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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】CD25抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20250117BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250117BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250117BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20250117BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20250117BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20250117BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C07K16/46
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61P35/00
A61P37/06
C07K16/28
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023528409
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 US2021059068
(87)【国際公開番号】W WO2022104009
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-07-26
(31)【優先権主張番号】63/113,784
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/524,852
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522441541
【氏名又は名称】アイバイオ, インク.
【氏名又は名称原語表記】iBio, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】バリガ ラメシュ
(72)【発明者】
【氏名】プレスタ レオナード ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ジップ フング トゥ
(72)【発明者】
【氏名】デーノ-レーズア ハナコ
(72)【発明者】
【氏名】ザリッキ ピオトル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】グリノビク オレグ
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/102591(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/46
A61K 39/395
A61P 35/00
A61P 37/06
C07K 16/28
C12N 15/13
C12N 15/63
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトCD25に結合するヒト化CD25抗体であって、
配列番号10の可変重鎖相補性決定領域(CDR)1、配列番号11の可変重鎖CDR2、及び配列番号12の可変重鎖CDR3と、
配列番号13の可変軽鎖CDR1、配列番号14の可変軽鎖CDR2、及び配列番号15の可変軽鎖CDR3とを含み、かつ、
1)配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、配列番号2の2番目のV残基、5番目のV残基、7番目のS残基、11番目のV残基、12番目のK残基、13番目のK残基、16番目のA残基、18番目のV残基、20番目のV残基、24番目のA残基、40番目のA残基、41番目のP残基、42番目のG残基、43番目のQ残基、44番目のG残基、48番目のM残基、61番目のA残基、65番目のQ残基、67番目のR残基、68番目のV残基、72番目のR残基、74番目のT残基、76番目のT残基、79番目のV残基、81番目のM残基、84番目のS残基、85番目のS残基、87番目のR残基、89番目のE残基、91番目のT残基、及び93番目のV残基を有する可変重鎖アミノ酸配列と、
配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、配列番号8の7番目のS残基、8番目のP残基、15番目のV残基、40番目のP残基、43番目のA残基、45番目のK残基、48番目のI残基、70番目のD残基、72番目のT残基、74番目のT残基、76番目のS残基、84番目のA残基、85番目のT残基、及び100番目のQ残基を有する可変軽鎖アミノ酸配列とを含むか、
2)配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、配列番号2の2番目のV残基、5番目のV残基、7番目のS残基、11番目のV残基、12番目のK残基、13番目のK残基、16番目のA残基、18番目のV残基、20番目のV残基、24番目のA残基、40番目のA残基、41番目のP残基、42番目のG残基、43番目のQ残基、44番目のG残基、48番目のM残基、61番目のA残基、65番目のQ残基、67番目のR残基、68番目のV残基、72番目のR残基、74番目のT残基、76番目のT残基、79番目のV残基、81番目のM残基、84番目のS残基、85番目のS残基、87番目のR残基、89番目のE残基、91番目のT残基、及び93番目のV残基を有する可変重鎖アミノ酸配列と、
配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、配列番号9の48番目のV残基、及び84番目のG残基を有する可変軽鎖アミノ酸配列とを含むか、
3)配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、配列番号3の24番目のG残基、72番目のV残基、及び79番目のA残基を有する可変重鎖アミノ酸配列と、
配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、配列番号8の7番目のS残基、8番目のP残基、15番目のV残基、40番目のP残基、43番目のA残基、45番目のK残基、48番目のI残基、70番目のD残基、72番目のT残基、74番目のT残基、76番目のS残基、84番目のA残基、85番目のT残基、及び100番目のQ残基を有する可変軽鎖アミノ酸配列とを含むか、
4)配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、配列番号3の24番目のG残基、72番目のV残基、及び79番目のA残基を有する可変重鎖アミノ酸配列と、
配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、配列番号9の48番目のV残基、及び84番目のG残基を有する可変軽鎖アミノ酸配列とを含むか、
5)配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、配列番号4の18番目のL残基、20番目のI残基、24番目のG残基、48番目のI残基、68番目のA残基、72番目のV残基、79番目のA残基、及び81番目のL残基を有する可変重鎖アミノ酸配列と、
配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、配列番号8の7番目のS残基、8番目のP残基、15番目のV残基、40番目のP残基、43番目のA残基、45番目のK残基、48番目のI残基、70番目のD残基、72番目のT残基、74番目のT残基、76番目のS残基、84番目のA残基、85番目のT残基、及び100番目のQ残基を有する可変軽鎖アミノ酸配列とを含むか、
6)配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、配列番号4の18番目のL残基、20番目のI残基、24番目のG残基、48番目のI残基、68番目のA残基、72番目のV残基、79番目のA残基、及び81番目のL残基を有する可変重鎖アミノ酸配列と、
配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、配列番号9の48番目のV残基、及び84番目のG残基を有する可変軽鎖アミノ酸配列とを含むか、
7)配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、配列番号5の24番目のG残基、72番目のV残基、74番目のK残基、及び79番目のA残基を有する可変重鎖アミノ酸配列と、
