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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】遠隔作業方法及び遠隔作業装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20250115BHJP
   G05D 1/224 20240101ALI20250115BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20250115BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
H04N7/18 V
G05D1/224
G08G1/09 V
G09G5/00 510C
G09G5/00 530M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022081129
(22)【出願日】2022-05-17
(65)【公開番号】P2023169798
(43)【公開日】2023-11-30
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山郷 成仁
(72)【発明者】
【氏名】田口 康治
(72)【発明者】
【氏名】平野 麻衣子
(72)【発明者】
【氏名】市川 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】足立 義貴
(72)【発明者】
【氏名】竹村 顕大朗
(72)【発明者】
【氏名】堀田 俊樹
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-204821(JP,A)
【文献】特開2008-248613(JP,A)
【文献】特開2015-070280(JP,A)
【文献】特開2021-153286(JP,A)
【文献】国際公開第2019/220557(WO,A1)
【文献】特開平09-289624(JP,A)
【文献】特開2003-195941(JP,A)
【文献】国際公開第2016/026870(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
G08G 1/09
G05D 1/22-1/224
G09G 5/00-5/42
B60R 1/20-1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の遠隔作業を行う方法であって、
撮影範囲の一部が重複する2種類のカメラ画像のデータと、前記遠隔作業における作業内容のデータとを取得することと、
前記作業内容のデータに基づいて、前記2種類のカメラ画像を結合する縦方向の位置を設定することと、
前記2種類のカメラ画像が前記縦方向の設定位置で結合するように前記2種類のカメラ画像の少なくとも一方を縦方向に移動して前記2種類のカメラ画像を合成することと、
前記2種類のカメラ画像の合成画像を遠隔作業装置のディスプレイから出力することと、
を含むことを特徴とする遠隔作業方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記ディスプレイから前記合成画像が出力されている間、前記遠隔作業装置の入力装置から前記2種類のカメラ画像の結合位置の調整入力を受け付けたか否かを判定することと、
前記調整入力を受け付けたと判定された場合、前記調整入力に基づいて前記結合位置を調整することと、
前記結合位置が調整された合成画像を前記ディスプレイから出力することと、
を更に含むことを特徴とする遠隔作業方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記移動体の内部状態のデータを取得することと、
前記内部状態のデータに基づいて、前記遠隔作業の補助画像を生成することと、
前記合成画像のブランク領域に前記補助画像を追加することと、
前記補助画像が追加された前記合成画像を前記ディスプレイから出力することと、
を更に含むことを特徴とする遠隔作業方法。
【請求項4】
移動体の遠隔作業を行う装置であって、
各種情報が格納された記憶装置と、
前記各種情報を処理するプロセッサと、
前記プロセッサによる処理後の画像が出力されるディスプレイと、
を備え、
前記各種情報には、撮影範囲の一部が重複する2種類のカメラ画像のデータと、前記遠隔作業における作業内容のデータと、が含まれ、
前記プロセッサは、
前記作業内容のデータに基づいて、前記2種類のカメラ画像を結合する縦方向の位置を設定し、
前記2種類のカメラ画像が前記縦方向の設定位置で結合するように前記2種類のカメラ画像の少なくとも一方を縦方向に移動して前記2種類のカメラ画像を合成し、
前記2種類のカメラ画像の合成画像を前記ディスプレイから出力する
ことを特徴とする遠隔作業装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置であって、
前記遠隔作業を行うオペレータにより操作される入力装置を更に備え、
前記プロセッサは、更に、
前記ディスプレイから前記合成画像が出力されている間、前記入力装置から前記2種類のカメラ画像の結合位置の調整入力を受け付けたか否かを判定し、
前記調整入力を受け付けたと判定された場合、前記調整入力に基づいて前記結合位置を調整し、
前記結合位置が調整された合成画像を前記ディスプレイから出力する
ことを特徴とする遠隔作業装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の装置であって、
前記各種情報には、前記移動体の内部状態のデータが更に含まれ、
前記プロセッサは、更に、
前記内部状態のデータに基づいて、前記遠隔作業の補助画像を生成し、
前記合成画像のブランク領域に前記補助画像を追加し、
前記補助画像が追加された前記合成画像を前記ディスプレイから出力する
ことを特徴とする遠隔作業装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体の遠隔作業を行う方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2019-156299号公報は、複数の車載カメラから取得された複数のカメラ画像に基づいて、仮想視点(例えば車両の上方)から見た合成画像を生成するシステムを開示する。合成画像の生成は、車両に搭載された情報処理装置において行われる。情報処理装置は、合成画像を車両のユーザの携帯端末に送信する。携帯端末は、合成画像を当該携帯端末の表示部に出力する。車両のユーザは、表示部に出力された合成画像を見ながら、車両を操作する情報を携帯端末に入力する。この入力情報は携帯端末から情報処理装置に送信される。情報処理装置は、入力情報に基づいて車両を操作する。
【0003】
本開示に関連する技術分野の技術水準を示す文献としては、特開2019-156299号公報の他に、特開2020-77173公報及び特開2020-161039号公報を例示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-156299号公報
