(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】車両用高電圧部品の支持構造
(51)【国際特許分類】
B60K 1/00 20060101AFI20250115BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20250115BHJP
【FI】
B60K1/00
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2022070729
(22)【出願日】2022-04-22
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】国定 正人
(72)【発明者】
【氏名】田垣内 崇
(72)【発明者】
【氏名】田中 基之
(72)【発明者】
【氏名】林 誠司
(72)【発明者】
【氏名】神谷 健太
(72)【発明者】
【氏名】近藤 浩太
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0122222(US,A1)
【文献】特開2020-011608(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109466301(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第102008061493(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両幅方向に沿って並んだシート間において平板状の車両用高電圧部品の支持構造であって、
前記高電圧部品は、ブラケットによって前記シート間の車室内のフロアから上方に離隔して水平状態に支持され、
前記ブラケットは、車両幅方向に沿って並んで設けられた一対の脚部を有し、
前記一対の脚部は、中間部分において
互いに車両幅方向の内側に向かって折り曲げられ、折り曲げられた部分の近傍において前記高電圧部品を支持し、
車両の側突時に前記シートの移動により前記ブラケットに荷重が加わることによって、
前記一対の脚部が折れ曲がり、前記高電圧部品の水平状態が崩れる、
車両用高電圧部品の支持構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用高電圧部品の支持構造であって、
前記ブラケットは、前記高電圧部品を載置する床部を有し、
前記床部は、前記高電圧部品の底面を露出させる開口部を有する、
車両用高電圧部品の支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両幅方向に沿って並んだシート間において平板状の高電圧部品を支持する支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車には、大容量のバッテリが搭載されており、このバッテリからの電力を各種電気製品などに給電するために、車室内にインバータが搭載される場合がある。近年、災害時における電気自動車による家庭内電気製品等の給電需要に伴ってインバータが大型化している。大型化したインバータの配置例として、インバータを車両幅方向に沿って並んだシート間に配置する構成が考えられる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、インバータは高電圧のバッテリからの電力を受ける高電圧部品であり、大きな荷重が掛からないように適切に設置しなければならない。上述した特許文献1に開示されるインバータを車両幅方向に沿って並んだシート間に配置する構成では、側突時にシートとシートとによってインバータが挟まれ、シートによる大きな荷重がインバータに加わる可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、車両の側突時に車両幅方向に沿って並んだシートとシートとによって高電圧部品が狭まってシートによる大きな荷重が高電圧部品に加わることを防止することができる車両用高電圧部品の支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用高電圧部品の支持構造は、車両幅方向に沿って並んだシート間において平板状の車両用高電圧部品の支持構造であって、高電圧部品は、ブラケットによってシート間の車室内のフロアから上方に離隔して水平状態に支持され、ブラケットは、車両幅方向に沿って並んで設けられた一対の脚部を有し、一対の脚部は、中間部分において車両幅方向の外側または内側に向かって折れ曲がり易く形成されており、車両の側突時にシートの移動によりブラケットに荷重が加わることによって、一対の脚部が折れ曲がり、高電圧部品の水平状態が崩れることを特徴とする。
【0007】
上記構成とすることによって、車両の側突時にはシートの荷重によって、一対の脚部の一方がさらに折り曲げられ、他方が直線状になるように変形することによって、高電圧部品の水平状態が崩れる。これにより、高電圧部品がシートとシートとによって水平状態のままでは挟まれにくくなり、高電圧部品の傾きによりシートによる大きい荷重が高電圧部品に加わりにくい。