配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、配列番号8の7番目のS残基、8番目のP残基、15番目のV残基、40番目のP残基、43番目のA残基、45番目のK残基、48番目のI残基、70番目のD残基、72番目のT残基、74番目のT残基、76番目のS残基、84番目のA残基、85番目のT残基、及び100番目のQ残基を有する可変軽鎖アミノ酸配列とを含むか、
8)配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、配列番号5の24番目のG残基、72番目のV残基、74番目のK残基、及び79番目のA残基を有する可変重鎖アミノ酸配列と、
配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、配列番号9の48番目のV残基、及び84番目のG残基を有する可変軽鎖アミノ酸配列とを含むか、
9)配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、配列番号6の18番目のL残基、20番目のI残基、24番目のG残基、48番目のI残基、68番目のA残基、72番目のV残基、74番目のK残基、79番目のA残基、及び81番目のL残基を有する可変重鎖アミノ酸配列と、
配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、配列番号8の7番目のS残基、8番目のP残基、15番目のV残基、40番目のP残基、43番目のA残基、45番目のK残基、48番目のI残基、70番目のD残基、72番目のT残基、74番目のT残基、76番目のS残基、84番目のA残基、85番目のT残基、及び100番目のQ残基を有する可変軽鎖アミノ酸配列とを含むか、あるいは、
10)配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、配列番号6の18番目のL残基、20番目のI残基、24番目のG残基、48番目のI残基、68番目のA残基、72番目のV残基、74番目のK残基、79番目のA残基、及び81番目のL残基を有する可変重鎖アミノ酸配列と、
配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、配列番号9の48番目のV残基、及び84番目のG残基を有する可変軽鎖アミノ酸配列とを含む、
前記ヒト化CD25抗体。
【請求項2】
ヒトCD25及びカニクイザルCD25に結合する、請求項1に記載のヒト化CD25抗体。
【請求項3】
ヒトCD25及びカニクイザルCD25への結合のEC50比が0.75~1.25である、請求項に記載のヒト化CD25抗体。
【請求項4】
脱フコシル化されている、請求項1~のいずれかに記載のヒト化CD25抗体。
【請求項5】
請求項1~に記載のヒト化CD25抗体のいずれかを1つを含む医薬組成物。
【請求項6】
請求項1~に記載のヒト化CD25抗体のいずれか1つをコードする核酸。
【請求項7】
請求項に記載の核酸を含むベクター。
【請求項8】
請求項1~に記載のヒト化CD25抗体のいずれか1つ又は請求項に記載の医薬組成物を含む、それを必要とする対象の治療剤。
【請求項9】
請求項1~に記載のヒト化CD25抗体のいずれか1つ又は請求項に記載の医薬組成物を含む、対象における制御性T細胞の数の枯渇剤。
【請求項10】
対象ががんを患っている、請求項又はに記載の剤。
【請求項11】
対象が自己免疫関連疾患又は障害を患っている、請求項又はに記載の剤。
【請求項12】
末梢血単核細胞を含む試料における制御性T細胞の数を枯渇させるための、ヒト化CD25抗体の使用であって、前記試料を請求項1~に記載のヒト化CD25抗体のいずれか1つ又は請求項に記載の医薬組成物と接触させるステップを含む、前記使用。
【請求項13】
請求項1~に記載のヒト化CD25抗体のいずれか1つ又は請求項に記載の医薬組成物を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年11月13日出願の米国仮出願第63/113,784号の優先権を主張するものであり、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、全体として、MHCクラスII制限T細胞受容体の分野、より詳細には、KRAS G12>V活性化変異に特異的なT細胞受容体に関する。
【0003】
コンパクトディスクによる提出材料の参照による組み込み
本出願は、EFS-Webを介し、ASCII形式で提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2021年11月11日に作成された、前記ASCIIコピーは、RUBR2002WO.txtと命名され、10,956バイトのサイズである。
【背景技術】
【0004】
CD25は、インターロイキン-2(IL-2,interleukin-2)受容体のアルファ鎖であり、制御性T細胞及び活性化T細胞上に存在する膜貫通タンパク質である。正常な状態では、制御性T細胞はCD25を恒常的に発現し、エフェクターT細胞の増大を抑制するように働く。制御性T細胞は健康な状態を維持し、エフェクターT細胞が自己抗原に対して反応すること又は外来性抗原に過剰反応することを阻害する。正常な防御免疫応答では、エフェクターT細胞は外来性抗原との接触後に増加し、制御性T細胞による阻害を克服する。しかし、増殖性疾患の場合では、がん細胞は、制御性T細胞の量を上昇させ、それによってがん細胞に対するエフェクターT細胞の生成を制限することによって、健常な免疫応答を無効化する。例えば、がん療法での使用のために上記の免疫系を弱めるには、又は自己免疫疾患での使用のために上記の免疫系を上方制御するには、CD25発現制御性T細胞の増殖を変更するさらなる分子ツールが必要である。本明細書ではかかるツールが提供される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、CD25に特異的に結合するヒト化抗体(本明細書では抗CD25抗体及びCD25抗体と互換的に呼ばれる)が提供される。一部の実施形態では、抗体はヒト化されている。また、本明細書では、記載される抗体の使用方法及び作製方法が提供される。例えば、CD25抗体は、がんを治療するために治療目的で使用することができ、それを必要とする対象に抗体又はその医薬組成物を投与するステップを含む。また、本明細書に記載されているCD25抗体を産生する方法も提供される。
【0006】
本明細書で具体化され広く記載されるように、本開示の一態様は、ヒトCD25に結合するヒト化抗体であって、抗体が、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6からなる群から選択される可変重鎖アミノ酸配列又はそれと少なくとも70%の配列同一性を含む配列を含み;かつ、配列番号8及び配列番号9からなる群から選択される可変軽鎖アミノ酸配列又はそれと少なくとも70%の配列同一性を含む配列を含む、ヒト化抗体に関する。一態様では、抗体が、配列番号2の可変重鎖アミノ酸配列、又はそれと少なくとも70%の配列同一性を含む配列を含み;かつ、配列番号8若しくは9の可変軽鎖アミノ酸配列、又はそれと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくはさらには99%の配列同一性を含む配列を含む。別の態様では、抗体が、配列番号3の可変重鎖アミノ酸配列、又はそれと少なくとも70%の配列同一性を含む配列を含み;かつ、配列番号8若しくは9の可変軽鎖アミノ酸配列、又はそれと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくはさらには99%の配列同一性を含む配列を含む。別の態様では、抗体が、配列番号4の可変重鎖アミノ酸配列、又はそれと少なくとも70%の配列同一性を含む配列を含み;かつ、配列番号8若しくは9の可変軽鎖アミノ酸配列、又はそれと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくはさらには99%の配列同一性を含む配列を含む。別の態様では、抗体が、配列番号5の可変重鎖アミノ酸配列、又はそれと少なくとも70%の配列同一性を含む配列を含み;かつ、配列番号8若しくは9の可変軽鎖アミノ酸配列、又はそれと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくはさらには99%の配列同一性を含む配列を含む。別の態様では、抗体が、配列番号6の可変重鎖アミノ酸配列、又はそれと少なくとも70%の配列同一性を含む配列を含み;かつ、配列番号8若しくは9の可変軽鎖アミノ酸配列、又はそれと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくはさらには99%の配列同一性を含む配列を含む。
【0007】
