(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】バッジ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A44C 3/00 20060101AFI20250115BHJP
B29C 59/00 20060101ALI20250115BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20250115BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
A44C3/00
B29C59/00 F
B29C59/00 E
B29C59/02 A
B32B3/30
(21)【出願番号】P 2022082754
(22)【出願日】2022-05-20
【審査請求日】2024-01-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井熊 政巳
(72)【発明者】
【氏名】サイモン ハンフリーズ
(72)【発明者】
【氏名】冨田 洋史
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 大樹
【審査官】高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第2003-0009881(KR,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0477219(KR,Y1)
【文献】特開2021-189391(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0170784(US,A1)
【文献】登録実用新案第3087277(JP,U)
【文献】特開2008-089479(JP,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2010-0010062(KR,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 3/00
B29C 59/00
B29C 59/02
B32B 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射状表現の中心点である放射中心点
として光の放出源を示す非発光体の光源画像が定められた主題画像が印刷された印刷層と、
非透光性の円盤基材の光沢面上にスピン加工が施され線条が同心円状または螺旋状に形成され
前記スピン加工の中心点であるスピン中心点が円盤中心と一致するスピン加工面を備える被加工層と、
を備え、
前記印刷層
は透光性
の染料系塗料で印刷され、
前記線条
は前記主題画像と積層方向に重ねられ
、前記主題画像の前記
光源画像と、
前記スピン中心点が一致するように、前記印刷層
の全面が前記被加工層の前記スピン加工面側に積層され
、前記印刷層を経由した入射光が前記スピン加工面で反射することで、前記スピン中心点を中心にした径方向の放射拡散光が前記主題画像に重ね合わせられる、バッジ。
【請求項2】
請求項1に記載のバッジであって
、
前記印刷層上に透光性の保護層が積層された、バッジ。
【請求項3】
請求項1
または2に記載のバッジであって、
前記印刷層には放射線が描画されない、バッジ。
【請求項4】
放射状表現の中心点である放射中心点
として光の放出源を示す非発光体の光源画像が定められた主題画像を印刷層に印刷し、
被加工層のスピン加工面
であって、非透光性の円盤基材の光沢面上に、スピン加工の中心点であるスピン中心点が円盤中心と一致するように、同心円状または螺旋状に線条を形成するスピン加工を施し、
前記印刷層
を透光性
の染料系塗料で印刷し、
前記主題画像の前記
光源画像と、
前記スピン中心点が一致するように
、前記線条
を前記主題画像を積層方向に重ね、前記印刷層
の全面を前記被加工層の前記スピン加工面側に積層
し、前記印刷層を経由した入射光が前記スピン加工面で反射することで、前記スピン中心点を中心にした径方向の放射拡散光が前記主題画像に重ね合わせられる、バッジの製造方法。
【請求項5】
請求項
4に記載のバッジの製造方法であって、
さらに前記印刷層上に透光性の保護層を積層する、バッジの製造方法。
【請求項6】
請求項
4または5に記載のバッジの製造方法であって、
前記印刷層には放射線が描画されない、バッジの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、装飾具であるバッジ及びその製造方法が開示される。
【背景技術】
【0002】
金属部品等への装飾加工として、従来からスピン加工が知られている。スピン加工はサーキュラー加工とも呼ばれ、部品の露出面に同心円状、または螺旋状に線条の模様を施す加工技術である。スピン加工面に光を当てると、同心円模様または螺旋模様の中心から放射状に光が拡散するような視覚効果が得られる。
