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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】指示装置および作業装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 65/18 20060101AFI20250109BHJP
   G05D 1/617 20240101ALI20250109BHJP
   G05D 1/656 20240101ALI20250109BHJP
   G05D 1/221 20240101ALN20250109BHJP
   G05D 1/43 20240101ALN20250109BHJP
   B25J 13/00 20060101ALN20250109BHJP
【FI】
B62D65/18 Z
G05D1/617
G05D1/656
G05D1/221
G05D1/43
B25J13/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023210249
(22)【出願日】2023-12-13
(62)【分割の表示】P 2023150359の分割
【原出願日】2023-09-15
【審査請求日】2023-12-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩堀 健人
(72)【発明者】
【氏名】横山 大樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 潤也
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-538619(JP,A)
【文献】特開平02-051710(JP,A)
【文献】特開2020-100179(JP,A)
【文献】特開2019-171538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 65/18
G05D 1/617
G05D 1/656
G05D 1/221
G05D 1/43
B25J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人運転により走行中であり、かつ、製造中の車両に部品を組付ける作業装置に制御情報を指示する指示装置であって、
前記車両の動作に関する動作情報を取得する取得部と、
前記作業装置の組付け制御に用いられる作業装置制御情報を生成する生成部と、
前記動作情報に応じて、前記作業装置制御情報を補正する補正部と、
を備え
前記補正部により補正された前記作業装置制御情報を前記作業装置に指示する、指示装置。
【請求項2】
請求項に記載の指示装置であって、
前記作業装置は、前記部品を把持するアーム部と、前記アーム部を制御する制御部とを備え、
前記作業装置制御情報は、前記アーム部の制御に用いられるパラメータを含み、
前記補正部は、前記動作情報に応じて、前記パラメータを補正し、
前記制御部は、前記補正部により補正された前記パラメータを用いて、前記アーム部を制御する、指示装置。
【請求項3】
請求項に記載の指示装置であって、
前記生成部は、さらに、前記車両の制御に用いられる車両制御情報を生成する、指示装置。
【請求項4】
請求項に記載の指示装置であって、
前記補正部は、前記車両の動作が予め定められた条件を満たす場合に、前記車両を停止させる命令と、前記作業装置を停止させる命令と、異常が発生したことを報知させる命令と、の少なくとも1つを含むように前記作業装置制御情報を補正する指示装置。
【請求項5】
無人運転により走行可能な製造中の車両に部品を組付ける作業装置であって、
前記部品を把持するアーム部と、
前記車両に搭載されている、走行中の前記車両の動作を検出するセンサから、前記センサの検出結果を取得する取得部と、
予め定められた動作制御信号を前記検出結果に応じて補正し、補正された前記動作制御信号に応じて前記アーム部を制御する制御部と、
を備える、作業装置。
【請求項6】
車両に制御情報を指示する指示装置であって、
遠隔制御により走行中であり、かつ、製造中の前記車両に部品を組付ける作業装置の動作に関する動作情報を取得する取得部と、
前記車両を遠隔制御により走行させるために用いられる車両制御情報を生成する生成部と、
前記動作情報に応じて、前記車両制御情報を補正する補正部と、
を備え
前記補正部により補正された前記車両制御情報を前記車両に指示する、指示装置。
【請求項7】
請求項に記載の指示装置であって、
前記補正部は、前記車両に前記部品を組付ける時の前記車両と前記部品との相対速度が予め定められた範囲内になるように前記車両制御情報を補正する、指示装置。
【請求項8】
請求項に記載の指示装置であって、
前記補正部は、前記車両に前記部品を組付ける時の前記車両と前記部品との相対速度が予め定められた範囲内になっていない場合には、前記車両制御情報を、前記車両を停止させる命令と、前記作業装置を停止させる命令と、異常が発生したことを報知させる命令と、の少なくとも1つを含むように補正する、指示装置。
【請求項9】
無人運転により走行可能な製造中の車両に部品を組付ける作業装置に制御情報を指示する指示装置であって、
前記車両の動作に関する動作情報を取得する取得部と、
無人運転により作業場所で停止している前記車両に部品を組付ける作業装置の組付け制御に用いられる作業装置制御情報を生成する生成部と、
前記動作情報に応じて、前記作業装置制御情報を補正する補正部と、
を備え
前記補正部により補正された前記作業装置制御情報を前記作業装置に指示する、指示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、指示装置および作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の製造工程において、無人運転により車両を走行させる技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2017-538619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両等の移動体の製造工程において、移動体をコンベア等により搬送するのではなく無人運転により移動させる場合、移動体に部品の組付ける作業の作業性を高めるための工夫の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の第1の形態によれば、システムが提供される。このシステムは、無人運転により移動可能な移動体に対する作業に用いられる作業装置と、前記作業装置が配置されている作業場所に無人運転により移動する前記移動体との少なくとも一方の制御に、他方の動作に関する動作情報を反映させることを特徴とする。
この形態のシステムによれば、移動体と作業装置とを協働させることができるため、作業装置を用いた移動体に対する作業の作業効率を高めることができる。
(2)上記形態のシステムは、前記移動体の動作に関する前記動作情報を取得する取得部と、前記動作情報に応じて前記作業装置を制御する制御部と、を備えてもよい。
この形態のシステムによれば、移動体の動作に応じて作業装置を動作させることができるため、作業装置を用いた移動体に対する作業の作業効率を高めることができる。
(3)上記形態のシステムは、前記作業装置の動作に関する前記動作情報を取得する取得部と、前記動作情報に応じて前記移動体を制御する制御部と、を備えてもよい。
この形態のシステムによれば、作業装置の動作に応じて移動体を動作させることができるため、作業装置を用いた移動体に対する作業の作業効率を高めることができる。
(4)本開示の第2の形態によれば、装置が提供される。この装置は、無人運転により移動中の移動体の動作に関する動作情報を取得する取得部と、前記動作情報に応じて、移動中の前記移動体に部品を組付ける作業装置の制御に用いられる作業装置制御情報を生成する生成部と、前記作業装置に対して前記作業装置制御情報を送信する送信部と、を備える。
この形態の装置によれば、移動体の動作に応じて作業装置を動作させることができるため、移動中の移動体に対して作業装置により部品を適切に組付けることができる。したがって、移動体に対する部品の組付け作業の作業効率を高めることができる。
(5)上記形態の装置において、前記作業装置は、前記部品を把持するアーム部と、前記アーム部を制御する制御部とを備え、前記生成部は、前記アーム部の制御に用いられるパラメータを含む前記作業装置制御情報を生成し、前記制御部は、前記パラメータを用いて、前記アーム部を制御してもよい。
この形態の装置によれば、作業装置制御情報を作業装置に送信することにより、アーム部を動作させることができる。
(6)上記形態の装置において、前記生成部は、さらに、前記移動体の制御に用いられる移動体制御情報を生成してもよい。
この形態の装置によれば、1台の装置により移動体制御情報と作業装置制御情報とを生成することができる。
(7)上記形態の装置において、前記生成部は、前記移動体の動作が予め定められた条件を満たす場合に、前記移動体を停止させる命令と、前記作業装置を停止させる命令と、異常が発生したことを報知させる命令と、の少なくとも1つを生成してもよい。
この形態の装置によれば、移動体の動作に異常が発生した可能性がある場合に、適切に対処することができる。
(8)本開示の第2の形態によれば、無人運転により移動可能な移動体に部品を組付ける装置が提供される。この装置は、前記部品を把持するアーム部と、移動中の前記移動体の動作を検出するセンサと、前記センサの検出結果に応じて前記アーム部を制御する制御部と、を備える。
この形態の装置によれば、移動中の移動体に対して部品を適切に組付けることができる。したがって、移動体に対する部品の組付け作業の作業効率を高めることができる。
(9)本開示の第3の形態によれば、無人運転により移動可能な移動体に部品を組付ける装置が提供される。この装置は、前記部品を把持するアーム部と、前記移動体に搭載されている、無人運転により移動中の前記移動体の動作を検出するセンサから、前記センサの検出結果を取得する取得部と、前記検出結果に応じて前記アーム部を制御する制御部と、を備える。
