(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】運転支援装置、運転支援方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B60W 50/12 20120101AFI20250109BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20250109BHJP
B60W 30/08 20120101ALI20250109BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20250109BHJP
B60K 28/10 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B60W50/12
B60W40/02
B60W30/08
G08G1/16 C
B60K28/10 Z
(21)【出願番号】P 2021204947
(22)【出願日】2021-12-17
【審査請求日】2023-11-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 滉一
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/083787(WO,A1)
【文献】特開2014-019295(JP,A)
【文献】特開2021-169247(JP,A)
【文献】特開2020-021149(JP,A)
【文献】特開2019-119237(JP,A)
【文献】特開2021-051705(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0139022(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0058642(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 ~ 50/16
G08G 1/00 ~ 1/16
B60K 28/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動源が発生させる駆動力を増加させるために前記車両の運転者が操作する加速操作子と、
前記車両の加速度が所定の制限加速度を超えないように前記車両を制御する加速制限制御を実行可能な制御ユニットと、を備え、
前記制御ユニットは、
前記車両の前方に位置する前方物標の種別に応じて異なる閾値距離を設定し、
前記車両と前記前方物標との間の距離が前記閾値距離以下であるときに成立する距離条件が成立し、且つ、前記運転者が前記加速操作子を誤って操作したときに成立する所定の誤操作条件が成立した場合、前記加速制限制御を実行する、
ように構成さ
れ、
更に、前記制御ユニットは、
前記前方物標が複数存在する場合、前記車両との前記距離が短い前方物標から順に、当該前方物標の種別に応じた閾値距離を設定するとともに当該前方物標の距離が前記閾値距離以下であるか否かを判定し、
前記距離が前記閾値距離以下である前方物標が存在する場合、前記距離条件を成立させる、
ように構成された、
運転支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転支援装置において、
前記制御ユニットは、前記前方物標の種別が車両である場合、前記前方物標の種別が歩行者である場合に比べて短くなるように前記閾値距離を設定するように構成された、
運転支援装置。
【請求項3】
請求項1に記載の運転支援装置において、
前記制御ユニットは、前記加速操作子の操作量が所定の閾値操作量以上であるとの条件、及び、前記加速操作子の操作速度が所定の閾値速度以上であるとの条件、の少なくとも一方が成立してから、前記運転者が前記加速操作子の誤った操作から復帰したときに成立する所定の復帰条件が成立するまでの期間、前記誤操作条件を成立させるように構成された、
運転支援装置。
【請求項4】
請求項1に記載の運転支援装置において、
前記制御ユニットは、前記車両の速度を表す車速が所定の閾値速度以下であって、前記距離条件が成立し且つ前記誤操作条件が成立している場合、前記加速制限制御を実行するように構成された、
運転支援装置。
【請求項5】
請求項1に記載の運転支援装置において、
前記制御ユニットは、前記前方物標の前記車両に対する相対速度が速いほど長くなるように前記閾値距離を設定するように構成された、
運転支援装置。
【請求項6】
車両に備わるコンピュータが、前記車両の加速度が所定の制限加速度を超えないように制限する加速制限制御を実行する運転支援方法において、
前記運転支援方法は、
前記コンピュータが、前記車両の前方に位置する前方物標の種別に応じて異なる閾値距離を設定する第1ステップと、
前記車両と前記前方物標との間の距離が前記閾値距離以下であるときに成立する距離条件が成立し、且つ、前記車両の運転者が、前記車両の駆動源が発生させる駆動力を増加させるために操作する加速操作子を誤って操作したときに成立する所定の誤操作条件が成立した場合、前記コンピュータが前記加速制限制御を実行する第2ステップと、
を含み、
更に、前記運転支援方法は、
前記前方物標が複数存在する場合、前記コンピュータが、前記車両との前記距離が短い前方物標から順に、当該前方物標の種別に応じた閾値距離を設定するとともに当該前方物標の距離が前記閾値距離以下であるか否かを判定する第3ステップと、
前記距離が前記閾値距離以下である前方物標が存在する場合、前記コンピュータが、前記距離条件を成立させる第4ステップと、
を含む、運転支援制御方法。
【請求項7】
車両の加速度が所定の制限加速度を超えないように制限する加速制限制御を実行するプログラムであって、前記車両に備わるコンピュータに、
前記車両の前方に位置する前方物標の種別に応じて異なる閾値距離を設定する第1ステップと、
前記車両と前記前方物標との間の距離が前記閾値距離以下であるときに成立する距離条件が成立し、且つ、前記車両の運転者が、前記車両の駆動源が発生させる駆動力を増加させるために操作する加速操作子を誤って操作したときに成立する所定の誤操作条件が成立した場合、前記加速制限制御を実行する第2ステップと、
を実行させ、
更に、
前記前方物標が複数存在する場合、前記車両との前記距離が短い前方物標から順に、当該前方物標の種別に応じた閾値距離を設定するとともに当該前方物標の距離が前記閾値距離以下であるか否かを判定する第3ステップと、