【0003】
例えば非特許文献1では、オーディオや電子楽器の入出力調整用のノブ(ツマミ)の露出面にスピン加工が施される。また非特許文献2及び特許文献1、2では、樹脂フィルム等の透明母材に金属調の印刷が施された例が開示される。この透明母材の表面(露出面)には、ヘアライン加工やスピン加工といった加飾加工が施される。
【0004】
また、特許文献3では、押しボタンスイッチにスピン加工が施される。特許文献4では、プラスチックシートの表面にスピン加工を施す例が開示される。特許文献5では、表面に凹凸構造を有するレリーフ構造形成層と、この凹凸構造を覆う反射層を備える、偽造防止カードが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-175995号公報
【文献】特開2021-175996号公報
【文献】国際公開第2012/011282号
【文献】特開2019-188609号公報
【文献】特開2008-044147号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】“HATAノブ生んで良かった!!”[online]、平成29年12月25日、畑精密工業株式会社、[令和4年5月12日検索]、インターネット〈https://t-nakamura-hata.amebaownd.com/posts/3436646/〉
【文献】吉田 勝、“「光が透ける」金属調の加飾技術、自動車や家電の表示部向けに”[online]、令和1年6月26日、日経クロステック、[令和4年5月12日検索]、インターネット〈https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/nmc/18/00012/00073/〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書では、スピン加工による装飾効果を利用したバッジ及びその製造方法が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書では、バッジが開示される。このバッジは、印刷層及び被加工層を備える。印刷層は、放射状表現の中心点である放射中心点が定められた主題画像が印刷される。被加工層は、スピン加工が施されたスピン加工面を備える。印刷層及び被加工層の少なくとも一方は透光性である。さらに、主題画像の放射中心点と、スピン加工の中心点であるスピン中心点が一致するように、印刷層が被加工層のスピン加工面側に積層される。
【0009】
上記構成によれば、主題画像の放射状表現が、スピン加工による光の放射拡散効果によって代替または強調される。
【0010】
また上記構成において、主題画像には光源画像が含まれてよい。この場合、光源画像内に定められた放射中心点と、スピン中心点が一致するように、印刷層と被加工層が積層される。
【0011】
上記構成によれば、スピン加工による光の放射拡散効果によって、光源画像から光が放出されるような視覚効果が得られる。
【0012】
また上記構成において、主題画像には偶像画像が含まれてよい。この場合、偶像画像に対して定められた放射中心点と、スピン中心点が一致するように、印刷層と被加工層が積層される。
【0013】
上記構成によれば、宗教的偶像の光明や、著名人のいわゆるオーラが、スピン加工による光の放射拡散効果によって表現可能となる。
【0014】
また上記構成において、主題画像には移動体画像が含まれてよい。この場合、移動体画像に対して定められた放射状のスピード線の放射中心点と、スピン中心点が一致するように、印刷層と被加工層が積層される。
【0015】
上記構成によれば、移動体のスピード線が、スピン加工による光の放射拡散効果によって代替または強調される。
【0016】
また上記構成において、被加工層は非透光性の基材であってよい。この場合、被加工層のスピン加工面上に透光性の印刷層が積層される。さらに印刷層上に透光性の保護層が積層される。
【0017】
上記構成によれば、基材表面にスピン加工を施し、印刷層を重ね、さらにその上にクリアコーティング層を積層させるといった、バッジの製法として汎用的に用いられる製法を利用して、バッジの製造が可能となる。
【0018】
また上記構成において、被加工層は透光性の保護層であってよい。この場合、基材上に印刷層が積層され、さらに印刷層上に被加工層が積層される。
【0019】
上記構成によれば、最上層となり得る保護層にスピン加工面が設けられることで、スピン加工を施すバッジと施さないバッジとの製造工程が最上層の手前まで共通化可能となる。
【0020】
また上記構成において、印刷層には放射線が描画されなくてもよい。
【0021】
スピン加工による光の放射拡散効果では、光の入射角及びバッジを見る角度によって光の放射拡散態様が動的に変化する。一方、印刷層に放射線を施すと、バッジを見る角度に関わらずその放射線は主題画像内で定位置を維持する。印刷層の放射線を省略することで、静的な放射線と動的な放射線の混在が解消可能となる。