この形態の装置によれば、移動中の移動体に対して部品を適切に組付けることができる。したがって、移動体に対する部品の組付け作業の作業効率を高めることができる。
(10)本開示の第4の形態によれば、装置が提供される。この装置は、無人運転により移動中の移動体に部品を組付ける作業装置の動作に関する動作情報を取得する取得部と、前記動作情報に応じて、前記移動体の制御に用いられる移動体制御情報を生成する生成部と、前記移動体に対して前記移動体制御情報を送信する送信部と、を備える。
この形態の装置によれば、作業装置の動作に応じて移動体を動作させることができるため、移動中の移動体に対して作業装置により部品を適切に組付けることができる。したがって、移動体に対する部品の組付け作業の作業効率を高めることができる。
(11)上記形態の装置において、前記生成部は、前記移動体に前記部品を組付ける時の前記移動体と前記部品との相対速度が予め定められた範囲内になるように前記移動体を制御するための、前記移動体制御情報を生成してもよい。
この形態の装置によれば、移動体に部品が組付けられる時の衝撃を低減することができる。
(12)上記形態の装置において、前記生成部は、前記移動体に前記部品を組付ける時の前記相対速度が前記範囲内になっていない場合には、前記移動体を停止させる命令と、前記作業装置を停止させる命令と、異常が発生したことを報知させる命令と、の少なくとも1つを生成してもよい。
この形態の装置によれば、部品の組付け不良が発生する可能性がある場合に、適切に対処することができる。
(13)本開示の第5の形態によれば、移動体に搭載されている装置が提供される。この装置は、移動中の前記移動体に部品を組付ける作業装置の動作に関する動作情報を取得する取得部と、前記動作情報に応じて、前記移動体を制御する制御部と、を備える。
この形態の装置によれば、作業装置の動作に応じて移動体を動作させることができるため、移動中の移動体に対して作業装置により部品を適切に組付けることができる。したがって、移動体に対する部品の組付け作業の作業効率を高めることができる。
(14)本開示の第6の形態によれば、装置が提供される。この装置は、無人運転により移動可能な移動体の動作に関する動作情報を取得する取得部と、前記動作情報に応じて、無人運転により作業場所で停止している前記移動体に部品を組付ける作業装置の制御に用いられる作業装置制御情報を生成する生成部と、を備える。
この形態の装置によれば、移動体の動作に応じて作業装置を動作させることができるため、停止中の移動体に対して作業装置により部品を適切に組付けることができる。したがって、移動体に対する部品の組付け作業の作業効率を高めることができる。
(15)本開示の第7の形態によれば、装置が提供される。この装置は、無人運転により移動可能な移動体に部品を組付ける作業装置の動作であって、無人運転により作業場所で停止している前記移動体に前記部品を組付ける動作に関する動作情報を取得する取得部と、前記動作情報に応じて、前記移動体を前記作業場所に停止させる制御に用いられる移動体制御情報を生成する生成部と、を備える。
この形態の装置によれば、作業装置の動作に応じて移動体を動作させることができるため、停止中の移動体に対して作業装置により部品を適切に組付けることができる。したがって、移動体に対する部品の組付け作業の作業効率を高めることができる。
(16)本開示の第8の形態によれば、装置が提供される。この装置は、無人運転により移動可能な移動体の動作に関する動作情報を取得する取得部と、前記動作情報に応じて、無人運転により移動可能な作業装置であって、前記移動体に組付けられる部品と前記移動体に対する作業に用いられる工具との少なくとも一方を積載可能な作業装置の制御に用いられる作業装置制御情報を生成する生成部と、前記作業装置に前記作業装置制御情報を送信する送信部と、を備える。
この形態の装置によれば、作業対象の移動体の動作に応じて作業装置を移動させることができる。そのため、作業装置から部品や工具を取り出して移動体に対する作業を実施する作業員の作業効率を高めることができる。
(17)上記形態の装置において、前記生成部は、前記作業装置と前記移動体との相対速度が予め定められた範囲内になるように、前記作業装置制御情報を生成してもよい。
この形態の装置によれば、作業装置と移動体との間の距離が変化することを抑制できる。そのため、作業員の作業効率を効果的に高めることができる。
(18)上記形態の装置において、前記生成部は、前記移動体に対する作業が終了したと判定した場合には、前記移動体の後に作業が実施される後続移動体に接近させる前記作業装置制御情報を生成してもよい。
この形態の装置によれば、作業員が手動で作業装置を後続移動体に近付ける手間をなくすことができる。そのため、作業員の作業効率を効果的に高めることができる。
(19)上記形態の装置において、前記取得部は、前記作業装置が前記後続移動体に接近中に、または、前記作業装置が前記後続移動体に予め定められた距離以内まで接近した後に、前記後続移動体の動作に関する動作情報を取得し、前記生成部は、前記後続移動体の動作情報に応じて、前記作業装置制御情報を生成してもよい。
この形態の装置によれば、適切なタイミングで移動体の動作を取得することができる。
(20)上記形態の装置において、前記生成部は、前記移動体に対する作業が終了したと判定し、かつ、前記後続移動体が存在しないと判定した場合には、前記作業装置を停止させる前記作業装置制御情報を生成してもよい。
この形態の装置によれば、後続移動体が存在しないにもかかわらず、作業装置の移動が継続されてエネルギが無駄に消費されることを抑制できる。
(21)本開示の第9の形態によれば、無人運転により移動可能な作業装置が提供される。この作業装置は、無人運転により移動可能な移動体に組付けられる部品と前記移動体に対する作業に用いられる工具との少なくとも一方を積載可能な荷台と、移動するための駆動装置と、前記移動体に搭載されているセンサの検出結果を取得する取得部と、前記検出結果に応じて前記駆動装置を制御する制御部と、を備える。
この形態の作業装置によれば、作業対象の移動体の動作に応じて作業装置を移動させることができる。そのため、作業装置から部品や工具を取り出して移動体に対する作業を実施する作業員の作業効率を高めることができる。
(22)本開示の第10の形態によれば、無人運転により移動可能な作業装置が提供される。この作業装置は、無人運転により移動可能な移動体に組付けられる部品と前記移動体に対する作業に用いられる工具との少なくとも一方を積載可能な荷台と、移動するための駆動装置と、前記移動体の動作を検出するためのセンサと、前記センサの検出結果に応じて、前記駆動装置を制御する制御部と、を備える。
この形態の作業装置によれば、作業対象の移動体の動作に応じて作業装置を移動させることができる。そのため、作業装置から部品や工具を取り出して移動体に対する作業を実施する作業員の作業効率を高めることができる。
本開示は、システムおよび装置以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、方法、コンピュータプログラム、および、コンピュータプログラムが記録された記録媒体などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態のシステムの構成を示す説明図。
図2】第1実施形態の車両の構成を示す説明図。
図3】第1実施形態のサーバ装置の構成を示す説明図。
図4】第1実施形態の組付ロボットの構成を示す説明図。
図5】工場において車両が無人運転により走行する様子を示す説明図。
図6】第1実施形態の車両制御の処理手順を示すフローチャート。
図7】第1実施形態の組付ロボット制御の処理手順を示すフローチャート。
図8】組付ロボットの動作を示す第1の説明図。
図9】組付ロボットの動作を示す第2の説明図。
図10】組付ロボットの動作を示す第3の説明図。
図11】第2実施形態のシステムの構成を示す説明図。
図12】第2実施形態の組付ロボットの構成を示す説明図。
図13】第2実施形態の組付ロボット制御の処理手順を示すフローチャート。
図14】第3実施形態のシステムの構成を示す説明図。
図15】第3実施形態の車両の構成を示す説明図。
図16】第3実施形態の組付ロボットの構成を示す説明図。
図17】第4実施形態のシステムの構成を示す説明図。
図18】第5実施形態のシステムの構成を示す説明図。
図19】第6実施形態のシステムの構成を示す説明図。
図20】第7実施形態のシステムの構成を示す説明図。
図21】第7実施形態のワゴンの構成を示す説明図。
図22】第7実施形態のワゴン制御の処理手順を示すフローチャート。
図23】ワゴンの動作を示す説明図。
図24】第8実施形態のシステムの構成を示す説明図。
図25】第8実施形態のワゴンの構成を示す説明図。
図26】第9実施形態のシステムの構成を示す説明図。
図27】第9実施形態のワゴンの構成を示す説明図。
図28】他の実施形態の車両制御の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態におけるシステム10の構成を示す説明図である。システム10は、例えば、車両100を製造する工場において用いられる。本実施形態では、車両100は、電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)である。なお、車両100は、電気自動車に限られず、例えば、ガソリン自動車や、ハイブリッド自動車や、燃料電池自動車でもよい。
【0009】
システム10は、車両100と、サーバ装置200と、少なくとも1つの外部センサ250と、組付ロボット300と、報知装置500とを備えている。車両100は、無人運転により走行可能に構成されている。車両100は、製造途中の状態であり、無人運転により走行している車両100に対して組付ロボット300により部品の組付け作業が実行される。本実施形態では、車両100は、いわゆるプラットフォームの形態で無人運転により走行する。なお、車両100のことを移動体と呼び、組付ロボット300のことを作業装置と呼ぶことがある。