本明細書で具体化され広く記載されるように、本開示の一態様は、ヒト化CD25抗体であって、配列番号13、配列番号14、及び配列番号15のCDR配列を含む可変軽鎖を含み、抗体が、配列番号8及び配列番号9における1又は2以上の太字体の残基を含めて、フレームワーク領域に対する1又は2以上の変異をさらに含む、ヒト化CD25抗体に関する。
【0008】
本明細書で具体化され広く記載されるように、本開示の一態様は、ヒト化CD25抗体であって、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12のCDR配列を含む可変重鎖を含み、抗体が、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6における1又は2以上の太字体の残基を含めて、フレームワーク領域に対する1又は2以上の変異をさらに含む、ヒト化CD25抗体に関する。
【0009】
本明細書で具体化され広く記載されるように、本開示の一態様は、ヒト化CD25抗体であって、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12のCDR配列を含む可変重鎖を含み、抗体が、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6における1又は2以上の太字体の残基を含めて、フレームワーク領域に対する1又は2以上の変異をさらに含み;かつ、配列番号13、配列番号14、及び配列番号15のCDR配列を含む可変軽鎖をさらに含み、上記抗体が、配列番号8及び配列番号9における1又は2以上の太字体の残基を含めて、フレームワーク領域に対する1又は2以上の変異をさらに含む、ヒト化CD25抗体に関する。別の態様では、抗体がヒトCD25及びカニクイザルCD25に結合する。別の態様では、ヒトCD25及びカニクイザルCD25への結合のEC50比は、約0.75~約1.25である。別の態様では、抗体が脱フコシル化されている。
【0010】
本明細書で具体化され広く記載されるように、本開示の一態様は、ヒトCD25に結合するヒト化抗体を含む医薬組成物であって、抗体が、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6からなる群から選択される可変重鎖アミノ酸配列又はそれと少なくとも70%の配列同一性を含む配列を含み;かつ、配列番号8及び配列番号9からなる群から選択される可変軽鎖アミノ酸配列又はそれと少なくとも70%の配列同一性を含む配列を含む、医薬組成物に関する。
【0011】
本明細書で具体化され広く記載されるように、本開示の一態様は、ヒトCD25に結合するヒト化抗体をコードする核酸配列であって、抗体が、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6からなる群から選択される可変重鎖アミノ酸配列又はそれと少なくとも70%の配列同一性を含む配列を含み;かつ、配列番号8及び配列番号9からなる群から選択される可変軽鎖アミノ酸配列又はそれと少なくとも70%の配列同一性を含む配列を含む、核酸配列に関する。
【0012】
本明細書で具体化され広く記載されるように、本開示の一態様は、ヒトCD25に結合するヒト化抗体の核酸配列を含むベクターであって、抗体が、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6からなる群から選択される可変重鎖アミノ酸配列又はそれと少なくとも70%の配列同一性を含む配列を含み;かつ、配列番号8及び配列番号9からなる群から選択される可変軽鎖アミノ酸配列又はそれと少なくとも70%の配列同一性を含む配列を含む、ベクターに関する。
【0013】
本明細書で具体化され広く記載されるように、本開示の一態様は、ヒトCD25に結合するヒト化抗体の治療有効量を対象に投与するステップを含む、それを必要とする前記対象を治療する方法であって、抗体が、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6からなる群から選択される可変重鎖アミノ酸配列又はそれと少なくとも70%の配列同一性を含む配列を含み;かつ、配列番号8及び配列番号9からなる群から選択される可変軽鎖アミノ酸配列又はそれと少なくとも70%の配列同一性を含む配列を含む、方法に関する。
【0014】
本明細書で具体化され広く記載されるように、本開示の一態様は、ヒトCD25に結合するヒト化抗体の治療有効量を対象に投与するステップを含む、前記対象において制御性T細胞の数を枯渇させる方法であって、抗体が、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6からなる群から選択される可変重鎖アミノ酸配列又はそれと少なくとも70%の配列同一性を含む配列を含み;かつ、配列番号8及び配列番号9からなる群から選択される可変軽鎖アミノ酸配列若しくはそれと少なくとも70%の配列同一性を含む配列又はそれの医薬組成物、を含む、方法に関する。一態様では、対象ががんを患っている。別の態様では、対象が自己免疫関連疾患又は障害を患っている。
【0015】
本明細書で具体化され広く記載されるように、本開示の一態様は、末梢血単核細胞を含む試料をヒトCD25に結合するヒト化抗体と接触させるステップを含む、上記試料中の制御性T細胞の数を枯渇させる方法であって、抗体が、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6からなる群から選択される可変重鎖アミノ酸配列又はそれと少なくとも70%の配列同一性を含む配列を含み;かつ、配列番号8及び配列番号9からなる群から選択される可変軽鎖アミノ酸配列又はそれと少なくとも70%の配列同一性を含む配列を含む、方法に関する。
【0016】
本明細書で具体化され広く記載されるように、本開示の一態様は、ヒトCD25に結合するヒト化抗体を含むキットであって、抗体が、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6からなる群から選択される可変重鎖アミノ酸配列又はそれと少なくとも70%の配列同一性を含む配列を含み;かつ、配列番号8及び配列番号9からなる群から選択される可変軽鎖アミノ酸配列若しくはそれと少なくとも70%の配列同一性を含む配列又はそれの医薬組成物、を含む、キットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本出願は、添付の図面と結びつけられた以下の説明を参照することによって理解することができる。
図1図1は、別々の4つの製造バッチにわたる、D11及び本開示のD11バリアントのTmに関するナノDSFベースの測定を示す。バリアントは、D11と比較した場合、より高いTmの傾向を示す。
図2図2は、別々の2つの製造バッチにわたる、D11及び本開示のD11バリアントのTaggに関するナノDSFベースの測定を示す。より低温では有意な凝集は検出されず、ヒト化バリアントについてのTaggは、出発点のD11についてのTaggよりも全体として高かった。
図3図3は、別々の4つの製造バッチにわたる、D11及び本開示のD11バリアントの純度及び凝集に関するuPLCベースの測定の結果を示す。データが裏付けるところは、シングルステップ精製での90%を超える純度にてのD11及びバリアントの一貫した精製である。
図4図4は、本開示のD11バリアントの結合が、D11と比較した場合、CD25発現SUDHL1細胞への結合に当たり、差異を呈示しないことを示す。
図5図5は、本開示のD11バリアントの結合が、D11と比較した場合、CD25発現SR786細胞への結合に当たり、差異を呈示しないことを示す。
図6図6は、D11バリアントH3h-L2(本明細書ではH3-L2と互換的に呼ばれる)が、ヒトCD25とカニクイザルCD25の両方と、およそ等しい交差反応性を維持することを示す。
図7図7は、本開示のD11バリアントが、D11と比較した場合、SUDHL1がん細胞においてADCC活性の差異を呈示しないことを示す。
図8図8は、脱フコシル化D11(D11 kif,afucosylated D11)が、より低いレベルのCD25抗原を発現する標的細胞型である制御性T細胞(Treg,regulatory T cell)において、より高いADCC活性を呈することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書では、CD25に特異的に結合する抗体が提供される。抗体は、ヒトのもの、キメラのもの又はヒト化のものとすることができる。また、本明細書では、記載される抗体の使用方法及び作製方法も提供される。例えば、CD25抗体は、がんを治療するために治療目的で使用することができ、それを必要とする対象に抗体又はその医薬組成物を投与するステップを含む。また、本明細書に記載されているCD25抗体を産生する方法も提供される。
【0019】
定義