【文献】特開2020-77173公報
【文献】特開2020-161039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開2019-156299号公報の技術は、車両から降りたユーザが、駐車スペースの近くにおいて携帯端末を操作しながら当該車両を現在地から当該駐車スペースまで移動させるものである。そのため、仮想視点から見た合成画像を携帯端末の表示部に出力するこの従来技術は、駐車を安全に行う観点から有用である。
【0006】
車両に代表される移動体の遠隔作業を行う場合を考える。この場合は、複数のカメラ画像が移動体から遠隔作業装置に送信される。そして、遠隔作業装置の少なくとも1台のディスプレイ上にこれらのカメラ画像が出力される。遠隔オペレータは、ディスプレイに出力されたこれらのカメラ画像を見て、遠隔作業のための情報を遠隔作業装置に入力する。
【0007】
ところで、複数のカメラ画像のうちの2つのカメラ画像に着目すると、これらのカメラ画像には同一の物体が映り込んでいるケースがある。例えば、2つのカメラの撮影範囲が部分的に重複している場合、2種類のカメラ画像に同一の物体が映り込む。同一の物体が存在するという情報は、遠隔オペレータにとって不要な情報と言える。従って、この不要な情報を削除するように2種類のカメラ画像が加工されることが望ましい。例えば、同一の物体の位置において一方のカメラ画像に他方のカメラ画像を結合させれば、不要な情報を減らすことができる。
【0008】
しかしながら、複数のカメラの各視点は互いに異なる。そのため、撮影範囲が部分的に重複する2種類のカメラから得られた画像を結合させると、合成画像の結合部分に歪みやずれが生じてしまう。この問題は、合成画像の加工を行うことで解消することが見込まれる。ところが、遠隔作業の最中のカメラ画像の加工に対する必要以上の注力は、カメラ画像の遠隔オペレータへの迅速な提供に支障をきたす可能性がある。
【0009】
本発明の1つの目的は、撮影範囲が部分的に重複する2つのカメラから得られた画像を、迅速かつ有用な合成画像の形で遠隔オペレータに提供することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、移動体の遠隔作業を行う方法であり、次の特徴を有する。
前記方法は、
撮影範囲の一部が重複する2種類のカメラ画像のデータと、前記遠隔作業における作業内容のデータとを取得することと、
前記作業内容のデータに基づいて、前記2種類のカメラ画像を結合する縦方向の位置を設定することと、
前記2種類のカメラ画像が前記縦方向の設定位置で結合するように前記2種類のカメラ画像の少なくとも一方を縦方向に移動して前記2種類のカメラ画像を合成することと、
前記2種類のカメラ画像の合成画像を遠隔作業装置のディスプレイから出力することと、
を含む。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において更に次の特徴を有する。
前記方法は、
前記ディスプレイから前記合成画像が出力されている間、前記遠隔作業装置の入力装置から前記2種類のカメラ画像の結合位置の調整入力を受け付けたか否かを判定することと、
前記調整入力を受け付けたと判定された場合、前記調整入力に基づいて前記結合位置を調整することと、
前記結合位置が調整された合成画像を前記ディスプレイから出力することと、
を更に含む。
【0012】
第3の発明は、第1又は2の発明において更に次の特徴を有する。
前記方法は、
前記移動体の内部状態のデータを取得することと、
前記内部状態のデータに基づいて、前記遠隔作業の補助画像を生成することと、
前記合成画像のブランク領域に前記補助画像を追加することと、
前記補助画像が追加された前記合成画像を前記ディスプレイから出力することと、
を更に含む。
【0013】
第4の発明は、移動体の遠隔作業を行う装置であり、次の特徴を有する。
前記装置は、記憶装置と、プロセッサと、ディスプレイとを備える。前記記憶装置には各種情報が格納される。前記プロセッサは、前記各種情報を処理する。前記ディスプレイからは、前記プロセッサによる処理後の画像が出力される。
前記各種情報には、撮影範囲の一部が重複する2種類のカメラ画像のデータと、前記遠隔作業における作業内容のデータと、が含まれる。
前記プロセッサは、
前記作業内容のデータに基づいて、前記2種類のカメラ画像を結合する縦方向の位置を設定し、
前記2種類のカメラ画像が前記縦方向の設定位置で結合するように前記2種類のカメラ画像の少なくとも一方を縦方向に移動して前記2種類のカメラ画像を合成し、
前記2種類のカメラ画像の合成画像を前記ディスプレイから出力する。
【0014】
第5の発明は、第4の発明において更に次の特徴を有する。
前記装置は、入力装置を更に備える。前記入力操作は、前記遠隔作業を行うオペレータにより操作される。
前記プロセッサは、前記ディスプレイから前記合成画像が出力されている間、前記入力装置から前記2種類のカメラ画像の結合位置の調整入力を受け付けたか否かを判定し、
前記調整入力を受け付けたと判定された場合、前記調整入力に基づいて前記結合位置を調整し、
前記結合位置が調整された合成画像を前記ディスプレイから出力する。
【0015】
第6の発明は、第4又は5の発明において更に次の特徴を有する。
前記各種情報には、前記移動体の内部状態のデータが更に含まれる。
前記プロセッサは、更に、
前記内部状態のデータに基づいて、前記遠隔作業の補助画像を生成し、
前記合成画像のブランク領域に前記補助画像を追加し、
前記補助画像が追加された前記合成画像を前記ディスプレイから出力する。
【発明の効果】
【0016】
第1又は4の発明によれば、作業内容のデータに基づいて設定された縦方向の位置において結合された2種類のカメラ画像の合成画像がディスプレイから出力される。そのため、結合位置での画像の視認性が確保された合成画像を生成することが可能となる。また、この合成画像の生成には長時間を要しない。従って、合成画像を迅速にオペレータに提供することも可能となる。
【0017】
第2又は5の発明によれば、オペレータが着目を希望する位置で2種類のカメラ画像が結合された合成画像をオペレータに提供することが可能となる。
【0018】
第3又は6の発明によれば、合成画像の生成により生じたブランク領域の有効活用を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】遠隔作業を説明するための概念図である。
図2】カメラ画像の一例を示す図である。
図3図2に示したカメラ画像の合成例を示す図である。
図4図2の上段に示したカメラ画像の合成例を示す図である。
図5図2の下段に示したカメラ画像の合成例を示す図である。
図6】追加画像がブランク領域に挿入された作業用画像の例を説明する図である。
図7図1に示した移動体の構成例を示すブロック図である。
図8】運転計画のデータの構成例を示す図である。
図9図7に示した移動体のデータ処理装置の機能構成例を示すブロック図である。
図10図1に示した遠隔作業装置の構成例を示すブロック図である。
図11図10に示した遠隔作業装置のデータ処理装置の機能構成例を示すブロック図である。