前記距離が前記閾値距離以下である前方物標が存在する場合、前記距離条件を成立させる第4ステップと、
を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転者が加速操作子を誤って操作した場合、車両の加速度が制限加速度を超えないように制限する加速制限制御を実行する運転支援装置、運転者が加速操作子を誤って操作した場合に加速制限制御を実行する運転支援方法、及び、運転者が加速操作子を誤って操作した場合に加速制限制御をコンピュータに実行させるプログラム、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、加速操作子の誤操作が行われた場合に加速制限制御を実行する運転支援装置が知られている。例えば、特許文献1に記載の運転支援装置(以下、「従来装置」と称呼する。)は、車両の発進時に、車両と車両の後方に位置する後方物標との間の距離及び路面勾配等に基いて閾値パターンを設定する。従来装置は、閾値パターンを用いて加速操作子の誤操作が行われたか否かを判定し、加速操作子の誤操作が行われた場合に加速制限制御を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
従来装置は、後方物標及び路面勾配等が存在する場合には、加速操作子の誤操作が行われていないにもかかわらずに誤操作が行われたと判定する可能性(誤判定の可能性)を低減でき、不要な加速制限制御を実行する可能性を低減できる。しかしながら、従来装置は、後方物標及び路面勾配等が存在しない場合には誤判定の可能性を低減できないため、不要な加速制限制御を実行してしまう可能性も低減できない。
【0005】
後方物標及び路面勾配等が存在しない場合であっても、不要な加速制限制御を実行する可能性を低減するために、本発明者は、次の運転支援装置(以下、「検討装置」と称呼する。)を検討している。検討装置は、車両と「車両の前方に位置する前方物標」との間の距離が所定の閾値距離以下である場合において、運転者が加速操作子の誤操作を行っているとき、加速制限制御を実行する。
【0006】
一般に、運転者は、車両の前方に位置する前方物標の種別次第で、その前方物標に近づく限界の距離(接近限界距離)を異ならせている。運転者は、前方物標が車両である場合、前方物標が歩行者である場合に比べて、上記限界の距離を短くしている。
【0007】
上記検討装置は、前方物標の種別を考慮していないので、不要な加速制限制御を実行する可能性を十分に低減することはできない。
【0008】
本発明は前述した課題に対処するためになされたものである。即ち、本発明の目的の一つは、後方物標及び路面勾配等が存在しない場合であっても、不要な加速制限制御を実行する可能性を十分に低減可能な運転支援装置を提供することにある。
【0009】
本発明の運転支援装置(以下、「本発明装置」とも呼称する。)は、
車両の駆動源(34a)が発生させる駆動力を増加させるために前記車両の運転者が操作する加速操作子(32a)と、
前記車両の加速度が所定の制限加速度(Glmt)を超えないように前記車両を制御する加速制限制御(ステップ720)を実行可能な制御ユニット(20、30、40)と、を備え、
前記制御ユニットは、
前記車両の前方に位置する前方物標の種別に応じて異なる閾値距離を設定し(ステップ620、ステップ625、ステップ650、ステップ660、ステップ665)、
前記車両と前記前方物標との間の距離が前記閾値距離以下であるときに成立する距離条件が成立し(ステップ625「Yes」)、且つ、前記運転者が前記加速操作子を誤って操作したときに成立する所定の誤操作条件が成立した場合(ステップ410「Yes」、ステップ415「Yes」、ステップ420「Yes」、ステップ425、ステップ630「Yes」)、前記加速制限制御を実行する(ステップ635、ステップ700乃至ステップ795)、
ように構成されている。
【0010】
本発明装置によれば、「車両と前方物標との間の距離が閾値距離であるとの距離条件」が成立し且つ誤操作条件が成立した場合に加速制限制御を実行するため、後方物標及び路面勾配等が存在しない場合であっても、不要な加速制限制御が実行される可能性を低減できる。更に、本発明装置によれば、前方物標の種別に応じて異なる閾値距離が設定される。前方物標の種別に応じた接近限界距離を考慮した閾値距離が設定でき、後方物標及び路面勾配等が存在しない場合であっても、不要な加速制限制御が実行される可能性を十分に低減できる。
【0011】
本発明装置の一態様において、
前記制御ユニットは、前記前方物標の種別が車両である場合、前記前方物標の種別が歩行者である場合に比べて短くなるように前記閾値距離を設定するように構成されている(
図2A及び
図2B)。
【0012】
前方物標の種別が車両である場合、当該車両を追越し又は追抜きを行うことがあるので、前方物標の種別が歩行者である場合に比べて、限界接近距離が短くなる傾向がある。本態様によれば、前方物標の種別に応じた接近限界距離を考慮した閾値距離が設定でき、不要な加速制限制御が実行される可能性を更に低減できる。
【0013】
本発明装置の一態様において、
前記制御ユニットは、前記加速操作子の操作量が所定の閾値操作量以上であるとの条件、及び、前記加速操作子の操作速度が所定の閾値速度以上であるとの条件、の少なくとも一方が成立してから(ステップ410「Yes」、ステップ415「Yes」、第1変形例)、前記運転者が前記加速操作子の誤った操作から復帰したときに成立する所定の復帰条件が成立する(ステップ510「Yes」)までの期間、前記誤操作条件を成立させるように構成された、
【0014】
運転者が加速操作子を誤って操作した場合、上記操作量が閾値操作量以上になり、且つ、上記操作速度が閾値速度以上になる可能性が高い。本態様によれば、運転者が誤って操作しているときに誤操作条件を成立させる可能性を高めることができる。
【0015】
本発明装置の一態様において、
前記制御ユニットは、前記車両の速度を表す車速が所定の閾値速度以下であって(ステップ611「Yes」)、前記距離条件が成立し(ステップ625「Yes」)且つ前記誤操作条件が成立している場合(ステップ630「Yes」)、前記加速制限制御を実行するように構成されている。
【0016】