本明細書において別段の定義がない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は全て、本発明が属する当技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の実施又は試験に当たり、本明細書に記載されている方法及び材料と類似の又は等価である任意の方法及び材料を使用することができるが、例示的な方法及び材料について記載する。
【0020】
本明細書で提供される見出しは、本発明の種々の態様又は実施形態を限定するものではない。したがって、直下に定義される用語は、本明細書を全体として参照することによってより完全に定義される。
【0021】
数値範囲は、範囲を定義する数値を含む。
【0022】
抗体という用語には、本明細書で使用されるように、それらに限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、非ヒト抗体、キメラ抗体、一価抗体及び抗体の抗原結合断片(例えば、Fab断片、Fab’2断片、又はscFV)が含まれる。また、本明細書では、CD25に対して特異性を呈する抗体薬物複合体、二重特異性抗体及び多重特異性抗体も提供される。非ヒト抗体(例えば、マウス抗体)は、従来の技法を使用して(例えば、フレームワーク領域に変化を導入し、一方、マウスCDRを保持することによって)「ヒト化」される場合もある。
【0023】
「ポリヌクレオチド」及び「核酸」という用語は、本明細書では互換的に使用され、任意長さのヌクレオチドのポリマー形態を指すが、これは、リボヌクレオチドであってもデオキシリボヌクレオチドであってもよい。こういった用語には、それらに限定されないが、一本鎖、二本鎖若しくは多重鎖のDNA又はRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、あるいは、プリン塩基及びピリミジン塩基、又はその他の天然の、化学的若しくは生化学的に修飾された、非天然の又は誘導体化された各ヌクレオチド塩基を含むポリマー、が含まれる。上記用語は、特に限定又は記述されてない限り、天然ヌクレオチドの既知のアナログ含有し、類似の結合特性を有し、天然に存在するヌクレオチドと類似の様式で代謝される、核酸を包含する。
【0024】
ある核酸配列又はアミノ酸配列が、別の核酸配列又はアミノ酸配列と、ある特定のパーセントの「配列同一性」若しくは「同一性」を有すると言われるか又はあるパーセント「同一」である場合、配列同士がアライメントされる場合、2つの配列を比較すると、そのような百分率の塩基又はアミノ酸は、同一であり、かつ、同一の相対位置にある。
【0025】
「個体」、「対象」、及び「患者」という用語は、本明細書では互換的に使用され、治療又は療法が望まれる任意の対象を指す。対象は哺乳動物の対象とすることができる。哺乳動物の対象には、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類(例えば、ラット、マウス)、ウサギ目(例えば、ウサギ)、有蹄動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ヤギ等)等が含まれる。一部の実施形態では、対象はヒトである。一部の実施形態では、対象は非ヒト霊長類である。一部の実施形態では、対象は愛玩動物(例えば、ネコ、イヌ)である。
【0026】
抗体
本明細書では、CD25に特異的に結合するヒト化抗体が提供される。抗体は、単独での、又は、CD25抗原が他の分子と会合して通常は制御性T細胞上に存在する高親和性IL-2受容体を形成する場合でのいずれかで、CD25抗原に結合することができる。
【0027】
本開示のCD25抗体は、ヒトIgA、IgD、IgE、IgG、又はIgMの各抗体のいずれかとすることができる。IgA抗体は、IgA1抗体又はIgA2抗体とすることができる。IgG抗体は、IgG1、IgG2、IgG2a、IgG2b、IgG3、又はIgG4の各抗体とすることができる。これらの抗体のいずれかの組合せを作製し、使用することもできる。一部の実施形態では、定常領域は、IgG型のもの、例えばヒトIgG型のものである。一部の実施形態では、定常領域は、IgG1型のもの、例えばヒトIgG1型のものである。
【0028】
一部の実施形態では、CD25抗体は、2つ以上の種に対して交差反応性を呈し、例えば、ヒトCD25と非ヒトCD25の両方に特異的に結合し、例えば、ヒトCD25とカニクイザルCD25の両方に特異的に結合する。例示的な実施形態では、ヒトCD25とカニクイザルCD25の両方に対する結合親和性はおよそ等しい。一部の実施形態では、ヒト化CD25抗体がヒトCD25及びカニクイザルCD25に結合する結合のEC50比は、約0.75~約1.25、又は約0.8~約1.2、又は約0.9~約1.1である。一部の実施形態では、この比は概1である。
【0029】
本明細書で提供される抗体の親和定数(KD,affinity constant)は、約10-5nM~約10-14nMの範囲とすることができる。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体のKDは、約10-8nM~約10-12nMの範囲である。例示的な実施形態では、CD25抗体のKDは、少なくとも約10-5nM、約10-6nM、約10-7nM、約10-8nM、約10-9nM、約10-10nM、約10-11nM、約10-12nM、約10-13nM、又はさらに約10-14nMである。
【0030】
本明細書で提供される抗体の解離速度定数(Kd,off-rate constant)は、約10-21/s~約10-61/sの範囲とすることができる。
【0031】
一部の実施形態では、CD25抗体は、生理的pH(約7.4)と非生理的pHの両方でCD25抗原に対して同じ親和性(KD)を呈する。一部の実施形態では、CD25抗体は、生理学的pH(約7.4)と非生理学的pHの両方でCD25抗原に対して同じ解離速度(Kd)を呈する。
【0032】
一部の実施形態では、CD25抗体は、生理的pH(約7.4)と非生理的pHでCD25抗原に対して異なる親和性(異なるKD)を呈する。一部の実施形態では、CD25抗体は、生理学的pH(約7.4)と非生理学的pHで、CD25抗原に対して異なる解離速度定数(異なるKd)を呈する。
【0033】
一部の実施形態では、CD25抗体は、生理的pH(約7.4)よりも低いpHにてよりも、例えばpHが7.3、7.2、7.1、7.0、6.9、6.8、6.7、6.6、6.5、6.4、6.3、6.2、6.1、又はそれ未満である場合よりも、生理的pH(約7.4)にてCD25抗原に対して低い親和性(高いKD)を呈する。例示的な実施形態では、抗体は、約7.4のpHにての親和性と比較した場合、約6.5のpHにてのCD25抗原に対してより高い親和性を呈する。一部の実施形態では、かかる抗体は、酸性環境、低酸素環境、例えば腫瘍微小環境において、活性を保持するために又は増強された活性を呈するために有用である。
【0034】
一部の実施形態では、抗体は、非IL-2遮断抗体(非IL-2ブロッカー)である - すなわち、CD25への抗体の結合は、CD25(IL-2アルファ鎖)へのIL-2リガンドの結合を妨害せず又は妨げず、かつ、IL-2媒介シグナル変換に、例えばIL-2/JAK3/STAT-5シグナル伝達経路を通したシグナル伝達に、影響を及ぼさない。一部の実施形態では、抗体は、CD25(IL-2アルファ鎖)へのIL-2リガンドの結合を妨害せず、かつ、7G7B6抗体が結合するものとは異なるエピトープに結合する。一部の実施形態では、抗体は、CD25(IL-2アルファ鎖)へのIL-2リガンドの結合を妨害しないが、IL-2受容体のベータ、ガンマ、及びアルファ(CD25)各鎖の三量体化を妨害する。
【0035】
一部の実施形態では、抗体は、IL-2遮断抗体(IL-2ブロッカー)であり、例えば、抗体は、受容体のアルファ鎖、ベータ鎖、及び/又はガンマ鎖へのIL-2リガンドの結合を妨害し又は妨げ、かつ、IL-2媒介シグナル変換を低下させる又は阻害する。ある特定の実施形態では、抗体は、CD25へのIL-2リガンドの結合を妨害する又は妨げる。一部の実施形態では、抗体は、CD25へのIL-2リガンドの結合を妨害し又は妨げ、かつ、ダクリズマブ又はバシリキシマブのいずれかが結合するエピトープとは異なるエピトープに結合する。
【0036】
一部の実施形態では、CD25抗体は、部分的に遮断する抗体(部分的IL-2ブロッカー)であり、部分的に、完全にではないが、IL-2受容体(CD25)のアルファ鎖、ベータ鎖、及び/又はガンマ鎖へのIL-2リガンドの結合を妨害し、及び/又は部分的に、完全にではないが、IL-2媒介シグナル変換を低下させる。
【0037】
一部の実施形態では、CD25抗体は、アルファ、ベータ、及びガンマのIL-2鎖のヘテロ三量体化を妨害する又は妨げる。一部の実施形態では、抗体は、CD25とのIL-2リガンドの結合を遮断しないが、アルファ、ベータ、及びガンマのIL-2鎖のヘテロ三量体化を妨害する又は妨げる。ある特定の実施形態では、抗体は制御性T細胞に選択的に結合する。他の実施形態では、抗体はTエフェクター細胞に選択的に結合する。
