供給された電力は、ロボットコントローラ100と、溶接ロボット300と、切り替えボックス400と、をこの順番に経由して、整形機500に供給される。ここで、溶接ロボット300は、切り替えボックス400および整形機500の電源装置ということもできる。したがって、第1スイッチ411が閉じることでロボット電力線203と第1電力線211とが電気的に接続するので、溶接ロボット300から第1整形機510へ電力の供給が可能になる。
【0026】
第2スイッチ412は、整形機信号線204と第1信号線212との接続のオンとオフとを切り替える。したがって、第2スイッチ412が閉じることで整形機信号線204と第1信号線212とが電気的に接続するので、ロボットコントローラ100と第1整形機510との間の制御信号の伝達が可能になる。
【0027】
第1スイッチ411および第2スイッチ412の開閉は、第1リレーコイル401によって行われる。具体的には、切り替え制御部140の制御により、第1リレーコイル線210に電流が流れると、第1スイッチ411および第2スイッチ412の可動接点が固定接点に接触し、第1スイッチ411および第2スイッチ412が閉じる。なお、本開示において第1リレーコイル401は、一般的なリレーコイルである。
【0028】
第3スイッチ421は、ロボット電力線203と第2電力線221との接続のオンとオフとを切り替える。したがって、第3スイッチ421が閉じることでロボット電力線203と第2電力線221とが電気的に接続するので、溶接ロボット300から第2整形機520へ電力の供給が可能になる。
【0029】
第4スイッチ422は、整形機信号線204と第2信号線222との接続のオンとオフとを切り替える。したがって、第4スイッチ422が閉じることで整形機信号線204と第2信号線222とが電気的に接続するので、ロボットコントローラ100と第2整形機520との間の制御信号の伝達が可能になる。
【0030】
第3スイッチ421および第4スイッチ422の開閉は、第2リレーコイル402によって行われる。具体的には、切り替え制御部140の制御により、第2リレーコイル線220に電流が流れると、第3スイッチ421および第4スイッチ422の可動接点が固定接点に接触し、第3スイッチ421および第4スイッチ422が閉じる。なお、本開示において第2リレーコイル402は、第1リレーコイル401と同様に、一般的なリレーコイルである。
【0031】
本開示において、切り替え制御部140は、第1リレーコイル401および第2リレーコイル402のうちでいずれか一方にのみ電流を流す。即ち、第1整形機510および第2整形機520のいずれか一方が、電力を供給されかつロボットコントローラ100と制御信号の伝達を行うことができる。
【0032】
A2.整形機切り替え処理
図2は、第1実施形態における整形機切り替え処理の手順を示すフローチャートである。整形機切り替え処理は、溶接ロボット300に取り付けられた一対の電極チップ303に対応する整形機500を、ロボットコントローラ100と電気的に接続し、作動させる処理である。整形機切り替え処理は、一対の電極チップ303の整形を行う前に実行される。
【0033】
ガン情報受信部130は、溶接ロボット300に取り付けられている溶接ガン302aの情報を取得する(ステップS105)。上述したように、本開示において溶接ガン302a,302bごとに異なる一対の電極チップ303a,303bが取り付けられているので、「溶接ガン302aの情報の取得」は、取り付けられている一対の電極チップ303aの種類の情報の取得ともいえる。
【0034】
切り替え制御部140は、溶接ロボット300に取り付けられた一対の電極チップ303に対応する整形機500を選択し、ロボットコントローラ100と接続させる(ステップS110)。切り替え制御部140は、ガン情報受信部130が取得した溶接ガン302aの情報を用いて、溶接ガン302aに取り付けられている一対の電極チップ303aに対応する整形機500を選択する。「一対の電極チップ303に対応する整形機500」とは、一対の電極チップ303を整形可能な整形ローラを備える整形機500のことをいう。次いで、切り替え制御部140は、選択された整形機500に電力が供給され、かつ選択された整形機500とロボットコントローラ100とが電気的に接続するように制御する。以下では、例えば選択された整形機500が、