図12図10に示した遠隔作業装置のデータ処理装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図13図10に示した遠隔作業装置のデータ処理装置が実行する処理の別の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る遠隔作業方法及び遠隔作業装置について説明する。尚、実施形態に係る遠隔作業方法は、実施形態に係る遠隔作業装置において行われるコンピュータ処理により実現される。また、各図において、同一又は相当する部分には同一符号を付してその説明を簡略化し又は省略する。
【0021】
1.実施形態の概要
1-1.遠隔作業
図1は、遠隔作業(Remote Operation)を説明する概念図である。図1には、移動体1と遠隔作業装置2が描かれている。移動体1と遠隔作業装置2は遠隔作業システムを構成する。移動体1は、遠隔作業装置2による遠隔作業を受ける対象の一例である。移動体1としては、車両、物流ロボット及び作業ロボットなどのロボットが例示される。
【0022】
遠隔作業としては、移動体1の行動(例えば、前進する、止まる、旋回する等)に直接関係する操作を目的とした遠隔運転(Remote Driving)が例示される。遠隔作業には、遠隔指示(Remote Command)及び遠隔支援(Remote Assistance)も含まれる。遠隔指示(Remote Command)は、移動体1の行動に直接関係しない操作(例えば、移動体1のライトを点灯する等)を目的として行われる。遠隔支援(Remote Assistance)は、移動体1による認識及び判断を支援するために行われる。
【0023】
移動体1と遠隔作業装置2は、ネットワークの基地局(不図示)を介して通信を行う。例えば、移動体1に搭載されたデータ処理装置12は、遠隔作業の要否を判定する。そして、遠隔作業が必要であると判定された場合、データ処理装置12は、遠隔作業装置2に遠隔作業を要求する信号を送信する。この信号の送信時、又は、この信号の送信に先駆けて、データ処理装置12は、カメラ画像IMGのデータを遠隔作業装置2に送信する。カメラ画像IMGのデータは、移動体1に搭載されたカメラ11から取得される。
【0024】
遠隔作業装置2のデータ処理装置22は、遠隔作業を要求する信号に応答し、移動体1に各種の遠隔指令INSを送信する。データ処理装置22から移動体1に送信される遠隔指令INSとしては、オペレータOPの判断に基づく指令が例示される。例えば、オペレータOPは、遠隔作業装置2のディスプレイ21から出力された遠隔作業用のカメラ画像(以下、「作業用画像」とも称す。)IMG_Oを見て遠隔作業の要求の内容を理解する。そして、オペレータOPは、移動体1が取るべき行動を判断し、この行動に対応する指示を遠隔作業装置2に入力する。移動体1が取るべき行動としては、前進、停止、前方の障害物に対するオフセット回避、緊急退避等が例示される。データ処理装置22は、オペレータOPからの入力データに応じた遠隔指令INSを生成し、移動体1に送信する。
【0025】
1-2.遠隔作業用のカメラ画像
図2は、カメラ画像IMGの一例を示す図である。図2には、移動体1が車両の場合に3台の車載カメラによってそれぞれ取得されたカメラ画像IMG1~IMG3が示されている。カメラ画像IMG1は、車両の前方中央の空間を撮影するカメラ(前方中央カメラ)により取得される。カメラ画像IMG2は車両の左前方の空間を撮影するカメラ(左前方カメラ)により取得され、カメラ画像IMG3は車両の右前方の空間を撮影するカメラ(右前方カメラ)により取得される。前方中央カメラの撮影範囲の左方の一部は、左前方カメラのそれと重複している。前方中央カメラの撮影範囲の右方の一部は、右前方カメラのそれと重複している。
【0026】
図2の上段には、交差点進入時のカメラ画像IMG1~IMG3が示されている。カメラ画像IMG1には、交通信号機、車両の前方の路面に描かれた横断歩道、右折用の誘導枠などが写っている。カメラ画像IMG2には、車両の前方の路面に描かれた横断歩道に加えて、車両の左前方の路面に描かれた横断歩道と、この横断歩道上の歩行者などが写っている。カメラ画像IMG3には、車両の前方の路面に描かれた横断歩道、右折用の誘導枠に加えて、右折用の車線や、この車線に隣接する車線(対向車線)などが写っている。
【0027】
図2の下段には、オフセット回避時のカメラ画像IMG1~IMG3が示されている。カメラ画像IMG1には、車両が走行する車線(以下、「走行車線」とも称す。)、この車線上を走行するトラック、この車線の路肩で停止している車両、この車線に隣接する車線(対向車線)などが写っている。カメラ画像IMG2には、走行車線、停止車両などが写っている。この停止車両は、オフセット回避の対象(障害物)に該当する。カメラ画像IMG3には、走行車線、対向車線などが写っている。
【0028】
作業用画像IMG_Oは、カメラ画像IMG1~IMG3に基づいて生成される。例えば、ディスプレイ21が3台のディスプレイを含む場合、カメラ画像IMG1~IMG3に基づいて3種類の作業用画像IMG_Oが生成される。そして、これらの作業用画像IMG_Oが3台のディスプレイからそれぞれ出力される。ディスプレイ21が2台のディスプレイを含む場合、カメラ画像IMG1~IMG3に基づいて2種類の作業用画像IMG_Oが生成されて、これらの作業用画像IMG_Oが2台のディスプレイからそれぞれ出力される。ディスプレイ21が1台のディスプレイのみの場合、カメラ画像IMG1~IMG3に基づいて1種類の作業用画像IMG_Oが生成されて、この作業用画像IMG_Oが1台のディスプレイから出力される。
【0029】
1-3.カメラ画像の合成
実施形態では、作業用画像IMG_Oが出力されるディスプレイ21の総数が、カメラ画像IMGを取得するカメラ11のそれよりも少ない場合を考える。この場合は、m台のカメラ11によって同時期にカメラ画像IMG1~IMGmが取得される(m≧2)。ディスプレイ21がn台のディスプレイを含むとすると(n≦m-1)、カメラ画像IMG1~IMGmに基づいて生成された作業用画像IMG_Oをこれらのディスプレイから同時期に出力するためには、カメラ画像IMG1~IMGmのうちの少なくとも2つが結合(合成)される必要がある。例えば、カメラ画像IMG1~IMG3を1台のディスプレイから同時期に出力するためには、これらのカメラ画像を合成して1つの作業用画像IMG_Oを生成する必要がある。
【0030】
図3は、図2に示したカメラ画像IMG1~IMG3の合成例を示す図である。図3の上段は、図2の上段に示したカメラ画像IMG1~IMG3の合成例に相当する。図3の上段に示される例では、単に、カメラ画像IMG1の左端部にカメラ画像IMG2の右端部が結合されている。そのため、カメラ画像IMG1とカメラ画像IMG2の結合位置には同一歩行者の重複DP(duplication)が見られる。また、この結合位置には、横断歩道の位置ずれPG(position gap)確認される。
【0031】