【0038】
一部の実施形態では、CD25抗体の結合は、制御性T細胞(Treg)の枯渇をもたらすが、一方、エフェクターT細胞(Teff,effector T cell)の増大を可能にする。
【0039】
一部の実施形態では、抗体はトランス配向でCD25に結合する。他の実施形態では、抗体はシス配向でCD25に結合する。なおさらなる実施形態では、抗体は、シス配置又はトランス配置のいずれかでCD25に結合することができる。
【0040】
一部の実施形態では、CD25抗体は、CD25への7G7B6(マウスIgG2a Fc受容体を有する抗ヒトCD25;IL-2非ブロッカー;BioXcell社)の結合と比較して、CD25に対してより大きな結合親和性を呈する。
【0041】
本明細書に記載されるCD25抗体の例示的な配列を下の表に提供する。留意されるべきこととは、示されている相補性決定領域(CDR,complementarity determining region)配列及びフレームワーク(FR,framework)配列は、抗体のアノテーションに関するIMGT規約に基づいていることである。しかし、当業者であれば、Kabat及びChothiaなどの、抗体アノテーション用の他のアルゴリズム/慣例を使用して、提示されたVH配列及びVL配列に基づいてCDR配列及びフレームワーク配列の他の明確な表現を決定することができる。したがって、本開示のCDR配列及びFR配列は、下の表においてアノテーションされた例示的なCDR配列及びFR配列に限定されず、それよりも、可変領域の配列を考慮すると、当業者により理解され、決定されるようなCDRである。
【0042】
ヒト化CD25抗体バリアントを本明細書で創り出した。親(元の)マウスCD25抗体は、国際公開第2020/102591号パンフレットからのD11であった。D11を選択し、ヒトIgG1を含有するように再フォーマットし、バリアントの次世代用の親クローンとして使用した。
【0043】
親D11の可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1及び配列番号7として提供する。本開示は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6のいずれかの1つアミノ酸配列、又はそれと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又はさらには99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、D11のさらなるVHバリアント配列を提供する。本開示はまた、配列番号8及び配列番号9のいずれか1つのアミノ酸配列、又はそれと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、さらには99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、D11のさらなるVLバリアント配列も提供する。一部の実施形態では、抗体は脱フコシル化されている。
【0044】
親D11の可変重鎖(VH)アミノ酸配列D11 VH(配列番号1)を、表1に示す。これに、それの例示的なヒト化バリアントのアミノ酸配列が続く:hD11-H1(配列番号2);hD11-H2(配列番号3);hD11-H3(配列番号4;全体を通してhD11-H3hとも互換的に呼ばれる);hD11-H2b(配列番号5;及びhD11-H3b(配列番号6)。すぐ上のアミノ酸配列と比較して、下線が引かれた残基はCDR配列であり、太字体の残基は改変された残基である。
【0045】
【表1】
【0046】
親D11の可変軽鎖(VL)アミノ酸配列D11-VL(配列番号7)を表2に示すこれに、それのヒト化バリアントのアミノ酸配列が続く:hD11-L1(配列番号:8);及びhD11-L2(配列番号9)。直前のアミノ酸配列と比較して、下線が引かれた残基はCDR配列であり、太字体の残基は改変された残基である。
【0047】
【表2】
【0048】
したがって、一部の実施形態では、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12の可変重鎖CDR配列を含み、ヒト化及び/又は安定化されたCD25抗体が提供される。ヒト化及び/又は安定化向けに選択される残基には、それらに限定されないが、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6における1又は2以上の太字体の残基が含まれる。
【0049】
一部の実施形態では、配列番号13、配列番号14、及び配列番号15の可変軽鎖CDR配列を含み、ヒト化及び/又は安定化されたCD25抗体が提供される。ヒト化及び/又は安定化向けに選択される残基には、それらに限定されないが、配列番号8及び配列番号9における1又は2以上の太字体の残基が含まれる。
【0050】
一部の実施形態では、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12の可変重鎖CDR配列、並びに、配列番号13、配列番号14、及び配列番号15の可変軽鎖CDR配列を含むCD25抗体が提供され、抗体がヒト化及び/又は安定化されている。ヒト化及び/又は安定化向けに選択される残基には、それらに限定されないが、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号8、及び配列番号9における1又は2以上の太字体の残基が含まれる。一部の実施形態では、抗体が脱フコシル化されている。
【0051】
ヒト化CD25抗体の例示的な抗体VH+VLの組合せを下の表3に提供する。
【0052】
【表3】

【0053】
一部の実施形態では、CD25抗体はコンジュゲートされており、それらに限定されないが、療法及び検出/診断を始めとする様々な目的に有用である。
【0054】
一部の実施形態では、CD25抗体はフコシル化されている。
【0055】
一部の実施形態では、CD25抗体は脱フコシル化されている。一部の実施形態では、CD25抗体は脱フコシル化されており、細胞、例えば制御性T細胞においてより高いADCC活性をもたらす。
【0056】
また、本明細書では、本明細書で提供されるCD25抗体のいずれか1つをコードする核酸配列も提供される。また、本明細書では、抗体をコードする核酸のいずれかを1つを含むベクター、かかるベクターを含むファージ、及びかかるベクターを含む宿主細胞も提供される。
【0057】
抗体の生成及び試験
本明細書に記載されているCD25抗体は、CD25の完全免疫原又は部分免疫原を動物に、例えばマウス又はウサギに注射し、続いてそれをヒト化することによって生成することができる。動物からCD25免疫原陽性B細胞を収集し、これからファージライブラリを生成することができる。一部の実施形態では、ファージは候補CD25抗体のFab断片を発現させる。ファージは、例えば連続的により低濃度のCD25抗原に対して、複数回のスクリーニング(本明細書ではファージパニングと呼ばれる)をうけて、さらなる変形形態に向けて選択されるべく、高親和性でCD25に結合することができるそのようなFab断片を選択することができる。ファージは、例えば、CD25抗原でコーティングされたビーズ又は他のいくつかの基質に対してスクリーニングすることができる。一部の実施形態では、スクリーニングは生理学的pH(例えば約pH7.4)で行われる。他の実施形態では、スクリーニングを、より低いpHで、例えば、約6.5のpHで行って、例えば、治療背景での使用のために、例えば低酸素、酸性の腫瘍微小環境での使用のために、より低いpHでCD25抗原に結合することができるFab断片をスクリーニングすることができる。
【0058】
本明細書で生成されるCD25抗体は、いくつかのインビトロでの、インビボでの、エクスビボでの、及び/又は細胞ベースでのアッセイを使用して有効性について試験することができる。
【0059】
一部の実施形態では、本明細書のCD25抗体を、制御性T細胞を枯渇させる能力についてアッセイし、その能力に基づいてさらに選択することができる。特定の実施形態では、本明細書のCD25抗体を、酸性環境において、例えば生理的pHよりも低いpHで、例えばpH7.3、7.2、7.1、7.0、6.9、6.8、6.7、6.6、6.5、6.4、6.3、6.2、6.1、又はそれ未満で、制御性T細胞を枯渇させる能力についてアッセイし、その能力に基づいてさらに選択することができる。
【0060】
一部の実施形態では、本明細書のCD25抗体を、pSTAT5のインビトロでのアッセイについてアッセイし、これに基づいてさらに選択して、IL-2/IL-2受容体経路を通したシグナル伝達についてアッセイすることができるが、このシグナル伝達の維持が指示するところは、この抗体はIL-2遮断抗体ではないことである。
【0061】
一部の実施形態では、本明細書のCD25抗体を、バイオセンサースクリーニングを使用して分子相互作用を特徴づけることについて、アッセイすることができる。