図1に示す第1整形機510である場合について説明する。切り替え制御部140は、第1整形機510を選択すると、第1リレーコイル線210に電流を流すように制御する。かかる制御により、第1リレーコイル401に電流が流れ、第1スイッチ411および第2スイッチ412が閉じる。このようにして、第1整形機510に電力が供給され、第1整形機510とロボットコントローラ100とが電気的に接続する。
【0035】
モータ制御部150は、エンコーダ値記憶部170から、エンコーダ値を取得する(ステップS115)。具体的には、モータ制御部150は、切り替え制御部140により選択された第1整形機510と紐づけて記憶されたエンコーダ値を、エンコーダ値記憶部170から取得する。
図3は、エンコーダ値記憶部170が記憶しているエンコーダ値の一例を示す表である。
図3に示すように、エンコーダ値記憶部170は、整形機500ごとにモータ511,521の回転位置をエンコーダ値として記憶している。本開示において「回転位置」とは、前回の整形終了時のモータ511,521における基準位置からの回転角度のことを言う。
図3のエンコーダ値の一例は、第1整形機510の前回の整形終了時の回転位置は90°であり、第2整形機520の前回の整形終了時の回転位置は270°であることを示している。
【0036】
図2に示すように、第1整形機510は、整形作業を実行する(ステップS120)。具体的には、モータ制御部150は、ステップS115で取得したエンコーダ値を用いて、第1整形機510のモータ511の制御を実行する。モータ511の回転により、図示しない整形ローラが回転し、一対の電極チップ303aが整形される。
【0037】
エンコーダ値記憶部170は、エンコーダ値を記憶する(ステップS125)。ステップS120の整形作業が完了すると、エンコーダ512は、整形作業完了時のモータ511のエンコーダ値を検出し、エンコーダ値送信部513に伝達する。エンコーダ値送信部513は、ロボットコントローラ100のエンコーダ値受信部160に、エンコーダ512から伝達されたエンコーダ値を送信する。エンコーダ値受信部160は、受信したエンコーダ値と当該エンコーダ値を送信した整形機500とを紐づけてエンコーダ値記憶部170に伝達する。エンコーダ値記憶部170は、伝達されたエンコーダ値と整形機500とを紐づけて記憶する。
【0038】
以上説明した第1実施形態の電極チップの整形システム1によれば、ロボットコントローラ100が、ロボットアーム301から受信する情報に応じて複数の整形機500のうちのいずれか1つを選択し、切り替えボックス400が選択された整形機500に給電を行うので、複数の整形機500を1つのロボットコントローラ100と1つの電源装置とで作動させることができる。このため、整形機500ごとに電源装置が必要な構成と比較して、設備構成を簡易にできるだけでなく、設備全体の巨大化と設備費用の増大を抑制することができる。
【0039】
また、ロボットコントローラ100が、ロボットアーム301の制御と整形機500の選択とを行うので、ロボットアーム301の制御装置と整形機500の制御装置とが異なる構成、即ち少なくとも2つの制御装置が必要な構成と比較して、設備構成を簡易にできるだけでなく、設備全体の巨大化と設備費用の増大を抑制することができる。
【0040】
また、ガン情報受信部130が、ロボットアーム301に接続されている溶接ガン302aの種類を含む情報を受信し、受信した情報を利用して切り替え制御部140が複数の整形機500のうちのいずれか1つの整形機500を選択するので、溶接ガン302aに取り付けられた一対の電極チップ303に対応する整形機500を選択することができる。
【0041】
また、モータ制御部150が、整形機500と紐づけて記憶されたエンコーダ値をエンコーダ値記憶部170から取得し、取得したエンコーダ値を用いて切り替え制御部140により選択された整形機500が有するモータ511,521を制御するので、エンコーダ値を整形機500と紐づけて記憶しない構成と比較して、モータ511,521をより精度良く制御することができる。具体的には、エンコーダ値を整形機500と紐づけて記憶しない場合、モータ制御部150で制御しようとする回転位置と、実際のモータ511,521の回転位置とがずれたまま制御され得る。本開示の電極チップの整形システム1では、モータ制御部150が、整形機500と紐づけて記憶されたエンコーダ値を用いてモータ制御部150がモータ511,521を制御するので、モータ制御部150で制御する回転位置と、実際のモータ511,521の回転位置とを一致させて精度良く制御することができる。