【0022】
また上記構成において、印刷層及び被加工層は円盤形状であってもよい。この場合、印刷層及び被加工層の円盤中心点からずれた位置に、印刷層の放射中心点及び被加工層のスピン中心点が定められる。
【0023】
上記構成によれば、円盤中心点から外れた位置から光が放射されるといった視覚効果が得られる。
【0024】
また本明細書では、バッジの製造方法が開示される。この方法は、放射状表現の中心点である放射中心点が定められた主題画像を印刷層に印刷するステップを有する。さらにこの方法は、被加工層のスピン加工面にスピン加工を施すステップを有する。印刷層及び被加工層の少なくとも一方は透光性である。さらにこの方法は、主題画像の放射中心点と、スピン加工の中心点であるスピン中心点が一致するように、印刷層を被加工層のスピン加工面側に積層するステップを備える。
【0025】
また上記構成において、主題画像には光源画像が含まれてよい。この場合、光源画像内に定められた放射中心点と、スピン中心点が一致するように、印刷層と被加工層が積層される。
【0026】
また上記構成において、主題画像には偶像画像が含まれてよい。この場合、偶像画像に対して定められた放射中心点とスピン中心点が一致するように、印刷層と被加工層が積層される。
【0027】
また上記構成において、主題画像には移動体画像が含まれてよい。この場合、移動体画像に対して定められた放射状のスピード線の放射中心点と、スピン中心点が一致するように、印刷層と被加工層が積層される。
【0028】
また上記構成において、被加工層は非透光性の基材であってよい。この場合、被加工層のスピン加工面上に透光性の印刷層が積層される。さらに印刷層上に透光性の保護層が積層される。
【0029】
また上記構成において、被加工層は透光性の保護層であってよい。この場合、基材上に印刷層が積層され、さらに印刷層上に被加工層が積層される。
【0030】
また上記構成において、印刷層には放射線が描画されなくてもよい。
【0031】
また上記構成において、印刷層及び被加工層は円盤形状であってよい。この場合、印刷層及び被加工層の円盤中心点からずれた位置に、印刷層の放射中心点及び被加工層のスピン中心点が定められる。
【発明の効果】
【0032】
本明細書で開示される、バッジ及びその製造方法によれば、バッジ製造に当たってスピン加工による装飾効果が利用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本実施形態に係るバッジの構造を例示する断面図である。
【
図2】基材のスピン加工面を例示する平面図である。
【
図4】スピン加工面上に印刷層を積層させたときの例を示す平面図である。
【
図5】主題画像の第一別例(日の入り)を示す平面図である。
【
図6】主題画像の第二別例(クリスマスツリー)を示す平面図である。
【
図7】主題画像の第三別例(アイドル)を示す平面図である。
【
図8】主題画像の第四別例(仏像)を示す平面図である。
【
図9】主題画像の第五別例(宇宙船)を示す平面図である。
【
図10】主題画像の第六別例(車両)を示す平面図である。
【
図11】スピン中心点が円盤中心点から外れた位置に定められた例を示す平面図である。
【
図12】主題画像の放射中心点が円盤中心点から外れた位置に定められた例を示す平面図である。
【
図13】本実施形態に係るバッジ構造の別例を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、実施形態に係るバッジが図面を用いて説明される。以下で説明する形状、材料、個数、及び数値は、説明のための例示であって、バッジの仕様に応じて適宜変更することができる。また以下ではすべての図面において同等の要素には同一の符号が付される。
【0035】
図1には、本実施形態に係るバッジ10の断面図が例示される。バッジ10は、例えば車両のフロントグリルや外板パネルに取り付けられる、いわゆるエンブレムバッジまたはシンボルバッジである。
【0036】
図1に例示されるように、バッジ10は積層体から構成される。例えばバッジ10は、最下層の基材20に中間保護層40が積層される。さらに中間保護層40上に印刷層30が積層される。さらに印刷層30上に表面保護層50が積層される。例えば後述されるように基材20は円盤形状であって、その上に積層される中間保護層40、印刷層30、及び表面保護層50はいずれも円盤状に構成される。
【0037】
図1,
図2を参照して、基材20は例えばアルミニウム等の金属材料から構成される。また例えば基材20は円盤形状となるように形成される。基材20の盤面は金属光沢を有する。ここで、基材20の対向する盤面のうち一面にはスピン加工が施される。この点から、基材20は非透光性の被加工層と捉えることが出来る。
【0038】
図2を参照して、基材20の盤面上に形成されたスピン加工面22には、円形の線条24が同心円状に形成される。この同心円模様26の中心であるスピン中心点28は、例えば基材20の円盤中心点と一致するように(重なるように)位置決めされる。