【0062】
一部の実施形態では、本明細書のCD25抗体を、既知のメカニズムによる、結合に当たっての既知の他のCD25抗体との競合についてアッセイすることができる。
【0063】
一部の実施形態では、本明細書のCD25抗体をエピトープ特異性についてアッセイすることができる。
【0064】
一部の実施形態では、本明細書のCD25抗体を、非IL-2ブロッカー、IL-2ブロッカー、又は部分的IL-2ブロッカーであるそれらのキャパシティについてアッセイすることができる。
【0065】
治療用途
本明細書では、治療用途のための、例えばがんなどの増殖性疾患若しくは障害での使用のための、又は自己免疫疾患での使用のための、CD25抗体が提供される。
【0066】
したがって、本明細書では、治療用CD25抗体の治療有効量を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、がんを治療する方法が提供される。一部の実施形態では、がんは原発がんである。一部の実施形態では、がんは転移性がんである。一部の実施形態では、がんには固形腫瘍が関係する;他の実施形態では、がんには液性腫瘍、例えば血液ベースのがんが関係する。例示的な実施形態では、CD25抗体は非IL-2遮断抗体である。
【0067】
したがって、本明細書では、治療用CD25抗体の治療有効量を、それを必要とする対象に投与するステップを含む自己免疫関連疾患又は障害を治療する方法が提供される。例示的な実施形態では、CD25抗体はIL-2遮断抗体である。
【0068】
本明細書で使用される場合、対象とは、哺乳動物として分類される任意の動物を指し、それには、ヒト、飼育動物及び家畜、並びに動物園用、スポーツ用、又はペット動物、例えば、イヌ、ウマ、ウサギ、ウシ、ブタ、ハムスター、アレチネズミ、マウス、フェレット、ラット、ネコ等が含まれる。対象は雄性であっても雌性であってもよい。
【0069】
本明細書で提供される治療用CD25抗体のいずれかの投与は、既知の他の薬物/治療(例えば、小分子薬又は生物製剤と組合せで、行ってもよい。投与は逐次的であっても同時的であってもよい。
【0070】
本明細書に記載される治療用CD25抗体のインビボでの投与は、静脈内に、腫瘍内に、頭蓋内に、病変内に(例えば、病変内注射、直接的接触拡散)、腔内(腹腔内、胸膜内、子宮内、直腸内)、腹腔内に、筋肉内に、皮下に、局所的に、経口的に、経皮的に、移植により、吸入により、髄腔内に、脳室内に、又は鼻腔内に、実行することができる。例示的な実施形態では、投与経路は静脈内注射によるものである。
【0071】
治療用抗体の治療有効量が投与される。治療用抗体の適当な投薬量は、がんの重症度、対象の臨床状態、対象の病歴及び治療に対する応答、並びに主治医の裁量に基づいて決定することができる。
【0072】
本明細書で提供されるCD25抗体の投薬量は、投与経路に応じて、1日当たり対象の体重1kgにつき約1ng/kg~約1000mg/kgまで又はそれ超で変動することができる。数日以上にわたる反復投与の場合、がんの重症度に応じて、症状に関して所望の抑制が達成されるまで治療を維持することができる。投薬レジメンは、医師が達成することを望む薬物動態学的減衰のパターンに応じて、有用とすることができる。例えば、1週間につき1回~21回、個体に投薬することが本明細書で提供される。ある特定の実施形態では、投薬頻度は、1日当たり3回、1日当たり2回、1日当たり1回、2日毎に1回、週1回、2週間毎に1回、4週間毎に1回、5週間毎に1回、6週間毎に1回、7週間毎に1回、8週間毎に1回、9週間毎に1回、10週間毎に1回、又は月1回、2か月毎に1回、3か月毎に又はそれ超で1回である。療法の進行は、従来の技法及びアッセイによってモニタリングすることができる。投薬レジメンは、使用される用量とはかかわりなく、経時的に変動してもよい。
【0073】
診断用途
本明細書で提供されるCD25抗体は、診断及び検出の目的で使用することができる。用途に応じて、CD25抗体はインビボで又はインビトロで検出及び定量化することができる。
【0074】
本明細書で提供されるCD25抗体は、様々なイムノアッセイでの使用のために補正可能である。そういったイムノアッセイには、それらに限定されないが、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA,enzyme-linked immunosorbent assay)、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ(RIA,radioimmunoassay)、フローサイトメトリー、あるラジオイムノアッセイ、免疫蛍光アッセイ、分光光度法、ラジオグラフィー、電気泳動、高速液体クラマトグラフィー(HPLC,high performance liquid chromatography)、又は薄層クロマトグラフィー(TLC,thin layer chromatography)が含まれる。
【0075】
本明細書で提供されるCD25抗体は、検出可能な標識、例えば、分光学的、光化学的、生化学的、免疫学的、蛍光性、電気的、光学的、又は化学的方法により検出可能な標識を含むことができる。本開示での有用な標識には、それらに限定されないが、蛍光色素、放射標識、酵素、比色標識、アビジン又はビオチンが含まれる。
【0076】
一部の実施形態では、CD25抗体は、核医学装置(SPECT、PET、又はシンチグラフィー)による画像化するために有用な同位元素で放射標識される。
【0077】
医薬組成物
本開示は、治療用CD25抗体を含む組成物を提供する。一部の実施形態では、組成物は無菌である。医薬組成物は、全体として、薬学的に許容される賦形剤中に治療用抗体の有効量を含む。
【0078】
キット及び製品
本開示はまた、例えば、治療用途又は診断用途のいずれか向けの、本明細書に記載されるCD25抗体のいずれか1つを含むキットを提供する。一部の実施形態では、キットは、二次抗体、免疫組織化学解析用の試薬、薬学的に許容される賦形剤、及び使用説明書のいずれか、並びにそれらの任意の組合せから選択される構成要素をさらに含有する。一部の実施形態では、キットは、本明細書に記載されるいずれかの1又は2以上の治療用組成物を、1又は2以上の薬学的に許容される賦形剤と共に含む。
【0079】
本出願はまた、本明細書に記載される治療用若しくは診断用組成物又はキットのいずれか1つを含む製品を提供する。製品の例としては、バイアル(例えば、密封バイアル)が挙げられる。
【0080】
本明細書に提供される説明は、多数の例示的な構造、方法、及びパラメータ等を記載するものである。しかし、かかる説明は、本開示の範囲への限定として意図されるものではなく、例示的な実施形態の一説明として代えて提供されるものであることを、理解されたい。
【0081】
以下の実施例は、例示的な目的のために含まれるものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
[実施例]
【実施例1】
【0082】
CD25抗体バリアントの生成
BalbCマウスに尾静脈で完全長ヒトCD25を注射した。免疫プロトコル及びその後の選択及び結果として得られる抗体の特性評価については、国際公開第2020/102591号パンフレットに記載されており、その内容はその全体が参照により組み込まれる。
【0083】
国際公開第2020/102591号パンフレットからのFab、D11、を選択し、ヒトIgG1を含有するように再フォーマットし、バリアントの次世代用の親クローンとして使用した。ヒト化バリアントを創り出した。本明細書に提供されるデータでは、元のD11、又は親D11、又は単にD11への言及は、ヒトIgG1 Fcと配列番号1を含む可変重鎖(VH)アミノ酸配列と配列番号7を含む可変軽鎖(VL)アミノ酸配列とを備える抗体を指す。
【0084】
表1に、親D11の可変重鎖(VH)アミノ酸配列D11 VH(配列番号1)と、これに続いて、これのヒト化バリアントのアミノ酸配列:hD11-H1(配列番号2);hD11-H2(配列番号3);hD11-H3(配列番号4);hD11-H2b(配列番号5);及びhD11-H3b(配列番号6)、を示す。すぐ上のアミノ酸配列と比較して、下線が引かれた残基はCDR配列であり、太字体の残基は改変された残基である。
【0085】
表2に、親D11の可変軽鎖(VL)アミノ酸配列D11-VL(配列番号7)と、これに続いて、これのヒト化バリアントのアミノ酸配列:hD11-L1(配列番号8);及びhD11-L2(配列番号9)を示す。直前のアミノ酸配列と比較して、下線が引かれた残基はCDR配列であり、太字体の残基は改変された残基である。
【0086】
本明細書に記載される抗体の特性評価及びアッセイの場合、表4に記述のように、以下の抗体を使用した。
【0087】
【表4】

【実施例2】
【0088】
CD25抗体バリアントの特性評価