車両が前方物標と衝突するまでにかかる時間である衝突所要時間が閾値開始時間以下となった場合に加速制限制御が実行される態様も考えられる。しかし、車速が比較的低速である場合、衝突所要時間は大きな値になり易いため、衝突所要時間が閾値開始時間以下となり難い。このため、必要な加速制限制御が実行される可能性が低減してしまう。本態様では、車速が比較的低速である場合には、前方物標までの距離に基いて加速制限制御を実行するか否かを判定している。これにより、必要な加速制限制御が実行される可能性を高めることができる。
【0017】
本発明装置の一態様において、
前記制御ユニットは、前記前方物標の前記車両に対する相対速度が速いほど長くなるように前記閾値距離を設定するように構成されている(
図2Aに示したMapDvth(Vr)、
図2Bに示したMapDpth(Vr)、
図6に示したMapDtth(Vr)及びMapDoth(Vr))。
【0018】
相対速度が速いほど上記衝突所要時間が短くなる。本態様では、相対速度が速いほど閾値距離を長くすることにより、相対速度が速いほど早いタイミングで加速制限制御を開始することができる。
【0019】
本発明装置の一態様において、
前記制御ユニットは、
前記前方物標が複数位置する場合、前記車両との前記距離が短い前方物標から順に、当該前方物標の種別に応じた閾値距離を設定するとともに当該前方物標の距離が前記閾値距離以下であるか否かを判定し(ステップ613、ステップ615乃至ステップ625、ステップ645乃至ステップ665、ステップ670、ステップ675)、
前記距離が前記閾値距離以下である前方物標が存在する場合(ステップ625「Yes」)、前記距離条件を成立させる。
【0020】
本態様によれば、距離が閾値距離以下となり易い前方物標から順に判定を行うことができるため、本発明装置の処理負荷が軽減できる。
【0021】
本発明の運転支援方法は、
車両の加速度が所定の制限加速度(Glmt)を超えないように制限する加速制限制御(ステップ720)を実行する運転支援方法において、
前記車両の前方に位置する前方物標の種別に応じて異なる閾値距離を設定する第1ステップ(ステップ620、ステップ625、ステップ650、ステップ660、ステップ665)と、
前記車両と前記前方物標との間の距離が前記閾値距離以下であるときに成立する距離条件が成立し(ステップ625「Yes」)、且つ、前記車両の運転者が、前記車両の駆動源(34a)が発生させる駆動力を増加させるために操作する加速操作子(32a)を誤って操作したときに成立する所定の誤操作条件が成立した場合(ステップ410「Yes」、ステップ415「Yes」、ステップ420「Yes」、ステップ425、ステップ630「Yes」)、前記加速制限制御を実行する第2ステップ(ステップ635、ステップ700乃至ステップ795)と、
を含む。
【0022】
本発明のプログラムは、車両の加速度が所定の制限加速度(Glmt)を超えないように制限する加速制限制御(ステップ720)を実行するプログラムであって、前記車両に備わるコンピュータ(20、30、40)に、
前記車両の前方に位置する前方物標の種別に応じて異なる閾値距離を設定する第1ステップ(ステップ620、ステップ625、ステップ650、ステップ660、ステップ665)と、
前記車両と前記前方物標との間の距離が前記閾値距離以下であるときに成立する距離条件が成立し(ステップ625「Yes」)、且つ、前記車両の運転者が、前記車両の駆動源(34a)が発生させる駆動力を増加させるために操作する加速操作子(32a)を誤って操作したときに成立する所定の誤操作条件が成立した場合(ステップ410「Yes」、ステップ415「Yes」、ステップ420「Yes」、ステップ425、ステップ630「Yes」)、前記加速制限制御を実行する第2ステップ(ステップ635、ステップ700乃至ステップ795)と、
を実行させる。
【0023】
本発明の運転支援方法及びプログラムによれば、前方物標の種別に応じて異なる閾値距離が設定されるため、前方物標の種別に応じた接近限界距離を考慮した閾値距離が設定できる。これにより、後方物標及び路面勾配等が存在しない場合であっても、不要な加速制限制御が実行される可能性を十分に低減できる。
【0024】
なお、上記説明においては、発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いた名称及び/又は符号を括弧書きで添えている。しかしながら、発明の各構成要素は、前記名称及び/又は符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る運転支援装置(本支援装置)の概略システム構成図である。
【
図2A】
図2Aは、前方物標の種別が車両である場合に設定される閾値距離の説明図である。
【
図2B】
図2Bは、前方物標の種別が歩行者である場合に設定される閾値距離の説明図である。
【
図3】
図3は、本支援装置の作動例の説明図である。
【
図4】
図4は、
図1に示した運転支援ECUのCPUが実行する誤操作判定ルーチンを示したフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図1に示した運転支援ECUのCPUが実行する復帰判定ルーチンを示したフローチャートである。
【
図6】
図6は、
図1に示した運転支援ECUのCPUが実行する実行判定ルーチンを示したフローチャートである。
【
図7】
図7は、
図1に示した運転支援ECUのCPUが実行する誤操作対応制御ルーチンを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一実施形態に係る運転支援装置(以下、「本支援装置」と称呼する。)10は車両VA(
図2を参照。)に搭載される。本支援装置10は、運転支援ECU(以下、「DSECU」と称呼する。)20、駆動ECU30及びブレーキECU40を備える。これらのECUは、図示しないCAN(Controller Area Network)を介してデータ交換可能(通信可能)に互いに接続されている。
【0027】
ECUは、エレクトロニックコントロールユニットの略称であり、CPU、ROM、RAM及びインターフェース等を含むマイクロコンピュータを主要構成部品として有する電子制御回路である。ECUを「制御ユニット」、「コントローラ」又は「コンピュータ」と称呼する場合もある。CPUは、メモリ(ROM)に格納されたインストラクション(ルーチン)を実行することにより各種機能を実現する。上記ECU20、30及び40の総て又は幾つかは、一つのECUに統合されてもよい。
【0028】
