(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】高周波装置用アンテナアレイ
(51)【国際特許分類】
H01Q 21/06 20060101AFI20250109BHJP
G01S 7/02 20060101ALI20250109BHJP
H01Q 3/36 20060101ALI20250109BHJP
G01S 13/931 20200101ALN20250109BHJP
【FI】
H01Q21/06
G01S7/02 216
H01Q3/36
G01S13/931
(21)【出願番号】P 2021100206
(22)【出願日】2021-06-16
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】幸谷 真人
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-072952(JP,A)
【文献】特開2012-100257(JP,A)
【文献】特開平06-291535(JP,A)
【文献】特開2018-093491(JP,A)
【文献】特開2011-064584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 21/06
G01S 7/02
H01Q 3/36
G01S 13/931
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ装置に用いられると共に所定領域内に二次元的に配列された複数のアンテナエレメント(11)を備え、
前記アンテナエレメントは、移相器(14)に電気的に接続されるオンエレメント(11a、11c)を有して所定領域内に配列され、
前記オンエレメントの密度を中央部で高くすると共に四隅で低くするように前記二次元的に配列されて
おり、
前記二次元的な配列の中で縦方向または横方向に沿って隣接した前記オンエレメント(11a)を第1のオンエレメントとしたときに、
前記第1のオンエレメントは、前記二次元的な配列の中で縦方向または横方向に沿ってグルーピングする数を2個とし、当該グルーピングされた前記第1のオンエレメントは同一の前記移相器により制御される高周波装置用アンテナアレイ。
【請求項2】
前記移相器に電気的に接続されないオフエレメント(11b)を備え、
前記オフエレメントに挟まれた単一のオンエレメント(11c)を第2のオンエレメントとしたときに、前記第2のオンエレメントが前記グルーピングされた方向と同一方向に離間して複数配置されている
請求項1記載の高周波装置用アンテナアレイ。
【請求項3】
レーダ装置に用いられると共に所定領域内に二次元的に配列された複数のアンテナエレメント(11)を備え、
前記アンテナエレメントは、移相器(14)に電気的に接続されるオンエレメント(11a、11c)を有して所定領域内に配列され、
前記オンエレメントの密度を中央部で高くすると共に四隅で低くするように前記二次元的に配列されて
おり、
前記二次元的な配列の中で縦方向または横方向に沿って隣接した前記オンエレメント(11a)を第1のオンエレメントとしたときに、前記第1のオンエレメントはグルーピングされることで同一の前記移相器により制御され、
前記移相器に電気的に接続されないオフエレメント(11b)を備え、
前記オフエレメントに挟まれた単一のシングルオンエレメント(11c)を第2のオンエレメントとしたときに、前記第2のオンエレメントが前記グルーピングされた方向と同一方向に離間して複数配置されている高周波装置用アンテナアレイ。
【請求項4】
前記第2のオンエレメントがアンテナアレイ(7)の中心部から点対称に二次元的な四角形の頂点に配置されている
請求項2又は3記載の高周波装置用アンテナアレイ。
【請求項5】
前記第2のオンエレメントは、前記アンテナアレイの中央から線対称に(0.5+m)λの間隔(但し、m=1、2、…)で配置されヌルフィルタを前記配列に構成する請求項4記載の高周波装置用アンテナアレイ。
【請求項6】
前記第2のオンエレメントは、前記(0.5+m)λの間隔において前記mの値を3以上としている請求項5記載の高周波装置用アンテナアレイ。
【請求項7】
前記(0.5+m)λの間隔において前記mの値が互いに異なる条件を満たす前記第2のオンエレメントを複数組備える請求項5又は6記載の高周波装置用アンテナアレイ。
【請求項8】
レーダ装置に用いられると共に所定領域内に二次元的に配列された複数のアンテナエレメント(11)を備え、
前記アンテナエレメントは、移相器(14)に電気的に接続されるオンエレメント(11a、11c)を有して所定領域内に配列され、
前記オンエレメントの密度を中央部で高くすると共に四隅で低くするように前記二次元的に配列されており、
前記二次元的な配列の中で縦方向または横方向に沿って隣接した前記オンエレメント(11a)を第1のオンエレメントとしたときに、
前記第1のオンエレメントは、その座標中心が二次元的な格子点配列のうちの少なくとも一部に所定の周期で規則的に配置されるものであり、配置された位置の前記座標中心が格子点の位置から上、下、左又は右にシフト配列されてい
る高周波装置用アンテナアレイ。
【請求項9】
前記オンエレメントは、その形状が四角形以外の多角形形状に構成されている請求項1から8の何れか一項に記載の高周波装置用アンテナアレイ。
【請求項10】
前記二次元的な前記配列の最外周にダミーエレメント(11d)が配置されている請求項1から9の何れか一項に記載の高周波装置用アンテナアレイ。
【請求項11】