チロシン残基及びフェニルアラニン残基を使用してタンパク質の自家蛍光を測定するPrometheus NT.Plex nanoDSF機器を使用して、抗体の融解挙動(Tm,melting behavior)及び凝集挙動(Tagg,aggregation behavior)を測定した。Prometheus NT.Plex High Sensitivityキャピラリー(Cat.PR-AC006)に、PBS pH7.4で希釈した抗体0.2mg/mLにての試料、10μl/キャピラリーをロードし、二回繰り返しでランさせた。温度範囲は、75分間かけて1℃/分で、20~95℃の勾配とした。蛍光を330nm、350nmで検出し、比350/330nmの変曲点を使用してTmを決定した。凝集光学により散乱光の測定が可能になり、後方散乱光の変曲点を使用してTaggrを決定した。図1は、別々の4つの製造バッチにわたる、D11及び本開示のD11バリアントのTmに関するナノDSFベースの測定を示す。バリアントは、D11と比較した場合、より高いTmの傾向を示す。図2は、別々の2つの製造バッチにわたる、D11及び本開示のD11バリアントのTaggに関するナノDSFベースの測定を示す。より低温では有意な凝集は検出されず、ヒト化バリアントについてのTaggは出発点のD11についてのTaggよりも全体として高かった。
【0089】
ヒト化抗体hD11-H3h-L2は、ほとんどのものよりも高いTaggを示したが、このことが指示するところは、優れた安定性及び凝集への耐性である。
【0090】
ヒト化D11バリアントの純度及び凝集の程度に関するuPLCベースの測定を、Chromeleon(登録商標)(バージョン7.3)ソフトウェアによってランされるDionex UltiMate(登録商標)3000-RS UHPLCシステムを使用して実施した。28℃にてのサイズ排除カラムTSKgel UP-SW3000、2μm、4.6mm ID×15cm(Tosoh社)を使用して、抗体を分離した。移動相は、50mmolリン酸一ナトリウム、300mmol塩化ナトリウム、5%アセトニトリルとした;pH6.5、流速0.2mL/分のイソクラティックモードでランさせた。タンパク質は、280nmにてUV吸光度を使用して検出した。全ての試料は、20.0μLの容量で0.1mg/mLの濃度で注入した。図3は、別々の4つの製造バッチにわたる、D11及び本開示のD11バリアントの純度及び凝集に関するuPLCベースの測定の結果を示す。データが裏付けるところは、シングルステップ精製での90%を超える純度にてD11及びバリアントの一貫した精製である。下の表5は表形式のデータを示す。
【0091】
【表5】
【実施例3】
【0092】
細胞結合アッセイ
細胞上のCD25への抗体の結合及び特異性について検証するために、2つの細胞株、SUDHL-1(ヒト大型びまん性組織球性リンパ腫細胞株(ATCC,human large diffuse histiocytic lymphoma cell line))及びSR786細胞(未分化大細胞型T細胞リンパ腫細胞)を使用して、CD25結合について試験した。双方ともCD25発現細胞株である。各細胞株について、100,000個の細胞を、96ウェル丸底プレートに細胞緩衝剤(PBS+2%HI FBS)でプレーティングし、遠心分離した。1~10ug/mLの抗体濃度を使用して、各抗体の結合について試験した。細胞を、抗体100uL/ウェル中に再懸濁し、氷上で20分間、インキュベートした。インキュベーション後、細胞を、300×g、室温で5分間、遠心分離し、氷冷の細胞緩衝剤を用いて再懸濁及び洗浄した。次いで、細胞を、AF647にコンジュゲートされた抗ヒトFc二次抗体(Biolegend社)で染色し、暗闇中、氷上で20分間、インキュベートした。細胞を遠心分離し、洗浄し、DAPIを含む冷細胞緩衝剤中で洗浄及び再懸濁し、フローサイトメトリー(Cytoflex、Becton Dickinson社)を使用して解析した。DAPI+細胞を解析から除外した。平均蛍光強度を、中央値を使用して計算した(FlowJo、TreeStar社)。
【0093】
図4は、本開示のD11バリアントの結合が、親D11と比較した場合、CD25発現SUDHL1細胞への結合に当たり、差異を呈示しないことを示す。図5は、本開示のD11バリアントの結合が、D11と比較した場合、CD25発現SR786細胞への結合に当たり、差異を呈示しないことを示す。結合については市販の対照抗体、767B6、ダクリズマブ、及びバシリキシマブとも比較したが、有意差は観察されなかった。
【実施例4】
【0094】
組換えカニクイザルCD25へのCD25抗体の結合
組換えカニクイザル(cyno,cynomolgus monkey)CD25との結合について試験するために、マイクロタイタープレートを、50mM炭酸ナトリウムpH9.6)に含まれる1ug/mlのCyno CD25の80ulで、4℃で、一晩、コーティングした。翌日、ウェルから上記タンパク質を除去し、PBS/0.1%BSA/0.05%tween20 200ulで遮断した。プレートを、室温で1時間、インキュベートした。抗体を、25nMで開始し、PBT緩衝剤で3倍段階で希釈し、RTにての1時間のインキュベーション向けにプレートへ添加した。次いで、プレートを洗浄し、次いで、1:2500希釈のHRPコンジュゲート型抗Fab抗体を添加した。プレートをPBS/tween20で5~10回、洗浄して、非特異的結合剤を除去した。TMBペルオキシダーゼ基質及びペルオキシダーゼ溶液を添加し、発色させるのに必要とされる時間の間、インキュベートし、その終了時にELISA停止溶液80uLを添加した。次いで、OD測定値を、プレートリーダー(SpectraMax iD3 Plate Reader、Molecular Devices社)を使用して450nMにて取得した。
【0095】
図6は、D11バリアントH3h-L2(H3-L2)が、ヒトCD25とカニクイザルCD25の両方と、交差反応性を維持することを示す。表6は、cyno/ヒトの結合比と共にそれの定量化を示す。Dacはダクリズマブを表す。比は、cyno又はヒトCD25いずれかへの結合における優先性を指示する。バリアントH3h-L2(H3-L2)は等しい交差反応性を示すが、一方、他のバリアントはどちらか一方の種(例えばバリアントH1-L2)に対して明瞭な優先性を示す。
【0096】
【表6】

【実施例5】
【0097】
抗体依存性細胞毒性(ADCC,Antibody-dependent cell cytotoxicity)
機能細胞キリングアッセイADCC
Treg(制御性T細胞)枯渇についてのメカニズムの一つは、抗体依存性細胞毒性(ADCC)を通してのものである。これは、標的細胞上の特定の抗原に結合した抗体への免疫/エフェクター細胞の認識により作動される、細胞死を通常には引き起こす、細胞媒介性免疫防御メカニズムである。ADCCを誘発するために、ヒトFcサブクラスを有する抗体、IgG1が、以下の3つのFc受容体に結合する能力を有するそれのエフェクター機能について一般に選択される:FcγRI(CD64)、FCγRII(CD32)、及びFcγRIIIA(CD16)、これらはNK細胞、単球及び顆粒球などの免疫細胞上で発現される。NK細胞は、FcγRIIIAを優勢に発現し、ADCCにおける主要なエフェクター細胞であるとされている。
【0098】
ADCCを、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH,Lactate dehydrogenase)細胞毒性プレートベースの比色アッセイ(Thermo Fisher社)を使用して定量化した。本アッセイでは、LDHの放出は、細胞死の量と比例する。乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)は、全ての細胞に存在する細胞質酵素であり、原形質膜が損傷される場合に放出される。培地中の細胞外LDHは共役酵素反応により定量化されるが、この場合、LDHが、NADHへのNAD+還元を介してピルベートへのラクテートの変換を触媒する。ジアホラーゼの添加により、NADHは、テトラゾリウム塩(INT,tetrazolium salt)へと還元されて、490nmで測定することができるホルマザン生成物を形成する。アッセイ用の対照には、ヒトRajiリンパ腫細胞株上でのリツキシマブ(抗CD20抗体)及びSUDHL-1細胞上でのダクリズマブの使用が含まれる(双方の抗体がADCCを誘導すると知られている)。さらなる対照には:陰性対照として非グリコシル化ヒトIgG1、及び陽性対照として、非フコシル化ヒトIgG1が含まれ得る。第1の最初のスクリーニングとして、再フォーマット化クローンを、ADCCアッセイにおいて、1つの濃度(10ug/mL)で、単一のドナー由来のPBMCを使用して、試験した。ヒトPBMC(ASTARTE Biologics社)を、前日に解凍し、X-VIVO 15又は20培地(Lonza社)を用いて、5%CO2インキュベーター内、37℃で一晩、培養した。