【0010】
本開示では、「無人運転」とは、車両100に搭乗している搭乗者の運転操作によらない運転のことを意味する。「運転操作」とは、車両100の「走る」、「曲がる」、「止まる」の少なくとも1つに関する操作のことを意味する。無人運転は、車両100の外部に位置している装置を用いた自動または手動の遠隔制御により、あるいは、車両100の自律制御により実現される。無人運転により走行している車両100には、運転操作を行わない搭乗者が搭乗していてもよい。運転操作を行わない搭乗者には、例えば、単に車両100の運転席に座っている者や、運転操作とは異なる行動を行っている者が含まれる。運転操作とは異なる行動には、例えば、車両100に対する部品の組付け作業や、車両100の検査や、車両100に設けられているスイッチ類の操作などが含まれる。なお、搭乗者の運転操作による運転のことを、「有人運転」と呼ぶことがある。
【0011】
図2は、本実施形態における車両100の構成を示す説明図である。車両100は、車両100の各部を制御するための車両制御装置110と、車両制御装置110の制御下で駆動する少なくとも1つのアクチュエータを含むアクチュエータ群120と、無線通信によりサーバ装置200と通信するための通信装置130とを備えている。本実施形態では、アクチュエータ群120には、車両100を加速させるための駆動装置のアクチュエータ、車両100の進行方向を変更するための操舵装置のアクチュエータ、および、車両100を減速させるための制動装置のアクチュエータが含まれている。駆動装置には、バッテリ、バッテリの電力により駆動する走行用モータ、および、走行用モータにより回転する車輪が含まれている。駆動装置のアクチュエータには、走行用モータが含まれている。
【0012】
車両制御装置110は、プロセッサ111と、メモリ112と、入出力インタフェース113と、内部バス114とを備えるコンピュータにより構成されている。プロセッサ111、メモリ112、および、入出力インタフェース113は、内部バス114を介して、双方向に通信可能に接続されている。入出力インタフェース113には、アクチュエータ群120、および、通信装置130が接続されている。
【0013】
プロセッサ111は、メモリ112に予め記憶されているコンピュータプログラムPG1を実行することにより、取得部115、および、制御部117として機能する。取得部115は、車両100を制御するための車両制御情報を取得する。本実施形態では、取得部115は、車両制御情報として、サーバ装置200から走行制御信号を取得する。走行制御信号には、パラメータとして、車両100の加速度および操舵角が含まれている。走行制御信号には、車両100の加速度に代えて、車両100の速度が含まれてもよい。制御部117は、走行制御信号を用いてアクチュエータ群120を制御する。制御部117は、車両100に搭乗者が搭乗している場合には、搭乗者の運転操作に応じてアクチュエータ群120を制御することにより、車両100を走行させることができる。制御部117は、車両100に搭乗者が搭乗しているか否かにかかわらず、サーバ装置200から受信した走行制御信号に応じてアクチュエータ群120を制御することにより、車両100を走行させることができる。なお、車両制御情報のことを移動体制御情報と呼ぶことがある。
【0014】
図3は、本実施形態におけるサーバ装置200の構成を示す説明図である。サーバ装置200は、プロセッサ201と、メモリ202と、入出力インタフェース203と、内部バス204とを備えるコンピュータにより構成されている。プロセッサ201、メモリ202、および、入出力インタフェース203は、内部バス204を介して、双方向に通信可能に接続されている。入出力インタフェース203には、無線通信により車両100と通信するための通信装置205が接続されている。本実施形態では、通信装置205は、有線通信あるいは無線通信により、外部センサ250、組付ロボット300、および、報知装置500と通信することができる。
【0015】
プロセッサ201は、メモリ202に予め記憶されているコンピュータプログラムPG2を実行することにより、車両100の位置および向きに関する車両位置情報を取得する取得部211、車両100を制御するために用いられる車両制御情報を生成する生成部212、車両制御情報を車両100に対して送信する送信部213、車両100の動作に関する車両動作情報を取得する取得部221、作業装置である組付ロボット300を制御するために用いられる作業装置制御情報を生成する生成部222、および、作業装置制御情報を組付ロボット300に対して送信する送信部223として機能する。本実施形態では、取得部211は、外部センサ250から出力される検出結果を用いて車両位置情報を取得する。車両位置情報には、車両100の位置および向きの情報が含まれている。生成部212は、車両位置情報を用いて車両制御情報を生成する。生成部212は、車両制御情報として、走行制御信号を生成する。取得部221は、外部センサ250から出力される検出結果を用いて車両動作情報を取得する。本実施形態では、車両動作情報には、車両100の位置、向き、および、速度の情報が含まれている。生成部222は、車両動作情報を用いて作業装置制御情報を生成する。本実施形態では、生成部222は、動作制御情報として、組付ロボット300を動作させるための動作制御信号を生成する。生成部222は、走行中の車両100の所定の位置に所定の向きで部品が組付けられるように、かつ、車両100の被組付け面に平行な方向における組付け時の車両100と部品との相対速度がゼロになるように、動作制御信号を生成する。以下の説明では、車両100の所定の位置に所定の向きで部品を組付ける動作であって、車両100の被組付け面に平行な方向における組付け時の車両100と部品との相対速度がゼロになる動作のことを、理想的な組付け動作と呼ぶ。
【0016】
外部センサ250は、車両100の外部に位置している。外部センサ250は、車両100の位置および向きを検出するために用いられる。本実施形態では、外部センサ250は、工場に設置されているカメラである。外部センサ250は、図示されていない通信装置を備えており、有線通信あるいは無線通信によりサーバ装置200と通信することができる。なお、外部センサ250は、カメラに限られず、例えば、LiDARでもよい。
【0017】
図4は、本実施形態における組付ロボット300の構成を示す説明図である。組付ロボット300は、制御装置310と、アーム部320と、通信装置330とを備えている。本実施形態では、制御装置310は、組付ロボット300の各部を制御する。アーム部320は、垂直多関節型のロボットアームにより構成されている。アーム部320の先端部には、部品を把持するためのエンドエフェクタが装着されている。本実施形態では、エンドエフェクタは、部品を挟み込むように構成されている。通信装置330は、有線通信あるいは無線通信によりサーバ装置200と通信することができる。なお、アーム部320は、垂直多関節型のロボットアームに限られず、例えば、水平多関節型のロボットアームや、直交型のロボットアームや、パラレルリンク型のロボットアームで構成されてもよい。エンドエフェクタは、部品を挟み込むのではなく、部品を吸着するように構成されてもよい。
【0018】
制御装置310は、プロセッサ311と、メモリ312と、入出力インタフェース313と、内部バス314とを備えるコンピュータにより構成されている。プロセッサ311、メモリ312、および、入出力インタフェース313は、内部バス314を介して、双方向に通信可能に接続されている。入出力インタフェース313には、アーム部320、および、通信装置330が接続されている。
【0019】
本実施形態では、プロセッサ311は、メモリ312に予め記憶されているコンピュータプログラムPG3を実行することにより、作業装置制御情報を取得する取得部315、および、アーム部320を制御する制御部317として機能する。本実施形態では、取得部315は、作業装置制御情報として、サーバ装置200から動作制御信号を取得する。制御部317は、動作制御信号に応じてアーム部320を制御する。
【0020】
図1に示すように、報知装置500は、システム10の管理者や工場の作業員に、工場において異常が発生したことを報知するための装置である。以下の説明では、システム10の管理者や工場の作業員のことを管理者等と呼ぶ。報知装置500は、例えば、工場に設けられている警告ブザーや、工場に設けられている警告ランプである。報知装置500は、管理者等により携帯されるタブレット端末であってもよい。報知装置500は、図示されていない通信装置を備えており、有線通信あるいは無線通信によりサーバ装置200と通信することができる。
【0021】
図5は、工場KJにおいて車両100が無人運転により走行する様子を示す説明図である。本実施形態では、工場KJは、第1場所PL1と、第2場所PL2と、第3場所PL3とを備えている。第1場所PL1、第2場所PL2、および、第3場所PL3は、車両100が走行可能な走行路SRによって接続されている。工場KJには、走行路SRに沿って、複数の外部センサ250が設置されている。
【0022】
第1場所PL1は、車両100を組み立てる作業が実施される場所である。第1場所PL1において組み立てられた車両100は、無人運転により走行可能な状態、換言すれば、無人運転により「走る」、「曲がる」、「止まる」の3つの機能を発揮可能な状態になっている。本実施形態では、第1場所PL1において組み立てられた車両100は、プラットフォームの形態となっている。車両100は、無人運転により第1場所PL1から第2場所PL2に移動する。
【0023】
第2場所PL2は、車両100に対してさらに部品を組付ける作業が実施される場所である。第2場所PL2には、組付ロボット300が配置されている。第2場所PL2において組付けられる部品は、例えば、車体部品や、座席等の内装部品や、ヘッドランプや、ワイパー等である。本実施形態では、第2場所PL2において部品が組付けられた車両100は、完成車の形態となっている。車両100は、無人運転により第2場所PL2から第3場所PL3に移動する。