前記移相器を備えたICのパッド(20)から前記オンエレメントに接続する伝送線路(21)の線路長を、互いに等長又は互いにp×λ(但し、pは整数)の関係性とする請求項1から10の何れか一項に記載の高周波装置用アンテナアレイ。
【請求項12】
複数の混合器(9)を有するハイブリッドレーダアーキテクチャに前記二次元的に前記配列する請求項1から11の何れか一項に記載の高周波装置用アンテナアレイ。
【請求項13】
前記レーダ装置の送信部(5)および受信部(6)のフェーズドアレイアンテナとして適用した請求項1から12の何れか一項に記載の高周波装置用アンテナアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波装置用アンテナアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
高周波装置用にフェーズドアレイアンテナの技術開発が進められている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載のフェーズドアレイアンテナによれば、二次元的に個別アレイ要素、本発明の有効なエレメント(以後 オンエレメントと呼ぶ)相当、を配列すると共に、当該個別アレイ要素を8個単位、例えば4×2、8×1の方形サブアレイとしてグルーピングしている。そして、複数の方形サブアレイは、位相中心の周期性を低減するようにタイリングされており、これにより、グレーティングローブを低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の技術では、グレーティングローブを抑圧するため、位相中心の周期性を低減している。しかし逆に、位相中心の周期性を低減することが原因で、位相中心が全てエレメント座標から不規則にシフトすることになり、位相値の計算やテーパリングの計算を複雑化してしまう。
【0005】
つまり、位相中心位置が縦横方向共にオフグリッドが増えると、隣接するエレメントの間隔が0.5λとなる理想距離から変化し、前提がなくなることから位相値の計算が複雑化してしまう。また発明者は、移相器数削減とシステム簡素化のため隣接した個別アレイ要素を縦または横方向にグルーピングすることで、グルーピングと同じ縦または横方向スキャン時にグレーティングローブを発生させてしまうことを突き止めている。他方、例えばスキャン型のレーダセンサでは、コスト削減とシステムの簡素化のため、フェイズドアレイのオンエレメントに電気的に接続する移相器の個数の削減が特に求められている。
【0006】
本発明の目的は、移相器数を削減しながらグレーティングローブ(およびサイドローブ等)の発生を抑圧できるようにした高周波装置用アンテナアレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、レーダ装置に用いられると共に所定領域内に二次元的に配列された複数のアンテナエレメントを備える。アンテナエレメントは、移相器に接続されるオンエレメントを有して所定領域内に配列されている。アンテナエレメントは、オンエレメントの密度を中央部で高くすると共に四隅で低くするように二次元的に配列されている。このため、オンエレメントの個数を少なくできるため、当該オンエレメントに電気的に接続される移相器の個数も少なく抑制できる。しかも、オンエレメントの密度を中央部で高くしつつ四隅で低くしているため、不要なサイドローブ等の発生を抑圧できる。
【0008】
請求項1記載の発明によれば、二次元的な配列の中で縦方向または横方向に沿って隣接するオンエレメントがグルーピングして構成されており、グルーピングする個数を2個とし、同一の移相器により制御している。このため、位相値を共通化して設計できるようになり移相器を削減できる。例えば、縦方向または横方向の一方向に沿ってグルーピングして構成されている場合には、当該一方向の直交方向にはグルーピングされていないため、当該直交方向にはグレーティングローブを原理的に生じさせることなくアンテナ設計できる。
【0009】
請求項3記載の発明によれば、単一のオンエレメントがグルーピングの方向と同一方向にオフエレメントに挟まれた状態で複数配置されているため、位相中心の周期性を低減することになり、グレーティングローブを抑圧できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態について実ビーム及び仮想ビームを説明する図その1
【
図2】第1実施形態について示すレーダ装置の電気的構成図
【
図3】第1実施形態について受信移相部の電気的構成図
【
図4】第1実施形態について実ビーム及び仮想ビームを説明する図その2
【
図5】第1実施形態についてアンテナアレイの配置態様を模式的に示す図
【
図6】第1実施形態についてオンエレメントの配置態様と受信移相部との接続形態を模式的に示す図
【
図7】第1実施形態についてオンエレメントの配置寸法を説明する図
【
図8】オンエレメントをランダム配置した場合のグレーティングローブ角度の説明図
【
図9】第1実施形態についてヌルフィルタを構成するようにオンエレメントを配置した場合の受信特性を模式的に示す図
【
図10】第1実施形態のアンテナアレイについてメインローブレベルを0dBmに正規化した場合の送信特性及び受信特性並びに送受信特性を模式的に示す図
【
図11】第1実施形態のアンテナアレイについてメインビーム角度を5°に調整したときの受信特性を模式的に示す図
【
図12】第1実施形態のアンテナアレイについてメインビーム角度を17.5°に調整したときの受信特性を模式的に示す図
【