更に、本支援装置10は、複数の車輪速センサ21、加速度センサ22、カメラ装置23及びミリ波レーダ装置24を備える。
【0029】
車輪速センサ21は、DSECU20、駆動ECU30及びブレーキECU40とデータ交換可能に接続されている。車輪速センサ21は車両VAの車輪毎に設けられており、対応する車輪が所定角度回転する毎に一つのパルス信号を発生させる。DSECU20、駆動ECU30及びブレーキECU40は、各車輪速センサ21が発生されたパルス信号の単位時間におけるパルス数を計測し、その計測したパルス数に基いて各車輪の回転速度(車輪速度)を取得する。DSECU10は、各車輪の車輪速度に基いて車両VAの速度を示す車速Vsを取得する。一例として、DSECU10は、四つの車輪の車輪速度の平均値を車速Vsとして取得する。
【0030】
加速度センサ22は、DSECU20とデータ交換可能に接続されている。加速度センサ22は、車両VAの前後方向の加速度Gを検出し、加速度Gを表す検出信号を発生させる。DSECU20は、加速度センサ22からの検出信号に基いて加速度Gを特定する。
なお、加速度センサ22は、車両VAの前後方向の加速度Gに加えて、車両VAの左右方向(車幅方向)の加速度及び車両VAの上下方向の加速度を検出可能に構成されていてもよい。
【0031】
カメラ装置23は、車両VAの車室内のフロントウィンドウの上部に配設され、DSECU20とデータ交換可能に接続されている。カメラ装置23は、車両VAの前方の領域の風景を撮影することにより画像データを取得する。
【0032】
カメラ装置23は画像処理ECU23aを有している。画像処理ECU23aは、画像データに基いて、当該物標の種別を特定する。詳細には、画像処理ECU23aは、画像処理ECU23aは、車両、歩行者、二輪車それぞれのテンプレート画像と画像データに含まれる物標の画像とを比較することにより物標の種別を特定する。
なお、画像処理ECU23aが実現する総て又は一部の機能は他のECU20、30及び40の少なくとも一つによって実現されてもよい。
【0033】
ミリ波レーダ装置24は、車両VAの前端の車幅方向の中央付近に配設され、カメラ装置23とデータ交換可能に接続されている。ミリ波レーダ装置24は、車両VAの前方の所定範囲に伝播するミリ波を発信する。そのミリ波は、他の車両、歩行者及び二輪車等の立体物(物標)により反射される。ミリ波レーダ装置24はこの反射波を受信し、当該反射波に基いてレーダ物体情報を取得する。レーダ物体情報は、反射波の受信結果(反射波のパワーデータ)、物標までの距離、物標の横位置、及び物標の車両VAに対する相対速度Vr等を含む。
【0034】
画像処理ECU23aは、画像データ及び「ミリ波レーダ装置24からレーダ物体情報に含まれる反射波の受信結果」に基いて車両VAの前方に位置する物標(以下、「前方物標」と称呼する場合もある。)を認識し、その物標までの距離及び物標の横位置を取得する。そして、画像処理ECU23aは、物標までの距離D、物標の横位置、物標の相対速度Vr、物標の種別を含む物標情報をDSECU20に送信する。相対速度Vrは車両VAに接近する方向を正の値とする。
【0035】
更に、本支援装置10は、アクセルペダル操作量センサ32、駆動源アクチュエータ34、ブレーキペダル操作量センサ42及びブレーキアクチュエータ44を備える。
【0036】
駆動ECU30は、アクセルペダル操作量センサ32及び駆動源アクチュエータ34とデータ交換可能に接続されている。
アクセルペダル操作量センサ32は、車両VAのアクセルペダル32aの操作量(即ち、アクセルペダル操作量AP)を検出し、アクセルペダル操作量APを表す検出信号を発生させる。アクセルペダル32aは、車両VAの駆動源(電動機及び内燃機関等)34aが発生する駆動力を増加させるために運転者により操作される加速操作子である。運転者がアクセルペダル32aを操作していない場合(即ち、運転者がアクセルペダル32aを踏み込んでいない場合)のアクセルペダル操作量APは「0」になる。運転者がアクセルペダル32aを踏み込む量が大きくなるほど、アクセルペダル操作量APは大きくなる。
【0037】
駆動ECU30は、アクセルペダル操作量センサ32からの検出信号に基いてアクセルペダル操作量APを特定し、そのアクセルペダル操作量APを駆動ECU20に通知する。
【0038】
駆動源アクチュエータ34は、駆動源(電動機及び内燃機関等)34aと接続されている。駆動ECU30は、駆動源アクチュエータ34を制御することにより駆動源34aの運転状態を変更する。これにより、駆動ECU30は、車両VAに付与される駆動力を調整できる。駆動ECU30は、アクセルペダル操作量APが大きいほど、車両VAに付与される駆動力が大きくなるように、駆動源アクチュエータ34を制御する。更に、駆動ECU30は、DSECU20から目標加速度Gtgtを含む加減速指令を受信した場合、車両VAの加速度Gが目標加速度Gtgtと一致するように駆動源アクチュエータ34を制御する。
【0039】
ブレーキECU40は、ブレーキペダル操作量センサ42及びブレーキアクチュエータ44とデータ交換可能に接続されている。
【0040】
ブレーキペダル操作量センサ42は、車両VAのブレーキペダル42aの操作量であるブレーキペダル操作量BPを検出し、ブレーキペダル操作量BPを表す検出信号を発生させる。ブレーキECU40は、ブレーキペダル操作量センサ42からの検出信号に基いてブレーキペダル操作量BPを特定する。
【0041】
ブレーキアクチュエータ44は、周知の油圧式の制動装置44aと接続されている。ブレーキECU40はブレーキアクチュエータ44を制御することにより、制動装置44aが発生する摩擦制動力を変更する。これにより、ブレーキECU40は、車両VAに付与される制動力を調整できる。ブレーキECU40は、ブレーキペダル操作量BPが大きいほど車両VAに付与される制動力が大きくなるように、ブレーキアクチュエータ44を制御する。ブレーキECU40は、DSECU20から上記加減速指令を受信した場合、車両VAの加速度Gが目標加速度Gtgtと一致するように駆動源アクチュエータ34を制御する。
【0042】
更に、本支援装置10はディスプレイ50を備える。DSECU20は、ディスプレイ50とデータ交換可能に接続される。ディスプレイ50は、DSECU20から表示信号を受信し、その表示信号が示す表示情報を表示する。ディスプレイ50は、車両VAのフロントガラスの一部の領域(表示領域)に配設されるヘッドアップディスプレイ(以下、「HUD」と呼称する。)であってもよいし、マルチインフォメーションディスプレイであってもよい。