【0024】
第3場所PL3は、車両100を検査する作業が実施される場所である。第3場所PL3における検査に合格した車両100は、工場KJから出荷される。なお、工場KJから出荷される車両100は、完成車の形態でなくてもよい。つまり、工場KJから出荷される車両100には、未装着の部品が存在してもよい。この場合、車両100が工場KJから出荷された後、未装着の部品が車両100に装着されてもよい。
【0025】
図6は、本実施形態における車両制御の処理手順を示すフローチャートである。本実施形態では、車両100の個体識別番号が記録されている二次元コードが車両100に貼付されている。工場KJの作業員が読取装置により二次元コードを読み取ることにより、読取装置からサーバ装置200に個体識別番号が送信される。サーバ装置200が個体識別番号を受信した場合に、車両制御が開始される。サーバ装置200のプロセッサ201は、第1ルーチンR100を実行する。車両100のプロセッサ111は、第2ルーチンR200を実行する。
【0026】
第1ルーチンR100には、ステップS110、ステップS120、ステップS130、および、ステップS140が含まれている。ステップS110にて、取得部211は、外部センサ250から出力される検出結果を用いて車両位置情報を取得する。本実施形態では、車両位置情報には、工場KJのグローバル座標系GAにおける車両100の位置および向きが含まれている。本実施形態では、外部センサ250は、工場KJに設置されているカメラであり、外部センサ250からは、検出結果として画像が出力される。外部センサ250の位置および向きは、予め調整されている。取得部211は、外部センサ250から取得した画像を用いて、工場にKJおける車両100の位置および向きを取得する。
【0027】
車両100の位置を取得する方法に関して、取得部211は、例えば、画像から車両100の外形を検出し、画像の座標系、換言すれば、工場KJのローカル座標系における車両100の測位点の座標を算出し、算出された座標をグローバル座標系GAにおける座標に変換することにより、車両100の位置を取得することができる。画像に含まれる車両100の外形は、例えば、人工知能を活用した検出モデルに画像を入力することにより検出できる。検出モデルとしては、例えば、セマンティックセグメンテーションとインスタンスセグメンテーションとのいずれかを実現するように学習された学習済みの機械学習モデルが挙げられる。この機械学習モデルとしては、例えば、学習用データセットを用いた教師あり学習により学習させた畳み込みニューラルネットワーク(以下、CNN)を用いることができる。学習用データセットには、例えば、車両100を含む複数の訓練画像と、訓練画像における各領域が車両100を示す領域と車両100以外を示す領域とのいずれであるかを示す正解ラベルとが含まれる。CNNの学習時には、バックプロパゲーション(誤差逆伝播法)により、検出モデルによる出力結果と正解ラベルとの誤差を低減するように、CNNのパラメータが更新されることが好ましい。車両100の向きを取得する方法に関して、取得部211は、例えば、オプティカルフロー法を利用して、画像のフレーム間における車両100の特徴点の位置変化から車両100の移動ベクトルを算出し、移動ベクトルの向きに基づいて車両100の向きを推定することにより、車両100の向きを取得することができる。
【0028】
ステップS120にて、生成部212は、車両100が次に向かうべき目標位置を決定する。本実施形態では、目標位置は、グローバル座標系GAにおけるX,Y,Zの座標で表される。サーバ装置200には、車両100が走行すべき理想経路IRが予め記憶されている。理想経路IRは、出発地を示すノード、通過点を示すノード、目的地を示すノード、および、各ノードを結ぶリンクで表されている。生成部212は、車両100の位置情報と理想経路IRとを用いて、次に車両100が向かうべき目標位置を決定する。生成部212は、車両100の現在地よりも先の理想経路IR上に目標位置を決定する。
【0029】
ステップS130にて、生成部212は、決定した目標位置に向かって車両100を走行させるための走行制御信号を生成する。本実施形態では、走行制御信号は、車両100の加速度および操舵角をパラメータとして含んでいる。生成部212は、車両100の位置の推移から車両100の現在の走行速度を算出し、算出した走行速度と予め定められた車両100の目標速度とを比較する。生成部212は、走行速度が目標速度よりも低い場合には、車両100が加速するように加速度を決定し、走行速度が目標速度よりも高い場合には、車両100が減速するように加速度を決定する。生成部212は、車両100が理想経路IR上に位置している場合には、車両100が理想経路IR上から逸脱しないように操舵角を決定し、車両100が理想経路IR上に位置していない場合、換言すれば、車両100が理想経路IR上から逸脱している場合には、車両100が理想経路IR上に復帰するように操舵角を決定する。
【0030】
ステップS140にて、送信部213は、走行制御信号を車両100に対して送信する。プロセッサ201は、所定の周期で、車両100の位置情報の取得、目標位置の決定、走行制御信号の生成、および、走行制御信号の送信を含む第1ルーチンR100を繰り返す。
【0031】
車両100のプロセッサ111は、第1ルーチンR100が実行されている間、第2ルーチンR200を実行する。第2ルーチンR200には、ステップS210、および、ステップS220が含まれている。ステップS210にて、取得部115は、サーバ装置200から走行制御信号を受信する。ステップS220にて、制御部117は、受信した走行制御信号を用いてアクチュエータ群120を制御することにより、走行制御信号に含まれている加速度および操舵角で車両100を走行させる。プロセッサ111は、所定の周期で、走行制御信号の受信、および、アクチュエータ群120の制御を含む第2ルーチンR200を繰り返す。本実施形態のシステム10によれば、車両100を遠隔制御により走行させることができるため、クレーンやコンベア等の搬送設備を用いずに、車両100を移動させることができる。
【0032】
図7は、組付ロボット制御の処理手順を示すフローチャートである。この処理は、サーバ装置200のプロセッサ201により実行される。ステップS310にて、取得部221は、外部センサ250から出力される検出結果を取得し、外部センサ250の検出結果を用いて車両動作情報を取得する。本実施形態では、取得部221は、車両動作情報として、走行中の車両100の位置、向き、および、速度を取得する。
【0033】
ステップS320にて、生成部222は、車両100の走行状態に異常があるか否かを判定する。本実施形態では、生成部222は、車両100の位置、向き、および、速度の少なくとも1つが所定の範囲外である場合には、走行状態に異常があると判定する。
【0034】
ステップS320において走行状態に異常があると判定されなかった場合には、生成部222は、ステップS330にて、車両動作情報に応じてアーム部320を動作させる動作制御信号を生成する。生成部222は、走行中の車両100に理想的な組付け動作で部品が組付けられるように、動作制御信号を生成する。
【0035】
ステップS320において走行状態に異常があると判定された場合、生成部222は、ステップS335にて、アーム部320を停止させる動作制御信号を生成し、ステップS338にて、生成部222は、車両100を停止させる走行制御信号を生成して車両100に対して送信し、報知装置500により異常の発生を報知させる報知制御信号を生成して報知装置500に送信する。
【0036】
ステップS330またはステップS338の後、送信部213は、動作制御信号を組付ロボット300に対して送信する。プロセッサ201は、所定の周期で、この処理を繰り返す。
【0037】
図8は、組付ロボット300の動作を模式的に示す第1の説明図である。図9は、組付ロボット300の動作を模式的に示す第2の説明図である。図10は、組付ロボット300の動作を模式的に示す第3の説明図である。図8から図10には、車両100の速度ベクトルが矢印で表されており、組付ロボット300に把持されている部品PTの速度ベクトルが白抜き矢印で表されている。図8に示すように、車両100が理想経路IR上を理想的な走行状態で走行する場合には、組付ロボット300は、例えば、予めティーチングされた動作により、走行中の車両100に部品PTを適切に組付けることができる。しかしながら、製造途中の車両100では、図9図10に示すように、車両100の走行状態が不安定になりやすい。車両100の走行状態が不安定になると、走行中の車両100に対して部品を適切に組付けることが難しくなるため、組付け作業の作業性が低下し、組付け不良が発生しやすくなる。
【0038】
図9に示すように、例えば、車両100のホイールアライメントがずれていると、車両100が直進できずに、車両100の位置が理想経路IR上から左右にずれやすい。この場合、車両100を理想経路IR上に復帰させようとして操舵角の変更が繰り返されて、車両100の位置および向きが周期的に変化する。そのため、車両100に対する部品PTの位置および向きが左右にずれる可能性や、車両100と部品PTとの相対速度が大きくなる可能性がある。
【0039】
図10に示すように、例えば、車両100の走行に対する抵抗が大きいと、車両100の速度が低下しやすい。この場合、車両100の速度を回復させようとして加速度の付与が繰り返されて、車両100の速度が周期的に変化する。そのため、車両100に対する部品PTの位置が前後にずれる可能性や、車両100と部品PTとの相対速度が大きくなる可能性がある。図9に示した現象と図10に示した現象とが組み合わさって、車両100の走行状態が不安定になる可能性もある。
【0040】
このような問題に対して、本実施形態では、車両100の走行状態に応じて組付ロボット300の動作が決定されるため、車両100の走行状態が不安定になったとしても、車両100に対して部品PTの位置や向きがずれること、および、車両100と部品PTとの相対速度が大きくなることを抑制できる。