図13】第1実施形態のアンテナアレイについてメインビーム角度を0°から40°に変化させたときのグレーティングローブ発生角度の推移とそのグレーティングローブレベルのシミュレーション結果を示す図
【
図14】第2実施形態のアンテナアレイについてオンエレメントの配置態様を模式的に示す図
【
図15】第3実施形態のアンテナアレイについてオンエレメントの配置態様を模式的に表す図
【
図16】第3実施形態のアンテナアレイについてオンエレメントの一部の配置態様を模式的に表す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、高周波装置用アンテナアレイをレーダ装置1に用いた幾つかの実施形態について図面を参照しながら説明する。以下に説明する各実施形態において、同一又は類似の動作を行う構成については、同一又は類似の符号を付して必要に応じて説明を省略する。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態について
図1から
図13を参照しながら説明する。レーダ装置1は、
図1に例示したように車両40の前端部に取付けられており、数百m程度前方の所定範囲をスキャンする長距離レーダ(Long Range Radar:LRR)用途として用いられる。車両40の前後左右等の複数個所に取り付けられていても良い。
【0013】
図2に例示した車両用のレーダ装置1は、トランシーバ集積回路IC1、及び移相器集積回路IC2を主として構成される。レーダ装置1は、受信チャンネル数を4とし受信チャンネルの信号を合成処理することで物標までの距離、存在角度などを算出する。以下の例では、送信チャンネルの数を1とすると共に、受信チャンネル数を4とし、受信チャンネルにRx1、Rx2、Rx3、Rx4の符号を付した例を説明するが、受信チャンネル数nは二以上であれば幾つであっても良い。
【0014】
移相器集積回路IC2は、受信チャンネルRx1~Rx4毎に受信移相部10を備えている。受信移相部10には高周波装置用アンテナアレイ7(以下、アンテナアレイ7と略す)が接続されている。
図3に示すように、アンテナアレイ7は、フェーズドアレイアンテナとして用いられるもので、移相器集積回路IC2に電気的に接続されるオンエレメント11a、11c、移相器集積回路IC2に電気的に接続されないオフエレメント11b及びダミーエレメント11dを組み合わせて構成されている。詳しくは後述する。
【0015】
図2に示すように、受信移相部10は、ICパッド20に接続されている。アンテナアレイ7を構成するオンエレメント11a、11cは、それぞれ対応したICパッド20に対しPCB配線を介して接続している。また受信移相部10は、高周波部12として、可変利得増幅器13、移相器14、及び増幅器15を備える。
【0016】
受信移相器IC10では、アンテナアレイ7からICパッド20を通じて信号を受信すると、可変利得増幅器13がアンテナアレイ7から受信した信号を増幅し、移相器14は、可変利得増幅器13の増幅信号を移相値φだけ移相し、そして増幅器15が移相器14の移相信号を増幅して混合器9に出力する。アンテナアレイ7と移相器14との間に可変利得増幅器13を構成することで、レーダ装置1のシステム上のNFと歪性能のトレードオフを用途に応じて改善できるようになる。例えば、高利得設定(NF最小)にすることで長距離物標の検出能力が改善し、低利得設定では近距離物標の検出時に飽和を緩和させることが可能になる。
【0017】
図2の結線をより具体的に示す
図3の構成例では、受信チャンネルRx1~Rx4の受信移相部10は、アンテナアレイ7から受信した信号を処理した後、ノードN1~N5を通じて合成して混合器9に出力する。ノードN1では2つのオンエレメント11aから受信した受信信号を合成する。ノードN2では2つのオンエレメント11a、11cから受信した受信信号を合成する。
【0018】
図3のノードN3では2つのオンエレメント11a、11cから受信した受信信号を合成する。ノードN4では2つのオンエレメント11aから受信した受信信号を合成する。ノードN5ではノードN1~N4を通じて得られた信号を合成し混合器9に出力する。各オンエレメント11a、11cから混合器9に至るまでの線路長は互いに等長経路に構成すると良い。
【0019】
他方、
図2に示すように、トランシーバ集積回路IC1は、制御部2、信号処理部3、PLL4、送信部5、及び受信部6にブロック化して構成される。トランシーバ集積回路IC1の制御部2は、所定の制御ロジックを実行することで出力周波数制御部2a、増幅度制御部2b、及び位相制御部2cなどの各種制御機能を実行する。出力周波数制御部2aはPLL4の出力周波数を制御する。位相制御部2cは、移相器集積回路IC2内の移相器14の移相値φを制御する。増幅度制御部2bは、移相器集積回路IC2内の可変利得増幅器13の増幅度を制御する。制御部2は、位相制御部2cにより各受信チャンネルRx1~Rx4の移相器14の移相値φを制御することで、受信チャンネルRx1~Rx4の受信ビーム走査角を制御できる。
【0020】
受信部6は、LOアンプ8及び混合器9を備え、移相器集積回路IC2の受信移相部10を接続している。PLL4は、基準発振回路(図示せず)から入力される基準クロックCLKを用い、基準クロックCLKの逓倍数等のパラメータを調整することで、周波数が互いに等しいミリ波帯のローカル信号(例えば、77GHz)を全ての受信チャンネルRx1~Rx4の混合器9に出力する。混合器9は、このローカル信号と送信部5から出力された電波が物標に反射して受信する信号とをミキシングすることで距離に比例した周波数のIF出力を得ることができる。ここでは、省略しているが、逓倍器を設けて所望の周波数に逓倍した上で、ローカル信号を各受信チャンネルRx1~Rx4に出力しても良い。