【0042】
また、複数の整形機500を、モータ制御部150とエンコーダ値記憶部170とを備える1つのロボットコントローラ100で制御することができるので、整形機500ごとに制御装置が必要な構成と比較して、設備構成を簡易にできるだけでなく、設備全体の巨大化と設備費用の増大を抑制することができる。
【0043】
B.他の実施形態
(B1)第1実施形態において、ガン情報受信部130がロボットアーム301から受信する情報は、ロボットアーム301に接続されている溶接ガン302a,302bの種類を含む情報を含んでいたが、本開示はこれに限定されない。予め複数の溶接ガン302a,302bを所定の順序で使用する構成では、溶接ガン302a,302bの種類を含む情報に代えて、現在の順番を示す情報をロボットアーム301から受信してもよい。かかる構成においても、現在の順番を示す情報に基づいて、溶接ガン302a,302bに対応する整形機500を選択することができる。
【0044】
(B2)第1実施形態において、モータ制御部150はエンコーダ値を用いてモータ511,521を制御していたが、本開示はこれに制限されない。整形機500がエンコーダ512,522およびエンコーダ値送信部513,523を備えない構成であってもよい。
【0045】
(B3)第1実施形態において、切り替えボックス400への給電は、溶接ロボット300からロボット電力線203を介して行われていたが、本開示はこれに限定されない。切り替えボックス400への給電は、外部電源から直接行われてもよいし、ロボットコントローラ100から行われてもよい。
【0046】
(B4)第1実施形態の整形機切り替え処理において、ガン情報の取得(ステップS105)は、整形機切り替え処理において行われていたが、本開示はこれに限定されない。ガン情報の取得は、整形機切り替え処理に先立って行われてもよい。ガン情報の取得は、例えば、ツールチェンジャにより溶接ガン302a,302bが交換されたときに行われてもよい。
【0047】
(B5)第1実施形態の整形機切り替え処理において、一対の電極チップ303と整形機500との接続は、整形作業を実行するステップS120より前の任意のタイミングで行われてよい。
【0048】
(B6)第1実施形態の整形機切り替え処理において、新たな整形機500を使用する場合は、整形機切り替え処理に先立って、新たな整形機500とロボットコントローラ100とを電気的に接続し、新たな整形機500のエンコーダ値を予め取得し、エンコーダ値記憶部170に記憶させてもよい。
【0049】
(B7)第1実施形態において、整形機500が2台である構成について説明したが、本開示はこれに限定されない。電極チップの整形システム1は、3台以上の任意の台数の整形機500を備える構成であってもよい。
【0050】
(B8)第1実施形態において、エンコーダ値送信部513,523は、整形作業完了後以外の任意のタイミングにおいて、エンコーダ値を送信してもよい。
【0051】
本開示は、上記各実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1…電極チップの整形システム、100…ロボットコントローラ、101…CPU、102…メモリ、103…入出力I/F部、104…内部バス、110…ロボットアーム制御部、120…溶接制御部、130…ガン情報受信部、140…切り替え制御部、150…モータ制御部、160…エンコーダ値受信部、170…エンコーダ値記憶部、201…電力線、202…ロボット信号線、203…ロボット電力線、204…整形機信号線、210…第1リレーコイル線、211…第1電力線、212…第1信号線、220…第2リレーコイル線、221…第2電力線、222…第2信号線、300…溶接ロボット、301…ロボットアーム、302a,302b…溶接ガン、303a,303b…電極チップ、304…基体、400…切り替えボックス、401…第1リレーコイル、402…第2リレーコイル、411…第1スイッチ、412…第2スイッチ、421…第3スイッチ、422…第4スイッチ、500…整形機、510…第1整形機、511,521…モータ、512,522…エンコーダ、513,523…エンコーダ値送信部、520…第2整形機、tm…端子