【0041】
以上で説明した本実施形態におけるシステム10によれば、車両100の走行状態に応じて組付ロボット300の動作が決定されるため、車両100の走行状態が不安定になったとしても、走行中の車両100に対して組付ロボット300により部品PTを適切に組付けることができる。したがって、車両100を停止させなくても、車両100に対して部品PTを適切に組付けることができるため、部品PTの組付け作業の作業効率を高めることができる。
【0042】
また、本実施形態では、サーバ装置200は、アーム部320の制御に用いられるパラメータを含む作業装置制御情報を生成して組付ロボット300に送信する。組付ロボット300は、作業装置制御情報に含まれるパラメータを用いて、アーム部320を制御する。そのため、サーバ装置200から組付ロボット300に作業装置制御情報を送信することにより、組付ロボット300に車両100の走行状態に応じた動作を実行させることができる。
【0043】
また、本実施形態では、サーバ装置200は、さらに、車両100の制御に用いられる車両制御情報を生成して車両100に送信する。そのため、サーバ装置200により車両100と組付ロボット300とを協働させることができる。
【0044】
また、本実施形態では、サーバ装置200は、車両100の走行状態に異常があると判定した場合には、車両100と組付ロボット300とを停止させる。そのため、車両100の走行状態に異常がある場合には、車両100に対する部品PTの組付けを中止することができる。さらに、本実施形態では、サーバ装置200は、車両100の走行状態に異常があると判定した場合には、異常が発生したことを報知装置500により管理者等に報知する。そのため、異常が発生したことを早期に管理者等に認識させることができる。
【0045】
B.第2実施形態:
図11は、第2実施形態におけるシステム10bの構成を示す説明図である。図12は、第2実施形態における組付ロボット300の構成を示す説明図である。本実施形態では、組付ロボット300がカメラ340を備えていること、および、組付ロボット300がカメラ340の検出結果を用いて車両動作情報を生成することが第1実施形態とは異なる。その他の構成については、特に説明しない限り、第1実施形態と同じである。
【0046】
図12に示すように、本実施形態では、組付ロボット300は、車両100の動作を検出するためのカメラ340を備えている。カメラ340は、アーム部320の先端部に固定されている。カメラ340は、アーム部320が動作することにより移動する。なお、カメラ340は、アーム部320の基部に固定されていてもよい。この場合、カメラ340は、アーム部320が動作しても移動しない。組付ロボット300は、カメラ340に代えて、LiDARを備えてもよい。車両100の動作を検出するためのカメラ340やLiDARのことをセンサと呼ぶことがある。
【0047】
本実施形態では、プロセッサ311は、メモリ312に予め記憶されているコンピュータプログラムPG3を実行することにより、車両動作情報を取得する取得部315、アーム部320を制御するための動作制御信号を生成する生成部316、および、アーム部320を制御する制御部317として機能する。なお、本実施形態では、組付ロボット300が自ら動作制御信号を生成するため、サーバ装置200には、図3に示した取得部221、生成部222、および、送信部223が設けられていなくてもよい。
【0048】
図13は、第2実施形態における組付ロボット制御の処理手順を示すフローチャートである。この処理は、組付ロボット300のプロセッサ311により実行される。ステップS410にて、取得部315は、カメラ340から出力される検出結果を用いて車両動作情報を取得する。本実施形態では、車両動作情報には、グローバル座標系GAにおける車両100の位置、向き、および、速度が含まれている。カメラ340の検出結果からは、カメラ340を基準としたローカル座標系における車両100の位置、向き、および、速度が得られる。取得部315は、例えば、カメラ340の検出結果に加えて、工場KJにおける組付ロボット300が設置されている位置および向きや、アーム部320に内蔵されているエンコーダの情報などから、グローバル座標系GAにおけるカメラ340の位置および向きを取得できる。このため、取得部315は、カメラ340を基準としたローカル座標系における車両100の位置、向き、および、速度を、グローバル座標系GAにおける車両100の位置、向き、および、速度に変換できる。
【0049】
ステップS420にて、生成部316は、車両100の走行状態に異常があるか否かを判定する。本実施形態では、生成部316は、車両100の位置、向き、および、速度の少なくとも1つが所定の範囲外である場合には、走行状態に異常があると判定する。
【0050】
ステップS420において走行状態に異常があると判定されなかった場合には、生成部316は、ステップS430にて、車両動作情報に応じてアーム部320を動作させる動作制御信号を生成する。生成部316は、走行中の車両100に理想的な組付け動作で部品が組付けられるように、動作制御信号を生成する。生成部316は、例えば、ティーチングにより予め生成された動作制御信号を、車両動作情報に応じて補正することにより、動作制御信号を生成することができる。なお、車両動作情報には、グローバル座標系GAにおける車両100の位置、向き、および、速度ではなく、アーム部320の先端部と車両100との相対的な位置、相対的な向き、および、相対的な速度が含まれていてもよい。この場合であっても、生成部316は、走行中の車両100に、動作制御信号を生成することができる。カメラ340とアーム部320の先端部との位置関係は既知であるため、取得部315は、カメラ340を基準としたローカル座標系における車両100の位置、向き、および、速度から、アーム部320の先端部と車両100との相対的な位置、相対的な向き、および、相対的な速度を取得することができる。
【0051】
ステップS420において走行状態に異常があると判定された場合、生成部316は、ステップS435にて、アーム部320を停止させる動作制御信号を生成する。ステップS438にて、生成部316は、車両100を停止させる走行制御信号を生成して車両100に送信し、報知装置500により異常の発生を報知させる報知制御信号を生成して報知装置500に送信する。
【0052】
ステップS430またはステップS438の後、制御部317は、動作制御信号に応じてアーム部320を制御する。プロセッサ311は、所定の周期で、この処理を繰り返す。
【0053】
以上で説明した本実施形態におけるシステム10bによれば、第1実施形態と同様に、車両100の走行状態が不安定になったとしても、走行中の車両100に対して組付ロボット300により部品PTを適切に組付けることができる。特に、本実施形態では、組付ロボット300は、カメラ340の検出結果を用いて車両動作情報を取得し、アーム部320を動作させるための動作制御信号を自ら生成することができる。
【0054】
C.第3実施形態:
図14は、第3実施形態におけるシステム10cの構成を示す説明図である。図15は、第3実施形態における車両100の構成を示す説明図である。図16は、第3実施形態における組付ロボット300の構成を示す説明図である。本実施形態では、車両100に内部センサ140が搭載されていること、および、組付ロボット300が内部センサ140の検出結果に応じて動作制御信号を生成することが第2実施形態とは異なる。その他の構成については、特に説明しない限り、第2実施形態と同じである。
【0055】
図15に示すように、本実施形態では、車両100は、少なくとも1つの内部センサ140を備えている。内部センサ140は、車両100に搭載されている。内部センサ140は、車両100の動作を検出する。内部センサ140には、例えば、車両100の加速度を検出する加速度センサ、速度を検出する速度センサ、ヨー軸角速度を検出するヨーレートセンサ、車輪の回転速度を検出する車輪速センサ、操舵角を検出する操舵角センサ、カメラ、LiDAR、GPS受信機などが含まれ得る。
【0056】
本実施形態では、プロセッサ111は、メモリ112に予め記憶されているコンピュータプログラムPG1を実行することにより、サーバ装置200から車両制御情報として走行制御信号を取得する取得部115、走行制御信号に応じてアクチュエータ群120を制御する制御部117、および、内部センサ140の検出結果を組付ロボット300に対して送信する送信部118として機能する。
【0057】
図16に示すように、本実施形態では、組付ロボット300のプロセッサ311は、メモリ312に予め記憶されているコンピュータプログラムPG3を実行することにより、車両動作情報を取得する取得部315、アーム部320を動作させるための動作制御信号を生成する生成部316、および、アーム部320を制御する制御部317として機能する。本実施形態では、取得部315は、車両動作情報として、車両100から内部センサ140の検出結果を取得する。
【0058】
以上で説明した本実施形態におけるシステム10cによれば、第2実施形態と同様に、車両100の走行状態が不安定になったとしても、走行中の車両100に対して組付ロボット300により部品PTを適切に組付けることができる。特に、本実施形態では、組付ロボット300は、車両100に搭載されている内部センサ140の検出結果を用いて、アーム部320を動作させるための動作制御信号を自ら生成することができる。
【0059】
D.第4実施形態:
図17は、第4実施形態におけるシステム10dの構成を示す説明図である。本実施形態では、車両100の動作に合わせて組付ロボット300の動作を調整するのではなく、組付ロボット300の動作に合わせて車両100の動作を調整することが第1実施形態とは異なる。その他の構成については、特に説明しない限り、第1実施形態と同じである。
【0060】