【0021】
LOアンプ8は、所定の増幅度でPLL4のローカル信号を増幅し、各受信チャンネルRx1~Rx4の混合器9に出力する。各受信チャンネルRx1~Rx4の混合器9は、各受信チャンネルRx1~Rx4の受信移相部10の出力信号とLOアンプ8により増幅されたローカル信号を入力し混合してIF信号IF1~IF4として出力する。
【0022】
同一のPLL4が、全ての受信チャンネルRx1~Rx4の混合器9にローカル信号を供給するため、IF信号は基準クロックCLKの周波数変動や外的環境変動に対する周波数特性変化に高い相関性を備える。
【0023】
各受信チャンネルRx1~Rx4の混合器9は、それぞれの混合器9の出力信号を信号処理部3に出力する。信号処理部3は、プロセッサや所定の電子制御ロジックにより構成されており、デジタルビーム形成(DBF)等の信号処理により、視野を絞ったセクタ内に存在する物標の角度を推定できる。
【0024】
信号処理部3は、混合器9により処理されたIF信号について、図示しないIFフィルタを介してA/D変換器3aに入力する。A/D変換器3aは、IF信号をアナログデジタル変換してデジタルデータとして処理する。信号処理部3は、FFT3bにより所定のデジタル信号処理を行うことで、
図1に示したように、自車両40から他の車両41までの距離、車両41との相対速度、車両41の存在角度を測定できる。
【0025】
信号処理部3は、移相器14を用いたアナログビームフォーミングにより視野を
図1に示すセクタ領域Sbに絞り込む。信号処理部3は、DBFアルゴリズムによる信号処理を実行することで、
図4に示したように、セクタ領域Sbの中に狭い仮想ビームScを形成し、より高い分解能でスキャン対象となる車両41を識別できる。これにより、他の車両42をスキャン対象から除外できる。また、複数の物標に対して前述のDBFより高い分離能が得られる多信号分類処理(MUltiple SIgnal Classification: MUSIC)などを適用することもできる。
【0026】
例えば、
図1及び
図4に例示したように、信号処理部3は、DBFアルゴリズムを用いて広い角度視野範囲Saの全体ではなくセクタ領域Sbに視野を絞り、セクタ領域Sb毎に仮想ビームScを取得することで、狭いセクタ領域Sbの中で物標となる車両41を高解像度で識別できる。セクタ領域Sbに視野を絞りこむことができるため、従来のMIMOレーダに比較して計算量を削減でき、ハイブリッド方式は、スキャン時間短縮と高分解能能力のトレードオフを緩和した効率の良いスキャン手法と言える。
【0027】
以下、このようなレーダ装置1に用いられるアンテナアレイ7の構造について説明する。送信部5及び受信部6用のアンテナアレイ7の構造は同一であるため、以下では受信部6に接続されるアンテナアレイ7について説明する。
【0028】
図5及び
図6に示したように、各受信チャンネルRx1~Rx4のアンテナアレイ7は、格子状に区画された領域にそれぞれ金属矩形面によるエレメント11a~11dを配置して構成される。アンテナアレイ7の外枠は方形に構成されており、アンテナアレイ7の外枠の中の格子状の頂点の領域に矩形状のエレメント11a~11dを配置している。本実施形態では、
図5又は
図6に示すように、有効エレメントが(Y、X)=16行12列に区画された二次元的な配列領域に配置されている。
【0029】
本実施形態では、
図5又は
図6に示すように、個々のアンテナアレイ7において、Y方向の長尺辺に沿って18個のエレメント11a~11dが格子区画領域に並設されていると共にX方向の短尺辺に沿って14個のエレメント11a~11dが格子区画領域に並設されている。また、エレメント11a~11dは、隣り合うエレメント11a~11dの間の間隔をレーダ波長λの2分の1に設定しており、各エレメント11a~11dの形状をそれぞれ四角形状に構成している。アンテナアレイ7は、XY平面に配置されており、XY平面に直交した+Z軸方向にビームを放射する。
図5に示すように、16×12の基本配列から成るアンテナアレイ7は、4つの受信チャンネルRX1~Rx4に接続されるように、X軸方向に連続配置されている。言い換えると、ハイブリッド方式とは、例えば16×48のアンテナアレイ7、…、7を16×12のN個のアンテナアレイ7に分割し、N個の受信ミキサを使用して、N個だけIF信号処理することを意味する。本形態では、N=4の例を記載している。
【0030】
前述したように、アンテナアレイ7は、オンエレメント11a、11c、オフエレメント11b、及びダミーエレメント11dを備える。オンエレメント11aは、Y方向に隣接した状態にて一対で電気的に移相器集積回路IC2に接続されるエレメントであり、オンエレメント11cは、Y方向に離間した状態にて一対で電気的に移相器集積回路IC2に接続されるエレメントである。このため、オンエレメント11a、11cは符号を分けて示している。
図5及び
図6において塗りつぶされた領域がオンエレメント11aを示しており、単一のオンエレメント11cにはハッチングを付して示している。また、オフエレメント11bは実線枠にて示しており、ダミーエレメント11dは破線枠にて示している。
【0031】
アンテナアレイ7の二次元的な配列の最外周にダミーエレメント11dが配置されている。ダミーエレメント11dは、オフエレメント11bと同様に受信移相部10には接続されていない。二次元的な配列の最外周にダミーエレメント11dが配置されているため、アンテナアレイ7を用いた送受信信号の品質を向上できる。