【0043】
(作動の概要)
本支援装置10は、所定の誤操作開始条件が成立してから所定の復帰条件が成立するまでの期間、運転者がアクセルペダル32aを誤って操作しているときに成立する誤操作条件が成立していると判定する。
【0044】
本支援装置10は、カメラ装置23からの物標情報に基いて、前方物標までの距離D、前方物標の横位置、前方物標の相対速度Vr及び前方物標の種別を特定する。本支援装置10は、前方物標の距離Dが閾値距離Dth以下であるとの距離条件が成立し且つ誤操作条件が成立している場合、誤操作対応制御を実行する。なお、本支援装置10は、前方物標が複数存在する場合には、何れかの前方物標の距離Dが閾値距離Dth以下であって且つ誤操作条件が成立している場合、誤操作対応制御を実行する。
【0045】
本支援装置10は、誤操作対応制御の開始時点から所定時間T1が経過するまでの期間においては、車両VAの加速度Gが所定の制限加速度Glmtを超えないように車両VAを制御する加速制限制御を誤操作対応制御として実行する。
誤操作対応制御の開始から所定時間T1が経過した後、本支援装置10は、車両VAを所定の負の加速度Gsbで減速させる緩減速制御を誤操作対応制御として実行する。
【0046】
本支援装置10は、前方物標の種別に応じて閾値距離Dthを異ならせる(変更する)点に特徴がある。この閾値距離Dthは、一般の運転者が前方物標の種別に応じて異ならせている接近限界距離に基いて設定されている。このため、本支援装置10は、物標の種別に応じて閾値距離Dthが変更されるので、運転者が意図的にアクセルペダル32aを操作しているにもかかわらずに不要な誤操作対応制御が実行される可能性を低減できる。
【0047】
図2Aに示したように、前方物標の種別が車両(VB)である場合、本支援装置10は、車両閾値距離マップMapDvth(Vr)に前方物標の相対速度Vrを適用することにより閾値距離Dvthを取得し、この閾値距離Dvthを閾値距離Dthに設定する。
車両閾値距離マップMapDvth(Vr)によれば、前方物標の相対速度Vrと閾値距離Dthとの関係が規定されている。詳細には、車両閾値距離マップMapDvth(Vr)によれば、前方物標の相対速度Vrが大きいほど閾値距離Dvthが長くなるように規定されている。
【0048】
図2Bに示したように、前方物標の種別が歩行者(PD)である場合、本支援装置10は、歩行者閾値距離マップMapDpth(Vr)に前方物標の相対速度Vrを適用することにより閾値距離Dpthを取得し、この閾値距離Dpthを閾値距離Dthに設定する。
歩行者閾値距離マップMapDpth(Vr)によれば、前方物標の相対速度Vrが大きいほど閾値距離Dpthが長くなるように規定されている。
【0049】
更に、
図2A及び
図2Bに示したように、閾値距離Dvthは閾値距離Dpthよりも小さな値に設定されている。運転者の車両に対する限界接近距離が歩行者に対する限界接近距離よりも短い傾向があるためである。運転者は、車両VAの前方の車両を追越し又は追抜きを行う場合に前方の車両と接近する必要があるので車両に対する限界接近距離が短くなる傾向にある。
【0050】
これにより、物標の種別により異なる運転者の限界接近距離を考慮した閾値距離Dthが設定されるので、不要な誤操作対応制御が実行される可能性を低減できる。
【0051】
(作動例)
図3を参照しながら、本支援装置10の作動例を説明する。
<時点t1>
時点1にて、本支援装置10は誤操作開始条件が成立したと判定する。しかし、時点t1における前方物標までの距離D1が閾値距離Dthよりも長いため、本支援装置10は、誤操作対応制御を実行しない。
【0052】
誤操作開始条件は以下の第1条件乃至第3条件の総てが成立したときに成立する。
第1条件:車速Vsが閾値車速Vsth以下である。
第2条件:アクセルペダル操作量APが閾値操作量APth以上である。
第3条件:アクセルペダル操作速度Vapが閾値操作速度Vapth以上である。
【0053】
なお、上記復帰条件は、以下の第4条件が成立したときに成立する。
第4条件:アクセルペダル操作量APが復帰閾値操作量APcth未満である。
復帰閾値操作量APcthは、閾値操作量APthよりも小さな値に設定される。一例として、復帰閾値操作量APcthは「0」に設定される。これにより、CPUは、運転者がアクセルペダル32aから足を離したときに復帰条件が成立したと判定する。
【0054】
<時点t2>
時点t2にて、距離D2が閾値距離Dth以下となる。時点t1から時点t2までの期間に復帰条件は成立していないと仮定する。この仮定により、本支援装置10は、誤操作条件が成立していると判定する。時点t2にて、距離D2が閾値距離Dth以下となり距離条件が成立し、且つ、誤操作条件も成立しているので、本支援装置10は、誤操作対応制御を開始する。より詳細には、本支援装置10は、加速制限制御を誤操作対応制御として実行し、第1警告を行う。第1警告では、本支援装置10は、アクセルペダル32aが踏み込まれているとのメッセージをディスプレイ50に表示させる。
【0055】
<時点t3>
時点t3にて、誤操作対応制御を開始した時点t2から所定時間T1が経過する。時点t3にて、本支援装置10は、緩減速制御を誤操作対応制御として実行するとともに、第2警告を行う。第2警告では、上記メッセージに加えてブレーキペダル42aを踏んでくださいとのメッセージをディスプレイ50に表示させる。
【0056】
<時点t4>
時点t4にて、本支援装置10は、復帰条件が成立したと判定し、誤操作条件が成立しておらず運転者が誤操作を行っていないと判定する。時点t4にて、本支援装置10は、誤操作対応制御を終了する。
【0057】
なお、
図3に示した例では、距離条件が成立する時点t2よりも前の時点t1にて誤操作開始条件が成立する例を示した。距離条件が成立する時点t2以降に誤操作開始条件が成立した場合、本支援装置10は、誤操作開始条件が成立した時点にて誤操作対応制御を開始する。
【0058】
(具体的作動)
<誤操作判定ルーチン>
DSECU20のCPU(以下、「CPU」と表記した場合、特に断りがない限り、DSECU20のCPUを指す。)は、
図4にフローチャートにより示したルーチン(誤操作判定ルーチン)を所定時間が経過する毎に実行する。
【0059】
従って、所定のタイミングになると、CPUは、