また、この例では、単に、カメラ画像IMG1の右端部にカメラ画像IMG3の左端部が合わせられている。そのため、カメラ画像IMG1とカメラ画像IMG3の結合位置には同一枠線の重複DPが見られる。また、この結合位置には、横断歩道の位置ずれPGも確認される。
【0032】
図3の下段は、図2の下段に示したカメラ画像IMG1~IMG3の合成例に相当する。図3の下段におけるカメラ画像の合わせ手法は、図3の上段におけるそれと同じである。そのため、カメラ画像IMG1とカメラ画像IMG2の結合位置には同一車両の重複DPが見られる。また、カメラ画像IMG1とカメラ画像IMG3の結合位置には同一白線(車線区画線)の重複DPや、同一建物の重複DPが確認される。
【0033】
図3の説明から理解されるように、カメラ画像IMG1~IMG3を単に並べて合成した場合は、ディスプレイの総数の制約を受けずに済む一方で、結合位置に写る情報がオペレータOPを混乱させる可能性がある。ここで、カメラ画像IMG1~IMG3の結合位置を変更する等の画像処理を行えば、このような不都合の発生を回避できるかもしれない。ところが、車載カメラの各視点は互いに異なることから、画像処理後の画像のどこかに(例えば、結合位置の部分)に歪みやずれが生じてしまう。
【0034】
1-4.作業内容を利用したカメラ画像の合成
昨今の画像処理技術によれば、画像の歪みやずれを極限まで減らすことも可能である。ところが、必要以上の画像処理を行えば、処理後の画像(つまり、作業用画像IMG_O)がディスプレイ21に出力されるまでに長い時間を要してしまう。このように、オペレータOPが見易い作業用画像IMG_Oをディスプレイ21から出力することと、カメラ画像IMGから作業用画像IMG_Oを短時間で生成することとはトレードオフの関係にある。
【0035】
そこで、実施形態では、視認性の確保と作業用画像IMG_Oの迅速な提供を両立させるべく、遠隔作業における作業内容のデータに基づいてカメラ画像IMG1~IMG3の合成が行われる。作業内容のデータは、例えば、遠隔作業の要求信号の送信前、又は、要求信号の送信と同時にデータ処理装置12において生成される。作業内容のデータは、要求信号の送信と同時に、又は、要求信号の送信後に遠隔作業装置2に送信される。
【0036】
例えば、移動体1としての車両が交差点の入口に差し掛かったときに、この交差点の交通状況の確認をするための遠隔作業の要求信号が送信される場合を考える。この場合、データ処理装置12は、例えば、交差点の入口付近で車両を停止させるための車両制御を行い、遠隔作業の要求信号を送信する。要求信号の送信は、車両の停止後、又は車両の停止に先駆けて行われる。要求信号の送信に際し、作業内容のデータが生成される。作業内容のデータは、例えば、「交差点の交通状況の確認」という作業内容を示す2進数により表現される。尚、「交差点の交通状況の確認」を示す2進数は事前に設定されている。
【0037】
データ処理装置22は、作業内容のデータに基づいて、カメラ画像IMG1及びIMG2の縦方向(奥行き方向)の結合位置CP(connecting position)を設定する。又は、データ処理装置22は、カメラ画像IMG1及びIMG3の結合位置CPを設定する。又は、データ処理装置22は、上述した2種類の結合位置CPを設定する。結合位置CPの総数は、ディスプレイ21の総数に対応している。
【0038】
図4には、図2の上段に示したカメラ画像IMG1~IMG3の合成例が示されている。この例では、ディスプレイ21は1台のディスプレイのみであり、故に、カメラ画像IMG1がカメラ画像IMG2と結合され、同時に、カメラ画像IMG1がカメラ画像IMG3と結合される。作業内容が「交差点の交通状況の確認」の場合、例えば、オペレータOPが交差点の全体を見渡すことができるようにカメラ画像IMG1~IMG3の合成が行われる。
【0039】
図4に示される例では、2種類の結合位置CPがカメラ画像IMG1の奥側の位置に設定される。車載カメラの撮影範囲は既知であることから、カメラ画像IMG1の奥側の位置に結合位置CPを設定すると、カメラ画像IMG1とカメラ画像IMG2の縦方向の結合がこの設定位置において行われる。カメラ画像IMG1とカメラ画像IMG3の縦方向の結合も、この設定位置において行われる。尚、この場合は、カメラ画像IMG1の手前側の位置において、横断歩道の位置ずれPGが発生する。
【0040】
カメラ画像IMG1と、カメラ画像IMG2及びIMG3の縦方向の結合に際しては、横方向(車幅方向)の結合がこれと並行して行われる。横方向の結合は、縦方向の結合位置CPに関係なく常時同じ位置において行われる。つまり、横方向の結合は、作業内容に関係なく固定の位置において行われる。
【0041】
別の例として、移動体1としての車両がオフセット回避を予定しているときに、この車両の近くを確認するための遠隔作業の要求信号が送信される場合を考える。この場合、データ処理装置12は、障害物の手前で車両を停止させるための車両制御を行い、要求信号を送信する。要求信号の送信に際し、作業内容のデータが生成される。作業内容のデータは、例えば、「オフセット回避のための周囲の確認」又は「遠隔運転によるオフセット回避」という作業内容を示す2進数により表現される。尚、このような作業内容を示す2進数は事前に設定されている。
【0042】
図5には、図2の下段に示したカメラ画像IMG1~IMG3の別の合成例が示されている。図4に示した例と同じく、図5に示される例でもディスプレイ21は1台のディスプレイのみである。故に、カメラ画像IMG1がカメラ画像IMG2と結合され、同時に、カメラ画像IMG1がカメラ画像IMG3とも結合される。作業内容が「オフセット回避のための周囲の確認」又は「オフセット回避運転」の場合、例えば、オペレータOPが障害物に対する車両の接近状況を確認することができるようにカメラ画像の合成が行われる。
【0043】
図5に示される例では、2種類の結合位置CPがカメラ画像IMG1の手前側の位置に設定される。既述したように、車載カメラの撮影範囲は既知である。そのため、カメラ画像IMG1の手前側の位置に結合位置CPを設定すると、カメラ画像IMG1とカメラ画像IMG2の結合がこの設定位置において行われる。カメラ画像IMG1とカメラ画像IMG3の結合も、この設定位置において行われる。尚、この場合は、カメラ画像IMG3の奥側の位置において、建物の歪みDF(deformation)が発生する。
【0044】
カメラ画像IMG1と、カメラ画像IMG2及びIMG3の縦方向の結合に際し、横方向の結合がこれと並行して行われることは図4で説明した例と同じである。
【0045】
このように、実施形態では、撮影範囲が部分的に重複する2種類のカメラ画像IMGを合成して1つの作業用画像IMG_Oを生成する際に、作業内容のデータに基づいて縦方向の結合位置CPが設定される。そのため、結合位置CP以外の位置での画像の歪みやずれを許容しながらも、結合位置CPでの画像の視認性が確保された作業用画像IMG_Oを生成することが可能となる。また、この作業用画像IMG_Oの生成には長時間を要しない。従って、作業用画像IMG_Oを迅速にオペレータOPに提供することも可能となる。
【0046】