【0032】
本実施形態の構成では、最外枠のダミーエレメント11dを除く内側の格子の頂点にオンエレメント11aを配置すれば、全体で16×12=192個のオンエレメント11aを配置できる。しかし、格子の頂点の全てにオンエレメント11aを配置し、その全てのオンエレメント11aを移相器集積回路IC2により移相制御すると、移相制御を複雑化してしまうため好ましくない。このため、本形態では、オンエレメント11a、11c及びオフエレメント11bの二次元配置を工夫することで移相制御すべきオンエレメント11a、11cの個数を減らし、移相制御をより簡単化している。
【0033】
以下の説明では、
図6に示したように、アンテナアレイ7…7の全体がダミーエレメント11dに囲われる個々のアンテナアレイ7の列を列X1~X12と称する。またダミーエレメント11dを配置したY行の両端部を行Yd1、Yd2とし、その間の行を行Y1~Y16と称する。そして、エレメント11a~11dの配置領域を示す場合、座標(X,Y)の表記をもって表す。また例えば、行Y3のオンエレメント11aと行Y4のオンエレメント11aが電気的に接続されており、グルーピングされている場合、「Y3-Y4」のように、マイナス符号により結合することでオンエレメント11aがグルーピングされていることを表す。
【0034】
図6に示したように、多数のICパッド20とアンテナアレイ7の一対のオンエレメント11a、11cとはプリント配線基板を用いた伝送線路21により接続されており、これによりアンテナアレイ7のオンエレメント11a、11cから信号を受信できる。
図6を参照してエレメント11a~11dの配置例を説明する。
【0035】
図6に示すように、アンテナアレイ7は、行Y8と行Y9との間に行の中心部が位置しており、列X6と列X7との間に列の中心部が位置している。オンエレメント11aは、これらの行の中心部に対して上下対称で、且つ、列の中心部に対して左右対称に配置されている。また、オンエレメント11aは、アンテナアレイ7の中心部に対し点対称となるように配置されている。
【0036】
具体的に、アンテナアレイ7の中で図示左半領域のオンエレメント11aは、
座標(X1,Y3-Y4)及び座標(X1,Y13-Y14)、
座標(X2,Y2-Y3)及び座標(X2,Y14-Y15)、
座標(X2,Y5-Y6)及び座標(X2,Y11-Y12)、
座標(X2,Y8-Y9)、
座標(X3,Y4-Y5)及び座標(X3,Y12-Y13)、
座標(X3,Y7-Y8)及び座標(X3,Y9-Y10)、
に位置して上下対称に配置されている。
【0037】
また、オンエレメント11aは、
座標(X4,Y1-Y2)及び座標(X4,Y15-Y16)、
座標(X4,Y3-Y4)及び座標(X4,Y13-Y14)、
座標(X4,Y6-Y7)及び座標(X4,Y10-Y11)、
座標(X5,Y4-Y5)及び座標(X5,Y12-Y13)、
座標(X5,Y6-Y7)及び座標(X5,Y10-Y11)、
座標(X5,Y8-Y9)、
座標(X6,Y2-Y3)及び座標(X6,Y14-Y15)、
座標(X6,Y7-Y8)及び座標(X6,Y9-Y10)、
に位置して上下対称に配置されている。
【0038】
さらに、アンテナアレイ7の中で図示右半領域のオンエレメント11aは、
座標(X12,Y3-Y4)及び座標(X12,Y13-Y14)、
座標(X11,Y2-Y3)及び座標(X11,Y14-Y15)、
座標(X11,Y5-Y6)及び座標(X11,Y11-Y12)、
座標(X11,Y8-Y9)、
座標(X10,Y4-Y5)及び座標(X10,Y12-Y13)、
座標(X10,Y7-Y8)及び座標(X10,Y9-Y10)、
に位置して上下対称に配置されている。
【0039】
また、オンエレメント11aは、
座標(X9,Y1-Y2)及び座標(X9,Y15-Y16)、
座標(X9,Y3-Y4)及び座標(X9,Y13-Y14)、
座標(X9,Y6-Y7)及び座標(X9,Y10-Y11)、
座標(X8,Y4-Y5)及び座標(X8,Y12-Y13)、
座標(X8,Y6-Y7)及び座標(X8,Y10-Y11)、
座標(X8,Y8-Y9)、
座標(X7,Y2-Y3)及び座標(X7,Y14-Y15)、
座標(X7,Y7-Y8)及び座標(X7,Y9-Y10)、
に位置して上下対称に配置されている。
【0040】
オンエレメント11aのグルーピング方向はY方向となっておりX方向にはグルーピングされていない。したがって、グルーピングされていれば発生しやすいX方向に沿うグレーティングローブを原理的に発生させることなくオンエレメント11aを配置できる。
【0041】
伝送線路21は、一対のオンエレメント11aを接続した接続中央部を受信給電点としており、グルーピングされた一対のオンエレメント11aの位相中心はその接続中央部に位置している。伝送線路21は、プリント基板に構成される配線を用いて構成されるが、このとき、ICパッド20と一対のオンエレメント11aとを接続する伝送線路21の線路長は、互いに等長又は互いにp×λ(但し、pは整数)の関係性とすることが望ましい。すると、アンテナアレイ7内のオンエレメント11aの配置を設計しやすくなる。
【0042】
また
図6に例示したように、オンエレメント11cもアンテナアレイ7の中に配置されているが、Y方向にオフエレメント11bに挟まれた状態で一つ孤立配置されている。単一のオンエレメント11cは、オンエレメント11aがグルーピングされたY方向と同一方向に離間して2つ配置されており、行の中央部を基準として線対称に配置されている。
【0043】