図4のステップ400から処理を開始してステップ405に進み、誤操作フラグXeoの値が「0」であるか否かを判定する。
【0060】
誤操作フラグXeoの値は、誤操作開始条件が成立した場合に「1」に設定され、復帰条件が成立した場合に「0」に設定される。即ち、誤操作フラグXeoの値は、誤操作条件が成立している場合に「1」に設定される。なお、CPUは、車両VAの図示しないイグニッション・キー・スイッチがオフ位置からオン位置へと変更されたときに実行するイニシャルルーチンにおいて、誤操作フラグXeoの値を「0」に設定する。
【0061】
誤操作フラグXeoの値が「0」である場合、CPUは、ステップ405にて「Yes」と判定し、ステップ410に進む。ステップ410にて、CPUは、車速Vsが閾値車速Vsth以下であるか否かを判定する。
【0062】
車速Vsが閾値車速Vsthよりも大きい場合、CPUは、ステップ410にて「No」と判定し、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0063】
車速Vsが閾値車速Vsth以下である場合、CPUは、ステップ410にて「Yes」と判定し、ステップ415に進む。ステップ415にて、CPUは、アクセルペダル操作量APが所定の閾値操作量APth以上であるか否かを判定する。
【0064】
アクセルペダル操作量APが閾値操作量APth未満である場合、CPUは、ステップ415にて「No」と判定し、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0065】
一方、アクセルペダル操作量APが閾値操作量Apth以上である場合、CPUは、ステップ415にて「Yes」と判定し、ステップ420に進む。ステップ420にて、アクセルペダル操作速度Vapが所定の閾値操作速度Vapth以上であるか否かを判定する。
CPUは、今回本ルーチンを実行したときのアクセルペダル操作量APから前回本ルーチンを実行したときのアクセルペダル操作量APを減算することによって減算値dAPを求める。そして、CPUは、減算値dAPを本ルーチンの実行間隔である時間dtで除算することによってアクセルペダル操作速度Vapを求める。
【0066】
アクセルペダル操作速度Vapが閾値操作速度Vapth未満である場合、CPUは、ステップ420にて「No」と判定し、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0067】
一方、アクセルペダル操作速度Vapが閾値操作速度Vapth以上である場合、CPUは、誤操作条件が成立したと判定する。この場合、CPUは、ステップ420にて「Yes」と判定し、ステップ425に進む。ステップ425にて、CPUは、誤操作フラグXeoの値を「1」に設定し、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0068】
CPUがステップ405に進んだ場合に誤操作フラグXeoの値が「1」であれば、CPUは、ステップ405にて「No」と判定し、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0069】
<復帰判定ルーチン>
CPUは、
図5にフローチャートにより示したルーチン(復帰判定ルーチン)を所定時間が経過する毎に実行する。
従って、所定のタイミングになると、CPUは、
図5のステップ500から処理を開始してステップ505に進み、誤操作フラグXeoの値が「1」であるか否かを判定する。
誤操作フラグXeoの値が「0」である場合、CPUは、ステップ505にて「No」と判定し、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0070】
誤操作フラグの値が「1」である場合、CPUは、ステップ505にて「Yes」と判定し、ステップ510に進む。ステップ510にて、CPUは、アクセルペダル操作量APが所定の復帰閾値操作量APcth未満であるか否かを判定する。
【0071】
アクセルペダル操作量APが復帰閾値操作量APcth以上である場合、CPUは、ステップ510にて「No」と判定し、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0072】
一方、アクセルペダル操作量APが復帰閾値操作量APcth未満である場合、CPUは、復帰条件が成立したと判定し、誤操作条件はもはや成立していないと判定する。この場合、CPUは、ステップ510にて「Yes」と判定し、ステップ515乃至ステップ525を順に実行する。
【0073】
ステップ515:CPUは、誤操作フラグXeoの値を「0」に設定する。
ステップ520:CPUは、実行フラグXexeの値を「0」に設定する。
実行フラグXexeの値は、誤操作対応制御が実行される場合に「1」に設定され、誤操作対応制御が実行されない場合に「0」に設定される。なお、CPUは、上記イニシャルルーチンにて実行フラグXexeの値を「0」に設定する。
ステップ525:CPUは、実行時間タイマTexeの値を「0」に設定する。
実行時間タイマTexeは、誤操作対応制御の開始時点から経過した時間をカウントするためのタイマである。
【0074】
その後、CPUは、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0075】
<実行判定ルーチン>
CPUは、
図6にフローチャートにより示したルーチン(実行判定ルーチン)を所定時間が経過する毎に実行する。
従って、所定のタイミングになると、CPUは、
図6のステップ600から処理を開始してステップ605に進み、実行フラグXexeの値が「0」であるか否かを判定する。
【0076】
実行フラグXexeの値が「0」である場合、CPUは、ステップ605にて「Yes」と判定し、ステップ610及びステップ611を順に実行する。
ステップ610:CPUは、カメラ装置23から物標情報を取得する。
ステップ611:CPUは、車速Vsが所定の閾値車速Vsth’よりも大きいか否かを判定する。閾値車速Vsth’は、閾値車速Vsthよりも大きな値に設定されていることが望ましいが、閾値車速Vsth以下の値に設定されていてもよい。閾値車速Vsth’が閾値車速Vsth以下の値に設定されている場合、距離条件が成立した時点よりも前に誤操作開始条件が成立しているときには、誤操作対応制御を開始することができない。