ところで、図4及び5に示した例では、カメラ画像IMG1~IMG3の合成の前に、これらのカメラ画像に対する一般的な画像処理(例えば、撮影角度、レンズ特性等に起因する歪み補正)が行われる。また、カメラ画像IMG1~IMG3の合成に際しては、上述した結合の他に、これらのカメラ画像に写る物体のサイズを一致させる画像処理も行われる。そのため、作業用画像IMG_Oにはブランク領域BRが形成される。
【0047】
図4に示される例では、カメラ画像IMG1の縦方向に2つのブランク領域BRが形成される。一方、図5に示される例では、カメラ画像IMG1の縦方向に加えて、カメラ画像IMG2の左方及びカメラ画像IMG3の右方にもブランク領域BRが形成される。このようなブランク領域BRには、追加画像(補助画像)が挿入されてもよい。
【0048】
図6は、追加画像がブランク領域BRに挿入された作業用画像IMG_Oの例を説明する図である。図6に示される作業用画像IMG_Oは、図5に示したそれを基礎とし、カメラ画像IMG1よりも手前側の位置に追加画像IMG4が挿入されている。追加画像IMG4は、例えば、移動体1の内部状態のデータ(速度データ、加速度データ、バッテリ残量データ)に基づいて生成される。カメラ画像IMGのデータとは別に移動体1の内部状態データが提供されれば、追加画像IMG4を生成することができる。このような追加画像IMG4がブランク領域BRに挿入されれば、ブランク領域BRの有効活用を図ることが可能となる。
【0049】
以下、実施形態に係る遠隔作業方法及び遠隔作業装置について、詳細に説明する。
【0050】
2.遠隔作業システム
2-1.移動体の構成例
図7は、図1に示した移動体1の構成例を示すブロック図である。図7に示されるように、移動体1は、カメラ11と、データ処理装置12と、センサ群13と、通信装置14と、走行装置15と、を備えている。カメラ11、センサ群13、通信装置14及び走行装置15と、データ処理装置12とは、例えば、車載のネットワーク(例えば、CAN(Controller Area Network))により接続されている。
【0051】
カメラ11は、移動体1の少なくとも前方の空間を撮影してカメラ画像IMGを取得する。前方撮影用のカメラ11は、撮影範囲が部分的に重複する2台のカメラを含んでいる。前方撮影用のカメラ11は、典型的には、図2で説明した前方中央カメラ、左前方カメラ及び右前方カメラを含んでいる。カメラ11は、移動体1の右方及び右後方を撮影するカメラ(右方カメラ)、移動体1の左方及び左後方を撮影するカメラ(左方カメラ)、及び移動体1の後方を撮影するカメラを含んでいてもよい。この場合、後方カメラの撮影範囲の一部は、右方カメラ及び左方カメラの撮影範囲と重複することがある。カメラ11は、カメラ画像IMGのデータをデータ処理装置12に送信する。
【0052】
データ処理装置12は、移動体1が取得した各種データを処理するためのコンピュータである。データ処理装置12は、少なくとも1つのプロセッサ16と、少なくとも1つのメモリ17と、インターフェース18と、を備える。プロセッサ16は、CPU(Central Processing Unit)を含んでいる。メモリ17は、DDRメモリなどの揮発性のメモリであり、プロセッサ16が使用するプログラムの展開及び各種データの一時保存を行う。移動体1が取得した各種データは、メモリ17に格納される。この各種データには、上述したカメラ画像IMGのデータが含まれる。各種データには、移動体1の運転計画PLNのデータと、遠隔指令INSのデータも含まれる。インターフェース18は、カメラ11、走行装置15等の外部装置とのインターフェースである。
【0053】
センサ群13は、移動体1の内部状態を検出する状態センサを含んでいる。状態センサとしては、速度センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ及び舵角センサが例示される。センサ群13は、また、移動体1の位置及び方位を検出する位置センサを含んでいる。位置センサとしては、GNSS(Global Navigation Satellite System)センサが例示される。センサ群20は、更に、カメラ11以外の認識センサを含んでいてもよい。認識センサは、電波又は光を利用して移動体1の周辺環境を認識(検出)する。認識センサとしては、ミリ波レーダ及びLIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)が例示される。センサ群13は、内部状態のデータをデータ処理装置12に送信する。
【0054】
通信装置14は、ネットワーク4の基地局(不図示)との間で無線通信を行う。この無線通信の通信規格としては、4G、LTE、または5G等の移動体通信の規格が例示される。通信装置14の接続先には、遠隔作業装置2が含まれる。遠隔作業装置2との通信において、通信装置14は、データ処理装置12から受け取った各種データを、遠隔作業装置2に送信する。
【0055】
走行装置15は、移動体1の加速、減速及び操舵を行う。移動体1が車両の場合、走行装置15は、例えば、モータと、ステアリング装置と、ブレーキ装置とを備えている。モータは、車両の車輪を駆動する。ステアリング装置は、この車輪を転舵する。ブレーキ装置は、車両に制動力を付与する。車両の加速は、モータの制御によって行われる。車両の減速は、ブレーキ装置の制御によって行われる。モータの制御による回生ブレーキを利用して、車両の制動が行われてもよい。車両の操舵は、ステアリング装置の制御によって行われる。
【0056】
2-2.運転計画PLN
ここで、メモリ17に格納される運転計画PLNについて説明する。実施形態では、移動体1としての車両が自動運転を行うことを考える。自動運転制御は、運転計画PLNに基づいてデータ処理装置12により行わる。運転計画PLNは、例えば、自動運転を予定している区間において順次実行される複数のイベントに基づいて生成される。複数のイベントには、例えば、加速イベント、減速イベント、車線維持イベント、車線変更イベントなどが含まれる。加速イベントは、車両を加速させるイベントである。減速イベントは、車両を減速させるイベントである。車線維持イベントは、車両が走行車線を逸脱しないように車両を走行させるイベントである。車線変更イベントは、走行車線を変更するイベントである。
【0057】
図8は、運転計画PLNのデータの構成例を示す図である。図8に示される例では、運転計画PLNのデータが、車両の走行軌道TRJのデータ、運転判断DECのデータ、遠隔作業における作業内容REMのデータ、及び、車両の内部状態INTのデータを含んでいる。
【0058】
走行軌道TRJは、複数のイベントに対応してそれぞれ生成される。車両の自動運転は、走行軌道TRJに車両が追従するように走行装置15を制御することにより行われる。運転判断DECは、走行軌道TRJに車両を追従させるための車両制御(つまり、自動運転制御)の実行に関する判断を示す。走行軌道TRJ及び運転判断DECは、自動運転制御の最中の運転環境に基づいて適宜変更される。
【0059】