【0039】
なお、
図2では、スピン加工面22として同心円模様26が形成されるが、これに代えて、スピン中心点28から円盤の外縁に向かって線条24が螺旋状に延設されてもよい。
【0040】
図2に例示されるように、スピン加工が施されることで、スピン加工面22に光が当てられると、拡散光25に示されるように、スピン中心点28から径方向に光が拡散するような視覚効果が得られる。
【0041】
図1を参照して、基材20のスピン加工面22上に中間保護層40が積層される。中間保護層40は例えば樹脂材料から構成される透光性のクリアコート層であってよい。スピン加工面22上に中間保護層40が積層されることで、次層である印刷層30を平滑面上に形成可能となる。
【0042】
印刷層30には、例えば
図3に例示されるような主題画像32が印刷される。例えば主題画像32には、光の放出源を示す光源画像34が含まれる。
図3には、光源画像34の例として太陽の画像が描画される。なお、光源画像34は発光体でなくてもよい。
【0043】
図3の主題画像32は、手前にある地球の奥から太陽が昇る情景が描画される。ここで、主題画像32を構成する光源画像34(太陽)、地球画像35、宇宙画像36及びその他の画像は、例えば全て透光性の塗料で印刷される。例えば印刷層30を透光性(半透明)にするために、染料系の塗料が用いられる。
【0044】
主題画像32には、放射状表現の中心点である放射中心点38が定められる。
図3の例では、放射中心点38は光源画像34内に定められる。
【0045】
図1を参照して、被加工層である基材20のスピン加工面22側に、中間保護層40を介して印刷層30が積層される。さらに印刷層30上に表面保護層50が積層される。表面保護層50は中間保護層40と同様に、例えば樹脂材料から構成される透光性のクリアコート層であってよい。
【0046】
表面保護層50は印刷層30を保護するために設けられる。バッジ10が車体の外表面に取り付けられる場合、洗車時等にブラシ等でバッジ10の表面が削られるおそれがある。表面保護層50が印刷層30を覆うことで、印刷層30への損傷が抑制される。
【0047】
図4には、バッジ10の完成体の平面図が例示される。バッジ10の完成体とは、
図1に例示されるように、基材20のスピン加工面22上に、中間保護層40、印刷層30、及び表面保護層50が積層された状態を指す。
【0048】
図2-
図4を参照して、主題画像32の放射中心点38の位置とスピン加工面22のスピン中心点28の位置とが一致するように、印刷層30がスピン加工面22上に積層される。このような位置決めが行われることで、主題画像32の放射状表現が、スピン加工による光の放射拡散効果によって代替または強調される。
【0049】
すなわち、光沢面であるスピン加工面22に光が入射したときに、その反射光によって、スピン中心点28を中心にして径方向に拡散光25が視認される。スピン中心点28と主題画像32の放射中心点38とを一致させることで、発光体でない光源画像34から光が放射されるような視覚効果が得られる。
【0050】
また、スピン加工面22上の拡散光25は、スピン加工面22への光の入射角度や視認者の視角を変化させることでスピン中心点28を中心にして回転する。つまり、光源画像34から放射されるように見える光は、例えば視認者の視角の変化に応じて動的に変化(回転)する。このような拡散光25の動的な変化により、主題画像32に対して視認者に奥行を感じさせる効果が得られる。
【0051】
図5-
図10には、主題画像32の別例が示される。なお、主題画像32以外の構成(積層構造等)は、
図1-
図4の構成と同一であってよい。
【0052】
図5には、第一別例に係る主題画像32が印刷されたバッジ10の平面図が例示される。この主題画像32では、いわゆる夫婦岩における日の入りの情景が描画される。主題画像32には光源画像34(太陽)が描画される。この光源画像34内に放射中心点38が定められる。なお上述したように、主題画像32における光源画像34、岩礁画像61A,61B、海画像62、空画像63はいずれも透光性の塗料で印刷される。
【0053】
また
図6には、第二別例に係る主題画像32が印刷されたバッジ10の平面図が例示される。この主題画像32では、クリスマスツリーのスタートップが輝いている情景が描画される。主題画像32には光源画像34(スタートップ)が描画される。この光源画像34内に放射中心点38が定められる。なお上述したように、主題画像32における光源画像34、樹木画像64,及びその背景画像はいずれも透光性の塗料で印刷される。
【0054】
これらの例においても、スピン加工面22(
図2参照)のスピン中心点28と主題画像32の放射中心点38とが一致するように、印刷層30(
図1参照)がスピン加工面22側に積層される。このような位置決めにより、発光体でない光源画像34(太陽、スタートップ)から光が放射されるような視覚効果が得られる。