【0008】
本発明に係る車両用高電圧部品の支持構造において、ブラケットは、高電圧部品を載置する床部を有し、床部は、高電圧部品の底面を露出させる開口部を有することが好ましい。
【0009】
上記構成とすることによって、高電圧部品の放熱性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車両用高電圧部品の支持構造によれば、車両の側突時に車両幅方向に沿って並んだシートとシートとによって高電圧部品が狭まってシートによる大きな荷重が高電圧部品に加わることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態の一例である支持構造を示す車両前後方向の後側から見た背面図である。
【
図2】実施形態の一例である支持構造を示す車両前後方向の斜め後側から見た斜視図である。
【
図3】実施形態の一例である支持構造を示す車両前後方向の斜め前側から見た別の斜視図である。
【
図4】側突時にインバータが水平状態からバランスを崩した状態を示す車両前後方向の後側から見た背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。以下の説明において、具体的な形状、材料、方向、数値等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等に合わせて適宜変更することができる。
【0013】
図1から
図4を用いて、実施形態の一例である支持構造10について説明する。
【0014】
支持構造10は、車両の高電圧部品としての平板状のインバータ30を支持する。支持構造10によれば、詳細は後述するが、車両の側突時に車両幅方向に沿って並んだシート11Lとシート11Rとによってインバータ30が狭まってシート11L、11Rによる大きな荷重が水平状態のままインバータ30に加わることを防止することができる。
【0015】
本実施形態の車両は、プラグインハイブリッド車であって、コンセントから差込プラグを用いて直接バッテリに充電できるハイブリッド車である。ただし、車両は、プラグインハイブリッド車に限定されず、電気自動車または通常のハイブリッド車であってもよい。
【0016】
本実施形態の高電圧部品は、インバータ30であって、直流電流を任意周波数の交流電流に変換し、駆動用のモータに供給する電流を制御する。ただし、高電圧部品は、インバータ30に限定されない。インバータ30は、筐体31に収納されている。また、筐体31の底面には、インバータ30を冷却するための送風ファン(図示なし)が設けられ、下方に向けてインバータ30の冷却風を送風する。
【0017】
図1に示すように、支持構造10では、車両幅方向に沿って並んだシート11Lとシート11Rとの間においてブラケット20によってインバータ30が支持される。本実施形態では、シート11Rが運転席シートであって、シート11Lが助手席であるが、これに限定されない。
【0018】
支持構造10では、インバータ30は、車体12のフロアのフロアトンネル13から上方に離隔して水平状態に支持される。フロアトンネル13とは、車室内のフロアの車幅方向の中央部において車両前後方向に沿って設けられた補強部材である。インバータ30の水平状態とは、平板状のインバータ30の上面および下面がフロアと平行になる状態である。また、支持構造10の上部には、コンソールボックス14が固定されている。
【0019】
図2および
図3に示すように、ブラケット20は、フロアトンネル13に固定される脚部21と、インバータ30を載置する床部22と、コンソールボックス14(
図1参照)が固定される天板部23とを有している。
【0020】
脚部21は、上述したようにフロアトンネル13に固定され、インバータ30を支持する。脚部21は、ブラケット20の車両前後方向の前端部にて車両幅方向に沿って設けられた一対の前脚部21FL、21FRと、ブラケット20の後端部にて車両幅方向に沿って設けられた一対の後脚部21RL、21RRとを有する。
【0021】
一対の後脚部21RL、21RRは、その中間部分において車両幅方向の外側または内側に向かって折れ曲がり易く形成されている。本実施形態では、一対の後脚部21RL、21RRは、それぞれが互いに車両幅方向の内側に向かって折り曲げられることによって、外側に向かって折れ曲がり易く形成されている。
【0022】
本実施形態のブラケット20では、一対の後脚部21RL、21RRが折れ曲がり易く形成されているが、これに限定されない。一対の前脚部21FL、21FRが折れ曲がり易く形成されていてもよく、一対の後脚部21RL、21RRおよび一対の前脚部21FL、21FRの両者が折れ曲がり易く形成されていてもよい。
【0023】
本実施形態の一対の後脚部21RL、21RRは、それぞれが互いに車両方向の内側に向かって折り曲げられている構成としたが、これに限定されない。一対の後脚部21RL、21RRは、それぞれが互いに車両方向の外側に向かって折り曲げられていてもよい。
【0024】