オンエレメント11cは、座標(X6,Y5)、座標(X6,Y12)にて一対に設けられている。オンエレメント11cは、座標(X7,Y5)、座標(X7,Y12)にて一対に設けられている。行Y5と行Y12のオンエレメント11cの間の中心間の距離は3.5λとなる。これらの3.5λ離間したオンエレメント11cは、第1のヌルフィルタ(steerable null filter)として作用する。
【0044】
またオンエレメント11cは、座標(X5,Y1)、座標(X5,Y16)にて一対に設けられている。同様に、オンエレメント11cは、座標(X8,Y1)、座標(X8,Y16)にて一対に設けられている。行Y1と行Y16のオンエレメント11cの間の中心間の距離は7.5λとなる。これらの7.5λ離間したオンエレメント11cは、第2のヌルフィルタとして作用する。
【0045】
オンエレメント11cは、座標(X3,Y2)、座標(X3,Y15)にて一対に設けられている。同様にオンエレメント11cは、座標(X10,Y2)、座標(X10,Y15)にて一対に設けられている。隣接するエレメント11a~11dの間の行間距離又は列間距離が0.5λであるため、行Y3と行Y15のオンエレメント11cの間の中心間の距離は6.5λとなる。これらの6.5λ離間したオンエレメント11cは、第3のヌルフィルタとして作用する。
【0046】
このように、オンエレメント11cは、単一のエレメントを離間して配置しているが、これらのオンエレメント11cの中心間のY方向距離d1~d3は(0.5+m)λ(但しmは整数)に設定されている。すなわち、オンエレメント11cは、アンテナアレイ7の列中央から線対称で(0.5+m)λの間隔(但し、m=1、2、…)にて配置されている。また、中央部のオンエレメント11a、11cの密度を高めるためには、意図的に、mを3以上とすることが望ましい。mを3以上とすることで、アンテナアレイ7の中央部の有効エレメントを密にすることができサイドローブ対策できる。なお
図6では、m=3、6、7の例を示している。さらに、ヌルフィルタの特性を変えるため、アンテナアレイ7の中でmの値が互いに異なる条件を満たすオンエレメント11cを複数組設けることが望ましい。グレーティングローブも角度幅を持っているため、グレーティングローブ発生角度近傍に異なる減衰特性を有するヌルフィルタを重ねることで角度幅を有するグレーティングローブ抑圧が可能となる。
【0047】
図7には、列X6、X7のエレメント配置を抜き出して示している。Y方向に隣接する行Y7-Y8のオンエレメント11aには、それぞれ移相器14による移相値φが同一値となるように制御される。このため、行Y7-Y8のオンエレメント11aの位相中心は行Y7-Y8の間の中間位置となる。行Y9-Y10のオンエレメント11aにも同様の信号が与えられるため、行Y9-Y10のオンエレメント11aの位相中心は行Y9-Y10の間の中間位置となる。
【0048】
行Y7-Y8、行Y9-Y10のそれぞれのエレメント間距離はλ/2であるため、行Y7-Y8と行Y9-Y10におけるオンエレメント11aの位相中心間距離dはλ/2の2倍のλとなる。
図8にはメインビーム角を変化させたときの理論的なグレーティングローブ角の変化をシミュレーション結果でプロットしているが、この
図8に示すように位相中心間隔dとレーダ波長λとの関係をd=1λで設計した場合と等価なグレーティングローブ発生角度となる。
【0049】
これにより、原理的にグレーティングローブを強く発生させてしまう虞がある。これは、移相器14の数の削減のためにY方向の隣接エレメントをグルーピングするように設計した弊害により生じている現象であるが、前述したように単一のエレメント11cを挟むことで、
図7に示したように1.25λ程度に位相中心距離dを形成でき、位相中心間隔dのλ周期性を崩すことができる。これにより、グレーティングローブを数dB程、低減することができる。さらに、オンエレメント11cがヌルフィルタ(steerable null filter)として減衰特性を有し、グレーティングローブを追従・抑圧できることが確認されている。
【0050】
言い換えると、隣接した一対のオンエレメント11aは、アンテナアレイ7の中でY方向に線対称に配置されているが、そのY方向に位置して当該Y方向両側をオフエレメント11bに挟んだ状態で単一のオンエレメント11cを配置している。このため、隣接したオンエレメント11aを一対にグルーピングしたとしても位相中心の周期性を崩すことができる。
【0051】
また、単一のオンエレメント11cの配置位置をさらに言い換えて説明する。オンエレメント11cは、アンテナアレイ7の中心部から点対称に、二次元的な四角形の頂点に配置されている。四角形の頂点とは、例えば、座標(X6,Y5)と座標(X6,Y12)のペアおよび座標(X7,Y5)と座標(X7,Y12)のペアを頂点とした位置、座標(X5,Y1)と座標(X5,Y16)のペアおよび座標(X8,Y1)と座標(X8,Y16)のペアを頂点とした位置、座標(X3,Y2)と座標(X3,Y15)のペアおよび座標(X10,Y2)と座標(X10,Y15)のペアを頂点とした位置、を示している。
【0052】
このような配置を採用することで、X方向、Y方向に対する対称性を維持することで移相器14の移相値φを制御してメインビーム方向を調整する際に、当該移相値φも対称的に制御できるようになる。このため移相値φの設計容易性を向上できる。しかも、Y方向に沿って隣接した一対のオンエレメント11aに離間して単一のオンエレメント11cを配置しているため、オンエレメント11aをグルーピングした時の位相中心間隔の一様性を低減でき、グレーティングローブを抑圧できると共にサイドローブレベルを追従・抑圧できる。