本実施形態では、組付ロボット300は、予めティーチングされた動作を実行する。例えば、アーム部320の誤差が積み重なることや、アーム部320による部品の把持ミスにより、組付け時の部品の位置や向きが理想的な位置や向きからずれる場合がある。この場合、車両100が理想経路IRを理想的な速度で走行したとしても、走行中の車両100に対して組付ロボット300により部品を適切に組み付けることができない。組付ロボット300は、組付ロボット300の動作に関する作業装置動作情報を、サーバ装置200に対して送信する。作業装置動作情報には、例えば、アーム部320の先端部の位置のずれ量、向きのずれ量、および、速度のずれ量が含まれている。
【0061】
本実施形態では、サーバ装置200の取得部211は、図6に示したステップS110にて、外部センサ250の検出結果から車両位置情報を取得し、組付ロボット300から作業装置動作情報を取得する。ステップS120にて、生成部212は、車両位置情報と作業装置動作情報に応じて、次の目標位置を決定する。生成部212は、組付ロボット300に把持されている部品と車両100との位置のずれが打ち消されるように、車両100の次の目標位置を決定する。このとき、次の目標位置が理想経路IRから逸脱しても構わない。ステップS130にて、生成部212は、組付ロボット300に把持されている部品と車両100との位置や向きや速度のずれが打ち消されるように、走行制御信号を生成する。ステップS130よりも後の内容は、第1実施形態と同じである。
【0062】
以上で説明した本実施形態におけるシステム10dによれば、組付ロボット300の動作のずれが打ち消されるように、車両100の動作が調整される。したがって、組付ロボット300の動作が不安定になったとしても、走行中の車両100に対して組付ロボット300により部品PTを適切に組付けることができる。
【0063】
E.第5実施形態:
図18は、第5実施形態におけるシステム10eの構成を示す説明図である。本実施形態では、走行中の車両100に対して組付ロボット300により部品を組付けるのではなく、停止中の車両100に対して組付ロボット300により部品を組付けることが第1実施形態とは異なる。その他の構成については、特に説明しない限り、第1実施形態と同じである。
【0064】
車両100は、組付ロボット300による組付け作業が実施される作業場所まで無人運転により移動し、無人運転により作業場所に停止する。組付ロボット300は、作業場所に停止している車両100に対して部品を組付ける。組付け作業が終了した後、車両100は、無人運転により次の作業場所に移動する。例えば、車両100の走行状態が不安定になった場合に、目標の停止位置P1と実際の停止位置P2とがずれる可能性がある。本実施形態では、車両100の停止位置がずれる場合に、組付ロボット300の動作が調整される。
【0065】
本実施形態では、取得部221は、車両動作情報として、目標の停止位置P1と実際の停止位置P2とのずれ量d1を取得する。取得部211は、例えば、外部センサ250の検出結果から、ずれ量d1を取得することができる。取得部211は、車両100が停止してからずれ量d1を取得してもよいし、車両100が停止する前に予測によりずれ量d1を取得してもよい。例えば、基準となる制動性能から車両100の制動性能がどの程度ずれているのかを予め把握することにより、ずれ量d1を予測することが可能になる。生成部222は、組付け時のアーム部320の先端部の位置がずれ量d1だけ補正されるように動作制御信号を生成し、送信部223は、組付ロボット300に動作制御信号を送信する。
【0066】
以上で説明した本実施形態におけるシステム10eによれば、車両100の停止位置のずれが打ち消されるように、組付ロボット300の動作が調整される。したがって、車両100の停止位置がずれたとしても、停止中の車両100に対して組付ロボット300により部品PTを適切に組付けることができる。
【0067】
F.第6実施形態:
図19は、第6実施形態におけるシステム10fの構成を示す説明図である。本実施形態では、組付ロボット300の動作に合わせて車両100の動作を調整することが第4実施形態と共通するが、走行中の車両100に対して組付ロボット300により部品を組付けるのではなく、停止中の車両100に対して組付ロボット300により部品を組付けることが第4実施形態とは異なる。その他の構成については、特に説明しない限り、第4実施形態と同じである。
【0068】
車両100は、組付ロボット300による組付け作業が実施される作業場所まで無人運転により移動し、無人運転により作業場所に停止する。組付ロボット300は、作業場所に停止している車両100に対して部品を組付ける。組付け作業が終了した後、車両100は、無人運転により次の作業場所に移動する。例えば、組付ロボット300の動作に誤差が積み重なった場合や、アーム部320による部品の把持位置がずれた場合には、車両100が目標の停止位置に停止したとしても、組付け時の目標の部品の位置P3と実際の部品の位置P4とがずれる可能性がある。本実施形態では、組付ロボット300の動作がずれる場合に、車両100の停止位置が調整される。
【0069】
サーバ装置200の取得部211は、例えば、外部センサ250の検出結果から車両100の位置および向きに関する車両位置情報と、組付ロボット300の動作に関する作業装置動作情報を取得する。取得部211は、作業装置動作情報として、組付け時の目標の部品の位置P3と実際の部品の位置P4とのずれ量d2を取得する。取得部211は、アーム部320が組付け位置に停止してからずれ量d2を取得してもよいし、アーム部320が組付け位置に停止する前に予測によりずれ量d2を取得してもよい。生成部212は、車両100の停止位置がずれ量d2だけ補正されるように走行制御信号を生成し、送信部213は、走行制御信号を車両100に送信する。
【0070】
以上で説明した本実施形態におけるシステム10fによれば、組付ロボット300の動作のずれが打ち消されるように、車両100の停止位置が調整される。したがって、組付ロボット300の動作がずれたとしても、停止中の車両100に対して組付ロボット300により部品PTを適切に組付けることができる。
【0071】
G.第7実施形態:
図20は、第7実施形態におけるシステム10gの構成を示す説明図である。本実施形態では、システム10gが、組付ロボット300ではなく、ワゴン400を備えていることが第1実施形態とは異なる。その他の構成については、特に説明しない限り、第1実施形態と同じである。なお、ワゴン400のことを作業装置と呼ぶことがある。
【0072】
ワゴン400は、車両100が走行する走行路の脇に配置されている。ワゴン400は、荷台405を備えている。荷台405には、車両100に組付けられる部品が積載されている。作業員WKは、荷台405から部品を取り出して車両100に組付ける。例えば、作業員WKは、ワゴン400と車両100との間を往復して、車両100に複数の部品を組付ける。なお、荷台405には、部品に代えて、あるいは、部品とともに、車両100に対する作業に用いられる工具が積載されてもよい。工具は、例えば、車両100に部品を組付けるための電動工具である。
【0073】
図21は、ワゴン400の構成を示す説明図である。ワゴン400は、制御装置410と、制御装置410の制御下で駆動するアクチュエータ群420と、無線通信によりサーバ装置200と通信するための通信装置430とを備えている。本実施形態では、アクチュエータ群420には、ワゴン400を加速させるための駆動装置のアクチュエータ、ワゴン400の進行方向を変更するための操舵装置のアクチュエータ、および、ワゴン400を減速させるための制動装置のアクチュエータが含まれている。駆動装置には、バッテリ、バッテリの電力により駆動する走行用モータ、および、走行用モータにより回転する車輪が含まれている。駆動装置のアクチュエータには、走行用モータが含まれている。なお、ワゴン400は、操舵装置や制動装置を備えていなくてもよい。この場合であっても、ワゴン400は、走行用モータにより、加速、減速、および、前進と後退との切り替えを実行することができる。
【0074】
制御装置410は、プロセッサ411と、メモリ412と、入出力インタフェース413と、内部バス414とを備えるコンピュータにより構成されている。プロセッサ411、メモリ412、および、入出力インタフェース413は、内部バス414を介して、双方向に通信可能に接続されている。入出力インタフェース413には、無線通信によりサーバ装置200と通信するための通信装置430が接続されている。
【0075】
プロセッサ411は、メモリ412に予め記憶されているコンピュータプログラムPG4を実行することにより、作業装置制御情報を取得する取得部415、および、アクチュエータ群420を制御する制御部417として機能する。本実施形態では、図3に示したサーバ装置200の生成部222は、作業装置制御情報として、アクチュエータ群420を制御するための動作制御信号を生成し、送信部223は、動作制御信号をワゴン400に対して送信する。ワゴン400の制御部417は、サーバ装置200から受信した動作制御信号に従って、アクチュエータ群420を制御する。
【0076】
図22は、ワゴン制御の処理手順を示すフローチャートである。この処理は、サーバ装置200のプロセッサ201により繰り返し実行される。この処理は、例えば、管理者等がサーバ装置200に所定の開始操作を実施した場合に開始される。ステップS710にて、取得部221は、作業対象の車両100に対する部品の組付けが完了したか否かを判定する。以下の説明では、作業対象の車両100のことを対象車両100と呼ぶ。取得部221は、例えば、作業員WKが作業場所に設置されているボタンを操作した場合に送信される信号を受信した場合に、対象車両100に対する部品の組付けが完了したと判定する。
【0077】