第1の例として、車線維持イベントに対応して生成された走行軌道TRJに車両を追従させる自動運転制御が行われる場合を考える。この場合の運転判断DECとしては「走行車線の維持」が例示される。車線維持イベントの最中に、自動運転制御の実行を妨げうる障害物が認識されると、この障害物の将来の挙動が予測される。障害物が動的物体の場合、将来の挙動に基づいて、当該障害物の軌道が予測されてもよい。将来の挙動が予測されたら、この将来の挙動に基づいて新たな運転判断DECが生成される。新たな運転判断DECとしては、オフセット回避、障害物の手前での一時停止、遠隔作業の要求が例示される。走行軌道TRJは、新たな運転判断DECに基づいて適宜変更される。
【0060】
第2の例として、加速イベントに対応して生成された走行軌道TRJに車両を追従させる自動運転制御が行われる場合を考える。この場合の運転判断DECとしては「車両の加速」が例示される。加速イベントの最中に認識された障害物の認識レベルが低い場合、新たな運転判断DECが生成される。新たな運転判断DECとしては、加速中止、障害物の手前での一時停止、遠隔作業の要求が例示される。加速中止や、障害物の手前での一時停止は、認識レベルを高めるための運転判断である。尚、障害物の認識レベルが低いケースは、加速イベント以外のイベントの最中にも起こりうる。走行軌道TRJは、新たな運転判断DECに基づいて適宜変更される。
【0061】
第3の例として、車線変更(合流)イベントに対応して生成された走行軌道TRJに車両を追従させる自動運転制御が行われる場合を考える。この場合の運転判断DECとしては「車線変更」が例示される。見通しの悪い交差点への進入、交通量の多い幹線道路への合流といった地理的条件や、明け方、夕方といった時間帯条件が満たされる場合、新たな運転判断が生成される。このような場合は、交通安全性を担保する観点から、車両による障害物の認識の有無に関係なく新たな運転判断DECが生成される。新たな運転判断DECとしては、上限速度の設定、遠隔作業の要求が例示される。走行軌道TRJは、新たな運転判断DECに基づいて適宜変更される。
【0062】
作業内容REMは、新たな運転判断DECとして「遠隔作業の要求」が生成されている場合に運転計画PLNに追加される。作業内容REMは、新たな運転判断DECが生成された原因に応じて生成される。上述した第1の例では、障害物が認識されている。この場合の作業内容REMとしては、「障害物の確認」、「障害物の周囲の確認」、「オフセット回避の実行の許可」、「遠隔運転の実行(遠隔運転によるオフセット回避)」が例示される。尚、これらの作業内容REMは事前に設定されており、作業内容REMの追加に際しては、これらのうちから少なくとも1つが選択される。
【0063】
上述した第2の例では、障害物の認識レベルが低い。そのため、この場合の作業内容REMとしては、「障害物の認識」、「車両の周囲の確認」、「遠隔運転の実行(障害物に対する手動オフセット)」が例示される。上述した第3の例では、地理的条件又は時間帯条件が満たされたことで運転判断DECが生成されている。そのため、この場合の作業内容REMとしては、「車両の周囲の確認」、「遠隔運転の実行(遠隔運転によるオフセット回避)」が例示される。尚、第2及び第3の例では、第1の例同様、作業内容REMの追加に際して少なくとも1つの作業内容REMが選択される。
【0064】
内部状態INTは、車両の状態センサにより検出された情報である。内部状態INTのデータとしては、車両の速度データ、加速度データ及びバッテリ残量データが例示される。尚、内部状態INTのデータは、運転計画PLNのデータに含まれていなくてもよい。
【0065】
2-3.データ処理装置12の機能構成例
図9は、図7に示したデータ処理装置12の機能構成例を示すブロック図である。図9に示されるように、データ処理装置12は、センサ処理部121、物体認識部122、挙動予測部123、運転計画計算部124、走行ルート計画部125、移動体制御部126、運転計画送信部127、画像送信部128及び遠隔指令受信部129を有している。尚、これらのブロックの各機能は、メモリ17に格納された各種のプログラムをプロセッサ16が実行することにより実現される。
【0066】
センサ処理部121は、カメラ11及びセンサ群13が取得したデータの処理を行う。センサ処理部121は、このデータ処理によって、移動体1の周囲の物体に関連するデータを抽出する。抽出対象の物体としては、静的物体及び動的物体が例示される。静的物体としては、信号機、ガードレール、カーブミラー、道路標識といった交通設備が例示される。動的物体としては、歩行者、自転車、オートバイ及び移動体1以外の車両が例示される。抽出されたデータは物体認識部122に送信される。
【0067】
物体認識部122は、センサ処理部121から受信したデータを統合する処理を行う。物体認識部122は、この統合処理によって、移動体1の周囲の物体の具体的な種類を特定する。物体認識部122は、また、特定された物体の移動体1に対する相対データ(相対位置及び相対速度)を計算する。例えば、カメラ画像IMGの解析によって、特定された物体の相対位置及び相対速度が計算される。また、カメラ11以外の認識センサからのデータ解析によって、特定された物体の相対位置及び相対速度が計算される。特定された物体のデータは、挙動予測部123及び運転計画計算部124に送信される。
【0068】
挙動予測部123は、物体認識部122から受信したデータに基づいて、特定された物体の将来の挙動を予測する。特定された物体が動的物体の場合、この動的物体の軌道が予測されてもよい。動的物体の軌道は、例えば、特定された物体の時系列の相対データ(相対位置及び相対速度)に基づいて予測される。
【0069】
運転計画計算部124は、運転計画PLNを計算する。運転計画計算部124は、例えば、走行ルート計画部125から受信したルートのデータ(例えば、自動運転を予定している区間のデータ)に基づいて加速イベント等の各種イベントを設定し、運転計画PLNを計算する。運転計画計算部124は、また、物体認識部122から受信したデータと(主に、静的物体のデータ)と、挙動予測部123から受信したデータ(主に、動的物体の挙動に関するデータ)とに基づいて、各種イベントに基づいて計算した運転計画PLNを変更する。運転計画PLNのデータは、移動体制御部126及び運転計画送信部127に送信される。
【0070】
運転計画計算部124は、また、遠隔指令受信部129から遠隔指令INSを受信した場合、この遠隔指令INSに基づいて運転計画PLNを変更する。既述したように、遠隔作業には、遠隔運転、遠隔指示及び遠隔支援が含まれる。遠隔指令INSが遠隔運転のためのデータを含む場合、運転計画計算部124は、このデータに基づいて運転計画PLNを変更する。遠隔指令INSが遠隔支援のためのデータを含む場合、運転計画計算部124は、このデータに基づいて、遠隔作業の要求信号を送信する前に実行していた運転計画PLNを再開する。又は、運転計画計算部124は、遠隔支援のためのデータに基づいて、運転計画PLNを変更する。
【0071】
走行ルート計画部125は、移動体1の走行ルートを計画する。走行ルートは、自動運転を予定している区間の開始位置及び終了位置のデータに基づいて計画される。走行ルートの計画手法については特に限定されず、公知の手法が適用される。
【0072】