【0077】
車速Vsが閾値車速Vsth’以下である場合、CPUは、車速Vsが比較的低速であると判定する。この場合、CPUは、ステップ611にて「Yes」と判定し、ステップ613及びステップ615を順に実行する。
【0078】
ステップ613:CPUは、距離Dが最小の前方物標を選択する。以下、この前方物標を「選択物標」と称呼する。
ステップ615:CPUは、選択物標の種別が車両であるか否かを判定する。
【0079】
選択物標の種別が車両である場合、CPUは、ステップ615にて「Yes」と判定し、ステップ620及びステップ625を実行する。
ステップ620:CPUは、車両閾値距離マップMapDvth(Vr)に選択物標の相対速度Vrを適用することにより閾値距離Dvthを取得し、閾値距離Dvthを閾値距離Dthに設定する。
ステップ625:CPUは、選択物標の距離Dが閾値距離Dvth以下であるか否かを判定する。
【0080】
選択物標の距離Dが閾値距離Dvth以下である場合、CPUは、ステップ625にて「Yes」と判定し、ステップ630に進む。ステップ630にて、CPUは、誤操作フラグXeoの値が「1」であるか否かを判定する。
【0081】
誤操作フラグXeoの値が「0」である場合、CPUは、ステップ630にて「No」と判定し、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0082】
誤操作フラグXeoの値が「1」である場合、CPUは、ステップ630にて「Yes」と判定し、ステップ635及びステップ640を順に実行する。
【0083】
ステップ635:CPUは、実行フラグXexeの値を「1」に設定する。
ステップ640:CPUは、実行時間タイマTexeの値を「0」に設定する。
その後、CPUは、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0084】
一方、CPUがステップ615に進んだときに選択物標の種別が車両でない場合、CPUは、ステップ615にて「No」と判定し、ステップ645に進む。ステップ645にて、CPUは、選択物標の種別が歩行者であるか否かを判定する。
【0085】
選択物標の種別が歩行者である場合、CPUは、ステップ645にて「Yes」と判定し、ステップ650を実行した後、ステップ625に進む。
ステップ650:CPUは、歩行者閾値距離マップMapDpth(Vr)に選択物標の相対速度Vrを適用することにより閾値距離Dpthを取得し、閾値距離Dpthを閾値距離Dthに設定する。
【0086】
一方、CPUがステップ645に進んだときに選択物標の種別が歩行者でない場合、CPUは、ステップ645にて「No」と判定し、ステップ655に進む。ステップ655にて、CPUは、選択物標の種別が二輪車であるか否かを判定する。
【0087】
選択物標の種別が二輪車である場合、CPUは、ステップ655にて「Yes」と判定し、ステップ660を実行した後、ステップ625に進む。
ステップ660:CPUは、二輪車閾値距離マップMapDtth(Vr)に選択物標の相対速度Vrを適用することにより閾値距離Dtthを取得し、閾値距離Dtthを閾値距離Dthに設定する。
【0088】
一方、CPUがステップ655に進んだときに選択物標の種別が二輪車でない場合(例えば、選択物標が壁及びガードレール等である場合)、CPUは、ステップ655にて「No」と判定し、ステップ665を実行した後、ステップ625に進む。
ステップ665:CPUは、その他閾値距離マップMapDoth(Vr)に選択物標の相対速度Vrを適用することにより閾値距離Dothを取得し、閾値距離Dothを閾値距離Dthに設定する。
【0089】
なお、
図6に示した二輪車閾値距離マップMapDtth(Vr)及びその他閾値距離マップMapDoth(Vr)からも理解されるように、一例として、閾値距離Dpthが最も長く、閾値距離Dvthが最も短く、閾値距離Dtthが閾値距離Dothよりも長くなるように、各閾値距離マップが設定されている。更に、何れの閾値距離Dpth、Dtth、Doth及びDvthも、相対速度Vrが早いほど、長くなるように設定されている。
【0090】
一方、CPUがステップ625に進んだときに選択物標の距離Dが閾値距離Dthよりも長い場合、CPUは、ステップ625にて「No」と判定し、ステップ670に進む。ステップ670にて、CPUは、選択物標の次に距離Dが小さい前方物標が存在するか否かを判定する。
【0091】
選択物標の次に距離Dが小さい前方物標が存在する場合、CPUは、ステップ670にて「Yes」と判定し、ステップ675に進む。ステップ675にて、CPUは、選択物標の次に距離Dが小さい前方物標を新たな選択物標として選択し、ステップ615以降の処理を実行する。
一方、選択物標の次に距離Dが小さい前方物標が存在しない場合、CPUは、ステップ670にて「No」と判定し、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このように、CPUは、距離Dが小さい順に選択物標を選択し、選択物標の距離Dが閾値距離Dth以下であるか否かを判定する。これにより、距離Dが閾値距離Dth以下となり易い前方物標から順に判定を行うことができるため、CPUの処理負荷が軽減できる。
【0092】
一方、CPUがステップ611に進んだときに車速Vsが閾値車速Vsth’よりも大きい場合、CPUは、車速Vsが比較的高速であると判定する。この場合、CPUは、ステップ611にて「No」と判定し、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0093】
衝突所要時間(以下、「TTC」と称呼する。TTCは、Time To Collisionの略。)が所定の閾値開始時間Tsth以下であって且つ誤操作フラグXeoの値が「1」である場合、誤操作対応制御を開始することも考えられる。このTTCは、車両VAが前方物標に衝突するまでにかかる時間であり、距離Dが相対速度Vrで除算されることにより求められる。
【0094】
車速Vsが比較的低速である場合には、衝突所要時間が大きな値になり易く、衝突所要時間が閾値開始時間Tsth以下となり難い。このため、必要な加速制限制御が実行される可能性が低減してしまう。更に、車速Vsが比較的高速である場合には、加速制限制御ではなく、車両VAを減速させる制御が実行されることが望ましい。このため、車速が比較的低速である場合にのみ、ステップ611にて「Yes」と判定してステップ613に進み、距離Dに基いて加速制限制御を実行するか否かを判定する。これにより、車速Vsが比較的低速である場合に必要な加速制限制御が実行される可能性を高めることができる。