【0053】
また、左半領域のオンエレメント11a、11cと右半領域のオンエレメント11a、11cとは左右対称に配置されている。本実施形態の構成では、オンエレメント11a及びオフエレメント11bの配置において、アンテナアレイ7の中央部側にオンエレメント11a、11cが占有する密度を高めると共に、その四隅における占有密度を低くしている。占有密度の中央部の目安としてN=行数とすれば、(N-2)/3+2=(16-2)/3+2≒6エレメント、他方、占有密度の四隅の目安として、(N-2)/3=(16-2)/3≒4エレメント、を想定して配置している。
【0054】
具体的に、アンテナアレイ7の中央部側の6×6四方の領域では、3×3四方の領域におけるオンエレメント11a、11cの占有密度が7/9~9/9の間、すなわち75%を超える割合となっている。他方、アンテナアレイ7の四隅におけるオンエレメント11a、11cの占有密度は4/9、すなわち44%程度の割合となっている。なお、矩形状のアンテナアレイ7は、その四辺の両端中央においてオンエレメント11a、11cの占有密度が5/9、すなわち56%程度の割合となっている。テーパリングの観点でも四隅にオンエレメント11a、11cを無くした設計は有効である。何故ならアンテナアレイ7の中央部からの距離が離れているため、テーパリング実現のために
図2の移相器IC2の内部の可変利得増幅器13に大きな減衰量が必要になってしまうためである。
【0055】
一般的な比較例として、オンエレメント11aをランダムに配置することが考えられるが、この場合、オンエレメント11a、11cの占有密度は原理的に全領域で一定となる。しかし、中央付近の占有密度を平均値と仮定すると、占有密度は4/9~5/9=44%~56%程度と低くなるため、サイドローブレベルの劣化が懸念される。本形態の構成によれば、中央部付近の占有密度を四隅よりも高くして構成しているため、オンエレメント11a、11cの配置個数を概ね維持しつつ、サイドローブレベルの悪化を抑制できることが確認されている。
【0056】
また前述した位置にて、オンエレメント11aをアンテナアレイ7に配置すると、アンテナアレイ7に対するオンエレメント11aの占有割合は60.4%となる。またY方向(縦方向)にオンエレメント11aを2個ずつグルーピングすることで、移相制御を必要とするオンエレメント11aの占有割合を約半分に低減できる。実際は、グルーピングされないオンエレメント11cも予め考慮して33%になるように設計した。これは、192×33%=64ch分の制御で済むことを意味しており、例えば16ch分の移相器IC2を使用する場合、4個の移相器IC2だけでアンテナアレイ7を制御可能になることを意味する。
【0057】
以下、シミュレーション結果を説明する。発明者は、オンエレメント11a、11cを上述のように配置したアンテナアレイ7の構造についてシミュレーションを行っている。
図9には、前述した間隔d=3.5λの第1のヌルフィルタ、間隔d=7.5λの第2のヌルフィルタを個別に構成した場合のグレーティングローブのリファレンスデータを比較例(17.5°Old beam pattern)と共に示している。これらの例では、グルーピング後のY方向(縦方向)に所定角度17.5°の角度でスキャンした例を示しており、比較例は、オンエレメント11aをランダム配置した場合の受信特性を図示している。
【0058】
第1又は第2のヌルフィルタを構成すると、ランダム配置した場合に比較して、メインビーム角度の損失を最小化できると共に、サイドローブレベルやグレーティングローブレベルを抑圧でき、グレーディングローブ角度に追従・抑圧できることが確認された。
【0059】
また前述したアンテナアレイ7の構造を採用し、メインローブレベルを0dBmに正規化した場合の送信特性及び受信特性並びに送受信合成角度スペクトラムを
図10に示している。この
図10に示すように、送受合成後のスペクトラムでは、17.5°縦方向スキャン時に、-43°付近に発生するグレーティングローブを-40dBc以下に抑圧できている。さらにサイドローブレベルを-35dBc程度に抑圧できることが確認されている。
【0060】
また
図11は、移相器14の移相値φを移相制御することでメインビーム角度をY方向(縦方向)に5°に調整したときのアンテナアレイ7の受信特性を図示したものであり、
図12はメインビーム角度をY方向に17.5°に調整したときのアンテナアレイ7の受信特性を図示したものである。比較例はランダム配置した場合の受信特性を図示しているが、これらの何れも、このランダム配置した場合に比較してサイドローブレベルやグレーティングローブレベルを抑圧できることが確認できた。
【0061】
グローティングローブレベルが強く残留してしまうと、車両用途のレーダ装置1の場合、本来検出すべきメインビームを前方方向に調整すると、レーダ装置1の設置箇所の垂直方向に存在する路面からの反射の影響を強く受けやすくなり受信信号に干渉してしまう。このため、グローティングローブレベルを抑圧することで、レーダ装置1に適用したときでも路面からの反射の影響を抑制でき誤検知を防止できる。
【0062】
図13には、メインビームの角度を0°から40°に変化させたときのグレーティングローブ発生角度の推移とそのグレーティングローブレベルのシミュレーション結果を示している。受信移相部10において移相器14の移相値φを調整することで、メインビームの角度を0°から40°に連続的に変化させると、グレーティングローブの発生角度も変化する。しかし、2次元配列に埋め込んだヌルフィルタの影響によりグレーティングローブ角度に追従してグレーティングローブを抑圧できることを確認できている。