より詳細には、後脚部21RLは、車両上下方向の上側から下側に向かって、車両上下方向に沿ったストレート部21Aと、車両上下方向に対し車両幅方向の外側に向かって傾斜している傾斜部21Bと、ストレート部21Aと傾斜部21Bとの接続部であると共に後脚部21RLの折り曲げ部分である折り曲げ部21Cとを有する。なお、後脚部21RRについても、同様に、ストレート部21Aと、傾斜部21Bと、折り曲げ部21Cとを有する。
【0025】
後脚部21RL、21RRの中間部分には、インバータ30が支持される。より詳細には、インバータ30を載置する後述する床部22は、後脚部21RL、21RRの中間部分に設けられた支持部21Sにて固定具(本例ではボルト)によって固定される。支持部21Sは、図示例のように、折り曲げ部21Cの近傍に設けられることが好ましい。ただし、支持部21Sは、後脚部21RL、21RRの中間部分であれば、折り曲げ部21Cの近傍以外のストレート部21Aまたは傾斜部21Bに設けられてもよい。
【0026】
図4に示すように、上記構成とすることによって、車両の例えば左方からの側突時にシート11Lによってインバータ30および床部22に荷重が加わると、後脚部21RL、21RRのそれぞれの折り曲げ部21Cが衝突方向に移動しようとし、後脚部21RLがさらに内側に拡がるように変形し(折れ曲がった状態からさらに折れ曲がるように変形し)、後脚部21RRが折れ曲がった状態から直線状に戻るように変形する。
【0027】
上記後脚部21RL、21RRの変形によって、インバータ30がブラケット20に支持された状態でインバータ30の後左部が下方へ押し下げられ、インバータ30の後右部が上方へ押し上げられる。換言すれば、上記後脚部21RL、21RRの変形によって、インバータ30の後部はバランスを崩して傾斜する。
【0028】
これにより、車両の側突時に、インバータ30がブラケット20によって支持された水平状態からバランスを崩し、シート11Lとシート11Rとによって水平状態のまま挟まれることを防止することができる。その結果、シート11L、11Rによる大きな荷重がインバータ30に加わわりにくい。
【0029】
換言すれば、ブラケット20によれば、車両幅方向に沿って並んで設けられた一対の後脚部21RL、21RRを有し、後脚部21RL、21RRは、車両幅方向の内側に向かって折り曲げられ、インバータ30が後脚部21RL、21RRの中間部分で支持される構成によって、ブラケット20に側方からの荷重が加わった場合には、後脚部21RL、21RRの一方をさらに折れ曲がるように変形させ、他方を直線状に戻るように変形させることによって、インバータ30のブラケット20によって支持された水平状態のバランスを崩し傾斜させることができる。
【0030】
床部22は、上述したように脚部21の中間部分にてインバータ30を載置する部材である。床部22は、インバータ30の底面(車両上下方向の下面)を開放する開口部22Hを有する。床部22は、図示例のように車両幅方向の左側に配置された左床部22Lと、右側に配置された右床部22Rとの間に所定の間隔を設けて、開口部22Hが形成されていることが好ましい。ただし、開口部22Hは、床部22に開口部を形成したものであってもよい。
【0031】
上記構成とすることによって、インバータ30が下方に向けて冷却風を送風する構成であるため、ブラケット20の床部22の下方の空間をインバータ30の冷却風の通風経路として利用することができる。これにより、インバータ30の放熱性能を向上させることができる。
【0032】
左床部22Lは、車両前後方向に沿って長尺状に形成され、前脚部21FLおよび後脚部21RLの車両上下方向の中間部分にボルトによって固定されている。右床部22Rは、車両前後方向に沿って長尺状に形成され、前脚部21FRおよび後脚部21RRの車両上下方向の中間部分にボルトによって固定されている。
【0033】
天板部23は、ブラケット20の天板部分を形成し、上述したようにコンソールボックス14に固定される平板状の部材である。天板部23の車両前後方向の前端部には、前脚部21FL、21FRが車両幅方向の左右端側にそれぞれ接続されている。天板部23の車両前後方向の後端部には、後脚部21RL、21RRが車両幅方向の左右端側にそれぞれ接続されている。本実施形態のブラケット20では、天板部23、前脚部21FL、21FRおよび後脚部21RL、21RRが一体的に形成され、曲げ加工によって形成されている。
【0034】
天板部23は、コンソールボックス14の底面と固定具(本実施形態ではボルト)によって固定されている。
【0035】
なお、本発明は上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0036】
10 支持構造、11L シート、11R シート、12 車体、13 フロアトンネル、14 コンソールボックス、20 ブラケット、21 脚部、21A ストレート部、21B 傾斜部、21C 曲げ部、21FL 前脚部、21FR 前脚部、21RL 後脚部、21RR 後脚部、21S 支持部、22 床部、22H 開口部、22L 左床部、22R 右床部、23 天板部、30 インバータ、31 筐体