【0095】
<誤操作対応制御ルーチン>
CPUは、
図7にフローチャートにより示したルーチン(誤操作対応制御ルーチン)を所定時間が経過する毎に実行する。
従って、所定のタイミングになると、CPUは、
図7のステップ700から処理を開始してステップ705に進み、実行フラグXexeの値が「0」であるか否かを判定する。
【0096】
実行フラグXexeの値が「0」である場合、CPUは、ステップ705にて「No」と判定し、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0097】
実行フラグXexeの値が「1」である場合、CPUは、ステップ705にて「Yes」と判定し、ステップ710及びステップ715を順に実行する。
【0098】
ステップ710:CPUは、実行時間タイマTexeに「1」を加算する。
ステップ715:CPUは、実行時間タイマTexeが閾値Tth以下であるか否かを判定する。閾値Tthは、実行時間タイマTexeが閾値Tthに達したときに誤操作対応制御の開始時点から所定時間T1が経過するような値に設定されている。
【0099】
実行時間タイマTexeが閾値Tth以下である場合、CPUは、ステップ715にて「Yes」と判定し、ステップ720乃至ステップ730を順に実行する。
ステップ720:CPUは、加速制限制御を実行する。
より詳細には、CPUは、駆動ECU30からアクセルペダル操作量APを取得し、アクセルペダル操作量APに対応するアクセル加速度Gapを取得する。アクセル加速度Gapは、アクセルペダル操作量APが大きくなるにつれて大きくなる。
アクセル加速度Gapが所定の制限加速度Glmtよりも大きい場合、CPUは、目標加速度Gtgtを制限加速度Glmtに設定する。アクセル加速度Gapが制限加速度Glmt以下である場合、CPUは、目標加速度Gtgtをアクセル加速度Gapに設定する。
【0100】
ステップ725:CPUは、目標加速度Gtgtを含む加減速指令を駆動ECU30及びブレーキECU40に送信する。
ステップ730:CPUは、第1警告を実行する。
その後、CPUは、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0101】
実行時間タイマTexeが閾値Tthよりも大きい場合、CPUは、ステップ715にて「No」と判定し、ステップ735乃至ステップ745を順に実行する。
ステップ735:CPUは、緩減速制御を実行する。
より詳細には、CPUは、目標加速度Gtgtを所定の負の加速度Gsbに設定する。
【0102】
ステップ740:CPUは、目標加速度Gtgtを含む加減速指令を駆動ECU30及びブレーキECU40に送信する。
ステップ745:CPUは、第2警告を実行する。
その後、CPUは、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0103】
以上から理解されるように、本支援装置10は、前方物標の種別に応じて異なる閾値距離Dthを設定するので、不要な誤操作対応制御が実行される可能性を低減できる。
【0104】
本発明は前述した実施形態に限定されることはなく、本発明の種々の変形例を採用することができる。
【0105】
(第1変形例)
上記実施形態では、CPUは、上記第1条件乃至第3条件の総てが成立した場合に誤操作開始条件が成立したと判定する(
図4を参照。)。本変形例のCPUは、第1条件が成立し、且つ、第2条件及び第3条件の何れか一方が成立した場合に誤操作開始条件が成立したと判定する。
【0106】
なお、CPUは、第1条件が成立しなくても、第2条件及び第3条件の少なくとも一方が成立していれば、誤操作開始条件が成立したと判定してもよい。
【0107】
(第2変形例)
CPUは、上記第4条件、以下の第5条件及び第6条件の少なくとも一つが成立した場合、復帰条件が成立したと判定してもよい。
第5条件:運転者がブレーキペダル42aを所定時間に渡り操作した。
第6条件:運転者が図示しないキャンセルボタンを操作した。
【0108】
(第3変形例)
CPUは、距離条件が成立している場合にのみ誤操作開始条件が成立しているか否かを判定してもよい。より詳細には、CPUは、
図4に示した誤操作判定ルーチンを所定時間が経過する毎に実行せずに、距離Dが閾値距離Dth以下であるためにステップ625にて「Yes」と判定した場合に、
図4に示した誤操作判定ルーチンをサブルーチンとして実行してもよい。この場合、CPUは、ステップ670にて「No」と判定した場合(距離Dが閾値距離D以下となる前方物標が存在しない場合)、誤操作フラグXeoの値を「0」に設定する。
【0109】
(第4変形例)
上記実施形態では、CPUは、誤操作対応制御として加速制限制御及び緩減速制御を実行した。しかし、誤操作対応制御は、少なくとも加速制限制御であればよく、緩減速制御を含まなくてもよい。
【0110】
(第5変形例)
カメラ装置23は、ステレオカメラ装置であってもよいし単眼カメラ装置であってもよい。ミリ波レーダ装置24は、ミリ波以外の無線媒体を送信し、反射された無線媒体を受信することによって物体を検出できるリモートセンシング装置であってもよい。更に、本支援装置10は、カメラ物体情報に基いて物体の車両VAに対する位置を正確に特定できれば、ミリ波レーダ装置24を備えなくてもよい。ミリ波レーダ装置24を備えない場合、画像処理ECU23aは、前方物標の車両VAに対する位置の履歴に基いて相対速度Vrを取得する。
【0111】
(第6変形例)
本支援装置10は、エンジン自動車、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)及び電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)等の車両に搭載可能である。
【0112】
本発明は、本支援装置10の機能を実現するためのプログラムが記憶され且つコンピュータが読み取り可能な非一時的な記憶媒体として捉えることも可能である。
【符号の説明】
【0113】
10…運転支援装置、20…運転支援ECU(DSECU)、30…エンジンECU、32a…アクセルペダル、34a…駆動源、40…ブレーキECU。