【0055】
図7には、第三別例に係る主題画像32が印刷されたバッジ10の平面図が例示される。この主題画像32では、偶像画像70(アイドル)が描画される。また
図8には、第四別例に係る主題画像32が印刷されたバッジ10の平面図が例示される。この主題画像32では、偶像画像70(仏像)が描画される。
【0056】
これらの主題画像32においては、偶像画像70に対して所定位置に放射中心点38が定められる。例えば
図7においては、偶像画像70(アイドル)の口の位置に放射中心点38が定められる。また
図8においては、偶像画像70(仏像)の眉間の位置に放射中心点38が定められる。
【0057】
これらの例においても、スピン加工面22(
図2参照)のスピン中心点28と主題画像32の放射中心点38とが一致するように、印刷層30(
図1参照)がスピン加工面22側に積層される。このような位置決めにより、スピン加工による光の放射拡散効果によって、偶像画像70(アイドル、仏像)から放射体(オーラ、光明)が放射されているかのような視覚効果を得ることが出来る。
【0058】
なお、
図7、
図8の例において、主題画像32への放射線の描画が省略されてもよい。上述したように、スピン加工による光の放射拡散効果では、光の入射角及びバッジ10を見る角度によって光の放射拡散態様が動的に変化する。一方、印刷層30に放射線を印刷すると、バッジ10を見る角度に関わらずその放射線は主題画像32内で定位置を維持する。印刷層30への放射線の描画を省略することで、静的な放射線と動的な放射線の混在が解消可能となる。
【0059】
図9には、第五別例に係る主題画像32が印刷されたバッジ10の平面図が例示される。この主題画像32では、移動体画像80(宇宙船)が描画される。また
図10には、第六別例に係る主題画像32が印刷されたバッジ10の平面図が例示される。この主題画像32では、移動体画像80(車両)が描画される。
【0060】
これらの主題画像32においては、移動体画像80に対して所定位置に放射中心点38が定められる。例えば
図9、
図10ともに、移動体画像80の中心に放射中心点38が定められる。この場合、放射中心点38は効果線の一部であるスピード線の放射中心となる。
【0061】
これらの例においても、スピン加工面22(
図2参照)のスピン中心点28と主題画像32の放射中心点38とが一致するように、印刷層30(
図1参照)がスピン加工面22側に積層される。このような位置決めにより、移動体画像80のスピード線が、スピン加工による光の放射拡散効果によって代替または強調される。なおこれらの例においても、主題画像32への放射線の描画が省略されてもよい。
【0062】
ここで、
図1-
図10の例では、基材20(
図2参照)の円盤中心点とスピン中心点28、及び主題画像32の放射中心点38の3者の位置が一致した例が示される。しかしながら本実施形態に係るバッジ10は、この例に限定されない。
【0063】
図11には、基材20のスピン加工面22において、円盤中心点27からずれた位置にスピン中心点28が定められた例が示される。この例においても、
図12に例示されるように、スピン加工面22のスピン中心点28と主題画像32の放射中心点38の位置が一致するように、印刷層30(
図1参照)がスピン加工面22上に積層される。したがって、放射中心点38も円盤中心点27から外れた箇所に位置決めされる。
【0064】
なお、
図1の例では、スピン加工面22を備える被加工層として基材20が挙げられていたが、本実施形態に係るバッジ10は、この形態には限定されない。
図13には、
図1に対する別例としてのバッジ10の断面図が示される。
【0065】
この例では、基材20の円盤面にはスピン加工が施されない。したがって基材20の円盤面は平滑面となるので、中間保護層40(
図1参照)が省略され、円盤面上に直接印刷層30が積層される。
【0066】
印刷層30上に表面保護層50が積層される。表面保護層50は、上述の通り透光性を備えており、例えば透明のクリアコート層であってよい。
図13の例では、この表面保護層50にスピン加工面22が形成される。この点から、表面保護層50は透光性の被加工層と捉えることが出来る。
【0067】
例えばスピン加工面22は、例えば表面保護層50の、印刷層30との対向面に設けられる。表面保護層50の露出面に代えて、印刷層30との対向面にスピン加工面22を形成することで、洗車時等における線条24の摩耗が抑制される。
【0068】
また、印刷層30の上層にスピン加工面22が形成されることから、印刷層30は透光性でなくてもよい。例えば印刷層30には、顔料系の塗料が用いられる。
【符号の説明】
【0069】
10 バッジ、20 基材(被加工層)、22 スピン加工面、24 線条、25 拡散光、27 円盤中心点、28 スピン中心点、30 印刷層、32 主題画像、34 光源画像、38 放射中心点、40 中間保護層、50 表面保護層(被加工層)、70 偶像画像、80 移動体画像。