移動体制御部126は、運転計画計算部124から受信した運転計画PLNに含まれる走行軌道TRJに移動体1が追従するように走行装置15を制御する。例えば、移動体制御部126は、走行軌道TRJと移動体1の偏差を計算する。偏差としては、横偏差、ヨー角偏差(方位角偏差)および速度偏差が挙げられる。そして、移動体制御部126は、この偏差が減少するように走行装置15の操作量を計算する。
【0073】
運転計画送信部127は、運転計画計算部124から受信した運転計画PLNのデータを通信装置14に出力する。既述したように、新たな運転判断DECとして「遠隔作業の要求」が生成された場合、この運転判断DECの原因に応じて作業内容REMが生成される。この作業内容REMの生成時、又は、作業内容REMの生成後、遠隔作業の要求信号が生成される。作業内容REM及び要求信号の生成は、例えば、運転計画計算部124において行われる。運転計画PLNのデータの通信装置14への出力は、要求信号の通信装置14への出力と同時に、又は、この出力の後に行われる。
【0074】
画像送信部128は、カメラ画像IMGのデータをエンコードして通信装置14に出力する。エンコード処理に際し、カメラ画像IMGが圧縮されてもよい。カメラ画像IMGのデータの出力は、遠隔作業の要求信号の通信装置14への出力に伴って行われてもよいし、要求信号の出力から独立して行われてもよい。即ち、カメラ画像IMGのデータの出力は、要求信号の出力と共に行われてもよいし、要求信号の出力と関係なく行われてもよい。更に言うと、カメラ画像IMGのデータの遠隔作業装置2への送信は、要求信号の生成と関係なく行われてもよい。
【0075】
2-4.遠隔作業装置の構成例
図10は、図1に示した遠隔作業装置2の構成例を示すブロック図である。図10に示されるように、遠隔作業装置2は、ディスプレイ21と、データ処理装置22と、入力装置23と、通信装置24と、を備えている。データ処理装置22と、ディスプレイ21、入力装置23及び通信装置24とは、専用のネットワークより接続されている。
【0076】
ディスプレイ21は、作業用画像IMG_Oが出力される表示装置である。ディスプレイ21はn台のディスプレイを含む(n≦m-1。mはカメラ11の総数)。ディスプレイ21の総数は少なくとも1である。移動体1の前方及び後方のカメラ画像を別々に出力するために、ディスプレイ21の総数は少なくとも2であることが望ましい。
【0077】
データ処理装置22は、各種データを処理するためのコンピュータである。データ処理装置22は、少なくとも1つのプロセッサ25と、少なくとも1つのメモリ26と、インターフェース27と、を備えている。プロセッサ25はCPUを含んでいる。メモリ26は、プロセッサ25が使用するプログラムの展開及び各種データの一時保存を行う。入力装置23からの入力信号や、遠隔作業装置2が取得した各種データは、メモリ26に格納される。この各種データには、遠隔指令INSのデータが含まれる。各種データには、カメラ画像IMGのデータと、運転計画PLNのデータも含まれる。インターフェース27は、入力装置23等の外部装置とのインターフェースである。
【0078】
プロセッサ25は、カメラ画像IMGのデータに基づいて作業用画像IMG_Oのデータを生成する「画像加工処理」を行う。運転計画PLNのデータに作業内容REMのデータが含まれている場合、プロセッサ25は、カメラ画像IMG及び作業内容REMのデータに基づいて作業用画像IMG_Oのデータを生成する。プロセッサ25は、また、生成された作業用画像IMG_Oのデータを、インターフェース27を介してディスプレイ21に出力する「表示制御処理」を行う。
【0079】
入力装置23は、オペレータOPにより操作される装置である。入力装置23は、例えば、オペレータOPによる入力を受け付ける入力部と、この入力に基づいて遠隔指令INSのデータを生成及び出力する制御回路と、を備えている。入力部としては、タッチパネル、マウス、キーボード、ボタン及びスイッチが例示される。オペレータOPによる入力としては、ディスプレイ21に出力されたカーソルの移動操作と、ディスプレイ21に出力されたボタンの選択操作と、が例示される。オペレータOPによる入力には、結合位置CPの変更操作も含まれる。
【0080】
移動体1の遠隔運転が行われる場合、入力装置23は走行用の入力装置を備えていてもよい。この走行用の入力装置としては、ステアリングホイール、シフトレバー、アクセルペダル及びブレーキペダルが例示される。
【0081】
通信装置24は、ネットワーク4の基地局との間で無線通信を行う。この無線通信の通信規格としては、4G、LTE、または5G等の移動体通信の規格が例示される。通信装置24の通信先には、移動体1が含まれる。移動体1との通信において、通信装置24は、データ処理装置22から受け取った各種データを移動体1に送信する。
【0082】
2-5.データ処理装置22の機能構成例
図11は、図10に示したデータ処理装置22の機能構成例を示すブロック図である。図11に示されるように、データ処理装置22は、運転計画受信部221と、画像受信部222と、画像加工部223と、表示制御部224と、OP入力受信部225と、遠隔指令送信部226と、を備えている。尚、これらのブロックの各機能は、メモリ26に格納された各種のプログラムをプロセッサ25が実行することにより実現される。
【0083】
運転計画受信部221は、通信装置24が取得した運転計画PLNのデータを受信する。運転計画受信部221は、運転計画PLNのデータを画像加工部223に送信する。
【0084】
画像受信部222は、通信装置24が取得したm種類のカメラ画像IMGのデータをデコードする。m種類のカメラ画像IMGのデータが圧縮されている場合、画像受信部222は、デコード処理に際して当該データを伸張する。画像受信部222は、デコード処理後のm種類のカメラ画像IMGのデータを画像加工部223に送信する。
【0085】
画像加工部223は、画像加工処理を行う。画像加工処理では、画像受信部222から受信したm種類のカメラ画像IMGのデータに基づいて、作業用画像IMG_Oのデータが生成される。生成される作業用画像IMG_Oの総数は、ディスプレイ21の総数に対応している。運転計画受信部221から作業内容REMのデータを受信している場合、画像加工処理では、このデータと、カメラ画像IMGのデータに基づいて作業用画像IMG_Oのデータが生成される。
【0086】
既述したように、作業内容REMのデータは、作業内容REMを示す2進数により表現される。実施形態では、作業内容REMを示す2進数と、結合位置CPとの対応関係は事前に設定されている。また、結合位置CPとして、3段階の位置(手前側、奥側及び中間)が準備されている。結合位置CPの段数はこの例に限定されず、2段階(例えば、手前側と奥側)でもよいし、4段階以上でもよい。
【0087】
カメラ11の撮影範囲は既知であることから、撮影範囲が部分的に重複する2種類のカメラ画像IMGは容易に特定される。画像加工処理では、作業内容REMを示す2進数と、結合位置CPとの対応関係に基づいて、結合位置CPが設定される。そして、この設定位置において2種類のカメラ画像IMGの縦方向の結合が行われる。
【0088】