実験の当日、PBMC及びSUDHL-1標的細胞を、カウントし、X-VIVO 15(Lonza社、フェノールレッド)無血清培地中に再懸濁した。抗体希釈物を、10ug/mlから開始して5倍の段階希釈で調製した。次いで、標的細胞を、96ウェル白色平底不透明プレート(CORNING社 Ref#3917)において96ウェル50μL/ウェルでプレーティングし、抗体希釈物10μL/ウェルを、標的細胞へ添加し、37℃、5%CO2インキュベーターで30分間、インキュベートした。インキュベーション後、PBMCを標的細胞へ添加した(50μL/ウェル)。自発性及び最大LDH放出計算用の対照標的細胞の場合、アッセイ培地(X-VIVO15、フェノールレッドなし)50μL/ウェルを添加した。共インキュベーション(ADCC誘導)を、37℃、5%CO2インキュベーターで4時間、プレートをインキュベートすることにより行い、共インキュベーションが完了する45分前に、10%Triton X100溶液(PBS中)をウェルに添加して最大LDH放出を計算した(10μL/ウェル、11×希釈比)。インキュベーション後、反応基質50μL/ウェルを、96ウェルプレート(透明平底)にプレーティングし、次いで、アッセイプレートの上清50μL/ウェルを反応基質へ移した。プレートを、暗闇中、RTで30分間、発色させた。インキュベーション後、停止溶液50μL/ウェルを添加し、吸光度490nm及び680nmを、プレートリーダー(SpectraMax iD3 Plate Reader、Molecular Devices社)を使用することにより測定した。
【0099】
図7は、本開示のD11バリアントが、D11と比較した場合、がん細胞においてADCC活性の差異を呈示しないことを示し、このことによって、一般的な問題として、その機能性が維持されていることが示されている。
【0100】
表8が示すところは、制御性T細胞で試験した場合、ある特定のD11バリアントはより高いADCC活性を呈することである。D11-H3h-L2及びD11-H3b-L2などのある特定のバリアント抗体は、D11親抗体及び7G7B6と比較した場合、より高いADCC活性(より低いEC50)を呈した。
【0101】
【表7】

【0102】
図8が示すところは、さらに、キフネンシンを含有する細胞培養培地中で産生され、その結果、抗体の脱フコシル化がもたらされる場合、脱フコシル化D11は、より高いTreg ADCC活性(D11 kif)を呈することである。アッセイは、384ウェルプレートで20,000個の細胞/ウェルで実行した。
【0103】
機能的抗体依存性細胞食作用(ADCP,antibody-dependent cell phagocytosis)アッセイも行って、抗体が結合する場合のマクロファージがTreg細胞を貪食する活性を試験することができる。これは、Treg枯渇についてのさらなる作用メカニズムとすることができる。マクロファージ上のFc受容体FCγRIIa(CD32b)は、ADCPについての優勢な誘導因子であると考えられる。本アッセイでは、一次Tregが、エフェクター細胞としてのヒト単球由来マクロファージと共に標的細胞として使用される。CD14マイクロビーズ(Miltenyi Biotec社)を使用する単球分離用に、並びにRegulatory Human CD4+CD25+ T cell kit(Dynabeads社)及びHuman Treg Cell Differentiation kit(R&D Systems社)を使用するTreg用に、PBMCを白血球除去システムチャンバー(Stanford Blood Center社)から分離する。単球を、培地中のヒト血清又はM-CSFと共に5~7日間、培養する。5~7日目に、マクロファージを、10:1のエフェクター:標的比で、事前標識されたTreg(固定可能な生死判別色素(Invitrogen社)で標識された)と共に、抗CD25抗体及び対照が添加された状況で、2~4時間、共培養し、固定化緩衝剤(BD Biosciences社)で固定する。標識Tregからマクロファージを特定するために、マクロファージをCD14に関して染色し、フローサイトメトリーを使用して、CD14+として定義される食作用性集団及びTreg標識+集団について解析する。抗CD25抗体は、ADCPも誘導することが予想される。
【実施例6】
【0104】
CD25抗体の機能特性評価
インビトロでの特性評価
次いで行われるインビトロでの特性評価には、Treg細胞の非存在下及び存在下における、Tエフェクター細胞応答へのCD25抗体の影響を評価するためのT細胞活性化及びTreg抑制の研究が含まれ得る。活性化についての読み取りには、細胞内グランザイムB、増殖及びサイトカイン放出(例えば、IL-2、IFNγ、TNF-α)が含まれ得る。具体的には、健康なドナー及び特定の抗原応答(例えば、ヒトサイトメガロウイルス又はインフルエンザフル抗原)を有するドナー由来のヒト一次通常型T細胞(T conv細胞,T conv cell)を、細胞増殖色素(例えば、ThermoFisher社)で標識し、様々な濃度のCD25抗体及び対照抗体(1~10ug/mL)で処理し、これに続いて、CD3/CD28ビーズを使用して活性化し、Tregありで又はTregなしで、37℃、5%CO2で48~72時間のインキュベーション向けに、インキュベートする。T細胞活性化を評価するために、上清を、サイトカイン解析向けに収集し、固定可能な生死判別色素(例えば、Thermofisher社)で及び表面抗ヒトT細胞マーカー:CD3、CD4、CD8、CD45RA、CD25で細胞を染色し、これに続いて、細胞内グランザイムB及びFoxp3の染色向けに固定及び透過処理を行う。細胞を、グランザイムB陽性細胞及び増殖性細胞についてフローサイトメトリーを使用して解析する。
【0105】
インビボでの特性評価
マウス異種移植腫瘍モデルを使用して、CD25抗体のインビボでの活性を評価することができる。本実験は、ADCC及び/又はADCPを介するCD25+腫瘍枯渇に基づいて、CD25抗体の差異を区別するのに役立つ。バリアント抗体を、マウスIgG2aアイソタイプ抗体として産生し、免疫不全RAG-/-ノックアウトマウス(機能性NK細胞及びAPC細胞を有するが、成熟Bリンパ球もTリンパ球もない)において使用することができる。動物に、CD25+ヒト細胞株(例えば、SUDHL-1、CD25+未分化大細胞リンパ腫)を皮下移植する。様々なサイズの腫瘍(触知可能、100~500mm3)を使用して、抗体間の差異を識別することができる。動物を、異なる用量のCD25抗体(例えば、1~10mg/kg、週3×又は1日1回)で治療し、体重及びTGIの変化についてモニタリングする。
【0106】
ヒト化マウスでのマウス異種移植腫瘍モデルにおける薬物有効性及びMOA研究
Treg枯渇と、Tエフェクター細胞活性の上昇を伴う腫瘍内Teff/Treg比の上昇とを介する腫瘍増殖阻害についてより効果的なバリアント抗体を、様々なヒト腫瘍モデル(例えば、肝臓がん、乳がん、黒色腫、胃がん、NSCLC、及び結腸がん)において試験して、有効性及び作用メカニズムを立証する。一部の研究には、トリプルネガティブ乳がん細胞株MDA-MB-231、胃細胞株、黒色腫細胞株A375及び肝臓がん細胞株Huh-7、並びに、ヒトPDXモデルであって、十分特徴づけられており、かつ、浸潤したTregと腫瘍増殖の間の相関を示しているか、及び/又はヒトPBMC及び/若しくはCD34+細胞を移植されたヒト化マウスにおいてPD-1抗体組合せで治療されているかいずれかの、ヒトPDXモデルを使用することが含まれ得る。こういったモデルでは、腫瘍を、皮下に移植し、腫瘍が触知可能から100~500mm3までのサイズ範囲に達するまで、様々な用量のCD25抗体及び投薬スケジュール(例えば、1~10mg/kg、週3×又は1日1回)で治療する。動物の健康スコアリング、体重、腫瘍増殖、並びに、血液及び腫瘍の免疫表現型タイピングを行って、フローサイトメトリー、Meso Scale Discovery社製多重プレート、及び組織診断を使用して、腫瘍及び免疫細胞組成及び腫瘍浸潤細胞、並びにサイトカイン分泌を特徴づける。
【0107】
ヒト化マウスでのマウス異種移植腫瘍モデルにおける組合せ研究。リード候補及び適応症が、有効性及びMOA研究に基づいて立証されたら、本発明者らは、免疫活性化のために免疫原性及び他の経路の活性化を向上させるための広範囲の薬剤(例えば、化学療法、チェックポイント阻害剤、TLRアゴニスト、ワクチン)を使用して組合せ研究を実施することになる。組合せ実験が、有効性及びMOA研究で使用された類似の腫瘍モデルにおいて実施されよう。
【0108】
本明細書に引用された全ての特許、特許出願、刊行物、文書、Webリンク、及び論文は、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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