ステップS510において対象車両100に対する部品の組付けが完了したと判定されなかった場合、ステップS520にて、取得部221は、対象車両100の動作に関する情報を取得する。ステップS530にて、生成部222は、ワゴン400を対象車両100に追従させる動作制御信号を生成する。本開示において、ワゴン400が対象車両100に追従するとは、ワゴン400が対象車両100と同じ向きに走行することを意味する。すなわち、ワゴン400が対象車両100に追従することには、対象車両100の後ろをワゴン400が走行することだけではなく、対象車両100の横をワゴン400が走行することや、対象車両100の前をワゴン400が走行することが含まれる。本実施形態では、生成部222は、ワゴン400と対象車両100との相対速度が所定範囲内になるように動作制御信号を生成する。生成部222は、ワゴン400と対象車両100との相対速度がゼロになるように動作制御信号が生成することが好ましい。
【0078】
ステップS510において対象車両100に対する部品の組付けが完了したと判定された場合、ステップS525にて、生成部222は、後続車両が存在するか否かを判定する。生成部222は、例えば、工場KJの工程管理システムから製造計画および製造実績に関する情報を取得することにより、後続車両が存在するか否かを判定する。例えば、1日に100台の車両100を製造する計画である場合には、その日の50台目の車両100に部品の組付けが完了した時点では後続車両が存在するが、その日の100台目の車両100に部品の組付けが終了した後には後続車両が存在しない。
【0079】
ステップS525にいて後続車両が存在すると判定された場合、ステップS535にて、生成部222は、ワゴン400を後続車両に接近させる制御信号を生成する。生成部222は、ワゴン400と後続車両との距離が所定の距離以下になるように、動作制御信号を生成する。
【0080】
ステップS525にて後続車両が存在すると判定されなかった場合、ステップS538にて、生成部222は、ワゴン400を停止させる動作制御信号を生成する。生成部222は、ワゴン400をその場で停止させる動作制御信号を生成してもよいし、ワゴン400を所定のホームポジションに移動させてから停止させる動作制御信号を生成してもよい。
【0081】
ステップS540にて、送信部223は、ステップS530、ステップS535、または、ステップS538において生成した動作制御信号をワゴンに送信する。プロセッサ201は、管理者等によりサーバ装置200に対して所定の終了操作が実施されるまで、上述した処理を繰り返す。ワゴン400の取得部415は、通信装置430を介して動作制御信号を受信し、動作制御信号に従ってアクチュエータ群420を制御する。
【0082】
図23は、ワゴン400の動作を示す説明図である。図23の上段に示すように、初期状態では、ワゴン400は、作業場所の所定のホームポジションで停止している。図23の中段に示すように、対象車両100が作業場所に進入すると、ワゴン400は、対象車両100Aに追従する。作業員WKは、ワゴン400の荷台から部品を取り出して対象車両に組付ける。さらに、作業員WKは、ワゴン400の荷台から別の部品を取り出して部品を対象車両100Aに組付ける。すなわち、作業員WKは、ワゴン400と対象車両100Aとの間を往復しながら、部品の組付け作業を実施する。図23の下段に示すように、対象車両100Aに対する部品の組付けが完了すると、ワゴン400は、次に作業場所に進入する後続車両100Bに接近するように移動する。ここで、ワゴン400が自走する機能を有していない場合には、対象車両100Aが移動するにつれてワゴン400と対象車両100Aとの間の距離が長くなるため、ワゴン400から取り出した部品を対象車両100Aに組付ける作業員WKの作業効率が低下する。また、ワゴン400が自走する機能を有していない場合であっても、作業員WKが手動でワゴン400を移動させる場合には、ワゴン400と対象車両100Aとの間の距離が長くなることを抑制できるが、作業員WKの手間が増えるため、作業員WKの作業効率が低下する。これに対して、本実施形態では、ワゴン400が対象車両100Aに追従するため、作業員WKが部品の組付け作業を実施する間、ワゴン400と対象車両100Aとの間の距離が一定に保たれる。
【0083】
以上で説明した本実施形態におけるシステム10gによれば、ワゴン400が対象車両100に追従するため、ワゴン400と対象車両100との距離が長くなることを抑制できる。したがって、ワゴン400と対象車両100Aとの間を移動しながら作業を実施する作業員WKの作業効率を高めることができる。
【0084】
また、本実施形態では、ワゴン400と対象車両100との相対速度が所定範囲内になるようにワゴン400が制御されるため、ワゴン400と対象車両100との距離が長くなることを効果的に抑制できる。
【0085】
また、本実施形態では、先行車両100Aに対する作業が終了した後、ワゴン400が自動で後続車両100Bに接近するため、作業員WKが手動でワゴン400を後続車両100Bに近付ける手間がかからない。したがって、作業員WKの作業効率をさらに高めることができる。
【0086】
また、本実施形態では、ワゴン400が後続車両100Bに向かって移動中に、後続車両100Bの動作を取得するため、早期に後続車両100Bの動作を取得することができ、ワゴン400を後続車両100Bに追従させやすくできる。
【0087】
また、本実施形態では、後続車両100Bが存在しない場合には、ワゴン400が自動で停止する。したがって、後続車両100Bが存在しないにもかかわらずワゴン400が移動を継続してエネルギが無駄に消費されることを抑制できる。
【0088】
H.第8実施形態:
図24は、第8実施形態におけるシステム10hの構成を示す説明図である。図25は、第8実施形態におけるワゴン400の構成を示す説明図である。本実施形態では、ワゴン400がサーバ装置200から受信した動作制御信号に従って走行するのではなく、車両100から取得した車両動作情報を用いて自ら動作制御信号を生成して走行することが第7実施形態とは異なる。その他の構成については、特に説明しない限り、第7実施形態と同じである。
【0089】
図25に示すように、本実施形態では、プロセッサ411は、メモリ412に予め記憶されているコンピュータプログラムPG4を実行することにより、車両動作情報を取得する取得部415、動作制御信号を生成する生成部416、および、アクチュエータ群420を制御する制御部417として機能する。本実施形態では、取得部415は、車両動作情報として、車両100から走行制御信号を取得する。車両100に内部センサ140が設けられている場合には、取得部415は、車両100から内部センサ140の検出結果を取得し、検出結果から車両動作情報を取得してもよい。生成部416は、車両動作情報に応じて、ワゴン400が車両100に追従するように動作制御信号を生成し、制御部417は、動作制御信号に応じてアクチュエータ群420を制御する。
【0090】
以上で説明した本実施形態におけるシステム10hによれば、第7実施形態と同様に、ワゴン400が対象車両100に追従するため、ワゴン400と対象車両100との距離が長くなることを抑制できる。特に、本実施形態では、サーバ装置200からの遠隔制御によらずに、ワゴン400を車両100に追従させることができる。
【0091】
I.第9実施形態:
図26は、第9実施形態におけるシステム10iの構成を示す説明図である。図27は、第9実施形態におけるワゴン400の構成を示す説明図である。本実施形態では、ワゴン400にカメラ440が搭載されており、カメラ440により取得したワゴン400と車両100との相対位置に応じて、ワゴン400の動作を決定することが第7実施形態とは異なる。その他の構成については、特に説明しない限り、第7実施形態と同じである。
【0092】
図27に示すように、本実施形態では、ワゴン400は、カメラ440を備えている。カメラ440は、ワゴン400から車両100を撮像可能な位置に固定されている。本実施形態では、カメラ440は、ステレオカメラであり、車両100の動作に加えて、車両100との距離を取得することができる。カメラ440は、制御装置410の入出力インタフェースに接続されている。ワゴン400には、カメラ440に代えて、例えば、LiDARやソナー等が搭載されてもよい。なお、本開示では、車両100の動作を検出するためのカメラ440やLiDARやソナー等のことをセンサと呼ぶことがある。
【0093】
本実施形態では、プロセッサ411は、メモリ412に予め記憶されているコンピュータプログラムPG4を実行することにより、車両動作情報を取得する取得部415、動作制御情報を生成する生成部416、および、アクチュエータ群420を制御する制御部417として機能する。本実施形態では、取得部415は、カメラ440の検出結果を取得し、検出結果から車両動作情報を取得する。例えば、取得部415は、カメラ440により取得した画像を解析することにより、ワゴン400と対象車両100との距離を取得する。生成部416は、車両動作情報に応じて、ワゴン400が車両100に追従するように動作制御信号を生成し、制御部417は、動作制御信号に応じてアクチュエータ群420を制御する。
【0094】
以上で説明した本実施形態におけるシステム10iによれば、第7実施形態と同様に、ワゴン400が対象車両100に追従するため、ワゴン400と対象車両100との距離が長くなることを抑制できる。特に、本実施形態では、ワゴン400を自律的に車両100に追従させることができる。
【0095】
J.他の実施形態:
(J1)上述した各実施形態では、サーバ装置200により車両100の位置情報の取得から走行制御信号の生成までの処理が実行される。これに対して、車両100により車両100の位置情報の取得から走行制御信号の生成までの処理の少なくとも一部が実行されてもよい。例えば、以下の(1)~(3)の形態であってもよい。
【0096】
(1)サーバ装置200は、車両100の位置情報を取得し、車両100が次に向かうべき目標位置を決定し、取得した位置情報に表されている車両100の現在地から目標位置までの経路を生成してもよい。サーバ装置200は、現在地と目的地との間の目標位置までの経路を生成してもよいし、目的地までの経路を生成してもよい。サーバ装置200は、生成した経路を車両100に対して送信してもよい。車両100は、サーバ装置200から受信した経路上を車両100が走行するように走行制御信号を生成し、生成した走行制御信号を用いてアクチュエータ群120を制御してもよい。