【0063】
<まとめ>
本実施形態によれば、アンテナアレイ7の中央部付近におけるオンエレメント11aの占有密度を四隅の占有密度よりも高く構成しているため、ランダム配置構成に比較してオンエレメント11aの配置個数を少なくしつつサイドローブレベルの悪化を抑制できる。したがって、オンエレメント11aの配置個数を少なくしながらグレーティングローブの発生を抑圧できる。
【0064】
また本実施形態によれば、オフエレメント11bにより挟まれたオンエレメント11cを配置し、オンエレメント11aをグルーピングした後の位相中心の周期性を低減すると共に、オンエレメント11cを特定の間隔になるように線対称、点対称に配置することでヌルフィルタを構成でき、グレーティングローブを追従・抑圧できる。
【0065】
本実施形態によれば、オンエレメント11a/オフエレメント11bの設計において中央部側のオンエレメント11aの密度を高め四隅の密度を低くすることで、移相制御をより簡単化できることから移相器集積回路IC2の中の移相器14の数を削減でき、さらにサイドローブレベルを低減できる。また、隣接したオンエレメント11aをグルーピングすることで、同一の移相器14に対応して複数のオンエレメント11aをまとめて制御できるようになり、移相器14の設置個数を約半分に削減できる。その際に発生するグレーティングローブを必要な全てのスキャン角度において抑圧できる。
【0066】
(第2実施形態)
第2実施形態について
図14を参照しながら説明する。
図14に示すように、オンエレメント11a、11cの形状を、四角形以外の形状、例えば八角形などの多角形の形状に構成しても良い。
図14にはそれぞれ八角形の形状に構成したオンエレメント11a、11cのみ示しており、オフエレメント11b、ダミーエレメント11dは図示していない。本実施形態によっても前述実施形態と同様の作用効果を奏する。また、オンエレメント11a、11cの形状を互いに異なる形状としても良い。
【0067】
(第3実施形態)
第3実施形態について
図15及び
図16を参照しながら説明する。
図15には、第2実施形態のように、オンエレメント11a及び11cを八角形に構成した形態について図示している。
図15に示したように、オンエレメント11aは、その座標中心が二次元的な格子点配列のうちの少なくとも一部に所定の周期で規則的に配置されるものであり、配置された位置の座標中心が格子点の位置からその座標が二次元的に格子点配列の中心から上、下、左又は右にシフト配列されていることが望ましい。なおオンエレメント11cは、格子点配列に固定して配置することが望ましい。
【0068】
図15には格子点配列の中心からオンエレメント11aをシフトするのに望ましい方向を示している。X方向中心側に配置されたオンエレメント11aについては、X方向に沿って外側に格子点間隔0.5λ未満の所定間隔だけシフトさせることが望ましい。また、Y方向中心側に配置されたオンエレメント11aについては、Y方向に沿ってオンエレメント11cに向かうように格子点間隔0.5λ未満の所定間隔だけシフトさせることが望ましい。
【0069】
また、
図15の矢印方向に示したように、XYの斜め方向については、中心方向に向けてオンエレメント11aを格子点間隔0.5λ未満の所定間隔だけシフトさせることが望ましい。これらのシフト間隔は、X方向、Y方向に線対称、すなわち中心位置に点対称に同一間隔だけ設定することが望ましい。位相中心の周期性を低減するように、オンエレメント11aが、オフエレメント11bの領域を埋めるような角度に僅かにシフトさせると良いことが考えられる。この結果、グレーティングローブを抑圧できることが期待できる。
【0070】
また、
図16にX方向中心側の4列分X5~X8のオンエレメント11a、11cの配置間隔を示したように、列X6、X7におけるオンエレメント11cのY方向間隔を3.5λ固定とし、列X5、X8におけるオンエレメント11cのY方向間隔を7.5λ固定としている。これにより、オンエレメント11cによるヌルフィルタとしての特性を保持できる。
【0071】
(他の実施形態)
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができ、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。例えば、以下のように変形可能である。
【0072】
オンエレメント11aをY方向、すなわち縦方向に2個グルーピングした形態を説明したが、これに限られるものではない。オンエレメント11aをX方向、すなわち横方向に2個グルーピングして構成しても良い。単一のオンエレメント11cをY方向、すなわち縦方向に離間して2個配置した形態を説明したが、これに限られるものではない。オンエレメント11cをY方向に孤立した状態で4以上配置しても良い。
【0073】
本発明は、前述した実施形態に準拠して記述したが、本発明は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本発明は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本発明の範畴や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0074】
図面中、7はアンテナエレメント、11a、11cはオンエレメント、11bはオフエレメント、11dはダミーエレメント、14は移相器、を示す。