画像加工処理において2種類のカメラ画像IMGの縦方向の結合が行われる場合、これらのカメラ画像IMGの横方向の結合も並行して行われる。横方向の結合は、縦方向の結合位置CPに関係なく常時同じ位置において行われる。つまり、横方向の結合は、作業内容REMに関係なく固定の位置において行われる。
【0089】
運転計画受信部221から内部状態INTのデータを受信している場合、画像加工処理では、このデータに基づいて追加画像(追加画像IMG4)のデータが生成されてもよい。また、画像加工処理では、この追加画像のデータと、結合処理後のカメラ画像IMGのデータとに基づいて、作業用画像IMG_Oのデータが生成されてもよい。追加画像のデータは、例えば、結合処理により形成されたブランク領域の位置に挿入される。
【0090】
表示制御部224は、表示制御処理を行う。表示制御処理は、画像加工処理により生成された作業用画像IMG_Oのデータに基づいて行われる。表示制御部224は、また、OP入力受信部225により取得された入力信号に基づいて、ディスプレイ21の表示内容を制御する。入力信号に基づいた表示内容の制御では、例えば、入力信号に基づいて表示内容が拡大又は縮小され、又は、結合位置CPの変更信号に基づいてこの結合位置CPが切り替えられる。別の例では、入力信号に基づいてディスプレイ21上に出力されたカーソルが移動され、又は、ディスプレイ21に出力されたボタンが選択される。
【0091】
OP入力受信部225は、入力装置23からの入力信号を受信する。入力信号がディスプレイ21の表示内容の制御に関するものである場合、この入力信号は表示制御部224に送信される。OP入力受信部225は、また、入力装置23において生成された遠隔指令INSのデータを受信する。遠隔指令INSのデータは、遠隔指令送信部226に送信される。
【0092】
遠隔指令送信部226は、OP入力受信部225から受信した遠隔指令INSのデータを通信装置24に送信する。
【0093】
2-6.データ処理装置22による第1の処理例
図12は、図10に示したデータ処理装置22(プロセッサ25)が実行する処理の一例を示すフローチャートである。図12に示されるルーチンは、例えば、遠隔作業の要求信号をプロセッサ25が受け付けた場合に、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0094】
図12に示されるルーチンでは、まず、運転計画PLNとカメラ画像IMGのデータが取得される(ステップS11)。運転計画PLNとカメラ画像IMGのデータは、タイムスタンプのデータを有している。ステップS11の処理に際しては、タイムスタンプのデータに基づいて、運転計画PLNとカメラ画像IMGのデータの関連付けが行われる。
【0095】
ステップS11の処理に続いて、運転計画PLNのデータに作業内容REMのデータが含まれるか否かが判定される(ステップS12)。既述したように、新たな運転判断DECとして「遠隔作業の要求」が生成された場合、この運転判断DECの原因に応じて作業内容REMが生成される。そのため、ステップS12の判定結果は、通常、肯定的なものとなる。ただし、運転判断DECの原因が特定されず、作業内容REMが生成されないケースも想定される。このような例外的なケースでは、ステップS16の処理が行われる。
【0096】
ステップS12の判定結果が肯定的な場合、結合位置CPが手前側であるか否かが判定される(ステップS13)。既述したように、作業内容REMを示す2進数と、結合位置CPとの対応関係は事前に設定されている。そのため、ステップS13の処理では、この対応関係と、ステップS11で取得された作業内容REMを示す2進数とに基づいた判定が行われる。ステップS13の判定結果が肯定的な場合は、ステップS14の処理が行われる。そうでない場合は、ステップS15の処理が行われる。
【0097】
ステップS14の処理では、手前側の設定位置で2種類のカメラ画像IMGが結合され、これにより作業用画像IMG_Oが生成される。ステップS15の処理では、奥側の設定位置で2種類のカメラ画像1MGが結合され、これにより作業用画像IMG_Oが生成される。ステップS16の処理では、中間の設定位置で2種類のカメラ画像IMGが結合され、これにより作業用画像IMG_Oが生成される。
【0098】
ステップS14、S15又はS16の処理に続いて、表示制御処理が行われる(ステップS17)。表示制御処理は、ステップS14、S15又はS16において生成された作業用画像IMG_Oのデータに基づいて行われる。
【0099】
2-7.データ処理装置22による第2の処理例
図13は、図10に示したデータ処理装置22(プロセッサ25)により実行される処理の別の例を示すフローチャートである。図13に示されるルーチンは、図12に示したルーチン同様、遠隔作業の要求信号をプロセッサ25が受け付けた場合に、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0100】
図13に示されるルーチンでは、ステップS11の処理に続いて、オペレータOPによる入力信号(結合位置CPの変更信号)があるか否かが判定される(ステップS21)。ステップS21の判定結果が否定的な場合、ステップS12以降の処理が行われる。尚、ステップS11の処理の内容と、ステップS12以降の処理の内容については図12で説明したとおりである。
【0101】
ステップS21の判定結果が肯定的な場合、オペレータOPによる入力信号に従って結合位置CPの調整が行われる(ステップS22)。例えば、奥側の設定位置で2種類のカメラ画像1MGが結合された作業用画像IMG_Oがディスプレイ21から出力されている場合に、中間の設定位置への切り替えを要求する入力信号があったときには、この入力信号に従って結合位置CPが変更される。
【0102】
3.効果
以上説明した実施形態によれば、撮影範囲が部分的に重複する2種類のカメラ画像IMGを合成して1つの作業用画像IMG_Oを生成する際に、作業内容REMのデータに基づいて縦方向の結合位置CPが設定される。そのため、結合位置CP以外の位置での画像の歪みやずれを許容しながらも、結合位置CPでの画像の視認性が確保された作業用画像IMG_Oを生成することが可能となる。また、この作業用画像IMG_Oの生成には長時間を要しない。従って、作業用画像IMG_Oを迅速にオペレータOPに提供することも可能となる。
【0103】
また、実施形態によれば、オペレータOPによる入力信号(結合位置CPの変更信号)がある場合、この入力信号に従って結合位置CPが変更された作業用画像IMG_Oがディスプレイ21から出力される。従って、遠隔作業を行うオペレータOPが着目を希望する位置で2種類のカメラ画像IMGが結合された作業用画像IMG_OをオペレータOPに提供することも可能となる。
【符号の説明】
【0104】
1 移動体
2 遠隔作業装置
11 カメラ
12、22 データ処理装置
21 ディスプレイ
CP 結合位置
OP オペレータ
DEC 運転判断
INS 遠隔指令
INT 内部状態
IMG、IMG1~IMG3 カメラ画像
IMG_O 作業用画像
PLN 運転計画
TRJ 走行軌道
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13