【0097】
(2)サーバ装置200は、車両100の位置情報を取得し、取得した位置情報を車両100に対して送信してもよい。車両100は、車両100が次に向かうべき目標位置を決定し、受信した位置情報に表されている車両100の現在地から目標位置までの経路を生成し、生成した経路上を車両100が走行するように走行制御信号を生成し、生成した走行制御信号を用いてアクチュエータ群120を制御してもよい。なお、上述した各実施形態において、車両動作情報は、車両100の現在地から目標位置までの経路であってもよい。
【0098】
(3)上記(1)~(2)の形態において、車両100に内部センサが搭載されており、経路の生成と走行制御信号の生成との少なくとも一方に、内部センサから出力される検出結果が用いられてもよい。内部センサには、例えば、カメラ、LiDAR、ミリ波レーダ、超音波センサ、GPSセンサ、加速度センサ、ジャイロセンサなどが含まれ得る。例えば、上記(1)の形態において、サーバ装置200は、内部センサの検出結果を取得し、経路を生成する際に内部センサの検出結果を経路に反映してもよい。上記(1)の形態において、車両100は、内部センサの検出結果を取得し、走行制御信号を生成する際に内部センサの検出結果を走行制御信号に反映してもよい。上記(2)の形態において、車両100は、内部センサの検出結果を取得し、経路を生成する際に内部センサの検出結果を経路に反映してもよい。上記(2)の形態において、車両100は、内部センサの検出結果を取得し、走行制御信号を生成する際に内部センサの検出結果を走行制御信号に反映してもよい。
【0099】
(J2)上述した各実施形態において、サーバ装置200が設けられていなくてもよい。サーバ装置200が設けられていない場合には、上述したサーバ装置200を介した車両100と組付ロボット300との情報のやりとりや、サーバ装置200を介した車両100と組付ロボット300との情報のやりとりは、サーバ装置200を介さずに直接やりとりされてもよい。サーバ装置200が設けられていない場合、車両制御の処理手順は、車両100のプロセッサ111により実行される。図28に示すように、ステップS610にて、プロセッサ111は、外部センサ250から出力される検出結果を用いて車両100の位置情報を取得する。ステップS620にて、プロセッサ111は、車両100が次に向かうべき目標位置を決定する。メモリ112には、理想経路IRが予め記憶されている。ステップS630にて、プロセッサ111は、決定した目標位置に向かって車両100を走行させるための走行制御信号を生成する。ステップS640にて、プロセッサ111は、走行制御信号を用いてアクチュエータ群120を制御することにより、走行制御信号に表されている加速度および操舵角で車両100を走行させる。プロセッサ111は、所定の周期で、車両100の位置情報の取得、目標位置の決定、走行制御信号の生成、および、アクチュエータ群120の制御を繰り返す。このようにすれば、車両100は、サーバ装置200からの遠隔制御ではなく、自律的に走行することができる。また、車両100のプロセッサ111は、車両100の位置情報と組付ロボット300の作業装置動作情報を取得し、作業装置動作情報に応じて車両100の目標位置を決定し、決定した目標位置に向かって車両100を走行させるための走行制御信号を生成し、走行制御信号に応じてアクチュエータ群120を制御してもよい。
【0100】
(J3)上述した各実施形態において、車両100に内部センサが搭載され、経路の生成と走行制御信号の生成との少なくとも一方に、内部センサから出力される検出結果が用いられてもよい。例えば、車両100は、内部センサの検出結果を取得し、経路を生成する際に内部センサの検出結果を経路に反映してもよい。車両100は、内部センサの検出結果を取得し、走行制御信号を生成する際に内部センサの検出結果を走行制御信号に反映してもよい。
【0101】
(J4)上述した各実施形態では、車両100は、外部センサ250の検出結果を用いて車両100の位置情報を取得している。これに対して、車両100に内部センサが搭載され、車両100は、内部センサの検出結果を用いて位置情報を取得し、車両100が次に向かうべき目標位置を決定し、取得した位置情報に表されている車両100の現在地から目標位置までの経路を生成し、生成した経路を走行するための走行制御信号を生成し、生成した走行制御信号を用いてアクチュエータ群120を制御してもよい。この場合、車両100は、外部センサ250の検出結果を一切用いずに走行することができる。なお、車両100は、車両100の外部から目標到着時刻や渋滞情報を取得し、経路と走行制御信号の少なくとも一方に目標到着時刻や渋滞情報を反映させてもよい。
【0102】
(J5)上述した各実施形態では、サーバ装置200は、車両100に対して送信する走行制御信号を自動で生成している。これに対して、サーバ装置200は、車両100の外部に位置しているオペレータの手動操作に従って、車両100に対して送信する走行制御信号を生成してもよい。例えば、外部センサ250から出力される画像を表示するディスプレイ、車両100を遠隔操作するためのステアリング、アクセルペダル、ブレーキペダル、および、有線通信あるいは無線通信によりサーバ装置200と通信するための通信装置を備える操縦装置をオペレータが操作し、サーバ装置200は、操縦装置に加えられた操作に応じた走行制御信号を生成してもよい。
【0103】
(J6)上述した各実施形態において、車両100の動作のずれを組付ロボット300の動作で調整するのではなく、車両100の動作のずれを車両100の動作と組付ロボット300の動作とで調整してもよい。また、組付ロボット300の動作のずれを車両100の動作で調整するのではなく、組付ロボット300の動作のずれを車両100の動作と組付ロボット300の動作とで調整してもよい。
【0104】
(J7)上述した各実施形態において、各部品は、車両100の上側、下側、前側、後側、右側あるいは左側といった任意の方向から装着されてよく、それぞれ同じ方向から装着されてもよいし、それぞれ異なる方向から装着されてもよい。
【0105】
(J8)車両100は、複数のモジュールを組み合わせることによって製造されてもよい。モジュールは、車両100の部位や機能に応じて纏められた複数の部品によって構成されるユニットを意味する。例えば、車両100のプラットフォームは、プラットフォームの前部を構成する前方モジュールと、プラットフォームの中央部を構成する中央モジュールと、プラットフォームの後部を構成する後方モジュールとを組み合わせることで製造されてもよい。なお、プラットフォームを構成するモジュールの数は、3つに限られず、2つ以下や4つ以上であってもよい。また、プラットフォームを構成する部品に加えて、あるいは、これに代えて、車両100のうちプラットフォームとは異なる部分を構成する部品がモジュール化されてもよい。また、各種モジュールは、バンパやグリルといった任意の外装部品や、座席やコンソールといった任意の内装部品を含んでいてもよい。また、車両100に限らず、任意の態様の移動体が、複数のモジュールを組み合わせることによって製造されてもよい。こうしたモジュールは、例えば、複数の部品を溶接や固定具等によって接合することで製造されてもよいし、モジュールを構成する部品の少なくとも一部を鋳造によって一の部品として一体的に成型することで製造されてもよい。一の部品、特に比較的大型の部品を一体的に成型する成型手法は、ギガキャストやメガキャストとも呼ばれる。例えば、上記の前方モジュールや中央モジュールや後方モジュールは、ギガキャストを用いて製造されてもよい。
【0106】
(J9)上述した各実施形態において、車両100は、乗用車に限られず、例えば、トラック、バス、工事用車両などであってもよい。車両100は、四輪車に限られず、例えば、二輪車などであってもよい。車両100は、車輪により走行する形態に限られず、無限軌道により走行する形態であってもよい。
【0107】
(J10)無人運転による車両100の走行を利用して車両100を搬送させることを「自走搬送」とも呼ぶ。また、自走搬送を実現するための構成を、「車両遠隔制御自律走行搬送システム」とも呼ぶ。また、自走搬送を利用して車両100を生産する生産方式のことを「自走生産」とも呼ぶ。自走生産では、例えば、車両100を製造する工場KJにおいて、車両100の搬送の少なくとも一部が、自走搬送によって実現される。
【0108】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0109】
10…システム、100…車両、110…車両制御装置、111…プロセッサ、112…メモリ、113…入出力インタフェース、114…内部バス、115…取得部、117…制御部、118…送信部、120…アクチュエータ群、130…通信装置、140…内部センサ、200…サーバ装置、201…プロセッサ、202…メモリ、203…入出力インタフェース、204…内部バス、205…通信装置、211…取得部、212…生成部、213…送信部、221…取得部、222…生成部、223…送信部、250…外部センサ、300…組付ロボット、310…制御装置、311…プロセッサ、312…メモリ、313…入出力インタフェース、314…内部バス、315…取得部、316…生成部、317…制御部、320…アーム部、330…通信装置、340…カメラ、400…ワゴン、405…荷台、410…制御装置、411…プロセッサ、412…メモリ、413…入出力インタフェース、414…内部バス、415…取得部、416…生成部、417…制御部、420…アクチュエータ群、430…通信装置、440…カメラ、500…報知装置
【要約】
【課題】移動体に部品を組付ける作業の作業性を高める。
【解決手段】システムは、無人運転により移動可能な移動体に対する作業に用いられる作業装置と、作業装置が配置されている作業場所に無人運転により移動する移動体との少なくとも一方の制御に、他方の動作に関する動作情報を反映させることを特徴とする。
【選択図】図1
図1
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